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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PORTICO QUARTET : ART IN THE AGE OF AUTOMATION, UNTITLED (AITAOA #2)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JACK WYLLIE OF PORTICO QUARTET !!

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With The Dreamy, Hypnotic Sound Of The Hang, Portico Quartet Creates Incredible Art In The Age Of UK New Jazz !!

DISC REVIEW “ART IN THE AGE OF AUTOMATION” “UNTITLED (AITAOA #2)”

エレクトロニカとバンドサウンドをシームレスに連結する UK ジャズ新世代 PORTICO QUARTET が、オートメーションの時代に贈る流麗なる記念碑 “Art in the Age of Automation” “Untitled (AITAOA #2)” をリリースしました!!2018年、人と機械の創造性が織り成す距離感は想像以上に接近しています。
エレクトロニカをベースとしつつ、全てにおいて細部までオーガニックであることに拘った GOGO PENGUIN の最新作 “A Humdrum Star” はリスナーの記憶に新しいところでしょう。
”Outer” をデジタルな世界、“Inner” をエモーショナルなヒューマンの領域に位置づけた作品は、例えるならば PC で精密にデザインされた建築物を、匠の手作業で一つ一つ忠実に再現して行くようなプロセスでした。
そして興味深いことに、同じ UK ジャズの新たな潮流から台頭した PORTICO QUARTET の最新作も相似的アイデアを提示して、人と機械が潮解した最先端のサウンドを立証しているのです。
「このアルバムはある種の解決策を提示しているんだよ。オートメーションと人間らしさという2つの異なる物事についてのね。」Jack がインタビューで語った通り、”Art in the Age of Automation” そして “AITAOA #2” がモダンミュージックが宿す苦悩にある種の解決策をもたらすことは明らかです。
“エモーション= 人間” “精密 = デジタル” という刷り込み。言い換えればその苦悩は固定観念という人の持つカルマ。そしてそのカルマに真っ向から挑んだ作品こそ “Art in the Age of Automation” だと言えるでしょう。
Jack は PORTICO QUARTET の音楽性をこう表現しています。「僕たちのサウンドには様々な音楽の側面が落とし込まれているよ。ジャズ、エレクトロニカ、アンビエント。時にはミニマリズムだって垣間見える。」Ninja Tune へ移籍しジャズとの距離を取り PORTICO の名の下でリリースしたポップな異色作 “Living Fields” を経ることで、ある種 “回帰” にも思える “Art in the Age of Automation” はデビュー以来最も深みを増しています。
アルバムオープナー “Endless” はその回帰と深みの象徴かも知れませんね。残響を帯びた電子音、嫋やかなブレイクビート、エセリアルなエレクトロニカの流れは、バンドのトレードマークであるハングドラムの風雅な響きを呼び込みます。”Portico” (前廊)を経由して辿り着くは神聖なるサクスフォンの嘶き。
ヒューマンとデジタルの境目が不可解な、カルマを凌駕した UK らしいダークな情緒はポストロックの雄大さを伴ってリスナーにエンドレスなサウンドスケープを届けるのです。
一方で、タイトルトラック “Art in the Age of Automation” を聴けば、独特の倍音を備えた音階をもつ打楽器ハングドラムが、ジャズとミニマリズムの蜜月を育み幻想的な電子の世界を映し出していることに気づくはずです。20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明、スティールパンのアップデートバージョンは、コンテンポラリーなデジタルの海にも良く映えます。
実際、アルバムを聴き進めるにしたがって、オーガニックな演奏とデジタルなマニュピレーションの境界は、英国の霧で覆われたかのように混迷を深めていきます。”A Luminas Beam” や “KGB” で見せる、生々しい楽器の音色と電子音の融合が育む浮遊感やダイナミズムは、変則拍子を身に纏いジャズとロックの境界さえ霞ませるその深き “霧” のたまものだといえるでしょう。
“Current History” でクラシカルとミニマルテクノの真髄を披露した後、辿り着く “Lines Glow” はまさに音のユーフォリア。神々しきハングの音色はトライバルな感覚をも伴って、カラフルなシンセサイザーの海へと溶け込みます。そうして育まれたサウンドスケープの種は “Undercurrent” で静謐と叙情の波を全身に浴びて終幕に相応しくヒプノティックに開花するのです。
壮麗なストリングスを含むアコースティックな楽器、オーガニックな演奏がモダンなプロダクション、テクニック、テクノロジーと融和した時、そこには鮮やかな PORTICO QUARTET の色彩が生まれます。PORTICO QUARTET の固定観念を解放するチャレンジは、”デジタルなエモーション”、”精密な演奏技術” を幾重にもレイヤーして最新作 “Untitled (AITAOA #2)” へと引き継がれているのです。
今回弊誌では、サクスフォン /キーボードプレイヤーの Jack Wyllie にインタビューを行うことが出来ました。PORTICO QUARTET、GOGO PENGUIN 両者共に、UK ジャズの特異性、革新性についても非常に近い切り口で回答していますね。注目です。どうぞ!!

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PORTICO QUARTET “ART IN THE AGE OF AUTOMATION” “UNTITLED (AITAOA #2) : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HAMMOCK : EVERYTHING AND NOTHING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW THOMPSON & MARC BYRD OF HAMMOCK !!

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Ambient / Shoegaze Duo From Nashville, Hammock Has Just Released Their Newest Album “Everything And Nothing” !! New Realm of “STARGAZE” !!

DISC REVIEW “EVERYTHING AND NOTHING”

Ambient, Shoegaze, Post-Classical, Post-Rock といったアトモスフェリックなジャンルを股にかける、ナッシュビルのデュオ HAMMOCK が新作 “Everything and Nothing” をリリースしました!!至上の美しさはそのままに、明らかに前作までのアンビエントフィールドから1歩歩みを進めた今作で、遂に HAMMOCK はより多くのリスナーから注目を集めることでしょう。
前作 “Oblivion Hymns” は大きく実験的な方向に振れた作品で、ビートすら存在しない “Post-Classical” な世界観で全編覆われた異色の作品でした。しかしインタビューでも触れられているように、それ以前の作品群と比較しても、今作には “Dissonance” に象徴されるような、英語詞を持ったボーカル曲が多数収録されているという明確な変化が存在します。彼らが作品の”核”と語るその変革は、HAMMOCK のサウンドを一般的なリスナーにもより受け入れられやすい Dream Pop / Shoegaze の方向に強く導く結果となっていますね。
それは結果として、”Clarity”, “Burning Down The Fascination” のように強いビートを持った、バンド史上最もヘヴィーでロック寄りの楽曲も生まれることにも繋がりました。
とはいえ、この76分の映画のような大作には、”We Could Have Been Beautiful Again” や “She Was in the Field Counting Stars” のような、自身悠久の名曲 “Tape Recorder” にも匹敵する、彼らのインストゥルメンタル曲でも最高に美麗な部類の佳曲も収録されており、以前からのファンにも納得のサウンドスケープを堪能することが出来ますね。
彼らの音楽を聴いていると、他のアーティストからは決して感じることの出来ない仏教観、さらには”禅”にも通じる瞑想体験を通過することがあるように思います。”Wasted We Started at the Ceiling” は特に、そのヴァイブと新たな”核”を融合し見事に投影した楽曲です。エコーの向こうで鳴り響くギター、マントラのようなボーカル、酩酊を誘うようなストリングス。全てがスローモーションで、リスナーはただ楽曲の”波動”に身を任せるのみ。”悟り”に到達するという表現は少々大袈裟かも知れませんが、全身で暖かい安心感を享受出来る HAMMOCK の見事なコンポジションはこの楽曲が証明するようにさらに高いレベルに達しており、まさしく唯一無二ですね。
今回弊誌では、HAMMOCK の2人、Andrew Thompson と Marc Byrd にインタビューを行うことが出来ました。日本人写真家、菅武志さんの手によるアートワークも素晴らしいですね。どうぞ!!

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HAMMOCK “EVERYTHING AND NOTHING” : 9.2/10

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