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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WHITECHAPEL : MARK OF THE BLADE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZACH HOUSEHOLDER OF WHITECHAPEL !!

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Pioneer of US Deathcore, Whitechapel Opens Up The New Chapter With “Mark Of The Blade”!! Don’t Miss Their First Japan Tour In April!!

DISC REVIEW “MARK OF THE BLADE”

US Deathcore の帝王 WHITECHAPEL が新たな領域へと踏み出した新作 “Mark of the Blade” をリリースしました!!10年に渡ってその王冠を守り続けたパイオニアが舵を切ったその先には、メタルの革新があるはずです。
エクストリームメタルシーンにおいて、狂気のレンジと存在感を放つ Phil Bozeman のガテラルが群を抜いていることを否定するファンはいないでしょう。そして彼が今回新たに証明したのが、そのクリーンボーカルの実力でした。
WHITECHAPEL にとって、”Mark of the Blade” は1枚のアルバム以上の意味を持つ、新境地へと赴く強いステイトメントになっています。間違いなく、Deathcore は近年で最も台頭し人気を博すモダンメタルの枝葉ですが、それ故にシーンが飽和気味な状態であることも事実。このタイミングで、WHITECHAPEL, そして SUICIDE SILENCE というジャンルの二大巨頭がクリーンボーカルを導入したことは決して偶然ではないはずです。
アルバムの4曲目に位置する “Bring Me Home” は WHITECHAPEL の可能性をさらに拡げる楽曲となりました。クリーンボイスをメインに据えたオルタナティブでミステリアスなムードの5分間はバンドの知性を物語り、作品に素晴らしいアクセントを生んでいます。TOOL や STONE SOUR、さらには ALICE IN CHAINS を想起するファンも多いでしょう。勿論、アルバムを支配するのは Phil の並外れたデスボイスですが、彼の Maynard James Keenan, Layne Staley の域に達したダークでメロウ、エモーショナルなクリーンはまさにバンドの卓越した新しい顔となっていますね。
ただ、勿論彼らのチャレンジには賛否両論があるはずです。クリーンに加えて、Phil のボーカルはタイトルトラック “Mark of the Blade” が象徴するように、凶悪なだけではなくどこかキャッチーさを伴う場面が増えており、CANNIBAL CORPSE が代表するように Death Metal シーンにはより単純化したグロウルへとシフトする風潮があるとは言え、彼らのエクストリームサイドを愛するファンにはセルアウトと捉えられる可能性も孕んでいますね。
“Venomous” はそういったダイ・ハードなファンの溜飲を下げる一曲でしょう。セルフタイトルと前作 “Our Endless War” がヒントとなっていたように、トリプルギターを生かしたグルーヴや Djenty なリフワーク、Nu Metal 的フックにメロディアスなクリーンギターやピアノの導入など、プログサイドにさらに接近したアルバムで、モッシュピットの突進力で突き進むこの曲は WHITECHAPEL がまだまだ危険な存在感であることを証明しています。
そして Deathcore の矜持を保ちながらも、クリーンボイスとアコースティックギター、オリエンタルなフレーズでバンドの未来を感じさせるアルバムクローサー “Decennium” は終焉に相応しく、アルバムを総括するフックに満ちた素晴らしいコンクルージョンだと感じました。
今回弊誌では、ギタリスト Zach Householder に短いですがインタビューを行うことが出来ました。来年の4月には Evoken de Valhall Production の招聘で待望の初来日も決定しています!”Deathcore は退屈だ”という衝撃の発言も飛び出しました。どうぞ!!

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WHITECHAPEL “MARK OF THE BLADE” : 9.2/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【world’s end girlfriend : LAST WALTZ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH world’s end girlfriend !!

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Japanese Post-rock, Electronica, Classical Music Maestro, world’s end girlfriend Has Just Released Shining New Album “LAST WALTZ”!!

DISC REVIEW “LAST WALTZ”

Post-rock, Electronica, Classical といった要素をミックスし、独自の美しき純粋音楽を作り上げる world’s end girlfriend (以下WEG) がフルアルバムとしては実に6年振りとなる新作 “LAST WALTZ” をリリースしました!!
WEG は音楽家、前田勝彦氏のソロプロジェクト。Virgin Babylon Records の主催として、Vampillia, Have a Nice Day!, Matryoshka といった先鋭的かつ研ぎ澄まされた感性を持つアーティストの作品を発表、サポートしつつ、AKB48 ドキュメンタリー映画の音楽を担当するなど、昨今のミュージックシーンでその存在感は確実に際立っています。
前作 “SEVEN IDIOTS” のリリースが2010年。それから日本は3.11を経験しました。現代日本の価値観を根底から覆した災害を前にして、多くのアーティストが希望の歌を奏でたり、悲しみの歌を紡ぐ中、WEG は自然と音楽を比較します。
命を育む母なる海が多くの命を奪っていく現実。何の感情も伴わず、善悪を超えたただ圧倒的な光景は音楽を超えている…その人間を介さない根源的な世界観は WEG の世界と強く通じるものでした。自然への挑戦。”LAST WALTZ”のテーマを自身の名前 “world’s end girlfriend” とした意味もそこにあります。
インタビューを読めば分かるように、WEG ほど純粋に音楽への奉仕を貫くアーティストはいないでしょう。”LAST WALTZ” に存在するのはただ”美しさ”のみ。そこにメッセージ、感情というフィルター、つまり人間はほぼ介在していません。WEG は媒体としてただ音楽が求める先を具現化する。まさにこの表現方法こそが、今回彼が追求しチャレンジした世界なのです。
ジャケット、MV など今回何度も使用された花はそれを象徴しています。何も語らずとも、花はその美しさだけで世界に影響を与えています。WEG の美しき音楽もただ存在するだけでリスナーへ命のありようを伝えます。
地震の揺れをダンスとして捉えた “LAST WALTZ” というタイトルには、同時に「死の舞踏」という意味も込められています。死を前にしても美しく踊る魂でありたい。粛々と生を全うすることの尊さ、命の持つ根源的な強さを表しているのです。直接的な表現では決して生まれないであろう、誠実さ、純粋さがここにはあります。
ぜひ “Flowers of Romance” を聴いていただきたいと思います。13分の美しさを極めた至上のワルツはまさにメメント・モリ。死を前にして悠然と優雅に舞う魂が、音を通して見えるはずです。
ダークシンセ、ストリングス、ソプラノボイス、エレクトロビート、ノイズ。全てが WEG というマエストロの手に集まり具現化されたあまりにも圧倒的な死のダンスは、アートは自然に勝るのかという問に対する無言の回答として、その存在、楽曲という命に大きな意味を生んでいますね。
今回弊誌では、WEG にインタビューを行うことが出来ました。最もクリスマスらしく、実は最もクリスマスらしくないアルバムかもしれませんね。どうぞ!!

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world’s end girlfriend “LAST WALTZ” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ULCERATE : SHRINES OF PARALYSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMIE SAINT MERAT OF ULCERATE !!

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Transcend Death Metal Trio From New Zealand, Ulcerate Has Just Released Modern Death Metal Art “Shrines of Paralysis” !!

DISC REVIEW “SHRINES OF PARALYSIS”

ニュージーランドから虎視眈々と世界を狙う、異能のトリオ ULCERATE が”宇宙的恐怖”を内包した新たな傑作 “Shrines of Paralysis” をリリースしました!!Death Metal を超越した “Transcend Death Metal” はシーンに驚きと賞賛をもって迎えられています。
Death Metal は時代と共に様々な影響を加え、枝葉が伸びるかの如く進化を続けてきました。昨今では、THE FACELESS を代表とする複雑でプログレッシブな所謂テクデス、FALLUJAH のようにヘヴィネスと美麗なアトモスフィアを兼ね備えた理知的な新鋭、アヴァンギャルドに突き進む GORGUTS など様々な個性が存在しています。ある意味洗練され拡散しすぎた感のあるシーンにULCERATE が提示しているのは、原点回帰からの進化です。
勿論、Death Metal 創世記の怪物たちが目指したのは、究極のブルータリティー、恐怖や狂気を脳髄へと突きつけるサウンドでした。ULCERATE はまず、ジャンルの原点とも言える場所へと立ち返り、ドロドロとしたラブクラフト的、もしくは和製ホラー的な世界観で “Shrines of Paralysis” を覆ってみせました。
プロダクションやラウドネス、そして耳を傾けるだけで伝わる底知れぬ恐怖。地を這うようなグロウルに奈落の底の重低音。確かにここには、Death Metal の創世記を彩った古の怪物たちの息遣いが感じられます。しかし、彼らはただ過去を再現しているに留まりません。
この”狂気のアンセム”とも言える作品は、アルバムを通して混沌と真理、黄泉と現世、スロウとファスト、ヘヴィネスとアトモスフィアを行き来します。その独特な対比を駆使した表現方法は、確実に世に溢れる “Technical Death Metal” とは一線を画しており、メタルシーンに新たなダイナミズムをもたらしていると言えるでしょう。
アルバムオープナー、”Abrogation” はまさに ULCERATE のやり方を示した楽曲です。個性的な奇妙に捻れ歪んだたリフワークに、混沌としたコンポジション。次元をワープするように繰り出されるテンポチェンジ。まるでストレートで洗練された”衛生的な”現代の Tech-Death を嘲笑うかのように、ブラストとドゥームの狭間で蠢き変化する”人間よりも遥かに昔から存在するものたち”は、禍々しくも妖麗で、その奇観、速と遅のダイナミズムにリスナーは吸い寄せられ一瞬たりとも目を逸らすことは不可能です。
続く “Yield to Naught” では ULCERATE の Death Metal を”Transcend”超越した部分がより強調されています。激烈な Death Metal パート、呪詛を湛えた Doom パートと対比するように、中間部にはアトモスフェリックな静寂と耽美なメロディーが用意されており、それはまるでホラー映画のお約束、惨劇の前の美女シャワーのように恐怖を増幅しています。前作 “Vermis” から進化を遂げたこのコントラストはアルバムを象徴する重要なポイントとなっていますね。
作品にそういったダイナミズムやコントラストを具現化しているのは、トリオならではのタイトなインタープレイ、とりわけメインコンポーザーでありドラマー Jamie Saint Merat のリード楽器のようなドラムスであることは明らかです。
偉大なジャズマエストロのようにアーティキュレーションやフレージングを意識した、3秒ごとに表情を変え続けるクリエイティブでカラフルなドラミングは、実にエキサイティングで魅力的。フレキシブルに Stop & Go、Loud & Quiet を司る Jamie はまさにバンドの原動力と言えるでしょう。”There Are No Saviours” の中間部で聴けるジャズとさえ言えそうな、幽玄でプログレッシブなパートはこのトリオの底知れぬ実力を物語っていますね。
今回弊誌ではその Jamie にインタビューを行うことが出来ました。今年の年間ベストメタルアルバムにも多く選出されている傑作をぜひ味わってみてくださいね。どうぞ!!

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ULCERATE “SHRINES OF PARALYSIS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ONI : IRONSHORE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ONI !!

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Prog Metal Newcomers From Hell! Canadian Sextet ONI Has Just Released Sensational Debut Album “Ironshore”!!

DISC REVIEW “IRONSHORE”

カナダから現れた6人組のプログモンスター ONI がセンセーショナルなデビューアルバム “Ironshore” をリリースしました!!究極の狂気と洗練された美しさが同居する作品は、彼らの名を世界に知らしめることとなるでしょう。
アルバムオープナー “Barn Burner” は複雑怪奇、魑魅魍魎が跋扈する鬼の世界への ONI からの招待状です。何よりもまず ONI を特別で奇抜な物の怪にしているのは、やはり Xylosynth の存在でしょう。この画期的で新しい、”木琴シンセ”といった風体の楽器は間違いなく楽曲、そしてメタルシーンに刺激的なヴァイブをもたらしています。
Johnny D の奏でるその未来的なインストゥルメントは、時にサイエンスフィクションの香りを漂わせるシンセサイザーの役割を果たし、一方で圧倒的でギターライクなシュレッドをも炸裂させているのです。”Barn Burner” が示すように、元々リズムマスターが集まったダブルギターのバンドに、Xylosynth のメロディックなシュレッドと近未来的なシンセサウンドが同時にバンドに加わることで、ONI のプログ感覚は飛躍的に高まっているといえるでしょう。
その効果は続くドラマティックな “Eternal Recurrence” にも現れています。中間部に配置された、全ての楽器が参加するクラシカルなユニゾンプレイは、スリリングで壮絶で美しく、驚異的。アルバムで何度も聴かれるように、彼らの卓越したトレードマークとなっていますね。
バンドのプログレッシブな一面は、 11分を超える “The Science” に集約されています。冒頭から、非常に複雑でマスマティカルなリフを提示する楽曲は、百鬼夜行さながらにその形を変えていきます。BETWEEN THE BURIED AND ME を彷彿とさせるヘヴィネスとアトモスフィア、クリーンボーカルとグロウル、プログレッシブとエモーションの対比、そこから導かれる構成力、場面転換の妙は実に見事で、感動的な大円団までリスナーを楽曲へと惹きこんで離しません。
反面、”The Only Cure” ではメタルバンドとしての矜持、ONI の残忍な一面を強く見せつけています。LAMB OF GOD や GOJIRA を手がける名プロデューサー Josh Wilbur が紹介したという誰あろう LoG のボーカル Randy Blythe 本人が参加した楽曲は、まさに救いのない地獄の風景を映し出していますね。タイトで重量感のあるリズム隊は、同時にテクニカルで時にリード楽器の役割をも果たし、アルバムを通して本当に良い仕事をしています。
インタビューでメンバーが強調するように、バラエティー豊かなレコードを目指したという “Ironshore” で、”Chasing Ecstacy” は重要なアクセントだと言えます。クリーンボーカルにフォーカスした楽曲は、作品中でも群を抜いてメロディックで、ロマンチックとさえ表現出来るような哀愁を体現しています。ここでも強調されるテクニカルでクラシカルなメロディーは、POMEGRANATE TIGER を聴けば Martin Andres のセンスだと分かるはずです。そして残念ながら何年も沈黙を貫いている、Prog-MetalCore の重要バンド THE HUMAN ABSTRACT と重なる部分も多いように感じました。
モダンメタルの根幹を成す3連リフ、リズムに特化したアプローチのオリジネーター LAMB OF GOD。そして奇しくもそのドラマーの力を借りたカナダのプログレッシブな先人 PROTEST THE HERO。ONI はすでにこの二大アクトからその実力を認められています。そして確かにその2組や先に挙げた偉人たちの遺伝子を受け継ぎつつ、様々な影響、そこには “Spawn and Feed” で聴ける和風のメロディーも存在する、を取り入れデビュー作にしてオリジナリティーを確立した彼らの将来は約束されたもののようにも思えますね。
今回弊誌では、ONI のメンバー6人全員にインタビューを行うことが出来ました。驚異的な新人の登場です。どうぞ!!

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ONI “IRONSHORE” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITE : CUBIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NOBUYUKI TAKEDA OF LITE !!

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Japanese Math / Post Rock Hero Returns! Lite Goes Back To Their Roots And Opens Up A New Chapter With Accessible And Emotive Record “Cubic” !!

DISC REVIEW “CUBIC”

日本が生んだ Math-Rock / Post-Rock ヒーロー LITE が待望の新作 “Cubic” をリリースしました!!バンドの原点である、タイトで躍動感溢れる生の音像へと回帰した作品は、国内外でインストゥルメンタルミュージックを志すアーティストへの新たな道標となるでしょう。
LITE の近作はその理知的な一面が作風を支配していました。ジグソーパズルのピースを一つ一つ組み合わせるように綿密に、デリケートに構成された彼らのストラテジーは “For All the Innocence” で一つの完成形を提示したと言えます。シンセサイザーを多用し、ギターを何本も重ね、精巧でカラフルな絵画のようにレイヤーされた音世界は、極限までこだわり抜いた足し算の美学であったとも言えるでしょう。
“For All the Innocence” の流れを汲みつつ、やや人間味も戻ってきた前作 “Installation” リリース後、LITE は国内、海外でツアーを重ねます。インタビューにもあるように、そこで彼らはオーディエンスとの温度差に直面したのです。もっとダイレクトに伝わる方法を模索し、たどり着いた一つの結論が “原点回帰” でした。
3年半のインターバルを経て、リスナーの元へと届けられた最新作 “Cubic” にはそうした葛藤を乗り越え、さらにステージアップを果たした魅力的な LITE の現在が詰まっています。
アルバムオープナー “Else” を聴けばバンドの進化が伝わるでしょう。アグレッションと躍動感を前面に押し出し、生々しくフィジカルな感覚を宿す楽曲は、ストレートにロックの真価を表現し、引き算の美学を提示しています。有機物のように形を変えていくトラックには、ワウを使用したヘンドリックスを想起させる激しい熱量のギターソロすらハマっていますね。
勿論、リズムやリフにはマスマティカルなイデオロギーが貫かれていますが、オーガニックで力強いギターサウンドと、抜けの良いダイナミックなドラムスによって、リスナーはまるで4人のメンバーのみが目前に現れ生のライブを見ているかのような錯覚に陥ることでしょう。
アーテュキレーション、ゴーストノート、そしてギターのピッキング音までクリアに感じられる立体感。あの BATTLES を手がける Keith Souza をマスタリングで、THE MARS VOLTA との仕事で知られる Heba Kadry をミキシングで起用したことも、新たなサウンドに寄与していることは明らかですね。
ジャケットのルービックキューブとリンクするように、カラフルでチャレンジングな点も “Cubic” の特徴です。SOIL&”PIMP”SESSIONS のタブゾンビがトランペットで参加した “D” はアルバムを象徴する楽曲かも知れません。自由な雰囲気でジャムセッションからそのまま進化した楽曲は、良い意味でのルーズさ、即興の魅力、ロックの原衝動を合わせ持ち、クリエイティブなエナジーが溢れて出ています。後半の転調を繰り返すアイデアも実にスリリングですね。
以前にも挑戦したとは言え、インストゥルメンタルバンドとして知られる LITE が2曲にボーカルを導入したこともサプライズだと言えますね。アヴァンギャルドなアルバムクローサー “Zero” での根本潤氏の歌唱はエキセントリックで実に効果的ですし、何よりギタリスト武田氏自らが日本語で歌う “Warp” からは、海外で認められる LITE がクールな日本語の美しさ、リズムを伝えるという意味からも重要な1曲だと感じます。
実際、フロム JAPAN のアイデンティティーは、LITE を海外のバンドから際立たせている隠し味では無いでしょうか?”Square” が象徴するような、エモとはまた違った日本的な侘び寂び、哀愁はレコードの要所で現れ作品をさらに魅力的に彩っていますね。
今回弊誌では、バンドのギタリストでコンポーザー、武田信幸さんにインタビューを行うことが出来ました。海外では、toe や ENEMIES も所属する要注目の Topshelf Records からのリリース。どうぞ!!


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LITE “CUBIC” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SAOR : GUARDIANS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY MARSHALL OF SAOR !!

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Scottish Pride Is Here! Pioneer Of Mixing Celtic Folk Music And Post Rock / Metal, SAOR Has Just Released Definitely Epic New Album “Guardians”!! 

DISC REVIEW “GUARDIANS”

ボーカルも担当するマルチプレイヤー Andy Marshall の DIY プロジェクト SAOR がスコットランドのプライドをかけた最新作 “Guardians” をリリースしました!!ケルトの響きと Metal, Post 系の音楽を見事に融合した佳麗で雄大な作品は、シーンに大きな衝撃を与えています!
バンドのマイルストーンとなった前作 “Aura” から磨き上げられ、お馴染みのフィドル、バグパイプ、ストリングスといったケルトの民族楽器がよりクリアーでストレートに使用されたという “Guardians”。確かに、全5曲、全てが10分以上というエピックの極みを体現したかのようなアルバムを聴けば、リスナーはスコットランドへと旅することが可能です。
眼下に広がるのは、雄々しくも鮮やかな彼の地の景色かも知れませんし、独立のために誇り高く戦うハイランドの戦士たちかも知れません。ただ、間違いなく聴く者をスコットランドと結びつけ、その場所、文化、歴史から何かを強く喚起させる作品であることは確かですね。
インタビューで Andy は Black Metal のみにカテゴライズされることに嫌悪感を表していますが、とは言え、”Guardians” の神秘的、瞑想的な至上の美を際立たせているのが、鋭利なトレモロリフと猛々しくもダークな激情のボーカルにあることも事実でしょう。その感情のコントラスト、波打つようなアトモスフィア、音楽的多様性は彼の巧みな演奏とコンポジションの技術によって生み出されているのです。
注意深く “Autum Rain” を聴けば、彼の独特なギターの使用法を感じることが出来るでしょう。冒頭からストリングスの優美な響きが支配する楽曲において、Andy のリードギターは寸分の違和感もなく、まるで第1バイオリンのようにオーケストラに参入します。決して圧倒せず、主役になることもなく、自然にアンサンブルへと調和するこのロックを代表する楽器によって、アルバムにはクラッシックでも既存のロック/メタルでもない前衛的な美しさが生まれているのです。
また、モチーフの展開にも彼独特の方法論が活用されています。10分を超える楽曲群には、当然同じメロディーが何度か現れるのですが、Andy はそのモチーフを決して2度同じアンサンブルで奏でることはありません。楽器の数、種類、そしてダイナミズムを見事に操りながら、交響曲のように楽曲に表情を生んでいきます。
ボーカル、ギター、ドラムス、フルート、バグパイプ、フィドル、バイオリンといったマキシマムな楽器陣で圧倒したかと思えば、一方でピアノやドラムスとリード楽器のみでミニマムな静寂の世界を演出。その対比の妙は、ケルトの魅力的なメロディーと相まってアルバムを実にカラフルに磨き上げています。
そして勿論、インタビューでも語ってくれた通り、使用される民族楽器がデジタルではなく、全てリアルに演奏されている事実がより作品を本物にしていることは明らかですね。
“Hearth” に象徴されるように、今作で実に多彩なバリエーションを見せるようになったドラムスのフィルインやリズムワークを基にしたプログレッシブなアプローチも “Guardians” を際立たせていることを付け加えておきましょう。
今回弊誌では、SAOR の首謀者 Andy Marshall にインタビューを行うことが出来ました。映画 “Braveheart” を想起させるまさにシネマティックな音楽世界。ALCEST のファンは勿論、MOONSORROW や SIGUR ROS のファンにもぜひ聴いていただきたい1枚です。どうぞ!!

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SAOR “GUARDIANS” : 10/10

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WORLD PREMIERE : FULL ALBUM STREAM【DISPERSE : FOREWORD】


WORLD PREMIERE: FULL ALBUM STREAM “FOREWORD”

Shining Star Of Prog From Poland, DispersE Will Be Back With Their Fantastic New Record “Foreword”!! 

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【ABOUT “FOREWORD”】

Modern Prog シーンにおいて一際異彩を放つ天才ギタリスト Jakub Zytecki 率いるポーランドのテクニカル集団 DispersE が遂に帰ってきます!!バンドはベーシスト、ドラマーを失いましたが、新たに Bartosz Wilk, そして THE ALGORITHM, MONUMENTS で鳴らした Mike Malyan を得てさらに進化を遂げ、来年の2/10に4年ぶりとなる新作 “Foreword” を Season Of Mist よりリリースします!
PINK FLOYD の世界観、DREAM THEATER のテクニック、CYNIC のアトモスフィアを受け継ぎつつ、Jazz から Djent, Electronica まで幅広い影響を加えて独自の革新的なプログレッシブワールドを構成する DispersE。今回公開するファーストトラック “Stay” を聴けば “Foreword”が自身の世界のみならず、Modern Prog シーンすら一歩進めるような作品であることに気づくでしょう。
眩いまでの多幸感とキャッチーさ、そして同時に難解な変拍子に満ちた魅力溢れる楽曲からは、過去のどのバンドとも比較出来ないような強いオリジナリティーを感じます。アンニュイなクリーンボーカルと、インテリジェンス満載の的確なギタープレイが織りなす化学反応はまさに唯一無二。
強いて言うなら、Pat Metheny, DEAFHEAVEN, CHON が Modern Metal の領域でタッグを組んだかのような雰囲気でしょうか。Jakub Zytecki は出色のソロアルバム “Wishful Lotus Proof” を経て、間違いなくそのコンポジションの才ををさらに開花させていますね。
その DispersE の初来日が 12/3, 12/4 に Realising Media の招聘で決定しています。メインアクトは先日幣紙がインタビューを行った DESTRAGE。そして日本からは、CYCLAMEN は勿論、EARTHISTS., GRAUPEL といった新鋭も出演。Tech-Metal ファンにとっては素晴らしい夜になることでしょう。ぜひ彼らの新曲と併せてチェックしてみてくださいね!!

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“One of the very first demo tracks for our new album turned into ‘Stay’. The song revolves around trust and staying true to yourself, no matter what. It is about opportunities – the ones we take and the ones we miss. ‘Stay’ is also dealing with rediscovering beauty in places and things after we had stopped seeing it. As the album is dedicated to Rafał’s mother, who passed away last year – this track is first and foremost about that dedication.”
新作の最も初期のデモの一つが “Stay” になったんだ。何があっても自分を信じ、自らに正直でいるべきだというメッセージを持っているんだよ。同時にチャンスに関しても言及しているね。僕たちには掴めるチャンスもあれば逃すチャンスもあるんだよ。
また、”Stay” では、僕たちが注視しなくなったような場所や物事の再発見にも取り組んでいるね。というのも、アルバムは昨年亡くなった Rafał の母に捧げられているからなんだよ。この曲のまず第一の目的はそこにあるんだ。

FIRST MUSIC VIDEO “TETHER”

“SURRENDER”

“This is the first 8-string DISPERSE song. Some of the very first sketches of ‘Surrender’ came to life more than 3 years ago, not long after our previous album ‘Living Mirrors’ was released.
It is surely a track that connects our band’s old and new worlds as it is heavy and proggy – yet also experimental. Both lyrically and musically, we wanted to capture the state of abandoning the idea of becoming someone else than who we actually are. We wanted to create that energetic, chaotic but also a positive vibe within this song.”

DISPERSE “FOREWORD” (2/10 2017)

Track-list
01. Stay
02. Surrender
03. Bubbles
04. Tomorrow
05. Tether
06. Sleeping Ivy
07. Does It Matter How Far?
08. Foreword
09. Neon
10. Gabriel
11. Kites

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チケットのご購入はこちら。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TWILIGHT FORCE : HEROES OF MIGHTY MAGIC】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLACKWALD OF TWILIGHT FORCE !!

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Adventure Metal Heroes From Twilight Kingdom Have Now Risen! Twilight Force And Their Newest Record “Heroes Of Mighty Magic” Will Conquer The World !!

DISC REVIEW “HEROES OF MIGHTY MAGIC”

Twilight Kingdom から現れた、Adventure Metal の使者 TWILIGHT FORCE が待望の2ndアルバム “Heroes of Mighty Magic” をリリースしました!!ここ日本でも、その独特でヒロイックなパフォーマンス、コスチュームが話題となっているバンドですが、音楽的にも格段に進化を遂げた作品は、彼らの地位を確固たるものにするでしょう。
インタビューでは、頑なにメンバー、いや6人のヒーローたちは Twilight Kingdom から現れたと語っていますが、後半では Falun がホームタウンだと口を滑らせていますので、おそらくはスウェーデンに Twilight Kingdom への扉が存在するのでしょう。とにかく、TWILIGHT FORCE は OPETH や IN FLAMES を輩出したメタルキングダム、スウェーデンが生んだ新たな才能です。最近では SABATON が自らのフェスを主催するほどの人気ですが、TWILIGHT FORCE は公私共に同郷である SABATON の兄弟分的な存在でもありますね。
映画 “The Lord of the Rings” から抜け出してきたかのような出で立ちの6人のヒーローは、実際 Power Metal というジャンルを救う救世主なのかも知れません。BLIND GUARDIAN, SONATA ARCTICA, RHAPSODY といったバンドが全盛だった2000年あたりをピークに、このジャンルに対する注目度は減退し続けて来たように思います。そこには、ある意味、型に拘る様式美の限界が存在したのかも知れませんね。
TWILIGHT FORCE の “Adventure Metal” はしかし、インタビューにもあるように、その停滞を打ち破る 「Power Metal の最も洗練された強烈な表現法であり、進化の頂点」 だと言えます。確かにデビュー作 “Tales of Ancient Prophecies” にはキラリと光る才能の片鱗こそ多分に散りばめられてはいましたが、サウンドやコンポジションにまだまだ垢抜けない部分も少なからず存在していました。しかし、Nuclear Blast というビッグディールを得て臨んだ長尺コンセプトアルバム “Heroes of Mighty Magic” にはまさに Blackwald の言葉を具現化した、極上のエピックワールドが広がっているのです。
進化の頂点たる所以は、Blackwald が語るように、その作曲方法にあるのかも知れません。ピアノから取り掛かり、ほぼ完成形まで進めてから他の楽器を導入するという彼らのやり方は、このジャンルにおいては非常に珍しいように思います。しかし、確かに旋律、ハーモニー、リズムを同時に考慮可能なピアノは、一元的なギターやドラムスから始めるよりも豊かな可能性が存在するようにも思えますね。
そしてその手法から生み出された、時にプログレッシブとも言えるほど非常に緻密で複雑なコンポジションは、格段に進歩したサウンドプロダクションの下、洗練されたオーケストレーション、勇壮でファンタジックなメロディー/クワイア、モダンなテクニックを内包することとなりました。その一方で、Power Metal の鋳型的な部分、特にクラシカルな要素を減退させ、代わりにフォークメタルのエッセンスを吸収することで、見事に映画やロールプレイングゲームのサウンドトラックに接近した独自の斬新なる Power Metal Symphony を完成させたのです。
勿論、アルバムはオープナー “Battle of Arcane Might” から疾走感とカタルシス、そしてシンガロングを誘発する魅惑の旋律を70分に渡って
欠かすことはありません。ただ、ANGRA の Fabio Lione が参加した “There and Back Again”, SABATON の Joakim Broden が参加したタイトルトラック “Heroes of Mighty Magic” は共に10分に迫るドラマティックな1大エピックで、この2曲の構成力、スケール感こそ、まさにアルバムを象徴する楽曲と言えるのではないでしょうか。
今回、Blackwald が “人生を変えた5枚のアルバム”のトップに挙げている作品が BLIND GUARDIAN の “Nightfall in Middle-Earth” なのですが、実は完成した “Heroes of Mighty Magic” を初めて聴いた時、Blackwald は “Nightfall in Middle-Earth” を初めて聴いた時と似た感覚を覚えたそうです。
“Nightfall in Middle-Earth” も “The Lord of the Rings” の作者、トールキンの小説を下にしたファンタジックでエピックな長尺コンセプトアルバム。BLIND GUARDIAN が1998年に提示したのは、非常に緻密かつシネマティックな Power Metal を超えた異形の傑作でしたが、TWILIGHT FORCE は “Power Metal の守護者” の意思をしっかりと受け継ぎながら、現代的にアップデートした作品を閃かし、シーンに投げかけたようにも感じられました。
今回弊誌では、キーボード、ヴァイオリン、チェンバロを担当し、作曲、アレンジの中心でもある Blackwald にインタビューを行うことが出来ました。ぜひライブパフォーマンスの動画もチェックしていただきたいバンドです。どうぞ!!

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TWILIGHT FORCE “HEROES OF MIGHTY MAGIC” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CANDIRIA : WHILE THEY WERE SLEEPING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN LAMACCHIA OF CANDIRIA !!

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The Pioneer Of Experimental Extreme Music, Candiria Has Just Released Their Ambitious New Album “While They Were Sleeping” For The First Time In 6 Years !!

DISC REVIEW “WHILE THEY WERE SLEEPING”

ブルックリンが生んだ、モダンエクストリームミュージックのパイオニア CANDIRIA が6年の沈黙を経て、新作 While They Were Sleeping” と共にシーンへと帰還を果たしました!!バンドの成熟/進化と原衝動が共存するアルバムで、彼らは自らの価値を再度証明しています。
CANDIRIA の冒険は90年代の中盤から始まりました。メンバー各自が持ち寄った様々な影響、Hardcore は勿論、Death Metal, Hip Hop, Jazz, Fusion, Ambient, Noise といったバラバラな音楽をミックスし、奇跡とも思える革新性と共に圧倒的な存在感を見せつけたのです。現在のエクストリームミュージックシーンは、エクレクティックであることが命題のようにも思えるほど、ジャンルをクロスオーバーした作品が注目を集めていますが、その礎を築いたバンドの1つは間違いなく CANDIRIA ですし、後続に与えた影響は計り知れないと思います。
中でも “The Process of Self-Development”, “300 Percent Density” の2作は白眉。”シームレス”というキーワードの下、切れ目なく、流体のようにしなやかに形を変え続けるエクスペリメンタルな音楽とグルーヴ、そして黒人ボーカリスト Carley Coma のラップからスクリーム、グロウルへと自在に行き来するフレキシブルなボーカルが一体となり押し寄せる波は圧倒的で、今日でも新鮮さを保ちながらシーンのマイルストーンとして輝いていますね。
好調のバンドをアクシデントが襲ったのは2002年のことでした。ツアー中のバンが事故に遭い、メンバーが瀕死の重傷を負ってしまったのです。悲劇がメンバーに落とした影、そしてその影響は明らかでした。2004年に復活したバンドが発表した、強烈なタイトルの作品 “What Doesn’t Kill You…” では実験的、チャレンジングなムードが減退し、メロディーによりフォーカスしたある意味”らしくない”アルバムだったのです。以降、 CANDIRIA のシーンにおける存在感も徐々に減退していきました。
John がインタビューでも語ってくれたように、”While They Were Sleeping” は行き詰まりを感じ、長い休養を経たバンドが再生を果たした、フレッシュで野心的なレコードです。睡眠状態にある社会を “They” と表現し、成功を逃したミュージシャンがその崩壊した社会で王となるコンセプトも、アメリカの現在、そして何より彼ら自身の今を投影しているようで、見事にハマっていますね。
アルバムオープナー、 “While They Were Sleeping” はまさに CANDIRIA の堂々たる帰還、そして現在の立ち位置を告げています。近作のメロディックな歌唱と共に、Carley のラップやグロウルが大々的にフィーチャーされたマスマティカルでアグレッシブな楽曲では、中盤のアンビエントで Jazzy なパートが極上のコントラストを生み CANDIRIA の色を強く主張します。近作での方向性を活かしつつ、バンドが最も生き生きとしていた頃の感覚をしっかりと取り戻したタイトルトラックは純粋に魅力的で、作品を象徴していますね。
実際、アルバムを牽引するのは確実に Carley の千変万化で万華鏡のように多彩なボーカルでしょう。”Mereya” で聴ける Jazzy なスキャットは全くのサプライズですし、 “Forgotten” で堂々とキャッチーなアリーナロックを歌い上げたかと思えば、”The Whole World Will Burn” ではクールなラップでオリジネーターの凄みを見せつけます。まるで彼のボーカルがそれぞれの楽曲の個性を決定しているようにさえ感じますね。
特筆すべきは、”Wandering Light” と “Opaque”。奇しくも VAUREEN の Andrea Horne がフルートとボーカルでゲスト参加をした2曲は、成熟した Carley とバンドの現在を伝えています。
ヘヴィーでカオティックな “Wandering Light” に突如挿入される美しいフルートの響き、そしてオーガニックなボーカルは絶妙のアクセント、フックになっていますし、”Opaque” に至っては、2人のデュエットとギターのメロディーが心を打つ、バンド史上初の感動的なバラードです。
こうした CANDIRIA の新たな魅力、進化が自然に作品の流れに溶け込んでいることからも “While They Were Sleeping” はただアグレッション、ポリリズム、テンションノート、カウンターメロディーという彼らの原点に回帰しただけのレコードではないことが伺えます。6年ぶりの新作は、さらに音楽性、演奏、歌唱の幅を広げ、知性と攻撃性、実験性とキャッチーさを巧みに共存させた CANDIRIA の新たな記念碑であるのです。
唯一彼らと似たような方向性を選択しているのが、実は USオルタナティブの雄 DEFTONES であることを付け加えて置きましょう。
今回弊誌では、バンドのギタリスト John LaMacchia にインタビューを行うことが出来ました。彼は別プロジェクト SPYLACOPA で THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Greg ともプレイしているシーンが認める奇才。どうぞ!!

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CANDIRIA “WHILE THEY WERE SLEEPING” : 9.6/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WARDRUM : AWAKENING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STERGIOS KOUROU OF WARDRUM !!

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The Full Of Emotion, Melody, And Technique. One Of The Great Modern Power Metal Outfits From Greece, Wardrum Has Just Released Their Masterpiece “Awakening” !!

DISC REVIEW “AWAKENING”

まさに百花繚乱、メタルの一大産地となったギリシャから現れた驚異の新鋭 WARDRUM が、バンドの最高傑作 “Awakening” をリリースしました!!アルバムを通して、心を打つ哀愁のメロディーと目覚ましいテクニックを高い次元で融合させた “Awakening” は間違いなく日本のメタルファンに強くアピールすることでしょう。
WARDRUM は前身の Prog-Metal バンド HORIZON’S END を母体として2010年に結成された5人組。ドラマーの Stergios Kourou が中心となり作詞作曲を手がけるという珍しい体制のバンドです。
FIREWIND, Gus G は勿論、SEPTICFLESH, ROTTING CHRIST, SUICIDAL ANGELS など様々なジャンルで才能豊かなバンドが存在するギリシャのメタルシーン。中でも、華麗でエモーショナルなメロディーと、ソリッドでタイトな現代的テクニックを備えた WARDRUM の Modern Power Metal は、弊誌が今年インタビューを行った SUNBURST と並んでモダンと伝統が織り成すヨーロピアンメタルの新たな潮流を期待させてくれますね。
インタビューでも語ってくれたように、WARDRUM の音楽は強くメロディーにフォーカスしています。現在、ボーカルを務める Yannis Papadopoulos は同郷の知性派 UNITIL RAIN のメンバーとしても知られる実力者なのですが、彼のワイドなレンジを使用し歌い上げる、エモーショナルで哀愁に満ちた調べはアルバムを通して傑出していますね。特に “Right Within Your Heart” は Yannis の熱い歌唱がドラマティックでファストな楽曲と完璧にマッチし、Power Metal 史に残るであろう名曲として燦然と輝いています。
WARDRUM を語る時、同時に忘れてはならないのがプログレッシブというワードです。”Sometimes” の印象的なアルペジオや、”On Skies of Grey” の見事な構成美を聴けば、WARDRUM が幅広い影響を持った多彩なバンドであることが分かるでしょう。
面白いことに、彼らが強く影響を受けたバンドとして挙げているのは、CRIMSON GLORY, SANCTUARY, CONCEPTION といった少しマイナーなバンド群。しかし、勿論 CRIMSON GLORY は QUEENSRYCHE にも通じますし、同様に SANCTUARY は NEVERMORE, CONCEPTION は KAMELOT と考えれば、彼らのアイデンティティーを理解しやすくなるはずです。
そして KAMELOT meets NEVERMORE というフレーズは、実は SUNBURST を表す際にも頻繁に使用されているのですから、このUSを代表する2大 Prog-Power バンドが与えた影響が最も開花している場所が実はギリシャであるという可能性も実に興味深いと感じます。
さらにバンドは Kosta Vreto という Gus G, Gus Drax と同じ土俵に上がる資格を備えたギターヒーローを有しています。ピックを一切使わず爪だけで凄まじいシュレッドから美麗なメロディーライン、そしてヘヴィーなリフまで自由自在にプレイする彼の姿はまさに圧巻の一言。
ただピックを使用しないというだけでなく、時に人差し指の背を使用したダウンストロークを選択したかと思えば、クラッシックギターのように全ての指を駆使してファストなプレイを繰り出す場合もあり、勿論、ピックを持たないためタッピングにも滑らかに移行することが可能。その非常にユーティリティーなプレイスタイルが、独創的で幅広い WARDRUM の音楽性を見事に牽引していると言えるでしょう。
CRYPTOPSY のギタリスト Christian Donaldson のスタジオワークによって “Awakening” の素晴らしくモダンなサウンドが具現化されていることも付け加えて置きましょう。
今回弊誌ではバンドの中心人物、Stergios Kourou にインタビューを行うことが出来ました。彼のシンコペーションを多用した多彩なリズムアプローチが WARDRUM を象徴することは明らかです。どうぞ!!

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WARDRUM “AWAKENING” : 9.5/10

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