NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【INFERI : THE END OF AN ERA: REBIRTH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKE LOW OF INFERI !!

“Don’t Get Me Wrong, A Lot Of Bands Are Putting Out The Same Album Over And Over, And Rehashing Shit That Has Been Done For Years. This Is Really Doing Nothing For The Growth Of The Death Metal Scene. Incorporating Your Own Unique Flavor Is Key In Growing And Sustaining a Healthy Music Genre.”

DISC REVIEW “THE END OF AN ERA: REBIRTH”

ナッシュビルを居とするテクニカルデスメタルの抒情詩人 INFERI は、シンフォニックな情景描写と緻密な音章技巧を融合し、モダンなエクストリームミュージックの可能性とあり方を明示する特異点です。
ネクロマンサーを出自に命名されたバンド名が示すように、当初はゴーセンバーグスタイルとテクニカルな牙を邪悪にミックスしていた INFERI ですが、徐々に壮大なオーケストレーションと流麗なシュレッドをその看板として掲げていきます。その審美のキャンバスに、昂然たる神話の荘厳やダークファンタジーのストーリーを描くことでバンドは、モダンメタルの石碑へと自らの名を深々と刻むこととなったのです。
「ジャンルの限界は毎日のように拡張されている。ミュージシャンが自らのユニークなスタイルで音楽を作り続ける限り、そしてリスナーが飽きてしまわない限りね。」
ギタリスト Mike Low はテクニカルデスメタルに潜む無限の可能性を信じて疑いません。そして、その言葉通り昨年リリースされた “Revenant” は、シーンの絶賛と共にジャンルのリミットを解除する貴重な “鍵” となったのです。
ARSIS の James Malone と THE BLACK DAHLIA MURDER の Trevor Strnad。INFERI のメンバーが長年愛聴し、バンドのサウンドを形成する骨子となった2人の偉人をゲストに迎えたレコードは、故にファンの望むテクデスヘヴンを体現しつつ、一方で自らのユニークスキルであるストリングスやオルガンの崇高神秘とギターロマンを究極まで突き詰めたマイルストーンとなりました。
それは「独自のユニークなフレイバーを加味することが、シーンの成長とヘルシーなジャンルを保つための鍵だと言えるだろうね。」の言葉を己の手で証明する、クロスオーバーの正義だったのです。中でも、RHAPSODYも慄く死のプログレッシブ歌劇 “Thy Menancing Gaze”や、猫の目のアヴァンギャルド “Smolder in the Ash” における開明性、斬新さは圧倒的でした。
バンドのアイデンティティーが具現化したのが、2009年にリリースされたセカンドアルバム “The End of an Era” であることは明らかでしょう。ダンテの “神曲” をモチーフにメロディーと複雑性のダンスを踊る先駆的なレコードは、現在の INFERI にとってまさに基盤となりました。
「僕たちは今回の試みでいくつか新たな要素や機材を持ち込むことが出来たし、オリジナルのレコーディングには現れていなかった新たな息吹を楽曲へ吹き込むことが出来たからね。」
前任ボーカル Sam Schneider の離脱に伴い、新進気鋭 EQUIPOISE の Stevie Boiser をリクルートし新体制で “The End of an Era” のリレコーディングを行なったのは、リリースから10年を経て成熟洗練したバンドの現在でその偉業を語り紡ぐため。
トレモロリフ、デュアルギター、オーケストレーション、アトモスフィアの階層が巧みに交差する偉大なデスメタルの神殿は、”前時代”を終結させるほどのクオリティーを誇りながら、ノウハウの欠如、プロダクションの未熟さ、知名度の低さにより受けるべき賛辞を受けていなかったと言えるでしょう。
そうして全ての弱点が克服された “The End of an Era: Rebirth” を一つの端境に、INFERI は文字通り新たな生を得るはずです。「僕たちはすでに次のアルバムに着手しているんだ。君が言ったような、ファンが望むであろう要素を保ちながら、さらに僕たちのサウンドを拡大するのが本当に楽しみなんだ。」リスナーも新たな叙事詩に封じられる音の葉を待ち侘びます。
最後に、ENFOLD DARKNESS, EQUIPOISE, WARFORGED, FLUB, AUGURY といった Tech-metal の特異点を呼集しシーンを牽引するレーベル The Artisan Era が、INFERI のギターチームによって運営されていることは記して置くべきでしょう。
今回弊誌では、Mike Low にインタビューを行うことが出来ました。「多くのバンドは同じような作品を何度も何度も繰り返し作って、クソみたいな焼き直しを何年も生み出し続けているんだよ。こういった行為は、デスメタルシーンの成長に本当に何も寄与しないんだ。」どうぞ!!

INFERI “THE END OF AN ERA: REBIRTH” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEVIL MASTER : SATAN SPITS ON CHILDREN OF LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HADES APPARITION OF DEVIL MASTER !!

“I Think The Desire To Find The Most Chaotic And Moribund Sound Is What Drew Us To Japan’s Underground Music Scene. It Has Had a Huge Impact On Us Musically And Aesthetically.”

DISC REVIEW “SATAN SPITS ON CHILDREN OF LIGHT”

「僕たちのライティングプロセスにおいて、禁止されていることは何もないし、創造的なプロセスを阻害するいかなる意図も働かないよ。」
エクストリームミュージックの世界において、ジャンルの “純血” を守るためのみに存在する特有の “ルール” はもはや過去のものへとなりつつあります。ヴァンパイアの血を引く “漆黒のプリンス” を盟主に仰ぎ、フィラデルフィアから示現したオカルト集団 DEVIL MASTER は、天衣無縫な怪異の妖気でメタル、ハードコア、ゴス、ポストパンクといったジャンルのボーダーラインをドロドロに溶かしていきます。
「 G.I.S.M., ZOUO, MOBS, GHOUL, GASTUNK…間違いなく彼らの影響は、僕たちが成そうとしていることの基礎となっているね。最も混沌とした、瀕死のサウンドを見つけたいという願望が、日本のアンダーグラウンドミュージックシーンに僕たちを引き寄せたんだと思うよ。」
ブラックメタルの歪みと混沌、スラッシュの突進力、衝動的なハードコアのD-beat、ゴシックロックの濃密なメランコリー、揺らぐポストパンクのリバーブ、そしてクラッシックメタルの高揚感。モダンメタルの多様性を究極に体現する DEVIL MASTER の音の饗宴。その骨子となったのは驚くことに、ここ日本で80年代に吹き荒れたハードコアパンクの凶悪な嵐、いわゆるジャパコアでした。
確かに、ZOUO のサタニックなイメージをはじめとして、パンクらしからぬ高度な演奏テクニック、ノイジーでメタリックなサウンドメイクなど、良い意味でガラパゴス化した当時のジャパコアシーンの異端なカオスは、DEVIL MASTER の原点としてあまりに符号します。
そして皮肉なことに、DEVIL MASTER が極東の前世紀アンダーグラウンドを起点として、多彩な阿鼻叫喚を創造したのは、今現在 「大半のモダンメタルが陥っている一種の停滞から自身をしっかり識別、認識させたいという願望」 にありました。
「サタニズムに纏わる事柄は、間違いなく僕たちの音楽に内包されているね。だけど、僕たちのアプローチは確実に典型的な意味では用いられていないんだ。」
ギターの片翼 Hades Apparition も固執する “典型” を嫌うマスターの哲学。さらにマスターマインド Darkest Prince は、「サタンは世界を前進させる力だと思う。神にも似て…いや神なんてものはいない。それは”フォース”の名称であるだけさ。邪悪だって存在しない。ただ、”道義心” が社会を形作っているだけなんだよ。」 と語ります。
つまり、彼らのサタンは “生を肯定” する存在。サタニズムを邪悪や悲惨のネガティブな一元論で語るバンドが多い中、”Devil Is Your Master” に示された通り DEVIL MASTER は、”マスター” という “フォース” の栄光を讃えることで、サタニズム由来のメランコリズムと高揚誘う勝利のサウンドを見事に両立しているのです。
EP のコンピレーションを経て Relapse からリリースとなったデビューフル “Satan Spits on Children of Light”。ピアノに始まりピアノに終わるレコードは、”Skeleton Hand” でハイテンションのホラーパンクを、”Desperate Shadow” で MERCYFUL FATE の劇場感を、”Dance of Fullmoon Specter” では古の日本の伝承を探求し、70年代のオカルト映画に通じる退廃的な邪悪をシアトリカルに体現するスペクタクルとなりました。それは聴覚とそして視覚からリスナーを地獄の底へと誘う旅。
CODE ORANGE, POWER TRIP を手がけた Arthur Rizk のプロデュースはまさしくクロスオーバー最先端の証でしょうし、もちろん、GHOST の手法を想起するリスナーも多いでしょう。
今回弊誌では、Hades Apparition にインタビューを行うことが出来ました。「一つの旗の下に音楽を創作するという典型的な “近視” の状態ではなく、僕たちの全ての影響を出したいと願うよ。そうすることで、僕たちの音楽に住む混沌とした性質をさらに加速させることが出来ると思うんだ。」 どうぞ!!

DEVIL MASTER “SATAN SPITS ON CHILDREN OF LIGHT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【QUEENSRŸCHE : THE VERDICT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MICHAEL “WHIP” WILTON OF QUEENSRŸCHE !!

“If We Were To Write Another Conceptual Album It Would Always Be Judged And Compared To The Original “Operation:Mindcrime” Album. Sequels Rarely Outshine The Original !!”

DISC REVIEW “THE VERDICT”

「QUEENSRŸCHE には37年の歴史があるんだ。だからね、どの時代にも大きなインパクトを与えられた、人生を変えてくれたっていう情熱溢れるファンがいる訳だよ。」
Chris DeGarmo も Geoff Tate もいない QUEENSRŸCHE に何を期待し求めるのか。
デジタルな叫びにプログレッシブの本能を込めた “Rage for Order”、メタル史に残るコンセプトアルバムの金字塔 “Operation: Mindcrime”、ラジオのエアプレイを支配した洗練の帝国 “Empire”、哲学と内省の楽園 “Promised Land”、そして時代の影を生き生きと描写した開拓地 “Hear In the Now Frontier” まで、2人の主役が牽引したレコードは全てが知性と冒険心でメタルの可能性を培養する妙想のシャーレだったのですから、その疑問はある種当然です。
DeGarmo が去り、齟齬を孕んだ Tate とバンドのアンバランスな営みが終焉を迎えた後、しかし QUEENSRŸCHE は Todd La Torre の輝かしき才能と原点回帰で長きアイデンティティークライシスを解消へと導きました。
「僕たちはどんなトレンドも追いかけたりはしないし、自分たちにとって正しいと感じる音楽だけを追求しようとしているんだ。」
おそらく、”女王の王国” を設立した Michiel Wilton の中には中途半端なトレンドの追求が不遇の時代招いたという想いがあるのでしょう。とは言え、過去にはトレンドを巧みに司って音の稜線を拡大していた時期もある訳で、この発言には近年の Tate の半端なセンスに対する鬱憤と後悔が透けて見えるようにも思えますね。
ただし、Geoff Tate がその歌唱力において唯一無二であったのは確かです。故に、バンドが完璧に QUEENSRŸCHE の声を代弁し余りある Todd を見出すことが出来たのはただただ行幸でした。
最新作のタイトル “The Verdict” とはすなわち “評決”。或いは、Todd 加入後の2作は “審議” 期間だったのかも知れませんね。つまり、この作品で現在の QUEENSRŸCHE に対する是非の判断が下されるのです。そしてきっと間違いなく、正義はここにありました。
もちろん、QUEENSRŸCHE という名前の裏に、張り巡らされた迷宮のような知性や背景を期待するならば現在の彼らには物足りない部分もあるでしょう。ただし、”The Verdict” にはそれを補って余りある瑞々しくも圧倒的エナジーと、研ぎ澄まされた充実の旋律美が存在するのです。
オープナー “Blood of the Levant” の重量感は、HATEBREED や BORN OF OSIRIS との仕事で名を上げた売れっ子プロデューサー ZEUSS との相乗効果でグルーヴの新風を吹き込みます。一方で、シンコペーションやハーモニーの美学はまさしく QUEENSRŸCHE の流儀で、結果として Michiel 言う所の 「バンド史上最もメタルかつプログレッシブな作品」を具現化しているようにも思えます。
あのビッグバンとも言える成功を経験した Michael と Eddie にとって、原点、QUEENSRŸCHE サウンドとは “Operation: Mindcrime” と “Empire” を指すはずです。実際、コンパクトに設計された作品には、当時の躍動感やロマンチシズムが明らかに戻って来ています。
ただ面白いことに、例えばエニグマティックな “Light-Years” を聴けば “Rage For Order” を、サイケデリックでシュールな “Inside Out” を聴けば “Promised Land” を、ボーカルエフェクトもグランジーな “Propaganda Fashion” を聴けば “Hear In the Now Frontier” を想起する “ライチアーミー” は多いはずで、つまり “The Verdict” には QUEENSRŸCHE が刻んだ長い旅路の集大成といった側面も確かに存在するのです。
アルバムは、「永遠に続くものは無い。ただ回転ドアのように入れ替わっていくんだ。」 とメンバーチェンジの悲喜交々を隠喩する “Dark Reverie” を境に Michael 語るところの “進化” の結晶を畳み掛けていきます。
それは、Todd の絶唱ハイトーンとシンセサウンドを活用したダークでドラマティックな世界。息つく暇もなく押し寄せる、劇的で静動、陰影濃くするダイナミズムの波は完璧なチームワークの賜物。名曲の目白押し。
そうして、評決の行方を見るまでもなくリスナーは、エレガントでアトモスフェリックな感情のポートレート “Portrait” に大きな喝采を送るのです。
オリジナルメンバーの一人であるドラマー Scott Rockenfield の不参加によりボーカルの Todd がドラムスも兼任していることは記して置くべきでしょう。ただし心配は無用。トレードマークのダブルチャイナ、ライドとハイハットの華麗な使い分けはまさしく Scott のそれですから。
今回弊誌では印象的なフックを刻み続ける Michael “Whip” Wilton にインタビューを行うことが出来ました。「もし今の QUEENSRŸCHE が気に入らないなら立ち去れば良いだけさ。」 どうぞ!!

QUEENSRŸCHE “THE VERDICT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + MORGAN AGREN INTERVIEW 【DEVIN TOWNSEND : EMPATH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MORGAN ÅGREN FROM DEVIN TOWNSEND !!

“It’s Funny Cause I Got An Email From Devin When He Asked Me ”Can You Play Quietly?” ”I Want Spooky Country Drums With Low Volume”

DISC REVIEW “EMPATH”

「”Empath” とはまさに Devin そのものだから、彼の心に従い、彼が本心から望むようにプレイしたんだ。彼はこのアルバムで遂に完全なる自由を手に入れたね。」
カナダのサウンドウィザード Devin Townsend が最も信頼を置くアーティストの一人、Morgan Ågren は確信を持ってそう答えました。
DEVIN TOWNSEND PROJECT の最終作となった “Transcendence” は、以前より大幅にメンバーのインプットを盛り込み、バーサタイルに探究を重ねたグループの長き旅路を集約する名品でした。
ただし、”集大成” とはすなわち “繰り返し” へと、”メンバーの固定化” とはすなわち “マンネリズム” へと繋がる危険をも孕みます。Devin Townsend の溢れる∞の創造性は、予測可能な全てを一度リセットし、演奏者も音像も自在に選択する絶対的に自由な翼を欲したのです。
「現在の Devin Townsend が持つ音楽的な興味全てが、一つの場所へ収まったとしたらどうなるだろうか?」
フォーク、シンフォニック、ポップ、プログ、ファンク、ブラックメタル、ジャズ、ニューウェーブ、アメリカーナ、ワールドミュージック、そして EDM。Devin の中に巣食うマルチディメンショナルな音楽世界を一切の制限なく投影したレコードこそ “Empath” です。そして “エンパス” “感情を読み取る者” のタイトルが意味する通り、Devin がアルバムに封じた万華鏡のエモーションを紐解くべきはリスナーでしょう。
オーディエンスがエンパスなら、もちろん、アルバムに集結したアーティストも Devin の百花繚乱な感情を読み取るエンパスです。
Mike Keneally をミュージックディレクターに、Morgan Ågren, Samus Paulicelli (DECREPIT BIRTH), Anup Sastry (ex-MONUMENTS) と三者三様の技巧派ドラマーを揃え、さらに Steve Vai, Anneke van Giersbergen (VUUR), Ché Aimee Dorval, Chad Kroeger (NICKELBACK) など錚々たる顔ぶれが翼となり、Devin が今回提唱する “ヘヴィーな音楽でも多様になり得る” の精神を実現していきます。
“Castaway” に広がる海の景色、ジャジーなギター、そして荘厳な女声コーラスは歴史的プログエピックへの完璧なエントランス。そうして幕を開ける “Genesis” はアルバムの全貌を伝える “Empath” の小宇宙でしょう。
神々しいほどにエセリアルで、毒々しいほどにアグレッシブ。シンフォニーとエレクトロ、オペラとスクリーム、ディスコビートとブラストビート、アンビエントとエクストリーム。一見相反するようにも思える何色もの絵の具は、幾重にも重なり奇跡のダイナミズムを描きながらプログメタルのキャンバスを彩り、時には逸脱していきます。その瑞々しきカオスは “創世記” の名に相応しい “Hevy Devy” 新時代の到来を確かに告げています。
レコードが進むに連れて、リスナーは「最初はどこに向かうのか、この作品が何なのかさえ分からなかった。」と語る Devin が見出した “意図” を感じるはずです。
“Spirits Will Collide” を聴けば “Z²-Sky Blue” よりもポップなアルバムを、”Sprite” を聴けば “Infinity” よりもスピリチュアルなアルバムを、”Hear Me” を聴けば SYL の “Alien” よりもヘヴィーなアルバムを、そして “Why?” を聴けば “Ghost” よりも優美なアルバムを巨匠が目指していたことを。DEVIN TOWNSEND PROJECT という枠組みから解放された鬼才は、そうして様々な領域で “限界突破” を実現して “プログレッシブ” の定義すら軽々と破壊していくのです。
「確かに Zappa コネクションがこの作品には生きているね。Keneally, Steve, Devin。ただし、Devin はそこまで Zappa の音楽に入れ込んだことはないんだけどね。」
11分の “Borderlands”、そして23分の “Singularity” で Devin は “現代の Frank Zappa” の地位を揺るぎのないものにしたのかも知れませんね。穏やかに、残酷に、しなやかに、カラフルに、哲学的に、何より冒険的に。ほとんど忘れ去られて苦境の最中にある “芸術” を救い、リスナーに “エンパシー” を喚起する Devin のやり方は、無限の想像力と比類無き多様性でした。
今回弊誌では、Frank Zappa、そして盲目の天才ピアニスト Mats Öberg とのデュオ Mats/Morgan でもお馴染み Morgan Ågren にインタビューを行うことが出来ました。「Fredrik は遂に新作へと着手しているよ。実は、僕は彼のその作品のためにすでに沢山のマテリアルをレコーディングしているんだ。」MESHUGGAH の心臓も遂に動き出したようです。どうぞ!!

DEVIN TOWNSEND “EMPATH” : ∞/10

THE STORY BEHIND “EMPATH”

ヘヴィーミュージックの世界では、アーティストが非常に狭い、限定された箱の中へと押し込められる傾向にあるね。音楽業界だって、カテゴライズや販売戦略のためにアーティストに特定のジャンルへ留まることを要求する。つまり、メタルの背景を持っているミュージシャンがジャンルの外に出て注目を集めるのは不可能に近いんだ。
じゃあ、広いパレットの中で”色”としてジャンルを使用しているアーティストはどうするの?ジャンルを遥かに超えた知識と経験を持つアーティストは?
それにメタルが恥ずべき音楽じゃなく、尊敬に値すると考えているアーティストは?
見世物ではなく、多様性によってあらゆる音楽的感情を表現したいなら、追求するべきでしょう。
“Empath” の真の意味はリスナーに様々な音楽的感情、体験を感じさせることにあるね。そうして、彼らに人生を美しく、挑戦的にする全てに恐れず参加して欲しいと伝えたいんだよ。
どのセクションもリスナーに”歓迎”されるよう心がけ、感情のジェットコースターとしてサウンドスケープをより効果的に繋げていったね。そうして、願わくば他のミュージシャンがこの方法にインスパイアされればと思うようになったんだ。
アルバムは、喜びと人々の助けになりたいという思いに根ざしている。楽曲に多様性を持たせたのは、”Empath” “共感”が弱さと捉えられてきた歴史の中で、人生を様々な観点から見る必要性を表現したかったから。僕にとっても長い間狭い場所に閉じ込められていた創造性を解き放ち、恐怖から脱却するためのやり方だったね。多様性が増す時代において、他人の気持ちになって物事を見ることは他者を理解する上で欠かせないプロセスさ。
そうして “Empath” という不可能を可能にしたんだよ。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LEE MCKINNEY (BORN OF OSIRIS) : INFINITE MIND】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LEE MCKINNEY FROM BORN OF OSIRIS !!

“I Love Metal Just Like The Rest Of Us, But It’s SUCH a Shame When I See “Metal Heads” Talk Shit On Things That Aren’t Metal Or a Band Changing Their Sound. How Sad Of a World It Must Be To Only Love ONE Style Of Music.

DISC REVIEW “INFINITE MIND”

「全てはシカゴの小さなシーンから始まったんだ。僕たちは本当に才能とインスピレーションに溢れたミュージシャン、グループに囲まれていただけなんだよ。僕は MESHUGGAH さえ聴いていなかったんだから。僕が聴いていたのは友人の VEIL OF MAYA と AFTER THE BURIAL だったんだ。」
例えば VEIL OF MAYA の “The Common Man’s Collapse” が、例えば AFTER THE BURIAL の “Rareform” が、そして例えば BORN OF OSIRIS の “The New Reign” が、後のプログレッシブデスコア/メタルコア、Djent シーンに与えた影響は計り知れないものがあります。
シカゴ周辺に兆したプログレッシブでポリリズミックなグルーヴの胎動。中でも、オリエンタルなテーマと荘厳なシンセサウンドを背景に紡がれる BORN OF OSIRIS のドラマティックな宇宙観は、新時代の神秘と野心に満ちていました。
BORN OF OSIRIS のギタリスト Lee McKinney は、一時期バンドに参加していた Jason Richardson や Tosin Abasi ほどの英名や声価を得ている訳ではないのかも知れません。しかし遂に完成を見たソロデビュー作 “Infinite Mind” で、Lee に備わった多彩なエモーショナルジャーニー、シュレッドロマンが証明されるはずです。
実際、メインストリームのロックフィールドへと接近した IN MOTIVE の結成を皮切りに、Lee はここ数年 “クリエイティブモード” の最中にあります。BORN OF OSIRIS では、初期の鼓動と傑作 “The Discovery” 以降培った多様性を周到にミックスした最新作 “The Simulation” を1月にリリースし、さらにその仮想現実へと警鐘を鳴らすビッグテーマを引継いだ作品が今年中に完成予定。そして3月にはソロレコード “Infinite Mind” が到着。
実は、Lee のその旺盛な創作意欲は以前のハードなツアー生活がもたらした “不安感” に対処するある種のセラピーで、薬物中毒から抜け出す平穏への道こそ “Infinite Mind” のテーマとなりました。
「僕はあらゆるジャンルを取り入れたいのさ。なぜかって? 僕はジャンルの意味さえ見出せないんだよ。ジャンルの役割って、リスナーが中にとどまるための箱を提供することだけだと思うからね。」
BORN OF OSIRIS で否が応にも期待されるメタルコア/デスコアサウンドは、Lee のカラフルな音の絵の具の一色にしか過ぎません。オープナー “Clock Without A Craftsmen” を聴けば、Lee のシグニチャーサウンドであるシンメトリーな旋律に悠久のサクスフォンが溶け合って、有機と無機の絶妙なバランスを描き出していることに気づくでしょう。
実際、サクスフォンが醸し出す官能の音色は、”Rising Tide” や “A Neverending Explosion” においてもアンビエントなサウンドスケープを創出し、メカニカルメタリックなパレットの中でダイナミズムのダンスを踊ります。
ジャズやアンビエントの絵の具以外にも、”The Sun and The Wind” ではトレンドでもある Fu-djent のイメージを追求し難解なリズムをキャッチーに因数分解し、”Astrolabe” ではエスニックでクラシカルな描写が情緒の陰影をより色濃く時の回廊へと刻みます。
「一つの音楽スタイルしか愛せない世界なんて間違いなく悲しいじゃないか!」
Lee の率直な叫びは平穏を実現するアルバムクローサー “Infinite Mind” “制限のない心” へと収束して行きます。カントリーをも想起させるオールドスタイルのリックを芽生えとして、近未来感溢れるシンセサイザーとギターの狂想曲へと展開する楽曲で Lee が提示したのは、ジャンルも時間も超越したまさに無限の可能性でした。
今回弊誌では、Lee Mckinney にインタビューを行うことが出来ました。「”メタルヘッズ” を自称する野郎が、これはメタルじゃないとか、メタルじゃなくなったなんてクソみたいな批判をしているのを見ると、本当に残念すぎるって感じるね。」どうぞ!!

LEE MCKINNEY “INFINITE MIND” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNARKY PUPPY : IMMIGRANCE】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MICHAEL LEAGUE OF SNARKY PUPPY !!

“Traveling So Much Really Reminds You How We Are All Immigrants In a Certain Kind Of Way, Whether It’s About Our History, Our Ancestry, Or The Customs And Cultural Elements We’ve Borrowed From Other Parts Of The World.”

DISC REVIEW “IMMIGRANCE”

「一つのジャンルに向けてのみ演奏をしたくないんだ。全てのジャンルのオーディエンスに訴求したいよ。だから本当に様々な音楽ジャンルのファンが僕たちの音楽を楽しんでくれているという事実は、進化を続け異なる方向を打ち出す僕たちを強く勇気づけてくれるんだ。」
耽溺のジャジストはもちろん、THE MAHAVISHNU ORCHESTRA, RETURN TO FOREVER を崇拝するフュージョンマニアックス、SLAYER, Biggie, さらにはフォークミュージックの粋人まで、多種多様な音の眷属が集結する SNARKY PUPPY のライブはさながら “Immigrance” のサウンドキャラバンです。
「世界中で僕たちのオーディエンスの中に多様性を見つけることは実に美しいね。こうやって僕らのように旅を重ねていると、自分たち全員がある種の “移民” であることを思い起こすんだよ。」
グラミー賞を3度獲得したグルーヴオーケストラ SNARKY PUPPY。その多様でボーダレスな “移民” の創造性は、ベーシストでマスターマインド Michael League の数奇なる旅路に起因しています。
ハイスクール時代、ギタープレイヤーとして LED ZEPPELIN, CREAM, PEARL JAM, SOUNDGARDEN のカバーに勤しみグルーヴの鼓動を刻んだ Michael は、STEELY DAN の “Alive in America” によってロックとファンク、そしてジャズの悪魔合体に開眼することとなりました。
ノーステキサス大学でベースに持ち替えジャズを学びつつ SNARKY PUPPY を結成した Michael は、Erykah Badu に見出されヒップホップ、R&B、さらにはゴスペルをも咀嚼し、遂にはその興味の矛先を世界の伝統音楽にまで向けながら、その全てを自らのグルーヴコレクティブへと注ぎ込んでいるのです。
グラミーを獲得した前作 “Culcha Vulcha” で頂点に達したポリリズムとエスニックの複雑な探求。”Immigrance” では Michael が鼓動のベースとするロックとファンクにも再び焦点を当てて、流動する “移民” の羈旅をよりエクレクティックに噛み砕いて体現することとなりました。
例えばオープナー “Chonks” ではシンプルなヘヴィーグルーヴをベースに圧倒的なアンサンブルでファンカデリックな空間を演出し、よりメカニカルな “Bad Kids to the Back” では TRIBAL TECH にも似た骨太なジャズロックのインテンスを見せつけます。
そうして、全面参加を果たした2人のギターマエストロ Bob Lanzetti, Chris McQueen が一層輝きを増しながら、ジャズ領域の外側へと大胆な移住を促進したのは David Crosby との出会いも大きく作用したはずです。事実、Michael は自身が歌ってギターも奏でるソロ作品のリリースを予定しているのですから。
「確かに “Immigrance” ではいくつかの異なる伝統音楽から影響を受けているね。そうして時を経るごとに、その影響はレコード毎に大きくなっていっているよ。」
一方で、モロッコのグナワを基盤としたエスノビートとポリリズムが鮮やかに溶け合う “Xavi’ では SNARKY PUPPY の先鋭性を遺憾無く味わうことが出来るでしょう。西アフリカのトライバルミュージックとブルースを融合させた BOKANTE の立ち上げが示すように Michael の特に中東~アフリカ地域に対する音の探究心は並々ならぬものがありますね。
3人のドラマーと3人のパーカッション奏者を抱える SNARKY PUPPY にとって根幹はやはりグルーヴです。そして、”Even Us” にも言えますが、日本人パーカッショニスト 小川慶太氏の美技を伴ったトライバルビートは、SNARKY PUPPY が有する移民の多様性と華麗に調和しながら瑞々しいジャンルのポリフォニーを実現していきます。
“Immigrance” に伴うワールドツアーはここ日本から始まります。作品の多くがライブレコーディングである SNARKY PUPPY にとって当然ライブこそが本領発揮の場です。ただし、”Immigrance” はスタジオで録音されたレコード。故に、バンド本来の躍動感に、思索や計画性が伴って実に奥深い多次元のリスニング体験をもたらすこととなりました。
今回弊誌では、Michael League に2度目のインタビューを行うことが出来ました。「歴史がどうであれ、祖先がどうであれ、習慣や文化がどうであれ、僕たちは世界のほかの場所から何かしらを “借りて” 生きているんだからね。」鍵盤奏者 Bill Laurance が奏でる虹の音色にも注目。どうぞ!!

SNARKY PUPPY “IMMIGRANCE” : 10/10

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