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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【LAMB OF GOD : LAMB OF GOD】


COVER STORY : LAMB OF GOD “LAMB OF GOD”

“How Did We Get To This Point Where You Think This Asshole Is The Paradigm We Should Aspire To As The Leader Of Our Country? I Think This Shift Started Around The Beginning Of The Anthropocene When Humans Really Started Affecting The Environment In Big Ways.”

LAMB OF GOD

80年代後半から90年代にかけてまずスカンジナビアから勃興した新たなメタルの波。MESHUGGAH, AMORPHIS, OPETH, IN FLAMES, EMPEROR といった傑物を輩出し、WALTARI の Kärtsy Hatakka が “ポストファーストメタルタイム” と呼んだそのムーブメントは、メタルの転換期にして、モダンメタルと現在のメタルシーンにとって架け替えのない重要なピリオドとなりました。
「スカンジナビアのバンドたちは、より幅広いスペクトルの音楽を聴くことで、メタルに “クレイジーさ” を加えていったんだ。」
Kärtsy が語るように、ある者は複雑なリズムアプローチを、ある者はグルーヴを、ある者はプログレッシブロックを、ある者はデスメタルを、ある者はエクストリームな残虐性を、ある者はフォルクローレを “ベーシック” なメタルに加えることで、彼らはモダンメタルの礎となる多様性を築き上げていったのです。
もちろん、ベーシックメタルからモダンメタルへの進化に寄与したのはヨーロッパのバンドだけではありません。特にテキサス州ダラス出身の PANTERA がメタル世界に与えた衝撃、グルーヴメタルの誕生は一つのビッグバンでした。特徴的すぎるギタートーンやドラムサウンドを差し引いても、獰猛さと重さ、そして独創性を更新した彼らの俗悪に悩殺する鎌首はあまりに異端でした。その “グルーヴ” の源は BLACK SABBATH でしょうか?ハードコアでしょうか?それ以上にむしろ、”南部” という出自が大きく影響を及ぼしているようにも思えます。

実際、Phil が特別敬愛し、インスピレーションを得ていた隣州ニューオリンズが誇る EXHORDER の Kyle は弊誌のインタビューで、「俺たちみたいに、THE METERS, Dr. John, THE NEVILLE BROTHERS, Allen Toussaint みたいなクラッシックなニューオリンズのバンドを聴いて育てば、血や魂までその色に染まることになる。ニューオリンズには偽りなき本物のスウィングとグルーヴが存在するんだ。とは言えそれは沢山のバンドによって真似されているんだけど。そうやってルイジアナ南東部のリラックスしたアティテュードに浸れば、君も南部の男になれるさ。」と語っています。
そして PANTERA の遺志を引き継ぎ、南部の音魂を現代へと繋げるバンド LAMB OF GOD がバージニア州リッチモンドから登場します。かつてアメリカ連合国の首都が置かれた歴史の街は、ブルーグラス、カントリー、オールドタイムストリング、ブルース、ジャズとまさに音魂の坩堝です。そして明らかに、LAMB OF GOD の音の葉はより鮮明にその南部の風とグルーヴにそよいでいるのです。

仮にここ日本において、LAMB OF GOD が PANTERA ほどのネームバリューを得られていないとするならば、おそらくそれは Dimebag のような凄まじいアイコニックなシュレッダーが存在しないからかも知れませんね。とはいえ、それは Mark Morton と Willie Adler の技量が少しでも劣ることを意味しません。いやむしろ、彼ら2人こそがモダンメタルのリフワークを決定づけたと言えるのではないでしょうか。
パワーコードや開放弦のダウンピックが主体であったベーシックメタルのリフはある意味演奏が単調で、シュレッドに比べれば易しいものが多かったと言えるでしょう。彼らはそのギターリフを、ギターソロ並みに難解かつ複雑しかしエキサイティングかつインタレスティングな領域へと昇華した最初のバンドの一つでした。
BETWEEN THE BURIED AND ME, PROTEST THE HERO, MASTODON, PERIPHERY。今でこそ、当たり前となったリズムとシュレッドを複雑に突き詰めた千変万化変幻自在な現代的リフワーク。もちろん、北欧のメロディックデスメタルも遠縁の一つでしょう。ただし、より創造的な雛形は EXTREME の “Cupid’s Dead” だったのかも知れません。Nuno Bettencourt がファンカデリックにしかしプログレッシブにテクニカル極まるリフをつなぎ合わせ、ギターソロと同等もしくはそれ以上のカタルシスを生み出した楽曲は間違いなく多くの後続に影響を及ぼしました。そして次にその試みをより現実的に体現したのが Mark と Willie だったのです。

LAMB OF GOD といえば、Randy Blythe の張り裂けんばかりの咆哮を想起するのは当然ですが、仮にそれがなくても彼らの楽曲は充分に機能します。実際に演奏してみればわかりますが、彼らのリフワークはギタリストにとって手癖のような運指が極力排除されていて、熟練者でも何度かトレースしないと馴染まないような構成になっています。リズムやグルーヴも刻々と変化するなかで、プリングのオンオフや三連符が組み込まれ、さらにダブルギターの魔法を宿しながらモチーフやパターンをいくつも用意して単調さを一分も感じさせないよう非常に計算されて作り込まれているのです。
特筆すべきは高音弦やハイフレットをリフに組み込んで低音とのコントラスト、さらにはメロディーまでも補完している点でしょう。そうして、リズム隊との完璧なコンビネーションでグルーヴという総合芸術を製作していくのです。
さらに言えば、Randy Blythe は “Omerta” のスロウでマスマティカルなグルーヴこそが最もリッチモンドらしい音魂だと語っています。
「リッチモンドは、少なくとも80年代後半から90年代前半にかけては、マスロックと呼ばれていたものの拠点だった。今のマスロックとはだいぶ異なって、それはリッチモンドのハードコア・シーンにまで遡るんだ。 HONOR ROLE というバンドがあって、奇妙な変拍子を得意としていたね。特に伝説のギタリスト、Pen Rollings は BUTTERGLOVE というバンドに転向してヘヴィになったんだ。 その後、彼らは BREADWINNER というインストゥルメンタルバンドになった。スティーヴ・アルビニは彼らのEPをいくつかプロデュースしているんだけど、インストゥルメンタルでありながら、俺も含めて、全員に大きな影響を与えているんだよ。」
LAMB OF GOD の硬質で数学的なインテリジェンスは、古のマスロックが起源でした。そこに先述のブルースやジャズ、ブルーグラスにカントリーといった多様な南部の魂が透けて見えるのですから、LAMB OF GOD こそがモダンメタルの帝王、グルーヴメタルマスターと称されるのも当然でしょう。

Mark Morton に言わせれば、「まず自分たちを驚かせなきゃ。結局、何度も何度も何度も何度も演奏するのは自分たちなんだから、俺らがワクワクしなきゃ。」
つまり、予測可能なことを回避することで LAMB OF GOD はその地位を築き上げてきたのです。NWOAHM などと下らない場所に括られていた時でさえ、彼らはスラッシュとハードコアのルーツを強調していましたし、スクリームとグロウルが武器だと思われていた Randy にしても、徐々にムーディーなクリーンヴォーカルを取り入れていくようになりました。
実際、”Memento Mori” の冒頭には SISTERS OF MERCY の Andrew を彷彿とさせるメランコリックなボーカルと不気味なギターの回廊が刻まれていますし、”Bloodshoot Eyes” にはゴシックと狂気の狭間でさらなる高みを目指す Randy の姿が映し出されています。
「エクストリームメタルの世界で最も滑稽なのは、クリーンボーカルが聴こえた瞬間、誰かが突然家に入ってきて高価な絨毯を台無しにしたかのように気が狂うような人がいることだよ。でも俺は歌えと言われれば歌うんだ。」 Randy の言葉には皮肉が宿ります。

新たなアンセム “Checkmate” の一方で、スタンディング・ロック保留地における石油パイプライン建設に抗議するため TESTAMENT の Chuck Billy を起用し、ネイティブアメリカンの血を汲むそのリアルこそ彼らのやり方。同時に、サイケデリックなベースラインと推進力を宿すギターワークの不思議なダンスが魅力的な “Reality Bath” も、心を揺さぶるレコードのハイライトです。8歳の少女が銃乱射の犯人が闊歩するビルに取り残された描写は息を呑みます。
「高校時代、俺のバージニア州の田舎じゃ子供たちは森の中で狩りをしていたから、そのまま学校に来ていたよ。時には鹿の死体をピックアップトラックの荷台にぶら下げて、銃とガンラックを持って学校に来ることもあったくらいさ。大したことじゃない。誰もがそう考えていた。だけどそんな古き良き少年の一人が銃を持って学校に入り生徒を吹き飛ばし始めるんだ。それが現実だよ。」
LAMB OF GOD とは神の子羊、転じてキリストを指す言葉でもあります。そのバンド名を冠したセルフタイトル “Lamb of God” は文字通り、全てが破綻した欺瞞と分断、そして試練の2020年に様々な意味で福音をもたらすレコードに違いありません。

RANDY BLYTHE

「俺らはみんな死ぬんだ!」COVID-19ウイルスが蔓延し、死者数が増加し続けるアメリカで、人々の日常生活は深刻な混乱に陥っています。LAMB OF GOD の大統領 Randy Blythe はその加熱する報道、恐怖から真実を読み解こうとしています。
「俺らは今コロナウイルスを経験しているけど、数年前はエボラだった。たしかに今はクレイジーだけど、世界には常にそんな理不尽が存在してきたんだ。ただ、現代に生きる俺らはスマホやPCを持っていて、この終わりのない残虐性と恐怖のサイクルを24時間常に受け取り続けることになる。」
新たなグルーヴメタルの金字塔 “Lamb of God” で Randy は、大量殺人、外国人恐怖症、オピオイドの流行から、空虚な消費文化、差し迫った生態系の破壊まで、現代社会を悩ませている様々な問題を掘り下げていきます。
オープナー “Memento Mori” は、コロナに端を発する真偽不明な情報の飽和をテーマとしています。彼自身、ニュースフィードを監視することに夢中になりすぎ、そこから適度な情報の断捨離が精神的、肉体的な健康に不可欠であると気付いたことから生まれた楽曲。
「メディアの中では生きていけないんだ。”Memento Mori” は、目を覚ますことをテーマにしている。目覚めろ!目覚めろ!目覚めろ!と、自分に言い聞かせているんだよ。人に説教しているわけじゃない。Randy に話してるんだ 。気が狂いそうだったからね。」

時事問題に取り組み、人間の本性の暗部に立ち向かうことは、LAMB OF GOD にとって決して新しいことではありません。2000年のデビュー作 “New American Gospel” からずっと、リッチモンドの刃は、その獰猛で技術的にも衝撃的なメタルと、社会的政治的な問題、歪みに対する痛烈な意思表示、そして深い内省を組み合わせてきたのです。
警官による暴力 (“D.H.G.A.B.F.E “) やイラク戦争(”Ashes of the Wake”)、音楽業界のエゴ(”Redneck”)、そして Randy 自身が2012年にプラハで過失致死罪で投獄、裁判、無罪判決を受けた試練(”512″)に至るまで、テーマは多岐に渡ります。そうして彼らの社会を鋭く切り取るナイフは、モダンメタルの先頭に立ちながらグラミー賞へのノミネート、ゴールドディスクの獲得という結果に繋がったのです。
遂にセルフタイトルを冠した新作において、バンドは初の出来事をいくつか経験することになりました。最も重大な出来事は、創設ドラマーの Chris Adler の脱退でしょう。Chris は過去7作すべてで演奏していて、バンドの前身 BURN THE PRIEST としても2枚のアルバム(1999年のセルフタイトル盤と2018年のカバーアルバム “Legion: XX”)を残しています。
2018年、LAMB OF GOD はオートバイ事故で負った怪我のリハビリを続ける Chris のライブにおける代打として、Art Cruz(WINDS OF PLAGUE)をスカウトしました。そして翌年の7月、Randy, ギタリストの Mark Morton と Willie Adler (Chris の弟), ベーシスト John Campbell は声明を発表し、Art が Chris のパーマネントな後任となることを発表したのです。Chris の脱退をめぐる状況については、関係者全員が沈黙を守っています。唯一 Chris が残したのは、「俺はライフワークである音楽を辞めるという決断をしたわけではない。真実は、独創性に欠ける塗り絵を描きたくないだけなんだ。」という言葉でした。

ただし Randy は、Art Cruz を含むバンドの現在の状態がいかに素晴らしいか語ります。
「5人全員が部屋にいる時の共同作業はとても良い雰囲気になっていたよ。俺もこのアルバムでリフを一つか二つ提供したんだ。演奏したんじゃなく、Mark にハミングして聞かせたんだよ。そんな風にお互いの素材を盗むことがたくさんあった。Willie の曲を Mark がハイジャックし、時には Mark がその逆をするんだ。そうやって過去最高の LAMB OF GOD の楽曲たちが生まれたのさ。」
新加入Art について、Randy はどう感じているのでしょう。
「新人だから、やっぱり最初は少し腰が引けていたと思う。しばらく一緒にツアーをしていたけど、俺らは成功していて、高校時代に彼のお気に入りのバンドだったんだ…だから、最初は少し緊張していたと思うけど、すぐに発言するようになったんだよ。それが俺たちが望んでいることだよ。イエスマンは要らないから。その時点でドラムをプログラムした方がいいかもしれないね。でも俺らは彼にChris Adler になって欲しくなかったんだ…彼は Chris とは違うドラマーだから、彼自身の味を出して欲しかったんだ。実際、違うことをたくさんやっている…ドラムオタクは彼はこんなことをやってる…彼は “クリス・アドラー” じゃないと言うだろうけどね。」
とはいえ、Randy はレコードの製作があまり好きではないと告白します。
「俺たちは SLAYER と18ヶ月もツアーをしていたんだ…その合間にMark と Willie はプロデューサーとライティングセッションを重ねていた。それから何ヶ月も休んでいたよ。 戻ってきて、ある程度の距離ができて、それはいいことだと思うんだけど…俺はレコードを作るのが好きじゃないんだ。頭の中が混乱して、消耗してしまうんだ。レコーディングに行くと、体力が消耗して、喉が張り裂けそうになる。歌詞を書くのは楽しいけどね … だから、”Lamb of God” の製作が楽しかったとは絶対に言わないと思うけど、作曲セッションの時の雰囲気は、おそらくバンドの中で最高のものだったと言うことにするよ。」

“Lamb of God” は、Randy が曲を書く前に歌詞の全体的なコンセプトをチャート化した初めての作品でもあります。Randy は政治的な発言をしたいと思っていましたが、特定の個人や政権に自分の歌詞をフォーカスしたくはなかったのです。そこで彼は、友人である 世界的に有名なアルペンクライマーであり、パンクロックマニアでもある Mark Twight の助けを借りて、社会悪の原因や歪みの状況を深く掘り下げていきました。
そうして、”New Colossal Hate “では所得の不平等と差別を、”On the Hook “では大手製薬会社が大衆に中毒性のある薬を飲ませていることを取り上げ、”Poison Dream “では環境を汚染する企業に立ち向かっていきました。
「ドナルド・トランプはもっと大きな問題に巣食う一つの症状に過ぎない。友人の Mark Twight と話していて、『現政権についてのセンセーショナルなレコードは書きたくない』と思ったんだ。彼は王様のように振舞っているから、やることなすこと毎日非難を続けるなんてバカげてる。それよりも俺は、なぜこうなってしまったのか、なぜあんなアホをリーダーに求める国になってしまったのか、こうなることを許した俺たちの意識、現在の環境について掘り下げたかった。」
リードシングル “Checkmate” も強烈ですが個人を対象としたプロテストソングではありませんでした。
「このアルバムには、個人をテーマにした曲は一つもないんだ。 2004年のアルバム “Ashes Of The Wake” の時代、ジョージ・W・ブッシュがいた時は、イラク戦争や大量破壊兵器の神話があったから、彼のことを具体的に書くのは簡単だったけどね。全ては表裏一体なんだ。今人々は政党を政策のためではなく、スポーツチームのように支持しているから。歌詞にはそれが反映されているよ。こんなシステムはまさに詐欺だ。ドナルド・トランプをバッシングするようなレコードを書くのは、むしろ無駄なことだと思うんだ。だから “Checkmate” は共和党のことではないんだよ。むしろ今の両政党がいかに表裏一体の関係にあるかを描いているのさ。」

Randy の中に、歌詞を通して人々を啓蒙したいという思いはあるのでしょうか?
「というよりも、自分で考えてもらいたいんだよ。今、アメリカや他の国でも大きな問題になっているのは、政治的分裂が世界的に広がっていること。誰も個人単位で話をしていないだろ?今の政治の世界には群集心理が強く存在して、それはインターネットにも波及しているんだ。リベラル派は「お前らはネオナチで保守的すぎる」 保守派は「お前らはリベターだ」。俺には小学3年生のように思えるね。大人がオープンな会話をしているようには聞こえない。俺はあんな感じの大規模な集団思考のアイデンティティーが苦手なんだ。でもそれが国民の精神を支配している。」
一つの意見、一つの思想だけでその人物の全て、人格まで憎んでしまう世の中です。
「親しい友人にもトランプに投票したやつがいるけど、彼らはナチスでも人種差別主義者でもない。だから今でも親しいままさ。だけど、グループ思考、群集心理で人を一つのグループにまとめまるから、自分たちが他のグループを非難できるかのように感じてしまう。それが今、大規模に起こっているんだ。意見の合わない人とコミュニケーションをとるのは難しいよ。コンピュータの画面の後ろから、お互いに叫ぶ方が簡単じゃないか?勇気を持って直接会って話をする方がよっぽど心がこもっている。 そうしないと死んじゃうよ…」
誰に向けて歌詞を書いているのでしょう?
「自分のために歌詞を書いているんだ。これは俺の表現で、ファンが好むかどうかは考えていない。ファンを喜ばせるために書き始めたり、ファンが望むことをし始めたら、ボーイズバンドになってしまう。ハリウッドからプロデューサーがきて、適当に受けるソングライターを雇ってね。そうなってしまったら、音楽は偽りになってしまう。」

Randy は “リアリティTV” プレジデントと消費者主義の賛美から、産業革命とその環境への影響までの線を辿り始めました。そのエクセサイズとして、Randy は”社会で問題となっている様々なこと、そして人々がそれらのことに対して声を上げる様々な方法” を取り上げた約17曲の楽曲トピックのリストを作り上げたのです。
ではトランプから産業革命まで遡る、その思考の鍵はどこにあったのでしょう?
「俺は他の皆と同じように、現代文化の中に罪悪感を持っている。なぜならアメリカに住んでいるからだよ。ここには消費文化があり、物質的な所有物、富と名声がある種の満足感と内なる幸福感をもたらすことになるという考えがある。そこへの盲目的な固執だよね。それが今の問題だと思うんだ。普通に考えて、金持ちで金のトイレを持ってるからと言ってクソ野朗が大統領になるべきではないだろう?
なぜこんなクソ野郎がリーダーに望まれる世の中になった?シフトしはじめたのは、人類が環境に大きな影響を与え始めた産業革命の頃からだと思う。人類は大量生産を始め、消費者階級が生まれた。大量販売の広告も発明された。だから、俺は産業革命から振り返る必要があると思う。消費文化のアイデアが生まれ計画された場所からね。」

このアルバムにおけるテーマの核となっているのは、アンセム的な”Memento Mori” で、Randy は恐怖を煽るようなニュースに対抗し、希望、力強さ、そして昔ながらのカルペディエムの精神をメッセージとしています。
「メメント・モリとは、僧侶たちがかつてお互いに言いあっていた言葉なんだ。君はいつかは死ぬよってね。俺の知る限り人生は一度きり。たとえ複数の人生があったとしても、この一度の人生を最大限に活かしたいと思わないかい?」
ここ数年、Randy に注目してきた人なら誰でも知っていることですが、この言葉は抽象的な概念や空虚な決まり文句ではありません。なぜなら彼は明らかに地上での限られた時間を有効に使っているからです。
LAMB OF GOD での音楽活動はもちろん、GOJIRA, BODY COUNT, BAD BRAINS, PIGFACE といったアーティストとのコラボレーション、自伝 “Dark Days” や TESTAMENT の Alex との共著 “Unbuilt” の出版 、サーフィン、写真、草の根の活動の支援と休む暇もありません。
「ファンからもらった最高の贈り物は?って聞かれたんだけど、”あなたの音楽は人生で本当につらい時期を救ってくれた” って言葉だね。最高に気持ちがいい。”ゴールドディスクを手に入れた!”よりも全然いい気分だ。ゴールドディスクなんてどうでもいい。2枚持ってたけど、慈善事業のためにオークションに出したよ。乳がんのチャリティなんかにに小切手を送ると、すごく興奮するんだ。自分勝手な感情かもしれないけど “あなたはいい人だ “って思えるね。気分が良くなるから。」
いつか世界は滅びるかもしれないし、みんなが死に絶えるかもしれません。しかし Randy の中では、まだ全てが燃えるのを見届ける準備はできていません。
「100パーセントが皮肉のレコードじゃない。希望の瞬間もあるよ。俺はただ立ち止まって、全てがクソだなんて言っていたくはないからね。我々にあるのは今この瞬間だけだ。今までの人生は こうした瞬間の連続だった… だから、この一瞬を最高のものにしたいんだ。」

参考文献: REVOLVER: LAMB OF GOD: RANDY BLYTHE ON UNITED NEW LINEUP, BITING NEW ALBUM, STRANGE NEW WORLD

LOUDWIRE:Lamb of God’s Randy Blythe: You’re a Boy Band If You Write Music to Appease Others Read More: Blythe: You’re a ‘Boy Band’ If You Write Music to Appease Others

SPIN:Q&A: Randy Blythe on Lamb of God’s New LP, Punk, Politics and CBGB’s Legendary ‘Throne’

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COVER STORY + INTERVIEW 【KING DIAMOND : MASQUERADE OF MADNESS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY LAROCQUE OF KING DIAMOND !!

“I Think The Difference Between King Diamond And Mercyful Fate Is, Mercyful Fate Gotta Little More Maybe 70’s, Roots In It’s Music Style. In My Opinion, While Kind Diamond Has Always Been Little More Murderer.”

MASQUERADE OF MADNESS

GHOST が存在する遥か以前から KING DIAMOND の劇場的オカルトはメタル世界を侵食していました。コペンハーゲン郊外に生を受けた Kim Bendix Petersen は、サタニックメタルの始祖 MERCYFUL FATE で King Diamond への羽化を完全に果たします。
MERCYFUL FATE が80年代初期に残した二枚のアルバム “Melissa”, “Don’t Break the Oath” は実際、メタルの歴史を変えました。コープスペイントで頭蓋骨を仰ぎ、足の骨でマイクスタンドを拵える真性の異端児。地獄の底から絞り出すような唸り声から、悪魔が囁くファルセットまで、奇々怪界を紡ぐため死の世界から舞い戻った幽鬼。そんな King のオカルティックな詩篇とシアトリカルな美学は METALLICA, SLAYER から後の北欧ブラックメタルシーンにも多大な影響を及ぼしたのです。
では、King の特徴的なファルセットやシアトリカルな仮装はどこから来ているのでしょうか?
「あのファルセットは、BLACK ROSE 時代にファンからもっとファルセットを使えと言われたのが始まりなんだ。おかげで歌唱のテクニックや空気のコントロールなど多くのアイデアを得ることができたんだ。シアトリカルな仮装は Peter Gabriel と Alice Cooper だね。GENESIS のライブを見て、音楽に合わせた “演劇” の重要性を悟ったんだ。」
象徴的な “Melissa” の頭蓋骨はどこで手に入れたのでしょう?
「兄から貰ったんだ。マイクスタンドにしていたクロスボーンもね。彼の友人の父が医者をしていて、提供された死体を使って学生に授業をしていたんだ。授業が終わると、皮膚を剥ぎ取って骨を樽に入れていた。それで手に入れることができたんだ。だけど彼女はショウで盗まれてしまったんだよ。」
METALLICA との邂逅は印象的でした。
「84年に MOTORHEAD が USツアーに連れていってくれたんだ。その時誰かが METALLICA を教えてくれたんだけど、ドラマーがデンマーク人だという。よくよく調べると Lars の父親は有名なテニスプレイヤーだったんだ。だからアンコールでステージに上げたんだよ。そうして、”Ride the Lightning” をコペンハーゲンで録音することになったのさ。あの時彼らが泊まっていた私のアパートはお化け屋敷だったんだけど (笑)」
MERCYFUL FATE が “音楽的方向性の違い” により分裂した後、Kind は自らの名を冠した新たな魑魅魍魎 KING DIAMOND を結成し、これまで以上にエピカルでシアトリカルな道を辿ります。1987年にリリースした “Abigail”は、霊と家族の暗い秘密をコンセプトに認めて今でもメタルのオールタイムクラッシックとして名を馳せ続けています。
「ファーストアルバム “Fatal Portrait” には、MERCYFUL FATE のために書かれた楽曲もあったけど、5曲のミニストーリーも存在したんだ。それがとてもしっくりきて、ホラーコンセプトアルバムを作りたいと思ったわけだよ。音楽もそれに伴い進化して、より演劇的になっていったね。BLACK SABBATH はたしかにダークサイドを音にし掘り下げていたけど、私たちはフェンスの向こう側に立って別の視点から見ていたんだよ。」
長年の相棒、ギタリストの Andy LaRocque は弊誌独占インタビューで MERCYFUL FATE と KING DIAMOND の違いについてこう語ります。
「MERCYFUL FATE はより70年代的で、ルーツを探るような音楽スタイルだよ。一方で、KING DIAMOND は僕の考えではいつだってより猟奇的なんだ。」
後のブラックメタルサークルが起こした一連の事件に対して King はどのような感情を抱いていたのでしょうか?
「ちょっと大げさだったよね。だって暴力や放火に関わっていたのはほんの一部でしょ。ほとんどのバンドは関わっていなかった。もちろん、殺人や暴力を肯定しているわけじゃないよ。私は蜘蛛も殺せないんだ。捕まえて逃すだけさ。」
以後、King は時に復活した MERCYFUL FATE と二足のわらじを履きながらその怪奇譚、悪夢の物語を綴り続けました。創作が暗礁に乗り上げたのは、2010年。心臓発作に苛まれた King は、3度の心臓バイパス手術を受け、死の淵を彷徨います。回復の過程で、長く音源のリリースから遠ざかりましたが遂に今年、KING DIAMOND として完璧な新曲 “Masquerade of Madness” を発表。MERCYFUL FATE も再度の復活を宣言し、古の悪魔の不死を証明しています。
「あれ以来、タバコも一本も吸っていない。健康的な食事と運動も欠かさないよ。全てが良い方向に向かっている。2度目のチャンスを得たんだからね。」
間違いなく復活のマスカレード “Masquerade of Madness” には失った時を取り戻す魔法がかけられています。Andy はこう力強く語りました。
「80年代の僕たちと “Masquerade of Madness” にはたしかに多くの共通点があるね。
実は、僕たちはファーストアルバムを振り返って、最初の最初に実際何をやっていたのかチェックしてみたんだ。この曲のライティングやレコーディングを行なっている時、これはあの曲のあの部分ぽくしようなんて思ったわけじゃないんだけど、それでもあの振り返りのおかげで間違いなくこの曲にはオールドアルバムのヴァイブがあるよね。」

NIGHTMARE

2014年、KING DIAMOND のキャリアを総括するコンピレーションとしてリリースされた “Dreams of Horror”。そのタイトルはまさにバンドと King の全てを体現していました。
デンマークから現れた怪異は、黒のトップハットにコープスペイントを施し、悲鳴のようなファルセットで瞬く間にメタル世界の台風の目へと躍り出ました。その KING DIAMOND が抱える不気味と不吉の元凶は、King が長い間悩まされてきた夜の恐怖に端を発しているのです。
「散々悪夢を見てきたよ。目が覚めたら誰かを殺してしまったと思うこともあった。それから15分くらい、どうやってその殺人を隠蔽しようか考えていたりね。」
とはいえ、King Diamond ほどの知名度で捜査の手から逃れることは難しいでしょう。オカルトメタルのパイオニア MERCYFUL FATE のフロントマンにして、Church of Satan のメンバー、”Abigail” や “Them” といったコンセプチュアルホラーの創立者は、メタル史において最も認知されている “声” の1人に違いありませんから。
事実、METALLICA の秀逸なカバーは語るまでもありませんし、Phil Anselmo からの敬愛、さらに Kerry King は SLAYER の “Hell Awaits” が MERCYFUL FATE の子供であることを認めています。
King を突き動かすのは彼の鮮明な悪夢。「目が覚めた時はホッとしていることが多いね。人が死ぬ、ペットが死ぬ、奇妙なことが起こる、車が粉砕されたり、争いに巻き込まれたり。大抵は非現実的な夢だよ。飛び立ったあと急に落下して、地面に墜落する直前に目が覚めたりね。起きた時に叫んだり、汗びっしょりだったりするよ。片腕は痺れていて、今のは何だったんだ?って思うんだ。」
それでも、自らの地獄のような夢の世界を探求することは、King にとって生涯の使命であり、創造性の源とも言えます。
「悪夢を見るとその原因を考える。時には同じシナリオの悪夢を連続してみることもあるよ。それで本当にその悪夢が現実になるんじゃないかとか思ったりしてね。眠りに落ちて、また同じ夢に吸い込まれ、あんな悲しい思いはしたくないって思うよ。だけどたまには、あの場所に戻って解決できるかみてみたいと思うこともあるんだ。」
昨年、およそ20年ぶりの再結集を発表した MERCYFUL FATE。バンドの金字塔である1984年の “Don’t Break The Oath” に収録された “Nightmare” も King の悪夢に根ざしていました。
「子供のころの夢さ。兄が隣のベッドで寝ていてね。そしたらフードを着た男が突然部屋に入ってきて、オマエの運命は尽きかけている!と私を指さすんだ。私は恐ろしくて兄を起こそうと叫ぶんだけど、声は出なかった。」
King は現在、2007年 “Give Me Your Soul…Please” 以来となる新作の制作に熱を上げています。2010年、生死の境を彷徨った心臓のバイパス手術から蘇る不死の王。
「とても特別な方法で書かれたアルバムになるよ。1枚で全てを語ることはできないから、2枚組になるだろうな。これまでで最悪の悪夢だよ。あの心臓手術から目覚めて、私は窒息しそうな気がしてパニックになった。口から人工呼吸器のチューブを抜こうとしたんだよ。妻リヴィアがすぐに走ってきて、ようやく私は医師たちが命を助けようとしていると悟ったんだけど、ベットに縛り付けられていた。まるで METALLICA の “One” の世界観だよ。」
故に、人工呼吸器の音を新譜のイントロやライブのエフェクトに使用しても不思議ではありません。
「地獄がどんなものかはわからないけど、あのゆっくりとしかし確実にいつも首を絞められているような感覚よりはマシだろうな。私はあの人工呼吸器の音を聞くだけで悪夢を見てしまうだろうな。」
ただし、そのライブに纏わる悪夢も King を悩ませてきました。
「私はショウの前に衣装やメイクで長い時間が必要なんだが、目覚ましが鳴らなくてスッピンで出る羽目になるってシナリオもあったな。ギタリストの Andy が普通のロックンロールをプレイし始めて、シアトリカルなメタルを期待しているファンから物を投げられたりする悪夢もあったよ。私はステージ裏に身を潜めていたが、コープスペイントの女性に見つかりマイクスタンドで応戦したりね。フルメイクで逃げ惑って一線を超えたファンを振り払いながらバスに乗り込んだんだ。」
定期的に見るのは戦争の夢。1987年に亡くなった父が、第二次世界大戦中、デンマークのレジスタンスに参加していた時の話を King はよく聞かされていました。
「ナチスに追われる夢を見るんだ。ドイツ軍に占領されていた5年間、ここでも多くの粛正が行われた。父は連合軍のコペンハーゲン奪還を手伝ったんだよ。子供のころは、父に誰かを殺したことがある?ってよく尋ねていた。彼は決して答えなかったけどね。」
夢が現実になることもあります。20年以上前に King は “From the Other Side” という楽曲を仕上げ、”The Spider’s Lullabye” のオープニングに収録しました。
「あの曲を聴くとまるで手術台の上にいるような気分になる。そして突然体から離脱して、自分のために戦っている医師たちを天井から見下ろすんだ。自分はセカンドチャンスを得られるのか、得られないのか。後に心臓の手術を受けた時、下を見下ろすと悪魔が魂を奪い去ろうとしていた。だから悪魔と戦わなければならなかったのさ。最初は夢だったんだが、私は後にそのシナリオを経験したのさ。」
いつか正夢になって欲しい夢もあるのでしょうか?
「宝くじに当たるとか?時々はそんな夢も見るよ(笑)」

参考文献: REVOLVER:KING DIAMOND: THE DARK VISION, BAD DREAMS AND NEAR-DEATH OF AN OCCULT-METAL ICON

KERRANG!: KING DIAMOND: “IF THERE IS A HELL AND I GO THERE WHO CARES? I’VE ALREADY FACED IT”

続きを読む COVER STORY + INTERVIEW 【KING DIAMOND : MASQUERADE OF MADNESS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE HIRSCH EFFEKT : KOLLAPS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ILJA JOHN LAPPIN OF THE HIRSCH EFFEKT !!

“Plain, Aggressive Music With Odd Time Signatures Would Probably Be Boring For Us In The End, If We’d Only Stick To That Kind Of Music. Allowing Different Moods And Genres To Come In Has Kept Such Music Interesting And Exciting”

DISC REVIEW “KOLLAPS”

「結局、奇妙な拍子記号があるだけのプレーンでアグレッシブな音楽は、そこに固執するのであればおそらく僕たちにとって退屈だろうな。異なるアトモスフィアやジャンルを取り入れることは、そんなテクニカルな音楽を面白く刺激的なものにしてくれたんだ。」
自らを “Indielectropostpunkmetalmathcore” と称するハノーファーの異分子トリオ THE HIRSCH EFFEKT は、目眩くジャンルの島々を巡りメタルの多音美を実現する挑戦的な吟遊詩人です。
「このレコードの大半は、フライデーフォーフューチャーと世界の気候変動問題について扱っているんだ。よりドキュメンタリータッチで、客観的にね。グレタ・トゥーンベリに触発され、彼女のスピーチからいくらか派生した楽曲もあり、引用として使用している部分もあるよ。だからスウェーデン語のタイトルなんだ。」
THE DILLINGER ESCAPE PLAN から LEPROUS, 果てはストラヴィンスキーまで、無限にも思える音のパレットを備えた THE HIRSCH EFFEKT にとって、その言語的な多様性も彼らの絵音を彩る重要な筆に違いありません。
自らのバンド名が象徴するように、母国語であるドイツ語の響きでユニークな異国情緒を奏でながら、最新作 “Kollaps” において、楽曲にスウェーデン語のタイトルを冠することで若き環境活動家の蒼を観察者としての視点から紡いで見せるのですから。
「典型的な3ピースとしての、ベース、ギター、ドラムのバンドサウンドの退屈さを感じた時、僕たちはひらめいたんだ。バンドのサウンドから遠ざかり、ストリングスセクション、合唱、ホーンなどのクラシック音楽の要素を組み込んだり、モチーフやバリエーションのメソッドを拝借したら、もっとエキサイティングな楽曲になるんじゃないか?ってね。」
興味深いことに、メンバー3人のうちギター/ボーカルの Nils とインタビューに答えてくれたベーシスト Ilja は、ドイツの音楽大学で幅広い教育を受けています。ゆえに、典型的なロックサウンドに飽き足らず、クラッシックやエレクトロニカ、ノイズにジャズと、その好奇と冒険の翼を果敢に難解に広げることはある意味必然でした。
ゆえに、THE DILLINGER ESCAPE PLAN や BETWEEN THE BURIED AND ME との比較は避けがたい運命とも言えるでしょう。実際、”Noja” を聴けば彼らのアグレッシブでカオティックな奇数拍子の猛攻が、OPETH の知性とブラックメタルの咆哮を介しながらも、TDEP のスタイルをある程度基盤としていることに気がつくはずです。そこに絡み合う異質なアルペジオと英語のスポークンワードが重なることで、世界は不可思議な胎動を始めるのです。
ただし、THE HIRSCH EFFEKT はただリズミックにのみ実った果実ではなく、ハーモニックにも芳醇な甘い実をつけました。MESHUGGAH と SikTh の重音異端が流麗に花開く “Declaration”、LEPROUS の狂気を煮詰めた “Domstol”、NINE INCH NAILS の内省的シネマを投影した “Bilen”。さらにアルバムを締めくくる “Agera” には、Steven Wilson にも通じるメロディーの哲学と感情の絵画が広がります。
これほどの多様性、色彩を備えながら一つのアートとして完成したアルバムは、まさに Ilja が語る通り、”美術館のアートギャラリーを歩くような” 芸術的広がりを有しているのです。
今回弊誌では、Ilja John Lappin にインタビューを行うことができました。「”The Fragile” は実は僕のフェイバリットレコードの1つで、作詞作曲のみならず、プロダクション、サウンド、ジャンルの多様性に関するオルタナティブロックやメタルの重要かつ広く認識されたランドマークだよね。 」どうぞ!!

THE HIRSCH EFFEKT “KOLLAPS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PARADISE LOST : OBSIDIAN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AARON AEDY OF PARADISE LOST !!

“You Have To Follow Your Heart And Soul Or Else You Can Sound a Little Dishonest With Your Craft. I Think If We Had The Mentality Of “Draconian Times Did Well, Let’s Make Another One!”, We Would Have Probably Split Up With The Following Years As It Would Have Felt Empty And Void Of Soul.”

DISC REVIEW “OBSIDIAN”

「僕たちは自分自身のサウンドを完璧なまでに見つけていて、過去32年間でバラエティーに富んだスタイルを実現してきたんだ。つまり、悲惨のタペストリーを幅広く描いてきたわけだよ。」
抑圧と絶望渦巻くコロナ禍の2020年に求められるのは、希望と解放を宿した慈光の音楽でしょうか?少なくともメタル世界では、負を帯電したダークな響きに慰めとカタルシスを求める殉教者が決して少なくないようにも思えます。ただネガティブな感情を瓶に詰め覆い隠すだけでは、きっと自己破壊的な暴発が待っているだけでしょう。
「PARADISE LOST の精神はいつだって何よりも、まず自分たち自身の喜びのために音楽を作ることだからね。心と魂に従う必要があるんだよ。そうしなければ自らの創作物が少し不正直に見られ聞かれるかもしれないからね。 「”Draconian Times” は上手くいったから、もう1つ似たようなものを作ろう!」ってメンタリティーを持っていたとしたら、空虚な気持ちになって魂の欠如を感じ、おそらく次の年には解散していただろうな。」
つまり、PARADISE LOST が描くゴシックドゥームの “悲惨なタペストリー” こそが、暗澹たる黒雲を払い、導きの光となる可能性を秘めていると言っても過言ではないはずです。何しろ、30年以上のキャリアで16枚の歴史を刻む失楽園のメタルには、Aaron の言葉通り他のどの音楽より内なる絶望と憂鬱の真なる創造性が潜んでいるのですから。
色彩豊かな不朽の傑作 “Draconian Times” から25年。新たなマスターピース “Obsidian” でヨークシャーの仄暗き伝説は、デスドゥームの凶暴な起源を再創造しながら、貪欲にゴシックメタルの領域をも拡大していきます。
寂寞暗然を認める唯一無二のシンガー Nick Holmes はここ数年、1992年の “Shades of God” 以来四半世紀ぶりにデスボイスを解禁し、ライオンを再び檻から解き放っています。”The Plague Within” でエクストリームメタルのインテンスを、”Medusa” でドゥームの重苦しいメランコリーを現代に蘇らせた PARADISE LOST は、そうして “Obsidian” で獰猛と陰鬱を完璧なまでに黒の多様でマリアージュさせてみせたのです。
特筆すべきは、悲惨のパレットにキャッチーな音の葉を注いだ “Ghosts” や “Fosaken” の耽美な耳馴染みの良さでしょうか。それは “Host” のシンセポップでも、”Believe in Nothing” のオルタナティブでもなく、SIOUXSIE SIOUX や SISTER OF MERCY と同種のゴシックなダークポップに思えます。
もちろん、Nick の豊かな表現力と Gregor Mackintosh の鍵盤まで含めた扇情力がドラマを紡ぐ “The Devil Embraced” や “Serenity” には “Draconian Times” のゴシックな遺産で満たされていますし、”Fall From Grace” の絡みつくドゥーミーな重量感と慟哭の旋律は改めてバンドの出自を示し、一方で “Ravenghast” では “Gothic” に通じる物哀しきエレジーを紡いでいきます。
ヨークシャーローズに幸運のタリスマンやシンボルを集めたアートワーク、死へ向かう運命、人生の旅路を綴るテーマも完璧。
今回弊誌では、誇り高きリズムマン Aaron Aedy にインタビューを行うことができました。「単純に、僕たちのゴスとメタル両方への愛情が理由だよ。当時、僕らの地元であるイングランド北部には巨大なゴシックシーンが存在してね。そしてもちろん、僕たちはメタルファンとしても育った訳だよ。だから理にかなっているよね。
両方のダークな面は美しく合わさったし、僕らの仲間たちと少し違うことをするという意味でも良いやり方だったね。」 どうぞ!!

PARADISE LOST “OBSIDIAN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COVET (YVETTE YOUNG) : TECHNICOLOR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG OF COVET !!

“I Personally Do Feel Like There’s a Lot Of Stereotypes And Preconceptions Floating Around, And I Look Forward To Continuing To Work Hard So I Can Be a Better Example Of What Is Possible To Younger Girls.”

DISC REVIEW “TECHNICOLOR”

「”Technicolor” とは、かつて古いフィルムを着色するために使用された懐かしい方法だから、適切な名前だと思ったの。アルバムの音楽の多くは、私の中に少しノスタルジアを呼び起こしていると思うのよ。トーンや高揚感のおかげでね。」
褪せたフィルムに色を差せば、浮かび上がるは感情。決して万人には訴求しない難解多動なマスロック/プログレッシブの領域に、COVET と Yvette Young は夢見がちに懐かしき音の虹をかけて色彩豊かな華の架け橋となりました。
「あれは私が今まで経験した中で最悪の出来事の一つだったわ。音楽業界(そしてそのシーン全般)には依然として女性に大きな偏見があって、混乱の多い場所であることを学んだと思うわ。それにね、何か悪いことが起こっているときは決して静観しないことが常に最善であることも学んだわ。だって、黙っていれば、誰かがバンドの力と権力を乱用し続けることを許してしまうから。」
順風満帆に思えたマスロックイーンのキャリアは今年初頭、強大な嵐にさらされました。PERIPHERY のギタリスト Mark Holcomb との不倫騒動が巻き起こったのです。Mark 本人からの冷たい言葉に加えて、彼のファンベースからも心ない差別、中傷を受けた Yvette は傷つき、悩み、そして遂に毅然と声をあげました。
憶測が飛び交っているから自分の言葉で真実を伝えたい。Yvette は Mark が妻とは別居し離婚したと嘘をついて妻と彼女2人との二重生活を続けたこと、都合が悪くなると彼女をブロックし脅迫まで行ったこと、心労でセラピーに通わざるを得なくなったことを正直に透明に明かしたのです。
「私は成すことすべてにおいて、自分自身に問いかけているの。どんなシーンに存在していたい? ミュージシャンが性別や肌の色を問わず本当に活躍できるシーンとは?その場所へどうやって貢献できる?仕事やパフォーマンスをしているときは、いつもそれを心に留めておくのよ。シーンの将来に希望を抱いているわ。」
固定観念や先入観が禍々しく漂う分断された世の中で、Yvette の勇気が切り開く色彩は後続のマイノリティーが差別や不利益を受けることのない未来。女性であること、アジア系の出自を誇れる未来。”Technicolor” はそんな Yvette の決意と優しさが込められた新たな旅路となったのです。
「音楽がメロディックでもエモーショナルでもないテクニカルな演奏技巧には興味がないことに気づいたのよ。だから将来的には、もっとドリーミーでエモーショナルでメロディックな世界を探求したいわ。」
目まぐるしいテレキャスターのブライトなサウンドと、フレットボードを駆け巡るポリリズミックなタップダンスに端を発する COVET の音世界は、よりオーガニックに、よりアトモスフェリックに、よりエモーショナルにリスナーの心を溶かします。
「”Parachute” と “Farewell” を書いたとき、私はすぐにギターに重なるボーカルラインが浮かび歌い出し、歌詞はあとから浮かんできたの。歌が加えられてやっと楽曲が完成したと感じたわ!そうそう、私のフェイバリットシンガーは宇多田ヒカルなのよ。彼女を聴いて育ったから。」
中でも自身のボーカルを加えたエセリアルな “Parachute” とジャジーな “Farewell” は、新生 COVET の象徴でしょう。前作の “Falkor” と対をなすネバーエンディングストーリー組曲 “Atreyu” のイノセントな響きも極上ですし、彼女のヒーロー CASPIAN の Philip Jamieson がトレモロの嘆きを付与する “Predawn” の叙情も筆舌に尽くしがたい音恵でしょう。
今回弊誌では、Yvette Young にインタビューを行うことができました。「音楽シーンにおけるセクシズムと正面から闘うことが重要だと思う。このトピックにアプローチする方法はたくさんあるわね。だけど最近、性差別について話しすぎると報復を多く受けてしまうように感じるわ。それが実際に人々をこの話題から遠ざけている可能性もね!」 POLYPHIA, Ichika とのシンクロニシティーも必見。どうぞ!!

COVET “TECHNICOLOR” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CALIGULA’S HORSE : RISE RADIANT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JIM GREY OF CALIGULA’S HORSE !!

“There Is Never a Moment Of Darkness In Caligula’s Horse Without Emphasising The Light – The Last Thing That I Want Is To Put Music Out In The World That Is Celebrating Something Tragic Or Dark Without Showing That There Is a Way Out.

DISC REVIEW “RISE RADIANT”

「CALIGULA’S HORSE には、光を強調しない闇は決してないんだよ。僕にとって最も好ましくないことは、出口を示さず、悲惨なことや暗いことを祝う音楽を世に送り出すことだから。そのコントラストこそ、僕たちの作曲における中心であり焦点の1つなんだ。」
性的倒錯、残忍な浪費家、狂気の暴君。ローマを刹那支配した悪名高きカリグラ帝は、しかし少なくとも愛馬を元老院に任ずるほど愛していました。もはやオーストラリアを代表するプログメタルのインペラトルにとって、レコードを覆うメランコリーの闇芝居はすべて愛情や強さを手繰り寄せる一条の光への道筋に違いありません。
プログレッシブのネオサザンクロスとして KARNIVOOL, NE OBLIVISCARIS, VOYAGER といった綺羅星と共に台頭した CALIGULA’S HORSE は、最もプログメタルの流儀を残すその手法が例えば英国の HAKEN と深く通じているのかも知れませんね。特に、Djent やシュレッダーの流れを汲む Sam Vallen の悍馬のテクニックを基盤としたメタリックな “Caligula’s Groove” は、絶対的なバンドの顔となっています。
一方で、プログメタルもう一つの巨星 LEPROUS とシンクロする表情も少なくはありません。シーンでも最高の評価を分かち合う Einar Solberg と Jim Grey は共に果てなきメランコリーの使徒ですし、コンテンポラリーな音のメルティングポットとしても双方存分です。では、CALIGULA’S HORSE 自身の強烈なアイデンティティーはどこにあるのでしょうか?肝要なその答えこそ、最新作 “Rise Radiant” にあるはずです。
「”Rise Radiant” は再定義と言うよりも、別の自然な進化の結実だと思う。世界中をツアーする中で多くを学び、書きたいことや演奏したいものをしっかり理解出来たんだ。」
8分の大曲 “Salt” を聴けば、CALIGULA’S HORSE がクラッシックにも通じるやり方で、エピカルなメタルの交響曲を具現化したことに気づくでしょう。ヴァイオリンやヴィオラの荘厳な響きはありませんが、それでも充分にこの絶佳の名曲はワーグナーでありリストのロマンチシズムを湛えています。
「エンディングは Ruggero Leoncavallo の手によるオペラ “道化師” で歌われるアリア “衣装をつけろ” から触発されたと言っていたね。最終的に、”Salt” は音楽テーマの要約 (楽章からの音楽テーマをもう一度提示すること)で終わるんだ。つまり、その構造を通じて、よりクラシックなスタイルからインスピレーションを得ているのは確かだよね。」
シンコペートするピアノの響きは指揮者、レイヤーにレイヤーを重ねたコーラスは聖歌隊、8弦ギターのほろ苦き低音はコントラバスでしょうか。モチーフの膨らませ方、印象の変化もあまりに劇的で巧みです。
一方で、最近メタルはあまり聴いていないと語る Jim の言葉を裏付けるように Becca Stevens や Jacob Collier の色彩を付与した “Resonate” は、電子音とアコースティックの狭間を浮遊する海月のしなやかさを描き、牧歌的な “Autumn” でフォークやカントリーの領域まで掘り下げてメタルの新たな可能性を提示するのです。
いつものように閉幕は長尺のエピック。”The Ascent” のドラマ性はベートーベンのシンフォニーにも引けを取ることはありません。
今回弊誌では Jim Grey にインタビューを行うことができました。「努力を重ね、ウイルスの遮断に大きな進歩を遂げてきた国は素晴らしいよ。残念ながら、そういった国々の努力を完全に台無しにしている国がいくつかあるよね。
どの国について話しているかわかるよね? 音楽と国際的なツアーの世界がコロナ以前と同じになることはなさそうだよね…結局は待つしかないんだけどね! 」何と三度目の登場!感謝です。どうぞ!!

CALIGULA’S HORSE “RISE RADIANT” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MEKONG DELTA : TALES OF A FUTURE PAST】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RALF HUBERT OF MEKONG DELTA !!

“Sergej Prokoviews 1st Movement Out Of His 2nd Symphony In D Minor Was The First I Noticed How Close An Orchestra With Heavy Brass Comes To An Metal Group And Some Times Even Sounds Harder.”

DISC REVIEW “TALES OF A FUTURE PAST”

「僕の意見では、現実は常にファンタジーを打ち負かしているよ。若くて歴史を知らない人たちのために記すけど、メコンデルタって名前はベトナム戦争を象徴しているんだ。最も残忍な戦いと虐殺(マイライ)のいくつかはこの川の近くで行われたからね。」
例えば Yngwie Malmsteen, 例えば ACCEPT, 例えば BLIND GUARDIAN。クラッシックやフォークをメタル世界へ伝播した華美流麗なファンタジーの裏側で、MEKONG DELTA はリアリティーと恐怖、そして複雑怪奇をただ純粋に培養していきました。
例えばムソルグスキー、例えばハチャトリアン、例えばヒナステーラ。総帥 Ralf Hubert がメタルワールドに種を蒔き育てたのは、耳馴染みの良い伝統の音楽ではなくコンテンポラリーな現代音楽とその実験精神だったのです。
「1984年の終わりか1985年の初めだったかな。Jorg Michael は当時誰も知らなかった METALLICA のデモを持ってスタジオに来たんだ。彼は何より “Fight Fire With Fire” を気に入って流していたね。この曲には、当時メタルでは珍しかったリズミカルな変速が含まれていたんだよ。それが彼に深い感銘を与えたんだ。僕も面白いと思ったね。」
興味深いことに、Ralf の創造的破壊は当時メタル世界の異端者だったスラッシュメタルの凶暴と共鳴し溶け合いました。1989年の傑作 “Dances of Death (And Other Walking Shadows)” の冒頭を飾る19分のタイトルトラック、死の舞踏に込められたエキセントリックな血と知の共演はまさしく MEKONG DELTA の哲学そのものだったと言えるでしょう。
「ラブクラフトは、恐怖を明確に説明しない数少ない人物の1人だね。彼は恐怖を描かずに、心の中で成長させるんだよ。物語を読んで鳥肌が立つんだ。”The Color from Space” はその良い例だね。」
スラッシュメタルと現代音楽こそが、メコンの源流。Jorg Michael, Peavy Wagner, Uli Kusch, LIVING DEATH といったドイツの綺羅星がバンドの音流を支え、ラブクラフトの名状しがたい恐怖が遂には異端を濁流へと変えました。以降、MEKONG DELTA はオーケストラとの共演、そしてしばしの休息を境とするように、スラッシュメタルからプログレッシブメタルへとその進化の矛先を向けていきます。
6年ぶりの新作となった “Tales Of A Future Past” は文字通りバンドの過去と未来を紡ぐ作品なのかも知れませんね。猟奇的なアグレッションと奇数の美学はそのままに、プロダクションと演奏の質を現代水準へと高めたレコードは、同時にオーセンティックなメタルらしい耳馴染みの良さまで備えています。
Bruce Dickinson が憑依した Martin LeMar のダイナミックなボーカルは、奇数拍子に力強く踊り、ギターの両翼は不協和を流麗に駆け抜けます。シンガロングさえ誘う “Mental Entropy” や、”A Farewell to Eternity” の胸を打つメロディー、アトモスフェリックなホラー映画 “When All Hope Is Gone” は初期の MEKONG DELTA には存在し得なかった要素でしょう。
一方で、アルバムに散りばめられた “Landscape” 組曲ではオーケストラの荘厳壮大を血肉に、名状しがたき闇の景色、歓喜の狂気を惜しげも無く物語るのです。挑戦と訴求、難解と容易のバランスは間違いなく過去最高。
今回弊誌では、ベースからクラッシックギターまで何でもこなす巨人 Ralf Hubert にインタビューを行うことができました。「最も重要なものは、15, 6歳のときに偶然聞いたオーケストラ作品だね。Sergej Prokoviews の交響曲第ニ番の第一楽章、コンポーザーとしての彼を確立した “鋼鉄の歩み” だよ。ブラスを伴ったオーケストラがメタルバンドにどれほど近いのか、時にはよりハードな音を出すと気づいた最初のクラッシック作品だったね。」 どうぞ!!

MEKONG DELTA “TALES OF A FUTURE PAST” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JASON KUI : NAKA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JASON KUI !!

“Maybe I Am a Working Guitar Man, So I Always Get To Play Different Kinds Of Music, That Really Influences Me So Much, So That’s Why My Music Is More Diverse.”

DISC REVIEW “NAKA”

「このタイトルは日本語の “中” から取ったんだ。中とは中間とか間っていう意味だよね。それって僕のライフスタイルなんだ。僕は最近の生活の中で、全てにおいて良いバランスを探し求めているんだ。
例えば、人生と仕事、ソロ活動とお金のための音楽、テクニックとメロディーといった二律背反の中でね。全ては正しいバランスが必要に思えるね。」
tfvsjs が統べるマスロックキングダム、香港でメタリックなシュレッドを響かせる Jason Kui の魅力は日本語の “中” に集約されています。
“仕事” であるセッションミュージシャンの経験で得た卓越した技巧と音楽眼を、”人生” であるソロ作品に落とし込む。偏りすぎた天秤は、いつしか障壁を生み出すのかも知れません。つまり技巧と旋律、ロックとアウトサイドロックの絶妙なバランスは、Jason のしなやかなライフスタイルに端を発しているのです。
言い換えれば、”Naka” とはギターアルバムに付き物のエゴを一切排除した水平な天秤。Jason のニュートラルな好奇心は、楽曲全てが別の顔を持つ虹のようなレコードを完成へと導いたのです。
「僕は80年代後半に生まれたから、オリジナルのゲームボーイで育った。だから8bitは僕にとって大きな意味があるんだよ。 そして、賑やかな渋谷のホテルで書いたリフと、8bitのレトロな雰囲気を一緒にするのはクールなアイデアだと思ったんだ。」
レトロなゲームボーイとモダンなプログレッシブサウンドがクラシカルに溶け合う “Pixel Invasion” は Jason Kui に透徹する多様性の象徴でしょう。アートワークに描かれた砂漠と海、天と地、光と影のコントラストは、そのまま作品に浸透する過去と未来、技巧と旋律、優美と重厚の音狭間を反映しているはずです。
“Splash!” で ARCH ECHO や INTERVALS の血を引く近代的でポップな “Fu-djent” を披露しながら、より硬質で伝統的なフュージョン “Mean Bird” を織り込むタイムマシーンの装い。DREAM THEATER にポルカやマカロニウエスタンを移植する “Dance of Awakening The Spirit Part II, The Ballad of The Headless Horseman” の大胆不敵。さらにダンサブルなソウル/ファンク “Games Brown (Hey!)” から、フォーキーでノスタルジックな “Then and Now” へ移行する感情の津波。これほど色彩豊かなインストゥルメンタルレコードが存在するでしょうか?
フレーズの宝石箱 Andy Timmons, シュレッドの百面相 Andy James, 複雑怪奇なフュージョンキング Tom Quayle, プログメタルライジングスター Poh Hock と、モダンギターの綺羅星を適材適所に配する隠し味も見事。料理の仕上げは当然、パン屋でありプログシェフ Anup Sastry。
今回弊誌では、Jason Kui にインタビューを行うことができました。「僕が農家だとしたら、Anup は料理人さ。僕が彼にマテリアルを渡し、彼が組み立てていくんだよ。」 “Guitar Idol” や “I Am a Singer” を追っていたファンなら記憶に残っているはず。どうぞ!!

JASON KUI “NAKA” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ULCERATE : STARE INTO DEATH AND BE STILL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMIE SAINT MERAT OF ULCERATE!!

“We Knew Early On That We Needed To Capitalise On a Far Greater Sense Of Melody Than We Ever Had Before, And Really Challenge Our Own Intuitions.”

DISC REVIEW “STARE INTO DEATH AND BE STILL”

「早い段階で、これまでよりもさらに強くメロディのセンスを活用して、自分たちの直感に挑戦する必要があると気付いたんだ」
テクニカルかつアトモスフェリックなデスメタルとして高い評価を得ているUlcerate。その6作目となる『Stare Into Death And Be Still』は、彼らにとっては挑戦的な作品となりました。20年以上のバンド生活で養った本能は、いつしか「混沌」や「醜さ」「汚さ」に偏っていたようです。その偏りを「雪崩のように大量の素材を書いては捨てた」ことで洗い流したあとに芽生えてきた、異質なリフやパターン。そこには「力」や「美しさ」「明瞭さ」がはっきりと宿っていました。
彼らはその異質さをしっかりと捉え、さまざまな角度から強化していきます。もっともわかりやすいのがプロダクションの方向性でしょう。「今回のライティングとプリプロダクションの哲学は、混沌よりも力を優先すること」。そう語るJamieのことば通り、本作の音は明瞭で太く、暖かみさえ感じます。また、彼のドラミングにも変化がありました。メタルからジャズ、ファンクと、さまざまなジャンルのドラマーからそのスタイルを吸収してきたエクストリームメタル界きっての名手の彼ですが、本作では人生の大半をかけて磨いてきたそのテクニックを抑制し、曲そのものを活かすパフォーマンスを志向したのです。
彼らにとっては挑戦的なこうした変化は、リスナーにとってはむしろ“親しみやすい”作風に変化したと感じられるかもしれません。ただし、その親しみやすさは『Stare into Death and Be Still』というタイトルに接続しています。「死への畏敬」。死は常に突然に、暴力的にやってくるものではなく、ときには冷静にはっきりと観察せざるを得ない。そうした「穏やかな恐怖」とでもいうべき感情が、そしてそれに立ち向かうための意志が、「混沌」から「力」へと向かった彼らの作品には宿っています。
「もし『音としてはよいが意味がわからない』歌詞だったり、テキストとしては出来がよくてもフレーズがひどい歌詞だったりしたら、何の役にも立たないからね」。その通り、本作のテキストとそのサウンドは、楽曲と高度に一致しています。
このように、彼らは各要素を綿密に調整して作品を作っています。しかし、その綿密さは、あくまで彼らの精神と肉体から生み出されたものでなければなりません。「自分が演奏しているものが最終的な品物であること意識する」。コンピューターによる演奏の修正や数値管理を否定し、ライン入力ではなく部屋録りを志向する彼らの作品が、整理されたテクニカルさではなく、うねるようなグルーヴと、真に迫るアトモスフィアをまとっているのはうなずけます。
曲、歌詞、演奏、レコーディング、プロダクション……彼らの哲学のもとに、それらすべてが生々しく一体化したデスメタルの名盤がここに誕生しました。今回弊誌では、ドラマーのJamie Saint Meratにインタビューを行うことができました。「完璧は芸術の敵だ」。どうぞ!

WORDS & INTERVIEW BY 江戸大  (DECAYED SUN RECORDS )

ULCERATE “STARE INTO DEATH AND BE STILL” 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GREEN CARNATION : LEAVES OF YESTERYEAR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KJETIL NORDHUS OF GREEN CARNATION !!

“In Some Ways We Are a “Child” Of that Norwegian Black Metal Era. Through The Years, Many Of Those Early Black Metal Bands Have Changed Quite a Lot, Developing Their Music And Bringing In Other Influences.”

DISC REVIEW “LEAVES OF YESTERYEAR”

「”Light of Day, Day of Darkness” は多くの点で “すべてを備えて” いるよね。まさに過剰な創造性だったよ。そして幸運にも僕たちはすべてをまとめて、音楽の長いリストとしてだけじゃなく1つの曲として見られるように仕上げることができたんだ。」
ノルウェーの闇皇帝 EMPEROR にも血を分けた Tchort 率いる翠色のカーネーションは、00年代に咲いたプログメタルの徒花にも思えました。しかし、音花のラボラトリーで生育された越境の種子は後続の遺伝子へと刻まれ、14年の時を経て遂に GREEN CARNATION 本体の再生をも誘ったのです。
インタビューに答えてくれた GREEN CARNATION の声、Kjetil が初めてバンドに加わった “Light of Day, Day of Darkness” は当時の常識をすべて覆すような異端の書でした。娘の逝去と息子の誕生を同時に体験した Tchort の感情もとにした闇と光の生命譚は、60分で一曲を成す異形の姿を誇っていました。
「最も重要なのはムードとアトモスフィアだからね。実際、”Light of Day, Day of Darkness” の大半かプログレッシブに属するなんて誰もが言えないだろう。僕たちの音楽には酩酊するような要素、ヘヴィーな要素、ドゥーミーな要素など、他にもたくさん存在するからね。」
サックスやシタール、クワイア、それに600を超えるサンプルまで使用して、ブラック、デス、プログはもちろんフォークからゴス、ドゥームまで縦横無尽に敷き詰めた音の絨毯は、ある意味ステレオタイプが定着してきた当時のプログメタル世界を震撼させたのです。
「このアルバムで僕たちにとって最も重要なことの1つは、GREEN CARNATION 最高の面をすべて1つのアルバムに取り込むことだったね。解散以前は5枚のアルバムで何度も実験を繰り返したんだけど、すべてのアルバムに “典型的なグリーンカーネーションの瞬間” があったわけさ。」
目眩く音旅を経て、経済的な不遇とモチベーションの喪失により2007年に活動を休止した GREEN CARNATION。しかし、マイルストーン “Light of Day, Day of Darkness” のワンオフショウを契機として再び翡翠の撫子に血が通い始めます。
5曲45分。最新作 “Leaves of Yesteryear” に純粋な新曲は3曲しか収録されていません。残りの2曲は “My Dark Reflections of Life and Death” の再録と BLACK SABBATH “Solitude” のカバー。しかし、過去曲の再訪を含め、この内容に不満を感じるファンはいないでしょう。
プログメタルでストーリーテリングを行う翡翠の煌めきは、14年の時を超えて成熟を導き一際その輝きを増していました。エピックという過去の忘れ物を取り戻すタイトルトラック、”Leaves of Yesteryear” には、たしかに ULVER, ENSLAVED, ANATHEMA, CANDLEMASS, KATATONIA といった異端メタルの巨人に宿る耽美や重厚、荘厳を想起させながら、より純粋化したプログメタルを紡ぐバンドの知性と哲学が込められています。
クラッシックロックへの憧憬を湛えた “Sentinels” のアラベスクな旋律、記憶に残るリフワーク、70年代に根ざす鍵盤の香りはまさにロックの黄金律。そうして輪廻の導きのもと、作品はよりドラマティックによりプログレッシブに生まれ変わった16分のセンターピース “My Dark Reflections of Life and Death” で “GREEN CARNATION 2020” の壮大を存分に見せつけるのです。
今回弊誌では、不世出のシンガー Kjetil Nordhus にインタビューを行うことができました。「ある意味僕たちはあのノルウェーブラックメタルシーンの “子供” なんだよ。あれから何年にもわたり、初期のブラックメタルバンドの多くは大きな変化を遂げ、音楽を発展させ、他からの影響をもたらしたね。
たとえば、最近 ULVER のファンになった人は、最初のアルバムを聴くとかなりショックを受けるはずだよ。もちろん、僕たちだってジャンルや影響に関して実験的なバンドだしね。 」 どうぞ!!

GREEN CARNATION “LEAVES OF YESTERYEAR” : 9.9/10

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