WORLD PREMIERE !! FULL ALBUM STREAM【VIPASSI: SUNYATA】


FULL ALBUM STREAM : VIPASSI “SUNYATA”

THE MEMBERS OF AUSTRALIAN SHOOTING STAR, NE OBLIVISCARIS & HADAL MAW HAS JUST LAUNCHED “EXTREME INSTRU-METAL” BAND VIPASSI !!

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With ‘Sunyata’, VIPASSI offer such a rare album that combines ecstatic technical virtuosity with a love of creating atmospheric soundscapes, sparkling melodies, and captivating passages.
VIPASSI were birthed in 2009 by guitarist Ben Boyle and members of Australian shooting stars NE OBLIVISCARIS, which marked the beginning of a long journey of writing and rehearsing. They soon settled on an instrumental style that captured the openness aimed for to allow any listener to interpret and connect with the material subjectively. Their project represents a desire to explore beauty and darkness in all its shades, through melodic and complex compositions that are bemused in themes of the struggles of the human experience, exploring nature, spirituality and science.
The roots of their sound reach back into a time when bands such as ATHEIST and CYNIC began to reform extreme music by infusing jazz and progressive elements into death metal. Now VIPASSI add a new chapter to the story with the instrumental highlight ‘Sunyata’. Dig deep into this musical treasure trove spilling over with shiny details, glittering melodies, and wealth of rhythm patterns.

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オーストラリアンシューティングスター、NE OBLIVISCARIS, HADAL MAW のメンバーが所属する別バンド VIPASSI は BLOTTED SCIENCE, CONQUERING DYSTOPIA, EXIVIOUS といった Extreme Instru-Metal に連なる新たな才能です。
1/20 にリリースするデビューフルレングス “Sunyata” は、ツインギターが織りなすテクニカルでレイヤーされたリフワーク、フレットレスベースのフレキシブルなサウンド、そしてクリエイティブなリズムを併せ持ったエポックメイキングな作品です。
凶悪なブラストビートからアトモスフェリックなサウンドまで自在に操るコンポジションの妙は、確かにあの NE OBLIVISCARIS のメンバー3人が所属することを示唆しています。しかし同時に VIPASSI はよりユニークでプログレッシブなコンポジションへと特化されており、インストルメンタルでありながら Death Metal を新たな領域へと推し進めた CYNIC, ATHEIST にモダンなフレイバーを加えたような音像と言えるかもしれません。
今回弊誌では、世界に先駆けて自然や科学、精神性にフォーカスした “SUNYATA” のフルストリームを行うことが出来ました。NE OBLIVISCARIS と併せてぜひチエックしてみてくださいね!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KHEMMIS : HUNTED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KHEMMIS !!

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Modern But Traditional! Denver Based Four Piece Doomed Rock’n Roll Act, Khemmis Has Just Released One Of The Most Important Doom Record “Hunted” !!

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DISC REVIEW “HUNTED”

US デンバーの Doom Metal カルテット KHEMMIS がリリースした 2ndアルバム “Hunted” はシーンの注目を一身に集めています。アルバムは、老舗メタル誌 Decibel Magazine でアルバムオブザイヤーを獲得した他、様々な音楽誌、ウェブサイトで2016年のベストアルバムに選ばれているのです。
KHEMMIS のデビュー作 “Absolution” は MASTODON と PALLBEARER のちょうど中間に位置するようなモダンな Doom / Sludge 作品で、近年活気を得て来た Doom シーンにまた新たな才能が舞い降りたことを知らしめました。
しかし博士号を持つメンバー2人が牽引する、この知的でメタルに忠誠を誓ったバンドが同じ場所へと留まることはありませんでした。デビューフルから僅か15ヵ月で届けられた KHEMMIS の次章 “Hunted” はそのイメージを明らかに変化させていたのです。
インタビューにもあるように、遂にバンド全員がコンポジションに参加した “Haunted” はよりクラッシックロック、トラディショナルメタルの領域へと接近したレコードとなりました。全5曲、44分の作品は全てがロックの美学に捧げられています。
“Three Gates” はアルバムを象徴する楽曲です。THIN LIZZY や MOTORHEAD をモダンなスラッジサウンドで再現したかのようなリフの暴走に、美麗なツインギターハーモニーが切れ込むとそこはまさしく KHEMMIS の世界。凶暴なグロウルと共に突き進むサウンドの壁が突如として崩壊し、叙情を極めたクリーンボーカルが紡がれる刹那は奇跡的とも言えるほどロックを体現しています。
実際、バンドの要でギター/ボーカル Phil Pendergast と Ben Hutcherson のコンビネーションには目を見張るものがありますね。2人の繊細なまでにレイヤーされたギターハーモニーは WISHBORN ASH を想起させるほど美しく、バンドの顔となっています。加えて、Ben のダーティーなボーカルと Phil のクリスタルのようにナーバスな歌声のコントラストは、インタビューで述べているように”モダンなレンズ”を通した Doomed Rock’n Roll を体現する重要な鍵だと言えるでしょう。
さらに叙情味を加速させた “Beyond The Door” では、JUDAS PRIEST のゴージャスなハーモニーアルペジオ、そして IRON MAIDEN の3連シャッフルが Doom という枠組みの中で効果的に使用されています。故に楽曲はテンポや拍子をプログレッシブと言えるほど頻繁に変えて行きますが、スロウ一辺倒でなく、ダイナミズムを追求するその姿勢には、哀愁に満ちたメロディーとも相俟って北欧の巨人 CANDLEMASS を思い起こさずにはいられませんね。
アルバムを締めくくるタイトルトラック “Hunted” は13分の壮大なエピックです。BARONESS をイメージさせるローチューンドのファズギターで MERCYFUL FATE を再現したとも言えるドラマティックな前半部分に魅了されたリスナーは、後半の荘厳でアトモスフェリックなアコースティックパートからトレモロリフまで導入したモダンで壮大、感動的な大円団に驚愕し喝采を捧げることでしょう。そこには YOB や NEUROSIS をしっかりと通過し咀嚼した、2010年代のバンドだからこそ持つ多様性、強みがありますね。
KHEMMIS は勿論、よりアトモスフェリックスかつサバス、70’s Prog に接近した PALLBEARER、そして煌びやかな 80’s Metal と現代的な Black Metal を融合させた SUMERLANDS などが話題となっているように、確かにレトロリバイバルの波はメタルシーンにも押し寄せています。ただ焼き直すだけではなく、各バンドとも”モダンなレンズを通して音楽を見ていることが重要で、興味深いレトロフューチャーなサウンドはこれからさらに拡がりを見せていくことでしょう。
今回弊誌では KHEMMIS にインタビューを行うことが出来ました。日本人にこそアピールする素晴らしいメロディーを持つバンドです。どうぞ!!

KHEMMIS “HUNTED” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JYOCHO: 祈りでは届かない距離 (A PRAYER IN VAIN)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO OF JYOCHO !!

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One Of The Most Talented Guitar Player From Japan, Daijiro Nakagawa With JYOCHO Has Just Released Very Impressing Math-Rock Meets J-Pop Record “A Prayer In Vain” !!

DISC REVIEW “祈りでは届かない距離”

Math-Rock という東洋が主たる発信地の魅力的で、しかし曖昧なジャンルにおいて、宇宙コンビニが果たした役割は非常に大きなものでした。短いキャリアで閃光のように強い輝きを放ったバンドは、時に幾何学的、時に有機的な美しきサウンドスケープに、日本らしいポピュラーミュージックの色合いを添え、ジャンルの曖昧さを逆手に取って Math-Rock の可能性を証明し、世界中から大きな賞賛を浴びたのです。
バンドの解散から一年半。リーダーでギタリストのだいじろー氏が JYOCHO というプロジェクト名でリリースしたデビュー作 “祈りでは届かない距離” は、さらに研ぎ澄まされたそのポップセンス、多様でカラフルな音楽性、高いミュージシャンシップを滑らかに溶け合わせ、今度は自身の可能性を証明したレコードとなりました。
JYOCHO とはすなはち”情緒”。インタビューにもあるように、日本らしい四季のような感情の変化を世界に伝えたいという想いで名付けられた JYOCHO はまさにこのカラフルなレコードを体現しています。
アルバムオープナー、”family” は宇宙コンビニと JYOCHO を繋ぐミッシングリンクのような存在です。クリーンでピュア、しかしテクニカル。宇宙コンビニ時代からだいじろー氏のトレードマークとも言えるマスマティカルなギターフレーズに導かれたリスナーは、流れ来るフルートの美しく雅な響きに驚きを覚えるでしょう。アルバムを通してこのフルートの音色は、JYOCHO の唯一無二の世界観”情緒”を醸し出すことに大いに貢献していますね。
確かにジャジーなリズムパターン、複雑なコンポジション、繊細なギターフレーズは Math-Rock のアイデンティティーを主張しますが、楽曲へと自然に溶け込み寄り添い、ただ深化を促すジグソーパズルのピースとして存在しているようにも思えます。
実際、ポップスの領域へと繋がるような、rionos の中性的でイノセントな歌声、メロディーが JYOCHO, そして “祈りでは届かない距離” を特別な存在にしていることは明らかです。
だいじろー氏が原点だと語る出身地、京都を想いながら作られたであろう “故郷” は、その Post-Rock 的なサウンドスケープを背景に歌い紡がれる rionos の優しく、懐かしく、実にエモーショナルなボーカルが、リスナーの心へフワリフワリと侵入し様々な感情を喚起します。勿論、そこに情緒を感じるファンも多いでしょう。
とは言え、アルバムにはロック的なスリルも当然存在します。”太陽と暮らしてきた” の変拍子、ギターとフルートのユニゾン、そして対位法的インプロヴァイズは実にエキサイティングで JYOCHO という集団のミュージシャンシップの高さを見せつけています。だいじろー氏のギターにより深く耳を傾ければ、タッピング以外にも、ベンドやアルペジオ、ハーモニクスの使用法が卓越していることにも気づくはずです。人生を変えたアルバムを見れば分かる通り、驚異的なアコースティックギタリストから影響を受け、右手の五本指をも自在に操る彼の奏法はロックのフィールドにおいては実に異端で革新です。
こうした JYOCHO の楽器とボーカルの素晴らしいバランス、見事な調和は、rionos の歌声にも相まって、偶然にも、”祈り”を捧げるアーティスト Cocco の名作群 “クムイウタ” や “ラプンツェル” を想起させる瞬間が存在します。確かに世界は “祈りでは届かない距離” で隔てられていますが、それでも私たちは”気づく”必要がありますし、”調和”へと向かうべきでしょう。
今回弊誌では、だいじろー氏にインタビューを行うことが出来ました。読者のみなさまにも”気づいて”いただければ幸いです。どうぞ!!

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JYOCHO “祈りでは届かない距離” : 10/10

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THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2016 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2016 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

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1. GOJIRA “MAGMA”

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2016年は日本でもゴジラ旋風が吹き荒れましたが、世界のメタルシーンを制圧したのも間違いなく GOJIRA だったと言えるでしょう。
奇才 Duplantier 兄弟率いるフランスの4人組 GOJIRA がリリースした “Magma” と名付けられたレコードは、これまでのどの作品とも異なるものでした。コンパクトな43分という作品でフォーカスされたのは、エモーションとアトモスフィアを前面に押し出した、キャッチーさとアート性の共存。Prog, Death, Sludge, Tribal, Math をユニークにミックスし、メタルの最先端を走ってきた巨人は、その先鋭性を微塵も失うことなくコマーシャルな感覚を強く生み出しているのです。
アルバムオープナー、”The Shooting Star” はチャレンジングな楽曲。実に瞑想的で、Joe Duplantier のヒプノティックなクリーンボイスとドライブするグルーヴが卓越したアトモスフィアを生み、リスナーをトランス状態へと誘います。実際、Joe のクリーンボイスは以前より遥かに多用されており、尚且つ雄弁です。
“Silvera” ほどエモーショナルな瞬間はこれまでの作品には存在しなかったはずです。メインリフの重量感に、タッピングが生み出すアーティスティックなムード、そしてキャッチーなリードギターとクリーンボーカルが三位一体となり溢れる強烈な感情。このヘヴィーなテリトリーのエモーションは、レコーディング中に Duplantier 兄弟の母親が亡くなったことに起因しています。
兄弟の様々なな感情、特別なパッションを全てクリエイティビティに注いだ結果、アルバムは無駄な時間など一切存在しない、濃密でアトラクティブな傑作に仕上がりました。MASTODON やBARONESS もチャレンジしていますが、芸術性とコマーシャリズムの融合という点でこの作品を超えるモダンメタルのレコードはないと断言出来るように思います。

2. ALCEST “KODAMA”

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ALCEST は所謂 “Blackgaze”、Black Metal と Shoegaze を融合させたパイオニア的存在です。幻想的で内省的。メランコリックな繊細さと悲痛な激しさが生み出す圧倒的なダイナミズム、神々しいまでの美しさはシーンに衝撃を与え、DEAFHEAVEN などに続く Post-Black のうねりを創出したのです。
“Kodama” は前作 “Shelter” と対になるカウンターパーツ的な作品と言えるかもしれません。インタビューにあるように、今作のテーマとなったもののけ姫とも通じる自然を食い物にする現代社会、そしてその闇の部分でもあるテロリズムが ALCEST を動かしました。ある意味メタルのルーツに戻り、よりダークな1面にフォーカスした”最も怒れる”作品は、それでもやはり徹頭徹尾 ALCEST です。そして同時に、彼らの新しいチャレンジである POP センスが花開いたアルバムであるとも言えるでしょう。

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3. DAVID BOWIE “★”

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ロックにとって、2016年は R.I.P の年でした。それは勿論、多くの伝説的なアーティストを失ったという意味でもあり、同時に”ロックを避ける”というやり方で最も本来のロックを体現していた David Bowie を失ったという意味でもあるのです。
彼の遺作となった”★” は NYC の先鋭実力派ジャズミュージシャンを起用し制作されました。しかし、David は決してジャズアルバムを作りたかった訳ではありません。ここには、サウンドトラック、ロック、ソウル、インダストリアル、フォーク、ヒップホップなどカラフルでエクレクティックなサウンドの万華鏡があるだけです。
David は Kendric Lamar の “To Pimp A Butterfly” を愛聴していたと言われています。所謂 Jazz the New Chapter と共感したのは、ただ一つのジャンルに囚われず、様々なサウンドを取り入れジャンルを拡大して行くその精神性でした。
“Lazarus” は自身の墓標だったのでしょうか、トーマス・ジェローム・ニュートンの再来でしょうか、それともジギー・スターダストの復活なのでしょうか?ただ一つ言えることは、この狂おしいまでにダークで美しい世界観は、唯一無二で、究極にロックの本質である冒険性や自由さに溢れているということです。彼の遺志を次ぐアーティストがいつかロックの世界に現れるのでしょうか。

4. ASTRONOID “AIR”

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ミュージックシーンには、時にリスナーの想像を遥かに超えて、ジャンルの壁を平然と、無慈悲なまでに叩き壊すような存在が現れます。マサチューセッツを拠点とし、”Dream Thrash” を指標する5人組 ASTRONOID はまさにそういったバンドでしょう。彼らが Blood Music からリリースしたデビューフルレングス “Air” は、メタルシーンのトレンドを左右しかねないほどの傑作にして重要作となりました。
Black Metal に新たな要素を加えた Post-Black と呼ばれるジャンルが注目を集める、昨今のメタルシーン。多幸感を伴うアトモスフィア、Shoegaze 要素を融合させた ALCEST, DEAFHEAVEN、WOLVES IN THE THRONE ROOM, 実験的な Math / Prog 要素を果敢に取り入れた KRALLICE, LITRUGY は間違いなく Post-Black シーンのフラッグシップだと言えますね。
ASTRONOID はその両輪、 Shoegaze, Math / Prog 要素のみならず、Thrash Metal, Prog, Post-Rock, Power Metal, Dream Pop など実に多様なジャンルをミックスし、”Black Metal の最終形態” とでも表現したくなるような新しい音楽を生み出したのです。
51分間のシネマティックなドリームスケープは、多幸感と希望に満ち、ポップさの限界までプッシュしながら、アグレッションと実験性をも多分に盛り込んだ、Black Metal のマイルストーン的な作品として長く語り継がれることでしょう。

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5. FALLUJAH “DREAMLESS”

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現在、海外のメタルシーンにおいて最も注目を集めている新鋭の1つ、変革者にして Atmospheric Death Metal の始祖 FALLUJAH。
“Death Metal Revolution” (デスメタル革命) とまで評された出世作 “The Flesh Prevails” から2年。メタル界のメガレーベル、Nuclear Blast に移籍して初の作品 “Dreamless” は、より美しく、よりキャッチーで、同時にシンセサウンドや女性ボーカルをチャレンジングに取り入れた、多様なモダンメタルを象徴する作品に仕上がりました。

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6. MESHUGGAH “THE VIOLENT SLEEP OF REASON”

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MESHUGGAH はモダンメタル、エクストリームミュージックの帝王でありパイオニアです。Djent は勿論、Jazz/Fusion を取り入れた Instru-metal, より数学的な要素にフォーカスした Mathcore などそのポリリズミックでローチューンドなヘヴィーサウンドが後続に与えた影響は計り知れません。
4年ぶりにリリースされた新作 “The Violent Sleep of Reason” は彼らのトレードマークとも言える複雑でヘヴィーな世界観、リズムセンスは保ちながら、よりオーガニックでストレートなアルバムに仕上がりました。アルバムオープナー、”Clockworks” を聴けば作品のプロダクションが非常に生々しく、有機的で、今日のメタルアルバムとは趣を異にすることに気づくでしょう。オールドスクールとも言えるノスタルジックなサウンドは、皮肉なことに過去のいくつかの作品よりもギタートーンをビッグに響かせ、新たな怪物を生んでいます。
メカニカルで精密に計算されたグルーヴを、率直で生々しいプロダクションで包み込んだ理由。それはアルバムのコンセプトに通じます。”危険な睡眠状態” とは、世界中で起きている無慈悲なテロリズムに対して、何ら行動を起こさない一般の人々を指しています。MESHUGGAH が作品に有機的な感覚、エモーションを強く取り入れたのは、世界の人たちにに手を挙げて欲しい、テロリズムと戦わなければならないというメッセージでもあるのです。
ダイナミックで、インテンスに溢れ、エナジーに満ちたレコードで MESHUGGAH はその価値を再度証明しました。この作品を受け止める私たちには何が出来るでしょうか?

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WHITECHAPEL : MARK OF THE BLADE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZACH HOUSEHOLDER OF WHITECHAPEL !!

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Pioneer of US Deathcore, Whitechapel Opens Up The New Chapter With “Mark Of The Blade”!! Don’t Miss Their First Japan Tour In April!!

DISC REVIEW “MARK OF THE BLADE”

US Deathcore の帝王 WHITECHAPEL が新たな領域へと踏み出した新作 “Mark of the Blade” をリリースしました!!10年に渡ってその王冠を守り続けたパイオニアが舵を切ったその先には、メタルの革新があるはずです。
エクストリームメタルシーンにおいて、狂気のレンジと存在感を放つ Phil Bozeman のガテラルが群を抜いていることを否定するファンはいないでしょう。そして彼が今回新たに証明したのが、そのクリーンボーカルの実力でした。
WHITECHAPEL にとって、”Mark of the Blade” は1枚のアルバム以上の意味を持つ、新境地へと赴く強いステイトメントになっています。間違いなく、Deathcore は近年で最も台頭し人気を博すモダンメタルの枝葉ですが、それ故にシーンが飽和気味な状態であることも事実。このタイミングで、WHITECHAPEL, そして SUICIDE SILENCE というジャンルの二大巨頭がクリーンボーカルを導入したことは決して偶然ではないはずです。
アルバムの4曲目に位置する “Bring Me Home” は WHITECHAPEL の可能性をさらに拡げる楽曲となりました。クリーンボイスをメインに据えたオルタナティブでミステリアスなムードの5分間はバンドの知性を物語り、作品に素晴らしいアクセントを生んでいます。TOOL や STONE SOUR、さらには ALICE IN CHAINS を想起するファンも多いでしょう。勿論、アルバムを支配するのは Phil の並外れたデスボイスですが、彼の Maynard James Keenan, Layne Staley の域に達したダークでメロウ、エモーショナルなクリーンはまさにバンドの卓越した新しい顔となっていますね。
ただ、勿論彼らのチャレンジには賛否両論があるはずです。クリーンに加えて、Phil のボーカルはタイトルトラック “Mark of the Blade” が象徴するように、凶悪なだけではなくどこかキャッチーさを伴う場面が増えており、CANNIBAL CORPSE が代表するように Death Metal シーンにはより単純化したグロウルへとシフトする風潮があるとは言え、彼らのエクストリームサイドを愛するファンにはセルアウトと捉えられる可能性も孕んでいますね。
“Venomous” はそういったダイ・ハードなファンの溜飲を下げる一曲でしょう。セルフタイトルと前作 “Our Endless War” がヒントとなっていたように、トリプルギターを生かしたグルーヴや Djenty なリフワーク、Nu Metal 的フックにメロディアスなクリーンギターやピアノの導入など、プログサイドにさらに接近したアルバムで、モッシュピットの突進力で突き進むこの曲は WHITECHAPEL がまだまだ危険な存在感であることを証明しています。
そして Deathcore の矜持を保ちながらも、クリーンボイスとアコースティックギター、オリエンタルなフレーズでバンドの未来を感じさせるアルバムクローサー “Decennium” は終焉に相応しく、アルバムを総括するフックに満ちた素晴らしいコンクルージョンだと感じました。
今回弊誌では、ギタリスト Zach Householder に短いですがインタビューを行うことが出来ました。来年の4月には Evoken de Valhall Production の招聘で待望の初来日も決定しています!”Deathcore は退屈だ”という衝撃の発言も飛び出しました。どうぞ!!

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WHITECHAPEL “MARK OF THE BLADE” : 9.2/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【world’s end girlfriend : LAST WALTZ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH world’s end girlfriend !!

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Japanese Post-rock, Electronica, Classical Music Maestro, world’s end girlfriend Has Just Released Shining New Album “LAST WALTZ”!!

DISC REVIEW “LAST WALTZ”

Post-rock, Electronica, Classical といった要素をミックスし、独自の美しき純粋音楽を作り上げる world’s end girlfriend (以下WEG) がフルアルバムとしては実に6年振りとなる新作 “LAST WALTZ” をリリースしました!!
WEG は音楽家、前田勝彦氏のソロプロジェクト。Virgin Babylon Records の主催として、Vampillia, Have a Nice Day!, Matryoshka といった先鋭的かつ研ぎ澄まされた感性を持つアーティストの作品を発表、サポートしつつ、AKB48 ドキュメンタリー映画の音楽を担当するなど、昨今のミュージックシーンでその存在感は確実に際立っています。
前作 “SEVEN IDIOTS” のリリースが2010年。それから日本は3.11を経験しました。現代日本の価値観を根底から覆した災害を前にして、多くのアーティストが希望の歌を奏でたり、悲しみの歌を紡ぐ中、WEG は自然と音楽を比較します。
命を育む母なる海が多くの命を奪っていく現実。何の感情も伴わず、善悪を超えたただ圧倒的な光景は音楽を超えている…その人間を介さない根源的な世界観は WEG の世界と強く通じるものでした。自然への挑戦。”LAST WALTZ”のテーマを自身の名前 “world’s end girlfriend” とした意味もそこにあります。
インタビューを読めば分かるように、WEG ほど純粋に音楽への奉仕を貫くアーティストはいないでしょう。”LAST WALTZ” に存在するのはただ”美しさ”のみ。そこにメッセージ、感情というフィルター、つまり人間はほぼ介在していません。WEG は媒体としてただ音楽が求める先を具現化する。まさにこの表現方法こそが、今回彼が追求しチャレンジした世界なのです。
ジャケット、MV など今回何度も使用された花はそれを象徴しています。何も語らずとも、花はその美しさだけで世界に影響を与えています。WEG の美しき音楽もただ存在するだけでリスナーへ命のありようを伝えます。
地震の揺れをダンスとして捉えた “LAST WALTZ” というタイトルには、同時に「死の舞踏」という意味も込められています。死を前にしても美しく踊る魂でありたい。粛々と生を全うすることの尊さ、命の持つ根源的な強さを表しているのです。直接的な表現では決して生まれないであろう、誠実さ、純粋さがここにはあります。
ぜひ “Flowers of Romance” を聴いていただきたいと思います。13分の美しさを極めた至上のワルツはまさにメメント・モリ。死を前にして悠然と優雅に舞う魂が、音を通して見えるはずです。
ダークシンセ、ストリングス、ソプラノボイス、エレクトロビート、ノイズ。全てが WEG というマエストロの手に集まり具現化されたあまりにも圧倒的な死のダンスは、アートは自然に勝るのかという問に対する無言の回答として、その存在、楽曲という命に大きな意味を生んでいますね。
今回弊誌では、WEG にインタビューを行うことが出来ました。最もクリスマスらしく、実は最もクリスマスらしくないアルバムかもしれませんね。どうぞ!!

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world’s end girlfriend “LAST WALTZ” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ULCERATE : SHRINES OF PARALYSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMIE SAINT MERAT OF ULCERATE !!

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Transcend Death Metal Trio From New Zealand, Ulcerate Has Just Released Modern Death Metal Art “Shrines of Paralysis” !!

DISC REVIEW “SHRINES OF PARALYSIS”

ニュージーランドから虎視眈々と世界を狙う、異能のトリオ ULCERATE が”宇宙的恐怖”を内包した新たな傑作 “Shrines of Paralysis” をリリースしました!!Death Metal を超越した “Transcend Death Metal” はシーンに驚きと賞賛をもって迎えられています。
Death Metal は時代と共に様々な影響を加え、枝葉が伸びるかの如く進化を続けてきました。昨今では、THE FACELESS を代表とする複雑でプログレッシブな所謂テクデス、FALLUJAH のようにヘヴィネスと美麗なアトモスフィアを兼ね備えた理知的な新鋭、アヴァンギャルドに突き進む GORGUTS など様々な個性が存在しています。ある意味洗練され拡散しすぎた感のあるシーンにULCERATE が提示しているのは、原点回帰からの進化です。
勿論、Death Metal 創世記の怪物たちが目指したのは、究極のブルータリティー、恐怖や狂気を脳髄へと突きつけるサウンドでした。ULCERATE はまず、ジャンルの原点とも言える場所へと立ち返り、ドロドロとしたラブクラフト的、もしくは和製ホラー的な世界観で “Shrines of Paralysis” を覆ってみせました。
プロダクションやラウドネス、そして耳を傾けるだけで伝わる底知れぬ恐怖。地を這うようなグロウルに奈落の底の重低音。確かにここには、Death Metal の創世記を彩った古の怪物たちの息遣いが感じられます。しかし、彼らはただ過去を再現しているに留まりません。
この”狂気のアンセム”とも言える作品は、アルバムを通して混沌と真理、黄泉と現世、スロウとファスト、ヘヴィネスとアトモスフィアを行き来します。その独特な対比を駆使した表現方法は、確実に世に溢れる “Technical Death Metal” とは一線を画しており、メタルシーンに新たなダイナミズムをもたらしていると言えるでしょう。
アルバムオープナー、”Abrogation” はまさに ULCERATE のやり方を示した楽曲です。個性的な奇妙に捻れ歪んだたリフワークに、混沌としたコンポジション。次元をワープするように繰り出されるテンポチェンジ。まるでストレートで洗練された”衛生的な”現代の Tech-Death を嘲笑うかのように、ブラストとドゥームの狭間で蠢き変化する”人間よりも遥かに昔から存在するものたち”は、禍々しくも妖麗で、その奇観、速と遅のダイナミズムにリスナーは吸い寄せられ一瞬たりとも目を逸らすことは不可能です。
続く “Yield to Naught” では ULCERATE の Death Metal を”Transcend”超越した部分がより強調されています。激烈な Death Metal パート、呪詛を湛えた Doom パートと対比するように、中間部にはアトモスフェリックな静寂と耽美なメロディーが用意されており、それはまるでホラー映画のお約束、惨劇の前の美女シャワーのように恐怖を増幅しています。前作 “Vermis” から進化を遂げたこのコントラストはアルバムを象徴する重要なポイントとなっていますね。
作品にそういったダイナミズムやコントラストを具現化しているのは、トリオならではのタイトなインタープレイ、とりわけメインコンポーザーでありドラマー Jamie Saint Merat のリード楽器のようなドラムスであることは明らかです。
偉大なジャズマエストロのようにアーティキュレーションやフレージングを意識した、3秒ごとに表情を変え続けるクリエイティブでカラフルなドラミングは、実にエキサイティングで魅力的。フレキシブルに Stop & Go、Loud & Quiet を司る Jamie はまさにバンドの原動力と言えるでしょう。”There Are No Saviours” の中間部で聴けるジャズとさえ言えそうな、幽玄でプログレッシブなパートはこのトリオの底知れぬ実力を物語っていますね。
今回弊誌ではその Jamie にインタビューを行うことが出来ました。今年の年間ベストメタルアルバムにも多く選出されている傑作をぜひ味わってみてくださいね。どうぞ!!

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ULCERATE “SHRINES OF PARALYSIS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ONI : IRONSHORE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ONI !!

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Prog Metal Newcomers From Hell! Canadian Sextet ONI Has Just Released Sensational Debut Album “Ironshore”!!

DISC REVIEW “IRONSHORE”

カナダから現れた6人組のプログモンスター ONI がセンセーショナルなデビューアルバム “Ironshore” をリリースしました!!究極の狂気と洗練された美しさが同居する作品は、彼らの名を世界に知らしめることとなるでしょう。
アルバムオープナー “Barn Burner” は複雑怪奇、魑魅魍魎が跋扈する鬼の世界への ONI からの招待状です。何よりもまず ONI を特別で奇抜な物の怪にしているのは、やはり Xylosynth の存在でしょう。この画期的で新しい、”木琴シンセ”といった風体の楽器は間違いなく楽曲、そしてメタルシーンに刺激的なヴァイブをもたらしています。
Johnny D の奏でるその未来的なインストゥルメントは、時にサイエンスフィクションの香りを漂わせるシンセサイザーの役割を果たし、一方で圧倒的でギターライクなシュレッドをも炸裂させているのです。”Barn Burner” が示すように、元々リズムマスターが集まったダブルギターのバンドに、Xylosynth のメロディックなシュレッドと近未来的なシンセサウンドが同時にバンドに加わることで、ONI のプログ感覚は飛躍的に高まっているといえるでしょう。
その効果は続くドラマティックな “Eternal Recurrence” にも現れています。中間部に配置された、全ての楽器が参加するクラシカルなユニゾンプレイは、スリリングで壮絶で美しく、驚異的。アルバムで何度も聴かれるように、彼らの卓越したトレードマークとなっていますね。
バンドのプログレッシブな一面は、 11分を超える “The Science” に集約されています。冒頭から、非常に複雑でマスマティカルなリフを提示する楽曲は、百鬼夜行さながらにその形を変えていきます。BETWEEN THE BURIED AND ME を彷彿とさせるヘヴィネスとアトモスフィア、クリーンボーカルとグロウル、プログレッシブとエモーションの対比、そこから導かれる構成力、場面転換の妙は実に見事で、感動的な大円団までリスナーを楽曲へと惹きこんで離しません。
反面、”The Only Cure” ではメタルバンドとしての矜持、ONI の残忍な一面を強く見せつけています。LAMB OF GOD や GOJIRA を手がける名プロデューサー Josh Wilbur が紹介したという誰あろう LoG のボーカル Randy Blythe 本人が参加した楽曲は、まさに救いのない地獄の風景を映し出していますね。タイトで重量感のあるリズム隊は、同時にテクニカルで時にリード楽器の役割をも果たし、アルバムを通して本当に良い仕事をしています。
インタビューでメンバーが強調するように、バラエティー豊かなレコードを目指したという “Ironshore” で、”Chasing Ecstacy” は重要なアクセントだと言えます。クリーンボーカルにフォーカスした楽曲は、作品中でも群を抜いてメロディックで、ロマンチックとさえ表現出来るような哀愁を体現しています。ここでも強調されるテクニカルでクラシカルなメロディーは、POMEGRANATE TIGER を聴けば Martin Andres のセンスだと分かるはずです。そして残念ながら何年も沈黙を貫いている、Prog-MetalCore の重要バンド THE HUMAN ABSTRACT と重なる部分も多いように感じました。
モダンメタルの根幹を成す3連リフ、リズムに特化したアプローチのオリジネーター LAMB OF GOD。そして奇しくもそのドラマーの力を借りたカナダのプログレッシブな先人 PROTEST THE HERO。ONI はすでにこの二大アクトからその実力を認められています。そして確かにその2組や先に挙げた偉人たちの遺伝子を受け継ぎつつ、様々な影響、そこには “Spawn and Feed” で聴ける和風のメロディーも存在する、を取り入れデビュー作にしてオリジナリティーを確立した彼らの将来は約束されたもののようにも思えますね。
今回弊誌では、ONI のメンバー6人全員にインタビューを行うことが出来ました。驚異的な新人の登場です。どうぞ!!

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ONI “IRONSHORE” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITE : CUBIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NOBUYUKI TAKEDA OF LITE !!

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Japanese Math / Post Rock Hero Returns! Lite Goes Back To Their Roots And Opens Up A New Chapter With Accessible And Emotive Record “Cubic” !!

DISC REVIEW “CUBIC”

日本が生んだ Math-Rock / Post-Rock ヒーロー LITE が待望の新作 “Cubic” をリリースしました!!バンドの原点である、タイトで躍動感溢れる生の音像へと回帰した作品は、国内外でインストゥルメンタルミュージックを志すアーティストへの新たな道標となるでしょう。
LITE の近作はその理知的な一面が作風を支配していました。ジグソーパズルのピースを一つ一つ組み合わせるように綿密に、デリケートに構成された彼らのストラテジーは “For All the Innocence” で一つの完成形を提示したと言えます。シンセサイザーを多用し、ギターを何本も重ね、精巧でカラフルな絵画のようにレイヤーされた音世界は、極限までこだわり抜いた足し算の美学であったとも言えるでしょう。
“For All the Innocence” の流れを汲みつつ、やや人間味も戻ってきた前作 “Installation” リリース後、LITE は国内、海外でツアーを重ねます。インタビューにもあるように、そこで彼らはオーディエンスとの温度差に直面したのです。もっとダイレクトに伝わる方法を模索し、たどり着いた一つの結論が “原点回帰” でした。
3年半のインターバルを経て、リスナーの元へと届けられた最新作 “Cubic” にはそうした葛藤を乗り越え、さらにステージアップを果たした魅力的な LITE の現在が詰まっています。
アルバムオープナー “Else” を聴けばバンドの進化が伝わるでしょう。アグレッションと躍動感を前面に押し出し、生々しくフィジカルな感覚を宿す楽曲は、ストレートにロックの真価を表現し、引き算の美学を提示しています。有機物のように形を変えていくトラックには、ワウを使用したヘンドリックスを想起させる激しい熱量のギターソロすらハマっていますね。
勿論、リズムやリフにはマスマティカルなイデオロギーが貫かれていますが、オーガニックで力強いギターサウンドと、抜けの良いダイナミックなドラムスによって、リスナーはまるで4人のメンバーのみが目前に現れ生のライブを見ているかのような錯覚に陥ることでしょう。
アーテュキレーション、ゴーストノート、そしてギターのピッキング音までクリアに感じられる立体感。あの BATTLES を手がける Keith Souza をマスタリングで、THE MARS VOLTA との仕事で知られる Heba Kadry をミキシングで起用したことも、新たなサウンドに寄与していることは明らかですね。
ジャケットのルービックキューブとリンクするように、カラフルでチャレンジングな点も “Cubic” の特徴です。SOIL&”PIMP”SESSIONS のタブゾンビがトランペットで参加した “D” はアルバムを象徴する楽曲かも知れません。自由な雰囲気でジャムセッションからそのまま進化した楽曲は、良い意味でのルーズさ、即興の魅力、ロックの原衝動を合わせ持ち、クリエイティブなエナジーが溢れて出ています。後半の転調を繰り返すアイデアも実にスリリングですね。
以前にも挑戦したとは言え、インストゥルメンタルバンドとして知られる LITE が2曲にボーカルを導入したこともサプライズだと言えますね。アヴァンギャルドなアルバムクローサー “Zero” での根本潤氏の歌唱はエキセントリックで実に効果的ですし、何よりギタリスト武田氏自らが日本語で歌う “Warp” からは、海外で認められる LITE がクールな日本語の美しさ、リズムを伝えるという意味からも重要な1曲だと感じます。
実際、フロム JAPAN のアイデンティティーは、LITE を海外のバンドから際立たせている隠し味では無いでしょうか?”Square” が象徴するような、エモとはまた違った日本的な侘び寂び、哀愁はレコードの要所で現れ作品をさらに魅力的に彩っていますね。
今回弊誌では、バンドのギタリストでコンポーザー、武田信幸さんにインタビューを行うことが出来ました。海外では、toe や ENEMIES も所属する要注目の Topshelf Records からのリリース。どうぞ!!


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LITE “CUBIC” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SAOR : GUARDIANS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY MARSHALL OF SAOR !!

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Scottish Pride Is Here! Pioneer Of Mixing Celtic Folk Music And Post Rock / Metal, SAOR Has Just Released Definitely Epic New Album “Guardians”!! 

DISC REVIEW “GUARDIANS”

ボーカルも担当するマルチプレイヤー Andy Marshall の DIY プロジェクト SAOR がスコットランドのプライドをかけた最新作 “Guardians” をリリースしました!!ケルトの響きと Metal, Post 系の音楽を見事に融合した佳麗で雄大な作品は、シーンに大きな衝撃を与えています!
バンドのマイルストーンとなった前作 “Aura” から磨き上げられ、お馴染みのフィドル、バグパイプ、ストリングスといったケルトの民族楽器がよりクリアーでストレートに使用されたという “Guardians”。確かに、全5曲、全てが10分以上というエピックの極みを体現したかのようなアルバムを聴けば、リスナーはスコットランドへと旅することが可能です。
眼下に広がるのは、雄々しくも鮮やかな彼の地の景色かも知れませんし、独立のために誇り高く戦うハイランドの戦士たちかも知れません。ただ、間違いなく聴く者をスコットランドと結びつけ、その場所、文化、歴史から何かを強く喚起させる作品であることは確かですね。
インタビューで Andy は Black Metal のみにカテゴライズされることに嫌悪感を表していますが、とは言え、”Guardians” の神秘的、瞑想的な至上の美を際立たせているのが、鋭利なトレモロリフと猛々しくもダークな激情のボーカルにあることも事実でしょう。その感情のコントラスト、波打つようなアトモスフィア、音楽的多様性は彼の巧みな演奏とコンポジションの技術によって生み出されているのです。
注意深く “Autum Rain” を聴けば、彼の独特なギターの使用法を感じることが出来るでしょう。冒頭からストリングスの優美な響きが支配する楽曲において、Andy のリードギターは寸分の違和感もなく、まるで第1バイオリンのようにオーケストラに参入します。決して圧倒せず、主役になることもなく、自然にアンサンブルへと調和するこのロックを代表する楽器によって、アルバムにはクラッシックでも既存のロック/メタルでもない前衛的な美しさが生まれているのです。
また、モチーフの展開にも彼独特の方法論が活用されています。10分を超える楽曲群には、当然同じメロディーが何度か現れるのですが、Andy はそのモチーフを決して2度同じアンサンブルで奏でることはありません。楽器の数、種類、そしてダイナミズムを見事に操りながら、交響曲のように楽曲に表情を生んでいきます。
ボーカル、ギター、ドラムス、フルート、バグパイプ、フィドル、バイオリンといったマキシマムな楽器陣で圧倒したかと思えば、一方でピアノやドラムスとリード楽器のみでミニマムな静寂の世界を演出。その対比の妙は、ケルトの魅力的なメロディーと相まってアルバムを実にカラフルに磨き上げています。
そして勿論、インタビューでも語ってくれた通り、使用される民族楽器がデジタルではなく、全てリアルに演奏されている事実がより作品を本物にしていることは明らかですね。
“Hearth” に象徴されるように、今作で実に多彩なバリエーションを見せるようになったドラムスのフィルインやリズムワークを基にしたプログレッシブなアプローチも “Guardians” を際立たせていることを付け加えておきましょう。
今回弊誌では、SAOR の首謀者 Andy Marshall にインタビューを行うことが出来ました。映画 “Braveheart” を想起させるまさにシネマティックな音楽世界。ALCEST のファンは勿論、MOONSORROW や SIGUR ROS のファンにもぜひ聴いていただきたい1枚です。どうぞ!!

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SAOR “GUARDIANS” : 10/10

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