EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK OWEN OF WE LOST THE SEA !!
“People In Music And In All Walks Of Life Have Always Faced Depression And Anxiety And Maybe We Are Just Better At Recognising It Out Now.”
DISC REVIEW “TRIUMPH & DISASTER”
「僕は、ミュージシャンだから苦痛に苛まれているとか、芸術には苦痛が必要だといった決まり文句のようなものでこの問題を茶化したり、単純化しすぎたりするのは嫌いなんだ。音楽に関わる人だけじゃなく、あらゆる分野の人々は常に鬱や不安に直面していると考えているから。」
シドニーが誇るポストロック/メタルの俊英 WE LOST THE SEA は、最新作 “Triumph & Disaster” で気候変動と天然資源の枯渇により崩壊の刹那でゆらめくディストピアな世界を描いています。
バンドにとって、荒廃したこの惑星の未来を語ることは定められた運命だったのかも知れませんね。なぜなら彼ら自身も破滅の瀬戸際にその身を置いていたのですから。
ジャムロックの海風を浴びながらその音景の壮観を存分に拡大していたバンドは2013年、ボーカリスト Chris Torpy を自死により失います。心揺さぶるリリック、熱気に満ちたパフォーマンス、何より長年の友人だった核を失い、残されたメンバーは無限海溝の淵へと沈んでいきました。
CULT OF LUNA スタイルのポストメタルを追及した “Crimea”, “The Quietest Place ‘n Earth” において、Chris の正直で生々しいスクリームは不可欠な要素でした。バンドの肝であるダイナミクスから Chris の声、性格、文章がそっくりそのまま欠落してしまう。未来は不安に、過去は苦痛へと変わり、虚無からの再出発に彼らは2つの約束を定めます。
「彼はバンドにとって不可欠なメンバーだった。音楽的にも、人間的にもね。だから誰も彼の穴を埋めることは出来ないんだよ。 」
Chris のためにもバンドを続けること。Chris の後任を求めないこと。ギタリスト Mark は当時、深い闇の奥にありながら “音楽が負のエネルギーを集中するための素晴らしい方法” だと認識していました。
WE LOST THE SEA を蘇らせたのは、皮肉にも離陸後73秒で爆発し7人の乗組員が亡くなったスペースシャトル”チャレンジャー”の事故でした。宇宙探査をまた一歩前に進めた死に至る勇敢な航海。彼らは乗組員たちと Chris の姿を重ね “Departure Songs” を完成へと導きます。
チェルノブイリの災害やロバート・スコットの南極遠征さえインスピレーションの一翼を担ったアルバムは、完全にインストゥルメンタルで、Chris の居場所はトレモロのメロディーや荘厳なコードワークへと静かに移行していたのです。
音の風景を楽器のみでよりアトモスフェリックに、よりディプレッシブに投影する術を学んだ WE LOST THE SEA。皮肉なことに、”Departure Songs” の美しい嘆きの音の葉は、世界を共鳴させバンド史上最大の成功をもたらすことになりました。
ライブ会場は、鬱や不安に苛まれる人々のセラピーの場所となり、バンドの音楽は困難に立ち向かう彼らを抱擁し大きな助けとなったのです。実際、メンバーが “美しき鬱” と定める Chris の遺志は、こうしてチャレンジャー号と同様残された者の推進力となりました。
「意図的に荒涼としたレコードを書き始めたんだ。実際、アルバムに希望を持たせるべきかどうかを議論したんだよ。そして最終的に、希望なしで何かを示すことは出来ないだろうという結論に達したね。」
“Triumph & Disaster” は “Departure Songs” のナチュラルなフォローアップ。同様に絶望や鬱、不安をその音に宿していますが、治療やセラピーという内なる場所から誰もが憂慮する環境問題へ目を向けた成熟のアート作品だと言えるでしょう。そして、崩れゆく世界にも存在する親子の愛はアルバムにおける一握りの希望となりました。WE LOST THE SEA に再び歌声をもたらした母の賛美歌 “Mother’s Hymn” はまさにその象徴でしょう。
「もし正直で心を動かすパワフルな音楽を書くとしたら、心の底から本心であたらなければならないよ。 」
亡き Chris、そして自らの音楽を語るとき、バンドは “Honest” “Real” の言葉を必ず使用しています。全てにおいて正直である。それはきっと “喪失” の長いトンネルに苦しみ抜いた彼らにとって1つの光明であり、出口だったのかも知れませんね。
今回弊誌では Mark Owen にインタビューを行うことが出来ました。「僕はね、早い段階でほとんどの人が音楽に宿る “でたらめ” をすぐに見破ることができると学んだんだ。もっともらしく正直である風を装っても、すぐそれを見破ってしまう。歌詞がなく、それでも感動的なアイデアを書こうとしている “ポスト” の世界の人々はこの本質を理解していて、その使い方を知っているんだと思うな。」 どうぞ!!
WE LOST THE SEA “TRIUMPH & DISASTER” : 9.9/10
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