タグ別アーカイブ: Death metal

COVER STORY + INTERVIEW 【CEMICAN : IN OHTLI TEOYOHTICA IN MIQUIZTLI】AZTEC METAL SHAMAN FROM MEXICO


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH OF XAMAN-EK & TLIPOCA OF CEMICAN !!

“We Believe That Ritual Sacrifices Represent a Mystical Part Of Pre-Hispanic Mexico, Which Could Not Be Left Out Of The Show.”

AZTEC ROOTS, PRIDE AND RITUAL

「ここ数年、ラテンアメリカでメタルは本当に強力なんだ。まあ世界中でそうなんだが。メキシコ人はアグレッシブなサウンドを愛しているから、メタルは我々の文化を拡散するのに最適な方法なんだよ。」
ヘヴィーメタルとフォークミュージック、伝統音楽の絆はあまりに深く強靭です。スカンジナヴィア、欧州、アジア、北米。もちろん、1996年、SEPULTURA がマトグロッソの先住民族シャヴァンチと共存した “Roots” を見れば、古のラテンアメリカとヘヴィーメタルにも時を超えた親和性があることに気づくでしょう。
「CEMICAN とは同じ意味の中で生と死全体を表す言葉であり、それはこれまですべての時の間に学んだすべての知識と知恵を統合しているんだよ。」
2006年、メキシコに示現した生と死の二元性を司るアステカのメタル司祭にとって、Xaman-Ek の加入は大きな出来事でした。アステカの文化や言語ナワトルに精通するステージのシャーマンによって、CEMICAN はプレヒスパニック文化やアステカの神話をメタルのアグレッションや知性へと昇華させる唯一無二へと変貌したのです。
伝統的な管楽器や打楽器を、装飾としてでなく、勇気を持って楽曲の中心に据える戦士の魂こそ CEMICAN の原点。そうして彼らはアステカの伝統に敬意を表しながら、ボディーペイント、羽毛や骨の頭飾り、甲冑を身につけてステージに立つのです。
「ナワトル語は我々の祖先が使用していた言葉だからな。彼らは自然の力とコミュニケーションを取るためにも使用していたんだ。ナワトル語は、今でもいくつかの地域では話されているんだよ。」
ステージ名やアルバムのタイトル、時には楽曲やその歌詞にもアステカやインディオの先住民の言語を使用する CEMICAN。ただし、唸りをあげる歌詞の大半はスペイン語で書かれています。今でもメキシコ公用語の一つで、170万人の話者を持つと推定されるナワトル語ですが、それでも理解が出来るのはごく一部の人たちだけ。CEMICAN はアステカの文化を世界に運ぶため、より柔軟でグローバルな視点も有したバンドなのです。
「我々は全員が伝統音楽からメタルまで、様々に異なる影響を受けてきた。しかし常に我々の文化とフォルクローレは必ず心に留めているのだよ。」
Xaman-Ek はスラッシュとパンク、Tecuhtli はデスメタルやシンフォ、ブラックメタル、Tlipoca はクラッシックなメタルとスラッシュ、Ocelotl は Nu-metal。多様な影響を咀嚼したメタルの万華鏡も CEMICAN の魅力です。何より、シンセサイザーとプレヒスパニックの楽器を融合させたエレクトロニカの先鋭 Jorge Reyes が、メキシコに点在する様々な遺跡で行ったコンサートは CEMICAN の心臓部に深く刻まれる刻印となりました。
ナワトル語で “死者の神秘的な道” を意味する最新作 “In Ohtli Teoyohtica In Miquiztli” はバンドのディスコグラフィーにおいて最も洗練を極める、世界を見据えたモジョの道。古代のドラム、笛、フルート、クレイオカリナ、貝殻、女性ボーカルの巧みな配列は、異様な高揚感を伴いながらアステカに育まれる第五の太陽を導きます。一方で、時に DEATH や CYNIC, ATHEIST, MEGADETH にも通じる神秘的な攻撃性は、その太陽へ捧げられる生贄の残酷でしょうか。もちろん、生と死の二元性という CEMICAN の名が物語るように、彼らのステージにも不可欠な、太陽の力を得るため心臓を捧げ人肉を啜る神聖な生贄の儀式は残酷の一言で片付けられるほど単純なものではありませんでしたが。難問は現代の音階とズレが生じる不安定な伝統楽器の揺らぎでした。
「最初は正しい調性、音階を見つけるのに苦労したものさ。だけど遠く離れた古の職人の楽器でも、馴染みのある現代の音階に近い音色を持たせることに成功したのさ。」
CEMICAN はドイツの Wacken Open Air やフランスの Hellfest といった大規模なイベントにも出演し、メキシコ国外でのオーディエンスを増やすために努力を重ねています。メキシコ第三の都市モンテレイより、フランスでの演奏回数の方が多いという実績は、まさに彼らがケッアルコアトルのドラゴンである証明でしょう。
「ヨーロッパはバイキングやケルトといった古代文化に根ざし、もちろんバイキングメタルも有名だけど、メキシコの古代文化には馴染みがないんだよ。 すべてがボディペイントで、頭には火と羽がついているから目と口を大きく開けて怖がったり、驚いたりする。だけど3~4曲目には、ステージ上で起こっていることを理解し、愛してくれるようになるんだ。」
今回弊誌ではアズテックメタルで儀式を担当するパフォーマー Xaman-EK と、創始者でドラマー Tlipoca にインタビューを行うことが出来ました。日本の祭囃子にも通じる不思議。今や世界のどこにでもメタルは存在します。それこそがメタルに備わる包容力の証明。第三世界の逆襲。どうぞ!!

参考文献: Daily Bandcamp

CEMICAN “IN OHTIL TEOYOHTICA IN MIQUIZTLI” : 9.9/10

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A LISTENER’S GUIDE TO KRALLICE’S COLIN MARSTON & NYC AVANT-METAL SCENE


A LISTENER’S GUIDE TO KRALLICE’S COLIN MARSTON & NYC AVANT-METAL SCENE

“Undoubtedly NYC Avant-metal Scene Is One Of The Best, But That’s Almost a Technicality Because New York City Is The Densest, Most Diverse Blob Of Humans Probably On The Planet. So Everything That Benefits From a Lot Of People And a Lot Of Variety Is Going To Benefit.”

WARR GUITAR, MENEGROTH, AND NYC

ニューヨークの怪人という呼称は、Colin Marston にこそ相応しいでしょう。14弦まで豊富なバリエーションを持ち、ベースとギターの両義性を有する愛機 “Warr Guitar” は、Colin が語る NYC の個性と多様性を体現した楽器にも思えます。さらに、鍵盤からドラムス、ノーマルなギター、ベースを操るマルチな才能にまで恵まれた Colin の活躍はまさに八面六臂。
「僕が Warr Guitar を手に取ろうと思ったのは、1996年に Trey Gunn と Tony Levin が KING CRIMSON でプレイするのを見たからなんだ。」
前回のインタビュー で Colin はそう語ってくれました。高校のころ、バンドメイトの父親から KING CRIMSON を教わった Colin は、再結成した彼らのライブに赴き衝撃を受けました。当然、Colin は Trey と Tony がチャップマンスティックという10, 12弦の異質をタッチしベースとギターの狭間を演出することは知っていましたが、Trey はすでに Warr Guitar という怪物に乗り換えていたからです。
「この楽器の両義性も重要なポイントだよ。ベースであり、ギターであり、その両方かもしれないんだから。いつだってこのギターのような、しかし幅広いレンジを持つ楽器を楽しんでいるよ。ギターの領域では低音弦だけチューンダウンしているんだ。そしてベースは究極に低音とハイストリングスをプレイしているよ。Warr Guitar の魅力は何と言ってもこのレンジの広さなんだ。同じ音域だけで楽曲やアルバムを構成するのは本当に退屈だからね。」
チャップマンスティックが文字通りスティックであるのに対して、Warr Guitar はギターとベースをその体躯に宿すキメラ。幅広いオクターブレンジでギターとベース、リズムとリードを同時にフォロー可能、特徴的なボイシング。新進気鋭の若き Colin Marston にとって、この楽器は壮大な音楽的空想を実現する鍵でした。
実は、メタル、プログはもちろん、フォーク、スムースジャズ、アヴァンギャルドと Warr Guitar が織りなす世界は驚くほど広く多様です。ただし、完全にカスタマイズ可能な新品は50万円以上、さらに製作者は癌を患い現在新規のオーダーを受け付けていません。門戸は狭いながら、こういった奇妙な楽器によって既存の音楽が再構築されることは必要不可欠な新陳代謝でしょう。
カナダが産んだプログレッシブデスメタルの魔境 GORGUTS に所属しながら、盟友 Mick Barr と立ち上げた超個性的ブラックメタル集団 KRALLICE をはじめ、GORGUTS の Kevin Hufnagel と探索するリフ迷宮 DYSRHYTHMIA、インストカルト BEHOLD…THE ARCTOPUS, 実験的ソロプロジェクト INDRICOTHERE と数多の奇々怪界でニューヨークのアヴァンメタルを牽引する主役の顔もまた一つ。
「NEUROSIS のアルバムを1枚選ぶのはとても難しかったね。所謂プログレバンドではなく、真の意味でのプログレッシブなロックバンドだよ。重要な違いだね。僕の中で、”The Word as Law” は最も成功したハードコアとメタルの融合だと言えるね。ただ何よりも最高にユニークな音楽だよ。ベースはA+の仕事をしているし、シンプルなパンクと複雑でエピカルなメタルがこのレコードで最高の”和解”をしたと言えるかもしれないね。」
特に、前回のインタビューでこう言って崇拝を露わにしていた NEUROSIS の Dave Ed をアルバムに招待し、ブラックメタルだろうがなかろうが全員のクリエイティブな精神を集結しながらメタルを未知の領域へと導く KRALLICE の重要性はこれまで以上に語られるべきでしょう。
一方で、ARTIFICIAL BRAIN, LITRUGY, KAYO DOT, EAST OF THE WALL, WOE, DEFEATIST, CASTEVET, PYRRHON, IMPERIAL TRIUMPHANT といったメタルの先鋭を象徴する NYC の百鬼夜行も、Colin が所有する Menegroth スタジオから彼の手によって発進しているのです。
「疑いようもなく最高のシーンの一つ。それは当然なんだ。なぜならニューヨーク市はおそらく地球上で最も高密度で最も多様な人間の塊だから。だから、誰もが多くの人々と多くの多様性から受けるべくして恩恵を受けていると言えるね。大都市なら同じ状況になるだろうけど、NYC は特別多様で国際的だからね。」
様々な文化や発言に触れることこそ人類の強み。それは世界に蔓延る分断の嵐とはすっかり真逆の考え方で、音楽やストーリーに多様性を認めるモダンメタルのスピリットそのもの。だからこそ、Colin の元には仕事のオファーが舞い込み続けるのでしょう。
このコロナ禍の中でも Colin は粛々とリリース&プロデュースを続けています。その膨大なアーカイブから、近年の重要作10枚について自身の言葉で語ってくれました。
「ワーカホリックという言葉は完全に間違いというわけではないんだけど、僕は作曲やレコーディングを本当に楽しんでいるからね。ワーカホリックってネガティブな響きがあるんだけど、僕は音楽制作に全くそういった感情は抱いていないんだ。
時々はもっと音楽以外にも興味の対象が広がればいいのにとも思うんだけどね…だけど僕にとって音楽は未だに広大で無限の奥行を備えているんだ。だから今でも惹き込まれ続けているのさ。」

COLIN TALKS ABOUT HIS RECENT WORKS

1. KRALLICE “MASS CATHEXIS”

this is the album we worked on mostly between 2018 and spring 2020. it was originally supposed to include 4 other songs, but in the interest of the album not taking forever to finish and then being too long to digest, we cut 2 songs, and then 2 more (although those 4 songs will now just form the core of our next album). i think this album features the most variety of any Krallice release, and although it features only one song “written” by me (the title track), i had more of a hand in the arrangement and drum writing than ever before. McMaster also contributed the most material to this out of any Krallice record. it was awesome to have Dave Ed back (since he wasn’t on GBF or Wolf).

このアルバムは俺たちがほぼ、2018年から2020年の春までに製作した作品だ。もともとは、別の4曲を収録するはずだったんだけど、アルバムの完成に時間がかかりすぎたり、収録時間が長くなりすぎるといった理由で2曲をまずカットし、それからさらに2曲を削ったんだ。だけどその4曲は次のアルバムの核となるものだよ。
俺は “Mass Cathexis” は KRALLICE のアルバムでも最もバラエティーに富んでいると思っている。ただ、俺はこの作品ではタイトルトラック一曲しか書いていないんだけどね。今回はそれよりも、アレンジメントやドラムのパートを書くことに注力したんだよ。Nicholas McMaster がどの作品よりも多くのマテリアルで貢献してくれたね。”Go Be Forgotten”, “Wolf” にはいなかった Dave Edwardson (NEUROSIS) が帰ってきたのも良かったよね。

2. KRALLICE WITH DAVE EDWARDSON “LOUM”

Dave Ed is one of my favorite musicians, both as a bassist, and vocalist. i became obsessed with Neurosis in high school and they informed me as a creative person in so many ways over the years. a truly progressive band that does what they want in the way they want and fuck everyone else. so this record was really a dream come true for me (and mick who also has a long history with Neurosis) to work with Dave and to get him to be the lead singer on a full album! pretty sure it’s the only album where that’s the case in existence–so i also feel like we did the world a public service here, haha!
this is also the Krallice album that i contributed the most writing (20 minutes out of 32 i spearheaded), so it has more of that knotty, dissonant, fractured and uncomfortable feeling than our other work, which i thought would be a perfect bedrock for dave’s vocals.

Dave Ed はベーシストとしてもヴォーカリストとしても、俺の大好きなミュージシャンの一人だ。高校生の時に NEUROSIS に夢中になったんだけど、彼らは何年にもわたってクリエイティブな人間として多くのことを教えてくれたんだ。だから、このアルバムは俺にとって(そしてNeurosisとの長い付き合いがある Mick Barr にとっても)本当に夢のようなことだったんだ!Dave と仕事をして、フルアルバムのリードシンガーになってもらえたんだからね。
これは、アルバム全編で Dave が歌う唯一の作品だと思うんだ。だから俺たちは世界に公共のサービスをもたらしてあげたような気さえするんだ。(笑)
俺が最も多くの曲を書いた KRALLICE のレコードでもあるから(32分のうち20分は俺が率先して作った)、他の作品よりも複雑で、不協和音があって、分断されていて、居心地が悪い感じがして、Dave Edのヴォーカルに対する完璧な基盤になると思ったんだ。

3. BEHOLD…THE ARCTOPUS “HAPELEPTIC OVERTROVE”

so proud of this album! i had been wanting to have a record with a very different approach to the drumming for a long time, and i finally did it! having jason bauers join the band was a perfect fit since he had experience playing 20th century chamber music, and i wanted that to basically be the vibe of the new behold album. also as a recording engineer working on a lot of extreme metal, i was so tired of the “cshhhhhhhhhhhhhhh cshhhhhh shshhshhhhshsh” of washy crashy cymbals smashing around constantly. tech metal benefits from a more articulated sound, so why not built that into the instrumentation itself, rather than writing yourself into a corner with blast beats and double kick that aren;t even audible without triggering or extreme processing in the mix? i also gravitated to a more brutal death metal style of writing for the normal guitar on this album. i like the combination of bdm guitar and 20th century classical percussion! for me it’s a perfect match. for most people, i’m sure it’s going to sound like a big pile of shit! it would be Arctopus without that tension though!

このアルバムをとても誇りに思っているよ!俺は長い間、ドラミングに対して非常に異なるアプローチのレコードを作りたいと思っていたんだけど、ついにそれを実現したんだ!Jason Bauers をバンドに参加させたのは、彼が20世紀のチェンバーミュージックを演奏した経験があったからで、完璧にフィットしていたね。俺は基本的にそれを新しい Behold の作品の雰囲気にしたかったんだ。
また、多くのエクストリームメタルに携わっているレコーディングエンジニアとして、俺はクシャーーーーーンクシャーーーーーンシャシャシャシャシヮみたいな、薄っぺらでガチャガチャしたシンバルがずっと鳴っているサウンドに飽き飽きしていたんだ。Tech-metal は、より明瞭なサウンドから恩恵を受けている。では、トリガーや極端な処理をしないと聴こえないようなブラストビートやダブルキックで自分を追い込むのではなく、インストゥルメント自体に明瞭さを組み込んでみたらどうだろう?このアルバムでは通常のギターにかんして、より残忍なデスメタルのスタイルに惹かれたんだ。 BDM (ブルータルデスメタル) ギターと20世紀のクラシックパーカッションの組み合わせが好きなんだよ!僕にとっては完璧にマッチしている。たしかに多くの人にとってはクソの塊でしかないだろうけど、こんなテンションじゃなきゃ ARCTOPUS はやってられないよ。

4. DYSRHYTHMIA “TERMINAL THRESHOLD”

our “thrash” album! it was really fun to change the dys lineup to 2-guitars and drums for 3 of the songs. having no bass at all on 3 songs, but lots of dual guitar seemed to fit the thrash vibe. i even got to do 2 guitar solos! the one in “Power Symmetry” is a written solo, and the one in “Twin Stalkers” is purely improvised. i’m also very proud of the song “Progressive Entrapment,” which i wrote on bass. i have a feeling that song is not going to resonate with many people, but it’s my favorite for many reasons which i think are impossible to explain. kevin and jeff’s playing and writing on this album are world-class. what a pleasure it is to record those guys!

俺たちの “スラッシュ” アルバムだ!DYSRHYTHMIA のラインナップを3曲でツインギターとツインドラムスに変えるのはとても楽しかったね。その3曲には全くベースが入っていないんだけど、沢山のツインギターがむしろこのスラッシュのヴァイブにフィットしたんだ。俺はギターソロまで弾いたんだよ!一つは構築されたソロの “Power Symmetry” で、もう一つは純粋なインプロヴァイズの “Twin Stalkers” だよ。
それに、”Progressive Entrapment” はとても誇りに思っているんだ。この曲で俺はベースを書いたんだけどね。多くの人にアピールする楽曲じゃないと感じていたんだけど、多くの理由から俺のフェイバリットなんだ。説明するのは難しいんだけど。アルバムにおける Kevin と Jeff の演奏はまさにワールドクラスだ。彼らとレコーディングが出来るのは本当に喜びだね。

5. PHONON “ALLOY”

so excited with how this album came out! it’s just one long improvisation which we cut into chunks and re-ordered. it came out so great! i really like listening to this. i have had other bands with Weasel, but never had improvised with him where i was playing bass. i found it really comfortable and exciting at the same time. i love weasel’s style and i found it easy to work with in this context. elliott and álvaro’s guitar work is the perfect textural companion to the rhythm section weasel and i created. elliott is a total legend and it was an absolute honor to make an album with him. Álvaro and i are newer friends, but just in the last couple years we’ve already collaborated on 5 releases! i like how heavy and metered this album came out even though it’s completely free improv.

このアルバムがこうやってリリースされてとてもエキサイトしているよ!一つの長いインプロビゼーションを、切り貼りして再レコーディングしたものなんだ。素晴らしい結果になったよね!このアルバムを聴くのが本当に好きだよ。Weasel とは他のバンドもやってたんだけど、俺がベースを弾いてインプロヴァイズしたことはなかったからね。非常に快適だけど同時にエキサイトしていることに気づいたよ。Weasel のスタイルが大好きだし、このコンテクストは俺にとってやりやすかったんだ。
Eliott と Alvaro のギターワークも俺と Weasel のリズムセクションとピッタリ符号していたね。Eliott は完全にレジェンドで、彼とアルバムを作れてとても誇らしいよ。Alvaro は比較的新しい友達なんだけど、ここ2年で5枚も一緒にアルバムを出してるんだ!完全にフリーなインプロヴァイズだけど、ヘヴィーでコントロールされたこの作品が気に入っている。

6. INDRICOTHERE “ALTRRN”

i was hired to write all the guitar for an album of Pyramids. i was sent drum machine from Vindsval of Blut Aus Nord, who i’m a massive fan of. i wrote songs to the drum machine on guitar, added a bunch of keyboards, and then sent it to the Pyramids guys to add vocals and additional keys. so this is the version before i sent it to Pyramids, which just Vindsval’s drums and my guitar and keys. i got to really like the instrumental version, and it also included kind of a “lost ambient album” since i extended the end of every song into an ambient exploration. i never planned to release this, but when the pandemic hit, and i lost thousands and thousands of dollars in income from cancelled recording sessions, i released it as a small fundraiser for the studio.
it’s worth noting that i did actually make 2 new proper Indricothere albums during the lockdown: a 3.5-hour ambient record and a crushing sluggish brutal death metal record:
https://indricothere.bandcamp.com/album/xi-5
https://indricothere.bandcamp.com/album/tedium-torpor-stasis

俺は PYRAMIDS のアルバムのためにギターパートすべての作曲を依頼されたんだ。大ファンの BLUT AUS NORD の Vindsval からドラムマシンを送ってもらったんだ。そのドラムマシンに合わせてギターを書いて、たくさんキーボードを加えて彼らに送ったんだ。彼らはそれにボーカルやキーボードをさらに加えたんだよ。
これは PYRAMIDS に送る前のバージョンで、Vindsvalのドラムと僕のギターと鍵盤だけで作ったんだ。このインストバージョンが本当に気に入っていたし、全曲の終わりをアンビエントな探究に拡張した “失われたアンビエントアルバム” のようなものも含まれているんだ。
これをリリースするつもりはなかったんだけど、パンデミックが起きて、レコーディングのキャンセルで何千ドルもの収入を失った時に、スタジオのためささやかな資金集めのためにリリースしたんだ。特筆すべきは、ロックダウンの間に INDRICOTHERE で適切な2枚の新作を作ったことだよ。3.5時間のアンビエント・レコードと、破砕的で緩慢なブルータル・デスメタルのレコードだ。

7. COLIN MARSTON “SUBLIVE”

i was approached by Arun from Subcontinental Records to release a live album of my experimental/classical music.
tracks 1 and 2 are from a show at EMPAC in Troy NY from 2015. the first is in my Indricothere keyboard style. the 2nd is feedback controlled player piano. i later went back to EMPAC and recorded a full-album version of these type of pieces, with Eliane Gazzard collaborating on sustain pedal and piano called, “Parallels of Infinite Perspect” on Álvaro’s Illuso label.
the 3rd track is an improvised duet with Mario Diaz de Leon from Issue Project room in 2019. i hope to do a full album with him soon!

Subcontinental Records の Arun から、俺の実験的/クラシカル音楽のライブアルバムを出さないかってアプローチされてね。1曲目と2曲目は、2015年ニューヨーク EMPAC でのライブなんだ。1曲目はオレが INDRICOTHERE でやってるキーボードのスタイルだ。2曲目はフィードバックをコントロールしたピアノ。後から EMPAC に戻って、Eliane Gazzard とフルアルバムバージョンを録音したんだ。
3曲目は、Issue Project の Mario Diaz de Leon とインプロヴァイズのデュエット。彼とはすぐにフルアルバムを作りたいな!

PRODUCTION WORKS

8. IMPERIAL TRIUMPHANT “ALPHAVILLE”

i love working with Imperial. zach has taken the band on an awesome trajectory over the years and it’s a honor to be along for the ride and to get to collaborate and help him realize his vision. the band is so awesome now with kenny and steve–feels like a real BAND now, with everyone contributing. i love that they leave some looseness in the music and are much more interested in a compelling performance rather than things being 100% accurate. they recognize the value of leaving some dirt and some mystery in a mix too, rather than going for a squeaky clean procut with no rough edges. they are open to lots of experimentation but also value a more jazz-oriented mentality where the instruments sound like people playing together and kicking ass.

IMPERIAL TRIUMPHANT と仕事をするのは大好きだよ。Zack は何年にもわたってバンドを素晴らしい軌道に乗せてきたし、その道を一緒に歩むことができて、コラボレートして彼のビジョンを実現する手助けをすることができて光栄だよ。Kenny と Steve がいる今のバンドはとても素晴らしいよ。全員が貢献して、真の “バンド” になっているね。
彼らは音楽に多少の緩みを残していて、100%正確なものを作ることよりも、説得力のあるパフォーマンスに興味を持っているから好きなんだ。エッジのない、ラフさのないキレイなカットを目指すのではなく、多少の汚れやミステリーをミックスに残すことの価値を認識しているからね。彼らは多くの実験にオープンであると同時に、楽器が一緒に演奏しているように聞こえるようなジャズ指向のメンタリティも大切にしているんだ。

9. AFTERBIRTH “FOUR DIMENSIONAL FLESH”

yes! love this record and this band. i’m so happy they came to me for this recording. an honor. each musician has a totally unique voice on their instrument. i love the prog flair, but the tasteful tempering through quality songcraft. these guys really balance the traditional well with the experimental. it’s very accessible somehow, without being annoying in the way that “accessible” can be, at least for me. it’s also very exciting to me that these guys all value a good-quality more “straightforward” recording/mixing style, rather than wanting that sound-replaced/quantized/amp-simulated vibe that is so omnipresent in modern “professional” recordings.

きたね!このレコードとバンドが大好きなんだよ。彼らがこの作品のために、俺のところに来てくれたことをとても嬉しく思っているよ。 各ミュージシャンはそれぞれの楽器に全くユニークな “声” を持っている。 俺はこのプログな雰囲気が好きなんだけど、質の高い曲作りによる味のあるソフトな性質も気に入っているんだ。
彼らは伝統的なものと実験的なもののバランスをうまくとっている。それはとても親しみやすいもので、”親しみやすい” というのは、少なくとも俺にとってはイライラさせることがないってこと。
また、最近の “プロ” のレコーディングにありがちな、音の置き換え、量子化、アンプシミュレートされたような雰囲気を求めるのではなく、彼ら全員が質の高い、より “素直な” レコーディング/ミキシング・スタイルを大切にしていることも、俺にとってはとても刺激的なことだったな。

10. PYRRHON “ABSCESS TIME”

pyrrhon are the best bros. i love hanging out and joking around with these guys. they are hilarious. also so honored and happy to have gotten to finally record/mix them for this and the previous album. alex cohen is undoubtedly a technical master, but i think the band started to become truly amazing when steve schweggler stepped in behind the drum kit. his style and aggressive playing fit with Dylan, Erik and Doug just perfectly. it’s great how masterful pyrrhons “tech metal” writing is, but even greater how they also have a purely improvised free-form side to their spirit that’s just as effective. these guys are unstoppable musicians and i love that they also have Seputus, which feature all 4 of them AGAIN! as well as many other bands. these guys get it: make a ton of shit and have it all be awesome. haha

PYRRHON は最高のブラザーだよ。彼らとハングアウトしたり、冗談を言ったりするのが大好きなんだ。そして、このアルバムと前作で彼らをレコーディング/ミックスすることができたことをとても光栄に思っているし、幸せに思っているよ。Alex Cohen は間違いなくテクニカルなマスターだけど、Steve Schweggler がドラムキットに座ってから、このバンドは本当に素晴らしいものになっていったと思う。
彼のスタイルとアグレッシブなプレイは、Dylan, Erik, Doug に完璧にフィットしていた。PYRRHON の “テック・メタル” のライティングが群を抜いているのも素晴らしいけど、それ以上に、彼らの精神には純粋に即興的なフリーフォームの側面があり、それが効果的に作用しているんだよね。
彼らはアンストッパブルなミュージシャンだし、彼ら4人全員をフィーチャーした SEPUTUS も大好きだ。大量のゴミを生み出せば、全てが素晴らしい音楽になることを理解しているね。(笑)

ABOUT NYC AVANT-METAL SCENE

undoubtedly one of the best, but that’s almost a technicality because New York city is the densest, most diverse blob of humans probably on the planet. so everything that benefits from a lot of people and a lot of variety is going to benefit. so many big cities can make similar claims, but NYC is exceptionally diverse and international. being shoved together with a ton of other people, some with similar goals, but a range of approaches and influences is only going to create a richer scene with maximum life and vibrance: what a strength there is in being exposed to a wide variety of approaches and statements!
i’m sorry, but people who believe in the value of segregation based on background are the reason humanity will most likely destroy itself. if having a diverse community isn’t totally obvious as a strength, then we have no hope and deserve to die.

疑いようもなく最高のシーンの一つ。それは当然なんだ。なぜならニューヨーク市はおそらく地球上で最も高密度で最も多様な人間の塊だから。だから、誰もが多くの人々と多くの多様性から受けるべくして恩恵を受けていると言えるね。大都市なら同じ状況になるだろうけど、NYC は特別多様で国際的だからね。
多くの人たちと一緒にいれば、中には同じ目的を持った人もいて、様々なアプローチや影響を受けながらも、最大限の生命力とバイブレーションを持ったより豊かなシーンを創り出すことになるはずだから。様々なアプローチや発言に触れることができるのは、なんという強みだろう!
申し訳ないけど、人種や文化といったバックグラウンドに基づく隔離の価値を信じている人たちこそが、人類が自滅してしまう原因なんだよ。仮に多様なコミュニティを持つことが強みにならないならば、人類に希望はなく、滅びるに値するよ。

ABOUT CORONA CRISIS AND MUSIC INDUSTRY NOW

i have been very lucky to still have some remote studio work, but i haven’t had an attended recording session since march! my friends who rely on the live music world for their income are totally fucked. what’s really sad isn’t that Corona happened. that’s actually just normal and natural. what’s so disappointing is how selfishly many are treating an issue (including the American government!!!!) that’s solely and directly about our collective survival as a species. people can’t get it through their heads that all the activities that they want to return to will be MADE POSSIBLE BY quarantine/distancing/masks/closing non-essential things, rather than seeing those things as an impediment to freedom. once again, if you see this as an issue of personal freedom, rather than ENSURING YOUR OWN HEALTH AND FUTURE, then humanity is fucked and we’re all going to die a horrible slow death together as the modern world crumbles. if your goal is to destroy all humans including yourself and your loved ones and me, then you’re doing great! keep going! thanks!

俺は幸いまだリモートでのスタジオの仕事はあるんだけど、レコーディングセッションには3月から参加していないんだよ!ライブハウスに頼って収入を得ている友人たちは完全にダメになってしまった。
本当に悲しいのはコロナが発生した事じゃないんだ。それは普通で当たり前に起こり得ることなんだから。何がとても残念なのかというと、この問題をどれだけ利己的に扱っているかということなんだ。アメリカ政府も含めてね!!!!
これって、種としての我々が生存できるかに直接関係しているよね。コロナ対策を自由への障害として見るべきじゃないよ。かつての生活に戻るには、自己隔離/ソーシャルディスタンス/マスク/が唯一の道なんだから。
もう一度言うけど、もし君が自分の健康と未来を保証することよりも、コロナ対策を個人の自由として捉えているならば、人類は滅び、現代世界が崩壊していく中で、俺たちは皆一緒に恐ろしくゆるやかな死を迎えることになるだろう。もし君の目標が、自身と愛する人と私を含む全ての人間を破壊することならば、そうすればいい! 頑張れよ、ありがとう!

Here’s a list of my other releases since the lockdown started:
https://xazraug.bandcamp.com/album/unsympathetic-empyrean
https://groeth.bandcamp.com/album/unfathomable-existence
https://indricothere.bandcamp.com/album/tedium-torpor-stasis
https://indricothere.bandcamp.com/album/xi-5
https://hathenter.bandcamp.com/album/wr-w-r-wwr0wr-g-0w-er0gw-0wr-w
https://glyptoglossio.bandcamp.com/album/0-1
https://encenathrakh.bandcamp.com/album/live-album
https://encenathrakh.bandcamp.com/album/thraakethraaeate-thraithraake
https://arelseum.bandcamp.com/
https://edenicpast.bandcamp.com/
https://slam420.bandcamp.com/album/bloated-exploded-og-gluttony
https://youtu.be/2C7SrMS1rGI

Other things panned include:
– the debut full length from Edenic Past
– Arelseum II
– a collaborative album with Mike Pride, Jamie Saft, and Mick Barr
– a collobarion with Andrew Hawkins from Bearing Teeth
– a full classical symphony, presented as a solo album
– 2 new krallice albums
and there will be a lot more i’m sure.

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUMA : DUMA】LIONSBLOOD OF KENYAN METAL


EXCLUSIVE : INTERVIEW WITH MARTIN KHANJA & SAM KARUGA OF DUMA

“It’s About Going Inside And Bringing It Out, putting Our Guts On The Table. There’s No Hiding. That’s The Thing: You Come To Duma You Come To The Fucking Butchery.”

LIONSBLOOD OF KENYAN METAL

一般的な外国人にとって、マサイの言葉で “冷たい水の場所” を意味するケニアのナイロビは、文字通り大都市特有の冷たさを纏っているように感じられるかもしれません。たしかに、街には高層ビルが立ち並び、交通量は多く、首長はヘネシーがコロナを殺すと考えています。それでもニューヨークや東京に比べればまだ温かみが感じられるのではないでしょうか。
しかし、ナイロビで生まれ育ち、この特異なメタルシーンにおいてさらに特異な色彩を放つグラインドデュオ Sam Karugu (ギター/プログラミング) と Martin Khanja (ボーカル) は、その意見に違を唱えます。
「ラジオを聴けばわかるよ。デタラメばかりだ。聴きたくない人がいるから、俺たちは何か違うものを作るんだ。”ワンサイズ・フィッツ・オール” 、一つの価値観がすべてを支配するなんてもう通用しないよ。俺たちは社会に適応出来ない人たちのために音楽を作っているんだ。」
たしかに、DUMA のセルフタイトルのデビュー作は、凡俗を攻撃するインダストリアルノイズが渦巻く反抗のレコードです。
2019年にウガンダのカンパラにある NyegeNyege Studio で録音されたレコード “Duma” は、00年代初頭にハードコアパンクやメタルを聴いて育った2人が送る強烈なステイトメント。ナイロビには80年代から DIY のハードコアシーンが存在しましたし、毎週木曜日の午後10時から12時まではアンダーグラウンドメタルを流す “Metal to Midnight” という番組も存在しました。それに YouTube, インターネット。
「俺の好きな音楽だから、俺が育った場所で周りのみんなに聴かせてやりたいんだよ。」

アフリカ大陸には未だ極小のメタルシーンしか存在しませんが、バンド同士はネットを通して連絡を取り合い、活気に満ちたコミュニティーを形成しています。ケニアのメタルシーンは「楽器を持っていて、心があって、何かをやりたいと思っている人なら、誰でも音楽ができるんだということを教えてくれた。」と Sam は語ります。
「アフリカにも昔からロックはあったよ…アパルトヘイト時代の70年代には、ザンビアやジンバブエのバンドが “Zamrock” を作っていた。ググってみてよ。だけどほとんどのバンドがレコーディングができなかった。だからそのためにケニアに来ていたんだ。”Zamrock” は70年代、80年代、90年代まで続いていたよ。アパルトヘイトが終わるころまでね。
だから、ケニアのシーンはずっと前からあったし、例えば南アフリカにはシーンがあるし、北アフリカにはチュニジアやエジプトにもシーンがある。世界の人々は俺らの存在を忘れてしまっているような気がするよ。でも、ケニアにもロックやメタルがあって、みんな楽しんでいて、バンドが演奏していて、モッシュ・ピットがあって、本当にオープンな人たちばかりなんだ。 人々が本当にオープンなんだよ。」
Martin もシーンの温かさについて同意します。
「ケニアのシーンは家族のような、コミュニティのようなものなんだ。どれだけ稼いでいるか、どんな人種かとか、そんなことは気にしない。ショーに出れば、みんなが愛してくれて、ありのままの自分を受け入れてくれる。
俺は自分のやっていることが人気があるものではなく、とても奇妙なものだと思っていた。だから同じ音楽をやっている人たちに出会って、”兄弟 “という感じになったんだ。俺たちはお互いを理解している。会場に足を踏み入れると、家族のような感覚になるんだ。 子供の頃、高校の頃に会った人たちや、大学生になってから会った人たちが、家族を連れて来てくれるんだ。 それは変わらず、どんどん大きくなっていく。 それがケニアのシーンのとても好きなところだね。みんなが互いに知っていて、みんなのことを愛しているから。」
それでも Sam はメインストリームからは程遠い現状も付け加えます。
「一回のライブで100ユーロが手に入る。それをバンド全員で分けるんだ。メインストリームからは程遠いよ。適切なギア、スタジオなんてないからなかなか新たなチャレンジも出来ないしね。好きだからやっているんだ。やらないと気が狂いそうになるから。」

影響を受けたのはどんな音楽なのでしょう?Martinはこう切り出します。
「TORCH BEARER, PINK FLOYD, Kurt Cobain, XXXTentacion, Travis Scott, SUICIDE SILENCE の Mitch Lucker, Bob Marley, それに DJ Scotch Egg-彼は神だよ。とにかく、彼らは上級地球人さ。エリートなんだよ。」
Sam はどうでしょう?
「ケニアのバンドはみんなそうさ。あとは LAST YEAR’S TRAGEDY, THROBBING GRISTLE。それから、BLACK FLAG, MINOR THREAT, SYSTEM OF A DOWN, それに MELT-BANANA! “Cell-Scape” は最高さ。たくさんいるよ。あとは母さんだね。でも母さんは俺がメタルをやっているなんて知らないよ。ゴスペルかなんかだと思っているんだろう。バレたら面倒くさいからね (笑) 」
Martin にとってメタルは救いであり、自己実現のためのツールでもありました。
「ラジオからメタルが流れてきて、人生が変わった。俺はいつも人生の中で自分の道を見つけようとしていたし、何かを発見しようとしていた。そしてこの音楽が俺に表現力を与えてくれていることに気付いたんだ。
道を歩いていると、頭の中でリズムが聞こえてきたり、詩を書いたりすることはいつも経験してきた。どこでそれを表現できるのか? この作品を通して、それを解放する方法を見つけたんだ。音楽がなければ自分の人生をどうすればいいのかわからない。目的がないんだ。メタルが生きがいを与えてくれた。一日の終わりには自分を表現しなければならない。そうしないと自分を抑え込んでしまう。精神的にも健康的じゃない。俺は苦手なことばかりだけど、少なくともこれは得意なんだ。」

2019年に DUMA が結成されたとはいえ、Sam と Martin は高校時代からお互いを知っていました。そして、Sam は SEEDS OF DATURA の、Martin は LUST OF A DYING BREED というトップナイロビメタルのメンバーでした。当時から、2人は互いの音楽に興味を持っていたのです。ボツワナのウインターメタルフェスで意気投合したデュオのパフォーマンスはすぐに共同作業へと繋がります。バンド名 DUMA とはキクユ語で暗闇を意味します。
「俺らはこの音楽に本当に深く入り込んでしまった。自分たち自身もダークで、音楽もダークで、世界観もダークなこのプロジェクトにね。」
アルバム “Duma” はメタルとして成立しながら、デュオの多様な嗜好を反映したモンスターです。”Omni” でトラップとメタルを融合し、”Lionsblood” ではエレクトロのダンスビートを取り入れます。「ダークでヘヴィーな実験だよ。新しいサウンドを作るためのね。」
“Lionsblood” はまさにアフリカのバンドにしか書けない楽曲でしょう。Martin が説明します。
「これは俺の民族的背景であるマサイ族のルーツからきている。男になるためには、茂みに入ってライオンを殺し、ライオンの血で体を洗わなければならないんだ。それは、つまり自分を見つけたということだ。ライオンの血を飲むんだから、生き残れば自分の中にライオンが残る。この慣わしを使ったのは、俺たちが日常生活の中でどのように存在しているかを表現したかったから。
問題は、人種や文化の違いじゃなく、見解や認識の違いなんだ。その違いは、俺たちが共に分かち合うべき強さなんだよ。 この違いが組み合わさったとき、俺たちはみんな強くなるんだから。人は教会に行ったり、学校に行ったり、何かを発明したり、ビジネスを経営したりすることができる。もし本当に好きなことが得意なら、それをやってみて、好きなことをするように人々を鼓舞して欲しいね。それが人間として、俺たち全員のためになるんだから。」

アートワークも一種独特です。Sam が語ります。
「偶然近所の市場で撮ったんだ。女の人が肉を買っているんだけど、彼女の服も肉に見える。肉を食べようとして自分が食べられてしまう。つまり、消費者にみえて実は自らが消費されているんだよ。それにアフリカっぽくて、メタルっぽいアートワークだよね。俺たちが言うところの、机にすべての内臓を出すってやつだよ。肉はすべて切り取られ、演奏するたび俺たちの体内で力になる (笑)」
Martin が付け加えます。
「つまり、このアートワークは自らの内なるものを外界へ解放することを象徴しているんだ。そうやって、自分のすべての内臓を机の上に出すわけだよ。何も隠すことはない。それが DUMA をやっている理由だから。」
アルバムには、ナイロビに対するバンドの不満も反映されています。Sam は、宗教と資本主義がこの大都市における “障壁” となってしまっていると非難します。住人たちは、この “ループの中” で生活することに慣れてしまい、快適な繭の中から出ることはないのです。DUMA は先住民が、自由に生きられるかつてのやり方を思い出すための水先案内人なのでしょう。
「もう機能していないよ。教育、宗教、商業、あらゆるものが俺たちの心を鈍らせている。本当の自分になることを許してくれないんだ。”Comers in Nihil” は箱の中に閉じ込められているという概念を比喩的に探求している。仕事をしてまともにお金を稼ぐというマンネリは安心だし心地よいものだけど、実際には生きているわけじゃなくゆっくりと人生を消耗しているだけなんだ。ただ仕事に行って家に帰ってくるだけなんだから。」
アフリカの現実にも立ち向かわなければなりません。Martin が続けます。
「仕事に行って家に帰ってもやることはたくさんある。家族もいるしね。それでも人は自分をポジティブに表現することでしか生き残れない。すべてを内に秘めていたら発狂してしまうから。自らの内面を世界に共有すれば、存在しなかったはずの人生が創造できる。ひいては、未来のより良い世界を作ることに繋がるんだ。」

仮に、コロナが世界の終わりをもたらそうとも? Sam は同意します。
「何かを創作し続けなきゃ。自分のやりたいことを全力でやらないといけない。世界はコロナで終わりを迎えるかもしれないし、何が起きているのかさえわからないけど、俺は自分のやりたいことをやって、自分らしく表現していくしかないんだよ。今の世の中、SNS によってほとんどの人が自分を表現できるようになっているだろう?今がその時だよ。自分の内臓を全部だすんだよ。」
闇の中でも常に光を見出すアルバムには、世界中に自分たちの音楽を広めたいという野心と共に、純粋な、サブリミナルなメッセージが込められています。Martin は目を輝かせます。
「みんなを鼓舞して、今よりもっと良くなるようにしてあげたいんだ。ビデオにもサブリミナルメッセージを込めている。本当に目を覚まそうとしている人には、それが理解することが出来るのさ。多くの人にインスピレーションを与えたいよ。音楽を聴いてくれた人、インタビューを読んでくれた人、ビデオを見てくれた人の心に何かを残したい。より良く生きれるような何かをね。」
Martin の最も伝えたいメッセージは、オープニングナンバー “Angels and Abysses” に描かれています。
「天使と深淵。心の中の小さな囁きを込めた曲だ。労働の中で、”オマエはもうめちゃくちゃだ。家に帰るんだ” ってね。毎日、自分の別の姿、一面が常に一緒にあることを忘れないでほしいんだ。
俺は心理学の修士号を持っている。そして、自らの認識している意識とは氷山の一角だと気づいたんだ。俺たちの習慣、行動、世界観は別の場所から来ているんだよ。意識的にそれを微調整することができれば、思い描いている最高の人生を体験することができるはずなんだ。その域まで到達しない場合でも、少なくともそれに近づくだろうし、これまでよりは良いものになるはずさ。」
Sam のお気に入りは “Pembe 666″。
「基本的には黙示録5章6節なんだが、スワヒリ語で書かれているんだ。聖書のこの一節では、ヨハネが小羊を見つけたと言っているんだけど、小羊は七つの封印を持っていて世界を解放するためにそれを開けなければならないんだよ。そして彼は子羊が殺されているのを見つけたんだ。 答えを探しているうちに、子羊が殺されていることに気づくというのは、宗教の面白いところだよな。きっと答えはないんだろう。」

最もテクノロジーを受け入れたバンドがケニア出身というのも皮肉なものです。
「俺たちにあるのは、歌とギターとラップトップだけ。面白いことに、メタルではほとんどの人がコンピュータをリスペクトしていない。純粋ではないと思われている。でも、コンピューターがあれば、バンド全体の音楽を作ることができることに気付いたんだ。シンセラインやドラムやギターを思いついて、それを完成させるまで煮詰めていくんだよ。」
DUMA がこれから進む場所はどこにあるのでしょう? Martin が答えます。
「デスメタルはもうやり終えたかも。メタルコア、デスコア、アバンギャルド、シンフォニック、ドゥーム。 これら全ての異なるジャンルからの影響を利用して、ハイブリッドな表現を生み出そうとしている。2040年や2050年に生まれた人たちだって何かを必要としているだろうし、僕らは前に進まなければならない。ヨーロッパやアメリカじゃ、メタルが確立されている。アフリカのメタルを知らしめるために、コンガやブラス、ドラムスといった民族楽器を取り入れるのは良い方法だと思うしね。それが俺たちの目標だ。俺達は新しいジャンルを作るつもりだよ。」
Sam と Martin は、彼らを理解しない人のことまで気にかけてはいません。DUMA の音楽は、マンネリに飽き飽きしたリスナーや、地元の放送局に満足しない人たちのためのもの。DUMA を完全に吸収するには、開かれた心が必要なのです。
「老若男女を問わず、すべての人に関係のあるものを作ろうと思った。たとえ暗くても、そこには光がある。そこにはたくさの知識と知恵が詰まっていて、子供たち、またその子供たちになんらかのインスピレーションを与えるんだ。」
DUMA はある種の伝道師なのでしょうか? Martin は否定します。
「というより、奉仕活動だよ。俺たちのライブに来れば、自分の抱えている問題や障害を克服するより良い方法を見つけることが出来るからね。視点を変えてくれるし、力を与えてくれる。改心させたいわけじゃなく、思い出させたいだけなんだ。」
Sam も同意します。
「伝道ではないね。メタルでは、8万人がメイデンのライブにくるけど、別に崇拝はしてないでしょ?(笑)。ただメイデンを聴くためにライブに行って、家に帰ればクソをする。誰も崇拝はしていない。それがメタルの醍醐味なんだよ。みんな自分の好きなことをしているだけさ。崇拝してるとしたら悲しいことだ。俺たちを崇拝なんてするなよ。やめとけ (笑)。」

参考文献: BANDCAMP:Duma Shines A Light on Underground Kenyan Metal

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WITHIN DESTRUCTION : YOKAI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LUKA VEZZOSI OF WITHIN DESTRUCTION !!

“I Believe The Metal Scene Is Slovenia Is Quite Strong But There Are Practically No Bands That Break Through Internationally Cause Nobody Has The Guts To Do That Important Step Of Saying “Fuck My 9-5 Job, I Wanna Do This For My Living”. You Need a Different Mindset If You Want Your Band To Succeed Internationally.”

DISC REVIEW “YOKAI”

「明らかに僕らは将来的にメインストリームにも進出したいと思っているから、トラップの要素を取り入れてよりメジャーな曲作りをすることは、その方向への第一歩だったんだ。もちろん、僕たちのようにやるには肝が座ってなきゃダメだけどね。人がどう思うかなんて気にしない。 自分たちがやっている音楽が好きであればそれで十分なんだ。」
東欧の小国スロベニアからスラミングデスの残忍王へと上り詰めた WITHIN DESTRUCTION は、バンド名が物語るように激烈な破壊衝動をその身に宿したまま、メインストリームの恍惚へと挑戦しています。
「スロベニアのメタルシーンは非常に強力だと思うんだけど、国際的にブレイクするバンドがほとんどいないんだ。それはね、『9時から5時の仕事なんてもうどうでもいい、メタルで生計を立てていくんだ!』ってガッツを誰も持っていないからなんだ。バンドで国際的に成功したいと思うなら、違う考え方、心の持ちようが必要なんだよ。当然、ハードな努力が必要で、経済的にも社会的にも多くの犠牲を払わなければならないんだよ。」
WITHIN DESTRUCTION に備わった無垢なる狼の精神は、人口200万の世界の狭間に生を受けたその運命と深く関連していました。ここから国際的にブレイクを果たすことがいかに難しいか熟知しているからこそ、WITHIN DESTRUCTION はその暴虐な世界を奔放に拡大していくのです。
「”Yokai” は大部分が日本の幽霊/悪魔である妖怪についてだね。平安末期に鳥羽上皇の寵姫であったとされる伝説上の人物、狐の化身 “玉藻の前” についての楽曲なんだ。彼女の美しさ、知性、そして狡猾さに焦点を当てているよ。あと、”Alone” はファイナルファンタジーの世界をベースにした楽曲なんだ。」
Unique Leader を離れ自らのレーベルを設立し、POLARIS のブレークにも一役買ったプロデューサー Lance Prenc を招聘したのは決意の現れでしょうか。メインストリームなデスコアサウンドやエレクトロニカ、トラップ、プログなどを加えスラミングデスメタルの領域を拡大する一方で、日本やアジアの伝統文化、アニメ、ゲーム, “Kawaii” からの影響を調合することにより、最新作 “Yokai” は邪悪と奇妙を両立させる文字通りエクストリームメタルの妖怪として魑魅魍魎の魅了を手にすることとなりました。
エレクトロニックでジャポネスクな “Yomi” は完璧なる冥府への入り口。そうして続くタイトルトラック “Yokai” で、メタルコアのリフにデスコアのヴァース、残忍なスクリームのコーラス、オリエンタルなメロディーと電子音の洪水を纏って新生 WITHIN DESTRUCTION に漂う妖気を存分に見せつけます。
ラッパーを起用した自殺志願のデスコアパーティー “Harakiri”、ニューメタリックな和の舞踏 “Hate Me” と、任天堂化した WITHIN DESTRUCTION のトラップメタルは彷徨う荒魂が浄化されるが如くバンドの狂骨へと浸透していきます。
そうしてアートの域まで高められたトラップメタルの百鬼夜行は、日本のヒップホップクルー Tyosin, Kamiyada+ が参加する “B4NGB4NG!!!” を皮切りに怪奇映画の終幕へ向けて進軍を始めます。インストゥルメンタルの “Sakura “では、プログメタルのイマジネーションで日本への憧憬を煽り、エレクトロニクスがアンビエントに鳴り響く “Tokoyo-No-Kuni “で文字通りリスナーは古代日本で信仰された不老不死の理想郷 “常世の国” へと導かれました。
今回弊誌では、バンドの心臓でドラマー Luka Vezzosi にインタビューを行うことが出来ました。「僕はゲームやアニメが大好きだから、ツアーで日本にいるときはいつも出来るだけ多くのオタクショップに行っているよ。日本には知られていないような小さなお店がたくさんあって、存在すら知らなかったようなものを見つけることができるからね。唯一の問題は、買ったものをどうやって飛行機で家に持ち帰るかということなんだ。」 どうぞ!!

WITHIN DESTRUCTION “YOKAI” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INGESTED : WHERE ONLY GODS MAY TREAD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JASON EVANS OF INGESTED !!

“The Problem Before Is That a Lot Of The Bands That Were Around When Ingested Started Just Didn’t Stick It Out Through The Bad Times, The Years When Metal Wasn’t Quite As Popular. It’s Nice To See The Scene Flourishing Again, When The UK Metal Scene Is In Full Swing, It’s One Of The Best In The World.”

DISC REVIEW “WHERE ONLY GODS MAY TREAD”

「今の UK シーンには本当に才能があって努力しているバンドがたくさんいるからね。英国において問題だったのは、INGESTED が始まった頃にいたバンドの多くが、メタルがそれほど人気がなかった悪い時代を乗り越えようと頑張らなかったことなんだ。」
LOATHE, VENOM PRISON, EMPLOYED TO SERVE, SVALBARD。2020年。デスメタルの強烈なカムバックを支え、デスコアの鋭き毒牙を研ぎ澄ますのは、疑問の余地もなく英国の若武者たちです。そうして様々な手法で音楽のリミットを解除し、境界線を排除する重音革命を最前線で牽引するのが INGESTED だと言えるでしょう。
「”デスコア” でも “スラム” でも何でもいいんだけど、僕たちはもう自分たちを狭いジャンルに押し込めたいとは思わないんだ。ただ、僕たちのアルバムがデスメタルのジャンルの多さを物語っているのは間違いないと思う。このアルバムにあるのはどんなエクストリームメタルのファンでも何かしら愛せる部分を見つけられる影響ばかりなんだから。」
たしかに、かつて “UK のスラムキング” と謳われた4銃士がここ数年で遂げたメタモルフォーゼの華麗さには、眼を見張るものがありました。特に、アトモスフィア、ブラッケンド、そしてメロディーのロマンチシズムを吸収したEP “Call of the Void” には次なる傑作の予感が存分に封じられていたのです。
「子供時代は完全に SLIPKNOT キッズだったんだ。”Iowa” は僕の時代で、僕の子供時代全てなんだ。FEAR FACTORY や LAMB OF GOD, PANTERA, CHIMAIRA なんかが大好きだったけど、中でも SLIPKNOT は僕の人生を変えてくれたバンドで、”Iowa” を聴いてからずっとメタルバンドになりたいと思っていたのさ。」
完成した最新作 “Where Only Gods May Tread” は予感通り、メタル世界の誰もが認めざるを得ない凄みを放っています。結局、INGESTED がメタルに再び人気を取り戻し進化へ導くための努力、多様性の実現、言いかえれば彼らの底なしの野心は、自らの心臓が送り出す凶暴な血潮をより赤々と彩るドーピングの素材にしかすぎませんでした。まさに摂取。まさに消費。真実は、根幹である暴力と狂気に対する圧倒的心酔、ルーツへの忠誠こそ、バンドの信頼性を極限まで高めているのです。
実際、オープナー “Follow the Deciever” からその無慈悲な残虐性はなんの躊躇いもなくリスナーへと襲い掛かります。ただし、INGESTED の拷問方法、地獄の責め苦は非常に多岐に渡り周到。知性際立つグルーヴの氾濫、唸り吸い叫ぶ声色の脅威、アコースティックやオリエンタルで演出するダイナミズムの落とし穴。つまりリスナーは、全身に猛攻を浴びながらも、常に新たな被虐の快楽に身を委ねることができるのです。
それでも、CROWBER/DOWN の Kirk Windstein が歌心の結晶を届ける “Another Breath” に対流するメロディーのきらめきは INGESTED にとって新たな出発点の一つでしょうし、なによりプログレッシヴで紆余曲折に満ち、ビートダウンの猛攻が蠢く過去とより思慮深くメロディックにアトモスフェリックに翼を広げる未来とのギャップを見事に埋める9分のエピック “Leap of the Faithless” はモダンメタルの可能性を完璧なまでに証明する一曲となりました。
今回弊誌では、七色のボーカル Jason Evans にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは、音楽であれ、メディアであれ、映画であれ、人生経験であれ、周りのあらゆるものに影響を受けているよね。これらのものは、人としての自分、バンドとしての僕ら、そして自分たちが作る音楽そのものを形作っているんだ。だけど、これらのものはまず消費されなければならなくて、”摂取” されなければならないんだよ。」 どうぞ!!

INGESTED “WHERE ONLY GODS MAY TREAD” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ULTHAR : PROVIDENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SHELBY LERMO OF ULTHAR !!

“None Of Our Lyrics Are Actually About H.P. Lovecraft, To Call The Album That Too. I Think There’s a Little Bit Of Lovecraft Influence In The Patterns Of Our Lyrics, But At This Point, I Think People Kind Of Assume We Are This “Lovecraft Band”, When Really, We Don’t Have That Much Attachment.”

DISC REVIEW “PROVIDENCE”

「ある意味面白いよね。だって僕たちの歌詞は、アルバムにしたって Lovecraft についてのものはないんだから。歌詞のパターンに少し Lovecraft の影響があるかもしれないけど、みんなが僕らを “ラブクラフトバンド” と確信しているのは驚きだよ。」
名状し難きアートワーク、著作 “The Cats of Ulthar”, 出身地 “Providence”。点と点を結び合せ、誰もが “ラヴクラフトメタル” の新境地と心躍らせた ULTHAR。しかし、ギタリスト Shelby Lermo はバンドとラヴクラフトの密接な繋がりを否定してみせました。それは、文豪が心に秘めた真なるホラー、人間の偏見や差別こそが狂気の最高峰という想いに奇しくもシンクロした結果なのかもしれません。
MASTERY, VASTUM, MUTILATION RITES。カルトでカオスなブラック/デスメタルの異能が集結した ULTHAR が、シーンの注目を集めたのはある種の必然と言えました。何より、2018年のデビュー作 “Cosmovore” には、野生的で生々しく、しかしメロディックかつテクニカルな “ブラッケンドデスメタル” の魅力が存分に注入されていましたから。
特筆すべきは、伝統と実験性の巧みなバランスが彼らの異端を現実という鏡に映し出している点でしょう。複雑怪奇を極めながら耳に馴染む絶佳の宇宙。さながら百鬼夜行のような 20 Back Spin レーベルにおいても、ULTHAR の奇妙は現実に根ざしていて、じわじわと冷や汗が吹き出すようなサイコホラーを演出しています。
「審美的に、僕たちの音楽にとてもマッチしているのは確かだよ。グロテスクで、煩雑で、複雑で、奇妙だよね。」
そうしてカオスとアトモスフィアをより深く探求し、ホラー映画のメタルを突き詰めた進化の一枚こそ最新作 “Providence” でしょう。一切妥協を許さない成功緻密な凶美のカバーアートは、アルバムの音の葉を厳かに暗示しています。
ULTHAR の三者がシンセやエフェクト、エレクトロニックなアプローチに障壁を築かなかったことも、メタルのホラー映画をよりシネマティックでドラマティックな狂気へと近づけました。不吉極まるアンビエンスとエイリアンの蠢きに端を発する “Through Downward Dynasties” を聴けば、ANAAL NATHRAKH のクロスオーバーな遺伝子を着実に受け継いだ地獄の蜃気楼を目にするはずです。
“Undying Spear” はより鮮明にラブクラフトの情景を宿します。得体の知れないグロテスクな毒ほど人の心を惹きつけます。仏教的な諸行無常の響きを忍ばせたアルバムで、中央アジアの喉歌をイントロに抱く楽曲は、神秘と怪奇を壮大なエピックとして描き出していきます。
テクニカルかつプログレッシブなアコースティックの死の舞踏、おどろおどろしいファンファーレ、ブラッケンドデスメタルの猛攻、ドゥームの奈落。あまりに絶対的な不死の武具は、絶え間なくその姿を変えながらただリスナーの胸を貫いて不吉な場所に制止し続けるのです。
GORGUTS から DEATH へと病巣が移り行くリフマッドネスの中、シアトリカルなボーカルの奔放で狂った天啓を導く “Providence”、CELTIC FROST と MAYHEM の凶暴なキメラ “Furnace Hibernation” と、混沌や残虐、変拍子に不協和音さえ魂を揺さぶり記憶に残る ULTHAR の台本はすでに “真なるホラー” の領域に達しているはずです。
今回弊誌では、Shelby Lermo にインタビューを行うことが出来ました。「明らかにブラックメタルやデスメタルのサウンドは多いから、それが関連しているんだろうな。でも、他にもたくさんの要素があるんだ。 全体として、僕らは ULTHAR のように聞こえるだけだと思うんだけど、人々はラベルを付ける必要があるし、”ブラッケンドデスメタル “というのは一定の効果があると思うよ。」 どうぞ!!

ULTHAR “PROVIDENCE” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PYRRHON : ABSCESS TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DOUG MOORE OF PYRRHON !!

“A Good First Step In Driving Bad Actors Out Of Metal Would Be To Foster a Stronger Appreciation Of Lyrics. It’s Still Very Common To See Metal Fans With Broadly Progressive Values Accepting Truly Vile Ideologies From Bands They Like Because “You Can’t Understand The Lyrics Anyway” And “The Riffs Are Sick, So Who Cares,” And So Forth. Perhaps It’s Worth Paying More Attention To What Your Favorite Band Is Screaming At You.”

PYRRHON “ABSCESS TIME”

「NYC のバンドに透徹する哲学は、ジャンルをミックスしたり、音楽的な分野を融合させたりすることに意欲的であること。 この特徴は、ニューヨークが “メルティングポット” “坩堝” としての地位を築いてきたことの賜物で、様々なバックグラウンドを持つ人々やアイデアが混ざり合っているからね。」
分裂と流動の時代極まるエクストリームメタル。革命的なアイデア、脳髄を溶かすサウンド、野生的な実験の黄金三角形は、ニューヨークが震源地です。IMPERIAL TRIUMPHANT, LITURGY, ANCION, DYSRHYTHMIA。ジャンルを開拓再定義するような異能が蠢く中で、ブラックメタルの冒険を牽引する KRALLICE の平行線に位置する、大胆不敵なデスメタルの探窟家こそ PYRRHON でしょう。
「古いバンドのサウンドを真似するだけでは時間の無駄だと思えるね。デスメタルをプレイするのは難しいんだ。そんな難しい音楽をプレイするのに、なぜ自己表現をしないんだい? 」
OSDM リバイバルで活況を見せている昨今のデスメタルシーン。しかし、PYRRHON はその動きから一定の距離を置いています。もちろん、MORBID ANGEL や GORGUTS, CYNIC といった巨人の実験精神、創造性とたしかにチャネリングしながら、エクストリームミュージックの自己実現にむけてただ真摯に邪悪と哲学を磨きあげていくのです。
「デスメタルは、限界まで自分を追い込みたい、今までにないことに挑戦したいと思っているミュージシャンを惹きつける特別な音楽の形だと思うからね。」
TODAY IS THE DAY のアヴァンギャルドノイズ、CAR BOMB のマスコアミューテーション、GORGUTS のプログレッシブアグレッシブ。たしかに、PYRRHON の音風景をジクソーパズルのように分解して掘り下げることも可能でしょう。ただし、彼らの真髄は決してモザイクタイルを貼り合わせて創り上げる、高尚で機械的な壁画のアートにはありません。
なぜなら、時に不自然で突拍子もないように思える異端のピースが、PYRRHON の音楽をむしろ自然で有機的な太古の海へと誘っているからです。ゆえに、人工的で機械化されたテックメタルの不協和も、彼らの手にかかれば狂骨から溶け出す原始のスープへとその姿を変えていきます。
ある意味、PYRRHON が醸し出す奇妙の原点はジャズのインプロビゼーションなのかもしれませんね。言ってみれば、物理学の実験のために複雑な数学の方程式を解くことが一般的なプログレッシブデスメタルの常識だとすれば、彼らはそれをアシッドトリップの最中にやり遂げることを本懐としているのです。
「現在アメリカを飲み込んでいるこの複雑な危機は、約10年前から避けられないように僕には見えていたんだよ。それは単純に、皮膚の下で化膿している病気がいつ表に出てくるかという問題だったのさ。それがアルバムタイトルの由来だよ。」
最新作 “Abscess Time” “化膿の時” に反映されたのは、システムが朽ち果て国の程さえなさなくなった今のアメリカひいては世界です。インタビューに答えてくれたボーカリスト Doug Moore は、そんな潜伏していた膿を反映した偏見渦巻くメタル世界だからこそ、歌詞を深く理解して自分の頭で考えてほしいと訴えます。
もはや、リフがよければ別にとか、どうせ何叫んでるかわかんねーしで許される時代は過ぎ去ったとも言えるでしょう。それはある意味、誰がなっても同じと選挙権を放棄する行動に似ているのかもしれません。結局は因果応報、すべては自身に返ってくるのですから。
そうして完成した最高傑作は、Doug の言葉を借りれば “忍耐と反復” のカオス。スピーカーから不気味な膿が溢れ出すようなミニマルな混乱の中で、獰猛さと重圧を保ちながらしかし構成の妙を一層極めたアルバムは、過去の3作と比較してより直線的なリスニング体験を可能としています。
我々はただ、作曲と即興、残虐と窒息、可解と不可解、混沌と解放、血液と膿の境もわからず立ち尽くすのみ。KRALLICE の鬼才 Colin Marston がプロデュースを行ったことも、決して偶然ではないでしょう。
ピュロンとは古代ギリシャ初の懐疑論者。すべてを吟味しあらゆる独断を排除する者。今回弊誌では、エクストリームシーンきっての語り部 Doug Moore にインタビューを行うことができました。「僕の考えだけど、”悪い役者” をメタルから追い出すためのより良い第一歩は、歌詞への理解を深めることだと思うんだ。幅広く進歩的な価値観を持つメタルファンでも、好きなバンドの本当に下劣なイデオロギーを “どうせ歌詞なんて何叫んでるかわかんねーから” とか “リフが最高なら気にしない” などと受け入れてしまうのは、今でもよく見かける光景だよね。自分の好きなバンドが何を叫んでいるのか、もっと注意を払う必要や価値があるのかもしれないよ。」 どうぞ!!

PYRRHON “ABSCESS TIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRYPTIC SHIFT : VISITATIONS FROM ENCELADUS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RYAN SHEPERSON OF CRYPTIC SHIFT !!

“We Love Voivod, Especially The Records “Killing Technology” And “Dimension Hatross”. Those Records, Along Side Nocturnus “Thresholds” Really Showed Us How It Was Possible To Write a Massive Sci-Fi Tale Within a Metal Record.”

DISC REVIEW “VISITATIONS FROM ENCELADUS”

「僕たちは VOIVOD を愛していて、特に “Killing Technology” と “Dimension Hatross” がお気に入りなんだ。NOCTURNUS の “Thresholds”と並んで、この2枚はメタルレコードの中に大規模なSFの物語を書くことが可能であることを教えてくれたんだ。」
英国で最も奇妙かつ革新的な “フェノメナルテクノロジカルアストロデスアーティスト” CRYPTIC SHIFT。VOIVOD や VEKTOR のコズミックな SF スラッシュメタルと、MORBID ANGEL や GORGUTS のおどろおどろしい猟奇的デスメタルを完膚なきまでに融合させる彼らのやり方は、メタルの仄暗いファンタジーをさらにまた一歩推し進めます。
「CRYPTIC SHIFT はスラッシュ/デスメタルの境界を押し広げることを目指している一方で、広義のメタルシーンにおけるソングライティングと創造的なコンセプトのストーリーライティングの境界線をも押し広げることも目指していると言えるだろうな。2020年にスラッシュとデスメタルを推進している素晴らしいバンドはたくさんあるけど、プログレッシヴでテクニカルなSFソングライティングを推し進めているバンドはそれほど多くはないからね。」
BLOOD INCANTATION, TOMB MOLD が昨年放った2枚のレコードは、20年代のメタルが向かう先をある種予見するような作品でした。オールドスクールデスメタルの遺伝子を濃密に受け継ぎながら、奇々怪界なサイエンスフィクションをテーマに仰ぎ、サイケデリックにストーナー、プログレッシブと多様な音の葉を纏う異次元の世界線。
CRYPTIC SHIFT のデビュー作 “Visitations from Enceladus” は彼らの異形とシンクロしながら、スラッシュメタルのメカニカルな衝動と長編の空想宇宙小説を衝突させ、メタルの核融合を誘発しているのです。
「”Moonbelt Immolator” は歌詞の中にストーリーがあるから長い曲になることはわかっていたんだけど、トラックをまとめるうちに、どんどん長くなっていったんだ。ただそれを恐れてはいなかったよ。」
その華々しき化学反応の証明こそ、26分の宇宙譚、オープナー “Moonbelt Immolator” でしょう。Away の正当後継者 Ryan の言葉通り、恐れを知らない SF メタルの開拓者は、26分を6つの独立した楽章に分割してスリリングで摩訶不思議な空の物語を描き切ってみせました。そのオペラ的な手法は、ただメタルのエピックというよりも、RUSH の “2112” や “Hemispheres” と同等の性質を持つ叙事詩という方が適切なのかもしれませんね。
重要なのは、CRYPTIC SHIFT がプログレッシブなデスメタルやテクニカルなスラッシュメタルが切望する音符の密度、激しいダンスを少しも損なうことなく、全体をホログラフィックに見渡せる抜きん出た俯瞰の構成力を身につけている点でしょう。
ゆえに、デス/スラッシュの単純な枠を超え、ドゥーム、ジャズ、ノイズ、アンビエントのタトゥーが音肌の上に絶え間なく露出を続ける不浄のオベリスクでありながら、決して彼らの宇宙譚は量子力学レベルの理解不能な方程式に収まってはいないのです。
つまり、宇宙的な和音、歪んだAI言語、洗練と粗野のバランスが絶妙なd-beatとブラスト、多面的なキャラクターを宿すデスボイス、不協和を恐れないギターに絡みつく蛇のようなフレットレスベース、その全てがメタル世界の大衆を観客に迎えた舞台 “エンセラドゥスからの来訪者” を彩る小道具にすぎないと言えるのかもしれませんね。
逆にいえば、耳障りになりかねない不協和音、ノイズ、グロウルにブラストビートも、CRYPTIC SHIFT の手にかかれば生命力に満ち溢れたキャッチーな舞台装置へと変化を遂げるのです。
ある意味、エレクトロニカを大胆に咀嚼した NOCTURNUS を VOIVOD と並んで崇拝する理由もそこにあるのかもしれません。ATHEIST, PESTILENCE, MARTYR に SADUS。全ての奇妙は物語のために。
今回弊誌では、ドラムス Ryan Sheperson にインタビューを行うことができました。「僕とXanderは信じられないほどのスター・ウォーズの大ファンで、その全てが大好きなんだよ。 おそらく夕食を食べた回数よりも多く、スター・ウォーズの最初の6作品を観ているだろうな。好きな順番をつけるなら、I、VI、V、IV、III、IIかな。 “ファントム・メナス” が一番好きだと嫌われるかもしれないけど、それはきっと世代の問題だろう。」 どうぞ。

CRYPTIC SHIFT “VISITATIONS FROM ENCELADUS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ULCERATE : STARE INTO DEATH AND BE STILL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMIE SAINT MERAT OF ULCERATE!!

“We Knew Early On That We Needed To Capitalise On a Far Greater Sense Of Melody Than We Ever Had Before, And Really Challenge Our Own Intuitions.”

DISC REVIEW “STARE INTO DEATH AND BE STILL”

「早い段階で、これまでよりもさらに強くメロディのセンスを活用して、自分たちの直感に挑戦する必要があると気付いたんだ」
テクニカルかつアトモスフェリックなデスメタルとして高い評価を得ているUlcerate。その6作目となる『Stare Into Death And Be Still』は、彼らにとっては挑戦的な作品となりました。20年以上のバンド生活で養った本能は、いつしか「混沌」や「醜さ」「汚さ」に偏っていたようです。その偏りを「雪崩のように大量の素材を書いては捨てた」ことで洗い流したあとに芽生えてきた、異質なリフやパターン。そこには「力」や「美しさ」「明瞭さ」がはっきりと宿っていました。
彼らはその異質さをしっかりと捉え、さまざまな角度から強化していきます。もっともわかりやすいのがプロダクションの方向性でしょう。「今回のライティングとプリプロダクションの哲学は、混沌よりも力を優先すること」。そう語るJamieのことば通り、本作の音は明瞭で太く、暖かみさえ感じます。また、彼のドラミングにも変化がありました。メタルからジャズ、ファンクと、さまざまなジャンルのドラマーからそのスタイルを吸収してきたエクストリームメタル界きっての名手の彼ですが、本作では人生の大半をかけて磨いてきたそのテクニックを抑制し、曲そのものを活かすパフォーマンスを志向したのです。
彼らにとっては挑戦的なこうした変化は、リスナーにとってはむしろ“親しみやすい”作風に変化したと感じられるかもしれません。ただし、その親しみやすさは『Stare into Death and Be Still』というタイトルに接続しています。「死への畏敬」。死は常に突然に、暴力的にやってくるものではなく、ときには冷静にはっきりと観察せざるを得ない。そうした「穏やかな恐怖」とでもいうべき感情が、そしてそれに立ち向かうための意志が、「混沌」から「力」へと向かった彼らの作品には宿っています。
「もし『音としてはよいが意味がわからない』歌詞だったり、テキストとしては出来がよくてもフレーズがひどい歌詞だったりしたら、何の役にも立たないからね」。その通り、本作のテキストとそのサウンドは、楽曲と高度に一致しています。
このように、彼らは各要素を綿密に調整して作品を作っています。しかし、その綿密さは、あくまで彼らの精神と肉体から生み出されたものでなければなりません。「自分が演奏しているものが最終的な品物であること意識する」。コンピューターによる演奏の修正や数値管理を否定し、ライン入力ではなく部屋録りを志向する彼らの作品が、整理されたテクニカルさではなく、うねるようなグルーヴと、真に迫るアトモスフィアをまとっているのはうなずけます。
曲、歌詞、演奏、レコーディング、プロダクション……彼らの哲学のもとに、それらすべてが生々しく一体化したデスメタルの名盤がここに誕生しました。今回弊誌では、ドラマーのJamie Saint Meratにインタビューを行うことができました。「完璧は芸術の敵だ」。どうぞ!

WORDS & INTERVIEW BY 江戸大  (DECAYED SUN RECORDS )

ULCERATE “STARE INTO DEATH AND BE STILL” 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE BLACK DAHLIA MURDER : VERMINOUS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TREVOR STRNAD OF THE BLACK DAHLIA MURDER !!

“We Did Come Up During The Age Of Swedish Influenced Metalcore ala As I Lay Dying, Unearth, etc And Did Get Lumped In With That Genre a Lot But I Don’t Personally Believe We’ve Ever Been That. It’s Always been Death Metal To Me. “

DISC REVIEW “VERMINOUS”

「僕たちが登場したのは AS I LAY DYING とか UNEARTH のようなスウェーデンの影響を受けたメタルコアが勃興した時期だったね。そして確かにメタルコアのジャンルによく分類されてきたよ。
だけど、個人的には僕たちがメタルコアだったことはないと信じているんだ。ただずっとデスメタルであり続けただけなんだ。」
THE BLACK DAHLIA MURDER のおよそ20年のキャリアは、誤解を振りほどくための飽くなき闘争だったのかもしれません。無残な猟奇事件の被害者、ブラックダリアの名を冠するデスメタルバンドにとって、登場した時期、場所、人脈すべてが本質とは少しずつかけ離れ理想と乖離しながら得た名声は、70年前の事件と同様ミステリーだったのかも知れませんね。
ただしバンド、いやもやはメタルシーン全体のご意見番として定着した Trevor Strnad がデスメタルのタグに拘るのは、メタルコアのフォーミュレイクな音楽性云々以前に、アンダーグラウンドメタルへの深い愛情が理由であるはずです。
「だって僕たちはアンダーグラウンドミュージックを愛しているからね。僕たちの音楽はアンダーグラウンドミュージックへのトリビュートさ。僕たちが達成した成功は、自分たち自身の条件に妥協することなく基づいているからね。」
BRING ME THE HORIZON が恐れなきその眼差しでジェネリックポップを抱きしめ自らの理想をメタルの新聖歌へ昇華したのとは対照的に、THE BLACK DAHLIA MURDER はエクストリームであり続けアンダーグラウンドを追求することで自らの理想を鋼鉄の大樹へと刻むのです。
「僕たちのメタル文化は社会の大部分から過小評価されているけど、計り知れない強さを持ち、宗教の束縛なしで自由に生きることができるコミュニティーなんだ。」
Trevor にとって、理想的なメタルヘッズとは今でも主流の対岸に位置し、偏見なく音楽ひいては社会の常識や欺瞞を疑う監視者。つまり、権力や主流派にとっては知識という疫病を運ぶ害虫であるべきなのでしょう。ゆえに、当然 “Verminous” “害虫” の名を冠した最新作は新たな反抗の幕開けです。
「僕はこのバンドが何年もかけてより3次元的なサウンドへ、自然に進化を遂げていったと思っているんだ。だから今ではバンドとしてダイナミズムを出すために何をするべきか完全に理解しているんだよ。まさに多様性の力だね。」
あの運指マシーン Ryan Knight を凌ぐほどに燦然と輝く Brandon Ellis の加入と共に前作 “Nightbringers” で芽生えた創造の羽は、”Verminous” において漆黒の大翼として下水道の闇に君臨します。
皮肉にも、”形式的” “一辺倒” を揶揄するために TBDM を含むかつてのメタルコア一派が称された “任天堂サウンド” は、彼らの臓腑の奥底でゲーム音楽が本来有するダイナミズムと万華鏡の音の葉を強調し始めることになったのです。
「確実に僕の書く歌詞はロールプレイングゲームのファンタジーサイドから影響を受けているよね。任天堂のクラッシックなゲーム音楽はメタルと様々な相似点が存在するし、僕たちが書いている音楽もそこから影響を受けているんだよ。」
ドラマティックでシネマティック、より感情的に喚起される作品が書きたかったと語る Trevor。実際、”Verminous” は切り裂きジャックや吸血鬼が主人公ですが、彼が敬愛するドラゴンクエストやファイナルファンタジーに勝るとも劣らないファンタジックな猟奇譚で、好奇のローラーコースターでしょう。
メロディックデスメタルはもちろん、スラッシュ、プログレッシブ、クラシカル、さらにはドゥームの鼓動まで感じさせるレコードのカラフルでムーディー、カリスマティックなイメージは、洗練と地下水脈をまたにかける THE BLACK DAHLIA MURDER にのみ許された秘伝、調合の魔法に違いありません。同時に、体内の害虫は貪欲にに肌を食い破り、変わらぬ凶暴を見せつけるのです。
今回弊誌では、Trevor Strnad にインタビューを行うことができました。「僕は特にレトロゲームを愛しているんだ。フェイバリットは、ドラゴンクエストとファイナルファンタジーシリーズだね。昔の16bit とか 8bit の時代が大好きなのさ。
ゲーム機ならファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ (セガ) が絶対的に好みだね。中でもオリジナルのファミコンが最高さ!」 どうぞ!!

THE BLACK DAHLIA MURDER “VERMINOUS” : 9.9/10

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