EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEN SHARP A.K.A. CLOUDKICKER !!
“I Chose “What They Do Is Not Art” Because It Represents Feelings I Have About People Or Groups That Use Music In Grotesque Ways Like, Transparently Peddling Half-Witted And Divisive Political Fads For “Clout,” Or Something.”
DISC REVIEW “SOLITUDE”
「元々は人と一緒に音楽を作るのに疲れていたから、DIY でやり始めたんだ。リフを書いて、それを録音して、自分でMIDIでドラムを加えて、数分で多かれ少なかれ音楽が完成するという即効性が好きだったんだよね。狭い部屋の中でバンドと一緒に音楽を書いて、それを録音するために何ヶ月も何年も待たされるよりも、自分がやっていることの可能性をよりはっきりと見ることができたからね。」
2000年代後半から2010年代初頭にかけて、メタルの世界には明確な変化がありました。Misha Mansoor, Tosin Abasi, Angel Vivaldi, CHIMP SPANNER。ホームスタジオを活用し、制作から販売、プロモーションまですべてを1人でこなすベッドルームミュージシャンの登場は、アーティストになるためのハードルが才能の部分によりフォーカスされただけでなく、多様性と個性の時代の幕開けに様々な音楽活動のあり方を認めた画期的な出来事でした。
その中でも孤高の存在が CLOUDKICKER でした。雲を掴むようなその名前の背後には、Ben Sharp という絶対的な謎を湛えた男が存在し、インタビューを拒んでいた彼について判明しているのは Djent とポストメタルの狭間で真にプログレッシブな音の葉をプロデュース、レコーディングする能力を持っているという事実だけでした。
「”Woum” は2008年の “The Discovery” から始まった “本” の最終章だったんだ。2008年から2015年にかけて僕は多くの音楽的領域を探検し、CLOUDKICKER というプロジェクトが想像していた以上に大きなものになっていくのを見て、自分の愛するバンドの一つ (INTRONAUT) が自分のバンドとして演奏しているツアーにまで行くことができた。」
2008年の “The Discovery” 以来、感情と技術の衝撃的なマリアージュ “Beacons”, ポリリズミックリフをアコースティックな旋律に置き換えた “Let Yourself Be Huge”, シューゲイザー、ポストグランジ、エクスペリメンタルのメルティングポット “Fade”, “Subhume” と CLOUDKICKER はインテンス極まる音楽の多様な旅を続け、後続に計り知れない影響を及ぼし、そして一度は燃え尽きました。
「2016年に娘が生まれたことは、しばらくの間このマシンを一時停止するのに便利な口実だったと思う。だけど実際には、単純にアルバムを作り続けたくなかっただけなんだ。作り続けるっていう、自分自身や他の人からの期待が重くなりすぎたのかもしれないね。」
それでも一度、廻り続ける歯車を停止し、音楽制作のマシンではなく、意欲が湧いた時に創造するアーティスト本来のやり方に立ち返ることで、Ben Sharp は2019年に “Unending” で文字通り本の終幕を破り捨てることができたのです。ただし、その “Unending” は以前の CLOUDKICKER と未来の CLOUDKICKER をつなげる架け橋に過ぎませんでした。
「アメリカでは不安、怒り、恨み、不信感なんかが多く感じられるようになったね。多くの人が無視されたり、無効にされたりしていると感じているようなんだ。自分と道徳的にも哲学的にも敵対していると思う人に対して、コントロールできない感情をコントロールするための方法として怒りをぶつけているようだね。」
巨大な不安に押しつぶされるような “Ludendorffbrucke” の重厚、技術、圧力は “Solitude” という48分の孤独な狂気を無慈悲にも象徴します。互いを記号化し、ただその記号を無意味に追いかけ無意味に歪み合う2020年の暗黒は、Ben Sharp を飲み込み黒い激音として吐き出されました。
「音楽をグロテスクな方法で使っている人やグループに対しての僕の感情を表しているからこの言葉を選んだんだ。よくわからないけど、”権力” のために中途半端で見え透いていて、政治的に流行をあからさまに売り込んでいるアーティストやグループに対しての僕の感情を表しているんだろう。 」
彼らのやっていることは芸術じゃない。MESHUGGAH が映画のサウンドトラックを拵えたような、或いは SIGUR ROS が暗黒面に堕ちたような、感情溢れる闇のサウンドスケープ “What They Do is Not Art” は、人々が途方もない痛みをかかえる世界において、それでも権力に擦り寄り、芸術よりも金や名誉を模索するゾンビアーティストへの怒りと皮肉に満ちた Ben Sharp そのものでしょう。
CLOUDKICKER の冒険は完全に新章へと突入しました。もちろん、メタルの映画監督、盟友 INTRONAUT の Sacha Dunable が2曲に参加したことも、レコードのドラマ性と真実味を高めています。Djent を遠い過去へと置き去りにするポリリズムメタルの新たな到達点、”Code Language” はそうして記号化された思考や解釈、言語の在りようを皮肉にもインストゥルメンタルの迷宮で嘆いてみせるのです。
今回弊誌では、Ben Sharp a.k.a. CLOUDKICKER にインタビューを行うことができました。「MESHUGGAH の “Nothing” “Catch 33” は僕に変拍子を教え、SIGUR ROS の () と EXPLOSIONS IN THE SKY の “The Earth is Not a Cold Dead Place” は僕にインストがボーカルソングと同じくらいパワフルだと教えてくれた。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVE BLANCO OF IMPERIAL TRIUMPHANT !!
“The Masks Are Very Connected To The Art Deco Movement That Grew Up In NYC In The First Part Of The Twentieth Century. That Movement Also Has Many Esoteric Connections That Harken Back Thousands Of Years And Goes Beyond Our Wildest Dreams Of How We May Imagine The Thing We’re Part Of Is Here.”
DISC REVIEW “ALPHAVILLE”
「あのマスクは20世紀前半のニューヨークで育まれたアールデコ運動と密接に関係しているんだ。そのムーブメントは数千年前にさかのぼり、過去と深遠で神秘的な多くのつながりを持っている。そしてそれは、かつて僕たちの一部であったものがここにあると悠久に想いを馳せる、時を超えた夢の形でもあるんだよ。つまり歴史的意義のある魅力的な美学なんだ。」
政治的な対立、忌まわしい暴力、世界恐慌と終末のムードが世界を覆った1920年代。アールヌーボーの華美な装飾は機能的なアールデコへと移り変わり、混沌に触発された前衛的なジャズや実験音楽の先駆けは遂に芽吹きました。
100年の後、現代ニューヨークの多様な喧騒をノイジーなジャズや20世紀の前衛クラシックで再構築したエクストリームメタルで体現する仮面の三銃士 IMPERIAL TRIUMPHANT は、奇しくも1世紀前と等しい創造的な大胆不敵を宿す空想都市 “Alphaville” を世に放ちます。
「”Alphaville” は現在のような状況になる前から構想・制作されていたんだ。だけど社会的な枠組みの中における文明文化や個人の葛藤といった大きなテーマや題材は、今も昔も、そして人類が存在する限り未来においても存在しているのではないだろうか?そうは思わないかい?僕たちはいつも NYC のサウンドを演奏しているんだ。文化的にも僕たちの音楽世界には現在のアメリカの状況が反映されていると思う。」
コロナ禍や気候変動、反知性主義と分断が渦巻く2020年に、IMPERIAL TRIUMPHANT が複雑怪奇なブラック/デスメタルの迷宮で1920年代の復活と再構築を告げたのは決して偶然ではないはずです。そんな非業の “再構築” を象徴するのが、VOIVOD と THE RESIDENTS のカバーでしょう。彼らの手にかかれば、80年代後半のプログスラッシュも、奇妙極まるシンセティックなループも、暴走するブラストビートと混沌としたリズムブレイク、そしてバンド生来の不協和音で現代の闇を生きる不可解な狂気へと引きずりこまれてしまうのです。
もちろん、そんな彼らの歴史を咀嚼した慣習の破壊とも言えるエクレクティックな機能美は、”制限のない作曲プロセス” としてアルバム全編を貫いています。例えば、ドローンから聖歌隊、オルガンまで入り乱れるオープナー “Rotted Futures” はカオスの花園ですし、”Excelcior” では黒の暴走やインダストリアルの嘆きを内包しながら、螺旋を描くベーススケール、エイリアンのコードボイシング、進化したリズムのタペストリーでその本質をジャズ/フュージョンへと設定しています。
「まあ確実に僕たちは、メタル、ロック、ヘヴィーミュージックの複数のカテゴリーに当てはまる多様な音楽的影響を持っているよね。いつかは他のカテゴリーに入るかもしれないね。それが何になるかは分からないけどね!」
つまり、Steve が “グローバルなインテグレーション (分け隔てのない) の時代には、多様な視点がより実りある言説やコミュニケーションを生み出す” と語ったように、IMPERIAL TRIUMPHANT が破壊するのは過去の慣習だけではなく、ジャンルの壁や偏見、凝り固まった思想そのものだったのです。
即興のジャミングと緻密なオーケストレーションを並置した “City Swine” は、そんな彼らのクリエイティブな自由が完全に謳歌された楽曲です。MESHUGGAH の Tomas Haake を従えて、和太鼓とピアノがスラッジの枠組みでジャムセッションを開始する無法の街並は、アヴァンギャルドを熟知する MR. BUNGLE の Trey Spruance, KRALLICE の Colin Marston という共同プロデューサーの手を借りてすべての柵を取り払っていくのです。
そうしてアルバムの後半には、Duke Ellington から Miles Davis のクロスオーバーまでジャズの歴史を横断します。
さて、それではなぜ IMPERIAL TRIUMPHANT はゴダールの SF ノワールをそのタイトルへと選んだのでしょうか。きっとそれは、ニューヨークの文化と歴史を映画のフィルターを通して伝え、”昔ながらの魅力” を容赦のない過激さで歪めるためなのかもしれません。このフランケンシュタインのようなダークジャズと狂気のメタルの下には、階級主義、ファシズム、工業化を中心とした批判的な物語が横たわり、タイトルの由来となった60年代の映画を再現しているのですから。
今回弊誌では、ベース/ピアノ/ボーカルを担当する Steve Blanco にインタビューを行うことができました。「ブルックリンにある道場を見つけて、和太鼓奏者でありオーナーでもある倉島ヒロ先生がレコーディングを許可してくれたんだよ。あの美しい音色は、このアルバムの目的にぴったりと合致していたね。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE STUMP OF ALCATRAZZ !!
“I Hated All That Grunge Shit , There Was No Bad Ass Guitar In It, Just a Bunch Of Dudes In Flannel Shirts And Wool Hats Playing Shit a 10 Year Old Could Play. One Of The Reasons My Early Records Got a Decent Amount Of rpecognition During That Period Was That I Was One Of The Only Guys Making These Kind Of Over The Top Shred Guitar Records During That Time.”
DISC REVIEW “BORN INNOCENT”
「Graham は俺のオールタイムフェイバリットのうち3枚のレコード、”Assault Attack”, “Down To Earth”, “No Parole” で歌っているからね。この3枚のレコードは、それこそ若いころ、盤に穴が空くほどに聴いていたんだけど、今でも大好きなんだから彼と一緒に演奏できるなんて最高だよ。」
サングラスにスーツ、ジャパニーズヤクザの出で立ちでカンペを凝視しデシベルの限界を超える Graham Bonnet は、Yasushi Yokoyama のスピリットでギターの超新星を発掘する天才でもありました。
ALCATRAZZ で若き Yngwie Malmsteen, Steve Vai を掘り起こし、Chris Impellitteri のデビューフル “Stand in Line” でもその野声を響かせた怪人が、そうして34年ぶりの監獄島再浮上に目をつけたギタリストこそ Joe Stump でした。
「Yngwie との比較は嬉しいことだよ。だって俺が Yngwie を愛していることは秘密でもなんでもないからね。彼は俺のヒーローの一人で、最大の影響元だよ。だから誇らしく感じているんだ。」
90年代、鳴り物入りで Shrapnel からデビューを果たした “シュレッド卿” (自分発信) は、そのフルピックを多用するクラシカルな様式美が Yngwie のクローンとしてある種のバッシングを浴びた人物でもあります。
しかし、「俺がイライラするのは、(このスタイルの音楽に関しては無知で無学な人に多いんだけど) 俺の演奏すべてが彼のようなサウンドだけだと言われることだよ。俺は様々な影響を受けていて、それは俺の音楽にはっきりと表れているんだから。」 と自らが言及するように、音聖への愛情を注ぎながら、パワーメタルやスラッシュ、エクストリームメタルとよりダークな音像を湛えた邪悪なギター捌きは、”音速を超えたシュレッドマシーン” “スピードメタルメサイア” といった凡人には到底思いつかない仰々しいアルバムタイトルと共に、その自信と独自性を高めていったのです。
「だって俺はあのクソグランジすべてが大嫌いだからな。あの音楽に超クールなギターなんて全然なかっただろ? ただネルシャツとウールハットを身につけた野郎どもが、10歳でも弾けるようなクソをプレイしてただけさ。俺の初期のレコードがあの時期にそれなりの評価を得た理由の一つは、俺がこの手の限界を超えたシュレッドギターレコードを作っていた唯一の男だったからだ。」
限界を超えていたかどうかは議論が別れるところでしょうが、少なくとも Joe Stump は自らの信念を捨て去ることは決してありませんでした。そんな彼の様式美愛が今回遂に ALCATRAZZ 加入という結果に繋がったとも言えるはずです。
そうして再びネオクラシカルな翼を手に入れた ALCATRAZZ にとって、Jimmy Waldo, Gary Shea の名は実に重要な復活の呪文でした。例えば、2016年に Graham がリリースしたソロアルバム “The Book” はたしかに強力なメンバーを揃えた力作でしたが、それでも ALCATRAZZ と呼ぶに相応しいレコードではありませんでした。それはきっと、あの NEW ENGLAND にも所属した Gary のメロディーセンス、そして何より Jimmy の荘厳なハモンドの響きが欠けていたからに他ならないでしょう。
かつてもビッグフットやクリーナクリーといった UMA を題材としてきた Graham が、遂に北極熊へと焦点を当てた “Polar Bear” は、最も名作 “No Parol” の厳かな躍動を運ぶ楽曲かもしれませんね。”Too Young To Die, Too Drunk To Live” の刹那と熱情が瑞々しく蘇ります。
「ALCATRAZZ としても初期の “No Parole” なヴァイブを取り戻したがっていたからね。ただし、より邪悪でメタルな感覚を宿しながらだけど。」
もちろん、”Born Innocent” は単なる焼き直しのアルバムではありません。Chris Impellitteri がゲスト参加を果たしたタイトルトラックにしても、より硬質でダークなサウンドデザインが施行され34年のギャップは巧みに埋められていきます。
おそらく、Yngwie は “No Parol” の時点ではまだ入念にギターソロを構築しており一音一音に神々しささえ感じさせましたが、90年代中盤以降の Yngwie が乗り移ったような荒々しい Joe のギターの濁流も、よりイーヴルな”無垢の誕生” には適しているのかも知れませんね。
“We Still Remember” や “I am the King” を聴けば、Graham のメジャーコードの魔術師たる由縁が伝わるはずです。ポップ畑を通過した彼だからこそ映える、プログレッシブなアレンジメントも嬉しい限り。
さらに、Steve Vai が作曲を行った “Dirty Like the City” では、あの奇天烈ハードロック “Disturbing The Peace” の片鱗を感じることができますし、日本のライジングサン Nozomu Wakai が大暴れの “Finn McCool” は MSG や RAINBOW のハイスピードバージョンと受け取ることも可能でしょう。何より、”Reallity” はハリウッドの孤独に通じる佳曲です。”Hiroshima Mon Amour” の遺産を受け継ぐ歴史ソングは、ロンドンの大火を紡ぐ “London 1699″。
今回弊誌では、Joe Stump にインタビューを行うことができました。「俺はいつも演奏し、練習し、作曲し、レコーディングを行なっている。そうしたくても、そうしたくなくても、1日に6時間以上は必ずギターを手にしているよ。幸運なことに、俺は今でも若いころと全く同じようにギタープレイを愛しているから。」 発言すべてが一周回ってカッコいいです。どうぞ!!
“I Don’t Want My Face To Be The Face Of Static-X. That Seems Very Wrong. I Don’t Want My Name To Be At The Center. Xer0 Is a Figure, a Character, An Entity. I Believe That This Serves Static-X The Best. My Goal Has Always Been To Do What Is Best For Static-X.”
DISC REVIEW “PROJECT REGENERATION VOL.1”
「このアルバムが実際に出るまで、誰も STATIC-X を2020年に蘇らせることが可能だなんて思ってもいなかったよね。だけど実際、その不可能が実現したんだよ。」
悲劇の灰から立ち昇る再生の紫煙。予期せぬ喪失に吹き込まれる新たな生命。インダストリアルメタルに革命をもたらした20年の後、STATIC-X は Wayne Static の悲劇的な死とともに、永遠の沈黙に包まれる運命だと誰もが思っていました。
しかし、傑作 “Wisconsin Death Trip” を創成したオリジナルメンバーの団結、Wayne Static の遺した遺産、そして Xer0 という Wayne の魂を宿す亡霊によって、STATIC-X は Nu-metal/インダストリアルメタルの象徴に恥じない新たな一歩を踏み出したのです。
「僕の顔が STATIC-X の顔になるのは嫌だったからね。それは途方もなく間違ったことに思えたよ。自分の名前を中心にしたくないんだ。Xer0 は姿であり、キャラクターであり、存在である。 それが一番 STATIC-X のためになると思っているんだよ。僕の目標は常に STATIC-X にベストなことをすることなんだ。」
この世から姿を消したにもかかわらず、STATIC-X は今でも Wayne Static のプロジェクトであることは明らかです。それほどまでに、彼のビッグロックボイスとインダストリアルエナジー、そして重力に逆らったヘアスタイルのカリスマ性は際立っていました。
実際、SLIPKNOT, SYSTEM OF A DOWN, KORN, COAL CHAMBER といったメタルの新たな波が台頭し花開いた90年代後半、インダストリアルを基調にヘヴィーなディスコトリップを展開する STATIC-X の “Evil Disco” は完膚なきまでにあの時流へ符号していました。
そして、個性際立つ Nu-metal サーカスの中でも、フレディー・クルーガーの出で立ちで逆重力ヘアを纏い、映画と漫画のキャラクターを行き来しながら、共産主義から薬物乱用まで吐き綴る Wayne の存在感は遂に “Wisconsin Death Trip” のセールスをミリオンにまで導いたのです。
ゆえに、プロデューサー、パフォーマー、そして伝説の声を補う存在としてバンドに加わった Xer0 は文字通り、自らの存在感をゼロとして Wayne のマスクを被り STATIC-X の一部分に成りきりました。
「1999年の、STATIC-X お馴染みのビジュアル的な存在感を表現したかったんだよ。だからこそ毎晩スパイクヘアにしたんだ。ファンには、1999年に戻ったかのような、邪悪で斬新なタイムワープをしているような気分になってもらいたかったんだよ。そのためには、僕の “顔がない” ことがどうしても必要だったんだ。」
傑作の20周年を祝う旅路を終えた後、STATIC-X は “Project Regeneration Vol.1” と名付けられたプロジェクトに着手し、万難を排して新たなアルバムを世界へと放ちました。それはまさしく “再生” の道程。
Wayne の遺したデモテープを発掘し、Xer0 の声と手術でボーカルラインを繋ぎ、Tony, Ken, Koichi の偉大なトライアングラーは新たにレコーディングを行い楽曲に命を吹き込みます。完成したレコードは、当然ながらパッチワークの域を超えたノスタルジーとエナジーのダイナミックな泉でした。
チャンキーでメソジカルなビート、不気味なダウンチューンに近年再評価を受けつつあるアグロテック。MINISTRY の Al Jourgensen まで巻き込んで、これほどダンスとヘッドバンキングを両立させる音世界は彼らにしか作り得ない魔窟でしょう。Nu-Metal のダークサイドを投影した邪悪で斬新なディスコの復活です。
「多くの人が知っていると思っていると思うけど、実際には誰も何も「知っている」人はいないんだよ。憶測はたくさんあるけど、僕はそのどれにも興味は無いよ。もし僕が自分の正体を明かすことに決めたら、自分のやり方でそうするだろうね。自分がその権利を得たと信じているから。」
今回弊誌では、Xer0 にインタビューを行うことができました。一部では DOPE の鬼才 Edsel Dope ではないかとも囁かれていますが、どうなんでしょう。「Wayne は僕の友人だった。そして何より、アーティストとして、僕が信じられないほどのリスペクトを捧げている人物さ。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SHELBY LERMO OF ULTHAR !!
“None Of Our Lyrics Are Actually About H.P. Lovecraft, To Call The Album That Too. I Think There’s a Little Bit Of Lovecraft Influence In The Patterns Of Our Lyrics, But At This Point, I Think People Kind Of Assume We Are This “Lovecraft Band”, When Really, We Don’t Have That Much Attachment.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DOUG MOORE OF PYRRHON !!
“A Good First Step In Driving Bad Actors Out Of Metal Would Be To Foster a Stronger Appreciation Of Lyrics. It’s Still Very Common To See Metal Fans With Broadly Progressive Values Accepting Truly Vile Ideologies From Bands They Like Because “You Can’t Understand The Lyrics Anyway” And “The Riffs Are Sick, So Who Cares,” And So Forth. Perhaps It’s Worth Paying More Attention To What Your Favorite Band Is Screaming At You.”
“There Are So Many More Professional Women Guitarists Kicking Ass Out There. I’d Rather Think Of It As “Everyone’s Era”, Where Gender, Race, Ethnicity (Or Genre!) Doesn’t Matter…I Hope The Era I Live In Is The One Where The Music Is What Matters.”
“How Did We Get To This Point Where You Think This Asshole Is The Paradigm We Should Aspire To As The Leader Of Our Country? I Think This Shift Started Around The Beginning Of The Anthropocene When Humans Really Started Affecting The Environment In Big Ways.”
実際、Phil が特別敬愛し、インスピレーションを得ていた隣州ニューオリンズが誇る EXHORDER の Kyle は弊誌のインタビューで、「俺たちみたいに、THE METERS, Dr. John, THE NEVILLE BROTHERS, Allen Toussaint みたいなクラッシックなニューオリンズのバンドを聴いて育てば、血や魂までその色に染まることになる。ニューオリンズには偽りなき本物のスウィングとグルーヴが存在するんだ。とは言えそれは沢山のバンドによって真似されているんだけど。そうやってルイジアナ南東部のリラックスしたアティテュードに浸れば、君も南部の男になれるさ。」と語っています。
そして PANTERA の遺志を引き継ぎ、南部の音魂を現代へと繋げるバンド LAMB OF GOD がバージニア州リッチモンドから登場します。かつてアメリカ連合国の首都が置かれた歴史の街は、ブルーグラス、カントリー、オールドタイムストリング、ブルース、ジャズとまさに音魂の坩堝です。そして明らかに、LAMB OF GOD の音の葉はより鮮明にその南部の風とグルーヴにそよいでいるのです。
仮にここ日本において、LAMB OF GOD が PANTERA ほどのネームバリューを得られていないとするならば、おそらくそれは Dimebag のような凄まじいアイコニックなシュレッダーが存在しないからかも知れませんね。とはいえ、それは Mark Morton と Willie Adler の技量が少しでも劣ることを意味しません。いやむしろ、彼ら2人こそがモダンメタルのリフワークを決定づけたと言えるのではないでしょうか。
パワーコードや開放弦のダウンピックが主体であったベーシックメタルのリフはある意味演奏が単調で、シュレッドに比べれば易しいものが多かったと言えるでしょう。彼らはそのギターリフを、ギターソロ並みに難解かつ複雑しかしエキサイティングかつインタレスティングな領域へと昇華した最初のバンドの一つでした。
BETWEEN THE BURIED AND ME, PROTEST THE HERO, MASTODON, PERIPHERY。今でこそ、当たり前となったリズムとシュレッドを複雑に突き詰めた千変万化変幻自在な現代的リフワーク。もちろん、北欧のメロディックデスメタルも遠縁の一つでしょう。ただし、より創造的な雛形は EXTREME の “Cupid’s Dead” だったのかも知れません。Nuno Bettencourt がファンカデリックにしかしプログレッシブにテクニカル極まるリフをつなぎ合わせ、ギターソロと同等もしくはそれ以上のカタルシスを生み出した楽曲は間違いなく多くの後続に影響を及ぼしました。そして次にその試みをより現実的に体現したのが Mark と Willie だったのです。
LAMB OF GOD といえば、Randy Blythe の張り裂けんばかりの咆哮を想起するのは当然ですが、仮にそれがなくても彼らの楽曲は充分に機能します。実際に演奏してみればわかりますが、彼らのリフワークはギタリストにとって手癖のような運指が極力排除されていて、熟練者でも何度かトレースしないと馴染まないような構成になっています。リズムやグルーヴも刻々と変化するなかで、プリングのオンオフや三連符が組み込まれ、さらにダブルギターの魔法を宿しながらモチーフやパターンをいくつも用意して単調さを一分も感じさせないよう非常に計算されて作り込まれているのです。
特筆すべきは高音弦やハイフレットをリフに組み込んで低音とのコントラスト、さらにはメロディーまでも補完している点でしょう。そうして、リズム隊との完璧なコンビネーションでグルーヴという総合芸術を製作していくのです。
さらに言えば、Randy Blythe は “Omerta” のスロウでマスマティカルなグルーヴこそが最もリッチモンドらしい音魂だと語っています。
「リッチモンドは、少なくとも80年代後半から90年代前半にかけては、マスロックと呼ばれていたものの拠点だった。今のマスロックとはだいぶ異なって、それはリッチモンドのハードコア・シーンにまで遡るんだ。 HONOR ROLE というバンドがあって、奇妙な変拍子を得意としていたね。特に伝説のギタリスト、Pen Rollings は BUTTERGLOVE というバンドに転向してヘヴィになったんだ。 その後、彼らは BREADWINNER というインストゥルメンタルバンドになった。スティーヴ・アルビニは彼らのEPをいくつかプロデュースしているんだけど、インストゥルメンタルでありながら、俺も含めて、全員に大きな影響を与えているんだよ。」
LAMB OF GOD の硬質で数学的なインテリジェンスは、古のマスロックが起源でした。そこに先述のブルースやジャズ、ブルーグラスにカントリーといった多様な南部の魂が透けて見えるのですから、LAMB OF GOD こそがモダンメタルの帝王、グルーヴメタルマスターと称されるのも当然でしょう。
Mark Morton に言わせれば、「まず自分たちを驚かせなきゃ。結局、何度も何度も何度も何度も演奏するのは自分たちなんだから、俺らがワクワクしなきゃ。」
つまり、予測可能なことを回避することで LAMB OF GOD はその地位を築き上げてきたのです。NWOAHM などと下らない場所に括られていた時でさえ、彼らはスラッシュとハードコアのルーツを強調していましたし、スクリームとグロウルが武器だと思われていた Randy にしても、徐々にムーディーなクリーンヴォーカルを取り入れていくようになりました。
実際、”Memento Mori” の冒頭には SISTERS OF MERCY の Andrew を彷彿とさせるメランコリックなボーカルと不気味なギターの回廊が刻まれていますし、”Bloodshoot Eyes” にはゴシックと狂気の狭間でさらなる高みを目指す Randy の姿が映し出されています。
「エクストリームメタルの世界で最も滑稽なのは、クリーンボーカルが聴こえた瞬間、誰かが突然家に入ってきて高価な絨毯を台無しにしたかのように気が狂うような人がいることだよ。でも俺は歌えと言われれば歌うんだ。」 Randy の言葉には皮肉が宿ります。
新たなアンセム “Checkmate” の一方で、スタンディング・ロック保留地における石油パイプライン建設に抗議するため TESTAMENT の Chuck Billy を起用し、ネイティブアメリカンの血を汲むそのリアルこそ彼らのやり方。同時に、サイケデリックなベースラインと推進力を宿すギターワークの不思議なダンスが魅力的な “Reality Bath” も、心を揺さぶるレコードのハイライトです。8歳の少女が銃乱射の犯人が闊歩するビルに取り残された描写は息を呑みます。
「高校時代、俺のバージニア州の田舎じゃ子供たちは森の中で狩りをしていたから、そのまま学校に来ていたよ。時には鹿の死体をピックアップトラックの荷台にぶら下げて、銃とガンラックを持って学校に来ることもあったくらいさ。大したことじゃない。誰もがそう考えていた。だけどそんな古き良き少年の一人が銃を持って学校に入り生徒を吹き飛ばし始めるんだ。それが現実だよ。」
LAMB OF GOD とは神の子羊、転じてキリストを指す言葉でもあります。そのバンド名を冠したセルフタイトル “Lamb of God” は文字通り、全てが破綻した欺瞞と分断、そして試練の2020年に様々な意味で福音をもたらすレコードに違いありません。
RANDY BLYTHE
「俺らはみんな死ぬんだ!」COVID-19ウイルスが蔓延し、死者数が増加し続けるアメリカで、人々の日常生活は深刻な混乱に陥っています。LAMB OF GOD の大統領 Randy Blythe はその加熱する報道、恐怖から真実を読み解こうとしています。
「俺らは今コロナウイルスを経験しているけど、数年前はエボラだった。たしかに今はクレイジーだけど、世界には常にそんな理不尽が存在してきたんだ。ただ、現代に生きる俺らはスマホやPCを持っていて、この終わりのない残虐性と恐怖のサイクルを24時間常に受け取り続けることになる。」
新たなグルーヴメタルの金字塔 “Lamb of God” で Randy は、大量殺人、外国人恐怖症、オピオイドの流行から、空虚な消費文化、差し迫った生態系の破壊まで、現代社会を悩ませている様々な問題を掘り下げていきます。
オープナー “Memento Mori” は、コロナに端を発する真偽不明な情報の飽和をテーマとしています。彼自身、ニュースフィードを監視することに夢中になりすぎ、そこから適度な情報の断捨離が精神的、肉体的な健康に不可欠であると気付いたことから生まれた楽曲。
「メディアの中では生きていけないんだ。”Memento Mori” は、目を覚ますことをテーマにしている。目覚めろ!目覚めろ!目覚めろ!と、自分に言い聞かせているんだよ。人に説教しているわけじゃない。Randy に話してるんだ 。気が狂いそうだったからね。」
時事問題に取り組み、人間の本性の暗部に立ち向かうことは、LAMB OF GOD にとって決して新しいことではありません。2000年のデビュー作 “New American Gospel” からずっと、リッチモンドの刃は、その獰猛で技術的にも衝撃的なメタルと、社会的政治的な問題、歪みに対する痛烈な意思表示、そして深い内省を組み合わせてきたのです。
警官による暴力 (“D.H.G.A.B.F.E “) やイラク戦争(”Ashes of the Wake”)、音楽業界のエゴ(”Redneck”)、そして Randy 自身が2012年にプラハで過失致死罪で投獄、裁判、無罪判決を受けた試練(”512″)に至るまで、テーマは多岐に渡ります。そうして彼らの社会を鋭く切り取るナイフは、モダンメタルの先頭に立ちながらグラミー賞へのノミネート、ゴールドディスクの獲得という結果に繋がったのです。
遂にセルフタイトルを冠した新作において、バンドは初の出来事をいくつか経験することになりました。最も重大な出来事は、創設ドラマーの Chris Adler の脱退でしょう。Chris は過去7作すべてで演奏していて、バンドの前身 BURN THE PRIEST としても2枚のアルバム(1999年のセルフタイトル盤と2018年のカバーアルバム “Legion: XX”)を残しています。
2018年、LAMB OF GOD はオートバイ事故で負った怪我のリハビリを続ける Chris のライブにおける代打として、Art Cruz(WINDS OF PLAGUE)をスカウトしました。そして翌年の7月、Randy, ギタリストの Mark Morton と Willie Adler (Chris の弟), ベーシスト John Campbell は声明を発表し、Art が Chris のパーマネントな後任となることを発表したのです。Chris の脱退をめぐる状況については、関係者全員が沈黙を守っています。唯一 Chris が残したのは、「俺はライフワークである音楽を辞めるという決断をしたわけではない。真実は、独創性に欠ける塗り絵を描きたくないだけなんだ。」という言葉でした。
ただし Randy は、Art Cruz を含むバンドの現在の状態がいかに素晴らしいか語ります。
「5人全員が部屋にいる時の共同作業はとても良い雰囲気になっていたよ。俺もこのアルバムでリフを一つか二つ提供したんだ。演奏したんじゃなく、Mark にハミングして聞かせたんだよ。そんな風にお互いの素材を盗むことがたくさんあった。Willie の曲を Mark がハイジャックし、時には Mark がその逆をするんだ。そうやって過去最高の LAMB OF GOD の楽曲たちが生まれたのさ。」
新加入Art について、Randy はどう感じているのでしょう。
「新人だから、やっぱり最初は少し腰が引けていたと思う。しばらく一緒にツアーをしていたけど、俺らは成功していて、高校時代に彼のお気に入りのバンドだったんだ…だから、最初は少し緊張していたと思うけど、すぐに発言するようになったんだよ。それが俺たちが望んでいることだよ。イエスマンは要らないから。その時点でドラムをプログラムした方がいいかもしれないね。でも俺らは彼にChris Adler になって欲しくなかったんだ…彼は Chris とは違うドラマーだから、彼自身の味を出して欲しかったんだ。実際、違うことをたくさんやっている…ドラムオタクは彼はこんなことをやってる…彼は “クリス・アドラー” じゃないと言うだろうけどね。」
とはいえ、Randy はレコードの製作があまり好きではないと告白します。
「俺たちは SLAYER と18ヶ月もツアーをしていたんだ…その合間にMark と Willie はプロデューサーとライティングセッションを重ねていた。それから何ヶ月も休んでいたよ。 戻ってきて、ある程度の距離ができて、それはいいことだと思うんだけど…俺はレコードを作るのが好きじゃないんだ。頭の中が混乱して、消耗してしまうんだ。レコーディングに行くと、体力が消耗して、喉が張り裂けそうになる。歌詞を書くのは楽しいけどね … だから、”Lamb of God” の製作が楽しかったとは絶対に言わないと思うけど、作曲セッションの時の雰囲気は、おそらくバンドの中で最高のものだったと言うことにするよ。」
“Lamb of God” は、Randy が曲を書く前に歌詞の全体的なコンセプトをチャート化した初めての作品でもあります。Randy は政治的な発言をしたいと思っていましたが、特定の個人や政権に自分の歌詞をフォーカスしたくはなかったのです。そこで彼は、友人である 世界的に有名なアルペンクライマーであり、パンクロックマニアでもある Mark Twight の助けを借りて、社会悪の原因や歪みの状況を深く掘り下げていきました。
そうして、”New Colossal Hate “では所得の不平等と差別を、”On the Hook “では大手製薬会社が大衆に中毒性のある薬を飲ませていることを取り上げ、”Poison Dream “では環境を汚染する企業に立ち向かっていきました。
「ドナルド・トランプはもっと大きな問題に巣食う一つの症状に過ぎない。友人の Mark Twight と話していて、『現政権についてのセンセーショナルなレコードは書きたくない』と思ったんだ。彼は王様のように振舞っているから、やることなすこと毎日非難を続けるなんてバカげてる。それよりも俺は、なぜこうなってしまったのか、なぜあんなアホをリーダーに求める国になってしまったのか、こうなることを許した俺たちの意識、現在の環境について掘り下げたかった。」
リードシングル “Checkmate” も強烈ですが個人を対象としたプロテストソングではありませんでした。
「このアルバムには、個人をテーマにした曲は一つもないんだ。 2004年のアルバム “Ashes Of The Wake” の時代、ジョージ・W・ブッシュがいた時は、イラク戦争や大量破壊兵器の神話があったから、彼のことを具体的に書くのは簡単だったけどね。全ては表裏一体なんだ。今人々は政党を政策のためではなく、スポーツチームのように支持しているから。歌詞にはそれが反映されているよ。こんなシステムはまさに詐欺だ。ドナルド・トランプをバッシングするようなレコードを書くのは、むしろ無駄なことだと思うんだ。だから “Checkmate” は共和党のことではないんだよ。むしろ今の両政党がいかに表裏一体の関係にあるかを描いているのさ。」
Randy の中に、歌詞を通して人々を啓蒙したいという思いはあるのでしょうか?
「というよりも、自分で考えてもらいたいんだよ。今、アメリカや他の国でも大きな問題になっているのは、政治的分裂が世界的に広がっていること。誰も個人単位で話をしていないだろ?今の政治の世界には群集心理が強く存在して、それはインターネットにも波及しているんだ。リベラル派は「お前らはネオナチで保守的すぎる」 保守派は「お前らはリベターだ」。俺には小学3年生のように思えるね。大人がオープンな会話をしているようには聞こえない。俺はあんな感じの大規模な集団思考のアイデンティティーが苦手なんだ。でもそれが国民の精神を支配している。」
一つの意見、一つの思想だけでその人物の全て、人格まで憎んでしまう世の中です。
「親しい友人にもトランプに投票したやつがいるけど、彼らはナチスでも人種差別主義者でもない。だから今でも親しいままさ。だけど、グループ思考、群集心理で人を一つのグループにまとめまるから、自分たちが他のグループを非難できるかのように感じてしまう。それが今、大規模に起こっているんだ。意見の合わない人とコミュニケーションをとるのは難しいよ。コンピュータの画面の後ろから、お互いに叫ぶ方が簡単じゃないか?勇気を持って直接会って話をする方がよっぽど心がこもっている。 そうしないと死んじゃうよ…」
誰に向けて歌詞を書いているのでしょう?
「自分のために歌詞を書いているんだ。これは俺の表現で、ファンが好むかどうかは考えていない。ファンを喜ばせるために書き始めたり、ファンが望むことをし始めたら、ボーイズバンドになってしまう。ハリウッドからプロデューサーがきて、適当に受けるソングライターを雇ってね。そうなってしまったら、音楽は偽りになってしまう。」
Randy は “リアリティTV” プレジデントと消費者主義の賛美から、産業革命とその環境への影響までの線を辿り始めました。そのエクセサイズとして、Randy は”社会で問題となっている様々なこと、そして人々がそれらのことに対して声を上げる様々な方法” を取り上げた約17曲の楽曲トピックのリストを作り上げたのです。
ではトランプから産業革命まで遡る、その思考の鍵はどこにあったのでしょう?
「俺は他の皆と同じように、現代文化の中に罪悪感を持っている。なぜならアメリカに住んでいるからだよ。ここには消費文化があり、物質的な所有物、富と名声がある種の満足感と内なる幸福感をもたらすことになるという考えがある。そこへの盲目的な固執だよね。それが今の問題だと思うんだ。普通に考えて、金持ちで金のトイレを持ってるからと言ってクソ野朗が大統領になるべきではないだろう?
なぜこんなクソ野郎がリーダーに望まれる世の中になった?シフトしはじめたのは、人類が環境に大きな影響を与え始めた産業革命の頃からだと思う。人類は大量生産を始め、消費者階級が生まれた。大量販売の広告も発明された。だから、俺は産業革命から振り返る必要があると思う。消費文化のアイデアが生まれ計画された場所からね。」
このアルバムにおけるテーマの核となっているのは、アンセム的な”Memento Mori” で、Randy は恐怖を煽るようなニュースに対抗し、希望、力強さ、そして昔ながらのカルペディエムの精神をメッセージとしています。
「メメント・モリとは、僧侶たちがかつてお互いに言いあっていた言葉なんだ。君はいつかは死ぬよってね。俺の知る限り人生は一度きり。たとえ複数の人生があったとしても、この一度の人生を最大限に活かしたいと思わないかい?」
ここ数年、Randy に注目してきた人なら誰でも知っていることですが、この言葉は抽象的な概念や空虚な決まり文句ではありません。なぜなら彼は明らかに地上での限られた時間を有効に使っているからです。
LAMB OF GOD での音楽活動はもちろん、GOJIRA, BODY COUNT, BAD BRAINS, PIGFACE といったアーティストとのコラボレーション、自伝 “Dark Days” や TESTAMENT の Alex との共著 “Unbuilt” の出版 、サーフィン、写真、草の根の活動の支援と休む暇もありません。
「ファンからもらった最高の贈り物は?って聞かれたんだけど、”あなたの音楽は人生で本当につらい時期を救ってくれた” って言葉だね。最高に気持ちがいい。”ゴールドディスクを手に入れた!”よりも全然いい気分だ。ゴールドディスクなんてどうでもいい。2枚持ってたけど、慈善事業のためにオークションに出したよ。乳がんのチャリティなんかにに小切手を送ると、すごく興奮するんだ。自分勝手な感情かもしれないけど “あなたはいい人だ “って思えるね。気分が良くなるから。」
いつか世界は滅びるかもしれないし、みんなが死に絶えるかもしれません。しかし Randy の中では、まだ全てが燃えるのを見届ける準備はできていません。
「100パーセントが皮肉のレコードじゃない。希望の瞬間もあるよ。俺はただ立ち止まって、全てがクソだなんて言っていたくはないからね。我々にあるのは今この瞬間だけだ。今までの人生は こうした瞬間の連続だった… だから、この一瞬を最高のものにしたいんだ。」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK DISALVO OF ELDER !!
“I’d Like To Think That We’re Channeling The Adventurous And Explorative Spirit Of The Prog Scene In The 70’s, But Not Directly The Sound. We Want To Be Our Own Band, But Also Push The Boundaries Of Our Own Creativity.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JB BRUBAKER OF AUGUST BURNS RED !!
“What I Don’t Like Is That Metalcore Has Become Almost a Dirty Word. The Genre Got So Oversaturated That It Got Predictable And Boring. It Was Around That Time That We Started To Talk Publicly About Breathing New Life And Originality Back Into Metalcore. We Also Started To Steer Away From The Word And Were Just Calling Ourselves a Metal Band.”
DISC REVIEW “GUARDIANS”
「AUGUST BURNS RED は可能な限り首尾一貫していようとしてきたんだ。自分たちのプレイしている音楽が気に入っているし、ヘヴィーな音楽を書き続けることに誇りを持っている。それこそが僕たちのやりたいことなんだ。」
メタルコア創造主の1人、AUGUST BURNS RED はその獰猛と誇りを失うことなくチャレンジを続けるジャンルの枢要な “ガーディアン” でしょう。
「僕が気に入らないのは、メタルコアという言葉がほとんど “ダーティーワード” “禁句” と化していることなんだ。このジャンルは非常に飽和してしまい、予想可能で退屈なものになってしまった。その状況は2012年から2014年にかけてが顕著だったね。」
複雑怪奇なリフイリュージョン、スポークンワードの冷徹、BETWEEN THE BURIED AND ME 由来の時間軸、クラシカルな旋律やアトモスフィア。フォーミュレイクなリフワークやブレイクダウンが蔓延したメタルコア世界で、プログレッシブな精神を保ち続ける ABR の心臓 JB Brubaker はいつしかその呼称自体を倦厭していきました。そうして自らをただメタルと称しながら、その実メタルコアに新たな生命と独創性を吹き込むことへ全力を投じ、ジャンルのリノベーションを誰よりも強く願ったのです。
「今では、メタルコアシーンの過飽和の多くは解消されたと思う。ジャンルは少し人気を落としているし、メタルコアバブルが弾けてからも続けているバンドは充分音楽を演奏するに値すると感じるからね。」
そうして LOATHE を筆頭にカラフルで技術に優れ才能豊かな若手が台頭した今、守護者が回帰した場所はルーツであるパンク、ハードコア、メタル全ての基盤である重量感でした。
実際、最新作 “Guardians” の作曲過程には、ボーカリスト Jake が重さが足りないと意見を出し、JB をはじめとした作曲陣がそれならば究極にヘヴィーな楽曲を作ってやろうと奮起した背景が存在します。
任務は完璧に遂行されました。眩暈を誘うリフエイジ、血管が決壊するスクリーム、地鳴りのようなブレイクダウン。一方でクラシカルな美旋律やアトモスフィアの荘厳は威力を増して、バンドのメカニカルなイメージを払拭しつつダイナミズムの魔法をよりレコードの深部へと植えつけました。
同時に、オーストラリアの怪物 PARKWAY DRIVE とのツアーも “Guardians” の哲学に影響を及ぼしたでしょうか。メタルコアをアリーナ対応のアンセムへと昇華した彼らのやり方は ABR にとってある種の衝撃でした。
攻撃の単純化、もしくは合理化とも呼べる発想の転換。JB 語るところのバンド史上最も簡素化されたストレートな楽曲 “Defender” には、3つのルーツ全てをもって素手で殴りつけるような露骨でダイレクト、獰猛なる緊張感が漲ります。
さらに、ビッグなコーラスとシンガロングパートを新たな武器として装填した “Bones”, “Paramount”, “Lighthouse” には、ヒロイックでアンセミックな即効性と躍動感が施され、よりアリーナという闘技場が似つかわしいバンドへとスケールアップを遂げています。中でもプログレッシブでシュレッドギターを満載しながら、シンガロングを強烈に誘う “Paramount” の仕上がりは圧倒的でした。
「クリスチャンであろうがなかろうが人には善良な人間になる責任があるはずさ。」
かつてクリスチャンメタルの旗手と謳われた ABR は、もはやその定義には拘っていません。ただし、JB はポジティブで思いやりを備えた人生の一つのテンプレートとして、キリスト教を大事に思っています。救いを求めるものに手を差し伸べる。この困難な時に、きっと “Guardians” は音楽を救いとする多くのメタル教信者にとって福音であり守護者となるはずです。
今回弊誌では、JB Brubaker にインタビューを行うことができました。「残念ながらツアーが中止になったことには失望しているけど、この世界的なパンデミックが音楽や ABR に関連するものよりもはるかに大きく重要であることも理解しているからね。人間の健康と福祉は娯楽よりも優先されるべきだからね。
でも出来るなら、この時間を利用して “Guardians” を聴いて欲しいと思うよ。きっとこの暗い時期を明るく照らしてくれるはずだから。」 どうぞ!!