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NEW DISC REVIEW + COVER STORY 【TOOL : FEAR INOCULUM】


COVER STORY: TOOL “FEAR INOCULUM”

“After 13 Years Wait, Tool’s Fearless Return “Fear Inoculum” Is Not a Reformation But a Reinvention, Not Only a Look Back At The Past, But Also a Go Forward, Towards The Future.”

BIG READ: TIMELINE OF TOOL

1992: “OPIATE”

あの時点では、バンドのヴァイブは異なるものだった。音楽的に、俺らはただバンドとして自分たちの個性、パーソナリティーを見つけ出そうとしていたんだよ。あの頃のドラミングを聴くとやり過ぎだと思うこともある。」 そう Danny Carey が語れば、「L.A. に住むことで溜まった鬱憤を音楽で晴らそうとしていたね。だからあの頃の音楽は、感情的で解き放たれたプライマルスクリームなんだよ。俺は Joni Mitchell と SWANS の大ファンだったから、よりパーソナルで心に響く歌詞を目指していたんだ。」と Maynard James Keenan は語ります。
宗教や因果応報を描いた Maynard のリリックは異端の証。若さに牽引されたアグレッション、清新な表現力の躍動と、未だシンプルな設計にもかかわらずプログレッシブなヒントを覗かせるアレンジメント。”アートメタル” と謳われたデビュー EP “Opiate” には原始的な TOOL のスタンダードが確かに散りばめられていたのです。
面白い事に、Adam の担任教師は Tom Morello の母親で、Maynard と Tom は一時期バンドをやっていました。さらに Danny は Tom の紹介で TOOL に加入しています。確かにカリフォルニアから新たな何かが始まる予感はあったのです。NIRVANA のビッグセールスが後押ししたのは間違いありません。業界のハイエナたちは次の “ビッグシング” を血眼で探していました。そうして全てはこの27分から始まりました。


1993: “UNDERTOW”

デビューフル “Undertow” で、TOOL はアートメタルから “マルチディメンショナル”メタル、多次元の蜃気楼へ向けて、同時に巨大なロックスターへ向けても歩み始めました。
“Sober” や “Prison Sex” の脆くナイーブな音像はオルタナティブロックの信奉者を虜にしましたし、一方でアルバムを覆うダークな重量感は新時代のメタルを期待するキッズの新約聖書に相応しい威厳をも放っていたのです。
「彼らはメタルなのか?インダストリアルなのか?プログレッシブなのか?グランジなのか?」整然と流動、憤怒と制約、そして非言語的知性。Adam が手がけた、大手マーケットチェーンから販売を拒否された危険なアートワークも刺激的。世間は必死で TOOL の “タグ” を見つけようとしましたが、実際彼らはそのどれをも捕食したしかし全く別の何かでした。新進気鋭のプロデューサー Sylvia Massey との再タッグも功を奏したでしょうか。

“Intolerance” で自らの南部バプティスト教会の出自を、そして “Prison Sex” で幼少時に受けた性的虐待を書き殴った Maynard の情熱的で時に独白的な感情の五月雨は、JANE’S ADDICTION のアーティスティックな小宇宙、BLACK SABBATH の邪悪な中毒性、RUSH の複雑怪奇と見事に溶け合い、深みの縦糸と雄大の横糸でアルバムを織り上げていきます。
音楽的な最高到達点とは言えないでしょうが、間違いなく TOOL にとって最も反抗的でエモーショナルかつパワフルなアルバム、そしてロックの “顔” を永遠に変えたアルバムに違いありません。

1996: “Ænima”

ダイナミックな Paul D’Amour がバンドを離れてはじめてのアルバム “AEnima” は、ダークサイケデリックな音の葉で拡張する TOOL 細胞を包み込んだ芸術性の極み。進化した TOOL の宇宙空間では無数のアトモスフェリックな魂がふわふわと漂い、待ち構える鋭き棘に触れては弾け、触れては弾けを繰り返すのです。
タイトルの “AEnima” こそが最大のヒントでしょう。カール・ユングが提唱した、男性の中に存在する無意識の女性 “Anima” とアナル洗浄機 “Enema” のキメラは完全にその音楽とフィットしています。
遂に完全に見開かれた “サードアイ”。新たなベースマン Justin Chancellor はバンドに即興性とシュールでエアリーなムードをもたらしました。自虐と怒りのカタルシスを内包しつつ、広大なサウンドスケープを解き放つ “Eulogy”、Maynard の瞑想的でソウルフルなパフォーマンスが印象的な “H.” は新たなサウンドへの架け橋でした。

そうしてバンドは自らの進化を人間の進化へとなぞらえます。”Forty Six & 2″ は脳に刺激を与えるオデッセイ。現在人のDNAには、44個の常染色体と2個の性染色体が含まれています。つまり人間の次なる進化、46個の常染色体への進行は TOOL の突然変異と通じているのでしょう?
「これは変化のアルバムだ。家を掃除して、改築してやり直すためのね。」96年に Maynard はそう語っています。振り返ってみると “AEnima” はインスタントに “Nu-metal” の波へと加担したモッシュのパートタイマーを “パージ” “追放” する作品だったのかも知れませんね。言葉を変えれば、Kurt Cobain が破壊した後のポスト・ロック世界で、TOOL が “再生” を担う次の王座に座ることは多くの “ジェネレーション X” たちにとって約束されたストーリーに思えたのです。

2001: LATERALUS”

5年ののち、2001年にリリースされた “Lateralus” はミレニアムへの変遷と時代の変遷を重ねたレコードでした。当時 TOOL のファンと LIMP BIZKIT のファンの違いを尋ねられた Maynard はこう答えています。「TOOL のファンは読書ができる。より人生に精通している傾向があるね。」
そこにかつての怒れる男の姿はもうありません。ステップアップを遂げる時が訪れました。「俺たちは間違いなくパンクロックの産物だよ。ただし、ただ反抗するんじゃなく、大義のために反抗しなきゃならない。つまりこのぶっ壊れた音楽産業にだよ。俺らのゴールは、みんなが自分自身のために価値のある何かをするよう促すことなんだ。」
足の筋肉 “vastus lateralis” と外的思考 “lateral thinking” のキメラ “Lateralus” は融和と前進のアルバムです。
Alex Gray のアートワークには、脳に “神” が宿り、より深い人間の気質を仄めかします。つまり TOOL は憎悪、精神性、制限された信念といった後ろ向きなイメージを手放すよう人々に新たな詔を下したのです。
Nathaniel Hawthorne の古典 “緋文字” で David Letterman の皮肉を皮肉った “The Grudge”、人生の価値を投げかける “The Patient”、そしてコミュニケーション崩壊の危険を訴える “Schism”。「コミュニケーションを再発見しよう!」シンガーはそう懇願します。

「Robert Fripp のギタープレイが俺を目覚めさせてくれたんだ。」先ごろ Adam Jones の自らを形作ったギタリスト10人が発表されましたが、1位が Robert Fripp、2位が Adrian Belew、3位が Trey Gunn でした。つまりベスト3を KING CRIMSON のメンバーが独占するほど Adam はクリムゾンの影響下にあるわけですが、とりわけ “Lateralus” は70年代の “クリムゾンゴースト” が最も潜んだアルバムと言えるかも知れませんね。つまり決して耳に優しいレコードとは言えません。しかしその分深くワイドでもあります。
“Parabol” と “Parabola” は作品のセンターに据えられた二本柱。実験的で不気味なサウンドスケープから、アドレナリンラッシュを伴い人間の闘争と解放の驚異的なまでに動的な解釈を提示する彼らのダイナミズムは圧倒的です。
そして何よりタイトルトラック “Lateralus” は自然と芸術を駆け抜けるあのフィボナッチ数列に準じています。9/8、8/8、7/8と下降する美しき変拍子の階段は、フィボナッチ数16番目の数字987を意識して構築されました。「無限の可能性を見ろよ」と歌い紡ぐ Maynard。数学者としての TOOL と実証主義者としての TOOL は遂にここにポジティブな融和を果たしたのです。

2006: “10,000 DAYS”

さらに TOOL は “10,000 Days” で魂までをも抱きしめます。10,000日、27年とは土星の公転周期であり、Maynard の母 Judith Marie が脳卒中を患ってから死を迎えるまでの期間でもありました。
“Wings Pt 1” と “Pt 2” で、異なる巨大な概念である悲しみと信仰を同時に内包し音像へと投影する TOOL のスピリチュアルな作曲術は驚異的です。ただ、それ以上に Maynard が初期の「fuuuuuuuck you、buddy!」 といった毒づきや、中期の知的な創意工夫を超越して到達した “崇高” の領域に触れないわけにはいかないでしょう。
「10,000日とは あまりに過酷で長すぎるよ。どうか精霊と子よ、神様をこちらへ連れてきて。彼に伝えて欲しい、信仰の狼煙がいま立ち昇ったと。」
実に崇高かつパーソナルな感情は TOOL が魂の領域まで達した証明。”10,000 Days” はバンド史上最もオープンで、優しく脆く人間的で、それ故に最も感情へと喚起するアルバムに仕上がりました。そうしてその崇高は13年後の成熟へと引き継がれていくのです。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HUMANITY’S LAST BREATH : ABYSSAL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BUSTER ODEHOLM OF HUMANITY’S LAST BREATH !!

“Djent Was a Continuation Of What Meshuggah Started. Everyone Added Their Own Flavour To The Sound For Better Or For Worse. Thall Is Just a Word That Sounds Funny In Swedish.”

DISC REVIEW “ABYSSAL”

「MESHUGGAH はあの本当にユニークなサウンドの先駆者なんだ。演奏の面でも、作曲の面でもね。僕たちも含めて多くのバンドが彼らの直接的な子孫だと言えるだろうな。」
そのジャンル名は “EVIL”。MESHUGGAH の血を引くスウェーデンの猛威 HUMANITY’S LAST BREATH は、シーンに内在する愚かな “ヘヴィネス” の競争を横目に、純粋で無慈悲なまでに冷徹な恐怖と狂気を世界へと叩きつけます。
Calle Thomer と Buster Odeholm。”Thall” 生みの親にして Djent の神、VILDHJARTA のメンバー2人を擁する HUMANITY’S LAST BREATH に大きな注目が集まるのはある意味必然だったと言えるでしょう。何より、VILDHJARTA 本体は長らく隠遁状態にあったのですから。
ただし、HLB は決して VILDHJARTA のインスタントな代役というわけではありません。「Djent のムーブメントは MESHUGGAH が始めたことの継続だったんだ。良しにつけ悪しきにつけ、みんながその下地に独自のフレイバーを加えていったよね。」Buster の言葉が裏付けるように、HLB が追求し個性としたのは Djent を通過した “重” と “激” の究極形でした。
2012年のデビューフル “Humanity’s Last Breath” から7年。実際、唯一のオリジナルメンバー Buster がバンドを一度解体し、再構築して作り上げた最新作 “Abyssal” は彼の愛する MORBID ANGEL のように重量以上の畏怖や威厳を伝える音の “深淵” だと言えるでしょう。
「ヘヴィーな音楽において、コントラストは非常に軽視されていると思うんだ。だけど僕はソングライティングのアプローチにおいて、最も重要な要素の1つだと考えているよ。」モダンメタルコアの新星 POLARIS はヘヴィネスの定義についてそう語ってくれましたが、HLB の威容にも奇しくも同様の哲学を垣間見ることが可能です。
オープナー “Bursting Bowel Of Tellus” は HLB が描く “激重” の理想なのかも知れませんね。威風堂々、デスメタルの重戦車で幕を開け、ピッチシフターの雄叫びと高速シンコペーションで djenty なカオスを創出。ブラストの悪魔を召喚しつつ呪術的なクリーンボイスでさらなる中毒性を醸し出すバンドの方程式は、まさしくヘヴィネスの坩堝と対比の美学に彩られています。
事実、新ボーカル Filip Danielsson の豊かな表現力は HLB にとって進化のトリガーだったのかも知れません。獰猛な咆哮はもちろん、時にエセリアルに、時に邪悪に、時に囁き、時に静寂まで呼び寄せる Filip のワイドな魔声により、仄かな北欧の風を伴ってバンドは多様に真の “激重” の探求へとその身を委ねることになりました。
さらに “Born Dust”, “Fradga”, “Abyssal Mouth” と聴き進めるうち、そこには STRAPPING YOUNG LAD, FEAR FACTORY と交差する、近未来感を軸としたシンクロニシティーがまざまざと浮かんで来るはずです。それはブラッケンドで djenty な最高級のテクニックを、惜しげも無く純粋にヘヴィネスへと注ぎ込み昇華した桃源郷のディストピア。
もちろん、アルバムの第二幕、全楽曲のインストバージョンは建築士としての自信と DIY の矜持であることを付け加えておきましょう。彼らのデスコアマッドネスに知性は不可欠です。
今回弊誌では、ドラムスとギターを自在に操る鬼才 Buster Odeholm にインタビューを行うことが出来ました。「”Thall” とはスウェーデン語で面白く聴こえるようなただの言葉なんだ。」今、世界で最も重力を集めるブラックホール。どうぞ!!

HUMANITY’S LAST BREATH “ABYSSAL” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + COVER STORY 【SLIPKNOT : WE ARE NOT YOUR KIND】


COVER STORY: SLIPKNOT “WE ARE NOT YOUR KIND”

“We Are Not Your Kind” Is The Most Artsy Mainstream Metal Record So Far.

DISC REVIEW “WE ARE NOT YOUR KIND”

2019年は SLIPKNOT にとってビッグイヤーに定められた年でした。セルフタイトルのデビューアルバム “Slipknot” のリリースから20年、メタル史に残る金字塔 “Vol. 3: The Subliminal Verses” のリリースから15年。しかし、襲い来るトラウマや悲劇を乗り越えたアイオワの怪奇集団にとっては、その不死身の記念碑ですら通過儀礼に過ぎないことを最新作 “We Are Not Your Kind” が如実に証明しています。
ベーシスト Paul Grey の急逝、中心メンバー Joey Jordison の離脱、Corey Taylor の離婚、Clown 愛娘の逝去、Chris Fehn の解雇劇。並みのバンドならば歩みを止めざるを得ないような状況におかれても、SLIPKNOT は諦めることなく前進を続けています。アニバーサリーの追憶に浸る代わりに、バンドは長くソリッドなライティングプロセスを過ごし新たなマイルストーンを完成へと導きました。


「歩み続けるうち、俺らはまた自由を手にしたんだ。やりたいことは何でもできる。この作品は “Vol. 3: The Subliminal Verses” と同じヴァイブ、エナジーだったね。俺らが満足している限り、どこへでも行けるのさ。」
SLIPKNOT がこれほど大きな支持を得ているのは、その過激な外観、実験性、エクストリームな音楽性の内面に陰鬱美麗なメロディーと芳醇なフックを備えていることが理由でしょう。そして、Corey Taylor は “We Are Not Your Kind” が、かつて自らが生み出したそのダイナミズムの怪物と同様のイメージで制作されたことを認めています。
“Iowa” でインテンスとアグレッションの圧倒的な狂演を見せつけた後、バンドが辿り着いた自由な創造性と対比の美学こそ “Vol.3” の哲学でした。故に、切迫した暗がりでそのスピリットを引き継いだ “We Are Not Your Kind” には、あの重音の実験室に加えて、旋律と戦慄のコントラストが遥かな進化を遂げながら確かに宿っているのです。言い換えれば、Billboard 200 で No.1を獲得した驚異の最新作は最もアーティスティックな “大衆のためのメタル” と言えるのかも知れませんね。

もちろん、メタル、ハードコア、ヒップホップのトライアングルは SLIPKNOT のコアとして存在し続けてきましたが、”Vol.3″ のトリッピーなチェンバーポップ “Circle” が示すように、3つのフラスコのみで化学反応を起こすほど彼らの実験室は限定的ではありません。
「このアルバムで、また俺らが変わったことをやれていると感じた最初の楽曲が “Spiders” だった。コアの部分をまず録音して、そこからシチューを煮込むみたいに適切な要素を加えていったのさ。ギターソロは Adrian Belew に大きなヒントを得ているよ。David Bowie が “Fasion” でやったようなことさ。」
Corey の言葉通り、”Spiders” は David Bowie が残したニューウェーブの煌めき、カメレオンの音魂を彼らの流儀でダークに抱きしめた SLIPKNOT の新たな惑星でしょう。NINE INCH NAILS の音景も封入されているでしょうか。David をインスピレーションとした火星にも似たその新境地は1曲にとどまりません。”Space Oddity” のイメージをドゥーミーに、SWANS ライクに宿す “A Liar’s Funeral” は Corey のフェイバリットです。
「David Bowie がブラックメタルをやったような楽曲だね。大量のアトモスフィアと鋭さ、そして衝撃が混ざり合っている。」


実験という意味では、TANGERINE DREAM を想起させるコズミックなイントロダクション “Insert Coin” から連なる “Unsainted” の壮大なケミストリーを見逃すわけにはいきません。
「アルバムで最後に完成した楽曲なんだ。そして、アルバムの以降の方向性を告げる最高のランドマークとなったね。」
THE ROLLING STONES の “You Can’t Always Get What You Want”、もしくは PINK FLOYD の “The Wall” にも似たコーラスマジックを携えた楽曲は、メタル、インダストリアル、サウンドトラック、クラッシックロックのキャッチーかつ完璧なキメラです。
一方で、HEALTH や GOJIRA の波動を滲ませる “Birth of the Cruel” の狡猾さもアーティスティックな “大衆のためのメタル” に真実味を加えていきます。さらに “My Pain” のエレクトロなパルスを Stanley Kubrick の映画と評する Corey。事実、アルバムは Clown の子供とも言える “Death Because of Death”, “What’s Next” といったセグエによって映画のようなドラマ性を帯びています。それは、緩と急、静と動を織り込んだエモーションのローラーコースター。実は当初 Shawn “Clown” Crahan が目指していたのは、”The Wall” のようなコンセプチュアルで二枚組の壮大な音楽劇でした。

Jim Root が 「俺らと進化してこのアルバムを気にいっても良いし、そうじゃなくても良い。ただ俺らはいつもいきたい場所へ行くだけさ。」と嘯けば、Mick Thomson は 「アルバムが好かれようが嫌われようがどうでも良い。どの道俺らは全員にアピールするような音楽じゃないから。全員に気に入られるような音楽には興味がないよ。俺らはただ自分に正直でいたいんだ。」 と主張します。
つまり、SLIPKNOT はきっと永遠に “We Are Not Your Kind” 誰の言いなりにもならず自らの百鬼夜行を続けるはずです。ただし、心から望んで、正直に表現した音楽が、これほど多くの支持を得られる危険でエクストリームな “メインストリーム” メタルバンドも、きっと永遠に SLIPKNOT だけなのかも知れません。

SLIPKNOT “WE ARE NOT YOUR KIND” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SCOTT HENDERSON : PEOPLE MOVER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SCOTT HENDERSON !!

“There’s Nothing Sadder Than Young Guitar Players Who Only Listen To Heavy-metal. There’s So Much Great Music Out There To Learn From, And It’s Unbelievable To Me That Someone Would Stick To Listening To Only One Style. It’s Like Being In Musical Prison.”

DISC REVIEW “PEOPLE MOVER”

「オープンマインドで音楽スタイルに囚われないことがとても重要だね。若いギタリストがメタルしか聴かないことほど悲しいことはないよ。学ぶべき音楽は沢山あるんだ。」
ジャズとブルース、クラッシックにロック、そしてファンクのスピリットを理想的にミックスし、フュージョンの翼を蒼の音空へと広げるギターレジェンド Scott Henderson は、特定のジャンルに囚われる創造のあり方を “音楽の刑務所” と断罪し包音力の重要性を語ります。
Joe Zawinul, Jean-Luc Ponty, Chick Corea といったジャズの巨匠に認められ共演を果たす一方で、TRIBAL TECH、ソロ活動、さらには Victor Wooten, Steve Smith との VITAL TECH TONES に Jeff Berlin, Dennis Chambers との HBC など豪華なサイドプロジェクトまで、Scott の音楽的な冒険は非常に多岐に渡ります。
TRIBAL TECH の登場は衝撃的でした。自身で “ギアヘッド” と語るように最新テクノロジーや MIDI を惜しげもなく投入し、複雑なコンポジションやオーケストレーションをジャズとロック、ファンクのキャンパスへと落とし込むバンドの野心は、停滞していたインスト/フュージョン世界を再始動へと導く原動力にも思えたのです。もちろん、メカニカルでロマンチック、テクニカルかつアンサンブルを極めたハイパーフュージョンの根底には、Scott とベースマン Gary Willis が誇る最高峰の知性と技術がありました。
ただし、Guitar World 誌のNo.1ギタリストをはじめとして、様々なアワードや高評価を得た TRIBAL TECH も Scott にとっては表現形態の1つにしか過ぎなかったようです。同じ音楽性を長く続けると飽きが来てしまうの言葉通り、Stevie Ray Vaughan が降臨したかのようなソロレコード “Dog Party” を契機として Scott は何年もブルースの荒野を探求することとなりました。
「僕はそれぞれ異なる理由で多くの音楽スタイルを愛しているよ。ブルースのソウルやフィーリング、ジャズのハーモニーと表現豊かなインタープレイ、ファンクをプレイする時の体感、ロックのパワー、クラッシックやプログロックの美しきコンポジション。全てが僕を幸せにするのさ。」
そうして近年、Scott Henderson は自らの音楽地図を遂に完成へと導いているように思えます。最新作 “People Mover” は実際、コンポジションにおいてマエストロの最高到達点かも知れませんね。
「僕はジャズが死んだとは思っていないんだ。けれど、ジャズのコンポジションがいくらかは失われた芸術となっているように思えるね。つまり、沢山の偉大で新たなプレイヤーは登場しているけど、偉大なライターはそんなに多くないんだよ。僕が聴く限りではね。」
ファストに絶妙にアウトする複雑怪奇なリックの数々、オーバードライブのエナジーは当然 Scott の象徴だと言えますが、彼自身はむしろリズムの魔法、洗練されたハーモニーや調性の美しさを宿した多様な作曲の妙に現在より重きを置いています。
事実、アルバムはシームレスにジャンルの境界を繋いでいます。Holdsworth と Jeff Beck の完璧なる婚姻 “Transatlantic”、TRIBAL TECH を想起させるソリッドなファンカデリックフュージョン “Primary Location”、疾走する4ビートに Wes Montgomery イズムを織り込む “Satellite”、PINK FLOYD の叙情とエモーションを封入した “Blood Moon”、ブルースの奔放をペダルの魔法で解放する “Syringe”。その緊張と緩和、繊細と躍動のダイナミズム、楽曲のバラエティーはまさに “Lost Art” に相応しき輝きを放っていますね。
今回弊誌では、Scott Henderson にインタビューを行うことが出来ました。「僕の考えでは TRIBAL TECH が唯一革新的だったのは、音楽を事前に書くことなくスタジオでジャムって、それを後のプロダクションでコンポジションに落とし込んでいくやり方だろうな。」どうぞ!!

SCOTT HENDERSON “PEOPLE MOVER” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DREADNOUGHT : EMERGENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KELLY SCHILLING OF DREADNOUGHT !!

“The Term “Female Fronted” Sensationalizes Women And Turns Us Into a Gimmick. We Are All Human Beings Creating Sound And Gender Shouldn’t Be The Focal Point. “

DISC REVIEW “EMERGENCE”

「近年、音楽はジャンルの表現を超えて日々拡大していっているわ。交配と実験が重ねられているの。だからもしかしたら、ジャンル用語自体、大まかなガイドラインとして受け止められるべきなのかもしれないわね。」
プログメタル、ブラックメタル、フォーク、ドゥーム、ジャズ、チェンバー、クラシカル、ポストメタル。コロラド州デンバーに端を発する男性2人女性2人の前衛的メタルカルテットは、”恐れを抱かず” ジャンルの境界を決壊へと導く気炎にして雄心です。
現在、メタル世界の地図において最も多様で革新的な場所の1つ、ダークなプログレッシブドゥームの領域においても、DREADNOUGHT の描き出す無限の音景は実にユニークかつシームレスだと言えるでしょう。
「メンバーのうち2人が人生の大半を木管楽器をプレイしてきたから、作曲の中に盛り込みたいと考えたのね。私は10代の頃に、フォークメタルムーブメントや民族楽器を使用するメタルバンドからインスピレーションを得ているから、フルートを楽曲に取り入れたいと思うのは自然なことだったわ。」
そのドラマティックでカラフルな音の葉の根源が、演奏者のユーティリティ性にあることは明らかでしょう。インタビューに答えてくれたボーカル/ギター/フルート担当の Kelly を筆頭に、ドラム/サックスの Jordan、キーボード/ボーカルの Lauren、そしてベース/マンドリンの Kevin。典型的なロックの楽器以外をナチュラルに導入することで、バンドは多次元的な深みと自由な翼をその筆へと宿すことになりました。
火、風、水、土。THRICE の “The Alchemy Index” から10年の時を経て、今度は DREADNOUGHT が地球に宿る四元素をそのテーマとして扱います。そうして炎の獰猛と優しさを人生へと投影した最新作 “Emergence” は、バンド史上最も思慮深くアトモスフェリック、一方で最もパワフルかつ記憶に残るアルバムに仕上がったのです。
水をテーマとした前作 “A Wake in Sacred Waves” の冒頭とは対照的に、不穏に荒れ狂う5/4で幕を開けるオープナー”Besieged” は “現在最もプログレッシブなメタルバンド” との評価を確信へと導く野心と野生の炎。デリケートなジャズ/ポストロックの低温と、高温で燃え盛るブラックメタルのインテンスはドゥームの組み木で燃焼しせめぎ合い、ダイナミズムのオーバーフローをもたらします。
兆した悲劇の業火はチェンバードゥームと Kate Bush の嫋やかな融合 “Still” でとめどない哀しみへと飛び火し、その暗澹たる感情の炎は KARNIVOOL のリズムと OPETH の劇場感を追求した “Pestilent” で管楽器の嘶きと共にクライマックスを迎えます。それは過去と現代をシームレスに行き来する、”スペースロック” の時間旅行。
とは言え、”Emergence” は前へと歩き出すレコードです。KRALLICE や SEPTICFLESH の混沌とアナログキーボードの温もり、管楽器とボーカリゼーションの絶妙なハーモニーを抱きしめた “Tempered” で複雑な魂の熱を受け入れた後、アルバムはエセリアルで力強き “The Walking Realm” で文字通り命の先へと歩みを続けるのです。
もはや10分を超えるエピックこそ DREADNOUGHT の自然。それにしてもゴーストノートや奇想天外なフィルインを駆使した Jordan のドラムスは群を抜いていますし、Lauren の鍵盤が映し出すイマジナリーな音像の数々も白眉ですね。
今回弊誌では、美麗極まる歌声に激情のスクリーム、そしてマルチな楽器捌きを聴かせる Kelly Schilling にインタビューを行うことが出来ました。「フィーメールフロンテットって用語は女性を特別で、センセーショナルにする、つまり私たちをギミックに変えるのよ。私たちはみんな音を作り出す人間であって、性別を焦点にすべきではないのよね。」どうぞ!!

DREADNOUGHT “EMERGENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MAGMA : ZËSS】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRISTIAN VANDER OF MAGMA !!

“ZËSS Is The Culmination Of a Great Cycle Including All My Previous Compositions. It Opens To a New Space And Other Perspectives. What I Had Sensed For Many Years: Multidirectional Music. It’s Another Way Of Feeling, Of Living Music.”

DISC REVIEW “ZËSS-Le Jour Du Néant”

「”ZËSS” は過去私の全ての作曲の中でも最高到達点と言えるだろうね。新たな場所や別の価値観へのドアを開いたよ。”ZËSS” によって私は “無限” へと歩み始めたんだ。音楽がそうさせたんだよ。」
結成50年。フランスに兆した異端の音楽組織 MAGMA の主宰にして、偉大なるドラマー/コンポーザー Christian Vander は未完の大曲 “ZËSS” が、自らの理想である複数の音楽性を持つ “マルチディレクショナルミュージック” への素晴らしき入り口であったことを認めました。
ジャズとロックの蜜月に、オペラやクラッシック、アヴァンギャルド、そしてミニマリズムの玄妙を封じた邪教 MAGMA は、Christian が天啓を受けたというコバイアの宇宙奇譚と仮想言語によりその禍々しき中毒性を一際増しています。
もちろん、MAGMA がメインストリームに位置することはありませんでしたが、そのカルトな表現方法はハードコアなマニアを生み続けています。ドキュメンタリー “To Life, Death And Beyond: The Music Of Magma” を見れば分かる通り、Trey Gunn, Jello Biafra, Robert Trujillo といった卓越したミュージシャンも実はバンドの熱烈な信徒なのです。
Christian も認めるように、MAGMA が “ズール” と呼ばれるその音楽スタイルを完成させたのは、3rdアルバム “Mekanik Destruktiw Kommandoh” 通称 “M.D.K.” でした。ベーシスト Jannick Top の加入により世界最高峯のスキルと “圧” を備えたリズムセクションを宿したバンドは、さらにコーラスの “圧”、複雑怪奇の “圧”、コバイアの “圧” で圧倒的なパワーとエナジーを纏う独創性を確立したのです。ズール “Zeuhl” とはすなわち “振動する音楽” の意。
Christian は時代を先取っていたと語ってくれましたが、甲高い狂気の叫びと入り乱れる無慈悲な拍子記号、そしてアヴァンギャルドな音楽性のコンビネーションは、もはやクラッシックロックの枠組みに対する破壊からの再創造であったとも言えるでしょう。
Christian が “ZËSS” の発想を得たのは1977年 “Attahk” のセッションにおいてだと言われています。それはファンク/ソウル色を増し、よりキャッチーなボーカリゼーションへと向かい始めた変革の時期でした。故に、Christian の言葉通り多様で自由な世界へのドアを開ける重要な鍵こそが “ZËSS” であったのは確かでしょう。ただし、楽曲はしばしばライブで披露されライブアルバムにも収録されましたが、スタジオアルバムに収録されることはなく故に未完成の伝説と語られるようになったのです。
「スタジオでレコーディングされていない最重要の音楽が “ZËSS” だったね。そして私たちは過去にリリースした “ZËSS” のライブバージョンとは全く異なるスタジオテイクを成し遂げたかったんだ。」
2019年、遂にベールを脱いだ38分のズールエピックは、シンフォニックでとめどなくスピリチュアルな有機的実験でした。序盤、Christian のナレーションが響き渡る反復の呪術を聴けば、彼の敬愛する John Coltrane が “Love Supreme” で世界に届けた深き瞑想と至上の愛を想起するファンも多いでしょう。
ただし、徐々にインテンスを増して、コーラスハーモニーとピアノのコード、シンコペーションのリズムにオーケストラのスペクタクルが複雑な糸のごとく絡まりあうと、カール・オルフやリチャード・ワグナーの虚影と共に様々な情景やエモーションがマグマのように溢れ出していきます。
光と影、天と地、想像と現実、歓喜と悲哀。それは恍惚を誘う魂の精神世界、形而上の峰。そうして、クラッシック、スピリチュアルジャズ、ゴスペルにソウル、そしてミニマルな舞台背景に踊るズールのダンスは、あまりに壮大なスペースオペラとして伝説の伝説たる所以を威風堂々提示するのです。さてこの作品は彼らのスワンソングとなるのでしょうか?少なくとも、信徒はきっとアンコールを望むはずです。
今回弊誌では、Christian Vander にインタビューを行うことが出来ました。「本当に勧めたいのはバンドのライブを見ることなんだ!!!私たちのパワーやエナジーを理解するためには、MAGMA のライブを見に来る必要があるよ!!もちろん、”Magma Live” アルバムもそうやってこのバンドを理解する良い方法だと思うね!」”50年後” と銘打たれた9月の来日も間近。どうぞ!!

MAGMA “ZËSS-Le Jour Du Néant” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALARMIST : SEQUESTERER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALARMIST !!

“‘Post-rock’ Used To Be a Useful Catch All Term That Included All Of The Things You Just Listed To Describe Our Sound, Particularly For Bands Like Tortoise, Stereolab, Slint, But Now Seems It’s Gotten Very Specialised To a Certain Type Of Slow-burning Reverby Sound.”

DISC REVIEW “SEQUESTERER”

「アイルランドは小さな国だけど、沢山の有名なインストゥルメンタルバンドを輩出しているよね。その大きな理由は、おそらく00年代初期に THE REDNECK MANIFESTO がこの国でとても人気があったからだと思うんだ。」
THE REDNECK MANIFESTO, GOD IS ASTRONAUTS, ADEBISI SHANK, AND SO I WATHCH YOU FROM AFAR, ENEMIES。00年代初期に勃興したアイルランドのインストゥルメンタル革命は、ポストロックの情景とマスロックの知性を巧みに組み込みながらそのユニークな音脈を紡ぎ続けています。
「”ポストロック”は、僕たちのサウンドを説明するための便利なフレーズだったね。ただ、今となってはリバーブをかけた緩やかに燃えるような特定のサウンドを指すようになっていると思う。」
穏やかに多幸感を運ぶアトモスフェリックなサウンドスケープのみを追求せず、実験性、多様性、複雑性を同時にその理念へと宿す ALARMIST はまさにアイルランドに兆した特異性の申し子だと言えるでしょう。
“ポストマスロック”。モダンなインスト音楽の領域にとって不可欠なポストロック、マスロックのみならず、エレクトロニカ、ジャズ、チェンバー、サウンドトラックにゲーム音楽まで貪欲に飲み込む騒々しき野心家 ALARMIST に付属したタグは、そうして自らが呼称する “インスト過激主義者” のイメージと共に新時代の到来を激しく予感させています。
「僕たちはパートをスワップするのが好きなんだ。パートごとよりもアンサンブル全体を考えて作曲しているからね。」
ALARMIST が過激派たる由縁は、担当楽器のユーティリティー性にもあると言えます。カルテットからトリオへと移行する中でツインドラムの奇抜は失われましたが、それでもメンバー3人は全員が鍵盤を扱えますし、ギタリストとキーボーディストの境界さえ曖昧。さらに管楽器やアナログシンセ、トイピアノにダルシマーまで駆使してその音のキャンパスを豊かに彩っているのです。
「僕たちは1つのジャンルのラベルで完全に満足することは決してないだろうね。だけど “エクスペリメンタルロック” は曖昧だけど使える言葉だと思う。」
実際、バンドのセカンドアルバム “Sequesterer” に封じられた楽曲は、かつてポストロックに備わっていた実験性、真の意味での “ポスト” ロックを体現する魔法です。
例えば Tigran Hamasyan がジャズからの MESHUGGAH への返答だとすれば、オープナー “District of Baddies” はポストロックからの MESHUGGAH への返答なのかも知れません。ANIMALS AS LEADERS を想起させるシーケンシャルなメロディーとポリリズミックなリズムアプローチの現代建築は、アナログシンセサイザーの揺蕩う揺らぎや多様な楽器の音色との交わりで緩やかに溶け出し、風光明媚な情景の中へと見事に同化を果たします。それはメタルの方法論とはまた異なるスリル。時間もジャンルも楽器の垣根までも飛び越えまたにかける音旅行。
同様に、”Boyfriend in the Sky” はトロピカルトライバルに対する、”Lactic Tang” は FLYING LOTUS に対する、そして “Expert Hygience” はゲーム音楽に対するポストロックからの強力な返答だと言えるのかも知れませんね。ポストロックの一語である程度音像が理解できてしまう現在のシーンにおいて、TORTOISE, STEREOLAB, SLINT といったバンドはもっと多様で、挑戦的で、アヴァンギャルドな理想を追っていたよね?という ALARMIST の救いにも似たメッセージは、”ポスト” の停滞と飽和から脱却する万華鏡の音魂として世界を席巻するはずです。
今回弊誌では ALARMIST のメンバーにインタビューを行うことが出来ました。「日本にはクールな音楽が沢山あるよね。Mouse on the Keys, Cornelius, Perfume みたいな J-Pop に武満徹のような現代音楽まで。それに、任天堂、セガ、コナミみたいなゲーム音楽からも大きな影響を受けているんだよ。」リリースはジャンル最重要レーベルの一つ Small Pond から。どうぞ!!

ALARMIST “SEQUESTERER” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCTIC SLEEP : KINDRED SPIRITS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KEITH D OF ARCTIC SLEEP !!

“So Much Metal Out There These Days Just Sounds Like a Bunch Of Random Riffs Pasted Together, With No Concern For Melody Or Song Structure Or Dynamics. It’s Just Not Memorable And So Much Of It Sounds The Same To Me.”

DISC REVIEW “KINDRED SPIRITS”

「僕は自分の音楽を表現する時、”ビタースイート” って言葉をよく使うんだけど、それは僕の音楽が憂鬱や悲しみと、心地よさや慰めのコンビネーションだからだと思う。」
“プログレッシブアトモスフェリックドゥーム”。ARCTIC SLEEP の音楽は、その耳慣れないラベルに反して実に雄弁です。スロウ&ドゥームとプログレッシブ&ビューティフル。相反する真逆の理念を見事に調和させるパラドックスの具現化は、ARCTIC SLEEP が結成当時からビッグテーマとする “生と死” を投影した対比の美学を源流としています。
ミルウォーキーのマルチ奏者 Keith D のソロプロジェクトとして2005年に産声をあげた ARCTIC SLEEP は、バンドとなり様々な紆余曲折、メンバーチェンジを繰り返して今再び Keith の手中へと戻ってきました。
ボーカル、ギター、ベース、チェロ、キーボード、ジャンベ、パーカッションなど多種多様な楽器をほぼ一人でこなす鬼才は、もはや人事やコミュニケーションに割く時間すらも惜しみながら荘厳壮大なエピックの建築を続けています。
「僕と愛猫 Yoda はとても強い絆で結ばれていたんだ。その絆がアルバムに影響を及ぼしているね。ただ、このテーマを世界中で “喪失” に苦しんでいる全ての人に届けたいという思いもあるんだよ。」
そうして完成をみた7枚目のフルアルバム “Kindred Spirits” は、亡き Keith の愛猫 Yoda に捧げられた作品であり、”喪失” に苦しむ全ての人々へ差し伸べられた救いの精神。そして、彼の根幹である “生と死” を再度見つめ直すレコードに添えられたアートワークの崇高美は、そのまま音の景色へと反映されているのです。
「僕はスロウでヘヴィーな音楽を愛している。だけど同時に、メロディックでキャッチーなソングライティングも愛しているんだ。」 暗くドゥーミーに沈み渡るリフの波、雲間をかき分け差し込むメロディーの光明、荘厳なるチェロの響き、そして押し寄せるハーモニーの洪水。バンド史上最も “聴きやすい” と語るアルバムにとって、明確なコントラストとフックを宿すオープナー “Meadows” は完璧な招待状となりました。
ANATHEMA の多幸感と KATATONIA の寂寞を同時に抱きしめるタイトルトラックで独特の牛歩戦術を披露して、OPETH の静謐を深々と “Connemara Moonset” に委ねたバンドは、8分のエピック “Cloud Map” でアートワークの黒烏と美姫の逢引を素晴らしく音で描いてみせました。それは例えば PORCUPINE TREE と ALICE IN CHAINS の理想的な婚姻。幽玄でどこか危うく、美麗でしかし憂鬱な交わりの音の葉は、全てを黒と白に決して割り切ることのできないあやふやで愛すべき世界の理をも投影しながらリスナーの感情を穏やかに喚起するはずです。
今回弊誌では、Keith D にインタビューを行うことができました。「最近は沢山のリフをランダムにコピペしたようなメタルバンドが多いけど、彼らはメロディーや構成、ダイナミズムには無関心だよ。だから記憶に残らないし、僕にとっては全部同じように聴こえるんだ。」 どうぞ!!

ARCTIC SLEEP “KINDRED SPIRITS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JOLLY : FAMILY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOE REILLY OF JOLLY !!

“I Remember When We First Started Making Music And People Comparing Us To Bands Like Porcupine Tree And Riverside. I Had Never Heard Of These Bands Before, So I Was Confused By The Comparison, And Realized There Was a Whole World Of Music To Learn About.”

DISC REVIEW “FAMILY”

「僕は JOLLY が音楽を作り始め、そして人々が僕らを PORCUPINE TREE や RIVERSIDE のようなバンドと比較し出した時のことを覚えているよ。それまで僕はそういったバンドを聞いたことがなかったから、その比較にわりと混乱して、学ぶべき音楽の新たな世界があることに気づいたのさ。」
プログワールドの外界から訪れたポジティブな侵略者 JOLLY は、そのオルタナティブな感性でジャンルの境界を拡大します。
「当初、僕たちにプログのラベルがつけられるのには時間がかかったんだ。それはプログが、ELP みたいにスーパーテクニックとか父の世代のキーボードを使ったバンドであることに関係していたからだと思うんだけど。どちらも JOLLY らしくはないよね。」
JOLLY のカラフルなサウンドスケープと濃密なエモーションを司る、音彩の魔術師 Joe Reilly は、バンドの “プログ” タグがジャンルの象徴だったハイテクニックよりも、現代的な多様性や実験性によるものだと認めています。
実際、Joe は、アトモスフィアの概念に目覚めテクニックの意味を問う “モダンプログ” を定義した PORCUPINE TREE や RIVERSIDE でさえ、認知したのはごく最近のことだったのですから。プログの世界にありながらプログをルーツとしない JOLLY の光芒はジャンルにとってかけがえのない特異点であるはずです。
RADIOHEAD や SMASHING PUMPKINS, そして STONE TEMPLE PILOTS といった90年代の偉大な血脈を出発点としながら、サウンドトラックやシンガーソングライター、R&B、アンビエントにチップチューンまで野心的に咀嚼し、MESHUGGAH 由来の重量感とメインストリームのポップなセンスの両極性を吐き出す JOLLY の多様性、実験精神が、結果として実に “プログレッシブ” なサウンドを紡ぎ出す逆転のパラダイム。その革命的な発想の転換は、バンドのテーマやコンセプトにも如実に現れています。
“The Audio Guide To Happiness”、”幸せになるためのオーディオガイド” から6年のインターバルでリリースされた最新作のタイトルはシンプルに “Family”。ダークでアンハッピーなテーマが踊るロックの世界で彼らのタイトルはポジティブで確かに異端です。
ただし、そこにも JOLLY の持つ二面性、両極性がしっかりと反映されています。「基本的にロックカルチャーのオーラってダークでアンハッピーなものだよね。ただ、そういったダークでアンハッピーなオーラも、君が言及したようなポジティブなムードを存在させるために早くから JOLLY の文化に共存しているんだよ。常に反対側は必要だからね。だから僕たちの歌詞の多くは、美しい瞬間とダークなセンスが共存しているんだよ。」
この6年でバンドはハリケーンに機材を破壊され、愛する友人たちも失いました。同時にメンバーは新たな命も授かっています。JOLLY が提示した “家族” の意味がより深い場所にあることは明らかです。
R&B の息吹を宿す “Lie to Me”、オリエンタル&スペーシーな Devin “Jolly” Townsend “Lazarus (Space Marsala)”, チップチューンと80年代への憧憬を込めた “Ava”、夢幻の天国 “Circuit Heaven”。そうして JOLLY の冒険は、音楽的な “家族” であった RIVERSIDE のギタリスト Pitor に捧げる “Let Go” へと収束します。
ノスタルジックでエモーショナル、COLDPLAY のように繊細かつダイナミックな壊れ物のメロディーを宿す楽曲は、しかし11分の一大プログレッシブ絵巻として傑出した存在感を放っています。その悲壮と叙情、静謐と重厚のハーモニーは必ずや聴くものの心を打つはずです。
「彼との友情は僕たち全員に永久的な影響を与えたんだよ。」プログレッシブとオルタナティブのキメラとして異端の扱いを受けたバンドを “ファミリー” として受け入れてくれた Pitor の優しさは、きっと時を経ても失われることはないでしょう。
今回弊誌では、Joe Reilly にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちの音楽スタイルは非常に複雑というわけじゃないと思うけど、少し多様だから、プログレッシブやオルタナティブのみの説明では不十分だと感じる人がいるだろうから両方を言わなければならないんだ。」どうぞ!!

JOLLY “FAMILY” : 10/10

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