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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CODE ORANGE : UNDERNEATH】


COVER STORY: CODE ORANGE “UNDERNEATH”

THERE’S NOBODY LIKE US…CODE ORANGE ARE READY TO BE NEW ICON OF EXTREME MUSIC

BORN FROM “UNDERNEATH” OF THE SCENE

キャリア10周年を迎え、CODE ORANGE は間違いなくハードコア最大のバンドへ進化を遂げようとしています。
2008年に、ハードコア色の強いクロスオーバーの一味として結成された CODE ORANGE。当時、メンバーは平均すると約14歳で、2012年までは文字通り CODE ORANGE KIDS と呼ばれていました。
「俺らは文字通り世界中で誰にも演奏しないツアーを無数に行ってきた。自慢でも何でもなく、それが現実だ。ハードコアバンドはその現実を知っている。それでもすべて自分でやること、DIY を教えてくれるのがハードコアだ。その音楽を愛しているからな。」
メジャーメタルレーベルとの契約、SLIPKNOT, GOJIRA とのツアー、グラミーへのノミネート、コーチェラからのラブコール
。冒険の始まりから遥かな高みへと到達したバンドの思想は、しかし今でも実にリアルなハードコアです。
「”Underneath” がヘヴィーミュージックの方向を変えることを望んでいるか? いや、俺は何も望んでいない。メタルやハードコアのミュージシャンを鼓舞するバンドになりたいか? 俺らは何かになりたいとは思わない。それなら俺らは彼らの一人になるだろう。」

Jami は Nu-metal を “Underneath” への意識的な影響元としては言及していませんが、ボストンの VEIN など他の新たなハードコアイノベーターと同様に、CODE ORANGE のサンプリングとパーカッションに対する最大級のアプローチを見れば、90年代後半との比較を避けることはできないでしょう。実際彼らは、SLIPKNOT の Corey Taylor を、”The Hunt” のゲストボーカルとして迎え入れ、夏にはKnotfest Roadshow のオープナーを務めます。
「Coley は好きじゃない人たちと時間を無駄にすることはない。俺らも同じことをするつもりさ。」
傍観者は、本質的に商業主義とは相反するハードコアから生まれた CODE ORANGE のよりビッグで、より精巧で、ある意味でよりメロディックなサウンドについてセルアウトの烙印を押すかもしれません。しかし、本物のアートには程遠い、経済的に満たされすぎているという示唆は、相当な名声を獲得した今でも明らかに偽りです。
「音楽をやめて、ウェンディーズで働き始めたほうが稼げるはずさ。」
ドラマー/ボーカリスト Jami Morganはそう嘯きます。しかしそのジョークが真実に思えるほど、彼らは全ての労力を “Underneath” へと注いだのです。


デモとレコーディングを一つのプロセスと捉えた彼らは、そのミッションに丸一年を費やしました。相当に密度の高いデモを完成させた後、バンドはナッシュビルへ降り立ち、1日12時間週7日のハードワークを2ヶ月間続けました。
「おかげでヒップホップのレコードみたいになった。デモと言うよりも、誰かとレコーディングをやるために聴かせる、俺らがミックスした何百ものトラックの集積だったから。
プロデューサーの Nick はさすがに週末は仕事を離れたけど、俺らはアシスタントエンジニアと作業を続けたよ。なぜなら、このレコードのリードの多く、Reba の奇妙なデジタルサウンドはデモの過程で開発されたものだったから、ミックスでダイレクトに録音したからね。ヘヴィーな音楽がより芸術的になろうとすると、多くの場合、その即時性が失われてしまう。全てが連携する必要があるんだ。上手く1つの大きなオーケストラに組み込むことができたね。」
さらに長年の協力者 Will Yip とフィラデルフィアで追加の作業を行い、2人のプロデューサーとの仕事を終えた後もハードディスクをピッツバーグまで持ち帰り何ヶ月も調整を続けたのです。

キーボードを担当する Eric “Shade” Balderose のアルゴリズムはその印象度を飛躍的に高めました。2017年の “Forever” においてもインダストリアル、エレクトロサウンドは確かに鳴り響きましたが、あくまで不気味な装飾の一つとして脇役の領域を超えることはありませんでした。
しかし “Underneath” において彼の創造するプログラミングドラムトラック、ホラーサウンドトラック、アトモスフェリックなシンセサウンドはボーカルや他の楽器と同等の不可欠な存在であり、主役でしょう。Eric はエレクトロニカのプロダクションを自身で学ぶと同時に、NINE INCH NAILS, MARILYN MANSON のコントリビューター Chris Vrenna をプログラミングアシスタントに起用しクオリティーを著しく高めました。
Jami は当時の Eric について、「彼は文字通り心を失いそうなほど消耗していた。誰かと共に働く必要があったんだ。」と語っています。
エレクトロの波に加えて、Jami と Rega が散りばめた様々なボーカルスタイルは、時に重なりながら目覚ましきコントラストを生み出しました。故にレコードには、滑らかに風変わりなハーモニー、スリリングなブレイクダウン、果てはシュレッドギターまで多様な世界が広がることとなりました。
そのパズルのコピー&ペーストは瞬く間に行われるため、音楽的要素や演奏者の解読さえ時に難解です。しかし音楽の方向感覚を失わせる CODE ORANGE の挑戦状は完全に意図的であり、細心の注意を払って構築したレコードの二分概念をまざまざと象徴しています。
「俺は全ての楽曲に二重の意味を持たせたかったんだ。歌詞の一行一行からアルバムのストーリー、さらに他の3枚のレコードとの繋がりまでね。」


CODE ORANGE のリリックは複雑です。ただし可能な限り分解を容易ににするため、”Underneath” のリリックには基本的に二つのビッグテーマが用意されています。一つはテクノロジーの観点から見た現代社会。もう一つは、自身が所属する音楽産業、ヘヴィーミュージックシーンに対する思索です。
例えば、”Who I Am” ではソーシャルメディアで同時に経験する接続と断絶に言及し、”A Sliver” は SNS のプラットフォームを重要だと感じる誤った感性を断罪します。
「誰もが大きな大きな声を持っているように感じている。だけど結局、俺たちの声はすべて、SNS というボックスに入れられているから、そこでいくら大きな声を出したって本当に重要な意味は持たないんだよ。」
一方で、”Cold Metal Place” は極寒の地下メタル世界。プレッシャーに苛まれる他のバンドを尻目に、CODE ORANGE は競争の激しい音楽業界を生き抜きます。「全世界が笑っているが、オマエはその事実さえ知らない」の一節は音楽世界の過酷なプレッシャーをリアルに描写しています。
「それが批判であれ、ジャッジであれ、常にノイズが存在するように感じるね。自分が誰かの冗談になる可能性をいつも孕んでいる。すべてがミーム、すべてがジョーク、すべてが判決可能、すべてが破壊可能な世界だから。」

そんなメタナラティブなポスト音楽産業でも、Jami にとってはバンドが全てです。故に彼らの物語をレコードに記し続けることは当然でしょう。そうして闘うバンド CODE ORANGE 最大の願いは、そのキャリアを重ねていくことなのです。
「音楽で食っていきたいと思っている。だけど今や誰にとってもそうすることはとても難しい。座っていても金が入ってきた15年前とは違うんだ。」
2017年、GOJIRA とのツアーは彼らのバンドに対する取り組みを根底から変化させました。フランスのモダンメタルバンドは今やメタル世界の中心にいます。GOJIRA が毎晩セットを録画し、パフォーマンスの微調整を行うことはかなりの驚きでした。
「彼らはメタルを作るのが、工夫してより良いものを作るのがいかに難しいかを知る新世代なんだ。そうまでしても、俺らは生き抜かなきゃならない。」
従うべき青写真を持たない CODE ORANGE にとって課題は二つ存在します。まず、ハードコアとインダストリアル、オルタナティブを彼らのようにミックスするバンドは前代未聞なので、独力でチェックポイントを設定しながら進まねばならないこと。さらに、そこに確立されたマーケットが存在しないことでしょう。
「メタルなのか、ハードコアなのか、それともただのクソなのか。とにかく、あのアーティストのファンなら俺らの音楽も気にいるって勧め方は出来ないからな。少しづつファンを獲得していくしかないね。それが唯一のチャンスだ。」
グラミーへのノミネートは “ネクストバンド” としての孵化を促しました。
「グラミーは、多くのバンドとは異なるプラットフォームを手に入れるチャンスだった。もし勝ち取れれば、もっと俺たちの意図を実現していただろうな。 ノミネートされるだけで幸せだと言うつもりはないね。目標は、物事を変えることだから。そのための唯一の方法は、プラットフォームを拡張し続けることだろう。」

Jami はグラミーにノミネートされたことで多少なり “ドア” が開いたことを実感しています。ただし、個人的な成功のみならず、エクストリームミュージック全体の地位向上を狙う彼らのハードルは、遥かに高い位置へと設定されています。そのための取り組みの一つが、ライブの超進化です。事実、コロナウイルスでさえ、彼らの勢いを止めることは出来ませんでした。Jami がドラムライザーから解放されたはじめてのアルバムリリースショーは、無観客ながら絶賛を集めました。
「動画を視聴しているファンもライブに参加しているような気持ちにさせたいんだ。基本的にメタルのライブプロダクションはシンプルで退屈でからな。Windows のスクリーンセイバーみたいにね。だからもっと複雑に、多次元にしたいわけさ。」
バンドはすでに JPEGMAFIA や Injury Reserve などラッパーとのコラボレーションを行っていますが、他のメタルミュージシャンとは異なる方法で、ヒップホップやエレクトロアーティストとの相互受粉を続けたいと考えています。なぜなら Jami はポップやヒップホップの世界で、メタリックなイメージと美学が今どれほど人気があるかに気付いているからです。つまり彼はヘヴィーな音楽がただ享受するだけでなく、影響をもたらす存在であることを示したいのです。
「それを真実にするためには、エクストリームミュージックがエキサイティングである必要がある。そして相互通行の中から新たなものを生み出していきたいんだ。もちろん、俺らはラップメタルを目指しているわけじゃない。もっとプロダクションサイドでヒップホップのやり方を取り入れていきたいのさ。」

Jami は20年代という新たな10年でヘヴィーミュージックを前進させる必要性を切迫して感じています。それは多くのメタルフェスやロックフェスでプレイするうち、彼の年齢で主役を演じるミュージシャンがどれほど珍しいかに気づいたから。同時に、Reba のような女性プレイヤーはメタルユニバース全体では決して珍しくはありませんが、よりメジャーなメタル世界では過小評価されがちです。
「ヘヴィーミュージックには、新たなアイコン、子供たちが見たがって真似したりするバンドが必要だよ。メインストリームには3、4年前に出てきて、すでにアイコンの風格を備えたアーティストが存在する。メタルでそんな存在がいるかな?」
バンドのアクロバティックな攻撃性、隆起した上半身の筋肉はWWEへ自然に適合しました。相乗効果は確かにファン層の拡大に役立ちましたが、メタルの固定観念を増長させる危険も孕みます。
「俺らはロックを長い間支配してきたものから抜け出したいんだよ。」
ティーンネイジャーでライブを始めて以来、ストレスや精神的苦痛は多少なり改善されたと彼らは語ります。しかし、バンで寝泊まりし激しいライブパフォーマンスに起因する肉体的消耗や、アンダーグラウンドシーンの財政的精神的圧迫はそれでも厳しいものでしょう。
「俺らはユニットだから。批判や苦難を乗り越えるには、お互いを気にかけることが重要だ。CODE ORANGE は全員がこのバンドを特別だと信じている。それが特別なことなんだ。地球上のどんなバンドとも異なるし、俺らみたいなバンドは一つとしていない。だから良いってわけじゃないけど俺らは…まあ半分はジョークさ (笑)」

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