EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PER NILSSON OF SCAR SYMMETRY !!
“Meshuggah Let Me – Even Insisting On – Play My Own Solos In The Songs, Not Copying Fredrik’s Solos, And I Had a Lot Of Fun With That. I Improvised Every Solo So That Every Night, I Could Try Something New.”
DISC REVIEW “THE SINGULARITY (PHASE Ⅱ)”
「MESHUGGAH のツアーで数年間は忙しかったし、NOCTURNAL RITES のアルバム制作とツアー、KAIPA との数枚のアルバムのレコーディング、他のバンドのプロデュースやミックスの仕事、セッションの仕事、2019年には父親になったし、世界的なパンデミックも起きた。だから、私生活でも仕事でも世界全体でもいろいろなことがあったんだよ!でも、アルバムがついにリリースされ、ファンが本当に気に入ってくれているようで、今は本当に素晴らしいと感じているよ!」
スウェーデンの近未来知的創造体 SCAR SYMMETRY がバンド結成20年のメモリアルに華々しい復活を遂げようとしています。主役はもちろん、あの MESHUGGAH で鬼才 Fredrik Thordendal の代役を長く務めたギターマスター Per Nilsson。紆余曲折のあったバンドですが、中心メンバーであった Christian Älvestam と Jonas Kjellgren が去って Per の創造性を心臓に据えた北欧の特異点は、メロデスのカタルシスとプログレッシブな冒険心を絶妙な “対称性” で律する最高の SF エピックを紡ぎ出しています。
「3部作の各章は、3部作の音楽世界の一部とつながり、感じられる必要がある一方で、僕は各フェーズが独自のものであることも望んでいたからね。だから、”Phase II” では、メロディや先進性を犠牲にしてでも、”Phase I” よりもかなりヘヴィでアグレッシヴなものにする必要があったんだ」
2014年に始まった SCAR SYMMETRY の “The Singularity” 三部作。キャリア・ハイとなった “Phase I” は、トランス・ヒューマニズム (科学技術で人間の身体や認知を進化させる思想) を軸としたSF コンセプト・アルバムで、精巧であると同時にバンドの歴史上最もキャッチーな作品でした。一般の人間と、金に物を言わせて自身を強化したエリート集団 “ネオ・ヒューマン” との階級闘争、そして戦争に発展する未来社会の物語。Per Nilsson 率いるスウェーデンの5人組は、9年後の “Phase Ⅱ” においても変わらず自信に満ち、強力で、自分たちの “シンギュラリティ” を完全にコントロールしているように見えます。
「近い将来、僕たちは AI に、僕たちが望み、体験したい芸術を創作するよう促すことができるようになるだろう。例えば、モーツァルトとポール・マッカートニーが作曲し、ボブ・ロックがプロデュースとレコーディングを担当し、ベースはクリフ・バートンに、ボーカルはエルトン・ジョンに……といったような曲を AI に作らせることができるようになる。もし、その結果に満足できなければ、AI に指示をして微調整してもらえばいいだけだろう」
とはいえ、2004年、境界のない新しいタイプのデスメタルを作ろうと結成されたバンドには、もはや AI の助力や指図は必要ないでしょう。巨大なシンセサイザーと、本物のデスメタルの嗎、官能的なクリーン・ボーカルはシームレスに組み合わされて、対称と非対称の狭間にある天秤のバランスを巧みに釣り合わせていきます。
FEAR FACTORY や SOILWORK も真っ青なメタル・ディストピアの残酷さに唖然とさせられた刹那、そこにメロディーが生まれ、エピックが兆し、プログパワーのような雄々しさとメロハーのようなエモーションが乱立していきます。深慮遠謀のリフワークに、天高く舞い上がる緻密な音のホールズワース階段こそ Per Nilsson の真骨頂。Jacob Collier や Tim Miller, Tigran Hamasyan まで咀嚼したメタル世界のエイリアン、最高のサブジャンルとギター・ナードの組み合わせは、すべてがユニークで予測不可能なサウンドを生み出すためにブレンドされているのです。
叫び声を上げるもよし、激しく頭を振るもよし、エアギターを達者に気取ってみるもよし、空を見上げながらメロディを口ずさむもよし。あらゆる形態のメタル・ファンにとってあらゆる条件を満たすアルバムがここに完成をみました。もしかすると、Per Nilsson はすでに、人工知能を宿したトランス・ヒューマンであり、このアルバムこそが “シンギュラリティ” を超えた未来なのかもしれません。
今回弊誌では、Per Nilsson にインタビューを行うことができました。「”Future Breed Machine”、”Rational Gaze”、”Bleed” といった僕のお気に入りの曲を演奏できた。そして観客が熱狂するのを見ることができた。彼らは、Fredrik のソロをコピーするのではなく、自分自身のソロを曲の中で演奏させてくれたんだ。僕は毎晩、何か新しいことに挑戦できるように、すべてのソロを即興で演奏したよ」 どうぞ!!
SCAR SYMMETRY “THE SINGULARITY (PHASE II – XENOTAPH)” : 10/10
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLACKWALD OF TWILIGHT FORCE !!
“The Last Few Years Of Hardships Have Affected Us All One Way Or Another, And If Our Music Was Able To Bring Just a Sliver Of Joy For Someone To Help Them Get Through Those Hard Times, We Have Truly Accomplished Greatness.”
DISC REVIEW “AT THE HEART OF WINTERVALE”
「現代のメタル音楽は、曲作りが合理的になってしまっている。パワー・メタルにおいて、面白い変化や予想外の変化を見出すことは、最近ではほとんどないんだよね。つまり、”最も抵抗の少ない道” を歩むことが、迅速かつ安定したペースで音楽やアルバムを作り上げることにつながってしまっているんだ。実験や創意工夫には時間がかかるからね。でも、そのためにメタルから多様性や実験への意欲が削がれてしまっているのかもしれないね」
10年代、そして20年代のパワー・メタルを牽引する北欧の黄昏は、彼の地の大自然と伝承、そしてファンタジーを刻み込んだ “At The Heart of Wintervale” において、王者の王者たる由縁を見せつけました。バンドの鍵盤奏者で黒魔法の使い手 Blackwald にとって、現代パワー・メタルの大半はステレオタイプで驚きのないもの。手間と時間をかけずに生み出したインスタントな創作物。しかし、魔道士はよく知っています。詠唱は長ければ長いほど、強力な呪文が発動するのです。
「ジョン・ウィリアムズやハワード・ショアといった映画音楽の作曲家に大きな影響を受けたし、彼らこそが僕にとっての “ヒーロー” だと思う。ハンス・ジマーのような人物も、シンセサイザー(ダークナイト)やパイプオルガン(インターステラー)など、非常にミニマルなツールや音で、喚起力と説得力のあるサウンドスケープを作り出し、大きな進歩を遂げている。印象的なモチーフやテーマを創り出す能力とスキルは、僕が賞賛し、憧れるもののひとつなんだ」
Blackwald が語る通り、”At The Heart of Wintervale” はパワー・メタルの定型を超越しています。もちろん、バンドの共同設立者 Lynd のフラッシーでテクニカルなギター・マジックは、アルバムの大きな見せ場であり、華。しかし、楽曲を前に進める原動力、設計図の原盤は、Blackwald が天塩にかけたシンフォニック・アレンジやシンセサイザー、ピアノやチェンバロにヴァイオリンの洪水です。なぜなら、Blackwald はこのトワイライト・キングダムに、壮大な映画音楽のメタルを築こうとしているから。
例えば、ハンス・ジマーが手がけたSF大作や、例えばアラン・メンケンが手がけた夢の国ディズニーのメタル盤があるとすれば、間違いなくそれはこの作品でしょう。それほど、Blackwald が手がけるオーケストレーションは完成度が高く、複雑怪奇でありながら耳にのこる印象力を備えています。数十年前の RHAPSODY の名作群と比べれば、時を超えていかに彼らのシンフォニック・アレンジや構成力、音の色彩が進化したかに気づくでしょう。
「”逃避” という行為は、人類の歴史の中で常に重要だったけど、おそらく今はかつてないほどその必要性が高まっている。常に相互接続され、即座に情報が飛び交い、錯乱するという過酷な現実は、人間の心に負担を与えているよ。僕は、音楽と芸術によるひとときの休息は、精神の幸福のために必ず必要な “安全な避難所” であると信じているんだ。だから、僕たちの音楽とそれに付随する物語を通して、リスナーが現実の束縛から解放されたり、現実の苦悩や苦難から解放された空想の世界に没入できればと願っているんだよ。ほんのひとときだけでもね」
そうして完成した “At The Heart of Wintervale” には、これもジマーやメンケンが手がけた空想の音楽と同様に、人々の “避難所” となるように真摯な祈りが込められています。D&Dのファンタジックなイメージで構成された8章からなるメタル・シネマは、磨きたての鎖帷子や重厚な鎧、黒のマントを身にまとい、ドワーフの鉱山やドラゴンの山、クリスタルの森など未到の地を未曾有の音楽で縦横無尽に駆け巡ります。SNS やインターネットが常に “オンライン” で、心の休まる暇のない現代。押し寄せる情報と暗い出来事をほんのひとときシャットダウンして、”オフライン” になるために、TWILIGHT FORCE の描き出す音景色やストーリーほど適した避難所はないでしょう。
TRICK OR TREAT でも知られるボーカル、Allyon こと Alessandro Conti の高らかなマイケル・キスク的威容に浸るもよし。エクストリーム・メタルの間合に潜むコミカルでプリティなセンスに酔うもよし。ただリスナーは、すべてを忘れてひとときの異世界転生をすればよいのです。アドヴェンチャー・メタルはまだまだ続いていきます。
今回弊誌では、Blackwald にインタビューを行うことができました。「ハイ・ファンタジーのエンターテインメントの多くは、僕たちの音楽や伝承に何らかの影響を及ぼしている。日本の多作なメディアの作品が、長年にわたってその一翼を担ってきたことは間違いないよ。”ベルセルク”, “ワンピース”, “デスノート”, “スタジオ・ジブリ”, “ファイナル・ファンタジー” など、想像力を刺激する日本の創作物の中には、僕たちのインスピレーションを形成してきた素晴らしい作品が数多くあるわけさ」2度目の登場。どうぞ!!
TWILIGHT FORCE “AT THE HEART OF WINTERVALE” : 10/10
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SIMON OHLSSON OF VOKONIS !!
“Opeth Is a Great Inspiration To Me, One Of My Favourite Heavy Bands Of All time. It’s Probably The First Time I Got Really Introduced To Prog Rock And Started My Journey There.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOM S. ENGLUND OF EVERGREY !!
“For Me, Personally I Can Only Base It On The Landscapes I Have Outside My House Which Indeed Is an Scandinavian One So If I Managed To Convey That Through The Music, That’s Great.”
DISC REVIEW “ESCAPE OF THE PHOENIX”
「僕にとってただ一つ重要なのは、僕が何を感じるかではなく、君たちが “何か” を感じてくれることなんだ。僕個人としては、自分の家の外に広がる、まさにスカンジナビアの風景に基づいて歌っているだけなんだよ。音楽を通してそれを伝えることができたなら、それは素晴らしいことだよね」
EVERGREY に宿り続けるメランコリー。宿命にも似たその陰は、いつしか退廃的なプログ・メタルの神話として語り継がれてきました。
世界中で数多くのファンが、EVERGREY の威厳に満ちた甘いメランコリーに心を打たれています。彼らのミソロジーを象徴するのが、Tom S. Englund の魂を込めた歌唱、誠実なリリックにあることは明らかでしょう。
「Vikram が EVERGREY の “Missing You” のカバーを演奏している YouTube のビデオを見て、彼のメロディのセンスと演奏へのアプローチの仕方が好きだと思ったんだ。だから彼にメールで、『バンドを始めようよ!』って言ってみたんだよ」
プログ・メタル世界で最大級の賛辞を送られる歌い手は、実にオープン・マインドです。近年、病と戦いながら音楽を続けるアメリカの戦友、Nick van Dyk の力になるため REDEMPTION にも加入していますし、無名だった若きピアニスト Vikram Shankar の才能に惹かれてすぐさま2人だけのプロジェクト SILENT SKIES を立ち上げています。
「僕は David Gilmour から Bruce Dickinsson まで、その間に存在する全てのシンガーに影響を受けているよ。自分は純粋に影響を受けたというよりも、むしろ “インスパイアされた” と思っているんだけどね」
SILENT SKIES のデビュー作 “Satellites” は、鍵盤とストリングスというシンプルな構造により、ボーカリストとしての Tom S. Englund の凄みが最も際立つ作品と言えるのかも知れませんね。
北欧の雪景色をANATHEMA の繊細、恍惚で表現した深く、悲しく、そして美しい音のミルフィーユ。俄然、すぐ後にリリースが決まっていた EVERGREY の “Escape of the Phoenix” にも期待が高まりました。
「僕とって、このアルバムはとてもハングリーでエネルギッシュな作品で、EVERGREY に新しいリスナーをもたらしてくれることは間違いないと感じているよ。つまり、任務完了だ」
25年以上のキャリアを経ても、EVERGREY の情熱と才能の井戸は枯れることを知りません。研ぎ澄まされたメタルのエッジと、儚くも美しい夢幻世界が絶妙なバランスで共存する芸術作品。暗闇の中にモダンな光を宿した直近の3部作を受け継ぎながら、”The Dark Discovery” の生々しさや “In Search of Truth” の情熱へと回帰した温故知新。この10年で翼を広げたアトモスフィアの奇跡を存分に享受して。
シングル曲の “Forever Outsider” と “Eternal Noctarnal” で最新のメタリックな牙とキャッチーな魅力をアピールする一方で、”In Absence Of Sun” の息を呑む情熱、繊細なピアノのフックは明らかにルーツへの回帰を匂わせています。SILENT SKIES の影響か、初期のごとく再び鍵盤に自由が与えられたことで、Tom Englund の哀愁にも磨きがかかります。
「James Labrie とのデュエットはとても素敵なことだったね。まるで僕たち二人だけの空間のような感覚で、一生大切にしたいと思う瞬間だったんだ」
クライマックスは “The Beholder”。自らがプログメタル世界へ飛び込むきっかけとなった DREAM THEATER の歌声との共演。いつしか、ジャンルで最高の評価を分け合うこととなった2人のデュエットは、2人の出自に相応しい思索に耽るような曲調で見事に溶け合っていくのです。
もちろん、EVERGREY のアルバムにバラードは欠かせません。”Stories” と “You From You” の考え抜かれた壮大には思わず息を呑みます。EVERGREY はテクニックで語らない。ギターソロの扇情力がそう物語り、アルバムに込められた希望と喪失、物憂げな内省の精神はこの2曲がミニチュアのように素晴らしく代弁しています。
“Stories” に示現した希望の光は、”Leaden Saint”、そして “Run” へと受け継がれ日の出のように燦々と降り注ぎます。あまりにドラマティックな物語の終焉には、純粋な至福と充実感、再生の喜びが待っていました。もしかすると、これは人類がパンデミックからの復活を遂げる預言者なのかも知れませんね。そうして不死鳥の脱出は、雲を突き刺すような明るい光でフィナーレを迎えるのです。
今回弊誌では、Tom S. Englund にインタビューを行うことができました。「僕がアルバムを「世界」に提供した時点で、それはもう僕のものではないような感じで、実際には世界が作品をどう評価するか、そしてそのアルバムが世の中でどのような位置を占めるかの方が重要だからね」金言です。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHANNES ECKERSTROM OF AVATAR !!
“On One Hand It Is Obviously True We Do Things In a Very Theatrical And Bombastic Manner. On The Other The Most ipmportant Asset to Any Stage Performer Is His Eyes. We Never Want To Lose Focus On The Humanity On Stage And In The Interaction With The Audience.”
DISC REVIEW “HUNTER GATHERER”
「僕たちがやっていることにはある種の二面性があるということじゃないかな。一方では、非常に芝居がかっていて、大げさなやり方でやっている。それは明らかな事実だよ。 でもその一方で、舞台のパフォーマーにとって最も重要な財産は自分の目なんだ。舞台上においても、人間性にフォーカスすることや、観客との対話を決して失いたくはないからね。」
RAMMSTEIN からリック・フレアー、果てはスタンリー・キューブリックまで、芸術における “シアトリカル” を濃縮したメタルのライジングスター AVATAR は、そのエピックを敷き詰めたステージにおいても人間を見つめる “目” の価値を忘れることはありません。
70年代に Alice Cooper がロックと演劇を一体化させて以来、KING DIAMOND, MARILYN MANSON とそのシアトリカルな血脈は絶えることなく受け継がれ続けています。20年近くに及ぶキャリアの中で、ゆっくりと、しかし確実にメタル世界で最も創造的かつ興味深く、予測不可能な集団の一つに成長した5人のクラウンは、そのショックロックの遺伝子にジョーカーの狂気を継ぎ足して北欧からジャンルや境界線の予定調和を打ち破ってきました。
「”Mad Max” は、たしかに僕たちが今向かっている道の一つかもしれないね。だけど “スタートレック” のシナリオだって存在するはずなんだ。強い意志があって、一時的な犠牲を払う覚悟があれば、この問題を解決できる可能性はある。僕たちの歌に描かれる、世界全体を通して繰り返し起こる大きな問題は、僕たちの道に立ちふさがっている。でも最終的には、誰も僕たちの正しい行動を止めることはできないんだよ。」
確かな “目” を備えた AVATAR にとって、この呪われた2020年に “Black Waltz” のサーカスや、”Avatar Country” の幻想的な旅路を再現することは不可能でした。かつて完全に想像の産物であった世界の終末、ディストピアを肌で感じた現代のアバターは、そうして破滅のシナリオを回避するためのレコード “Hunter Gatherer” を世に送り出したのです。
たしかに、虹やドラゴン、聖剣の妄想で現実から逃れることは難しくありません。しかし、マッチの炎が消えた暗闇には冷徹な現実が残されます。AVATAR はそれよりも、闇に直面し、闇を受け入れ、世界をあるがままに受け入れる道を選びました。彼らのトレードマークでもある毒舌家で生意気なアティテュードも、ダークで怒りに満ちた人間性をシニカルに表現するレコードとピッタリ符号しました。
「この不確かな時は、僕たちが近年の自分たちよりも (闇や権力との) 対決姿勢を深めた理由にも繋がるんだよね。その対決姿勢は過去から現在までのメタルアルバムたちにも言えることだと思うんだ。僕たちメタルバンドはみんな、様々な方法で闇を探求し、闇に立ち向かう傾向があるから、暗い時代において僕たちの音楽は重要な役割を果たすわけさ。」
つまり、2020年の呪いはメタルが解くべきなのでしょう。Devin Townsend の “Deconstruction” の邪悪なグルーヴと THE HAUNTED の暴走がシンクロするオープナー “Silence in the Age of Apes” でテクノロジーの盲信に唾を吐き、GOJIRA のグルーヴにシンガロングを誘うビッグなコーラスを織り込んだ “Colossus” でディストピアの悪夢を描く “Hunter Gatherer” のワンツーパンチはいかにもシニカルです。
マカロニウエスタンな Corey Tayler の口笛からパンキッシュに疾走する “A Secret Door” はまさに AVATAR を象徴するような楽曲でしょう。ステージにおいてシアトリカルであることを指標する彼らにとって、物語りの豊かさは切っても切り離せない能力です。60年代のストーリーテラー Leonard Cohen, Willie Nelson のカントリーフォークとダイナミックなメタルはそうして AVATAR の胎内で出会いました。もちろん、インタビューに答えてくれた Johannes が敬愛する BLIND GUARDIAN にしても、ストーリーを大仰に伝える才能は群を抜いていましたね。
かつてデスメタルの本質は凶暴なリフやスピードよりもグルーヴと語った Johannes の本領が発揮された “God of Sick Dreams” はパワーメタルと結びついてバンドの新たなアンセムとなり、一方で “Justice” の叙情と哀愁は日本のファンにも大いにアピールするセレナーデでしょう。
極め付けはレコードで最も多様な “Child” で、マーチングバンドから激烈なメタル、求心的なコーラスにカオティックなジャムとアコースティックなアウトロそのすべては、ロボトミー手術が正当だと信じられていた時代の悲哀と愚かさを演じるためだけに存在します。時を経た2020年、常識と情報、そのすべては盲目に信じられるものなのでしょうか?
今回弊誌では、稀代の演者にしてボーカリスト Johannes Eckerström にインタビューを行うことが出来ました。「鳥山明から黒澤明、村上春樹からタイガーマスク、上原ひろみから tricot まで、日本からの多くの創造的な衝動が、僕の個人的でクリエイティブな旅を形作ってきたんだ。」Babymetal との US ツアーでも話題に。ギター隊の常軌を逸したハイテクニックも見逃せませんね。どうぞ!!
“Okay, So If Vikings Didn’t Have Horns On Their Helmets, Why Did We Have Them On Our Drum Riser? Amon Amarth Is a Show. It Makes For a Good Stage Prop To Have Horns, Even Though It’s Not Historically Accurate.”
JOHAN’S GUIDE TO VIKINGS & NORSE MYTHOLOGY
AMON AMARTH がヴァイキングの歴史、北欧神話、そして壮大な戦闘絵巻について書いた最初のメタルバンドという訳ではありません。それでもこのストックホルムの5人組は、世界で最もヴァイキングをイメージさせる雄々しき邪神です。
過去4半世紀にわたって、彼らはムーブメントの創始者でさえ想像も成し得なかったオーディンメタルを紡いで来ました。ビルボードデビュートップ20、ワールドツアー、さらにはモバイルビデオゲームまで、その社会的影響と成功、さらにアリーナを熱狂に巻き込むライブパフォーマンスを鑑みればネクスト IRON MAIDEN の座を確約されているように思えます。
純粋性という観点で言えば、AMON AMARTH は真のヴァイキングメタルではないかもしれません。ブラックメタル第一波の先駆者である BATHORY がサタンを称賛しなくなり、異教のルーツを受け入れたように。そう、アトモスフィアと剣撃を配置した新たな BATHORY の音の葉は、後にヴァイキングメタルのトレードマークとなる魔法を含んでいました。
90年代半ばから後半にかけて、UNLEASHED, ENSLAVED, EESIFERUM, ELUVIETIE はヴァイキングの旅団に加わり、ブラックメタルを北欧民族の神話や伝承、神から得る知恵と力、怒りの海を股にかける航海、暗く危険な森、死との戦い、ヴァルハラの門を越えた永遠の生といったテーマに憑依させました。
対照的に、AMON AMARTH は、AT THE GATES や DARK TRANQUILLITY といったスウェーデンのメロディックデスメタルをスタート地点としています。故に、先述のヴァイキングメタルパイオニアとは毛色が異なります。しかし当初から、ボーカリストの Johan Hegg はヴァイキングの祖先に魅了されていました。彼は詩的な民間伝承を知っていて、コロンブスが到達する500年前の北アメリカの海岸線へのヴァイキング遠征と、ウクライナとロシアへの9世紀の探検を深く研究していたのです。
“The Last Death Metal I Bought Because I Was Interested Was “Domination” by Morbid Angel. That’s 1995, a Long Time Ago Now. I’m Not Saying It’s Just Been Bad Releases Since Then, Of Course Not, But That’s The Last Time I Felt Like I Wanted To Hear What’s New.”
ただし音楽を先に生み出し、後に歌詞をつけるのが Mikael のライティングスタイルです。普段は50分ほどのマテリアルで “打ち止め” する Mikael ですが、”In Cauda Venenum” のライティングプロセスでは溢れ出るアイデアは留まるところを知りませんでした。
「この作品ではこれまで以上に書いて書いて書きまくった。それで3曲もボーナストラックがつくことになったんだ。」
スウェーデン語のアイデアは、当初メンバーたちの同意を得られなかったと Mikael は語っています。ただし、何曲かのデモを聴かせるとその考えは180度変わりました。
「奇抜なアイデアと思われたくはなかったんだ。いつも通りやりたかったからね。ただ別の言語を使っているというだけでね。」
スウェーデン語バージョンと英語バージョンの違いは Mikael の歌唱のみ。「言葉がわからないからアルバムをスキップしてしまうのでは」という不安から英語でも吹き込むことを決めた Mikael ですが、彼のクリーンボイスはビロードの揺らぎで溶け出し、スウェーデン語の違和感を感じさせることはありません。むしろ際立つのは言葉に宿るシルクの美しさ。
実際、その不安はすっかり杞憂に終わりました。Billbord のハードロックアルバムチャート3位、ロックアルバム9位の健闘ぶりはそのアイデアの魅力を素直に伝えています。
どちらかと言えば Mikael はスウェーデン語のバージョンを推奨しているようです。
「スウェーデン語がオリジナルで最初に出てきたものだから、やはりイノセントだし少しだけ良いように思えるよ。まあ選ぶのはリスナーだけどね。」
故にアルバムタイトル “In Cauda Venenum” はどちらの言語にもフィットするようラテン語の中から選ばれました。「尾には毒を持つ」ローマ人がサソリの例えで使用したフレーズは、フレンドリーでも最後に棘を放つ人物のメタファー、さらには “想像もつかない驚きを最後に与える” 例えとして用いられるようになりました。
Travis Smith が描いたアートワークもその危機感を反映します。窓辺に映るはメンバーそれぞれのシルエット。ヴィクトリア建築の家屋は悪魔の舌の上に聳えます。「悪魔に飲み込まれるんだ。最後には不快な驚きを与えるためにね。」
ではアルバムに特定のコンセプトは存在するのでしょうか?
「イエスと言うべきなんだろうがノーだ (笑)。コンセプトアルバムとして書いた訳じゃない。ただ、”Dark Side of the Moon” みたいなアルバムだと思うんだ。あの作品を聴いてもコンセプトは分からないけど、循環する密接なテーマは感じられる。KING DIAMOND みたいに明確なコンセプト作じゃないけどね。だから俺は言ってみれば現代の “リアル” をテーマにしたんだと思う。」
2016年にリリースした “Sorceress” との違いについて、Mikael は前作はより “イージー” なアルバムだったと語ります。
「”Sorceress” はストレートなロックのパートがいくつか存在するね。構成もそこまで入念に練った訳じゃないし、ストリングスもあまり入ってはいないからね。」
一方で “In Cauda Venenum” は 「吸収することが難しく、”精神分裂病” のアルバム」 だと表現します。その根幹には、深く感情へと訴えかける遂に花開いた第2期 OPETH のユニークな多様性があるはずです。
さらにギタープレイヤー Fredrik Åkesson もここ10年で最も “練られた” アルバムだと強調します。
「”Watershed” 以来初めてレコーディングに入る前にバンドでリハーサルを行ったんだ。僕はいつもそうしようと主張してきたんだけどね。おかげで、スタジオに入る頃には楽曲が肉体に深く浸透していたんだ。そうして、可能な限りエピックなアルバムを製作するって目標を達成することができたのさ。」
そして Mikael からのプレッシャーに苦笑します。
「僕はギタリストにとって “トーン” が重要だと思っている。理論を知り尽くしたジャズプレイヤーでもない限り、トーンを自分の顔に出来るからね。”Lovelorn Crime” では Mikael から君が死ぬ時みんなが思い出すようなギターソロにしてくれって言われたよ。(苦笑)」
では Fredrik は現在の OPETH の音楽性をどう思っているのでしょうか?
「もし “Blackwater Park” のような作品を別のバージョンで繰り返しリリースすれば停滞するし退屈だろう。ただあの頃の楽曲をライブでプレイするのは間違いなく今でも楽しいよ。Mikael のグロウルは今が最高の状態でとても邪悪だ。だからまたいつかレコードに収録だってするかも知れないよ。」
Mikael が OPETH を政治的な乗り物に利用することはありません。それでも、スウェーデンの “偽善に満ちた” 社会民主労働党と右派政党の連立、現代の “リアル” を黙って見過ごすことは出来ませんでした。
「”Hjartat Vet Vad Handen Gor/Heart in Hand” はそうした矛盾やダブルスタンダードについて書いた。俺の社会民主的な考え方を誰かに押し付ける気はないんだけどね。アイツらと同じになってしまうから。だけど奴らの偽善だけは暴いておきたかった。」
Mikael にとってそれ以上に重要なことは、涙を誘うほどにリスナーの感情を揺さぶる音楽そのものでしょう。
「もっとリスナーの琴線にふれたかったんだ。究極的にはそれこそが俺の愛する音楽だからね。ただ暴れたりビールを飲んだり以外の何かを喚起する音楽さ。つまり、このアルバムをリスナーの人生における重要な出来事のサウンドトラックにしたかったんだ。上手くいったかは分からないけどね。」