EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NOISE OF KANONENFIEBER !!
“The Topic Of War In The Metal Genre Is Often Handled In a Provocative And Glorifying Way. We Wanted To Create a Contrast To That And Develop a Project That Depicts War In Its Worst Aspects, Serving As a Warning.”
DISC REVIEW “DIE URKATASTROPHE”
「メタル・ジャンルにおける戦争の話題は、しばしば挑発的で美化された方法で扱われているという点で意見が一致した。私たちはそれとは対照的に、戦争を最悪の側面から描き、警告の役割を果たすようなプロジェクトを展開したかった。戦争における苦しみと死は時を経ても変わらないものだから、今日の世界の緊張に照らしても特に適切なテーマだと思ったんだ」
例えば、SABATON や ACCEPT のように戦争の英雄譚を語るメタル・バンドは大勢います。それはきっと、メタルならではの高揚感や攻撃性が、勇壮な勝利の物語と素晴らしくシンクロするからでしょう。
しかし、彼らの描く戦争はあくまでファンタジー。ファンタジーだからこそ、酔いしれることができます。実際の戦争にあるのは、栄光ではなく悲惨、殺人、残酷、無慈悲、抑圧に理性の喪失だけ。誰もが命を失い、魂を失い、人間性を失う。だからこそ、戦争の狂気を知るものが少なくなった時代に、KANONENFIEBER はその狂気を思い出させようとしているのです。
「KANONENFIEBER の真正性は、大衆に理解されやすいことよりも私にとって重要なことだから。私の英語力では、兵士たちのスラングを正確に伝えることはできないんだ。そして、もうひとつの重要な要素は、私が扱う手紙や文書がドイツ語で書かれていることだ。私はそうした兵士の手紙や文書をもとに歌詞を書いているし、多くの文章を直接歌詞に取り入れているからね。だから、KANONENFIEBER にドイツ語を使うのは論理的な選択だった」
KANONENFIEBER がその “教育” や “警鐘” の舞台に第一次世界大戦を選んだのは、そこが産業化された大量殺戮の出発点だったから。そして、”名もなき” 市井の人や一兵卒があまりにも多く、その命や魂を削り取られる地獄のはじまりだったから。
だからこそ、彼らは戦争の英雄、戦争を美化するような将校やスナイパーではなく、数字や統計で抽象的に描かれてきた名もなき弱者を主人公に選びました。顔のない被害者たちに顔を与える音楽。そのために KANONENFIEBER の心臓 Noise は、当時の残された手紙や文献、兵士の報告書をひとつひとつ紐解き、心を通わせ、バンドの歌詞へと取り込んでいきました。
そうして、”Die Urkatastrophe” “原初の災難” と名付けられたアルバムには、採掘チームが戦線の地下にトンネルを掘り進めた苦難や(”Der Maulwurf”)や、オーストリア=ハンガリーがロシア軍からリヴィウ/レンベルクを奪還した地獄の戦い(”Lviv zu Lemberg”)といった真実の戦争が描かれることとなりました。
「デスメタルとブラックメタルは、私たちが選んだ戦争を最悪の側面から描くというテーマにとって最高の音楽的出口だ。これほど危険で抑圧的なサウンドでありながら、同時に雰囲気があってメランコリックなジャンルは他にないと思う。それに、私はこうしたジャンルにいると単純に落ち着くというのもあるね」
そしてそのストーリーは、凶悪さと物悲しさを併せ持つ、ほとんど狂おしいほどのエネルギー、メタルというエネルギーによって紡がれていきます。Noise のカミソリのような叫びや地を這う咆哮は兵士や市民の恐怖を代弁し、パンツァーファウストのように地鳴りをあげるトレモロに夕闇の荘厳とメランコリーが注がれていきます。そうして流血、死、絶望にまつわる物語の糸は戦場エフェクトや話し言葉の断片によって結ばれ、アルバム全体を有機的にあの暗黒の1910年代へと誘っていきます。
我々はこの狂気の嵐の中から、当時の戦災者の言葉から、戦争の非道、虚しさ、地獄を読み取らなければなりません。安全な場所から大きな声で勇ましい言葉を吐く英雄まがいほどすぐ逃げる。彼らは決して自分の体は張りません。だからこそ、KANONENFIEBER は匿名性を貫き、顔の見えない負けヒーローを演じ続けるのです。
今回弊誌では、Noise にインタビューを行うことができました。「私の家から車で10時間もかからないところで、戦争が起こっている。過去の領土主張をめぐって、人々が残忍にも他人を殺しているんだ。私には理解できない。私は政治的な教養があるわけではないし、政治的な対立について議論しようとは思わない。しかし、何事も暴力が解決策であってはならないと信じている。すべては言葉を交わすことと、譲り合いによって解決できるはずなんだ」ANGRY METAL GUY で滅多に出ない満点を獲得。どうぞ!!
KANONENFIEBER “DIE URKATASTROPHE” : 10/10
INTERVIEW WITH NOISE
Q1: There are many metal bands that deal with the theme of war, but few of them deal with the nameless people whose dignity, souls, and lives were taken by war like yours. I think it’s wonderful! How did you arrive at such a theme?
【NOISE】: I’m glad you like our concept! I was sitting down with a historian friend of mine (Dani B.) over a cup of coffee. We were chatting about the pros and cons of the local metal scene and came to the conclusion that there should be a band that deals with the subject of war, but without glorifying it. Dani and I agreed that the topic of war in the metal genre is often handled in a provocative and glorifying way. We wanted to create a contrast to that and develop a project that depicts war in its worst aspects, serving as a warning. This is especially relevant in light of today’s foreign policy tensions, as the suffering and death in war remain the same.
Q1: 戦争をテーマにしたメタルバンドはたくさんありますが、あなたたちのように戦争によって尊厳、魂、命を奪われた名もなき人々を主役として扱ったバンドは少ないですよね。素晴らしいと思います!どうやって、こうしたテーマにたどり着いたのですか?
【NOISE】: 私たちのコンセプトを気に入っていただけてうれしいよ!歴史家の友人(ダニ・B)とコーヒーを飲みながら話していたときのことだ。地元のメタル・シーンの長所と短所について話しているうちに、戦争というテーマを扱いながらも、それを美化しないバンドがあるべきだという結論に達したんだ。
ダニと私は、メタル・ジャンルにおける戦争の話題は、しばしば挑発的で美化された方法で扱われているという点で意見が一致した。私たちはそれとは対照的に、戦争を最悪の側面から描き、警告の役割を果たすようなプロジェクトを展開したかった。戦争における苦しみと死は時を経ても変わらないものだから、今日の世界の緊張に照らしても特に適切なテーマだと思ったんだ。
Q2: The stories of the nameless victims of war remind us of those of us today, and we can relate to them very well. That there is no glory in war, and that war must never happen again. Is (death, black) metal the right tool to tell these stories?
【NOISE】: I completely agree with you. In my opinion, death and black metal are the best musical outlets for the themes we’ve chosen. I don’t think there are any other genres that sound as dangerous and oppressive, while also being atmospheric and melancholic at the same time. Plus, I just feel at home in these genres.
Q2: 名もなき戦争の犠牲者たちの物語は、現代の私たちを思い起こさせ、大いに共感できるテーマです。戦争に栄光はないこと、戦争は二度と起こしてはならないこと。デスメタルやブラックメタルは、そうした物語を語るのにふさわしいツールにも思えますね?
【NOISE】: まったく同感だ。私の意見では、デスメタルとブラックメタルは、私たちが選んだ戦争を最悪の側面から描くというテーマにとって最高の音楽的出口だ。これほど危険で抑圧的なサウンドでありながら、同時に雰囲気があってメランコリックなジャンルは他にないと思う。それに、私はこうしたジャンルにいると単純に落ち着くというのもあるね。
Q3: I understand that one of the things that awakened you to such warnings and education was your great-grandfather’s diary about World War II. However, you are basically describing World War I. Why is that?
【NOISE】: The First World War was like the starting point for industrialized mass killing. Additionally, very little is said about this horrific war today, even though it laid the foundation for modern warfare. When I was in school, many history lessons were dedicated to the Second World War, but only a handful to the First World War. It’s important to me to bring the events of the First World War back into people’s memory.
Q3: そうした警告や警鐘、教育に目覚めたきっかけのひとつが、第二次世界大戦に関するあなたの曾祖父の日記だったと理解しています。しかし、あなたは作品では基本的に第一次世界大戦についてを描いていますね?
【NOISE】: 第一次世界大戦は、産業化された大量殺戮の出発点のようなものだからね。加えて、近代戦争の基礎を築いたにもかかわらず、この恐ろしい戦争について今日語られることはほとんどない。私が学生だった頃、第二次世界大戦に特化した歴史の授業は多かったが、第一次世界大戦についてはほんの一握りだった。だから、第一次世界大戦の出来事を人々の記憶に取り戻すことは、私にとって重要なことなんだよ。
Q4: Perhaps your message might be better conveyed to the world if you sing in English. Why do you still sing in German?
【NOISE】: The authenticity of Kanonenfieber is more important to me than being easily understood by the masses. My English simply isn’t good enough to accurately convey the soldiers’ slang. Another key factor is that the letters and documents I work with are written in German. Since I incorporate many passages from these letters directly into my lyrics, using German for Kanonenfieber was the logical choice.
Q4: あなたのメッセージは、もしかしたら英語で歌った方が世界に、多くの人に伝わるかもしれませんね。それでもドイツ語で歌うのはなぜなんですか?
【NOISE】: KANONENFIEBER の真正性は、大衆に理解されやすいことよりも私にとって重要なことだから。私の英語力では、兵士たちのスラングを正確に伝えることはできないんだ。そして、もうひとつの重要な要素は、私が扱う手紙や文書がドイツ語で書かれていることだ。私はそうした兵士の手紙や文書をもとに歌詞を書いているし、多くの文章を直接歌詞に取り入れているからね。だから、KANONENFIEBER にドイツ語を使うのは論理的な選択だった。
Q5: Despite these many reminders, even today there have been major wars, and oppression and division have not disappeared. Is the path humanity has taken the wrong one?
【NOISE】: Less than a 10-hour drive from my home, a war is taking place. People are brutally killing others over territorial claims from the past. I just can’t understand it. I’m not politically well-educated, and I would never presume to discuss political conflicts. However, I believe that violence should never be a solution. Everything can be resolved through words and compromise.
Q5: ただ、こうした警鐘が多く鳴らされてきたにもかかわらず、今日でも大きな戦争があり、抑圧や分断はなくなっていません。人類の歩んできた道は間違っていたのでしょうか?
【NOISE】: 私の家から車で10時間もかからないところで、戦争が起こっている。過去の領土主張をめぐって、人々が残忍にも他人を殺しているんだ。私には理解できない。私は政治的な教養があるわけではないし、政治的な対立について議論しようとは思わない。しかし、何事も暴力が解決策であってはならないと信じている。すべては言葉を交わすことと、譲り合いによって解決できるはずなんだ。
Q6: Japan also took part in the World War, and the nameless people suffered tragically. The “Kamikaze” suicide attacks by soldiers were particularly inhumane, but there are still many who revere them. How do you feel about such illusions and propaganda created by war?
【NOISE】: So-called “heroic deeds,” such as Kamikaze pilots or the suicide mission at the fortress of Osowiec in August 1915, which went down in history as the “Battle of the Dead Men,” are certainly very impressive. The total sacrifice and the willingness to give one’s own life is, from an outside perspective, the ultimate form of devotion. There are no better propaganda tools than these self-sacrificing protagonists.
What do I think of it? Well, let’s put it this way: personally, I can only imagine giving my life in the defense of my loved ones. Anything else is unimaginable to me.
Q6: 日本も世界大戦に参加し、名もなき人々が悲惨な目に遭った国のひとつです。特に兵士による特攻 “カミカゼ” は非人道的な作戦でしたが、いまだにその指令を肯定し、崇拝する人も少なくありません。こうした戦争が生み出す幻想やプロパガンダについて、あなたはどう感じていますか?
【NOISE】: カミカゼパイロットや、”死者の戦い” として歴史に残る1915年8月のオソヴィエツ要塞での特攻作戦など、いわゆる “英雄的行為” は確かに非常に印象的だ。完全な犠牲を払い、自らの命を捧げようとする姿勢は、外部から見れば究極の献身に見える。こうした自己犠牲的な主人公たちに勝るプロパガンダの道具はないよ。
さて、私はそれをどう思うだろうか?個人的には、愛する人を守るために自分の命を捧げることしか想像できない。それ以外のこと、家族以外の他人に命を捧げるなんて私には想像もできないよ。
Q7: Your stages are also impressive, with trenches and cannons. And you are dressed in military uniforms and masks. Why do you dress like this on stage?
【NOISE】: With our show, I’m trying to bring the reality of war to the stage. For that, the stage props and outfits you mentioned are essential. Our show should be perceived more like a musical than a typical metal concert. In the future, we will incorporate more theatrical elements into the performance to depict the suffering and death in war even more effectively. Because if our show is meant to achieve one thing, it’s this: it should shock and make people think.
Q7: 塹壕や大砲を使ったステージも印象的ですね。そしてあなた自身は軍服とマスクに身を包んでいます。
【NOISE】: 私たちのショーでは、戦争のリアリティを舞台で表現しようとしているんだ。そのためには、君が言及したような舞台の小道具や衣装が欠かせないんだよ。
私たちのショーは、典型的なメタル・コンサートというよりも、ミュージカルのように受け止められるはずだ。将来的には、戦争の苦しみや死をより効果的に描くために、演劇的な要素をもっと取り入れていくつもりだよ。というのも、もし私たちのショーで何を達成したいかと聞かれたら、それは “人々に衝撃を与え、考えさせること” なのだから。
Q8: Finally, can metal be some sort of “antidote” for a world full of violence, discrimination, and oppression?
【NOISE】: No, not an antidote. The true antidote must form in people’s minds. As soon as no one participates in war anymore, there will be no more war. However, I hope that through my music I can provide some food for thought that helps promote this “mental antidote.”
Q8: 最後に、メタルは暴力、差別、抑圧に満ちた世界に対するある種の “解毒剤” となり得ますか?
【NOISE】: いや、解毒剤にはなれないよ。真の解毒剤は人々の心の中に形成されなければならないものだから。誰も戦争に参加しなくなれば、戦争はなくなるんだ。だけどね、私の音楽を通して、この “心の解毒剤” を促進するための思考の糧を提供できればと願っているんだよ。