EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZED AMARIN OF ESODIC !!
“Even If Acceptance Doesn’t Grow Significantly, I Don’t Foresee Metal Vanishing From the Middle East, As It Conveys Specific Messages And Emotions That Resonate Uniquely With Its Audience.”
DISC REVIEW “DE FACTO DE JURE”
「ロサンゼルスに移住してバンドを復活させようと決めたのは、ヨルダンですべてのチャンスを使い果たしたから。どんなに最善を尽くしても、ヨルダンで自分のバンドや他のバンドとドラムを演奏して持続可能なキャリアを築くことはできなかった。自分の情熱を追求し、好きなことで生計を立てられる場所に移住する必要があることがはっきりしたんだ」
スラッシュ・トリオ、ESODIC の歴史は深く長く、1995年にヨルダンのアンマンで結成され、当初は PURGATORY として知られていました。彼らは過去30年間にデモ、スプリット、そして2枚のEPをリリースしていますが、ヨルダンでのメタル活動には限界がありました。
「スラッシュ・メタルに惹かれた理由。スラッシュには、現実の問題や社会的不正義を訴えてきた長い歴史があり、それが僕たちの心に深く響いた。SEPULTURA, KREATOR, EXODUS のようなバンドは、政治的なテーマや抑圧への反抗を声高に主張してきた。このサブジャンルは、強烈でパワフルな音楽を通して、僕たちのフラストレーションをぶつけ、現実の複雑さに取り組むための完璧なはけ口を提供してくれる」
SLAYER, TESTAMENT, KREATOR, SEPULTURA, EXODUS といった巨人たちにインスパイアされた ESODIC の音楽と哲学は、抑圧や差別と戦い続けてきた偉人たちの薫陶を受け、常に中東の激動する社会政治情勢を反映したものでした。だからこそ、中東、ヨルダンという不安定な場所においては、バンドとしての存在そのものが嫌がらせや逮捕の危険にさらされていたのです。
「メタル関連の品物をすべて没収されたり、投獄されたり、殴られたり、精神的にも肉体的にも拷問に耐えた者もいた。僕たちの元メンバーは皆、何年にもわたる拘留と激しい嫌がらせに苦しんできた。ムスリム同胞団が大きな影響力を持つ中、ヨルダン政府は僕たちのイベントでの過激な暴力の可能性を防ぐために、メタルヘッズを標的にしていたんだ。それは例えば、10年ほど前、怒った首長の一団がハロウィーン・パーティーで100人以上の人々を石で攻撃したことがあるから。悪魔崇拝者だと決めつけたからだ」
悪魔崇拝。かのパリ・オリンピックでも GOJIRA が揶揄されたように、21世紀の今となってもメタルに貼り付けられたレッテルはそうやすやすと剥がれ落ちてはくれません。伝統や宗教色が濃い国ならなおさらでしょう。しかし、ESODIC やメタルが目指す抑圧への怒り、自由への回復力、寛容な世界への祈りはそれでも決して根を上げることはありません。
“De Facto De Jure” で彼らはウダイ・フセインをテーマにスラッシュ・アタックをキメています。あのサダム・フセインの息子にして、”中東で最も忌み嫌われた男”。女性やスポーツ選手の命をあまりに無慈悲に、ぞんざいに扱った男の愚行は、何年経っても忘れ去るわけにはいかないのです。
「中東ではイスラム教の存在とその禁止事項が強いにもかかわらず、メタル音楽が完全に消滅することはないだろうね。多くのアラブ諸国は、以前よりも徐々にメタルを受け入れつつある。たとえ受容が大きく進まないとしても、メタルがこの地域から消えることはないだろう。なぜなら、メタルは聴衆の心に響く特別なメッセージや感情を伝えているからだよ」
ESODIC は、あらゆる困難をものともしない強さを、回復力を音楽的な寛容さへと還元し、多様で豊かな中東と世界の融解を導き出しました。ここでは、神秘的でエキゾチックなアラビアン・ナイトと、デスラッシュの狂気がひとつの均質な塊として信じられないほどうまく機能しています。ヘヴィなギターとブルータルなボーカルが、トライバルなリズムと繊細な民族音学、民族楽器に命を吹き込む冒険のシンドバッド。ほのかに漂うメランコリーは、ヨルダンを出国せざるを得なかった Zed の望郷の念でしょうか。
今回弊誌では、Zed Amarin にインタビューを行うことができました。「音楽には癒しと団結の力があるように、理解と思いやりを育む役割を果たすことができると信じているからね。ボブ・マーリーがかつて言ったように、”音楽のいいところは、当たっても痛みを感じないところだ”。音楽は架け橋となり、僕たちに共通の人間性を思い出させ、明るい未来をもたらす手助けをすることができるよ」 どうぞ!!
ESODIC “DE FACTO DE JURE” : 10/10
INTERVIEW WITH ZED AMARIN
Q1: This is the first time I’ve interviewed a metal band from Jordan. First of all, could you tell us about the metal scene in Jordan?
【ZED】: Being a metalhead in Jordan was truly a unique experience. The challenges of accessing the music and just existing as a metalhead added a certain magic to it all. Sharing music, ideas, and cultural influences was always a joy. Moreover, having an outlet to express social and political frustrations in a way that could be felt and shared made the experience even more significant and fulfilling.
Q1: ヨルダンのメタル・バンドにインタビューするのは初めてです。まず、ヨルダンのメタル・シーンについて教えていただえますか?
【ZED】: ヨルダンでメタル・ヘッドでいることは、本当にユニークな経験だった。音楽にアクセスすることの難しさから、メタル・ヘッドとして存在するだけである種の魔法が加わったんだ。音楽、アイデア、文化的影響を共有することは常に喜びだったよ。さらに、社会的、政治的なフラストレーションを感じ、音楽で共有し、表現する場を得たことで、その経験はさらに意義深く、充実したものになったね。
Q2: I once interviewed an Iranian metal band who were oppressed by the state authorities and Islam, and some were even arrested. Is metal music suppressed in Jordan?
【ZED】: I was fortunate to grow up in a family with strong connections to the army and government. Although I did face harassment, arrests, and detentions for being a metalhead, my experiences were relatively mild compared to what some of my friends went through. Some had all their metal-related items confiscated, were imprisoned and beaten, or even endured torture, both mentally and physically.
Our former members have all suffered years of detention and intense harassment. With the considerable influence of the Muslim Brotherhood, the Jordanian government targeted metalheads to prevent potential radical violence at our events. For instance, about a decade ago, a group of angry sheikhs attacked over a hundred people with stones at a Halloween party, simply because they assumed they were devil worshippers.
Q2: イランのメタルバンドにインタビューしたことがありますが、彼らは国家権力やイスラム教から弾圧を受け、逮捕された人もいました。ヨルダンではメタル音楽は弾圧されているのでしょうか?
【ZED】: 私は幸運にも、軍や政府と強いつながりを持つ家族の中で育ったんだ。それでも、メタル・ヘッドであることで嫌がらせや逮捕、拘留に直面したことはあったけど、友人たちが経験したことに比べれば、僕の経験は比較的軽いものだったね。メタル関連の品物をすべて没収されたり、投獄されたり、殴られたり、精神的にも肉体的にも拷問に耐えた者もいた。
僕たちの元メンバーは皆、何年にもわたる拘留と激しい嫌がらせに苦しんできた。ムスリム同胞団が大きな影響力を持つ中、ヨルダン政府は僕たちのイベントでの過激な暴力の可能性を防ぐために、メタルヘッズを標的にしていたんだ。
それは例えば、10年ほど前、怒った首長の一団がハロウィーン・パーティーで100人以上の人々を石で攻撃したことがあるから。悪魔崇拝者だと決めつけたからだ。
Q3: However, metal always has a resilience that resists oppression and pinch points. Is the reason why metal has not disappeared in the Middle East because there are things that only metal can convey?
【ZED】: Certainly, metal music will not completely disappear in the Middle East, despite the strong presence of Islam and its prohibitions. Many Arab countries are gradually becoming more accepting of metal than in the past. Even if acceptance doesn’t grow significantly, I don’t foresee metal vanishing from the region, as it conveys specific messages and emotions that resonate uniquely with its audience.
Q3: しかし、メタルは常に弾圧やピンチに耐える回復力を持っていますよね。厳しい中東でもメタルがなくならないのは、メタルにしか伝えられないものがあるからでしょうか?
【ZED】: 確かに、中東ではイスラム教の存在とその禁止事項が強いにもかかわらず、メタル音楽が完全に消滅することはないだろうね。多くのアラブ諸国は、以前よりも徐々にメタルを受け入れつつある。たとえ受容が大きく進まないとしても、メタルがこの地域から消えることはないだろう。なぜなら、メタルは聴衆の心に響く特別なメッセージや感情を伝えているからだよ 。
Q4: You have now moved to Los Angeles and revived your band. Why did you do so?
【ZED】: I decided to move to Los Angeles and revive my band because I had exhausted all opportunities in Jordan. Despite my best efforts, I couldn’t build a sustainable career playing drums with my band and others there. It became clear that I needed to relocate to a place where I could pursue my passion and make a living doing what I love..
Q4: あなたは現在ロサンゼルスに移住し、アメリカでバンドを復活させたんですよね?
【ZED】: ロサンゼルスに移住してバンドを復活させようと決めたのは、ヨルダンですべてのチャンスを使い果たしたから。どんなに最善を尽くしても、ヨルダンで自分のバンドや他のバンドとドラムを演奏して持続可能なキャリアを築くことはできなかった。自分の情熱を追求し、好きなことで生計を立てられる場所に移住する必要があることがはっきりしたんだ。
Q5: “De Facto De Jure” is a great piece! First of all, why does thrash metal fit so well with Middle Eastern instruments, percussion and dance?
【ZED】: Thank you for the compliment! We put a tremendous amount of work into “De Facto De Jure,” and we are incredibly proud of how it turned out. Thrash metal pairs exceptionally well with Middle Eastern instruments due to the genre’s raw energy and rapid tempos. These elements harmonize beautifully with the rhythms and melodies of traditional Middle Eastern music. Additionally, our deliberate choice of scales in the composition allows for a natural integration of oriental instruments, creating a rich and dynamic sound that bridges both worlds. This fusion not only enhances the music’s emotional impact but also showcases the versatility and depth of both musical traditions.
Q5: “De Facto De Jure” は素晴らしい楽曲ですね!まず、スラッシュ・メタルが中東の楽器やパーカッション、ダンスとこれほど相性が良いことに驚きました。
【ZED】: ありがとう!”De Facto De Jure” には多大な労力を費やしたからうれしいよ。スラッシュ・メタルは、その生のエネルギーと速いテンポが、中東の楽器と非常に相性がいい。こうしたメタルの要素は、伝統的な中東音楽のリズムやメロディーと見事に調和する。
加えて、東洋の楽器を自然に融合させるために音階を意図的に選び、両世界の架け橋となる豊かでダイナミックなサウンドを作り出そうとしたんだ。この融合は、音楽の感動を高めるだけでなく、両方の音楽の伝統の多様性と奥深さを示すものでもある。
Q6: For example, thrash bands like Sepultura and Kreator dealt with political themes and rebelled against oppression. In that sense, does thrash fit your themes, especially in metal?
【ZED】: Absolutely, that’s precisely why we gravitated towards thrash metal for our sound and themes. Thrash has a long history of addressing real-life issues and social injustices, which resonated deeply with us. Bands like Sepultura, Kreator, and Exodus have been vocal about political themes and rebelling against oppression, making thrash an ideal vehicle for expressing our own perspectives. This subgenre provides the perfect outlet for channeling our frustrations and addressing the complexities of our reality through intense and powerful music.
Q6: 例えば、SEPULTURA や KREATOR のようなスラッシュ・バンドは政治的テーマを扱い、抑圧に反抗していましたね。
そうした意味でも、スラッシュは特にメタルの中でもあなたたちのテーマに合っていますね?
【ZED】: その通り、それこそが僕たちのサウンドやテーマがスラッシュ・メタルに惹かれた理由なんだ。スラッシュには、現実の問題や社会的不正義を訴えてきた長い歴史があり、それが僕たちの心に深く響いた。
SEPULTURA, KREATOR, EXODUS のようなバンドは、政治的なテーマや抑圧への反抗を声高に主張してきた。このサブジャンルは、強烈でパワフルな音楽を通して、僕たちのフラストレーションをぶつけ、現実の複雑さに取り組むための完璧なはけ口を提供してくれる。
Q7: Is it ironic and symbolic that a song about Uday Hussein, who has tortured, raped, and horribly mistreated women, would feature a woman, Chaney Crabb?
【ZED】: It was a deliberate and symbolic choice to feature a woman, Chaney Crabb, on a song like “Reign,” which addresses the atrocities committed by Uday Hussein. Considering the countless women who suffered horrific abuse, torture, and mistreatment at his hands, we wanted to make a powerful statement. By including a female vocalist, we aimed to not only highlight the gravity of his crimes but also offer a form of resistance and reclamation. It was our way of standing in solidarity with the victims and voicing our condemnation of such acts. “Reign” serves as a stark reminder of the horrors perpetrated under Hussein’s regime and a call for justice and healing, making Chaney’s participation both poignant and deeply meaningful.
Q7: 女性を拷問し、レイプし、ひどく虐待したウダイ・フセインについての楽曲に、女性である Chaney Crabb がフィーチャーされているのは皮肉で象徴的ですね?
【ZED】: ウダイ・フセインによる残虐行為を取り上げた “Reign” のような曲に、女性の Chaney Crabb を起用したのは、意図的かつ象徴的な選択だった。
ウダイの手によって恐ろしい虐待、拷問、虐待を受けた無数の女性のことを考えると、僕たちはどうしても力強い声明を出す必要があった。女性のボーカリストを起用することで、彼の犯した罪の重さを浮き彫りにするだけでなく、抵抗と再生の形を提供することを目指したんだ。
それは被害者と連帯し、このような行為を非難する声を上げるための僕たちのやり方だった。”Reign” は、フセイン政権下で行われた惨劇を思い起こさせ、正義と癒しを求める音楽だ。Chaney の参加は痛烈で深い意味を持ったね。
Q8: And now we have another tragedy in the Middle East. How do you feel about Israel’s outburst? Is there anything music can do?
【ZED】: It’s heartbreaking to witness yet another tragedy in the Middle East. My hope is that one day we can move beyond our differences and embrace the many things we share. As music has the power to heal and unite, I believe it can play a role in fostering understanding and compassion. As Bob Marley once said, “One good thing about music, when it hits you, you feel no pain.” Music can be a bridge, reminding us of our shared humanity and helping to bring about a brighter future.
Q8: そして今、中東でまた新たな悲劇が起きています。音楽にできることはあるでしょうか?
【ZED】: 中東でまた新たな悲劇を目の当たりにして心が痛むよ。僕の願いは、いつの日か僕たちが違いを超えて、共有している多くのものを受け入れられるようになること。
音楽には癒しと団結の力があるように、理解と思いやりを育む役割を果たすことができると信じているからね。ボブ・マーリーがかつて言ったように、”音楽のいいところは、当たっても痛みを感じないところだ”。音楽は架け橋となり、僕たちに共通の人間性を思い出させ、明るい未来をもたらす手助けをすることができるよ。