EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRIAN COOK OF RUSSIAN CIRCLES !!
ALL PHOTOS BY TEDDIE TAYLOR
“I Would Much Rather Listen To a Darkthrone Album That Sounds Like It Was Recorded On a Boombox Than Hear Some Over-produced, Over-polished, Over-wrought Album.”
DISC REVIEW “BLOOD YEAR”
「ライブの宣伝をするためにレコードを作るのか、それともレコードを売り込むためにライブを行うのか。個人的にはライブの方がより重要だと感じるね。」
THESE ARMS ARE SNAKES, SUMAC、そして RUSSIAN CIRCLES で重厚な音の石段を積み重ね続けるシーンきってのベースマン、Brian Cook は前作 “Guidance” リリース時のインタビューでそう話してくれました。
緩と急、厳粛と轟音、膨張と収縮。ポストロック/ポストメタルのトレードマークであるダイナミズム、対比の美学を誰よりも深く追求してきた RUSSIAN CIRCLES は、同時にライブに宿る刹那の奇跡、生の感情、迫真のサウンドを誰よりも深く愛しています。
Brian とギタリスト Mike Sullivan、そしてドラマーの Dave Turncrantz。ステージへ上がるのはたったの3人ですが、ライブに鳴り響く彼らの轟音は “leave them all behind 2014” の初来日がまざまざと示したように、バンド名の由来となったアイスホッケーを想起させるほど強烈にフィジカルでダイレクトな “接触” です。
一方で、モダンなアーティストとしての多様性を咀嚼し血肉とする万華鏡の音楽性も魅力の一つ。メタル、ドゥーム、ハードコア、ノイズ、クラウトロックそしてプログロックまで千変万化に分裂を続けるバンドの音楽細胞は絶え間なくその体内を駆け巡っているのです。
およそ5年間、3枚の長い音旅を終えて RUSSIAN CIRCLES は岐路に立っていました。
“Guidance” リリース時のインタビューで、アーティストとして生きることの儚さ、不安定さを言及していた Brian はそうして今回、経済面よりもむしろ “普通” を外れて生きることのプレッシャーや困難が彼らのバンド、ひいてはミュージシャン全体を圧迫していると語り音楽活動に熱意を保つことの難しさを吐露してくれました。
“What’s next…?”。混乱と葛藤の中にあった RUSSIAN CIRCLES を蘇らせたのはやはりライブでした。
“Guidance” のツアーで世界を回り、リフ&ビートを刻み続けるうちバンドの創作意欲は充填され遂には溢れ出したのです。
「僕たちは全員がアグレッシブなレコードを作りたかったんだ。もちろん、厳粛でアトモスフェリックな楽曲をアルバムに収録するのも大好きなんだけど、ライブではただ “ロック” な楽曲をプレイしたいんだ。静かな楽曲はとてもデリケートで、だからこそライブでは様々な “拘束” を受けてしまうからね。」
バンドが新たな旅の目的地に選んだのはよりオーガニックでダイレクトなロックの地平でした。確かにこの “レコード” は両面共に、”Hunter Moon”、”Ghost on High” という情緒さえ感じさせる、緩やかで静謐を湛えた美麗なサウンドスケープに端を発します。
とは言え、Dave Turncrantzのスティック一閃、ボンゾやキース・ムーンのスネアの重みを右頬に、骨をも砕くベースアタックを左頬に受けたリスナーは、アルバムがジャンルを超越したただ唯一無二の “ロック” であることを確信するはずです。そうして浮遊するミステリアスなギターの旋律が激しくドライブを始めると、あたかも有史以前の怪しい儀式のごとく最高潮に達したバンドのグルーヴは、津波のようにリスナーの脳天へと押し寄せるのです。
さらに、”Milano” や “Quartered” のダークで不穏、激しい感情の胎動を聴けば、Brian の言葉通り “Blood Year” が怒りに根ざしたアルバムであることも伝わるはずです。
その怒りとは、全てを賭して不安定な芸術家稼業を邁進する彼らの状況、そしてその彼らとはあまりに相反する人工的で画一的、インスタントなサウンドを量産するシーンにも向けられていたのかもしれませんね。さらには現在アメリカを覆う政治の暗い陰までも。
「ギタリストの Trevor ともアルバムについて少し話したんだけどね。それでやっぱり PELICAN と僕等の新作にはいくつか相似点があると思ったんだ。両バンド共に、近年はライブをより積極的に行って来たね。だから僕たちはライブのエナジーを捉えたアルバムを作りたかったんだと思うんだ。それに “Nighttime Stories” は現在のアメリカに漂う政治的不満を代弁するアルバムだと理解しているんだけど、僕たちも現在の政権に対する不満や敵意をシェアしているんだよ。」
PELICAN と RUSSIAN CIRCLES。ポストメタルの黎明期から苦楽を共にしてきたインストゥルメンタルの両雄は、ライブ感と体制への怒りの両面で志を共にし、その暗く不穏な音の葉までもシンクロさせることとなったのです。
そのダークでダイレクトなシンクロニティーは、もしかすると Sunn O))) の最新作 “Life Metal” にも波及しているのでしょうか。実際、前作同様 Kurt Ballou がレコーディングを手掛けた “Blood Year” は、彼との共同作業の中で初めて地元シカゴにあるスティーヴ・アルビニ所有のエレクトリカル・オーディオ・スタジオにてベーシック・トラックを録音。同様に、Sunn O)))の “Life Metal” もアルビニのスタジオでこちらはアナログテープまで使用してフィジカルなサウンドに拘っているのですから。
アナログの哲学。「過剰にプロデュースされ、磨かれすぎて、鍛造されすぎたアルバムを聴くなら、僕はラジカセで録ったような DARKTHRONE のアルバムを聴くよ。」Brian の言葉は、RUSSIAN CIRCLES と “Blood Year” が指し示すシーンの先行き、さらにはオルタナティブなベテランたちが奇しくも孕んだ同調性の起因をこれ以上ないほど鮮明にしています。
では弊誌二度目となる Brian のインタビューです。どうぞ!!
RUSSIAN CIRCLES “BLOOD YEAR” : 10/10
続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RUSSIAN CIRCLES : BLOOD YEAR】