EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRENDON RANDALL-MYERS OF SCARCITY !!
“NYC Is Also Objectively a Hard Place To Live – It’s Expensive, It’s Cramped, And The Infrastructure Is Constantly On The Verge Of Breaking – So The People That Stay Here Are Very Driven And a Little Crazy. I Think That Discomfort And Difficulty Also Feed Into The Sound And Ethos Of a Lot Of NYC Bands.”
DISC REVIEW “THE PROMISE OF RAIN”
「ニューヨークは客観的に見ても住みにくい場所だ。物価は高いし、窮屈だし、インフラは常に壊れかけている。だから、それでもここに滞在する人たちはとても意欲的で、少しクレイジー。その不快感や困難さが、多くのニューヨークのバンドのサウンドやエトスにも影響していると思う」
ニューヨークが現代の “アヴァンギャルド” なメタルにとって聖地であり、産地であることは語るまでもないでしょう。KRALLICE, IMPERIAL TRIUMPHANT, DYSRHYTHMIA. そして PYRRHON。ブラックメタルやデスメタルといった “エクストリーム・ミュージック” における実験を推し進め、アートの域まで昇華する彼らの試みは、明らかにNYCという “土壌” が育んでいます。
港湾を有し、人種の坩堝といわれる NYC。多様な人種が集まれば、そこには多様な文化の花が咲き、未知なる経験を胸いっぱいに摂取したアーティストたちの野心的な交配が活性化されていきます。物価の高騰や人口の密集、インフラの老朽化。NYC は必ずしも住みやすい場所ではありません。それでも彼の地に居を構え、アートに生を捧げる人が後をたたないのは、そうした “土壌” の肥沃さに理由があるのでしょう。
「正直なところ、僕らはみんなニューヨークのシーンで長い付き合いなんだ。Doug とは大学時代からの付き合いで、PYRRHON の最初のフル・アルバムからのファンなんだ。彼とは2016年の時点から一緒にプロジェクトをやろうという話をしていて、最終的に2020年に “Aveilut” になるもののMIDIデモを送ったら、彼が歌ってくれることになったんだ。
そんな NYC で、メタルとアヴァンギャルドの完璧なハイブリッドとして登場したのが SCARCITY です。マルチ奏者 Brendon Randall-Myers の落胤として始まった “希少性” の名を持つプロジェクトは、 NYC の同士 PYRRHON の Doug Moore の力を得て産み落とされました。デビュー作にして “Aveilut” “追悼” と名づけられたそのレコードは、パンデミックの発生による人と世界の死に対する “悲嘆の儀式” として、あまりにも孤独なマイクロトーナル・ブラックメタルとして異端の極北を提示したのです。
「僕たちは明らかに伝統的なブラック・メタル・バンドになろうとしているわけではない。でも、このジャンルには大好きなものがたくさんあるし、ブラック・メタルはこのバンドがやっていることの根底にあり続けると思う」
そうして到達したセカンド・アルバム “The Promise of Rain” で彼らは、さらに NYC の風景を色濃く反映しました。KRALLICE や SIGUR ROS, Steve Reich のメンバーが加わり、メタルとアヴァンギャルド、そしてノイズの融合に温かみと人間性を施したアルバムは、あまりにも雄弁で示唆に富んだブラックメタルの寓話。
ユタ州の砂漠を旅しながら恵みの雨を待った経験をもとに作られたコンセプトは、前作の悲しみから人生へとそのテーマを移し、困難に直面する人々や困難な地域における苦闘を、トレモロの噴火から火災報知器、ドローンにDJを駆使して描いていきます。たしかに、迷路のようですべてがポジティブな作品ではありません。それでも、少なくともこの作品は孤独でも引きこもりでもありません。われわれのいない世界から、SCARCITY はわれわれを含む世界へと戻ってきたのですから。
今回弊誌では、Brendon Randall-Myers にインタビューを行うことができました。「ゲームでは、コナミやフロム・ソフトウェアのゲームが大好きで、任天堂やスクウェア、スクウェア・エニックスの名作もたくさんやっているよ。最近 FFVII:Rebirth を終えて、今はエルデンリングのDLCをプレイしているんだ。
アニメは、あまり最新ではないけど、AKIRA やエヴァンゲリオン、攻殻機動隊、カウボーイビバップなどの名作を高校生の時に観ていて、最近ではデスノート、鋼の錬金術師、約束のネバーランド、進撃の巨人、風が強く吹いている、呪術廻戦などを観ているね。
バンドでは、G.I.S.M.、Gauze、Envy、Melt Banana、Boris、Boredoms、Ruins が好きだよ。読んで、聞いてくれてありがとうね!」どうぞ!!
SCARCITY “THE PROMISE OF RAIN” : 10/10
INTERVIEW WITH BRENDON RANDALL-MYERS
Q1: First, can you tell us what kind of music you grew up listening to?
【BRENDON】: The first music I listened to was classic rock stuff I heard through my parents – Pink Floyd, Led Zeppelin, Linda Ronstadt. When I was maybe 8, my older cousins got me into alt rock like Nirvana and Tool. My first bandmate (when I was 12 or so) got me into heavier music like Nine Inch Nails, Ministry, Metallica, and Marilyn Manson along with some alt-folk stuff like Beck and Dan Bern.
Early in high school, I got into math metal, like The Dillinger Escape Plan, Converge, and Botch, and then weirder stuff like Mr. Bungle, Sonic Youth, Drive Like Jehu, John Zorn, Glenn Branca. I also started playing classical guitar, so I got to know composers like JS Bach and Leo Brouwer. In college, I studied music formally so I learned about more classical and minimalist composers – a few I love are Gyorgi Legiti, Steve Reich, Philip Glass, Maurice Ravel.
Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【BRENDON】: 最初に音楽と出会ったのは、両親が聴いていたクラシック・ロック。PINK FLOYD, LED ZEPPELIN, Linda Ronstadt だったね。8歳くらいのときに、年上のいとこたちが NIRVANA や TOOL といったオルタナティブ・ロックに目覚めさせてくれた。最初のバンド仲間(12歳くらいのとき)は、NINE INCH NAILS, MINISTRY, METALLICA, MARILYN MANSON といったヘヴィな音楽と、BECK や Dan Bern といったオルタナティブ・フォークを聴かせてくれたね。
高校に入ってからは、THE DILLINGER ESCAPE PLAN, CONVERGE, BOTCH のようなマス・メタル、それから MR. BUNGLE, SONIC YOUTH, DRIVE LIKE JEHU, John Zorn, Glenn Blancaのような変な音楽にハマっていった。
クラシック・ギターも弾き始めたので、JSバッハやレオ・ブローワーといった作曲家も知ったんだ。大学では正式に音楽を学んだから、もっとクラシックやミニマリストの作曲家について学んだ。僕が好きな作曲家は、ギオルギ・レギティ、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス、モーリス・ラヴェルなどだね。
Q2: Scarcity had a great lineup, including Pyrrhon, Krallice, and Sigur Ros. How did you manage to attract all this talent?
【BRENDON】: Honestly we’ve all just known each other for a long time in the NYC scene. I’ve known Doug since college and been a Pyrrhon fan since their first full-length. He and I had been talking about doing a project together as far back as 2016, and I finally sent him the midi demo of what became Aveilut in 2020 and he agreed to sing on it. In terms of the larger band, Doug and Dylan obviously play together in Pyrrhon, and Tristan was in my old math rock band Marateck. With Lev, Doug cold asked him and we were lucky he said yes.
Q2: SCARCITY は、PYRRHON, KRALLICE, SIGUR ROS などのメンバーからなるスーパー・バンドです。これだけの才能をどうやって集めたのですか?
【BRENDON】: 正直なところ、僕らはみんなニューヨークのシーンで長い付き合いなんだ。Doug とは大学時代からの付き合いで、PYRRHON の最初のフル・アルバムからのファンなんだ。彼とは2016年の時点から一緒にプロジェクトをやろうという話をしていて、最終的に2020年に “Aveilut” になるもののMIDIデモを送ったら、彼が歌ってくれることになったんだ。
より大きなバンドという意味では、Doug と Dylan は明らかに PYRRHON で一緒に演奏しているし、Tristan は僕の昔のマス・ロック・バンド MARATECK にいた。Lev については、Dougが誘ってくれて、彼がOKしてくれたのはラッキーだった。
Q3: Why did you choose the band name Scarcity?
【BRENDON】: Doug chose the name – it captured the vibe of the first album in a way we both liked.
Q3: バンド名を SCARCITY にしたのはなぜですか?
【BRENDON】: Doug が選んだんだ。僕ら2人が気に入っていたファースト・アルバムの雰囲気を捉えていたからね 。
Q4: You described your previous work “Aveilut” as a “grieving ritual.” By this grieving, are you referring to today’s dark world, which is far from peace, tolerance, and kindness?
【BRENDON】: When I wrote that music in 2019-20 I was specifically grieving the deaths of a family member and a friend, and was also in Beijing during the first couple weeks where Covid-19 was really blowing up. So it’s a record grieving some specific people I was close to, but it’s also a record kind of grieving the death of the pre-pandemic world, and and on some level grieving the millions of people we lost to the virus.
Q4: あなたは前作 “Aveilut” を “悲嘆の儀式 “と表現していました。この悲嘆とは、平和、寛容、優しさとは程遠い今日の暗い世界を指しているのでしょうか?
【BRENDON】: 2019-20年にこの音楽を書いたとき、僕は特に家族と友人の死を悲しんでいました。それに、コヴィド19が本当に爆発した最初の2、3週間は北京にもいたんだよ。だからあのアルバムは、僕が親しくしていた特定の人々を悲しむレコードであると同時に、パンデミック以前の世界の死を悲しむレコードでもあり、ウイルスによって失われた何百万人もの人々を悲しむレコードでもあるんだ。
Q5: Black metal was originally born with negative emotions within it, but it seems to me that the recent some bands and you guys seem to be imbued with positive emotions in the midst of savagery. How do you feel about this change in black metal?
【BRENDON】: I chose black metal as a medium exactly because the feelings I was having were so bleak and I needed somewhere to put them. In general I think this band is an attempt to come into some kind of equilibrium with negative emotions. In my experience these feelings can’t be avoided, but they can be acknowledged, worked with, and transformed into energy in community.
Q5: ブラック・メタルはもともとネガティブな感情を内包して生まれたものですが、最近のいくつかのバンドやあなた方は、暗さや野蛮さの中にポジティブな感情が込められているように思えます。このブラックメタルの変化についてどう感じていますか?
【BRENDON】: ブラック・メタルを僕らのメディアとして選んだのは、まさに自分が抱いていた感情があまりに殺伐としていて、それをぶつける場所が必要だったからなんだ。一般的に、このバンドはネガティブな感情とある種の均衡を保とうとする試みだと思う。僕の経験では、こうした負の感情を避けることはできないが、認め、共に働き、コミュニティーのエネルギーに変えることはできると思う。
Q6: The sense of ambience and industrialism in you guys is really great! You even sublimate sounds like fire alarms into a brilliant art form, but you don’t seem to intend to confine yourself within the cage of black metal, would you agree?
【BRENDON】: Thanks! I mean we are obviously not trying to be a traditional black metal band. There’s a lot I love about the genre though, and I think black metal will remain kind of in the foundation of what this band does, even if the structures we build on that foundation stray pretty far from the source template.
Q6: あなたたちのアンビエンスやインダストリアルなセンスは本当に素晴らしいですね!火災報知器やアラームのような音まで見事なアートに昇華させていますが、ブラック・メタルの檻の中に閉じこもるつもりはないようですね?
【BRENDON】: ありがとう!僕たちは明らかに伝統的なブラック・メタル・バンドになろうとしているわけではない。でも、このジャンルには大好きなものがたくさんあるし、ブラック・メタルはこのバンドがやっていることの根底にあり続けると思う。
Q7: You are a NYC band, why do you think so many great avant-metal bands come out of that location?
【BRENDON】: I think for many of the same reasons so much good music in general happens there. It’s a big population center and a port city, so there are many different kinds of music and culture happening in a geographically very confined space. It’s pretty hard to live here and avoid coming into contact with stuff you’ve never experienced before. So I think that maybe gives a sense of openness or diverse-ness that a lot of NYC bands share.
NYC is also objectively a hard place to live – it’s expensive, it’s cramped, and the infrastructure is constantly on the verge of breaking – so the people that stay here are very driven and a little crazy. I think that discomfort and difficulty also feed into the sound and ethos of a lot of NYC bands, because this place really forces you to keep choosing to live here, and forces you to keep choosing to make music here. So the people that stick around and keep making art here do it because they really love it and take it really seriously.
Q7: あなたはニューヨークのバンドですが、なぜニューヨークからは多くの素晴らしいアヴァン・メタル・バンドが生まれると思いますか?
【BRENDON】: それは、一般的に多くの優れた音楽がニューヨークから生まれるのと同じ理由だと思う。ニューヨークは人口の中心地であり、港湾都市でもあるから、地理的に非常に限られた空間の中で、さまざまな種類の音楽や文化が起こっている。ここに住んでいて、今まで経験したことのないものに触れないようにするのはかなり難しい。だから、多くのニューヨークのバンドに共通する開放感や多様性があるんだと思う。
ニューヨークは客観的に見ても住みにくい場所だ。物価は高いし、窮屈だし、インフラは常に壊れかけている。だから、それでもここに滞在する人たちはとても意欲的で、少しクレイジー。その不快感や困難さが、多くのニューヨークのバンドのサウンドやエトスにも影響していると思う。
なぜなら、この場所は本当に、ここに住むことを選択し続けさせ、ここで音楽を作ることを選択し続けさせるから。だから、ニューヨークにこだわってアートを作り続けている人たちは、アートが本当に好きで、真剣に取り組んでいるのさ。