NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEFILED : HORROR BEYOND HORROR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YUSUKE SUMITA OF DEFILED !!


(ALL PHOTOS BY SHIGENORI ISIKAWA)

“I Think Everyone Has Something They Love And Can’t Get Enough Of. If We Pursue It With Full Curiosity And Love, We Can Reach a Certain Point, Even If We Are Complacent.”

DISC REVIEW “HORROR BEYOND HORROR”

「情報過多の中、限られた時間で好みの音楽を選別する慣習ができ、最初の30秒でジャッジされる軽薄な時代になったという憂いはあります。何度も聴かないと良さがわからない音楽、最初の30秒では把握できない音楽の中にも優れた音楽は沢山あります。それらがスキップされる時代になるのは音楽文化の退行にすらつながると思います。それは寂しい話です」
ストリーミング、SNS、切り抜き動画が溢れるインスタントな時代において、だからこそ DEFILED の音楽と哲学はギラリと異彩を放っています。”最初の30秒では把握できない音楽”。それはまさに DEFILED の作品のこと。
DEFILED の音楽はさながら、モナコGPのように知性とスリルと驚きを兼ね備えています。時速300キロのストレートから40キロのシケインへと減速し、曲がりくねったコースを闘牛士のように絶妙にいなし、シフト・チェンジを重ねながら前へ前へと突進を続ける。
もちろん、楽曲の中でストップ&ゴーを駆使するバンドは少なくありませんが、彼らのようにオフ・キルター (意図的にズラした) なリズムで混乱と好奇心を誘いつつ、フレーズやパッセージの端々で巧みにスピードをコントロールできるバンドは他にいないでしょう。そこはまるでランダムに見えて精巧な設計図のあるフリージャズの世界。そしてそのカタルシスは当然、何度も何度も聴き込まなければ得ることのできない失われたアークです。
「デスメタルというジャンルも勃興からすでに30年以上の歳月が経ちジャンル内における歌詞表現、世界観の幅も多様化し広がった感はあるかもしれません。音楽性だけでなく歌詞もいろんなアングルからの表現があるのはデスメタルというジャンルの発展によい事ではないでしょうか。ハードコアやクロスオーバー・スラッシュでは社会的問題などを直接的に歌うバンドも多く、それらのファンだった私にはそういう歌詞を自身のバンドに取り込む事に抵抗感はありませんでした」
その音楽同様、DEFILED の哲学や扱うテーマもジャンルのステレオタイプに安住することはありません。”Horror Beyond Horror”、”ホラーを超えたホラー”、そう題されたアルバムで彼らは、デスメタルの主要テーマであるホラー以上に恐怖を誘う、現代社会や世界の暗い状況を的確に描写しています。
近年、デスメタルとハードコア、デスメタルとブラックメタル、デスメタルとスラッシュの異種交配が進む中で、デスメタルに隠喩以上の直接的な社会的テーマ、抑圧に対する怒り、分断に対する嘆き、不条理に対する叫びを持ち込む若いバンドが増えてきました。DEFILED はSF、ディストピアの鏡に現代社会を映し出すことで、その先駆者としての矜持を存分に見せつけています。
「私たちがやっているような音楽は、必ずしも大金を稼げるとは限りませんし、利益のためだけにやっているわけでもないです。”人とのつながり” が原動力になっている面もたくさんあります。そして、”好き” 者同士が、互いの信頼と友情によって有機的に連携するシーンでもあります。私たちは幸いなことに、長年そのような状況で仕事をすることができ、それが私たちの前進を促してきました。お互いを尊重し合ってこそ、前進できます」
そんな DEFILED の誇り高き異端、ステレオタイプとの離別は寛容さと共感を内包したデスメタルへの情熱が原動力となっています。あくまで母数の少ない、ニッチなデスメタルというジャンルで生きていくことは簡単ではないでしょう。それでも、DEFILED が例えば、 “SLAYER meets VOIVOD meets MORBID ANGEL” などという強烈な枕詞で海外からも大きなリスペクトを集められるのは、”好きでたまらないもの” を真摯に、情熱を持って追いかけ続けたから。
そして好きでたまらないからこそ、情熱を注いでいるからこそ、愛があるからこそ、好奇心を失わないからこそ、彼らはデスメタルへの盲信を求めません。実際、今回のアルバムでもサンバやフラメンコの要素を大胆に取り入れ、挑戦者であり続けています。こうした “プリミティブ” で “生々しい” 音色でエクストリーム・ミュージックを叩きつける求道者も今ではほとんどいないはずです。これだけドラムを “楽器” として使いこなせるメタル・バンドがどれだけ存在するでしょうか?”Battery” ソロ前のフィル的なフレーズが奇妙奇天烈に広がる “Syndicate” の脅威よ。ちょっとした反復のリフでも、音の数や並び、スピードに譜割りを少しずつ変えてくる緻密さ、それでいてなおいささかも失わなわれない凶暴には脱帽しかありません。
だからこそ、DEFILED が望むのはきっと盲信ではなく共感。そして寛容な心。謙虚に挑戦者で求道者であり続ける DEFILED のその姿が、自然と共感を呼び、リスペクトを呼び、そうして好きと好きのつながり “Love Beyond Love” が広がっていくのです。
今回弊誌では、DEFILED のレジェンド、住田雄介氏にインタビューを行うことができました。「デスメタルに限らずですが人は好きで好きでたまらない、というモノが誰でもあると思うのです。前頭葉を揺さぶるような感動体験が皆さんあると思います。それらを好奇心と愛を全開で追求すれば仮に独りよがりでもそれなりの地点に到達できるのでは、と思います」プログレッシブ・ミュージックのファンにもぜひ聴いてほしい!!どうぞ!!

DEFILED “HORROR BEYOND HORROR” : 10/10

INTERVIEW WITH YUSUKE SUMITA

Q1: “There are different killer guitar sounds. And there is more than one right answer. The search for the ideal guitar sound is a never-ending journey. Curries are no different. There are a lot of killer curries that I haven’t tried yet. It’s fun to explore what I love. What a good life.”
I liked your post on Twitter (X). I think it is very important in life to keep exploring what I love, to never forget my curiosity, to keep my passion alive and to find a place where I can escape from reality… In that sense, the search for the ideal death metal and guitar sound is an endless maze to find the goal, and once you’re in it, you can’t get out. Isn’t death metal the perfect genre to have your own maze?

【SUMITA】: Wow, you asked me about curries in the first question! I am very happy to answer that. I think everyone has something they love and can’t get enough of. If we pursue it with full curiosity and love, we can reach a certain point, even if we are complacent.
In my case, the things I can’t get enough of are death metal, tube guitar sounds and curries. As for tube guitar sounds, the “Mesa Boogie sound” from Metallica’s “Master of Puppets” shook my brain from the inside out, and I have been searching for “my” ideal tube guitar sound ever since.
I am still chasing that first impulse I had in my youth. As you say, the search for the ideal death metal is like being in a maze with no way out, and there is no end to the exploration. I am also still chasing that first impulse that curries had on me in my youth.

Q1: 「極上のギターサウンドと一口に言ってもいろいろある。正解は一つではない。奥が深いし沼である。カレーも同じ。まだ出会ってない美味しいカレーはまだまだある。好きなモノの探求は楽しい。なんとも良い人生だ」
私は住田さんのこのポストがすごく好きで、共感できたんですよね。自分が好きなものの探求を続けること、好奇心を忘れないこと、情熱を持ち続けること、現実から離れられる場所って、やっぱり人生においてとても大切だと私は思っていて…そういう意味で、デスメタルやギター・サウンドって、一度ハマったら抜け出せない、正解という出口のない底なし沼で、探求と逃避のしがいがありますよね。 ある意味、デスメタルって、自分だけの沼を持つのに最適なジャンルではないですか?

【SUMITA】: 一問目からカレーですが!とても嬉しいです。ありがとうございます。デスメタルに限らずですが人は好きで好きでたまらない、というモノが誰でもあると思うのです。前頭葉を揺さぶるような感動体験が皆さんあると思います。それらを好奇心と愛を全開で追求すれば仮に独りよがりでもそれなりの地点に到達できるのでは、と思います。
その「好きでたまらないモノ」としてデスメタルやギターサウンド、そしてカレーが私の場合にはあったのです。ギターサウンドに関してはMETALLICAのMaster of Puppetsのメサ・ブギ アンプの音に脳天から痺れましてズッと理想の真空管ギターサウンドを追い求めています。
多感な青年期にうけた初期衝動を未だに追っかけています。おっしゃるとおり、デスメタルは出口のない底なし沼でして、探求の旅に終わりはありません。カレーも少年期にうけた衝撃を忘れられず未だに追っています。

Q2: Interestingly enough, many die-hard metalheads are also crazy about food. I was born in Sanuki, so I am proud of my passion for udon (Japanese noodles), but it seems that your passion for curries is also extraordinary. Can you tell us how you got hooked on curries, how metal and curries are connected, and which curry impressed you the most?

【SUMITA】: I love udon as well. When I’ve visited to Takamatsu for a gig, I was one of those who was fascinated by Sanuki udon. The broth is completely different from Tokyo, and the noodles are firm and filling. With such great food in your hometown, I do understand you must go crazy with it.
I was fascinated with curries as a child when my father took me to eat beef curry in the dining car of the Shinkansen bullet train. Unlike my mother’s homemade curry, it had a tangy, spicy, mature flavor. Later, when I was in high school, there was a curry restaurant near the cram school I attended (Ichigaya) called “Curry no Osama (King of Curry),” and I developed a love for curry with spicy flavors. I also liked to visit to a curry restaurant in Nakano, Tokyo called “Ceasar” (now closed).
Also, when Wes Benscoter, who does our artwork, lived in Tokyo for a few years a long time ago, we used to go to a Pakistani curry restaurant called “Great Punjab” (now closed) in Roppongi, Tokyo on weekend nights. We became friends beyond business through our many curry parties. Curries were also a frequent part of our get-togethers with good friends in Japan. When my band performs at Earthdom, our home venue, we usually start off at a curry restaurant called “Nimto”. We call it our “pre-stage ritual”.
The most impressive curry I’ve had is the one I ate in Kolkata when we toured India in 2015. The local promoter gave us the best curry I have ever had. There are many different tastes in curries, and there are many different axes of evaluation. It’s like being trapped in an endless maze while chasing “faves”.
I think that’s what makes it addictive. I can say the same thing about death metal and tube guitar sounds. In short, it is a maze of “faves”.

Q2: 面白いことに、多くのダイハードなメタル・ヘッズは食にも夢中になることが多いですよ ね(笑)。私は讃岐の人間なのでうどんにかける情熱は誰にも負けないという自負があるので すが、住田さんのカレーにかける情熱も並々ならぬものがありそうです。カレーにハマったきっかけやメタルとカレーの共闘、そして最も衝撃を受けたカレーについてお話ししていただけますか?

【SUMITA】: うどん最高です。私も公演で高松を訪問した時に讃岐うどんを食べその美味しさに衝撃を受けた一人です。出汁が関東とは全然違いますし麺のコシがあり食べごたえありますよね。地元にあんな美味しいモノあればハマるのは当然です。
私がカレーが好きになったキッカケは少年期に新幹線の食堂車で父親に連れてもらって食べたビーフ・カレーです。母親の作る家庭的なカレーの味と違いピリッと辛口の大人な味でした。その後、高校時代に通った塾の近くにカレーの王様(市ヶ谷店)がありスパイスの効いたカレー好きのベースができあがりました。成人後は中野にあったシーサーというカレー屋(今は閉店)にも通いました。
また私達のアート・ワークを担当してくれているWes Benscoter氏が大昔、数年、東京に在住していた時、よく週末の夜中に東京・六本木にあるグレート・パンジャブ(今は閉店)というパキスタン・カレーの店に一緒に通いました。彼とはカレー会議を重ねる事によりビジネスを超えた友人になったとも言えます。それ以外にも国内の仲の良い人たちとの会合の場がカレーが登場する事は多くなりました。バンド内でも私達のホームベースであるアースダムでライブする時はメンバーとのランチはニムトという店です。バンド内ではステージ前の”儀式”と冗談で呼んでいます。
最も衝撃を受けたカレーですが2015年にインド・ネパール・バングラディッシュをツアーしまして、その時インドのコルカタで食べたカレーです。プロモータがケータリングで持ってきてくれたカレーでしたがそのカレーが絶でした。カレーといってもいろいろな味があり評価軸も多様です。追求すると沼になってしまいますね。それがまた楽しいのでしょうけど。
先述と重複しますがそれはデス・メタルやギターサウンドにも言える事ですね。要は「好き」の沼です。

Q3: In fact, Gunnar Sauermann from ex.Season of Mist encouraged us in our early days and always praised your music and humble personality. As far as social networking goes, I have seen that Defiled is looking for a real human network in the scene. You have toured a lot around the world. You’ve been in the “underground” death metal scene for many years, is it important for you to “connect to the network” and has it helped you move forward?

【SUMITA】: What a small world! I was surprised to hear you mention his name here. He was very supportive of us when he was in Season of Mist. I was invited to his wedding in Iceland and we all went to celebrate with him. Of course there’s a lot of business networking, but at the same time I think it’s important to have networking outside of business.
In fact, the kind of music we do does not always make us a lot of money and we are not just in it for the profits. There are many aspects where we are motivated by the “metal network”. And this is a scene where those who “like” each other work together organically through mutual trust and friendship.
We are fortunate to have been able to work in such a situation for many years, and it has encouraged us to move forward. It is only through mutual respect that we are able to move forward.

Q3: 実は、弊誌の黎明期に最もお世話になって気にかけて下さったのが、当時 Season of Mist の Gunnar Sauermann さんで、彼が音楽や人間性をいつも大絶賛していたのが DEFILED だったんです。そうしたご縁も感じつつ SNS を眺めていると、DEFILED は人との繋がりやシーンをとても 大事にされている印象があります。ツアーでは、非常に多くの場所を回っていますし。デスメタルという “アンダーグラウンド” な音楽を長く続けてきた中で、”つながる” ことはやはり DEFILED にとって大切で、前へ進む力になってきたのでしょうか?

【SUMITA】: なんと世間は狭いのでしょう!ここで彼の名前を聞くとは驚きました。彼はレーベル在任時に、私たちをとてもサポートしてくれました。アイスランドでの彼の結婚式に招待され、バンドのメンバー全員でお祝いに行きました。もちろんビジネス上のつながりもたくさんありますけれど、同時にビジネスを超えたつながりを持つことも大切だと思います。
実際、私たちがやっているような音楽は、必ずしも大金を稼げるとは限りませんし、利益のためだけにやっているわけでもないです。「人とのつながり」が原動力になっている面もたくさんあります。そして、「好き」者同士が、互いの信頼と友情によって有機的に連携するシーンでもあります。
私たちは幸いなことに、長年そのような状況で仕事をすることができ、それが私たちの前進を促してきました。お互いを尊重し合ってこそ、前進できます。

Q4: I know you’ve been based in Okinawa for the past 10 years. I like to travel around the islands of the Seto Inland Sea. And I know the pros and cons of living on an island, such as isolation, distance limitations, and cultural differences. Can you tell us why you moved to Okinawa and why you moved back to Tokyo?

【SUMITA】: The islands of the Seto Inland Sea! They must be so beautiful! I would like to visit those islands someday. The cultures of the islands must be unique and very interesting.
As for how I moved to Okinawa from Tokyo, I would like to tell you my story honestly with apologies and repentance. The Great East Japan Earthquake in 2011 broke my heart and I ended up moving to Okinawa by accident.
The earthquake happened on the first day of our tour in Japan for our fourth album “In Crisis”, and although we managed to perform in Nagoya on the first day and Osaka the next day, the devastation was so huge that the whole country was in a mood of self-restraint and unable to perform gigs.
There were also power shortages due to extensive damage, and there was negative atmosphere that venues would also be targeted for condemnation. We had to cancel all the dates after the third day in Tokyo. Although it was unavoidable under the circumstances, it was a huge disappointment and setback for me.
I am ashamed to say that I panicked when the Fukushima nuclear power plant exploded and temporarily evacuated to Okinawa, where I have lived for the past 10 years. I am sorry to reveal this a personal story, but my father was from Hiroshima, and I knew about the deaths of my relatives from the atomic bombing, so I was very traumatized by radiation.
When I moved to Okinawa, I felt that the network and trust that I had built up over the years in Tokyo had been lost once and for all. In the end, I had to take responsibility for my panic evacuation, and I don’t want to make excuses, but I have accepted all the criticism and ridicule in the scene. In fact, I was in Okinawa for the first time in 2011, and I felt it was a completely different circumstance with Tokyo.
However, “tough times bring opportunities,” and there are great environments in Okinawa that you don’t find in Tokyo or other parts of mainland Japan, one of which was the private studio. It’s a freezer building converted into a studio. It’s located in Kokuba, Naha City (behind Okinawa University) and the rooms were shared by local bands. I contacted the boss of the studio and got a slot for one day a week to set up our own equipment and rehearse. Eventually we were able to rent a whole studio room on the top floor of the same building where we could rehearse and record with our own gear 365 days a year.
The line-up of the “In Crisis” era dissolved due to my moving to Okinawa after the European tour in May 2011. The Hamada brothers, who moved from Okayama to Okinawa, joined the band in August 2012. After they joined us, we spent every day rehearsing, chilling on the beach and enjoying local Okinawan street food. It was our dream time. Such a dream time came to an end with the demolition of the studio building due to its decrepitude at the end of 2018.
The Hamada brothers were originally supposed to move to Tokyo with me, but due to massive flooding from the heavy rain disaster in western Japan in the summer of 2018, which caused extensive damage to their parentshouse, they moved back to Okayama at the end of 2018.
Although our private studio was gone, I still liked Okinawa, and I lived a dual life in Tokyo and Okinawa from 2018 to the end of 2020, keeping my rented room and car in Okinawa.
There has been a “yuimar” spirit, a culture of helping each other, among Okinawa natives since ancient times. I have been helped by many locals and have learned a lot from them. Okinawa is already my second home. I am grateful for Okinawa, and I miss Okinawa very much.

Q4: DEFILED といえば、長く沖縄を拠点としていたことも有名ですね。私は瀬戸内海の島々を回るのが趣味なので島の良さは身に染みてわかるのですが、一方でやはり距離的な制約や文化の違いもありますよね。沖縄に行こうと決めた理由と、東京に拠点を戻した理由を教えていただけますか?

【SUMITA】: 瀬戸内の島々!いいですね!私はいつかそれらの島々を訪問してみたいと思っています。島の文化というのは独自のものがあり大変、興味深いです。
沖縄に居を移した経緯ですが、今だからこそ謝罪と懺悔の意味も込めて正直にお話をします。2011年の東日本大震災でなんか心がポキっと折れてしまい、成り行きで沖縄移住になりました。
震災は私達の4枚目のアルバム”In Crisis”の国内ツアー初日に起き、初日の名古屋と翌日の大阪はなんとか敢行しましたがその後は甚大な被害も明るみになり、ライブどころではない自粛ムードが全国を覆いしました。
電力も足りていないという話もあり、ライブハウスの稼動も非難の標的になってしまうようなピリピリ感がありました。3日目の東京以降の日程は、すべてキャンセルせざるをえませんでした。状況的にやむなしだったとはいえ、私としては大いなる失望と挫折でした。
福島原発が爆発してお恥ずかしながらパニックになり、沖縄に一時避難してそのまま10年、というのが本当のところです。個人的な話になり恐縮ですが、私は父が広島の人間で親族の原爆による被爆死も知っていたので放射能に大きなトラウマがありました。
沖縄に移ったとき、東京で長年築き上げてきたネットワークや信頼が一挙に失われた気がしました。結局、パニックで避難したのは自分の責任ですし、言い訳をする気はありません。シーンの中での私への批判や嘲笑はすべて受け入れてきたつもりです。実は私は2011年に初めて沖縄に来まして、東京とは違い完全に異世界でした。
しかしピンチはチャンスではないですが、沖縄には東京をはじめ本土にはない素晴らしい環境もあり、その一つがプライベート・スタジオでした。那覇市国場(沖縄大学の裏)にある元冷凍庫だった建物を強引にスタジオ化した場所があり、そこをローカルなバンドがシェアしていました。そこの胴元にコンタクトをとり、私達も自身の機材をそこに常設して練習できる曜日の枠をもらいました。そして最終的には私達専用のスタジオ部屋を同建物の上層階で借りる事ができ、365日いつでも自分たちの機材でリハーサル、レコーディングできる環境を構築しました。
アルバム”In Crisis”期のラインナップは欧州ツアー後、私の沖縄移住もあり、惜しくもバラバラになってしまいました。そんなピンチを救うべく岡山から沖縄に引っ越してきて加入してくれたのが今の濵田兄弟です。彼ら加入後は毎日のようにリハーサルと海と沖縄B級グルム探訪でした。そんな夢のような日々もスタジオの建物の老朽化による取り壊し決定により終止符を打たれました。
2018年末で取り壊しという事で濵田兄弟は当初は私と東京に一緒に移る予定でしたが、2018年の夏に西日本大雨災害の洪水で彼らの実家が甚大な被害を受けた事もあり彼らは岡山に戻りました。
私はプライベート・スタジオがなくなっても沖縄が好きで未練があり、2020年末までは賃貸住宅と車は沖縄に残し二重生活をしていました。
沖縄には”ゆいまーる精神”があり助け合う文化です。沖縄で沢山の人に助けられ多くの事を学びました。沖縄はすでに私にとって第二の故郷といいますか、望郷の念があります。そして感謝の気持ちがあります。

Q5: “Horror Beyond Horror”, which means that the current world, the current reality is much scarier than fictional horror, right? It’s a great title, isn’t it? While many death metal bands deal with horror movies and gore, you deal with the corruption, absurdity and oppression of society and reality. In terms of attitude you seem to be more hardcore. Do you support the recent crossover of death metal bands dealing with social issues?

【SUMITA】: Thank you for your intelligent analysis. It has been more than 30 years since the death metal genre was born, and the variation of lyrics and perspectives within the genre has diversified and expanded. I think it is good for the growth of the genre to have lyrics expressed from different angles as well as musicality. There are many hardcore, crossover and thrash metal bands that sing directly about social issues, and as a fan of those bands, I have no qualms about incorporating such lyrics into my own band.
Of course, death metal is a genre where bands based on horror movies and gore are mainstream. As far as lyrics go, I personally feel that it is not necessary to stick to gore at all. It depends on how you define the ideology of death metal, and it can be controversial, but I personally support death metal bands that deal with social issues.

Q5: “Horror beyond Horror”。素晴らしいタイトルですよね。”ホラーを超えたホラー”、つ まり、今の世界、今の現実の方がフィクションのホラーよりもよっぽど恐ろしくなっているという意味ですよね? 多くのデスメタル・バンドがフィクションやファンタジーのホラー、グロテスクな腐敗を描くのに対して、DEFILED は現実や社会における腐敗や不条理、抑圧を描くことを恐れません。そうしたテーマやスピリットという意味では、むしろハードコアに近いようにも感じます。近年、クロスオーバーが進み、そうした社会的テーマを扱うデスメタル・バンドが増えてきたことについては、やはり歓迎されているのでしょうか?

【SUMITA】: 聡明な分析をありがとうございます。デスメタルというジャンルも勃興からすでに30年以上の歳月が経ちジャンル内における歌詞表現、世界観の幅も多様化し広がった感はあるかもしれません。音楽性だけでなく歌詞もいろんなアングルからの表現があるのはデスメタルというジャンルの発展によい事ではないでしょうか。ハードコアやクロスオーバー・スラッシュでは社会的問題などを直接的に歌うバンドも多く、それらのファンだった私にはそういう歌詞を自身のバンドに取り込む事に抵抗感はありませんでした。
勿論、デスメタルはホラー映画などからの世界観を大事にするバンドが主流派ではあるジャンルではあると思います。歌詞や世界観に関しては、それらに固執しすぎなくてもいいのかなと個人的には思います。デスメタルのイデオロギーをどう定義するかにもよりますし、突っ込むと結構、深い議論になりますが、社会的テーマをどういう表現であれ取り込むデスメタル・バンドが増える事は個人的には歓迎しています。

Q6: “Horror Beyond Horror” was inspired by George Orwell’s novel “1984″, right? Thrash metal giants METALLICA were also influenced by this novel, and unfortunately the foresight of a dystopia of totalitarianism, censorship, surveillance and authoritarianism is becoming more and more real every day.
Speaking of thrash metal and dystopia, VOIVOD was also a pioneers in incorporating science fiction into metal. Your music is weird and complex. Did they influence you?

【SUMITA】: The novel “1984″ is the inspiration for the lyrics of many metal bands, and our lyrics are also heavily influenced by “1984”. The interesting thing is that many bands claim to be influenced by “1984”, but if you read their lyrics, they all express themselves differently.
We have our own perspective. As dark entertainment, we write lyrics that can be understood by anyone who reads them. Sometimes our lyrics can be considered political, but we do not support or criticize any particular ideologies.
We believe that the absurdity of the world is something wrong that everyone can feel. We never intended to hurt anyone with our lyrics.
VOIVOD has been one of our main inspirations since we started. They are so unique that we have consciously tried to avoid their influences. We don’t want to imitate them, even on a subconscious level. The lyrics take on more depth and meaning when they relate to real and emerging social issues. This is exactly what we learned from METALLICA and VOIVOD.

Q6: “Horror beyond Horror” はジョージ・オーウェルの小説 “1984” がインスピレーションのひ とつとなっているそうですね? スラッシュの巨人 METALLICA もあの作品に影響を受けたそ うですが、全体主義、そして検閲や監視、権威主義のディストピアという予言は残念ながら あたりつつあります。
スラッシュ・メタルとディストピアといえば、VOIVOD もSFをメタルに取り入れた先駆者 です。彼らの複雑怪奇な音楽やテーマの用い方は DEFILED に影響を与えているのでしょうか?

【SUMITA】: おっしゃるとおりです。小説”1984″は多くのメタルバンドの世界観、歌詞のインスピレーション源になっていますが私達の歌詞も”1984”からの影響は大きいです。ただ面白いのは”1984”から影響を受けたと明言するバンドは多いですが彼らの歌詞を読んでみるとそれぞれ違うんですよね、表現が。
私達は私達なりの解釈と世界観があります。私達は誰が読んでも共感を得られつつあくまでダークなエンターテイメントの範疇で歌詞を書いています。私達の歌詞は政治的とも捉えられますが特定の思想信条を支持したり批判するものではありません。
昨今の社会の不条理は誰もが感じる問題だと思いますのでその範疇で歌詞を収めています。誰もが共感し誰も傷つけない範疇で。
VOIVODはまさに私達がバンドとして始動する時に大きなインスピレーションを受けたバンドの一つです。彼らはあまりに個性が強いため、彼らからの影響が無意識レベルでもそのままの模倣としてでないように意図的にそれらを排除しようとしたほどです。歌詞は現実でも起きつつある社会問題と絡めるとメッセージがより一層、深みと意味を持つようになります。そういった手法はまさにMETALLICAやVOIVODから学んだものと言えると思います。

Q7: Speaking of dystopia, the music market is also collapsing in a dystopian way: The CD market is almost dying and streaming is taking over. Artists who upload 30-second videos to SNS without releasing the full-length album are becoming very popular. Any thoughts?

【SUMITA】: I think there are pros and cons. One thing I can say is that times have changed drastically. How you look at the current situation and how you deal with it is up to you, but I think it is better to look at it in a positive way. The fact that exposure has become easier and the environment has become more appealing to new fans is a positive thing in itself. Even if you have to sell merchandise instead of albums, if you are passionate enough to bring your music to the world, you will try to survive.
Today we have too much information, it’s become common for people to judge their “favorite” songs in a limited time, and there’s a frivolity where people are judged after the first 30 seconds of listening. There are a lot of great songs that cannot be grasped in the first 30 seconds, songs whose quality cannot be appreciated without listening to them several times. I think that skipping over these songs would even lead to a regression of music culture. That is really sad.

Q7: ディストピアといえば、音楽業界の変化もある意味ではディストピアですよね。CD は売れなくなりストリーミングが視聴体験を支配。音源は出さずともSNS で30秒の切り取り動画をアップするアーティストが大きな人気を得ています。そうした変化を住田さんはポジティブに見ていますか? それともネガティブに感じていますか?

【SUMITA】: 両方の面があると思います。一つ言えることは時代は大きく変わったという事です。昨今の状況をどう捉えるか、向き合うかですが、どうせなら前向きに捉えたほうがいいですよね。露出が容易になり新たなファンにアピールできる環境ができた事自体はポジティブに捉えてもよいと思います。CDが売れなくなりアーティストの収益が大幅に下がりましたがそれでも自身の音楽を世界の人々に届けたいという情熱があれば、その分はグッズなどを売ってでも音楽の世界で生き残ろうとするものだと思います。
情報過多の中、限られた時間で好みの音楽を選別する慣習ができ、最初の30秒でジャッジされる軽薄な時代になったという憂いはあります。何度も聴かないと良さがわからない音楽、最初の30秒では把握できない音楽の中にも優れた音楽は沢山あります。それらがスキップされる時代になるのは音楽文化の退行にすらつながると思います。それは寂しい話です。

Q8: I listen to “Horror Beyond Horror” a lot and every time I discover something new. There are not many metal albums that incorporate samba and flamenco. It’s a very challenging album. Or rather, your music has always been challenging.
As I mentioned before, you are going to break the “barriers” of death metal, hardcore, thrash metal and many other types of music. It’s great. I especially like the title track “Horror beyond Horror” and “Trojan Horse”.
The crazy, off-kilter rhythmic approach of the title track “Horror beyond Horror’ is even closer to CONFESSOR than MESHUGGAH. In fact, DEFILED is a band with very complex rhythms and stop-and-go. Do you transcribe in your songwriting?

【SUMITA】: I am glad to hear you say that our music is even closer to CONFESSOR than MESHUGGAH. I think you analyze music deeply and accurately. Thank you for your compliment on our songwriting.
Regarding your question about the transcription, in our case, in the process of arranging songs, we tentatively transcribe them as a basic briefing among the members, we mainly check the composition verbally while jamming, so we do not do the final transcription at that process. Since the recording is the final process, transcriptions are necessary to prevent discrepancies in interpretation among the members.
We are not transcription supremacists, although there are many things we have noticed after transcribing. Ironically, we have often found that players who need scores to learn songs are less able to analyze the songs than those who cannot read scores. There are technical metal players who do not use scores, but this is because they have good ear-copying and memorization skills.
As you know, rock and metal bands are not like orchestras, just a simple band of 4 or 5 players at most, it depends on the ability of the players and the texture, but in many cases it is not necessary to transcribe. I think it depends on the band and the music they play.
In our case, the scores are only used for a rough briefing and final reminder, and only as a complementary tool for efficient and safe communication among us, not as a necessary tool for writing and learning songs.

Q8: “Horror beyond Horror” を何度も聴いているのですが、聴くたびに新たな発見がありま す。サンバやフラメンコの響きまで取り入れたメタルはそうそう存在しませんよね。非常に挑戦的なアルバムです。というよりも、DEFILED の音楽はこれまでも常に挑戦的でした。
先ほど述べたように、デスメタル、ハードコア、スラッシュメタルはもちろん、様々な音楽の “壁” を壊すことに躊躇がない ですよね。素晴らしいです。私は特に、タイトル・トラックと “Trojan Horse” が気に入っています。
タイトル・トラックのような、”MESHUGGAH よりもCONFESSOR” な狂気のオフキルターなリズム・アプローチが実にクールです。実際、DEFILED は非常に複雑怪奇なリズムとストップ&ゴーな展開が多いバンドですが、制作過程ではキッチリと譜面を作られているんですか?

【SUMITA】: “MESHUGGAHよりもCONFESSOR”というお言葉は嬉しいです。質問者様は深く鋭く音楽を聴かれていると感じました。私達の創作へのお言葉もありがとうございます。
採譜についてお答えします。私達の場合ですが、制作過程でメンバー間の楽曲すり合わせとレコーディング前の最終確認して譜面を作成しています。曲の起草、アレンジ段階の途中までは口頭とジャムでの確認が主で譜面を作り込みませんが、最終段階、レコーディングではやはりメンバー間の楽曲解釈の齟齬を防止する上でも採譜は必要になります。
採譜して気がつく事も多いですが、私達は決して採譜至上主義ではないです。これは長年、多くのプレイヤーとやってきての経験からですが、譜面を使わない(使えない)プレイヤーでも楽曲の解析能力は決して低くなく、皮肉な事にむしろ譜面に依存しているプレイヤーのほうが解析能力は低いと感じる事が多々ありました。テクニカルなメタルのプレイヤーでも譜面を使用しない人も少なからずいますが、耳コピー能力と記憶力が高いからこそ故です。
オーケストラではなくせいぜい4人ないし5人のシンプルなバンド編成であれば、プレイヤーの能力次第、楽曲次第ではありますが、譜面が絶対必須というほどではないケースも多いです。バンドによってここは意見分かれるところではあると思いますが。
私たちの場合、楽譜はメンバー間の大まかなすり合わせと最終的な確認に使うだけです。楽譜の使用はあくまで効率的で確実なメンバー間のコミュニケーションのための補助的なツールであり、私達のような楽曲においては必ずしも曲を作ったり学んだりするために絶対必要なツールではないと思います。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED SUMITA’S LIFE!!

It is difficult to choose 5 albums, but if I ask myself to choose the 5 albums for my whole metal life, it would be the following 5 albums.

BLACK SABBATH “Paranoid”

ACCEPT “Restless and Wild”

RUSH “Power Windows”

METALLICA “Master of Puppets”

VOIVOD “Killing Technology”

MESSAGE FOR YOUNG GUNS

Last but not least, do you have any advice or encouragement for young musicians who want to start or continue a metal band?
I am not in a position to give advice to others yet, but I would like to encourage young musicians from the bottom of my heart. I want them to keep their passion for what they love.
There is a big wall between ideal and reality in band work. You will face dilemmas, frustrations and compromises, but if you remember your initial “passion” and persistently keep in mind what you need to do to realize it, you will find a better way. I will leave you with one last word: “Persistence pays off. Thank you very much.

私はまだまだヒトにアドバイスをできる立場でもないです。ですが若い音楽家たちにエールは心から送らせて頂きたいです。好きな事への情熱は是非、持ち続けて欲しいです。
バンド活動は理想と現実に大きな壁があります。挫折と妥協とのジレンマが立ちはだかりますが、それでも初心の「好き」を思い出し、その具現化のためには何をすればよいかという事を念頭に、粘り強く進めていけば、活路は見出されるのではないでしょうか。”継続は力なり”、という言葉を最後に残せたらと思います。ありがとうございました。

YUSUKE SUMITA

DEFILED TWITTER (X)

DEFILED Facebook

SEASON OF MIST

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です