EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REESE TILLER OF ANARCHŸ !!
“Slayer Is Awesome, But We Really Don’t Need Any More Slayer Clones.”
DISC REVIEW “Sentïence”
「僕ら二人は Anarchÿ の他にも音楽活動をしているけど、HeXeN, VOIVOD, VEKTOR のようなメロディックかつプログレッシブなバンドのように、本当に痒いところに手が届くスラッシュ・アーティストをほとんど見たことがないんだよ。だからこそ、僕たちはできるだけ多くの音楽、特にクラシック音楽からインスピレーションを得ることにしたんだ」
スラッシュ・メタルはヘヴィ・メタルの改革にほとんど最初に取り組んだジャンルかもしれません。しかしながら、ここ20年ほど、質の高いスラッシュ・バンドはそれほど多く現れていないのが実情でしょう。80年代半ばから90年代初頭にかけての素晴らしい作品は今でもその輝きを失うことはありません。しかし、2020年代においても、絶賛されるスラッシュ作品のほとんどがあの時代のカルト・ヒーローという現状は決して健康的とは言えないはずです。
弊誌でも、今年取り上げたスラッシュ・バンドは VOIVOD, BLIND ILLUSION, TOXIK などあの時代の英雄ばかり。VEKTOR の偉業はむしろ青天の霹靂でした。では、スラッシュ・メタルを牽引する若い力はもう顕現することはないのでしょうか?
「音楽的に何も新しいものをもたらさない新たなスラッシュ・バンドは本当にたくさんいる。僕はどんな種類のスラッシュも好きだからそれはそれでいいんだけど、今後、もっとユニークなものを作る努力をしてほしいと願うばかりだよ。つまりね、SLAYER は素晴らしいけど、これ以上 SLAYER のクローンは全く必要ないんだ」
心配は無用。スラッシュ・メタルの無政府主義者 Anarchÿ がいます。セントルイスを拠点とするボーカルとマルチ奏者の2人組。彼らのデビューフル “Sentïence” はプログレッシブ・スラッシュの痒いところに手が届く意外性と独自性の塊。アートワークやてんこ盛りのウムラウトも、このジャンルが百花繚乱だった頃を思い起こさせる素晴らしい出来栄え。ジャンルの垣根を取り払い、様々な音楽的影響を融合させたこのアルバムは、スラッシュやメタルを基盤としながらその堅苦しい建物の外に出て、人間の経験や謎めいたテーマに触れながら、神秘的なリスニング体験を届けてくれます。
「スラッシュ・メタル史上最長の曲の後に続くのは、最短の曲以外に何があるだろうか? しかし残念ながら、WEHRMACHT は80年代に “E” で既に最短の試みを先行していたので、僕らは彼らのマイクロソングをカバーすることを選んだんだ。32分の曲の直後に2秒の曲を置くことのユーモアが、誰かに伝わることを祈るよ!」
バッハへの賛辞、スペインの夢、メタルらしからぬハンド・パーカッションなど様々な要素を取り入れたアルバムで、ハイライトとなるのは32分のオデッセイ “The Spectrum of Human Emotion”。シェイクスピアの戯曲 “ハムレット” をロック・オペラ風にアレンジしたこの曲は、スラッシュ・メタルのリフを中心に、ソフトなアコースティック・ギター、ジャズや VOIVOD の不協和音、アカペラ・ボーカル、優しいピアノの響き、そしてDavid Bowie を思わせるスペース・ロックと、ジャンルの枠を越えた冒険がスリルとサスペンスの汀で展開されていきます。スラッシュ・メタルの BETWEEN THE BURIED AND ME とでも評したくなるようなアイデアの湖。ただし、7部構成の壮大なシェイクスピアン・スラッシュが幕を閉じるや否や、たった2秒の “Ë” でリスナーの度肝を抜くのが彼らのやり方。
ただ、Anarchÿ の策士ぶりは、1時間近くあるアルバムの半分以上を “The Spectrum” という1曲の超越した叙事詩で展開しながら、残りのトラックでは、プログレッシブ・スラッシュの雛形を意識し、ジャンルの骨子である目眩く複雑なリフとコンポジションで好き者をも魅了していることからも十二分に伝わります。決して、ただのイロモノではなく、歴史と未来を抱きしめた明らかな “挑戦者” の登場です。
今回弊誌では、Reese Tiller にインタビューを行うことができました。「シェイクスピアの “ハムレット” は、とてつもなく長い戯曲だから、とてつもなく長いスラッシュ・メタルの曲にはぴったりだ!と。そして、歌詞にするためのメモがたくさんとって、曲の歌詞にチャネリングしていったんだ」どうぞ!!
ANARCHŸ “SENTÏENCE” : 10/10
INTERVIEW WITH REESE TILLER
Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?
【REESE】: Growing up, I was obsessed with the Beatles! I still am, really. I imagine it’s what has drawn me towards the more experimental side of music over the years, of course, the Beatles were revolutionary with their innovation and experimentation in the studio.
Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【REESE】: 幼い頃、僕はビートルズに夢中だったんだ。今でもそうだよ。そのおかげで、僕は長年にわたって、より実験的な音楽の方へと引き込まれていったんだろうな。もちろん、ビートルズはスタジオでの革新と実験によって革命的な存在だったからね。
Q2: How did Anarchÿ come to be? What made you choose that band name?
【REESE】: I’m constantly writing new music, so when COVID-19 sent the world into lockdown, I found myself with plenty of time to start recording my ideas. I recorded ‘Breathing Necropolis’, our first EP/Demo, in 2020. However, music is a lot more fun with multiple people involved, so I called upon my good friend Fionn to contribute his vocal talents. Our tastes are almost identical, and so, the duo was born. I wouldn’t be able to do this without him! The name “Anarchÿ” implies absolute musical freedom, creating precisely what we want to hear regardless of what anyone else may think. Selfishly-written music is always the best!
Q2: Anarchÿ 結成の経緯をお話ししていただけますか?
【REESE】: 僕は常に新しい音楽を書いている。そして、コロナが世界をロックダウンさせたとき、僕はそんな自分のアイデアを録音し始める時間がたっぷりあることに気づいたんだ。
2020年に最初の EP/デモである “Breathing Necropolis” をレコーディングしたね。だけど、音楽は多くの人が関わった方がずっと楽しいから、親友の Fionn にボーカルの才能を提供してくれるよう頼んだんだ。僕らの趣味はほとんど同じ。それでこのデュオが誕生したんだよ。彼がいなければ、この仕事はできないだろうね。
“アナーキー” という名前は、他の人がどう思うかに関係なく、自分たちが聴きたいものを正直に作るという、絶対的な音楽の自由を意味しているんだ。自分勝手でワガママに書いた音楽は、いつだって最高だから。
Q3: Reece plays all the instruments, how did you become so multi-talented? Who are your musical heroes?
【REESE】: In the past, I was involved with many bands consisting of my friends that never seemed to go anywhere. We’d learn a song or two, and then somebody loses interest. I’m sure many young rock/metal musicians could relate. Eventually, I took it upon myself to create music independently by any means necessary. I played percussion through 7 years of school and picked up guitar/bass when I was very young. When I first heard Vektor in middle school, that really made me realize just how incredibly versatile thrash metal can be. They greatly influenced both my guitar work and songwriting. I even started writing up in F standard tuning as they did.
Q3: あなたは、ボーカル以外のほとんどの楽器を演奏していますね?
【REESE】: 以前、僕は友人たちと多くのバンドを組んでいたんだけど、一向にうまくいかなかった。1,2 曲覚えたところで、誰かが興味を失ってしまう。若いロックやメタルのミュージシャンなら、共感してくれる人も多いと思うんだけど。
それで結局、僕はどんな手段を使ってでも、自分自身で音楽を作り上げることに決めたんだよ。僕は学校で7年間パーカッションを演奏し、幼い頃にギターとベースを手に入れた。そうして中学生の時、初めて VEKTOR を聴いてスラッシュ・メタルがいかに多才なものであるかを実感したんだ。彼らは僕のギター・ワークとソング・ライティングの両方に大きな影響を与えてくれた。彼らと同じように Fスタンダードチューニングで作曲するようになったくらいだよ 。
Q4: Still, “Sentience” is a great album that lives up to its Shakespearean thrash metal name! Shakespeare and thrash metal seem to be the furthest things from each other, so why did you decide to bring the two together?
【REESE】: I had this idea for a really long thrash metal song in high school, initially, wanting to make it over an hour long. I got to work on the music, but had no clue as to what the lyrics should be about. I was taking a Shakespeare class at the time, and that’s when it hit me. Shakespeare’s Hamlet, an incredibly long play, would be perfect for an incredibly long song! After all, I had plenty of written notes to work with and channel into song lyrics.
Q4: それにしても、”Sentïence” は “シェイクスピアのスラッシュ・メタル” の名に恥じない素晴らしいアルバムですね!
シェイクスピアとスラッシュ・メタルは両極にあるようにも思えるのですが、なぜその2つを合わせようと思ったんですか?
【REESE】: 高校時代、スラッシュ・メタルで1時間以上の本当に長尺の曲を作ろうと思いついたんだ。それで曲の制作には取りかかったのだけど、歌詞はどうしたらいいのか、まったくわからなかった。
当時、シェイクスピアの授業を受けていたんだけど、その時に閃いたんだ。シェイクスピアの “ハムレット” は、とてつもなく長い戯曲だから、とてつもなく長いスラッシュ・メタルの曲にはぴったりだ!と。そして、歌詞にするためのメモがたくさんとって、曲の歌詞にチャネリングしていったんだ。
Q5: What is the story being told in “Sentience” and what is the true meaning of “More Umlauts, More Metal!”?
【REESE】: “Sentïence” implies that the songs (well, most of them) are inspired by different parts of the human experience or some introspective thoughts that I’ve had and shared with others, topics based around fear and death. At first, we added the umlaut to our name only to be more easily identifiable, but of course, the whole umlaut thing in metal is incredibly cliche. It became something of a running joke to overuse them as much as possible.
Q5: “ウムラウトが増えるほどメタルっぽい” という曲には笑いましたが、アルバムにはどんなテーマがあるんですか?
【REESE】: “Sentïence” の曲のほとんどが、人間の経験のさまざまな部分、僕が持っていて他の人と共有した内省的な考え、恐怖と死を中心としたトピックに触発されているよ。
最初は、より簡単に識別できるようにと、自分たちの名前にウムラウトをつけたんだけど、もちろん、メタルにおけるウムラウトというのはある意味信じられないほど陳腐なものだよね。だからできるだけウムラウトを多用することが、ある種のジョークになったんだ。
Q6: I think this is the first album in the metal world where a 31-minute song and a 2-second song cohabitate! How did you create such chaos?
【REESE】: What else could follow up what’s potentially the longest thrash metal song ever recorded other than the shortest one we could muster? Unfortunately, Wehrmacht already beat us to it in the ’80s with “E”, so we just opted to cover their micro-song. Hopefully, the humour of placing a 2-second song immediately after a 32-minute song is not lost on anybody!
Q6: それにしても、32分の曲と2秒の曲が同居するアルバムは、メタル世界でも初めてでしょうね?
【REESE】: スラッシュ・メタル史上最長の曲の後に続くのは、最短の曲以外に何があるだろうか? しかし残念ながら、WEHRMACHT は80年代に “E” で既に最短の試みを先行していたので、僕らは彼らのマイクロソングをカバーすることを選んだんだ。
32分の曲の直後に2秒の曲を置くことのユーモアが、誰かに伝わることを祈るよ!
Q7: Musically, the work ranges from Yngwie to Napalm Death, and of course Voivod, Cynic, Death, and Vektor. Is it like you have put everything you like into it?
【REESE】: Absolutely! We both work on other musical endeavours besides Anarchÿ, but I have seen very few thrash acts that truly scratch the melodic and progressive itch that unique bands like HeXeN, Voivod, and Vektor do. We have drawn inspiration from as many points as possible, especially classical music. I’d say Exmortus is proof that classical and metal were meant to coexist.
Q7: 音楽的には、Yngwie から NAPALM DEATH, そしてもちろん、VOIVOD, VEKTOR, CYNIC といった幅広い影響が感じられますが、ある意味好きなものをすべて詰め込んだ作品とも言えるのでしょうか?
【REESE】: もちろん。僕ら二人は Anarchÿ の他にも音楽活動をしているけど、HeXeN, VOIVOD, VEKTOR のようなメロディックかつプログレッシブなバンドのように、本当に痒いところに手が届くスラッシュ・アーティストをほとんど見たことがないんだよ。だからこそ、僕たちはできるだけ多くの音楽、特にクラシック音楽からインスピレーションを得ることにしたんだ。EXMORTUS は、クラシックとメタルが共存することを意味する証拠だと言えるね。
Q8: Some people say that thrash metal doesn’t evolve any more, that Heathen, Annihilator, Realm and Toxik were the most challenging bands. But listening to your music I don’t think so! What do you think about the future of Thrash metal?
【REESE】: Those are all great bands that have also inspired what we do. There is indeed a vast sea of newer thrash bands that don’t bring anything new to the table musically, which is fine since I love thrash of any sort, but I can only hope that more will strive to be unique with what they create in the future. Slayer is awesome, but we really don’t need any more Slayer clones. If anything, you can rest assured that we will definitely continue to incorporate progressive experimentation into our thrashing.
Q8: スラッシュ・メタルはもうこれ以上進化しないと言う人もいますね?
CORONER, HEATHEN, ANNIHILATOR, REALM, TOXIK といったバンドが最も挑戦的だったと。しかし、あなたの音楽を聴けばそれが間違いであることが伝わりますね?
【REESE】: 君が挙げたバンドはすべて、僕らがやっていることにインスピレーションを与えてくれた素晴らしいバンドだ。だけど、音楽的に何も新しいものをもたらさない新たなスラッシュ・バンドは本当にたくさんいる。僕はどんな種類のスラッシュも好きだからそれはそれでいいんだけど、今後、もっとユニークなものを作る努力をしてほしいと願うばかりだよ。
つまりね、SLAYER は素晴らしいけど、これ以上 SLAYER のクローンは全く必要ないんだ。どちらにせよ、僕らはプログレッシブな実験をスラッシュに取り入れることを間違いなく続けていくから安心してほしいな。
FIVE ALBUMS THAT CHANGED REESE’S LIFE!!
Vektor “Terminal Redux”
possibly the best thrash album ever written.
おそらく史上最高のスラッシュ・アルバム。
HeXeN “Being and Nothingness”
perfectly incorporates the melodic and neoclassical components we love, as well as deeply introspective lyricism.
僕たちが愛するメロディックとネオクラシックの要素、そして深く内省的なリリックが完璧に盛り込まれている。
Archspire “Relentless Mutation”
absolutely mindblowing technicality and speed, but not at the expense of great songwriting.
驚くほどのテクニックとスピード。しかし素晴らしいソングライティングを犠牲にしていない。
A Perfect Circle “Thirteenth Step”
sparked my admiration for concept albums.
コンセプトアルバムへの憧れを抱かせてくれた。
The Beatles “Abbey Road”
the first album I ever bought, and it’s still one of the best.
僕が初めて買ったアルバムで、今でもベストの1枚。