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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BEATEN TO DEATH : SUNRISE OVER RIGOR MORTIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKA MARTINUSSEN OF BEATEN TO DEATH !!

“I Urge You To Look Closer, Because I’m Still Trying To Keep My Precious Hair From Leaving My Balding Head, Haha! For Sure, There’s Not Much Left To Save, And It’s Hard To Imagine I’ll Keep It This Way Until I Die, But I Promise To Do My Best! “

DISC REVIEW “SUNRISE OVER RIGOR MORTIS”

「よく見てよ。僕はまだ、貴重な髪をハゲ頭からなくさないようにしているんだ!(笑) 確かに、残りは少ないし、死ぬまでこのままとは思えないけど、頑張るって約束するよ! !」
絶滅の危機を経て、メタルはいつしか現実世界の抑圧、孤独からの素晴らしき逃避場所として多くの人に救いをもたらすようになりました。戦争や分断、極右の台頭という生きづらい世界を公然と批判して風刺するバンドも増えています。そうした理不尽や権利に対してメタルが持つ反発力は、蹂躙されしものたちのまさに希望。
そして今、この世界で最も蹂躙され抑圧されしものこそ “オッサン”。もちろん、権力を持ち蹂躙するのもオッサンであれば、また社会から最も阻害され孤独を感じているのもオッサンなのです。オッサンというだけで即通報。出会って2秒で豚箱行き。そんな世の中に反旗を翻すべく、ノルウェーの BEATEN TO DEATH は “Sunrise Over Rigor Mortis” でオッサン讃歌のグラインド・コアを叩きつけました。
それを象徴するのが “My Hair Will Be Long Until Death”。死ぬまで髪の毛を離さねえ。ツーブロやセンターパート、毛先カラーで髪の毛を謳歌する若者たちに、オッサンの悲壮な頭志いや闘志を見せつける楽曲は、同時に大切なものや人を喪失した世界中の悲しみに勇気と共感を与えていきます。
そう、バーコードに撫で付けた髪の毛のごとく、失うことや年齢を重ねることはたしかに苦しいけれど、アルバム・タイトル “死後硬直に差す陽光” が示すように、いつだって何かを追い求め、ユーモラスに優しく前を向いていれば、死してなお朝日は昇ってくるのです。
「数ヶ月前にロンドンで NAPALM DEATH を観たんだけど、もちろん Barney は、人類がこれまで  “クソみたいな違いをいかに解決してこなかったか” についてスピーチをしたんだ。違いは悪じゃない。グラインド・コア・バンドがそうやって、僕たちの共有する地球の状態について何か言ってくれるのはありがたいよね」
つまり、年齢、性別、国籍、文化、宗教など人々の持つ “違い” など些細なこと。それをいかに個性として包容し、寛容になりあえるかがきっと人類の未来にとって重要な鍵なのでしょう。NAPALM DEATH の Barney に言われるまでもなく、BEATEN TO DEATH はそうした異端や逸脱、違いという名の個性を独創的なグラインド・コアで表現することで、寛容な心を世界に届けていきます。
「僕らのプレイが “真の” グラインド・コアかどうかということにあまりこだわらないということの自然な結果だと思う。新しい曲を作るときは、ほとんどクリーンなギター・サウンドでハーモニーやダイナミクスを試す方が自然だと感じるんだ。僕自身は、もっとハーモニーが冒険的でキャッチーでありながら、もっと過激でアグレッシブになれると感じている」
実際、彼らのグラインド・コアは暴力一辺倒ではありません。PIG DESTROYER, BRUTAL TRUTH, NASUM を敬愛しつつ、YES, VAI, MESHUGGAH, Zappa, Holdsworth といったプログ・パラダイスで育った Mika。ゆえに、彼らのグラインド・コアには繊細で知的な一面が素晴らしきコントラストとして映し出されています。
さらに、杏里、松原みき、竹内まりや、大貫妙子といった遠き日本のシティ・ポップのハーモニーまで養分として取り込んだ BEATEN TO DEATH のグラインド・コアは、見事に世界中の “違い” を音楽で解決していくのです。
今回弊誌では、4月に来日公演も成功させたベーシスト Mika Martinussen にインタビューを行うことができました。「正直なところ、僕にとっては、ブラック・メタルは全く好きではないんだ!失礼な言い方かもしれないけど、僕には信じられないほど無味乾燥で退屈に思えるし、ユーモアがなくて独りよがりなものなんだよ。シアトリカルな面もあまり好きじゃない。でも、他のメンバーの何人かは、なぜかそういうものに夢中なんだ」 どうぞ!!

BEATEN TO DEATH “SUNRISE OVER RIGOR MORTIS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLIND EQUATION : DEATH AWAITS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLIND EQUATION OF JAMES MCHENRY !!

“The Largest Influence On Our Music However Is The Touhou Soundtrack By ZUN. Especially Touhou 8 – Imperishable Night. Yume Nikki And It’s Fangames Have Also Been Largely Influential To Me For The Last Two Albums.”

DISC REVIEW “DEATH AWAITS”

「メタルのルールや境界線を破るためだけに音楽を書いているとは言わないけど、その境界線が自分の制作や作曲のプロセスに影響を与えることはないね。破壊が理にかなっていて、人々の期待を打ち砕くようなものであれば、僕はそれをとても楽しいことだと思うからね」
イリノイの BLIND EQUATION が牽引する “サイバー・グラインド” が一体何なのかよく分からなくても、”Death Awaits” を聴けばその狂気に衝撃を受けることは間違いありません。8bitのチップチューン、ユーロ・トランス、ブラックメタル、そしてグラインドが融合したこの混沌は純粋に、これまで世の中に存在しなかったもの。その音楽はまるでアートワークの彼岸花のように、甘く、切なく、美しく、そして危険です。
「僕らの音楽に最も大きな影響を与えているのは、ZUN による東方サウンド・トラックなんだ。特に東方8、”東方永夜抄 ~ Imperishable Night” だね。夢日記とそのファンゲームも、過去2枚のアルバムに大きな影響を与えているんだよ。ライティング・プロセスでよくプレイしていたからね」
8bit・エレクトロニクスとブラスト・ビートが時にアンセミックに、時にカタストロフィックに共鳴し爆発する彼らの音楽は当然、日本のゲーム・ミュージックに感化されています。ただしそれは、悪魔城ドラキュラや F-Zero、そしてファイナル・ファンタジーといった、海外のアーティストにとってある意味 “おなじみ” となったメジャー作品ではなく、よりアンダーグラウンドな、ZUN 氏が主催する同人サークル “上海アリス幻樂団” による東方Project でした。
「僕たちはみんな一緒に闘っているのだから、お互いに支え合うことが大切なんだよ。音楽や芸術は、ネガティブな感情から逃避するための素晴らしい方法だよね。それはたしかだよ。でも、それ以上に、そうした感情に対処し、癒すためにも使うことができる。音楽コミュニティで素晴らしい人々に出会えたことは、僕を人間として向上させ、単なる逃避以上のものになっているんだから!」
前作 “Life is Pain” “人生とは苦痛” と違って、”Death Awaits” は、現実世界の不安やネガティブな人生経験、対人関係の痛み、失われた信頼について吐き出しながらも、そこに一筋の希望を込めています。
サイバー・グラインドも東方Project も、言ってみれば日陰の中の日陰。メタルやゲームといった現実世界からの逃避場所の中でも、非常に深くて遠い逃避場所でしょう。しかし、だからこそ、BLIND EQUATION の首領 James McHenry は、その深く暗い場所へと逃げるだけではなく、負の感情に対処し、癒やされ、深淵から這い出ることも必要だと語ります。
“孤独なのは君だけじゃない”。そう、あのぼやけた彼岸花のごとく、”Death Awaits” に流れる黒とピンクの曖昧なコントラスト。それは、痛みと希望であり、破壊と協調であり、重さと美しさであり、危険と優しさの象徴です。
アップリフティングとダウナーで極端に二極化されたように思える BLIND EQUATION の音楽でさえ、その”叙事詩” はメタルのルールを破りながら一つとなり、無限の可能性を示してみせました。だからこそ、彼らのこの混沌とした音楽はこの混沌の時代に、孤独なリスナーの心に寄り添い、そっと手を差し伸べる権利があるのでしょう。
今回弊誌では、James McHenry にインタビューを行うことができました。「特に Camellia & Nanahira のアルバム “GO-IN!” は、クリエイティヴな面で僕に大きな影響を与え、BLIND EQUATION の曲作りにおけるジャンルの切り替えやより混沌とした部分の多くにインスピレーションを与えてくれたんだ」 ドラム、ボーカル、ショルキーのトリオ編成も最高!どうぞ!!

BLIND EQUATION “DEATH AWAITS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRE-TOOLZ : I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Fire-Toolz !!

“I Do Love Dark Music, But To Me My Music Just Sounds Like Rainbows. Jagged Piercing Ones At Times, But Still Rainbows.”

DISC REVIEW “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY”

「私は自分の音楽を、天使と悪魔の融合とは思っていない。私にとってはすべて天使的なものなんだ。悪魔的なものは、私自身の悪魔について論じるときに題材として登場するだけでね。意図的にダークな音楽を作ろうとはしていないんだ。ダークな音楽は好きだけど、私にとって自分の音楽は虹のように聞こえるだけ。時にはギザギザに突き刺さるような虹もあるんだけど、それでも虹なんだよ」
ご存知の通り、ヘヴィ・ミュージックが無味乾燥で一義的な場所であるというのは、完全なる誤解です。とはいえ、殺風景で無彩色なスタイルの持ち主がたしかに多いのも事実。しかし、そういったアーティストと同じくらい、ヘヴィ・ミュージックを色鮮やかなアートの爆発として扱う人たちも同様に多いのです。シカゴの Fire-Toolz は、ヘヴィネスに宿る無限の色彩を提案するインターネットの虹。Fire-Toolz A.KA. Angel Marcloid は、プログレッシブ、ブラックメタル、ジャズ・フュージョン、インダストリアル、AOR, グラインドコア、さらには日本のシティー・ポップの要素までスリリングなプロキシを通して屈折させ、スタイルの境界を創造のピクセルで消してしまうのです。
「どんなジャンルの音楽にも、男っぽいとか、女っぽいとか、固有のジェンダー・アイデンティティや表現があるとは思えないよ。ここアメリカの私たちにしても、他の文化にしても、そうした関連付けや決めつけをしてしまうのは残念なことだよ。ただ、私はそうしたレッテル貼りが一般的であることも理解しているんだ。私がそんな風に物事を見たことがないたけでね。境界が曖昧になることは、ほとんどの場合、良いことだと思うんだ。制限を取り払い、規範を解体し、自由を活用することは、とても重要なことだから」
ここ数十年にわたるポスト・モダニズム思想の定着は、ステレオタイプを曖昧で不安定なものとし、ジャンルや形式といった制約を過去の遺物と見なす新しい文化を精製しました。Fire-Toolz の最新作、”I will not use the body’s eyes today” は、この新世界の芸術的アプローチをある意味で体現しているのです。その主眼は、音楽の “脱構築” にあります。
「他の人が私のカオスをどう捉えているかは、よくわかるんだよ。私にとってこの混沌は、とてもコントロールされ、組織化されているように感じられるんだけど、外から見ると、混乱しているように見えるかもしれないね」
私たちが毎秒何千ものピクセルを自然とスクロールするように、この7曲はリスナーを容赦なく説得し、時に幻惑します。一つのテクスチャーやモチーフに落ち着くことはほとんどなく、さながらグリッチを含んだデジタル・コラージュのように機能していきます。最もオーソドックスな “Soda Lake With Game Genie” にしても、6分半という長尺の中にサックスやブラスト・ビート、80年代のポップなど、予期せぬ展開が濁流のように押し寄せる非常に流動的な仕上がり。
“A Moon In The Morning” では、Angel Marcloid のパレットは全体を覆い尽くす焼けるようなディストーションへと変化し、悪魔の遠吠えとオーケストラのMIDIストリングスの厳しいせめぎ合いが対消滅の危機感を抱かせます。イタロ・ディスコ、テクノ、EBM のテイストを取り入れたビートも、アコースティック・ギターのサスティーンを強調したブレイクダウンも、この構築を逃れたしかし意図的なカオスの中にあります。
重要なのは “仕切り” がないこと。ここはブラックメタル、ここは AOR、ここはプログレッシブなどという構築された混沌は、結局のところステレオタイプで、興ざめです。
こうして、従来の構成や動きといった概念を完全に捨て去ろうとする姿勢が “I will not use the body’s eyes today” をユニークで挑戦的作品にしているのです。それはまさに、体の目を使わず、心の目で作品を作ること。心を開き、未来を見据えることのできるリスナーにとって、この計算された混沌はすべての芸術と文化が境界線を失ってもまだ機能する世界の予兆とまで言えるでしょう。そう、私たちは Fire-Toolz によってまんまとハッキングされているのです。
「”I will not use the body’s eyes today” というフレーズは、多かれ少なかれ、私がエゴ (肉体的な目) からではなく、高次の自己の目 (心の目) から見ることを肯定しているんだよね。つまりこれは、超越のための嘆願なんだよ」
ヴェーダ哲学、キリスト教神秘主義、見捨てられることへの恐れ、感情の断絶、愛着の不安、自己破壊、意識の霊的傾向、トラウマの治癒、恥。Angel は永遠に拡張される音のツールボックスと同様に、世界とその神秘に対する多様な哲学と神学のインデックスをもその作品に注ぎ込んでいます。そうして、Fire-Toolz というプログラムは自己実現によって既存の器がさらに拡大可能であることを証明しているのです。
今回弊誌では、Angel Marcloid にインタビューを行うことができました。「カシオペア、角松敏生、木村恵子、杏里、Hiroshima、堀井勝美、鈴木良雄、菊池桃子を生んでくれてありがとう!」 どうぞ!!

Fire-Toolz “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HOUKAGO GRIND TIME / RIPPED TO SHREDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW LEE OF HOUKAGO GRIND TIME / RIPPED TO SHREDS !!

“I Want To Express My Love For Anime Through Music, And I Think Educated Listeners Can See That I Have Equal Love For Both Moe Anime And Goregrind.”

DISC REVIEW “HOUKAGO GRIND TIME2 / 劇變(JUBIAN)”

「僕は、自分が感情移入できないもので芸術を作るのは好きではないんだよ。だから、音楽を作るときは、特に作詞作曲や映像のデザインをする場合はいつでも、自分が情熱を傾けられるような題材でなければならないんだ。僕は音楽を通してアニメへの愛を表現したいし、教養のあるリスナーには僕が萌えアニメとゴア・グラインドを等しく愛していることが分かると思う」
愛するものを、自らのアイデンティティを、自然に自由にアートへと昇華する。言うは易く行うは難し。特に、音楽が金銭と直結しにくくなった現代において、理想のハードルは以前よりも高くそびえ立っています。
しかし結局は、案ずるより産むが易し。台湾からアメリカに移住したアジア系アメリカ人の Andrew Lee は、HOUKAGO GRIND TIME ではアニメに対する愛と情熱を、RIPPED TO SHREDS では自らの出自である中国/台湾のアイデンティティで “自らの声” を織り込み、二足のわらじで “嘘のない” アートを実現しています。
「エンターテイメントとは、そのエンターテイメントが市場の需要に応えるという意味で、それを生み出す社会の反映なんだ。エンターテイメントが社会から排除された人たちにオアシスを提供するのは良いことだけど、だからそのエンターテイメント自身が資本主義によって作られた “製品” に過ぎないように感じることがよくあるんだよね」
もしアニメ “けいおん!” の放課後ティータイムがグラインド・コアをやっていたら…そんな荒唐無稽を想像させるような夢のある地獄のグラインドコアが HOUKAGO GRIND TIME。グラインドコアもアニメの世界の一角も、荒唐無稽で大げさでそこそこに不真面目であるべきで、だからこそ、その両者を併せ持った HOUKAGO GRIND TIME の音には説得力が二倍となって宿ります。
さらに言えば、メタルもアニメも社会から時に抑圧され、時に無視される “オタク” にとっての拠り所、逃避場所、心のオアシスで、その両者を併せ持つ HOUKAGO GRIND TIME の寛容さももちろん二倍。重要なのは、Andrew の精神や目的が資本主義の欺瞞から最も遠く離れた場所にあることでしょう。ゆえに、ここには逃げられる、心を許せる、心底楽しめる。
「僕は、他のアジア系アメリカ人が “自分たちの” デスメタルバンドを結成し、自分たちにとって重要なテーマについて歌うようになればいいと思っているんだよ。多くのアジアのバンドは、特にアンダーグラウンドでは、プレゼンテーションやテーマの面で西洋の同世代のバンドを真似してきたからね。SABBAT, IMPIETY, ABIGAIL みたいなバンドは、ビール、パーティー、サタン/キリスト、その他西洋のテーマについて歌っているから」
デスメタルを追求する Andrew もう一つの翼、RIPPED TO SHREDS でも彼の正直さ、純粋で無欲な姿勢は一向に変わりません。Relapse 期待の一作 “劇變”(Jubian)” は、スウェーデンの古を召喚した地獄のようなデスメタルでありながら、スラッシュ譲りの獰猛さとメロディアスなギターワークを備えます。
中国語を多用した歌詞やタイトル、項羽と劉邦や三国志をイメージさせるアートワーク、そしてあの HORRHENDOUS にも例えられるプログレッシブで鋭い技巧の刃は明らかにステレオタイプのメタルをなぎ倒す怒涛のモメンタム。このわずか33分で RIPPED TO SHREDS は歴史、アイデンティティ、そして中国/台湾とアメリカとの関係について深く考察し、自分の頭で考え、自分の音楽を、自分にとって重要なテーマで語っているのです。
RIPPED TO SHREDS の目標の一つは、アジア系アメリカ人のメタルに対する認知度を高めること。Andrew は、歴史の陰惨な側面に立ち向かいながら、キャッチーなリフとエモーショナルかつ奇抜なソロの洪水よって、この目標を実現に近づけていきます。”アメリカのマイノリティであることは本質的に政治的” “アメリカの文脈の中で中国のアートを作るという行為こそが破壊的な問題提起” だと Andrew は指摘しますが、”劇變(Jubian)” はまず細部に至るまで豊かで濃密なヘヴィ・メタルです。
特に “獨孤九劍月神教第三節(In Solitude – Sun Moon Holy Cult Pt 3)” にはコントロールされたカオスが大量に盛り込まれていて、この10分の作品は、疾走感から壮大なメロデスの慟哭、ドゥーミーな中間部までエピックのスイを尽くしてリスナーを民話に根ざした物語に惹きこんでいきます。秦の時代、豊満な戦士が宦官に変装して宮中に忍び込み、皇太后を誘惑するというおかしくも恐ろしいエピソードから、アメリカの原爆投下、中国の重層的な政治的歴史まで、RIPPED TO SHREDS が扱うテーマには必ず Andrew のアイデンティティが下敷きにあって、彼はヘッドバンキングの風圧でそこに火を注ぎ、見事に燃焼させていくのです。
今回弊誌では、Andrew Lee にインタビューを行うことができました。「世の中にはアニメ・ゴア/BDMバンドが少なくないけど、彼らはグロ・ロリ・バイオレンスを “ショック・バリュー” “衝撃度” として使っているだけで、本当にそのテーマに興味を持っているバンドは皆無だよね。アイツらは、自分らのポルノの題材で一瞬たりともシコってないんだよ。ヤツらはただ “hentai violence” でググって、任意の過激な画像をアルバムに載せているだけ。まさに、怠惰なビジュアル、怠惰なテーマ、怠惰なアート、怠惰な音楽」 どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WORMROT : HISS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RASYID JURAIMI OF WORMROT !!

“To Me, Grindcore Is The Most Free-Form Of Extreme Music. I Try To Challenge The Notions Of ‘Tough Guy’ And ‘Angry Music’. You Don’t Have To Be ‘Tough Guy’ To Listen To Grindcore Or Metal.”

DISC REVIEW “HISS”

「グラインド・コアには様々な見方があると思うんだ。ただ、多くの人はグラインド・コアに対して厳格なガイドラインを持っていると思うんだけど、僕にはそのガイドラインがないんだよね。
僕にとってグラインド・コアはエクストリーム・ミュージックの中で最もフリーフォームなもの。僕は “タフガイ” や “怒れる音楽” という概念に挑戦しようとしているんだよ。グラインド・コアやメタルを聴くのに “タフガイ” である必要はないんだ。最大限のディストーションも必要ない。パンクのジャケットも必要ない。自由でいいんだ。でも、正直でなければならない。なぜなら、結局リスナーは “たわごと” を嗅ぎつけることができるから」
グラインド・コアは、新規に参入するバンドが注目を集めることが難しいジャンルかもしれません。すでに目的地に到達したと分析するリスナーも多く、基本的に同じような系統の、激しく楽しく怒れるバンドが何百と存在する場所。シンガポールの英雄 WORMROT は、そんなグラインド・コアのガイドラインを破壊し、ジャンルの “門番” たちを一掃しようとしています。
6年ぶりとなるアルバム “Hiss” は、バイオリニストの Myra Choo が暗闇で跳梁し、Arif の歌声は千変万化、ジャズやポスト・メタルの領域まで探求した、気高き創造性の塊。その裏には、メタルに古くから存在する “マッチョイズム” ひいては、保守的なステレオタイプに対する反抗が潜んでいたのです。
「彼の脱退についてあまり深掘りすることはしたくないんだ。家族の問題だからね。僕は人生をかけて WORMROT のために曲を書いてきた。だから、うん、WORMROT は Arif なしでも続いていくよ」
WORMROT 4枚目のアルバム “Hiss” の完成直後に、オリジナルメンバー Arif Suhaimi がボーカリストとフロントマンの座を降りることが明らかになりました。現代のグラインド・コアで最も多様なボーカリストの一人が、最高傑作を発表したばかりのこの時期にバンドを去る。それは WORMROT にとって明らかに大きな痛手です。しかし、ギタリスト Rasyid Juraimi とドラマー Vijesh Ghariwala は不屈です。襲い来る苦難はむしろ、21のトラックの中で吐き出されるフラストレーション、勝利、敗北、良い経験、悪い経験をリアルにし、”Hiss” はこの波乱の時代により “傲慢に” 跋扈する作品となったのです。
「今回、”Hiss” で梶芽衣子と “女囚サソリ:701号恨み節” にオマージュを捧げたのは、アルバムのテーマに合っていて意味があると思ったからだよ。日本の音楽は、Boris、324、Four Get Me A Nots、Casiopea、杏里、中森明菜などなど、いろいろ聴いているよ」
この音楽的な自由と拡散を “セルアウト” と断じることは簡単です。しかし、そもそも Rasyid には、日本の映画や音楽から受けた濃密な養分が備わっていました。BORIS, CASIOPEA, 中森明菜。そのどれもが実は、”Hiss” の重要なパズルの欠片。むしろ、原点に立ち返り “正直” になった Rasyid にとって、グラインド・コアとは真っ白なフリーフォームのキャンパスだったのでしょう。
それでも、”Hiss” は依然として、ベースなしのグラインドとパワーバイオレンスの伝統に則った短く速い曲で溢れるアルバムです。つまり、WORMROT は PIG DESTROYER が過去数年の間に行ったのと同じように、その味覚を拡大したのです。クラシックロックのセンスとリフを時速数百マイルで掘り起こす “The Darkest Burden” 、グラインドとノイズコアの狂気に VOIVOD の不協和を追加した “Your Dystopian Hell”、通常の瞬きで見逃すほどのグラインド “Unrecognisable” といった強烈な “ガイドライン” があればこその対比の美学。
ポスト・メタルの音の渦をブラストビートと凶悪なボーカルの上に漂わせる “Desolate Landscapes” は出色。”Broken Gaze” では感情的なクリーンボーカルを取り入れ、”Behind Closed Doors” ではパンクとクラシックなベイエリア・スラッシュを組み合わせ、何より、”Grieve”、”Pale Moonlight”、”Weeping Willow ” のトリロジーは、SWANS のようなトライバルなリズムから、NAKED CITY 的フリーフォームの前衛的サウンドスケープへのアプローチまで、極限の雰囲気を持ち、バイオリンが不協和音の合間で泣き叫びます。つまり、彼らはグラインド・コアという狭い檻から、さながら女囚さそりのように脱獄を試みているのです。アートワークはまさに恨み節のカタルシス。
今回弊誌では、Rasyid Juraimi にインタビューを行うことができました。「どこの国でも長所と短所があると思う。シンガポールは小さな国だから、国家が僕たちを監視し、動きを制限するのは簡単なんだよ。ただ、だからこそ僕たちはもっと賢くならなければならないよね。それは、決して不可能なことではないよ」どうぞ!!

WORMROT “HISS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUCCUMB : XXI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHERI MUSRASRIK & DEREK WEBSTER OF SUCCUMB !!

“Including a Song About The Boxer Rebellion Was a Personal Choice Though It Does Have a Tie To The Album In Its Being Against Westernization And Christianity In Their Rejection Of Ancestor And Nature Deity Worship.”

DISC REVIEW “XXI”

「私には、リアルな部分でとても男性的な面があって、それが演奏するときに姿を現すことは認めるわ。そうやって生の感情や暴力的な態度を表現する自由があることに感謝しているのよ。ただ、ジェンダーを考慮することで私は男性と女性の興味深いダイナミクスを加えることができるわけだけど、だからといってジェンダーを考慮することが常に必要だとは思っていないわ」
人生の選択、クリエイティブな仕事をする上での選択、音に対する選択にかんして、SUCCUMB のボーカリスト Cheri Musrasrik は女性であることに囚われることはありません。それ以上にもはや、エクストリーム・メタル界の女性をめぐる会話は少し陳腐だと言い切る彼女の喉には、性別を超越した凄みが宿り、”The New Heavy” の旗手としてアートワークの中性神のように自信と威厳に満ち溢れています。
「ベイエリアとカナダのシーンから受けた影響を否定することはできない。この2つのシーンに共通しているのは、彼らは常にそれぞれのアートを新しい領域に押し上げる努力をしているということだよ」
超越といえば、SUCCUMB の放出するエクストリームな音像もすべてを超越しています。ベイエリア、カナダというヘヴィな音楽のエルドラドを出自にもつメンバーが集まることで、SUCCUMB は突然変異ともいえる “The New Heavy” を創造しました。洞窟で唸るブラストビートと野蛮なデスメタルから、ハードコアの衝動と五臓六腑を締め付けるノイズまでスラッシーに駆け抜ける SUCCUMB の “エクストリーム” は、最新作 “XXI” においてより混迷の色合いを増し、くぐもっていた Cheri の声を前面に押し出しました。同時に、BRUTAL TRUTH や NAPALM DEATH のようなグラインドコアから、フューネラル・ドゥームの遅重までエクストリームなサブ・ジャンルを網羅することで、遅と速、長と短、獰猛と憂鬱をまたにかける不穏な混沌を生み出すことに成功したのです。
「様々なジャンルのある種のお決まりをコピーペーストするだけでは、あまりにあからさまだし、必ずしも素晴らしい曲作りになるとは限らない。その代わりに、僕たちはそれらの異質なサウンドの間に存在する音の海溝を掘り下げようとしているんだ」
とはいえ、SUCCUMB の “クロスオーバー” は単なる “いいとこ取り” ではありません。だからこそ彼らの発する “無形の恐怖” はあまりに現代的かつ唯我独尊で、基本的はよりアンビエントで実験的なアーティストを扱うレーベル The Flenser にも認められたのでしょう。そう、このアルバムにはリアルタイムの暴力と恐怖が常に流れているのです。その源流には、環境破壊や極右の台頭、世界の分断といった彼らが今、リアルタイムで感じている怒りがありました。
「義和団の乱を選んだのは個人的な選択だけど、祖先や自然の神への崇拝を否定する西洋化やキリスト教に反対しているという点では、このアルバムの趣旨と関係があるのよね。私は太平洋の小さな島の出身なんだけど、その島は恐ろしい宣教師と彼らの間違った道徳によって、固有の文化や習慣の多くが一掃されてしまったの」
アルバムの中心にあるのは、自然や大地を守っていくことの大切さ。アルバム・タイトル “XXI” は21番目のタロットカード “The World” を指し示していますが、正位置では永遠不滅、逆位置では堕落や調和の崩壊を意味するこのカードはまさに SUCCUMB が表現したかったリアルタイム、2021年の “世界” を象徴しているのです。
特に、義和団の乱を扱った “8 Trigrams” には彼らの想いが凝縮しています。中国の文化や貿易だけでなく、自然崇拝や宗教まで制圧し植民地化した列強と、それに激しく対抗した義和団。中でも、道教の自然や四元素へのつながりと敬愛を基にした八掛結社は、先住民の文化や習慣を抑圧し軍事基地や核実験の場として使用された太平洋の島を出自にもつ Cheri にとっては共感をせずにはいられない歴史の一ページに違いありません。そうして、世界がまた抑圧を強いるならば、私たちが音楽で義和団になろう。そんな決意までも読み取れる壮絶な7分間でアルバムは幕を閉じるのです。
今回弊誌では、太平洋の島からベイエリアに移住した Cheri Musrasrik とカナダ出身 Derek Webster にインタビューを行うことができました。「90年代は音楽業界で “成功する” 可能性についての妄想を捨てるというメタル界の考え方の変化により、多くの実験が行われたんだよ。アーティストが自分たちのサウンドを進歩させるために外部のインスピレーションを求めるようになり、その結果、TYPE O NEGATIVE などのバンドが大成功を収めることになったように思えるね」どうぞ!!

SUCCUMB “XXI” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUMA : DUMA】LIONSBLOOD OF KENYAN METAL


EXCLUSIVE : INTERVIEW WITH MARTIN KHANJA & SAM KARUGA OF DUMA

“It’s About Going Inside And Bringing It Out, putting Our Guts On The Table. There’s No Hiding. That’s The Thing: You Come To Duma You Come To The Fucking Butchery.”

LIONSBLOOD OF KENYAN METAL

一般的な外国人にとって、マサイの言葉で “冷たい水の場所” を意味するケニアのナイロビは、文字通り大都市特有の冷たさを纏っているように感じられるかもしれません。たしかに、街には高層ビルが立ち並び、交通量は多く、首長はヘネシーがコロナを殺すと考えています。それでもニューヨークや東京に比べればまだ温かみが感じられるのではないでしょうか。
しかし、ナイロビで生まれ育ち、この特異なメタルシーンにおいてさらに特異な色彩を放つグラインドデュオ Sam Karugu (ギター/プログラミング) と Martin Khanja (ボーカル) は、その意見に違を唱えます。
「ラジオを聴けばわかるよ。デタラメばかりだ。聴きたくない人がいるから、俺たちは何か違うものを作るんだ。”ワンサイズ・フィッツ・オール” 、一つの価値観がすべてを支配するなんてもう通用しないよ。俺たちは社会に適応出来ない人たちのために音楽を作っているんだ。」
たしかに、DUMA のセルフタイトルのデビュー作は、凡俗を攻撃するインダストリアルノイズが渦巻く反抗のレコードです。
2019年にウガンダのカンパラにある NyegeNyege Studio で録音されたレコード “Duma” は、00年代初頭にハードコアパンクやメタルを聴いて育った2人が送る強烈なステイトメント。ナイロビには80年代から DIY のハードコアシーンが存在しましたし、毎週木曜日の午後10時から12時まではアンダーグラウンドメタルを流す “Metal to Midnight” という番組も存在しました。それに YouTube, インターネット。
「俺の好きな音楽だから、俺が育った場所で周りのみんなに聴かせてやりたいんだよ。」

アフリカ大陸には未だ極小のメタルシーンしか存在しませんが、バンド同士はネットを通して連絡を取り合い、活気に満ちたコミュニティーを形成しています。ケニアのメタルシーンは「楽器を持っていて、心があって、何かをやりたいと思っている人なら、誰でも音楽ができるんだということを教えてくれた。」と Sam は語ります。
「アフリカにも昔からロックはあったよ…アパルトヘイト時代の70年代には、ザンビアやジンバブエのバンドが “Zamrock” を作っていた。ググってみてよ。だけどほとんどのバンドがレコーディングができなかった。だからそのためにケニアに来ていたんだ。”Zamrock” は70年代、80年代、90年代まで続いていたよ。アパルトヘイトが終わるころまでね。
だから、ケニアのシーンはずっと前からあったし、例えば南アフリカにはシーンがあるし、北アフリカにはチュニジアやエジプトにもシーンがある。世界の人々は俺らの存在を忘れてしまっているような気がするよ。でも、ケニアにもロックやメタルがあって、みんな楽しんでいて、バンドが演奏していて、モッシュ・ピットがあって、本当にオープンな人たちばかりなんだ。 人々が本当にオープンなんだよ。」
Martin もシーンの温かさについて同意します。
「ケニアのシーンは家族のような、コミュニティのようなものなんだ。どれだけ稼いでいるか、どんな人種かとか、そんなことは気にしない。ショーに出れば、みんなが愛してくれて、ありのままの自分を受け入れてくれる。
俺は自分のやっていることが人気があるものではなく、とても奇妙なものだと思っていた。だから同じ音楽をやっている人たちに出会って、”兄弟 “という感じになったんだ。俺たちはお互いを理解している。会場に足を踏み入れると、家族のような感覚になるんだ。 子供の頃、高校の頃に会った人たちや、大学生になってから会った人たちが、家族を連れて来てくれるんだ。 それは変わらず、どんどん大きくなっていく。 それがケニアのシーンのとても好きなところだね。みんなが互いに知っていて、みんなのことを愛しているから。」
それでも Sam はメインストリームからは程遠い現状も付け加えます。
「一回のライブで100ユーロが手に入る。それをバンド全員で分けるんだ。メインストリームからは程遠いよ。適切なギア、スタジオなんてないからなかなか新たなチャレンジも出来ないしね。好きだからやっているんだ。やらないと気が狂いそうになるから。」

影響を受けたのはどんな音楽なのでしょう?Martinはこう切り出します。
「TORCH BEARER, PINK FLOYD, Kurt Cobain, XXXTentacion, Travis Scott, SUICIDE SILENCE の Mitch Lucker, Bob Marley, それに DJ Scotch Egg-彼は神だよ。とにかく、彼らは上級地球人さ。エリートなんだよ。」
Sam はどうでしょう?
「ケニアのバンドはみんなそうさ。あとは LAST YEAR’S TRAGEDY, THROBBING GRISTLE。それから、BLACK FLAG, MINOR THREAT, SYSTEM OF A DOWN, それに MELT-BANANA! “Cell-Scape” は最高さ。たくさんいるよ。あとは母さんだね。でも母さんは俺がメタルをやっているなんて知らないよ。ゴスペルかなんかだと思っているんだろう。バレたら面倒くさいからね (笑) 」
Martin にとってメタルは救いであり、自己実現のためのツールでもありました。
「ラジオからメタルが流れてきて、人生が変わった。俺はいつも人生の中で自分の道を見つけようとしていたし、何かを発見しようとしていた。そしてこの音楽が俺に表現力を与えてくれていることに気付いたんだ。
道を歩いていると、頭の中でリズムが聞こえてきたり、詩を書いたりすることはいつも経験してきた。どこでそれを表現できるのか? この作品を通して、それを解放する方法を見つけたんだ。音楽がなければ自分の人生をどうすればいいのかわからない。目的がないんだ。メタルが生きがいを与えてくれた。一日の終わりには自分を表現しなければならない。そうしないと自分を抑え込んでしまう。精神的にも健康的じゃない。俺は苦手なことばかりだけど、少なくともこれは得意なんだ。」

2019年に DUMA が結成されたとはいえ、Sam と Martin は高校時代からお互いを知っていました。そして、Sam は SEEDS OF DATURA の、Martin は LUST OF A DYING BREED というトップナイロビメタルのメンバーでした。当時から、2人は互いの音楽に興味を持っていたのです。ボツワナのウインターメタルフェスで意気投合したデュオのパフォーマンスはすぐに共同作業へと繋がります。バンド名 DUMA とはキクユ語で暗闇を意味します。
「俺らはこの音楽に本当に深く入り込んでしまった。自分たち自身もダークで、音楽もダークで、世界観もダークなこのプロジェクトにね。」
アルバム “Duma” はメタルとして成立しながら、デュオの多様な嗜好を反映したモンスターです。”Omni” でトラップとメタルを融合し、”Lionsblood” ではエレクトロのダンスビートを取り入れます。「ダークでヘヴィーな実験だよ。新しいサウンドを作るためのね。」
“Lionsblood” はまさにアフリカのバンドにしか書けない楽曲でしょう。Martin が説明します。
「これは俺の民族的背景であるマサイ族のルーツからきている。男になるためには、茂みに入ってライオンを殺し、ライオンの血で体を洗わなければならないんだ。それは、つまり自分を見つけたということだ。ライオンの血を飲むんだから、生き残れば自分の中にライオンが残る。この慣わしを使ったのは、俺たちが日常生活の中でどのように存在しているかを表現したかったから。
問題は、人種や文化の違いじゃなく、見解や認識の違いなんだ。その違いは、俺たちが共に分かち合うべき強さなんだよ。 この違いが組み合わさったとき、俺たちはみんな強くなるんだから。人は教会に行ったり、学校に行ったり、何かを発明したり、ビジネスを経営したりすることができる。もし本当に好きなことが得意なら、それをやってみて、好きなことをするように人々を鼓舞して欲しいね。それが人間として、俺たち全員のためになるんだから。」

アートワークも一種独特です。Sam が語ります。
「偶然近所の市場で撮ったんだ。女の人が肉を買っているんだけど、彼女の服も肉に見える。肉を食べようとして自分が食べられてしまう。つまり、消費者にみえて実は自らが消費されているんだよ。それにアフリカっぽくて、メタルっぽいアートワークだよね。俺たちが言うところの、机にすべての内臓を出すってやつだよ。肉はすべて切り取られ、演奏するたび俺たちの体内で力になる (笑)」
Martin が付け加えます。
「つまり、このアートワークは自らの内なるものを外界へ解放することを象徴しているんだ。そうやって、自分のすべての内臓を机の上に出すわけだよ。何も隠すことはない。それが DUMA をやっている理由だから。」
アルバムには、ナイロビに対するバンドの不満も反映されています。Sam は、宗教と資本主義がこの大都市における “障壁” となってしまっていると非難します。住人たちは、この “ループの中” で生活することに慣れてしまい、快適な繭の中から出ることはないのです。DUMA は先住民が、自由に生きられるかつてのやり方を思い出すための水先案内人なのでしょう。
「もう機能していないよ。教育、宗教、商業、あらゆるものが俺たちの心を鈍らせている。本当の自分になることを許してくれないんだ。”Comers in Nihil” は箱の中に閉じ込められているという概念を比喩的に探求している。仕事をしてまともにお金を稼ぐというマンネリは安心だし心地よいものだけど、実際には生きているわけじゃなくゆっくりと人生を消耗しているだけなんだ。ただ仕事に行って家に帰ってくるだけなんだから。」
アフリカの現実にも立ち向かわなければなりません。Martin が続けます。
「仕事に行って家に帰ってもやることはたくさんある。家族もいるしね。それでも人は自分をポジティブに表現することでしか生き残れない。すべてを内に秘めていたら発狂してしまうから。自らの内面を世界に共有すれば、存在しなかったはずの人生が創造できる。ひいては、未来のより良い世界を作ることに繋がるんだ。」

仮に、コロナが世界の終わりをもたらそうとも? Sam は同意します。
「何かを創作し続けなきゃ。自分のやりたいことを全力でやらないといけない。世界はコロナで終わりを迎えるかもしれないし、何が起きているのかさえわからないけど、俺は自分のやりたいことをやって、自分らしく表現していくしかないんだよ。今の世の中、SNS によってほとんどの人が自分を表現できるようになっているだろう?今がその時だよ。自分の内臓を全部だすんだよ。」
闇の中でも常に光を見出すアルバムには、世界中に自分たちの音楽を広めたいという野心と共に、純粋な、サブリミナルなメッセージが込められています。Martin は目を輝かせます。
「みんなを鼓舞して、今よりもっと良くなるようにしてあげたいんだ。ビデオにもサブリミナルメッセージを込めている。本当に目を覚まそうとしている人には、それが理解することが出来るのさ。多くの人にインスピレーションを与えたいよ。音楽を聴いてくれた人、インタビューを読んでくれた人、ビデオを見てくれた人の心に何かを残したい。より良く生きれるような何かをね。」
Martin の最も伝えたいメッセージは、オープニングナンバー “Angels and Abysses” に描かれています。
「天使と深淵。心の中の小さな囁きを込めた曲だ。労働の中で、”オマエはもうめちゃくちゃだ。家に帰るんだ” ってね。毎日、自分の別の姿、一面が常に一緒にあることを忘れないでほしいんだ。
俺は心理学の修士号を持っている。そして、自らの認識している意識とは氷山の一角だと気づいたんだ。俺たちの習慣、行動、世界観は別の場所から来ているんだよ。意識的にそれを微調整することができれば、思い描いている最高の人生を体験することができるはずなんだ。その域まで到達しない場合でも、少なくともそれに近づくだろうし、これまでよりは良いものになるはずさ。」
Sam のお気に入りは “Pembe 666″。
「基本的には黙示録5章6節なんだが、スワヒリ語で書かれているんだ。聖書のこの一節では、ヨハネが小羊を見つけたと言っているんだけど、小羊は七つの封印を持っていて世界を解放するためにそれを開けなければならないんだよ。そして彼は子羊が殺されているのを見つけたんだ。 答えを探しているうちに、子羊が殺されていることに気づくというのは、宗教の面白いところだよな。きっと答えはないんだろう。」

最もテクノロジーを受け入れたバンドがケニア出身というのも皮肉なものです。
「俺たちにあるのは、歌とギターとラップトップだけ。面白いことに、メタルではほとんどの人がコンピュータをリスペクトしていない。純粋ではないと思われている。でも、コンピューターがあれば、バンド全体の音楽を作ることができることに気付いたんだ。シンセラインやドラムやギターを思いついて、それを完成させるまで煮詰めていくんだよ。」
DUMA がこれから進む場所はどこにあるのでしょう? Martin が答えます。
「デスメタルはもうやり終えたかも。メタルコア、デスコア、アバンギャルド、シンフォニック、ドゥーム。 これら全ての異なるジャンルからの影響を利用して、ハイブリッドな表現を生み出そうとしている。2040年や2050年に生まれた人たちだって何かを必要としているだろうし、僕らは前に進まなければならない。ヨーロッパやアメリカじゃ、メタルが確立されている。アフリカのメタルを知らしめるために、コンガやブラス、ドラムスといった民族楽器を取り入れるのは良い方法だと思うしね。それが俺たちの目標だ。俺達は新しいジャンルを作るつもりだよ。」
Sam と Martin は、彼らを理解しない人のことまで気にかけてはいません。DUMA の音楽は、マンネリに飽き飽きしたリスナーや、地元の放送局に満足しない人たちのためのもの。DUMA を完全に吸収するには、開かれた心が必要なのです。
「老若男女を問わず、すべての人に関係のあるものを作ろうと思った。たとえ暗くても、そこには光がある。そこにはたくさの知識と知恵が詰まっていて、子供たち、またその子供たちになんらかのインスピレーションを与えるんだ。」
DUMA はある種の伝道師なのでしょうか? Martin は否定します。
「というより、奉仕活動だよ。俺たちのライブに来れば、自分の抱えている問題や障害を克服するより良い方法を見つけることが出来るからね。視点を変えてくれるし、力を与えてくれる。改心させたいわけじゃなく、思い出させたいだけなんだ。」
Sam も同意します。
「伝道ではないね。メタルでは、8万人がメイデンのライブにくるけど、別に崇拝はしてないでしょ?(笑)。ただメイデンを聴くためにライブに行って、家に帰ればクソをする。誰も崇拝はしていない。それがメタルの醍醐味なんだよ。みんな自分の好きなことをしているだけさ。崇拝してるとしたら悲しいことだ。俺たちを崇拝なんてするなよ。やめとけ (笑)。」

参考文献: BANDCAMP:Duma Shines A Light on Underground Kenyan Metal

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENDON / SWARRRM : 歪神論 -EVIL LITTLE THINGS-】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAICHI NAGURA OF ENDON & KAPO OF SWARRRM !!

“To Me, Extreme Music In Japan Seems To Have a Spirit Kind Of “Fuck While Being Fucked” And Yeah…I Can Hear It. The Situation Is Often Forgotton Unconsciously.” By Taichi Nagura

“I’m Not Sure What The Punk / Hardcore Spirit Specifically Refers To. The Spirit Should Be Different For Each Individual.” By Kapo

DISC REVIEW “歪神論 – EVIL LITTLE THINGS –

「日本でバンドをやるということが常に既に”Made in Occupied Japan” であるという事実をわざとらしくモチーフとしました。反体制とかアナーキズムについては特には意識していませんね。”Made in Occupied Japan”が表すのはアメリカにファックされているという事実です。」
日本のエクストリームミュージックは “やりながらやられている”。ENDON の那倉太一氏が語るのは、白人が生み出したロック、もしかすると文明そのものへと過度に依存する日本の歪。大多数の日本人が “アメリカにファックされている” 事実を黙過する中、ENDON と SWARRRM、国産グラインドの二巨星は全てを直視し、共鳴し、未だ “更新の余地” があるべきロックの地平を開拓し続けます。
少なくともロックの教科書には、グラインドコアの源流とされるパンクロックについて、反体制的でアナーキーなアティテュードだと記されています。では、彼らの放ったスプリット “歪神論 -Evil Little Things-” とは、未だ白人に対するコンプレックスを抱き続ける日本の愚かしき権力に贖う音楽の形をした何かなのでしょうか?
那倉氏は「だいたい現政権や差別主義者を否定するのにわざわざ他人のスピリットなんて必要でしょうか。」と応じます。
さらに SWARRRM Kapo氏の言葉は象徴的です。「パンク/ハードコアのスピリットが具体的に何を指すのか不明ですが。大体、個でスピリットは違うはず。パンク/ハードコアのスピリット=左寄りと限定することがパンク全体主義であると考えます。一人一人が違う意見であるという事を当然のように理解される環境こそが必要なのでは。」
天上天下 唯我独尊 三界皆苦 吾当安此。”全宇宙のなかで、私たちは皆がたった一つの尊い存在。苦しみに溢れる世界で、私はその苦しみを気にかけるために生まれてきたのだ”。ENDON と SWARRRM、両者に流れる血潮にはきっとこの釈迦の言葉が刻まれています。それは啓蒙や扇動からは程遠いしかし世界にとって枢要な境地。
さらに Kapo 氏は “唯我独尊” のイデアこそが互いを惹きつけると語ります。「いつの時期にもそれぞれの時期のイケてると言われる価値観を共有する集団はいます。シーンというのかもしれません。そういう価値観に影響される事を拒否できるバンドの一つではないかと判断して仲良くさせてもらってます。SWARRRMはご存知かもしれませんが、良くも悪くもそういう事とは常に無縁の活動を長年続けてます。」
なるほど、歪神論で提示された両者の音の葉はそうして確かにシンクロしています。
「グラインドのシンボルであるブラストビートが炸裂する瞬間は、機関銃による戦闘の開始場面のようであり、多分に射精的な快楽を表象しています。」
インテンスの極みであるブラストとDビートは、ロックらしいギターのコードやリフワークと相対し確かに融解します。その位置から、カヴァー曲も含めてノイズの地獄や歌謡の宴といったそれぞれの蟻地獄へと引き摺り込む唯我の方法論も見事。
加速する混沌に逆行するロックのギタリズム。その二律背反にも思えるエナジーはしかし確かに白人のロックに魅せられ奪われた後、踏み倒し、疾風迅雷のうねりをあげる極東のモンスターに違いありません。ハードコアの脱領土化はここにその一歩を踏み出しました。
今回弊誌では、那倉、Kapo 両氏にインタビューを行うことが出来ました。「私自身ロックと政治の関係性に特別な物を求めていません。主張や左右の風向きは時代時代で変化あってしかるべきと考えます。過去の主張や精神が現代に有効とは考えませんし、過去の物事を全く美化して捉えてないし、美化されたロマンチックなロックの教科書も信じません。」どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DAUGHTERS : YOU WON’T GET WHAT YOU WANT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXIS MARSHALL OF DAUGHTERS !!

“The Title Definitely Serves As a Disclaimer. A Reminder To Everyone, Ourselves Included, Expectations Tend To Be More Of a Hindrance Than Aide. “

DISC REVIEW “YOU WON’T GET WHAT YOU WANT”

“欲しいものは手に入らないよ”。音楽に限って言えば “叶わぬ望み”、それは決して悲観すべき状況とのみは言い切れないのかも知れませんね。
ロードアイランドの州都プロビデンスで、最も不遜にして刺激的な音圧を刻み続ける実験のエクストリームアクト DAUGHTERS は、リスナーの期待に易々と添うことを良しとせず、臆す事なくジャンルの壁を粉砕し、サディスティックにそのクリエイティブなビジョンと牙を研ぎ澄ましています。
実際、8年振りのご褒美 “You Won’t Get What You Want” のタイトルは、かつての姿を望む全てのファンに向けた警告であり、放棄の証とも言えるのです。「このタイトルはディスクレーマーさ。期待は時に助けよりも妨げになるという事実を、みんなに思い起こしてもらうためのね。僕たち自身も含めてね。」 Alexis Marshall がそう語る通り、バンドは常に変化の中から内なるモンスターを覚醒させていくのです。
事実、躁の一極へと振り切った初期のマスコアイズム、グラインドコアのアドベンチャーは、時と共に成熟を遂げバンドのアグレッションをより狂気の方角へと導いていきました。
そうして、2010年にリリースされた前作 “Daughters” は培ったノイズロックの息吹を全面に開花させ、アンチメロディーからアクセシブルの地平へと舵を切ったマイルストーンへと仕上がったのです。
しかし、高まる人気、注目の一方でバンドは疲弊していました。「多くのことが一度に起こりすぎて、充分に内省、考慮することが出来なかったんだろうな。何年もずっとツアーを続け、些細なことでも深刻な問題となってしまったね。だから時間を置いて離れる必要があったのさ。」 と語るようにバンドは活動の休止を余儀なくされます。中でもバンドの要であるボーカル Alexis とギタリスト Nicholas Sadler の対立は深刻で、傑作リリースの裏舞台では Alexis、そしてベーシスト Samuel Walker までもが一時バンドを離れる事態にまで発展していたのです。
2013年、故郷のローズアイランドで再集結を果たした DAUGHTERS。プロビデンスの黒ダイヤをこのまま眠らせて置く訳にはいかないと、Robotic Empire レーベルの Andy Low が一肌脱ぎ実現したシークレットライブで、バンドは初めてサードアルバム “Daughters” の楽曲をオーディエンスに向けてプレイすることとなりました。そこでファンの変わらぬ熱狂を浴びた2人にとって、過去のいざこざはもはや取るに足らない小事となっていたのです。
Hydra Head から Ipecac への移籍、産みの苦しみを経て、”You Won’t Get What You Want” は遂に陽の目を見ることとなりました。リスナーが手に入れたのはもちろん、初期の凶暴な源衝動でもなければ前作の受け入れ易い躍動するアグレッションでもありません。
ロウテンポからミッドテンポの真中を蠢くノイズの海に、グラインドとミニマル成分を注入したムーディーな戦慄。この切迫した焦燥感、アトモスフィアはさながら Stephen King の映画のように、リスナーの神経をジリジリと蝕んでいきます。
ミニマルに、ノイジーに、スラッジーにインテンスを導く “City Song” で予兆を与えた後、”Long Road, No Turns”, “Satan in the Wait” の流れはバンドの禍々しきメタモルフォーゼを完膚なきまでに具現化します。
オリエンタルに、トライバルに、ゴシカルに、耳を惹くフックを盛り込みながら、不協和音のエッジ、無慈悲なマスビート、ハーモニーの崩壊を究極まで突き詰め全てを漆黒に塗り潰すバンドの方法論、アートロックのセレモニーはあまりに異形。
もちろん、同郷の THE BODY は比較対象の一つでしょう。しかし、Nick Cave のダークアメリカーナや Trent Reznor の内省的な実験を想起させる “Less Sex”、シンセとエフェクト、そしてファナティックなビートによってホラー映画の悪夢が再現される “The Flammable Man”、コンテンポラリーなパンクロックにも思える “The Reason They Hate Me” など作品に育まれた多様なコントラストとダイナミズムはやはり唯一無二。そしてその潮流は、きっと此の地日本の ENDON や、Sargent House のロースターとも密に繋がって行くはずです。
全てを聴き終えた後、とめどない疲労感と共に、まるで何かの呪詛をかけられたかのようにも感じる実に強烈なレコード。今回弊誌では Alexis Marshall にインタビューを行うことが出来ました。「ただ言えるのは、僕が従来の、慣習的なメロディーには興味がないってこと。僕たちはただ自分たちにとって良いと思えるサウンドにフォーカスしているだけなんだ。」 どうぞ!!

DAUGHTERS “YOU WON’T GET WHAT YOU WANT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SWARRRM : こわれはじめる – Beginning to break】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TSUKSA & KAPO FROM SWARRRM !!

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After More Than 20 years Activity, Japanese Grindcore Titan Swarrrm Breaks The Genres And Hardcore Rules With Their Newest Record “Beginning to break” !!

DISC REVIEW “こわれはじめる – Beginning to break”

“Chaos & Grind” を御旗に掲げる気概と熱情のグラインドコア烈士 SWARRRM が、激しさに豊かな感情を宿す愛と破壊の狼煙 “こわれはじめる” をリリースします!!スタンダードなハードコア的ルールに別れを告げ、アレンジや表現の幅を止めどなく拡大した作品は、ジャンルの垣根を意に介さない強靭で普遍的な魅力に満ちています。
「ハードコアルール的なものにはもうあまり興味ありません。それよりも刺激を欲しています。」 とインタビューで KAPO 氏が語るように、”こわれはじめる” は怒りや絶望、憤りといったオールドスクールなハードコアに根差すネガティブなアティテュードや類型的なスタイルが文字通り壊れ始めるレコードだと言えるのかも知れません。
刺激という意味では、例えば CONVERGE が新作でその多様なサウンドデザインによって語らずしてハードコア本来の刺激を更新したように、混沌の先を見据え変化を渇望する SWARRRM が保守的な地下室から這い出し少なからず陽の光を欲することは必然にも思えます。
アルバムオープナー “ここは悩む場所じゃない” は変化の象徴。「前作 ”FLOWER” 収録の ”幸あれ” ”あがれ” といった曲に可能性を感じていたのは間違いない」 「より普遍的なロックテイストに辿り着くべくして辿り着いた」と KAPO 氏が語る通り、この楽曲が指し示すレコードのイメージはキャッチーで歌心を携えた前代未聞の歌謡グラインド。伝説 HELLCHILD 時代から、原川 司氏がこれほど “歌った” ことは勿論ないでしょう。
司氏が発する歌心、エモーションが、J-Pop ではなく70年代の歌謡曲を想起させる事実は重要です。ここに存在するのはロマンではなく浪漫、ラブではなく愛、儚さと寂寞そして感謝。
大人になれば世界のほとんどが綺麗事や純愛ではなく、どこか歪な愛や歪んだ感情で成り立っていることに気づきます。それでも今がある奇跡。モダンなポップスが纏う煌びやかな飾りを寄せ付けない、司氏の貫く “歌” は日本的な侘び寂びを孕んでどこまでも正直です。
そうした司氏の新境地とバンドのルーツが見事に融解した楽曲こそ “愛のうた” であり、”絆” であると感じます。「あなたの思うグラインドコアと、私たちのグラインドコアは違うという事でしょうか。」 と KAPO 氏が語るように、ブラストのアレンジメントにこそグラインドの美学を貫く SWARRRM。
美しさと儚さはメロディーに、混沌と破綻はブラストへと帰依し、そこから生まれるボーカルと演奏の鬩ぎ合い、美醜のコントラストは唯一無二の尊き激音を創出するのです。楽曲の前半と後半でガラリと情景が変化し衝撃をもたらす詩の魔法も見事。
そうして辿り着く “血が叫ぶ” は、実際ブラストが装飾程度にしか使用されない異端の極地。ファンキーなカッティングが映えるポップとも形容可能な楽曲にはノイズが大胆に散りばめられています。
インタビューにもあるように、勿論偶然で意図も離れていますが、とは言えエクストリーム最前線の ENDON, FULL OF HELL, THE BODY との偶発的シンクロニシティーはシーンの向かう先を朧気に映し出しているようにも思えますね。
そうしてアルバムは、幕開けと同様にアコースティックの静謐な音色でその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、司氏と KAPO 氏にインタビューを行う事が出来ました。「激しい音楽に長く触れてこられた方にこそ聞いていただきたいです。何か感じていただけるのではと思います。」 変わらないことへの恐怖と、変わることへの恐怖。SWARRRM です。どうぞ!!

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SWARRRM “こわれはじめる – Beginning to break” : 9.9/10

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