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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIABLO SWING ORCHESTRA : PACIFISTICUFFS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL HÅKANSSON OF DIABLO SWING ORCHESTRA !!

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Hybrid Of Old–style Swing jazz, Classial, and metal. Sweden Based Incredible Octet Diablo Swing Orchestra Has Released More Unique, Unexpected But Ultra-catchy Masterpiece “Pacifisticuffs” !!

DISC REVIEW “PACIFISTICUFFS”

メタルワールドのアウトオブボックス。世界で最もカラフルかつユニークな悪魔の楽団 DIABLO SWING ORCHESTRA が、遂にシーンへとより深く浸透すべき新作 “Pacifisticuffs” をリリースしました!!複雑怪奇とポップを過去最高の滑らかさで融解させた作品には、タイトルに冠した “平和主義” と “殴り合い” の二律背反が見事にフィットしています。
“ポストファーストメタルタイム”。WALTARI の Kärtsy Hatakka が弊誌のインタビューで証言したクラッシックメタルとモダンメタルの偉大なる架け橋に、スウェーデンが果たした役割はあまりにも絶大でした。
MESHUGGAH, OPETH の両巨頭を挙げるまでもなく、90年代初頭から此の地の先鋭は、ベーシックなメタルのデフォルトにプログレッシブの波動、エクストリームな残虐性、フォルクローレの優美、そして複雑なリズムアプローチ等を付加してモダンメタルの礎となる百花繚乱の多様性を創世し続けているのです。
中でも、チェロやホーンセクションを備えた8人組 DIABLO SWING ORCHESTRA のエクレクティックな存在感は飛び抜けて異端だったと言えます。その名が物語る通り、メタル、ジャズ、クラッシックを等しくベースとする狂気を孕んだクロスオーバーの濁流は、アヴァンギャルド、エクスペリメンタルの狭い定義に堰き止められ限定的ながら、間違いなく強烈な印象と影響を残して来たのです。
そして、前作 “Pandora’s Piñata” から5年という長いインターバルを経てリリースしたバンドの最新作 “Pacifisticuffs” は、囚われていたその狭い檻までをも突き破り、より幅広く認知と賞賛を受けるべき作品に仕上がったと言えるでしょう。
オペラティックな歌唱でバンドの顔とも言えた Annlouice Lögdlund が脱退し、新たに Kristin Evegård を迎えたことは、結果として変化の象徴となりました。より普遍的で、しかしアンニュイかつジャジーな魅力と個性を備えた Kristin の伸びやかな歌唱は、バンドのカルトなイメージを一新させるフレッシュな起爆剤だと言えますね。
爽快でキャッチー、そしてあまりに多様なオープナー “Knucklehugs (Arm Yourself with Love)” は楽団の新たなイメージへと誘う招待状。Daniel が 「僕たちはまず、強力なメロディーやリズミックなフックといった楽曲の強固な基盤にフォーカスする傾向があるんだよ。」と語る通り、ポップパンクのコマーシャルな突進力さえ喚起する Kristin と Daniel のデュエットは、メタリックなギターリフ、スウィングするホーンセクション、そしてバンジョーとストリングスを携えたエルヴィスの祝福を一身に受けて、至上なる創造性とフックを提示します。
陽気なブルーグラスから一転、オーケストレーションとホーンをさらに前面に配した感傷的なメタルポルカ “The Age of Vulture Culture” で Kristin の完璧なる融合を証明した後、バンドは “Superhero Jagganath” でトロピカルなレゲエにハワイアン、”Lady Clandestine Chainbreaker” ではフラメンコの邪悪な誘惑にフォーカスし、”Pacifisticuffs” の音楽が世界を巡る旅であると高らかに宣言するのです。
そうして辿り着く “Jigsaw Hastle” は、故郷スウェーデンへの凱旋と言えるのかも知れません。Kristin の透明な哀愁を生かしたウルトラキャッチーなダンスチューンは、同郷の ABBA を彷彿とさせる北欧の煌びやかな風。アートワークのトライアングルから注入された電気の魔法は、きっとこの楽曲のエレクトロニカな要素へと還元されたに違いありません。
Daniel が提唱する “異なるサウンドを独自のものへと昇華する偉大なる自由” は、究極のポップと巡るエクレクティックな世界旅行の果てに遂に完成を見たのかも知れませんね。
今回弊誌では、シンガーでギタリスト、バンドの中心人物 Daniel Håkansson にインタビューを行うことが出来ました。どうやら Daniel のボーカルパートが減った理由も、Kristin の加入による理想のオクテットの完成にある様ですね。「今まで成されてきたことの “外側” について考えなくてはいけないと思うんだ。」どうぞ!!

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DIABLO SWING ORCHESTRA “PACIFISTICUFFS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHON : HOMEY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERICK HANSEL OF CHON !!

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California Based, Incredible Jazz-Math Rock Trio, Chon Advance Into New Realm With The Masterpiece “Homey” !!

DISC REVIEW “HOMEY”

インストゥルメンタルミュージックの未来を切り開く時代の寵児。サンディエゴのジャズ/マスロックトリオ CHON が、シーンの輿望を担う最新作 “Homey” をリリースしました!!バンドの “ホーミー” である南カリフォルニアの太陽、空気、夏の匂いを一身に浴び、望外なまでにチルアウトしたレコードは、ジャンルに海風という新風を吹き込んでいます。
CHON が2015年にリリースしたファーストフルレングス、 “Grow” はバンドのユニークな才能や感受性を見せつける素晴らしきショーケースとなりました。ソフトでカラフルなコードワーク、デリケートでピクチャレスクなリードプレイ、ダイナミックに研ぎ澄まされたバンドサウンド。高度な知性と屈託のない無邪気さが同居する、オーガニックかつテクニカルなその世界観はまさしく唯一無二で、スメリアンの秘蔵っ子から一躍シーンのサウンドアイコンへと飛躍を果たすことになったのです。
バンドのホームタウン、カリフォルニアにインスパイアされ制作された最新作 “Homey” は、”Grow” で見せた圧倒的な光彩はそのままに、その鋭敏な感性が掴まえたエレクトロニカ、アンビエント、ハウスなど所謂チル系のトレンドを大胆に咀嚼し、トロピカルで新鮮なムードとテクニカルなマスロックを共存させることに成功していますね。
アルバムオープナー、”Sleepy Tea” は、インタビューにもあるように、驚異的なまでに進化した CHON のインストゥルメンタルワークを堪能出来る楽曲です。猫の目のように変化する細やかなリズムアプローチは、Mario と Erick のギターチームがダンスを踊る最高の舞台。時に奔放に、時に精巧に、極上のメロディーとエキサイトメントを運ぶニ人の複雑で甘い関係は、奇跡の距離感で音のユーフォリアを紡いで行きます。
CHON の豊潤なる味わい深さの一端は、モダンの中に見せるオールドスクールな部分かも知れません。特に今作では、フュージョンと言うよりもビバップやモダンジャズのスウィング、ツーファイブ、フォービート、フレージング、シンコペーションが丹念に織り込まれており、得も言われぬコントラストを創出しています。例えば、”Checkpoint” などはマスロックの顔をしたジャズスタンダードのナンバーだと言えるかも知れませんね。
当然、手数とグルーヴを両立させた Nathan Camarena のドラム捌きも卓越しており、突っこみ気味でバンドを牽引するそのエナジーは圧倒的。ゲストに迎えた Brian Evans のパーカッション、有機的でムーヴアラウンドな Anthony Crawford のベースラインとも相俟って、型破りでマスロックの可能性を再定義するようなデザインをアルバムを通して描いていますね。
同じくサンディエゴを拠点に活躍する、ビートメーカー/ジャズギタリスト Go Yama をフィーチャーした “Berry Streets” は CHON の新たな冒険を象徴する楽曲です。現在進行形のトレンドであるトロピカルハウスを主軸としたトラックは、あまりにノスタルジックでアンビエント。カリフォルニアのビーチで沈みゆく夕日を惜しみつつ聴くために作られたかのような至高のチルウェイブに仕上がっています。
同時に CHON のジャジーなインストゥルメンタルワークも効果的に挿入されており、Erick がインタビューで語ってくれた通り、結果として二つのジャンル、二つの才能が見事に融合し開花した独創的で至妙な世界観を構築することに成功しているのです。
新進気鋭の シンガー/サックス奏者 Masego を起用した “Nayhoo” もコラボレートの成果が際立って実を結んだ一曲です。ソウル/エレクトロジャズの領域へと踏み込んだ楽曲は、Masego のエモーショナルなボーカルを芯柱とし、匂い立つような色気、スイートな瞬間をアルバムへもたらしていますね。勿論、Thundercat や、FLYING LOTUS がフェイバリットに挙がっている事実を知るまでもなく、ここで彼らが、Jazz の領域を拡大する Robert Glasper と “Jazz The New Chapter” のフロンティア精神を意識したことは明らかです。
「自分たちが気に入るサウンドの楽曲を書き続けて、叶うならファンも僕たちの音楽を好きになり続けてくれることだね。その過程で、さらに新たなファンも開拓出来たら良いな。」
世界最高峰のエレクトロポップを創造するビートメーカー、Giraffage A.K.A. Charlie Yin との共演にも言えますが、既存のファン層からある程度の反発を見越しても、より幅広いマスリスナーへとアピールし、音楽的なチャレンジを続けることこそがバンドのゴールだと Erick は認めています。そして CHON の掲げる、その本来の意味でのロックスピリットは必ず報われるべきだと感じました。
今回弊誌では、ギタリストの一人 Erick Hansel にインタビューを行うことが出来ました。もし、”Homey” のムードやスピリットが気に入ったなら、Jakub Zytecki の最新ソロEP “Feather Bed” や、先日弊誌でも特集を組んだ ichika の新プロジェクト AMONG THE SLEEP へと歩みを進めてみるのも一興です。どうぞ!!

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CHON “HOMEY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【川口千里 / SENRI KAWAGUCHI : CIDER ~Hard & Sweet~】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SENRI KAWAGUCHI !!

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20 Years Old Drum Maestro, Sernri Kawaguchi From Japan Has Just Released Hard & Sweet Fusion Record, “Cider” !!

DISC REVIEW “CIDER ~Hard & Sweet~”

“手数姫” こと女子大生スーパードラマー、川口千里が遂にメジャーデビュー作 “CIDER ~Hard & Sweet~” をリリースしました!!二十歳の節目にメンバーを固定して望んだ成長著しい快作は、まさに茫々と広がる世界への確かな切符となるでしょう。
インタビューにもあるように、5歳でドラムと運命的な出会いを果たし、8歳であの “手数王” 菅沼孝三氏に師事を始めたという彼女の物語は、さながら現代のお伽噺のごとく素敵な奇跡と共に幕を開けました。12歳で挑んだプレイスルー動画の総再生回数は4000万回に迫り、世界的なドラム関連サイト “ドラマーワールド” では世界のトップドラマー500に撰されるなど、もはやその存在はワールドワイドに熱い視線を浴びていると言えますね。
すでにインディーズで2枚のソロ作品をリリースしている川口千里。しかしその活躍は自身のリーダー作のみに留まりません。E-girls, Guthrie Govan のライブをサポートし、Lee Ritenour とも共演。さらには 映画 “さらばあぶない刑事” のサウンドトラック、ももいろクローバーZのアルバム “AMARANTHU” にも参加するなどその素晴らしくジャンルを股に掛けた活躍により、彼女はしっかりと自身の軌跡を刻んで行っているのです。
「20歳を記念するアルバムなので、大人をイメージしつつ爽やかな若さもあるタイトル」「私のドラミングの “Hard” な部分も “Sweet” な部分も両方感じてほしい」 という理由から名付けられた3作目のリーダー作 “CIDER ~Hard & Sweet~”。アニバーサリーの冒険で彼女がキーパーソンに指名し絶大な信頼を置いたのが、Philippe Saisse でした。THE ROLLING STONES, David Bowie から David Sanborn, Al Di Meora まで数多の巨人と共演しそのアレンジを手がけて来た、フランスの偉大なキーボーディストにしてコンポーザー、プロデューサーは自身のグループ PSP の “S” を Simon Phillips から Senri Kawaguchi に翻しその力を貸すことにも吝かではありませんでした。
アルバムオープナー “FLUX CAPACITOR” は “バックトゥザフューチャー”、時代を行き来する作品の予告編でしょうか?フュージョンがスムーズジャズと呼ばれる以前のクロスオーバーなエキサイトメントとフリーダムを掲げつつ、同時に Philippe のポップなセンスを活かすクリアーなプロダクションとモダンなテクニックを内包する楽曲は瑞々しさに満ちています。ゴーストノートやハイハットの細かな刻みまで隈なく見渡せるサウンドの透明度は本当に群を抜いていますね。
Philippe のビンテージな機材から繰り出されるキャッチーなテーマは、川口千里の刻々と拍子を移すダイナミックなリズムワークに牽引され、万華鏡のように鮮やかな広がりを見せて行きます。Pino Palladino の代役として参加したカメルーン生まれのテクニシャン Armand Sabal-Lecco は、低音域から高音域までフレキシブルなベース捌きを披露し、Philippe の Jan Hammer を想起させるスリリングなソロワークと相まってギターの不在を感じさせませんね。トリオのタイトなグルーヴがダブルタイムへ移行すると、そのカタルシスはさらに加速しロックの衝動をさえ孕みながら音のユーフォリアを創造していくのです。
マリンバを使用し野性的な雰囲気を演出する “Wupatki”、彼女自身が作曲を行ったロマンチックなバラード “Longing Skyline” を挟んで訪れる “Do Do Ré Mi” はアルバムのハイライトと言えるかもしれませんね。ジャズスタンダードの古典ようにスタイリッシュに幕を開ける楽曲は、突如その舞台を現代的なフュージョンへと移します。アルバムに収録するのが初めてとは思えないほど堂にいった4ビートから6/8拍子へと切り替わるその魔法の瞬間はリスナーに音楽の “楽しさ” を運ぶはずです。”間”を大切にしたという彼女の言葉通り、スティック一閃、バンドがピタリと完全に音を止める瞬間はあまりにクールで川口千里というコンダクターの実力を存分に見せつけています。
さらに 「現場での化学反応が想像以上に凄かった」 と語るように、楽曲終盤のサンバをベースとした、ドラムスがリード楽器に思えるほど壮絶なインタープレイは、”Ginza Blues~intro~” や “Senri and Armand Groove” と並んで “手数姫” の面目躍如であり、同時にメンバーの個性、そしてトリオのケミストリーが結実した得難き刹那だと感じました。
インタビューでフュージョンを音楽の “交差点” と位置づけた千里さんの想いを乗せたアルバムは、奇しくも個性的な三者の道が交差した証である “In Three Ways” でカラフルに幕を閉じました。「単なるスムーズジャズじゃない」という言葉に込められたプライドをしっかりと実現した充実の51分。
今回弊誌では、川口千里さんにインタビューを行うことが出来ました!世界を見据えつつ、同時に現役女子大生らしいかわいらしい部分も垣間見えると思いますよ。どうぞ!!

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SENRI KAWAGUCHI “CIDER ~Hard & Sweet~” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FELIX MARTIN : MECHANICAL NATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FELIX MARTIN!!

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Felix Martin’s Twin-Neck 14&16 Strings Guitar And Two Hand Tapping Technique Opens The New Realm Of Instru-metal Music With Incredible New Record “Mechanical Nations” !!

DISC REVIEW “MECHANICAL NATIONS”

南米ベネズエラが生んだギターウィザード Felix Martin が、ラテンの風とモダンな色彩を投影した最高傑作 “Mechanical Nations” をリリースしました!!14&16弦のダブルネックが紡ぐ鮮烈で独創的なその調べは、鸞翔鳳集な昨今の Instru-metal シーンにおいても一際光彩を放っています。
Felix の楽器は独特です。Warr Guitar や Chapman Stick など確かに10弦を超える多弦楽器は存在します。ただ、それらはベースの色合いが濃く、ベースにメロディー用の弦、レンジが付属しているといった考え方を基調としています。
対して、Felix のダブルネックギターは、インタビューにもあるように、同じレンジのギターを2つ合わせただけのある意味シンプルな構造。しかし同じレンジの7、8弦ギターを2本使用するため、既存の多弦楽器 (スケールが長い物もあるので一概には言えませんが) に比較して、よりギターの領域にフォーカスした立体的な演奏を味わうことが出来るのです。
勿論、ギターやベースに比べれば、双方のギターをタッピングで奏でるため両手の自由度は高く、遥かに多くの音を同時にプレイすることが可能。パーカッシブなピアノとも称される彼のテクニック、アプローチは、まさしくモダンギターイノベーションのフロントランナーだと言えますね。
その先鋭的なスタイルに反し、クラシカルなトリオという編成で制作された “Mechanical Nations” は、母親が手がけ、自らのギターをあしらったその芸術的で大胆なアートワークが示すように、南米大陸への深い愛情を包み込んだ芳醇な作品に仕上がりました。南米をツアーし、大陸の多種多様な都市の空気、エネルギー、文化、景観に触れた Felix は、街ごとに受けたインスピレーションを楽曲へと反映して行ったのです。
“Barquisimetal” は彼のホームタウン Barquisimeto を、そして “Canaima” はベネズエラが誇る世界最後の秘境カナイマ国立公園を心象として生まれた楽曲です。そしてアルバムでも最もメタリックかつメカニカルな、タンゴのリズムを纏った前者と、最も穏やかでノスタルジックな、フォークミュージックのイメージを具備した後者のコントラストは、そのままベネズエラの豊かな音楽文化の写し鏡となっているのです。
カリビアン、ネイティブ、 アフリカ系、ヨーロッパ系。 まさに人種のるつぼと言える社会主義国家はレゲトン、サルサ、ホローポ、ガイタ、カラカスのメレンゲなど、ロマンティックから複雑な拍子を持つ音楽までラテンミュージックを象徴する雑多なバックグラウンドを宿しています。そしてそのラテンのルーツは Felix の内面世界にも強く共鳴し、唯一無二の Instru-metal、グローバルフュージョンへと昇華しているのです。
メタル、ジャズ、プログ、ファンク、そしてラテンの雄弁なカクテルと言える “Mechanical Nations”。インタビューで語ってくれた通り、”Santos” にゲスト参加した Angel Vivaldi のリードを除いて作品にはソロパートが存在しません。それでも作品が至上のスリルを常に纏っているのは、バークリーで学んだトリオの傑出した技術と、緩急を巧みに配置したコンポジションの賜物だと言えますね。
つまり、”Eight Moon Headdress” が象徴するように、クリーントーンの詩情豊かなサウンドスケープと、エキサイティングで攻撃的なパーカッシブテクニックが目まぐるしく交互する魅力的な楽曲群は、手数の多いエキゾチックなドラミングとスラップを交えたダイナミックなベースプレイが牽引し、タイトなバンドの推進力となっているのです。
ANIMALS AS LEADERS, KING CRIMSON, PRIMUS, 或いは Stanley Jordan。Felix のマジックタッチと彼のバンドが生み出すドラマティックな芸術は、偉大な先人にも比肩し得るクオリティーと独創性を秘めています。今回弊誌では、Felix Martin にインタビューを行うことが出来ました。日本でライブを行うのか昔からの夢だそう。どうぞ!!

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FELIX MARTIN “MECHANICAL NATIONS” : 9.5/10

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NEW DISC REVIEW + ANATOMY 【ichika : forn】


EXCLUSIVE: ANATOMY OF ichika !!

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This Is The Next Level !! The Most Talented Contemporary Guitar Artist In Japan, ichika Has Just Released Amazing, Astonishing, Awe-inspiring Debut EP “forn” !!

DISC REVIEW “forn”

Toshin Abasi 以来の衝撃!クリスタルのように清廉なサウンドと研ぎ澄まされた感性で ichika は日本のみならず海外からも高い注目を集める新たなギターマエストロです。想像力を掻き立て感情を揺さぶる瑞々しい楽曲の数々は、フレッドボードを駆け巡る独創的で絢爛たる奇跡のテクニックから生み出されます。
Instagam, Twitter など SNS における圧倒的な動画の視聴数、シェア。さらに Tosin Abasi, Jason Richardson といった海外のモダンギターヒーローから注がれる熱い視線を追い風に受けリリースした待望のデビューEP “forn” はまさにインストゥルメンタルシーンに新たな時代の幕開けを告げるエポックメイキングな作品に仕上がりました。
アルバムのフォルムは想像を遥かに超えたものでした。おそらく多くのファンが思い描いた作品は、バンド形態の Instru-metal アルバムだったのではないでしょうか?しかしリスナーの元に届いた “forn” のサウンドは、ギター一本、清澄で無垢なクリーントーンが奏でる水晶彫刻のような崇高な美景、世界観だったのです。
ただ、ichika が今回弊誌に語ってくれた「人生を変えた5枚のアルバム」を念頭に置き、存慮すればこのディレクションは深く頷けるものだと思います。”Waltz for Debby”。彼が志向しデザインしたこの透徹した美意識によるスペクトルは、孤高のジャズピアニスト Bill Evans がかの歴史的傑作で提示したアーティスティックな表現世界と真に深く通じているのです。
実は幼少期に “Waltz for Debby” に感銘を受け、ジャズピアニストを志していたという ichika。静と動のダイナミズムが白眉で、詩情豊かな美しきワルツ “resolution” は “Waltz for Debby” への追憶かも知れません。 残響までをも計算した限りなく繊細で透明な、しかし同時に自身のペルソナ、小宇宙、エモーションを余すことなく描き出す若きマエストロの手法、秀絶な初演には、確かに巨匠の息吹が濃密に感じられますね。
ヴォイシングの妙、独演という観点から見れば、Bill Evans の “Alone” や Joe Pass の “Virtuoso” にも共振する部分はあるでしょう。そして勿論、彼が挙げている Russell Malone にも。ichika のどこか温かみのあるトーン、ベースラインと旋律の巧みな双饗、ハーモニクスやタッピングのナチュラルな浸透には Russell の遺伝子がしっかりと脈打っています。
さらにツーバスでスウィングする不世出のジャズドラマー Kendick Scott。”a bell is not a bell” を聴けば、コンテンポラリージャズを代表するリズムマスターのポリリズム、変拍子、モダンなアプローチをしっかりと消化し、自らの血肉としていることが分かりますね。
とは言え、”forn” はジャズレコードではありません。そしてジャズレコードでないことこそが ichika の ichika たる由縁だと言えるのではないでしょうか。VEIL OF MAYA の “The Common Man’s Collapse”、”the cabs” の “一番はじめの出来事”をジャズの名盤と共にピックアップしていることが表象するように、彼の音楽にはジャズと同様にモダンプログやマスロックといった現代的なアプローチもしっかりと根付いています。
そして日本人らしい叙情性。”戦場のメリークリスマス” にも通じるようなリリシズムを備えた “flowers” はジャズとコンテンポラリーギターの完璧なる融合であり、同時に日本らしい四季や侘び寂びを感じさせる絶佳のサウンドスケープを有した ichika を象徴する一曲だと感じました。
ichika の旅路、音楽的探求は “forn” で遂にその幕を開けました。少なくとも、今まで日本のアーティストに欠けていた世界で戦うに充分なオリジナリティー、インテリジェンス、そしてアピアランスを備えていることは確かです。”have a nice dream”、応援しましょう!!

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ichika “forn” EP: 9.9/10

【FIVE ALBUMS THAT CHANGED ICHIKA’S LIFE】

BILL EVANS “WALTZ FOR DEBBY”

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KENDRICK SCOTT ORACLE “CONVICTION”

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RUSSELL MALONE “RUSSELL MALONE”

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VEIL OF MAYA “THE COMMON MAN’S COLLAPSE”

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【MESSAGE FOR JAPAN】

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“forn” EPを聴いていただいてありがとうございます。このEPを皮切りに、次の作品のリリースも予定していて、そこからライブを初めていこうとも思っています。皆さんにお会いできるのを心待ちにしています。

Thanks a lot for listening to “forn” EP. Starting with this EP, I plan to release the next work and I’m thinking of my first live from there. I am looking forward to seeing you all!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KURT ROSENWINKEL : CAIPI】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KURT ROSENWINKEL !!

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Ten Years In The Making, Master Of Jazz Guitar, Kurt Rosenwinkel Has Just Released Colorful, Rich, and Contemporary New Record “Caipi”!!

DISC REVIEW “CAIPI”

コンテンポラリージャズギターの唱導者、プロフェッサー Kurt Rosenwinkel が自身を反映し体現したマスターピース “Caipi” をリリースしました!!制作に10年という長い年月を費やしたアルバムには、伝統と革新、卓越したセンスと豊かなエモーションが込められています。

“僕が一番大切にしているのは、やはりジャズであり、自分の音楽だ。でも僕の内側から聴こえてくるものがロック・ソングやソウル・ナンバーであれば、僕はそれに従わなければないけない。創造の源はコントロールできないからね。”(Jazz Life 2000.2)

過去のインタビューで語る通り、Kurt は偉大なジャズマスターでありながら、その領域のみに留まらず自らのインスピレーションに従い、豊潤な音楽の旅を続けています。バークリー入学以前の学生時代にはあの Tony MaCalpine の兄 Chris に師事しプログバンドを結成していたという過去に加えて、hip-hop のカリスマ Q-tip とのコラボレートもその事実を裏付けていますね。さらに、現在はドイツのベルリン音楽大学でギターとアンサンブルのクラスを受け持っているのですから、彼のキャパシティー、間口の広さには驚くばかりです。
Gary Burton, Mark Turner, Chris Potter, Joshua Redman, Aaron Parks など多士済済のジャズジャイアンツと共演を果たして来た Kurt ですが、”Caipi” では基本的に全ての楽器を1人でこなしています。ギターは勿論、ベース、ドラムス、そしてボーカルまでを自らで司り、多重録音を行った作品は、インタビューでも語ってくれた通り Q-tip と二人三脚で作り上げた “Heartcore” の正当な続編であり、深厚かつパーソナルな作品として絶類な存在感を放っているのです。
タイトルトラック “Caipi” が象徴するように、アルバムは確かにブラジル、正確にはミナスジェライスの風景や Milton Nasciment の面影を感じさせます。インタビューにもある通り、Milton の音楽は “Caipi” の重要なインスピレーションとして作品を紐解く鍵となっていることは明らかでしょう。
しかし同時に、ブラジル特有のコード感やリズムのエッセンスは作品を語る上での一つのトピックにしかすぎません。色彩も鮮やかなアートワークが物語るように、ここには拡散する Kurt のジャズを体現したカラフルな音世界、サウンドスケープが鮮やかに広がっているのです。
実際、今回 Kurt がブラジル音楽にフォーカスしたのは、”アルゼンチン音響派” に次ぐ新たなムーブメント”ミナス新世代”の奔放で多元的、モダンでカラフルなエナジーに惹かれたからではないかと思わせるフシもありますね。Antonio Loureiro, Pedro Martins というバンデイラの起用こそ、Kurt の”ミナス新世代”に対する明確なシンパシーの表出であり、表敬に違いありません。
モダンと言えば、前作 “Star of Jupiter” には Aaron Parks をはじめ、コンテンポラリージャズスターが集結。オープナー、”Gamma Band” の先進性、ジャズ、プログ、現代音楽をいとも容易く超越したカレイドスコープ的サウンドは、拡散する新たなジャズの象徴としてシーンに衝撃を与えましたが、”Caipi” では全ての設計図を自ら描き、構築することで独創的な内面を余すことなく表現していると言えるのかもしれませんね。
確実にアルバムの根幹を成すのはジャズとブラジル音楽です。しかしロック、ポップ、プログロック、ブルース、ソウル、ハウス、テクノ、エレクトロニカなど複眼的で多彩な影響をフレキシブルに打ち出すことで、Kurt はその唯一無二の才能、そしてジャンルの可能性を閉鎖的でバックカタログを重視しがちなジャズワールドに見せつけたといえるでしょう。言い換えればこの試みは、ジャズの側から見たポストロックと言えるかもしれません。そして、ジャズの境界線を押し広げる彼の手法は、インタビューにもあるように “Jazz the New Chapter” のムーブメントとも宿命的に連動するはずです。
とは言え、”Casio Vanguard” からは Pat Metheny を、”Little B” では Alan Holdsworth をイメージするように、脈々と流れる伝統もまた Kurt の中にはしっかりと受け継がれています。”スローハンド” Eric Clapton のゲスト参加には、そんな Kurt にこそギターの未来を託すといった意味合い、想いも少なからず含まれているようにも思えました。
今回弊誌では、Kurt Rosenwinkel にインタビューを行うことが出来ました。4月には来日公演も決定しています。どうぞ!!

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KURT ROSENWINKEL “CAIPI” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HIATUS KAIYOTE : CHOOSE YOUR WEAPON】SUMMER SONIC 2016 Special !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NAI PALM OF HIATUS KAIYOTE !!

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Australia Based Super Eclectic Future Soul Outfit, Hiatus Kaiyote Set To Come Back To Japan in August! Don’t Miss Their Splendid Performance At Summer Sonic 2016 !!

DISC REVIEW “CHOOSE YOUR WEAPON”

オーストラリアを代表するアーティストへと躍進を遂げ、Summer Sonic 2016 への出演も決定している “Multi-Dimensional, Polyrhythmic Gangster Shit” こと HIATUS KAIYOTE。2度のグラミー賞へのノミネート、Q-Tip とのコラボレート、Robert Glasper の作品への参加、Chance the Rapper によるサンプルの使用など、何かと話題の多い彼らですが、注目を集めるのも当然。それは、”Neo Soul”, “Future Soul” と評されている事実からも分かるように、非常にエクレクティックで、スリリングで、斬新で、未来への扉を開ける音楽を創出しているからでしょう。
3年というインターバルを要した彼らの最新作 “Choose Your Weapon” は、さらにサウンドの領域を広げバリエーションに富んだ、完成度の高い傑作に仕上がりました。70分18曲に及ぶ大作は、Modern Jazz, 70’s Funk, Samba, Hip Hop, House, African Soul, Fusion, Prog Rock など実に多彩な要素を取り込みつつ、華やかなエレクトロニカサウンドで装飾された、カラフルで万華鏡のような作品です。デビュー作 “Tawk Tomahawk” が随所にその才能のキラメキを感じさせながらも、10曲30分といういかにも食い足りないランニングタイムであったことを考えれば、本格的に勝負に出たレコードとも言えるでしょう。
“Shaolin Monk Mothefunk” は “Choose Your Weapon” への招待状。ボーカル/ギター Nai Palm の Stevie Wonder, Amy Winehouse を想起させるソウルフルな歌唱、しなやかに配置されたメロディーとカウンターハーモニー、断続的に行われるキーチェンジは実に見事で、アルバムを通してバンドの推進力となっていますね。ウォーキングベースと4ビートでスウィングするヴィンテージジャズサウンドから一転、楽曲は目まぐるしくもアフロ・ポップのグルーヴを刻み始めます。シンセサイザー&フレットレスベースの高速アルペジオと Nai の鬼気迫る歌唱が一体となり、畳み掛ける終盤は圧巻の一言。リスナーはこの時点で、アルバムがいかにアイデアに溢れた作品であるか理解することでしょう。
楽器隊の群を抜いたパフォーマンスも勿論聴き所の1つです。特にシンセサイザーを操る Simon Marvin の音色の豊かさ、テクニックは白眉。宮崎アニメ、”天空の城ラピュタ”にインスパイアされたという “Laputa” ではシンセサイザーがパステルカラーの波を生み出し、”Jekyll” ではピアノでバンド全員のエキゾチックなルーツと並外れたテクニックを引き出します。”Breathing Underwater” での、サンバ・エレクトロニカなどと称したくなる試みも画期的ですね。
特筆すべきは、”Atari” で Dubstep 的ビートとチップチューンを大胆に使用し、キャッチーで未来色の音楽を提示しています。このレコードで何度も聴ける、Perrin Moss の異なる拍子を刻む多次元的なドラミングと Paul Bender の印象的なリフを刻むリードベースが、楽曲にロックらしいダイナミズムをもたらしていますね。同時に、彼らのプログ的側面も開花しており、YES のような”キメ”を使用し、70’s Rock のムードを盛り込んでいることは非常に興味深い対比ですね。
加えて、LAジャズシーンとの接近もアルバムの重要な要素です。”Jazz the New Chapter” シリーズで紹介されたように、HIATUS KAIYOTE は間違いなく、新たに拡散する Jazz サウンドの先端にも立っています。”Creations Pt.1″ には明らかに FLYING LOTUS からの影響が感じられますし、Nai が16.7歳の時に書いたという “Fingerprints” のサウンドは Robert Glasper の手法と通じます。
トレンドを意識しつつ、独自の音楽を開拓する HIATUS KAIYOTE。今回弊誌ではバンドの顔とも言える Nai Palm にインタビューを行うことが出来ました。5月の来日から3ヶ月での帰還となります。どうぞ!

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HIATUS KAIYOTE “CHOOSE YOUR WEAPON” 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNARKY PUPPY : FAMILY DINNER VOL.2】JAPAN TOUR 2016 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MICHAEL LEAGUE OF SNARKY PUPPY !!

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TWO TIMES GRAMMY WINNER, JAZZ ORIENTED REVOLUTIONALY GROUP, SNARKY PUPPY ARE GOING TO COME TO JAPAN ON JUNE WITH THEIR AMAZING NEW RECORD “FAMILY DINNER VOL.2”!!

2014年には “Something” で Best R&B Performanceを、今年はアルバム “Sylva” が Best Contemporary Instrumental Album を、2度もあの栄誉ある Grammy Award を獲得。世界中のアーティストや音楽ファンから尊敬を集めるコンテンポラリーJAZZ集団 SNARKY PUPPYが新作 “Family Dinner Vol.2” をリリースしました!!同時に cero, origami PLAYERS, Michelle Willis といった新世代の注目アーティストをサポート/オープニングアクトに起用した6月の単独公演も決定しています。
SNARKY PUPPY は北テキサス大学でベーシストの Michael League を中心に結成された、総勢30~40名が所属する大所帯のコンテンポラリーJAZZグループ。Robert Glasper 以降の所謂 “Jazz the New Chapter” 文脈で語られることも多く、その唯一無二な音楽性は新しく拡散するJAZZやアートの形を提唱しているように思えます。
流動的なメンバーですが、主要人物は12名ほど。彼らの多くが JAZZ はもとよりメインストリームのアーティストたちにも引く手あまたで、Kendrick Lamar, John Mayer, Marcus Miller, Snoop Dog, Justin Timberlake, といった才能たちと共演を果たしています。中には日本人パーカッショニスト小川慶太さんや、ソロ作も非常に充実している鍵盤奏者 Bill Laurance といった顔もありますね。
最新アルバム “Family Dinner Vol.2” は2013年にリリースされた “Family Dinner” の続編として制作されました。ゲストボーカリストたちを迎え、彼らの楽曲をリアレンジして収録するという試みは今回も同じですが、前作が R&B 色の濃い作品だったのに対して、今作では世界中からゲストを招き、より多彩でキャッチーな、ワールドミュージックの影響も強く感じさせる作品に仕上がりました。
中でも、アフリカはマリ出身、アルビノの奇才 Sarif Keita をボーカリストに迎え、ブラジルのパンデイロやフルート奏者を合流させた “Soro(Afriki)” の素晴らしさは筆舌に尽くし難いですね。アフリカのオリエンタルな伝統音楽にサンバのリズムが加わり、それを現代的なサウンドで立体的に表現した楽曲は全音楽ファン必聴と断言したいほど。また御年71歳を迎えたペルーの伝説、Afro-Peruvian リバイバルの重要人物 Susana Beca と Joe Satriani に師事し D’Angelo や John Mayer にも認められた8弦ギター使い Charlie Hunter の共演 “Molino Molero” では、ブルースとAfro-Peruvianに共通するルーツ”アフリカ”を強く感じることが出来ます。この2曲は、白人音楽と黒人音楽の歴史的背景にまで想いを馳せるよう意図されているのかも知れませんね。
新進気鋭のボーカル多重録音アーティスト Jacob Collier の “Don’t You Know” も衝撃的。自らのボーカルを多重録音し、アカペラと卓越した楽器の演奏で音楽シーンに登場した彼のパフォーマンスは、この楽曲に置いても輝きを放っていますね。対照的に、アルバムを締めくくる David Crosby 御大の飾り気のない “Somebody Home” での歌唱も見事の一言でした。
“We Like It Here”, “Sylva”, そして今作と、スタジオライブレコーディングを続けている SNARKY PUPPY。彼らの様々な新しい試みからは、音楽シーンを本当に変えてやろうという気概が強く伝わって来ます。そしてそれが遂に受け入れられつつあることはシーンの希望だと心から思います。
今回弊誌では、グループの首謀者 Michael League に独占インタビューを行うことが出来ました。少し難しく綴ってしまったかもしれませんが、彼らの本質は JAZZ, HIP HOP, ROCK, R&B, DANCEといった音楽のハイブリッド良いとこ取り。万人が楽しめる音楽だと信じます。どうぞ!!

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SNARKY PUPPY “FAMILY DINNER VOL.2” : 10/10

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EXCLUSIVE INTERVIEW 【PAT METHENY】JAPAN TOUR 2016 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PAT METHENY !!

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The Legendary Jazz Guitar Player, Pat Metheny set to come to Japan on May!! Don’t miss his brand new band Premiere!!

Jazz、いや音楽シーンのレジェンド、20度ものグラミー受賞歴を誇る天才 Pat Metheny が5月に新バンドのワールドプレミア公演を日本で行います!!
日本では、最近 “JOJO” のエンディングで使用された “Last Train Home” で知ったという若い音楽ファンも多いかも知れませんね。しかし彼は70年代から活躍し、自身の PAT METHENY GROUP で賞賛を浴び続ける才能で、同時に、Jaco Pastorius, David Bowie, Joni Mitchell, Ornette Coleman といったジャンル不問の偉大なミュージシャンたちと共演を果たして来たミュージシャンズミュージシャンでもあるのです。
ジャンル不問…昨今、Jazz the New Chapter で紹介される Jazz ミュージシャンたちが Jazz の新しい扉を押し広げようとしていますが、Pat Metheny の偉大な点はその部分にあり、JTNC のパイオニアでもある気がします。
自身初のリーダー作 “Bright Size Life” では Marvin Gaye の楽曲を取り上げていますし、次の “Watercolors” では二作目にして既に カントリー、フォーク、ポップスの要素をアルバムに自然に取り入れ見事 Jazz と融合させています。Fusion という一言で語られることも多いですが、当時流行していたテクニカルでロックテイストを取り入れた Fusion とは明らかに一線を画しており、 音の先に美しい風景が見えるようなスムーズジャズを推し進めたと解釈することも出来るでしょう。
78年に結成した PAT METHENY GROUP では特に Lyle Mays のピアノと Pat のギターのコンビネーションが抜群でした。そしてグループとしても、革新的な試みを次々に発表して行きます。大胆に8ビートを使用したロックへの回答とも言われる代表作 “American Garage” や、ギターシンセサイザーを導入した “Offramp”。中でも “Offramp” に収録されている “Are You Going With Me?” は常にライブでも演奏されて来た Pat Metheny を象徴するような楽曲です。ギターシンセを使用し、繊細な音色から雄叫びのような咆哮まで自在に操る Pat のギターワークと、ドラマティックなエンディングに花を添える Lyle のピアノ。まさに名演とはこのことだと何度聴いても思ってしまいますね。
後に Pat は ECM から GEFFIN に移籍し、ブラジル音楽に接近。若い頃から影響を受けていた Samba, Bossa Nova, そして Milton Nasciment など MPB(Musica Popular Brasileira)界隈への憧れを反映した “Still Life(Talking)”, “Letter From Home” という2枚の名作を残します。ECM 時代に比べて Jazz 的な面白さは減りましたが、作り込まれたより大衆向けの完成された音楽はさらに Pat の名を世界に轟かせることとなります。”Last Train Home” を聴けば 名手 Paul Wertico でさえ、ブラシで16分を刻む淡々としたプレイに制限されていることが分かります。勿論、エレクトリック・シタールやボイスを使用したりと実験的な試みもありますが、インタープレイなどは抑え、映画のような情景を創り出すことに全神経を注いだように感じられますね。
また90年代には、ラテンアメリカの音楽に傾倒する傍らで、Jim Hall, Charlie Haden, Chick Corea といった Jazz Giant たちとの共演、再演も成功させ、素晴らしいレコードを残しています。
彼の音楽に対する情熱は近年でも衰えることを知りません。2010年に発表した “Orchestrion” はファンの度肝を抜きました。オーケストリオンとは、元々20世紀初頭に存在した複数の楽器を自動制御で同時に演奏させる大掛かりな機械なのですが、Pat はそれをコンピューターを利用して現代に蘇らせたのです。巨大な機械と1人で対峙しながら、生まれる音楽は PAT METHENY GROUP そのものなのですから圧巻です。また、新たに立ち上げた UNITY BAND, そしてマルチプレイヤー Giulio Carmassi を得て進化した UNITY GROUP でもその創造性を遺憾無く発揮しています。さて今回日本で初公開される新しいバンドではどのようなサプライズが待っているのでしょう?今回弊誌では Pat に非常に濃厚な独占インタビューを行うことが出来ました。弊誌初登場のグラミーウイナーです!”Are You Going With Pat?” どうぞ!!

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