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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【heaven in her arms : 白暈 / WHITE HALO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KENT & KATSUTA OF heaven in her arms !!

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One Of The Most Dynamic Post-Hardcore Act From Japan, heaven in her arms Has Just Released Gorgeous and Awe-inspiring New Record “White Halo” !!

DISC REVIEW “白暈”

トリプルギターが映し出す濃密なシネマと、アーティスティックで詩的なリリックが交錯する東京のポストハードコアアクト heaven in her arms が実に7年ぶりとなる待望のフルレングス “白暈” を Daymare Recordings からリリースしました!!アートワークにも顕在する “White Halo”、白く差しそめし光芒の暈は、バンドの黒斑を侵食し遂にはその枷をも解き放ちました。
変化の予兆、耽美でアンビエントなイントロダクション “光芒の明時” が燭明のごとくリスナーを “白暈” の世界に導くと、作品は “月虹と深潭” でその幕を開けます。
激烈なトレモロの嵐はまさに深潭、エセリアルなクリーンパートはまさに月虹。前作 “幻月” で提示された、ひたすら深淵をのぞき込むがごときスラッジの閉塞はポストブラックの冷酷へと姿を移し、繊細で艶美なアルペジオは闇夜に映る月輪のように、”浄化” という名の詩情豊かなサウンドスケープをもたらします。
Kent の絶唱と朗読のコントラストは楽曲に豊潤な文体を与え、終盤に観せるリードギターとドラムスの知的で瑞々しいアプローチは風雅をすら運んでいますね。
「今回は”黒い”イメージを脱却したかった」 と Kent が語るように、闇と絶望を宿した黒を基調とするバンドの色彩に仄かな燐光をもたらしたのは、7年間の集大成とも言える “終焉の眩しさ” だったのかも知れません。
COHOL とのスプリットに収録された “繭” と “終焉の眩しさ” を融合し再録したこの名編は、狂気と正気を行き来する壮大な表現芸術です。Katsuta が「heaven in her arms ってどんなバンド?と聞かれた時に “終焉の眩しさ”はその答えとして分かりやすい」 と語るようにまさにバンドを象徴する名曲は、静と動、光と闇、絶望と救済が混淆するダイナミックな激情のドラマとして中軸に据えられ作品の趨勢を決定づけているのです。
奇数拍子と偶数拍子がせめぎ合う “終焉の眩しさ” の根幹はキャッチーとさえ言えるほどフックに満ち溢れたドラムスのアイデアに支えられ、同時にバンドのシグニチャーサウンドであるトリプルギターは轟音、アルペジオ、そして妖艶で耽美なメロディーを宿した極上のリードプレイを奏でます。
「ハーモニーに関して他のバンドとは一線を画したい」 と語るように、heaven in her arms のアンサンブル、コンポジションは決定的でプログレッシブと言えるほどに精密だと言えるでしょう。
実際、heaven in her arms はハーモニーのみならず、その巧みなリズムアプローチにおいても他のポストハードコアバンドと一線を画しています。パイプオルガンの荘厳な響きを “枷” として綯う “円環” は、”5″と”6″のリフレインが異国のメロディーを紡ぐ異形のロンド。ワルツに移行し踊るクラシカルな旋律は静謐も激情も平等に愛し、7年の月日で養ったバランス感覚を洗練という軌跡へと昇華させているように思えます。
“終焉” の先に見据えたものは何でしょう?ブラックゲイズの領域へと侵入したアルバムクローサー、11分のマボロシ “幻霧” では、儚き祈り、悲痛な叫びが霞む海霧の中、確実に希望という一筋の光がリスナーの元へと届くはずです。ワルツで始まりワルツに終わる45分。しかしどこか冷ややかな”光芒の明時” と “幻霧” の仄かな光明を比較した時、そこに更なる深淵が現れるのかも知れませんね。
今回弊誌では、Kent さん(Vo, Gt)と Katsuta さん(Gt)にインタビューを行うことが出来ました。先日出演を果たした日本が誇るハードコア/ポストロックの祭典 “After Hours” についても語ってくれました。どうぞ!!

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heaven in her arms “白暈” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VIVA BELGRADO : ULISES】JAPAN TOUR 2017 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CÁNDIDO GÁLVEZ OF VIVA BELGRADO !!

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One Of Spain’s Most Well Thought Screamo/Post-Rock Act, Viva Belgrado Will Come To Japan With Splendid New Record “Ulises” !!

DISC REVIEW “ULISES”

スペイン、コルドバから世界を見据える激情ハードコア/ポストロックバンド Viva Belgrado 待望の初来日が Tokyo Jupiter Records の招聘により決定しました!! スウェーデンの巨人 Suis La Lune、スペインの熱風 Viva Belgrado、そして日本の新たな才能 Archaique Smile, Of decay and sublime が集結する二夜は、激情と美麗が交差する奇跡の瞬刻となるでしょう。
「鮮明で美しいアトモスフィアと、スクリームのコントラストを創造するのが好きなんだ。」インタビューで語ってくれたように、Viva Belgrado は情熱的な激情サウンドと、ポストロックの壮観なる美装を兼ね備えた南欧の逸材です。すでに欧州ハードコア/ポストロックのメジャーフェス Primavera Sound, Fulff Fest, ArcTanGent に出演を果たし、2年間で5度のユーロツアーを行うなどその勢いはまさにとどまるところを知りません。
バンドがリリースした最新作 “Ulises” は、都市や空港、オフィスといった現代社会の日常を舞台とした21世紀の叙事詩です。インタビューを読めば Cándido が各所で “True” “Honest” “正直” “誠実” というメッセージを発していることに気づくでしょう。
「僕たち自身の叙事詩を伝えたかった。」と語る Viva Belgrado の目的地は決して薄っぺらなプレハブの仮設物語ではなく、正直で誠実なアティテュードを携えたリアルなストーリーだったのです。
成功を収めたファーストフルレングス “Flores, Carne” のフォローアップとなる “Ulises” は、前作のアートワークに描かれた優艶な花々が “Ulises” のアートワークにおいて奔放に成長を果たしたように、自身の鮮麗なスタイルを磨き上げ、伸び伸びとしかし着実にスケールアップを果たした意欲作に仕上がりました。
アルバムオープナー “Calathea” は Viva Belgrado のその芳醇な音楽を象徴する楽曲です。パンクの推進力、ハードコアの衝動、ポストロックの情景、スクリーモの直情は、カラテアの新緑のごとく純粋に溶け合いバンドのリアルを伝えています。楽曲の隅々まで見透せるほどにクリアなプロダクションも白眉ですね。
Cándido の声はまさにこの叙事詩の主人公だと言えるでしょう。スクリームし、ラップし、アジテートし、朗読するそのボーカルはまさしく規格外で、さらにその全てがスペイン語を介することにより唯一無二の魅力を発していますね。
時に幸福を、時に悲哀を、時に情熱を、そして常に真実を運ぶ彼のリズミカルなラテンの響きは、リスナーに想像を超えるインパクトを与えることとなるのです。
実際、”Por la mañana, temprano” や “Apaga la llum” は Cándido の存在が成立させた新たな風です。ローズピアノを使用しポストロックの論理で構築されたソフトで繊細な楽曲は、しかし同時にダンサブル。よりコンパクトでストレートな作品を目指したという “Ulises” において、パンクのエナジーで疾走する “Erida” のような楽曲と見事なコントラストを描き出していますね。
Cándido の囁くようなラップは、スペイン語のセクシーな語感を伴いながらエキゾチックで現代的なムードをもたらし、”Apaga la llum” では “En Tokio no paraba de nevar” / “東京では雪が止まなかったんだ” としっかり愛する日本についても触れています。
アルバムは DEAFHEAVEN の息吹を吸収した光のシューゲイズ “Ravenala” で壮大に幕を閉じました。
今回弊誌では、バンドのボーカリストでギターもプレイするCándido Gálvez にインタビューを行うことが出来ました。envy や La Dispute のファンもぜひチェックしてみて下さいね。どうぞ!!

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VIVA BELGRADO “ULISES” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BAROCK PROJECT : DETACHMENT】JAPAN TOUR 2017 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LUCA ZABBINI OF BAROCK PROJECT !!

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Italian Prog Rock Bandiera, Barock Project Becomes More Modern, More Diverse, And Sometimes heavier With Their Newest Album “Detachment” !!

DISC REVIEW “DETACHMENT”

プログレッシブの血潮が脈々と流れ続ける、ルネサンス発祥の地イタリアに降臨したバンディエラ BAROCK PROJECT が、レトロとモダンを”超越”したタイムレスクラッシック “Detachment” をリリースしました!!名作 “Skyline” からよりオーガニックでマルチディメンショナルな境地へと辿り着いた75分の壮大なコンセプトアルバムは、アートワークの変化が示すように実にシリアスでパーソナル。ファンタジーの世界に別れを告げ、プログレッシブの新たな潮流ともシンクロする野心的で思慮深い作品に仕上がりました。
BAROCK PROJECT は J.S. Bach と Keith Emerson を敬愛するキーボーディストでコンポーザー、レコーディングも手がける若干33歳のマスターマインド Luca Zabbini が牽引するプログレッシブ集団。各所で高い評価を得た前作 “Skyline” からのインターバルで、バンドは不在だったベーシストとして Francesco Caliendo を得ましたが、2002年から在籍するバンドの声 Luca Pancaldi を失ってしまいます。
インタビューでも語ってくれたように、デモでは歌っていたものの自分をシンガーとして考えたことはなかったという Luca ですが、周囲の後押しもあり遂にリードボーカルも務めることを決断し傑作 “Detachment” は誕生したのです。
「”Prog” がエリートのもので、ほとんどがごく少数のコレクターにしか聴かれない状況を受け入れることに疲れ果ててしまったんだよ。」 それはまさに衝撃的な告白でした。プログロックという狭い檻に囚われているように感じていた Luca は、慣れ親しんだ領域を “Detachment” = “離脱”し、よりアクセシブルで多様性に満ちたモダン=多様な作品を制作することを決意します。
始まりの予感に満ちたピアノの小曲に導かれ、アルバムは “Promises” でその幕を開けます。イントロのエレクトロニカサウンドが好奇心を誘い、ボコーダーを使用した Luca のボーカルが複雑なドラムパターンとともに鮮やかに切れ込むとリスナーはそこに確かな変革の風を感じるでしょう。
中間部で見せるギターとハモンドのデュエルは実にアグレッシブでプロギーですが、同時にしっかりとデザインされた上で現代的にアップデートされレトロとモダンを行き交います。さらに芳醇なメロディーラインは引き継ぎつつも、ダークで内省的な Luca の声が生み出すリアリズムはポストプログの世界観にも通じていますね。
より幅広いリスナーへ届けるため多様性とキャッチーさにフォーカスしたという Luca のチャレンジは “Happy to See You” に結実しています。フォーク、ストリングス、そしてエレクトロニカを巧みに融合し独特のアトモスフィアを創出、極上のメロディーでリスナーの胸を激しく締め付ける手法は、まさに彼が人生を変えたアルバムで挙げている THE POLICE の Sting、例えば “Mad About You” を想起させますね。
TIGER MOTH TALE や CAMEL で活躍する Peter Jones がゲストボーカルで参加した2曲は中でも傑出しています。狂おしいまでに美しきバラード “Alone” はジャズのフレーバーとメランコリーを静かに湛え、”Broken” ではクラシカルやフォークを華麗にダイナミックに昇華。対照的な曲調ながら、アコースティック楽器のオーガニックな響きや張り詰めた空気感は共通しており、さらにそれこそがアルバムに貫かれた写実的なリリシズムの象徴だと感じます。
そして、Peter の John Wetton が憑依したかのような絶唱が司るメロディーの洪水はどちらの楽曲においても平等にリスナーの心を満たし遥かなる高みへと導くのです。
ソロワークやファンタジーに主眼を置く”プログレ” の世界から”離脱”し、アレンジメント、リアリズム、ダイナミズム、そして多様なコンポジションを武器に新たな旅へと繰り出した BAROCK PROJECT。アルバムに漂うある種の緊張感は、Luca のフラストレーションが表層化したものだったのかも知れませんね。
今回弊誌では Luca Zabbini に2度目のインタビューを行うことが出来ました。6月には MOON SAFARI とのカップリングで初の来日公演も決定しています。どうぞ!!

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BAROCK PROJECT “DETACHMENT” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ETERNITY FOREVER : FANTASY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEN ROSETT OF ETERNITY FOREVER !!

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Dance Gavin Dance, Chon And Strawberry Girls Get Together !! The Super Group, Eternity Forever Mixed Prog Rock And R&B With Their Amazing Debut EP “Fantasy” !!

DISC REVIEW “FANTASY”

ex-DANCE GAVIN DANCE, A LOT LIKE BIRDS の Kurt Travis、ex-CHON の Brandon Ewing、そして STRAWBERRY GIRLS で活躍する Ben Rosett という類い稀なる駿才が集結した新たなファンタジー、ETERNITY FOREVER が鮮烈なデビューEP “Fantasy” をリリースしました!!メンバーが誇る芳醇なキャリアを引き継ぎながらも、新たな冒険へと誘う作品は、近年稀に見る衝撃を伴って永遠に愛される不朽のエバーグリーンとなるはずです。
インタビューにもあるように、ETERNITY FOREVER の物語は昨年行われた CHON と STRAWBERRY GIRLS、そして POLYPHIA が一堂に会した “Super Chon Bros” ツアーから始まりました。
全世界で30万枚のセールスを上げる US インディーの雄 LOCAL NATIVES のベースプレイヤー Nick Ewing を兄に持つ Brandon は当時、CHON の一員としてツアーに帯同していました。Sumerian と契約し今や飛ぶ鳥を落とす勢いで邁進する、カリフォルニアの日差しを全身に浴びたマスマティカルでポジティブなプログレッシブ集団は、Camarena 3兄弟の次男が脱退したためベーシストを必要としていたのです。
一方、Ben Rosett が所属する STRAWBERRY GIRLS は、日本ではまだあまり馴染みのないバンドかも知れませんね。彼らもインストゥルメンタルを主戦場とする実験的なトリオ。ex-DANCE GAVIN DANCE のギタリスト Zachary Garren 率いる異能の集団は、可能性を発掘することにかけては定評のある Tragic Hero Records からダーク&セクシーな名作群をリリースしています。
ポストハードコア、マスロック、プログレッシブが魅力的に交差したツアーで Brandon と Ben は意気投合。Blue Swan, Equal Vision をセンターとしたシーンの中でもずば抜けた歌唱力を有する Kurt Travis との邂逅により、バンドはまさにスーパータレントブラザーズとしての生を受けたのです。
デビューEP “Fantasy” は4曲という僅かなボリュームにもかかわらず、圧倒的な躍動感と無限の可能性を感じさせる作品に仕上がりました。
アルバムオープナーでタイトルトラック、”Fantasy” の幕が上がるとリスナーは、Brandon が奏でる透明で繊細なギターの音色に酔いしれるでしょう。
ビビッドでリリシズムを湛えたその思索的な響きは、アイデアの潮流に乗り、宵闇の風に帆をはらませ無上のサウンドスケープを運びます。確かにここには CHON や DANCE GAVIN DANCE が持つ複雑にして軽快、難解にして耳馴染みの良い、モダンでイマジネーティブなセンスが開花しています。Brandon がベースのみならず、ギターのマイスターでもあることがここに証明されたと言えますね。
Kurt Travis の鮮烈で “黒い” ファルセットが切り込むと、楽曲は新たな顔を啓示しバンドの個性を主張し始めます。Prince を想わせるシルクのように滑らかで心地よいそのファルセットは、彼らの “Fantasy” に濃厚なブラックミュージックの風を誘います。Kurt が過去にどのバンドでも見せることのなかったその切り札は、プログレッシブでマスマティカルなロックとエモーショナルでトライバルな R&B やソウルが遂に溶け合うための重要な魔法の触媒となっているのです。
“Movies” の郷愁と慕情が入り混じった美しきポストロックのキャンパスが、Kurt のソウルフルな黒い歌唱で染めあげられ、未だ見ぬ奇跡の景色を宿す様はまさに ETERNITY FOREVER の真骨頂だと言えるでしょう。
4曲15分のEPを通して流れるのは、作品のプロデュース、ミキシング、マスタリング全てを手がけた Ben Rosett のイデオロギーかも知れませんね。STRAWBERRY GIRLS ではあの Kendrick Lamar のカバーも披露しているように、オープンで瑞々しい感性を持つ彼のアンテナは “Jazz The New Chapter” のマインドと通じます。
Hip Hop やネオソウルに接近し、ジャズの領域をブラックミュージックへと浸透、拡大。インプロビゼーションよりも、明確でソフィスティケートされたプロデュースを主張する Robert Glasper や HIATUS KAIYOTE の方法論を、Ben はプログレッシブロックの分野でチャレンジしたように感じられます。そして彼らの “New Chaper”は、コンパクトでキャッチー、エキサイティングで新鮮な、プログレッシブワールドの稀有なる地殻変動として”永遠永久に”歴史に刻まれることでしょう。
今回弊誌では Ben Rosett にインタビューを行うことが出来ました。今年一番のサプライズ。どうぞ!!

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ETERNITY FOREVER “FANTASY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GHOST BATH : STARMOURNER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DENNIS MIKULA OF GHOST BATH !!

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The Most Mysterious Black Metal 2nd Generation, Ghost Bath Mixed DSBM And Japanese Video Game Music With Their Newest Album “Starmourner” !!

DISC REVIEW “STARMOURNER”

インパクトと芸術性、そして崇高さを内包する多種多彩なブラックメタル第二世代の中でも、一際ミステリアスな存在として異彩を放つ GHOST BATH。彼らがリリースした最新作 “Starmourner” は、DEAFHEAVEN や ALCEST, LITURGY が押し広げたジャンルの壁をさらに拡張する、遠大な可能性に満ちた作品に仕上がりました。
GHOST BATH は当初、中国出身のバンドだと考えられていました。メンバーの顔を伏せた上で “鬼浴” と名乗り、アルバムをリリースしたレーベル、そしてバンドのロケーションも中国としていたのですからそれも当然です。しかしインタビューにもあるように、実際はノースダコタに拠点を置くアメリカのバンドだったのです。
Bandcamp にロケーションを要求された時、”No Location” が受け入れられなかったため、地球の反対側にある中国を何となく選んだら中国のレーベルからコンタクトが来たというのがどうやら真相のようですね。Dennis はそういった一連の流れについて「人間よりも音楽それ自体により直接コネクトして欲しかった」からと説明してくれました。
しかし、2ndアルバム “Moonlover” のヒットとそれに伴うメガレーベル Nuclear Blast との契約により全てを秘匿することが困難になったバンドは、メンバーの顔写真とロケーション、そして首謀者 Dennis Mikula の名前だけは明らかにすることとなったのです。(とは言え現在でも公式にはその名前は “Nameless” とされていますが。)
そういった経緯を経てリリースされた3rdアルバム “Starmourner” は、インタビューで Dennis が語ってくれた通り、”Moonlover” を序章とするトリロジーの第2章。バンド名が象徴するように、DSBM (デプレッシブスイサイダルブラックメタル) を自称する GHOST BATH ですが、天国や天使にフォーカスしたというアルバムはポジティブでハッピーとさえ言えるサウンドを前面に押し出し、デプレッシブなムードと夢幻に対比させた異例のブラックメタル作品となりました。
作品は天駆けるピアノが流麗な旋律を紡ぐ “Astral” でその幕を開けます。他のブラックメタル第二世代と比較して GHOST BATH をさらに特異な存在としているのは、明瞭でキャッチーなメロディーがアルバムの主役となっている点でしょう。”Seraphic” のパワーメタル的とさえ言える優美で凛々しいメロディーの洪水と、そのカウンターパートとして示されるダークでヒステリックなブラストの海原が手を取り合い創造する類希なるカタルシスは決定的にユニークで、バンドの新たなチャプターの始まりを告げています。
勿論、アルバムには DEAFHEAVEN に通じるようなインディー、シューゲイズからの影響も存在します。”Luminescence” を聴けば GHOST BATH がパワーメタルの手法を周到にその光の世界へと取り入れていることが伝わるでしょう。同様のチャレンジを試みる ASTRONOID と現在ツアーを行っていることは、決して偶然ではありません。
アルバムを語る時、Dennis の日本に対する愛情を欠かすことは出来ませんね。実は以前弊誌に登場いただいた時点で、日本に新婚旅行で訪れることを誇らしげに伝えてくれていた Dennis。すでに簡単な日常会話はマスターしており、本気でこの国に移住を考えていると言うのですから、日本のメタルファンにとってそれは大きな、そして喜ばしいサプライズに違いありません。
Dennis の日本とその文化に対する真情は “Celestial” に結実しています。彼が愛してやまない、日本のロールプレイングゲームに起因する勇壮なファンファーレがブラックメタルのタッチで描かれた時、リスナーはノスタルジーと共に生じる多幸感、恍惚感が新鮮な情動であることに気づくでしょう。その場所からさらに楽曲は、ULVER が “Perdition City” で見せたシンセワークとアトモスフィアを伴って静謐でプラトニックな “Angelic” へと歩みを進めて行くのです。その神聖なまでに巧みな構成力はまさに別世界の高みにあると言えるでしょう。
「ブラックメタルとゲーム音楽を融合させる。」  “Thrones”, “Elysian” と聴き進める内に、リスナーはその野望が完遂されたことを知るでしょう。そこには “Final Fantasy”、”ゼルダの伝説” といった私たちのクラッシックが見事に GHOST BATH のブラックメタルとして新たな生を与えられているのですから。今回も Dennis がほぼ1人で制作したアルバムは、狂気とアトモスフィア、耽美と悲愴を携えた、新鮮で文字通りプログレッシブな音楽として世界に衝撃を与えることでしょう。
70分を超える壮大な神曲は、ジブリの世界観を宿し、不思議に悲哀を称えた鍵盤とドラムスのピース “Ode” で静かに幕を閉じます。
今回弊誌では、Dennis Mikula にインタビューを行うことが出来ました。6月には Ward Records から日本盤の発売も決まっています。どうぞ!!

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GHOST BATH “STARMOURNER” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW【JASON RICHARDSON : I】INTERVIEW WITH LUKE HOLLAND, JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LUKE HOLLAND !!

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Jason Richardson & Luke Holland, One Of The Most Talented Young Guns Will Come To Japan With Game Changing Debut Record “I” !!

DISC REVIEW “I”

24歳と23歳。瑞々しくハイセンスなモダンメタルフロンティアが輩出した俊英2人、Jason Richardson と Luke Holland がタッグを組んだ宿命の別世界 “I” のリリースは、至大のインパクトと共にユニットを遥かなる日いづる国、日本へと導くことになりました。
若干20代前半にして、2人の履歴書はすでに驚くほど充実しています。バークリー入学を蹴って ALL SHALL PERISH でツアーを経験し、BORN OF OSIRIS, CHELSEA GRIN では名作のキーパーソンとなったギタープレイヤー Jason Richardson。最先端の10指が紡ぐ印象的でコズミックなフレーズの数々は、まさに Djent/デスコアミュニティーの発展に欠かすことの出来ないフラッグシップであると言えますね。
一方のドラマー Luke Holland は、インタビューにもあるように、16歳で YouTube チャンネルを開設しセルフプロモートを開始します。今日までに総計で5500万ビューという驚くべき数字を叩き出した彼のプレイスルーカバー集は、Djent, メタルからプログ、エモ、パンク、ポップに EDM までまさに百花繚乱な世界観を独自のアレンジメントと精緻なテクニックで華麗に彩り、今では自らの価値を証明する Luke の貴重な名刺がわりとなっているのです。
実際、動画を見た TEXAS IN JULY から代役を頼まれ、ついには2013年に THE WORD ALIVE の正式メンバーに任命されたのですから、例えば日本の川口千里さんにも言えますが、プレイスルー動画の持つ力、インパクトは音楽シーンのあり方を変えて来ているのかも知れませんね。
“究極的には毎晩ソールドアウトのスタジアムでプレイしたい” と語る Luke が次なるチャレンジとして選んだ “I” は、同時に Jason Richardson がただギターマイスターであるだけでなく、コンポーザーとしても多様かつ至妙であることを証明した一級品に仕上がりました。Luke の言葉からは寧ろ、コンポーザーとしても優れていることが、参加を決意させたようにも読み取れますね。
ダークでシンフォニックな世界観を携え、難解なリズムアプローチと美麗なリードプレイがアトモスフィアの波を掻き分ける “Omni” でアルバムは幕を開けます。不安を煽るようなオーケストレーション、ギターとシンセサイザーの一糸乱れぬ華麗なダンス、そして見事にコントロールされたチャグワークは確かに BORN OF OSIRIS の設計図をイメージさせ、まさに楽曲が Jason Richardson を象徴する”I”であることを宣言していますね。
勿論、現在2人だけでツアーを行っていることからも分かるように Jason と Luke のコンビネーションも抜群。ギターの細かなフレーズまでユニゾンしてしまう Luke の繊細でアイデア豊富なドラムワークはアルバムを確実に一段上の領域へと誘っています。Luke の THE 1975 や THE CHAINSMOKERS をメタルと同列で愛してしまう軽快さこそ彼を際立たせているのです。
粒立ち群を抜いているピッキングの驚異的な正確性、選択する音や音符の意外性、タッピングとオルタネイト、スイープを巧みに使い分けるアルペジオの豊かなバリエーション、そしてストーリーを持った構成美。ソロワークに目を移せば、すでに Jason が世界のトップであると誰もが確信するはずです。メカニカルなシュレッダーのイメージが強いかも知れませんが、”Omni” 中間部の静謐なパートで炸裂するベンド、ビブラートのエモーションは実に扇情的で崇高とさえ表現したくなりますね。全く非の打ち所がありません。
PERIPHERY の Spencer Sotelo がゲストボーカルで参加した “Retrograde” からさらに “I” の世界は広がっていきます。これまでスクリームとのコンビネーションがほとんどだった Jason のギターですが、クリーンボーカルとの相性も決して悪くはありません。Spencer の突き抜けるように爽快でキャッチーなトレードマークは Jason のポップセンスをも見事に開花させ、VEIL OF MAYA の Lukas Magyar, PERIPHERY の Mark Halcomb というオールスターキャストで贈る名曲 “Fragments” にその成果を結実させています。
ポストロックやクラシカル、ブルースにサーフロックの感覚すら包み込んだ “Hos Down” の多様性から生じる魔法はまさに別格です。現代の Guthrie Govan と形容したくなるほどマジカルでエクレクティックな奇跡のコンポジションは、Jason の未来、 “Next Stage” にも多大な期待をいだかせてくれますね。
Nick Johnston, Rick Graham など様々なゲストを迎え、才能が時に融合し、時に火花を散らしたアルバムは、巨匠 Jeff Loomis とのクラシカルな乱舞 “Chapter Ⅱ” でまさに “Ⅱ” の存在を予感させつつ幕を閉じました。
今回弊誌では、7月に来日が決定した Luke Holland にインタビューを行うことが出来ました。POLYPHIA, さらには先日インタビューを掲載した12歳の天才美少女ギタリスト Li-sa-X も出演しますよ。どうぞ!!

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JASON RICHARDSON “I” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ART OF ANARCHY : THE MADNESS】BUMBLEFOOT SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RON “BUMBLEFOOT” THAL !!

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Mega-Super Group, Art Of Anarchy Seek To Reinvent Themselves From 90’s Glory, With New Masterpiece “The Madness” !!

DISC REVIEW “THE MADNESS”

90’s~00’s にかけて人気を博した “オルタナティブメタル” の空気をリフレッシュし、見事現代へと再誕させる US スーパーグループ ART OF ANARCHY が、傑出した2ndアルバム “The Madness” をリリースしました!!極上のコンポジションに5人の個性が溶け合った揺るぎなきロックのメタモルフォーゼは、極限まで多様化したシーンに王道の何たるかを見せつけています。
ART OF ANARCHY は、ギターとドラムスをプレイする双子の Votta 兄弟と、GUNS N’ ROSES で気を吐いていたマエストロ Ron “Bumblefoot” Thal が意気投合し始まったバンドです。そこに、STONE TEMPLE PILOTS や VELVET REVOLVER で活躍した天賦のシンガー Scott Weiland, DISTURBED の切れ味鋭いベースマン John Moyer が加わることで、大きな注目と期待を集めるメガアクトが誕生したのです。バンド全員のレコードセールス(当時)は1億5000万枚と言うのですから、数字の面からも彼らの凄みは伝わるでしょう。
セルフタイトルのデビュー作をリリース後、Weiland はバンドを脱退。アルバムをプロモートするツアーを拒否した彼は結局、人生を通じて苦しんできた薬物との戦いに敗北し、命を落としてしまいました。
バンドは Weiland の後任に CREED の Scott Stapp を指名します。実は2014年には Stapp も薬物問題、さらには路上生活にまで転落するなど負の話題で世間を騒がせましたが、彼は挑戦し困難に打ち勝ちました。そして Weiland と同様、まさに時代の寵児として活躍した Stapp の加入は再度バンドのエンジンに屈強なエナジーを注ぐ結果となったのです。
“The Madness” には、ただスーパーグループという事実以上のケミストリー、そしてメッセージ性が間違いなく存在します。Ron がインタビューで語ってくれた通り、Votta 兄弟のアリーナロック、DISTURBED の鋭利でマスマティカルなリフワーク、CREED の瑞々しく雄大なメロディー、そして Bumblefoot、もしくは “Chinese Democracy” の型破りで独創的なアイデア全ては淀みなく渾融し、濃密なマグマとなって作品を流動します。
オルタナティブが王道へと以降した21世紀初頭のソリッドな空気を DNA に深く刻んだ5人の古兵たちは、しかし同時に時代の推移により”オルタナティブであること” から遂に解放され、その雄弁なコンポジション、華麗なテクニック、そして唯一無二のタレント性を制限なくここに開花させているのです。
また、アルバムタイトル “The Madness” が表象するように、作品にはまさに Stapp が苦しんできた”狂気”がそのまま描かれています。新たなアンセム “1,000 Dgrees” では「僕自身が最悪の敵だ。僕は呪われている。」と当時の地獄を独白し、至上のバラード “Changed Man” では「もう一度チャンスをくれないか?僕は変わったんだ。家に帰る時が来たんだよ。」と最愛の妻に過去の自分との決別を告げます。果たして妻は “With Arms Wide Open” で待っていてくれたのでしょうか?
とにかく、”僕たちはこのアルバムを Scott、そして同じチャレンジに直面する人たちの成功に捧げることとしたんだ” と Ron が語るように、作品はアメリカが抱える大きく暗い闇に対する贖いとして生を受けました。自身の魂を声と詩に宿した Stapp の歌唱には深みとリアルが込められ、その美しく、切なく、雄々しく、そして芳醇なメロディーは懺悔であり赦しであり、希望の灯火でもあるように聞こえます。
アルバムの主役は間違いなく Stapp ですが、Ron のトリッキーでカラフルなギターワークが作品にクリエイティブで類まれなる神通力のようなフックをもたらし続けていることは記して置かなければなりませんね。
指ぬき、フレットレス、ロングスケールなど様々な武器を持つ “Bumblefoot” ですが、インタビューでも語ってくれたように彼は決して楽曲の破壊者ではありません。ソロプロジェクト、ガンズ時代を通して歌ものに強い拘りを持ち、エモーショナルで耳に残りリピートを誘うギターフレーズを追い求めてきた彼の真価は “Somber” のアメジストのように燐光を発するソロパートに集約されているのかもしれませんね。
王道とは何か。彼らの”王道”の先には必ず唯一、アリーナでシンガロングし、拳を振り上げるファンの姿が透けて見えます。彼らにはもはやトレンドを意識する必要などありません。ただ、キャッチーでフックと起伏に満ちたアルバムは、エゴを廃し全てが楽曲とストーリーに捧げられ、世代を超えて愛される魔法を備えた新たな栄光への幕開けであると信じます。
今回弊誌では、Ron “Bumblefoot” Thal にインタビューを行うことが出来ました。余談ですが、再発が決定した彼の2ndアルバム “Hermit” もぜひ併せて聴いていただきたいと思います。変態としてのみ語られがちな彼ですが、FAITH NO MORE や RAGE AGAINST THE MACHINE のインテンスと独特のポップセンス、そしてユニークなギターファンタジーをミックスした極上のコンポジションが炸裂した名作。どうぞ!!

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ART OF ANARCHY “THE MADNESS” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KXM : SCATTERBRAIN】GEORGE LYNCH SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GEORGE LYNCH OF KXM !!

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On “Scatterbrain”, Tight And Energetic Performance Of KXM’s Three Giants Will Tell You What The Musicianship, Creativity Is !!

DISC REVIEW “SCATTERBRAIN”

Ray Luzier (KORN)、 dUg Pinnick (KING’S X)、そして George Lynch (LYNCH MOB) というシーンの英傑3名が集結したスーパーバンド KXM が新作 “Scatterbrain” をリリースしました!!三雄の魂が通い合い、個性が溶け合った秀絶な作品は、ロックの持つオーガニックな衝動と、知性を擽るエキサイトメントを織り込みリスナーの直感へと波動するはずです。
“Scatterbrain” は僅か12日間という短い期間で制作されたレコードです。インタビューで George は「もしもさらに時間をかけていたら、いったいどんなものが完成していたのかと考えると、恐ろしいくらいだよ!」 と語ってくれましたが、同時に70年代を思わせる短期集中形のクリエイティブ環境が作品にマジックを産んだとも言えるような気がしますね。
スライドバーを使用したブルースの響きから一転、アルバムはインテンスとカオスが支配するタイトルトラック “Scatterbrain” でその幕を開けます。Ray Luzier の操る不敵な変拍子は George Lynch のシャープで粋なリフワークと共鳴し、その潮流はプログレッシブとさえ言えるムードを創造していますね。ペースダウンし、凪の静穏を献ずる中間部では、Mr. Scary がブルースの熱情を宿した魂魄のシュレッドで楽曲に生命を吹き込み、バンドの破天荒な技巧を伝えています。
“Breakout” や “Big Sky Country” を聴けば、dUg Pinnick の一筋縄ではいかないソウルフルでポップな独特の流儀、歌唱が驚くほど作品にフィットしていることが分かるでしょう。ダークに鬱屈したメロディーが得意のハーモニーを重ねてポップに花開く瞬間。直感的に楽曲を解釈し、ボーカルラインを自然とインプロヴァイズに導く瞬間。そして激情に任せ、咆哮に情念を乗せる瞬間。dUg の持つ類稀なセンスはスポンテニアスにトリオの鼓動と呼応し、無上のカタルシスをリスナーの元へともたらすのです。
同時に、”Breakout” で Ray が魅せる、パーカッションを使用したエスニックなサウンドはデビュー作から進化した KXM の潤色です。ロック、メタル、プログ、ファンク、ブルース、オルタナティブが淀みなく循環する多様な “Scatterbrain” の中で、ワールドミュージックからの影響は確実にアルバムを更に一段上のレベルへと押し上げています。
情熱と哀愁を湛えた dUg の歌唱が光る “Calypso”、カリブの風、グルーヴに乗る George のシュレッドが新鮮な “Not A Single Word” は殊更に、バンドがラテンやレゲエのリズム、モチーフを探求し血肉としていることの証明だと言えますね。
KING’S X でもエクレクテイックなサウンドをトレードマークとする dUg。David Lee Roth, STEEL PANTHER, STONE TEMPLE PILOTS で華々しく経歴を重ね、MI で教鞭もとっていた知性派 Ray。そしてインタビューでも語ってくれた通り、新たな領域へと自己を導き続ける George。ダイナミックなハードロックのルーツの上で、エキゾチックなダンスを華麗に披露する KXM 固有のサウンドは、3人の個性と手練、そしてフロンティアスピリットが結実しシンクロした成果だと言えるでしょう。
エキサイティングでエネルギーに満ちたアルバムは意外にも、ヘンドリックスの遺伝子を受け継いだブルージーなララバイ “Angel” で静かに幕を閉じます。無類で奇抜なタイム感、鋭くアウトやインを繰り返す異端のスリル、瞬間の奇跡。”Scatterbrain” における George のギターワークは近年でも群を抜いていますが、Jeff Healey をも想起させるエモーションを纏った “Angel” のリードは彼が未だに第一人者であることを、改めてシーンに宣言しています。
今回弊誌では George Lynch にインタビューを行うことが出来ました。DOKKEN のリユニオンについても重大な内容を語ってくれています。どうぞ!!

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KXM “SCATTERBRAIN” 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NOVA COLLECTIVE : THE FURTHER SIDE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAN BRIGGS OF NOVA COLLECTIVE !!

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The Brilliant Musical Marriage Between The 70’s Fusion And Modern Prog. Definitely, Super Group Of Prog, Nova Collective Has Just Released One Of The Best Instrumental Record Of The Year, Incredible Debut, “The Further Side” !!

DISC REVIEW “THE FURTHER SIDE”

“新たな集合体” の名を冠するインストゥルメンタルスーパーバンド NOVA COLLECTIVE が、超越的でモニュメンタルなデビュー作 “The Further Side” をリリースしました!! 既成観念の “向こう側” へと辿りついた彼らの音風景は、リスナーを永遠の旅路、ミュージカルジャーニーへと誘うことでしょう。
Dan Briggs (BETWEEN THE BURIED AND ME), Richard Henshall (HAKEN), Matt Lynch (TRIOSCAPES, ex-CYNIC), Pete Jones (ex- HAKEN) というまさにモダンプログレッシブを象徴する賢哲が参集した NOVA COLLECTIVE。彼らが宿した清新なる息吹は、音楽が最も革新的で創造的だった70年代の空気を濃密に吸い込み、芸術のあり方を純粋に示しています。
1970年に Miles Davis がリリースした “Bitches Brew” は、音楽史上最も輝かしいロックとジャズの婚姻だったと言えます。”The Further Side” は、”フュージョン” という音楽概念を定義した、多様でイマジネイティブなその”マイルストーン”の精神を、凛として現代へと継承した畢生の作となりました。
アルバムは、ロシアのロマンティックかつダイナミックなバレエを想起させる “Dancing Machine” でその幕を開けます。メカニカルな BTBAM とは趣を異にする、野性的でファットな Dan Briggs のベースラインはオーガニックなボトムで自由を謳歌し、ジャズとロック、そしてメタルを華麗に行き来する Matt Lynch のドラムスと豪壮なインタープレイでアルバムを牽引して行きます。
Richard Hanshall のメロディアスでデリケートなギターワークは作品に浸透し、何より Pete Jones のガラス細工のように美麗で卓越したエレピ、オルガンサウンドは、リスナーに Chick Corea の形影を追わせ、過去と現代をリンクさせる鍵として枢要を占めていますね。
“Dancing Machine” に漂う神秘的でエスニックなムードは、インタビューでも語ってくれた通り、ワールドミュージックからの影響を反映しています。そして確実に John McLaughlin のコンポジションとも強く共鳴しているはずです。
“Bitches Brew” にも参加し、後に”フュージョン”を代表する集団となる THE MAHAVISHNU ORCHESTRA を創立した天賦のギタリストは、ロックとジャズのみならず、フラメンコ、オーケストラ、そしてインド音楽にまでその興味の幅を広げ、クロスオーバーさせた多様性の伝道師だと言えるでしょう。「フュージョン、ワールドミュージック、ジャズ、プログ、クラッシック。アイデアの全てはそこから来ている」 と Dan が語ってくれた通り、”The Further Side” にはあの奇跡のオーケストラと同様の血脈が流れてもいるのです。
実際、”Air” は日本の伝統楽器、琴をイメージして書かれた楽曲だと Dan は語ってくれました。そして、日本の陽春を鮮やかに切り取ったかのような、オリエンタルで麗しきそのサウンドグラフには、NOVA COLLECTIVE がサーカスではなく音楽のために集まった集団である証が克明に刻まれていますね。
確かにメンバーは全員が超絶技巧の持ち主ですが、アルバムにエゴを感じさせる陳腐な曲芸は一切存在しません。存在するのは、楽曲の一部と化したエレガントで流麗なリードパートとアンサンブルのみ。各自が秘める、描かれた設計図をグレードアップさせるようなインテリジェンス、即興の妙こそがまさに一流の証明だと感じました。
勿論、クラッシックなフュージョンサウンドが基幹を成している “The Further Side” ですが、”State of Flux” を聴けばバンドが “新たな集合体” を名乗った意味が伝わるでしょう。MESHUGGAH と同等の緊張感、ヘヴィネス、リズムの錯綜が、エレピを核とするレトロなフュージョンサウンドを伴って再現される Tigran Hamasyan も驚愕のニューフロンティアがここにはあります。70年代には存在し得なかった、正確無比なシュレッド、硬質でDjenty なリズム、そして Jamie King による極上のプロダクションは “フュージョン” の極地、最先端を提示し、彼らの存在意義を強くアピールしていますね。
アルバムは WEATHER REPORT や RETURN TO FOREVER への憧憬と、モダニズムを巧みに融合させたタイトルトラック “The Further Side” で神々しくもドラマティックにその幕を閉じます。
今回弊誌では Dan Briggs にインタビューを行うことが出来ました。彼のホームグラウンド BTBAM の “Colors” 10周年ツアーについても言及しています。どうぞ!!

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NOVA COLLECTIVE “THE FURTHER SIDE” : 10/10

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