COVER STORY : LORNA SHORE “PAIN REMAINS”
“This Kind Of Music Can Be Very Punch-you-in-the-face All The Time. But I Love Stuff Like In Flames Where There’s a Lot Of Inner Conflict.”
PAIN REMAINS
かつてデスコアは、マイスペースでブレイクした JOB FOR A COWBOY と ALL SHALL PERISH を旗頭に、エクストリーム・ミュージックの最新かつ最も賛否両論を浴びる若い音楽として登場しました。彼らは、デスメタルの悪魔的な強さとメタルコアの乱暴なブレイクダウン、そしてニュースクールのプロダクションを組み合わせていたのです。その後数年の間に、2008年 WHITECHAPEL の代表作 “This Is Exile” や 2009年 SUICIDE SILENCE のヒット作 “No Time to Bleed” といった画期的なレコードが、デスコアをワープ・ツアーのステージや若いメタルヘッズのTシャツの棚へ導きました。
しかし、2010年代半ばになると、このジャンルの新時代的な魅力は頭打ちになり、このスタイルは再びアンダーグラウンドに戻りました。ただし、ニッチではありますが熱狂的なファンベースによって育まれ、最近では、15秒間のクリップを共有できる Tik-Tok を中心としたプラットフォームのおかげで再び外界に広がりはじめています。今現在、LORNA SHORE はこのデスコアの新しい波の中で最も大きく、目立つ存在であり、モダンなプロダクションと10年分のジャンルの歴史のおかげで、”Pain Remains” は10年前のどのレコードよりも重く、スマートで、音楽的にダイナミックなサウンドを実現しているのです。
実際、LORNA SHORE の快進撃は、近年 “デスコアは死んだ” と嘯くリスナーを黙らせるに十分な衝撃、これまで以上にハードでヘヴィでパワフルな死の予感を叩きつけます。TikTokで Will Ramos の気の遠くなるようなピッグ・スクイールに何百万人もの人々が我を忘れて熱狂して以来、今では最大級の観客を召喚する、メタルの最も注目すべきバンドとなったのです。
1時間強のアルバムでこの獰猛な5人組は、その黒々とした魂の奥底から、地獄のサウンドを次から次へと引き出していきます。機械仕掛けのテクニックと抑えきれないカオスが交錯し、ブルータリズムの不協和音にリスナーは息つく暇もありません。ギターソロとパーカッションが頭蓋骨に風穴を開ける一方で、Will のボーカルは終始主役を張っています。彼の喉仏をカメラで撮影し、声帯を変形させながら呻き声や悲鳴を上げる映像は誰もが目にしたことがあるでしょうが、”Pain Remains” ではそれ以上に喉仏が酷使されているのです。
ちなみに、実はこの “喉仏カメラ” がきっかけで、LORNA SHORE に対する教育・医学的な関心も高まっています。
「実は僕の声帯が科学の本に載ることがわかったんだ。世界のどこかで、誰かが声の解剖学の授業を受け、そして僕の声帯を研究する。 いいね、僕は本の中にいるよ!」
一方で、この “痛み” には合唱のモチーフや温かみのあるストリングス・セクションが随所に盛り込まれ、圧倒的なカタルシスと陶酔感が内包されています。さらには、”Into The Earth” の勝利の高揚感、”Apotheosis” の血管を流れる生き生きとしたアドレナリン、”Pain Remains I” のワイルドな奔放さ。そうして彼らは、デスコアのルーツを “Dancing Like Flames” でより大きく、ポジティブな翼で羽ばたかせます。
LORNA SHORE の2021年のシングル “To the Hellfire” は、YouTube でマエストロと評判だった Will Ramos を新しいフロントマンとして紹介した楽曲です。この曲が予想外のバイラル・ヒットとなったのは、Will の動物的な咆哮と、撲殺的なブレイクダウンでにおける鬼気迫る叫び声によるところが大きく、このグループが持つデスコアのナット&ボルト、つまりブレイクダウンとねじれたメロデスのリフ、そしてシンフォニックなブラックメタルのアトモスフィアに痛々しい感情が混ざり合うユニークなスタイルにさらなる新鮮味が加わったからでしょう。Will Ramos は言います。
「僕は多くのボーカリストとは全く異なるサウンドを持っている。たくさんの感情があるけれど、それは怒りに満ちた感情じゃないんだ。悲しいんだ。このジャンルではあまり感じないことだし、だから多くの人が僕らの新しいアルバムを気に入ってくれると思うんだ」
3年前、LORNA SHORE は自分たちに未来があるかどうかさえ分かりませんでしたが、”Pain Remains” でその運命を封印しました。そんな彼らの命の咆哮は、いかにして生まれたのでしょう。
今、地球上で最も沸騰するエクストリーム・バンドの一つ LORNA SHORE は、意外にも、2010年の結成以来、この場所までにかなりの長い道のりを歩んできました。そんなバンドにとって、不運や困難、悲しみは決して遠い存在ではありません。むしろ、ずば抜けた “反発力” でマイナスをプラスにかえながら、ここまで進んできたのです。
ニュージャージーという狭い地域出身の彼らにとって、LORNA SHORE は人生の成功か失敗かの分岐点とも言えました。しかし、初期の EP “Maleficium” で特徴的なブラック・デスコアの感覚を加えた後、彼らはプロデューサーからミックスを受け取るのに1年も待つこととなり、リリース日を延期し続けなければなりませんでした。同時に、バンドは地元のプロモーターの間で “煩い奴ら” と評判になり、地元での演奏が難しくなり、誰も彼らのことを知らない州外で演奏することを余儀なくされました。
ライブで演奏することの難しさと、新曲を後回しにしなければならないことの狭間で、2つの仕事を掛け持ちしてバンドに資金を提供していた Adam は、”Maleficium” が伝わらないなら、バンドを辞めて次の学期からバークリーの学校に行こうと決心していました。
「このままでは LORNA SHORE が終わってしまうというストレスの多い時期だったな」
しかし、2013年12月に “Maleficium” がドロップされると、リード・シングル “Godmaker” のビデオはYouTubeの塹壕の中で猛烈なヒットとなり、突然バンドには数ヶ月前に彼らを無視した同じマネージャー、予約エージェント、レーベルからメールが押し寄せるようになったのです。
かつては、あの CHELSEA GRIN にボーカルを “寝取られ” たこともあります。
“Flesh Coffin” と Summer Slaughter の成功で LORNA SHORE の状況がかつてないほど明るく見えたとき、暗雲が立ち込めます。2017年末、バンドはジャンルの巨頭である CHELSEA GRIN とヨーロッパ・ツアーを行いましたが、CG ボーカルの Alex Koehler は健康上の問題に苦しみ演奏することができなかったため、LORNA SHORE のボーカル Tom Barber を含む他のシンガーに、様々なセットで代役を務めてもらっていました。帰国すると、Barber はその後まもなくLORNA SHORE を脱退し、Alex の後任のボーカリストとして静かに求婚していた CHELSEA GRIN に加入したのです。
「女の子とデートしているときに、その子が “この人、ずっと私を口説いてるけど、私は興味ないわ” って言ってるようなもんだよ。そしたら結局、隠れて不倫してたみたいなね!」と Adam は笑います。
二人はその後、仲直りしたといいます。しかし、当時の彼の突然の脱退は、LORNA SHORE の高揚感を破壊し、すでに予約していたスタジオ・セッションを前に、ボーカリスト不在のまま空回りすることにもなりました。バンドは先行きの見通しが立ちませんでしたが、それでも彼らは Barber の脱退を、バンドを続けるための原動力としたのです。
Adam は、”このままではいけない” と思ったといいます。実際、Barber が脱退しなければ、彼らは今、”バンドとして成立していなかった” と考えています。
「残されたメンバーの心に火がつき、世間が間違っていることを証明することになったんだ」
今年の8月は Bloodstock への出演が大幅に遅れました。彼らはその週末で最も期待されたアクトの一つで、彼らを見るために非常に多くの観客が集まっていたにもかかわらず…
「”プライベート・ライアン” で、ノルマンディーでボートが開いて、みんなが急いで外に出るシーンがあっただろ?あれは、まさに俺たちがバスから降りて、すべての荷物を抱えてステージに駆け上がったのと同じだよ。地獄のように暑かったから、何が起こっているのかまったくわからなかった」
2021年には、新シンガー、Will Ramos がライブデビューのベルリンで、アメリカのコンセントと電圧が違うことを理解せずイヤモニをヨーロッパのコンセントに差し込み、壊してしまったこともありました。ステージ上ではマイクも壊れ、大変な1日になりました。
PARKWAY DRIVE とのツアーでは、不幸は少なくとも、何らかの警告を与えるという礼儀を備えていた。ドラムの Austin Archey が、背中の病気を抱え、ニュージャージーの自宅で療養中。そのため、ベーシストの Michael Yager が代わりにドラムを演奏しています。
しかし彼らは、そんな不運の数々を生贄にするかのように、今現在、最も爆発的な飛躍を遂げているメタルバンドとなりました。ニュージャージーのデスコア・バンドがこれほの成功を収めると想像した人はいないはずです。ロンドンでは、250人収容の Boston Music Room からカムデンの Electric Ballroom まで、3回以上大きな会場に変更されていきました。当初の予定より1,250枚も多いチケットを売り上げることとなったのです。バンドの首謀者 Adam De Micco は、PARKWAY DRIVE のサポート・バンドである自分たちには、20人くらいの観客しか集まらないと予想していました。しかし実際は、LORNA SHORE のシャツを着たファンは寒さの中、長い列を作って4時間もの間辛抱強く待っていたのです。
この急成長中のバンドを取り巻くエネルギー、熱意、そして注目度を考慮すれば、LORNA SHORE を駆け出しのバンドと勘違いしてしまう人は多いでしょう。しかし、この衝撃的な瞬間は、2010年の結成以来、ニュージャージーのクルーが経験してきたいくつかの再出発のうちのひとつに過ぎないのです。過去10年以上にわたって、LORNA SHORE は弱小バンドなら潰れてしまうような存亡の危機を何度も乗り越えてきました。2年前にも、彼らはボーカリスト不在のまま無情にも解散し(2度目)、デスコアの “コメンテーター” たちからは一様に、彼らの時代は終わったと見なされていたのです。しかし、今、彼らは新たに再生し、これまでで最も強固なラインアップで生まれ変わり、このジャンルの新しい顔となるべく邁進しています。そのブレイクに何よりも驚いているのは、実はバンド自身なのかもしれませんが。
「ネット上の憎悪が渦巻く中で、虐待疑惑の CJ と別れた瞬間、みんなのシナリオは “このバンドはもう終わりだ。このバンドはもうだめだ、最悪だ” だったからな」
しかし、2020年に虐待疑惑が発覚してバンドを脱退した CJ McReery の後任として Will が加入して以来、LORNA SHORE のストリーミング配信数は爆発的な伸びを見せています。昨年の “And I Return To Nothingness EP” に収録されている “To The Hellfire” は、現在 Spotify で2,500万回近く再生されているのですから。公開からまだ短い期間しか経っていない “Pain Remains” からのシングル曲 “Dancing Like Flames” でさえ、すでに約300万の再生回数を記録しています。
「10年経って、何かが起きているんだ」と Adam は笑います。「始めて10年も経てば多くの人が成功を諦めてしまうかもしれないけど、俺は諦めない。俺たちのために集まってくれる人たちを見ていると、毎日、”よし、彼らが来てくれるのには理由があるんだ”と思うから」
ただし、Adam De Micco は、LORNA SHORE の大成功を夢見て始めたわけではありません。
「単なるローカル・バンド以上の存在になりたいとはずっと思っていたんだ。だけど、”大物” みたいになりたいとか、そういう目標ではなかったんだ。いつでもツアー中のバンドになりたかった。そのために必要なことは何でもするつもりだった」
もちろん、同時に若者らしい理由もありましたが。
「もっとクールな話があればいいんだけどね!16歳のとき、あることがきっかけで彼女と別れたんだけど、再会したとき、彼女は別のバンドをやっている男に夢中だったんだ。それで、”よし、Adam、お前もバンドを始めなきゃ” と思ったんだ」
最初の問題は、彼が楽器を弾けないことでした。
「ボーカルなりたかったんだ。だけど、叫ぶことも、歌詞を書くこともできなかった。ドラムに挑戦してみたけど、すぐに自分はドラムを叩く人生には向いていないことに気づいた。それから、ギターを手にし、食料品店で働いた最初の給料でついに自分のギターを買ったんだ」
残念なことに、Adam の恋は実りませんでした。しかし、音楽を始めたことで、UNEARTH, LAMB OF GOD, KILLSWITCH ENGAGE など、自分と同じようなバンドに夢中になっている人たちに “出会う” ことができたのです。そうして、地元のハードコア・シーン(メタルはそれほどメジャーじゃない)でショーを行うことが Adam の新たな目標となりました。
「ニュージャージーは小さな州だから、小さな場所で演奏するのが普通で、ニューヨークやペンシルヴァニアでも演奏するんだけど、すごく大変だった。とにかく、小さなホールなどで演奏することが多かったね。ありがたいことに、インターネットがツールとして使われるようになったから、そこから抜け出すことができたんだ。というのも、もし地元での小さなライヴに頼るしかなかったら、こうした形でブレイクできたかどうかわからないからね。20~30人規模のライブに慣れていたから、そこから外に出るのは大変だったんだ」
そうして、Batman のコミックに出てくるマイナー・キャラの名を冠した LORNA SHORE は、米国デスコアの王 CARNIFEX のツアーに招待されます。やっとパーティーに招待されたような感じだったと Adam は回想します。
「地元のライブで毎日誰もいないところで演奏していると、”本物” だと感じるのは難しいんだ。でも、あのツアーでは、本物の会場で、本物の人たちの前で演奏していた。そのとき初めて、俺らが本物だと感じた瞬間だった。あのような本物のツアーをすることは、常に俺の頭の中にあった。これが俺のやりたかったことなんだとね」
Adam の中には、目標に負けることなく物事をやり遂げようとする粘り強さがあります。しかし、薄気味悪い信念や、世界征服の大義名分を口にすることはありません。むしろ、この親しみやすく、集中力のある34歳を一言で表すとしたら、”現実主義者” でしょう。つまり、人生には何が起こるかわからないが、その解決策を見つけ、立ち上がるのは結局自分自身であるということを Adam は理解しているのです。
「ロッキーの見すぎかもしれないね (笑) このバンドは殴られることには慣れているんだ。ロッキーの前提は、彼が最後まで殴られ続けること。もしそれで、”これは最悪な状況だ、何もできない、荷物をまとめて家に帰ろう” と彼が思っていたら、この作品は存在しなかっただろう。顎で受け止め、自分を奮い立たせ、”何とかしよう” と言うからロッキーは凄かったんだ!」
Will Ramos の加入は、そうした問題の解決策の一つでした。LORNA SHORE のマイクを握るのは、実は Will が4人目。当初は一時的な代役としてツアーを行っていましたが、2020年に COVID がすべてをひっくり返します。新たなラインナップの探求が難しくなったバンドは、慎重に、新しい若者との水際を試すように、Will Ramos と一緒にEPを作ります。”And I Return To Nothingness” “そして私は無に帰る”。
「俺が心配していたのは、バンドが外部から信頼されていないことだった。ボーカリストを交代してから1年経っていたけど、情報も出てこないし、本当に何も出てこない感じだったから。みんな喪失感を感じていたと思うし、そんな中で、このバンドはどこにも行かないんだという何かを発信したかった。一度 EP をレコーディングしたら、そうした不安はそれほど影響しなくなったよ」
リードトラックの爆発的なストリーミングを経て、Adam が興奮するのも無理はない、濃密なフルアルバムがここに完成しました。どんな困難や不幸に見舞われても、必ずそれ以上の成果を掴み取る、まさにロッキーのようなレジリエンス。偉大なる回復力と反発力。一方、PARKWAY DRIVE とヨーロッパのアリーナやメガホールを回るこのツアーは、Adam の言葉を借りれば “ビッグで本物のアーティスト、ポップやロックのレジェンド” が演奏する場所を自らが体験する別の “興奮” の機会となります。
「クラブでは、俺たちはもう天井に到達している。だからこのツアーは PARKWAY DRIVE のような本物のバンドが巨大な会場で本格的なプロダクションを行うのを見ることができる、全く別の世界があるんだ、という感じだ。別の次元にいるようで、俺にとってはエキサイティングなことなんだ。同じようなルーツを持つメタル・バンドがこうしたレベルに到達するのを見るのは、俺たちにとっても新たな可能性を示しているから。そう言いながらも、俺は物事が少しうまく行きすぎていると思っている。俺はいつも疑っているんだ。次の不幸はどこから来るんだろう?とね」
ギタリストが自分の運が尽きないように警戒しているとすれば、Will Ramos は自分の運を信じることしかできない様子です。誰もが Will をすぐに好きになり、ほとんど無邪気な熱意とエネルギーにあふれ、彼は、思慮深いアダムの陰に対して自由奔放でその場しのぎの陽のような存在。
バンドの他のメンバーからそれほど離れていないところで育った彼は、ギターを弾くことで音楽の世界に入り、クラシック・ロックに夢中になりました。
「Ozzyの “Crazy Train” を初めて聴いたとき、”これは世界で一番クールな曲だ!”と思ったのを覚えているよ」
友人たちが彼に LAMB OF GOD, CRADLE OF FILTH, ESCAPE THE FATE といったヘヴィなサウンドを聴かせようとしましたが、当初はうまくいかなかったようです。
「ああ、WHITECHAPEL を聴いて ”こんなの好きじゃない!” って思ったのを覚えてるよ (笑)。でも、聴き続けているうちに、だんだん好きになるんだ。今、そのことを考えるととても面白いね。だって僕らがやっていることは、そういったバンドよりもずっとダークでヘヴィーなんだから!」
Will の好みは、彼が言うところの “悲しくて歌心のある音楽” で、初期のお気に入りは AFI、最近のお気に入りは SLEEP TOKEN です。
「僕は “シーン・キッド” だったんだ。毎日、髪をストレートにしていたよ。髪を超黒く染めて、顔にピアスもした。唇に4つのピアス…昔はそうだった。最高だったよ!」
音楽的にも、やがて何かが見えてきました。
「それからボーカルに夢中になって、世界で最もハードなボーカルを聴きたくなったんだ。”誰が一番クレイジーなことができるんだろう?” と思い、バンドに参加したかった」
その代わり、彼はニューヨークで映画の仕事に就きます。
「勤務時間が非常識で、クールじゃなかった。自分のために何かをする時間なんてない。プロダクションのオフィスで、電話をかけ、10億通のメールを送り、撮影現場をよく手伝った。でも、それはとても疲れることでね。自分の中では、嫌でも、給料がいいから続けようと思っていたんだ」
LORNA SHORE のシンガーに空席ができたとき、実際、同じ時期、同じ州で、Will は同じような音楽的危機を迎えていました。彼は、過去10年間、いくつかのバンドで経験を積んだものの、いずれも上手くはいかず、彼が望むようなキャリアを積むことはありませんでした。うまくいかないバンドを追って工学部を3年生の時に退学した Will は、”これは最後の砦だ” と自分に言い聞かせたのを覚えています。同時に彼はこの空席を手に入れるのは “15,000人に1人” の倍率で厳しいだろうと考えました。しかし、バンドは Will の人気となった演奏動画をチェックしていて、彼にチャンスを与えました。早速、Will は映画の仕事を辞め、LORNA SHORE に加入します。
「でも、バンドは、ただ代役を募集していただけで、長続きするとは思っていなかった。だから、大好きなバンドと何かクールなことをちょっとだけやって、それから何が起こるか見ようと準備してたんだ」
ツアー、EP、その他すべてがコミットメントなしに行われたにもかかわらず、Will は明らかに適任でした。しかし、完全に “固まった” と感じたのは、新しいアルバムの完成まで待たなければなりませんでした。Will はここで、LORNA SHORE に自分のスタイルを持ち込み、可能な限り悲しい歌詞を書こうとしたのです。そこから、悲しみをテーマにした3部構成の組曲 “Pain Remains” が生まれました。そう、彼らが目指す場所は “ロマンティック・デスコア” の頂き。
「車の中で一人でいるときに一緒に歌ったり泣いたりできる音楽が大好きなんだ!僕は悲しい曲が好きなんだ。悲しい曲は二度と聞きたくないと思うようなことは、人生にはないだろう。でも、それってすごく病んでいるよね。その自分なりのバージョンを書く必要があったんだ。この種の音楽は、基本的に常に顔面を殴るようなものだ。怒りが根っこにある。でも、僕は IN FLAMES のような、内面的な葛藤がある音楽が好きなんだ。痛みがあるけど、圧倒的な喜びも享受できるようなね。この3部作を作るきっかけになったのは、スタジオでアルバムを書いているときに、マリファナをやめることを強く意識したことかな。大麻を吸うと、あまり夢を見なくなる。レム睡眠が止まってしまうんだ。でも、お茶を飲んで休憩すると、すぐに夢を見るようになった。夢の中で恋に落ち、目が覚めたときに、それが現実ではなかったという感覚を歌にしようとしたんだよね。君がそういう夢を見たことがあるかどうかはわからないけど、僕は間違いなくある。目が覚めたら悲しくなっていて、夢ではなく現実だったらいいのに、と思うような夢を見たことがあるよ。もっと眠っていればよかった…って」
偽りの場所にある願い、幸せ。それが手に入らない悲しみ。
「そんなところかな。僕は “ああ、君は最高だ。愛してる。君が誰なのかさえ知らないのに……” って夢をよく見る。その人が誰なのかわからないこともあるよ。知っている人なのか、知らない人なのか、わからない。そして、もう二度と会うことはない。でも僕は、そのシルエットの背後にある顔を見たいんだ。だって、”君が誰だかわからないけど、この感じはわかる。君をもっと知りたい” って思うから。でも、それ以上知ることはないんだよ…」
“Pain Remains” の “夢” を軸としたコンセプトは、あのバンドの新作にも通じています。
「このアルバムはコンセプト・アルバムだ。MACHINE HEAD の Robb Flynn が新譜 “Øf Kingdøm And Crøwn” のインスピレーション源として同じようなことを話していたよね。彼とはポッドキャストで共演もしているんだ。今いる場所が好きではない人、他の場所に行きたい人…とにかく彼らにとって自由になれる場所は夢の中なんだ。すべての曲は、この人物が夢を見、明晰になり、夢をコントロールできるようになり、やがてどんなことにも意味がないことに気づき、ほとんど全能の人物のようになるまでを描いている。物語のクライマックスは、さながら船を作り、その船が自分と共に沈んでいくのを見たい” そんな観念なんだ」
Will は哲学が好きで、”人はそれぞれ違った考えやイデオロギーを持っている” というコンセプトを愛しています。
「だから、この作品は循環するんだ。あるところから始まって、この世界の現実から逃れたいと思い、そして、最終的に現実から逃避し、別の場所に行き着いたところでこのアルバムは終了する。でもそれは始まりでもあるんだ。結局、夢想家は、神のような全能感に飽きる。疲れて、飽きる。全能の神では充実感を得られないんだ。そして、その世界は終わる。誰かが、世界の終わりのサウンドトラックのようなものだと言っていたけど、その通りかもね」
Adam と Will は完全に違う人間ですが、共通の目標を持っています。そのシンクロニシティでついに事態は好転し、LORNA SHORE がすべてを完璧に同期させ、上昇が始まりました。Adam は今のバンドを誇らしく思っています。
「今の状況は信じられないほど素晴らしい。パンデミックの時は、戻ってきても同じようにはいかないんじゃないか、バンドが地盤沈下しているんじゃないか、と思ったこともあった。でも今は、何か素晴らしいことをするチャンスがあると、とても刺激を受けているんだよ。今、俺たちは小さな魚のようなもので、完全に巨大な池の中にいる。メタル・バンドが通常演奏しないような場所で演奏している。ここの階段の壁には、俺らのジャンルとは全く関係のない様々なアーティストが同じ場所で演奏している写真がある。それで、どこまでやれるかワクワクしてきたんだ」
Will にも同じような信念があります。
「2年半前、2022年に僕はどこにいるだろう?聞かれたら、こことは言えなかっただろうね。いや、きっと残りの人生、ずっとパソコンの前で働くんだ “と思っていただろうね。でも今は、もっと上に行きたいんだ」
REVOLVER:HOW LORNA SHORE BEAT THE ODDS TO BECOME THE NEW FACES OF DEATHCORE