カテゴリー別アーカイブ: PICK UP ARTIST

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VEKTOR : TERMINAL REDUX】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVID DISANTO OF VEKTOR !!

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US Sci-fi Prog Thrash Outfit, Vektor Returns With “Terminal Redux”, An Intense And Intelligent Masterpiece For The First Time In Five Years !!

DISC REVIEW “TERMINAL REDUX”

Thrash Revival ムーブメントで頭角を現し、SF的な世界観と Proggy なインテリジェンスで黄金世代にも匹敵する個性を作り上げた US の4人組 VEKTOR が、実に5年振りの新作 “Terminal Redux” をリリースしました!!
73分にも及ぶ大作SF映画のような作品は、アグレッションとアトモスフィア、直情性と実験性の対比が見事で、リスナーにランニングタイムの長さを感じさせないフックに満ちた傑作に仕上がりました。
アルバムオープナー、VOIVOD meets WATCHTOWER とでも例えたくなる “Charging The Void” はまさに VEKTOR を象徴するような楽曲です。キャッチーかつアグレッシブなリフワーク、Black Metal にも通じるようなトレモロとブラストビート、効果的に挿入されるテンポチェンジ。彼らが指標する “Sci-fi Prog-Thrash” のレシピを惜しげも無く披露していますね。
近未来感を演出するドラマティックなコーラスも実に効果的です。エピカル&ドラマティック。”Terminal Redux” は間違いなく以前の作品よりも大幅にドラマ性が増しています。
そのエピカルな進化を強く物語るのが、アルバムの最後を飾る3曲 “Pillars of Sand”, “Collapse” から “Recharging The Void” の流れだと感じました。
“Pillars of Sand” はただただ、キラーチューンという言葉がシックリくる壮絶で強烈な哀愁溢れる5分間。ドラマティックでクラシカルな David と Erik のツインギターは白眉ですし、DEATH の “Crystal Mountain” を思い出すファンも多いのではないでしょうか。
9分を超える “Collapse” の前半は、ボーカル David DiSanto のメロディアスな歌詞をフィーチャーしたほとんどバラードとも呼べる新機軸。この楽曲にとどまらず、David は前作まで多用していた金切り声を抑え、ミッドレンジを生かして”歌う”ことによりフォーカスしているように感じます。SLAYER の Tom Araya も “South Of Heaven” 以降、そういったアプローチを取ることが多くなりましたが、攻撃性を失わず説得力を増した現在の2人のには通じるものがありますね。こちらも DEATH の影響を感じさせる、メタルアンセム的な後半とのマッシュアップが、より楽曲をエピカルで印象的にしています。
続く14分近い大曲 “Recharging The Void” はアルバムを締めくくる楽曲で、同時にアルバムオープナー “Charging The Void” と対となる楽曲。”Terminal Redux” の縮図とも言えるエピックチューンは Thrash と Prog を巧みに融合させ、全てのピースを最高の位置に配置した驚異的な展開力を誇る1曲です。驚くことに、アンビエントなミドルセクションでは David の素朴で優しいクリーンボーカルと共に、女性ソウルシンガーを起用しており、2人のデュエットが織り成す荘厳な雰囲気はリスナーに小宇宙を感じさせるほど美しいですね。
勿論、楽器隊の大健闘も記して置かなければなりません。”Psychotropia” のギターとベースのデュエルや “LCD” のイントロが示すように、時にクラシカル、時にジャジーなリードプレイは実にスリリングで、アルバムの重要な聴き所となっています。
さらに、しっかりと Thrash “Golden Age” の遺伝子を伝えている点もリスナーのリピートを誘います。VOIVOD, DEATH の名前は既に挙げましたが、”Pteropticon” で感じられるようなインテンスは KREATOR をも想起させ、David の Chuck Schuldiner, Mille Petrozza 直系のアジテイトと相俟って最高のエキサイトメントを創出していますね。
今回、弊誌ではバンドのフロントマン、ボーカル/ギターの David DiSanto にインタビューを行うことが出来ました。今年聴くべきメタルレコードの内の1枚。どうぞ!!

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VEKTOR “TERMINAL REDUX” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KNIFEWORLD : BOTTLED OUT OF EDEN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KAVUS TORABI OF KNIFEWORLD !!

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An Experimental Psyche Rock From London, Magical eight piece Knifeworld has just released Kaleidoscopic new record “Bottled Out Of Eden” !!

DISC REVIEW “BOTTLED OUT OF EDEN”

UKが誇る、エクスペリメンタルな 8人組 Psychedelic/Prog Rock バンド、KNIFEWORLD が新作 “Bottled Out Of Eden” をリリースしました!!
あの GONG で Daevid Allen の後任という重責を担う、才能豊かな Kavus Torabi が生み出すクリエイティブな世界観は実にユニークで個性的。”Progressive Ska” などとも形容される独特のホーンセクションがトレードマークです。
勿論、KING CRIMSON から ZAPPA まで、ホーンを使用したプログロックバンドは決して珍しくありませんが、CRIMSON のスタイリッシュと ZAPPA のシアトリカルを併用する彼らのオーケストレーションはやはり魅力的ですね。
“愛する人たちの死”(勿論、Daevid Allen も含む)にインスピレーションを受けて制作された50分のドラマは、喪失と悲しみ、同時に希望と美しさを反映した実にエモーショナルな内容に仕上がっています。その優れたアレンジメント、磨き上げられたサウンドは昨年大きなインパクトを残した TAME IMPALA の “Currents” を想起させる瞬間さえありますね。
実際、”Bottled Out Of Eden” の優れている点は、勿論、GONG, PINK FLOYD, MOODY BLUES, HENRY COW といったプログジャイアンツたちへの憧憬を表現しつつ、モダンなコンポジションや影響をしっかりと取り入れているところにあると感じました。”Art-Rock” を象徴するようなオープニングトラック”High/Aflame”, アルバムのハイライトとも言える “The Deathless” には Sufjan Stevens, APPLESEED CAST といったアートロック/インディーズ、そして THANK YOU SCIENTIST, THE MARS VOLTA といったモダンでプログレッシブなアーティストたちを想起させる瞬間があり、過去と未来のバランスが実に良い塩梅で配置されています。
前作よりもバンドを意識して制作したとインタビューで語ってくれましたが、よりオープンでキャッチーになった彼らの音楽はさらに多くのファンを獲得するでしょう。今回弊誌では Kavus Torabi にインタビューを行うことが出来ました。GONG についても話してくれています。どうぞ!!

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KNIFEWORLD “BOTTLED OUT OF EDEN” 8.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FROST* : FALLING SATELLITES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEM GODFREY OF FROST*!!

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UK Based Modern Prog Titan, FROST* Set To Release Definitely Game-Changing Record “Falling Satellites” on 5/27!! “Progressive Pop” Movement Will Come !!

DISC REVIEW “FALLING SATELLITES”

モダンプログシーンのマイルストーンとなった重要作 “Milliontown” を生み出した、奇才 Jem Godfrey 率いる UK の4人組 FROST* が8年振りとなる待望の新作 “Falling Satellites” を5/27にリリースします!!
ボーカル/ギターに盟友 John Mitchell (Lonely Robot, It Bites), 新しいリズム隊として Craig Blundell (Steven Wilson), 
Nathan King (Level 42) という最強布陣を据えて制作された最新作が3枚目のスタジオアルバムとなる FROST*。興味深いことに、その3枚の作品は全て大きく異なる性質を持つのです。
勿論、3作とも、洗練されたサウンド、優れたメロディー、エレクトロニカとプログの融合という点では共通していますね。しかし、”Milliontown” がカラフルで爽快感溢れる作品であったのに対して、前作 “Experiments in Mass Apeal” は MUSE や RADIOHEAD をさえ想起させる実に内省的な作品でした。そして今作 “Falling Satellites” は間違いなく FROST* にとって最も “POP” なレコードと言えるでしょう。さらに、この作品で彼らはまたしても、モダンプログの領域を押し広げることになるかも知れませんね。
今回、FROST* がシーンに与える驚きは、モダンなエレクトロニカサウンドの大幅な導入です。具体的には ZEDD, SKRILLEX, さらには Justin Bieber の最新作さえ想起させる Dubstep / House を巧みにプログロックに組み込むことで、”Progressive Pop”, “Electronical Progressive Music” とでも形容出来そうな新しく衝撃的なサウンドを生み出しているのです。個人的には、Jem Godfrey の人気プロデューサーとしての1面が大きく反映されたレコードと言えるような気もしています。
“Towerblock” はまさに “Falling Satellites”, 新生 FROST* を象徴するような楽曲だと思います。中間部のスリリングなパートでは、Dubstep をシームレスにプログロックに取り入れていますね。ダンサブルな Jem のキーボードは本当に魅力的でリスナーの心まで踊らせます。同様の手法は、”Heartstrings” のイントロなどでも聴くことが出来ますし、さらに付け加えれば、モダンプログの旗手 HAKEN が新作の “The Endless Knot” という楽曲において似たようなアプローチをとっている事実は非常に興味深いと感じました(奇しくも両バンドとも 80’s prog を高く評価しています)。
また、Justin Bieber が “What Do You Mean” で Tropical House を取り入れ話題となったことは記憶に新しいですが、FROST* が “Closer To The Sun” において行ったアプローチは実はそれに近いのかも知れません。究極にPOPでダンサブル。同時に、ゲスト参加している Joe Satoriani のギターソロは知的かつメロディアスで、そこからの展開はまさにプログロックのそれです。見事な融合、何と巧みな作曲術でしょう!”Lights Out” も同様のフィーリングを持った楽曲ですが、こちらはよりアトモスフェリックで、女性ボーカル Tori Beaumont とのデュエットが白眉ですね。
さらに、”Closer To The Sun” を含むアルバム最後の6曲は “Sunlight” という32分の組曲にもなっているのですが、その中には “The Raging Against the Dying of the Light Blues in ⅞” のように、Jem がインタビューで言及している ANIMALS AS LEADERS を想起させるような Djenty なパートを持つ楽曲も組み込まれており、彼の音楽的な貪欲さには頭が下がる思いです。
とはいえ、決してトレンドばかりを追求しフィーチャーしている訳ではなく、”Numbers” で聴かれるイントロのシーケンスフレーズ(新楽器 “The Chapman Railbord” で奏でられている)などはまさに FROST* のトレードマークですし、Steve Vai 的なオーケストレーションも見事の一言。”Signs” も典型的な FROST* をイメージさせる佳曲ですね。
何より、アルバムを通して彼らが紡ぐメロディーの数々は、珠玉という言葉が相応しい心から魅力的なものばかり。”EPM(Electronic Progressive Music), “Progressive Pop”, 呼称はなんであれ、彼らが2016年にモダンプログシーンに投下するものの意味は非常に大きいと感じました。今回弊誌では、FROST* の頭脳、Jem Godfrey にインタビューを行うことが出来ました。意味のあるインタビューだと思います。どうぞ!!

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The full track-listing
1. First Day
2. Numbers
3. Towerblock
4. Signs
5. Lights Out
6. Heartstrings
7. Closer To The Sun
8. The Raging Against The Dying Of The Light Blues
9. Nice Day For It…
10. Hypoventilate
11. Last Day
12. Lantern (bonus track)
13. British Wintertime (bonus track)

FROST* “FALLING SATELLITES” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COBALT : SLOW FOREVER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERIK WUNDER OF COBALT !!

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“American Black Metal” has evolved ! Cobalt Return With Full-of-intensity Discs and a New Screamer on “Slow Forever”!!

DISC REVIEW “SLOW FOREVER”

“American Black Metal” という唯一無二のジャンルを確立した COBALT が衝撃的な2枚のレコードと新たなスクリーマーを得てシーンに戻って来ました!!
Black Metal の出自は勿論欧州です。しかし、当然ながら、シーンが人気を博し拡散するに連れて世界中から Black Metal バンドが現れるようになりました。US から現れる Black Metal は興味深いバンドが多いようにも感じますね。
WOLVES IN THE THRONE ROOM, PANOPTICON に代表される自然崇拝を掲げたアトモスフェリックなカスカディアンブラック、KRALLICE, LITRUGY といったエクスペリメンタルなブラックメタルなど多種多様で実に個性的。中でも COBALT は前作 “Gin” においてヨーロッパの Black Metal にUSロック/メタルからの影響を多大に持ち込み、シーンを驚かせました。
残念ながら、それから7年という長いインターバルの間に、強い絆で結ばれていた不世出のボーカル Phil と 全ての楽器をこなす Erik は袂を分かちます。事の詳細はインタビューを参照していただくとして、残った Erik は新たに LORD MANTIS などで知られる Charlie Fell とタッグを組むこととなりました。そうして、難産の末生まれた新作 “Slow Forever” は、キャッチーかつアグレッシブ、非常に濃厚で革命的なダブルアルバムとして遂にリリースされたのです。あの Pitchfork誌で8.4という高得点をマークしたことも記憶に新しいですね。
まず記して置くべきは、Erik もインタビューで認めている通り、もはや Black Metal の要素はほとんど残っていないという点でしょう。音楽だけにフォーカスすれば、”Slow Forever” は強烈なインテンシティーと高度なインテリジェンスを纏った純粋な “American Metal” と言えるのではないでしょうか。
アルバムを通して、作品は Erik の TOOL に対する憧れが見事に開花していますが、大曲 “King Rust” は特に象徴的です。ブラストビートの代わりに使用される、プリミティブでトライバルな本能的ビートはまさに Danny Carey のそれで、リスナーの思考に直接訴えかけるような力強さを持っています。
有機物質のように形を変えながら、次々と繰り出される印象的なリフワークとミニマルでマスマティカルなアプローチも実に効果的。同時に、新加入 Charlie の野性的で獰猛なスクリームにより、TOOL 以上に NEUROSIS を感じるリスナーも多いでしょう。
しかし勿論、アメリカンミュージックからの影響は TOOL のみにはとどまりません。アルバムオープナー “Hunt the Buffalo” に代表されるように、クリーンギターを使用したブルース/カントリー/フォークミュージックに通じるリックの数々も彼らの重要なアイデンティティーとなっていますし、それは、突き詰めれば Mark Tremonti が CREED, ALTER BRIDGE といった Post-Grunge の重要バンドたちの中で行ってきた挑戦にも通じます。
さらに、彼らを語る時、ニューオリンズのスラッジモンスター EYEHATEGOD と USアンダーグラウンドの雄 SWANS をイメージすればより理解が深まるでしょう。メタルとハードコア、パンク、オルタナティブロックとフォーク、ノイズなど、彼らのダークでクロスオーバーな精神性はまさに COBALT と深く通じているからです。特に、”Elephant Graveyard” はここ数年でも傑出した地下音楽のクロスオーバーチューンだと感じました。
今回弊誌ではバンドの頭脳、Erik Wunder にインタビューを行うことが出来ました。以前から敬愛する、ヘミングウェイの有名なノーベル賞受賞スピーチ “at best, writing is a lonely life” の一節を “Iconoclast” で使用していますが、同様の気持ちだったのかも知れませんね。どうぞ!!

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COBALT “SLOW FOREVER” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SITHU AYE : SET COURSE FOR ANDROMEDA】JAPAN TOUR 2016 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SITHU AYE !!

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One of the most important release of Instru-Metal scene in this year !! Sithu Aye set to release magnificent double album “Set Course for Andromeda” on 5/4!!

DISC REVIEW “SET COURSE FOR ANDROMEDA”

我らが “先輩” こと、グラスゴーが生んだ才気あふれる新世代ギタリスト Sithu Aye。5/13から始まる初の日本ツアーに先駆けて、5/4に新作 “Set Course for Andromeda” をリリースします!
フルアルバムとしては2012年の “Invent the Universe” 以来となる新作は、ダブルアルバム、76分の壮大なエピックに仕上がりました。同時に、最も重要な今年の Instru-Metal 作品になることは間違いないでしょう。
近作では、コラボレートも行った PLINI と路線を同じくするような、メロディー重視でフュージョン要素の濃い音楽性にフォーカスしていた Sithu Aye ですが、”Set Course for Andromeda” では “Invent the Universe” 以前のようなヘヴィーグルーヴやテクニカルな展開を大幅に復活させており、改めて彼のアイデンティティーを強く印象付けています。同時に、ジャズ、オーケストラ、シンセサイザーといった幅広い要素も巧妙に使用されており、多様性に富んだ現代的なアルバムとも言えるでしょう。
ゲストソロイストも実に豪華。同志 Plini をはじめ、David Maxim Micic (DESTINY POTATO), Aaron Marshall (INTERVALS), Mark Halcomb (PERIPHERY), Yvette Young (Covet), THE HELIX NEBULA というモダンギターシーンを象徴するようなプレイヤーたちが集結し作品に色を添えています。
チップチューン的イントロが印象的な “Set Course for Andromeda!!!” 、”Constants and Variables”, “Transient Transistors” のヘヴィーグルーヴはまさに初期 Sithu Aye ですし、驚くほどジャズな “Spiral” まで Disc 1の多様性はカラフルな万華鏡のよう。ただ、Disc 1では全ての楽曲にゲストを配しているのに対して、Disc 2、29分の大曲 “The Andromedan” は彼1人で作曲、ソロ、プロデュースを全てこなしていることを考えれば、作品のキモは Disc 2 にあるようにも思えます。
実際、大曲の第一楽章 “PT1: A Single Step” は、新しいことに挑戦したかったと語る Sithu の意志を体現したかのような楽曲です。ジブリ作品を想起させる雄大でオリエンタルなメロディーが、ストリングス(二胡)とアコースティックギターを伴って紡がれる美しい楽曲は、彼の新しい1面を伝えると共に、代表的な1曲となる可能性を秘めています。
さらに見事なのは、”The Andromedan” 自体も、”A Single Step” で提示したオリエンタルなテーマを巧妙に変化させつつ使用しながら、彼の様々な魅力を引き出し伝えている点です。”PTⅡ: Mystic Village” でのミニマルなポストロック、”PTⅣ: The Darkness Within” から “PTⅤ: Rebirth” にかけての Djent + Dream Theatre 的ダークでテクニカルな展開、そしてオーケストラルな大円団 “PTⅥ: Mother of Creation” まで、息つく間もないほど濃厚な音楽世界はリスナーを壮大な宇宙旅行へと誘います。
さらに、ソロイストとしての Sithu も素晴らしく円熟して来たように感じます。見事なコール&レスポンス、リックの豊富さ、そして強烈なエモーション。楽曲のレベルを一段引き上げるようなソロワークが秀逸なギターアルバムでもありますね。
今回弊誌では Sithu さんに3度目のインタビューを行うことが出来ました。テクノロジーコンサルタントという仕事を辞して、フルタイムミュージシャンとして挑む彼の新たな出発は、野心的でキャッチーで多様性に富んだ素晴らしいレコードと共に始まります。どうぞ!!

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SITHU AYE “SET COURSE FOR ANDROMEDA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSCURA : AKROASIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEFFEN KUMMERER & LINUS KLAUSENITZER OF OBSCURA !!

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German Tech-Death master OBSCURA is back with new members and new sounds ! Incredible new record “Akroasis” gives you thought-provoking lyrics and maelstrom of technicality!!

DISC REVIEW “AKROASIS”

ドイツのテクデスマスター OBSCURA がメンバーチェンジを経て傑作 “Akroasis” と共にシーンに帰還を果たしました!!
テクデスシーンの中でも屈指のロースターを揃えた OBSCURA は、そのコスミックな世界観、メロディックでありながら複雑なリフワーク、そして CYNIC や DEATH からの遺産を感じさせる音楽性でデビューから常に注目の存在でした。しかし、前作リリース後、Christian Muenzner, Hannes Grossmann という作曲にも大いに貢献していたテクニシャンたちが脱退。バンドはしばらくの沈黙を余儀なくされていたのです。
2014年、待望の復活がアナウンスされた OBSCURA は当初、新メンバーとして、PANZERBALLETT などで知られる Sebastian Lanser と、フレットレスギターを操るFountainhead こと Tom Geldschläger がクレジットされていました。しかし、Tom は、”Akroasis” ではプレイしているものの、短期間で脱退してしまい、現在は Rafael Trujillo が加わっています。また、Linus もバンドに加入したのが2011年9月ですからフルアルバムに参加するのは初となりますね。
2ndアルバム “Cosmogenesis” と、前作 “Omnivium” は疑うまでもなく、テクデスシーンに名を残す名盤でした。ジャズからの影響も感じさせる、フレットレスベースを使用したメロディックで浮遊感溢れるその音楽性は、モダンなテクデスバンドたちのカウンターパートとして、モダンメタルシーンで純然たる存在感を発揮していましたね。ただ同時に、強烈なアグレッションの裏返しとしてバラエティーに欠けていたのも事実。
Linus がインタビューで言及している通り、”Akroasis” は静と動、メロディーとアグレッションという対比が生み出す、ダイナミズムに溢れた作品に仕上がりました。以前よりも瞑想的でさらに思慮深い、クリーンギターさえ多用したプログレッシブなサウンドが印象的で、テクデスシーンのトレンドセッターとなる可能性を孕んでいます。
アルバムオープナー “Sermon of the Seventh Suns” はクラシカルな OBSCURA サウンドに新要素を少し加えた、ファンへの招待状のような楽曲。Fountainhead のメロディアスでありながら奇抜な、フレットレス特有の浮遊感を含んだソロワークが非常に耳を惹きます。”Ten Sepiroth”, “Perpetual Infinity” といった楽曲でも強烈なリードを聴かせる彼のプレイは作品の顔の1つとなっており、脱退は残念に思えます。インタビューからも分かりますが、やはり音楽性の違いと言うよりも人間関係が原因だったのではないでしょうか。
“Ode to the Sun” を聴けば、彼らの進化やアルバムのテーマが伝わるでしょう。”Akroasis” を象徴するような1曲は、新ドラマー Sebastian Lanser の見事なオーケストラパーカッションの上に成り立っています。CYNIC を想起させる、ヴォコーダーを使用したメロディアスな歌唱が、マンモスのようにヘヴィーなギターリフ、グロウルのカウンターとなり実に際立っています。パーカッションとクワイアが導くクライマックスの扇情力は圧倒的ですね。
同様に、15分の壮大なエピック、”The Weltseele” も実にプログレッシブ。冒頭で美しいアルペジオに絡みつく Linus のフレットレスベースは暖かく印象的で、アルバムを通して言えるのですが、前作までとは比較にならない程効果的です。インタビューで今回のテーマの1つがポリリズムだと語ってくれましたが、この楽曲では特に、Sebastian のエスニックなグルーヴを基にしたポリリズミックなアプローチが素晴らしく、MESHUGGAH / Djent の方法論とはまた別の彼ららしいやり方を見せつけていますね。静と動の対比もまたアルバムのテーマですが、異国感漂うオーケストラサウンドを大胆に導入した “The Weltseele” にはストリングスのみの美麗なパートまで存在し、新しい OBSCURA をアピールしています。
また、既に CYNIC の名を挙げましたが、タイトルトラックや “Fractal Dimension” のように DEATH を想起させる場面も多く、凄みを増した Steffen のダークでディープな歌唱はあの Chuck Schuldiner をさえ彷彿とさせますね。Steffenが完璧に近いと語る、V. Santura のプロダクションも作品をさらに1段上に引き上げていることを重ねて記しておきましょう。
今回弊誌ではバンドの要である Steffen Kummerer, Linus Klusenitzer 2名にインタビューを行うことが出来ました。重要な作品、重要なインタビューだと考えています。どうぞ!!

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OBSCURA “AKROASIS” : 10/10

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WORLD PREMIERE : “ABANDON” “THE VOID ALONE” “SCAR QUEEN” 【FALLUJAH : DREAMLESS】


WORLD PREMIERE: NEW SONG!! “ABANDON” “THE VOID ALONE” “SCAR QUEEN” OF FALLUJAH !!

Atmospheric Prog-Death Metal Master from US, FALLUJAH set to release game-changing new record “Dreamless” on 4/29!!

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ここ数年のメタルシーンにおいて、”最も興味深いバンドの一つ”などと評される変革者、アンビエンスとテクニカルを革命的センスで共存させる FALLUJAH が4/29に待望の新作 “Dreamless” をリリースします!!

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»Dreamless« – Tracklist:
01. Face Of Death
02. Adrenaline
03. The Void Alone
04. Abandon
05. Scar Queen
06. Dreamless
07. The Prodigal Son
08. Amber Gaze
09. Fidelio
10. Wind For Wings
11. Les Silences
12. Lacuna

【ABOUT “DREAMLESS”】

FALLUJAH caused quite a stir in the music world with the release of their latest album, »The Flesh Prevails«. It topped several “best of 2014” lists in not only the metal world, but in the progressive music community as well and won over scores of new fans with their fresh, emotive, and technically challenging music. As a result, FALLUJAH has paved the way for a new melodic and atmospheric perspective on death metal!
»Dreamless« was recorded at Sharkbite Studios with producer Zack Ohren (ANIMOSITY, SUFFOCATION, ALL SHALL PERISH, DECREPIT BIRTH), and was mixed and mastered by Mark Lewis (DEVILDRIVER, CANNIBAL CORPSE, WHITECHAPEL, THE BLACK DAHLIA MURDER, CARNIFEX) in Orlando, FL at Audiohammer. Cover art was created by Peter Mohrbacher. The album features guest vocal appearances by Tori Letzler, Mike Semesky and Katie Thompson and a guest guitar solo by Tymon Kruidenier (ex-CYNIC, EXIVIOUS).

前作 “The Flesh Prevails” のテクニカルとアトモスフィアを共存させた作風は、フレッシュでエモーショナルとの評判を呼び、メタルシーンのみならず、プログコミュニティーまでも強く魅了しました。
あれから2年。今作 “Dreamless” において印象的なのは、まずは女性クリーンボーカル Tori Letzler がゲストとして計4曲に参加することで増したキャッチーさです。アンビエンスとアグレッションを見事に対比させるこのコラボレーションは実に際立っていますね。メロディーの質もさらに向上しているように感じます。
同時に、トレモロリフの使用頻度はさらに増えており、高いテクニックで繰り出される美麗なシュレッド(PLOYPHIA を想起させる場面も)とトレモロの併用が彼らのユニークさ、個性を物語り、素晴らしいアトモスフィアを創造しています。映画と映画が与える感情をテーマとした今作ですが、音楽性もまさしくシネマティックという称号がふさわしいと感じました。
加えて、前作に比べてグルーヴも多様化しており、ドラムすら収録されていないアンビエントなピースまで存在します。ブライトなプロダクションも白眉で、テクデスに留まらず、多くのファンを獲得する可能性に満ちていますね。
結果として、”Dreamless”はエモーションとテクニックに溢れ、独自のアトモスフェリックデスメタルを進化させた傑作となりました!!ぜひチェックしてみてくださいね。

【ALEX HOFMANN TALKS ABOUT “DREAMLESS”】

“Simply calling it death metal would be inaccurate, This album is a major step forward with the goal in mind of transcending the limitations of not only the death metal sound but the scene at large. Anyone who is a Fallujah fan will put the record on and immediately know who it is they are listening to, but there’s a diverse palette represented here that our previous albums lacked. The aim of the album seemed a lot more focused this time with what we wanted to achieve. With each album we write it becomes apparent that we get better at actual songwriting.
The main theme revolves around various films and the emotions they evoke from my own past, Each song manifests not only the themes within dialogue, but the colors and cinematography as well. I found it refreshing not to have to dig deep back into my own head and try to force a sense of artistic flare on ideas or experiences that in many ways are not grimly poetic. Telling a story about the struggles of characters in an environment that is real and down to earth was so interesting because there is no sense of insincerity. You are in many ways retelling a story from your own perspective, one that is driven by empathy and common experience. The real treat will be seeing if the fan base can decipher the themes of the lyrics and figure out what films correlate with which songs.
I want the kids to be able to put the record on and actually feel something real,I think if I had to direct their emotions it would be those of nostalgia, memories and someone of blissful ignorance. I want a fan to put on a song from a new record that he’s never heard before and have it take him back to a time or place that the song has no attachment to. The melodies and atmospheres on this record are powerful in that way for all of us so we hope it has the same effect on other.”

単純に “Dreamless” をデスメタルと呼んでしまうのは正確ではないね。この作品はデスメタルのみならず、シーン全体の限界を超越するというゴールのための大きな1歩なんだよ。勿論、FALLUJAH のファンなら、このレコードを聴けばすぐに僕たちの音楽だと分かるだろうね。だけど、この作品には、前作に欠けていた色とりどりの多様性が存在するんだよ。アルバムの目標は、僕たちが成し遂げたいことに、よりフォーカスすることだったように思えるね。過去から作品を遡れば、僕たちのソングライティングがどんどん良くなっていることが分かると思うよ。
作品のテーマは、様々な映画とそれに纏わる話。映画で感情的になって、自身の思い出が喚起されることがあるよね。どの楽曲も、セリフだけでなく、色使いや撮影技術も同様にテーマとしているよ。
キッズにはこのレコードを聴いて、何かリアルなものを感じて欲しいと思うよ。もし僕が、彼らの感情に直接触れられるなら、きっとこのレコードがノスタルジーや思い出、幸せな子供時代といったものを喚起していることが分かるだろうね。ファンのみんなには、新作から未知の新曲を聴いて、自分自身の過去の時間や場所に浸って欲しいな。このレコードのメロディーやアトモスフィアは強力で、僕たちはそうすることが出来たから。みんなにも同じような効果があれば良いな。

ALEX HOFMANN

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Fallujah Facebook Page
Nuclear Blast Records

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NOVEMBRE : URSA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CARMELO ORLANDO OF NOVEMBRE !!

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Giant awakes!! Italian Prog-Goth/Doom maestro, Novembre are back with fantastic Post-Peaceville record “URSA” for the first time in nine years !!

DISC REVIEW: “URSA”

イタリアの Prog-Goth Giant、NOVEMBRE が9年の長いハイエイタスの後、待望の新作 “URSA” をリリースしました!!
90年代初頭、ANATHEMA, PARADISE LOST, MY DYING BRIDE といったバンドが構築した美麗な Gothic Death Metal サウンドは、彼らが契約していたレーベルの名を取り “Peaceville Sound” と表現されています。00年代に、ほとんど話題にも登らなくなったそのサウンドは、2010年代に入り、ANATHEMA, KATATONIA のような Post-Prog サウンドへの深化、もしくは昨年の PARADISE LOST, DRACONIAN のような強烈でモダンな原点回帰により、シーンのトレンドへと戻って来ているように思えます。
そういった状況の中、遂にイタリアの巨人 NOVEMBRE も動き出しました。叙情と怒り、プログ/ドゥーム/デス/ゴシックを見事に共存させた前作 “The Blue” は間違いなく、彼らの長いキャリアにおいて集大成と呼べるような傑作であったにも関わらず、時代は味方することなくバンドは長い沈黙に入ってしまいます。その間に、残念ながらメンバーこそ Carmelo Orlando、Massimiliano Pagliuso の2名となってしまいましたが、機は熟しましたね。
“Peaceville Sound” が復活を遂げた今、彼らの新作 “URSA” は奇しくも NOVEMBRE 初期の名作 “Wish I Could Dream It Again”, “Classica” 時代のサウンドに少しばかり原点回帰を果たしたようにも感じられます。あの時代を深く知るプロデューサー Dan Swano の起用もその要因の1つかも知れません。同時に、作品には ALCEST 以降の Post-Black サウンド、現代的なアトモスフィアも持ち込まれており、結果として “URSA” は、過去と現在の憂鬱で美麗なメタルサウンドを味わえる傑出した作品に仕上がっています。
9年の沈黙を破るかのような雄弁なアルバムオープナー “Australis” は幽玄で美しく、ダイナミックかつアトモスフェリック。まさに “Post-Peaceville Sound” とでも表現出来るような世界観を誇ります。
“The Rose” がロシア由来のメランコリックなメロディーで彼らの帰還を告げれば、前作のファンを狂喜させるようなプログメタル要素の強い佳曲 “Umana” でリスナーは完全に “URSA” の虜となるでしょう。”Umana” は8年前に書かれた楽曲だそうですが、熟成期間を経て Post-Black 化した OPETH のようなサウンドに仕上がったのは実に興味深いですね。
タイトルトラック “Ursa” はヨーロピアンフォークのヴァイブを強く取り入れています。これは作品のタイトルが、ジョージ・オーウェルの “Animal Farm” を引用したことと関連していて、つまり、あの時代のヨーロッパを音楽的に再現することで、現代のアニマリズムを風刺し批判しているのです。
KATATONIA の Anders がゲスト参加しシングルカットされた “Annoluce” は身をよじるようなメロディーが秀逸な典型的 “Peaceville Tune”。そして続く9分にも渡るインストゥルメンタルチューン “Agathae” はまさに初期の彼らと今を繋げるミッシングリンク。20年前、”Wish I Could Dream It Again” 当時に書かれたという楽曲は何年もの間、ギタートラックを重ね続けてようやくここに日の目を見たのです。彼らの楽曲に対する拘りが強く感じられるエピソードですね。
70年代の香りを感じさせる、Dan Swano 印の宝石のような “Fin” で60分の11月劇場は幕を閉じます。
今回弊誌では、ギター/ボーカルを担当する Carmelo Orlando にインタビューを行うことが出来ました。今作は時代も必ずや味方すると思います。どうぞ!!

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NOVEMBRE “URSA” : 9.6 / 10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIZZY MIZZ LIZZY : FORWARD IN REVERSE】JAPAN TOUR 2016 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TIM CHRISTENSEN OF DIZZY MIZZ LIZZY !!

Dizzy Mizz Lizzy Rødovre Rådhusplænen 27 maj 2016

Danish Legend is back!! DIZZY MIZZ LIZZY has just released their new milestone, “Forward In Reverse” for the first time in twenty years!!

DISC REVIEW “FORWARD IN REVERSE”

リユニオンを果たしたデンマークの巨人、DIZZY MIZZ LIZZY が遂に待望の復活作 “Forward In Reverse” を日本先行リリースしました!!
ロック/メタルの概念が再構築された90年代初頭、ヨーロッパから登場した DML は確実にゲームチェンジングな存在でした。主に US 主導で発生した大きなオルタナティブの波は、革新的でしたが、”メロディー” に対する考え方の違いから1部で拒否反応を生んだのも事実です。しかし、ユーロという土壌で育まれた DML の音楽は、両者の優れた部分を併せ持ったハイブリッドな存在として、2枚のアルバムしか残さなかったにもかかわらず、解散後もデンマーク本国はもとより、日本、そして世界中で愛され続けて来たのです。
20年振り、通算3枚目のフルレングスとなる “Forward In Reverse” には3曲ものインストゥルメンタルトラックが収録されています。そしてこの3曲こそが DIZZY MIZZ LIZZY の Yesterday & Today を紐解く鍵となるような気がします。
アルバムオープナー “Phyling Pharaoh” はタイトルが示す通り、オリエンタルなムードを纏っています。こういった浮遊感のあるエスニックなメロディーは、90’s オルタナバンドにも通じ、例えば、名曲 “Waterline” のインストパートなどでも聴くことが出来ますね。
“Frey” は美しいアコースティックな小曲。Tim が強く影響を受け、名作”Ram”を完全再現してしまうほど敬愛している Paul McCartney が THE BEATLES 時代に残した “Blackbird” を彷彿とさせます。
そして “Mindgasm”。彼らの特徴である “リズム遊び” を最大限に活かした楽曲は、躍動感に満ち、少しずつ音の並びやリズムパターンを変化させていくことで、独特のスリルとダイナミズムを生み出していますね。
言い換えれば、「Alternative, Beatles, Progressive」。この3要素こそ DML の解体新書だとアピールしているように思えたのです。余談ですが、”3″ という数字には、インタビューで語ってくれたように思い入れがあるようで、勿論、バンドは3ピースですし、タイトルトラック “Forward In Reverse” は3拍子で構築された復活の狼煙です。
では、彼らは単にノスタルジアのためだけに再結集したのでしょうか? 否。”Rotator” からの20年は作曲家としての Tim、演奏家としての DML を見事に成熟させました。
Loud Park 2015 で目撃した DIZZY MIZZ LIZZY は非常にオーガニックでスポンティニュアスなライブバンドでした。次々と繰り出される、インプロヴィゼーションやインタープレイは、あの Jimi Hendrix を想起させるほどで、ロックの源衝動を喚起させるに充分な凄みがありましたね。そして、彼らは “Forward In Reverse” にもその空気感をそのまま持ち込んでいます。インタビューにもある通り、インストを多数収録したのは、”今”の彼らの演奏家としての充実ぶり、自信の現れでしょう。
楽曲面で見れば、”Made to Believe” “Love At Second Sight” のような新しい DML のアンセムとなるような楽曲と並んで、Tim がソロで養ってきたより内省的でメロディアスな “Something So Familiar” “Say It To Me Anyway” も収録されており、さらに音楽性の間口が広がった印象です。また、Tim はトレードマークであるギターとボーカルのユニゾンを過去作よりも多用しており、DML のカムバックを強く印象付けています。
結果として、リユニオン作品としては異例の、瑞々しさに満ちたフレッシュで新たな代表作が誕生したように思います!
今回弊誌では、Tim にインタビューを行うことが出来ました。5月には単独公演も控えています。どうぞ!!

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DIZZY MIZZ LIZZY “FORWARD IN REVERSE” : 9.8/10

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