タグ別アーカイブ: Melodic Hard

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JELUSICK : APOLITICAL ECSTASY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DINO JELUSICK OF JELUSICK !!

“David has been my biggest hero since I was a kid. I just learned to be even more humble after hanging out with him, he’s such a sweet person.”

DISC REVIEW “APOLITICAL ECSTASY”

「僕はみんなが欲しがるものを、何でも持っていると思う (笑)。 僕はいつも、ボーカル、作曲、音楽的なトリックの箱をたくさん持っていたいと思っていたからね。自分らしくありながら、何でもこなせるように。それが実現し始めたんだ」
David Coverdale, Jeff Scott Soto, George Lynch, Michael Romeo, John Macaluso, Ron Thall, Paul O’Neill, Steve Vai, Eric Martin, Gary Cherone…クロアチア人シンガー、Dino Jelusick ほど今、メタル世界で引っ張りだこな人物はいないでしょう。しかも、彼をもとめるのは多くが “伝説級” のアーティストたち。なぜこの、33歳の若者はこれほど人気なのでしょうか?それは、Dino の “引き出し” が果てしなく多いから。
ザグレブ大学音楽アカデミーで修士号を獲得している Dino は、ボーカルのみならず、ピアノ、ギターも達人級の完成されたミュージシャンです。だからこそ、Dino は鍵盤奏者兼バックボーカルとして David Coverdale の目に止まり、WHITESNAKE に招かれることにもつながりました。様々な楽器をこなせる。それはミュージシャンとして、間違いなくプラスの要素。しかし、Dino にはそれ以上の素晴らしき “アイデア” の数々、音楽的な多様性があり、それこそがおそらく数多の伝説を惹きつけているのでしょう。
「僕たちはオールド・スクールと、とてもモダンなものの中間にあって、両方のエッジで踊っているんだ。 だから、いつも違う観客を惹きつけることができているんだと思う」
そんな Dino の多彩さ、音楽的な多様性が収束したのが、自身のバンド JELUSICK です。古き良き “歌” が戻って来つつあるメタル世界において、時には Dio に、時には Coverdale に振れる Dino の圧倒的な歌声は明らかに一際輝きを放っています。しかし、JELUSICK が素晴らしいのは、そうした彼の獰猛でありながら “オールドスクール” な歌唱がモダンなメタルの波に乗っていることでしょう。
自身の巧みな鍵盤を配したダークな楽曲には、Ivan Keller のウルトラ・テクニカルなギターが寄り添い、メロディックでありながらメタリック、テクニックと好奇心を満載したプログレッシブな新時代のハードロック/メタルが紡がれていきます。おそらく、 Ivan は Earthquaker Devices のピッチシフターを使いこなしているのでしょうが、こういうエクストリーム世界で流行りの音をハードロックに取り込む若さこそ至高。あの Vito Bratta を想起させる、実に素晴らしいギタリストですね。
歌心を追求した NEVERMORE、メタルへ振り切った KING’S X、プログレッシブな ALTER BRIDGE、ドーピングを施した WHITESNAKE…そんなワクワクするような例えが次から次へと浮かぶエキサイティングかつダイナミックな “Apolitical Ecstasy“ は、そうして無限のイマジネーションの中にロックやメタルがかつて蔑ろにしていた “奔放さ” や “衝動”、”不規則性” を歌声と共に取り戻していきます。
「David は子供の頃から僕の最大のヒーローだった。彼と付き合ってから、僕はもっと謙虚になることを学んだよ。だって彼はあんなに有名なのに、とても優しくて思いやりがある人だからね」
ミリメートルの正確さよりも大切なことがある。きっとそんな寛容さも、Dino は David Coverdale から学んでいるはずです。例えば、Ozzy Osbourne が YUNGBLUD を、FIREHOUSE の C.J. Snare が Nate Peck を育てたように、あの白蛇の伝説は Dino の素晴らしき師匠となって彼の行先を明るく照らしています。そしてまた、次々と巨人が旅立っていくメタル世界で、そうした “継承” のあり方はきっと、このジャンルの灯火となって未来を明るく照らしていくはずです。
今回弊誌では、Dino Jelusick にインタビューを行うことができました。「僕はまず第一にシンガーであり、そこでこそ100%の自分を感じる。でも、ピアノの後ろに座ると、まったく新しい経験と喜びが得られるのも確かなんだよね」 どうぞ!!Ronnie Romeo、Andrew Freeman、そして Dino の3人がいる限り、メタルの “歌”、その未来は明るい。どうぞ!!

JELUSICK “APOLITICAL ECSTASY” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JELUSICK : APOLITICAL ECSTASY】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JOVIAC : AUTOFICTION PT.1-SHARDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VILJAMI JUPITER WENTTOLA OF JOVIAC !!

“One Thing That Always Attracted Me To Toto Was That They’re Amazing Musicians, But They Don’t Need To Show Off All The Time. They Just Want To Make Good Tunes.”

DISC REVIEW “AUTOFICTION PT.1 – SHARDS”

「僕はメロディを愛し、80年代のポップ音楽の大ファンなんだ。プログレッシブとポップは必ずしも異なるものではないと思う。プログの世界には素晴らしいポップなフックの例が数多く存在し、ポップに傾倒したり、完全にポップに転向したバンドもいるよね。例えば GENESIS だよね。僕は記憶に残るコーラスが大好きで、プログレッシブ・メタルの分野では、CIRCUS MAXIMUS のようなバンドは別格だよね」
GHOST や SLEEP TOKEN の大成功を見れば、メタルの振り子が “歌” に戻ってきたことがわかります。実際、”歌”、つまり耳を惹く歌心やポップ・センス、そしてフックの山脈は、今を生きるアーティストにとって強力な武器になります。時はSNS戦国時代。コスパやタイパを何よりも重視する若い世代は、アーティストに5分はおろか30秒、もっといえば5秒の短い時間しか与えてはくれません。そんなリスナーのスクロールする指を止めるために、メロディのグラデーションは重要なキー・アイテムとなっているのです。
そして今、フィンランドから大きな注目を集める、”メロい” メタル・バンドが登場しました。JOVIAC。タンペレ出身の彼らは、プログレッシブなメタルを奏でていますが、変拍子や高度なテクニック、作曲の複雑性…そうした驚きや好奇心の探求のコーティングに輝くような砂糖菓子の旋律を使って、プログとAORのミルフィーユを作り上げました。
GENESIS や YES、それから DREAM THEATER はもちろん、PERIPHERY や PROTEST THE HERO といった例を挙げるまでもなく、プログとポップは綿密に結びついてきましたが、JOVIAC は MOON SAFARI や A.C.T. 並のポップさでモダンなエッジをも際立たせているのです。
「TOTO に惹かれた理由の一つは、素晴らしいミュージシャンであるにもかかわらず、常に自慢する必要がない、テクニックを見せつけないこと。彼らはただ良い曲を作りたいだけなんだよ。TOTO のメンバーは、数十年にわたりハリウッドをはじめ世界中で最も評価され、起用されるセッションミュージシャンだった。彼らの技術と音楽界への貢献を本当に尊敬しているよ」
ボーカルとギターを担当する JOVIAC の心臓 Viljami Jupiter Wenttola にとって、そのメロディとコンポジションの源泉は TOTO にありました。Viljami は TOTO を愛しすぎて、”あの” 紋章を自らの腕にまで刻んでいます。そう、JOVIAC も TOTO 同様、並外れたミュージシャンの集まりでありながら、決してそのテクニックを誇示するような音楽の作り方はしていません。アクセシビリティに重点を置きながらも、聴くたびに新たな発見がある、音楽的な好奇心や冒険心を満たしてくれる様々な仕掛けやフックを縦横無尽に張り巡らせているのです。”Shine” 冒頭の “時間” の使い方ね。天才的!
そして、聡明な読者の皆様ならば、”Kingdom of Desire” からの TOTO がとりわけメタルやプログに接近していたこともご存知でしょう。インタビュー中で Viljami も指摘していますが、”Falling in Between” のプログ・メタル的素晴らしさね。
「DREAM THEATER は道を切り拓き、このジャンルの先駆者の一人となった。彼らの努力がようやくメジャーの認知を得たことは、きっと素晴らしいことだと思うんだ。ただし、僕の最も好きな DREAM THEATER のアルバムは初期の時代のもので、特に Kevin Moore 時代は常に僕の心に深く刻まれているよ」
フィンランドはメタルの故郷、そのひとつとして知られていますが、これまで世界に進出する画期的なプログレッシブ・メタルを輩出したとはいえません。JOVIAC は2017年から、その状況を改变するために休むことなく活動してきました。プログレッシブ音楽の自由、人間の感情、中毒性のあるフック、巧妙なアレンジを組み合わせるという独自のビジョンに基づいた、キャッチーなリフとメロディと、概念的で思慮深い要素を融合させる多様で深い音楽。それはきっと Kevin Moore 時代の DREAM THEATER にも通じる音。そうやって彼らは偉大な先人と同様に、北欧の新たな道を切り開いていくのです。
今回弊誌では、Viljami Jupiter Wenttola にインタビューを行うことができました。「最も転機となったのは中学校の頃、初めて CHILDREN OF BODOM を聴いた時だったね。当時ドラマーだった僕は、CoB のアルバム “Hatebreeder” の素晴らしいメロディに魅了され、エレキギターを弾くことを決意したんだ。そしてその時に、音楽に人生を捧げることも決心したんだ。Alexi、安らかに」 あの DISPERSE にも通じるものがありますよね。どうぞ!!

JOVIAC “AUTOFICTION PT.1 -SHARDS : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JOVIAC : AUTOFICTION PT.1-SHARDS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLACKRAIN : CRACK THE SKY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SWAN HELLION OF BLACKRAIN !!

“Van Halen Debut Album Became a Big Thing In My World, The Sound Of The Guitar On This Album Is So Unique, There’s a Very Special Feeling Coming Out Of It, It Is Wild.”

DISC REVIEW “CRACK THE SKY”

「Jerem はまだ若いけど EVH の大ファンで、彼にとって大きな影響の源だよ。実は、この動画で僕らの音楽がより広い層に届くと期待していたんだ。素晴らしいギターソロは、ロックやグラムのコミュニティだけでなく、多くの人々の心を動かすことができるからね」
Eddie Van Halen が旅立って5年。そのユニークな音楽、哲学、サウンド、テクニックは、大いなる遺産、ロックの “導火線” となって今も人々の心を動かし、リアルタイムを知らない若い世代をもギターやメタルの沼へと引きずり込んでいます。ギター・ヒーローの類稀なる情熱と魔法は、先日インタビューを行った DERAPS の例を挙げるまでもなく、確実に多くの後続へと “継承” されているのです。
「VAN HALEN のファースト・アルバムは、若い頃にオリジナルのLP版を贈られてから、僕の世界で大きな意味を持つようになったんだ。このアルバムのギターの音は本当に独特で、特別な感覚があるよね。実に野性的だよ」
20年前、ここ日本のツアーからキャリアのスタートをきったフランスの BLACKRAIN。80年代のサンセット・ストリップを現代へと蘇らせる彼らは、紆余曲折を経て昨年再スタートを切りました。Jerem G という若き才能を得た彼らは、一度 VAN HALEN のファースト・アルバムという原点に戻り、再起を図ります。”Resurrection”。Jerem G がこの楽曲、このMVで魅せた姿には明らかに “Eruption” の情熱、野生、衝撃が宿っていました。今、この動画は様々なプラットフォームで拡散され、”バズって” います。そう、ギターの衝動は時にメタルのコミュニティを超越して “噴火” します。かつての VAN HALEN のように。
「現代の社会では、人々は何かに対して30秒以上の注意を払わないため、”メディオクリティ” “奇をてらわない良さ” “普遍的な素晴らしさ” が “大きな問題” となる。これが、今日あらゆる問題が蔓延する理由かもしれないよね。だからこそ、努力を重ねて一定のレベルに達し、夢を叶えた人々を見聞きすることは、確かに大切なことなんだ…」
長年こうしたサイトを運営していると、いかに現代が、もしくは SNS が “普遍” と相性が悪いかを思い知らされます。結局、”バズる” 記事は今や30秒、いや5秒で伝わる奇抜な “出オチ” のアーティストが大多数。もちろん、そうした前代未聞のアイデア自体は素晴らしいのですが、果たして “バズ” に “加担した” リスナーは彼らを末長く愛しているのでしょうか?まるでスタバの新作のように、ただ一度 “消費” してそれで終わりのような気がしてなりません。
スクロールで膨大な情報が現れては消える時代に、私たちのアテンション・スパンはどんどん短くなっていきます。そうした流れで、”メディオクリティ”、普遍的に長く愛せる音楽を私たちは見失いがちなのかもしれませんね。だからこそ、もし “当たり前にカッコいい” Jerem G の勇姿に感銘を受けたとしたら、彼らのアルバムにも目を向けて欲しいのです。そこには、80年代の巨人たちとも対等に渡り合える、情熱的な目眩くメタルの “普遍” が存在しているのですから。
今回弊誌では、フロントマン Swan Hellion にインタビューを行うことができました。「多くのギター・ヒーローや素晴らしい達人が存在したと感じてきたけど、僕の注意を引くのはごくわずかだった。多くの人が超高速でスケールを上下に弾くことができる中、僕は別の何かが必要だと思ったんだ。曲のために演奏し、音楽に本物をもたらすギタリスト、タッチやサウンドを持つギタリストこそが必要だとね。Jerem はその資質を持っている」 どうぞ!!

BLACKRAIN “CRACK THE SKY” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLACKRAIN : CRACK THE SKY】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MIKAEL ERLANDSSON : THE SECOND 1】 “THE 1” 30TH ANNIVERSARY


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKAEL ERLANDSSON !!

“Melodic Hard Is My ”Backyard” And My Home! I Will Continuing Doing This Til The Day I Die. Doesn’t Matter If It’s Popular Or Not – For Me It’s My Music Lifestyle – Love It !!!”

DISC REVIEW “THE SECOND 1”

「メロディック・ハードロックは私の “バックヤード” であり、私の家なんだ!だから、死ぬまでやり続けるつもりだよ。人気があろうがなかろうが関係ない!私にとって、この音楽はライフスタイルなんだ。ただ、愛しているんだよ!」
“ダサい” 音楽とは何でしょうか?流行や時代にそぐわない音楽のことなのでしょうか?だとしたら、たしかにメロディック・ハードロック、通称メロハーは “ダサい” 音楽なのかもしれません。ただし、もし、”ダサい” が情熱や信念もなくただ時流に乗るだけの、名声、金、モテを欲するポーザーを指すとしたらどうでしょう?明らかにメロハーは “ダサい” から最も遠い場所にいます。なぜなら、大きな名声や金銭は今の時代、メロハーでは得られないものだから。
それでも北欧の貴公子 Mikael Erlandsson がこの音楽をやり続けるのは、メロハーが、美しい旋律がただ好きだから。あの傑作 “The 1” から30年。ついにリリースされる続編 “The Second 1” には、長い月日を経ても枯れることのなかったメロハーに対する愛や情熱が溢れています。
「私は美しいメロディーがただただ大好きなんだ。そしてそれは、私の頭の中で常に鳴っている。メジャー・キーでもマイナー・キーでも、音楽のルールにとらわれず、自分なりのやり方でやるのが好きなんだよ」
1994年、ゼロ・コーポレーションからリリースされた “The 1” はメロハーを定義づけるレコードの一枚となりました。ハードな曲もソフトな曲も、メジャー・キーでもマイナー・キーでも貫かれる旋律の審美。
もちろん、アップテンポでハード、北欧の哀愁が浸透した “It’s Alright” は特にここ日本で爆発的な人気を得ましたが、それだけではありません。例えば “Show me”, “Reason” のようなおおらかなメロディの泉や、”Wish You Were Here”, “Life is a Hard Game to Play” のようなクリスタルで澄み切った北欧の景色に “We Don’t Talk Anymore” のタンゴまで、Mikael のハスキー…ボイスが紡ぎ出すメロディはすべてが珠玉で、ジャンルの醍醐味を心ゆくまで見せつけてくれたのです。
「私は自分をシンガーソングライターとして見ているんだ。そして自分のやっていることを愛している。そうした有名になることについて、ただ興味がないんだよ。だから、人気があろうとなかろうと、これからも音楽を続けていくつもりだよ。自分のため、そして私に興味を持ってくれる人のために」
世界が音楽だけに収束していくような “C’est la vie” を聴けば、メロディがゆっくりと密やかに孤独を癒してくれるような “Paper Moon” を聴けば、Mikael のメロハーに対する情熱が些かも衰えず、むしろ今もなお燃え盛っていることが伝わるはずです。
ここには、LAST AUTUMN’S DREAM, AUTUMN’S CHILD, SALUTE など紆余曲折を経ても守り続けた美旋律の牙城が堂々と鎮座しています。メロハーは今や万人受けでも、時代の万能薬でもありませんが、それでも “Put Some Love In the World”、ほんの一欠片の愛情を、優しさを世界にお裾分けすることならできるはず。暗い時代に Mikael はそう信じて、明日も歌い続けるのです。
今回弊誌では、Mikael Erlandsson にインタビューを行うことができました。「日本は私にとって…本当にすべてなんだ。私の音楽を最初にリリースしてくれた国だから。”The 1” がすべての扉を開けてくれた。このアルバムをとても誇りに思っている。最初からね。もともとはただのデモだったものなんだ。でも、なんとかリリースにこぎつけることができた。その日から、私はほぼ毎年アルバムをリリースしているんだ!」 どうぞ!!

MIKAEL ERLANDSSON “THE SECOND 1” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MIKAEL ERLANDSSON : THE SECOND 1】 “THE 1” 30TH ANNIVERSARY

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIGHTER V : HEART OF THE YOUNG】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FIGHTER V !!

“I Don’t Think Melodic Hard Rock/AOR Is Dead, In Fact I Think There’s An Upward Trend Again. If You Look At TV Shows Like Stranger Things Or Cobra Kai, The 80s Are Coming Back.”

DISC REVIEW “HEART OF THE YOUNG”

「メロディック・ハード・ロック/AORが死んだとは思わないし、むしろ再び上昇傾向にあると思う。”ストレンジャー・シングス” や “コブラ会” のようなテレビ番組を見れば、80年代が戻ってきていることに気づくはずだよ。バイパーサングラス、マレット、ジーンズにレザージャケット……。とはいえ、安っぽいグラムロックで大成功できるとは思わない。オリジナリティを持ち、モダンと80年代のいいとこ取りをすることが重要なんだ。だから、昔の模倣ではなく、リフレッシュしている限り、正しい道を歩んでいることになる!」
メロハーは死んだ。AOR なんてダサい。夢のような80年代を経て、時に煌びやかで、時に美しく、時に悲哀を湛え、そして時に情緒を宿したメロディック・ハードの響きは窓際へのと追いやられてしまいました。しかし、時代は巡るもの。”ストレンジャー・シングス” のような大人気ドラマに80年代のノスタルジアが描かれることで、当時の音楽も息を吹き返しつつあります。
そうしたドラマが視聴者の心を掴むのは、ノスタルジーを誘いながらも同時に新たな視点や思想
、テクノロジーを駆使して決して古臭く終わらせないことが理由でしょう。スイスのバンド、FIGHTER V のセカンド・アルバムのアートワークには、近代的で繁栄した都市の外観で建てられた巨大な心臓が描かれています。そう、彼らの “メロハー” も Netflix と同様に当時の風景に新たな解釈をもたらす革命の鐘。”Heart of the Young”、FIGHTER V が奏でる魅力的なメロディック・ハードは、野心的な若いミュージシャンたちによって作られ、若い心を保つすべてのリスナーに贈られたものなのです。
「”Radio Tokyo” は音楽で成功を収め、頂点を目指している少年の話。”Radio Tokyo” に出演するためにね!僕らの象徴だよ。80年代のビッグバンドはみんな東京、少なくとも日本で演奏していた。それができれば、外国のバンドとして本当に成功したと言えるんだ!」
そんな FIGHTER V が、メロハー復興計画の足がかりに選んだ場所が日本、そして東京でした。なぜなら東京、そして武道館はいつだって世界中のハードロック・キッズ憧れの場所だったから。そして、今や日本は #メロハー が生き残る数少ない国のひとつとなったから。”Radio Tokyo” はまさにメロハーの祝祭。そう、DJ に導かれた圧倒的な高揚感、凄まじい精神的な勃起をうながす楽曲こそメロハーの真髄なのです。
「よくプロデュースされ、ミックスされたコーラスといえば、間違いなく HAREM SCAREM が最高の例になるよね!特に HAREM SCAREM の最初のセルフ・タイトル・アルバムは、伝説的なプロデューサー、Kevin Doyle の傑作だった!もちろん、彼らのソングライティングにおけるトップリーグのセンスも忘れてはならないよ。HAREM SCAREM は間違いなく、メロディック・ロックのダイアモンドなんだ!」
だからこそ、クラシックで若々しいメロハーの新境地を求める FIGHTER V が日本が育てた HAREM SCAREM をお手本に選んだのは自然なことでしょう。彼らは80年代のメロハーに、さらに肉厚でオーロラのようにコーティングされたコーラスの魔法と、プログレッシブに捻くれたフック&テクニックを持ち込んだ革命家でした。タイトルをいただいた(?) WINGER の知性や、”Speed Demon” でみせる MR.BIG への憧れも織り交ぜながら、FIGHTER V もまた、敷き詰められた旋律のカーペットに、現代的なエッセンス、コンポジション、プロダクションを飾り付け、このジャンルを次のステージへと誘います。
やっぱり、コーラスやコール&レスポンスの使い方が素晴らしいですね。FAIR WARNING も、TEN も、TERRA NOVA も個性的で扇情的なコーラスを持っていましたが、メロハーはコーラスが命。何より、彼らのアー写のTシャツは SURVIVOR。大事なことはすべて SURVIVOR から学んだ。いつも心に SURVIVOR を。
今回弊誌では、FIGHTER V にインタビューを行うことができました。「GOTTHARD, KROKUS, SHAKRA のようなバンドは、より多くの観客に知られていたし、そこまでハードな音楽ではないから、より親しみやすかった。だからそうした音楽とより繋がりを深めていったんだ」 FRONTLINE に SHAKRA。滾りますね!どうぞ!!

FIGHTER V “HEART OF THE YOUNG” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIGHTER V : HEART OF THE YOUNG】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INVASION : 2】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH INVASION !!

“When You Come To a Live Show It Is Our Duty Make You Forget Everything Else And To Have The Best Time In Your Life Whether You Are Crowd Surfing In Just You Underwear Or Standing In The Corner Listening.”

DISC REVIEW “INVASION 2”

「僕にとってハードロックとは、世界の暗黒面からの脱却と解放を意味するものだ。団結してひとつになれる。僕にとってはスピリチュアルなものなんだ。ライブに来たら、下着一枚でクラウド・サーフィンをしていようが、隅に立って聴いていようが、他のことはすべて忘れて人生で最高の時間を過ごしてもらうのが僕らの義務なんだ」
努力、友情、勝利、そして愛。少年ジャンプを地で行くようなメロディック・ハードが忘れ去られて長い年月が経ちました。予想通り、見事に MANESKIN を抱き込むことに大失敗した日本のメタル寄りハードロック陣営。せっかくのチャンスを棒に振って、無垢なる若者たちにメロハーの伝導という名の刷り込みもしくは洗脳を果たすことができなくなったその罪は重く万死に値します。何より、これまで、ロキノンに至宝を渡して世界が良くなったことなど一度もないのですから。
とはいえ、下を向く必要はありません。明けない夜はなく、やまない雨もありません。そう、音楽シーンは胎動するサークル。つらい現実をすべて忘れ、解放され、下着いっちょでアホになり、みんなでひとつになれる。努力、友情、勝利、そして愛が求められる時代に、メロハーの救世主が降臨するのはある意味必然でした。TNT で幕を開けたノルウェーのポップで少し歪なセンスを胸いっぱいに吸い込んだ INVASION は、その名の通りこの暗い世界を情熱と活力、そして至高のメロディで侵略するのです。
「僕は自分の心と魂から来る音楽を作っている。メロハーを作ることは決して選択ではなかった。作曲するときに自然に出てくるものなんだ。それが僕なんだからしかたがないよ。 自分のために、本当にやりたい音楽を作ることが大切だと思う。いわば、ジャンルに自分を選ばせるんだ」
重要なのは、彼らが情熱と魂で音楽を作っていることでしょう。Tony Harnell, Joey Tempest, Goran Edman といった北欧の声を見事に受け継いだ (Tonyはアメリカ人だが?!) Jørgen Bergersen は空っぽの頭で “セクシーな気分だ!” と叫び、この “欲望のジャングル” で “燃え盛る猿” になったと陳腐な告白をし、わざわざ “まだセクシーな気分だ!” と念を押した後、エッジーで華やかなギターソロが意味もなく宙を舞っていきます。すべてが小手先で、頭で、テクニックで、正しさで加工されるようになった音楽世界で、しかし彼らのこの無秩序はあまりにも魅力的。
「カミソリのように鋭いメタルからノスタルジックなシンセウェイヴまで、両極端の音楽を聴く。気分次第かな。それらのジャンルを融合させた人を見つけるととても面白い。INVASION の音楽にシンセの世界全体を取り入れるのが好きなのも、同じ傾向かもしれない。新鮮だし、サウンド的にできることの可能性が広がるからね」
とはいえ、彼らはもしかすると演じているだけなのかもしれません。80年代のクラシックなハードロックとコンテンポラリーなサウンドを巧みに組み合わせ、時にはAORに、時にはヘヴィ・メタルに、ハーモニーとシンセの海に溺れさせる彼らの音楽は、実は非常に巧みに考慮、設計されていて、あの THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA の登場と同じくらいの衝撃と期待感をもたらしてくれます。
たしかにこれはノスタルジアで、蛇足で、老人のエゴなのかもしれません。それでも、この美しいジャンルと、そこにあるあけすけに愛や情熱を叫ぶ少年ジャンプのファンタジーがもう少し抱擁されれば世界はほんの少しだけキラキラと変わるのでは…そう思わざるを得ないほど INVASION の音楽は輝いているのです。
今回弊誌では、INVASION にインタビューを行うことができました。「日本はスバラシイです!実はDuolingoで日本語を学ぼうとしていた時期があったんだ。本当に難しいから、一旦中断したんだけどね。”ワンパンマン” も全シーズン日本語で見ているよ。RPGシリーズのファイナルファンタジーも忘れてはいけない。僕のお気に入りはFF7とFFXだ。もっとたくさんしゃべって100%のオタクになりたいけど、このへんで」どうぞ!!

INVASION “2” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INVASION : 2】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIFTH NOTE : HERE WE ARE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FIFTH NOTE !!

“We Don’t Know If We Can, But We Try To At Least Make Rock Scene Enjoyable Without The Use Of Alcohol Or Drugs, Or Even Sex.”

DISC REVIEW “HERE WE ARE”

「僕たちは、州内だけでなく、世界的に知られるバンドになりたいんだ。僕たちは西洋のスタイルにとても影響を受けているけれど、自分たち独自のプレイも創り出そうとしている。アルバム・タイトルの “Here We Are” “僕らはここにいる” は、そうした僕たちのモチベーションを端的に表しているんだよ。僕たちは、魂に平和や癒しをもたらすような良い音楽を作りたいと思っているんだ。そして、僕たちの音楽で世界にインパクトを与えたいと願っているんだよ」
インターネットや SNS の登場、進化によって、音楽は世界中のものとなりました。これまで、決してスポットライトが当たらなかったような僻地からも発信が可能となり、人種、文化、宗教の壁を超えて多くの人の耳に届けることが叶う世の中になったのです。特に、メタルの生命力、感染力、包容力は桁外れで、思わぬ場所から思わぬ傑作が登場するようになりました。
「FIFTH NOTE と ABOUT US は、お互い西洋音楽の影響を多く受けているのは同じだね。その上で、僕たちナガ族は美しいメロディーを作るのが好きなんだ。また、トニック・ソルファ (相対音感) のような独自の音楽アレンジもあるからね。そうした美しいメロディやアレンジは、きっと深く僕らのルーツに刻まれているんだろうな」
近年、そうしたメタルの “第三世界” で特に注目を浴びているのがインドです。いや、もはや国力的にも、人口的にも、文化的にも第三世界と呼ぶのも憚られる国ですが、ここ最近、メタルの伸張は並々ならぬものがあります。ボリウッドを抱きしめた BLOODYWOOD の大成功は記憶に新しいところですが、それ以外にも様々なジャンル、様々な地域でまさに百花繚乱の輝きを放っているのです。中でも注目したいのが、インド北東部のナガランド。かつては首狩りの慣習もあったというナガ族が住むこの地域は、文化的にも民族的にも音楽的にも、インドのメジャーな地域とは異なっていて、だからこそ、この場所のメタルは独自の進化を遂げることができたのかもしれませんね。
昨年紹介した ABOUT US にも言えますが、ナガ族のメタルはメロディが飛び抜けて強力。さらに、かつて天空の村に住む天空族と謳われたその二つ名を字でいくように、彼らは舞い降りたメロディをその際限なきハイトーンの翼で天へと送り返していきます。
「一般的にロックというと、ハードコアでワイルドで暴力的な人たちや、道に迷っているような人たちが、エクストリームな音を通して怒りを表現し、怒りで痛みを解消しようとするものだ。そのような中で、僕たちは、道に迷ったり、君が挙げたような問題を抱えた人々に、自分たちは孤独ではないということを伝えたいんだよ。僕たちの前向きな音楽が彼らの痛みや問題を和らげてくれることを願っているんだ」
そこには、ナガ族の90%が敬虔なクリスチャンであるという事実も関係しているのかもしれませんね。インドの多くの新鋭がエクストリームなサウンドで人気を博す中で、FIFTH NOTE はプログレッシブ・ハードという半ば死に絶えたジャンルで世界に挑んでいます。ただし、このジャンルでは、暴力も、ドラッグも、セックスも、決して幅を利かせてはいません。必要なのは、ポジティブな光と知性、そして複数のジャンルを抱きしめる寛容さ。つまり、洗礼を浴びた FIFTH NOTE にとっては追求すべくして追求したジャンルでした。
「僕らがクリスチャンであるという事実、クリスチャンとしての倫理観は、僕らにもっと良いことをしようというモチベーションを与えてくれるんだ。できるかどうかはわからないけど、少なくともロックシーンをアルコールやドラッグ、あるいはセックスを使わずに楽しめるものにしようと努力しているよ」
理想は追求しなければ実現しない。インドに、そして世界に不公平や抑圧、犯罪に暴力が蔓延っていることは、当然彼らも知っています。しかし、暴力は暴力では解決せず、怒りに怒りをぶつけることがいかに愚かであるかも彼らは知っています。だからこそ、FIFTH NOTE はセックス、ドラッグ、ロックンロールという乱暴なステレオ・タイプを破壊して、メタルは “ストレート・エッジ” でも存分に楽しいことを伝えようとしています。それが世界を前向きに変える第一歩だと信じながら。
そしてその野心は、TNT, CIRCUS MAXIMUS, STRYPER, TOTO といった一癖も二癖もあるような英雄を、旋律や知性、そして耳を惹くキャッチーなサウンドで今にも凌駕しそうな彼らの音楽なら、 実現可能なのかもしれませんね。
今回弊誌では、FIFTH NOTE にインタビューを行うことができました。「ナガランドは丘陵地帯が多く、部族が多く住んでいる。そのため、音楽はほとんどが民族音楽なんだ。しかし、西洋の侵略が進むにつれて、そうした音楽はかなりポピュラーになっていった。だから伝統音楽と同様に、ロックやメタルも僕たちに大きな影響を与えることになったんだ」 どうぞ!!

FIFTH NOTE “HERE WE ARE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIFTH NOTE : HERE WE ARE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PERFECT VIEW : BUSHIDO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRANCESCO “JOE” CATALDO OF PERFECT VIEW !!

“We Think Bushido Is Very Important Values That Are Somewhat Lacking Today, Especially In Some Western Cultures.”

DISC REVIEW “BUSHIDO”

「僕たちは、武士道の原則が、今日、特に一部の西洋文化において、やや欠けている非常に重要な価値観だと考えているんだ。おそらく、武士道のこうした原則は部分的に回復されていき、今日の世界に適応されるべきだと思うんだ」
武士道で最も尊ばれる義と誉。侍は、例え主君が滅びる運命にあろうとも、義を捨て、誉を捨てて他家に支えることはありません。もちろん時代は変わりましたが、エゴよりも、財産よりも大事なものがあった男たちの生き様は、物質的な現代社会においてある種の教訓とすべきなのかもしれません。”Bushido” の名を冠した作品を完成させた PERFECT VIEW は、決してメロハーを裏切りません。名声や金銭、時の流れに左右されることもありません。ただ愛する音楽を作り続ける。その姿勢はまさにイタリアの侍です。
「僕たちの目標は、映画のような音楽体験ができるアルバムを作ることだった。だから、小さなことでも細部に至るまで細心の注意を払って作ったんだ。この作品は、障害を持って生まれながら、祖父のような偉大な侍になることを夢見る少年の物語だ」
PERFECT VIEW の “Bushido” は、侍の世界に捧げられたロック・オペラです。彼らは、武士という義と誉の戦士をテーマにしたコンセプト・アルバムで、メロハーに義と誉を尽くしてきた日本のリスナーに敬意を表したかったのです。もちろん、メロハーによるコンセプト・アルバムは想像以上に簡単ではないでしょう。メタルやプログレッシブ・ロックのように曲の長さを自由自在に操るわけにもいきません。様々な楽器によるゴージャスなスコアでストーリーを彩ることにも限度があります。しかし、異国の侍たちはこの難題をやってのけました。
「祖父は、お守りを通じて夢の中で彼に語りかけ、彼が自分の道を歩き、運命に出会うよう駆り立てていく。このプロットの中で武士道は、常に自分の夢を信じ、目標を達成するために自分の限界を克服するために戦うということを教えてくれると思うよ」
PERFECT VIEW にとっての武士道とは、夢を貫き、自身の限界を突破すること。武士道とは生きることとみつけたり。アルバムの冒頭を飾る “Bushido Theme” の和の響きで、リスナーは音楽と歴史が神秘の魔法を感じさせてくれる古の日本へと足を踏み入れます。ただし、そこから始まるのは、倭の国の住人たちが心酔した “メロハー” の桃源郷。例えば JOURNEY。例えば WHITESNAKE。例えば DOKKEN。例えば WINGER。あの時代のメロディの花鳥風月が、グレードアップしたプロダクションとテクニックで怒涛の如く繰り広げられていきます。
実に千変万化、変幻自在な5分間のドラマが続く中で、しかし我々は、いつしか “Bushido” の世界観に映画のように没頭していきます。それはきっと、PERFECT VIEW の中に TOTO の遺伝子が組み込まれているから。”ヒドラに立いを挑む騎士” というコンセプトが盛り込まれた “Hydra” はカラフルな楽曲の中にも不思議な統一性のあるアルバムでした。PERFECT VIEW は彼らの曲順や音色を操るテクニックを、インタルードとメインテーマの二本柱でつなげながら、メロハーのメロハーによる、メロハーのための完璧なコンセプト作品を作り上げたのです。
今回弊誌では、イタリアのルークこと、Francesco “Joe” Cataldo にインタビューを行うことができました。「若い世代にもこうした音楽を知る機会があれば、きっと評価されると確信しているからね。だけど問題はいつも同じ。知らないものを評価することはできないし、今日、最大のネットワークやプロモーション・チャンネルは、僕たちに選ぶ機会を与えず、いつも同じようなコンテンツを押し付けることが多いからね」 武士道を語る者ほど武士道から程遠い侍の母国は、異国の侍をどう受け止めるでしょうか。達人どもが夢の跡。どうそ!!

PERFECT VIEW “BUSHIDO” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PERFECT VIEW : BUSHIDO】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STARGAZER : LIFE WILL NEVER BE THE SAME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STARGAZER !!

“TNT Was The First Norwegian Hard Rock Band With International Success, And We, Coming From The Same City As Them, Were So Proud.”

DISC REVIEW “LIFE WILL NEVER BE THE SAME”

「僕たちは HAREM SCAREM や BAD MOON RISING を知っているし、彼らが僕たちと同じようなバンドから影響を受けていることもわかってもらえると思う。グランジやストーナー・ロックが主流になる中で、自分たちのスタイルを貫いたバンドたちだよ。彼らがいたからこそ、僕らも元々インスパイアされていた音楽にこだわっていると言えるかもしれない」
メロディック・ハードロック北欧5人組 STARGAZER は、2001年に F.R.I.E.N.D. というバンド名で結成され、2005年にEPをリリース。2008年に STARGAZER へと改名し、2009年にセルフ・タイトルを、10年の時を経て2019年に2ndアルバム “The Sky Is the Limit” をリリースし、古き良きメロディ志向のリスナーから高い評価を得続けています。なぜでしょう。それは、このノルウェーの美しき星見櫓にたしかな理由と信念が存在するからです。
「まず第一に、僕らは昔ながらの方法で、マイクを使ってアナログで録音しているんだ。アナログの伝統的なプリアンプを使い、リ・アンプは一切行わず、すべての信号を本物らしく保つ。僕たちは、ティン・パン・アレー (アメリカの大衆音楽業界の象徴。Frontiers のやり方を揶揄していると思われる) のような音楽メーカーから曲を買うのではなく、時間と労力をかけて、自分たちの音楽を根本から作り上げているんだよ。だから、僕たちが作る音楽は、僕たちの心に最も近い音楽なんだ」
ご承知の通り、近年の “メロハー” その大部分はイタリアの Frontiers Music から供給されていて、好きものにとっては最後の砦、生命線ともいえるような存在となっています。ただし、心を打つような素晴らしいリリースと同時に、メンバーをシャッフルした集金プロジェクトも少なくないのが事実。また、Alessandro Del Vecchio を中心とした “ホーム・バンド” に作曲、編曲、演奏を依存することも多く、すべてが “心からの” 音楽とは言い難い状況でしょう。
STARGAZER の素晴らしさは、そうしたしがらみに縛られることなく、自分たちのやり方で、心からの音楽を追求しているところにあります。もちろん、HAREM SCAREM にも、BAD MOON RISING にも常に迷いはありましたが、それでもあの困難な時代においてハードロックを追求し続けたその気概と音楽は今よりももっと賞賛されるべきでしょう。そしてSTARGAZER は、そんな90年代の荒波を乗り越えたメロハーの信念をその身に宿しているのです。
「TNT はノルウェーで初めて国際的な成功を収めたハードロック・バンドで、彼らと同じ都市に住む僕たちはそれをとても誇りに思っているんだ。彼らのアルバム “The Knights of the New Thunder” は、僕たちの心を激しく揺さぶったね!彼らは、ノルウェーのような小さな国からでも、世界のシーンに大きな影響を与えることができることを、他のハードロック・バンドに示したんだから」
そして、何より STARGAZER はあの TNT の血脈を引いています。同じトロンヘイムの出身で、Ronnie のギターを受け継ぎ、Morty の客演を成功させた STARGAZER 以上に TNT イズムを体現するバンドはいないでしょう。オーロラのハーモニーに、ガラス細工の美旋律、そしてギターのマシンガンの三位一体は、John Sykes と WHITESNAKE の骨太を加えて、完璧な1987年を今ここに蘇らせました。”Life Will Never Be The Same”。そう、彼らのメロハーを知った後の人生は、これまでとは決して同じではないはずです。
今回弊誌では、シンガーの Tore Andre Helgemo とギタリストの William Ernstsen にインタビューを行うことができました。「ギタリストとしての William はもちろん John Sykes の影響を受けているし、シンガーとしてのTore André は David Coverdale の素晴らしい軌跡と共に歌ってきた。BLUE MURDER も僕らがよく聴いているバンドなんだ」 どうぞ!!

“Of course we recognize Harem Scarem and Bad Moon Rising, and you might see that they are influenced by a lot of the same bands as we are. These are bands sticking to their guns while grunge and stoner-rock took the mainstream. Therefore, you can say we too hold on to that music we were originally inspired by.”
Melodic hard rock Scandinavian five-piece STARGAZER formed in 2001 under the band name F.R.I.E.N.D., released an EP in 2005, changed their name to STARGAZER in 2008, self-titled in 2009, and after 10 years, released their second in 2019 album “The Sky Is the Limit” and continues to be highly acclaimed by old-school, melody-oriented listeners. Why is that? Because there are certain reasons and beliefs that exist in this beautiful Norwegian stargazing turret.
“First thing is we record the old-fashioned way, analogue with microphones. Using analogue traditional pre-amps and no re-amping, to keep every signal authentic. We don’t go out there and buy songs from Tin-Pan-Alley-like music makers, but we spend time and dedication in creating our own music from the bottom. The music we make is the music closest to our hearts.”
As you know, the majority of “Melo-hard” music in recent years has come from Italy’s Frontiers Music, which has become something of a last resort and lifeline for the likes of you. However, along with the mind-blowingly great releases, the fact is that there have been a few collection projects that have shuffled members around. Also, they often rely on their “home band,” led by Alessandro Del Vecchio, to compose, arrange, and perform, so not all of their music is “from the heart. The beauty of STARGAZER is that it is a band with a lot of heart.
The beauty of STARGAZER is that they are not bound by these ties, but pursue music from the heart in their own way. Of course, Harem Scarem and Bad Moon Rising always had their doubts, but their spirit and music that continued to pursue hard rock in those difficult times should be praised even more than now. And STARGAZER carries in its body the conviction of a melodic musician who overcame the stormy seas of the 90s.
“TNT was the first Norwegian hard rock band with international success, and we, coming from the same city as them, were so proud. Their album “The Knights of the New Thunder” blew our minds! They kind of showed the way for other hard rock bands that it was possible to come from a small country like Norway, and make a big impact on the world scene anyway. ”
Above all, STARGAZER is in that TNT vein. Hailing from Trondheim, no band embodies the TNT-isms more than STARGAZER, which inherited Ronnie’s guitar and successfully guest-starred Morty. The trinity of Aurora’s harmonies, the beautiful melodies of Glasswork, and the machine guns of the guitars, with the added brawn of John Sykes and WHITESNAKE, brings the perfect 1987 back to life here and now.” Life Will Never Be The Same”. Yes, Our life will never be the same after discovering their melodies.
We had the pleasure of interviewing singer Tore Andre Helgemo and guitarist William Ernstsen. Here
we go!

STARGAZER “LIFE WILL NEVER BE THE SAME” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STARGAZER : LIFE WILL NEVER BE THE SAME】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRST NIGHT : DEEP CONNECTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RENECK SWEET OF FIRST NIGHT !!

“The Good Old AOR Scene Might Even Disappear Completely In About 20 Years. I Would Not Be Surprised By That But The Music Remains. Thanks To The Albums And The Internet.”

DISC REVIEW “DEEP CONNECTION”

「エストニアで生きていると、時間が経つにつれて、たくさんの素晴らしいバンドを発見できて面白かった。情報のない箱の中で生きているような時もあったからね」
時に限定された状況は、強力な好奇心を生み出します。音楽を聴けないから聴きたくなる。ゲームを買えないからやりたくなる。女性が振り向いてくれないから振り向かせたくなる。そんな、不自由の中の自由から、人は進歩とチンポを続けてきたのです。
エストニアはバルト三国で最も北に位置する小さな国。スウェーデンやフィンランドに面しながらもメタルやロックの黄金郷となれなかったのは、多分にソヴィエト連邦に支配された過去があるからでしょう。しかし、かつて激しく抑圧を受けていた美しい国は、独立を回復した後、目覚ましい発展を遂げます。
ITの分野において、エストニアは今や世界の最先端です。電子国家と呼ばれるように、ほとんどの手続きはインターネットで終わります。Skypeを産んだのもエストニア。さらに、国民の教育レベルは非常に高く、マルチリンガルで、報道の自由度も日本とは比べられないほど高いのです。
そんな小国の回復力、”レジリエンス” は、エストニアから世界を驚かせた FIRST NIGHT の音楽にもしっかりと根付いています。
「バッキングトラックのアイデアやミキシングのアイデアは全て Mutt Lunge から影響を受けている。ただ、僕らのバンドは DEF LEPPARD やどんな他の一つのバンドのようになるつもりはないよ。80年代の全体を愛しているからね」
FIRST NIGHT のメイン・コンポーザー Reneck Sweet にとって、情報が制限された世界はむしろプラスに働いたのかもしれません。ストリーミングや”〇〇放題”は確かに簡単で便利で安価ですが、いつでもあることの安心感が自分で探す楽しさ、探究心や好奇心を大きく犠牲にしている可能性はあります。事実、Spotifyのオススメとは無縁の環境で育った Reneck は、今やトレンドやセールスとは程遠いメロディック・ハードの世界を自らの手で探求し、遂にはエストニアが誇るインターネットの分野で大きな話題となるまでに成長を遂げたのです。
実際、デビュー作から4年の月日を経てリリースされた “Deep Connection” には、80年代への愛情、知識、好奇心が溢れんばかりに詰まっています。北欧的なキーボード/シンセのとうめいかと華やかさ、80年代ドイツ風のクリーン・ボーカル、カナダから輸入した清らかなギター・ライン、さらに80年代後半のブリティッシュAORからの影響、そしてもちろんアメリカのビッグ・サウンドがコーラスに組み込まれ、この作品はあらゆる国、あらゆる側面からメロディック・ハードの “美味しいとこどり” を実現しているのです。ウジウジとした女々しいテーマも実にメロディック・ハードしていてたまりませんね。
「AORというジャンルが徐々に衰退していくのも不思議ではないよ。ほとんどのメロディック・ロックバンドは、若い聴衆を獲得するために、よりヘヴィでモダンなサウンドにすり寄っているからね。でも僕はその方向には行きたくないんだ。僕らのアルバムを買ってくれるのは45~60歳くらいの人が多いんだよ。だから、古き良きAORシーンは、20年後には完全に消滅してしまうかもしれない。そうなっても驚かないけど、音楽は残っていくんだ。名作アルバムとインターネットに感謝だね」
Reneck はもはや、メロディック・ハードの消滅を悲観してはいません。というよりも、かつて限られた情報の中でも情熱を失わなかった自らの姿を重ねながら、音楽さえ電子空間に残っていれば誰かが聴いてくれる、語り継いでくれるという確固たる自信が Reneck の中にはあるのでしょう。DEF LEPPARD, Bryan Adams, BLUE TEARS, BOULEVARD, STRANGEWAYS, DA VINCI といった決して消えない名手の名作たちのように。”Deep Connection” で FIRST NIGHT は明らかに音のタイムトラベルをマスターしたようです。残念なのは、実際に80年代へとタイムトラベルが行えないこと。きっとそこには、満員のアリーナが待っていたはずです。
とはいえ、世はTikTok戦国時代。あの場所でメロディック・ハードがバズる確率は、きっとゼロではないでしょう。今回弊誌では、Reneck Sweet にインタビューを行うことができました。「僕は良いメロディーがとても好きなんだ。僕にとって音楽はメロディーが全てと言えるほどにね。そして “Deep Connection” はまさにそんな僕の望んでいたとおりのものとして完成した」 元嫁の顔をジャケにできるのはメロハーだけ。1st AVENUE 好きに悪い人はいない。どうぞ!!

FIRST NIGHT “DEEP CONNECTION” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRST NIGHT : DEEP CONNECTION】