EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RYAN CLACKNER OF CRESTFALLEN DUSK !!
“It Is Worth Noting That Even When Bleak And Miserable, The Blues Does Tend To Be Life-Affirming Though The Opposite Tends To Hold True For Black Metal, Which Is a Very Powerful Contrast.”
“I Think We’re a Metal Band. For Better Or Worse There’s No Specifying Sub-genres For The Type Of Music We Want To Make, In My Opinion. We Play Metal.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZDENEK NEVELIK OF ET MORIEMUR !!
“Tamashii no Yama“ Is a Concept Album About The Japan Air Lines Flight 123 Incident That Happened In August 1985. What Inspired Me Most Than apnything Were The Notes Passengers On That Plane Left To Their Relatives And Loved Ones Before Dying. They Are Very Powerful In Their Everydayness.”
DISC REVIEW “TAMASHII NO YAMA”
「”Tamashii No Yama” は、1985年8月に起きた日本航空機123便墜落事故を題材にしたコンセプトアルバムなんだ。何よりもインスピレーションを受けたのは、あの飛行機の乗客が死ぬ前に親族や恋人に残したメモだった。ああ、彼らはとても力強く毎日を生きていたんだ…と感じるよね。だからこそ、高天原は魂の山なのだよ」
1985年8月12日、524名を乗せた日本航空の飛行機が、東京から西に約125マイル離れた高天原に墜落しました。生存者はわずか4名。史上最悪の航空事故のひとつとなりました。
チェコのブラッケンド・ドゥーム ET MORIEMUR 4枚目のアルバム “Tamashii No Yama” は、羽田空港(アルバムのオープニング “Haneda”)から最後の地高天原(14分のエンディング “Takamagahara”)までのルートを暗く、重く、荘厳にたどることで、あの運命のフライトを今に蘇らせています。そうして ET MORIEMUR はそのバンド名 “ミメント・モリ” の精神を魂の山から伝えているのです。
「尺八はとても美しい楽器で、シンプルでありながら奥深いもの。しかし、ここチェコで尺八を吹ける人を見つけるのは簡単ではなかったよ。だけど、禅の瞑想センターの友人を通じて、チェコと日本の尺八の師匠のもとで尺八を学んできたマレク・マトヴィヤに連絡を取ることができたんだよね」
命と運命の始点と終点の間で展開されるのは、華麗なオーケストレーションと、幻想のようなアヴァンギャルド・ドゥーム・メタルの組曲です。ピアノ、ヴァイオリン、ハープ、チェロ、そして日本の伝統的な尺八は、この最後の旅路において歪んだリフやひりつくような咆哮と同じくらいに重要な役割を果たしています。このアルバムに収録されているすべての音は、日航機事故の悲劇がもたらした深い痛みと許容不可能な非現実、そして今際の際の命の煌きを呼び起こすために存在しているようでさえあります。
「僕は、人間と環境との調和的な関係や、人生に対するスピリチュアルな、いわば “魔法” のようなアプローチを持つ神道にとても共感していてね。そして、もう何年も前から禅宗に傾倒しているんだ。曹洞宗の開祖である道元禅師は、この地球上に存在する最も優れた哲学者の一人であると僕は考えているんだよ」
日本神話では、高天原は天の神の宿る聖地とされています。高天原には多くの神々(天津神)が住み、天之安河や天岩戸、水田、機織の場などもあったといわれています。そんな神々が集う場所に無数の魂が引き寄せられた。チェコから神道や禅宗に心酔する Zdenek にとって、あの不幸な事故は同時にスピリチュアルな意味を帯びたのかもしれません。その神聖さと悲しみを、”魂之山” はかくも鮮やかに、エモーショナルに、生き生きと自由な魂で表現しているのです。
オープニングの “Haneda” は Zdeněk Nevělík によるピアノ主体のインストゥルメンタルで、映画音楽から抜粋されたような美しさ。アコースティックギターの正確なメロディーは、この儚い曲の美しさをさらに際立たせていて、ストリングスに和楽器が加わりスピリチュアルな世界へと引き込んでいきます。
ハープシコードとクワイアで飾り立てた “Nagoya” のゴシック・アヴァンギャルド、ドゥーム・メタル、ゴシックなアトモスフィア、デス/ブラックメタル、SIGH のアバンギャルド、ミニマル、そして日本の伝統音楽が Zdenek の千変万化な歌声で煮詰められた “Tamagahara” など、解き放たれた音魂は自由に羽ばたきながらも、他のすべての要素を超越したシンプルなメロディーの美しさでリスナーに語りかけ、共鳴し、魔法をかけていくのです。明日が必ず訪れるわけではない。今日を懸命に生きよ。他者や他の命を尊べと。
今回弊誌では、Zdeněk Nevělík にインタビューを行うことができました。「僕たちチェコ人はスローペースな生活と安全な日常生活を愛し、勇敢というよりは慎重で、どちらかというと懐疑的で、あまり愛国的ではないんだけど、僕はそれが気に入っているんだよ。この国民性は、この国で40年だけ続いた共産主義の遺産よりも重要だと思っているよ」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TC OF SOMALGIA & SPIDER GOD !!
“Everything Is Backwards, Everything Is Upside Down. You Either Resonate With That Quote Or You Don’t – If You Do, Then You’ll Probably Understand ‘Inverted World”
DISC REVIEW “INVERTED WORLD”
「現在 Repose には、PAPANGU, LYKHAEON, SPIDER GOD, SOMALGIA. GATE MASTER, REIGN といったバンドが所属していて、非常に多彩な顔ぶれが揃っているんだ。こうしたバンドは全て、ブラックメタルの境界を押し広げ、現在革新の最前線にいると感じているよ。僕は同じものを何度も聴きたくないし、レーベルもその精神を反映している。 イノベーションか、時代遅れになるかの二択だよ。僕は、エクストリームとプログレッシブの間のギャップを埋めるという使命を担っているからね」
エクストリームとプログの架け橋 SOMALGIA でギター、ボーカル、シンセを担う TC は、楽器以外にも三足の草鞋を履いた英国メタル・アンダーグラウンドの鬼才。ZOPP で知られる Ryan S との蜜月 SOMALGIA 以外にも、BACKSTREET BOYS やブリトニー、果ては K-Pop のブラックメタル化で度肝を抜いた SPIDER GOD に携わり、さらにそうしたブラックメタルの革新を担う俊英たちを一手に引き受けた Repose Records まで立ち上げてしまいました。TC のそうしたイノベーションとチャレンジの哲学には、米国のエッセイスト、マイケル・エルナーの言葉が根幹にありました。
「マイケル・エルナーの言葉が、”Inverted World” “逆さまの世界” のコンセプトを完璧に言い表していると思っているんだ。”すべてが逆で、すべてがひっくり返ってる。医者は健康を破壊し、弁護士は正義を破壊し、精神科医は心を破壊し、科学者は真実を破壊し、主要メディアは情報を破壊し、宗教は精神性を破壊し、政府は自由を破壊する”。 この言葉に共鳴するかしないかだよ。もし共鳴するならば、おそらく “Inverted World” を理解することができるだろうね」
非常に陰謀論めいていて、非常に反抗的で、非常に極端な思想です。少なくとも、バランスのとれた思考の持ち主なら即座に笑い飛ばすでしょうし、当然これを鵜呑みにしてしまうわけにはいきません。
ただし、ここにはおそらく、真実も少なからず含まれています。メディアが情報を大事にしているのか?宗教が心を大事にしているのか?政治が人間を大事にしているのか?あなたがまともだとしても、この問いにはたして即答できるでしょうか? TC は、ややアレな面はあるにせよ、常識を疑い、権力を疑い、メディアを疑うことで、ブラックメタルにかつて宿っていた狂気じみた反抗の精神を、良きにせよ悪しきにせよ、現代に蘇らせているのです。
「僕はプログレッシブとポップ・ミュージックへの情熱を共有していて、ブラックメタルに著しく欠けているものはメロディ、フック、構造だと感じていた。もちろん、Varg が 構造、プロダクション、ハーモニーに反抗したことが、そもそもこのサウンドを生み出したのだと認識しているし、彼らのアルバムは永遠に不滅だよ。しかし、現状を打破して変える必要があるとも思うんだ。同じアイデアを繰り返せる回数は限られているからね。純粋主義者と破壊主義者の戦いは常に続いている」
もちろん、TC の疑いの眼差しは、閉塞的なメタル世界にも向けられています。彼らはメタルの常識を覆し、新しいものの見方(あるいは聴き方)の創造を、自分の頭で考えて、自分たちだけの力で実現しようとしています。例えば、アヴァンギャルドを極めた CREATURE や Igorrr がそうであるように、SOMALGIA はエレクトロニカ、トリップホップ、サイケ、プログレッシブとブラックメタルの複雑な婚姻を次のレベルへと旅出させています。ソマリアなのか、マトリックスの影響なのか、とにかくブラックメタルらしからぬ常夏のアートワークもまさに常識の破壊。
TC は20年後の音楽を生きていて、私たちは彼を通してそれを追体験することができるのかもしれません。さらに SOMALGIA は “The March of Tyranny” のように、ノルウェーの大物アーティストに負けず劣らずアンセム的な名曲を生み出すことができるのです。TC のそうしたポップセンスは、彼が携わるもう一つのブラックメタルの破壊、ポップの黒化を指標した SPIDER GOD にもありありと提示されています。
今回弊誌では、TC にインタビューを行うことができました。「僕たちは、このシーンがかなり陳腐化していて、ちょっとした揺り戻しが必要だと感じていたんだよね。確かに、境界線を押し広げ、常に優れた音楽をリリースしているレーベルやプロジェクトはあるんだけど、誰もがベッドルーム・スタジオとセルフ・リリースのプラットフォームを使えるようになったことの弊害として、クオリティ・コントロールが以前とは違ってきていることが挙げられると思うんだ」 どうぞ!!
“In Japan,There’s This Thing About Karoshi, Salarymen Who Work Themselves To Death. I Don’t Talk About This Much, But My Uncle Kiichi Killed Himself. His Name Is My Middle Name.”
どのようなレコードが、Heafey のサブジャンルへの愛を形成したのでしょう?
「これらのアルバムは、最後の2枚を除いて、僕がブラックメタルにハマり始めた頃のもの。まず最初に、ストックホルムの MORK GRYNING の2001年の “Maelstrom Chaos”。このレコードはプロダクションとスタイルの面で僕にとても影響を与えている。このアルバムに収録されている “My Friends” という曲はとても奇妙で、”ブラック・メタルではない” と感じると同時に、とてもブラックメタルだと感じるんだ。
ウメオの NAGLFAR による2003年の “Sheol”。ストックホルムの DARK FUNERAL による2001年の “Diabolis Interium”。彼らは半伝統的なオールドスクール・サウンドにこだわっている。プロダクションに重点を置いていることが、僕にとって意味があったんだ。1995年、DISSECTION による “Storm Of The Light’s Bane”。1997年のオスロの OLD MAN’S CHILD による “The Pagan Prosperity”、DIMMU BORGIR の別バンドのGALDER。信じられないほどメロディアスで、バロックとネオクラシカルを同時に表現している。1997年の DIMMU BORGIR の “Enthroned Darkness Triumphant”。もちろん、1997年の EMPEROR の “Anthems To The Welkin At Dusk” と1996年の SATERICON の “Nemesis Divina” も名盤だ。これらは僕の “ブラックメタル少年時代” のアルバムなんだよ。
それから、ENSLAVED による2012年の “RIITIIR”、BEHEMOTH による2014年の “The Satanist” だ。”The Satanist” は新しいし、人々は基本的にノルウェーとスウェーデンのバンドをこのジャンルの “リーダー” として見る傾向があるけれど、この作品はブラックメタル史上最高のレコードのトップ10に入るよ」
Heafey は、ブラック・メタルの物語が、魂を震わせるサウンドを高めていると指摘します。
「ブラックメタルにのめり込んでいくうちに、なぜ彼らがああいった見た目をしているのか、なぜ曲やアートワークがこうなっているのかが分かってきて、本当にいろいろなもので構成されていることで好きになったんだ。彼らはもともとはスラッシュに傾倒していたんだけど、その後、クラシック音楽の要素やスカンジナビア民謡など、さまざまな影響を持ち込むようになった。そういう民俗的なストーリーは本当に魅力的だと思うんだ。
TRIVIUM の初期の曲で、”Oskoreia” という北欧の伝説にまつわる曲がある。白い顔をした幽霊の騎兵が超高音で叫び、人々の魂を奪っていくというものなんだけど、これは僕がどれだけブラックメタルの伝説にハマっていたかを示しているね。あらゆる本を読み、あらゆるバンドについて調べ、あらゆるシャツやCDを手に入れていたからね。このアルバムのターニングポイントは、Ihsahn と話していて、”もし僕がスカンジナビア人だったら、ThorとRagnarok について書けたのに…” と言った時だったんだ。
彼は2つのことを教えてくれた。1つは、僕にもルーツが存在すること、もう1つは、自分の日本的な面をもっと見るべきだということ。背中にタトゥーしている神道の八岐大蛇(やまたのおろち)のようなものを参考にできるとわかったとき、状況が一変したんだよね」
IBARAKI の既成概念にとらわれないアプローチに道を開いた先駆者は誰にあたるのでしょう?
「ブラックメタルのパイオニアたちは、メタルは商業的になりすぎて、同じようなことばかりやって言っていると言っていた。この音楽はその対抗策だったんだ。でも、その後、自分が作ったものに固執すると、結局、それをまた別のものに変えるための反抗が必要になるんだ。EMPEROR は、僕がこのジャンルを発見したときの最大のバンドのひとつだった。TRIVIUM のどこにブラックメタルがあるのかと聞かれたとき、僕はいつも、サウンド面では必ずしもそうではないけれど、EMPEROR は僕にすべてのレコードを前とは異なるものにする自信を与えてくれたと説明してきたんだ。
“In The Nightside Eclipse” にはじまり, “Anthems To The Welkin At Dusk”, “IX Equilibrium”, Prometheus”, “The Discipline Of Fire & Demise” まで、彼らはそれが可能であることを証明してくれた。ULVER の “Perdition City” はブラックメタルではないけれど、正反対であるからゆえに、ブラックメタルとして非常に重要なレコードなんだ。WARDRUNA もそうだ。あのバンドはブラックメタルとは似ても似つかないけど、同じ素材を使っているから、同じように重要だと感じる。一方で、BEHEMOTH の “The Satanist” は、このジャンルに回帰しているにもかかわらず、とても異なっているように感じられた作品だね。僕にとっては、”O Father O Satan O Sun!” が BEHEMOTH の曲の中で一番メロディが良いんだよ!
そして、Ihsahn の2010年のソロ・アルバム “Eremita” を聴くと、まるで初めて “Anthems” を聴いた時のような感覚になる。あのレコードがきっかけで、IBARAKI が別名義から自分名義のプロジェクトにシフトしたんだ」
教会の焼き討ち、ファシスト思想、殺人など、ブラックメタルの残忍な裏の顔はたしかに問題視されています。
「正直なところ、若い頃は、ブラックメタルの暗さに惹かれたんだ。別に肯定も宣伝もしているわけではないんだけど、音楽的な対立でバンドメンバーが殺し合うようなジャンルがあったというのは、若い人には絶対に響いてしまうと思うんだよ。だけど大人になってみると、このジャンルには人種差別や偏見に固執する、本当に問題のある側面があることがわかってくるし、それは僕が強く反対していることでもある。最初に若さゆえの “目隠し” が取れたとき、”信じられない!” と思う反面、”なんてこった、これが見えてなかったなんて!”とも思ったものだよ。でも、それは僕がブラックメタルを書き直す手伝いをしたいということでもあるんだ。
“Rashomon” の制作を終えた頃、(COVIDの無知が原因で)世界中で反アジアの感情が高まっていたんだ。だから、このアルバムは、日本の文化にスポットを当てて、その物語についてもっと知ろうと思ってもらえるようにするためのミッションだと考えるようになった。そして、中国や韓国の物語、ヨーロッパの物語、アフリカの物語など、地球上に学びのボキャブラリーを広げていきたいんだよ。僕にとって “Rashomon” は、ブラックメタルについて僕が好きなものを維持し、そうでないものを超越するための作品なんだ」
“America Used To Have an Obsession With Remaking The Famous Japanese Horror Films, And To Me, They Were Never Scary, Because It Placed Those Stories In Our Culture. To Me What Makes Japanese Horror Stand Out, And What Makes It Scarier, Is The Differences In Our Surroundings, And Cultures.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MANUEL GAGNEUX OF ZEAL & ARDOR !!
ALL PHOTOS BY GEORGE GATSAS
“For The Moment I Just Make Music That I Personally Enjoy. There Was No Intention Of Revitalising a Genre Or The Hubris Of Thinking I Can Rebirth Anything. Only Time Will Tell If It Has Any Impact. Until Then I’ll Just Keep Making Music.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOSHPH HAWKER OF ETHEREAL SHROUD !!
“What I Didn’t Understand Was The Conservative Attitude Of a Lot Of The Second Wave Bands – Which Makes It All The More Rewarding To See Bands Like Violet Cold, Spectral Lore And Other Anti-fascist Bands Changing The Climate. We’re Here To Tip The Scale And Me Aren’t Going Away.”
DISC REVIEW “TRISAGION”
「”セカンド・ウェイブ” のバンドの多くが保守的なのは、僕にとって理解できないことだよ。でもだからこそ、VIOLET COLD や SPECTRAL LORE、その他のアンチ・ファシストのバンドがメタルや世界の風潮を変えていくのを見ると、本当に励まされるね。僕たちは局面を変えるためにここにいるし、いなくなりはしないよ」
メタル世界において、音楽的にも精神的にも、今最も進歩的なサブジャンルがブラックメタルであることに異論を唱える向きは少ないはずです。環境問題を歌い、マイノリティのために戦い、ファシズムの台頭を許さない。かつて殺人や教会への放火が取りざたされたジャンルとは思えない “正しい” 主張を展開する新鋭たち。ただし、その根っこの部分は実は同じなのかもしれませんね。
「ブラックメタルは “フリンジグループ” (中心ではなく端に位置する)の人たち、つまり落ち込んでいる人、虐げられていると感じている人たちを多く誘うんだよね。僕自身、LGBT だから、社会やパラダイムに反しているブラックメタルに慰めを見いだしたからね」
自身も LGBT で、社会に馴染めずブラックメタルに慰めを見出したと語る ETHEREAL SHROUD の首謀者 Joseph Hawker。ブラックメタルを創造した初期のアーティストにしても、少なからず社会から逸脱し、孤立した人たちであったことはたしかでしょう。つまり、ブラックメタルには孤独や喪失を無尽蔵に癒し包み込む、果てのない包容力が備わっているのです。
「僕は BELL WITCH をとても尊敬しているし、彼らはシーンで最も優れた現代のバンドの一つだと思っている。僕らは2人とも、強いメロディー、感情的な底流、ビッグなサウンドスケープを持つ長尺の曲を利用していると思うよ」
もちろん、ブラックメタルは音楽的にも寛容で多様です。フィジカルのみに付属するボーナス・トラックを含めると、4曲で1時間20分。その “Trisagion” と題された深く長い井戸の底から流れ出る旋律と感情の濁流は、繊細で傷つきやすいと同時に活力と魅力に満ちているという点で、あの BELL WITCH のジャンルを無意味な記号と知らしめた傑作 “Mirror Reaper” にも比肩し得る作品にちがいありません。
“Trisagion” の核心となる “コア” は、アトモスフェリック・ブラックメタルのイメージに据えられています。しかし、ETHEREAL SHROUD がブラックメタルの寛容を謳歌するのは、そのコアなサウンドの周辺に何層もの音彩を重ねてミルフィーユのようなサウンドの繭を形成している点にあります。
その影響はドゥームの最も憂鬱な重遅、冷たさと輝きを交互に繰り返すメロディックな蜘蛛の糸、従来のブラストとダブルベースを巧みに組み合わせたリズムの狡知、そしてポスト・メタリックな反復の美学という形で現れています。反復といえば、アルバムを通じて成される共通のテーマの再現は着実に、控えめにモチーフを進化させ、おなじみのメロディにやがて新しい生命を吹き込んでいきます。そして反復で溜め込んだ鬱屈は、文字通りエセリアルな女声や IN FLAMES 譲りの慟哭で、さながら蓮の花が開くかのようにカタルシスとして放出されるのです。
「ANATHEMA, ESOTERIC, SUMMONING, GOD IS ASTRONAUT, AGALLOCH, MOONSORROW をよく聴いていたね。こういったバンドが僕のサウンドを形成するのに役立ったと思う。表現への情熱が高まって、ドゥームメタルやブラックメタルの大きなうねりをそこに加えたんだ。彼らが巨大で、シネマティックで、濃密な表現をしているのを見て、それを自分なりの方向に持っていきたいと思ったんだよね」
“Trisagion” が世界に拒絶されるような憂鬱と孤独、そして怒りから始まったことはたしかでしょう。しかし、少なくともこの作品はその先を見据えながら前進することで、典型的なエクストリーム・メタルの在りようとは一線を画しています。”Trisagion” は夜明けを見通す窓であり、自分の居場所を無理やり探し出すのではなく、自然に自分らしく生きることがあるがままにできる未来を指し示しています。Joshph がこの賛美歌で ANATHEMA や ESOTERIC を自分らしく、自然に進化させたように。
今回弊誌では、Joshph Hawker にインタビューを行うことができました。「僕は音楽家になる前はよく、とても小さなことでアルバムを批判していたんだけど、芸術作品に対して自分自身や自分の見方を調整し、その意図を理解しようとしなければならないとは考えていなかったんだ」どうぞ!!