NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CICADA THE BURROWER : CORPSEFLOWER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CAMERON DAVIS OF CICADA THE BURROWER !!

“I Wanted The Name And Aesthetic Of The Record To Reflect The Duality Of My Personal Experience Being a Transgender Woman. It Seemed Like The Best Way To Do That Was To Combine Something Lifeless, a Corpse, With Something That Represents Life And Femininity, Flowers.”

DISC REVIEW “CORPSEFLOWER”

「私はトランスジェンダーの女性であるという個人的な経験、その二面性をレコードの名前と美学に反映させたいと思ったの。それには、生気のないもの、つまり死体と、生気や女性らしさを表すもの、つまり花を組み合わせるのが一番良い方法だと思ったのよ」
ブラックメタルは痛みを解放し人生を肯定してくれる魔法なのでしょうか。LITURGY の Hunter-Hunt Hendrix がトランスジェンダーの女性であることを公表したと時を同じくして、CICADA THE BURROWER の Cameron Davis も真の自分を世界に解き放ちました。
「このまま世の中には黙って性同一性障害を抱えて生きていくのがいいのか、それともトランスジェンダーであることを明らかにして社会的な影響を受けるのがいいのか。この葛藤を “Corpseflower” がうまく伝えてくれることを心から願っているわ」
美しい花には骨があります。自らのプロジェクトを “穴の中の蝉” と名付け、自らを羽化する前の蝉の幼虫に例えた Cameron にとって、”Corpseflower” は自身の痛み、苦悩、そして一握りの希望の両面を迷いの中から描き出す羽化の葛藤。二面性というスティグマは彼女の生にずっと宿っていて、死体と花は彼女の化身である音楽にも当然のように憑依していきます。
「ALCEST や DEAFHEAVEN のようなバンドは、私が “peak and valley” “山と谷” と呼んでいる優れた曲構成を実践している。彼らは、曲の激しい部分(山)を強調するために、繊細な部分(谷)を使用するの。私が “Corpseflower” で行ったことは、同じような考え方に基づいているんだけど、その方法論へのアプローチの仕方は、より抽象的で矛盾した感情を表現している可能性が高いと思うわ」
ラウンジ・ジャズやアダルト・コンテンポラリーがブラックメタルとまぐわう日をいったい誰が想像したでしょうか。Cameron はブラックゲイズの先駆者 ALCEST や DEAFHEAVEN の培った”山と谷” の方法論を、より高低差の大きい相反する二極での実験へと進化させました。自分が何者かを学び、未来の自分に折り合いをつけるため、彼女は映画のサウンドトラックのような眩くもキャッチーなジャズの煌めきと、暗闇に蠢くブラックメタルの牙をためらいなく混ぜ合わせ、美と暴力の混沌の中で自分自身を遂に見つけたのです。
そのシンプルで複雑な、ヒプノティックで没入感に満ち、即興的で筋書きのある光と闇のドラマは、そうしていつしかリスナーの人生まで抱きしめて、すべてを肯定していくのです。
「今日のブラックメタル・アーティストが生み出すサウンドにとって非常に重要な存在だよ。彼らが歩いたから、私たちは走ることができた。当時、音楽に許されていた限界を超えようとした彼らの意欲に、私は心から感謝しているのよ。彼らは、それまで探求されていなかったエクストリーム・ミュージックの隠れた可能性を明らかにしてくれたんだからね」
皮肉なことに、かつて最もプログレッシブから遠い世界と思われたブラックメタルは激しく変化し、今では最も進歩的なメタルサウンドを響かせています。DEAFHEAVEN や ALCEST のシューゲイザー、ZEAL & ARDOR のゴスペルとソウル、IMPERIAL TRIUMPHANT や KRALLICE, LITURGY のジャズ/現代音楽。そんな混乱するほど魅力的で複雑なブラックメタルの枝葉において、CICADA THE BURROWER はむしろダークウェーブやブラックゲイズを取り入れたジャズともいえる前衛的世界観で稀有な果実を実らせました。
リスクを冒す価値はありました。ここには、存在の本質的な寂しさ、選択の自由という野蛮な牢獄、そして心の季節の移り変わりが崇高なまでに如実に描かれているのですから。そうして蝉の幼虫は、暗い穴からゆっくりと、ゆっくりと木の幹を登っていきます。
今回弊誌では、Cameron Davis にインタビューを行うことができました。「セミは、一生の大半を地中に潜って過ごし、死ぬ数週間前に地上に出てきて、空を飛ぶ大きな生き物に変身する魅力的な虫。私はいつもこの生き物に共感していて、自分自身もまだ地下に潜っている人間だと思っているの。だから、私はこのプロジェクトを “Cicada the Burrower” “穴の中の蝉” と呼ぶことにしたんだよね」どうぞ!!

CICADA THE BURROWER “CORPSEFLOWER” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【MDOU MOCTAR : AFRIQUE VICTIME】


COVER STORY: MDOU MOCTAR “AFRIQUE VICTIME”

“I’m Not Calling Anyone To Provoke War, But I Am Calling The Whole World To Stand Up And Revolt Against The Conditions We Face. We Don’t Have The Technology Here In Niger To Manufacture Weapons, So How Are They Entering The Country? Why Are Other Nations Storing Tools Of War On Our Land? France, The US, NATO – They’re All Complicit.”

TEARS OF SAHARA

Mdou Moctar の人生は見えない運命に導かれているようです。彼の物語は、縺れ合う巨大な糸の塊のようであり、その中には何度も立ち止まり、また歩みを進める場所があるのです。
Mdou は80年代半ば、ニジェール南西部の町アバラックで生まれました。彼は、ニジェールの人口の約10%を占める、サハラ砂漠に住む歴史的な遊牧民であるトゥアレグ族の一人。青衣の民、トゥアレグの文化では、音楽はコミュニティの根幹であり、解放の道具であり、闘争からの解放でもあります。しかし、Mdou の宗教的な両親は、彼が創造的に探求することを拒みました。それでも彼は、自転車のワイヤーと廃材を使って最初のギターを手作りし、左手で弾き語りを始めたのです。
その後、トゥアレグ族の伝統的な歌に、隣国ナイジェリアで流行していたドラムマシンやオートチューンを融合させるという新境地を開拓した Mdou。そうして2010年代初頭には、彼の曲のラフ・レコーディングはサハラ砂漠を吹き抜ける幻の風のように、Bluetooth やメモリーカードを介して携帯電話から携帯電話へと侵食していったのです。
これに興味を持ったのが、旅するアメリカ人ブロガーで音楽学者のクリス・カークリーでした。1億人に1人の才能を聴いていると確信したカークリーは、何年もかけて彼を追跡し、Mdou のためにあつらえた左利き用の漆黒のギターを背中に背負って砂漠を自転車で走りつづけました。ミッションは成功します。
2013年から2015年にかけて、Mdou から大量のアルバムが生み出され、カークリーのレーベル Sahel Sounds から世界中にリリースされていきます。時を同じくして、”Purple Rain” のセミオマージュフィルムが制作されます。この作品は、トゥアレグ族の言語であるタマシェック語で撮影された歴史上初の長編作品。カークリーは、Mdou と Prince のカリスマ的な類似性を引き出すことを意図しましたが、1つだけ問題がありました。タマシェック語には「パープル」という言葉が存在しなかったのです。
そうして2015年に公開されたのが、音楽ドラマ “Akounak Tedalat Taha Tazoughai”(訳注:『青の色の雨に少しの赤が混じっている』)でした。この映画はカルトヒットとなり、その後5年間 Mdou のカレンダーを海外ツアーの日程で埋め尽くしました。1980年代の Prince の全盛期に一緒に演奏したリサ・コールマンは、この比較はまったくもって正当であると後に語っています。
こうした伝説をまとめると、マハマドゥ・スーレイマン(Mdou は省略されたニックネームで、Moctar または Mokhtar はアラビア語で「選ばれし者」を意味する)は、アフロビートの父、フェラ・クティのような西アフリカの神話的ミュージシャンと肩を並べる、そんな期待感が渦巻きます。

ただし、Mdou Moctar は神話ではなく一人の人間です。彼は現在、タホアの街に住み、働く男で、彼の仕事は音楽だけではありません。
「アルバムを出すたびに井戸を掘っている。ニジェールでは水の確保が大きな問題になっているんだ。だから村々をまわって、援助を買って出ているんだよ。女性が現地でどのような扱いを受けているか確かめ、医療の改善を促し、家族の中における父親のような存在になりたいと思っているんだ」
世代を超えた才能を持つ Mdou ですが、つまり彼の現実は Prince やフェラ・クティのような大物とは大きく異なるのです。クティは、母親が女性の権利擁護の先駆者であり、1980年代には処刑の脅威にさらされ、ラゴスの警備された屋敷で活動する必要があったといいます。Prince のペイズリー・パークは、それ自体が要塞でした。
Mdou は、タホア、アガデス、そしてその他の地域で、意欲的なミュージシャンの間では大きな影響力を持っていますが、彼は普通に人々の間を歩いています。結婚式のセレナーデを彼に依頼したり、小額で彼の車を借りたりすることも可能。
30代になる以前、Mdou は西洋のロックンロールを知りませんでしたが、エディ・ヴァン・ヘイレンのような新旧の人気バンドの演奏を吸収して以来、彼のテクニックはさらに大胆になっています。フレットを指で叩いても、親指と人差し指をボディに当てて振動させても、噴出する太陽フレアのように音が炸裂し、ファズは空中にそびえ溶けていくのです。
Mdou の演奏は、色、進化するリズム、豊かなメロディーが織りなす変幻自在のライオットと言えるでしょう。それは、エレクトリック・ギターに潜む無限の可能性を思い出させてくれるものであり、錆びついたペンタトニック・シェイプや退屈なロックの決まり文句から新しい血を搾り取ろうとして行き詰るプレイヤーへの解毒剤でもあるのかもしれませんね。
彼の喜びに満ちた現代的なフィンガースタイルの演奏は、砂漠のブルースやトゥアレグのギタースタイルと、ウェスタンロック、サイケデリア、ジャズの要素を融合させています。彼の評価は、サヘル(サブサハラ)のギター音楽を代表する一人というだけでなく、世界で最も優れた、そして間違いなく最も表現力のあるギタリストの一人であるというコンセンサスが徐々に形成されつつあるのです。

2019年の “Ilana: The Creator” によって Mdou はより多くの人に知られるようになりましたが、最新作 “Afrique Victime” は彼をさらに一段推し進めることになりそうです。インディーレーベル Matador からリリースされたこのアルバムは、フランスとアメリカの帝国主義に対する痛烈な反撃であり、ニジェールでの天然資源の略奪に反発する一方で、砂漠の生活の美しさを主張しています。前作 “Ilana” は、この異文化間の抱擁の結果として生まれた作品でした。アメリカで録音されたアルバムは、ニジェールの砂漠からミシシッピ・デルタを経て、西海岸の太陽の光を浴びた海に足を踏み入れるまでの、激しいサイケ・ロックの旅。一方で今回のアルバム “Afrique Victime” は、Mdou の祖国とアフリカ大陸に対する感情を極限まで表現しています。帝国の崩壊や政情不安の中で耐え続けている苦しみを訴えるものから、愛する人や故郷であるアガデス地方での優しい満足感に浸るものまで。つまり、最も直接的で政治的なアルバム。
「僕は自然の中で見たものや、もちろん自分の周りで起きている最近の出来事からインスピレーションを受けて作品を作っている。だから、作品を作った時期によっても内容は異なるよね。現在は、特にカダフィが殺されてからのアフリカの苦悩を強く感じているんだ。様々な国でテロが多発している。ボコ・ハラムのテロリストが毎日のように襲ってきているしね。そして、サヘルやアフリカ全体のさまざまな国で犯罪が起きている。
もちろん、それぞれの国にはより具体的な問題があり、事情は異なっている。ニジェールの場合は、砂漠でのテロリストの問題と、フランスとアメリカの軍事基地が設置されていることによる影響が大きいと思うんだ。他のアラブ諸国からも影響を受けているよ。例えば、最近ではアフリカの指導者イドリス・デビーが殺害された。彼はチャド出身のリーダーだったんだ。彼はテロリスト、特にボコ・ハラムと戦っていた。悲しいことに、彼はもういない」
“Afrique Victime” には、これまでで最も野心的でパワフルな演奏(タイトル曲のヴァン・ヘイレン風の驚くべきソロなど)が収録されていますが、もちろん “Ilana” 以前に磨いたアコースティックな作業をより多く取り入れているため、”Tala Tannam” のような繊細な演奏も封入されています。彼自身の言葉を借りれば、「初期の VAN HALEN と BLACK FLAG と BLACK UHURU」に近いもの。つまり、目の覚めるようなギターライン、新たな政治的怒りと、自分の土着の文化を代表し称えること。彼が挙げたアーティストの精神は間違いなくアルバムへと書き込まれています。

ただし Mdou は、自分の作品を意図した通りにプロモーションすることができていません。
「ツアーはしたいけど、今はあまり音楽に触れられないんだ。新しい生活に適応しなければならないから」
ロンドンからアガデスまで、飛行機で3回、バスで28時間かけて移動しなければならないことを考えると、ロックダウン中の移動は困難を極めます。2月下旬、選挙結果が争われたことで、ニジェールは一時的に不安定な状態に陥っていました。緊張を和らげるために(あるいは反対意見を封じ込めるために)、2週間ほどインターネットさえ使えなくなったのですから。
ブルックリン出身のプロデューサーで、Mdou のベーシスト Mikey Coltun。彼のふわふわの髪の毛とアメリカ訛りは、このバンドの中で明らかに異端児であることを示しています。父親が所有する西アフリカやアバンギャルドのレコードに精通していたMikey は、00年代後半 Sublime Frequencies の “Guitars From Agadez” シリーズに魅了され、10年以上にわたってマリやナイジェリアのグループで演奏してきました。2017年にMdouの初のアメリカ旅行を、ブッカー、マネージャー、ドライバー、そして万能のブースターとして促進した Mikey は、ライブでもベースを担当。そしてアメリカツアーが終わるとニジェールに来てトゥアレグ族として生活をはじめたのです。
「変わった状況に置かれるのが好きなんだ。トゥアレグの生活スタイルは信頼が第一で、みんなとても仲がいい。いつも何人もの人が一緒にいて、足を絡めたり、床に寝そべったりして、お互いに重なり合っている。自分の部屋に行って何かをしようというようなことがないんだ。プライバシーというものは、存在として非常に異なっているんだな。トゥアレグ族は、一人になる時間を利用して考え事をする。それはとても美しいことだよ」
Mikey は、パンデミックに見舞われる前、Mdou の3年間で500回以上のライブを行ったと推測しています。この4人組は1日に何組もの地元の結婚式をこなしていたのです。
「僕がアガデスに到着した最初の夜、僕たちは人里離れた茂みの中の結婚式に車で直行したことを覚えている。アンプや機材を水に浮かべて川から運び、セッティングして、演奏して、解体して……。僕はワシントンDCのパンクシーンで育ったから、このDIYのやり方はとても自然に感じられたんだ。コミュニティに馴染むためには、とにかくやってみることが一番なんだよね」
13年来のつきあいで、Mdou が弟と呼ぶリズムギタリスト Ahmoudou Madassane にとって、欧米に行くことは同胞のためにも重要でした。
「僕は、同志のサポートにとても個人的な思い入れがあるんだ。彼らが直面している問題や障壁は、僕も経験したことがあるから。欧米に行くことで得られるメリットを共有し、彼らの成長を支援したいんだよね」
グループには本物の親近感が漂っています。10代の頃にリビアを1週間かけて歩いたことが、十分な耐久トレーニングになったとMdouは笑います。Ahmoudou は、ジャック・ホワイトのサードマン・スタジオでのレコーディングの合間に、デトロイトのモータウン・ミュージアムを訪れたことを懐かしく思い出しながら、”音楽の歴史にとって重要な場所” を訪れるために、空いた時間を活用しています。
少年時代にひょうたんで演奏してリズム感を磨いた Souleyman にとって、Mdou は尊敬する人から、褒めてくれてジャムをしようと言ってくれる人、そして初めてニジェールの外に連れて行ってくれる人になりました。ドラマーは、「Mdou は私の兄弟だと思っている」と平然といってのけます。

バンドはトゥアレグ文化の大使であることを誇りにしています。彼らは、伝統的なタジェルムストを身にまとい、顔を覆ったり、ベールを肩に流したりしながら、プラム色、クリーム色、そしてこの地方で好まれるインディゴ色を交互に配したローブを着て演奏します。Mdou は、故郷に女子校を建設するための資金調達のために、トゥアレグ族のジュエリーを販売するマーチャンダイジングテーブルを設けています。
Ahmoudou の妹である Fatou は、Les Filles de Illighadad という素晴らしいバンドを率いています。このバンドは、厳格な家父長制の文化の中で活動する、画期的な女性フロントのバンドです。Ahmoudou は必要に応じてオンオフのマネージャーとギタリストを務めていますが、トゥアレグ族初の女性ボーカルバンド Les Filles de Illighadad が国外で人気を博しているのは Mdou の支援の賜物です。女性の権利の問題も、”Afrique Victime” が正面から取り組んでいるテーマなのですから。
「僕は多くの家族と話をして、できる限りの支援をしようとしているんだ。だけど特に遊牧民の家族の場合、女性を教育することを恐れているというのが、ニジェールでの大きな問題のひとつ。砂漠には良い高校がないから、女の子は一人で街に出なければならない。通常、両親は彼女を経済的に支えることができないので、彼女は食べることと家賃を払うことに苦労し、簡単に利用されてしまうんだよね。妊娠した女の子を退学させる学校の傾向が問題をより悪化させている。将来的にはより良い、より支援的な教育機会を提供できればいいんだけど」
親密なバンドは完全にコントロールされています。Mdou と Ahmoudou のリフに続く Mikey の変幻自在のグルーヴ、Souleyman は唇からタバコを垂らしながらドラムを叩いていきます。女性が前に出て月明かりに照らされながら踊り出れば、Mdouは、プリンスのように口角を上げて軽やかに彼女の方向に向かってホットステップを踏み、その後、ハチドリのようなスピードでソロを披露します。
「観客が僕のエネルギー源だということを、何年もかけて理解してきた。観客は僕に勇気を与えてくれ、普段は出せない音を出すことができる。ライブで起こったことは再現できないよ」。
「年配の、白人の、”ワールドミュージック” の観客を相手にしたショーをやったことがあるんだ(笑)。お金はいいかもしれないけど、僕らはいつもそんな場所からは離れていたいと思っていたんだ。”Ilana” や”Afrique Victime” では、BLACK SABBATH やZZ Topをよく聴いていたから、Mdou が実現したいサウンドや感覚は、まさに “クリーンだけど生々しい” というものだったよね」 そう Mikey は付け加えました。

Mdou は当初、歌詞に政治的なテーマを盛り込むことを拒み、代わりに都会に住むトゥアレグ族の若者たちにアピールする音楽を目指していました。”Afrique Victime'” はそのすべてを変えました。基本的にアルバム全体を通して、Mdou は汎アフリカ的な連帯感を表現し、周囲の人々に嫉妬を捨てて信仰を抱くよう呼びかけ、サハラの生活を広くロマンチックに描いています。
ただし、タイトルトラック “Afrique Victime” は、Mdou Moctar がテープに残した中で最も直接的な曲であり、恐るべきアートの反抗です。Mdou は、不安定さを助長する残存する植民地勢力を非難し、ネルソン・マンデラへの不当な扱いを非難し、フランス語でリフレインを繰り返します。
「アフリカは非常に多くの犯罪の犠牲者である/もし我々が黙っていれば、それは我々の終わり/兄弟たちは、アフリカのために何かをしなければならないのだ」
Mdou には伝えなければならないことがありました。
「僕はずっとフランスの統治システムが嫌いだった。フランス人を侮辱しているわけではないけど、政府が僕たちを人間ではないかのように扱うのは耐え難いことだよ。フランスの企業はニジェールのウランと金をすべて採掘しているけど、僕たちの問題は何も解決していない。僕は幼い頃からそれをずっと見てきたんだ。現代の奴隷制度、人種差別、植民地主義が合わさったようなものだよ。さらにこのニジェールでも、肌の色が濃いトゥアレグ族と薄いトゥアレグ族に分かれているんだから。肌の色が濃い人たちは最も力のない少数派で、僕は自分の特権を彼らと分かち合うことを大切にしている。具体的には、僕が利用できるお金のことだよ。だけど、人口の90%が電気を利用できないとしたら、こんなな状況でどうやって良い生活を送ることができるんだい?」
Mdou の声が熱を帯びていきます。
「僕は誰かに呼びかけて戦争を誘発しようとしているわけではないんだよ。”Afrique Victime” では全世界の人々に、僕たちが直面している状況に対して立ち上がって反乱を起こすよう呼びかけているだけなんだ。ニジェールには武器を製造する技術がないのに、どうやって武器が国内に入ってくるんだ? なぜ他の国は僕たちの土地に戦争の道具を保管しているんだろう?フランスもアメリカもNATOも、みんな共犯だよ。ここではみんな、フランスこそが真のテロリストだと言っているよ。なぜ彼らはここにいるのか?なぜだ?」
激しさは頂点に達します。
「アメリカは空から人を殺せるようになったのに、パイロットは砂漠に住む4000人のテロリストを排除できないのか?52カ国の影響力をもってしても、その問題を解決できないのか?どうして?!…それは彼らが我々を弄んでいるからだと思う。彼らは僕の仲間を弄んでいる」

アフリカで音楽が果たす役割についてはどう感じているのでしょうか。
「僕にとって音楽は武器。音楽があれば、僕の血涙のメッセージを全世界に向けて発信し、私の周りで起こっていることを語ることができる。それ以外の手段はないんだよ。
今のところ、僕の音楽が周りに大きな変化をもたらすことができたとは言えないけれど、いつかはそうなるかもしれないと思って期待しているんだ。たとえ変わらなくても、サヘルで何が起こっているかを人々が少なくとも知ることができただけでも、僕にとっては大きな収穫であり、非常に重要なことなんだ。だからこそ、このような状況に関するメッセージを発信する手段として、僕は音楽を選んだんだよ。
今日、物事はどんどん速く変化している。この種のメッセージを発信しているアーティストは僕だけじゃないよ。サヘル地域では、Tinariwen や Alpha Blondy などのバンドが同じように、革命のメッセージを発信している。みんながベストを尽くしているのだから、僕もその道を歩みたいし、最終的な目的は平和なのだから、そのための努力を続けたいよね」
何世紀にもわたって蓄積されてきた貧困と隷属を解消するだけでなく、Mdouが日々取り組んでいる重要な問題もあります。
「女性の権利も重要な課題だよ。病院の改善は必須だしね。いまだに砂漠の木の下で出産している人がいるけど、これはとても危険だよ。長期的には、すべての女性が学校に通い、自分で医者になったり、音楽の仕事をしたりする機会を持つべきなんだ。機会の平等こそが、現代生活の次のステップだと思っているから」
彼が資金提供していた学校は現在も建設中ですが、最近の市民運動の影響でいくつかの井戸が汚染されたり破壊されたりしているため、Mdou はまずそちらにエネルギーを集中させる必要があると考えています。
「僕たちがやっていることを通じて、情報を広めていきたいと思っているんだ。世界の権力者たちがこの話題に触れ、罪のない人々が無駄に苦しんでいることを真に受けなければ、変化は起こらないと思っているからね。ニジェールでは、電気、教育、食糧へのアクセスが少なく、それが国民を抑圧し続ける不平等なシステムを維持する重要な要因となっている。誰が善人で誰が悪人なのかを皆が知ることは非常に難しく、情報へのアクセスが厳重な秘密にされているんだよ」

国際的なツアーが再開されるたびに、Mdou とバンドを待ち受ける観客は、以前よりも彼の価値観を鋭く認識するようになり、必然的に多くの人が集まり知るようになるでしょう。マタドールは、ジュリアン・ベイカーや QUEENS OF THE STONE AGE などと並んで、”Afrique Victime” を2021年の優先作品として位置づけています。これは、Mdou の無限の可能性と、ますます揺るぎない意志、そして、増大する影響力を実質的な社会変革に結びつける予感を示唆しているのです。
それまでの間、Mdou Moctarはこの相対的な孤独を、自分自身を見つめ直すための時間とするでしょう。それは、彼の血の中にあるものだからです。
「僕の願いは、新しい世代の音楽家が繁栄し、発展し続けることなんだ。僕よりも若いアーティストには、近代化してもトゥアレグ族独特のスタイルを貫くようにアドバイスしている。僕が生きている間に、このメッセージが世界中に伝わっていることは、とても嬉しいことなんだ。長い間、僕の音楽は家ではちょっとしたジョークだと思われていたからね。自分が世界的なアーティストになる可能性があるとは思っていなかった。今でも頭の中では自分は初心者だと思っているよ。そして、それは永遠に変わらないと思うんだ」
特にアフリカでは、教育も重要な課題です。
「若い音楽家にとって最も重要なのは、演奏するための道具、つまり楽器を与えることだよ。ちゃんとしたギターとかね。ニジェールでそれを手に入れるには、旅をしている人が持ち帰るしかないんだから。国内では弦も買えないよ。もうひとつは、ニジェールには音楽学校がないということ。だから、その両方が必要なんだ。
音楽学校については、教え方というよりも、重要なのは彼らが集まり、好きな方法で自由に芸術的表現をすることができる場所を作ることだと思っている。ニジェールでは日常的にそうするのは非常に困難だからね。砂漠に行って演奏したり練習したりして、それが終わったら家に帰らなければならない。それが僕たちのやり方なんだ。音楽が嫌われる可能性があるという危険と、テロリストに狙われるという危険の両方があるからね。だから、彼らには洗練された楽器で演奏できる場所がどうしても必要なんだよね」
最後に、Mdou から若いミュージシャンへのアドバイスを記しておきましょう。
「必ずしも特定のテクニックについてアドバイスするわけじゃない。最近の若い人たちは、早く有名になりたいと思っている人が多いように感じるね。演奏を始めて1、2ヶ月もすれば、エディ・ヴァン・ヘイレンやジミ・ヘンドリックスのようになってコンサートに出られると思っている人もいるだろう。しかし僕は、自分のスタイルや曲を作るためには、時間をかけて努力しなければならないと思っているんだ。努力が必要なんだよ。急いでやろうとしても、正しいビジョンは見えてこないからね。
努力が報われ、努力があってこそ、素晴らしいものを生み出すことができる。だから、僕が一番言いたいのは、忍耐強く、ゆっくりとやることかな」

参考文献: DAZED Mdou Moctar: the shred star of the Sahara

NEW NOISE:Interview: Mdou Moctar, Desert Soul and the Sounds of Freedom

MUSIC RADER:Mdou Moctar: “My intention is for the guitar to be spitting out the sound of revolution”

日本盤のご購入はこちら。BEATINK
MDOU MOCTAR Bandcamp

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUBTERRANEAN MASQUERADE : MOUNTAIN FEVER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOMER PINK OF SUBTERRANEAN MASQUERADE !!

“We Are Rooting For Peace. That’s All We Care And Dream About. Our Music Is Made With Love For Everyone. All We Want Is Peace.”

DISC REVIEW “MOUNTAIN FEVER”

「僕たちはただ平和に根ざしている。それが僕たち全員の関心事であり、夢でもあるんだ。僕たちの音楽は、全員への愛で作られている。僕たちが望むのは平和だけなんだ」
テロと報復の連鎖。中東の火薬庫の中で苦悩するイスラエルは、進化する音楽世界のリーディング・ヒッターであり、その緊張感ゆえに平和を祈る音のピース・メイカーが現れる聖地ともなりました。ORPHANED LAND の功績を語るまでもないでしょう。そうして、地底の多様な仮面舞踏会で舞い踊る SUBTERRANEAN MASQUERADE も彼らの軌跡を追っていきます。
「特にイスラエルのシーンがあまり知られていないからこそ、比較されるのは当然のことだよね。だから僕たちは、世界中で話題になり、より多くの人が話題にしたり聴いたりするような、次のイスラエルのバンドになることを誇りと共に誓っているんだ」
ただし、エルサレムまでの道のりがすべて同じわけではありません。ORPHANED LAND がよりメタリックエスニックな世界を探求し融和を前面に押し出すなら、SUBTERRANEAN MASQUERADE はさながらアンダーグラウンドの雑多から這い出る混沌のエスニックプログレッシブ。
“Mountain Fever” では、エキゾチックなブズーキとフレームドラムの組み合わせで始まり、すぐにメタルの重量感とダブルキックの興奮を共有します。しかし、メタリックな要素は数ある色彩のひとつに過ぎず、SUBTERRANEAN MASQUERADE は混沌の中にプログレッシブな輝きを見出します。管楽器、ストリングス、トライバルドラムを使ったトレードマークとも言えるサウンドに、耳に残るメロディ、グロウル、トリプルギター、女性ゲストシンガー、そしてジャンクなインストルメンタルセクションまで地底の仮面舞踏会は千客万来。
さらに “Inwards” では、レナード・コーエンのメロディで始まり、インドの民族音楽へ危険なまでに接近し、デスメタルのカオスに陥りながら、最後は神々しいホーンセクションとサックスのソロで幕を閉じます。そのすべてを7分に収める芸当こそ、彼らの真骨頂。
「イスラエルにはヘブライ語と英語で歌うロックアーティストがたくさんいるけど、ほとんどのアーティストはガラスの天井 (目に見えない制約) を破ってはいないんだ」
と嘆くバンドのヤハウェ Tomer Pink ですが、常にイスラエルと中東の音楽の伝統に深く根ざしながら、ブラックメタルからゴスペルまでこれまで以上にバラエティに富んだ作品は、ソフトなロックから深みのあるグロウル、ささやきに叫びと刻々と変化を続ける新加入の歌い手 Vidi の歌唱も相まって、完膚なきまでに聖地の天井を突き破っているのです。
「最も重要なのは、それぞれの楽器を最高の音でレコーディングすることだった。10のスタジオを10の楽器で使うようなね」
そして “Mountain Fever” は、楽器や音楽の色彩と同様に感情までも豊富です。ゴラン高原の山中で書かれ部分的には彼の地で録音された作品は、世界を放浪するような前作 “Vagabond” と比較して、むしろ内省的で旅路への憧憬を醸し出しているようにも思えます。
そんな夢幻の祈りは、きっとコロナと隔離に苦しんだイスラエルの抑圧と解放を反映しているのでしょう。世界中すべて難民に捧げられたハモンドとゴスペルの美しき混乱 “Somewhere I Sadly Belong” は、まさに “Mountain Fever” に秘められた悲しみと抑圧を素晴らしく反映しています。
今回弊誌では、Tomer Pink にインタビューを行うことができました。「この国には幅広いスタイルがあり、多様なシーンがあり、ハングリーで努力している多くのバンドがいる。僕たちの観客のほとんどはイスラエルにはいないけど、イスラエル国外で成功すると、母国のみんなが喜んでくれて、僕たちの心も温かくなるのさ」Jens Bogren のプロダクションも見事。PAIN OF SALVATION や DIABLO SWING ORCHESTRA のファンもぜひ。どうぞ!!

SUBTERRANEAN MASQUERADE “MOUNTAIN FEVER” : 10/10

INTERVIEW WITH TOMER PINK

Q1: First of all, you were born in Israel. From jazz, classical music, to metal, recently Israeli artists are leading the music scene. How does your being born and raised in Israel affect your music?

【TOMER】: I’m not sure it affected me very much aside from those middle eastern influences which for me it’s just the soundtrack of everyday life. We are still getting all the worldwide music like everybody else does but I guess that you could say that there are more traditional elements in our music thanks to the place we live.

Q1: ジャズやクラッシック、そしてメタルまで、イスラエルは先進的な音楽世界をリードする国の一つです。
まずは、イスラエルという出自があなたに与えた影響からお話ししていただけますか?

【TOMER】: 僕にとってはただ日常生活のサウンドトラックである中近東の音楽を除けば、イスラエルという出自からあまり影響を受けたとは思えないな。僕も他の人たちと同じように世界中の音楽を聴いているだけなんだ。
ただ、僕たちが住んでいる場所のおかげで、自分たちの音楽にはより伝統的な要素が宿っているとは言えるかもしれないね。

Q2: What is the metal/rock scene like in Israel? Is it hard to keep playing rock music in Israel?

【TOMER】: I think it’s all a matter of how strong your willpower is. There are many rock artists in Israel singing in Hebrew and english but most are not breaking the glass ceiling. We have indie rock festivals mixed with other popular music,Metal is definitely less popular but there has been a solid scene for decades and it is expanding mostly towards Extreme metal. In terms of Audience traction, it can be sometimes difficult but if you really believe in yourself and persevere you can get far. This is the advantage of a small country, when you succeed, everyone hears about you immediately. We have a wide range of styles here and a varied scene, a lot of hungry hard working bands. We are very lucky to be able to play overseas, as it’s difficult in our region to tour. Most of our audience is not in Israel, but when we succeed outside of Israel, everyone back home is happy for us and it warms our hearts.

Q2: イスラエルのメタルやロックシーンはどのような状況ですか?
あなたの国で音楽を続けることは簡単ではないのでしょうか?

【TOMER】: それは、その人の意志の強さの問題だと思うな。イスラエルにはヘブライ語と英語で歌うロックアーティストがたくさんいるけど、ほとんどのアーティストはガラスの天井 (目に見えない制約) を破ってはいないんだ。
メタルは確かに人気がないけれど、何十年も前からしっかりとしたシーンがあり、主にエクストリーム・メタルの方向へと拡大している。オーディエンスの支持という点では、時には困難なこともあるけど、自分を信じて粘り強く頑張れば、海外で成功することも不可能じゃない。
これは小さな国の利点で、成功すると誰もがすぐにそのことを耳にするだろ。この国には幅広いスタイルがあり、多様なシーンがあり、ハングリーで努力している多くのバンドがいる。この地域ではツアーをするのが難しいから、僕たちが海外で演奏できるのはとても幸運なことだよ。
僕たちの観客のほとんどはイスラエルにはいないけど、イスラエル国外で成功すると、母国のみんなが喜んでくれて、僕たちの心も温かくなるのさ。

Q3: Israel is famous for Orphaned Land and Salem, but they are more metal than you are, right? How do you feel about being compared to them?

【TOMER】: First of all, we love these guys to pieces. We have a long relationship with Orphaned Land, from their early days (me and Kobi have been working together in an EDM and Trance music label when we were young) and up until today. Matan Shmuely Played Drums on all of our Albums and Idan Amsalem contributed buzuki and a guitar solo on our track “Mangata”. We have been on the road with them for around 43 shows, we see them as brothers and we are proud of their achievements. Also Salem’s, we appreciate the musical history of our scene. Comparisons are a natural thing, especially when the rest of the Israeli scene is not very much known, so we are actually proud to be that next Israeli band that makes waves around the world and that more and more people start talking about and listening to. There were not a lot of Israeli metal/rock Bands since the 90s that got far and we are determined on being the spearhead of the next rock and metal wave from this country.

Q3: イスラエルといえば、あなたたちの他に ORPHANED LAND と SALEM が有名ですよね。
ただ、彼らはあなたたちよりももっとメタル寄りでしょう。比較されることにはどう感じていますか?

【TOMER】: まず第一に、僕たちは彼らのことを心から愛している。ORPHANED LAND とは、彼らの初期の頃(僕とギタリストの Kobi は若い頃、EDM やトランスの音楽レーベルで一緒に仕事をしていた)から今日まで、長い付き合いがあるんだよね。
Matan Shmuely は僕たちのすべてのアルバムでドラムを演奏してくれたし、Idan Amsalem は僕たちの曲 “Mangata” でブズーキとギターソロを担当してくれた。彼らとは43回の公演を共にしてきた。僕たちは彼らを兄弟のように思っており、その功績を誇りに思っているんだよ。
同じく SALEM も、僕たちのシーンの歴史にとって非常に重要なバンドだ。特にイスラエルのシーンがあまり知られていないからこそ、比較されるのは当然のことだよね。だから僕たちは、世界中で話題になり、より多くの人が話題にしたり聴いたりするような、次のイスラエルのバンドになることを誇りと共に誓っているんだ。
90年代以降、イスラエルのメタル/ロック・バンドはあまり活躍していなかったけど、僕たちはこの国の次のロック/メタル・ウェーブの先鋒になることを決意しているからね。

Q4: I really like the band name Subterranean Masquerade, why did you choose it? It seems to be the opposite of the album title “Mountain Fever”, would you agree? haha.

【TOMER】: Truth be told, I wasn’t thinking about that but you are totally right, haha. I came up with the band name around 25 years ago.. Such a long time, i can’t even remember how I came to this. I did think about changing the name into something more accessible a few times but somehow we decided to stick with this one.

Q4: SUBTERRANEAN MASQUERADE (地下の仮面舞踏会) というバンド名も大好きなんですよ。”Mountain Fever” という今回のアルバムタイトルとは真逆にも思えますが (笑)

【TOMER】: 実を言うと、全然気づいてなかったんだけど、まったくその通りだよね (笑)
このバンド名を思いついたのは、今から25年ほど前のことだよ。どうやってこの名前にしたのか覚えていないほどの大昔のことだね。もっと親しみやすい名前にしようと何度か考えたこともあったけど、まあなんだかんだこの名前でいくことにしたんだよな。

Q5: Green Carnation’s Kjetle Nordhus and Novembers Doom’s Paul Khur were out and Vidi Dolev who handles both the clean vocals, and the growls was in. Why was this change made, and what is good about Vidi?

【TOMER】: Long distance relationships are not easy, especially when everybody got few bands. Kjetle was just recording the new Green Carnation album and Paul is living in the USA, very far away from where we are. We also always knew we are a touring band and that requires dedication and time.. It’s not always working for everybody. Vidi is an old friend and a very respected musician in the Israeli music scene.. He entered those big shoes of Paul and Kjetle and worked his way into our hearts and family.

Q5: 今回は GREEN CARNATION の Kjetle Nordhus, NOVEMBERS DOOM の Paul Khur の参加はなく、Vidi Dolev がクリーンとグロウルの両者を兼任して歌っていますね?

【TOMER】: 遠距離でうまくやるのは簡単じゃないからね。特に、みんながいくつかのバンドを持っているときは。Kjetle はちょうど GREEN CARNATION のニューアルバムをレコーディングしていたし、Paul はアメリカに住んでいて、僕たちがいる場所からとても離れているんだよ。
それに、僕たちは常にツアーバンドで、そのための献身と時間が必要であることを知っていたからね…。誰もがうまくいくわけじゃないんだよ。
Vidi は古い友人で、イスラエルの音楽シーンでとても尊敬されているミュージシャンなんだ。彼は Paul と Kjetle の後任として存分な実力を発揮し、僕たちの心に家族のように入り込んでくれたんだ。

Q6: “Suspended Animation Dreams” was crazy experimental metal. “Vagabond” was more traditionally proggy than earlier albums. I think “Mountain Fever” is a mix of those two, along with your usual dose of jazz, and middle-eastern melodies, Would you agree?

【TOMER】: Yes, I totally agree. I think that Mountain Fever got something more to do with S.A.D then with Vagabond though it’s a lot more focused and mature. It is as risky and varied as that album but so much more focused and well executed.

Q6: “Suspended Animation Dreams” はクレイジーで実験的な作品で、”Vagabond” はよりトラディショナルなプログ的作品でした。
“Mountain Fever” はトレードマークのジャズや中東のメロディーを保ちながら、その両者を巧みにミックスしたようなアルバムですよね?

【TOMER】: 全く同感だよ。”Mountain Fever” は、 “Vagabond” よりも “Suspended Animation Dreams” に通じるものがあると思うんだけど、もっと集中していて成熟しているよね。このアルバムは、”S.A.D.” と同じようにリスキーで多様性に富んでいるけど、よりフォーカスされていて内容も良いよね。

Q7: Percussion and other ethnic instruments are an important part of the album. What are some of the difficulties in combining metal and traditional music?

【TOMER】: It’s all about colors and about how to glue it all together. We have been working very hard on the arrangements for this album, really knit picking every moment of it. Tha main challenge was recording each instrument the best way , meaning, we had to use about 10 different studios to make it the best sounding arrangement possible, for example, the room we recorded the violins at, was not necessarily the best room for percussions, so we went to a different studio to record the percussions and so on. Everything had to be very accurate in the way of recording, otherwise we would be having a lot of trouble mixing into one texture which makes sense. On the other hand, we didn’t want the mix to sound like 10 different rooms, so after recording all the ethnic instruments we actually reamped the guitars to glue it all better. Everything had to work as a macro, but in order to do it, the pre production was full of ants work.

Q7: パーカッションやブズーキなど、エスニックな伝統楽器もアルバムでは重要な役割を果たしていますね。メタルと伝統音楽をミックスする際、気をつけていることはありますか?

【TOMER】: すべては色彩と、それをどうやって接着するかということなんだ。今回のアルバムでは、アレンジに非常に力を入れており、一瞬一瞬を大切にしているんだよ。
最も重要なのは、それぞれの楽器を最高の音でレコーディングすることだった。10のスタジオを10の楽器で使うようなね。例えば、バイオリンを録音した部屋が必ずしもパーカッションに最適な部屋ではなかったら、パーカッションを録音するために別のスタジオに行くというように、すべての録音方法を正確に行う必要があったからね。
その一方で、ミックスが10の異なる部屋のように聞こえるのは避けたかったから、民族楽器をすべて録音した後、ギターを実際にリアンプして、すべてを糊付けしたんだよ。すべてがマクロとして機能しなければならないのだけど、だからこそプリプロダクションは蟻地獄のような作業だったよね。

Q8: Israel and Palestine are on the verge of war. What is the band’s stance on religious and racial tensions?

【TOMER】: We are rooting for peace. That’s all we care and dream about. Our music is made with love for everyone. All we want is peace.

Q8: 最後に、イスラエルとパレスチナは今にも戦端を開きそうな緊迫した状況にあります。あの難しい問題について、バンドのスタンスを教えていただけますか?

【TOMER】: 僕たちはただ平和に根ざしている。それが僕たち全員の関心事であり、夢でもあるんだ。僕たちの音楽は、全員への愛で作られている。僕たちが望むのは平和だけなんだ。

THREE ALBUMS THAT CHANGED TOMER’S LIFE 

JETHRO TULL “AQUALUNG”

PINK FLOYD “DARK SIDE OF THE MOON”

DAVID BOWIE “ZIGGY STARDUST”

MESSAGE FOR JAPAN

We are very grateful to anyone who takes the time to listen to our music. Life is short and it’s not obvious at all you chose to press play. We hope to come to Japan as soon as possible. Until then – we wish you health and happiness Arigatō gozaimashita!

時間をとって僕たちの音楽を聴いてくれるすべての人に感謝を。人生は短く、プレイボタンを押して僕たちの音楽選んだのは全く当たり前のことではないからね。一日も早く日本に行きたいと思っているよ。それまで、みんなの健康と幸せを祈っているよ。ありがとうございます。

TOMER PINK

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BLACK MIDI : CAVALCADE】


COVER STORY : BLACK MIDI “CAVALCADE”

“The Whole Album Sounds Like Drama, The Music Is Designed Around Being As Exciting As Possible By Having Constant Tension And Release, And The Same With The Stories, They Are Funny But There’s Also a Dramatic Core To Them”

CAVALCADE

BLACK MIDI は、人々がバンドに抱く期待のすべてではないにしろ、そのほとんどを覆す第二の波と共に戻ってきました。大きな変貌はジャムを捨てること、メロディを受け入れること。シンガーでギタリストの Geordie Greepは、「デビューアルバムはみんな気に入っていたようだけど、しばらくするとその全員が飽きてしまった。だから、今度は本当にいいものを作ろうと思ったんだ」と語ります。
高く評価されているデビューアルバムを、まるで彼らの周囲を飛び回る厄介なハエのようにすでに一部放棄したその胆力こそ、この若いバンドの勢いを物語ります。そして耳をつんざくノイズ、マスマティカルな知性、ジャジーなプログ、広大なポストロックが融合したデビュー作 “Schlagenheim” の混沌とした旋風に巻き込まれた人にとっては、BLACK MIDI がダイナミックな軌跡を描きながら探求を続ける音世界こそが欲する刺激なのです。
2枚目のアルバム “Cavalcade” は、その勢いに磨きをかけ、時に前作のトーンから別の惑星へとシフトしたような作品に仕上がっています。「全く違うことをやってみたかったんだ」と Greep は続けます。「1stアルバムの後、僕たちは新しい方向性を定めようと曲を書いていたんだけど、コロナ禍の発生で、個人的にさらに詳細を煮詰める機会が訪れた。変化はすでにあったんだけど、別々にやる必要性が出てきたことで、その変化が加速したんだよね」
かつては即興演奏の無限の力とその可能性を説いていたバンドが、今では構造化された曲作りのために即興演奏を捨て去りました。パンデミックによる強制的なダウンタイムは、彼らにとって必要な休憩と反省のための休止期間となったのです。「慌ただしい日々が続いていたから、歓迎すべき変化だったとドラマーの Morgan Simpson は語ります。「ここ数年は、新しいものを作るため数週間一緒に過ごす時間さえなかったからね。だから、ジャムやリハーサルを行うパターンに陥っていたんだけど、朝5時のフライトに間に合わせなきゃって焦るから生産性はそれほど高くなかったんだよね」
Greep も同意します。「演奏やツアーをずっと続けていると、物事をある程度コントロールしたい、間違ったことをしたくないという感覚に陥るものだ。だけど、時間が無限にある状況になると、自分が音楽で何をしたいのか、どんな音楽を作りたいのかを真剣に考えるようになる。実際に何度もそのことを考えて正直に話しあったよ。だから、僕たちは意識的に音楽を変えようとしていたんだと思う」

では、皮肉なことに、バンドは即興演奏の限界につまずいたのでしょうか?Picton が説明します。「即興演奏の良いところは、くだらない音になってしまうリスクと、本当に良い音になったときの見返り、その両方があることだよね。でも、お客さんに良いショーを見せようと思ったら、たいていの場合、何が良い音になるかはわかっているものなんだ。一方でリスクとリターンを両立させたければ、ときには失敗することも必要だ。僕たちはリスクを犯すことをやめて、同じ6つか7つのリフに落ち着いて、クソみたいな音になるストレスを感じることなく、違う順番で演奏することを繰り返していたんだと思うね」
瞬発力のあるライブで口コミで話題になっていたバンドが、短期間でバズバンドの帝王のような存在になったことを考えると、人気と観客の期待が高まる中、定型的な演奏をしなければならないというプレッシャーが生じたのでしょうか。「いや、そうじゃない」と Greep は言います。「それよりも、自分たちの中で、自分たちのやっていることに自信が持てなかったんだ。バンドがどうありたいのか、皆がそれぞれの考えを持っていた。何でもありの姿勢でやり始めたけど、アルバムを出したら、即興的なノイズロックバンドだということになって、それが神話化されてしまったんだから。時には、そんな罠に陥り、基本的には同じようなやり方でプレイしてしまうこともある。だからある時点で、”それは忘れよう “と言わなければならないんだよね」
ある意味でははじめて曲を作ったといえるかもしれないと、Greep は続けます。「ファースト・アルバムでは、ほとんどの曲が、伝統的なものというよりも、もっと質感のあるものだった。誰かがリフを弾いて、それをみんなで重ね合わせてクールなサウンドを作るという感じ。”Cavalcade” では、ジャムセッションも行ったけど、より伝統的な意味での曲のアイデアを各自が持ち寄って作曲したんだよね。今回のアルバムでは、よりメロディックに、そしてよりクレイジーに仕上げることを目指したわけさ。より親しみやすく、より具体的でありながら、より狂気に満ちた、より面白いものにしたかったんだ」
リスナーが彼らなりのジョークを理解し得ないこともストレスとなりました。
「大きな意味を持つのはユーモアであるはずなのに、多くの人がそれを理解できなかったり、深刻すぎると思ったりしたんだよね。だから今回の作品では、もう少しわかりやすく、これは絶対にジョークであるとか、おかしなことをしているということがわかるようにしたんだよ」


アルバムのオープナーでリードシングルの “John L” を聴くと、バンドの革命的なステップというよりは、プログレッシブなステップを踏んでいる思うかもしれません。しかし、津波のような不協和音の海辺にあるプログ・オペラの風が去った後、次の7曲にはかなり驚くべき変化が見られます。
“Marlene Dietrich” では、Greep が「パフォーマンスの喜びを体現している」と語るキャバレー・シンガーをイメージさせる、牧歌的なムードが漂い、彼の声はこれまでになく純粋にゴージャスなトーンを帯びています。
「この曲では、Scott Walker と WILD BEAST の Hyden Thorpeの中間のような歌い方で、”メタモルフォーゼは存在する” と優しく歌いかけている」
このレコードの中で、バンドには以前の彼らとは見分けがつかないほどの、まさに “メタモルフォーゼ” な音を出す瞬間が存在します。
「曲にはきちんとしたコード・シーケンスがあり、実際にメロディが存在する」と Greep は語ります。「前作でも少しはあったんだけど、多くの場合、エフェクトをかけてただ燃えているだけのモノリシックな曲では、メロディックに歌うことができないからね。このスタイルで、僕の声はこういった曲に適しているよ」
Picton は、2曲で作曲と歌唱を担当しています。ヒプノティックで深いテクスチャーを持つ “Diamond Stuff” は、その荒々しさからスローコアのようにも聞こえます。これに対するアンチテーゼが “Slow” で、怒れるジャズコアを体現しています。
アルバムを通して、バンドのトレードマークである張りつめた強烈なギターワークはふんだんに盛り込まれていて、獰猛さとプログの巧みが融合していますが、両者の境界線が驚きを運んでくるのです。そして真の優美が存在し、初期の作品を嫌っていた人は一体何が起こっているのかと疑問に思うかもしれません。しかし、より穏やかで美しい世界に吸い込まれる直前に、物事は再び爆発して混乱します。”Chondromalacia Patela” で聴けるように、ジャズ的ポストロックの穏やかなグルーヴから、SWANS と MAGMA が合体したような爆発的な力へと変化していく様は圧巻です。

同時にこのレコードでは、より多くの楽器が使用されています。「最初のアルバムは、音色的にかなり狭い感じがしました」と Simpson は告白します。「だから僕たちは、さまざまにサウンドやカラーを広げたいと思っていたんだよ」
Pal Jerskin Fendrix がバイオリンで登場したかと思えば、チェロ、サックス、ピアノ、ブズーキ、マルクソフォンと呼ばれる19世紀末のチター、フルート、ラップスチール、シンセ、さらにはバンドがバイオリンの弓を使って奏でる中華鍋まで登場します。
「1stアルバムは、ライブよりも広がりのあるサウンドのレコードを作るというミッションだった」と Greep は証言します。「スタジオを可能な限り活用すること。でも、あまりにも混沌としているので、多くの楽器に気づかなかったり、気づいてもそれが何なのかわからなかったりしたよね。今回のアルバムでは、ピアノやストリングスのパートがより明確になっている。しかし、”真に劇場的で、映画的な、広がりのあるアルバムを作る “という使命は同じだったんだよ」
たしかに、このアルバムはたくさんの劇場を備えています。Greep がその要素を表現するため使った言葉は、”ドラマ” でした。「アルバム全体が、まるでドラマのようだ。その音楽は常に緊張と解放を繰り返すことで、可能な限り刺激的なものになるようにデザインされている。ストーリーも同様で、面白いけれど、ドラマチックな核心が存在する。主に三人称で語られるアルバム全体のストーリーが、このアルバムのタイトルになっているんだ。キャバレーの歌手、カルト教団の指導者、ダイヤモンド鉱山で発見された古い死体など、物語をまとめてみると、ある種の “パレード” のようになるということに、後々気づいたんだよね」
アルバム制作の背景は、デビュー時とは正反対でした。プロデューサーのダン・キャリーとロンドンの地下スタジオにこもるのではなく、ダブリンの南、ウィックロー山脈にあるアイルランドの施設、ヘルファイア・スタジオでジョン・’スパッド’・マーフィーと作業を行いました。Greepが以前から “hell fire “という言葉にこだわっていたことを知っている人にとっては(デビューアルバムのタイトルにもこの言葉が使われていた)、偶然にしては出来過ぎでしょう。

ほとんど予期せずにフルアルバムを作ることになったのは、実り多いセッションのおかげでした。「計画では、5日間で数曲を録音することになっていた」と Greep は振り返ります。「どんなサウンドになるのかを確かめるためにね。そして、それをどんどん積み上げていったら、とてもいいサウンドになったんだ」
プロデューサーの交代は、新しい領域を開拓したいというバンドの願いの延長線上にありました。「1stアルバムでは Dan が完璧だった。しかし、今回の新作では、すべての作業を新しい感覚で行いたいと思ったんだ。そのため、これまでに書いた曲は、別の耳で聴いたほうがいいかもしれないと思ってね。デビュー・アルバムの前から、僕たちは常に異なるプロデューサーのアイデアを受け入れていたし、物事を新鮮に保ち続けていたからね」
スタジオでは、バンドの自主性と信念がより強くなりました。「Dan と一緒に仕事をする前は、あまりスタジオに入ったことがなかったんだ」と Simpson は言い、Picton は「ファーストアルバムでは、ダンがセッションをリードしたり、彼がアイデアを出したりすることが多かったと思うけど、今回はみんなで協力することが多かったね」と付け加えます。さらに Greep はこう続けます。「スタジオではより自信が持てたんだ。このアルバムの音楽は全体的に、バンドとしての自信を表していると思う。明日死ぬかもしれないんだから、今日はこの音楽を作ろう。失うものは何もないという気持ちなんだ」
では、セカンドアルバムがどのように評価されるかという不安はないのでしょうか? Greep は、「アルバムに対する現代の反応はあまり意味を持たない」と言います。「レビューの良いものが常に良いというわけでも、レビューの悪いものが悪いというわけでもなく、相関関係はないと思っているから、あまり考えないようにしているんだ。アルバムを聴いてくれる人がいるのはとてもラッキーだけどね。何を出しても誰かが聴いてくれるのだから、文句は言えないよね。ファンがいるということは素晴らしいことだ」
BLACK MIDI が作る音楽の種類を考えると、彼らがこれほどの評価を得て、熱狂的なファンを獲得し、プライムタイムのラジオのプレイリストに滑り込み、マーキュリーミュージックプライズにノミネートされたことに戸惑いを覚える人もいるだでしょう。他の多くのオルタナティブ・バンドが直面しているような障壁を、なぜ自分たちが突破できたのか考えたことがあるかという質問に対して、Picton は「適切な場所、適切な時期だったから。加えて舞台裏での適切な判断と良いチームがあったからだろうな」と反応しています。

有名なBRITスクールに一緒に通っていたという恵まれた環境も彼らを後押ししました。BRITスクールとは、アデルやジェシー・Jなどのポップスターを輩出したことで知られる政府系の音楽学校で、訓練されたミュージシャンが英国のレコード業界全体に多大な影響を与えていることでも知られています。Picton が説明します「2年間、大学で好きなときに自由にリハーサルができたからね。その2年間で、くだらないことやしょうもないことをすべてやって、それを解消することができたんだ」
学校の中でも特に奇抜な趣味を持つ子供たちの一部だったと Simpson は付け加えます。「僕たちの学年は、特に、さまざまなタイプのプレーヤーがさまざまなタイプの音楽を演奏していて、非常に多様性に富んでいたんだ。あの学年じゃなきゃ、このバンドが存在していたかどうかもわからないくらいだよ」
ビデオゲームにインスパイアされたバンド名のわりに、彼らはインターネットから音的にインスパイアされた音楽を作っているわけではありませんが、ジャンルミックスやインスピレーションの採掘については非常に現代的なアプローチをとっています。ジップアップのフリースを着て、ドレッドヘアにビーニーを被った Simpson は、ロンドンで生活している間に経験した、万華鏡のように多様な文化が彼らの音楽習慣に影響を与えていると言います。
「この2、3年の間にロンドンに住んでいる若者は、様々な影響を受けることができた。ウィンドミルでのライブに行けば、ダブをたくさん聴くことができるし、別のライブに行けば、ファンクやジャズをたくさん聴くことができる。僕たちの周りにはたくさんの音楽があり、そこから影響を受けないということは不可能なんだよ」

では、BLACK MIDI を形成したのはどういった音楽だったのでしょうか?Greep は真っ先に、ストラヴィンスキーの “Cantata” を挙げています。
「幼い頃、両親がストラヴィンスキーの曲をよくかけていたんだ。12歳か13歳のとき、学校にとても好きな音楽の先生がいてね。とても仲が良くて、クールな音楽をいろいろと教えてくれたんだよ。僕は “この人はすごい人だ” と思ったね。ところが、その先生が辞めてしまって、代わりに年配の気難しい先生が来た。あまり尊敬できない人だったよ。僕は、”この年寄りは、ダメだ “と思った。元々の音楽の先生とは、昼休みに音楽談義をすることが多かった。そこから多くのことを学んだんだよ。新しい先生は、それができなかった。でもね、ゆっくりと、しかし確実に、僕は新しい先生がそれほど悪くないことに気づいていったんだ。彼はいろいろなことを知っていたんだ。
ある日、彼は「春の祭典をかけてみよう」と言った。彼が勧めたから、僕はこの曲を嫌いになりたかったし、まったくの駄作だと思いたかった。だけど聴いてみると衝撃的だったよ。クレイジーな音楽だからね。僕は「ああ、アイツはおかしい」と思ったけど、本当は、”これはとてもいい” って感じたんだ。何かがあったから。
1年後くらいにまた「春の祭典」を見つけて、何度も何度も聴いて、10代の頃は本当に夢中になっていたね。その後、ストラヴィンスキーの音楽はすべて好きになったよ。最近では、数年前に、この “Cantata”という作品にたどりついた。音楽の素晴らしいところは、聴いていて、それが始まりでもあり、終わりでもあり、永遠に続くようにも感じられるところだよね」
春の祭典はオリヴィエ・メシアンのオペラ “Saint François d’Assise Opera” とあわせて “Ascending Force” のインスピレーションとなりました。
「このメシアンの作品は、最近ハマっているオペラのひとつ。4時間のオペラだよ。すべてフランス語で書かれているので、ストーリーを追うことはできないし、ストーリー自体難解だと思う。それよりも、ただ聴いているだけでいいんだよね。音楽的には非常に高度なものだよ。メシアンの音楽には親しみやすいものもあるけど、これはそうじゃない。一度ハマると、とても催眠的で中毒性があるんだよね。
この2つの作品をよく聴いたことが、アルバムの最後の曲 “Ascending Forth” のインスピレーションになっている。この曲のメロディのほとんどは、この2つの音楽がベースになっているからね。直接的ではないけれど、コードを確認しながら、この2つの曲から得られる催眠的、循環的、かつロマンチックで魅力的な感覚を模倣しようとしたんだよ。
これまでより野心的な試みだった。だけど「クラッシックが知的な音楽だから、あれをインスピレーションにしようとは思わないし、あんなレベルになろうとは思わない」とは考えなかったね。もし自分の好きな音楽であれば、そこから学んだり、自分の音楽に取り入れたりしてみるべきだろ?なぜ、気取っていると思うの?誰も気にしないよ。失敗したら失敗したでいいじゃない」

Picton は El Lebrijano の “Saeta al Cantar” を挙げました。
「彼はもっと成功した別のアルバムを出していて、それはより北アフリカ的な側面を持っていたんだ。でもこのアルバムは、フラメンコと北アフリカの音楽を融合させたもので、かなり実験的な演出がなされている。僕は、この演出がとても気に入っているんだ。狂ったようなボーカルサウンド。本当によくできていると思うな。
このアルバムは、フラメンコの枠を超えた、完全に別世界のものだと思ったよ。フラメンコ・ヌエボは、ロックとフラメンコを融合させようとする試み。だけど、これは完全に別のもので、独自のレーンを持っているね。この世のものとは思えないほど、刺激的なプロダクションと巧みなアレンジが施されている。”Dethoned” のイントロなど、”Cavalcade” に影響を与えた部分があるんだよね」
Miles Davis は Simpson のみならず、バンド全員にとって重要な存在です。
「”In a Silent Way” を聴くと、午後8時、ニューヨーク、繁栄している、周りにはたくさんの人がいる、というような感覚を覚える。”What’s Going On” と同じように、特定の空間や環境に身を置くことができるアルバムだと思う。最初の5秒を聞いただけで、すぐにその世界に入っていけるんだよね。マイルスの旅という意味では、”Miles In The Sky” や “Filles de Kilimanjaro” の直後にこのアルバムがリリースされているのは非常に興味深いよね。そして、彼は「ああ、いや、あんなものはどうでもいい、元に戻そう」と言ったわけさ。それを同じミュージシャンと一緒にやるなんて、最高にクールだと思うよ。それは、彼らがいかに素晴らしい存在であるかを証明している。ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムス、デイヴ・ホランド、マイルスといったミュージシャンたちが、これほどまでに抑制された演奏をするのを聞いて、とても謙虚な気持ちになったよ。このアルバムは、音楽的成熟がいかに強力であるかを気づかせてくれた最初のアルバムのひとつさ。
彼らは好きな時に好きなものを演奏できるのに、そうしないことを選んだのだということがよくわかるよね。もちろん、このアルバムは最初のエレクトリック・アルバムであると言われているけど、僕はそうは思わない。 抑制と規律といえば、このアルバムが真っ先に思い浮かぶよ。特にトニー・ウィリアムスは、最も無茶苦茶なドラマーで、ほとんどのアルバムでハイハットだけを演奏しているんだ。他の誰もそんなことはしないだろう。僕にとっては気が遠くなるような話さ。彼は、ポピュラー音楽の中で最もクリエイティブなドラマーだと思うよ。でも、そう言えるのは、彼が両極端なことができるから。彼は、とんでもなくテクニカルなこともできるし、40分間ハイハットを演奏するだけでも、音楽に貢献し、必要なことをすることができるんだから」

音楽だけがインスピレーションとなるわけではありません。Greep は、”タンタンの冒険” について熱く語ります。
「僕が最初に夢中になったもののひとつだよ。子供の頃、本を読むことは、はじめての趣味だった。10代の頃はあまり興味がなかったけど、子供の頃は大好きだった。文字が読めるようになると、それはまるで魔法の呪文を知っているような感じでね。最初は、ロアルド・ダールの本やその類のものだった。タンタンを見つけたときは驚いたよ。本当に素晴らしい物語なんだ。タンタンは世界中を旅している。テンポが速くて、それが今振り返ってみると好きなところなのかや。海の真ん中で遭難して、海賊に助けられて、無人島に連れて行かれて、鎖につながれて捕虜になって、飛行機が来て空を飛んで、ジャングルに落とされて……それが10ページで終わるんだ。そんな感じで、彼はいつも狂ったような冒険をしているんだ。今となってはかなり時代遅れだし、今の基準では悪い態度もある。だけど、若いときには、歴史や世界のさまざまな地域についての基本的な感覚を得ることができたんだ。
今回のアルバムに関して言えば、これまで行ってきたプレスショットは、「タンタンの冒険」から直接インスピレーションを受けたものだよ。描き方だけでなく、できるだけテンポの良いコミックパネルを使って、1ページの中でさまざまなシナリオを描いてね」
バンドは、ブリクストンにあるThe Windmill を支援するための資金集めに参加してきました。The Windmill は、かつて彼らがレジデントとして活動し、評判を高めたライブハウスです。これらは、仲間であるBlack Country、New Roadとのライブでのコラボレーションもそのひとつ。この先、彼らとコラボレーション・アルバムを作ることはできるのでしょうか? 「おそらくいつかは」と Greep は語ります。「もし、同じ街にとてもいいバンドがいて、そのバンドと意気投合したら、一緒になって何かをやらない理由はないからね。ただ、目的のためにやるのではなく、しっかりとした理由があるかどうかを確認する必要があるはずだよ」
ただし、BLACK MIDI を BC, NR や SQUID といった他のバンドと一緒にするのは意味がありません。彼らは完全に独自の存在だからです。そして完全に新しいことをやっているというプロパガンダを行うこともありません。だからこそ、我々はロックの未来について楽観的にならならざるを得ないのです。「何事も新しいことはないと思うよ。影響を受けたものが違う形で組み合わされているだけなんだから。チャートに載るような音楽でも何でもないんだ。でも、ライブ音楽、楽器を使って演奏される音楽、そういったニッチなものは常に存在していくと思う。なぜなら、結局みんな、そういうものが好きだから」

今のところ、バンドは自分たちの作品に集中していますが、すでにセカンドアルバムを超えた段階に差し掛かっているのかもしれません。「願わくば、ライヴを再開する頃には、さらに多くの新曲を演奏して次のアルバムに臨みたいね」とGreep は言い、Picton はアルバム3がすでに40%ほど完成していると示唆しています。
「ライブでどのように演奏するかを考える必要がないから、このアルバムを作ることに喜びを感じたんだ。ライブを、バンドとして事前に完全にイメージできるような製品にはしたくないからね。ライヴに行って、始まる前から何が見られるかわかってしまうほど最悪なことはない」
話を次のアルバムに戻すと、Greep はネット上で、21世紀最大のアルバムは今年中に発売されるという不可解な発言をしています。それは、”Cavalcade”のことだと考えていいのでしょうか? 「僕の計算によると、このアルバムは、TBE – The Best Everに到達するための出発点なんだ」この3文字は、Greep がしばらくの間かぶっていた帽子に飾られていたもので、大胆な宣言でもあり、皮肉でもあります。BLACK MIDI の大部分がそうであるように、ユーモアとクリエイティブな野心はしばしば重なり合っています。「いずれにしても、僕たちはこの作品に満足しているよ。野心的で挑戦的なことができたと思うのはいいことだ。僕らはまだ20歳かそこらなんだから」

参考文献: THE QUIETUS: The Road To The Best Ever: Black Midi Interviewed

VANITY FAIR:Black Midi Isn’t Losing Its Edge Just Yet

STEREOGUM:Black Midi On Miles Davis, The Adventures Of Tintin, And Other Inspirations For Their Wild New Album

日本盤のご購入はこちら。BEATNIK

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ZAO : THE CRIMSON CORRIDOR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEFF GRETZ OF ZAO !!

“It’s About Using This Often Abrasive, Sometimes Pretty Music, To Paint a Picture Of Internal Turmoil And Use The Band As a Healthy Release Of That, And Maybe Help Someone In The Process Who May Be Going Through The Same Things.”

DISC REVIEW “THE CRIMSON CORRIDOR”

「たしかにメタリック・ハードコアのシーンは長い間、画一的で飽和状態に “あった” と思うよ。俺たちもおそらく一度や二度はそのような状況に陥って、罪悪感を抱いたことがあるんだから」
ウェストバージニア州の英雄 ZAO は、今年結成28年目を迎えました。彼らは90年代半ばのメタリック・ハードコアの死や、自らが生み出したテクニカル・メタルコアの盛衰を乗り越え、何度も解散、再結成、メンバーチェンジを繰り返しながら、ホラー映画の悪役のように繰り返し蘇り、今もこの場所にいます。
「多数のメンバーチェンジが行われる前から、クリスチャンだったメンバーたちは信念を変えたか、もしくは変えなかった人たちも “俺たちはクリスチャン・バンドだ” というメッセージを押し通すことは、俺たちが伝えたいことを伝えるのに適していないと判断したんだよね」
ZAO は1993年、キリスト教に焦点を当てたハードコアを作ることを目的に結成されました。ハードコアというジャンルは、テーマに関わらず極論を唱える傾向がありますが、ZAO は彼らの宗教観を前面に押し出していました。祭壇に呼ばれたり、ステージ上で説教が行われたりするのが初期のライブの特徴。
2代目ヴォーカル、Shawn Jonas は、1996年初頭のライブ映像で、「我々はイエス・キリストを崇拝し、彼の前に出るためにここに来た」と熱心に宣言しているほど。そうして若いキッズにとって想像が現実を超越し、神話のような存在となった ZAO は、数多の内部抗争を克服し、リアリティーを伴った “蔵王” の復活を成し遂げたのです。
「ZAO は、自分たちの本能に従って正しいと思うことをするときにこそ、いつも最高の仕事をやってのけるんだ。最近の “メタリック・ハードコア” には、メタルやハードコアとは関係のない外部の要素がたくさん入り込んできているけど、それはとても良いことだよ。俺たちは様々なタイプの音楽が好きだし、ZAO のように聴こえるなら何をやってもいいという自由は、俺たちにとって大きな意味を持っているんだよ」
自らのレーベルを立ち上げ、売り上げや権力を気にかけない自由を得た ZAO は、例えば自らより若い YASHIRA や THOU のような多様性を遺憾なく発揮することになりました。大御所として神話の中の存在でありながら、あくまで自らの本能に従い正直に音楽と対峙し挑戦し続ける ZAO の姿勢こそハードコアであり、CODE ORANGE など現在のシーンを牽引する若手からリスペクトを浴びる理由なのでしょう。
もちろん、”Sprinter Shards” や “Blood and Fire” といった名曲は今でも健在ですが、2016年に発表されたアルバム “The Well-Intentioned Virus” でネクスト・レベルへと到達したコンポジションは、5年の月日を経た “The Crimson Corridor” で一つの究極へと達しました。
「俺たちにとっての ZAO は、攻撃性を解放するためのものだ。バンドとして、俺たちは “重い” 音楽を作りたいと思っている。ヘヴィーといっても、いろいろな意味があるんだ。俺たちにとっては、ハードコア、メタル、デスメタル、さらにはラウドではないけれど “エモーショナル・ヘヴィー” “感情的にヘヴィー” なものまで、すべてが語彙の一部なんだよ」
長い年月で培った豊富な語彙によって、映画のようなメタルコアの世界が現実のものとなりました。一つのリフごとにすべての破壊を目指すのではなく、よりムードを重視したアプローチを交え真綿で首を絞めるように、”感情的にヘヴィー” な情景をそのフィルムへと収めていきます。”Into The Jaws of Dread” のポスト・メタルやサイケデリカな色彩、”Croatoan” の瞑想的で冷ややかな質感、タイトルトラック “The Crimson Corridor” の陰鬱でドゥーミーな音の葉、”R,I.P.W.” のひりつくようなエスニック・プログレッシブ、”Nothing’s Form” の慟哭は、バンドが今でも進化を続けている美しき証明でしょう。しかし同時に、どの楽曲にもメタルコアの矜持を盛り込むことで、対比の美学は凛然とその輝きを増していきます。
「今、音楽に何ができるのかはわからない。世界に会話がないから、もう音楽を通しても会話をすることができないように思えるんだ。自分の言っていることに同意してくれる人たちに向けて歌を歌うか、自分に同意しない人たちを排除するかのどちらかだから」
文字通り、真紅の廻廊のように幻滅からニヒリズムのスパイラルを辿るアルバムは、メロディアスなベースライン、メランコリックなバイオリン、そしてスローモーションのようなドラミングに駆動する圧倒的なリフワークなど、あらゆる要素が盛り込まれた “The Web” でその幕を閉じます。熟成を極めたエレガントなレコードを集約した “The Web” はまるで上質なワインのごとき輝きを秘めています。それでも野蛮で野心的なアルコールの攻撃がリスナーをジワジワと悩殺していくのですが。
今回弊誌では、ドラマー Jeff Gretz にインタビューを行うことができました。「このバンドの全体的なメッセージは、感情的な正直さだよ。それは、この時に耳障りな、時に美しい音楽を使って、内面的な混乱の絵を描き、それを健全に解放するためにバンドで演奏し、その過程で同じようなことを経験しているかもしれない誰かを助けることなんだ」 どうぞ!!

ZAO “THE CRIMSON CORRIDOR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOKONIS : ODYSSEY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SIMON OHLSSON OF VOKONIS !!

“Opeth Is a Great Inspiration To Me, One Of My Favourite Heavy Bands Of All time. It’s Probably The First Time I Got Really Introduced To Prog Rock And Started My Journey There.”

DISC REVIEW “ODYSSEY”

「OPETH と並んで MASTODON も僕が高く評価しているバンドなんだ。THIN LIZZY のようなロック黎明期のバンドを参考にしているところが好きなんだよね。僕は THIN LIZZY の大ファンでもあるから。僕たちが目指していたのは、本当に君の言うようなものだったのかもしれないよね。メタリックな意味でのヘヴィー・ロックの再解釈という場所だよね」
例えば THIN LIZZY、例えば、DEEP PURPLE、例えば URIAH HEEP。先ごろ YOB が DEEP PURPLE のトリビュートへ参加を果たしたように、MASTODON の Troy が THIN LIZZY のライブに参加したように、クラッシック・ロックのメタリックな、もしくはヘヴィーな再解釈はドゥーム/ストーナー界隈にとって重要な通過儀礼の様相を呈しています。そんな割礼の真っ只中で一際存在感を放つヘヴィーアートの創造主こそ VOKONIS です。
「ELDER とは一緒にライブをしたこともあるし、いつも聴いている。ストーナー/ドゥーム・シーンの中で、彼らのような型にはまらないバンドをはじめて目の当たりにして、自分のバンドのクリエイティビティに対する考え方が大きく変わったんだ」
ELDER や KHEMMIS, PALLBEARER といった新世代のドゥーミストがプログレッシブな息遣いで地を這う重音にカラフルな知性を与える中、遅れてきた英雄 VOKONIS はトリオという牙城に RUSH の魂を込めてみせました。ただし、米国の新世代とは決定的に異なる点も存在します。それは、OPETH, SPIRITUAL BEGGARS, GRAND MAGUS といったプログやクラッシック・ロック再解釈の達人が遺した遺産、北欧スウェーデンの血脈です。
「特に長い曲では、彼がアルバムにまとまりをもたらしてくれたと思う。OPETH は僕に大きなインスピレーションを与えてくれるバンドで、今までで最も好きな “ヘヴィーバンド” のひとつだろうな。僕がプログレッシブ・ロックに出会ったのは、おそらく OPETH が最初で、そこから僕の旅が始まったんだよ」
アルバムには、OPETHプログ化の鍵となった鍵盤奏者 Per Wiberg が4曲にゲスト参加しています。同時に SPIRITUAL BEGGARS の顔でもあった渦を巻くハモンドの雄叫びは、長尺化複雑化多様化を志向する拡大する哲学に欠かせない要素となっています。メロトロンとハモンドは作品に荘厳な70年代プログの雰囲気を与え、バンドは瞑想的でゆるやかな時間とリフを中心としたハードなドライビング・パッセージを織り交ぜることが可能となったのですから。
幕切れの “Hollow Waters”と “Through the Depths” では、その効果が顕著に表れています。21分近いヘヴィーなプログ・ドゥームは、それでいて想像以上ににキャッチーかつ耳に残る偉業。古と未来の邂逅は時にメランコリックの極みを醸し出し、アレンジやアイデアの魔法はアートワークの火の鳥のごとく幻想的に楽曲を彩っていきました。ギルモアとジョン・ロードが流動するサイケデリックな探究心こそ至高。
一方で、ベースの Jonte Johansson が使い分けるクリーンとハーシュのボーカルスタイルはその両輪でカリスマ性を放ち、ギタリスト Simon Ohlsson のシャウトを加えたトリプルボーカルの嗎は、タイトルトラック “Odyssey” のキラーなギターリフとえも言われぬ核融合を果たしつつ、古の詩人ホメロスが想像だにしなかったディストピアの放浪記を描いていくのです。
今回弊誌では、Simon Ohlsson にインタビューを行うことができました。「僕は、人間が地球を適切に管理していないために、地球に害を与えていると考えているんだ。だけど、別の意味で、つまり人類が滅亡しても地球はこれからも生き続けると信じているんだよ。人間がいてもいなくてもね」 もしも乾燥した MASTODON の荒野に OPETH が実ったら?どうぞ!!

VOKONIS “ODYSSEY” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CARA NEIR : PHASE OUT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GARRY BRENTS OF CARA NEIR / GONEMAGE !!

“Here On Phase Out Is The Demonstration Of Him Warping Us Into a Video Game Dimension That He’s Created With The Use Of a Forbidden Device Known As The RPGBOY.”

DISC REVIEW “PHASE OUT”

「今回の作品は、これまでのスタイルとは全く異なるものになったよね。これまでの殺風景なイメージを一新して、自分たちの作ったコンセプトをしっかりと表現できるようにしたんだよね。ゲームソフトの表紙のようなイメージを切り取ったんだ」
“8-bit punk black metal chiptune chiptuneish indie rock lo-fi noise rock pixelcore post-hardcore skramz”。”Phase Out” の Bandcamp にはこれだけ大量の “タグ” が敷き詰められています。テキサスの異端児 CARA NEIR は、これまでブラックメタル、グラインドコア、ポストハードコア、スクリーモといったパレットの色彩からあらゆる不幸の痕跡を抽出し、万華鏡のように世界へと投影してきました。その多様性は時に一貫性のない “骨抜きのブラックメタル” と揶揄されながらも、ついに最も冒険的な “Phase Out” で魅惑と実験のアマルガムを最高の場所まで引き上げたのです。
「”Phase Out” では、ザ・ワンが “RPGBOY” と呼ばれる禁断のデバイスを使って、僕たちをビデオ・ゲームの次元にワープさせてしまったんだ。ゲームボーイのような形をしているけど、操作する人の知恵次第で時空を操ることができる力を持っているんだよ。ザ・ワンはその力を悪用して、RPGバージョンの僕たちを、彼のガントレットのような次元の中に作り出したんだよ。そして僕たちは、彼の病的な娯楽のために、このガントレットの中で競うように服従させられている」
例えば、忍者竜剣伝やドラゴンクエストの一場面を切り取ったようなドット絵のアートワークこそ “Phase Out” への招待状。宿敵の宇宙人 “ザ・ワン” によって RPG の世界に閉じ込められてしまった Garry Brents(ほぼすべての楽器、サンプル、プロダクション)と Chris Francis(ほぼすべての歌詞とボーカル)、つまり CARA NEIR の2人はアルバムを通してビデオゲーム “Phase Out” のクリアーを音楽で試みます。
「いとこと一緒に “マクロス/ロボテック” の卓上RPGをずっとプレイしていたんだ。ペンや鉛筆、紙を使って、マクロスの世界をダンジョンズ&ドラゴンズのスタイルで遊んだことが、子供の頃の自分の想像力の出発点となっているんだよね」
実際、マクロスやスター・オーシャン、クロノ・トリガーといった日本のアニメやゲーム、それに植松伸夫やロックマンのサウンドトラックを聖書として育った彼らの作品には、その息吹が存分に息づいています。レベルアップを告げるブレイクダウン、セーブポイントでのリラックスしたローファイなインストゥルメンタル、命をかけた圧倒的なバトル、スターオーシャンをサンプリングしたスポークンワード、そのすべては8-bitの歪みとファミコンのリヴァーブによって描き出され、子供のころ胸を弾ませたあの冒険へとリスナーを誘います。
ただし、CARA NEIR が連れ出す冒険とは狂った音楽の旅路。ブラックメタルを魔改造したアバンギャルドなサウンドから、チップチューン、サンプル、ジャジーなスウィング、トラップ、スクリーモ、グラインド、アコースティック、ハードコアまで、リスナーがたどり着く街やダンジョンはすべてが多様でユニークに絡まり合い、その魅力を存分にアピールしているのです。そこに一握りのニヒリズムとユーモア、そして現実からの逃避を散りばめながら。
「GONEMAGE はブラックメタルと8-bitサウンドをミックスしたものだけど、よりメランコリックでドリーミーな感じで、特にいくつかの曲ではシューゲイザーを取り入れているよ」
Garry の創作意欲は衰えることを知りません。CARA NEIR のリリースからわずか数ヶ月で完成を見た別プロジェクト、GONEMAGE もシーンの注目を浴びています。同様に8-bitをメタルとクロスさせつつ、よりブラックメタルに特化し感傷的なシューゲイズの響きも取り入れた “ピクセルコア” のサウンドは、実に奇抜でしかし心を激しく揺さぶられます。
今回弊誌では、Garry Brents にインタビューを行うことができました。「音楽的に大きな影響を受けているのは、常に ULVER だよ。今までで一番好きなバンド。彼らは常に変化し続けるバンドで、無意識のうちに自分の音楽や CARA NEIR のためにそのことを心に留めていたんだと思うよ」 どうぞ!!

CARA NEIR “PHASE OUT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WRECHE : ALL MY DREAMS COME TRUE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN STEVEN MORGAN OF WRECHE !!

“I Think Within Black Metal, The Piano Opens Up Patterns Of Notes That Appear Like Tremolo Riffs, But Sustain a Greater Wealth Of Musicality – Also, Being That The Piano Notes Immediately Die Off After Being Played Unlike a Guitar That Has Sustain, The Athleticism Is Appealing.”

DISC REVIEW “ALL MY DREAMS COME TRUE”

「ブラックメタルでは、ピアノはトレモロ・リフのような音のパターンを開拓しながら、より豊かな音楽性を維持することができると思うんだ。サスティーンのあるギターと違って、ピアノは弾いたらすぐに音が消えてしまう。そのために必要となる運動性の高さも魅力だよね。膨大なエネルギーの雲を作るためには、動き続けなければならない。これは、ギターにはできないピアノの特徴だよ」
“もしもブラックメタルで、トレモロ・リフを弾くギターの代わりにピアノを使ったら?” WRECHE の “All My Dreams Come True” は、そんな荒唐無稽でしかし好奇をそそる If の音夢を文字通り実現する物怪の幸いです。それだけではありません。アルバムにはピアノだけでなく、現実的な絶望苦悩に満ちたボーカル、シンセサイザーの神秘的で壮大なレイヤーが敷きつめられて、ブラックメタルでありながらブラックメタルの常識をすべて覆す、ジャンルにとって青天の霹靂ともいえる領域にまで到達しているのです。とはいえ、あくまでも手段は手段。儚さ、苦しみ、怒り、そして神秘的な体験という感情の肝は、たしかにこの場所に同居しています。
「僕はブラックメタルのファンタジーや逃避的な側面にはあまり興味がないんだよね。貧困と絶望が蔓延し、宗教指導者とそれを支持する政治家に騙され、いたるところにテント村があり、残酷な行為が行われているという、僕の身の回りにある世界をこのアルバムで表現したかったんだ」
WRECHE の中心人物である John Steven Morgan は、Bandcamp ページにおいて、シュールレアリストであり、神秘主義者としても知られるヘンリー・ミラーの言葉を引用しています。”歌うためには、まず口を開かなければならない。肺があって、音楽の知識が少しあればいい。アコーディオンやギターを持っている必要はない。肝心なのは、歌いたいと思うこと。これが歌だ。私は歌っている”。今しかない、今はじめろ、今を生きろ。John がアルバムに込めたポジティブなメッセージは、音楽同様ブラックメタルの典型とは明らかに距離を置いていました。
「すべてが揃っていても、”歌いたい” という気持ちがなければ何の意味もないわけだから。そしてそこから僕はミラーの言葉を、何かを始めるとき、あるいは芸術作品として表現するとき、あるいは人生において何かを行うときの方法として捉えているんだ。ただシンプルに、始めることが実現への第一歩だから」
隠喩としてだけではなく、音楽自体も “All My Dreams Come True” はヴォーカルに重きが置かれています。荒々しき “Schrezo” では、不協和なピアノラインに、苦悩に満ちた叫び声が重なります。ピアノの和音は絶えず背後で鳴り響き、ドラムのダーティーなシンバルは緊急事態を表現。この混沌とした状況の中で、トラックの大半をリードするのがスクリームであり、フィードバックとの相互作用が実に面白く、圧迫感のあるものとなっているのです。”肝心なのは歌いたいという気持ち”という言葉が、John の情熱と献身が、ハードコアの獰猛まで抱きしめたこのトラックを通して実によく伝わってきます。
一方で、アルバムの神秘性は、苦しみの裏返しとして、より “美しく” 儚い曲で伝えられていきます。”Mysterium” と名付けられた楽曲は、半音階的でハープにも似たドリーミーなピアノの音で幕を開け、万華鏡のピアノとシンセが楽曲の階段を駆け上がり、ブラックメタルが探求できる経験の底辺から、ブラックメタルが実現できる表現の高みまでを幻想的に描き切ります。
「僕の演奏スタイルは、ジャズやクラシックよりもメタルのジャンルに適しているんだよね。僕は鍵盤を叩くのが大好きで、かなり暴力的なプレイヤーだからね」
John はそう嘯きますが、醜さ狂気、暴力と同時に彼の鍵盤は神々しき美麗や荘厳、そして現実に残された一握りの希望までを的確に表現しています。暴力の天頂、宇宙の壮大、サイケデリックな夢、孤独、痛み、苦悩、悲しみ。対比というよりも、クラッシック、マスロック、ジャズ、ハードコアを通過したがゆえの多様な感情のスープでしょうか。そうして WRECHE は、ブラックメタルというジャンルの音楽的背景を、目を見張るような方法で変貌させ、拡張し、揺さぶり、前へと進めました。彼の言葉を借りれば、メタルに宿る無限の可能性を引き出したのです。
今回弊誌では、ほぼすべてを一人でこなす John Steven Morgan にインタビューを行うことができました。「クラシック音楽、特にベートーヴェンを独学で研究し始めたんだ。スコアを聴いたり読んだりして、どうやって特定の効果やムードを生み出したのか、またどうやって転調させて音楽を前進させたのかをね」 どうぞ!!

WRECHE “ALL MY DREAMS COME TRUE” : 10/10

INTERVIEW WITH JOHN STEVEN MORGAN

Q1: This is the first interview with you. So, at first could you tell us about yourself? What kind of music were you listening to, when you were growing up?

【JOHN】: Yeah! Thanks for having me here. I grew up in a small rural desert town in CA, USA. I really loved Beethoven as a child (well the more popular pieces like Moonlight Sonata), but the bread and butter for me was listening to bands like The Doors, Queen, Boston, ELO, The Beatles, and Led Zeppelin. My dad and I would listen to classic rock on the radio on the way to school or when we were working outside on the property. My first obsession in music was Pink Floyd in high school – especially their psychedelic albums (Piper thru Ummagumma/ Meddle/ Atom Heart Mother).

Q1: 本誌初登場です!まずはあなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【JOHN】: インタビューをありがとう。僕は、アメリカのカリフォルニア州にある小さな砂漠の田舎町で育ったんだ。子供の頃はベートーヴェンが大好きで(”月光” のような人気の高い曲も) 。僕にとっての糧は DOORS, QUEEN, BOSTON, ELO, BEATLES, LED ZEPPELIN みたいなバンドを聴くことだったね。
僕と父は、学校に行く途中や、外で敷地内の作業をしているときに、ラジオでクラシック・ロックを聴いていたんだよ。最初に音楽に夢中になったのは、高校時代に聴いた PINK FLOYD だったね。特にサイケデリックなアルバム(Ummagumma/ Meddle/ Atom Heart Mother)が好きだったよ。

Q2: You seem to be able to play a variety of instruments, how did you learn how to play them?

【JOHN】: I started piano at 15 and drums around the same time (playing on pots and pans), over time I just really loved to play and it was a great way to find respite from school or sports – then it became a full on passion by the time I turned 18 and started playing / improvising with Barret Baumgart. I just taught myself how to play the instruments and as time went on, I started self-study of Classical music, especially Beethoven. I both listened and read the scores to learn how they achieved certain effects and moods, and how they propelled the music forward through modulation.

Q2: あなたは様々な楽器を演奏できるようですね?

【JOHN】: 15歳でピアノを始め、同じ頃にドラムも始めたんだ。ドラムは鍋やフライパンで演奏していたんだけど。そのうちに演奏することが本当に好きになって、学校やスポーツの合間の息抜きになっていたね。18歳になって Barret Baumgart と一緒に演奏、即興演奏をするようになってからは、完全に音楽に対して情熱的になったんだよね。
楽器の演奏方法は独学で学んだんだけど、時間が経つにつれ、クラシック音楽、特にベートーヴェンを独学で研究し始めたんだ。スコアを聴いたり読んだりして、どうやって特定の効果やムードを生み出したのか、またどうやって転調させて音楽を前進させたのかをね。

Q3: What inspired you to start Wreche? What’s the meaning behind your band name Wreche?

【JOHN】: Well, Barret Baumgart and I started Wreche with our 2017 self-titled album – it was an extension of our 2008 band Architeuthis (which was also piano & drums, just instrumental). He went off to grad school and I was working on other things, but around 2015 we decided we wanted to do another project more in the metal vein. I also wanted to work in a genre that served my ambitions as a pianist and composer – and metal seemed pretty limitless, and still is in my opinion. The meaning behind the band name is “misery” – Wreche is the middle english spelling of wreak – as in to wreak havoc, or befell with great sadness/misery (from the Oxford English Dictionary). I was sad at the time I came up with it haha.

Q3: WRECHE を始めたきっかけを教えていただけますか?

【JOHN】: Barret Baumgart と僕は2017年のセルフタイトル・アルバムで WRECHE を始めたんだけど、これは2008年に活動していたバンド ARCHITEUTHIS(ピアノ&ドラムのインストゥルメンタル)の延長線上にあったんだ。
彼は大学院に行き、僕は他の仕事をしていたんだけど、2015年頃に、もっとメタルの流れを汲む別のプロジェクトをやりたいと思ってね。僕は、ピアニストや作曲家として自分の野心を満たすようなジャンルで仕事をしたいと思っていたんだけど、メタルはそういう意味でかなり無限の可能性を秘めていると思ってね。
バンド名に込められた意味は “不幸” だよ。 中世で Wreak は Wreche と綴られていて、「大混乱を引き起こす」「大きな悲しみや不幸に見舞われる」という意味を持っていたんだ。オックスフォード英語辞典からの引用だけど。この名前を思いついたとき、僕は悲しかったんだよ。

Q4: One of the unique aspects of Wreche is that you use the piano as your main instrument instead of the guitar, even though it’s black metal. Why did you go for such an idea?

【JOHN】: I really love metal, but I don’t play guitar! However, as Barret and I discovered over the years, my playing style really lends itself more to the metal genre than say jazz or classical. I love banging on the thing and I’m a pretty violent player.

Q4: WRECHE は、なんと言ってもブラックメタルにもかかわらず、ギターの代わりにピアノをメインの楽器として使用しているところが非常にユニークですよね?

【JOHN】: 僕はメタルが大好きなんだけど、ギターが弾けないからね!だけも、Barret と僕が長年にわたって発見してきたように、僕の演奏スタイルは、ジャズやクラシックよりもメタルのジャンルに適しているんだよね。僕は鍵盤を叩くのが大好きで、かなり暴力的なプレイヤーだからね。

Q5: In fact, guitar tremolo riffs are an iconic part of black metal, are you using the piano as an alternative or something completely new? Within the framework of black metal, is there something that can be expressed only with the piano?

【JOHN】: There’s a few sections in “Les Fleurs mov.2” where I purposefully emulate tremolo guitar riffs (as a sort of homage or quote to black metal). Otherwise, yeah it was difficult in some ways to adapt my playing further into the black metal style – especially in terms of subbing for tremolo riffs. I needed a way to create constant motion on the piano. I did this by implementing arpeggios and various triplet or quadruplet double hand patterns to create a moving base for the music to stand on, and to keep up with blast beats. I hope this hits people as completely new – I have never seen the piano used this way in metal before…usually it’s just for pretty little interludes or ballads. I think within black metal, the piano opens up patterns of notes that appear like tremolo riffs, but sustain a greater wealth of musicality – also, being that the piano notes immediately die off after being played unlike a guitar that has sustain, the athleticism is appealing. You have to keep moving to create vast clouds of energy. This is something the piano does that guitars cannot – each note is like a small shard of glass in a mosaic because of the nature of the instrument’s sustain.

Q5: 実際のところ、ギターのトレモロ・リフはブラックメタルの象徴とも言えますが、あなたはピアノをその代用としているのでしょうか?それともピアノならではの表現を模索しているのでしょうか?

【JOHN】: “Les Fleurs mov.2” では、ブラックメタルへのオマージュや引用として、意図的にトレモロ・ギターのリフを模倣した部分がいくつかあるね。ただ、それ以外の部分では、自分の演奏をさらにブラックメタルのスタイルに合わせるのは難しい面があったのは確かだよね。トレモロ・リフという意味ではね。
だから、ピアノに一定の動きを持たせる方法が必要だったんだ。そこで、アルペジオや3連、4連の両手のパターンを導入して、音楽の土台となる動きを作ったり、ブラストビートに合わせたりしたんだよね。今までメタルでこのようにピアノが使われたことはなかったよね。インタルードやバラード以外では。みんなが完全に新しいと感じてくれればいいな。
ブラックメタルでは、ピアノはトレモロ・リフのような音のパターンを開拓しながら、より豊かな音楽性を維持することができると思うんだ。サスティーンのあるギターと違って、ピアノは弾いたらすぐに音が消えてしまう。そのために必要となる運動性の高さも魅力だよね。膨大なエネルギーの雲を作るためには、動き続けなければならない。これは、ギターにはできないピアノの特徴だよ。サスティーンがないからこそ、一音一音がモザイクの中の小さなガラスの破片のようになるわけさ。

Q6: The title “All My Dreams Come True” and the artwork of flowers are far from typical Black metal images, and also very impressive. Can you tell us about the concept of the album and the theme of the lyrics?

【JOHN】: Yes! They are distant from standard black metal imagery. I’m not that into the fantasy/escapist side of black metal, even if I did put flowers on the cover. I really wanted to express what was around me in the city (and even the US) on this album – the widespread poverty and despair, people being tricked by their religious leaders and the politicians backing them, all while there’s tent cities everywhere, abject cruelty. It is so sad. The flowers were a gift to me and I took the photo years before the album was finished. However, the more I thought about life, the more I saw it in relation to the flowers. They live and die, they are put on your grave as a final statement, they grow from last year’s dead detritus every spring as a sign of new life. It was a perfect metaphor for the past/present/future – the cycle of life. The title reflects this – rather than waiting for the afterlife, or some invisible future, it is an urge to see what is in front of you, to be present in your surroundings. It is easy these days with social media to feel so isolated, un recognized – as if your dreams and goals are constantly further away from you because of the comparisons you may make to other people’s successes – all right in your face 24hrs/day. It is a call to throw out fantasy/future planning for some distant plain of transcendence, merely existing for the next day, and realize that this earth, this time we have here, is both heaven and hell. There is no afterlife. Only now. All my dreams came true because I am here..

Q6: アルバムのタイトルである “All My Dreams Come True”、それにこのアートワークはブラックメタルの典型的なイメージとは程遠いですよね?

【JOHN】: そうなんだよ!標準的なブラックメタルのイメージとはかけ離れているよね。ジャケットに花をあしらったとしても、僕はブラックメタルのファンタジーや逃避的な側面にはあまり興味がないんだよね。貧困と絶望が蔓延し、宗教指導者とそれを支持する政治家に騙され、いたるところにテント村があり、残酷な行為が行われているという、僕の身の回りにある世界をこのアルバムで表現したかったんだ。とても悲しいことだよ。
この花は僕がもらったもので、アルバムが完成する何年も前に撮影したんだ。その間に、人生について考えれば考えるほど、この花との関連性が見えてきたんだよね。花は生きて死に、最後の意思表示として墓に供えられ、毎年春になると去年の枯れた残骸から新しい生命の証として成長していく。それは、過去・現在・未来、つまり生命のサイクルを表す完璧なメタファーだったんだ。死後の世界や目に見えない未来を待つのではなく、自分の目の前にあるものを見て、世界の中に存在したいという衝動が、このタイトルには込められているんだよ。
SNS が発達した昨今では、自分が孤立しているように感じたり、認識されていないように感じたりすることがよくあるよね。他人の成功と比較することで、自分の夢や目標が常に遠くにあるように感じてしまうんだ。
これは、空想や将来の計画をどこか遠くの超越した場所に投げ捨て、ただ次の日のために存在するだけで、この地球、この時間が天国でもあり地獄でもあることを理解するように呼びかけるアルバムだ。死後の世界なんてないよ。今しかない。僕がここにいるからこそ、すべての夢が叶うんだ。

Q7: At Bandcamp, you quoted Henry Miller’s words. It seems to imply the importance of vocal and lyrics in your mind, would you agree?

【JOHN】: In a lot of ways yes, but I meant it more in terms of making art. The lyrics are very important to me because they voice best what I want to say about the world and my place in it – my personal experiences and observations. The quote for me (which isn’t the objective meaning of course), puts importance on the will to do something less the requisite materials. You could have everything, but if the “want to sing” isn’t there, it means nothing. Also, I see that quote in terms of how something is to be started, or manifested as a work of art, or anything in life for that matter – you simply begin and then it becomes.

Q7: Bandcamp のページであなたはヘンリー・ミラーの言葉を引用していますよね?あなたの中の、歌や歌詞の重要性を隠喩しているように感じました。

【JOHN】: いろいろな意味でまあそう取れるよね。だけど、僕はアートを作るという意味でより多くのことを考えたんだ。歌詞は僕にとって非常に重要なもので、世界とその中での自分の居場所について言いたいこと、つまり個人的な経験と観察を最もよく表しているからね。
僕にとってミラーのこの言葉はもちろん客観的な意味ではないけれど、必要な材料がなくても何かをしようとする意志を重要視しているんだよ。すべてが揃っていても、「歌いたい」という気持ちがなければ何の意味もないわけだから。
そしてそこから僕はこの言葉を、何かを始めるとき、あるいは芸術作品として表現するとき、あるいは人生において何かを行うときの方法として捉えているんだ。ただシンプルに、始めることが実現への第一歩だから。

Q8: With the emergence of Alcest and Deafheaven, black metal has continued to spread and diversify. You are one of such a new generation, what does the first generation of Inner Circle and evil legends mean to you? Have you ever seen the movie “Lord of Chaos” ?

【JOHN】: Definitely haha! The movie was pretty good. The documentary “until the light takes us” is pretty good too. To me, some of the music still holds up and is really good, but ultimately , they were for the most part (with exceptions like that guy Gaahl) a bunch of suburbia kids running around causing mayhem spreading neo polytheistic, and for some – racist, and homophobic ideas; burning down churches to reclaim their heritage from the crusading Jesus pushers back in 1200AD. Not sure if those bloodlines still run, but I do understand how horrific the christian crusades were – erasing entire cultures in order to replace their history with the Bible’s history, and they did it all over the world. Still, the music was great, the atmosphere was great, though I think kids like that are/would have been diametrically opposed to people like me. One thing I do agree with is the anti-capitalist sentiment.

Q8: 映画 “Lord of Chaos” はご覧になりましたか?
ALCEST や DEAFHEAVEN の登場でブラックメタルは多様化と拡散を続け、あなたもそういったアーティストの1人ですが、第1世代のインナーサークルや狂気にかんしてはどう感じていますか?

【JOHN】: もちろん見たよ!ハハハ! 映画はかなり良かった。ドキュメンタリー映画の “Until the Light Take Us” もいいよね。
僕にとっては、いくつかの当時の音楽は今でも残っていてとても良いと思うんだ。だけど結局のところ、Gaahl のような例外はあるにしても彼らは、新多神教を広めて騒乱を起こしながら走り回る郊外のキッズ集団であり、一部の人にとっては人種差別的で同性愛嫌悪的な考えであり、西暦1200年に十字軍に参加したイエスの押し売りから自分たちの伝統を取り戻すために教会を焼き払っていたわけだよね。
もちろん、その血筋が今も続いているかどうかはわからないけど、キリスト教の十字軍がどれほど恐ろしいものだったかは理解しているよ。彼らの歴史を聖書の歴史に置き換えるために、文化全体を消し去り、それを世界中で行ったんだからね。
音楽は素晴らしかったし、雰囲気も良かった。でも、あのようなキッズたちは、僕のような人間とは正反対だったと思うよ。一つだけ同意できるのは、反資本主義的な感情かな。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED JOHN’S LIFE

HELLA “HOLD YOUR HORSE IS”

THE BAD PLUS “SUSPICIOUS ACTIVITY?” “PROG”

PINK FLOYD “MEDDLE”

ULCERATE “VERMIS”

BEETHOVEN “SONATAS”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you so much for reading this! It has been my desire to reach people in Japan ever since 2007 – I was very much into Hella and they toured Japan and made a DVD called Homeboy/Concentration Face. I could not believe the enthusiasm for such a strange band! In America, Hella shows were not packed, but in Japan they were. It made me respect the culture and the open minded approach to life and art. I thought that maybe one day, I can get my music out there because I think people will give it a chance. So, I hope you all enjoy the new record and I hope to get out there to play live one day.

読んでくれて、本当にありがとう。2007年に HELLA に夢中になり、彼らが日本をツアーして “Homeboy/Concentration Face” という DVD を作ったときから、日本の皆さんに僕の音楽を届けたいと思っていたんだ。
ああいった奇妙なバンドが熱狂的な支持を受けるなんて信じられなかった。アメリカでは、HELLA のショーは満員ではなかったけど、日本では満員だった。それを見て、僕は日本の文化や、人生や芸術に対するオープンマインドなアプローチを尊敬したんだよ。いつか自分の音楽を世に出せるかもしれない、そうすれば日本の人々はチャンスを与えてくれるだろうと思ったんだ。
だから、みんなが新譜を楽しんでくれることを願っているし、私もいつか日本でライブをしたいと思っているよ。

JOHN STEVEN MORGAN

WRECHE Official
WRECHE Bandcamp
DIES IRAE WRECHE “ALL MY DREAMS COME TRUE”

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW【GOJIRA : FORTITUDE】


COVER STORY : GOJIRA “FORTITUDE”

“The Point Of Fortitude Is To Inspire People To Be The Best Version Of Themselves And To Be Strong No Matter What. It’s Easy To Despair And To Lose Faith. But At Some Point You’ve Got To Figure Out Where You Stand. You’ve Got To Ask What Your Attitude Will Be If This Is The End Of The World As We Know It.”

NATURE IS HURTING

フランスからメタル世界の巨人となった GOJIRA は、そのキャリアにおいて、常に無関心や無知と戦ってきました。そして、待望の7枚目のアルバム “Fortitude” が文字通りゴジラのように地平線の彼方に現れる刻、フロントマンの Joe Duplantier は、人類が自滅へのスパイラルに向かい合う必要性をこれまで以上に強調したのです。
Joe は、子供のころからある記憶が頭から離れません。家族で見ていたテレビ。点滅する画面の前に座ると、静寂の中から理性の声が現れ多くの人が気にも留なかった状況の緊急性を訴えかけていました。フランス系カナダ人の宇宙物理学者であるヒューバート・リーブスは核合成の研究でよく知られていますが、あの運命の夜、彼は人類の自滅は原子の炎の中などではなく、冷たく静かな自己満足の中で起こる可能性が高いと説きました。
GOJIRA のフロントマンは、あのとき驚くほど明快にこう思いました。
「彼はただちにやり方を変える必要があると言っていた。僕たちはゴミやCO2の排出量を減らす必要があるとね。排出量を減らさなければならない、リサイクルをしなければならない。注意を払わないと、50年後には大変なことになってしまう。テレビに出ている人が言っているのだから、状況はすぐに変わるだろうと思ったことを覚えているよ」
しかし残念ながら、30年以上経った今でも状況はほとんど変わっていません。

Joe と弟の Mario は、メタル界で最も率直な暴れん坊の2人にしては意外にも、穏やかで牧歌的な環境で育ちました。スケッチ・アーティストの父とヨガ教師の母の間に生まれた兄弟は、フランスの西海岸にある人里離れたコミューン、オンドルで育ちました。彼らの家はあまりにも田舎だったので、あるジャーナリストが訪れたとき、「庵」と表現したほど。しかし、フォークからマイク・オールドフィールドまで、常に音楽が流れていました。詩人や画家が泊まりに来て、大人たちが国際的な哲学を語り合っているときだけ、音楽は止み子供たちは話に耳を傾けたのです。
兄弟二人はよく浜辺で時間を過ごしました。Joe は木や石を集めていて、家に帰ると手が原油で真っ黒になっていました。一方、Mario はサーフィンをしているときにビニール袋が顔に張り付きました。おとぎ話のような平穏な暮らしにも、現代社会のヒビが入っていたのです。
「自然を傷つけてばかりなんだから、自然に傷つけられるのは当たり前だ」
創造性に囲まれた青春時代を過ごしたにもかかわらず、Joe と Mario はメタル世界の英才教育を受けたわけではありません。彼らの両親がラジオで流さなかったのは、唯一ハードロックだけだったのですから。兄弟のいとこが、当時12歳の Joe に強引に METALLICA を聴かせたことがきっかけで、彼らは METALLICA に夢中になります。
「振動、音色、ドラムの叩き方が神秘的だったんだ。メタルは敏感な人を惹きつけるんだと思うよ。僕は生まれつき敏感で、学校ではいじめられっ子だった。人間が嫌いだったんだ。METALLICA のテーマは非常に感情的で、トラウマになっているような面があり、そこに惹かれたんだよね」
学校での怒りは、2人にヒーローを模倣するエネルギーを与え、Joe はギターを手にしてシンガーになりました。
「僕にとって、音楽は説教やメッセージありきではないんだよね。腹の底から出てきたものを、マイクに向かって叫ぶだけなんだ。叫ぶことで大事な言葉が出てきたんだよ。最後に食べたピザについて叫ぶつもりは毛頭ないけどね」
情熱的で外向的な性格のマリオは、ドラムの虜になりました。
「学校の友達はみんなラグビーをやっていたけど、僕は好きじゃなかった。ドラムが僕のラグビーだったんだ」
兄弟は、そうしてエクストリーム・メタルのカルテット GOJIRA で、その傷を訴えていきました。荒々しく複雑な音楽性だけでなく、環境保護を訴えることも彼らのアイデンティティーとなったのです。

GOJIRA が結成されたのは1996年で、2人が DEATH に影響を受けたミュージシャンを募集する広告を出したのがきっかけでした。そこに2人目のギタリスト、Christian Andreu が加わり、後にベーシストの Jean-Michel Labadie が加わりました。当初、4人は自分たちのことを “GODZILLA” と呼んでいました。火を噴く怪獣ほどメタルなものはないでしょう。
2001年にデビュー作 “Terra Incognita” を自主制作。このタイトルは、兄弟が子供のころに聞いていた会話から生まれたもので、ヒンドゥー教の神話を暗示しています。具体的には、ブラフマーが、その力を乱用した人類から神を隠した未知の場所を意味しているのです。2003年に発表された次作 “The Link” は、同様に形而上学的な内容で、復活、瞑想、苦しみによる悟りについて考察しています。
「最初はもっとスピリチュアルな音楽だった」と Mario は回想します。「2005年に “From Mars to Sirius” をリリースしたときは、詩的な表現を続けていたんだけど、”Global Warming” のような曲は、僕たちの環境に対するメッセージにとって本当に重要なものだったね」
人類が地球を枯渇させ、新たな故郷を探すというSF的なストーリーを持つ “From Mars to Sirius” は、ゴジラにとって初めての気候危機をテーマにした作品で、世界的なブレイクへの第一歩となりました。デスメタルをより大胆に取り入れたこの作品は、ブレイクダウンを多用した “Backbone”(現在でも最もヘヴィーな楽曲のひとつ)のような大作と、穏やかなボーカルで構成されたゆらぎの叙事詩で見事にバランスが取れていました。
「僕たちは世界を征服する準備ができていたんだ!」と、Joe は叫びます。「エネルギーがあり、怖さも疲れも退屈も存在しなかった。10年間の努力と苦労を経て、僕たちは燃えていたし、新しいオーディエンスと出会う期待と飢えがあったんだ」
この野心は、サウンドに磨きをかけた “The Way of All Flesh” と “L’Enfant Sauvage” に反映されていきました。バンドは頻繁にアメリカとヨーロッパをツアーしていましたが、毎晩自分たちのビデオを見返して、細心の注意を払ってライブショーを完成させています。「それってすべてのミュージシャンがやるべきことだろ?」と Mario は嘯きます。

「実は数年前から、人類の未来に悲観的になっていたんだ。真実に目覚めて、多くの人が自分を高めようとしているにもかかわらず、世界は逆行しているような気がするんだよね。テレビで(元)アメリカ大統領が『地球温暖化が本当かどうかわからない』と言っているのを見たり、高校で教えている友人から生徒の中にはヒトラーが映画の中の人物なのか、実在した人物なのかよくわからない子がいるいう話を聞いたりすると、ものすごくがっかりしてしまう。僕は少し疲れてしまったんだ。だからパンデミックが起こったとき、僕は『いいだろう。燃えてしまえばいい。地球に寄生している僕たち人類にとって、これは実際、終わりなのかもしれない』と思っていたんだよね」
自分の無能さを隠そうと必死になっている政治家や権威が、何ヶ月にもわたってくだらない話をしてきた後で、厳しい真実を語る聡明な頭脳に出くわすのは新鮮なことでしょう。
テレビの前で目を輝かせていた少年時代から、Joe は、年間7,500億トンの氷が海に溶け、毎週2,300平方キロメートルの熱帯雨林が伐採され、毎日150種もの生物が絶滅しているという、数字が物語るはず脅威と、その対局にある人々の無知さに慣れていました。だからこそ、コロナで234万人が亡くなり、数え切れないほどの人々が貧困やうつ病に陥っているという現在のデータに贖いトンネルの先には光があると主張する先導者を信じません。COVID-19の危機が1年を超えた今、人類は大きな灰色の未知の世界に直面しているのというのがまがいの無い現実です。
しかしだからこそ、GOJIRA 7枚目のアルバム “Fortitude” が登場するのに、これ以上のタイミングはないでしょう。世界はかつてリーブス博士が呼びかけていたのと同じように、困難に正面から立ち向かう勇気ある心の強さ、”不屈の精神” を求めているのですから。
「不屈の精神こそ、僕たちが示すべきものだ。抱きしめるべきものだよ。近い将来のことでさえもすべてが不確かな世界の中で、僕たちがどうあるべきかということだよね。僕たちはバンド結成当初から、競争と対峙する思いやり、そして憎しみと対峙する愛情をテーマに活動を続けてきた。”Fortitude” のポイントは、最高の自分であること、そして何があっても強くあることを人々に促すことなんだ。朝起きて、また生活に追われるのはつらいことだけど、僕たちの態度や捉え方、自分や人類の未来をどう描くかによって、変化をもたらすことができる瞬間がたしかにあるんだよ。絶望したり、信念を失ったりするのは簡単だ。だけど、ある時点で自分の立ち位置を把握しなければならないんだよ。これが僕たちの知る世界の終わりであるならば、君はどんな行動を起こすんだい?」

私たちはもはやポイント・オブ・ノー・リターン、帰れないところまですでに到達してしまったのでしょうか?もしかしたら私たちは終末に向かって勇敢に行進しなければならないのでしょうか?
「人類がこの地球上に存在する価値があるのかないのか、という具体的な文脈で考えている。僕は友人とよく哲学的な話をするけど、僕は楽観的なんだ。人間だから、もちろん人類の成功を見たいと思っているよ。だけど同時に、僕はたちはこの惑星や他の種族にとって問題であると考えざるを得ないよね。他の種族が、本を書いたり、美術館に行ったり、コーヒーを飲んだりしないからといって、この地球上で生きていく権利がないわけではないんだよ。僕たちが他の動物を扱う方法には、憤慨し、ショックを受けているよ。人間は『動物だから、動物を食べるのは当たり前だ』と言う。でも、他の動物が工場を持っているかい?考えるべきことだと思うよ。僕の友人たちの中には、『私たちはどうせ消えていくものだ。楽しもうよ。すべてを台無しにしてしまおう。どうせ死ぬんだから、そんなの関係ないよ。40億年後には太陽が地球を破壊するんだから』って人もいる。楽観的な人間になるのが正しいのか、それとも悲観的な人間になって皮肉を言うべきなのか。その中間の存在になることはできないね。それは君が眠っているということだ。人間について何か意見や感じたことはあるかい? 僕は楽観的な人間になり、人々を揺さぶり、自分自身を揺さぶって、もっと思いやりを持ち、もっと与え、大統領や政府に頼るのではなく、この地球の問題にもっと問いかけることを選んだ。そして、たとえ僕たちが滅ぶことを運命づけられていたとしても、たとえ僕たちの文明が消滅することになっていたとしても、少なくとも、消滅する前に意識と美の最後の輝きを放ち、魂を高めることができるんだ」
Joe は捕鯨に反対の立場をとっていますが、というよりも動物全体の痛みを当たり前に受け止めているだけでしょう。
「君は諦める?『世の中が汚染されているから、もっと汚染してやる。みんなが盗みをするから、俺はもっと盗むんだ』。僕たち一人一人が世界を作り、僕たちの環境を作っているんだよ。政府や支配者層の話をするときに、『彼ら』と言う人がいる。しかし、『彼ら』は『僕たち』なんだ。あなたも人々の一員なのだから、もう少し努力すれば、変化をもたらすことができるんだ。僕たちは何の制限もなく環境を強姦し、汚染し、破壊する。そのことに腹を立てない人はいなはずさ。なぜ人は、それが簡単に無視できることだと思うんだい?」
昨年8月5日にリリースされたシングル “Another World” は、ファンにとって初めての “Fortitude” の実質的な予告となりました。”もうひとつの世界、もうひとつの場所” を求めるこの曲は、すでにコロナ禍のはじまりから数ヶ月が経過した地球と見事に共鳴。ただし、マキシム・ティベルギアンとシルヴァン・ファーヴルが制作した素晴らしいアニメーション・ビデオに出てくる「The virus is spreading(ウイルスが蔓延している)」というセリフは、実は COVID が制作者の頭の中をよぎるずっと前に完成していたのです。
「コロナのアルバムになるまでは、コロナのアルバムではなかったんだよ。フランスに戻る前には、レコードのミキシングを終えていたから。クレイジーで、まるで世界的な電波に影響されたような感じだよね。”Another World” は僕たちの癇癪が爆発したものだ。別の世界が欲しい、この世界をファックしたい…ああ、でももちろんこれは僕たちの世界だ、これは手にしている唯一のものだ・・・。 これしかないんだ。動物への接し方は何か間違っている。多くの種が絶滅したことは、僕たちの負の遺産の一つになるだろう。これらの種を作るのに何十億年もかかったのに、40年後には何千、何万という種が僕たちのせいで絶滅してしまうんだから」

アルバムの本格的な制作は、2018年初頭に始まりました。2016年の6枚目のレコード “Magma” は、プログレッシブ・デスメタルの可能性にアクセシブルな高い光沢を飾り付け、GOJIRA の評判を一気に引き上げたレコードでした。これまでの不屈のライフスタイルが、”Magma” を形作ったと言えるのかもしれません。
「ミュージシャンになると、ツアーが人生の90%を占めるんだ 」と Mario は言います。「何週間も、毎晩叫んで、体が元に戻ろうと必死なんだ。世界で最高の仕事であると同時に、最も苦しい仕事でもあるんだよね。それは作曲方法にも大きな影響を与える。狂ったような、暴力的な、やたらと速い演奏は永遠にはできないだろうから」
“Magma” の楽曲は非常にシンプルで、それぞれが1つか2つのリフを中心に構成されていました。Joe の声の繊細な可能性がさらに強調され、より瞑想的なムードが作り出されながら。 制作中には、兄弟の母が亡くなります。
「 “Magma” のすべてが母の死から生まれたわけではないけれど、もちろん深い影響があったよね」と Joe は振り返ります。「僕たちの心の中で、精神的にとても大きな出来事だった。ちょうど曲を書いているときに亡くなったから、影響を投影しないのは不可能だよ。アルバム全体に言えることだけどね。僕たちの母はいつもこう言っていた。死は人生の一部。それを受け入れなければならない』とね。生まれてきて死ぬ、それが人生の輪。だから、誰かが死ぬとみんなが泣いて黒い服を着るのが、子供心にもよくわからなかったんだよね」
その結果、”Magma” は完全な哀歌ではなく、死の先にあるものを同時に探求する作品となりました。冒頭の “The Shooting Star” では、母パトリシアが星座を通して死後の世界への道を示しています。”Between the bear and the scorpion, you’re getting close.”
タイトル曲では、輪廻転生とについて言及し、”Low Lands” は、墓の向こうにあるものについての知識をパトリシアに求めています。
2017年のグラミー賞では、ベスト・ロックアルバムとベスト・メタル・パフォーマンスにノミネートされ、同年末にはメタリカの “WorldWired” ツアーでオープニングを務める栄誉を手にします。自分たちの譲れないものを守りながら、次のステップに進むための基盤が整ったのです。そうして、堅苦しい青写真ではなく、彼らの中のゆるやかな優先順位が形成されていきました。Mario が語ります。
「”Fortitude” の最終的な目標は、自分たちのダークな部分を取り除くことだったと思うけど、それはとても難しいプロセスだった。”Magma” で僕たちは母を亡くして、それがけっこう大きな痛手となっていたんだ。”Fortitude” を書いているときは、星の配置が完璧だった。バンドの成功は最高潮に達していて、ツアーもうまくいっていたから、僕たちはただ曲を書くだけだったんだよ。”Magma” の時のように、感情的に苦しい立場に置かれていたわけではなかったんだ」

Duplantier 兄弟の母、パトリシア・ローザの死を受けて完成した “Magma” は、悲しみと憂いの深い灰色に彩られたレコードで、もちろん悲しみ一辺倒ではないにせよ、ある種居心地の悪さを感じさせた作品でもありました。ゆえに7枚目のアルバムは、より明るく、よりポジティブなものにする必要があったのです。”Magma” が親密で内なるものだったのに対し、”Fortitude” はより外に向かって、パンチの効いた、政治的なアルバムへと意図的に反転させられました。そうして、粗野でブルージーな “Yellow Stone”, 荒涼とした雰囲気の “Liberation” のように、新たな音楽的モチーフを取り入れながらも、彼らの鋭いシグネチャー・サウンドの探求と拡大には、さらに大きな「自由」が必要だったのです。
「ルールはない!」
Joe は、イギリスの過激なオルタナティブ・ロックバンドである PORTISHEAD や RADIOHEAD を引き合いに出し、予想外のサウンドを自由に展開するためのインスピレーションを得たと宣言します。さらに、伝統的なロック、ブルース、アメリカーナの再評価をも提案。これは、MASTODON のギタリスト、Brent Hinds との深い対話によって、子供の頃に受けた影響が再認識されたものでした。
「僕にとっては、いつも不協和で奇妙で攻撃的であることが重要だったんだ。でも、ロック、ブルース、プログレッシブなど、長い間見下していた音楽のエネルギーは、他のメンバーや自分が年を重ねるごとに、その良さがわかってきたんだよね。だからこのアルバムでは、もっと積極的に、もっと派手に、もっと楽しく、何か違うものを表現したいと思うようになった」
“Magma” の “エネルギー” から、バンドのサウンドを前進させたいと語る Joe。アメリカで過ごした10年間で、二重国籍の英雄はその発音も少し変化しました。そして彼の Silver Cord スタジオに流れる作品は、ロングアイランドのマスコア・マニアック CAR BOMB, パリジャン・メタルコアの新星 RISE OF THE NORTH STAR, マサチューセッツのヒップホップ・ロック HIGHLY SUSPECT など、さまざまなバンドへと幅が広がり彩られています。Joe は、2019年にリリースされた HIGHLY SUSPECT のクールなトラック “SOS” にゲスト参加したことが、変化の契機だったと証言しています。
「繊細であったり、”泣き虫 “であったりしてもいいんだということを教えてくれたからね。最初は恥ずかしいと思っていたけど、妻に聴かせたら『あら、セクシーね』と言ってくれたんだよね」

メガ・レーベル Roadrunner Records が、GOJIRA の “独立性と経験” を信頼してくれたことで、Silver Cord は2年間のクリエイティブな「繭」となれました。エンジニアのヨハン・マイヤー(彼らのライブ・サウンドも担当)がすべての段階でバックアップし、同じ空間でデモとレコーディングができるという快適さもあって、これまでにないほど多くのアレンジが試みられ、楽曲が書かれたのです。
「ソロも弾いているんだよ。だけど、アルバムから追い出された2曲にはキラー・ソロが入っていて、”ふざけやがって!”と思ったね」
さらに、SLAYER の “Reign In Blood”, NIRVANA の “Nevermind”, LIMP BIZKIT の “Chocolate Starfish…” などを手がけた伝説のプロデューサー、Andy Wallace がミックスを完成させました。
アルバムの制作は Joe にとって楽しめるものなのでしょうか?
「95%の確率で、惨めな気持ちになる。史上最高の曲を書こうとしているのに、それが実現しない。僕たちは自分の悪魔に直面している。自分のエゴに直面しているんだよ。失望や自己嫌悪にね。人生の中で、アルバムを作ることを選択したその時期には、自分のベストを尽くさなければならないんだ。多くの場合、それは苦痛だけど、正しいリフの組み合わせや良い歌詞を見つけたときには、とても報われることもある」
当初、サプライズ・リリースの時期は、2020年6月とされていました。しかし、ロックダウンが続いたため、9月に延期。ステージへの復帰が差し迫っていないことが明らかになると、さらにそのスケジュールは延期されました。リリースの前提としてツアーを行うという従来の考え方から脱却するには時間がかかりましたが、最終的には、エネルギーと衝動を抑えることができなくなったのです。
「今、僕たちは違った見方ができるようになった。ツアーをしてもしなくても、何があっても作品をリリースするんだ」
“Fortitude” は、まさに自由になることを求めるレコードです。Joe が目標とした解放感が脈々と流れ、完成した作品はポジティブなパワーと肯定的な暖かさに輝いています。GOJIRA のトレードマークであるテクニカルとヘヴィネスの光沢、狂った拍子記号と決定的なシンコペーションはもちろんすべての源流として存在しますが、個々の楽曲はよりオープンに進化を遂げ、時折、推進力のあるエネルギーをポスト・メタルやスタジアム・ロックの領域に向けて走らせることさえあるのですから。
重要なのは、”Flying Whales” の底知れぬグルーヴや、”Born In Winter” の氷のような壮大の中で、”Fortitude” の広範なコンセプトが生と死、自然とスピリチュアリティというテーマに沿って解き明かされ、音楽とテーマとの刺激的な交わりがあるということです。

モダン・メタルの多様性は、何もその音楽のみに範囲を限定するわけではありません。その思索や哲学も実に多様で包容力に満ちています。「消えてしまうことへの原始的な恐怖/虚空で幽霊になること…」実存主義者の亡霊が死の本質を探るオープニング曲 “Born For One Thing” は、完璧な入り口のように感じられます。2008年にリリースされた “The Way Of All Flesh” で徹底的に追求されたテーマは、ブリュッセルにある壮大な中央アフリカ王立博物館で撮影された変幻自在のミュージック・ビデオに匹敵するほどの躍動感をもって進行し、高められていきます。
「僕たちは皆、死ぬんだから、生の手放し方を人生で学ぶ必要がある。死は大きな意味を持ち、誕生と同じように人生の一部だけど、タブーだよね。でも夜が昼になるのと同じように、僕たちは死や衰えの概念とわかり合う必要があるんだよ。自分の体がある日突然機能しなくなるという考えに平安を感じることができれば、より寛大で思いやりのある人間になることができ、”必要のないものを持ち続けない” ことができるだろう。仏教では、7つ以上の物を所有すると苦しみ始めると言われている。これには何か意味があるんだろうな」
印象的なのは、”The Grind” “砕く” というテーマが複数のトラックに浸透していることです。最初の「I’ve been grinding and grinding…」「どんどん砕かれていく」という嘆きは、巨大なクローザーである “Grind” の「surrender to the grind」「俺は砕かれない」という宣言によって反転し、解消されます。この一見逆説的な歌詞の対比は、もちろん冒頭の 「世界にものすごくがっかりしてしまう。僕は少し疲れてしまったんだ」という発言に通じ、物事を先延ばしにしたり、頭を砂の中に埋めたりしないようにとの戒めともなっています。
「人間としての自分に身を任せる必要があるんだ。規律の中にこそ、自由がある。毎晩、寝る前に皿洗いをしておけば、朝になっても汚れた皿は残っていなだろう?人生には終わりがあるという考えに平安を感じることができれば、より幸せに生きることができるだろうね」
死と折り合いをつけることの重要性。それ以外にも、”Fortitude” には世界を旅するような冒険心が存在しています。”Amazonia” は、SEPULTURA の “Roots” のようなトライヴァルな雰囲気を醸し出していますが、これは Joe が2000年代後半にCAVALERA CONSPIRACY のベーシストとして活動していたことにも関係しています。ただし、森林伐採に対する環境保護のメッセージ(「This fire in the sky… The greatest miracle is burnings to the ground」「空を火が覆う。最高の奇跡が焼け落ちてしまう」)は、まさに GOJIRA そのもの。不屈の精神とは、先住民のコミュニティーにたいする敬意の表れでもあるのです。
“Sphinx” は、エジプトの巨像に敬意を表し、切り出された石灰岩のように重く、デスメタルの伝説である NILE も誇りに思うような野蛮さを誇っています。イギリスからの影響も顕著で、”Hold On” では、後期 IRON MAIDEN のような壮大なプログレッシブ絵巻が意図的に展開されています。一方で、”The Trails” は、ピーク時の DEFTONES のように、不気味で囁くような神秘的な雰囲気を醸し出しています。

しかし、音楽的にもコンセプト的にも、明らかに中心となるのは “The Chant” でしょう。インストゥルメンタルのタイトルトラックと並んで、ブルース、ゴスペル、アメリカーナを組み合わせたこの曲は、リスナーに「自分を取り戻し、上に立つ…強くなるんだ!」とリスナーを励ますシンプルな歌詞の組み合わせがこれまでの GOJIRA とは全く異なるものです。Joe が強調するように、この曲は “Fortitude” のコンセプトを究極に凝縮したものであり、ショーが再開されたときに忘れられない夜になることをファンに約束する誓いの手紙でもあるのです。
「通常、僕たちは観客を破壊するために曲を作る (笑) だけどこれは、彼らを一つにするための試みだったんだ」
アルバムのインスピレーションを得るために、Mario は兄にいくつかの絵画や芸術作品を見せました。その中には、オーストリアの画家グスタフ・クリムトが1898年に描いた “パラス・アテナ” も含まれていました。
「美しい絵だよね。彼はさらに戦士や騎士の例をいくつか見せてくれて、最終的には円卓の騎士と先住民族の文化をミックスしたアートワークになったんだ。アルバムの精神を表しているよ。言葉とビジュアルの相性がとても良いんだ」
ある意味で、”Fortitude” は芸術家の息子としての幼少期への頌歌でもあり、気候危機のトラウマだけでなく、それ以上のものを探求しています。”Born for One Thing” は、両親が愛したタイやチベットの哲学を参照しており、”The Trails” は子供のころ流れていたメランコリックとさえ言えるプログポップにも通じ、故郷のラジオから聞こえてきてもおかしくはないでしょう。
「両親が THE BEATLES や PINK FLOYD を聴いていたとき、僕たち兄弟はとても楽しい時間を過ごしていた。だから、その要素を少し加えたいと思ったんだよね」
“Born for One Thing” で提示されている “集団的昏睡” というアイデアは、現代社会の象徴である消費主義というテーマと結びついています。
「消費する方法を変えることは、物事を変える力につながる。例えば、僕は8年ほど前にヴィーガンになったんだけど、その理由は動物を虐待していることに気づいたから。これを人に言うと、「何を言っているんだ?牛乳の箱には “牛は外で育てられている” と書いてあるだろ?工場で飼われている動物じゃないんだから」と言われたりする。でもね、ミルクを作ってくれるおばあちゃんがいて、名前のある牛を飼っていて、その牛を愛情を込めてペットにしているなら、それはそれでいいと思うよ。でも、市販のミルクはそうじゃない。人は事実から逃れるために物語を語り、責任を感じなくて済むようにしたいものだ。僕たちは、自分の手で責任を取る必要があると思うよ。何かを買うときには、少なくとも自分が世界に与える影響を意識したいものだよね。
物事を変えるためには、正しい人に投票すればいいというのは幻想だよ。まずは、自分から始まる集団的な努力が必要なんだ。個人の目覚めこそが、唯一成功する革命なんだよ。このアルバムには市民的不服従の考えが根底にあるけど、行間を読まなければならないよ。市民的不服従とは、ルールに盲目的に従わないこと。クールになるために法律を破る必要はもちろんない。だけど、僕が言いたいのは “自分で考えろ ” ということなんだ。周りを見渡して、自分が世界に与える影響を考える。これこそが僕たちの持つ大きな武器なんだ。ただ、シンプルな選択と日々の習慣が世界を変えていく」

例えば、OPETH の “Heritage” のような大きな変革をもたらした作品と言えるのかもしれません。
「そう思う。アルバムのセッションを始める前に、僕は2ヶ月間、自分たちの曲の書き方やアレンジの仕方を深く分析したんだよね。”Fortitude” 以前の僕たちは、曲作りの公式を考えたことがなかったんだ。つまり、実際には何の構造もなく、ただ何となく組み合わせていただけなんだよね。例えば、良い曲には最低でも3つのコーラスが必要だし、過去の僕たちの音楽の扱い方は非常に実験的なアプローチだった。まあつねに、明白なパターンを避け、ルールの外にある音楽を作り出そうと努力していたからなんだけど。”Toxic Garbage Island” を例にとると、この曲には構造がないんだよね。コーラスもない…何もない! だから、”Fortitude” では、すべてをもう少しバランスよくしたいという気持ちがあって、Joe にこのアルバムでは、コーラスとヴァースを確立したいと言ったんだよね。これが作品全体に大きな力を与えていると僕は考えているよ」
“The Trails” で Joe の歌声は、グロウル、クリーンを経てさらにもう一つの大きなジャンプ、メロディアスへの移行が感じられます。弟はその変化について敏感に感じ取っていました。
「”Magma” の “Shooting Star” や “Lowlands” から始まった試みだと思うけど、この10年間 Joe は自らのボーカルを向上させることに真剣に取り組んできたんだ。僕たちは、さまざまなタイプの音楽を聴いて育ったからね。メタルから THE BEATLES, MASSIVE ATTACK, PORTISHEAD など…真の音楽好きなんだ。ジャムるときは、ファンク・ロックのようなものを演奏してしまうことだっめあるんだよ。 最近の多くのバンドのように、他にサイドプロジェクトを持っているメンバーもいない。つまり僕たち4人にとって、GOJIRA は唯一の音楽活動の場だから、自分たちの個性の すべての側面を表現する必要があるんだよ。僕たちは皆、”メタル・ヘッズ” ではあるんだけど、音楽を愛する者でもあるんだよ。だから、Joe にとっては、自分が自然にやりたいと思ったこと、必要としたことに向かって進化していくしかなかったんだよね。今、彼はシンガーとしてこれまで以上に自信を持っているよ」

GOJIRA の未来に目を向けるためには、過去の栄光を振り返るべきでしょう。2018年、Bloodstock Open Air のヘッドライン・ショーは、雨に打たれた2万人の観客がダービーシャーの泥の中に叩き込まれただけでなく、2006年の英国でのデビューからフェスティバルでの初のヘッドラインに至るまで長い道のりを歩んできたバンドにとっても画期的な出来事でした。
自分が聴いて育ったバンド CANNIBAL CORPSE がオープニングを務めるというスリル、経験は、これから起こるであろうもっと素晴らしい夜に向けての “食欲” を存分にそそるものでした。
“Fortitude” の完成から、その欲求は高まる一方です。しかし、今後の展望について、Joe は希望に満ちている一方で、大げさな表現には躊躇しています。
「ミュージシャンの人生は必ずしも楽ではない。僕たちは今、副業をしなくてもやっていける状況にある。これは素晴らしいことだけど、それでも金持ちには程遠い。大きな家や莫大な銀行口座を持つロックスターではないんだよ。今は家さえ持っていない」
大きな舞台や多額のギャラへの憧れが、芸術的な目的に影響を与えることはあるのでしょうか?
「答えは、イエスでもありノーでもある。人生では、自分がなぜそうするのか、100%はわからないものだよ。頭の中や心の中で起こっていることを、僕がとやかく言うことはできないんだ。曲を作るとき、もちろん売れることを願っているよ。だけど、それだけじゃなく、僕たちはアーティストであり、人間であり、哲学者であり、多くのことを考えている。僕は、自分が書いた言葉1つでも妥協する必要はないと思いたいし、すべての音楽的なアイデアは心の中からまっすぐに出てくるものだと信じている。それが僕たちのコンパスなんだ。音楽には生きている実感が必要だ。共鳴する必要があるんだよ。たとえ誰かが100万枚売れると言ったとしても、僕たちにとって魅力的な要素がなければ、それはゴミ同然のものなんだ」

サイクルとレガシーというテーマを掘り下げてみましょう。GOJIRA は24年後、そしてブレイクした3rdアルバム “From Mars To Sirius” から約16年後に、より広いメタル・ファミリーの一部として自分たちをどのように見ているのだろうか。新世代のバンドが彼らのアイデアを拾い上げて使用しています。
「人生は短いし、あっという間に過ぎてしまうから、今あるものに集中したほうがいい。僕は、自分たちより速いバンドやクールなバンドのことはあまり気にしない。流行に敏感でありたいと思っているけど、自分たちの芸術的センスは非の打ち所がないと自信を持っているからね。音楽的にもビジュアル的にも、僕たちは自分たちの世界を持っているんだ。長い間、この領域、つまり自分たちが開発しているこの芸術と実体の完全性に取り組んできたんだ。この作品には価値があると確信しているよ。まるで鉱山を見つけて、それをまだ掘り続けているようなものさ。あと数枚のレコードを作るための燃料は確実に残っている。僕たちのビジョンはまだ完全には達成されてはいないからね」
つまり今のところ、 Joe は未来に向かって努力することと、1つ1つの勝利を大切にすることだけを考えています。これまではバンドのために犠牲になっていた家族との “素晴らしい瞬間” を大切にしながら。このアルバムを、長い間待っていてくれた多くのファンに届けることは、重要なこと。そして、GOJIRA が再び脚光を浴びることで、Joe の中にある正義の焔が再び燃え始めるのは必然に違いありません。
「僕は自分を活動家だと思っている。文章やアイデアで誰かを感動させるたびに、誰かが同意するたびに、価値のあるプロジェクトが日の目を見るたびに、僕は活性化されるんだ。僕の中には、決してあきらめない、屈しない、絶望しないというセーフティネットがある。それは、音楽や思考、一体感やコミュニティを通して、人間性の美しさを感じているから。僕たちの中には、とてつもなく大きな力があるよ。僕はそれを信じているし、そのために戦うことを決してやめないんだ。歌を通して、会話を通して、インタビューを通して、芸術を通して」
GOJIRA は最後まで信じられるバンドです。興奮と皮肉を込めて自分たちの未来を見つめています。
「長く愛されるバンドでありたいと思っているけど、同時にそうは思っていない。人類は大きな問題を抱えている。解決しなければならない問題をね」

参考文献: KERRANG!: Inside Gojira’s new metal masterpiece… and their fight for our future 

THE GUARDIAN:‘Nature is hurting’: Gojira, the metal band confronting the climate crisis

SPIN:Gojira on New LP Fortitude, Escaping Our ‘Collective Coma’

OVERDRIVE:FEATURE INTERVIEW – GOJIRA “THE ULTIMATE GOAL WAS TO GET RID OF OUR DARKER SIDE!” MARIO DUPLANTIER

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