EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KIP WINGER OF WINGER !!
“I Do Feel Overall SEVEN Has All The Hallmarks Of Classic WINGER.”
DISC REVIEW “SEVEN”
「全体的に “SEVEN” はクラシックな WINGER の特徴を備えていると感じているんだ。それは、Paul Taylor の復帰とオリジナル・ロゴの復活でより強調されているね」
WINGER は巨大な才能を持ちながら、同時に “二刀流” というジレンマに悩まされてきたバンドです。華やかなロックやメタルには知性が強すぎ、プログレッシブの宮殿に入るには騒がしすぎる。この、実は非常にユニークな並列の魔法は、爆発的なヒットとなったデビュー2作のあと、局所的なリスペクトを得ることを生贄に、バンドの足枷として長く活躍の妨げともなってきたのです。
「僕たちは決して “解散” していないんだよ。グランジ・ミュージックに支配され、その間に “Beavis and Butthead” と METALLICA の騒動が起こって、当時僕たちは続けることが不可能になったから、長い間休んでいただけなんだ。アーティストとして、僕なら他のアーティストを公然と侮辱するようなことは絶対にしないよ。”Pull” に関しては、あのレコードは僕らのベスト盤のひとつだと今でも信じているんだ」
生贄といえば、WINGER はまさに90年代の “生贄” となったバンドなのかも知れませんね。ヘアメタルと呼ぶには、あまりに高度なオーケストレーションに演奏技術を纏いながら、売れてしまったがゆえに祭り上げられた不可解なシンボルの座。Reb Beach は最近、当時を振り返ってこう語っています。
「90年代に入って、グランジが台頭して、ギター20本と家を売った。アニメに WINGER のTシャツを着たキャラが登場してね。家に帰ると両親も WINGER、犬まで WINGER のTシャツを着てる(笑)。全員オタクなんだ。ダサくなったヘアメタルの象徴というかね。翌週からチケットが全く売れなくなったよ…」
METALLICA は “Black Album” のレコーディング・セッションで、Lars Ulrich が Kip Winger のポスターにダーツを投げつける映像を公開しました。今思えば、非常に愚かな行為ですが、当時ライブ会場で投影された時には、観客から大きな笑いが起こっていたそう。最近、James Hetfield が直接 Kip に謝罪の電話をかけたそうですが、時すでに遅し。やはり “時代” のスケープゴートとなった感は拭えません。非常にオーガニックかつ、ALICE IN CHAINS のような暗がりの知を宿した名品 “Pull” のリリースも焼け石に水。1994年にバンドは沈黙を余儀なくされたのです。(これまで、”解散” だと言われていましたが、Kip によると “活動休止” だったとのこと)
「僕は自分の人生や周りの人々の人生について、個人的な視点から歌詞を書いているんだ。だから、ある意味、世相を反映していると受け取ってもらっても構わないと思う。僕や周りの人はこの暗い状況で生きているんだから、このアルバムはよりシリアスなトーンになったんだろう」
00年代初頭の短期的な復帰を経て、2006年、WINGER は海外に駐留する米兵の現実を描いた “Ⅳ” でついに完全復活を遂げます。以前よりも社会性を全面に押し出し、よりプログレッシブに躍動するこのアルバムが、以降の WINGER の指針となりました。
バンドが経験してきた浮き沈みを “業” として書き綴った “Karma”、ポジティブなトーンでより良い世界の実現を願った “Better Days Comin” と、彼らは80年代のイメージを払拭するような等身大で現実的な高品質のアルバムを残していきます。ただ一つ、WINGER が WINGER である所以、”キャッチー” な一面をどう扱うのか…常にその命題と向き合いながら。
9年ぶりとなる最新作 “Seven” は、そんな WINGER の社会性、プログレッシブでシリアスな一面と、出自であるハードロックのロマンチシズムが完璧に噛み合ったアルバムと言えるでしょう。
“Resurrect Me” はそんな最高傑作の中でも、特に WINGER ここに極まれりという名曲。シリアスでダークなスタートから一転、コーラスではロマンチシズムが雷鳴のように響き渡り、フックの嵐の中を Kip のキャッチーな雄叫びがこだまします。Reb のギターが炎を吹き、Rod の尋常ならざるフィルインが轟けば、WINGER はその翼を大きく広げて自らの “復活” を宣言します。
QUEEN への憧憬を織り込んだ “Voodoo Fire” を経て到達する “Broken Glass” は、復活 WINGER のもう一つの翼。Paul Taylor の復帰をしみじみと実感させるエモーショナルな音絵巻。WINGER 屈指のメランコリー・オーケストラ “Rainbow in the Rose” を、Kip のソロキャリアで熟成したかのような内省的な審美感は、96年に初めての妻を突然の事故で失って以来、彼の命題となった痛みと優しさの色彩を完璧に投影しているのです。
ヘヴィで繊細。ラウドでソフト。知的で野蛮。痛みで優しさ。ダークでロマン。WINGER の二刀流はいつしか、何 “マイル” も先で多様に花開いています。今回弊誌では、Kip Winger にインタビューを行うことができました。「かつてより世界は悪くなっているよね。金持ちはより金持ちになり、貧乏人はより貧乏になったように感じる。権力闘争の政治家、過激なイデオロギーのインフルエンサー、宗教的狂信者たちは、わざわざ力を尽くして世界の人々を分断しようとしている。とても悲しいことだよね」 どうぞ!!
WINGER “SEVEN” : 10/10
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