NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNARKY PUPPY : IMMIGRANCE】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MICHAEL LEAGUE OF SNARKY PUPPY !!

“Traveling So Much Really Reminds You How We Are All Immigrants In a Certain Kind Of Way, Whether It’s About Our History, Our Ancestry, Or The Customs And Cultural Elements We’ve Borrowed From Other Parts Of The World.”

DISC REVIEW “IMMIGRANCE”

「一つのジャンルに向けてのみ演奏をしたくないんだ。全てのジャンルのオーディエンスに訴求したいよ。だから本当に様々な音楽ジャンルのファンが僕たちの音楽を楽しんでくれているという事実は、進化を続け異なる方向を打ち出す僕たちを強く勇気づけてくれるんだ。」
耽溺のジャジストはもちろん、THE MAHAVISHNU ORCHESTRA, RETURN TO FOREVER を崇拝するフュージョンマニアックス、SLAYER, Biggie, さらにはフォークミュージックの粋人まで、多種多様な音の眷属が集結する SNARKY PUPPY のライブはさながら “Immigrance” のサウンドキャラバンです。
「世界中で僕たちのオーディエンスの中に多様性を見つけることは実に美しいね。こうやって僕らのように旅を重ねていると、自分たち全員がある種の “移民” であることを思い起こすんだよ。」
グラミー賞を3度獲得したグルーヴオーケストラ SNARKY PUPPY。その多様でボーダレスな “移民” の創造性は、ベーシストでマスターマインド Michael League の数奇なる旅路に起因しています。
ハイスクール時代、ギタープレイヤーとして LED ZEPPELIN, CREAM, PEARL JAM, SOUNDGARDEN のカバーに勤しみグルーヴの鼓動を刻んだ Michael は、STEELY DAN の “Alive in America” によってロックとファンク、そしてジャズの悪魔合体に開眼することとなりました。
ノーステキサス大学でベースに持ち替えジャズを学びつつ SNARKY PUPPY を結成した Michael は、Erykah Badu に見出されヒップホップ、R&B、さらにはゴスペルをも咀嚼し、遂にはその興味の矛先を世界の伝統音楽にまで向けながら、その全てを自らのグルーヴコレクティブへと注ぎ込んでいるのです。
グラミーを獲得した前作 “Culcha Vulcha” で頂点に達したポリリズムとエスニックの複雑な探求。”Immigrance” では Michael が鼓動のベースとするロックとファンクにも再び焦点を当てて、流動する “移民” の羈旅をよりエクレクティックに噛み砕いて体現することとなりました。
例えばオープナー “Chonks” ではシンプルなヘヴィーグルーヴをベースに圧倒的なアンサンブルでファンカデリックな空間を演出し、よりメカニカルな “Bad Kids to the Back” では TRIBAL TECH にも似た骨太なジャズロックのインテンスを見せつけます。
そうして、全面参加を果たした2人のギターマエストロ Bob Lanzetti, Chris McQueen が一層輝きを増しながら、ジャズ領域の外側へと大胆な移住を促進したのは David Crosby との出会いも大きく作用したはずです。事実、Michael は自身が歌ってギターも奏でるソロ作品のリリースを予定しているのですから。
「確かに “Immigrance” ではいくつかの異なる伝統音楽から影響を受けているね。そうして時を経るごとに、その影響はレコード毎に大きくなっていっているよ。」
一方で、モロッコのグナワを基盤としたエスノビートとポリリズムが鮮やかに溶け合う “Xavi’ では SNARKY PUPPY の先鋭性を遺憾無く味わうことが出来るでしょう。西アフリカのトライバルミュージックとブルースを融合させた BOKANTE の立ち上げが示すように Michael の特に中東~アフリカ地域に対する音の探究心は並々ならぬものがありますね。
3人のドラマーと3人のパーカッション奏者を抱える SNARKY PUPPY にとって根幹はやはりグルーヴです。そして、”Even Us” にも言えますが、日本人パーカッショニスト 小川慶太氏の美技を伴ったトライバルビートは、SNARKY PUPPY が有する移民の多様性と華麗に調和しながら瑞々しいジャンルのポリフォニーを実現していきます。
“Immigrance” に伴うワールドツアーはここ日本から始まります。作品の多くがライブレコーディングである SNARKY PUPPY にとって当然ライブこそが本領発揮の場です。ただし、”Immigrance” はスタジオで録音されたレコード。故に、バンド本来の躍動感に、思索や計画性が伴って実に奥深い多次元のリスニング体験をもたらすこととなりました。
今回弊誌では、Michael League に2度目のインタビューを行うことが出来ました。「歴史がどうであれ、祖先がどうであれ、習慣や文化がどうであれ、僕たちは世界のほかの場所から何かしらを “借りて” 生きているんだからね。」鍵盤奏者 Bill Laurance が奏でる虹の音色にも注目。どうぞ!!

SNARKY PUPPY “IMMIGRANCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OLA ENGLUND : MASTER OF THE UNIVERSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH OLA ENGLUND !!

“I’ve Always Been Very Business Wise In My Approach, Coming From a Background Of Working As An Accountant, And For Me It’s All About Being As Diverse As Possible. If You Want To Be Able To Survive You Have To Be Smart.”

DISC REVIEW “MASTER OF THE UNIVERSE”

PERIPHERYの Misha Mansoor は 「メタルバンドはお金を産まなくなってしまった。これから重要なのは収入の多様化だ。」 と語り、アーティストにとって過酷な時代の生存術を提示しました。
ある時はエクストリームなシュレッダー、ある時は YouTube のエンターテイナー、そしてまたある時はギターブランドのイノベーター。Ola Englund の音楽ビジネスに対するアプローチはまさに Misha の提唱するサバイバル術を実践しています。
「生き残りたいならスマートになるべきさ。ただし、成功に簡単な方法があると考えるのは間違いだよ。そんなものはないね。全てはハードワークと献身の結果なんだ。」
Ola のアプローチは確かに合理的で現代的ですが、決してハードワークを怠っているわけではありません。そして、世界がスウェーデンの埋もれた才能を発掘したのは、まさに尽瘁と先鋭的なビジョンが詰まった Ola の YouTube チャンネルだったのです。
ウィットとユーモアに富み、絶佳の技術と無尽蔵の知識でギター関連の機材をレビューしデモ演奏を披露する Ola のチャンネルは、自身のエクストリームメタルバンド FEARED と共にその名声を高めていきました。
そして登録者数32万を超えるコンテンツは、重要な収入源であると同時に規格外の広告塔としての役割も果たし、遂には SIX FEET UNDER、そして現所属 THE HAUNTED といったビッグバンドへの加入へと繋がったのです。ギターブランド Solar Guitar の立ち上げも、YouTube で養った経験と英知が寄与しているのは明らかですね。
多忙な生活の中でも Ola は音楽を製作し続けます。「ほとんどの人はメタルリフとデスメタルの演奏でいつもの僕を知っている訳だよ。だからこの作品をリリース出来たのは素晴らしいよ。世界中に僕にはエモーションがあって、様々なスタイルの音楽を好んでいると知らしめることが出来るからね。」
初のソロアルバムとなった “Master of the Universe” は自らの感情と音楽的な多様性を余すことなく注入した “猫の目の” 宇宙です。
コミカルなタイトルに反して “Pizza Hawaii” のデザインは実にシリアスです。RUSH を想わせる知性のアルペジオを序奏として、トレンドの TOSKA 的プログレッシブグルーヴと OPETH のミステリアスなリフエイジを投影したシュレッドロマンは素晴らしくエピカルです。
コンテンポラリーで理知的ななヘヴィーグルーヴと、荘厳なシンセを纏った静謐が異次元のダイナミズムをもたらす “Cerberus”、シアトリカルなピアノの響きが Devin Townsend にもシンクロする “Slutet på Skivan”。中でも Ola にとって特別な言葉 “Solar” を冠した太陽組曲はプログレッシブリスナーに絶景をもたらす銀光のルミナリエ。
ピアノ、アコースティックギター、サクスフォンまで駆使してメタリックに、プログレッシブに、ジャジーに、アンビエントに、そしてクラシカルに踏破する24分の感情山脈は、映画のサウンドトラックにも似て究極の音景をリスナーに届けるのです。
今回弊誌では、Ola Englund にインタビューを行うことが出来ました。「僕はいつも自分のアプローチにとてもビジネス的なビジョンを取り入れてきたね。それは会計士として働いていたバックグラウンドから来ているんだけれど。そして全てを出来るだけ多様化するように心掛けているんだ。」 どうぞ!!

OLA ENGLUND “MASTER OF THE UNIVERSE” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【POLARIS : THE MORTAL COIL】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RICK SCHNEIDER OF POLARIS !!

“I Feel Like Contrast Is Very Understated In Heavy Music, But I Consider It One Of The Most Important Things When Approaching Songwriting. “

DISC REVIEW “THE MORTAL COIL”

北天に広がるこぐま座の中でも一際輝く綺羅星一つ。旅人を導く北極星の名は、図らずも南半球オーストラリアのブライテストホープ POLARIS に冠せられ、メタルコアの船影を照らしながら地平の彼方へ誘います。
満点の星空のごとく新鋭がひしめくメタルコアシーンにおいて、リスナーに発見、観測されることは決して容易ではありません。EMMURE が Nu-Metal を組み込み、ISSUES が R&B を配合しジャンルの実験を加速させるのも、そうした背景が一因としてあるのかも知れませんね。
故に メロディックメタルコアとプログレッシブメタルコアをハイブリッドさせた、ある種王道のサウンドでしかし世界中から注目を浴びる子の星の瞬きは、南半球から鮮やかな光芒を放っているのです。
「PARKWAY DRIVE は僕たち全員にとって最も重要なバンドだったと思うんだ。」同郷オーストラリア出身の先駆者は確かな指針となりました。
同時に、POLARIS の羅針盤は ARCHITECTS, UNDEROATH, AUGUST BURNS RED, BRING ME THE HORIZON といった巨人たちの方角をも指し示し、王者の遺伝子をしっかりとその身に受け継いでいるのです。
「ヘヴィーな音楽において、コントラストは非常に軽視されていると思うんだ。だけど僕はソングライティングのアプローチにおいて、最も重要な要素の1つだと考えているよ。」
音楽面における POLARIS の頭脳 Rick Schneider は北極星の輝きが仄暗く重厚な宇宙空間の存在によることを心得ています。そして斬新さを無闇に追い求めるのではなく、ソングライティングのビジョンとクオリティーで麻薬のような中毒性を注入するバンドの方針は、ブレイクダウンに頼ることなく、ビッグでソフィスティケートされたデュアルギターとフック満載のボーカルラインを陰影にキッズの感受性へと直接訴えかけるのです。
“The Remedy” で見せるアグレッションとメインストリームのせめぎ合い、”Relapse” で誇示する AUGUST BURNS RED 譲りの爽快なハイテクニック、”Consume” に宿る LAMB OF GOD や MESHUGGAH といった骨太な先達への敬意、ポストロックのイメージさえ内包する叙情の極み “In Somnus Veritas”~”Dusk to Day”、そして TesseracT の哲学に接近した “Sonder”。
しっかりとメタルコアのカタルシスを宿しながら、起伏と工夫を施しバラエティーに富んだ星座の煌きは、眺めるものを決して飽きさせることはありません。
沸騰するオーストラリアのメタル/プログシーン。中でも活性化の一途を辿るメタルコア/デスコアコミュニティーにおいて、”The Mortal Coil” のデビュー作としての光度は、例えば PARKWAY DRIVE の “Killing With a Smile”, THE AMITY AFFLICTION の “Severed Ties” もしくは NORTHLANE の “Discoveries” にも比肩するはずです。
そうして恒星 POLARISは、きっとその光彩を増しながらモダンメタルコアの未来を照らすクリエイティブな軌道を進んでいくでしょう。
今回弊誌では Rick Schneider にインタビューを行うことが出来ました。初の来日公演も決定!「メタルコアというジャンルは常に進化し続けていると思うし、どんどん異なるスタイルやジャンルを組み合わせていっているよ。」どうぞ!!

POLARIS “THE MORTAL COIL” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【O.R.k. : RAMAGEHEAD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LEF OF O.R.k. !!

“Bill Laswell Passed a Copy Of The Record On To Tankian Who Was So Impressed, He Then Checked Out All My Stuff, Website And Other Material. This Led Directly To Serj.”

DISC REVIEW “RAMAGEHEAD”

オルタナティブとプログレッシブの稜線に位置するスーパーバンド O.R.k. は、さらに音楽と映画の境界すら霧の中へ誘いユニークな “O.R.k.estration” サウンドで魅了します。
イタリア生まれの声楽家で、映画音楽のコンポーザーとして受賞歴も有する LEF こと Lorenzo Esposito Fornasari。彼が過去に OBAKE でバンドメイトだった ex-PORCUPINE TREE のベースマン Colin Edwin、BERSERK! で共演した KING CRIMSON のスティックマン Pat Mastelotto、さらにイタリアンフォークのビッグネーム MARTA SUI TUBI から Carmelo Pipitone を召喚し結成したプログコレクティブこそ O.R.k. でした。
「ビジュアルアートと音楽がお互いに補い合うやり方がとても好きなんだ。だからね、O.R.k のディスコグラフィーはまだ撮影されていない映画音楽と解釈することも可能だと思うんだよ。」
2015年の結成以来、O.R.k. はプログとオルタナティブを主役として起用しながら、同時にエレクトロ、ジャズ、アンビエントにオペラといった名脇役を見事に配置し、その絶妙な脚本、演出、カメラワークで造形豊かなシネマティックワールドを音楽の中へと投影して来ました。
「アルバムは、様々な側面からもたらされる情報の波に呑まれる潜在的な感情について描いているんだ。僕たち人間の関係性、感じ方、考え方、それに生活全てが、今日では実に深くインターネットとテクノロジーに影響されているのは明らかだよ。」
新世代プログレッシブの旗手 Kscope と手を結びリリースした勝負の最新作 “Ramagehead” で、O.R.k. がフィルムの舞台に選んだのはインターネット/テクノロジーに支配される現代とその社会でした。
深刻なテーマとシンクロするように、彼らの新たなサウンドトラックはダークな畝りが跋扈する重々しい世界。作品を象徴するオープナー “Kneel to Nothing” には、明らかに ALICE IN CHAINS や SOUNDGARDEN が90年代にもたらした悲憤の刻印が印され、一方で極上のリズムチームが創生するパーカッシブな数学の躍動感には TOOL の遺伝子が宿っているのです。
実際、スポンティニュアスで魂宿る Lef の歌唱には Chris Cornell が降臨し、アートワークのデジタルが支配する深淵は TOOL の Adam Jones がデザインを行っています。
暗澹と叡智のフレームはそうして様々なカオスを切り取っていきます。RADIOHEAD を想起させる幽玄とメタルの狂気が同居する “Signals Erased”、クリムゾンの叙情と不穏が類稀なるコントラストを生み出す “Time Corroded”、豊潤なオーケストレーションで完璧なシネマを具現化する組曲 “Some Other Rainbow”。
場面転換の妙は、ネオレアリズモの生々しくも痛烈な説得力を纏ってリスナーをビジュアルとサウンドの水平線へと誘うのです。
「Serj は僕の全ての作品をチェックしてくれたそうだよ。ウェブサイトや他のマテリアルまでね。」
Bill Laswell が聴かせた音源を出発点に、そうして O.R.k. の透徹した美意識は遂に SYSTEM OF A DOWN のマエストロ Serj Tankian のキャスティングへと繋がりました。”Black Blooms” に描かれた地続きの善と悪、国もジャンルも超越して咲き誇る黒の才華は完璧なまでにプログの新たな地平、情景を示唆しているのでしょう。
今回弊誌では、Lef にインタビューを行うことが出来ました。彼の鍵盤捌き、Carmelo のシーケンシャルなフレージングも聴きどころの一つ。「映画のためにスコアを書くことで、僕の音楽に対するアプローチは大きく変化したんだ。」どうぞ!!

O.R.k. “RAMAGEHEAD” : 9.8/10

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MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【BOTANIST : Ⅵ: FLORA】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH OTREBOR OF BOTANIST !!

“I Wanted To Push The Genre Further While Also Honoring Its Tradition. Making Botanist a Concept Project About Plants Felt Like The Way To Do That: 100s Of Bands Were Talking About Forests, But None Mere Taking It To a Specific, Scientific Level. “

DISC REVIEW “Ⅵ: FLORA”

邪悪や猟奇、そしてファンタジーがテーマとして掲げられるメタルワールドにとって、BLACK SABBATH, EMPEROR, DRAGONFORCE といったバンドの名こそ至当で理想的にも思えます。そんな倒錯した世界において、”植物学者” を名乗る BOTANIST はその原郷からすでに異端です。
「僕はブラックメタルというジャンルをその伝統に敬意を払いつつ、さらに先へと進めたいんだ。植物をコンセプトとした BOTANIST を立ち上げたのもまさにその想いから。これまで幾つものバンドが森については語ってきたけど、誰ももっと専門的なレベルで個別の植物については語ってこなかったよね。」2011年にサンフランシスコで Otrebor が創世したワンマンプロジェクトは、植物を科学し環境問題を追求する唯一無二の “グリーンメタル” へと開花して行きました。
これまでにも、WOLVES IN THE THRONE ROOM, AGALLOCH, ALCEST など自然崇拝をテーマとして、仄暗き森や鬱蒼と生い茂る木々を礼賛するブラックメタルの一派は確かに存在していました。しかし彼らはそのアトモスフィアに惹かれ、自然のよりスピリチュアルな領域へとフォーカスしていたはずです。
一方で、BOTANIST はよりミクロで科学的に植物への愛を貫きます。「多くのデスメタルバンドが死について書いていたけど、CARCASS は臨床的見地から死について最初に歌い、デスメタルをネクストレベルへ進めたんだ。」 CARCASS の死に対するある種ドライな向き合い方は、Otrebor が BOTANIST でより学術的に植物の姿を描き出す核心的なインスピレーションとなりました。ハナスイ、シーソラス、ヤエヤマヒルギといった耳馴染みのない植物を楽曲名に列挙する方法論はまさに CARCASS 譲り。
さらに BOTANIST はその “グリーンメタル” のコンセプトだけでなく、ハンマードダルシマーという特殊な楽器をメインに使用することでブラックメタルを未踏の領域へと導きます。
ドラマーを本職とする Otrebor にとって、スティックで弦を叩いて音を出すダルシマーは完璧なメロディー楽器でした。かつて住んでいたこの日本で運命的な出会いを果たした古のピアノは、風と共にロマンチックでエレガントな響きを運び、ギターレスのブラックメタルという倒錯と神秘的のアートを創造して行くのです。
貪欲な研究者 Otrebor は、緑の音楽を絶え間なく精製し続けます。リスナーの思考を絶え間なく促しながら、夢見心地に浮遊する陶酔と恍惚の極致 “Ⅵ: Flora” は、ソロプロジェクトとしての BOTANIST にとって一つの完成形だったのかも知れません。
一筋の新緑だったグリーンメタルの種子はそうして徐々に森を形成していきます。ローマ数字のナンバリングから “Collective” 表記へと移行し、初めてバンド形態で制作された “The Shape Of He To Come” のダイナミズム、グルーヴ、躍動感はまさしく “集団” としての生命力に満ちています。メンバーという養分を得て緑を増した聖森のざわめきは、より荘厳に、より実験的にリスナーの五感へと訴えかけるのです。
深刻な環境破壊により未曾有の危機に直面する人類と地球において、Otrebor は BOTANIST の発芽は必然だと語ります。「BOTANIST のようなプロジェクトは、地球の自己防衛メカニズムの結果であると心底信じているんだ。自然の重要性とその保存について情熱的な方法で人々に発言することを要求するようなね。」もしかすると彼らはは自然が意思を持って遣わした有機的なメッセンジャーなのかも知れませんね。
今回弊誌では、Otrebor にインタビューを行うことが出来ました。奇跡の来日が決定!「僕たちは、日本のファンがお気に入りの植物を携えて現れ、ライブで掲げてくれるのを熱望するよ!」どうぞ!!

BOTANIST “Ⅵ: FLORA” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CANDLEMASS : THE DOOR TO DOOM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LEIF EDLING OF CANDLEMASS !!

“In The End We Took a Band Desicion To Bring In Johan Again. Go Back To The Ground Zero Of Doom So To Speak.”

DISC REVIEW “THE DOOR TO DOOM”

CANDLEMASS はその30年以上に及ぶ悠遠なキャリアにおいて、幾度ものメンバーチェンジを繰り返しながら氷霧に煙るスカンジナビアの凍原に、絶望とエピックの哀城を築きあげて来ました。
そしてそのドゥームに宿る不吉な影は、シンガーの変遷を因果として先姿万態の表情を得ることとなったのです。
巨漢 Messiah Marcolin がオペラティックなテノールで魅了した80年代のトリロジーは、メランコリーとドラマティシズムが集積したエピックドゥームの耽美な教科書。一方で、Robert Lowe が Dio や Tony Martin を憑依させて躍動した21世紀の3枚は、メタルの様式と伝統をヨーロピアンなロマンへと昇華した至宝。
その他にも、Thomas Vikström, Björn Flodkvist, Mats Levén と多士済々、まさに錚々たる顔ぶれが並ぶ歴代シンガーの中で、”C-Mass” の忠実なる信徒が決して忘れられない名前があります。
Johan Längqvist。それは後にバンドが開拓するテリトリー、”エピックドゥームメタル” をラテン語で表記した記念すべき不朽のデビュー作 “Epicus Doomicus Metallicus” に歌唱を吹き込んだレジェンドの名。
CANDLEMASS は結成35周年を迎えるに当たり、一つの決断を下しました。その Johan の電撃復帰です。
「僕たちは CANDLEMASS の中で、再度火花が飛び散るようなインスピレーションを得るために、何かを行う必要があったんだ。そしてその答えが Johan だったんだよ。」バンドの創始者でグル Leif Edling は、慢性疲労症候群を患い戦いながらバンドを巡るビジネス、論争に身を削り、再度音楽を “楽しむ” ためにドゥームの “ゼロ地点” への回帰を決めたのです。
実に6年半振りとなったフルアルバムは、実際 “グラウンド・ゼロ” を創成したバンドの威厳と崇高に満ちています。ただし、この終焉からの始まりは、決して “Epicus Doomicus Metallicus” の安易なコピーではありません。
「今、まさに僕たちは新たなファンを獲得しているんだよ。ドゥームのテリトリーからだけじゃなくね。」タイトルは “The Door To Doom”。メタルワールドのニューヒーロー GHOST とのツアーで幅広い層のメタルファンから賞賛を得たバンドは、幽寂から激情までドゥームの陰影を須く投影した最新作で文字通り “Doom” への “Door” となります。
封入される幻惑のギターメロディーがリスナーを中世の暗黒へと導く “Splendor Demon Majesty”、静寂と喧騒、妖艶と情動を行き来するエピカルなメタルダイナミズムの権化 “Under the Ocean”、スロウバーンの真髄を提示する “Astorolus-The Great Octopus”、そして叙情と憂鬱を抱きしめたバンド史上初、悪魔のバラード “Bridge of the Blind”。
ドゥームメタルの美学を様々な手法で描き出すアルバムにおいて、Johan Längqvist のワイドで説得力のある歌唱は作品の骨子となっています。名手 Mats Leven が歌った “House of Doom” の再録で Johan が見せる深邃なるアトモスフィアは、まさしくその証明でしょう。
「僕たちはとにかく、”ストレート” なアルバムを作りたかったね。クソみたいな素材なしで、大胆不敵で…生々しくハードでヘヴィー。」事実、アルバムのサウンドは実にフィジカルで、バンドの猛攻が目前に迫ります。
シーン随一のギターチームとベースヒーローが繰り出す、時に幽玄、時に劇的、時に獰猛なアンサンブルは圧倒的。そうしてメタル/ドゥームのゴッドファーザー Tony Iommi のゲスト参加は、ファンにとっても、バンドにとっても何よりの祝祭となりました。
遂に共演を果たしたドゥームマスターの遺伝子は、確かに後続へと引き継がれています。その影響は、PALLBEARER, KHEMMIS, HOTH といったモダンドゥームの綺羅星はもとより、VISIGOTH, GATEKEEPER, HAUNT が志向するトラディショナルメタルのリバイバルまで、色濃く、深々と、多岐に渡って根付いているのです。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド Leif Edling にインタビューを行うことが出来ました。「このバンド、もしくはこの体制が後1年、2年続くのかは分からないけど、少なくとも僕たちは残された時間を楽しむよ。」 “Psalms for the Dead” で終焉を宣言した不死鳥が、灰の中から蘇る完璧なレコード。どうぞ!!

CANDLEMASS “THE DOOR TO DOOM” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STEVE HACKETT : AT THE EDGE OF LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVE HACKETT !!

2018 © Tina Korhonen/ www.tina-k.com

“Chris Wanted Yes To Continue Without Him. We All Want To Continue Our Legacies. The Music Which Is Classic And Special Keeps Going, And We’re Proud To Hold The Torch For It.”

DISC REVIEW “AT THE EDGE OF LIGHT”

夕暮れを迎え創作活動のペースを落とす巨星の中で、一際輝きを増すプログレッシブロックの明星が一つ。
ソロアルバム、ライブアルバム、GENESIS の再訪、Chris Squire や Djabe とのコラボレート。とりわけ、2010年にロックの殿堂入りを果たして以来、Steve Hackett の創作意欲は圧倒的です。
「僕は世界中の文化や音楽のスタイル、そして楽器についてどんどん探求していくのが好きなんだよ。この世界はいつも発見の連続だよ。」溢れる創造性の源について Steve は、2011年に結ばれた妻 Jo の存在と共に、地球上様々な場所に根付いた文化、音楽、楽器への好奇心を挙げています。
そうして、ロックとクラッシック、ジャズ、ブルース、フォークを融合させるプログレッシブロックの伝統にエスニックな深みを重ねる Steve の立体的な音楽、多様性はアートとしての瑞々しさを纏い続けているのです。
実際、26枚目のソロアルバムとなった最新作 “At the Edge of Light” で Steve は、ロック世界の “ワールドミュージックアンバサダー” として1つの完成形を提示して見せました。変幻自在なギタートーンが白眉のオープナー “Fallen Walls and Pedestals” は、すぐさま中東のオリエンタルな情景へとリスナーを連れ去ります。
Steve にとってアルバムとは、多種多様な地域、風景を旅歩き受けたインスピレーションを描くキャンバスです。もしくは映画なのかも知れません。Roger King, Jonas Reingold, Rob Townsend, Nick D’Virgilio, Simon Phillips といった名手たち。さらに、シタール、ヴァイオリン、フルート、サックス、タール、ドゥドゥク、ディジュリドゥなどカラフルな楽器群。自身のビジョン、そして人生観を投影するため、Steve は無垢なる画布に様々な楽器やキャストを配置していきます。
同時に、近年 Steve は自身のボーカルを以前よりフィーチャーしています。その趣向も同様に彼の内なるテーマと情熱をより濃密に伝えるため。1938年チェンバレンのスピーチ “Peace in our time” を文字った “Beasts In Our Time” で彼は、自らの声で当時アメリカが打ち出した孤立主義と現在の状況とを比較し、世界の光と闇に焦点を当てます。
そうしてオーケストレーションと KING CRIMSON の滑らかな融合で示唆された”世界は光と闇の境界線にある”。それはアルバムの重要なテーマとなったのです。
「Chris は彼抜きでも YES を続けて欲しいと願っていたよ。僕たちプログレッシブロックの住人は、全員が自分たちの遺産、レガシーを引き継いでいって欲しいと願っているんだよ。」
亡き Chris Squire に捧げられたようにも思える YES のスピリット、レイヤードセオリーを宿した “Under the Eye of the Sun”、McBroom 姉妹の参加とゴスペルの風情が PINK FLOYD を想起させる “Underground Railroad”。”新たなサウンド” を生み出すレコードは一方で、プログロックのレガシーを継承し祝祭します。
何より11分のエピック “Those Golden Wings” では繊細かつ清廉、そして “ポジティブ” な音像で、自らの出自である GENESIS の偉業を讃えプログレッシブの灯火を高々と掲げているのですから。それは革新の海に漂う矜持の燐光。
“ポジティブ” であることが世界の安寧への枢要なファクターだと語るギタリスト、ソングライター、そしてプロデューサーは静穏を望む旅の締めくくりに美しきトリロジーで自らの存慮を仄めかしています。
“Descent” でカオスの階段を下降し、”Conflict” で混迷と闇に縺れる現代社会。しかしその先にエセリアルで心洗われる “Peace” を用意することで、Steve は人の良心、徳性を信じてみせるのです。
今回弊誌では、Steve Hackett にインタビューを行うことが出来ました。「クラッシックで特別な音楽は引き継がれていくよ。そして僕たちは、その特別な音楽の火を絶やさず掲げ続けることを誇りに思っているんだ。」2度目の登場に感謝。もちろん、Chris Squire の偉業にも。どうぞ!!

STEVE HACKETT “AT THE EDGE OF LIGHT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + COVER STORY 【BRING ME THE HORIZON : AMO】


BRING ME THE HORIZON: WHEN LOVE AND HATE COLLIDE – STORY BEHIND “AMO”

WHEN LOVE AND HATE COLLIDE

ファンとの間の愛憎劇は、創造性を追求するアーティストならば誰もが背負う十字架なのかも知れません。とは言え、BRING ME THE HORIZON ほど荊の枷にもがき苦しみ、愛憎の海に溺れながら解脱を果たすミュージシャンは決して多くはないでしょう。
BRING ME THE HORIZON は新たなる宿業 “Amo” でラディカルな変革を遂げ、リスナーを文字通り地平線の向こうへと誘っています。それはロック、ポップ、エレクトロ、トランスにヒップホップをブレンドした野心極まる甘露。
しかし「15年経った現在でも、ヘヴィーじゃないとかブラストビートがないことが問題になる。そういった障害を壊し続けて来たんだけどね。」とフロントマン Oli Sykes が NME のインタビューで語った通り、確かにデスコア時代からのダイハードなメタルヘッドに “Amo” は堪え難い冒険だったのかも知れませんね。
実際、UK Billboard チャートで初の No.1 を獲得したとは言え、フィジカルのセールス自体はまだメタルの範疇にあった前作 “That’s the Spirit” と比較して75%も落ち込んでいます。もちろん、ストリーミングの大きな躍進は考慮するべきでしょうが、それにしても決して無視出来る数字ではありません。

“I think we’ve been ahead of some of the other bands. To Oli’s credit, he’s quite good at that. He has ideas before anyone else.”


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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SWALLOW THE SUN : WHEN A SHADOW IS FORCED INTO THE LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTI HONKONEN OF SWALLOW THE SUN !!

“The Whole Album Is Personal And Very Special For Juha Raivio And For Us Also As a Band. All I Want To Say Is That I Believe There Is Hope Also Involved On The Album. A Light At The End Of The Tunnel. “

DISC REVIEW “WHEN A SHADOW IS FORCED INTO THE LIGHT”

2016年、ギタリストでメインコンポーザー Juha Raivio が長年のパートナーでコラボレーターでもあった Aleah Stanbridge を癌で失って以来、フィンランドの哀哭 SWALLOW THE SUN はまさに涙淵へと深く沈んでいました。
ツアースケジュールの延期に隠遁生活。そうして2年の服喪の後、最終的に Juha が自らの沈鬱と寂寞を吐き出し、Aleah との想い出を追憶する手段に選んだのはやはり音楽でした。
Aleah の闘病中に制作された前作、”Songs From the North I, II and III” はメタル史においても前代未聞、3枚組2時間半の大エピックとしてリリースされました。「僕たちのスローガンを明瞭に示したんだ。憂鬱、美麗、そして絶望。僕たちが音楽に封じている三原則だよ。同時に、Juha Raivio にとってはとてもパーソナルなアルバムにもなったんだ。彼が当時、人生で経験したことを封じているからね。」Matt Honkonen が語るように、Juha の尽き果てる希望を憂鬱、美麗、絶望というバンドの三原則で封じたレコードは、同時にアルバム単位から楽曲単位へと評価の基準が移り行くインスタントミュージックの機運に一石を投じる壮大なアンチテーゼでもあったのです。
「ああいったエピック、トリプルアルバムをリリースした後だったから、僕たちは何か別のとても特別なものを創出したかったんだと思うんだ。」Matt の言葉通り、喪が開けて Aleah への追悼と Juha の深痛を宿す最新作は、”Lumina Aurea” と “When a Shadow is Forced Into the Light”、EP & フルアルバムというイレギュラーなリリースとなったのです。
13分半のタイトルトラックとそのインストバージョンで構成された EP “Lumina Aurea” の音楽は、これまでの SWALLOW THE SUN スタイルとは大きく異なっていました。
ネオフォークの大家 WARDRUNA の Einar Selvik と、イタリアンドゥームの傑物 THE FORESHADOWING の Marcus I の助力を得て完成させた楽曲は、完全にジャンルレス。ネオフォーク、ドゥーム、スポークンワードにオーケストレーションとグレゴリアンスタイルを加味した “Lumina Aurea” は、ただ純粋に Juha の慟哭と闇を音楽の姿に写した鬼哭啾々の異形でした。
一方で、「僕はこのアルバムに関しても希望は存在すると信じているし、トンネルの出口には光が待っているんだ。」 と Matt が語る通り、フルアルバム “When a Shadow is Forced Into the Light” はタイトルにもある “影”、そしてその影を照らす “光” をも垣間見られる感情豊かな作品に仕上がったのです。
デスメタルとドゥーム、そしてゴシックが出会うメランコリーとアトモスフィアに満ちたレコードは、まさにバンドが掲げる三原則、”憂鬱、美麗、絶望” の交差点です。
恍惚のオーケストレーション、アコースティック、ダイナミックなドゥームグルーヴ、胸を抉るボーカルハーモニーにグロウル。リッチなテクスチャーで深々と折り重なる重層のエモーションを創出するタイトルトラックは、SWALLOW THE SUN のレガシーを素晴らしく投影する至高。
“Lumina Aurea” の深海から浮上し、暗闇に光を掲げる “Firelight” のメランコリーはバンドの長い歴史に置いても最もエモーショナルな瞬間でしょう。死は人生よりも強靭ですが、きっと愛はその死をも凌駕するのです。
もちろん、”Clouds On Your Side” を聴けば、ストリングスがバンドのメロウなアンビエンスと痛切なヘヴィネスを繋ぐ触媒であることに気づくでしょう。そうしてアルバムは、ダークでしかし不思議と暖かな “Never Left” でその幕を閉じます。
“When a Shadow is Forced Into the Light” を聴き終え、Juha と Aleah の落胤 TREES OF ETERNITY の作品を想起するファンも多いでしょう。リリースにあたって、全てのインタビューを拒絶した Juha ですが、1つのステートメントを残しています。
「このアルバムは Aleah を失ってからの僕の戦いの記録だ。”影が光に押しやられる時” このタイトルは Aleah の言葉で、まさに僕たちが今必要としていること。2年半森で隠棲して人生全てをこの作品へと注ぎ、影を払おうと努力したんだ。言葉で語るのは難しいよ。全てはアルバムの音楽と歌詞が語ってくれるはずさ。」 バンドに18年在籍する代弁者、ベーシスト Matti Honkonen のインタビューです。どうぞ!!

SWALLOW THE SUN “WHEN A SHADOW IS FORCED INTO THE LIGHT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DILEMMA : RANDOM ACTS OF LIBERATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH COLLIN LEIJENAAR OF DILEMMA !!

“I Believe That Prog Music Should Not Only Be Clever And Virtuoso, But Also Moves Your Emotions And Your Heart. And It Should Surprise You, Taking You On a Musical Journey.”

DISC REVIEW “RANDOM ACTS OF LIBERATION”

「オランダ人はいつも交易と開拓を掲げてきたよ。この精神は、音楽にも反映されているんだ。なにせオランダのプログシーンは小さいから、成功を収めたいなら手を広げなければならないんだ。だからこそ、オランダのプログロックバンドはよく世界的な注目を集めるんだろうね。」
オランダに根づく交易と開拓の精神は、文化、芸術の歩みをも伴うこととなりました。そしてそのスピリットは、”交易” と “開拓” を音で体現するプログレッシブロックの海原と無謬にシンクロしているのです。
FOCUS, EARTH & FIRE, TRACE, KAYAK, AYREON, TEXTURES, VUUR。潮風の交差点で脈々と重なるダッチプログの渦潮は、DILEMMA を呑み込み、23年の長い間仄暗き水の底へと沈めました。しかし、90年代に素晴らしき “Imbroccata” でプログシーンに深々と爪痕を残した船乗りたちは甦り、遅れて来た大航海時代 “Random Acts Of Liberation” で文字通り自由を謳歌するのです。
ただし、乗組員は船長の鍵盤奏者 Robin Z を除いて大きく変化を遂げています。特筆すべきは、Neal Morse, KAYAK との仕事でも知られる百戦錬磨のドラマー Collin Leijenaar と、ex-FROST*, DARWIN’S RADIO の Dec Bruke を加えたことでしょう。オランダでプログ雑誌のライターも務める Collin の理想と、FROST* の血脈に繋がる Dec の個性は、バンドを一際カラフルでアクセシブルなプログレッシブポップの海域へと誘うこととなりました。
「プログロックはただクレバーでバーチュオーソ的だけであるべきではないと信じているんだ。同時に感情や心を動かすべきだってね。そうしてそこには驚きや音楽的な旅への誘いがあるべきだってね。人は心の底から音楽と繋がる必要があるんだよ。」
実際、Collin のこの言葉は、”Random Acts Of Liberation” が強固に裏付けています。
DREAM THEATER の “Pull Me Under” を彷彿とさせる緊張感とキャッチーなメロディーラインのコントラストが鮮やかなオープナー “The Space Between The Waves” が、より”自由”なプログロックの風波としてアルバムの趨勢を占えば、14曲72分の DILEMMA シアターの幕開けです。
“Amsterdam (This City)” を聴けば、一番の理解者 Mike Portnoy が 「SPOCK’S BEARED, FROST*, FLYING COLORS, HAKEN, Steven Wilson と並ぶとても味わい深いモダンプログ」 と DILEMMA を評した理由が伝わるはずです。デジタルサウンドとストリングスを効果的に抱擁する多様で甘やかなホームタウンのサウンドスケープは、Steven Wilson や FROST* が提示するプログレッシブポップのイメージと確かにシンクロしているのです。
“Aether” では PINK FLOYD と、”All That Matters” では ELO とのチャネリングでさらにプログポップの海域を探求したバンドは、しかし12分のエピック “The Inner Darkness” でスリリング&メタリックなルーツを再び提示し対比の魔術で魅了します。
“Spiral Ⅱ” からのシアトリカルに、コンセプチュアルに畳み掛ける大円団は、まさに Neal Morse と Mike Portnoy の申し子を証明する津波。中でも、”Intervals”, “Play With Sand” の激しく胸を打つ叙情、音景、エモーションはあまりに尊く、リスナーの心を “音楽” へと繋げるはずです。
今回弊誌では、Collin Leijenaar にインタビューを行うことが出来ました。時にトライバル、時にジャズ、時に Portnoy の影響を組み込んだドラミングの妙は、アルバムのデザインを華麗に彩ります。「このアルバムでは、プログロックをよりオープンで直接的な表現とすることに成功したと思うよ。プログをプログたらしめている興味深い要素を失うことなく、ポップな感覚を加えているね。」 どうぞ!!

DILEMMA “RANDOM ACTS OF LIBERATION” : 9.9/10

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