EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KENNY COOK OF ANCIIENTS !!
“Opeth And Mastodon Are Amazing Bands And Are Clearly The Benchmark For Progressive Metal In Todays Perspective.”
DISC REVIEW “BEYOND THE REACH OF THE SUN”
「ANCIIENTS を結成した当時、僕はちょうど OPETH と MASTODON を発見したところで、彼らがやっていることに本当にインスパイアされたんだ。両者とも素晴らしいバンドで、現代的な観点から見れば明らかにプログレッシブ・メタルのベンチマークだからね」
OPETH と MASTODON。まさにモダン・プログ・メタルのベンチマークであり、雛形とも言える両雄の完璧なキメラとして生を受けた ANCIIENTS は、デビュー作 “Heart of Oak” からプログ・メタルの未来という評価を確固たるものとします。時は Bandcamp 戦国時代。INTRONAUT や WILDERUN, CALIGULA’S HORSE といった次世代を担うプログ・メタルの新鋭が鎬を削った10年代前半においても、ANCIIENTS の描く複雑の青写真と存在感は群を抜いていました。あの Bandcamp の音とアートワークの海の中で、彼らの作品を覚えていないディガーなどモグリでしかありません。そして16年には、地元カナダのグラミーと言われるジュノー賞を獲得。プログの “古代” と現代を巧みに融合する彼らの未来は約束されたように思えました。
「一連の不幸な出来事に直面し、音楽活動から身を引いていたんだよね。家族の深刻な健康問題、バンド内のメンバーチェンジ、そしてコヴィッド。この3つが、長期の活動休止の理由だった」
しかし彼らはさながら古代のロスト・テクノロジーのように、突如として沈黙し、休眠期間に入ります。8年という長い不在の間に、ライバルたちはメジャー・レーベルへと移籍。しかし、ついに復活を遂げた ANCIIENTS の音楽は決して名を上げた彼らに劣ってはいません。むしろ、8年という沈黙は、そして痛みは、ANCIIENTS の音楽をさらなる高みへと押し上げました。
“Beyond The Reach of The Sun” 制作のために戦い抜かなければならなかった試練や苦難(家族の病気、メンバーの交代、転居、パンデミック)を知ることで、このアルバムには感情的な重みが加わります。フロントマン Kenny Cook が逆境を乗り越えてきた年月があったからこそ、このアルバムは不確実で、孤独で、恐怖の長い夜が明けて勝利の夜明けを迎えたような印象を与えるのでしょう。
「面白いことに気づいたね!ここ数年、ALICE IN CHAINS, SOUNDGARDEN など、あの時代の曲を聴き直しているんだ。ギターを習っていた頃は、そうしたバンドの大ファンだったし、ミュージシャンとしての僕に大きな影響を与えてくれたからね」
特筆すべきは、Kenny がこの作品でさらに、自らの原体験、ルーツへと回帰した点でしょう。リード・シングルの “Melt the Crown” では、1本でも2本でもなく、3本のギター・ソロが飛び出しますが、そのひとつひとつが、フォークからサザン・ブルース、サイケデリック・プログまで、独自のテイストを持っています。MASTODON の哲学と70年代が煌めくこの楽曲において、響き渡るは Mikael Akerfeldt の陰を帯びた美声、そして Jerry Cantrell の陰鬱なコーラス・ワーク。
そう、私たちはグランジとメタルをとかく別のフィールドに置きがちですが、確実にその垣根はつながっています。”Beyond The Reach of The Sun” は、90年代から00年代を駆け抜けた ALICE IN CHAINS, OPETH, MASTODON の連続性と類似性を見事に実証したレコードだと言えるでしょう。
そう、アルバムのテーマは “Wisdom”、”叡智”。これは異次元からの力によって奴隷化された社会の物語。思考が停止するやいなや奴隷化されてしまう世界で今、最も必要な洞察力や叡智を養えるプログ・メタルの有用性も、彼らは同時に証明してくれたのです。
今回弊誌では、Kenny Cook にインタビューを行うことができました。「当時は、特にプログレッシブ・ロックのジャンルにおいて、多くの実験が行われていた。KING CRIMSON, YES, CAMEL, PINK FLOYD, Alan Persons Project は、何らかの形で僕らのサウンドに大きな影響を与えた。同時に、JUDAS PRIEST の古いレコード、THIN LIZZY、そしてもちろん DEEP PURPLE も同じようなテイストを持っているが、よりハード・ロックのジャンルだよね」 どうぞ!!
ANCIIENTS “BEYOND THE REACH OF THE SUN” : 10/10
INTERVIEW WITH KENNY COOK
Q1: Anciients was silent for a long time after winning the Juno Award. Why have you been inactive for so long?
【KENNY】: We faced a series of unfortunate events which caused us to take a step back from working on music. There were some serious health issues involving a family member, some line up changes within the band, and Covid. Those 3 things, among others were the reasons for our lengthy hiatus.
Q1: ANCIIENTS はジュノー賞を受賞した後、長い間沈黙していましたね?
【KENNY】: 一連の不幸な出来事に直面し、音楽活動から身を引いていたんだよね。家族の深刻な健康問題、バンド内のメンバーチェンジ、そしてコヴィッド。この3つが、長期の活動休止の理由だった。
Q2: When I first heard Anciients on “Heart of Oak,” I thought I had found the perfect band. It was a perfect fusion of Opeth and Mastodon, two of the best bands I had ever heard in my life. Were these two bands actually a big part of your life?
【KENNY】: At the time of forming this group I was just discovering both of those bands, and was really inspired by what the were doing.Both of them are amazing bands and are clearly the benchmark for progressive metal in todays perspective. I wouldn’t say they are my biggest influences, but both certainly have their place. We definitely get a lot of comparisons to them and I can understand that mostly with our first record. I like to think we have found our own sound, more so on this new record, than anything we’ve released previously.
Q2: “Heart of Oak” で初めて ANCIIENTS を聴いた時、完璧なバンドを見つけたと思ったんです。大好きな OPETH と MASTODON の完璧なフュージョンだったからです。この2つのバンドは、実際にあなたの人生の大きな部分を占めていたのですか?
【KENNY】: このグループを結成した当時、僕はちょうどこの2つのバンドを発見したところで、彼らがやっていることに本当にインスパイアされたんだ。両者とも素晴らしいバンドで、現代的な観点から見れば明らかにプログレッシブ・メタルのベンチマークだからね。
だから、この2つのバンドに一番影響を受けたとは言わないが、どちらも自分の中に大きな居場所があるのは確かだ。僕たちは間違いなく彼らと比較されることが多いし、僕たちの最初のレコードでそれが理解できた。でもこの新譜では、これまでにリリースしたどの作品よりも、自分たち自身のサウンドを見つけることができたと思う。
Q3: Why did you choose the band name Anciients in the first place? Indeed, your music and images have an ancient mythological and oriental feel to them, right?
【KENNY】: We had a very broad list of names that we had compiled and we shared that list with a bunch of our friends in a group chat. It was basically left up to a democratic choice amongst everyone. There were a lot of different things we could tie into this name as far as themes and aesthetics so in the end it felt like the clear winner.
Q3: そもそもなぜ ANCIIENTS というバンド名を選んだのですか?確かに、あなたたちの音楽とイメージは、古代神話的でオリエンタルな雰囲気がありますよね。
【KENNY】: 僕たちはとても幅広い名前のリストを持っていて、グループチャットで友人たちとそのリストを共有したんだよね。基本的には、みんなの民主的な選択に任されたんだ。テーマや美学に関して、この名前に結びつけることができるさまざまなものがたくさんあったので、最終的には、ANCIIENTS が明確な勝者だと感じたよ。
Q4: “Beyond the Reach of the Sun” is about enduring dark times, overcoming darkness, and capturing happiness and hope in a science fiction and Lovecraftian fantasy setting, right? Of course, it is a metaphor for the current darkness of pandemics, division, and war, isn’t it? Can humanity overcome these hardships?
【KENNY】: Unfortunately there will always be evil people in this world. The thought of a perfect society is nice, but chances are greed and entitlement will always be present.
Q4: “Beyond The Reach of The Sun” は、SFやラヴクラフト的なファンタジーの設定の中で、暗い時代に耐え、闇を乗り越え、幸福と希望を掴むことをテーマにしていますね?その闇とはもちろん、パンデミック、分断、戦争といった現在の闇のメタファーでもありますが、人類はこうした苦難を乗り越えることができるのでしょうか?
【KENNY】: 残念ながら、この世界には常に悪人が存在する。完璧な社会というのはいいものだが、世界には貪欲さと権力ばかりが常に存在する可能性があるのだ。
Q5: Speaking of fantasy, Japan is a mecca for fantasy-themed video games, anime, and music. Are you influenced by such Japanese culture?
【KENNY】: I spent a lot of time playing video games growing up as a child/teen. I haven’t delved to deep in to anime thus far in my life but certainly not opposed to the idea. I’ve got some studying to do but maybe the next record will be anime themed!
Q5: ファンタジーといえば、日本はファンタジーをテーマにしたゲームやアニメ、音楽のメッカです。そうした日本文化に影響を受けていますか?
【KENNY】: 幼少期や10代の頃は、ビデオゲームに多くの時間を費やしたよ。これまでの人生でアニメを深く掘り下げたことはないけれど、その考えに反対しているわけではない。少し勉強しなければならないけど、次のレコードはアニメをテーマにするかもしれないね!
Q6: Musically, the impression is of a more diverse soup of the time, with a strong influence of classic rock and prog from the 1970s, such as Deep Purple and King Crimson. In a way, we can feel the air of creativity and freedom of that era, would you agree?
【KENNY】: Yes! There was a lot of experimentation going on in those days, especially in the progressive rock genre. We pull from a wide variety of inspirations, King Crimson, Yes, Camel, Pink Floyd, and Alan parsons have had a great influence on our sound in one way or another. The older Judas Priest records, Thin Lizzy and of course Deep purple also had the same kind of thing going on but in more of the Hard rock genre.
Q6: 今回の作品は、音楽的には DEEP PURPLE や KING CRIMSON など、1970年代のクラシック・ロックやプログの影響が強く、より多様な “時代のスープ” を味あわせてくれます。ある意味、あの時代の創造性と自由な空気が強くなりましたよね?
【KENNY】: そうだよね!当時は、特にプログレッシブ・ロックのジャンルにおいて、多くの実験が行われていた。KING CRIMSON, YES, CAMEL, PINK FLOYD, Alan Persons Project は、何らかの形で僕らのサウンドに大きな影響を与えた。
同時に、JUDAS PRIEST の古いレコード、THIN LIZZY、そしてもちろん DEEP PURPLE も同じようなテイストを持っているが、よりハード・ロックのジャンルだよね。
Q7: Interestingly, there are times on this album that remind me of grunge, especially Alice In Chains. Their vocals, chord progressions, and chorus works are very unique, did you absorb some of their gloominess?
【KENNY】: Funny you noticed that! I have been going back and listening to a lot of Alice and Chains, Soundgarden and others from that time period again over the last few years. I was a huge fan of all of those bands when I was learning to play guitar and they’ve had a huge influence on me as a musician.
Q7: 興味深いことに、このアルバムにはグランジ、特に ALICE IN CHAINS を思わせるような場面が少なくありません。彼らのボーカル、コード進行、コーラスワークはとてもユニークですが、そうした陰鬱な感覚を吸収したのでしょうか?
【KENNY】: 面白いことに気づいたね!ここ数年、ALICE IN CHAINS, SOUNDGARDEN など、あの時代の曲を聴き直しているんだ。ギターを習っていた頃は、そうしたバンドの大ファンだったし、ミュージシャンとしての僕に大きな影響を与えてくれたからね。
Q8: This is an album that should be listened to completely through the piece from head to toe. With the advent of streaming and social networking, the music industry has moved to a completely instant and shallow culture, but in such a world, why do you still follow prog metal, epicness, and intelligence that defies the trend?
【KENNY】: First and foremost we make music that we like to listen to and makes us feel something to play. I think if one decides to create music or any art for that matter, to please other people, it kind of defeats the purpose. It starts as a personal thing that I genuinely like to do with my spare time. People (although their attention spans have become shortened) are smart enough to figure out if there is real emotion and purpose behind the songs, as opposed to whipping out some garbage in hopes to make some sort of capital gains from it.
Q8: このアルバムは、最初から最後まで完全に通して聴くべき作品でしょう。ストリーミングやSNSの登場により、音楽業界は完全にインスタントな文化へと移行しましたが、そのような世界でもなお、プログ・メタルや壮大さ、流行に逆らわない知性を追い求めるのはなぜですか?
【KENNY】: 何よりもまず、僕たちは自分たちが聴いて好きで、演奏していて何かを感じられるような音楽を作っている。音楽でも芸術でも、他人を喜ばせるために作ろうと思ったら、それは目的を失うことになると思う。
結局、僕らの求める音楽って、純粋に好きな音楽で余暇を過ごすのが好きだという個人的な理由から始まるからね。でもね、それでも人々は注意力のスパンが短くなったとはいえ、曲の背後に本当の感情や目的があるかどうかを見極めるのに十分賢いよ。これは、キャピタルゲインを期待してゴミを持ち出すのとは対照的な音楽だよ。