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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PARADISE LOST : ASCENSION】 JAPAN TOUR 26′


COVER STORY : PARADISE LOST “ASCENSION”

“Ironically, miserable music is always the most fun to listen to and the most fun to write.”

ASCENSION

「雨が好きなんだ」
Nick Holmesは、惨めな気分でいる方が楽な場合が多いそうです。そして、PARADISE LOST の長いキャリアを少しでも追ってきた人なら、これは自明の理だといえます。1988年にヨークシャーのハリファックスで結成され、デスメタルとスラッジ、ドゥームの暗黒が融合した1990年のデビューアルバム “Lost Paradise” 、そしてゴシック・メタルの名となり、定義付けとなった続編 “Gothic” で世界にその名を轟かせて以来、彼らはつねに暗い雲に覆われ続けています。
彼らの最新作 “Ascension” は、だからこそ当然のように、まさにそんな、いつも通りの暗雲メタルです。つまり、PARADISE LOST は長年にわたりデスメタル、シンセ、アリーナ・ロック、スラッジ、ドゥーム、エレクトロニカなど、さまざまなジャンルを巧みに操ってきましたが、彼らの中には常にダークな芯が宿っていたのです。
「ヨークシャーがなぜ悲惨なメタルの温床になっているのかはわからない。 暗い、悪魔のような工場や天候と関係があるのかもしれない。 スウェーデンも同じだ。 スウェーデンはとてもダークなバンドを何組か育てたが、あそこは天気もよく似ているんだ!
それに、狭い街だから、僕の母の寝室の窓から MY DYING BRIDE の Aaron Stainthorpe の家が見えたくらいでね」
言い換えれば、そうした暗い気候と地理が、彼らをメタル世界において特別な存在に押し上げたのです。ヨークシャーのアンダーグラウンド・レーベル、ピースヴィルが擁する “ドゥーム・ビッグスリー” の一つとして、MY DYING BRIDE、ANATHEMAと共に彼らは、悲しみに浸り、それを鍛鉄のような重厚さで表現する、実に英国的で異端で革新的なサウンドの構築に大きく貢献してきました。
晴れも嫌い。王道も嫌い。レジリエンス、反発力といえば聞こえはよいですが、Nick Holmes は天性の天邪鬼なのかもしれません。
「ヘヴィ・メタルが好きになったのは、メタルがみんなに嫌われていたからだ。 いつも嫌われていた。 反抗的な感じがした。町中でメタルが好きな奴は2人くらいしかいなかったかもしれない。それが好きだった。 自分の小さなチームを持っているような感じだった。僕らが考えていたのはそれだけだったんだ。目が覚めて、寝る瞬間まで。メタルとデスメタルのことしか考えてなかったんだ!」

その小さなチームは活動を続ける中で、Ville Valo のようなダークな音楽の実践者たちに多大な影響を与えるようになり、CRADLE OF FILTH, OPETH, GREEN LUNG, GATECREEPER など、様々に多くのバンドが PARADISE LOST の悲しみや暗がりにインスピレーションを見出してきたのです。
“Ascension” でその陰鬱さは、かつてよりも年老いた、今の Nick Holmes によって表現されています。
「人生、不幸、幸福、死、そしてそれらに伴うあらゆることを、50代半ばの男の視点から見ているんだ。僕が最後にアルバムを作ったのはいつだったか分からないが、それって40代後半の男の視点とは正反対なんだ。50歳になってから、時間がどこへ消えるのか分からなくなってしまった。本当に恐ろしい。学校の6週間の休暇は永遠に続くように感じたよね?でも今は6週間なんて一瞬だ!
ただ、人生観はあまり変わっていない。音楽も歌詞も相変わらず悲惨だ。物事に対してかなりシニカルなところがある。昔からずっとそうだ。死ぬのが特に怖くない。若い頃は怖かったけど、今は特に気にしない。だから、そこは変化だね(笑)。物事に対して…静かに楽観的になるのが好きなんだと思う。でも、歌詞でそれを表現することはあまりないけどね!」
ただし、皮肉たっぷりのユーモアのセンスも持ち合わせている Nick は、実は同世代の中ではかなりエネルギッシュで元気なほうだと自認しています。
「周りの人たちは、僕よりずっと暗くて嫌味な人が多いことに気づいた。仲の良い友達の多くが、本当にそういう風になって、すごく意地悪になった。実は僕はそこまでひどい人間じゃないと思うんだ」
暗い時代だからこそ、PARADISE LOST にファンは今も悲惨さを期待しているのかもしれません。
「人々は僕らがもっと惨めになることを期待しているはずだ (笑)。”Ascension” というアルバムのタイトルは、地上から天国までの道中で、より良い場所に昇っていくという信念と、死という報酬をテーマにしている。実生活では、人は多くの場合、人生唯一の報酬が死であるという事実にもかかわらず、生まれたときからより良い場所に到達しようと努力し、なぜかより良い人間になろうと努力するよね」

PARADISE LOST がどこへ行こうとも、たとえ曲自体は変わっても、あのほとんど喜劇的なまでの悲惨さはずっと付きまとってきました。圧倒的な初期を経て、彼らは1993年の “Icon” と大ヒットを記録した続編 “Draconian Times” でスタジアム・ゴスメタルに転向し、1998年の当時物議を醸した “One Second” とそれに続く “Host” では DEPECHE MODE 風のエレクトロニクスを披露。髪を切り、ギターを削ぎ落としました。そうして近年は、彼らのトレードマーク・サウンドに初期のエッジを融合させる才能を発揮しています。今や彼らは “完全に元に戻った” と Nick は言いますが、いずれにせよ、PARADISE LOST の個性は常にそこにあったのです。
「僕たちは今でもデスメタル・キッズなんだ。そのルーツは決して消えたことはない。髪型をちょっといじっていた頃でさえ、その頃は棚上げになっていただけで、今は確実に復活しているんだ。
僕はダークな映画が好きなんだ。僕はいつも同じ作品を勧めるんだけど、”The Hereditary 継承” だ。あの作品が公開されてから何年も経つけど、僕はまだあの映画を、現代ホラーの文脈において、本当にある意味不気味なものの一種のベンチマーク映画だと考えているからね。ヘヴィ・メタルにハマる前はホラーが好きで、だから VENOM のようなハードなバンドには自然とハマっていった。でも、あの頃のデスメタル・キッズは僕の中に今でもまだいるし、Greg の中にもいる。それは決して消えることはないんだ」

しかし、人々はそうした彼らのメタル魂を見抜けていませんでした。ある時期、彼らを終わった存在、つまりルーツから大きく離れすぎていると見なす者も多く存在したのです。文字通り、まさに “Believe In Nothing” の時代。
「奇妙な時代だった。インターネットもなかった。でも、もしネットがあったらネガティブなコメントが殺到して、サーバーがダウンしていただろう。
僕たちはかなり混乱していた。蜂がたくさん描かれたアルバム・カバーは覚えている。デザイン会社と仕事をしていたんだ。確か、OASIS の最初の数枚のアルバムをデザインした会社だったと思う。OASIS にとっては素晴らしい仕事だったけど、僕たちにとっては…とにかく奇妙な時代だった。あのカバーは、俺たちの脳内で何が起こっていたかを象徴しているような感じだったね。
今なら気楽にふらりと別の音楽に立ち寄って、普段の領域から少し外れたことをすることもできる。でも当時は、メタルを作るならメタルだけしか許されないような感じだった。それ以外のものを作ると、呪われてしまったんだ!
僕らのオリジナリティは演奏スタイルに現れることが非常に多い。 メタルは “創造性” に関してガラスの天井があり、ファンもあまり実験的なことを好まない傾向があったからね。でも僕にとっては、本当に曲がすべてなんだ。 力強い詩とコーラスがある良い曲を聴きたいんだ。 ギターの神様やヴォーカル・ジムナスティックスなどには興味がない。 最後はいい曲がいつも勝つんだから」
とはいえ、そうしたメタルにとっての異端な作品を残したことを、彼らは後悔してはいません。
「バンドを続けるのは散髪のようなもので、髪型を試行錯誤し続けても、最終的には若い頃と同じ髪型になる。つまり、失ったと思っていた興味が再び燃え上がり、また戻ってくるんだよな。
特に音楽の分野では、主にここ10年で、僕たちは戻ってきたような気がするね。古いサウンドや昔のデスメタルやドゥームメタルのバンドに対する新たな愛と懐かしさを本当に見つけたんだ。そして、この10年でそれを取り戻した。僕たちが “Host” を作ったとき、おそらくその頃、人生のより実験的な領域にいたんだよな。でも、そうだね、過ちではないよ。僕たちは常に直感に従い、自分の心に従い、その時に正しいと感じたことを書き、記録してきたんだよ」

“Icon” と “Draconian Times” のまさにアイコニックなゴシック・メタルこそが、PARADISE LOST の雛形だと考えている人は多いでしょう。
「”Icon” を(30周年を記念して)再レコーディングした時、実際にまた歌ったり演奏したりした。そうすることで、あのアルバムを作った頃、若い頃、どんなふうに曲を書いていたかを思い出したんだよな。ある意味、すごく刺激的だったし、このアルバムでは曲作りへのアプローチも変えたから。今、あのアルバムの何かをそのまま真似しようとしたわけではないんだけどアプローチが少し変わって、それがこのアルバムの多くの曲の形を作るのに役立ったんだ。もちろんあれからたくさんのことを経験して、たくさんのことを学んできたから同じじゃない。でも、あのアルバムのおかげで、”ちょっと待って。あの頃の雰囲気に近い曲を何曲か作ってみよう” って思えるようになったんだ。でも、このアルバムには “Shades Of God” の要素もあるんだよ。これは僕たちがずっと大好きだったアルバムだけど、あまり注目されていなかったからね」
PARADISE LOST がそうした時代の変化の中で、翻弄されながらも生き残ってこられたのは、”悲惨の達人” という評判を堅持しているからでしょう。その評判は決して揺らぐことはありません。
「VENOM が結成された頃は、彼らのことを何も知らなかった。”At War With Satan” を聴いて、すごく気に入ったんだ。”こいつらは一体誰だ?” って感じだったけど、頼りになるのは写真1枚だけだったからね。今は情報が豊富にあるから、謎は完全に消え失せている。どれだけミステリアスであろうとも、誰かがテスコで猫砂を買っているところを写真に撮るだろう」
35年経った今、Nick はバンドの揺るぎない成功の理由を “自分たちがやっていることを愛しているから”
であり、引退など考えたこともないと語ります。

「9時5時のちゃんとした仕事なんてしたことない。これがずっと僕たちの仕事で、僕たちの完全な中心なんだ。そして、この仕事がなくなったことは一度もない。だって、気を散らすものが何もなかったからね。 “ああ、こっちの方が稼げるんだ” って思えるような高給の仕事に就いて解散して、お酒とかが恋しくなって3年後にまた再結成するなんてこともないんだ」
こんなに長い間、陰鬱な音楽をやり続けられるのは、それが自分の知っている全てだからだと Nick は誇らしげに語ります。
「ある種、悲惨さが重なり合っているような感じだけど、その悲惨さの中に希望の光がある。映画を観て、すべてが暗くて悲惨なのに、誰かがその状況から抜け出す方法を見つけそうになるのを見るのが好きなんだ。でも、扉が閉まってしまい、もう逃げ場がない。そういうかすかな希望の光がほのめかされるのが好きなんだ。だから、曲全体を通して、実はすごく前向きな歌詞を入れることもある。そうすると、観客は “ちょっと待って、これ、前向きでいい感じ…いや、違う。いや、消えてしまった。また暗くなってしまった” って思うんだ」
“Ascension” もまさに暗さの中に救いがあり、しかしその救いが脆くも消えさって暗闇に戻る…そんなアルバムです。結局、PARADISE LOST はいつの時代も自然体の PARADISE LOST そのものなのです。
「僕たちにとっては自然なことさ。でも、光はちゃんとある。メランコリックに感じられるなら、それはある意味正しい道を進んでいるということ。必ずしも惨めな気分になりたいわけではないが、少しのメランコリーと少しの希望のきらめきがあっても構わない。名前は出さないけど、いくつかバンドを知っているけど、外見はすごく明るくて、自分たちも明るいバンドだとアピールしてる。でも、裏では今まで会った中で一番悲惨な奴らだよ!
僕らも明るくなったとは言わないけど、もう40歳も過ぎたしね。だから、もうあとは死ぬことしか考えられない!でも皮肉なことに、悲惨な音楽はいつだって聴いていて一番楽しいし、書いていて一番楽しいんだ」

来日公演の詳細はこちら。Evoken de Valhall Production

日本盤のご購入はこちら。Ward Records

参考文献 : KERRANG! :“We were laughing at one of the titles because it was so miserable”: Paradise Lost on three decades of turning woe into iconic metal

WIKI METAL :Paradise Lost Interview: Nick Holmes talks about the band’s 37-year career.

HEAVY MUSIC HQ: PARADISE LOST INTERVIEW

LOUDER SOUND:”I liked heavy metal because everyone hated it.” Paradise Lost’s Nick Holmes on dodging plant pots, nearly-severed fingers and why nu metal ruined metal

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AEPHANEMER : UTOPIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN HAMICHE OF AEPHANEMER !!

“I have always admired Joe Hisaishi, who composed the music for many Studio Ghibli films. One of my favorite pieces is Innocent from Castle in the Sky – it is pure, sincere, and beautiful. I truly admire his work.”

DISC REVIEW “UTOPIE”

「僕らにとって、フランス語で歌うことはとても自然な選択なんだ。メタルの世界では母国語で歌うバンドがますます多くなり、一般的に広く受け入れられるようになったと感じているよ。 それは今日、誠実さや信憑性の証とみなされ、高く評価されることさえあるからね」
音楽、特にメタルの優れているのは、たとえ言葉の壁やボーカル・スタイルによって歌詞が不明瞭で理解不能な場合でも、ムード、メロディ、テーマ、バイブスなどその音楽自体に伝える力が込められているところでしょう。裏を返せば、モダン・メタルの寛容さは、あらゆる異端を排除せず、壁を壊して包容し、自らの血肉としていくことができるのです。フランスの AEPHANEMER は、そうして文化の壁も、さらにはメロデスというジャンルの限界まで打ち壊し、突破していきます。
「客観的に見て、僕たちは DARK TRANQUILLITY, AMON AMARTH, ARCH ENEMY のようなサウンドではまったくない。 CHILDREN OF BODOM と比較されることがあるけれど、それでも僕らとはまったく違う雰囲気を持っているよ。 というのも、今の僕は中世、クラシック、民族音楽にインスパイアされることが多いからね。それはもはや前世代のバンドには当てはまらない特徴だよね。結局、単に音楽はそうやって進化していくということだよ」
メタルの進化に終わりはありません。そう、AEPHANEMER はメロデスの遺産をしっかりと抱きしめながら、そのサウンドを別の次元へと高めるために音楽を奏でています。”メディーヴァル・フォーク的シンフォニック・メロデス” という大げさな表現が、もしかしたら今の彼らには最もしっくりくるのかもしれませんね。それだけ、この最先端のメロデスは、映画的で、オーケストラで、壮大な音の祭典です。
2023年にベーシストの Lucie Hune が脱退し3人編成となったにもかかわらず、これだけの緻密な壮観を完成させた AEPHANEMER の才能は比類なきもの。バンド創設者でインタビューイ、 Martin Hamiche が全ての弦楽器とオーケストレーションを担当して、あの鬼才 Dan Swanö 再度の協力により、力強いメロディにフック、心を震わす激情、幻想的なムード、フランスらしい気品と格調の高さ、そして豪華絢爛な “La Rivière Souterraine” が象徴する複雑で多面的な色彩を帯びた、ダーク・フォークとネオクラシカルの煌びやかな祭典 “Utopie” が降臨することとなりました。
「僕たちのアプローチは、あきらめずに日々の小さな行動を通じて現実世界を改善する努力を続ければ、現実世界で何が起こり得るかについて、自分自身、そしておそらく他の人たちを鼓舞するためにアートを創作するというものなんだ。僕たちは、人々が僕たちの音楽からエナジーやインスピレーションを感じ、そのエネルギーを活かして生活や家庭、地域社会に前向きな変化を起こしてくれることをとても嬉しく思っているんだ。僕たちにとって、すべての生きとし生けるもののためにより良い未来を創造することは必要不可欠なこと。だからこそ僕たちの考えるユートピアとは、人類が自然や他の生命体と調和して生きる世界なんだよ」
お馴染みとなった Niklas Sundin (DARK TRANQUILLITY) の手による鮮やかなアートワーク。そこには、彼らにとっての “Utopie” “理想郷”、自然と人間が手を携え、調和して生きていく世界が描かれています。もちろん、前作 “A Dream of Wildness” のイノシシに、私たちは “もののけ姫“ の影をみましたし、久石譲の風も受け取りました。
そう、AEPHANEMER の理想郷にとって、進化し多様に共生するべきは音楽だけにとどまりません。彼らは、人も小さな行動の積み重ねでより良い世界を目指すことができる、異文化と共生し調和することができると信じてアートを生み出していますし、もちろんアシタカとサンのように文明と自然も調和して生きていく未来を見据えているのです。
今回弊誌では、ギタリスト Martin Hamiche にインタビューを行うことができました。「Marion は、僕たちが大好きな宮崎駿監督の “もののけ姫” に登場するイノシシをすぐに思い浮かべたね。 彼女は若い頃からアニメのファンで、アニメは常に彼女に創造的なインスピレーションの源となってきた。 個人的には、多くのスタジオジブリ作品の音楽を作曲した久石譲さんをずっと尊敬してきたんだ。彼の作品で好きな曲のひとつは “天空の城ラピュタ” の “Innocent”。まさに純粋で誠実で美しい音だよね。彼の作品を心から尊敬しているんだ」ギターの煌めきとドラムの技巧、そして声の獰猛は群を抜いていますね。どうぞ!!

AEPHANEMER “UTOPIE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DORMANT ORDEAL : TOOTH AND NAIL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MACIEJ NIESCIORUK OF DORMANT ORDEAL !!

“I always liked intelligent intensity, something that can be enjoyed both live and at home.”

DISC REVIEW “TOOTH AND NAIL”

「このアルバムの目標は異なるものの調和だった。 スピードとブルータリティを維持しながら、よりシンプルな曲にして、テクニカルなリフを減らしたかったんだ。同じことを繰り返さないようね。このアルバムは、真のエクストリームなジャンル・ファンにとってはソフトすぎるし、メロディーを求める人にとっては激しすぎるという意見を耳にしているよ。そうして、誰もレッテルを貼れないような音楽を作ることができて、僕はとても満足なんだ」
テクデス・シーンと結びつけられることも多い、ポーランドの新星 DORMANT ORDEAL。しかし、彼らはそうしたテクニカル合戦、スピード競争から距離を置こうとしています。少なくとも、あの Willowtip からリリースされた4枚目のアルバム “Tooth and Nail” は、DEFEATED SANITY や ARCHSPIRE とは異なる場所にいることはたしかでしょう。なぜなら、彼らは技巧や速度を超越した、総合芸術としての攻撃性と獰猛さを追求しているから。
「ポーランドのブラックメタル・シーンはかなり充実しているし、ポスト・ブラックメタル・シーンはさらに混雑している。だから、いくつかの形容詞に絞り込んで表現するのはかなり難しいけど、激しく、凶暴で、機械的でありながら、一貫した知性があるという君の説明は好きだ。僕はいつも知的な激しさが好きで、ライブでも家でも楽しめるようなものが好きなんだ」
VADER に端を発するポーランドの凶暴なる音の流れは、BEHEMOTH, DECAPITATED, BATUSHKA, Mgła、そしてこの DORMANT ORDEAL という多種多様な地獄の業火を生み出してきました。彼らの炎は灼熱でありながら冷徹で、それ以上に一貫した知性と冒険への野心が漲っています。今回のインタビューイ Maciej が語るように、ライブでは当然そのエネルギーに圧倒されますが、同時に家でじっくりと腰を落ち着けて聴く時でも何かしらの新たな発見や好奇心をそそる展開が待ち受けている。そんなポーランド・エクストリーム世界の哲学を今に体現したバンドこそ、DORMANT ORDEAL なのです。
「”To fight tooth and nail” とは、全力で戦う、あらゆる手段を使う覚悟がある、簡単にはあきらめないという慣用句だ。 リリックでは、戦争のような外的なものであれ、憂鬱や自信喪失のような内面に向けられたものであれ、戦いや闘争という主題に触れている。 アートワークについては、上記のすべてを要約する試みだったよ」
“Tooth and Nail” というタイトルもふさわしく、DORMANT ORDEAL はこの作品で容赦のないブラック/デスメタルの集中砲火を届けます。周囲のすべてが破壊されていく中、塹壕の中で縮こまるような感覚。安全地帯から出ようとするたびに、容赦ない砲撃の波が再びリスナーをシェルターへと押し戻します。
そうした圧倒的で容赦のない音攻の中で彼らは、様々なスタイルを融合させながら、しかしいずれのスタイルにも完全には染まらない独自のエクストリーム・メタルを生み出しました。テクニカルなセンスが光るリフの猛攻にも、テクデスらしいフレットボードを駆け回るヒロイックな表現はありません。不協和音とメロディーの二律背反は必需品ではなく秘密兵器となり、何者にも染まらない DORMANT ORDEAL 独自の凶暴を生み出しました。
DECAPITATED のごとき激しいリズムの非人間的異変は、Mgła や BEHEMOTH を彷彿とさせるブラックメタルのエッジと溶け合い、そこにアンビエントなタッチが加わることで、ポーランドらしい強烈な中毒性と痛烈なまでに生々しいサウンドを実現。アートワークから内容まで、”Tooth and Nail” は DORMANT ORDEAL の真髄を体現しています。バンドの唯一の創設メンバーと別れるのは容易なことではありませんが、諦めずに死に物狂いの苦闘で乗り越えて、傑作にたどりつきました。揺るがぬ決意と、困難なに立ち向かうことこそメタルの真骨頂。不条理に全力で戦いぬけと、DORMANT ORDEAL は叫び続けます。
今回弊誌では、Maciej Nieścioruk にインタビューを行うことができました。「1993年に MEGADETH, METALLICA, それに SEPULTURA と CANNIVAL CORPSE を初めて聴いたときからすべてが始まったんだ。 その後、メタルのダムが決壊し、バンドはより残忍であればあるほど良くなった。とにかく、アグレッションと生々しい獰猛さを愛しているんだ。この数十年の間に僕の好みは大きく進化したけど、90年代にリリースされたこうしたのアルバムには今でも思い入れがあるね」 どうぞ!!

DORMANT ORDEAL “TOOTH AND NAIL” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MORS PRINCIPIUM EST : DARKNESS INVISIBLE】JAPAN TOUR 26′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VILLE VILJANEN OF MORS PRINCIPIUM EST !!

“When we started, we just wanted to make melodic death metal. We did not want to sound exactly like some other band, so maybe that is one reason. But I guess our songwriters just wanted to write songs the way we have done.”

DISC REVIEW “DARKNESS INVISIBLE”

「結成当初は、ただメロディック・デスメタルを作りたかったんだ。ただ、他のバンドと同じようなサウンドにはしたくなかった。それがテクニカルになった理由のひとつかもね。このバンドの歴代のソングライターたちは、そうして僕らがやってきたように、テクニカルな曲を書いていきたかっただけなんだと思う」
メロデス始まりの地、イエテボリから少し離れたフィンランド。彼の地もまた、メロデスを牽引した重要な場所のひとつであるだけでなく、より革命的なメロデスを生み出したと OMNIUM GATHERUM のインタビューにて記しました。AMORPHIS とカレワラの奇跡的な邂逅は、後のフィンランドのメロデス世界に “個性的である” ことを運命づけたとも言えます。CHILDIEN OF BODOM, OMNIUM GATHERUM、そして最近の BRYMIR までフィンランドのメロデスは、それぞれステレオタイプとは異なる並外れた個性を持って戦ってきました。
MORS PRINCIPIUM EST もそんなフィンランドの綺羅星のひとつ。彼らの個性は、激烈なデスメタルに、ハイパー・メロディックでウルトラ・テクニカルな冷気を吹き込むことでした。
「僕にとっては、どのアルバムも特別だよ。 それぞれのアルバムがなければ、僕らはここにいなかったし、”Darkness Invisible” というアルバムもなかっただろうからね。でもそうだね、このアルバムにはファースト・アルバムからの影響もあるけど、新しいアルバムからの影響もあると思う」
古のメタル・ファンにとって、そんなフィンランドの冷気と冷徹の洗礼を存分に浴びたのが、デビュー作 “Inhumanity” であり、名作 “The Unborn”, “Liberation = Termination” だったのです。当時のギター・チームが脱退し、Andy Gillion というメロデス・シュレッド・マシンを得て、MORS PRINCIPIUM EST は荘厳シンフォニックな要素も加えながらさらに飛翔。Gillion を失うも、黄金のギター・チーム、そしてほぼオリジナル・メンバーが復帰して最新作 “Darkness Invisible” が完成を見たのです。そうして、今回のインタビューイ、バンドの首領 Ville Viljanen が語る通り、アルバムは初期と後期の完璧なる融合、MPE 集大成ともいえる傑作に仕上がったのです。
“Of Death” と “Venator”、開幕の二連撃から我々は、Jori Haukio のメカニカルかつ抒情的なシュレッドに “Liberation = Termination” の影を見ます。そうして、牧歌的なインタルードを挟んで押し寄せる、中盤の威風堂々たるドラマティシズムに我々はただ圧倒されるのみ。近年の耽美と荘厳で磨き抜かれた初期の激情と慟哭は、狂おしいまでにフィンランドの風を運び、リスナーに北欧のカタルシスを届けるのです。そう、彼らの個性はもはやフィンランドの秘宝。
今回弊誌では、ボーカリスト Ville Viljanen にインタビューを行うことができました。「メロデスは以前ほど人気がなかったり、他のジャンルほど人気がなかったりするかもしれないのはたしかだ。それでも今でも必要とされているし、求められていると思う。僕たちが演奏を続けているのは、ただメロデスを演奏するのが楽しいからなんだ」 来日も決定!どうぞ!!

MORS PRINCIPIUM EST “DARKNESS INVISIBLE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OMNIUM GATHERUM : MAY THE BRIDGES WE BURN LIGHT THE WAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARKUS VANHALA OF OMNIUM GATHERUM !!

“I actually have Alexis old Chevy Monte Carlo SS as his sister wanted me to get it after Alexi passed away. I’ve been cherishing and building it to the max, and Alexi would really respect in what shape and supercharged and LOUD the car is nowadays. It’s fun!”

DISC REVIEW “MAY THE BRIDGES WE BURN LIGHT THE WAY”

「実は今、Alexi の古いシボレー・モンテカルロSSを所有しているんだ。Alexi が亡くなった後、彼の姉が私に譲りたいと言ってくれたんだ。これまで大切にして、最大限に磨き上げてきたんだ。今のこのマシンの出来栄え、スーパーチャージャー、そして大音量を、Alexi もきっとリスペクトしてくれると思う。楽しいよ!」
スウェーデンのイエテボリで生を受けたメロディック・デスメタル。しかし、その発展は決してスウェーデンとイエテボリだけが担ってきたわけではありません。特に、フィンランドとメロデスの蜜月はあまりにも濃密で、同時に革命的でもありました。英雄 AMORPHIS のカレワラに端を発したフィンランドのメロデスは、MORS PRINCIPIUM EST の常軌を逸したシュレッドや、INSOMNIUM の映画のような風景で常にその領域を拡大し続けています。
そんなフィンランドの創造的なメロデス、その両輪として牽引し続けたのが CHILDIEN OF BODOM と OMNIUM GATHERUM だったのです。そして、Alexi Laiho の悲劇的な死から5年。OMNIUM GATHERUM, INSOMNIUM, CEMETERY SKYLINE でギターを紡ぐ Markus Vanhala は Alexi の愛車と遺志を今日も守り続けています。
「僕は Mutt Lange と DEF LEPPARD の大ファンなんだ。実は前作の “Origin” の時、メロデスの “Hysteria” バージョンを作ろうと思ったって冗談を言ったくらいでね。だから、80年代のロック用語で僕らの音楽を “アダルト・オリエンテッド・デスメタル” と呼ぶんだよ。これはデスメタルのアリーナ・ロックを目指す “AORデスメタル” みたいなもの。ステレオタイプ的には “メロデス” というジャンルは狭すぎるように思えるかもしれないけど、僕は固定観念にとらわれずに考えるようにしているからね」
Markus が居城 OMNIUM GATHERUM で目指す革命は AOD。アダルト・オリエンテッド・デスメタルの構築です。そして実際、”May The Bridges We Burn Light The Way” には、DEF LEPPARD が “Hysteria” で成し遂げた透明で奥深くもキャッチーなアリーナ・サウンド、DOKKEN が誇ったカミソリのようなギター・リード、EUROPE のカラフルでゴージャスな哀愁がたしかに存在しています。
なにより重要なのは、前作 “Origin” ではそうした “80、90年代のAORサウンド” を加えることで減退したかのように感じられたメロデスの源衝動、慟哭が今作においてはいささかも失われてはいないことでしょう。いや、むしろシームレスに洗練されたノスタルジアを注ぐことで、OMNIUM GATHERUM が創造してきたメロデスの輪郭がより鮮やかに、色味を増して新鮮に感じられるのです。
「実はメロディック・デスメタルという言葉ももう好きじゃないんだよね。でも、ジャンル名が必要なのは理解している。僕は OMNIUM GATHERUM の音楽をただ “ヘヴィ・メタル”と呼ぶのが好きでね。それが僕らの音楽だから。Bjorn Strid は僕と音楽への愛がすごく似ているんだ。デスメタルからAOR、そしてその間の音楽まで、僕らの音楽の幅広さには音楽的に深い繋がりを感じていてね。だから、彼と一緒に仕事をするのはすごく楽しかったんだ」
だからこそ、SOILWORK の誰あろう Bjorn Strid をこの作品のプロデュースを手掛けたのはまさに天啓でした。70年代のプログレッシブ、80年代のAOR、そして90年代のメロデスをこよなく愛し、近年の SOILWORK 及び NIGHT FLIGHT ORCHESTRA でその素養を遺憾なく発揮している Bjorn と組むことで、Markus の楽曲は例えば “My Pain” の近未来的スリルや “Last Hero” のアリーナ・メタル的威風堂々、そして “The Darkest City” のメロデスとプログの夢幻回廊まで、その陶酔感の螺旋はより克明に描き出されることとなりました。メロデスの守護者でありながら開拓者でもあり続ける OMNIUM GATHERUM こそ、フィニッシュ・メタルの王に違いありません。
今回弊誌では、Markus Vanhala にインタビューを行うことができました。「僕が持っているのは、国際ビジネスと物流学なんだよ。友達にいつも笑われるんだけどね。学位に関係する仕事なんて一つもしてないって言われて(笑)。でも、僕はいつも “本当にそうかな?” って聞いてるんだよ。だって、このレベルのバンドはみんな会社を経営しているからね。僕もこのバンドの会社に深く関わっていて、基本的に必要なのは国際ビジネスと物流学だよね?だから、会社経営のコツやちょっとした落とし穴を知るのに役立ってるんだよね」 どうぞ!!

OMNIUM GATHERUM “MAY THE BRIDGES WE BURN LIGHT THE WAY” : 10/10

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COVER STORY 【STRAPPING YOUNG LAD : 30TH ANNIVERSARY】


COVER STORY : STRAPPING YOUNG LAD “30TH ANNIVERSARY”

“Obnoxious music with super fast double kick, lots of random explosions and a bald guy screaming his balls off over top. Stress music made for catharsis.”

STRAPPING YOUNG LAD

Devin Townsend は、VAI の1993年のアルバム “Sex & Religion” で世に出ました。二人はその後、それぞれ別々に大成功を収めていますが、Steve Vai は Devin との仕事の思い出を今でも大切にしています。
「Devin は全身全霊で音楽に打ち込んでいたね。彼と一緒にいて、初めて彼の才能が自分の音楽にどう役立つかに気づいたんだ。彼は素晴らしいシンガーだった。彼はどんな歌でも歌えるんだ。そして本当に面白くて、奇抜で、ワイルドで、そういうところが大好きだった。でも、当時は彼が真にクリエイティブな人間だとは気づいていなかった。VAI は私が仕切っていたからね。でも、彼は私のバンドで活動して、何かを学んだんだろう。一度ツールを手に入れると、爆発的に成長した。とにかく表現したかったんだ」
Vai は Devin が作り上げた STRAPPING YOUNG LAD の2005年のアルバム “Alien” がお気に入りだと明かし、そのメロディアスで圧倒的な内容は “研究” に値するとまで称賛しています。そして誰がその言葉に異論を唱えられるでしょう?”Alien” は不健康な状況下で制作された(Devin が双極性障害の薬を断薬していた)にもかかわらず、メタル史に残る傑作となりました。
「Devin についてもう一つ言わせてくれ。彼の音楽は、どんなに激しいものでも、邪悪なものではない。その奥には、光、変革を求める、輝かしい欲求がある。彼の創作活動をずっと見てきた。彼の音楽が、彼にとってカタルシス的なプロセスとなり、自分自身の心に安らぎと心地よさを見出していく過程を目の当たりにしてきたんだ。STRAPPING YOUNG LAD の “Alien” は研究する価値がある。あの作品は、これまで聴いた中でも、これほどまでに強烈な作品はなかったよ」

STRAPPING YOUNG LAD は、Devin Townsend の作品群の中でも特別な位置を占めています。このバンドのヘヴィ・メタル的文脈を構成するインダストリアル、グルーヴ・メタル、デスメタル、ノイズの要素は、同時期の Devin の他のソロ作品にも存在し、同様に、ザッパ以降のシアトリカルでパノラマ的なシネマティック・プログは、STRAPPING YOUNG LAD のすべてのレコードに深く織り込まれています。そのため、サウンド面では意外にもそれほど深い差別化はないようにも思えますが、STRAPPING YOUNG LAD を信奉するファンは未だに絶えません。
もちろん、このオールスターバンドのメンバーが Jed Simon(ギター、当時はインダストリアル・グループFRONTLINE ASSEMBLY に在籍)、Byron Stroud(ベース、2004年から2012年までは FEAR FACTORY にフルタイムで参加)、Gene Hoglan(史上最高のエクストリーム・メタル・ドラマー)だったことはプラスに働きました。しかし、それ以上にこのバンドは Devin Townsend の血と汗と涙と才能と怒りと双極性障害、そのすべてを凝縮していたからこそ特別だったのです。
「OCEAN MACHINE の “The Death of Music” はまるでファンタジーの世界みたいだ。行くべき場所があるような気分になれる。うまくいけば、他の人も、あの音の逃避行を作ろうとしていた頃の僕と同じ精神状態を、少なくとも訪れることができる。”The Death of Music” は、Steve Vai のレコードを制作した直後に生まれた曲で、音楽業界に完全に幻滅していたんだ。何もかもが自分の思い通りにはならなかった。それから僕はRelativity recordsと契約していたけど、不運にも “Noisescapes” というプロジェクトに携わることになった。結局、このレコードは未完成に終わり、完成した作品もレーベルから “統合失調症的” すぎるという理由で却下されたんだ。このレコードは STRAPPING YOUNG LAD と OCEAN MACHINE の起源でその二つが一つにまとまっていて、レーベルはそれが混乱を生むと感じていた)。僕は他のレーベルにもデモ音源を依頼しようとしたけど、最終的には、アプローチしたすべての関係者が同じ意見だった。
それで僕は THE WILDHEARTS の友人たちのギタリストとしてイギリスのバーミンガムに移り、そこでよりアグレッシブな楽曲に注力し始めたんだ。だから、このファースト・アルバムの曲はイギリス滞在中に書かれたもの。”The Rainy Season”, “SYL” をはじめ、このアルバムの核となる曲は、SUICIDAL TENDENCIES とのヨーロッパ・ツアー中に書かれていった。
当時は非常に不安定な時期で、当時の僕の心境を最も端的に反映したのが、この奇妙で怒りに満ちた、非常に “レッド” なアルバムだった。CDのジャケットに写っているのは僕のお尻だよ。悪くないでしょ?肘を二つくっつけたみたいに見えるって言われたことがある。まあいいか。プロダクションは不安定で、ソングライティングにもかなりの浮き沈みがあったけど、僕の活動をまず紹介する作品としては、当時の僕をよく表していると思う」

SYL 名義での最初のアルバム “Heavy as a Really Heavy Thing” は、Devin が Vai のバンドに在籍していた直後にリリースされました。楽曲制作からツアーに至るまで、メジャー・レーベルの不手際への不満がこの作品を、初期のインダストリアル・メタル、デスメタル、スラッシュといった、よりエクストリームな領域へと導いたと言われています。Devin はその後、このアルバムを痛烈に批判するようになりましたが、実際には彼が言う以上に力強い作品でしょう。それは後期の作品にある映画的なスケール感がまだ未熟で、よりダーティーでザラザラとしたアルバムとなっているからかも知れません。そのインダストリアルな音色は、Devin の作品に大きな影響を与えたことで知られる GODFLESH の “Streetcleaner” にも違和感なく調和し、そのプロダクションは、初期 MESHUGGAH のような、当時のエクストリームなデス/スラッシュ・バンドに見られるようなメタリックなサウンドに近いものです。
「混乱と敵意に満ちた心境でイギリスから帰国した。Vai との活動は音楽業界全般への嫌悪感を生み、WILDHEARTS での活動は多くの疑問と怒りを生んだ。Jason Newsted(他にも数名)とのサイド・プロジェクトも期待外れだった。SYLの最初のアルバムは大ヒットしなかった。そこで、バンクーバーを離れ、音楽の新たな可能性を探る時が来たと感じた。
都会の醜悪な自然と、比較的目立たない場所に魅了され、ロサンゼルスの準工業地帯のような荒廃地はインスピレーションを得るのに良い場所だと考え、マリナ・デル・レイの友人数人と暮らしながら作曲を始めたんだ。
当時は、いくつかのアルバム(MORBID ANGEL の “Domination”、FOETUS の “Gash”、OLD LADY DRIVERS の “Formula” や “Cop Shoot Cop” など)に心を奪われていた。センチュリー・メディア・レコードの郵便室で注文を処理する仕事も時々していたけど、ほとんどの時間はSYLのダークな曲をひたすら書き続けていたんだ。”Oh My Fuckin’ God” を聴いてくれよ。偽善的なバカどもについて話しているんだけど、俺はこのシーン全体からなんとか逃れてきたんだ。だって、ファッションショーみたいでね。新作はいいけど KORN が好きなキッズには受けないって言われるのにうんざりだから。アディダス履いてウォレットチェーン持ち歩くようなクソみたいなの、もうやめてくれ。メタル・シーン全体で一番問題なのは、女性蔑視的な部分なんだ。
それから、”Spirituality”。曲の最後の部分に、かなりヘヴィな詩節がある。歌詞と、自分の考えを伝えることが、僕にとって一番大切なこと。僕が書くのは、どんなに些細で下品なことでも、僕の人生で起こっていることだ。たとえそれがセブンイレブンで働いている人とのトラブル、職場でのトラブル、家族とのトラブル、妹との喧嘩など、人によっては些細なことに思えるかもしれないけれど…本当に腹が立つようなことを歌っていて、ただ “ジェネレーションX” 的な “もううんざり、みんな最低、世界は私に生計を立てる義務がある、政府はクソだ” みたいな、ありきたりな怒りをただ吐き出しているだけじゃないなら…何を歌っているかなんて関係ない。ただそこに誠実さがあれば、音楽は10倍になるから…自分が歌っていることを感じられればね。この新しいアルバムで誇りに思っていることがあるとすれば、それは全部、僕の体の一部から生まれたものなんだ。それが睾丸でも、胃でも、心臓でも、わかるでしょ?
とにかく、デモも完成した頃、ハリウッドのライブで Gene Hoglan と出会ったんだ。彼がファースト・アルバムを気に入ったと言ってくれたので、彼を誘って “City” を制作することになった。彼は何ヶ月も演奏しておらず、ブラストにも慣れていなかったので、最初は少し難航したけど、リハーサルを始めて3日ほどで彼の素晴らしい才能に気づき、最終的にハリウッドにある Steve Vai のスタジオでレコーディングすることになったんだ。旧友の Byron と Jed をロサンゼルスに招き、より “バンドらしい” レコーディング体験をしようとした。意気投合したね。この初めての本格的なレコーディング体験が、後の僕たちの原点となったんだ」

“City” は STRAPPING YOUNG LAD の最高傑作と広く考えられています。Devin 自身も、このアルバムをバンドのディスコグラフィーの中で最高傑作だと考えているようです。その理由は明白。”Heavy as a Really Heavy Thing” をテンプレートとすれば、本作はほぼあらゆる面で確実に進歩を遂げているから。前作のヘヴィなデス/スラッシュ・プロダクションや、ザラザラとしたローファイなデモ感は消え去り、Devin が最初からこのプロジェクトに込めていたであろう、シネマティックなビジョンが全編に渡り採用されています。”City” は “Ocean Machine: Biomech” と並行して作曲・レコーディングされており、ヘヴィさを除けば、両者にはたしかに類似点が存在。”Ocean Machine: Biomech” は広大なサウンドスケープを用いて、ヘヴィとドリーミーの中間の空間を創り出し、人体に関する長編プログの寓話を表現しているのに対し、”City” は荒々しくノイジーな工業都市の風景を表現しているのです。工業都市なのに歌舞伎町から超鋼鉄重低爆撃。
“City” を語る上で、このレコードの音楽の激しさは欠かせません。もし “Heavy as a Really Heavy Thing” が、方向性を見失い、整理されていない創造的エネルギーの爆発だとしたら、”City” はそうした本能が軽躁病的な混乱と恐怖へと絞り込まれた作品だったと言えるでしょう。焼けつくような激しさにもかかわらず、このレコードのテーマは怒り以上にむしろ、双極性障害の片端からドラッグとアルコールで満たされた躁のエネルギーが爆発したように感じられます。それは “Ocean Machine: Biomech” の物悲しくメランコリックな壮大さとは対照的。アルバムは悪意に満ちているというより、むしろ慌ただしく、狂乱し、混乱しているように感じられ、危険がないわけではないものの、害悪の意志は感じられません。つまり、インスピレーションとなった大都市の混乱を、躁病に陥った身体の混乱、行き詰まり、そして途方もなく複雑な内なるエネルギー、自身の生々しい部分を象徴するメタファーとして用いているのです。

「”Physicist” のツアーを経てライブ・シーンに再び触れた後、僕は “City” に影響を与えた自らの中にある恐怖感を克服し始めた。再び SYL のような作詞作曲に挑戦し始め、”典型的なメタル・バンド” のアプローチを取れば、SYL に再び関わっても問題ないだろうと自分に言い聞かせたんだ。
なぜなら、正直に言うと “City” がもたらした注目は嬉しかったし、称賛やライブショーは実に魅力的だったから。セルフ・タイトルの楽曲と歌詞の8割は僕が持ち込んだものの、Gene と Jed には彼らが蓄えていたアイデアを出し合うように促すようになった。
このアルバムの歌詞は、僕がこれまで手がけてきた作品の中で最も自分と繋がりが薄いかもしれない。どちらかというと “クールに聞こえるか”、そして僕自身の “タフガイ” 的な姿勢を重視した作品だからね。満足できる要素もいくつかあったけど…”Bring On The Young” の一部は、当時の戦争への恐怖を直接反映していたよ。だけま、”Rape Song” のような曲は、激しいテーマと遠い感情的な繋がりが絡み合った結果、僕が意図していたものとは正反対の形で生まれてしまったんだ。
フランスのテレビ番組でレイプシーンのある番組を見て、女性にあんなことをする人への憎しみが募り、レイプ犯をぶちのめす曲を書かざるを得なくなったんだ。ところが、その意図は裏目に出て、一部の人たちはこれを “レイプ賛美” だと捉えてしまった…
SYL はこうした特異な性質のために、常に僕を不安にさせてきた。僕は無意識のうちに演じる “役割” に多大な労力を費やしていた。当時は気づいていなかったけど、僕のエネルギーの多くは、自分が抱いていたイメージを守ることに費やされていたんだ。そのイメージがどう進化していくのかをひどく恐れていたし、そのことを人々に悟られないようにするためにね」

セルフタイトルのアルバム “Strapping Young Lad” は、”City” のツアー後、グループが一時活動休止した後にリリースされました。当時、Devin は満足のいくヘヴィな音楽が書けなくなったと述べ、代わりに後の “Physicist” と “Terria” となる作品に注力したのです。しかし、あの9.11をきっかけに、Devin は新たな創作意欲を見出したようでした。地震や津波といった自然災害から、大国による帝国主義的な戦争、そしてそれが引き起こす小国や非力な国々の権力の空白まで、あの規模の悲劇は世界各地を悩ませ、今もなお続いていますが、9月11日の出来事は、アーティストであろうとそうでなかろうと、西洋の多くの人々の心の奥底を揺さぶったのです。突然、世界の苦しみの現実が明らかになる。一部の人々はこれを愛国主義や人種差別に利用しようとしましたが、Devin はいつものように自分のエネルギーを自分自身に注ぎ、最終的には、セルフタイトルのレコード “Strapping Young Lad” と、同時に結成された THE DEVIN TOWNSEND BAND 初のレコード “Accelerated Evolution” の両方を作り上げたのです。
「このアルバムは全てを変えた。”Alien” の後、SYLはもう終わりだと悟ったんだ。ライフスタイルを変える必要があるとね。このアルバムに至るまでの出来事、そしてレコーディングを取り巻く状況は、自分自身と精神を破壊してしまったと心から思うほど、混乱を招いた。僕の創作サイクルはタイムラインを見ればわかるように明らかに循環的だけど、そのことに気づいたことが、今の僕をありがたいことに導いてくれたんだ。
本質的には、”Alien” は、僕が自ら、そして当時の周りの人々によって、精神的に崩壊するほどにまで煽られた躁病の結果だった。SYLのセルフタイトル・アルバムで(善意にかかわらず)”有名” になってしまったことで、またしても中途半端なアルバムに対する批判に耐えられなかったのだろう。”Alien” に全力を注ぎ、”Infinity” の時と同じように、自分のプロセスに徹底的に取り組もうと決意したんだ。
“Infinity” でかつて自分を駆り立てた “殉教者芸術家” というロマン主義が頭から離れず、再びその境地に達してメタルというジャンルに “傑作” を残せると信じていた。”誰も成し遂げていない” 境地まで自分を追い込むことで、”City” 時代には自然にできていたことが、今や “無理やり” 生み出されるようになり、SYLを取り巻く状況はますます暴力的になり、今にして思えば自分がほとんど何も知らなかった事柄と複雑に絡み合っていた。そのため、僕の歌詞の傾向は歪んでいった。
怒ったり、落ち込んだり、あるいは何らかの負の感情を抱かなければ幸せになれない人がいるという考えがある。そして、僕がその限界まで自分を追い込む能力(そしてその意志)を持っていた時、僕は自らを暗く悪意に満ちた結末へと導くシナリオに陥っていた。注目を浴びることを喜び、”Terria” 時代にはそれを抑制していた薬の服用をやめてしまった。マリファナとアルコールへの依存が悪影響を及ぼしていたことを認めようとしていなかった。むしろ、それが歪んだ視界を悪化させていたんだよ。
このアルバムは Gene Hoglan と密に協力して制作し、毎日彼の家でリハーサルを行っていた。エクストリーム・ミュージックにおけるテクノロジーの可能性を最大限に活かそうとしたよ。実際、”Alien” で本当に良かったと思えることがあるとするなら、それは彼と音楽仲間として歩んできた道のりだ。僕たちは議論し、妥協し、そして最終的には、一人で作るよりも良いものを作り上げた。でも、二人で作り上げたものは、最終的に僕にとって非常に居心地の悪いものとなり、その後のツアー期間中ずっと落ち込んでいたんだ。
最後の曲 “Info Dump” は、朝4時に地下室でモールス信号と数学的なアイデアを駆使して書いたもの。巧妙で “限界に挑戦した” と思ったものの、結果として僕を恐怖の抜け殻のような人間にしてしまった。自分自身と自分の置かれた状況に対する妄想と恐怖は、つい最近まで僕を悩ませていた。しかし、少し距離を置いて、そして数年経ってから…このアルバムは、アーティストとして非常に誇らしい瞬間だと言えるようになったよ。だけどその誇りの大部分は、苦い経験を​​通して学んだ教訓を、二度と繰り返すつもりはないという自覚から生まれている」

終わりの始まり。”City” が真実だとすれば、”Alien” は現実だと言えます。”City” は間違いなく、このグループの壮大なコンセプトが初めて実現された瞬間でした。しかし “Alien” は、より歳を重ね、より賢明になったグループが、より感情的な精緻さを伴って、同じ考え方に立ち返った作品です。”City” は、身体と精神との関係における都市の比喩的なイメージに焦点を当てていました。大都市のすべてを理解することは困難です。一方 “Alien” は、酩酊状態、精神疾患、神経発達障害などによって、私たちが自分自身を理解できず、自分が思考プロセスの外側にいるように感じてしまうことに焦点を当てています。その結果、私たちは周囲の世界と繋がり、意味のある形で進んでいくことができなくなるのです。
つまり、”City” が外に向けられた躁状態だとすれば、”Alien” は内へと注ぎ込む、内破する精神のブラックホールだったのです。狂気じみた疑似哲学的 “Skeksis” は、それ自体が Devin の映画的なアート・メタルのキャリアの過去と現在を縮図のように捉えています。この時期 Devin は SYL の存在意義についてこう語っていました。
「STRAPPING YOUNG LAD が効果的なのは、僕らがそれほど人気が​​ないからだと思う。人気がないからこそ、自分をどう見せるかに多少の自由がある。僕は大成功なんて求めていない。次のアクセル・ローズになりたいとも思っていない。成功という点では、せいぜい SLIPKNOT (当時) と同程度だろう。彼らもまた、自分たちのやり方で成功を収めてきたヘヴィ・バンドだからね。でも、例えば METALLICA や GN’R だったら…
“Some Kind of Monster” っていうドキュメンタリーを見たんだけど、あいつらはもうメタルのためにやってるって感じじゃない。”マジかよ、俺らは億万長者なのに人生最悪だ” みたいな顔してる」
Devin が SYL を継続することが不可能な精神状態になり、必要なものさえも消し去ってしまったプロジェクトだと語る時、彼が言及しているのは主に “Alien” でした。このアルバムには、Devin が芸術的な高みに到達するために意図的に抗精神病薬を断薬したという神話が流れています。しかし、彼は自らの躁状態と鬱状態は過剰な薬物使用と若くして音楽業界に身を置く環境に起因する可能性が高いと判断し、抗精神病薬の服用を中止し、自らを見直すことを決意しただけでした。当時は禁酒状態だったため、精神状態はますます悪化し、それが心理的に不安を掻き立てるほど化け物じみたアルバムへと発展したのです。Devin は SYL と DTB の関係性をいつしかこう表現するようになっていました。
「STRAPPING YOUNG LAD って、ある意味、誰かに無理やり引っ張られて、やらされているって感じだからね。分かる? 全てを燃やし尽くすような、そういう宣言なんじゃないかな。政治も宗教も、全部クソくらえ! 物事は大丈夫かもしれない、なんて言う段階は完全に過ぎ去ってる。だって、大丈夫じゃないんだから。そういう感情への反応なんだ。Devin Townsend の次のレコードは、それと正反対だ。あのレコードは “大丈夫” って言ってる。この2つはそういう関係性なんだ。SYL は “なんてこった!” って言ってるし、DTB は “大丈夫” って言ってる。SYLはゾクゾクするけど、DTBは頭が柔らかくなる。どちらも自分とは正反対のものを体現していると思うから…だから、できるだけ正反対の要素を取り入れているのが良いと思っている。”Alien” にはアコースティックとか、ソロの雰囲気に合う部分もあるけれど。SYLの雰囲気は独特で、曲作りをしている時にすぐに違いが分かるんだ。DTBは温かい家族のような雰囲気。SYLとはセックスするし、DTBとは結婚しているんだ」

そうして、漆黒のスワンソング “The New Black” でその歴史に幕を下ろした STRAPPING YOUNG LAD。Devin のライブにおいても、SYL の楽曲は取り上げられていますが、おそらく復活することはないでしょう。ただし、Devin はSYL再結成の要望を賛辞と受け止めています。
「いつ再結成するのかって?この質問で一番気に入っているのは “いつ” という言葉だよ。まるで再結成の兆しがあるかのように聞こえるよね。でも、もうバンドの誰とも話していない。25年前の自分とはまるで別人だ。そうしたくない。それが僕の答えだと思う。 他の人たちがそれを望んでいるのを知っているから、それは罪悪感を伴う難しい選択だ。でも、この2、3年で学んだことがあるとすれば、自分自身の欲求に注意を払わなければならないということ。だから SYL を再結成するつもりはないけれど、みんながこのバンドに夢中になって、再結成を待ち望んでいるという事実は、僕にとって大きな名誉なんだ。これほどまでに光栄なことはないよ。これからも、みんなが待ち望んでくれるようなプロジェクトを作り続けたいと思っているよ。で関心を持ってくれて本当にありがとう!」
最後に、SYL を初めて聴く若者に Devin はこの音楽をどう説明するのでしょう?
「7弦ギター。チューニングはGCGCGCE。超高速ダブルキック、ランダムな爆発音、そしてその上にハゲ男が大声で叫ぶ耳障りな爆音。カタルシスのために作られたストレス発散音楽だ」

参考文献: https://hevydevy.com/discography/

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRYPTOPSY : AN INSATIABLE VIOLENCE】JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATT MCGACHY OF CRYPTOPSY !!

“What AI Can’t Replicate Is “Feel”. Flo Has a Groove, a Pulse, a Sense Of Tension And Release That’s Completely Human. He’s Not Just Playing Fast ― He’s “Telling a story” Through His Drumming.”

DISC REVIEW “AN INSATIABLE VIOLENCE”

「AIが再現できないのは、”フィール” だ。Flo にはグルーヴがあり、パルスがあり、緊張感と解放感があり、それは完全に人間的なもの。彼はただ速く演奏しているのではなく、ドラミングを通してストーリーを語っているんだよ。いつプッシュし、いつ抑えるのか、ライブの瞬間にどう乗って観客のエネルギーを高めるのか。 あとは直感だね。それをプログラムすることはできない。魂を偽ることはできないからね。それこそが Flo を伝説的な存在にしている理由であり、どんなアルゴリズムも彼に取って代わることができない理由なんだ」
SNS に支配された世界。AI が生み出すヒット・ソング。ほんの10年前にはSFでしかなかったテクノロジーのシンギュラリティ、アートにおけるディストピアが目前に迫っています。人が作曲し、演奏する。そんな当たり前だった音楽の根源が揺らぎ始めた世界においても、テクニカル・デスメタルの頭領 CRYPTOPSY が揺らぐことはありません。なぜなら、その心臓である Flo Mounier のドラム、その魂とフィール、そして人間としての “ストーリー” は決してプログラムすることは出来ないから。
「AIは敵ではないよ…しかし、注意と責任を持って扱うべき強力なツールには違いないね。確かに、AIは技術的には CRYPTOPSY の音楽のスピードや複雑さを再現することはできる。だけどね…人間の意図、欠点、魂、音楽の背後にある “ストーリー” を再現することは “決して” できないんだよ。メタルが進むべき道はまさにそこなんだよ。つまり、人間の経験なんだ」
CRYPTOPSY が29年前に “None So Vile” で大ブレイクを果たした時、世界は Flo のドラミングを “人智を超えたスピード、テクニック” と大絶賛しました。しかし今や、AI はスピードやテクニックだけなら悠々とその基準を凌駕することができるでしょう。では、人間はAIに敵わないのでしょうか?否。AIが0.01秒で制作した楽曲には “背景” がありません。Flo Mounier という達人が50年の人生で培ってきた “ストーリー”。癖や失敗、進化の過程、そして何より魂と情熱の炎は、AI がいくら進化しても決して再現することはできません。そして、シンギュラリティを目前に控え、ヘヴィ・メタルが目指すべき場所もまた、その何かを伝える、物語る “ストーリー” と情熱の煌めきに違いありません。
「エクストリーム・メタルは “解放” を提供する。こうした音楽は人々に、彼らの痛み、怒り、混乱を洗い流す場所を与え、それを力強いものに変える手助けをする。そしてこうした音楽はコミュニティを生み出す。メタルは、”暗闇の中にいても君は孤独ではない” と言ってくれるんだ。これほどまでに分断された世界で、メタルはあらゆる文化、あらゆる背景を持つ人々をひとつにする。混沌の中にカタルシスがある。残虐さの中に美がある。 だからこそメタルは重要なんだ。だからこそメタルは、時に文字通り、人々が “生き残る” ことを助けるんだよ」
そう、ヘヴィ・メタルはこの激しく分断された世界においても、孤独と痛みを洗い流し、様々な文化、背景を持つ人たちをひとつにつなげる “ストーリー” を語ることができます。CRYPTOPSY の最新作 “An Insatiable Violence” で彼らが扱ったのは SNS の狂気。私たちは、誰かの悪意あるノイズ、嘘、噂話、そしてネガティブなポストをスクロールして悦に浸る奇妙な SNS 中毒に犯されています。しかし、そうした負のドーパミンから活力を得られるはずもなく、結局私たちは大きな時間を割いて、自らを虐げ続けていると今回のインタビューイ Matt McGacy は語ります。
だからこそ、”痛み” や “怒り”、”孤独” を解放するヘヴィ・メタルは、今の世に必要なのです。教養にあふれ、それが悲劇であれ、美談であれ、正直にストーリーを語り、世界をつなぐヘヴィ・メタルが貴重なのです。
「Flo は技術に敬意を払い、真剣に取り組んでいる。 しかしそれ以上に、彼は自分のやっていることが大好きなんだよ。成長したい、学びたい、挑戦したいというハングリー精神があれば、年齢は関係ない。むしろ、年齢は追い風になる。Flo が今も進化し続けているのは、彼が決して満足しなかったからだ。彼は常に向上心を持ち続け、それこそが彼を止められない、アンストッパブルな存在にしているのだ」
その正直さは結局、メタルが好き、楽器が好きという気持ち、情熱から生まれています。エクストリームなメタル・ドラムの教科書を制定した Flo Mounier でさえ、”A Insatiable Violence” においてその技巧と直感に磨きをかけています。もっといえば、CRYPTOPSY というバンド自体が、その伝説を基盤としつつ、”アクセシブル” という新たな領域へと挑んでいます。
悪辣でありながらフィーリングに満ちたフックと即座に耳に残るメロディが、熟練と技術のフィルターを通過して狂気と残忍のデスメタルに染み渡ります。そう、彼らは王座に胡座をかくことなく、遺産を尊重しつつも超越、濃密で毒霧のようななサウンドスケープを解き放って、メタルにおける情熱の物語を見事に語って見せたのです。血に飢えた、慌ただしい作品で容赦なく、不安を煽りながら。
今回弊誌では、フロントマン Matt McGachy にインタビューを行うことができました。「ポストロック・バンドの MONO が大好きなんだよ。彼らの音楽は信じられないほど感動的で、アトモスフィアがあり、感情的だ。歌詞を書いているときや、ショーの後にリラックスしているときに、よく MONO を聴くんだ。美しく、力強い音楽だ」バンドはニ度目の登場。  Flo には VLTIMAS でもインタビューを行っています。どうぞ!!

CRYPTOPSY “AN INSATIABLE VIOLENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【QUADVIUM : TETRADOM】 STEVE DI GIORGIO SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVE DI GIORGIO OF QUADVIUM & TESTAMENT !!

“You Can Make a Fretless Sound Like Fretted If You Want, But You Can Never Make a Fretted Sound Like a Fretless…The Fretless Bass Is Just So Much More Expressive And Has a Greater Distance From The Guitar.”

DISC REVIEW “Tetradōm”

「異なるサウンドを作るために実験的にエクストリーム・サウンドにフレットレスを持ち込んだんだ。もし望むなら、フレットレスをフレット付きのように鳴らすことはできるけど、フレット付きをフレットレスのように鳴らすことは決してできない……フレットレス・ベースの方が表現力が豊かで、ギターとの距離もとても近いんだ」
メタル世界で “フレットレス”、つまりヴァイオリンのようにフレットのない楽器は今や珍しいものではありません。ベースはもとより、Tom Fountainhead のようにギターにまでその波は広がっています。フレットを取り払った異次元的で滑らかな音色は、どんな楽曲にもえもいわれぬ独特な風味を加え、メタルの幻想と宇宙を深化させてくれるのです。
「DEATH は僕にとってすべてを意味する。Chuckは僕にミュージシャンとして成長するチャンスを与えてくれたし、何より他の人たちが注目できるよう僕をメタルの地図に載せてくれたんだからね。もちろん、”Individuals” の2年前には、僕にとってとても重要なアルバムに参加していたんだけどね… “Human” だよ。CYNIC の才能ある連中と一緒に、あんなに若くしてデスメタルの景色を変えたんだからね。あの作品で新しい方向への扉が開かれ、まったく新しいジャンルが生まれたんだ」
Steve Di Giorgio はそんなフレットレスの魔法をメタルに持ち込んだパイオニアのひとり。今は亡き Chuck Schuldiner が作り上げた DEATH の “Human” は、硬質なメタル世界に “浮遊感” という宇宙を持ち込みました。その新たな景色を描くために Chuck が必要としたのが、ジャズ/フュージョンに精通した CYNIC の面々と Steve のフレットレス・ベースだったのです。
そう、いつだって “壁” を壊すのは “奇抜” にも思える挑戦的なアイデア。以来、エポック・メイキングな “Human” は、テクニカル/プログレッシブ・デスメタルの金字塔となり、フレットレスはメタルの異世界を描く貴重な筆のひとつとなっていったのです。
「僕たちが若く、影響を受けながら成長していた頃、ベースは曲にとって他の何よりも重要だった。だけど、残念ながら90年代にはインスピレーションに溢れたベース演奏が乏しくなり、それは新世紀に入っても続いた。しかし、ここ10~15年の間に、非常に優れた、創造的なスタイルを持つ新しい世代のベーシストが現れ、メタルの中にベースの重要性を取り戻しつつあると思う。ベースが影から出てくると同時に、バンドをサポートし続けることが一般的になってきているんだよ」
始まりの場所 SADUS から、Steve が家と呼ぶ TESTAMENT、ARTENSION や SOEN、果ては MEGADETH まで果てないベースの旅を続ける Steve。そんな彼の挑戦と求道の中でも、QUADVIUM ほど “奇抜な” 試みは初めてでしょう。そう、QUADVIUM にはフレットレス・ベースの達人が Steve 以外にもうひとり、存在するのです。Jeroen Paul Thesseling。OBSCURA や PESTILENCE で名を成したオランダの奇才が加わることで、QUADVIUM はまさに前代未聞の “異質” な物体となりました。
“多弦フレットレス・ベースをさらに進化させたら?” をコンセプトに掲げる QUADVIUM。アルバム “Tetradōm” は、DEATH, CYNIC, ATHEIST, PESTILENCE といった90年代のテクニカル・デスメタルと、現代的なフュージョン・プログ・メタルを基盤とし、楽器の攻撃性と滑らかでジャジーなコード進行、そしてフレットレスの浮遊感、宇宙的景観を巧みに融合させながら、特徴的なダブルベースのサウンドを際立たせていきます。
次から次へとアイデアが飛び交うメタルの迷宮。アストラルな静寂の海、幻想的なハーモニーを切り裂く技巧と激情のインテンション。ふたりのベースの達人は、どちらが主役をはるでもなく、まさに Steve が語る表に出ながらサポートするというこの楽器の理想型を見せつけていきます。
ベースの進化はメタルの進化。「Chuck はよりオープンでメロディアスなギター・リフ・スタイル、”Human” や “Individual” のより創造的なやり方に戻るために僕のベースが必要だと感じていたんだ。でも、僕たちが2作目の CONTROL DENIED の計画を立てている最中に、彼の健康状態が悪化し、完成させることができなくなってしまったんだ。とても、悲しかったよ…それは、その音楽が彼の最も冒険的な楽曲であったからというだけでなく、いや、それ以上に僕たちが出会った1986年、アルバム前のデモの時代からずっと良い友人であったからなんだ。僕はひとりの親友を失い、世界はユニークな先見の明を失った」 TESTAMENT の新作も控えています。Steve Di Giorgio です。どうぞ!!

QUADVIUM “TETRADOM” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HIDEOUS DIVINITY : UNEXTINCT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ENRICO SCHETTINO OF HIDEOUS DIVINITY !!

“Metal Sex Workers Degrading Metal” Makes No Sense At All, Especially Because The Metal Community Always Claims To Be The Most Open-Minded And Inclusive Of All Music Communities.”

DISC REVIEW “UNEXTINCT”

「僕らのマネージャーはずいぶん前から、日本がいかに重要か、そしてSNSやTwitter/X を正しく使って日本のファンと接触する方法を理解していた。時間と労力がかかることだが、最終的には報われる。ファンと個人的な対話をすることができれば(Tito はその達人だ)、アーティストはファンにとってより大きい存在になるだろう。日本で僕たちにアプローチしてくるファンは、言葉の壁があるにもかかわらず、僕たちを “より身近な存在” だと感じていることに気づいた。とても誇らしく、謙虚な気持ちになったよ」
世界は今や、SNSがすべての中心にあります。それは音楽の世界も同じ。知名度を高め、人気を得るために SNS の効果的な運用は不可欠でしょう。HIDEOUS DIVINITY と彼らが所属するイタリアのレーベル Death To All は、そうした状況を深く理解しています。
彼らは特に、日本のマーケット、その重要性を認識していて、SNS を日本語でも運用。こまめにチェックとエゴサを重ねて、言及のあったアカウントにいいねやリプライを送ることも欠かしません。それはたしかに、時間と労力を消費する裏の仕事ですが、資金をかけることなくマーケティングが可能な金の卵でもあるでしょう。遠く離れたファンとつながれる、幸せな時間でもあるはずです。そうして実際、HIDEOUS DIVINITY 初の日本ツアーは大盛況のうちに幕を閉じたのです。
「正直、あの時は彼女の職業については知らなかったんだ!”メタルのセックス・ワーカーがメタルの品位を落とす” というのは、まったくもって筋が通っていない。特にメタルのコミュニティは、あらゆる音楽コミュニティの中で最もオープン・マインドで包容力があると僕は常に主張しているのだから。一部の例外を除いて、メタル世界に差別的なエピソードは見当たらない。 もちろん、世界は愚か者でいっぱいだ。だからメタルを聴くバカもたまにはいるだろうが、それについて我々ができることはほとんどないんだよな」
一方で、SNS には暗い側面も存在します。誹謗中傷や差別の助長。HIDEOUS DIVINITY の日本公演にゲストとして招待されていたあるセックス・ワーカーのポストについて、”セックス・ワーカーがメタルに言及すると、メタルの品位が落ちる” と発言するアカウントが現れました。
さて、モダン・メタルの “品位” “品格” とは何でしょうか?個人的に、それは Enrico のいうように、包容力、寛容さ、そして教養だと感じています。人種や文化、性別や職業に貴賤がないことは、現代を生きる人々にとってまさに不文律といえます。その不文律こそ、人類が、そしてメタル世界が長い年月をかけて培ってきた知性であり、教養であるはずです。そこに、”区別” と称して差別や抑圧を持ち込むことこそ、前時代的であり、”メタルを聴くバカ” に違いありません。
せっかく、我々はどんなジャンルよりも多様で幅広いテーマを扱う、”教養” を養えるヘヴィ・メタルの世界にいるのです。その “教養” を粗末にするような SNS の使い方は避けるべきでしょう。
「僕たちの音楽が歓迎され、高く評価されたのを見ると、日本のファンを増やすことはできると思う。熱狂的で情熱的なデスメタルのファンに沢山会ったけど、彼らの多くは、UNBIRTH や PUTRIDITY といったイタリアの他のバンドのファンだった。僕たちはただブルータルなデスメタル・バンドではなく、他の方向に向かっていると思うから不思議なんだけど、それでもフィードバックはとても良かったんだ」
実際、多くの日本のファンは寛容だったようです。HIDEOUS DIVINITY の音楽は、決して一筋縄ではいきません。実に哲学的でテクニカルでありながら、暴力的で混沌したノスフェラトゥ。相反する要素を併せ持つ、彼らのテクニカルでプログレッシブなデスメタルを追求するリスナーは決して多くはないでしょう。それでも、日本のリスナーは、決して最推しではなくても、彼らの音楽に耳を傾け、理解しようと努力し、愛情を注ぐようになりました。もちろん、音楽の “品位” が高いことは当然ですが、そうして好奇心と寛容さでメタルの世界が広がることこそ、SNS 時代において最も美しい光景ではないでしょうか?
今回弊誌では、ギター・マイスター Enrico Schettino にインタビューを行うことができました。「日本のSNSにおける、トレンディング・トピックの達成は信じられなかったよ!日本に惹かれる理由はメンバーそれぞれだと思う。Enrico・H はアニメの世界に最も造詣が深いかもしれないし、メンバーみんなが80年代や90年代に人生を変えたビデオゲームを知っている。 個人的に、僕にとっての日本とは、黒澤、北野、葉隠、そして相撲だ。 一般的に、僕はいつも西洋の基準とは全く異なる世界に魅力を感じていたんだよ」 どうぞ!!

HIDEOUS DIVINITY “UNEXTINCT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IMPUREZA : ALCÁZARES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LIONEL CANO MUNOZ OF IMPUREZA !!

“Metal And Flamenco…Two Worlds That Seem To Be Opposites, But Which Share The Same Intensity, The Same Pain, The Same Rebellion. It’s This Mixture That Forged The Guitarist I Became.”

DISC REVIEW “ALCÁZARES”

「非常に美しい進化だと思うよ。メタルはついに、これまで以上にユニバーサルなものになりつつあるんだからね。各言語には歴史、色、文化があり、それを使用する者にリズムを与える。スペイン語は、僕たちの歌詞に特有の音楽性をもたらし、ドラマチックで激しく暴力的な側面を与え、メタルの力とフラメンコの強度を自然に融合させてくれるんだ」
BLOODYWOOD や THE HU の台頭により、メタルに宿る生命力、包容力、感染力がついに可視化されました。今やメタルに第三世界はありません。その大いなる寛容さで様々な地域、様々な人々の文化を暖かく包み込み、メタルの咆哮と旋律に共感を誘います。
“ヒスパニック・メタル” を標榜する IMPUREZA も、そんなユニバーサルなモダン・メタル世界を象徴するバンドのひとつ。フランスとスペインの伝統の炎…その熱き血潮で鍛えられた IMPUREZA は、エクストリーム・メタルとフラメンコの情熱的で激しい融合を20年もの長きに渡って、追求してきました。そして今、イベリア半島のアイデンティティを刃物のように操り、自らのルーツをメタルの中に浸透させた彼らの勇気に遂に時代が追いついたのです。
「僕はフラメンコとメタルという、非常に強力な2つの世界の間で育ったんだ。家ではパコ・デ・ルシア、カマロン・デ・ラ・イスラといったスペインのギター音楽を聴いていたんだよ。一方で、METALLICA, PANTERA, SLAYER, MORBID ANGEL, TESTAMENT, NILE などにも完全に浸っていた。一見対立する二つの世界だけど、同じ情熱、同じ苦悩、同じ反逆の精神を共有しているんだよ。このふたつのミックスが、ギタリストとしての僕を形作ったんだ」
そう、一見交わらないように思える様々な道を交わらせるのがメタルの力。しかし、そもそもフラメンコとメタルには、情熱、苦悩、そして逆境を跳ね返す回復力といった多くの共通項が存在しました。だからこそ、今回のインタビューイでありイベリアのギター・ヒーローLionel Cano Muñoz は PANTERA とパコ・デ・ルシアを同時に愛することができたのです。
「フラメンコには深い、悲劇的で、感情的、本能的な精神がある。メタルには、この解放的な音楽の力を通じて、僕たちの中に埋もれたエネルギーをアウトプットする能力がある。ただしふたつとも複雑な音楽で、多くの厳格さを必要とする。勇気は、この絶対的な誠実さから生まれてくるんだ」
とはいえ、これほど精巧で、荘厳で、ドラマティックなヒスパニック・メタルはまさに前人未到の領域。誰も踏み入れたことのない場所を開拓するためには勇気が必要です。そして、NILE や BEHEMOTH のように凶悪でありながら、OPETH のように挑戦的で、パコ・デ・ルシアのように革命的で苦悩と歓喜に満ちた “La Orden del Yelmo Negro” は、絶対的な勇気の歌。あの Jacob Hansen 指揮の下、見事に練られたクラシカルなストリングスとリズミックなパーカッションが、メタルの “レコンキスタ”、再征服を誇り高く宣言します。そしてもちろん、フレットレス・ベースの嗎はプログレッシブなデスメタルの矜持。
「スペインの歴史には、その偉大さと衰退の両方が刻まれている。政治的、宗教的、さらには神秘的な対立が多くの不幸の根源だけど、そうしたテーマは僕たちの創作に無限のインスピレーションを与えてくれる。僕たちは戦争を美化しようとしているわけではなく、その精神的、文化的、人間的な共鳴を探求しているんだ。戦争は確かに暴力的なものだけど、同時に深くて象徴的なものだと思う」
常にイベリアの歴史を物語ながら、ある種の教訓をもたらしてきた現代の吟遊詩人 IMPUREZA。今回のアルバム “Alcázares” で彼らは、血と死が今よりもはるかに近くにあった中世、レコンキスタをテーマに選びました。キリストとイスラム…血塗られた歴史と神秘が交錯する宗教と戦いのストーリー。争いから始まった文化と人の流動性はいつしか成熟され、洗練され、多様な背景を持つ人々を生み出し、ルネサンスの下地にもなりました。血と死に導かれたレコンキスタはまさに、メタルとフラメンコの “不純な” 婚姻にも似て、多文化共生、異文化共鳴の始まりでもあったのです。
今回弊誌では、Lionel Cano Muñoz にインタビューを行うことができました。「メタルは世界を変えることができない。それはたしかだ。だけど、ニュース、本、映画とは全く異なるチャンネルを通じて物語を伝えることならできる。そうやって、いつも僕たちに “逃避” する場所を与えてくれるんだ。メタルはおそらくこの世界におけるユニバーサルな言語であり、表現における最高の武器なんだ!」どうぞ!!

IMPUREZA “ALCÁZARES” : 10/10

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