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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TC.KYLIE : RE:BIRTH よみがえり】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TC. KYLIE !!

“Just As Dream Theater Layers Contrasting Musical Ideas To Build Tension And Release, I Often Blend Jazz Fusion With Cinematic Storytelling, As Seen In My Reinterpretation Of Merry-Go-Round of Life.”

DISC REVIEW “RE:BIRTH よみがえり”

「今日のジャズは、伝統と革新の両方を取り入れた、境界を押し広げ、進化し続ける芸術なの。 チェット・ベイカーやオスカー・ピーターソンのようなクラシック・ジャズの伝説がその基礎を築いた一方で、モダン・ジャズはニュージャズ、ジャズトロニカ、フュージョンにまたがり、ヒップホップ、エレクトロニック、ファンクといったジャンルを融合させている。 ミュージシャンたちは現在、それぞれの文化的遺産をジャズに注入し、ユニークなサブジャンルを生み出している。 例えば、日本のアシッド・ジャズは、Jabberloop, Toconoma といったバンドに見られるように、複雑なグルーヴ、映画のようなハーモニー、躍動的なブラス・アレンジを披露する。Fox Capture Plan のようなバンドは、ストリングス・アンサンブルやオーケストラを加えることも得意としているよね」
モダン・メタルは今や多様性とローカルな文化の融合を謳歌する一大ムーブメントとなっていますが、ジャズの世界にもそうした伝統と多様性の蜜月が訪れているようです。TC.KYLIE は、香港、日本、イギリスの文化を融合させたデビュー・アルバムでまさに最先端の音楽的哲学と共鳴して、ダイナミックなジャズ・フュージョンを生み出しました。日本のジャズ・ロックを象徴するキーボードとシンセ・キーターで、カントンポップとUKジャズの息吹を纏い、ダイナミックにステージをリードする TC. KYLIE には、それができるだけの人間的深みがあります。
「ロンドンに移り住んだことは、私の人生における新たな一歩で、人生の自由、創造的な自由、そして芸術的な探求を意味する。香港はかつてイギリスの植民地だったから、この2つの都市の歴史的なつながりは私にとって深い意味を持つのよ。私はフルタイムで音楽を追求する前は、香港でニュース・ドキュメンタリー・ジャーナリストとして働き、複雑な政治的風景の中で人間の物語を紡ぐことを専門としていたの。この経験は、ストーリー・テリングと文化的アイデンティティに対する私の深い認識を形成し、現在、私の作曲とアレンジに浸透している要素ともなっているの」
TC. KYLIE が生まれ育った香港からロンドンへと旅だったのは自由を手にするためでした。それは、人生の自由であり、創造的な自由でもあります。ジャーナリストとして働いていた香港時代、彼女は生まれ育った故郷の複雑な政治的背景を思うように綴れない状況に悩みます。そして、彼の地に住む人々が、香港の魂であるカントンポップと故郷の悲喜交々を関連付けて生き抜いていることにも気づかされます。自分の愛するジャズだって文化を綴るハーモニーだ。ならば、ジャズでもカントンポップのように地元と密着したストーリー・テリングができるのでは?
「音楽の旅が進むにつれ、私は日本のアシッド・ジャズに傾倒し、そのハイエナジーなグルーヴ、シンコペーションのリズム、躍動的なブラス・アレンジに魅了されたのよ。Fox Capture Plan, Jabberloop, Toconoma, Jizue, Bohemianvoodoo といったバンドの熱心なフォロワーとなり、それぞれがこのジャンルにユニークな個性をもたらしていることを知ったの」
そんな TC. KYLIE の背中を押したのが日本と日本の文化でした。彼女は2020年、パンデミックでジャーナリストの仕事を諦め、自身の健康と情熱を大切にするため、無期限の休養を取ることを決意します。そして青森の十和田湖にあるジャズ喫茶とホステルに滞在。ジャズ愛好家だったホステルのオーナーに勧められ、TC. KYLIE はピアノの前に座り、政治・社会部記者時代に耐えてきたことを表現するために、思索し、散らばった音を弾き紡ぎました。何年も音楽から遠ざかっていた彼女はそうして、再び生活の中に音楽を取り入れることに喜びを感じるようになります。ジブリの名曲 “人生のメリーゴーランド” をカバーしたのはきっとそんな日本での出来事が、彼女のメリーゴーランドを回すきっかけになったから。それだけではなく、toe のようなポスト/マスロック、Fox Capture Plan のようなジャズ、そしてソニックのようなゲーム音楽まで、彼女の再生 “Rebirth 重生” の多くは日本の文化が根っことなって支えているのです。
今回弊誌では、TC. KYLIE にインタビューを行うことができました。「DREAM THEATER の “The Count of Tuscany” や “Illumination Theory” などのオーケストラ・アレンジは、私の作品に壮大なストリングスやホーン・セクションを取り入れるきっかけになったね。ジャズのハーモニーを映画のようなテクスチャーと融合させ、没入感のある感情豊かなサウンドスケープを創り出すのが好きなんだ」 どうぞ!!

TC.KYLIE “RE:BIRTH よみがえり” : 10/10

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