EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH OTTO WICKS-GREEN OF SLEEPMAKESWAVES !!
Remarkable New Wave Of Australian Rock Act, Post-Rock Titan, Sleepmakeswaves Explore Their Progressive Roots With Newest Record “Made Of Breath Only” !!
DISC REVIEW “MADE OF BREATH ONLY”
オーストラリアから流れ来るポストロックの波紋、サウンドスケープの魔術師 SLEEPMAKESWAVES が3年ぶり、3枚目のフルレングス “Made of Breath Only” をリリースしました!!自身とジャンルの新たな可能性を提示したその美しくダイナミックな音の旅路は、幅広く数多のリスナーへと語りかけることでしょう。
新風吹き込むオーストラリアのロック/メタルシーンが活性化の一途をたどり、今や世界中から熱い視線を浴びていることに異論を挟む音楽ファンはいないでしょう。The New Wave of Australian Rock。ポストハードコア、ポストロック、プログレッシブ、シューゲイズにエクスペリメンタルと多岐に渡るこの鮮烈な胎動の中でも SLEEPMAKESWAVES の存在感は一際強い光彩を放っています。
オーストラリアの権威ある音楽賞 ARIA Awards にノミネートされ、OPETH, 65daysofstatic といったビッグアクトにも認められている事実、さらに近年のクラウドファンディングによるプロダクションに呼応する忠実なるファンベースはまさにその存在感の証明だと言えるかも知れませんね。
“Made of Breath Only” は、バンドの精髄であるポストロックの美麗なるアトモスフィアとダイナミズムの濃淡はそのままに、よりクラッシックロックやプログレッシブなルーツを強調した作品に仕上がりました。
インタビューにもあるように、人の利益優先で進む開発は自然を破壊するのみならず復元不可能な状態にまで荒廃させています。アートワークに描かれる粉々のアイスバーグは、地球の温暖化により氷解し続ける南極の氷山を象徴しており、SLEEPMAKESWAVES はその雄大でしかし痛ましき自然の声を無垢なるインストゥルメンタルミュージックで代弁しているのです。南極大陸から最も近いオーストラリアに住む彼らだからこその”リアル”であると言えますね。
重大で深刻な作品のテーマに沿うダークなイントロダクション “Our Days Were Polar” に導かれ幕を開ける “Worlds Away” は実に強力なアルバムオープナー。雷鳴のように轟く豪胆な序盤からメロディアスに展開するテーマ部分、そしてエセリアルなアトモスフィアを放出する中盤まで、彼らのトレードマークである変動と静動のダイナミズムは一段と洗練され匠の域にまで達しているようにも思えます。
ドラマー Tim とベースプレイヤー Alex の息はピッタリで、さながらボンゾのタメとジョンジーのフレキシブルなラインをイメージさせるほど。2人の本能と知性を巧みに振り分けるオーガニックなタイムキープは、このジャンルでも確実に群を抜いており、重量感の増したアルバムを完全にコントロールしていますね。
マスマティカルでバンドのテクニックを見せつける強烈なシングル “Tundra” を経てたどり着く10分を超えるエピック、”The Edge of Everything” はこのプログレッシブなレコードを象徴する楽曲です。YES の遺伝子を宿すかのごとく、時にメカニカルで時にアコースティック、レトロとモダンを行き来するエモーショナルで劇的なインストゥルメンタルチューンは、映画のように雄弁でリスナーの想像力を掻き立てます。
ヴィンテージシンセの使用や歪みを抑えたリードギターはふんだんに70’sの香りを漂わせ、しかしダウンチューンのギターリフ、トレモロが奏でる空間的なメロディーにエレクトロニカな装飾は実に現代的。バンドのトレードマークと野心が見事に溶け合った濃密な10分30秒は、いつしか聴く者の感情さえ重ねて溶かしていくのです。インタビューにもあるように、それこそがインストゥルメンタルミュージックの醍醐味だと言えますね。
さらに、”The Edge of Everything” には、他のトラックで使用されているリフが効果的に潜んでおり、”Made of Breath Only” が深く計算され、マクロなスケールでしかし緻密に構築、レイヤーされたレコードであることを証明しています。
アルバムは、バンドのキャッチーな魅力を存分に詰め込んだ “Hailstones” のでその幕を閉じます。”雹” と名付けられた楽曲は、驚くことに人間の声までもがサンプリングされており、子供時代の懐かしい記憶を呼び覚ますような温かみに満ちています。心地よく揺らぐそのサウンドは、以前から「ディレイペダルについてのラブソングを書いているんだ。」と嘯いてきた2人のギタリスト Otto と Daniel のギタープレイに対する理想が結実した成果に違いありません。
ポストロック/ポストメタルにオルタナティブ、プログレッシブ、エレクトロニカなど多様な影響を昇華させるのが彼らのやり方ですが、さらに70年代の風を胸いっぱいに浴びたこのマイルストーンはバンドの地平がどこまでも広がって行くことを予感させてくれますね。
今回弊誌ではギタリスト Otto Wicks-Green にインタビューを行うことが出来ました。クラッシックロック、メタル、プログロックのファンにとって、ポストロックへ通ずる最高の入口だと思います。どうぞ!!
SLEEPMAKESWAVES “MADE OF BREATH ONLY” : 9.9/10
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