“TNT Was The First Norwegian Hard Rock Band With International Success, And We, Coming From The Same City As Them, Were So Proud.”
DISC REVIEW “LIFE WILL NEVER BE THE SAME”
「僕たちは HAREM SCAREM や BAD MOON RISING を知っているし、彼らが僕たちと同じようなバンドから影響を受けていることもわかってもらえると思う。グランジやストーナー・ロックが主流になる中で、自分たちのスタイルを貫いたバンドたちだよ。彼らがいたからこそ、僕らも元々インスパイアされていた音楽にこだわっていると言えるかもしれない」
メロディック・ハードロック北欧5人組 STARGAZER は、2001年に F.R.I.E.N.D. というバンド名で結成され、2005年にEPをリリース。2008年に STARGAZER へと改名し、2009年にセルフ・タイトルを、10年の時を経て2019年に2ndアルバム “The Sky Is the Limit” をリリースし、古き良きメロディ志向のリスナーから高い評価を得続けています。なぜでしょう。それは、このノルウェーの美しき星見櫓にたしかな理由と信念が存在するからです。
「まず第一に、僕らは昔ながらの方法で、マイクを使ってアナログで録音しているんだ。アナログの伝統的なプリアンプを使い、リ・アンプは一切行わず、すべての信号を本物らしく保つ。僕たちは、ティン・パン・アレー (アメリカの大衆音楽業界の象徴。Frontiers のやり方を揶揄していると思われる) のような音楽メーカーから曲を買うのではなく、時間と労力をかけて、自分たちの音楽を根本から作り上げているんだよ。だから、僕たちが作る音楽は、僕たちの心に最も近い音楽なんだ」
ご承知の通り、近年の “メロハー” その大部分はイタリアの Frontiers Music から供給されていて、好きものにとっては最後の砦、生命線ともいえるような存在となっています。ただし、心を打つような素晴らしいリリースと同時に、メンバーをシャッフルした集金プロジェクトも少なくないのが事実。また、Alessandro Del Vecchio を中心とした “ホーム・バンド” に作曲、編曲、演奏を依存することも多く、すべてが “心からの” 音楽とは言い難い状況でしょう。
STARGAZER の素晴らしさは、そうしたしがらみに縛られることなく、自分たちのやり方で、心からの音楽を追求しているところにあります。もちろん、HAREM SCAREM にも、BAD MOON RISING にも常に迷いはありましたが、それでもあの困難な時代においてハードロックを追求し続けたその気概と音楽は今よりももっと賞賛されるべきでしょう。そしてSTARGAZER は、そんな90年代の荒波を乗り越えたメロハーの信念をその身に宿しているのです。
「TNT はノルウェーで初めて国際的な成功を収めたハードロック・バンドで、彼らと同じ都市に住む僕たちはそれをとても誇りに思っているんだ。彼らのアルバム “The Knights of the New Thunder” は、僕たちの心を激しく揺さぶったね!彼らは、ノルウェーのような小さな国からでも、世界のシーンに大きな影響を与えることができることを、他のハードロック・バンドに示したんだから」
そして、何より STARGAZER はあの TNT の血脈を引いています。同じトロンヘイムの出身で、Ronnie のギターを受け継ぎ、Morty の客演を成功させた STARGAZER 以上に TNT イズムを体現するバンドはいないでしょう。オーロラのハーモニーに、ガラス細工の美旋律、そしてギターのマシンガンの三位一体は、John Sykes と WHITESNAKE の骨太を加えて、完璧な1987年を今ここに蘇らせました。”Life Will Never Be The Same”。そう、彼らのメロハーを知った後の人生は、これまでとは決して同じではないはずです。
今回弊誌では、シンガーの Tore Andre Helgemo とギタリストの William Ernstsen にインタビューを行うことができました。「ギタリストとしての William はもちろん John Sykes の影響を受けているし、シンガーとしてのTore André は David Coverdale の素晴らしい軌跡と共に歌ってきた。BLUE MURDER も僕らがよく聴いているバンドなんだ」 どうぞ!!
“Of course we recognize Harem Scarem and Bad Moon Rising, and you might see that they are influenced by a lot of the same bands as we are. These are bands sticking to their guns while grunge and stoner-rock took the mainstream. Therefore, you can say we too hold on to that music we were originally inspired by.”
Melodic hard rock Scandinavian five-piece STARGAZER formed in 2001 under the band name F.R.I.E.N.D., released an EP in 2005, changed their name to STARGAZER in 2008, self-titled in 2009, and after 10 years, released their second in 2019 album “The Sky Is the Limit” and continues to be highly acclaimed by old-school, melody-oriented listeners. Why is that? Because there are certain reasons and beliefs that exist in this beautiful Norwegian stargazing turret.
“First thing is we record the old-fashioned way, analogue with microphones. Using analogue traditional pre-amps and no re-amping, to keep every signal authentic. We don’t go out there and buy songs from Tin-Pan-Alley-like music makers, but we spend time and dedication in creating our own music from the bottom. The music we make is the music closest to our hearts.”
As you know, the majority of “Melo-hard” music in recent years has come from Italy’s Frontiers Music, which has become something of a last resort and lifeline for the likes of you. However, along with the mind-blowingly great releases, the fact is that there have been a few collection projects that have shuffled members around. Also, they often rely on their “home band,” led by Alessandro Del Vecchio, to compose, arrange, and perform, so not all of their music is “from the heart. The beauty of STARGAZER is that it is a band with a lot of heart.
The beauty of STARGAZER is that they are not bound by these ties, but pursue music from the heart in their own way. Of course, Harem Scarem and Bad Moon Rising always had their doubts, but their spirit and music that continued to pursue hard rock in those difficult times should be praised even more than now. And STARGAZER carries in its body the conviction of a melodic musician who overcame the stormy seas of the 90s.
“TNT was the first Norwegian hard rock band with international success, and we, coming from the same city as them, were so proud. Their album “The Knights of the New Thunder” blew our minds! They kind of showed the way for other hard rock bands that it was possible to come from a small country like Norway, and make a big impact on the world scene anyway. ”
Above all, STARGAZER is in that TNT vein. Hailing from Trondheim, no band embodies the TNT-isms more than STARGAZER, which inherited Ronnie’s guitar and successfully guest-starred Morty. The trinity of Aurora’s harmonies, the beautiful melodies of Glasswork, and the machine guns of the guitars, with the added brawn of John Sykes and WHITESNAKE, brings the perfect 1987 back to life here and now.” Life Will Never Be The Same”. Yes, Our life will never be the same after discovering their melodies.
We had the pleasure of interviewing singer Tore Andre Helgemo and guitarist William Ernstsen. Here
we go!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RENECK SWEET OF FIRST NIGHT !!
“The Good Old AOR Scene Might Even Disappear Completely In About 20 Years. I Would Not Be Surprised By That But The Music Remains. Thanks To The Albums And The Internet.”
DISC REVIEW “DEEP CONNECTION”
「エストニアで生きていると、時間が経つにつれて、たくさんの素晴らしいバンドを発見できて面白かった。情報のない箱の中で生きているような時もあったからね」
時に限定された状況は、強力な好奇心を生み出します。音楽を聴けないから聴きたくなる。ゲームを買えないからやりたくなる。女性が振り向いてくれないから振り向かせたくなる。そんな、不自由の中の自由から、人は進歩とチンポを続けてきたのです。
エストニアはバルト三国で最も北に位置する小さな国。スウェーデンやフィンランドに面しながらもメタルやロックの黄金郷となれなかったのは、多分にソヴィエト連邦に支配された過去があるからでしょう。しかし、かつて激しく抑圧を受けていた美しい国は、独立を回復した後、目覚ましい発展を遂げます。
ITの分野において、エストニアは今や世界の最先端です。電子国家と呼ばれるように、ほとんどの手続きはインターネットで終わります。Skypeを産んだのもエストニア。さらに、国民の教育レベルは非常に高く、マルチリンガルで、報道の自由度も日本とは比べられないほど高いのです。
そんな小国の回復力、”レジリエンス” は、エストニアから世界を驚かせた FIRST NIGHT の音楽にもしっかりと根付いています。
「バッキングトラックのアイデアやミキシングのアイデアは全て Mutt Lunge から影響を受けている。ただ、僕らのバンドは DEF LEPPARD やどんな他の一つのバンドのようになるつもりはないよ。80年代の全体を愛しているからね」
FIRST NIGHT のメイン・コンポーザー Reneck Sweet にとって、情報が制限された世界はむしろプラスに働いたのかもしれません。ストリーミングや”〇〇放題”は確かに簡単で便利で安価ですが、いつでもあることの安心感が自分で探す楽しさ、探究心や好奇心を大きく犠牲にしている可能性はあります。事実、Spotifyのオススメとは無縁の環境で育った Reneck は、今やトレンドやセールスとは程遠いメロディック・ハードの世界を自らの手で探求し、遂にはエストニアが誇るインターネットの分野で大きな話題となるまでに成長を遂げたのです。
実際、デビュー作から4年の月日を経てリリースされた “Deep Connection” には、80年代への愛情、知識、好奇心が溢れんばかりに詰まっています。北欧的なキーボード/シンセのとうめいかと華やかさ、80年代ドイツ風のクリーン・ボーカル、カナダから輸入した清らかなギター・ライン、さらに80年代後半のブリティッシュAORからの影響、そしてもちろんアメリカのビッグ・サウンドがコーラスに組み込まれ、この作品はあらゆる国、あらゆる側面からメロディック・ハードの “美味しいとこどり” を実現しているのです。ウジウジとした女々しいテーマも実にメロディック・ハードしていてたまりませんね。
「AORというジャンルが徐々に衰退していくのも不思議ではないよ。ほとんどのメロディック・ロックバンドは、若い聴衆を獲得するために、よりヘヴィでモダンなサウンドにすり寄っているからね。でも僕はその方向には行きたくないんだ。僕らのアルバムを買ってくれるのは45~60歳くらいの人が多いんだよ。だから、古き良きAORシーンは、20年後には完全に消滅してしまうかもしれない。そうなっても驚かないけど、音楽は残っていくんだ。名作アルバムとインターネットに感謝だね」
Reneck はもはや、メロディック・ハードの消滅を悲観してはいません。というよりも、かつて限られた情報の中でも情熱を失わなかった自らの姿を重ねながら、音楽さえ電子空間に残っていれば誰かが聴いてくれる、語り継いでくれるという確固たる自信が Reneck の中にはあるのでしょう。DEF LEPPARD, Bryan Adams, BLUE TEARS, BOULEVARD, STRANGEWAYS, DA VINCI といった決して消えない名手の名作たちのように。”Deep Connection” で FIRST NIGHT は明らかに音のタイムトラベルをマスターしたようです。残念なのは、実際に80年代へとタイムトラベルが行えないこと。きっとそこには、満員のアリーナが待っていたはずです。
とはいえ、世はTikTok戦国時代。あの場所でメロディック・ハードがバズる確率は、きっとゼロではないでしょう。今回弊誌では、Reneck Sweet にインタビューを行うことができました。「僕は良いメロディーがとても好きなんだ。僕にとって音楽はメロディーが全てと言えるほどにね。そして “Deep Connection” はまさにそんな僕の望んでいたとおりのものとして完成した」 元嫁の顔をジャケにできるのはメロハーだけ。1st AVENUE 好きに悪い人はいない。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOMMY NILSEN OF SATIN !!
“Great Music Will Prevail. A Great Example Is That New Tv-series “Peacemaker” That Used a Song By Wig Wam For It’s Opening Credits. That Resulted In Wig Wam Topping The Rock Charts In America, Despite Having “Outdated” Music. That Happened Because People Got a Chance To Hear The Song.”
DISC REVIEW “APPETITION”
「君のように、僕の曲についてオーセンティックとか、”本物” という言葉を使う人がいるけど、本当に光栄に思うよ。おそらくその理由は、SATIN の曲の多くが僕が12歳から15歳の頃に書いたものだからだと思うんだ。1989年から1993年にかけて、メロディック・ロックとヘア・メタルがピークに達し、チャートと電波を席巻していた頃だ」
かつてメディアやシーン、市場を席巻したメロディック・ハード。その復活は近くて遠い。そんな印象を、長くこの音楽と共に生きてきた私は持たざるを得ません。もちろん、一時の無風状態と比べれば、今は天国と地獄。SMASH INTO PIECES, DYNAZTY, PERFECT PLAN, Chez Kane, THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA, GATHERING OF KINGS など百花繚乱の新鋭が躍動し、ベテランもその存在感を増している現在のシーンは非常に健全にも思えます。
ただし一方で、乱発される音源、同じような顔ぶれの同じような音楽には、80年代90年代の初頭に存在した魔法のようなワクワク感、メンバー間の深いケミストリーやストーリーがそれほど感じられないのも事実でしょう。よく出来た “偽物” とでも言うべきでしょうか。
そんなメロディック・ハードの2022年において、SATIN の “Appetition” は明らかに異質です。このアルバムのソングライティングとアレンジ、温もり、自由、そして特に巧妙なハーモニーは、このジャンルが脚光を浴びた栄光の時代からまるで抜け出して来たような “本物感” に満ちています。
それもそのはず、SATIN のマルチ奏者 Tommy Nilsen が完成させた楽曲は、本人があの時代に創造したタイムカプセルなのですから。ただし、あの時代と比べると、プロダクションと全体的なアプローチは非常に新鮮で、Tommy がこの30年で培った経験値と好奇心が本人曰く過去と現在をつなぐ美しき “フランケンシュタイン” の完成に大きく寄与していることは明らかです。
1980年代のメロディック・ハードの名曲が、よりパンチの効いたプロダクションで、時代遅れの楽器やアレンジもなく聴けることを想像してみてください。つまり、私たちリスナーは、”Appetition” というデロリアンに乗って本物の80年代や90年代初頭を体験できるのです。2022年の知識を持ちながら。SATIN は AOR の全盛期から彼が愛したものすべてを、彼自身の手でアレンジし直し、少なくとも片足はクラシックな時代に突っ込んだままで、現在の作品のように聴こえる特殊なタイムカプセルなのかもしれません。
「素晴らしい音楽は必ず勝ち残るよ。今はこのジャンルにも機会があるんだ。だからアーティストが時間をかけてでも素晴らしい曲を共有すれば、ジャンルやタイムスタンプ、歴史に関係なく、注目されるようになるんだ」
固定化されたファン・ベース、そしてその高齢化もメロディック・ハードというジャンルが憂うべき問題の一つです。しかし、Tommy は非常にポジティブです。同世代で同郷の WIG WAM による “Do Ya Really Wanna Taste It” の爆発的なヒットは Tommy だけでなく、このジャンルで懸命にもがく全てのアーティストに大きな力を与えています。人気ドラマ “Peacemaker” で使用され、
WWEや映画界の大スタージョン・シナとの共闘を経て、今では “スカンジナビアの宝石” とまで称されている WIG WAM はメロディック・ハード全体の希望です。聴いてもらえる “機会” さえあれば、どんなジャンルの誰にでも、音楽さえ “良ければ” 成功するチャンスはある。そして、その “機会” であるストリーミングの普及によって、むしろ Tommy は自身の成功を “It’s About Time” だと確信するに及んだのです。
「僕の音楽や歌詞に力をもらい、中には生きる糧、死なない理由になったというメッセージが世界中から届いているんだ。そのメッセージを読むのは胸が痛いんだけど、君が言うとおり、音楽は必要なものだ」
音楽はただ、”良い” か “悪い” かだけだ。そう語る Tommy の音楽、その評価はリスナーの主観に任せるとして、少なくとも “ポジティブ” が貫かれています。名曲 “Angels Come, Angels Go”。SATIN のトレードマークが詰まった、心の琴線に触れるこの曲で Tommy はこう声を絞り出します。
「天使は来て 天使は去る…人生を通して」
甘くて、ノスタルジックで、少しむず痒くて、それでも愛と勇気と希望を忘れない。これぞメロハーの真骨頂。人生で大切な人を失っても愛をあきらめないで。生きて欲しい。そう歌いかける Tommy の言葉が決して押し付けがましく感じられないのは、彼の元に寄せられた様々なメッセージが痛みと感謝と、ほんの少しの希望に彩られていたからでしょう。
今回弊誌では、Tommy Nilsen にインタビューを行うことができました。「僕にとって、音楽には “良い” と “悪い” の2種類しかなくて、何が良くて何が悪いかは、オペラでもデスメタルでもアイルランドの民族音楽でも、僕自身が決めることなんだ」 どうぞ!!
“India Is a Vast Country, And Every Region Is Unique For Its Own Religion, Tradition, Culture And Identity. The Strength Of India Is Its ‘Unity In Diversity.”
DISC REVIEW “ABOUT US”
「インド北東部の丘陵地帯。そこに位置するナガランドには、誇り高きナガ族が住んでいる。過去には、両者の間に紛争があったけど、時代は変わりつつあるよ。和平プロセスは進行中で、正しい方向に向かっていると思う。誰もが平和と調和の中で暮らしたいと思っているんだから。インドは広大な国で、どの地域にも独自の宗教、伝統、文化、アイデンティティが存在する。つまり、インドの強さは “多様性の中の統一” なんだよ」
インドがヘヴィ・メタルやハードロックの新たなエルドラド、黄金郷であることはもはや疑う余地もありません。フジロックの活躍も記憶に新しい BLOODYWOOD を筆頭に、DYMBUR, KRYPTOS, DEMONIC RESURRECTION, SKYHARBOR, GRISH & THE CHRONICLES など、彼の地には才能溢れるバンドがひしめいています。
重要なのは、それぞれがそれぞれの個性を大切に羽ばたいていること。広大なインドの多様なアイデンティティーは、カラフルな万華鏡のごとく、そのままメタル世界にも投影されているのです。
一方で、どこかユニークで、絢爛で、大仰なスタイルやサウンドは彼らの共通項にも思えます。それこそが、ABOUT US 語るところの、”多様性の中の統一” なのかもしれません。そう、インド北東部、ナガランドに住むナガ族 ABOUT US は非常にインドらしくなく、そしてインドらしいバンドなのです。
「僕たちナガ族の社会は、腐敗や犯罪の多いインドとはまったく違うんだ。ナガ族は、家族が何よりも優先され、誰もが尊敬される緊密な社会なんだよ。男性、女性、老いも若きも、お互いに気を配って生きている。汚職や腐敗がまったくないわけではないけれど、ナガ族の社会は基本的に寛容な社会なのさ。そうして、僕たちはシンプルな人間に育ったから、さまざまな希望や夢、願いを持って生きていて、それが僕たちの歌詞にも反映されているわけだよ」
バンドの言葉を借りれば、謎に包まれ、文化や伝統を守りながら生きるナガ族。その暮らしは、エネルギッシュで活気に満ち、一方で犯罪や人権の蹂躙、汚職が蔓延る都市部のインドとは大きく異なります。自然と人の優しさに育まれた ABOUT US は、そうして夢や希望をのせた美しくも爽快なメロディック・ハードロックに行き着きました。
彼らのメッセージはシンプルです。”決してあきらめるな”。自分を信じて、夢を持ち続け、チャンスをつかみ、自分だけの美しい物語を作って欲しい。その言葉はバンドを後押しする人たち、ナガ族、インド人、世界中のファン、そしてもちろん、自分たちにも投げかけられています。
ナガ族にとって欠かせないコミュニケーションの手段、愛と音楽を世界と共有するという夢を持ち、ABOUT US は “若い世代にロックの遺産を残す”、そのためにここにいます。まだ何も始まってはいませんが、セルフタイトルのデビュー作、”About Us” には、遺産を残すだけでなく、メロディック・ハード復権の予感、期待、原動力、その結晶がこれでもかと詰め込まれています。
「僕たちは実験的なメロディック・ハードロックバンドだと思っているよ。僕たちは常に様々な芸術的スタイルを実験しているから、そこからの影響を注入し、融合させたハードなメロディックロック、そんなスタイルやサウンドでありたいんだよね。僕たちは実験や変化に対してオープンだけど、メロディック・ハードロックが僕たちの音楽のコンセプトのベースとなることはたしかだよ」
定型化を極め、ある意味固定ファンのためだけの音楽となった感もあるメロディック・ハード。その功罪は別として、SMASH INTO PIECES, DYNAZTY のような “殻を破る” バンドが近年増えて来ています。再びメロハーの大きな波を、うねりを、濁流を呼ぶために必要なのはきっとそうしたブレイクスルー。ABOUT US はそのための切り札でしょう。
オランダの衝撃 TERRA NOVA を、より瑞々しく、挑戦的で、モダンに磨き上げたような彼らの音楽は、変化をもたらすに十分な “喜び” “楽しさ”、そして爆発には欠かせない “驚き” を備えています。TNT の Tony Harnell も舌を巻く天空へのハイトーンに、HAREM SCAREM の Pete Lesperance を想起させる奔放とストーリーのギターワーク。ナガ族の色を世界に発信したい。そんな野望も心強く、ABOUT US の名に込められたメロハーの “一体感と帰属意識”、その種を彼らは世界中にばら撒いていくのです。
今回弊誌では、ABOUT US にインタビューを行うことができました。「バンドメンバーは、なかなか面白い個性の集まりのアンサンブルなんだよね。この絆がうまく作用しているよ。みんなが自分の持っているものを少しづつ犠牲にし、活用していく。それが僕たちの強みなんだ」 日中の仕事と音楽のバランスを心がける、持続可能なメロハー・ベンチャー。衝撃のデビュー作は来月。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS BAY OF FREEDOM CALL !!
“We Just Used The Word “Metal“ For This Common Threat. In This Moment We Got This Vision. If All People Around The World Would Be Metal Fans…We Would Have Peace On Earth!”
DISC REVIEW “M.E.T.A.L.”
「今日の世界において全ての元凶の一つは、全員が共通の価値観やバランスの上で生きていないことなんだ。異なる興味、宗教間の行き違い、そして政治家は金の亡者さ。だから僕たちは “メタル” という言葉を共通点に提案したんだ。もし世界中全ての人たちがメタルファンだったら…きっと世界に平和をもたらすことができるはずさ。」
白砂糖に蜜を敷きつめたウルトラブライトなメロディー、劇画的王道ファンタジーな世界観、そしてディフォルメを加えたユーモアの精神。FREEDOM CALL は自らが掲げる “ハッピーメタル” のクルセイダーとして20年ものキャリアを積み上げてきました。
十字軍の魔法は、マスターマインド Chris Bay の演奏者、メロディーメイカー、そしてプロデューサーとしての卓越した能力を三叉撃として発動しています。
例えば SAXON 中期の快作 “Metalhead” のキーボードを聴けば Chris のマルチな才能と音算能力が伝わるはずです。さらに、根からはオールドスクールを、葉脈からはコンテンポラリーを吸収したポップの大樹 “Chasing the Sun” で花開いた光の音の葉は、メロディーの騎士に相応しい壮麗と華美を誇っていたのですから。
「”車輪の再発明” を行うつもりはないんだよ。音楽において最も重要な部分は、リスナーを心地よくすることなんだから。例え1人でも FREEDOM CALL の楽曲を聴いて幸せになってくれる人がいるなら、僕は完全に満足なんだ。」
ポジティブに振り切れたハッピーメタルの真髄は全てがこの言葉に集約しています。メタルをただキャッチーの極みへと誘う Chris の大願は、そうして10枚目の記念碑 “M.E.T.A.L.” で完璧に実現へ至ることとなりました。
メタルの数字である “666” を敢えて避け、エンジェルナンバー “111” をタイトルへと掲げたメタルとゴスペルの白き調和 “111 – The Number of the Angels” で FREEDOM CALL はリスナーを “ハッピーメタル” の領域へと巧みに誘い込みます。
記念碑としてリアルなメタルアルバムを目指した作品において、タイトルトラック “M.E.T.A.L.” はまさにメタルの予想可能性、完成された様式を現代的に具現化した楽曲でしょう。Brian May の遺伝子を引き継いだギターの魔法はクラッシックな隠し味。実際、「新曲を全部シンガロングするのが聴きたいね。」 という Chris の言葉は伊達ではありません。一聴しただけで全て口ずさみたくなるほど、”M.E.T.A.L.” の “11” 曲は突き抜けてキャッチー&ハッピーです。
ただし、人生を変えたアルバムに ELP, SUPERTRAMP が含まれていることからも、楽曲の豊富なバラエティーやフックが他の平面的なメタルレコードとは異なることが伝わるはずです。「ただメタルを書いて生み出し続ける “メタルマシーン” みたいにはなりたくないからね。」 “Sail Away” を筆頭に、キーボードやシンセサイザーのエフェクトが醸し出す音の風景も時に神々しい奇跡、無類のドラマを演出します。
そして何より、ソロアルバムの影響は絶大でした。”The Ace of the Unicorn” などは特に顕著ですが、「おそらく、両方の感覚があるんだろうな。僕は間違いなくオールドスクールなソングライターなんだけど、同時にモダンな音楽にも合わせていこうとしているからね。」 の言葉が示す通り、メンバーの変遷と共に再生を果たした FREEDOM CALL のポップセンスはモダンにアップデートされていて、典型的なロック/メタルのイヤーキャンディーにメインストリームの計算された洗練を巧みに練り込んでいるのです。
もちろん、FREEDOM CALL に宿る “光” の正体とは、”Keeper” を継ぐ者の使命であるメジャーキー、メジャーコードの完璧なる支配でしょう。陽光と哀愁のコントラストこそドイツの誇り。ダーク&シンフォニックに統一された前作 “Master of Light” はむしろ異端でした。しかしそれ以上にコンテンポラリーな音の葉までも抱きしめるポジティブなスピリットこそが核心なのかもしれませんね。
それにしても、FREEDOM CALL 然り、MAJESTICA 然り、FROZEN CROWN 然り、GLORYHAMMER 然り、TWILIGHT FORCE 然り、今年は推進力と旋律の二重奏が革命的なメロディックパワーメタルの快作が多数降臨していますね。
今回弊誌では、Chris Bay にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは “ハッピーメタル” の十字軍で、自らが光の…マスターなんだから。」どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBERT SÄLL OF W.E.T. !!
Melodic Hard Super-Stars, W.E.T. Has Just Released Definitely One Of The Best Record In The Genre “Earthrage” !! Are You Ready For “Burn” And “Watch Their Fire” ?
DISC REVIEW “EARTHRAGE”
WORK OF ART, ECLIPSE, TALISMAN。メロディックハードの幾星霜に足跡を刻んだ三雄を頭文字に戴くスーパーグループ W.E.T. が、捲土重来を期すジャンルの王政復古 “Earthrage” をリリースしました!!瑞々しいアリーナロックの雄々しき鼓動は、地平の年輪に印されしかつての栄光を確かに呼び覚まします。
WORK OF ART と ECLIPSE。2000年代以降、メロディックハード希望の星は明らかにこの両雄でした。片や洗練の極みを尽くす AOR、片や情熱と澄明のハードロック。
しかしインタビューで語ったように、スウェーデンの同じ学校から輩出された2つの綺羅星 “W” の象徴 Robert Säll と “E” の象徴 Erik Mårtensson は、至上のメロディーを宿すシンクロニティー、宿命の双子星だったのです。実際、2人の邂逅は、AOR とハードロックの清新なる渾融を導き、ジャンルのレジェンド Jeff Scott Soto の熱情を伴って唯一無二の W.E.T. カラーを抽出することとなりました。
故に Robert の 「最初の2枚では、僕と Erik がかなりコラボレートして楽曲を書いていたんだ。だけど、今回の作品のソングライティングに僕は全く関わらなかったんだよ。」という発言はある意味大きな驚きでした。
それは何より、”Earthrage” が疑いようもなくバンドの最高傑作となり得たのは、前作 “Rise Up” で顕著であった硬質なサウンド、メタルへの接近をリセットし、Robert の得意とする80年代初頭のオーガニックなメロディックロックを指標したからに他ならないと感じていたからです。
つまり、「”Earthrage” を制作する際に Erik と話し合ってあのオーガニックなスタイルを取り戻すべきだと感じた訳さ。」と語るように、もちろん Robert から方向性についてのサジェスチョンはあったにせよ、”Earthrage” における奇跡にも思える有機的な旋律の蒸留、ハーモニーの醸造、ダイナミズムの精錬には改めて責任を一手に負った Erik Mårtensson というコンポーザーの開花と成熟を感じざるを得ませんね。
予兆は充分にありました。ECLIPSE のみならず、NORDIC UNION, AMMUNITION 等、歴戦の猛者達との凌ぎ合いは、明らかに Erik の持つ作曲術の幅を押し広げ、効果的で印象に残るコーラスパートの建築法を実戦の中で磨き上げて行ったのですから。
アルバムオープナー、”Watch The Fire” はまさに Erik とバンドが到達した新たな高みの炎。冒頭に炸裂する生の質感を帯びた強固なリズムと、期待感に満ちたギターリフはまさしく ECLIPSE 人脈から Magnus Henriksson & Robban Bäck 参加の功名。凛として行軍するヴァースでは Jeff と Erik がボーカルを分け合い、さながら DEEP PUPLE の如き伝統のインテンスを見せつけます。
コーラスパートは巨大なフックを宿す獣。トップフォームの Jeff は、久方振りに発揮する本領で徹頭徹尾リスナーのシンガロングを誘うのです。そしてパズルのラストピースは、Desmond Child 譲りのアンセミックなチャントでした。
BOSTON の奥深き音響に Robert のキーボードが映える “Kings on Thunder Road”、MR. BIG の “Nothing But Love” を彷彿とさせるストリングスの魔法 “Elegantly Wasted” を経て辿り着く “Urgent” はアルバムを象徴する楽曲かも知れませんね。
同タイトルのヒットソングを持つ FOREIGNER の哀愁とメジャー感を、コンテンポラリーなサウンドと切れ味で現代へと昇華した楽曲は、あまりに扇情的。
畳み掛けるように SURVIVOR の理想と美学を胸いっぱいに吸い込んだ “Dangerous” で、リスナーの感情は須らく解放され絶対的なカタルシスへと到達するはずです。
そうして一部の隙も無駄もないメロディックハードの殿堂は、”決して終わらない、引き返せない” 夢の続き “The Never-Ending Retraceable Dream” でその幕を閉じました。楽曲のムードが Jeff にとって “引き返せない” 夢である JOURNEY を想起させるのは偶然でしょうか、意図的でしょうか?
今回弊誌では、WORK OF ART でも活躍する稀代のコンポーザー Robert Säll にインタビューを行うことが出来ました。想像以上に明け透けな発言は、しかしだからこそ興味深い取材となっているはずです。「メロディックハードロックがまたチャートの頂点に戻れるとは思えないね。そして僕はそれで構わないと思っているんだよ。」どうぞ!!
Legendary Vocalist, Jeff Scott Soto Talks About Japan Tour With Kuni, Talisman, Yngwie Malmsteen, And More !!
“A GUIDE TO JEFF SCOTT SOTO”
Jeff Scott Soto。Yngwie Malmsteen のバンド RISING FORCE の初代シンガーとして華々しくシーンに登場した唯一無二のボーカリストは、ソロとしては勿論、TALISMAN, JOURNEY, W.E.T. など数多のバンド、プロジェクトでその際立った才能を発揮し続けて来ました。ソウルフルでエモーショナル、”黒い”感覚を保持しながらも、キャッチーな歌メロに絶妙なボーカルハーモニーを乗せる、彼独特の個性は常にハードロックシーンを牽引して来たと言えますね。
同時に、Jeff はオフィシャルメンバーとしてではなく、ゲスト的な立ち位置で素晴らしい作品に貢献し続けた引く手あまたな人物でもあります。Axel Rudi Pell, Alex Masi, Vinnie Vincent, TAKARA などの名作群を懐かしく思うファンも多いでしょう。
80年代に、世界で勝負したマスクマン、日本人ギタリスト Kuni の 2nd アルバム “Lookin’ For Action” も、彼の参加でグレードが上がったアルバムの1枚です。
Billy Sheehan をはじめ、多数の豪華なゲストとともに制作されたデビュー作 “Masque” とは一味違い、固定されたメンバーで勝負した作品で、SLAUGHTER の秀才 Dana Strum プロデュースの下、Jeff のソウルフルな歌唱は勿論、Kuni のツボを得たフレージングの良さ、B’z でもお馴染み Mike Terrana のキレの良いドラムスを味わうことが出来る秀作でしたね。
そして今回、Kuni のデビュー30周年を祝い Loud Park 16 出演が決定、Jeff の参加もアナウンスされました。メンバーは、Kuni, Jeff に加えて GREAT WHITE の Tony Montana, HAREM SCAREM でお馴染み Darren Smith と実に豪華。素晴らしいショーになることでしょう。
今回インタビューを行った Jeff にとっては何と23年振りの来日となります。23年!最後の来日は、1993年の TALISMAN 初来日まで遡らなければなりません。しかし、インタビューで Jeff が語ってくれた通り、TALISMAN の音楽はその長い期間、世代を超えて引き継ぐべきものだと思います。
今は亡き Marcel Jacob というベースの名手にして優れた作曲家が存在したこと、Jeff と Marcel の素晴らしきケミストリー、爽快で、キャッチーで、ファンキーで、複雑なサウンド、その全てが忘れ去られてしまうには惜し過ぎると感じています。Jeff はインタビューで、意外にも Marcel 抜きの TALISMAN の未来に前向きな発言をしてくれました。勿論、ファンにはビッグニュースでしょうし、キッズのためにもぜひ実現してほしいと思います。
また同時に、彼自身の新しいバンド SOTO にも強く力を入れていることが伝わりますね。個人的な感想を述べれば、SOTO の新作 “Divak” はダークでヘヴィー、確かに若干メロディーが弱いものの、楽器陣が想像以上にテクニシャン揃いで、これからの活動に期待が出来そうです。今回の来日が契機となり、TALISMAN や SOTO でも、再度彼の姿を日本で見ることが出来るようになるかも知れませんね!
Jeff は Yngwie との現在の関係についても語ってくれました。メロディックハードの歴史の登場です。どうぞ!!