EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DIEGO CAFOLLA OF KINGCROW !!
“I Think Kintsugi Is Really a Great Metaphor About Dealing With Traumas And Overcoming Them And Even Celebrate Them Since They Are Part Of Our Growth Process.”
DISC REVIEW “HOPIUM”
「金継ぎは素晴らしいアイデアだと思ったんだ。自身のトラウマ、傷と向き合い、それを克服し、さらには成長過程の一部でもあるその傷を祝福できるようになる。金継ぎは、その歌詞の実に素晴らしい比喩だと思ったね。また、金継ぎのコンセプトはアートワークにも使用し、アルバムのビジュアル表現にも全面的に取り入れているよ。なぜなら、その魅力的な哲学をおいても、素晴らしく美しい芸術形態だから」
欠けたり割れたりした器を、漆を使って修復する日本の伝統的な技法、金継ぎ。もう二度と戻らない致命的な “傷” を優しくつなぎ合わせ、美しい金でコーティングすることでその傷を唯一無二の前向きな個性とする金継ぎはもはや、修理を超えてアートの域に達しています。
イタリアの伊達プログ KINGCROW は、その技法と哲学、アイデアに魅せられ、”Kintsugi” を自らの血肉へと昇華させました。ネットの普及により致命的な心の “傷”を負いやすい時代に、彼らは金継ぎを人間そのものに例えます。 つなげない傷なんてない。トラウマを克服し、いつかはその傷を個性とし、その傷ごと優しく抱きしめられる日がやってくる。彼らの “Kintsugi” はそんな美しい希望の歌になったのです。
「答えを提示するのではなく、自分の考えや視点を説くのでもなく、さまざまなトピックについてリスナーに考えさせ、自分なりの答えを見つけさせようとしている。だから、君が指摘したように、”Hopium” のアイデアのひとつも、盲目的に従うのではなく、疑問を持つことなんだ。そう、フェイクニュースや誤った情報が氾濫する時代には、物事に対して疑問を持つことがこれまで以上に重要なんだよ」
“Kintsugi” を収録した KINGCROW の最新作、そのタイトルは “Hopium”。”Hope” “希望” と “Opium” “麻薬” を掛け合わせたアメリカの新たなスラングには、幻想的な甘い希望の意味が込められています。ネットのエコーチェンバー、バブルの中に閉ざされて自身を絶対的な正義だと思い込み、異なる意見、異なる存在を悪と断じる狂気の世界で、彼らはただ、”疑問” を持って欲しいと願います。差別や分断を煽るフェイクニュースやプロパガンダをまずは、少しでも疑うこと。KINGCROW は、そう投げかけることで、一度傷つき “割れて” しまった人類の絆を取り戻し、より美しく、再びつなぎあわせたいのです。
「PAIN OF SALVATION の “マジック” の中核には、とても感情的な創造性があると思うし、それは僕たちも同じだと思いたい。クールなものを作るために、曲のエモーショナルなメッセージを犠牲にすることは絶対にないからね。僕たちはただ、感情を揺さぶる音楽を、興味深い美学とさまざまなレイヤーで表現しようとするだけだ」
KINGCROW がつなぎ合わせるのは、人だけではありません。プログ以外にも、メタル、オルタナティヴ、エレクトロニカといった珠玉のジャンルを黄金の光沢でつなぎあわせ、唯一無二の美しき個性とする彼らの音楽こそ、まさに金継ぎ。感情を決して置き忘れず、極限まで洗練された楽曲には必ず、ハッと息を呑むような、魂を揺さぶられる瞬間が用意されていて、リスナーは大鴉のマジックにただ酔しれます。アルバムには、奇しくも現在 PAIN OF SALVATION で鍵盤をつとめる Vikram Shankar がゲスト参加していますが、もしかすると彼らこそが “魂の救済” を謳った最も “エモーショナル” なプログ・メタルバンドの後継者なのかもしれませんね。
今回弊誌ではギタリスト、キーボーディストでメイン・コンポーザーの Diego Cafolla にインタビューを行うことができました。「バンド名を探していたとき、実はちょうどエドガー・アラン・ポーの詩集を読んでいて、”大鴉” にはいつも心を奪われるものがあったんだ。会話のすべてが主人公の心の中で起こっているという事実は、本当に魅力的なアイデアだ。
僕にとっては、外界といかにかかわるかで、自分の現実だけがそこにあると思い込んでしまうことを象徴していた。だから結局、KINGCROW という名前になったんだ」 もはや、LEPROUS, HAKEN, CALIGULA’S HORSE と並んでモダン・プログ・メタル四天王の風格。どうぞ!!
KINGCROW “HOPIUM” : 10/10
INTERVIEW WITH DIEGO CAFOLLA
Q1: Italy is a country that has produced great progressive bands such as PFM, Banco, New Trolls, and Arti. Did you grow up listening to those bands?
【DIEGO】: Some of them. My father has some Italian progressive rock in his vinyl collection so it was natural for me to absorb records like “Storia di un minuto” by PFM or “Concerto Grosso” by New Trolls. Anyway I always listened to a lot of different kinds of music not just progressive rock so it definitely was part of my musical growth but with a lot of other stuff. There was always a lot of different music in the air in our house.
Q1: イタリアは PFM, BANCO, NEW TROLLS, ARTI といった偉大なプログ・バンドを輩出した国です。そうしたバンドを聴いて育ったのでしょうか?
【DIEGO】: 何人かはね。父がイタリアン・プログレッシブ・ロックのレコード・コレクションをいくつか持っていたので、PFMの “Storia di un minuto” や NEW TROLLS の “Concerto Grosso” といったレコードを自然と吸収していったんだ。とにかく、プログレッシブ・ロックだけでなく、いろいろな種類の音楽をいつも聴いていたから、音楽的な成長の一部であったことは間違いない。我が家にはいつも様々な音楽が流れていたからね。
Q2: Nevertheless, I see various elements of metal, alternative, electronica, etc. among you. What kind of music influenced you growing up?
【DIEGO】: I’ve listened basically to every kinds of music, from progressive rock, to heavy metal, to electronic music and much more. I too curious to just confine my listenings to one specific kind of music. So I loved to listen to Pink Floyd, The Beatles and Beach Boys, King Crimson, Rush, Slayer, Nine Inch Nails, Iron Maiden, Sigur Ros, Massive Attack, Radiohead, Tori Amos, The Police…I mean I can go on with hundreds of different bands and artists , all very different. I think I’ve learned something from everyone of them. For me it was always about if I liked it or not , without thinking too much about the style they played.
Q2: ただ、KINGCROW の音楽からは、プログ以外にも、メタル、オルタナティヴ、エレクトロニカなど、様々な要素を感じますね?
【DIEGO】: プログレッシブ・ロックからヘヴィ・メタル、エレクトロニック・ミュージックなど、基本的にあらゆる音楽を聴いてきた。好奇心が強すぎて、特定の音楽だけに絞って聴くことができなかったんだ。
だから、PINK FLOYD, BEATLES, BEACH BOYS, KING CRIMSON, RUSH, SLAYER, NINE INCH NAILS, IRON MAIDEN, SIGUR ROS, MASSIVE ATTACK, RADIOHEAD, THE POLICE, Tori Amos……。彼ら全員から何かを学んだと思う。僕にとっては、彼らのジャンルや演奏スタイルについて深く考えることなく、好きかどうかが常に重要だったんだ。
Q3: The name Kingcrow was inspired by Edgar Allan Poe’s masterpiece “The Raven”. What drew you to that story?
【DIEGO】: When I was searching for a name for the band I was actually reading a book of E.A. Poe poems and I found The Raven always captivating. The fact that the whole conversation actually happens in the mind of the main character is really a fascinating idea. To me it represented how the way we interact with the external world can lead us to believe that our reality is the only one out there. So it ended up inspiring the name Kingcrow.
Q3: KINGCROW というバンド名は、エドガー・アラン・ポーの名作 “The Raven (大鴉)” にインスパイアされているそうですね?
【DIEGO】: バンド名を探していたとき、実はちょうどエドガー・アラン・ポーの詩集を読んでいて、”大鴉” にはいつも心を奪われるものがあったんだ。会話のすべてが主人公の心の中で起こっているという事実は、本当に魅力的なアイデアだ。
僕にとっては、外界といかにかかわるかで、自分の現実だけがそこにあると思い込んでしまうことを象徴していた。だから結局、KINGCROW という名前になったんだ。
Q4: There is one band that I think is very similar to Kingcrow, Pain of Salvation. I don’t think the music is very similar, but more like their spirituality and philosophy. Would you agree?
【DIEGO】: Well I think that nowdays the music of the two bands is pretty different but I agree that we both probably have the same approach when it comes to the main concept behind the band. I think that at the core of Pain Of Salvation “magic” there is this very emotionally charged creativity and I like to think that it’s the same for us. For sure I know that we would not sacrifice the emotional message of a song just to make something cool. We just try to make emotionally charged music, presented with an interesting aesthetic, with different layers. If we consider this aspect I think Pain of Salvation have a pretty similar approach. Then both bands tend to have thoughtful lyrics so I can see also that connection.
Q4: KINGCROW にとても似ていると思うバンドがひとつだけあります。PAIN OF SALVATION です。音楽が似ているというより、精神性や哲学が似ているように感じますよ。
【DIEGO】: 今となっては、この2つのバンドの音楽はかなり異なっていると思うけど、バンドの背後にある主要なコンセプトに関しては、おそらくふたつとも同じアプローチを持っている。
PAIN OF SALVATION の “マジック” の中核には、とても感情的な創造性があると思うし、それは僕たちも同じだと思いたい。クールなものを作るために、曲のエモーショナルなメッセージを犠牲にすることは絶対にないからね。僕たちはただ、感情を揺さぶる音楽を、興味深い美学とさまざまなレイヤーで表現しようとするだけだ。
この点を考慮すると、PAIN OF SALVATION と僕らはかなり似たアプローチをしていると思う。それから、どちらのバンドも思慮深い歌詞を書く傾向があるので、そういうつながりもあると思うね。
Q5: Hopium is American new slang for “sweet hope based on illusion,” isn’t it? For example, the fantasy that “Donald Trump will be president and the great America will return”. A compound of “hope” and “opium,” a narcotic opiate.
In the age of social networking, we have become blinded by the echo chambers and bubbles of the internet, unable to honestly accept different opinions and different people. Blindly believing in our own righteousness and putting others down is truly a drug. Is this the purpose of the album “Hopium” to reconnect people from such a “divided” world?
【DIEGO】: Well even if basically all lyrics are by Diego Marchesi I think I can say that he tries to offer his emotional reaction to the world that surrounds us and he tends to write lyrics that makes you questioning about things. He doesn’t offer you an answer, he’s not preaching his ideas or his point of view, but makes you reflect aboutdifferent topics and then you have to find your own answers. So, as you pointed out, one of the ideas behind “Hopium” is also that, questioning and not blindly following. And I think in an era of fake news and misinformation, questioning about things is more important than ever.
Q5: アルバム・タイトルの “Hopium” とは、”Hope” “希望” と “Opium” “麻薬” があわさったアメリカの新しいスラングで “幻想に基づく甘い希望” という意味ですよね。
SNS の時代、私たちはインターネットのエコーチェンバーやバブルに目がくらみ、異なる意見や異なる人々を素直に受け入れることができなくなっています。盲目的に自分の正義を信じ、他人を貶めることは、まさに麻薬。このような “分断” された世界の人々を再び結びつけることが、アルバム “Hopium” の目的なのでしょうか?
【DIEGO】: 基本的にすべての歌詞が Diego Marchesi によるものであるが、彼は僕たちを取り巻く世界に対して感情的な反応を示そうとしているし、物事に対して疑問を抱かせるような歌詞を書く傾向があると言える。
彼は答えを提示するのではなく、自分の考えや視点を説くのでもなく、さまざまなトピックについてリスナーに考えさせ、自分なりの答えを見つけさせようとしている。だから、君が指摘したように、”Hopium” のアイデアのひとつも、盲目的に従うのではなく、疑問を持つことなんだ。そう、フェイクニュースや誤った情報が氾濫する時代には、物事に対して疑問を持つことがこれまで以上に重要なんだよ。
Q6: I say “connect” because the album begins with “Kintsugi,” a traditional Japanese technique of reconnecting broken, precious objects with urushi gold. It is a really great piece of music. How did you come to know about Kintsugi and decide to make it into a piece of music?
【DIEGO】: When I wrote the music for the song, Diego Marchesi (lead singer) presented me the lyrics for Kintsugi and I thought that it was a fantastic idea. I think it’s really a great metaphor about dealing with traumas and overcoming them and even celebrate them since they are part of our growth process. We also used the kintsugi concept in our artwork and extended it to the full visual representation of the album because, beside it’s fascinating philosophy it’s also an amazing and beautiful art form.
Q6: 私が “つなぐ” と言ったのは、このアルバムが “金継ぎ” で始まるからですよ。壊れたものをつなぎ合わせる日本の伝統技法。本当に素晴らしい楽曲です。
どのようにして金継ぎを知り、それを音楽にしようと思ったのですか?
【DIEGO】: この曲を書いたとき、Diego が “Kintsugi” の歌詞を提示してくれて、素晴らしいアイデアだと思ったんだ。自身のトラウマ、傷と向き合い、それを克服し、さらには成長過程の一部でもあるその傷を祝福できるようになる。金継ぎは、その歌詞の実に素晴らしい比喩だと思ったね。
また、金継ぎのコンセプトはアートワークにも使用し、アルバムのビジュアル表現にも全面的に取り入れているよ。なぜなら、その魅力的な哲学をおいても、素晴らしく美しい芸術形態だからね。
Q7: Besides Kintsugi, are there any other aspects of traditional Japanese culture, anime, games, or music that interest you?
【DIEGO】: Well, growing up we are all exposed to some of Japanese culture. To make you an example I think most of the cartoons we grew up with as children are Japanese export.
Anyway I think that there’s a great fascination for Japan culture since it’s really different from European culture. There was a period of my life that I was really into Japanese horror movies and you can tell that there’s a complete different vibe going on that makes them really fascinating.
Q7: 金継ぎ以外に、日本の伝統文化、アニメ、ゲーム、音楽などで興味を持ったものはありますか?
【DIEGO】: 僕たちは日本の文化に触れて育ってきたんだよ。例を挙げると、僕たちが子供の頃に見て育ったアニメのほとんどは、日本からの輸出品だったと思うからね。
とにかく、日本の文化はヨーロッパの文化とは本当に違っていて、とても魅力的だと思う。日本のホラー映画にはまっていた時期があるんだけど、全く違う恐ろしい雰囲気があって、とても魅力的だったね。
Q8: Since ancient times, metal and progressive music have delivered fantasies to listeners, and listeners have been able to escape from dark realities with music, and be empowered by music. In this day and age of propaganda and the “drug” of discrimination, can metal and prog fantasy change anything?
【DIEGO】: Well, I think that our music more than offering an escape from reality gives you a moment to reflect on it. I don’t know if music can change anything but I like to think that people who listen to our music and pay attention also to the lyrics have one more chance to think about some topics with maybe a fresh point of view. So since I believe that everything influences everything yeah, in a very romantic way music can make people questioning, and questioning is always good if you ask me.
Q8:古来より、メタルやプログレッシブ・ミュージックはリスナーにファンタジーを届け、リスナーは音楽によって暗い現実から逃避し、音楽によって力を得てきました。プロパガンダや差別という “麻薬” が蔓延する現代において、メタルやプログのファンタジーは何かを変えることができるのでしょうか?
【DIEGO】: まあ、僕たちの音楽は、現実逃避を提供する以上に、現実について考える時間を与えるものだと思う。音楽が何かを変えられるかどうかはわからないけど、僕らの音楽を聴いて歌詞にも注目してくれる人たちが、もしかしたら新鮮な視点を持って、あるトピックについて考える機会がまたひとつ増えるかもしれない、そう思いたいんだ。
だから、すべてのものがすべてのものに影響を与えると信じている。とてもロマンチックな方法で、音楽は人々に疑問を抱かせることができるんだ。