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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUKES OF THE ORIENT : DUKES OF THE ORIENT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERIK NORLANDER FROM DUKES OF THE ORIENT !!

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John Payne & Erik Norlander, A Journey That Started With The Supergroup Asia Gives You The Next Chapter Of Legacy, With Dukes Of The Orient !!

DISC REVIEW “DUKES OF THE ORIENT”

誇り高きプログレッシブの遺産と、陰りを帯びた伝統のメロディーを受け継ぐ稀代のミッシングリンク John Payne & Erik Norlander。両雄の鼓動と哲学が交差する DUKES OF THE ORIENT は、凛とした王の血脈を真率に後の世へと伝えます。
巨星 John Wetton の逝去こそが DUKES OF THE ORIENT 生誕のきっかけでした。長らく Wetton の後任として ASIA を牽引し孤軍奮闘を重ねた勇夫 John Payne は、厳しく比較され続けたマエストロの死を機縁に ASIA の金看板を降ろす決断を下します。それは遂に訪れた、彼に巣食う潜在的重圧からの解放だったのかも知れません。
ご存知の通り、ASIA は Payne がフロントを務めた “Paysia” の不遇もあり2006年にオリジナルメンバーでのリユニオンを果たしています。マザーシップから突如として下船を余儀なくされた Payne は、Geoff Downes を除く後期 “Paysia” のメンバー Guthrie Govan, Jay Schellen を伴い、日本が誇る鍵盤の大家、奥本亮氏をリクルートし新たなプロジェクト GPS を立ち上げ唯一のアルバム “Window to the Soul” をリリースしたのです。
“Paysia” の作品となるはずだった “Architect of Time” から楽曲を流用した “Window to the Soul” はメンバーの卓越した技量を反映した充実作でしたが、結局は Payne が ASIA の呪縛から解き放たれることはなく、GPS はオリジナル ASIA の了承を経て ASIA の楽曲をプレイする ASIA Featuring John Payne へと形を変えて存続することになったのです。
ASIA Featuring John Payne で John と運命の邂逅を果たしたのがキーボードウィザード Erik Norlander でした。妻 Lana Lane の作品をはじめ、自身のバンド ROCKET SCIENTISTS, DIO の落胤 LAST IN LINE 等でスマートかつロマンティックな鍵盤捌きを披露するツボを十二分に心得た名コンポーザーとの出会いは、10年という遥かなる時を超え ASIA の名と別れを告げた素晴らしき DUKES OF THE ORIENT の音楽へと繋がることとなりました。(但し、ASIA Featuring John Payne もライブアクトとしては存続するそう。)
異論は多々あるでしょうが、Payne をフロントに据えた ASIA は、少なくとも音楽的には充実したスティントでした。Downes/Payne のコラボレーションは、90年代から00年代初頭というメロディック/プログロック不毛の時代に、確かに命を繫ぐ質実なる実りをもたらしました。ただ、ASIA らしいロマンチシズムから意図的に距離を置き、Payne の野性味溢れる声質をハード&キャッチーに活かす選択は、忠実なファンやレーベルからのサポートをも遠ざける結果になりました。プログレッシブポップが花開く近年を鑑みれば或いは時期尚早だったのかも知れませんね。
ASIA の名を返還した DUKES OF THE ORIENT で John Payne は自由でした。John Wetton との差異を殊更強調する必要もなく、自らの内なる ASIA 全てを表現することが出来たのかも知れませんね。
実際、”血の絆” を響かせるオープナー “Brother In Arms” はオリジナル ASIA と “Paysia” がナチュラルに融合したバンドのマイルストーンだと言えるでしょう。ハードでダイナミックなアレンジや Payne のトレードマークとも言える重厚なコーラスワークは “Aria” の頃の “Paysia” を、溢れ出る哀愁に叙情、ロマンチシズムはオリジナル ASIA をそれぞれ喚起させ双方の美点を5分間のドラマへと昇華します。
同様に “True Colors” の劇的なメロディーを宿す “Strange Days” では、繊細なアレンジメント、アンセミックなキーボード、Guthrie Govan の傑出したギターワークで “Aura” で示した “Paysia” の可能性をも明確に示唆します。
勿論、オリジナル ASIA のコードセクエンスや “ダウンズサウンド” を惜しみなく披露する “Time Waits For No One” “Fourth of July” 等はやり過ぎの感もありますが、同時に荘厳にして華麗、好き者には堪らない胸踊る完成度であることも事実。
加えて、Erik が 「僕は ELP, YES, KING CRIMSON, JETHRO TULL, PROCOL HARUM といった偉大なバンドたち、70年代のブリティッシュプログと共に育ったんだ。それこそが僕の音楽的なルーツだよ。同じようなルーツを ASIA も持っているんだ。」 と語るように、”Fourth of July” のドラマティックな後半部分では、ASIA よりも “プログレッシブ” な先人達の遺産を巧みに消化し、8分間のエピックに相応しき構成と展開を築き上げているのですから感服の一言です。
“A Sorrow’s Crown”, “Give Another Reason” で魅せるチャーチオルガンやスパニッシュギターの躍動感も DUKES OF THE ORIENT の存在感を一際掻き立て、Jay Schellen のコンテンポラリーかつ安定感のあるドラミング、Rodney Matthews の美しきアートワークと共に UK プログレッシブの伝統と血の繋がりを強く主張しています。
少なくとも、90年代からシーンを見守って来たファンであれば、Payne & Norlander 2人の才能や存在自体があまりにも過小評価されていることは憂慮しているはずです。”Dukes of the Orient” にはその評価を覆すだけの稀有なる魔法が存在するのでしょうか?”Only Time Will Tell”。時が来ればその答えは出るはずです。きっと良い方向に。
今回弊誌では、Erik Norlander にインタビューを行うことが出来ました。奥様からもメッセージをいただけましたので、Lana Lane ファンも必読です。どうぞ!!

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DUKES OF THE ORIENT “DUKES OF THE ORIENT : 9.8/10

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