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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HACKTIVIST : OUTSIDE THE BOX】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEN MARVIN OF HACKTIVIST !!

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There’s safety in numbers, but HACKTIVIST carving a path of their own! UK based five piece just released Up-date ver. of Nu-Metal, amazing “Outside the Box” !!

DISC REVIEW “OUTSIDE THE BOX”

ラップと Metal-core, Djent というモダンな要素を融合させた UK の新鋭 HACKTIVIST がデビューフルレングス “Outside The Box” をリリースしました!!
様々に拡散するモダンメタルのサブジャンル。中でも HACKTIVIST の音楽性、イデオロギーは異彩を放っていますね。勿論、ラップをメタルに取り入れたのは決して彼らが初めてではありません。90年~00年代にかけてトレンドとなった Nu-Metal ムーブメントの中で LIMP BIZKIT, KORN といったバンドたちがメタルの領域を押し広げたことは実に意味がありました。そして HACKTIVIST は、その Nu-Metal をアップデートし、現代に蘇らせているようにも思えます。
モダンメタルという観点から見れば、HACKTIVIST は UK ミルトン・キーンズを中心とする Tech-Metal シーンの強い影響を受けていることが分かります。FELLSILENT, HEART OF A COWARD, そして TesseracT。コロッサルなリフワークとアトモスフェリックなメロディーは彼らから受け継いだものでしょう。
“No Way Back” と “False Idol” を聴けば、彼らがその Tech-Metal と Hip Hop を見事に融合していることが分かるでしょう。ギターとエレクトロニカも担当する Timfy James のメロディックな歌唱と二人の MC が繰り出すラップのカウンターパートとなっているのが、Tech-Metal 由来のギターリフ、ローエンドだと感じました。つまり、彼らは Post-Meshuggah なギターリフやリズムを Hip Hop のトラディショナルなビートの代用品として使用し、見事に独自のサウンドとして昇華させているのです。
加えて、HEART OF A COWARD の Jamie、ENTER SHIKARI の Rou がゲスト参加している “Decieve and Defey” “Taken” は特に象徴的ですが、両バンドを想起させるようなアトモスフェリックなエレクトロニカの要素も多分に取り入れており、トレンドもしっかり見据えていることが分かります。
またダブルMC J と Ben を活かしたメッセージ性も彼らの特徴でしょう。扱う題材は政治、社会、そして環境問題にまで及びます。Electrogrimepop Metal とでも表現出来そうな “Hate” はバンドの”Hater”達への強烈な自己主張。”Why you wanna hate on us?”と投げかける彼らのリリックからは、若さと弱さと自信が共存しているようにも感じました。
全体的に見て、彼らのデビュー作は Nu-Metal や Eminem といったあの時代の才能に再び焦点を当てながらも、決してノスタルジーに留まっておらず、実験性も勿論ですが、 “Elevate”に象徴されるように、Nu-Metal にはあまり存在しなかった美しいメロディーも作品のキモでキャッチーさも満点。彼らの試みは成功を収めたと言えるでしょう。今回弊誌では、MC の Ben Marvin にインタビューを行うことが出来ました。どうぞ!!

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HACKTIVIST “OUTSIDE THE BOX” : 9.3/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE ALGORITHM : BRUTE FORCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REMI GALLEGO OF THE ALGORITHM !!

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Electronica meets Prog-Metal! One of the originator of “Progtronica” from France, THE ALGORITHM has just released their new masterpiece “Brute Force” !!

DISC REVIEW “BRUTE FORCE”

エレクトロニカ/EDM とモダンメタル/Djent を融合させ独自の音楽を発信する、フランスの奇才 THE ALGORITHM が新作 “Brute Force” をリリースしました!!
勿論、PERIPHERY, ANIMALS AS LEADERS, BORN OF OSIRIS など、最新のモダンプログメタル界隈において、エレクトロニカの要素は必修科目。当たり前のように使用されています。ただ THE ALGORITHM として知られる Remi Gallego のように、その2つをシームレスに繋いでいるアーティストは未だ存在しないでしょう。彼こそが “Progtronica” のトレンドセッターなのです。
新作 “Brute Force” でもポリリズムを多用したアグレッシブなリズム、モダンなリフは健在。そして美麗で数学的に構築された EDM サウンドが独特のアトモスフィアを発しています。さながら Remi Gallego が築き上げた音楽の現代建築のように。
とは言え、今回の作品は畳み掛けるようなインテンシティーと共に、よりバランスがとれたキャッチーなアルバムの様にも思えます。例えば、シングルカットされた “Pointer” はロシア民謡のような印象的なメロディーが、Post-Meshuggah なギターリフ、リズムの上で綿密に構築されています。同時に、新機軸としてギターソロを導入しており、結果としてメタルとEDMのバランスが絶妙の仕上がりになっていますね。インタビューでも語っているように、過去の作品に比べてより人間味、エモーションを導入したことで、さらなるファン層獲得にも繋がるように感じました。
また、タイトルトラック “Brute Force” はクラシカルなアプローチが見事な佳曲。例えば、Castlevania のようなゲーム音楽にも通じるドラマ性が白眉です。
Breakcore トレンドセッター、同郷の Igorrr が参加した “Deadlock” には貪欲に新機軸を導入する Remi のアーティストとしての矜持が強く現れているように感じました。凶悪さを纏った”生の”ギターリフが衝撃的ですね。
Post-Rock の影響すら感じるスロウな “Userspace” に Dub, Breakcore 色の強い “Shellcode” まで楽曲は実にバラエティー豊かです。
全体的に見れば、今作は主要海外誌のレビューにおいて、DAFT PUNK が手がけたディズニーのSF映画 “Tron : Legacy” のサウンドトラックと比較されることが非常に多く、それはつまり、人生を変えたアルバムにも上げているように、強い影響を受けた同郷の偉大な先輩の域にまで Remi Gallego の世界観が肉薄して来ている証のようにも思えました。
今回弊誌では、その Remi にインタビューを行うことが出来ました。短いですが、彼独特の考え方は伝わると思います。どうぞ!

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THE ALGORITHM “BRUTE FORCE” : 9.2/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MYRATH : LEGACY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ELYES BOUCHOUCHA OF MYRATH !!

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Oriental Metal master from Tunisia, MYRATH has just released long awaited new record, masterpiece called “Legacy” !!

DISC REVIEW “LEGACY”

北アフリカ、チュニジアの空気を世界に伝えるオリエンタルメタルバンド MYRATH が、5年という長いインターバルの後に傑作 “Legacy” をリリースしました!!
アフリカ大陸という、現時点でシーンの注目が最も薄い地域から現れた MYRATH のサウンドは非常にエピカルで印象的なプログ / パワーメタル。例えば、SYMPHONY X がクラッシックを、DREAM THEATER がプログロックやフュージョンを屋台骨としているように MYRATH はチュニジアのトラディショナルなフォーク音楽をそのインスピレーションの源にしているのです。
バンド名 MYRATH を英訳した “Legacy” をタイトルに冠したアルバムは、以前の作品よりもメッセージ性が強く、キャッチーで、リスナーの魂に訴えかけるような1枚に仕上がりました。オリエンタルメタルの旗手 ORPHANED LAND にも言えることですが、所謂形骸化したプログレッシブという枠から脱却し、その先を見据えた作品のようにも思えますね。
チュニジアで起こったジャスミン革命にインスピレーションを得た、アルバムオープナー “Jasmin” と壮大なPVを伴う “Believer” の流れは、まさにその新しい彼らの魅力を凝縮したものだと言えるでしょう。弾圧に屈せず信念を貫く。楽曲は実際に動乱を経験した彼らだからこその説得力に満ちていますね。
音楽的には、非常に扇情的でドラマティック。雄々しく突き進むミッドテンポの曲調の中、ストリングスやキーボードの美しい音色が異国の色を添え MYRATH の個性を主張します。チュニジア由来のオリエンタルなメロディーを力強くエモーショナルに歌い上げる Zaher Zorgatti の歌唱は、”Believer” は勿論、アルバムを通して実に見事で傑出しています。特に美しすぎるバラード “I Want To Die” での名演は彼の評判を一層高めることでしょう。
また、Jens Bogren をミックスに、ADAGIO の Kevin Codfelt をプロデューサーに迎え、磨き上げられたモダンなプロダクションはさながらアラビアの芸術建築のようですね。
楽器隊の個性もアルバムの大きな魅力の1つとなっています。アルバムのオーケストレーションまで担当したキーボーディスト Elyes の豊かな才能は “Endure the Silence” のカサブランカピアノにも現れていますね。新加入 Morgan Berthet のドラミングはエネルギッシュかつタイト。バンドのダイナモとして十二分に機能することを証明しています。勿論、ギタリスト Malek Ben Arbia の Yngwie を想起させる煙が出るようなシュレッドも健在!今年のプログメタル必聴盤であることは間違いないでしょう。
今回弊誌では、キーボーディストの Elyes Bouchoucha にインタビューを行うことが出来ました。実はフランス、ソルボンヌ大卒の英才でもあります。どうぞ!

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MYRATH “LEGACY” : 9.9/10

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EXCLUSIVE INTERVIEW 【RODRIGO Y GABRIELA】JAPAN TOUR 2016 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RODRIGO SANCHEZ OF RODRIGO Y GABRIELA !!

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Dublin based Mexican-Born acoustic guitar duo, Rodrigo y Gabriela are going to come to Japan in May! Don’t miss their exotic, melodious, technical, and ultra-accessible sounds !!

メキシコ出身、現在はアイルランドのダブリンを拠点として活躍するアコースティックデュオ、Rodrigo y Gabriela が5月に3年振りの来日を果たします!
メンバーは、リードギタリストでピックを使用した Al di Meora のようなメランコリックで流暢なギター捌きを得意とする Rodrigo Sanchez と、フィンガーピッキングとゴルペ(ボディーを叩く)を使用したパーカッシブなリズムプレイを主体とする紅一点 Gabriela Quintero の2人。
勿論、アコースティックギターを使用してラテン/フラメンコのスタイルで演奏を行うグループは多く存在しますが、彼らの魅力はそのキャッチーさと、ロックやジャズ、そしてポップスのテイストをふんだんに取り入れた躍動感溢れる音楽性だと思います。祖国メキシコではスラッシュメタルをプレイしていたという彼らの楽曲からは、メタルのアイデンティティーも強く感じることが出来ますね。
彼らが尊敬する偉大なミュージシャンたちに捧げられた2009年のアルバム “11: 11” を聴けば、彼らの幅広くエクレクティックな音楽性、魅力が伝わるでしょう。
以前にも METALLICA の “One”, “Orion” をカバーして来た彼らですが、”Atman” は Dimebag Darrell, さらにはメタルへのトリビュート。マスター Alex Skolnick をゲストに迎えてタイトで複雑なプレイを聴かせてくれます。
Al di Meora, Paco de Lucia, John McLaughlin というアコースティックギター史に輝く傑作”Friday Night In San Francisco” を残した3人には勿論、一人づつトリビュート曲が用意されていますね。
彼らがブレイクするきっかけとなった1つのきっかけは LED ZEPPELIN “Stairway to Heaven” のカバーでしたが、Rodrigo y Gabriela は常にオールドロックへの憧れも隠そうとはしません。PINK FLOYD に捧げられたタイトルトラックの美しさは間違いなくアルバムのハイライトですし、Jimi Hendrix の “Voodoo Chile” を引用した “Buster Voodoo” ではギターにエフェクトを使用する新しい試みも効果的ですね。
中でも、タンゴをもとに、クラッシックやジャズの要素を融合させたアルゼンチンのバンドネオン奏者 Astor Piazzolla に捧げられた “Hora Zero” は白眉で、彼らと同様に伝統とモダンの融合に挑戦した偉人への強い敬意が感じられます。
常に新しい挑戦を続ける姿勢も彼らの魅力の1つです。2011年には映画音楽の巨匠 Hans Zimmer と映画 “パイレーツ・オブ・カリビアン / 生命の泉” のサウンドトラックを手がけ新境地を開拓しましたし、2012年のセルフカバー作 “Area 52” ではキューバンオーケストラと共演しラテンの領域を拡大しています。
今回弊誌では、デュオのメインコンポーザーである Rodrigo Sanchez にインタビューを行うことが出来ました。Green Room Fes、ロドガブは初日に登場、単独公演もあります。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HAKEN : AFFINITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROSS JENNINGS OF HAKEN !!

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Next Generation of Prog!! London based amazing six piece, Haken set to release game-changing modern prog record “Affinity”!! The past meets the future here!

DISC REVIEW “AFFINITY”

UK が誇るモダンプログメタルの新鋭 HAKEN が4/29に野心的な新作”Affinity”をリリースします!前作 “The Mountain” はモダンメタルと、70年代のプログロックが、極上のメロディーを備えつつエピカルに融合した傑作で、バンドに成功をもたらしましたね。そして HAKEN はこの新作 “Affinity” でさらに多くの成果を得ることになるでしょう。
昨今、音楽シーン全体の流れとして、キラキラとした80年代のポップカルチャーが再度注目されカムバックして来ていますね。”Affinity” はアートワークやテーマ、そして音楽にも、その流れを強く意識した作品となっています。同時に、彼らの持ち味であるモダンなテクニカル/グルーヴィー要素も、再度タッグを組んだ名プロデューサー Jens Bogren と共にさらに掘り下げられており、結果として過去と未来が交差するレトロフューチャーな世界観を構築することに成功しています。
アルバムオープナー “Initiate” はメロウなメロディーと究極のグルーヴが共存する、モダンプログを代表するような楽曲です。ノルウェーの盟友 LEPROUS を想起させる部分もありますね。特にボーカル Ross Jennings の美しい歌唱は白眉ですし、彼がこの楽曲の後半で行っている”対位法”的な実験は非常に印象的ですね。
対して “1985” は、タイトルからも分かるように、あの時代のテイストが色濃く盛り込まれています。オープニングのロックなリフには Michael Jackson の”Beat It” をさえ感じさせます。インタビューで Ross はYES の “Owner of a Lonely Heart” と言及していますが、確かに例えば YES や RUSH が80年代に行っていたような、プログロックのポピュラー化を強くイメージさせる楽曲かも知れませんね。ビッグなコーラスとキラキラしたキーボードの合間に現れる MESHUGGAH ライクなリフが意外にも実にマッチしています。
HAKEN のアルバムには少なくとも1曲はエピカルな大曲が収録されて来ましたが、”The Architect” のランニングタイムは15分を超えます。この15分間で HAKEN は再度彼らの高いミュージシャンシップを証明しましたね。楽曲冒頭や後半の強烈なインタープレイはまさしく彼らが敬愛する DREAM THEATER へのトリビュートでしょう。中盤のジャジーなベースソロで新メンバーConner がその実力を見せつければ、ギター隊も変拍子と複雑なコード進行の上で踊ります。哀愁を伴ってドラマティックに終焉を迎える壮絶な大円団は圧巻の一言でした。
“Earthrise” は彼らがさらなるセルアウトへの野望を表わした楽曲かも知れません。ここで聴けるのは Alan Person’s Project や ELO のような80年代のAOR。ただ、ギターリフがヘヴィーグルーヴィーであることと、知的なハイハットの使用により、リスナーに新鮮な感覚を与えます。”Red Giant” にも言えますが、ドラマー Ray の独創的なリズムやフィルインは、アルバムを通して素晴らしく作品の聴きどころとなっています。また、セルアウトと言えば “The Endless Knot” ではあの Zedd を思わせるようなシンセサウンドも使用されており、その貪欲な姿勢には驚きを禁じえませんね。
メンバー全員の個性が1枚の傑作に昇華した “Affinty” 。プログロックの領域を拡大するような重要な作品だと感じました。今回、弊誌ではボーカルの Ross Jennings にインタビューを行うことが出来ました。どうぞ!!

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1. affinity.exe [1:24]
2. Initiate [4:16]
3. 1985 [9:09]
4. Lapse [4:44]
5. The Architect [15:40]
6. Earthrise [4:48]
7. Red Giant [6:06]
8. The Endless Knot [5:50]
9. Bound By Gravity [9:29]

HAKEN “AFFINITY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUNBURST : FRAGMENTS OF CREATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GUS DRAX OF SUNBURST !!

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The Brightest Hope of Power/Prog Metal from Greek, SUNBURST has just released their incredible debut album “Fragments Of Creation”. Don’t miss the new Guitar Hero, Gus Drax !!

DISC REVIEW : “FRAGMENTS OF CREATION”

ギリシャから彗星の如く現れたプログメタルの新鋭 SUNBURST がデビューアルバム “Fragments Of Creation” をリリースしました!!彼らはデビュー作にして、いとも容易く先人たちの偉大な作品に匹敵するような優れたアルバムを作り上げました。
NEVERMORE meets KAMELOT などと評される SUNBURST の長所は、まずバンドの顔であるボーカルとギターの力量が傑出している点にあるでしょう。長らくギターヒーローらしいギターヒーローが現れなかったメタルシーンにおいて、ギタリスト Gus Drax の華麗なテクニック、流麗なシュレッドには歓喜を超えて感謝を捧げてしまうほど。ただ技術が秀でているだけではなく、ソロの組み立て、起承転結の構築が実に見事で、強烈なエモーションも兼ね備えていますね。勿論、クラッシックなメタル、モダンなメタル、どちらか一方のエキスパートは多数存在しますが、彼のように両方の架け橋になるような存在は実はそう多くはありません。
アルバム唯一のインスト曲、”Beyond The Darkest Sun” を聴けば彼の才能が伝わるでしょう。Jeff Loomis はパワー/プログメタル において、逸早く多弦ギターを実用化に持ち込んだパイオニアの1人ですが、Gus Drax は彼からの影響を強く伺わせつつも、Jason Becker や Michael Romeo といった達人たちのテイストに LAMB OF GOD を始祖とする3連を多用したモダンなリフワークまで取り入れ、独自の世界を創出しています。
彼と並び立つの才能がボーカルの Vasilis。感情豊かな歌声と、驚異的な声量、声域はあの Roy Kahn を髣髴とさせますね。アルバムを締めくくる12分の大曲 “Remedy Of My Heart” での、ファルセットからグロウルまで自在に使いこなす彼の歌唱はアルバムのハイライトとも言える程。Roy の所属していた CONCEPTION や KAMELOT に匹敵する程のドラマチシズムを感じさせてくれます。
ただ、彼らの本質はあくまでもコンパクトかつスリリングなパワーメタル寄りの楽曲かも知れませんね。例えば、Warrel Dane の中毒性のある歌唱も魅力ですが、もし NEVERMORE にハイトーンを駆使するシンガーがいたらと夢想したファンは少なくないでしょう。(余談ですが、逆に? Gus と Kostas は Warrel のバックバンドを務めたことがあります。) 元々は作品のタイトルでもあったアルバムオープナー、”Out Of The World” はその夢を叶えるようなアグレッシブかつメロディアスなキラーチューン。Gus の敬愛する DREAM THEATER のダークな楽曲のような雰囲気もあります。先日インタビューを行った GALNERYUS にも言えることですが、プログレッシブな音楽性を保ちながら、極上のメロディーを届けるバンドはやはり強いですね。
同じく良質なメロディーを生み出し続ける、ギリシャの英雄 Gus G 率いる FIREWIND からキーボーディストの Bob Katsionis が客演し、アルバムをさらに一段上の領域に押し上げていることも併せて記しておきましょう。
今回弊誌では、次世代ギターヒーロー Gus Drax にインタビューを行うことが出来ました。彼は先日来日を果たした SUICIDAL ANGELS のシュレッダーでもあります。どうぞ!!

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SUNBURST “FRAGMENTS OF CREATION” : 9.6/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DANIMAL CANNON : LUNARIA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAN BEHRENS A.K.A DANIMAL CANNON!!

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“Chiprog-Metal” is born!! Genius, Danimal Cannon has just released Chiptune and Prog-Metal cross-over masterpiece “Lunaria”!!

【DISC REVIEW : LUNARIA】

EDM/Chiptune 界の革命児、DANIMAL CANNON が”クロスオーバー/エクレクティック”な音楽が求められている昨今の音楽シーンに衝撃を与える新作 “Lunaria” をリリースしました!!
DANIMAL CANNON とはチップチューンアーティスト/ギタリスト Dan Behrens のソロプロジェクト。作曲にギターと任天堂ゲームボーイを使用し、プログメタルとチップチューンを融合させたそのユニークな音楽性は、まさに奇才と呼ぶに相応しいですね。”Lunaria” は3枚目のアルバムとなりますが、完全に一皮剥けたこの新作でその知名度は飛躍的に向上することでしょう。
作品は、月が原始地球と火星ほどの大きさの天体が激突した結果形成されたとされる “ジャイアントインパクト説”をテーマとしたコンセプトアルバム。アルバムオープナー “Axis” こそ、彼が創作する “Chiprog-Metal” を体現する楽曲だと思います。キラキラとしたキャッチーなメロディーと、ヘヴィーグルーヴィーなリフが見事に融合。チップチューンサウンドとギターシュレッドが楽曲の主役を巡って鬩ぎ合うかのような、極上のスリルを味わうことが出来ますね。
対して、月の女神に扮した女性ボーカル Emily Yancey をフィーチャーしたタイトルトラック “Lunaria” は息をのむほどの美しさ。例えば、チップチューンのような電子音に感情が宿るのかという懐疑的な音楽ファンをも虜にするような普遍的魅力に満ちています。ゲームボーイは1989年に発売されたハードです。実は、そのサウンドチップは同時に3音までしか鳴らすことが出来ません。にもかかわらず、ここまで幻想的なサウンドを生み出す彼のプログラミングテクニックには驚くばかりですね。
また、アートワークや “Collision Event” からは、彼がファイナルファンタジーシリーズ、そして植松伸夫氏に多大な影響を受けていることに気づくでしょう。この辺りはゲームのサントラも手がけるコンポーザーとしての面目躍如といったところ。同時に自身がボーカルをとる NIN リスペクトな “Surveillance” というロック寄りの楽曲も収録されており、アルバムは実にチャレンジングでバラエティーに富んでいますね。
今回弊誌では、Dan Behrens にインタビューを行うことが出来ました。やはり日本の文化には思い入れが強いようですね。どうぞ!

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DANIMAL CANNON “LUNARIA” : 9.6/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNARKY PUPPY : FAMILY DINNER VOL.2】JAPAN TOUR 2016 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MICHAEL LEAGUE OF SNARKY PUPPY !!

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TWO TIMES GRAMMY WINNER, JAZZ ORIENTED REVOLUTIONALY GROUP, SNARKY PUPPY ARE GOING TO COME TO JAPAN ON JUNE WITH THEIR AMAZING NEW RECORD “FAMILY DINNER VOL.2”!!

2014年には “Something” で Best R&B Performanceを、今年はアルバム “Sylva” が Best Contemporary Instrumental Album を、2度もあの栄誉ある Grammy Award を獲得。世界中のアーティストや音楽ファンから尊敬を集めるコンテンポラリーJAZZ集団 SNARKY PUPPYが新作 “Family Dinner Vol.2” をリリースしました!!同時に cero, origami PLAYERS, Michelle Willis といった新世代の注目アーティストをサポート/オープニングアクトに起用した6月の単独公演も決定しています。
SNARKY PUPPY は北テキサス大学でベーシストの Michael League を中心に結成された、総勢30~40名が所属する大所帯のコンテンポラリーJAZZグループ。Robert Glasper 以降の所謂 “Jazz the New Chapter” 文脈で語られることも多く、その唯一無二な音楽性は新しく拡散するJAZZやアートの形を提唱しているように思えます。
流動的なメンバーですが、主要人物は12名ほど。彼らの多くが JAZZ はもとよりメインストリームのアーティストたちにも引く手あまたで、Kendrick Lamar, John Mayer, Marcus Miller, Snoop Dog, Justin Timberlake, といった才能たちと共演を果たしています。中には日本人パーカッショニスト小川慶太さんや、ソロ作も非常に充実している鍵盤奏者 Bill Laurance といった顔もありますね。
最新アルバム “Family Dinner Vol.2” は2013年にリリースされた “Family Dinner” の続編として制作されました。ゲストボーカリストたちを迎え、彼らの楽曲をリアレンジして収録するという試みは今回も同じですが、前作が R&B 色の濃い作品だったのに対して、今作では世界中からゲストを招き、より多彩でキャッチーな、ワールドミュージックの影響も強く感じさせる作品に仕上がりました。
中でも、アフリカはマリ出身、アルビノの奇才 Sarif Keita をボーカリストに迎え、ブラジルのパンデイロやフルート奏者を合流させた “Soro(Afriki)” の素晴らしさは筆舌に尽くし難いですね。アフリカのオリエンタルな伝統音楽にサンバのリズムが加わり、それを現代的なサウンドで立体的に表現した楽曲は全音楽ファン必聴と断言したいほど。また御年71歳を迎えたペルーの伝説、Afro-Peruvian リバイバルの重要人物 Susana Beca と Joe Satriani に師事し D’Angelo や John Mayer にも認められた8弦ギター使い Charlie Hunter の共演 “Molino Molero” では、ブルースとAfro-Peruvianに共通するルーツ”アフリカ”を強く感じることが出来ます。この2曲は、白人音楽と黒人音楽の歴史的背景にまで想いを馳せるよう意図されているのかも知れませんね。
新進気鋭のボーカル多重録音アーティスト Jacob Collier の “Don’t You Know” も衝撃的。自らのボーカルを多重録音し、アカペラと卓越した楽器の演奏で音楽シーンに登場した彼のパフォーマンスは、この楽曲に置いても輝きを放っていますね。対照的に、アルバムを締めくくる David Crosby 御大の飾り気のない “Somebody Home” での歌唱も見事の一言でした。
“We Like It Here”, “Sylva”, そして今作と、スタジオライブレコーディングを続けている SNARKY PUPPY。彼らの様々な新しい試みからは、音楽シーンを本当に変えてやろうという気概が強く伝わって来ます。そしてそれが遂に受け入れられつつあることはシーンの希望だと心から思います。
今回弊誌では、グループの首謀者 Michael League に独占インタビューを行うことが出来ました。少し難しく綴ってしまったかもしれませんが、彼らの本質は JAZZ, HIP HOP, ROCK, R&B, DANCEといった音楽のハイブリッド良いとこ取り。万人が楽しめる音楽だと信じます。どうぞ!!

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SNARKY PUPPY “FAMILY DINNER VOL.2” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SPIRITUAL BEGGARS : SUNRISE TO SUNDOWN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PER WIBERG OF SPIRITUAL BEGGARS !!

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SPIRITUAL BEGGARS is back with powerful and varied new record “Sunrise to Sundown” !! Keyboard maestro, Per Wiberg talks about new album, Michael Amott, his other projects and OPETH !!

Michael Amott, Sharlee D’Angelo (ARCH ENEMY), Per Wiberg (ex-OPETH), Apollo Papathanasio (FIREWIND), Ludwig Witt (GRAND MAGUS) というメンバーが集結する押しも押されぬスーパーバンド SPIRITUAL BEGGARS が強力な新作 “Sunrise to Sundown” を引っ提げシーンに戻って来ました!!
90年代に、3ピースでのハードロック/ストーナースタイルの追求をテーマに船出をしたバンドは、メンバーを緩やかに変えつつ、クラッシックロックの伝統を守ることに意義を見出すようになりました。決して華々しく、モダンな音楽ではないためか、その高い音楽性に対してまだまだ充分な人気、評価を得られていない様にも思われます。彼らが目指す形の一つの完成系とも言える今作で、状況は変わるのでしょうか?
アルバムは彼らのカタログの中でも、最も多様性に満ちており、同時に、JB という唯一無二の素晴らしいシンガーの後任という重責を担った Apollo の実力が遂に全て発揮された作品と言えるでしょう。そして、前作からその比重を増しつつあった Per のキーボード、オルガンの素晴らしさをさらに堪能出来る作品だとも感じました。ただ、古くからのファンには、例えば “Sedated” のような Frank Marino 直系ブルースロックサイドの Michael の燃えるようなプレイを懐かしむ声もあるかもしれませんね。彼はこれ以上何かを証明する必要もない訳ですし、楽曲に合ったソロにシフトするのも頷ける話だとは思いますが。
DEEP PURPLE の “Woman From Tokyo” を想起させるキラーチューン、”Diamond Under Pressure” はハモンドとギターのコンビネーションが白眉。元々 Per のインスト曲だったそうですが、2人の協力体制は今回も抜群の様です。KISS のリズムと Sykes 加入以前の WHITESNAKE 的ヴァイブを有するタイトルトラック共々、亡き Jon Lord が乗り移ったような Per のプレイ、サウンドは圧巻の一言ですね。
JUDAS PRIEST と RAINBOW を掛け合わせたような “What Doesn’t Kill You” や Dio 期 BLACK SABBATH を彷彿とさせる “No Man’s Land” では Apollo をボーカルに起用したことが実に活きています。ブルースからエピカルなメタルまで幅広くカバーする彼の長所が出ていますね。
また、バンドのプロギーな一面も今作の重要なポイントとなっています。”No Man’s Land” の中間部で BEATLES が現れることに驚くリスナーは多いでしょう。”Turn to Stone” のメロトロンは実に美しいですし、アルバムを締めくくる URIAH HEEP 的叙情絵巻 “Southern Star” の中間部では KING CRIMSON へのオマージュを感じることが出来ますね。実際、あの時代のロックの多様性、空気を見事に再現した強力なレコードだと感じました。
今回、弊誌では ex-OPETH のキーボーディストとしても知られるマエストロ Per Wiberg にインタビューを行うことが出来ました。今作は Per のアルバムだと思いますよ。どうぞ!!

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SPIRITUAL BEGGARS “SUNRISE TO SUNDOWN” : 9.6/10

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