NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ART OF ANARCHY : THE MADNESS】BUMBLEFOOT SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RON “BUMBLEFOOT” THAL !!

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Mega-Super Group, Art Of Anarchy Seek To Reinvent Themselves From 90’s Glory, With New Masterpiece “The Madness” !!

DISC REVIEW “THE MADNESS”

90’s~00’s にかけて人気を博した “オルタナティブメタル” の空気をリフレッシュし、見事現代へと再誕させる US スーパーグループ ART OF ANARCHY が、傑出した2ndアルバム “The Madness” をリリースしました!!極上のコンポジションに5人の個性が溶け合った揺るぎなきロックのメタモルフォーゼは、極限まで多様化したシーンに王道の何たるかを見せつけています。
ART OF ANARCHY は、ギターとドラムスをプレイする双子の Votta 兄弟と、GUNS N’ ROSES で気を吐いていたマエストロ Ron “Bumblefoot” Thal が意気投合し始まったバンドです。そこに、STONE TEMPLE PILOTS や VELVET REVOLVER で活躍した天賦のシンガー Scott Weiland, DISTURBED の切れ味鋭いベースマン John Moyer が加わることで、大きな注目と期待を集めるメガアクトが誕生したのです。バンド全員のレコードセールス(当時)は1億5000万枚と言うのですから、数字の面からも彼らの凄みは伝わるでしょう。
セルフタイトルのデビュー作をリリース後、Weiland はバンドを脱退。アルバムをプロモートするツアーを拒否した彼は結局、人生を通じて苦しんできた薬物との戦いに敗北し、命を落としてしまいました。
バンドは Weiland の後任に CREED の Scott Stapp を指名します。実は2014年には Stapp も薬物問題、さらには路上生活にまで転落するなど負の話題で世間を騒がせましたが、彼は挑戦し困難に打ち勝ちました。そして Weiland と同様、まさに時代の寵児として活躍した Stapp の加入は再度バンドのエンジンに屈強なエナジーを注ぐ結果となったのです。
“The Madness” には、ただスーパーグループという事実以上のケミストリー、そしてメッセージ性が間違いなく存在します。Ron がインタビューで語ってくれた通り、Votta 兄弟のアリーナロック、DISTURBED の鋭利でマスマティカルなリフワーク、CREED の瑞々しく雄大なメロディー、そして Bumblefoot、もしくは “Chinese Democracy” の型破りで独創的なアイデア全ては淀みなく渾融し、濃密なマグマとなって作品を流動します。
オルタナティブが王道へと以降した21世紀初頭のソリッドな空気を DNA に深く刻んだ5人の古兵たちは、しかし同時に時代の推移により”オルタナティブであること” から遂に解放され、その雄弁なコンポジション、華麗なテクニック、そして唯一無二のタレント性を制限なくここに開花させているのです。
また、アルバムタイトル “The Madness” が表象するように、作品にはまさに Stapp が苦しんできた”狂気”がそのまま描かれています。新たなアンセム “1,000 Dgrees” では「僕自身が最悪の敵だ。僕は呪われている。」と当時の地獄を独白し、至上のバラード “Changed Man” では「もう一度チャンスをくれないか?僕は変わったんだ。家に帰る時が来たんだよ。」と最愛の妻に過去の自分との決別を告げます。果たして妻は “With Arms Wide Open” で待っていてくれたのでしょうか?
とにかく、”僕たちはこのアルバムを Scott、そして同じチャレンジに直面する人たちの成功に捧げることとしたんだ” と Ron が語るように、作品はアメリカが抱える大きく暗い闇に対する贖いとして生を受けました。自身の魂を声と詩に宿した Stapp の歌唱には深みとリアルが込められ、その美しく、切なく、雄々しく、そして芳醇なメロディーは懺悔であり赦しであり、希望の灯火でもあるように聞こえます。
アルバムの主役は間違いなく Stapp ですが、Ron のトリッキーでカラフルなギターワークが作品にクリエイティブで類まれなる神通力のようなフックをもたらし続けていることは記して置かなければなりませんね。
指ぬき、フレットレス、ロングスケールなど様々な武器を持つ “Bumblefoot” ですが、インタビューでも語ってくれたように彼は決して楽曲の破壊者ではありません。ソロプロジェクト、ガンズ時代を通して歌ものに強い拘りを持ち、エモーショナルで耳に残りリピートを誘うギターフレーズを追い求めてきた彼の真価は “Somber” のアメジストのように燐光を発するソロパートに集約されているのかもしれませんね。
王道とは何か。彼らの”王道”の先には必ず唯一、アリーナでシンガロングし、拳を振り上げるファンの姿が透けて見えます。彼らにはもはやトレンドを意識する必要などありません。ただ、キャッチーでフックと起伏に満ちたアルバムは、エゴを廃し全てが楽曲とストーリーに捧げられ、世代を超えて愛される魔法を備えた新たな栄光への幕開けであると信じます。
今回弊誌では、Ron “Bumblefoot” Thal にインタビューを行うことが出来ました。余談ですが、再発が決定した彼の2ndアルバム “Hermit” もぜひ併せて聴いていただきたいと思います。変態としてのみ語られがちな彼ですが、FAITH NO MORE や RAGE AGAINST THE MACHINE のインテンスと独特のポップセンス、そしてユニークなギターファンタジーをミックスした極上のコンポジションが炸裂した名作。どうぞ!!

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ART OF ANARCHY “THE MADNESS” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KXM : SCATTERBRAIN】GEORGE LYNCH SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GEORGE LYNCH OF KXM !!

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On “Scatterbrain”, Tight And Energetic Performance Of KXM’s Three Giants Will Tell You What The Musicianship, Creativity Is !!

DISC REVIEW “SCATTERBRAIN”

Ray Luzier (KORN)、 dUg Pinnick (KING’S X)、そして George Lynch (LYNCH MOB) というシーンの英傑3名が集結したスーパーバンド KXM が新作 “Scatterbrain” をリリースしました!!三雄の魂が通い合い、個性が溶け合った秀絶な作品は、ロックの持つオーガニックな衝動と、知性を擽るエキサイトメントを織り込みリスナーの直感へと波動するはずです。
“Scatterbrain” は僅か12日間という短い期間で制作されたレコードです。インタビューで George は「もしもさらに時間をかけていたら、いったいどんなものが完成していたのかと考えると、恐ろしいくらいだよ!」 と語ってくれましたが、同時に70年代を思わせる短期集中形のクリエイティブ環境が作品にマジックを産んだとも言えるような気がしますね。
スライドバーを使用したブルースの響きから一転、アルバムはインテンスとカオスが支配するタイトルトラック “Scatterbrain” でその幕を開けます。Ray Luzier の操る不敵な変拍子は George Lynch のシャープで粋なリフワークと共鳴し、その潮流はプログレッシブとさえ言えるムードを創造していますね。ペースダウンし、凪の静穏を献ずる中間部では、Mr. Scary がブルースの熱情を宿した魂魄のシュレッドで楽曲に生命を吹き込み、バンドの破天荒な技巧を伝えています。
“Breakout” や “Big Sky Country” を聴けば、dUg Pinnick の一筋縄ではいかないソウルフルでポップな独特の流儀、歌唱が驚くほど作品にフィットしていることが分かるでしょう。ダークに鬱屈したメロディーが得意のハーモニーを重ねてポップに花開く瞬間。直感的に楽曲を解釈し、ボーカルラインを自然とインプロヴァイズに導く瞬間。そして激情に任せ、咆哮に情念を乗せる瞬間。dUg の持つ類稀なセンスはスポンテニアスにトリオの鼓動と呼応し、無上のカタルシスをリスナーの元へともたらすのです。
同時に、”Breakout” で Ray が魅せる、パーカッションを使用したエスニックなサウンドはデビュー作から進化した KXM の潤色です。ロック、メタル、プログ、ファンク、ブルース、オルタナティブが淀みなく循環する多様な “Scatterbrain” の中で、ワールドミュージックからの影響は確実にアルバムを更に一段上のレベルへと押し上げています。
情熱と哀愁を湛えた dUg の歌唱が光る “Calypso”、カリブの風、グルーヴに乗る George のシュレッドが新鮮な “Not A Single Word” は殊更に、バンドがラテンやレゲエのリズム、モチーフを探求し血肉としていることの証明だと言えますね。
KING’S X でもエクレクテイックなサウンドをトレードマークとする dUg。David Lee Roth, STEEL PANTHER, STONE TEMPLE PILOTS で華々しく経歴を重ね、MI で教鞭もとっていた知性派 Ray。そしてインタビューでも語ってくれた通り、新たな領域へと自己を導き続ける George。ダイナミックなハードロックのルーツの上で、エキゾチックなダンスを華麗に披露する KXM 固有のサウンドは、3人の個性と手練、そしてフロンティアスピリットが結実しシンクロした成果だと言えるでしょう。
エキサイティングでエネルギーに満ちたアルバムは意外にも、ヘンドリックスの遺伝子を受け継いだブルージーなララバイ “Angel” で静かに幕を閉じます。無類で奇抜なタイム感、鋭くアウトやインを繰り返す異端のスリル、瞬間の奇跡。”Scatterbrain” における George のギターワークは近年でも群を抜いていますが、Jeff Healey をも想起させるエモーションを纏った “Angel” のリードは彼が未だに第一人者であることを、改めてシーンに宣言しています。
今回弊誌では George Lynch にインタビューを行うことが出来ました。DOKKEN のリユニオンについても重大な内容を語ってくれています。どうぞ!!

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KXM “SCATTERBRAIN” 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NOVA COLLECTIVE : THE FURTHER SIDE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAN BRIGGS OF NOVA COLLECTIVE !!

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The Brilliant Musical Marriage Between The 70’s Fusion And Modern Prog. Definitely, Super Group Of Prog, Nova Collective Has Just Released One Of The Best Instrumental Record Of The Year, Incredible Debut, “The Further Side” !!

DISC REVIEW “THE FURTHER SIDE”

“新たな集合体” の名を冠するインストゥルメンタルスーパーバンド NOVA COLLECTIVE が、超越的でモニュメンタルなデビュー作 “The Further Side” をリリースしました!! 既成観念の “向こう側” へと辿りついた彼らの音風景は、リスナーを永遠の旅路、ミュージカルジャーニーへと誘うことでしょう。
Dan Briggs (BETWEEN THE BURIED AND ME), Richard Henshall (HAKEN), Matt Lynch (TRIOSCAPES, ex-CYNIC), Pete Jones (ex- HAKEN) というまさにモダンプログレッシブを象徴する賢哲が参集した NOVA COLLECTIVE。彼らが宿した清新なる息吹は、音楽が最も革新的で創造的だった70年代の空気を濃密に吸い込み、芸術のあり方を純粋に示しています。
1970年に Miles Davis がリリースした “Bitches Brew” は、音楽史上最も輝かしいロックとジャズの婚姻だったと言えます。”The Further Side” は、”フュージョン” という音楽概念を定義した、多様でイマジネイティブなその”マイルストーン”の精神を、凛として現代へと継承した畢生の作となりました。
アルバムは、ロシアのロマンティックかつダイナミックなバレエを想起させる “Dancing Machine” でその幕を開けます。メカニカルな BTBAM とは趣を異にする、野性的でファットな Dan Briggs のベースラインはオーガニックなボトムで自由を謳歌し、ジャズとロック、そしてメタルを華麗に行き来する Matt Lynch のドラムスと豪壮なインタープレイでアルバムを牽引して行きます。
Richard Hanshall のメロディアスでデリケートなギターワークは作品に浸透し、何より Pete Jones のガラス細工のように美麗で卓越したエレピ、オルガンサウンドは、リスナーに Chick Corea の形影を追わせ、過去と現代をリンクさせる鍵として枢要を占めていますね。
“Dancing Machine” に漂う神秘的でエスニックなムードは、インタビューでも語ってくれた通り、ワールドミュージックからの影響を反映しています。そして確実に John McLaughlin のコンポジションとも強く共鳴しているはずです。
“Bitches Brew” にも参加し、後に”フュージョン”を代表する集団となる THE MAHAVISHNU ORCHESTRA を創立した天賦のギタリストは、ロックとジャズのみならず、フラメンコ、オーケストラ、そしてインド音楽にまでその興味の幅を広げ、クロスオーバーさせた多様性の伝道師だと言えるでしょう。「フュージョン、ワールドミュージック、ジャズ、プログ、クラッシック。アイデアの全てはそこから来ている」 と Dan が語ってくれた通り、”The Further Side” にはあの奇跡のオーケストラと同様の血脈が流れてもいるのです。
実際、”Air” は日本の伝統楽器、琴をイメージして書かれた楽曲だと Dan は語ってくれました。そして、日本の陽春を鮮やかに切り取ったかのような、オリエンタルで麗しきそのサウンドグラフには、NOVA COLLECTIVE がサーカスではなく音楽のために集まった集団である証が克明に刻まれていますね。
確かにメンバーは全員が超絶技巧の持ち主ですが、アルバムにエゴを感じさせる陳腐な曲芸は一切存在しません。存在するのは、楽曲の一部と化したエレガントで流麗なリードパートとアンサンブルのみ。各自が秘める、描かれた設計図をグレードアップさせるようなインテリジェンス、即興の妙こそがまさに一流の証明だと感じました。
勿論、クラッシックなフュージョンサウンドが基幹を成している “The Further Side” ですが、”State of Flux” を聴けばバンドが “新たな集合体” を名乗った意味が伝わるでしょう。MESHUGGAH と同等の緊張感、ヘヴィネス、リズムの錯綜が、エレピを核とするレトロなフュージョンサウンドを伴って再現される Tigran Hamasyan も驚愕のニューフロンティアがここにはあります。70年代には存在し得なかった、正確無比なシュレッド、硬質でDjenty なリズム、そして Jamie King による極上のプロダクションは “フュージョン” の極地、最先端を提示し、彼らの存在意義を強くアピールしていますね。
アルバムは WEATHER REPORT や RETURN TO FOREVER への憧憬と、モダニズムを巧みに融合させたタイトルトラック “The Further Side” で神々しくもドラマティックにその幕を閉じます。
今回弊誌では Dan Briggs にインタビューを行うことが出来ました。彼のホームグラウンド BTBAM の “Colors” 10周年ツアーについても言及しています。どうぞ!!

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NOVA COLLECTIVE “THE FURTHER SIDE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【Li-sa-X : Serendipity】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Li-sa-X !!

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12-Year-Old Young Shred Muse From Japan, Li-sa-X Has Just Released Her Amazing Debut Album “Serendipity” !!

DISC REVIEW “SERENDIPITY”

日本に舞い降りた、若干12歳の天才美少女ギタリスト Li-sa-X が記念すべきデビュー作 “Serendipity” をリリースしました!!穢れなき天使が紡ぐ圧倒的なフレーズの数々は、世界に賛嘆の嵐を巻き起こしています。
幼少時から父親のプレイを子守唄として育った Li-sa-X は、インタビューにもあるように、5歳で本格的にギターを手にします。8歳であの Paul Gilbert に認められ、オンラインギターレッスンに特待生として招待されたというのですから、天賦の才が備わっていることに疑いの余地はないでしょう。
実際、投稿したパフォーマンス動画は世界中のギター/ロック・ファンを驚愕させ瞬く間に400万回以上の再生を記録。これまでに「へヴィメタルの未来を担う天才少女10人」(米MTV)や「将来が楽しみな名キッズ・ギタープレイヤー10選」(米VH1)、「今年(2014年)最も話題の動画1位」(米ギター・ワールド誌)などに選出されるという快挙を演じてきたのです。しかし彼女は慢心することなく日々進化を続けて来ました
。”素敵な偶然”、”予期せぬ幸運” といった意を宿す “Serendipity” というタイトルには、これまでの出会い、応援、優しさ、幸運に対する Li-sa-X からの大きな感謝が込められているのです。
アルバムは、Li-sa-X 初のオリジナルトラックにして作品のタイトル名を冠した “Serendipity” で幕を開けます。ダイナミックなリフワークにファストなリック絡める師匠 Paul Gilbert 譲りのテクニカルなテーマは、マイスター Guthrie Govan を想起させる奔放にアウトするフレージングをも伴いながらマジカルな瞬間と至上のエキサイトメントを運びます。正確なピッキングから生み出されるクリエイティブなアイデアの洪水は、12歳らしい遊び心や瑞々しい感性と一級品のテクニックを包含し、世界に新たなギターヒロインの堂々たる誕生を告げているのです。
“温故知新”。Li-sa-X が演奏家、ミュージシャンとして優れている点はその一言に集約されます。ゲストに迎えた Paul Gilbert, POLYPHIA。さらに “人生を変えた5枚のアルバム” を見れば分かるように、Mr. BIG から PERIPHERY、Guthrie Govan から Jason Richardson まで、世代を超えた色彩豊かな影響はしっかりと彼女の宇宙に血肉として根づいています。実際、トラディショナルな Instru-metal に思える “Serendipity” の中にも、中間部にはモダンで美麗なアトモスフィアをさらりと織り込み、楽曲に立体感を創出しているのですから、その感性の柔軟さには驚くばかりですね。
童謡にプログレッシブで大胆なアレンジを施したアルバムクローサー “アルプス一万尺” は、彼女の未来を約束する楽曲にも思えます。ピアノやヘヴィーリフを巧みに配置し目まぐるしくも耳を惹きつけ離さない、万華鏡のようにカラフルな一曲には、スマートかつキャッチーな清新なるギターの可能性、POLYPHIA ともシンクロするモダンな感覚が息づいています。
クリケットやハーモニクスを巧みに使用し、ニュアンスやアーティキュレーションにまで強く拘った演奏からは、”聴かせる” こと、”楽曲” にプライオリティーを置いた Li-sa-X のギターに対する凛とした考え方が伝わりますね。オリジナルを増やすという彼女の決意も実に楽しみです。
Li-sa-X ワールドへの素晴らしき招待状となった “Serendipity”。今回弊誌では彼女にインタビューを行うことが出来ました。最近ではCMでもお馴染みとなりましたね!どうぞ!!

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Li-sa-X “Serendipity” : 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DISPERSE : FOREWORD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAKUB ZYTECKI OF DispersE !!

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With “Foreword”, Poland Based Progressive Quartet, DispersE Invite You To Set Sails On A Imaginative Musical Journey !!

DISC REVIEW “FOREWORD”

“Heart of Europe”、ポーランドに降臨した、モダンプログシャイニングスター DispersE がジャンルの枷を解き放つ新たなマイルストーン “Foreword” をリリースしました!!”Progressive” というワードの真意について再考を促すような意義深き作品は、鮮やかなポップセンスとミニマルなサウンドを研ぎ澄まし、規格外のアウトラインを提示しています。
2016年に行われた DispersE 初の日本ツアー。DESTRAGE とのカップリングで大成功を収めた彼らのショウでは、新作に対する自信が顕在化していましたね。未だ作品がリリースされていないにもかかわらず、セットリストの大部分は “Foreword” からの楽曲で占められていたのですから。そこで日本のファンは、ギターと同時にサンプラーを駆使して躍動するマイスター Jakub Zytecki の姿に “Foreword” な変化の兆しを見定めることとなりました。
アルバムはイノセントな歌声をサンプリングし、審美的でアンビエンスな空気を多分に抱きしめた秀曲 “Stay” で幕を開けます。Rafal Biernacki の歌唱は傑出していて、FROST* の John Mitchell や TesseracT の Dan Tompkins にも比肩し得るほど、色鮮やかで表情豊かな歌声、旋律、ハーモニーを披露していますね。
「メタルは少々平坦に思えてきた。」 インタビューで Jakub が語る通り、このレコードには獰猛なグロウルも、Chug-Chug とした定常的なギターリフも存在しません。貫かれるのは “Progressive-Pop” とも描写可能なノスタルジックで情味のある、しかし同時に創造的なモダニズムが溢れる崇高な世界観。
多幸感に満ちヒプノティックで、光のサウンドスケープを見事に切り取った “Stay” の核心は、紛れもなくそのアトモスフェリックなサンプリングと Rafal が紡ぐポップなメロディーです。しかし Jakub のプログレッシブなセンスが惹起する、絶妙なバランス、コントラストが楽曲を新天地へと誘っていることを忘れる訳にはいきませんね。
7拍子、ポリリズムが生み出す神秘的な夢幻世界、忽然と急襲するスリリングかつテクニカルなシュレッディング。アルバムオープナーにして作品を象徴する “Stay” の新感覚はまさに革命と呼べるほどにリスナーへ驚嘆をもたらします。
新感覚と言えば、TAME IMPALA にも通じるレトロなムードを持つ”Bubbles” では、Strandberg の極限までダウンチューンしたディストーションサウンドが至高のダイナミズムを提供し、新たな個性を主張していますね。
“Tether” は、「TYCHO にはいつも心酔している」 と語る Jakub の多極化する好奇心が浮き彫りとなった楽曲かも知れませんね。エゴとは無縁の緻密でミニマルな設計図に、穏やかなエレクトロニカサウンドを乗せたドリーミーな極上のポップチューンを聴けば、確かに TYCHO の持つ瑞々しいセンスが宿っていることに気づくでしょう。新加入、達人 Mike Malyan のゴーストノート一音一音が透けて見えるほどに繊細な楽曲は、Rafal の別格でエモーショナルな歌唱を導き、音楽の本質を伝えています。
とは言えインタビューにもあるように、Jakub は決してギターへの探究、野心も捨てることはありません。アルバムで最も Djenty な “Surrender” の躍動美溢れるスリルは華麗ですし、”Sleeping Ivy” で見せるメカニカルなクリーントーンの洪水も一級品。さらに9分を超える壮大な “Does it Matter How Far” の前半部分では、サンプリングと巧みにリンクさせて純粋にチャレンジングなインストゥルメンタルミュージックを奏で、Jakub Zytecki が未だに世界トップのモダンギタリストであることを強烈なまでに証明していますね。
“Foreword” は DispersE、さらにはプログレッシブワールドにとって新たなチャプターの幕開けとなるでしょう。実際、プログレッシブロックとは様式ではなく概念であるべきです。インディーロックとクラブミュージックを巧妙にクロスオーバーさせた Bonobo は、バンドにとって或いは象徴かも知れません。自らのアイデンティティを保持したまま、TYCHO や TAME IMPALA のフレッシュな感性、インパクトを血肉とした DispersE のインテリジェントな手法は全面的に肯定されるべきだと感じました。
今回弊誌では Jakub Zytecki にインタビューを行うことが出来ました。3回目の登場となりますね。どうぞ!!

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DispersE “FOREWORD” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FELIX MARTIN : MECHANICAL NATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FELIX MARTIN!!

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Felix Martin’s Twin-Neck 14&16 Strings Guitar And Two Hand Tapping Technique Opens The New Realm Of Instru-metal Music With Incredible New Record “Mechanical Nations” !!

DISC REVIEW “MECHANICAL NATIONS”

南米ベネズエラが生んだギターウィザード Felix Martin が、ラテンの風とモダンな色彩を投影した最高傑作 “Mechanical Nations” をリリースしました!!14&16弦のダブルネックが紡ぐ鮮烈で独創的なその調べは、鸞翔鳳集な昨今の Instru-metal シーンにおいても一際光彩を放っています。
Felix の楽器は独特です。Warr Guitar や Chapman Stick など確かに10弦を超える多弦楽器は存在します。ただ、それらはベースの色合いが濃く、ベースにメロディー用の弦、レンジが付属しているといった考え方を基調としています。
対して、Felix のダブルネックギターは、インタビューにもあるように、同じレンジのギターを2つ合わせただけのある意味シンプルな構造。しかし同じレンジの7、8弦ギターを2本使用するため、既存の多弦楽器 (スケールが長い物もあるので一概には言えませんが) に比較して、よりギターの領域にフォーカスした立体的な演奏を味わうことが出来るのです。
勿論、ギターやベースに比べれば、双方のギターをタッピングで奏でるため両手の自由度は高く、遥かに多くの音を同時にプレイすることが可能。パーカッシブなピアノとも称される彼のテクニック、アプローチは、まさしくモダンギターイノベーションのフロントランナーだと言えますね。
その先鋭的なスタイルに反し、クラシカルなトリオという編成で制作された “Mechanical Nations” は、母親が手がけ、自らのギターをあしらったその芸術的で大胆なアートワークが示すように、南米大陸への深い愛情を包み込んだ芳醇な作品に仕上がりました。南米をツアーし、大陸の多種多様な都市の空気、エネルギー、文化、景観に触れた Felix は、街ごとに受けたインスピレーションを楽曲へと反映して行ったのです。
“Barquisimetal” は彼のホームタウン Barquisimeto を、そして “Canaima” はベネズエラが誇る世界最後の秘境カナイマ国立公園を心象として生まれた楽曲です。そしてアルバムでも最もメタリックかつメカニカルな、タンゴのリズムを纏った前者と、最も穏やかでノスタルジックな、フォークミュージックのイメージを具備した後者のコントラストは、そのままベネズエラの豊かな音楽文化の写し鏡となっているのです。
カリビアン、ネイティブ、 アフリカ系、ヨーロッパ系。 まさに人種のるつぼと言える社会主義国家はレゲトン、サルサ、ホローポ、ガイタ、カラカスのメレンゲなど、ロマンティックから複雑な拍子を持つ音楽までラテンミュージックを象徴する雑多なバックグラウンドを宿しています。そしてそのラテンのルーツは Felix の内面世界にも強く共鳴し、唯一無二の Instru-metal、グローバルフュージョンへと昇華しているのです。
メタル、ジャズ、プログ、ファンク、そしてラテンの雄弁なカクテルと言える “Mechanical Nations”。インタビューで語ってくれた通り、”Santos” にゲスト参加した Angel Vivaldi のリードを除いて作品にはソロパートが存在しません。それでも作品が至上のスリルを常に纏っているのは、バークリーで学んだトリオの傑出した技術と、緩急を巧みに配置したコンポジションの賜物だと言えますね。
つまり、”Eight Moon Headdress” が象徴するように、クリーントーンの詩情豊かなサウンドスケープと、エキサイティングで攻撃的なパーカッシブテクニックが目まぐるしく交互する魅力的な楽曲群は、手数の多いエキゾチックなドラミングとスラップを交えたダイナミックなベースプレイが牽引し、タイトなバンドの推進力となっているのです。
ANIMALS AS LEADERS, KING CRIMSON, PRIMUS, 或いは Stanley Jordan。Felix のマジックタッチと彼のバンドが生み出すドラマティックな芸術は、偉大な先人にも比肩し得るクオリティーと独創性を秘めています。今回弊誌では、Felix Martin にインタビューを行うことが出来ました。日本でライブを行うのか昔からの夢だそう。どうぞ!!

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FELIX MARTIN “MECHANICAL NATIONS” : 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PERSEFONE : AATHMA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CARLOS LOZANO OF PERSEFONE !!

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Andorran Prog Metal Titan, Persefone Has Just Released Infinity Technical, Highly Progressive, And Supremacy Spiritual Record “Aathma” !!

DISC REVIEW “AATHMA”

フランスとカタルーニャの狭間に位置する欧州の小国アンドラから示現した、プログメタルの俊傑 PERSEFONE が待望の新作 “Aathma” をリリースしました!!ギターチームの片翼とドラマーを刷新し、音楽性、テーマ、リリック共に陶冶され深みを増したアルバムは、すでに2017年のモダンプログシーンを代表する作品に位置づけられつつあります。
2013年にリリースした前作 “Spiritual Migration” は、技巧とロマンチシズム、幻想とアグレッションを巧妙に対置させた Tech/Prog Death Metal の佳篇であり、バンド史上最良の成功を収めたマスターワークとなりました。奔流となって押し寄せる、過密なまでに濃厚なサウンドの粒子が印象的な作品でしたね。
日本、アジアを含む長期のツアーを経て、4年という熟成期間が宿した結晶 “Aathma” は、”Spiritual Migration” に比べて、よりスピリチュアルで空間的。英俊 Jens Bogren のタクトの下、アートとしての完成度、統一感を精髄まで突き詰めた、ニューフロンティアへと到達しています。
「勇気を持って偽の自己を解放せよ。」 アルバムはスピリチュアルメタルの先駆者、CYNIC の Paul Masvidal が語りかける哲学的なスポークン・ワードで幕を開けます。インタビューにもあるように、”Aathma” とは魂の探求。全てが白か黒に分類される、性急で物質的な現代社会に対するアンチテーゼ。リスナーは Paul の言葉に導かれ、PERSEFONE の深遠なる精神世界へと誘引されて行くのです。
小曲 “One of Many…” でバンドは作品のシンフォニックでメロディアスな世界観を暗示し、ドラマティックな “Prison Skin” へと進行します。ミステリアスで優美なピアノの調べから一転、速急でテクニカルなリフワーク、ダブルギターとキーボードが織り成す濃密なサウンド、複雑で緻密なリズムアプローチ、そして Marc Martins の激烈なガテラルが PERSEFONE の帰還を高らかに告げると、同時に楽曲はバンドの二面性をも明瞭に開示するのです。
今回、キーボーディストでクリーンボーカル、Miguel “Moe” Espinosa のタスク、重要性は確実に過去作を遥かに凌いでいると言えます。ポストロックの影響すら感じさせるアトモスフェリックで幽玄な “Cosmic Walkers” はその象徴でしょう。”Prison Skin” では典型的な PERSEFONE の顔と、Moe が躍動することで生まれる、スペーシーでメロディアスなテリトリーを調和させ、緩急織り交ぜたスリリングなキラーチューンへと昇華しているのです。
再度 Paul Masvidal が登場し、特徴的なボコーダーとリードギターを聴かせる “Living Waves” はアルバムのハイライトだと言えるでしょう。Djenty とも形容出来るモダンで幾何学的なギターリフと、色彩を抑えた淡彩のシンセサウンドが創造するスピリチュアルメタルに、崇高で凛としたメロディーがレイヤーされると、そこには現代社会とは最も離れた場所にある観念的な夢幻世界が広がります。Paul と Moe のボーカルパフォーマンスは傑出していて、リスナーの深層心理に語りかけるような宗教的崇高感すら感じさせますね。
アルバムは4部編成、20分のエピカルなタイトルトラックで幕を閉じます。インタビューにもあるように、レコードの縮図、シネマティックとさえ言える作品を象徴する大曲。作品で最もエクストリーム、デスコア的な質量を纏った “Part III: One With The Light” と女性ボーカルとピアノ、オーケストレーションのみで奏でられる詩情豊かなフィナーレのコントラストはまさにこの傑作の持つ二面性を端的に物語っていると言えるでしょう。
今回弊誌ではギタリスト Carlos Lozano にインタビューを行うことが出来ました。シュラプネル直系の彼独特のシュレッドは、昨今のメタルシーンにおいては逆に強力な武器となっているような気がします。Moe に続いて弊誌2度目の登場。どうぞ!!

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PERSEFONE “AATHMA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + ANATOMY 【ichika : forn】


EXCLUSIVE: ANATOMY OF ichika !!

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This Is The Next Level !! The Most Talented Contemporary Guitar Artist In Japan, ichika Has Just Released Amazing, Astonishing, Awe-inspiring Debut EP “forn” !!

DISC REVIEW “forn”

Toshin Abasi 以来の衝撃!クリスタルのように清廉なサウンドと研ぎ澄まされた感性で ichika は日本のみならず海外からも高い注目を集める新たなギターマエストロです。想像力を掻き立て感情を揺さぶる瑞々しい楽曲の数々は、フレッドボードを駆け巡る独創的で絢爛たる奇跡のテクニックから生み出されます。
Instagam, Twitter など SNS における圧倒的な動画の視聴数、シェア。さらに Tosin Abasi, Jason Richardson といった海外のモダンギターヒーローから注がれる熱い視線を追い風に受けリリースした待望のデビューEP “forn” はまさにインストゥルメンタルシーンに新たな時代の幕開けを告げるエポックメイキングな作品に仕上がりました。
アルバムのフォルムは想像を遥かに超えたものでした。おそらく多くのファンが思い描いた作品は、バンド形態の Instru-metal アルバムだったのではないでしょうか?しかしリスナーの元に届いた “forn” のサウンドは、ギター一本、清澄で無垢なクリーントーンが奏でる水晶彫刻のような崇高な美景、世界観だったのです。
ただ、ichika が今回弊誌に語ってくれた「人生を変えた5枚のアルバム」を念頭に置き、存慮すればこのディレクションは深く頷けるものだと思います。”Waltz for Debby”。彼が志向しデザインしたこの透徹した美意識によるスペクトルは、孤高のジャズピアニスト Bill Evans がかの歴史的傑作で提示したアーティスティックな表現世界と真に深く通じているのです。
実は幼少期に “Waltz for Debby” に感銘を受け、ジャズピアニストを志していたという ichika。静と動のダイナミズムが白眉で、詩情豊かな美しきワルツ “resolution” は “Waltz for Debby” への追憶かも知れません。 残響までをも計算した限りなく繊細で透明な、しかし同時に自身のペルソナ、小宇宙、エモーションを余すことなく描き出す若きマエストロの手法、秀絶な初演には、確かに巨匠の息吹が濃密に感じられますね。
ヴォイシングの妙、独演という観点から見れば、Bill Evans の “Alone” や Joe Pass の “Virtuoso” にも共振する部分はあるでしょう。そして勿論、彼が挙げている Russell Malone にも。ichika のどこか温かみのあるトーン、ベースラインと旋律の巧みな双饗、ハーモニクスやタッピングのナチュラルな浸透には Russell の遺伝子がしっかりと脈打っています。
さらにツーバスでスウィングする不世出のジャズドラマー Kendick Scott。”a bell is not a bell” を聴けば、コンテンポラリージャズを代表するリズムマスターのポリリズム、変拍子、モダンなアプローチをしっかりと消化し、自らの血肉としていることが分かりますね。
とは言え、”forn” はジャズレコードではありません。そしてジャズレコードでないことこそが ichika の ichika たる由縁だと言えるのではないでしょうか。VEIL OF MAYA の “The Common Man’s Collapse”、”the cabs” の “一番はじめの出来事”をジャズの名盤と共にピックアップしていることが表象するように、彼の音楽にはジャズと同様にモダンプログやマスロックといった現代的なアプローチもしっかりと根付いています。
そして日本人らしい叙情性。”戦場のメリークリスマス” にも通じるようなリリシズムを備えた “flowers” はジャズとコンテンポラリーギターの完璧なる融合であり、同時に日本らしい四季や侘び寂びを感じさせる絶佳のサウンドスケープを有した ichika を象徴する一曲だと感じました。
ichika の旅路、音楽的探求は “forn” で遂にその幕を開けました。少なくとも、今まで日本のアーティストに欠けていた世界で戦うに充分なオリジナリティー、インテリジェンス、そしてアピアランスを備えていることは確かです。”have a nice dream”、応援しましょう!!

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ichika “forn” EP: 9.9/10

【FIVE ALBUMS THAT CHANGED ICHIKA’S LIFE】

BILL EVANS “WALTZ FOR DEBBY”

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KENDRICK SCOTT ORACLE “CONVICTION”

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RUSSELL MALONE “RUSSELL MALONE”

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VEIL OF MAYA “THE COMMON MAN’S COLLAPSE”

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the cabs “一番はじめの出来事”

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【MESSAGE FOR JAPAN】

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“forn” EPを聴いていただいてありがとうございます。このEPを皮切りに、次の作品のリリースも予定していて、そこからライブを初めていこうとも思っています。皆さんにお会いできるのを心待ちにしています。

Thanks a lot for listening to “forn” EP. Starting with this EP, I plan to release the next work and I’m thinking of my first live from there. I am looking forward to seeing you all!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KURT ROSENWINKEL : CAIPI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KURT ROSENWINKEL !!

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Ten Years In The Making, Master Of Jazz Guitar, Kurt Rosenwinkel Has Just Released Colorful, Rich, and Contemporary New Record “Caipi”!!

DISC REVIEW “CAIPI”

コンテンポラリージャズギターの唱導者、プロフェッサー Kurt Rosenwinkel が自身を反映し体現したマスターピース “Caipi” をリリースしました!!制作に10年という長い年月を費やしたアルバムには、伝統と革新、卓越したセンスと豊かなエモーションが込められています。

“僕が一番大切にしているのは、やはりジャズであり、自分の音楽だ。でも僕の内側から聴こえてくるものがロック・ソングやソウル・ナンバーであれば、僕はそれに従わなければないけない。創造の源はコントロールできないからね。”(Jazz Life 2000.2)

過去のインタビューで語る通り、Kurt は偉大なジャズマスターでありながら、その領域のみに留まらず自らのインスピレーションに従い、豊潤な音楽の旅を続けています。バークリー入学以前の学生時代にはあの Tony MaCalpine の兄 Chris に師事しプログバンドを結成していたという過去に加えて、hip-hop のカリスマ Q-tip とのコラボレートもその事実を裏付けていますね。さらに、現在はドイツのベルリン音楽大学でギターとアンサンブルのクラスを受け持っているのですから、彼のキャパシティー、間口の広さには驚くばかりです。
Gary Burton, Mark Turner, Chris Potter, Joshua Redman, Aaron Parks など多士済済のジャズジャイアンツと共演を果たして来た Kurt ですが、”Caipi” では基本的に全ての楽器を1人でこなしています。ギターは勿論、ベース、ドラムス、そしてボーカルまでを自らで司り、多重録音を行った作品は、インタビューでも語ってくれた通り Q-tip と二人三脚で作り上げた “Heartcore” の正当な続編であり、深厚かつパーソナルな作品として絶類な存在感を放っているのです。
タイトルトラック “Caipi” が象徴するように、アルバムは確かにブラジル、正確にはミナスジェライスの風景や Milton Nasciment の面影を感じさせます。インタビューにもある通り、Milton の音楽は “Caipi” の重要なインスピレーションとして作品を紐解く鍵となっていることは明らかでしょう。
しかし同時に、ブラジル特有のコード感やリズムのエッセンスは作品を語る上での一つのトピックにしかすぎません。色彩も鮮やかなアートワークが物語るように、ここには拡散する Kurt のジャズを体現したカラフルな音世界、サウンドスケープが鮮やかに広がっているのです。
実際、今回 Kurt がブラジル音楽にフォーカスしたのは、”アルゼンチン音響派” に次ぐ新たなムーブメント”ミナス新世代”の奔放で多元的、モダンでカラフルなエナジーに惹かれたからではないかと思わせるフシもありますね。Antonio Loureiro, Pedro Martins というバンデイラの起用こそ、Kurt の”ミナス新世代”に対する明確なシンパシーの表出であり、表敬に違いありません。
モダンと言えば、前作 “Star of Jupiter” には Aaron Parks をはじめ、コンテンポラリージャズスターが集結。オープナー、”Gamma Band” の先進性、ジャズ、プログ、現代音楽をいとも容易く超越したカレイドスコープ的サウンドは、拡散する新たなジャズの象徴としてシーンに衝撃を与えましたが、”Caipi” では全ての設計図を自ら描き、構築することで独創的な内面を余すことなく表現していると言えるのかもしれませんね。
確実にアルバムの根幹を成すのはジャズとブラジル音楽です。しかしロック、ポップ、プログロック、ブルース、ソウル、ハウス、テクノ、エレクトロニカなど複眼的で多彩な影響をフレキシブルに打ち出すことで、Kurt はその唯一無二の才能、そしてジャンルの可能性を閉鎖的でバックカタログを重視しがちなジャズワールドに見せつけたといえるでしょう。言い換えればこの試みは、ジャズの側から見たポストロックと言えるかもしれません。そして、ジャズの境界線を押し広げる彼の手法は、インタビューにもあるように “Jazz the New Chapter” のムーブメントとも宿命的に連動するはずです。
とは言え、”Casio Vanguard” からは Pat Metheny を、”Little B” では Alan Holdsworth をイメージするように、脈々と流れる伝統もまた Kurt の中にはしっかりと受け継がれています。”スローハンド” Eric Clapton のゲスト参加には、そんな Kurt にこそギターの未来を託すといった意味合い、想いも少なからず含まれているようにも思えました。
今回弊誌では、Kurt Rosenwinkel にインタビューを行うことが出来ました。4月には来日公演も決定しています。どうぞ!!

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KURT ROSENWINKEL “CAIPI” : 9.8/10

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