COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CONSIDER THE SOURCE : THE STARE】


COVER STORY : CONSIDER THE SOURCE “THE STARE”

“Our Music Combines Influences From Turkish, Bulgarian, North and South Indian Styles With Jazz And Fusion, And Then We Filter It Through Our Own Heavy, Rock and prog sounds and approaches.”

THE STARE

CONSIDER THE SOURCE の音楽は、70年代フュージョン、伝統的な中東や中央アジアのスタイル、プログの難解とメタルの激しさを巧みにミックスしたものです。ギタリストの Gabriel Marin は、並外れたシュレッド、複雑なタイム感、伝統的スケールの博士号、稀有なるフレットレス・ギターの流暢さ、そしてエフェクトを操る多才すぎる能力を誇ります。そして、3機のペダルボード、17個のペダル、2台のギター・シンセサイザー、2台のアンプ、そして異形のカスタム・ダブルネックを持ってツアーする筋金入りの機材ジャンキーでもあるのです。
ニューヨーク出身の Marin はピアノから始め、16歳でギターを手に入れました。1年半後には Yngwie Malmsteen の “Far Beyond The Sun” を体得。ハンター・カレッジでクラシック音楽の学士号を取得し、インドの巨匠デバシシュ・バッタチャリヤの弟子となり、デヴィッド・フィウジンスキーに師事しました。OPETH や RADIOHEAD の傑出したカバーを披露する一方で、彼はまた、バ・ラマ・サズ、カマンチェ、ドンブラ、ドター、タンブール、ダン・バウなど、伝統的なアコースティック楽器の演奏法も会得しているのです。

「バンドを始めた当初はロックに傾倒していたけど、常に違う世界のものにも興味を持っていた。最初はグランジやシュレッダーから影響を受けた。Jerry Cantrell と Billy Corgan はグランジ系だった。10代の頃は Yngwie Malmsteen, John Petrucci, Steve Vai も好きだった。そういうプレイを学ぶことで、たくさんのギター・チョップを身につけることができた。僕は17歳で、ギターを始めて1年半くらいだったんだけど、イングヴェイの “Far Beyond the Sun” を弾けたんだ。”ああ、僕は何でも弾けるんだ!” って感じだったよ(笑)。
でもその後、2ヶ月の間にジョン・コルトレーンの “A Love Supreme” と John McLaughlin を聴いて、自分の音楽がすっかり変わってしまった。テクニックはそこそこだったけど、それ以上の意味があるように思えたんだ。コルトレーンが速いラインを弾いているとき、それは “この速いラインを弾いている私を見て” ではなかった。スピリチュアルな音の爆発だった。
僕は、”よし、これが自分のやりたいことだ” と思った。僕はいつも、顔で弾いたりギターを変な持ち方をしたりするような、ショー的なシュレッダーが苦手だった。それは僕には理解できなかった。でもそのふたりは一音一音に真剣で、超高速で演奏しているにもかかわらず、一切無意味なでたらめさがなかった」
オリエンタルな伝統音楽にのめり込んだのはなぜだったんでしょうか?
「その後すぐに、伝統音楽をギターで演奏する方法を見つけたいと思うようになり、インド、トルコ、ペルシャの音楽にのめり込んでいった。幸運なことに、偉大なミュージシャンと一緒にこうしたスタイルを学ぶことができた。僕はフレットレス・ギターを弾くので、伝統音楽のフレージングや装飾を正確に表現できるんだ。
僕は伝統的な楽器を使ってトルコやペルシャの古典音楽を演奏するために時々雇われるんだけど、そんな時でもフレットレス・ギターを持って行く!フレットレス・ギターをそのような場に持ち込むのはクールなことだ。CONSIDER THE SOURCE では、超未来的なサウンドを作るのが好きなんだ。僕らはトルコ、ブルガリア、北インド、南インドのスタイルからの影響をジャズやフュージョンと組み合わせ、それを独自のヘヴィ・ロックでプログなサウンドやアプローチでろ過しているんだ!」

たしかにフレットレスであることは、オリエンタルなサウンド・メイクに効果的です。
「フレットレスはスライドに最適なだけでなく、微分音も使える。中東のような多くの異なる文化では、ピッチとピッチの間にピッチがあるから、4分の1ステップや8分の1ステップといったものがあるんだ。
それに、フレットレスにEBowやサスティナー・ピックアップをつけ、ボリューム・ペダルを使えば、ギタリストというよりシンガーに近いサウンドになる。
僕はあまりコードを弾かないんだ。どちらかというとメロディックな単音奏者で、フレットレスはそれに最適な楽器なんだ。フレットを弾くときでも、流動的なピッチを得るために、ワミー・バーはずっと小指にあるくらいでね」
アラビアやインドの伝統音楽は、単にハーモニック・マイナー・スケールを演奏しているだけではありません。
「それが問題なんだ!インド音楽といえば、僕はインドのラップスティール奏者、デバシシュ・バッタチャリヤの弟子だった。彼は信じられないような人で、SHAKTI のレコーディングにも何度か参加している。僕はインドで彼と一緒に暮らし、彼がアメリカに来るときはいつも、1ヵ月間彼の家に滞在して本当に熱心に勉強したんだ。
あと、アゼルバイジャンのムガームのスケールも素晴らしい、 アゼルバイジャンでは本当に素晴らしい音楽が作られているんだ。他の国の人の耳にはなじみにくい音階を聴きたいなら、検索エンジンにその音階を入力して聴いてみて!」

フレットレスのもうひとつの魅力は、フレットレスに専念しているプレイヤーがほとんどいないことだと Marin は言います。
「僕はフレットレスを弾いているけど、シーンの誰もフレットレスを弾いていなかった。僕のフレージングのほとんどは、エレキ・ギターを弾かないミュージシャンから学んだものだ。未知の領域だよ。
最後にトルコを訪れたとき、ドゥドゥクを弾く人のレッスンを受けたんだ。僕がレッスンに現れたとき、彼は “ドゥドゥクはどこだ” と言ったので、僕はフレットレスを取り出した。彼は僕にどう教えたらいいのかわからなくて、何か弾いてみて、それをコピーさせて、僕のやり方が正しいかどうか教えてくれと言ったんだ。
管楽器で顎の圧力を下げる真似をギターでするんだ!それを理解するのは楽しかった。フレットレスのもうひとつの魅力は、フレットレスに専念している奏者がほとんどいないことだからね」
Marin は多くの伝統的なアコースティック楽器を演奏しますが、テクニックやスケール、モードといった面で、それはエレクトリック方面ににどの程度反映されているのでしょうか?
「スケールとモードは100パーセント。ここ10年ぐらいでトリルやスライドが自分の演奏に組み込まれたから、何を弾いても東洋の楽器のように聴こえてしまうんだ。それが今の僕の弾き方なんだ。でも、右手のテクニック、たとえばドンブラやドゥタールのテクニックは、ギターにはできないんだ。不思議なもので、ドンブラやドゥタール、あるいはサズを2、3時間弾いた後、ギターを手に取り、演奏できる状態になると思っていたのに、まるでまだ全然弾いていないかのようなんだ。まったく違うんだ。
フュージョンをうまくやるには、フュージョンしようとしている音楽の内側に入り込む必要があると思う。僕はトルコやペルシャの音楽を忠実に演奏することができる。そうやって、まずは正しい方法で音楽の言語を学び、それから自分の目的に向かうのが大切だと思う。
インド音楽を勉強していたとき、ちょっとブルージーな感じで弾いたら先生がすごく怒ってね。それが僕を変えた。よし、学ぶときは正しい方法で学ぼう。それから離れて演奏するときは、好きなようにやればいい。でも、それは分けて考えるんだってね」

伝統的な演奏方法と、CONSIDER THE SOURCE での解釈方法とは、明確に区別しているということでしょうか?
「伝統的な奏法について本当に研究しているのは、バンドで僕だけだからね。僕はバンド・メンバーのためにメロディーを弾き、彼らには自分のパートを書いてもらう。ふたりとも優れたミュージシャンだから、それぞれの持ち味を出してほしいんだ。例えば、ドラマーはダルブッカで育ったトルコ人じゃない。彼はドラムセットで素晴らしい演奏をする西洋人なんだ。彼はトルコのリズムを聴いて、それに合わせて自分なりの素晴らしいことをする。僕たちは決して伝統音楽をやっているわけではないからね。僕は伝統音楽を勉強しているけど、僕らはフュージョン・バンドなんだ」
CONSIDER THE SOURCE は変拍子も独特です。バンドが変拍子をダンスに適したリズムに分割する方法は、バルカン音楽にインスパイアされているのです。
「最初に変拍子を理解し始めたのは、DREAM THEATER の曲とか、わざと変拍子にしてあるようなプログの曲に合わせて演奏していた時だった。それからバルカン音楽を弾き始めて、深く衝撃を受けたんだ。装飾音やトリルなど、すべてが魅力的で、”よし、これこそが9拍子の曲だ” と思ったんだ。でも、ライブを観に行くと、バブーシュカを着た老女たちが踊っている。どうやって9で踊るんだ?どうやって11と7で踊っているんだろう?”と思うだろ?でもそれは、音楽が小さなグループに分かれているからできることなんだ。だから、僕はすべての音楽を小さなグループに分けるようにしたんだ。もう変な感じはしないね。バルカン半島の伝統的なダンス曲を5つのグループに分けて演奏するんだけど、何人かの人たちは、気にすることもなく、ノリノリになるんだ」

フレットレスを弾くときは、音名のない特定の微分音を意識しているのでしょうか?
「とても具体的だよ。微分音にはさまざまな伝統がある。例えば、トルコの伝統とアラビアの伝統はまったく違う。トルコ音楽でマカーム(伝統的な音程とそれに付随する旋律図形)を演奏する場合、第2音をある程度フラットにする。アラブ音楽でそれを演奏する場合は、別の程度までフラットにする。イントネーションは、僕が演奏中にとても意識していることだよ」
ワーミー・バーの叩き方にもこだわりがあるのでしょうか?
「イエスでもありノーでもある。あるときは、ただヒラヒラさせたり、叩いてみたりして、何が起こるか確かめたくなる。ワーミー・バーは本当にワイルドカードだ。音を出した後にギターを操作する余地がたくさんある。だから、そういう面は意識している。バーを使えば、自分の好きな音程に正確に曲げられるだけでなく、クールなこともできるはずだ」
Marin の演奏は、ペダルボードの上でダンスを踊ると評されます。
「10代の頃はペダルをいじるのに多くの時間を費やした。僕は大のSFオタクなんだ。ギターを弾きたいと思うようになったきっかけのひとつは、父に連れられてサム・アッシュ (ギターショップ) に行ったとき、フェイザー・ペダルを見たことだった。何これ?フェイザーだ!って。だからオタク音楽という側面は、僕にとって大きなものなんだ。クレイジーなSFサウンドが大好きなんだ。フリージャズも大好きだった。サックスで20分間、男たちがイカレた音を出すのを聴くのが好きなんだ。CONSIDER THE SOURCE ではあまりそういうことはできないけど、ペダルを使ってクレイジーなサウンドスケープを作るのが大好きなんだ。
そして僕らのアルバムにはキーボードがない。いつも “誰がキーボードを弾いたの?”って聞かれるんだ。誰もキーボードは弾いていない。僕はMIDIギターを使っている。ペダルは何十万も使う。リハーサルは、”この小節の3拍目にこのペダルを踏み、4拍目にこのペダルを踏み、次の小節の下拍にこのペダルを踏む “という感じだ。Axe-Fxとか、ボタンを1つ押せばすべてが変わるようなものは使わない。オン・オフしたいときは、ひとつずつやるんだ。このペダルを踏んで、スプリングが外れて、このペダルにジャンプする、というポイントがいくつかあるんだ。見た目はかなり面白いね。
EBowもよく使うし、KORGのKaoss Padもスタンドに置いてある。僕の周りには17台のペダルがある。ネックも2つあるし、スイッチも10億個ある。音楽の中で最も意識しなければならないのはそういう面だ。演奏は心から生まれるものだけど、そのためには意識的な思考が必要なんだ」

楽曲とソロに対するアプローチは変えているのでしょうか?
「曲の構成はほとんど変わらない。でも、ジャムになると、意識的に違うものにしようとするんだ。例えば、昨夜は高い位置からソロを始めたと記憶していたら、次の晩は低い位置から始める。前の晩にすごく良いものをやったとしたら難しいよ。”最高だった、もう一回やってみよう” と思うのは簡単だ。でも僕はその逆をやるようにしている。ひどいソロを弾くかもしれないけれど、ゼロから即興で始めたほうがいい。即興演奏をしていると、そういうこともある。でも同時に、それは必要なことなんだ。次の夜には、そのおかげで素晴らしい演奏になっているかもしれないからね。知っていることを演奏して成功するよりも、挑戦して失敗する方がずっといい」
CONSIDER THE SOURCE の音楽は世界中の多様な聴衆に届くはずです。
「ボーカルなしの長い曲を変拍子でクレイジーに演奏するんだ。僕たちのやることはすべて、新しいバンドを目指す人にするアドバイスとは正反対。その点、僕たちはちょっと頭が固いけど、自分たちのやっていることは多くの人に届く可能性があると本当に信じている。他の国に行って、あまり関係がないかもしれない他の国の音楽を演奏すれば、きっと気に入ってもらえると信じている。
初めて海外に行ったときのことを覚えている。イスラエルとトルコに行ったんだけど、そのときは外交問題で揉めた直後だった。イスラエルで、トルコでライブをすると発表したんだ。彼らはブーイングを浴びせたが、その後トルコの曲を演奏したら、彼らは熱狂した。そしてトルコに行って、イスラエルから来たと言ったんだ。ブーイングだった。それからクレズマーの曲を演奏したら、みんな大喜びだった。みんなが音楽を愛してくれた。そういうものなんだ。僕らの観客は老人、若者、いろんな人種、メタル・ヘッド、ジャム・キャットなど、超混ざり合っている。それを見るのが本当にうれしいんだよ」


参考文献: GUITAR WORLD:Gabriel Akhmad Marin: “I don’t play many chords. I’m more of a melodic single-note player, and the fretless guitar is a great instrument for that”

PREMIER GUITAR:Tao Guitar: Gabriel Marin

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【UNDEATH : MORE INSANE】 JAPAN TOUR 24′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXANDER JONES OF UNDEATH !!

“Anthrax – Fistful of Metal Is a Pretty Obvious Inspiration Here!”

DISC REVIEW “MORE INSANE”

「僕たちは非常にグロテスクでタブーなことを歌っているけど、皮肉混じりで、ユーモアがあり、舌を巻くような態度でそのテーマを扱おうととしているのさ」
アンデッドの進撃、悪魔のような賞金稼ぎ、殺人、恐ろしく失敗した倒錯的な人体実験、血の涙を流して泣き叫ぶ死者、そして殺人(再び)。ドラマーの Matt Browning の手による狂気のジャケット・アートを抱いた狂気より狂気な “More Insane” で、UNDEATH が “Lesions Of A Different Kind” で始めたグロテスクな3部作は終わりを告げます。
「”More Insane” のアートワークはタイトル曲の歌詞にインスパイアされたもので、サビに “My head/a catacomb” “俺の頭はカタコンベ” という一節があるんだ。ANTHRAX の “Fistful of Metal” は、かなり強烈で明らかなインスピレーションだよ!」
UNDEATH がオールドスクール・デスメタルをリバイバルするバンドの中でも際立っているのは、彼らがデスメタルの中にあるユーモアやグロテスクを深く抱きしめ、理解している点でしょう。例えば、CANNIBAL CORPSE のアートワークやリリックが発禁ものの悍ましさを宿していても、巨首のフロントマンはクレーンゲームでぬいぐるみを集めて子供たちに寄付しています。
つまり、デスメタルの中の内臓やゾンビに血飛沫はホラー映画的な空想の世界であって、お化け屋敷のようにはしゃいで楽しむべきもの。むしろ、暗い現実を忘れられる逃避場所のファンタジー。”インターネット音楽オタク” である UNDEATH の面々は、特にその “シリアスでありながらシリアスでない” デスメタルの長所をあまりにもよく理解していて、地獄の音楽をポジティブに奏でる天才なのです。
「僕たちは皆、単純にこのバンドをできる限り遠くまで、ビッグになるまで運ぶことを目指しているんだ」
そのポジティブな哲学は、UNDEATH の楽曲にまで深く浸透しています。CANNIBAL CORPSE, MORBID ANGEL, AUTOPSY といったデスメタルの礎石に敬意を表しながらも、彼らはよりキャッチーで口ずさめるデスメタルを目指しています。インディ・ロックの達人 Scoops Dardaris とのコラボレーションもその一貫。そしてなにより、リード・シングル “Brandish The Blade” を聴けば、そこに JUDAS PRIEST や IRON MAIDEN といった古き良き “アリーナ・メタル” の遺産を感じるはずです。
実際、彼らはこのアルバムで、”70年代半ばから現代までのメタルの道のりをなぞる” 旅を目論んでいました。その理由は、より多くの人に UNDEATH のデスメタルを届け、より多くの人に楽しい時間を過ごしてもらうため。ダークで抑圧的な雰囲気を作り上げるメタル・バンドは少なくありませんが、彼らはこのニッチなジャンルに対する期待を遥かに超えたメタルの共同体に訴えかけ、より祝祭的な “Fun” なメタルを創造したいのです。
その試みはどうやら成功を収めたようです。そうして UNDEATH は、前人未到 “More Insane” のアリーナに到達するデスメタルをいつか手中に収めるでしょう。
今回弊誌では、フロントマン Alexander Jones にインタビューを行うことができました。「ビデオゲームといえば、UNDEATH という名前は実は Skyrim のMODから来ているんだ。僕らのデスメタル同様、楽しくて、キャッチーで、印象に残る名前だと思ったからね」 どうぞ!!

UNDEATH “MORE INSANE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ANCIIENTS : BEYOND THE REACH OF THE SUN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KENNY COOK OF ANCIIENTS !!

“Opeth And Mastodon Are Amazing Bands And Are Clearly The Benchmark For Progressive Metal In Todays Perspective.”

DISC REVIEW “BEYOND THE REACH OF THE SUN”

「ANCIIENTS を結成した当時、僕はちょうど OPETH と MASTODON を発見したところで、彼らがやっていることに本当にインスパイアされたんだ。両者とも素晴らしいバンドで、現代的な観点から見れば明らかにプログレッシブ・メタルのベンチマークだからね」
OPETH と MASTODON。まさにモダン・プログ・メタルのベンチマークであり、雛形とも言える両雄の完璧なキメラとして生を受けた ANCIIENTS は、デビュー作 “Heart of Oak” からプログ・メタルの未来という評価を確固たるものとします。時は Bandcamp 戦国時代。INTRONAUT や WILDERUN, CALIGULA’S HORSE といった次世代を担うプログ・メタルの新鋭が鎬を削った10年代前半においても、ANCIIENTS の描く複雑の青写真と存在感は群を抜いていました。あの Bandcamp の音とアートワークの海の中で、彼らの作品を覚えていないディガーなどモグリでしかありません。そして16年には、地元カナダのグラミーと言われるジュノー賞を獲得。プログの “古代” と現代を巧みに融合する彼らの未来は約束されたように思えました。
「一連の不幸な出来事に直面し、音楽活動から身を引いていたんだよね。家族の深刻な健康問題、バンド内のメンバーチェンジ、そしてコヴィッド。この3つが、長期の活動休止の理由だった」
しかし彼らはさながら古代のロスト・テクノロジーのように、突如として沈黙し、休眠期間に入ります。8年という長い不在の間に、ライバルたちはメジャー・レーベルへと移籍。しかし、ついに復活を遂げた ANCIIENTS の音楽は決して名を上げた彼らに劣ってはいません。むしろ、8年という沈黙は、そして痛みは、ANCIIENTS の音楽をさらなる高みへと押し上げました。
“Beyond The Reach of The Sun” 制作のために戦い抜かなければならなかった試練や苦難(家族の病気、メンバーの交代、転居、パンデミック)を知ることで、このアルバムには感情的な重みが加わります。フロントマン Kenny Cook が逆境を乗り越えてきた年月があったからこそ、このアルバムは不確実で、孤独で、恐怖の長い夜が明けて勝利の夜明けを迎えたような印象を与えるのでしょう。
「面白いことに気づいたね!ここ数年、ALICE IN CHAINS, SOUNDGARDEN など、あの時代の曲を聴き直しているんだ。ギターを習っていた頃は、そうしたバンドの大ファンだったし、ミュージシャンとしての僕に大きな影響を与えてくれたからね」
特筆すべきは、Kenny がこの作品でさらに、自らの原体験、ルーツへと回帰した点でしょう。リード・シングルの “Melt the Crown” では、1本でも2本でもなく、3本のギター・ソロが飛び出しますが、そのひとつひとつが、フォークからサザン・ブルース、サイケデリック・プログまで、独自のテイストを持っています。MASTODON の哲学と70年代が煌めくこの楽曲において、響き渡るは Mikael Akerfeldt の陰を帯びた美声、そして Jerry Cantrell の陰鬱なコーラス・ワーク。
そう、私たちはグランジとメタルをとかく別のフィールドに置きがちですが、確実にその垣根はつながっています。”Beyond The Reach of The Sun” は、90年代から00年代を駆け抜けた ALICE IN CHAINS, OPETH, MASTODON の連続性と類似性を見事に実証したレコードだと言えるでしょう。
そう、アルバムのテーマは “Wisdom”、”叡智”。これは異次元からの力によって奴隷化された社会の物語。思考が停止するやいなや奴隷化されてしまう世界で今、最も必要な洞察力や叡智を養えるプログ・メタルの有用性も、彼らは同時に証明してくれたのです。
今回弊誌では、Kenny Cook にインタビューを行うことができました。「当時は、特にプログレッシブ・ロックのジャンルにおいて、多くの実験が行われていた。KING CRIMSON, YES, CAMEL, PINK FLOYD, Alan Persons Project は、何らかの形で僕らのサウンドに大きな影響を与えた。同時に、JUDAS PRIEST の古いレコード、THIN LIZZY、そしてもちろん DEEP PURPLE も同じようなテイストを持っているが、よりハード・ロックのジャンルだよね」 どうぞ!!

ANCIIENTS “BEYOND THE REACH OF THE SUN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INVASION : 2】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH INVASION !!

“When You Come To a Live Show It Is Our Duty Make You Forget Everything Else And To Have The Best Time In Your Life Whether You Are Crowd Surfing In Just You Underwear Or Standing In The Corner Listening.”

DISC REVIEW “INVASION 2”

「僕にとってハードロックとは、世界の暗黒面からの脱却と解放を意味するものだ。団結してひとつになれる。僕にとってはスピリチュアルなものなんだ。ライブに来たら、下着一枚でクラウド・サーフィンをしていようが、隅に立って聴いていようが、他のことはすべて忘れて人生で最高の時間を過ごしてもらうのが僕らの義務なんだ」
努力、友情、勝利、そして愛。少年ジャンプを地で行くようなメロディック・ハードが忘れ去られて長い年月が経ちました。予想通り、見事に MANESKIN を抱き込むことに大失敗した日本のメタル寄りハードロック陣営。せっかくのチャンスを棒に振って、無垢なる若者たちにメロハーの伝導という名の刷り込みもしくは洗脳を果たすことができなくなったその罪は重く万死に値します。何より、これまで、ロキノンに至宝を渡して世界が良くなったことなど一度もないのですから。
とはいえ、下を向く必要はありません。明けない夜はなく、やまない雨もありません。そう、音楽シーンは胎動するサークル。つらい現実をすべて忘れ、解放され、下着いっちょでアホになり、みんなでひとつになれる。努力、友情、勝利、そして愛が求められる時代に、メロハーの救世主が降臨するのはある意味必然でした。TNT で幕を開けたノルウェーのポップで少し歪なセンスを胸いっぱいに吸い込んだ INVASION は、その名の通りこの暗い世界を情熱と活力、そして至高のメロディで侵略するのです。
「僕は自分の心と魂から来る音楽を作っている。メロハーを作ることは決して選択ではなかった。作曲するときに自然に出てくるものなんだ。それが僕なんだからしかたがないよ。 自分のために、本当にやりたい音楽を作ることが大切だと思う。いわば、ジャンルに自分を選ばせるんだ」
重要なのは、彼らが情熱と魂で音楽を作っていることでしょう。Tony Harnell, Joey Tempest, Goran Edman といった北欧の声を見事に受け継いだ (Tonyはアメリカ人だが?!) Jørgen Bergersen は空っぽの頭で “セクシーな気分だ!” と叫び、この “欲望のジャングル” で “燃え盛る猿” になったと陳腐な告白をし、わざわざ “まだセクシーな気分だ!” と念を押した後、エッジーで華やかなギターソロが意味もなく宙を舞っていきます。すべてが小手先で、頭で、テクニックで、正しさで加工されるようになった音楽世界で、しかし彼らのこの無秩序はあまりにも魅力的。
「カミソリのように鋭いメタルからノスタルジックなシンセウェイヴまで、両極端の音楽を聴く。気分次第かな。それらのジャンルを融合させた人を見つけるととても面白い。INVASION の音楽にシンセの世界全体を取り入れるのが好きなのも、同じ傾向かもしれない。新鮮だし、サウンド的にできることの可能性が広がるからね」
とはいえ、彼らはもしかすると演じているだけなのかもしれません。80年代のクラシックなハードロックとコンテンポラリーなサウンドを巧みに組み合わせ、時にはAORに、時にはヘヴィ・メタルに、ハーモニーとシンセの海に溺れさせる彼らの音楽は、実は非常に巧みに考慮、設計されていて、あの THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA の登場と同じくらいの衝撃と期待感をもたらしてくれます。
たしかにこれはノスタルジアで、蛇足で、老人のエゴなのかもしれません。それでも、この美しいジャンルと、そこにあるあけすけに愛や情熱を叫ぶ少年ジャンプのファンタジーがもう少し抱擁されれば世界はほんの少しだけキラキラと変わるのでは…そう思わざるを得ないほど INVASION の音楽は輝いているのです。
今回弊誌では、INVASION にインタビューを行うことができました。「日本はスバラシイです!実はDuolingoで日本語を学ぼうとしていた時期があったんだ。本当に難しいから、一旦中断したんだけどね。”ワンパンマン” も全シーズン日本語で見ているよ。RPGシリーズのファイナルファンタジーも忘れてはいけない。僕のお気に入りはFF7とFFXだ。もっとたくさんしゃべって100%のオタクになりたいけど、このへんで」どうぞ!!

INVASION “2” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【MARCIN : DRAGON IN HARMONY】


COVER STORY : MARCIN “DRAGON IN HARMONY”

“The First Thing, Which Is Pretty Accessible For Any Guitarist, Is To Learn Tapping With Your Left Hand So That You’re Able To Produce Melodies And Basslines Very Clearly, Without Weird Overtones. It Frees Up Your Right Hand To Do a Bunch Of Fun Stuff.”

DRAGON IN HARMONY

フラメンコ、クラシックの世界から登場したギター・センセーション、Marcin Patrzalek は、デビュー・アルバムを世に放った時点ですでに何百万人ものファンが彼の才能に畏敬の念を抱いているという驚くべき存在です。そう彼は今、”エレキ・ギターの大物” たちから脚光を浴びながら、”アコースティック・ギターの未来” を披露しようとしているのです。
ポーランド生まれの24歳、Marcin はその若さにもかかわらず、すでに世界を股にかけて活躍し、アコースティック・ギターの新たな可能性を推し進めています。彼のデビュー・アルバム “Dragon In Harmony” は、クラシックで鍛えた左手とフラメンコをベースにしたストラミング、そして器用なパーカッシブ・テクニックが織り成す、ジャンルを融合させた妙技で大きな話題を呼んでいるのです。
17歳の誕生日を迎える前にポーランドとイタリアのTVタレントショーで勝利を収めた Marcin は、2019年に “America’s Got Talent” の準決勝に進出し、さらに多くの視聴者を獲得しました。数々のバイラルと成功を通じて、彼はすでに162万人のYouTube登録者を獲得しています。
LED ZEPPELIN の “Kashmir” のDADGADストンプ、ベートーベンの “月光” のロマンチックなメロディー、SYSTEM OF A DOWN の “Toxicity” におけるメタリックな激情。彼のカバー・ソングは2000万ビューを超え、同時にオリジナル曲も想像力をかきたてる魅力的な世界観を誇ります。
Marcin は、Tim Henson や Ichika といったモダン・ギター・シーンの “ビッグ・ボーイズ “たちがやっていることを見て、この楽器に対する人々の認識を再定義し、アコースティック・ギターがエレキ・ギターと同じくらいクールでありうることを証明したいと考えているのです。

「僕のゴールは、ミュージシャンやギタリストだけでなく、世界中にパーカッシブ・アコースティックが次の大きな流行になると示すこと。
これはメインストリームや一般大衆が注目するに値するもので、まだ多くの人が見たことも聞いたこともないものだからね。だから僕の曲は、”Snow Monkey” のように、ヒップホップ、ラテン、レゲトンの影響を受けた、よりメインストリーム向けのものなんだ。実験的な演奏と、メインストリームで親しみやすいものとの融合…。
アリアナ・グランデのようなサウンドになるとは言っていない。でもそれはギター界に欠けているものかもしれない。僕は実験的でニッチな音楽が大好きだけど、パーカッシブなギターは何にでも入れられるということをみんなに知ってほしい。こういった様々なサウンドやアプローチを使うことで、一般の人たちに、これが次の大きな流行になることを理解してもらえるはずだ!」
若手のギタリストはもちろんのこと、Steve Vai, Tom Morello, Jack Black といった大御所たちも皆、 Marcin のギタリズムには驚きを隠せません。2022年にギター・ワールドが彼を “同世代で最も才能あるギタリストのひとり” と称賛したのも決してフロックではないのです。
Marcin にとって、この数年は実にワイルドな日々でした。SNS のアカウントでファースト・ネームだけを名乗り、クラシック・ギターの頂に上り詰め、その世界では事実上他に類を見ないクロスオーバーの成功を収め、実写版 “One Piece” にも楽曲を提供。最近では “成功した” ことの最大のシンボルである彼自身のシグネチャー・ギターを手に入れました。

Marcin の特徴は、自分のギターを時にドラムセットのように扱いながら、叩いたり、ピッキングしたり、スクラッチしたりするアプローチでしょう。
このアプローチは、実際の音楽と同じかそれ以上に視覚的な派手さが重要視される現在の音楽業界の潮流において、Marcin を際立たせました。例えば、彼のSpotifyの月間リスナーは8万2000人弱ですが、YouTubeのチャンネル登録者数はその10倍近く、Instagramのフォロワー数は100万人を超えています。クラシック音楽界の多くを支配する伝統主義的な考え方を考えると、その成果は特に印象的。
「クラシック・ギターは、他の人、特に古い世代のクラシック音楽家を模倣することが多い。だから僕は、可能な限りワイルドなことをやりたかったし、それがこのスタイルに結実した」
そして Marcin は、そのスタイルをより多くの聴衆に伝える機会を十分に得ています。2年連続で、Jared Dines によるホリデーシーズン恒例のシュレッド・コラボレーションに参加し、Matt Heafy, Jason Richardson, Herman Li といったエレクトリックの巨匠たちとともにアコースティックでシュレッドを刻みました。また最近では、日本が誇る Ichika とのチームも注目を集めています。彼がこれまでに共演したギタリストの多彩さは、ギター界が今いかに健全であるかを物語っていると Marcin は誇ります。
「もはやポップスやロックが支配的な力ではなくなっているため、ギター・プレイヤーたちは “より折衷的で特異な” 演奏方法に引き寄せられている。そうしなければ、自分の居場所はないからね。
私はすべてを違うサウンドにしようとする、 たとえそれがインスタグラムの1分間の動画であってもね。
それが今の音楽のクールなところなんだ」

IbanezのMRC10は、20フレット全てに手が届くディープ・カッタウェイ、フィッシュマン・プリアンプ内蔵、そしておそらく最も重要なのは、Marcin 独特のパーカッシブなボディ・タッピング奏法を強化するためにデザインされた強化ウッド・プレートでしょう。
「ストラップを自分に巻けば、ギターを持ってステージを走り回ったり、飛び跳ねたりできるギターなんだ。このギターがあれば何でもできる。
僕はパーカッシブ・プレイヤーとしては、かなりユニークな立場だ。ソニー・ミュージックという大きなレーベルにいて、何百万人もの人が僕の名前をオンラインで知っている。だからこそ、自分ができることの全領域を見せたいんだ。このアルバムは、モダンなパーカッシブ・ギターがどのようなものであるかというヴィジョンと、今現在の自分の立ち位置を忠実に表現したものなんだ」
そんな Marcin のバックグラウンドは純粋にクラシック。10歳から勉強を始めたと彼は言います。
「ギターを手にしたのは10歳のとき。クラシック・ギターだったんだけど、この世界では、10歳というのは始めるにはちょっと遅いんだ。クラシックのヴァイオリン奏者を見ると、普通は4、5歳で始めている。僕がクラシックを始めたのは、父親が僕に何かやることを見つけてほしかったからなんだ。
音楽、特にメタルが好きだったのは10歳の頃。METALLICA はメタルで最初にハマる人が多い。父もロックが大好きで、僕に練習を始めさせたかったんだよね。
最初の先生は、大柄で風変わりな人だった。でも彼はとても率直で、とても協力的だった。彼は僕に完全なギターのヴィジョンを与えてくれたんだ。
練習が本当に楽しくて、普通は嫌がることだけど、そのおかげですぐに打ち込むことができた。正確な日付は覚えていないけど、父と先生から3ヶ月で最初のコンクールで優勝したと聞いた……初心者にしては超早いよね。10歳の大会だったんだけど、それからはすごくやる気が出たんだ。
それからの数年間は、僕にとって発展途上の日々だったが、徐々にクラシック音楽に、いや、他の人が何十年も何世紀も演奏してきたことをただ繰り返すことに、少し飽き始めた。クラシックのレパートリーでは定番中の定番で、学校の他の50人とまったく同じように弾くんだ。それで何が言いたいの?」

13歳のとき、”フラメンコのメッカ” バレンシアのフラメンコ教師兼大学教授、カルロス・ピナーニャにマンツーマンで指導を受けることになりました。
「ワークショップに参加したとき、先生は僕を見て “スカイプで教えてあげよう、少年” と言ったんだ。それは僕にとって大きな出来事だった」
そうして Marcin は5年間、家庭教師の指導を受け、その経験は彼の右手を大きく変え、その過程でクラシックとフラメンコ、2つの伝統的なスタイルを融合させることになったのです。
「クラシック・ギターはとても伝統的で、多くを語ることはできないが、その多くが音楽全般とギター演奏の基礎を形成している。フラメンコはそれほど厳密ではないけれど、それでも厳格なリズムやコンパス、ギターにおけるフラメンコ音楽とは何かという具体的な考え方がある。単なるアコースティック・ギターには制限がない。
アコースティック・ギターは焚き火を囲んで演奏することもできるし、誰も予想しないようなワイルドなこともできる。アコースティック・ギターに転向してからは、ネットで他のパーカッシブ・プレイヤーがやっていることを見たり、自分自身のクラシックやフラメンコのテクニックを取り入れたりして、自分の音楽をさらに進化させられると確信したんだ」
つまり、Marcin は伝統主義にはこだわっていません。Tommy Emmanuel との出会いによって、彼はパーカッシブな演奏の世界に足を踏み入れます。それは、何百年ものギターの歴史を否定することなく、アコースティックに現代的なエネルギーを注入するための、パズルの最後のピースとなったのです。
「Tommy Emmanuel はアコースティック・ギターの伝統的な道を歩まない人たちが世界にいることを教えてくれた。それはとてもニッチだった。でも、僕はアウトサイダーになりたかったんだ」

クラシックをコンテンポラリーに聴かせるための秘訣はあるのでしょうか?
「例えば、僕はメタルを聴いたときに、Djent のブレイクダウンを聴いてインスピレーションを受ける。それがすべて僕のアプローチに反映されているんだ。Paco De Lucia は僕の最大のアイドルの一人で、彼の音楽からはたくさんの激しいテクニックや信じられないようなことが聴き取れる。Tommy Emmanuel もその一人で、若い頃は毎日、時には1日に2本もビデオを見ていたね。とはいえ、誰かのモノマネをすることは決してなかったよ」
クラシックといえば、メタルの世界にも Yngwie Malmsteen のような “クラシック奏者” が存在します。
「僕の考えでは、すべてのジャンルは一緒に混ざり合うことができる。多くのメタルはクラシックやシンフォニック・ミュージックから引用している。Yngwie はパガニーニから多くのことを学び、それらを自然に組み合わせることができたからだ。メタルのテクニックや和声構造は、特にパガニーニを見ると、クラシックに非常に近いものがある。
また、ANIMALS AS LEADERS のようにジャズのアイデアを多く取り入れたバンドでも、和声的な類似点はたくさんある。それは、もし彼らがディストーションやよりヘヴィなドラム・ビートを使わなければ、もっと明白になるのかもしれないね。
それから、CHON のようなバンドもある。彼らはドラムとリズムを取り除けば、ジャズやクラシック音楽に近い。だから、どのステップを踏んで、どのように枝分かれしていくかがすべてなんだよね….」

その独特なパーカッシブ・スタイルのアコースティック・プレイを習得するための最初のステップはどんな方法が適しているのでしょうか?
「どんなギタリストでも簡単にできることだけど、まずは左手のタッピングを覚えて、変な倍音を出さずにメロディーやベースラインをはっきり出せるようにすることだね。そうすれば、右手を解放していろいろな楽しいことができるようになる。左手だけですべてを演奏できるようになれば、自由な右手で可能性は無限に広がるんだ。左手でアストゥリアス(イサーク・アルベニスの曲)のベースラインを弾いて、右手をどう使うかはプレイヤーの想像力次第だ。
左手は低音弦をちょっと叩いて、それを鳴らすだけでいいんだ。右手については、まず弾きやすい曲を見て、なぜそうなるのかを理解し、メトロノームを使ってゆっくり弾くようにした。
人は練習しているときにいつしかメトロノームのことを忘れてしまい、答えは明白なのになぜうまくいかないのかと疑問に思う。僕のフラメンコの先生は、メトロノームはトイレにまで持って行けと言っていたよ!」
Marcin のスタイルを習得するためには、マルチタスクが得意であるべきなのでしょうか?
「正直なところ、人間がマルチタスクをこなせるとは思っていない。僕たちの脳はそういう仕組みになっていないと思う。意識的に2つのことを同時にこなすことはできない。もし僕がギターを弾きながら君に話しかけられるとしたら、それは僕が長年かけて鍛え上げたマッスルメモリーを駆使しているだけで、僕はただ自分が話していることに集中し、ギターは筋肉が覚えているんだよね。
だから、普段は左手が何をしているかなんて、脳内のシナプスは少しも考えていない。僕が考えているのは右手のことで、右手はより複雑でエキサイティングなリズムを刻んでいる。
一方で、右手がキックドラムのパートを演奏しているだけなら、左手に集中する。それは脳のスペースを空けることであって、分割しようとすることではないんだ。音楽は全体であって、別々のレイヤーの束ではないからね」

ギターのボディからさまざまな音を出すためのコツはあるのでしょうか?
「多くの人はドラムセットのようにアプローチするけど、重要なのは右手のどの部分を使うかだ。手首でボディを叩けば、どこを叩いてもとても低い音が出る。それがキック・ドラムになるんだ。
一方で、人差し指と親指でボディをL字型に叩くと、ムチのような動きになって、キックと同じところを叩いても、スナッピーでタイトなスネアができるんだ。
また、ナットから先の弦を叩けば、キメのいいシンバルになるし、爪でギターのボディを引っ掻くこともできる。
大きな違いはギターの側面だ。ここで最も一般的なのは、リムをかすめてサウンドホールに向かう方法だ。これは非常にキレがいいし、音も大きい。作曲をしていると、ちょっとした隙間(のようなもの)が見えてくるから、そういうテクニックを使えばそれを埋めることができる」
では、ドラムキットの感覚どの程度忠実に守っているのでしょう?
「アレンジを始めるとき、実はドラム・キットのことは考えないんだ。だからライブではドラマーと一緒に演奏するし、アルバムではカホンやさまざまなサンプルとのレイヤリングを多用している。すべてをギター・パートで代用するのは傲慢だ。ドラマーとパーカッシブスタイルのアコースティックな演奏をすることを誰も止めないよ」
弦ではなく、ギターのボディにラスゲアード (複数の指を使って弦を掻き鳴らすフラメンコのテクニック) を使うこともあります。
「あれはフラメンコの直接の影響なんだけど、僕がよくやるからネットで自分のパロディをよく見かける!薬指、人差し指、親指、または薬指、中指、人差し指という動きで、スネアを叩くようにボディを叩くんだ。右手のストラミング・テクニックをパーカッシブな演奏に取り入れるのが好きなんだ」

ソロ・ギターでバンド演奏をカバーするには、必ず取捨選択が必要です。
「ソロ・ギターのためのアレンジを始めようと思っている人は、最初は原曲をミラーリングしてみるといい。異なるパートや楽器が何をやっているのかがわかるだろう。それはかなり直訳的なものになるだろうが、もちろん自分ひとりですべてをこなすことはできないので、いくつかの犠牲を強いられることになる。
でもね、そうやって曲をカバーするのは、しばらくすると、とても芸術的ではないことに気づいた。僕はまるでCDプレイヤーとして生きているようなものだった。
だからソロ・ギターの限界を克服するクールな方法を見つける必要がある。結局、曲を完璧に再現しようとするのをやめて、音楽に新しい命を吹き込もうとした。今は、何かをアレンジすると決めたら、特にすでによく知っている曲はあまり聴かない。カバーするときにオリジナルを尊重する必要はないと思う。
むしろ、カバーにおいても “オリジナリティ” が大事なんだ。同じ音楽を違う頭脳と心で演奏するのだから。だから、僕の “Cry Me A River” のカバーには、ブラジルのボサノヴァのセクションが全部入っているんだ。メロディーを上に持ってくるまでは、オリジナルとのつながりはない。実験するのは自由だ」
右手で指板の上をタップすることも少なくありません。
「実用的なんだ。僕の右手は特によく動く。流動性を保つために円を描くように動かすので、いつも自然に手が戻ってくるんだ。だから、両手でタッピングするのは実用的だし、スクラッチパッドも17フレットあたりから始まるんだ」
このスタイルでは、オープンチューニングを使用するプレイヤーが多いといわれています。
「僕もオープンチューニングが大好きなんだけど、今まで誰もやったことがないようなセミ・オープンチューニングを試しているんだ。これは “Classical Dragon” と “I Don’t Write About Girls” で使ったチューニングで、B5スタンダードと呼んでいるんだ。
低音3弦はB5コード(B F# B)、そして上弦はスタンダード(G B E)。上の弦はおなじみだからアドリブで自由に弾けるけど、そのあと低音弦は地獄のように肉厚で、Animals As Leaders のベース・サウンドだって作ることができるんだ」

“Classical Dragon” といえば、POLYPHIA の Tim Henson がゲスト参加して見事なプレイを披露しています。
「”Classical Dragon” は実はとても古い曲なんだ。2020年頃に書き始めたんだ。その頃の僕の目標は、フィンガースタイルの枠を飛び出して、エレクトリック・プレイヤーの真似をすることなく、彼らと手を組むことだった。僕の世界では誰もそういうことに挑戦していなかった。Tim はインスタグラムで僕をフォローし始めてくれたから、僕は “よし、どうやって彼を曲に誘おうか?” と思って、彼を意識して書いたんだ。
POLYPHIA のトラップっぽいハイハットが多かった。Tim にこの曲についてメッセージを送ったんだ。彼はすぐに返事をくれて、”これは素晴らしい、一緒に何かやろう!”って言ってくれたよ。
彼が送ってくれたパートは素晴らしかった。彼がこれまでやってきたこととはまったく違っていて、それに触発されて、より Marcin らしい曲にしようと思ったんだ。その後、何度も作り直したよ。彼がやっていることには本当に畏敬の念を抱いているので、彼がこの曲に参加してくれたことは信じられない経験だった」
この曲ではタッピングを多用しています。
「成長した複雑なアプローチなんだ。クラシックの曲は特に、ハーモニーという点ではかなり肉付けされたものになる。だから僕のタッピングは典型的な意味でのアルペジオではなく、コードの輪郭を描くのが普通でね。通常、ステップを踏んだり降りたりはしない。開放弦もたくさん使うよ。
左手でタッピングしながら、右手の指を1本か2本使えば、残りの指で開放弦を弾くことができる。突然、たくさんの音が鳴り響くハープのような構造を作ることができる。
パガニーニのカプリス24番を演奏したときに、よりゆっくりした、より開放的な変奏があるのがわかるだろう。基本的に、僕はこれらの下降音階を演奏しようとしたけど、できるだけ多くの音が鳴り響くように演奏したんだ。レガートでバタバタと弾くような感じがいいんだ。僕はこれをやるのが大好きでね」

両手タップに最も影響を与えたプレイヤーは誰なのでしょう?
「Michael Hedges について、ギターを始めた当初は知らなかったけど、このスタイルをやっている人はみんな彼を知っている。彼はこのスタイルのOGだ。80年代から90年代にかけて、彼は本質的に今起こっていることの青写真を作ったし、それは今でも発展し続けている。彼は悲劇的な早すぎる死を遂げたよね…
僕は彼から直接何かを学んだわけではないけど、間接的に大きな影響を受けた。そして、僕のアレンジをカバーしたり、僕のスタイルで演奏する人は、間接的に彼に影響を受けていることになる。彼のテクニックは誰をも超越しているし、まだ多くの人が彼のことをよく知らないから、彼のことに触れておきたかったんだ。
Mike Dawes も尊敬するプレーヤーの一人だ。僕が15歳のとき、彼はアレンジメントで爆発的に売れ始めていて、僕のスタイルに大きな影響を与えた。彼は今では私の友人で、インスタグラムで連絡を取り合っている。会えそうな機会もあったんだけど、Covidがそれを完全にぶち壊してしまった。彼は素晴らしい人だし、彼と知り合えて幸せだよ。
Jon Gomm も素晴らしい人だし、ミュージシャンでもある。彼は僕のスタイルに大きな影響を与えたわけではないし、また、彼はシンガーでもあり、それは素晴らしいことだが、僕自身は歌いたいという願望はないにしてもね。そうした人たちすべてがなんらかの影響を与えてくれた。だから僕は、メタルからフラメンコ、ヒップホップまで、どんなものでもアレンジに取り入れるよ」
パーカッシブな演奏にギターの種類は関係あるのでしょうか?
「でも、どんなアコースティック・ギターでもパーカッシブな演奏はできるよ。優れたパーカッシブ奏者なら、テイラー・スウィフトのギターでも僕のギターでも同じように演奏できる。
DIYで変えられるのは、弾き心地の良さだ。タッピング、特にゴースト・タップは音が大きくなるのでよくやるんだけど、ロー・アクションが絶対的な鍵になると思う。ロー・アクションだと鳴りが少ないから、きれいに弾きやすいんだ。
スクラッチパッドは最もわかりやすい付加物で、僕のIbanezのシグネチャーモデル MRC10 には非常に特別なもの(オイルフィニッシュされた無垢のシトカ・スプルース製)が使われている。ボディにスクラッチすることもできる」

ライブでギターを叩きすぎて、手が痛くなることはないのでしょうか?
「何かが当たってその場にとどまると、衝撃が長引くよ。でも、ちょっと叩いて手を離すだけなら、振動が発生するだけで、自分自身やギターを傷つけることはない。例えば、建物は常に振動している。日本はそうやって地震に耐えているんだ。
唯一の問題は、キック・ドラムを手首で叩くときで、振動が同じになるのが嫌だから、ギターのボディに少し長く置いたままにするんだ。ギターを傷める可能性があるけど、ブレーシングを補強するプレートを追加することができる」
Steve Vai も Marcin の才能を見出したひとりです。
「彼はギター界の光だ。彼は励ましてくれた…とても直接的に、徹底的にね。彼はとても明晰で、自分の意見やアドバイスをくれる。最近、彼は僕のLA公演にやってきて、バックステージで1時間も話をしたんだ。彼は僕が成功して、最高の自分になることを望んでいるんだ」
パーカッシブ・アコースティックを次の大きな流行にしたいと、Marcin は望んでいます。
「ここ2、3年で目にしたのは、フラメンコのパーカッシブをやっている人たちのカバーやアレンジのレベルが一気に上がったということだ。”Classical Dragon” が出てから、3日後にはネットでカヴァーがアップされるようになった。
だから今、このスタイルの聖火は多くの人に受け継がれつつある。クラシカル・フラメンコ的なパーカッシブな奏法が存在することを集団で理解するようになった。これはギミックではなく、ギターの世界を純粋にレベルアップさせるものなんだ」
若き天才は、さらに若い次の世代にどんなアドバイスを贈るのでしょうか?
「ピッキングがとても正確なプレーヤーがいる。僕はその一人だとは言えないし、下手なわけでもない。僕のスタイルでは、フレットを叩く手が常に支配的なんだ。どのプレイヤーも自分の長所を見極めるべきだし、みんなユニークな才能を持っている。
だから、できる限りそれを伸ばして、自分の音に磨きをかけることが重要なんだ。僕は世界最速のピッカーになりたいとは思っていない。
だからまず、好きな人全員のすべてを真似をしたり、すべてのテクニックを求めるのではなく、全ての基本をしっかりと身につけること。それは当たり前のことで、その上で、どれが自分のスタイルに響くかを見極めるんだ」


参考文献: GUITAR WORLD :“Classical-flamenco percussive playing is not a gimmick – it’s a level-up of the guitar world”: Steve Vai mentored him, Tim Henson lent him his talents, and now he’s invented his own “semi-open” tuning – Marcin is on a mission to redefine acoustic guitar

GUITAR WORLD :“Classical guitar is often about emulating other people, especially older generations – so I just wanted to do the wildest thing possible”: Marcin Patrzalek is reinventing the nylon-string for a new generation – and going viral while he’s at it

GUITAR WORLD :Marcin Patrzalek: “My goal is to show the world that percussive acoustic guitar should be the next big thing”

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SCARCITY : THE PROMISE OF RAIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRENDON RANDALL-MYERS OF SCARCITY !!

“NYC Is Also Objectively a Hard Place To Live – It’s Expensive, It’s Cramped, And The Infrastructure Is Constantly On The Verge Of Breaking – So The People That Stay Here Are Very Driven And a Little Crazy. I Think That Discomfort And Difficulty Also Feed Into The Sound And Ethos Of a Lot Of NYC Bands.”

DISC REVIEW “THE PROMISE OF RAIN”

「ニューヨークは客観的に見ても住みにくい場所だ。物価は高いし、窮屈だし、インフラは常に壊れかけている。だから、それでもここに滞在する人たちはとても意欲的で、少しクレイジー。その不快感や困難さが、多くのニューヨークのバンドのサウンドやエトスにも影響していると思う」
ニューヨークが現代の “アヴァンギャルド” なメタルにとって聖地であり、産地であることは語るまでもないでしょう。KRALLICE, IMPERIAL TRIUMPHANT, DYSRHYTHMIA. そして PYRRHON。ブラックメタルやデスメタルといった “エクストリーム・ミュージック” における実験を推し進め、アートの域まで昇華する彼らの試みは、明らかにNYCという “土壌” が育んでいます。
港湾を有し、人種の坩堝といわれる NYC。多様な人種が集まれば、そこには多様な文化の花が咲き、未知なる経験を胸いっぱいに摂取したアーティストたちの野心的な交配が活性化されていきます。物価の高騰や人口の密集、インフラの老朽化。NYC は必ずしも住みやすい場所ではありません。それでも彼の地に居を構え、アートに生を捧げる人が後をたたないのは、そうした “土壌” の肥沃さに理由があるのでしょう。
「正直なところ、僕らはみんなニューヨークのシーンで長い付き合いなんだ。Doug とは大学時代からの付き合いで、PYRRHON の最初のフル・アルバムからのファンなんだ。彼とは2016年の時点から一緒にプロジェクトをやろうという話をしていて、最終的に2020年に “Aveilut” になるもののMIDIデモを送ったら、彼が歌ってくれることになったんだ。
そんな NYC で、メタルとアヴァンギャルドの完璧なハイブリッドとして登場したのが SCARCITY です。マルチ奏者 Brendon Randall-Myers の落胤として始まった “希少性” の名を持つプロジェクトは、 NYC の同士 PYRRHON の Doug Moore の力を得て産み落とされました。デビュー作にして “Aveilut” “追悼” と名づけられたそのレコードは、パンデミックの発生による人と世界の死に対する “悲嘆の儀式” として、あまりにも孤独なマイクロトーナル・ブラックメタルとして異端の極北を提示したのです。
「僕たちは明らかに伝統的なブラック・メタル・バンドになろうとしているわけではない。でも、このジャンルには大好きなものがたくさんあるし、ブラック・メタルはこのバンドがやっていることの根底にあり続けると思う」
そうして到達したセカンド・アルバム “The Promise of Rain” で彼らは、さらに NYC の風景を色濃く反映しました。KRALLICE や SIGUR ROS, Steve Reich のメンバーが加わり、メタルとアヴァンギャルド、そしてノイズの融合に温かみと人間性を施したアルバムは、あまりにも雄弁で示唆に富んだブラックメタルの寓話。
ユタ州の砂漠を旅しながら恵みの雨を待った経験をもとに作られたコンセプトは、前作の悲しみから人生へとそのテーマを移し、困難に直面する人々や困難な地域における苦闘を、トレモロの噴火から火災報知器、ドローンにDJを駆使して描いていきます。たしかに、迷路のようですべてがポジティブな作品ではありません。それでも、少なくともこの作品は孤独でも引きこもりでもありません。われわれのいない世界から、SCARCITY はわれわれを含む世界へと戻ってきたのですから。
今回弊誌では、Brendon Randall-Myers にインタビューを行うことができました。「ゲームでは、コナミやフロム・ソフトウェアのゲームが大好きで、任天堂やスクウェア、スクウェア・エニックスの名作もたくさんやっているよ。最近 FFVII:Rebirth を終えて、今はエルデンリングのDLCをプレイしているんだ。
アニメは、あまり最新ではないけど、AKIRA やエヴァンゲリオン、攻殻機動隊、カウボーイビバップなどの名作を高校生の時に観ていて、最近ではデスノート、鋼の錬金術師、約束のネバーランド、進撃の巨人、風が強く吹いている、呪術廻戦などを観ているね。
バンドでは、G.I.S.M.、Gauze、Envy、Melt Banana、Boris、Boredoms、Ruins が好きだよ。読んで、聞いてくれてありがとうね!」どうぞ!!

SCARCITY “THE PROMISE OF RAIN” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【PRIMAL FEAR : THALIA BELLAZECCA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH THALIA BELLAZECCA OF PRIMAL FEAR !!

“Power Metal Is Like You Go Back To Childhood And Imagine Yourself Riding Eagles And Killing Enemies, Being a Hero Or Becoming The Dark Evil Guy That Wants To Conquer The World.”

PRIMAL FEAR

「PRIMAL FEAR だと、”Rulebreaker” は特に気に入っているアルバムだし、その中の “Bullets & Tears” という曲が特に好きな曲ね。バンドの中で私は本当に若いけれど、子供の頃にメタルが好きになった80年代、90年代のシュレッディなソロをもっと出したい。彼らの全アルバムに収録されているパワフルでヘヴィなパワー・リフはそのままにね」
Kiko Loureiro, Joe Satriani, Steve Vai, Guthrie Govan, Paul Gilbert, Andy Timmons, Marty Friedman, Jason Becker, Yngwie Malmsteen など、数え切れないほどのギター・ヒーローたちから多大な影響を受けた左利きのニュー・ヒロインは、イタリアの FROZEN CROWN で名を上げ、Angus McSix との共闘で刃を研ぎ澄まし、そうして遂に独パワー・メタルのベテラン PRIMAL FEAR へとたどり着きました。
Tom Naumann と Alex Beyrodt。Matt Sinner の心臓 SINNER を原点とするふたりのギタリストは、PRIMAL FEAR でもその実力を余すところなく発揮して、バンドの強靭なリフワークと華々しいシュレッドを鋭利な刃物のように研ぎ澄ませてきました。彼らの脱退は PRIMAL FEAR にとって当然大きな損失でしたが、バンドはロックとサルサで育った異色のメタル・ウーマン Thalìa Bellazecca と、達人として名高い Magnus Karlsson を引き入れることでさらなる高みを目指すことになりました。
「Angus McSix でこの役を “コスプレ” できて、とても嬉しいし光栄よ。リーグ・オブ・レジェンド(大好きで今でもプレイしているゲーム)やアニメのおかげで、いつもコスプレをもっと掘り下げてみたいと思っていたんだけど、残念ながら時間がなかったんだ。コスプレって自分を象徴する分身を持つようなもので、より自分に自信を持ち、自分の行動やあり方に誇りを持つことにも役立っていると思うの」
ファンタジーをテーマとするパワー・メタルの世界において、役を演じる “ロール・プレイ”、そして役になりきる “コスプレ” は、暗く煩わしい日常から離れ異世界へと旅立つためにとても重要な “ツール” なのかもしれませんね。Thalìa はそのコスプレというツールを、パワー・メタルの世界で誰よりも巧みに使いこなします。GLORYHAMMER を追われた Angus McSix との共闘では、カレドニアのレイザー・アマゾンの女王を演じて喝采を浴びました。
しかし、実際のコスプレだけではなく、彼女はさまざまな “ペルソナ” を現実世界でも演じています。自身の人気 YouTube チャンネルを運営し、ヘヴィ・ミュージックとロック全般に対する彼女のスキルと情熱を紹介したと思えば、なんとモデルの領域にも進出。彼女のゴージャスな写真は、ミラノのPERSONAの公式インスタグラムで確認できますが、とにかく自身の “分身”、自身の才能をいくつも揃えることで、彼女は自信を携え、パワー・メタルの栄光に向かって邁進することができるようになったのです。
「パワー・メタルは、誰にでもある現実や嫌なことから逃避するのに役立っているの。それに、パワー・メタルは本当に楽しいジャンルだし、すべてのバンドが何かのキャラクターのコスプレをすることで、さらにエンターテイメント性が増す。まるで子供の頃に戻って、自分がワシに乗って敵を殺したり、ヒーローになったり、世界を征服しようとする暗い悪者になったりするのを再び想像することができるのよ」
大人になって、子供のころのように異世界への想像を膨らませたり、空想のキャラクターになりきることはそうそう許されることではないでしょう。しかし、Thalìa のような自信と才能に満ちたアーティストが先陣を切って、パワー・メタルの楽しさ、エンターテイメント、そして逃避場所としての優秀さを広めてくれたとしたら…私たちはためらいなく、エルフやドワーフ、もしくは侍になりきって、子供のころのように煩わしい日常を忘れられる “エンパワーメント・メタル” に浸ることができるのかもしれませんね。
今回弊誌では、Thalìa Bellazecca にインタビューを行うことができました。「デスノート、エヴァンゲリオン、デス・パレード、デッドマン・ワンダーランド、それにスタジオジブリの全作品が大好きよ。音楽なら、BAND-MAID, ALDIOUS, NEMOPHILA, LOVEBITES, MAXIMUM THE HORMONE, NIGHTMARE, それに TK from 凛として時雨。ゲームなら、ベヨネッタ、どうぶつの森、スーパーマリオ(特にギャラクシー)全部、Bloodborne、Ghost of Tsushima、大神。もともとファンタジーやSFのゲーム、映画が好きだったので、日本に行って、それがストリートでも受け入れられているのを見て、日本がもっと好きになったのよね」 どうぞ!!

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COVER STORY + INTERVIEW 【ROLAND GRAPOW : HELLOWEEN : MASTER OF THE RINGS】 30TH ANNIVERSARY !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROLAND GRAPOW !!

“At The Beginning I Was a Little Upset, After All, I Was a Big Part Of The Helloween’s History, I Wrote a Lot Of Songs. But I’m a Fatalist, I Believe That Everything That Happens In This World, Everything Happens For The Best.”

DISC REVIEW “MASTER OF THE RINGS”

「”Master of the Rings” は、新しい HELLOWEEN のラインナップによる素晴らしいアルバムだ。バンド・メンバーやレコード会社の不安定な状況が何年も続いた後、僕たちは再び少し自由を見つけ、再び素晴らしいパワー・メタル・アルバムを作ることができた。僕たちもファンも幸せだった。振り返れば、実に素晴らしい時代だったね」
ここ日本で、いや世界中で、90年代のメタル・キッズをメタルへと誘った HELLOWEEN の傑作 “Master of the Rings” から30年。四半世紀以上の時を経ても、このアルバムが色褪せることはなく、素晴らしく時の試練に耐えています。それはきっと、”Master of the Rings” が、メタルの持つ逆境からの “回復力” と共鳴したから。実際、この前年、HELLOWEEN は崩壊の危機に瀕していました。
「僕は Weiki に、日本で “Chameleon” の曲(アコースティックな曲も多かった)を演奏した時、ファンが僕の前で泣いていたと言ったんだ。そして、”Keeper 1+2″ のような昔のスタイルに戻るべきだとも言った。彼は納得していたよ。それから数ヶ月して、Andi がバンドに加わった。彼も僕と同じことを言って、なぜ “Chameleon” のようなアルバムを作ったんだい?と尋ねていたね。とにかく、Uli と Andi がバンドに加わったことで、僕らの進むべき方向はまたひとつになったんだ」
“Master of the Rings” がリリースされる前年、HELLOWEEN が発表した “Chameleon” という文字通りカラフルなアルバムは大きな失敗と受け止められました。典型的なメタル、HELLOWEEN らしいパワー・メタルを捨てて、ポップな実験を試みたこのアルバムは、あまりに早すぎたのかもしれませんね。今聴けば、その多様性や芳醇なメロディが好奇心をそそる好盤にも思えますが、ステレオタイプは当時あまりに大きな壁でした。
「素晴らしい気持ちと同時に悲しい気持ちもあった。Ingo は病気だったし、僕らには本当にそうする以外選択肢がなかったんだ。一方で、Michael はポップ指向に傾倒していて、メタル・ミュージックにはもう興味がなかった。Andi と Uli は、ちょうどいいタイミングで適切なメンバーだったんだ」
さらに、HELLOWEEN の顔ともいえた Michael Kiske と Ingo Schwichtenberg の脱退は、負の連鎖に拍車をかけることとなります。しかし、心の病に侵された Ingo、そしてメタルに興味を失った Kiske がバンドを続けることは不可能でした。そして救世主となったのが、Andi Deris と Uli Kusch だったのです。
“Master of the Rings” は、あまりに印象的なドラム・フィルをイントロとする強烈な2つのスピード・チューンでその幕を開けます。実際、このドラム・フィルに心を奪われてメタルに誘われたファンも少なくないはずです。加えて、ガチガチのツイン・ペダルで暴風のように疾走する開幕の二撃。Uli の個性とインプットは、明らかにこの作品の見せ場となりました。
そして何より、Andi Deris の旋律。哀愁。高揚。激情。楽曲毎にコロコロと、猫の目のようにその色を変える Andi の感情は、ヘヴィ・メタルの強みを完璧なまでに代弁していました。
“Perfect Gentleman” で笑い、”Secret Alibi”で疼き、”In the Middle of Heartbeat” で咽び泣く。”Game is On” で初代ゲームボーイとのシンクロを楽しみ、”Mr.Ego” で素晴らしくも憎らしい Michael Kiske を偲ぶ。Andi の歌う新たな HELLOWEEN のアルバムには、明らかに、人の心に寄り添うヘヴィ・メタルの生命力が見事に吹き込まれていました。そして同時に、この作品には HELLOWEEN 史上最も理知的な整合感を極めたソング・ライティングとリフワークが備わっていたのです。何という復活!私たちはこの作品を聴いて、暗闇にもいつか光が射すことを教わりました。多くの困難は克服できると学びました。
「彼らのことを思えば満足だ。僕は招待されなかったから、再結成には参加していない。そう、最初は少し動揺したんだ。何しろ、僕はバンドの歴史の大きな部分を占めていたし、たくさんの曲を書いたからね。でも僕は運命論者で、この世で起こることはすべて最善のために起こると信じている」
“まだいける。俺たちはまだまだいけるんだ!”。30年前、アルバムに誰よりも力強い “Still We Go” を提供し大復活の立役者となった Roland Grapow はしかし30年後、HELLOWEEN の過去と未来をつなぐ大集結 PUMPKINS UNITED に呼ばれることはありませんでした。あの名曲 “The Chance” や “Someone’s Crying”, “Mankind” を作曲したにもかかわらず。
ある意味、これもまた大きな壁であり痛みなのかもしれません。しかし、”負けヒーロー” となった Roland は腐ることなく現在のメンバーたちにエールを贈ります。これぞまさに、ヘヴィ・メタルの寛容さ、包容力。音楽業界への失望を克服し、前を向いた Roland はこれからもまだまだ “いける” のです。
今回弊誌では、Roland Grapow にインタビューを行うことができました。「Weiki と僕がギターの腕前を競い合ったことは一度もなかった。Weiki はそのことについていつもクールだったからね。僕はただ、ギタリストとしてのスキルを少しでも伸ばしたかったんだ」 30年…Roland のお気に入り、”Dark Ride” の評価が海外で爆上がりしているのも面白いですね。どうぞ!!

HELLOWEEN “MASTER OF THE RINGS” : ∞/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IN SEARCH OF SUN : LEMON AMIGOS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM LEADER OF IN SEARCH OF SUN !!

“I Think The Whole ‘Angry Looking Metal Band’ Is Getting a Bit Stale In General.”

DISC REVIEW “LEMON AMIGOS”

「”怒っているように見えるメタル・バンド” というのは、一般的に少し古臭くなってきていると思う。”Virgin Funk Mother” は間違いなく、自分たちの個性を探求し、殻を破り始めたアルバムだ。典型的なメタルではないアイデアを持ち込むことを恐れなくなった」
かつて、ヘヴィ・メタルといえば、そのイメージの中心に “怒り” が必ずありました。それは、隣の家のババアが凍るくらい寒いスイスの冬に向けられた怒りかもしれませんし、親のクドクドしたお説教に突きつける “Fuckin’ Hostile” かもしれませんし、ド悪政に対して売りつける喧嘩歌舞伎なのかもしれません。もちろん、そうやって怒りを吐き出すことで、アンガーマネージメントを行い、心の平穏を保つこともできました。つまり、メタルの中にはネガティブな怒りと、ポジティブな怒りが常に同居していたのです。
しかし、多様なモダン・メタルの開花とともに、メタル=怒りという単純な方程式は崩れつつあります。喪失や痛みを陰鬱なメタルで表現するバンドもあれば、希望や回復力を光のメタルで提示するバンドもいます。
そして、BULLET FOR MY VALENTINE, FUNERAL FOR A FRIEND, TWELVE FOOT NINJA といった大御所ともステージを共にしてきたロンドンの新たな才能 IN SEARCH OF SUN は、明らかに “高揚感” をそのメタルの主軸に据えています。典型という概念さえ時代遅れとなりつつある今、人生にもメタルにも、愛、幸福、悲しみ、怒りといったあらゆる感情が内包されてしかるべきなのかもしれませんね。
「本当に単純なことなんだけど、僕らはいろんな音楽が大好きで、みんなグルーヴに夢中なんだ!それがいつも僕らの曲作りに現れていて、それが僕らの音楽にファンキーな雰囲気を加えているんだと思う。グルーヴがなければ、音楽はただのノイズだからね!」
パッション・イエローの背景に、輪切りの悪魔的レモン。そのアートワークを見れば、IN SEARCH OF SUN がメタルの典型を一切気にしていないことが伝わります。もちろん、悪魔こそここにいますが、ではトヨタのロゴマークを悪魔に模した車すべてが真性の悪魔崇拝者なのでしょうか?むしろ、ここには甘酸っぱいエモンの果汁や、ちょっとしたユーモア、そして踊り出したくなるような楽しい高揚感で満たされています。
もしかすると、例えば、最強の魔法ゾルトラークがほんの10年ちょっとで誰にでも使える一般攻撃魔法になってしまったように、メタルの怒りや過激さ、凶悪な音、そんなヘヴィのイタチごっこにも限界があるのかもしれません。だからこそ、グルーヴがなければ音楽なんてただのノイズだと言い切る彼らの、冒険を恐れない多様性、典型を天啓としない奔放さ、そして何より、メインストリームにさえ挑戦可能な豊かで高揚感のあるリズムとメロディの輝きは、メタルの未来を託したくなるほどに雄弁です。
今回弊誌では、Adam Leader にインタビューを行うことができました。「ファースト・アルバムの中に “In Search Of Sun” という曲があるんだけど、この曲は内なる葛藤と、自分が一番愛しているものを掴みに行くための世界との戦いについて歌ったものなんだ。この曲は、決意と自分自身を決してあきらめないことについて歌っている。僕たち全員がそのような姿勢を共有しているから、自分たちを真に定義するような名前に変えるのは正しいことだと思ったんだ」 PANTERA や Djent, BON JOVI とMJと、UKポップス、UKガレージ、ダンス・ミュージックが出会う刻。どうぞ!!

IN SEARCH OF SUN “LEMON AMIGOS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KINGCROW : HOPIUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DIEGO CAFOLLA OF KINGCROW !!

“I Think Kintsugi Is Really a Great Metaphor About Dealing With Traumas And Overcoming Them And Even Celebrate Them Since They Are Part Of Our Growth Process.”

DISC REVIEW “HOPIUM”

「金継ぎは素晴らしいアイデアだと思ったんだ。自身のトラウマ、傷と向き合い、それを克服し、さらには成長過程の一部でもあるその傷を祝福できるようになる。金継ぎは、その歌詞の実に素晴らしい比喩だと思ったね。また、金継ぎのコンセプトはアートワークにも使用し、アルバムのビジュアル表現にも全面的に取り入れているよ。なぜなら、その魅力的な哲学をおいても、素晴らしく美しい芸術形態だから」
欠けたり割れたりした器を、漆を使って修復する日本の伝統的な技法、金継ぎ。もう二度と戻らない致命的な “傷” を優しくつなぎ合わせ、美しい金でコーティングすることでその傷を唯一無二の前向きな個性とする金継ぎはもはや、修理を超えてアートの域に達しています。
イタリアの伊達プログ KINGCROW は、その技法と哲学、アイデアに魅せられ、”Kintsugi” を自らの血肉へと昇華させました。ネットの普及により致命的な心の “傷”を負いやすい時代に、彼らは金継ぎを人間そのものに例えます。 つなげない傷なんてない。トラウマを克服し、いつかはその傷を個性とし、その傷ごと優しく抱きしめられる日がやってくる。彼らの “Kintsugi” はそんな美しい希望の歌になったのです。
「答えを提示するのではなく、自分の考えや視点を説くのでもなく、さまざまなトピックについてリスナーに考えさせ、自分なりの答えを見つけさせようとしている。だから、君が指摘したように、”Hopium” のアイデアのひとつも、盲目的に従うのではなく、疑問を持つことなんだ。そう、フェイクニュースや誤った情報が氾濫する時代には、物事に対して疑問を持つことがこれまで以上に重要なんだよ」
“Kintsugi” を収録した KINGCROW の最新作、そのタイトルは “Hopium”。”Hope” “希望” と “Opium” “麻薬” を掛け合わせたアメリカの新たなスラングには、幻想的な甘い希望の意味が込められています。ネットのエコーチェンバー、バブルの中に閉ざされて自身を絶対的な正義だと思い込み、異なる意見、異なる存在を悪と断じる狂気の世界で、彼らはただ、”疑問” を持って欲しいと願います。差別や分断を煽るフェイクニュースやプロパガンダをまずは、少しでも疑うこと。KINGCROW は、そう投げかけることで、一度傷つき “割れて” しまった人類の絆を取り戻し、より美しく、再びつなぎあわせたいのです。
「PAIN OF SALVATION の “マジック” の中核には、とても感情的な創造性があると思うし、それは僕たちも同じだと思いたい。クールなものを作るために、曲のエモーショナルなメッセージを犠牲にすることは絶対にないからね。僕たちはただ、感情を揺さぶる音楽を、興味深い美学とさまざまなレイヤーで表現しようとするだけだ」
KINGCROW がつなぎ合わせるのは、人だけではありません。プログ以外にも、メタル、オルタナティヴ、エレクトロニカといった珠玉のジャンルを黄金の光沢でつなぎあわせ、唯一無二の美しき個性とする彼らの音楽こそ、まさに金継ぎ。感情を決して置き忘れず、極限まで洗練された楽曲には必ず、ハッと息を呑むような、魂を揺さぶられる瞬間が用意されていて、リスナーは大鴉のマジックにただ酔しれます。アルバムには、奇しくも現在 PAIN OF SALVATION で鍵盤をつとめる Vikram Shankar がゲスト参加していますが、もしかすると彼らこそが “魂の救済” を謳った最も “エモーショナル” なプログ・メタルバンドの後継者なのかもしれませんね。
今回弊誌ではギタリスト、キーボーディストでメイン・コンポーザーの Diego Cafolla にインタビューを行うことができました。「バンド名を探していたとき、実はちょうどエドガー・アラン・ポーの詩集を読んでいて、”大鴉” にはいつも心を奪われるものがあったんだ。会話のすべてが主人公の心の中で起こっているという事実は、本当に魅力的なアイデアだ。
僕にとっては、外界といかにかかわるかで、自分の現実だけがそこにあると思い込んでしまうことを象徴していた。だから結局、KINGCROW という名前になったんだ」 もはや、LEPROUS, HAKEN, CALIGULA’S HORSE と並んでモダン・プログ・メタル四天王の風格。どうぞ!!

KINGCROW “HOPIUM” : 10/10

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