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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PLUSH : PLUSH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MORIAH FORMICA OF PLUSH !!

“I Taught Myself How To Play Guitar By Taking My Dad’s Aerosmith CD’s And Not Coming Out Of My Room Until I Learned a Song.”

DISC REVIEW “PLUSH”

「父の AEROSMITH の CD でギターを学んでいったわ。曲を覚えるまで、自分の部屋から出ないくらいのめりこんだのよ」
ロックは死んだ。そんなクリシェが囁かれるようになって、どれ程の時が過ぎたでしょうか。今のところロックは息をしていますし、メタルに至ってはより生命力をみなぎらせながらその重い鼓動を刻んでいるようにも思えます。それでも、黎明期、全盛期を支えてきたレジェンドたちが次々と病に倒れる中、私たちロック・ファンは潜在的にロックが消え去る日の恐怖を抱えながら生きているのかもしれません。ただし、そんな心配は結局、杞憂となるはずです。PLUSH の登場によって。
「6歳からギターを始め、10歳からライブ活動をしているの。16歳のときには NBC の “The Voice” シーズン13に出演したわ」
世界を変えるようなファースト・アルバムをリリースすることができるバンドは決して多くはありません。古くは LED ZEPPELIN, THE DOORS, BLACK SABBATH, 時が満ちて VAN HALEN のファーストはロック・ギターに革命を起こしましたし、GUNS N’ ROSES のデビューは文字通り破壊衝動を封じられていた若者たちの “食欲” を解放しました。さらに、SLIPKNOT や KORN の登場はメタルの在り様を変え、EVANESCENCE は女性がメタル世界に進出するきっかけとなりました。そして、PLUSH のセルフ・タイトルも同様に、世界を変えるようなファースト・アルバムとなるはずです。
「性別は関係なく、誰でもいいから探してみようと思ったんだけど、そんな時に Lzzy Hale がSNS でシェアしてくれて、Bella に出会うことができた。だから、最初の目標は女性だけのバンドを作ることではなかったんだけど、結果的にはそうなってよかったわね」
EVANESCENCE がメタルの門を女性に大きく解放してから18年の月日が経ちました。少しづつ、少しづつ、ボーイズ・クラブだったメタル世界も変化を遂げ、ついに21歳以下の女性4人が世界を震わせる時が訪れたのです。
もちろん、セクシーであること、キュートであること、”女性らしく” あることを求める人たちは今でも少なからず存在し、SNS で場違いなコメントを振りかざしています。ただし、PLUSH が勝負している土俵は、女性として “ホット” であるかどうかではなく、音楽が “ホット” であるかどうか。「女の子ばかりなのにあんなに上手いとは思わなかった、みたいな無邪気なコメントもあるわね」 という Moriah の言葉通り、ただロック/メタル・バンドとして、PLUSH は最高峰の実力と楽曲を兼ね備えているのです。
「Brooke は GODSMACK や TOOL みたいなヘヴィなバンドに大きな影響を受けている。一方、私はクラシック・ロックやメタルが好きなんだけど、同時に最近のポップスも大好きなのよ。レディー・ガガが大好き!Ashley は独自の雰囲気を持っていて、幅広いジャンルの音楽を愛しているんだけど、ALICE IN CHAINS は大好きみたいね。Bella はクラシック・ロックだけじゃなく、Joe Satriani をはじめとする伝説的なギタープレイヤーも愛しているわ。そうやって、私たちは皆、自分が影響を受けたものを演奏や作曲に取り入れているんだと思う」
重要なのは、PLUSH が AEROSMITH に端を発するアメリカ的なアリーナ・ロックを受け継ぎながら、70年代から現代に連なる様々なロックの色彩を野心的に、大胆に調合している点でしょう。例えば、オープナーの “Athena” には HEART の壮大さ、HALESTORM の熱量、LED ZEPPELIN の野心が混ざり合い存分に五感を刺激しますし、”傷つけられた。幸せでいて欲しくない。でもそんなあなたをまだ欲しがる私が大嫌い” と負の感情をぶちまける “Hate” にはたしかに ALICE IN CHAINS の暗がりが宿ります。
“Better off Alone” のダイナミックなリフワークには TOOL や GODSMACK のインテンスが封入され、一方で “Sober” や “Sorry” には Alanis Morrisette の知的で内省的な面影が見え隠れ。”Bring Me Down” で Gaga や Pink のモダンなポップスに接近したかと思えば、”Don’t Say That” では AEROSMITH 仕込みのパワー・バラードを披露。
PLUSH はロックの教科書を熟読しつつ、強烈な個性を誇る Moriah の絶唱と、バークリー仕込みの Bella のシュレッド、そして DISTURBED や ALTER BRIDGE, MAMMOTH WVH にも通じるダークでスタイリッシュなアメリカン・モダン・ハードを三本柱に、強力で未知なるアリーナ・ロックを完成させたのです。DISTURBED や STAIND を手がけた Johnny K の仕事も見事ですね。NWOAHR だけでなく、ENUFF Z’NUFF や MEGADETH もプロデュースしているだけあって、メロディーや曲想の陰陽が立体的。そうして “ぬいぐるみ” と名付けられたバンドには命が吹き込まれ、敬愛する EVANESCENCE, HALESTORM とツアーに出ます。
それにしても、ドーピングした Ann Willson の表現が完璧にハマるほど、Moriah の歌唱は絶対的。James Durbin にも圧倒されましたが、それ以上の逸材かもしれません。アメリカのオーディション番組恐るべし。
今回弊誌では、Moriah Formica にインタビューを行うことができました。「私たちがよく経験するセクシズムは、ソーシャルメディアでのコメントよ。正直なところ、ライブでは経験したことがないのよね。だけど、SNS は無知や愚かな行為がチェックされず、まかり通る場所でもあるのよね」どうぞ!!

PLUSH “PLUSH” : 10/10

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