“Balenciaga Or Moschino Are Great Examples In Fashion For Being Incredibly Technical Clothing That Doesn’t Take Itself Too Seriously. That’s Really What We Want The Most In Music, To Connect With People.”
“When We Came Up With The Band Name, We Did Have a Video Game Main Menu Screen Running In The Background. So Yeah, The Name Really Came From That Whole Idea Of Pressing a Button To Enter a Virtual World.
DISC REVIEW “FROM MIRROR TO ROAD”
「実はバンド名を考えていたとき、後ろでビデオゲームのメインメニュー画面が開いていたんだ。だから、ボタンを押せば、ワクワクするようなバーチャルな世界に入れるという発想がバンド名の由来になった。僕らの場合、その世界は音楽のサウンドスケープなんだけどね」
ビデオ・ゲームで育った世代なら、”Press Enter” の文字を見るだけで血湧き肉躍るに違いありません。カートリッジを装着して、未知なる冒険へと繰り出すその入り口こそ、”Press Enter” なのですから。ゲームの中で私たちは、いつも無敵で全能でした。
同様に、未知なるバンドの始まりのリフやメロディが天高く、もしくは地響きのようにアルバムの幕開けを告げる瞬間はいつもワクワクするものです。どんな音がするのだろう?想像を絶するスリルやサスペンス、もしくは狂気はあるのだろうか?歌われるのは希望?それとも絶望?内なる五感を熱くさせるのだろうか?…おもちゃ箱をひっくり返したようなデンマークのプログレッシブ・トリオ PRESS TO ENTER は、そのワクワク感、ロックやメタルの全能感を何よりも大事にしています。
「HAKEN の “1985” という曲と、彼らが現代のプログレッシブ・ミュージックに80年代のサウンドを使っていることにすごくインスパイアされたんだ。それに、Dua Lipa はそういったオールドスクールなサウンドをとてもうまく料理して、新しい新鮮な方法で使っている。面白いことに、僕たちは80年代に直接インスパイアされるというよりも、80年代にインスパイアされたサウンドを使う現代のアーティストに影響を受けているんだと思う」
PRESS TO ENTER の音楽には、ゴージャスで全能感が宿っていた80年代の世界から飛び出してきたような高揚感と華やかなポップネスが蔓延しています。ただし、彼らのアルバム “From Mirror to Road” はただ過去の焼き直しではなく、モダンな Djent のセオリーや洗練されたプロダクション、ネオ・ファンクやネオ・フュージョンのグルーヴ、それに21世紀の多様性を胸いっぱいに吸い込んだごった煮の調理法で、独自の個性と哲学をデビュー作から披露していきます。あの ARCH ECHO 肝入りの才能に納得。
「私は不安症と身体的苦痛障害と呼ばれるものを抱えていて、4年前に顎の手術を受けることになったの。その後、長い間落ち込んでいて、しばらく歌うこともやめていたの。Lucas と Simon が “Evolvage” のボーカルに誘ってくれたとき、私は新たな希望を得たわ。あの曲をレコーディングしたとき、私は本当に音楽とつながることができた。自分にとって自然な感じだったし、新しい方法で自分を表現する機会を与えてくれたのよ。私のボーカルは、このバンドの音楽に新しい色を加え、特別な味わいを与えていると思う」
PRESS TO ENTER がこの暗澹たる2020年代にロックの全能感と期待、そして希望を蘇らせたのは、自らも一度は傷つき不安と共にあったから。他人と自分を比べることで鬱状態に陥り、極度の不安を抱えていたボーカルの Julie は、自らの歌声がこの奇抜で好奇心に溢れたプログレッシブ・メタルに命を吹き込むことを知り、前へと進み始めました。実際、マドンナから始まり、アギレラ、ペリー、レディ・ガガの系譜につながる彼女のポップで力強い歌声は、プログの世界にはないもので、だからこそ輝きを放ちました。
「僕らの曲 “Cry Trigger” のアンビエント・セクションは、”バイオハザード・ゼロ” のテーマ ”Save Room” に非常にインスパイアされているんだ。それに僕は、日本のアニメの大ファンでもある。”ワンパンマン” や “進撃の巨人” は大好きな作品だよ。僕らの曲 “Frozen Red Light” の一部は、間違いなくアニメ音楽の影響を受けている。あと日本の音楽では、CASIOPEA と彼らの昔のベーシスト、櫻井哲夫が大好きなんだ。彼は僕のベースプレイに大きなインスピレーションを与えてくれた。それに、RADWIMPS も大好きだよ」
最後のピースとして、PRESS TO ENTER は日本の文化を隠し味に加えました。それは、日本のアニメやゲーム、音楽の中に、失われつつあるワクワク感が存分に残っているから。そうして PRESS TO ENTER の軽快で複雑でポップな世界は、視覚的にも広がりを得て3次元の立体感を得たのです。もちろんそれは、彼らが敬愛する地元の英雄 DIZZY MIZZ LIZZY と同じトリオだからこそ、得られた自由。
今回弊誌では、PRESS TO ENTER にインタビューを行うことができました。「DIZZY MIZZ LIZZY の Tim Christensen、Tosin Abasi, Plini が僕のスーパー・ヒーローだね。彼らをたくさん聴いたことで、自分のサウンドや音楽におけるクリエイティブな考え方が形成された気がする」 Tosin というより、かの Manuel Gardner Fernandes 直伝のスラッピング、それに曲中の魔法のようなテンポ変化が実にカッコいいですね。どうぞ!!
現代のインストゥルメンタル・ギター界は想像力と独創性に溢れています。Tim Henson, Tosin Abasi, Ichika, Manuel Gardner Fernandes, Jakub Zytecki, David Maxim Micic, Aaron Marshall, Yvette Young のようなミュージシャンは、アクロバティックな演奏だけではなく、技術性と音楽性が共存できることを証明しています。Plini がその一員であることを誇りに思うシーン。
「多くの進化と才能に囲まれているのは素晴らしいことだ。ANIMALS AS LEADERS にしても、UNPROCESSED の曲にしても、テクニカルでありながら、シンプルなメロディのようにエモーショナルでキャッチーなんだ」
このシーンは、DIYが主流であり、ビジネスやレーベルを重視していないことも Plini は気に入っています。
「ビジネスにかんして、僕はできるだけ人を避けるようにしているんだ。僕にはレコード会社もマネージャーもいない。そうすることで、僕と同じ目標を持っていないような人たちと話す時間を無駄にしなくてすむからね。ツアーに出るときも、一緒にいるのはみんな友達だから、何か問題があってもすぐに話せる。一緒に仕事をする人たちはみんな、自分の仕事を愛し、本当にいい仕事をしたいという同じ姿勢を持っている。
僕は幸運なことに、典型的な音楽業界のしきたりやならわしの多くを避けてきた。でも、特にこのシーンやジャンルでは、観客がそれでもアーティストのハードワークを評価してくれるから良いよね。生半可なプログ・バンドが有名になっても、ギター・オタクの人たちはみんなわかっていて、”そんなに良くないよ。聴く気にならない” ってなるからね。だから、このシーンで活動するのはとても正直なことなんだ」
PERIPHERY は、2010年にデビュー・アルバムをリリースした Sumerian から、Misha によれと “攻撃的な” レコード契約を結んでもらったおかげで、DIY と寝室を離れることになりました。しかし、皮肉なことに、”Djent Is Not a Genre” は依然として、完全無欠に “Djenty” なアルバムです。オープニングの “Wildfire” は、ドラムロールを合図に、ダウンチューンのチャグにハーモニクスの嘶きが不規則に割り込む、決して穏やかではない、Djent な幕開け。”Atropos”, “Dying Star”, “Zagreus”, Everything Is Fine” も同様に、指板の最も窮屈な場所に夢中になっているようにも思えます。
しかし、PERIPHERY が常に目指している、真のプログレッシブ・ミュージックを示すタッチもここには豊富に存在しています。フロントマンの Spencer Sotelo は、咆哮と歌唱の切り替えで対比の美学を生み出し、両手を広げて “ファック・イット!” と宣言して、シンセウェーブと脈打つ EDM ビートを取り入れます。そうして、”Djent Is Not a Genre” の最後を飾る “Dracul Gras” と “Thanks Nobuo” のデュオロジーでは、プログ、Djent、ポップ、ポストロックのカラフルな饗宴が24分にわたって繰り広げられるのです。
同時に PERIPHERY は自らの栄光の軌跡をもここに織り交ぜています。例えば “Wildfire” は、以前 “The Event” で採用されたメロディを再現したもので、2部構成のロック・オペラ、2015年の “Juggernaut” のインストゥルメンタル・セグエの再来です。
「もともと “Periphery V” は “Juggernaut” の後継作品にしたかったんだけど、それはすぐに廃案になったんだ」 と Mark は明かします。「その後、”関連する部分のいくつかを残すか” という話し合いが行われたんだ”。俺が尊敬するバンド、例えば Devin Townsend のようなミュージシャンは、何の根拠もなく突然18年前に発表した曲に関連させたりする。それって結局、彼の膨大なバック・カタログから感じられる自由さだよね。ミュージシャンとしていつかたどり着きたい、実現不可能な場所のように思えたんだ」
なぜ、”Juggernaut Part 2″ のアイデアは破棄されたのでしょう?
「コンセプト・レコードを作るのは難しいから。レコードの中で有機的に流れるように曲を書くだけでなく、それらを物語に適合させなければならないんだよ。歌詞がすべて一致し、ストーリーを語り、その下に音楽が存在し、そこでも同じようなことをしなければならない。それは長く、拷問のようなプロセスだ」
このコンセプトアルバムを巡る混乱は、”Djent Is Not a Genre” のライティング・プロセスにおける、創造的に息苦しい状況を象徴していたようです。バンド自身によれば、それが彼らをほとんど “壊しかけた” とまで言います。パンデミックが起きたとき、メンバーはリモートで作曲をしようとしましたが、その場でのフィードバックがなく、何も進展しませんでした。Misha が説明します。
「多くのアイデアはあったのだけど、Spencer がそれを気に入ったかどうか、実際に曲としてアレンジできるかどうかを確認する必要があったんだ。それ自体には何の意味もない、曲のセクションばかりがたくさんあったんだよ。パンデミックが核心的な問題であったことは間違いないだろうな。で、結局、重要なのは、批評家やファンの承認ではなく、自分たちの気持ちだとわかった。”Hail Stan” はとても簡単にできたし、あのレコードは俺が本当に誇りに思うものだった。だから、ファンや批評家が “彼らはタッチを失った” と言っても、俺は気にしなかった。自分が誇りに思っていれば無敵になれるんだよ。もし君が何かを信じているなら、もし君が自分の生み出したものを信じているなら、それはきっと君を無敵にしてくれる」
Zoom によるコラボレーションもうまくいかず、その結果、PERIPHERY は孤立した状態で、個々に自分のアルバムを作曲するようになりました。Jake は “The Daily Sun” でエレクトロニカに手を出し、Mark はエクストリーム・メタル・バンド HAUNTED SHORES を復活させ、Misha は伝説的なソロ・プロジェクト Bulb を復活させ、Spencer とドラマーの Matt Halpern はエモプログのチームアップ KING MOTHERSHIP を立ち上げました。しかし、こうした動きも彼らにとっては不利に働きました。曲作りのために、2020年10月にバンドが直接再集結するまでに、PERIPHERY はすでに “燃え尽き症候群” に陥っていたのです。その結果、”Djent Is Not a Genre” は制作に3年近くを要することになります。
Mark は “諸刃の剣だった” と当時を振り返ります。
「このアルバムに長い時間をかけていることは分かっていたし、ファンも不安に思っていた。でも、レコードを作り始めた時を考えると、これが唯一の方法だったと思うんだ。もし、何かの期限に間に合わせるために、急いでレコードを出さなければならなかったら、それは不可能だっただろうね」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AMIN YAHYAZADEH OF OUT OF NOWHERE !!
“Iran Is Very Suppressive And Many Things That Are Normal Anywhere Else In The World Is Forbidden Here. This Includes Most Of Music Genres And The “Most Illegal” Of Them All Is Metal.”
DISC REVIEW “DEJA VU”
「残念ながらイランの政府は非常に抑圧的で、他の国では普通のことでも、ここでは禁じられていることがたくさんあるんだ。音楽もほとんどそうで、その中でも “最も違法” なのがメタルなんだ。刑務所に入れられた友人もいたし、その他にもいろいろなことがあってね…。音楽は僕たちを生かしてくれた唯一のもので、決してやめられない。だから、国を出たんだ」
イランからトルコへ。OUT OF NOWHERE という名前を体現する根無草のメタル集団は、母国の厳しい道徳的ルールと対峙しながら10年以上かけて自分たちのサウンドを磨き上げ、常に脅かされながら演奏し、危険と隣り合わせの夢を追い求めてきました。2021年、バンドは自分たちの創造的な可能性をさらに追求し、音楽を作ることで逮捕される心配のない活動をするためにトルコに移住します。そこで起こったあの大地震。彼らの情熱は今、革命の始まりのように純粋なイランの人々、そして大災害にも負けないトルコの人と共にあります。メタルの回復力、反発力と共に…
「僕たちはこのビデオをイランの女性たちに捧げた。基本的な自由のために戦い、政府によって殺されようとしている人たちに。彼女たちは僕たちの姉妹だから。イランの若い世代は、僕たちに大きく勇敢である方法を教えてくれた。彼らは、自分たちの若さと未来が台無しになることを望んでいない。僕たちイラン人は暴力的な人間ではないよ。どこの国の人でも自由を持つ権利があるけど、僕たちは基本的な自由さえ持っていなかった。言論の自由もない。政権の弾圧のために、僕たちの夢のほとんどは6フィートの深さに埋もれてしまった。でも、イランで兄弟姉妹が毎日殺されているのに、黙っているわけにはいかないじゃないか」
“Wrong Generation” は、抗議活動を悩ませた当局の暴力や、イラン人女性から基本的な自由を奪い続ける抑圧的な支配を非難するプロテスト・ソングで、協調のアンセム。彼らの情熱的な抗議の形であり、もううんざりだと判断した女性や若者の怒りを代弁しています。
昨年、22歳のイラン系クルド人ジナ・マフサ・アミニは、イランのガイダンス・パトロール(この地域の迫害警察をより洗練した言葉で表現したもの)に拘束されました。彼女の罪は、政府の基準に従って伝統的なヒジャブを着用していなかったことです。アミニは逮捕後まもなく、テヘランの病院で不審な死を遂げます。この事件をきっかけに、テヘランの女性や若者たちは伝統的な圧制に終止符を打つために街頭に繰り出しました。
デモに参加したことで約18,055人が拘束され、その結果、437人が死亡したと伝えられています。イランのサッカー代表チームも自国の女性たちとの連帯を示し、ワールドカップ初戦のイングランド戦に向けて、世界中の観客が見守る中で自国の国歌を歌うことを拒否しました。そうして、自由への連帯は “最も違法“ で悪魔の音楽とみなされていたヘヴィ・メタルにも広がっていきました。OUT OF NOWHERE はそうして、自由への障害となる壁を、地理的にも、社会的にも、音楽的にも壊していくことを望んでいるのです。
「サントゥールはイランでとても人気のある楽器で、さまざまなジャンルで広く使われているんだけど、エレキギターやメタル・ミュージックのサウンドと組み合わせることは、これまでになかったこと。僕たちは、それを最高の形で実現し、イランの伝統的な楽器のひとつを世界に紹介することに挑戦したんだ」
抑圧的な社会や法律から逃れるためにイランからトルコに移住した OUT OF NOWHERE は、国を超えた境界線だけでなく、音楽における固定観念も打ち破りました。”Deja Vu” の最初の1分間で、彼らの創造的な遺伝子に ARCHITECTS のダイナミズムと POLYPHIA の野心が眠ることをリスナーはすぐに察知するでしょう。同時に彼らは、飽和し、変身の時を迎えたモダン・メタルコアというサブジャンルに対して、その解決策の一つを提示して見せました。自らのアイデンティティであるサントゥールの使用です。あまりにもドラマティックで劇的なルーツの提示は、自分たちが何者で、どこから来たのか、どこへ進むべきなのかを瞬時に知らしめる音の魔法。そうして彼らは、音楽においても、社会においても、適切な変化と自由の重要性を世界へと訴えかけます。
今回弊誌では、フロントマン Amin Yahyazadeh にインタビューを行うことができました。「これまで僕たちは、常に逆風の中生きて来た。でもね、すべてが自分にとって不利でどうしようもないときでも、僕たちはヘッドホンをつければ別世界に行くことができたから。悲しいときやストレスがあるときだけでなく、楽しいときでも、音楽はいつも君のそばにいて、元気にしてくれる。だからこそ、僕たちは音楽を作ることができることに本当に感謝しているんだよ」どうぞ!!