EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HIROFUMI HATANO OF People In The Box !!
Tokyo Based Incredible Progressive-Pop Trio, People In The Box Celebrates Their Tenth Anniversary With Definitely Milestone, “Kodomo Rengou”! Innocence And Technique Melt Together Here!
DISC REVIEW “KODOMO RENGOU”
純粋で綿密な音楽への奉仕者、箱の中の三銃士 People In The Box が、自らの10周年に刻む最高到達点 “Kodomo Rengou” をリリースしました!!”計画的” な長期のインターバルを経て、楽曲のデザイン、個性がより際立った作品は、孤高のバンドに相応しき孤高の完成度を誇ります。
「自分の表現したいデザインと、世間が求める快楽というのは、僕の中で決して対立してはいないんです。」 インタビューで波多野氏はそう語ってくれました。あの先鋭的な残響レコードに置いて、日本が誇るポストロック、マスロック、プログレッシブの理想的なブレンドと目された瑞々しい才能は、近年そういった “形式” とは距離を置き “外の影響を取り入れたりすることもなく、メンバー3人の感性の広がりだけで” 文字通り “箱の中” から作品を届けています。
「TM Networkが好きだった “子供時代” と地続きの感性でやっている」 という言葉は “子供連合” を紐解く上で重要なヒントなのかも知れませんね。実際、このアルバムがある種難解で哲学的なバンドのイメージに反して、シンプルなデザインと無垢なる想望から成る天真爛漫な “報いの一日” で幕を開ける事実は象徴的です。
口ずさむキャッチーなハミングも、イノセントで牧歌的なメロディーも、飛び出す絵本のように立体的なギターサウンドも、晴れた冬の日を想わせる優しいシンセサイザーの波動も、全ては楽曲の求めに応じた確かな必然としてそこに存在しています。
そして、楽曲を通してジグソーパズルが組み上がって行くようなこのナチュラルな感覚は、”追求した結果がシンプルで率直な表現に帰結することがあっても自然なこと” と語る波多野氏の言葉をしっかりと裏付けているように思えます。TM Network の名作 “Carol” が緻密で精巧な建造物でありながら、同時に一切無駄の無い完璧にポップなレコードであったことを思い出すリスナーも多いでしょう。
同時に、「リスナーとしては若い頃から、かなり貪欲に聴いていた方だと思います。メタル、プログレッシヴロック、クラシック、エレクトロニックミュージック、ジャズ、民族音楽、ニューウェーブ・・・。」 と語るように、”Kodomo Rengou” は波多野氏とバンドの子供時代から連なる多様な感性を一つ一つ丁寧に育み、惜しげも無く “今” へと昇華したカラフルなポートレートでもあります。
“無限会社” や “泥棒” といった新機軸にも思えるダークでプログレッシブな楽曲から、マスロックのエナジーをポップの領域に組み込んだ “世界陸上”、近年意欲的に取り入れている鍵盤の響きにただ身を委ねるジャズワルツ “あのひとのいうことには”、ミニマリズムの極地 “デヴィルズ&モンキーズ” まで、綿密に練り上げられた多様な楽曲の数々は、すっかりその姿を異にする形式や構成にも関わらず、音に宿った “気概や純度” 、感覚の温度において奇跡の整合性を見せるのです。
勿論、歌詞の面でも波多野氏のクリエイティビティは冴え渡ります。”町A” や “デヴィルズ&モンキーズ” は象徴的ですが、一見無機質に思える単語の羅列やキャッチーな造語の使用が驚くほどの中毒性を創出し、結果として朧気に楽曲のイメージや意味合いをリスナーに印象づけるのですから、「結果的に他人の人生に踏み込んでしまうというくらいの作品を作る気概と覚悟を持ちたいとは思っています。」 という波多野氏の宮大工や鍛治職人の域にも達した拘りと情念の発言にも深く頷けますね。
とは言え勿論、メンバー各自の卓越した技巧そのものにも言及しない訳には行きません。波多野氏が “泥棒” でメセニーよろしくホーンのサウンドをギターで代弁すれば、”町A”で 福井氏はハイフレットや和音を駆使して極上のベースグルーヴを精製します。そして何より、偽装変拍子の海、ポリリズムのトリックの中をかき分け進み、バンドの推進力となる山口氏のドラム捌きは驚異的です。
そうして作品は、”かみさま” に収束して行きます。空間の魔術、静と動のコントラストを完全に支配したバンドは、Spitz をも脅かす甘く切ないメロディーを伴ってリスナーの心をイノセントに溶かすのです。
“これから起こることぜんぶ 息が止まるくらい美しい ひとはそれを 狂気というけど ねぇ、きみはほんとうに知ってた? ねぇ、きみはほんとうに知ってた? この完璧ではない世界で 人生って一度しかないこと”
狂気を狂気とも思わない純粋さでバンドは、ひとが人生で到達すべき本当の場所、見るべき景色を仄めかして見せました。少なくとも “このバンドのいうことには” もしくは奏でる音には信頼が置けると強く感じたインタビュー。ボーカル、ギタリスト、コンポーザー。波多野裕文です。どうぞ!!
People In The Box “Kodomo Rengou” : 10/10
INTERVIEW WITH HIROFUMI HATANO
Q1: First of all, could you tell us about your musical background?
【HATANO】: As a listener, I think that I was listening quite widely since I was young. Metal, Progressive Rock, Classical, Electronic Music, Jazz, Ethnic Music, New Wave …. But probably the most noticeable influence as a musician is the alternative rock such as Sonic Youth and the early Smashing Pumpkins. I think that I have not listened to Japanese music very much, but generally I’m lnfluenced by Nanao Tabibito, downy, TM Network. Regarding other members, there is an impression that they are different from each other, but they are listening to music more flexibly than limited to a particular genre.
Q1: まずはインタビューをお受けいただいてありがとうございます!波多野さんが弊誌をチェックしていただいたことがあると伺い、本当に感激致しました。
勿論、People In The Box の音楽を聴けば、バンドが多様な素養を持ち、ここは重要ですが音楽に対して真摯に向き合っていることが伝わります。まずは、波多野さんの音楽遍歴やバックグラウンドについてぜひお聞きしてみたいのですが、そこからお話していただけますか?
【HATANO】: こちらこそありがとうございます。プログレッシヴロック方面の音楽を漁っていると、Marunouchi Muzik Magazine にたどり着くことはしばしばありました(笑)。
リスナーとしては若い頃から、かなり貪欲に聴いていた方だと思います。メタル、プログレッシヴロック、クラシック、エレクトロニックミュージック、ジャズ、民族音楽、ニューウェーブ・・・。ですがおそらく音楽家として一番顕著に影響が現れているのは Sonic Youth や初期 Smashing Pumpkins などのオルタナティヴロックではないかと思います。ひきかえ、邦楽はあまり聴いていないと思いますが、七尾旅人や downy、TM Network には影響を受けているとは思います。
他のメンバーに関していうと、それぞれあり方は違えど、特に何かのジャンルに限定したというよりも、柔軟に音楽を聴いてきている印象があります。
Q2: So, I feel you have a nice balance between Pop and Art. Do you agree that?
【HATANO】: When I was releasing several pieces of work, I was desperately seeking to establish our style. I wanted to clarify the standing position of the band in the scene as soon as possible, but at some point, I began to doubt the idea of “Establishment” itself. I felt objectivity conscious of such an assumptions and formats in the future became a brake on the sense of speed of creation.
So, in terms of the past few years, we do not incorporate the influence of outside, we make it only with the spread of the sensitivity of the three members, so our listener’s impressions seem to be secondary. There are many parts that we only know in the form of self analysis, haha.
Then, if I answer the question, the design I want to express and the pleasure the world wants are never in conflict in me. That means Art and Pop. The important thing is that I replace the word of “General” with myself. So, even if the pursuit results are simple and frank expression, it’s natural for me. Because I’m doing it like I’m still childhood when I love TM Network.
By the way, I do not understand the tone when the Japanese music scene is told in the form of “Galapagos” in the form of description, but what makes it more interesting to make it a “Galapagos”? I think. It is not an good idea if it means closed, but rather than incorporating new ones superficially, I think that it is more interesting to look at the long-term who self-cultured and born a thick one
Q2: 残響レコード時代からポストロック、マスロック、プログロックの文脈で語られる一方、バンドの持つ極上のフック、ポップセンスはメジャー感とアートの類稀なる融合として音楽シーンで孤高とも言える存在感を放っています。
実際、特に日本では自分の表現したいデザインと、世間が求める快楽の間で葛藤を重ねるアーティストも多いように思うのですが、波多野さんの場合はどちらかと言うと、その二つがナチュラルに溶け合い表出しているように感じます。
つまり、非常に音楽の深い部分を愛しながらも、決してコマーシャリズムを拒んではいないような気がします。逆に言えば、楽曲の求めに応じた複雑さと言うか。その辺りのバランス、そして日本のある意味ガラパゴス的な音楽シーンについてはどのようにお考えですか?
【HATANO】: まだ作品を数枚リリースしたくらいの頃というのは、自分たちのスタイルを確立させようと必死で模索していました。シーンでの音楽的な意味でのバンドの立ち位置というものを早いうちにはっきりさせたいと思っていたのですが、ある時期に「確立」という考え方自体をそもそも疑わしく思うようになりました。そういった将来の想定や形式を意識する客観性が、創作のスピード感にブレーキをかけていると感じたからです。
なので、ここ数年に関していえば、外の影響を取り入れたりすることもなく、メンバー3人の感性の広がりだけで作っているので、自分たちの音楽がどう聴かれるかということは二の次になっているというか、自己分析という形でしかわからない部分が多々あります(笑)。
その上で質問の指摘に答えるとすれば、自分の表現したいデザインと、世間が求める快楽というのは、僕の中で決して対立してはいないんです。重要なのは、世間という言葉を僕は僕自身に置き換えているということです。TM Network が好きだった子供時代と地続きの感性でやっているので、追求した結果がシンプルで率直な表現に帰結することがあっても、それも自然なことなんですよね。
ちなみに、日本の音楽シーンがガラパゴスという形容で語られるときのトーンがいまいち僕は理解できていないのですが、なんならもっとガラパゴス化した方が面白いんじゃないか?と思います。閉鎖的という意味であればまた考えものですが、表面的に新しいものを取り入れていくよりは自己培養して濃いものが生まれた方が、長い目で見て面白いのではないかと思います。
Q3: You are often said to be “Stoic” about your music and record, right?
【HATANO】: We are often said to be the stoic band, but as the principals we do not think so at all, haha.
I think that we do not see the band as far as the meaning of life itself.
However, I never thought that our attitude is always correct, but I think that the emotion for making records is certainly very strong. Not only in music but also in books and movies, I have been changed my life by many great works. So, I’d love to have the same spirit changing someone’s life or eventually stepping into other people’s lives when I make a record.
At the same time, it is important for me not to desuse that I’m only a single living person. Even though I felt there or thought about it unconsciously, I think that it will be transformed into a work.
Q3: People In The Box のレコードを聴くと、バンドが作品をアートとして大切に思う気持ち、情念のようなパトスが音の隙間から流れ来るような感覚に襲われます。漫然と制作された部分など微塵も存在せず、これは僕たちの生きた証で、他の誰にも出来ない事だと訴えかけて来るのです。
あくまで私見ですが、限られた時間に気づかず多くの人間が漫然と生きる中で、その真摯で誠実な姿は”言葉を捨ててしまいたい” ではありませんが、自己実現の意味を言葉で語るよりも遥かに強くリスナーへ届けている気がします。
すなわち、波多野さんにとって People In The Box のアルバムや活動は生きる意味そのもののようにも感じられるのですが、いかがですか?
【HATANO】: 僕らはよくストイックなバンドにみられるのですが、本人たちとしては全然そうは思っていないんです(笑)。
生きる意味そのもの、とまでは背負っていないと思います。
ただ、自分たちの姿勢が必ずしも正解だとは決して思っていませんが、作品作りという行為に対する思い入れというのは、確かにとても強いと思います。音楽に限らず本や映画などもそうですが、僕自身が先達の作る作品に人生を変えられてきた身として、結果的に他人の人生に踏み込んでしまうというくらいの作品を作る気概と覚悟を持ちたいとは思っています。
と同時に、ひとりの生活者であることを蔑ろにしないというのも僕にとっては重要です。そこで感じたことや考えたことが無意識的にであれ、作品へと転化されると思っているからです。
Q4: Let’s talk about your newest release “Kodomo Rengou”. The delivered work was a high level of shocking perfection, reflecting that long interval. At the same time, I feel that it is the most diverse work in the history of the band, right?
【HATANO】: Up until now, I have created records that are not few in a short period of time and fortunately I have been without feeling stalled in particular, but on the contrary, I was thinking that I have not taken the time for my records.
This interval is confidently what we have set up.
Among them, I got a lot of time to arrange the songs, including songwriting, so some things changed considerably depending on things. Although there are before and after, all songs are done at the same time on the final stage of the work, so as you stuff up, the character of each song will naturally emerge. I guess that probably leads to diversity you said.
Q4: では、最新作 “Kodomo Rengou” について話しましょう。フルアルバムとしては3年半ぶりのリリースとなります。勿論、その間にミニアルバム、コンピレーション、映像作品のリリースはありましたが、それにしても邦楽のインターバルとしては非常に長い印象があります。
ただ、届けられた作品はその長いインターバルを反映するように、衝撃的な完成度の高さでした。同時に、バンド史上最も多様性に富んだ作品だとも感じます。その多様性は、波多野さんとバンドのやりたい事を素直に全てやってみた成果のようにも思えるのですがいかがですか?
【HATANO】: これまで作品を短い期間で少なくない数作ってきて、幸運にも特に行き詰まりを感じることもなくやれてこれたのですが、逆に、時間をかけて作るということをやってこなかったことに思い当たりました。
このインターバルは確信的に僕らが設けたものです。
そのなかで、作詞作曲を含む曲のアレンジにかける時間をかなりとったので、物によってはかなり変化していったものもあります。前後はあるものの、作業終盤には全ての曲が同時進行で行われるので、詰めていけば詰めていくほど各曲のキャラクターというのが自ずと浮き上がってきます。そこがおそらく仰る多様性に繋がっているのではないかと。あくまで推測なのですが。
Q5: The title “Kodomo Rengou” means “Children United”. And literary, the album opener “Mukui no Ichinichi” is so simple and takes us our childhood, right?
【HATANO】: Although there is no concrete intention, this song is made at the end of the album production, I feel that it was in mind that becoming the opener somehow. I think that the introduction of the album would have wanted me to be suppressed as flat as it was. It certainly is very simple. We are often complicated, but rust is a common three code, haha. I think that the impression is persistent.
Q5: アルバムは “ソラシドレ レドシラソ” が印象的な “報いの一日” で幕を開けます。”ソラシドレ レドシラソ” は音楽の世界で最もベーシックなフレーズのしかもハミングで、言い換えれば子供らしいイメージを抱かせますよね?
このフレーズをベースにリズムやコードに変化を加え展開して行く楽曲にも驚きですが、このタイトルの作品をこのフレーズで始めたことに特別な意図はあるのでしょうか?
【HATANO】: 具体的な意図というのはないのですが、この曲はアルバム制作の終盤に作った曲で、なんとなく一曲目になるというのは念頭にあった気がします。アルバムの導入はなるだけ平熱で抑制されたものであってほしいとも思っていたような気がします。確かにとてもシンプルです。僕らは難解とよく言われますが、サビはありふれたスリーコードですからね(笑)。印象っていうのは根強いんだな、と思います。
Q6: So, what’s “progressive” to you?
【HATANO】: As it is often said, “progressive” in so-called “Progress” is a concept that has become a mere-skeleton. It is a concrete form that it is metaphorically long and epic, odd time structure, or “Crimson like”, “Yes like” etc …. That is why I like it as a hobby with it, haha.
We do not stick to specific genres and keywords as we make it, so we never thought of our music as progressive. In the first place, there are only 4 time or 3 time songs for this record, haha.
However, as a listener, regarding of “Mugen Gaishya” or “Dorobou”, it seems that the state of persistence or madness but insanity, rather than form or mood. For example, it is in communication with the purity of Crimson to do.
In the first place, the favorite part of my favorite progressive rock is not the form but the spirit and purity they had which is appearing in the sound, right? Soft machine or Genesis looks structurally seemingly, but I like them because the fact is only a sense.
Q6: 最も多様性に富んだと言ったのは、”かみさま”という傑出したポップソングがアルバムの軸、中心となって、まるで衛星のようにカラフルで様々な個性を持った楽曲たちが並んでいるイメージを持ったからなんです。
その衛星の中でも、例えば “無限会社” とか “泥棒” の持つクリムゾンとかサバスとか、日本で言えば人間椅子のようなダークで混沌である種プログレ的な感覚って、今までそれほど表出してこなかったような気がします。
それもあって、波多野さんがロックにおける “プログレッシブ” の意味をどのように捉えているか伺ってみたいのですが?
【HATANO】: よく言われるように、いわゆるプログレにおける”プログレッシヴ”というのは形骸化された概念ですよね。変拍子や長尺であるという具体的な形式であったり、”クリムゾンぽい”、”イエスっぽい”などなど・・・。それはそれで趣味としては僕は好きなのですが(笑)。
僕らは作るとなると特定のジャンルやキーワードに固執することはないので、自分たちの音楽をプログレッシブだと思ったことはありません。そもそも、今作は4拍子と3拍子の曲しかありませんしね(笑)。ただ、リスナーとしては質問の”無限会社”や”泥棒”に関していうと、形式やムードというよりも、執拗さや狂気を狂気とも思っていないような状態が、例えばクリムゾンの持つ純粋さとは通じる気はします。
そもそも、僕が好きなプログレッシブロックの好きなところは、形式ではなく彼らが持っていた気概や純度が音に現れているところなんですよね。ソフトマシーンでもジェネシスでもそうですが、一見構築的にみえて、その内実は感覚でしかないというところがとても好きです。
Q7: Could you tell us about your lyrical themes?
【HATANO】: In terms of lyrics, I think it is better to make it rather carefully. The image of words is as sensory as color and light, I want to adjust as a tone color, as a series of meanings, as a character surface, to a place suitable for that music. Sometimes, I also avoid the expressions where music already represents. It is a personal feeling, so hard to explain ….
Regarding listing some words, I do not have any special consciousness, but feel like to make the stage set gorgeous? I don’t want to explain as much as possible in a lyrics, I want to express with words of mass that makes a meaning obscure for the first time in a set of impressions. This is difficult though.
Q7: “町A” が大好きで、ドライブしながら歌ったりしているんですが、一番歌っていて気持ち良い部分の歌詞が “中古車センター” なんですよ(笑)。
“巨大なショッピングモール、レストラン、図書館、うどん屋、書店、パン屋、団地、花屋に、ラーメン屋、神社、寺院、中古車センター、陽の射す部屋”。”デヴィルズ&モンキーズ” でも聴くことの出来るこういった固有名詞の羅列って People In The Box のトレードマークだと思うんです。例えば、”Family Record” とか “Weather Report” の楽曲タイトルにもそういった感覚がありますし。
一見、無作為で機械的にも思えるこういった羅列が高い中毒性を秘め、リピートを誘うことは本当に驚きです。実際、そういった効果はある程度狙って演出しているのでしょうか?
【HATANO】: 歌詞に関していうと、僕はかなり綿密に作るほうだと思います。言葉のイメージというのは、色や光と同じくらい感覚的なもので、音色として、意味の連なりとして、字面として、その音楽にふさわしいところまで調整したいと思っています。音楽がすでに表現しているところは敢えて避けたりもします。個人的な感覚ではあるので、とても説明しにくいのですが・・・。
羅列に関していうと、特別意識はしていないのですが、舞台セットを華やかにしたいという感じでしょうか。できるだけ説明臭くならなず、印象の集合で初めて朧げに意味をなす、それくらいの質量であってほしいんですよね。これが難しいのですが。
Q8: People In The Box have some rules in the freedom, like three-piece, artwork, and title of records and songs, right?
【HATANO】: I think restrictions are convenient and very fond compared with the freedom of stoppage. There is also a design aspect. In musical terms, for example, there is an implicit rule that we do not put guests in the performance so far with only of the three members, but we also devise this in the constraints we have decided It’s a lot of fun to challenge. It is not easy to get to the situation that we did everything, even if we set aside a frame. Rather new ideas are born.
For example, I like to struggle with how to express brass and strings ringing in my head without using them. I like that.
Q8: 無作為と言えば、”Kodomo Rengou” の楽曲タイトルだけを並べれば、小説、例えば星新一さんのショートショートをまとめた単行本のようにも見えて来るんですが(笑)、アートワークの連続性とか、アルバムタイトルは英語で楽曲のタイトルは日本語だったり、勿論スリーピースであることへの拘りも含め、バンドにはいくつか “ルール” が存在しているように思えます。自由の中の規律と言うか。
さて、こういった手法とかルールはどのように生まれて行ったんでしょう?
【HATANO】: 自由のとめのなさを思うと、制約というのは便利でとても好きです。デザインという側面もあります。音楽的なところでいうと、例えば作品においてこれまで演奏でゲストを入れず、メンバー3人の演奏だけでなんとかするという暗黙の決まりがあるのですが、これも決めた制約のなかで工夫してやるということの挑戦がとても楽しいんですよね。
いくら枠を設定したところで、そのなかでやり尽くした、という状況にはなかなかならない。むしろ新しい発想が生まれたりもします。例えば頭の中で鳴っているブラスやストリングスを、それらを使わずにどう表現するか、ということを苦心するのがとても好きなんです。