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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MATTIAS “IA” EKLUNDH : RESIST THE EROSION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTIAS “IA” EKLUNDH !!

“I’ve never had world domination or fame as a goal ― just to write and perform my music, something I’ve lived off solely since I was nineteen, and something I’m incredibly grateful for. The least you can do is hug someone who supports your experimenting and songwriting.”

DISC REVIEW “RESIST THE EROSION”

「リスナーや観客がいなければ、私は一体何者なんだい?誰も聴いてくれなければ、私の音楽は空っぽのままなんだから。世界的に有名になることや名声を目標にしたことはなく、ただ自分の音楽を作り、演奏することだけが私の生きがいなんだ。私は19歳のときからこの仕事だけで生きてくることができた。そして、そのことに心から感謝しているんだよ。せめてできることは、自分の実験や作曲を応援してくれる人を抱きしめることだからね」
FREAK KITCHEN の、本当に久々となった来日公演に足を運んだ方はきっと、その会場の “温かさ” に驚かされたはずです。これほど、演者と観客の “壁” が、もっといえば観客と観客の間の “壁“ もないライブは少なくとも私は初めてでした。謎のスウェーデン語を練習させられたり、変拍子をカウントしたり、Mattias の漫談に笑い転げたり。曲の良さ、楽器の妙技はもちろん、それ以上に、人と人とが直接つながることの楽しさを心の底から実感できたライブでした。
それは、Mattias “IA” Eklundh という異能のギタリストが、誰よりもつながりを大切にしているからこそ生まれた空間でした。ライブが始まる前に観客席に姿を現し一人一人と握手をしたり、シグネイチャー・ギターの購入者を招待して一緒に写真を撮ったり。ライブ中には漫談やスウェーデン語講座で会場を盛り上げ、一体化してくれました。
顔の見えないSNSでの交流、もっと言えば引用での一方通行な “交流” がメインとなった現代世界において、Mattias は顔と顔を付き合わせたつながりを誰よりも大切にしています。それは、彼の型破りな実験に付き合い、楽しみ、応援してくれるファンがいなければ、音楽ではなくただ “音” であることを知っているから。
「”Resist The Erosion” は、プロジェクトではなくバンド形態。私の素晴らしい友人である B.C. Manjunath, Yogev Gabay, Lior Ozeri と一緒に作った作品だよ。彼らは私の音楽を驚くほど高めてくれるんだ。彼らが私と一緒に仕事をしたいと思ってくれて、素晴らしい作品を作るために本当に努力してくれたことを、とても誇りに思い、感謝しているんだよ。このアルバムは、私のアーティスト人生において常に大きなハイライトとなるだろうね」
そう、Mattias “IA” Eklundh の実験 “Freak Audio Lab” は、いつも楽しく、そして感謝に満ち溢れています。そんなラボラトリーの中でも、”Resist the Erosion” が群を抜いて印象的な、Mattias の金字塔となることは間違いないでしょう。
この Mattias のプロジェクトは、インド音楽、特にコナッコルとして知られる南インドのカルナータカ音楽への憧憬から始まりました。コナッコルは、複雑な数式に基づいた非常に入り組んだリズムと拍子で、打楽器の音節をボーカルで演奏する芸術。B.C.Manjunath は、この伝統的なインド音楽の哲学をジャズやワールドミュージックの世界に取り入れることで、その重要な担い手となっています。だからこそカルナータカ音楽に心酔する Mattias は、Manjunath から現代メタルと古代南インドの音楽スタイルを融合させたコラボレーションについて連絡を受けた際、大きな衝撃を受けたのです。
ベーシストの Lior Ozeri とドラマー/パーカッショニストの Yogev Gabay を起用し、ベテラン音楽家4人組となった Mattias のラボラトリーは、さながら John McLaughlin が全く新しいSHAKTI を結成したかのような、驚異的な10曲を生み出しました。フィボナッチの難解さで迫るコナッコルとムリダンガムの複雑怪奇が、Mattias の Djenty な8弦モダン・メタルの宇宙と出会う時、メタルとギター音楽は別の次元へと旅立ちます。きっと真のイノベーションとは、こうした純粋な情熱と好奇心から起こるのでしょう。115/16、34/4。想像を絶する複雑な拍子と、楽器同士の対位法に彩られながらも、ここには目を見張るような感情の渦と濃密なメロディが広がっています。だからこそ、”Resist the Erosion” は未曾有の景色となり、Mattias “IA” Eklundh は生涯を通したギターの科学者であるのです。
今回弊誌では、Mattias “IA” Eklundh にインタビューを行うことができました。「何よりも、停滞しないこと、新しい境地を開拓することについてだね。もちろん、私たちは奇妙な時代に生きている。特に、日々の情報攻勢に晒され、自分が今どこにいるのかさえ分からなくなってしまうような状況だ。私にとって一番良いのは、それらを無視して、自分の人生を思い通りに形作ること。家族、音楽、自然、そして何の制約もない自由な創造など、自分にとって良いものを大切にしながらね」 4度目の登場。どうぞ!!

Anyone who attended FREAK KITCHEN’s first concert in Japan in a long time was surely surprised by the warmth of the venue. At least for me, it was the first time I’d ever experienced a live performance where there was such a clear barrier between the performers and the audience, and even between the audience members themselves. We were made to practice some mysterious Swedish, counted out odd time signatures, and laughed our heads off at Mattias’s comedy routines. The quality of the songs and the virtuosity of the instruments were undeniable, but more than that, it was a concert where I truly felt the joy of direct human connection.
It was an atmosphere born out of the extraordinary guitarist Mattias “IA” Eklundh, who values ​​connections more than anyone else. He appeared in the audience before the show to shake hands with each person, and invited those who purchased his signature guitar to take photos with him. During the show, he livened up the venue with comedy routines and Swedish language lessons, bringing the audience together. In today’s world, where faceless social media interactions and, even more so, one-way “interactions” based on quotes are the norm, Mattias values ​​face-to-face connections more than anyone else. He knows that without fans who engage with, enjoy, and support his unconventional experiments, it’s just “sound,” not music.
Mattias “IA” Eklundh’s “Freak Audio Lab” experiments are always joyful and filled with gratitude. Even within this lab, “Resist the Erosion” stands out as a monumental achievement.
Mattias’s project was born out of his admiration for Indian music, particularly the South Indian Carnatic music known as Konakkol. Konakkol is an art of vocally playing percussion syllables with highly intricate rhythms and signatures based on complex mathematical formulas. B.C. Manjunath has become a key advocate for this traditional Indian musical philosophy, incorporating it into the worlds of jazz and world music. That’s why Mattias, a lover of Carnatic music, was so thrilled when Manjunath contacted him about a collaboration that would fuse modern metal with ancient South Indian musical styles. Mattias’s laboratory, now a quartet of veteran musicians with bassist Lior Ozeri and drummer/percussionist Yogev Gabay, has produced 10 astounding tracks that sound like John McLaughlin had formed a whole new SHAKTI. When the Fibonacci-esque intricacies of the konakkol and mridangam meet Mattias’s djenty, eight-string modern metal universe, metal and guitar music are transported to another dimension. True innovation truly comes from pure passion and curiosity. 115/16, 34/4. Though colored by incredibly complex time signatures and instrumental counterpoint, there’s a swirl of stunning emotion and dense melody unfolding here. That’s what makes “Resist the Erosion” such an unprecedented landscape, and why Mattias “IA” Eklundh is a lifelong guitar scientist.
This time, we had the pleasure of interviewing Mattias “IA” Eklundh. This is his fourth appearance. Enjoy!!

FREAK AUDIO LAB “RESIST THE EROSION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ROYAL SORROW : INNERDEEPS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARKUS HENTUNEN OF ROYAL SORROW !!

“The non-conformity of prog metal is an important part to us, who have always found inspiration in many different places and satisfaction in combining those elements.”

DISC REVIEW “INNERDEEPS”

「20代に近づくにつれ、メタルとは大きく異なるタイプの音楽を聴くことを “自分に許可する” という感覚に目覚め、自分のパレットが大きく広がっていくのを感じた。特にK-POPやJ-POPなど、ハーモニーが面白いポップ・ミュージックが大好きになったのはその頃だ。メタルへの興味がなくなったことはないけれど、今ではこんなに幅広いジャンルの素晴らしい音楽を楽しめるようになって幸せだよ」
誰にとっても、10代で夢中になり、体内へと吸収した音楽は特別です。なぜなら、そうした音楽、もしくはアートは “自分のもの” となって、どんな気分や体調の時でも違和感なく楽しむことができるから。だからこそ、その “コンフォート・ゾーン” から抜け出すことは決して容易ではありません。しかし、モダン・プログ・メタルの急先鋒にして期待の星、フィンランドの ROYAL SORROW は、自らが愛するメタル以外の音楽を聴くことを “自分に許可する” ことで音の色彩、音の世界が広がったと語ってくれました。
そこには驚くことに、J-POP の瑞々しいハーモニーまでもが含まれます。つまり、ROYAL SORROW には日本の音楽から得た圧倒的なコーラスとメロディが備わっています。そう、メタルやプログはその包容力で多様な音楽を吸収するミャクミャク様的怪物なのです。
「音楽的には、当時、プログには何の境界線もないことを突然知った感覚は、本当に目を見張るものだった。 素晴らしいリスニング体験ができただけでなく、幼い頃に初めて曲を書き始めたときに、探求し続ける道を示してくれた。プログ・メタルのルールに “従わない” ところは、常に様々な場所にインスピレーションを見いだし、それらの要素を組み合わせることに満足感を得てきた僕たちにとって重要な部分なんだよ」
“ルールに従わない” ことこそが、プログやメタルの強み。そして、リード・シングルとなった “Metrograve” はまさに、ROYAL SORROW が従来のルールに従わないという意思を表明したミッション・ステイトメント。メタルの世界にラップのビートを持ち込み、それを駆使してひとつの曲を作り上げる。そんな斬新なアイデアから生まれた楽曲は、プログレッシブという使い古された言葉を再構築するほどに新鮮で、Devin Townsend の神性を借りながらリスナーのとめどない没入を誘います。
「プログレッシブな音楽で、想像力を膨らませておく必要があるからだよ。僕はポップ・ミュージックをそれなりに楽しんでいるけど、そうした音楽はエンターテインメントを “あらかじめ咀嚼” しているような感覚がますます強まっている。 どんな形であれ、それが良いとは思わないよ。 時には我を忘れて、より複雑な芸術的世界に集中することは貴重なことだ。スマホのスクロール代わりに映画を見続けることが重要なのと同じように。 また、音楽が現実から逃避するための、逃避場所を与えてくれるように、時には心の風景を変えることも必要なんだと思う」
“Metrograve” のテーマは、エンパワーメント。自分に意味を与えてくれるもののために闘うこと、そして他者が押し付けるルールを無視すること。そうして、ROYAL SORROW はまだまだアンダーグラウンドな “プログ” という世界自体もエンパワーメントしていきます。SNS が支配する世界は、どんどんインスタントで軽薄なものとなっていきます。
しかし、そんな世界だからこそ、じっくりと腰を据えて鑑賞するプログレッシブ・ミュージックのようなアートが必要だと彼らは主張します。スマホの画面をスクロールするだけでは決して没入できない、別世界、そして逃避場所。アンダーグラウンドだからこそ見せられる真逆のカタルシス。心の平穏を得るには時に、心の風景を変えなければならないのかもしれませんね。
今回弊誌では、フロントマン Markus Hentunen にインタビューを行うことができました。「フロム・ソフトウェアはバンドにとって特別な存在で、クリアするまでエルデンリングの話をしない日はなかったね。全体的に、日本とフィンランドには文化的な共通点がある。 一般的に、僕たちはかなり内向的で、社会的な境界線を尊重するからね。でも僕たちを知れば、クレイジーな一面もあるよ。 特にカラオケボックスで狂っているときはね」 EDGE OF HAZE という名前で活動していたことをご存知の方も多いでしょう。大手 Inside Out と契約して再デビュー。どうぞ!!

ROYAL SORROW “INNERDEEPS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KORYPHEUS : GILGAMESH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY GUSHIN OF KORYPHEUS !!

“Since August I am serving in the army. So we stopped writing new music. However, before that we managed to record 2 new songs and were about to record the third one in September but…”

DISC REVIEW “GILGAMESH”

「僕たちはロシアの SLAUGHTER TO PREVAIL とのツアー、その経験から距離を置こうとしているんだ。ああした協力は、今では不可能だよ。8月から僕は兵役に就いているんだ。だから、僕らは新曲を作ることをやめざるを得なかった。なんとか、その前に2曲の新曲をレコーディングすることができて、9月には3曲目をレコーディングしようとしていたんだけどね…」
戦争に巻き込まれること…それは私たちが享受し、人生の糧としている “文化” の破壊にもつながります。ウクライナの素晴らしきプログレッシブ・メタルコア KORYPHEUS は、ロシアの侵略によって多くを失いました。SLAUGHTER TO PREVAIL は決して侵略を肯定しているバンドではありませんが (というより、Alex Terrible は当局による逮捕の可能性もあって、アメリカに居を移している)、それでも彼らはロシアのバンドと協力することは今や不可能だといいます。メタルの寛容さや壁を壊す力も、非道の戦争には抗えません。
そして何より、ボーカリスト Andy Gushin が祖国を守るため兵役についたことで、バンドの未来さえ暗礁に乗り上げようとしているのです。それでも、KORYPHEUS はドローンとミサイルが飛び交うキーウの防空壕から見事なアルバムを届けてみせました。それはきっと、音楽家としての誇りと使命がもたらしたもの。
「子供の頃から神話が好きだった。 ギルガメシュは最古の叙事詩だ。 後の多くの登場人物、神話、英雄のルーツはメソポタミアにある。でも、このアルバムは古代の神話をテーマにしているわけではないんだ。 実際、僕たちの脳の奥深くに根付いていて、自分たちの行動や潜在意識に影響を与えている原型というものがある。それは過去と現在が出会う場所だ。僕たちはアマテラスのことも知っているよ。とても興味深いよね」
そんな KORYPHEUS が自らの “叫び” を音に乗せるため、選んだテーマは様々な神話をベースにしていました。”Gilgamesh”, “Odysseus” そして “Icarus”。神話上の人物を想起させるタイトルの数々は、古代の英雄譚に巣食う人の傲慢さ、そして悲劇へとつながり、そのアルバムを通じた人間の業はそのまま彼らが今直面している現代の悪夢へと通じているのです。
「メソポタミアは文明発祥の地。 古代のルーツを知ることは重要だ。僕たちは今でも、メソポタミアの文化と音楽は広い意味で自分たちのものだと感じているんだ。Yossi のことは、ORPHANED LAND とツアーをする予定だったから知っているんだよ。 戦争のせいで実現しなかったんだ」
JINJER, IGNEA など活気あふれるウクライナのプログ/メタルコア世界においても、KORYPHEUS が放つ異世界感は明らかに際立っています。それは、彼らがメソポタミアという人類の素晴らしさ、そして愚かさすべての始まりの地を大きな柱としているから。もちろん、彼らの音楽は PERIPHERY や GOJIRA のように実に新鮮でモダンで知的で重くダイナミックですが、同時にそこにはメソポタミアが育んだ太古の響きとドラマが潜んでいます。そうして彼らは、遥か昔の神話を現代に重ねるように、その音楽でも過去と現在を見事に出会わせていくのです。愚かな歴史は繰り返すのかもしれませんが、歴史から学べるのもまた、人間の良さなのですから。
今回弊誌では、Andy Gushin にインタビューを行うことができました。「キーウの状況はあまりよくないよ。 毎日、この都市はドローンやミサイルで攻撃されているんだ。だから、多くの人が安全を求めて防空壕に逃げ込んでいる。一方で、このような事態に嫌気がさし、危険を無視して家に留まり閉じこもっている人もいるんだ」ヘヴィ・メタルの轟音でも戦争の足音はかき消せないかもしれませんが、それでも私たちはこの優しい音楽と共に “浅はか” な思考回路を捨て去り、様々な世界に共感して文化を、そして平和を守っていくべきでしょう…どうぞ!!

KORYPHEUS “GILGAMESH” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JOVIAC : AUTOFICTION PT.1-SHARDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VILJAMI JUPITER WENTTOLA OF JOVIAC !!

“One Thing That Always Attracted Me To Toto Was That They’re Amazing Musicians, But They Don’t Need To Show Off All The Time. They Just Want To Make Good Tunes.”

DISC REVIEW “AUTOFICTION PT.1 – SHARDS”

「僕はメロディを愛し、80年代のポップ音楽の大ファンなんだ。プログレッシブとポップは必ずしも異なるものではないと思う。プログの世界には素晴らしいポップなフックの例が数多く存在し、ポップに傾倒したり、完全にポップに転向したバンドもいるよね。例えば GENESIS だよね。僕は記憶に残るコーラスが大好きで、プログレッシブ・メタルの分野では、CIRCUS MAXIMUS のようなバンドは別格だよね」
GHOST や SLEEP TOKEN の大成功を見れば、メタルの振り子が “歌” に戻ってきたことがわかります。実際、”歌”、つまり耳を惹く歌心やポップ・センス、そしてフックの山脈は、今を生きるアーティストにとって強力な武器になります。時はSNS戦国時代。コスパやタイパを何よりも重視する若い世代は、アーティストに5分はおろか30秒、もっといえば5秒の短い時間しか与えてはくれません。そんなリスナーのスクロールする指を止めるために、メロディのグラデーションは重要なキー・アイテムとなっているのです。
そして今、フィンランドから大きな注目を集める、”メロい” メタル・バンドが登場しました。JOVIAC。タンペレ出身の彼らは、プログレッシブなメタルを奏でていますが、変拍子や高度なテクニック、作曲の複雑性…そうした驚きや好奇心の探求のコーティングに輝くような砂糖菓子の旋律を使って、プログとAORのミルフィーユを作り上げました。
GENESIS や YES、それから DREAM THEATER はもちろん、PERIPHERY や PROTEST THE HERO といった例を挙げるまでもなく、プログとポップは綿密に結びついてきましたが、JOVIAC は MOON SAFARI や A.C.T. 並のポップさでモダンなエッジをも際立たせているのです。
「TOTO に惹かれた理由の一つは、素晴らしいミュージシャンであるにもかかわらず、常に自慢する必要がない、テクニックを見せつけないこと。彼らはただ良い曲を作りたいだけなんだよ。TOTO のメンバーは、数十年にわたりハリウッドをはじめ世界中で最も評価され、起用されるセッションミュージシャンだった。彼らの技術と音楽界への貢献を本当に尊敬しているよ」
ボーカルとギターを担当する JOVIAC の心臓 Viljami Jupiter Wenttola にとって、そのメロディとコンポジションの源泉は TOTO にありました。Viljami は TOTO を愛しすぎて、”あの” 紋章を自らの腕にまで刻んでいます。そう、JOVIAC も TOTO 同様、並外れたミュージシャンの集まりでありながら、決してそのテクニックを誇示するような音楽の作り方はしていません。アクセシビリティに重点を置きながらも、聴くたびに新たな発見がある、音楽的な好奇心や冒険心を満たしてくれる様々な仕掛けやフックを縦横無尽に張り巡らせているのです。”Shine” 冒頭の “時間” の使い方ね。天才的!
そして、聡明な読者の皆様ならば、”Kingdom of Desire” からの TOTO がとりわけメタルやプログに接近していたこともご存知でしょう。インタビュー中で Viljami も指摘していますが、”Falling in Between” のプログ・メタル的素晴らしさね。
「DREAM THEATER は道を切り拓き、このジャンルの先駆者の一人となった。彼らの努力がようやくメジャーの認知を得たことは、きっと素晴らしいことだと思うんだ。ただし、僕の最も好きな DREAM THEATER のアルバムは初期の時代のもので、特に Kevin Moore 時代は常に僕の心に深く刻まれているよ」
フィンランドはメタルの故郷、そのひとつとして知られていますが、これまで世界に進出する画期的なプログレッシブ・メタルを輩出したとはいえません。JOVIAC は2017年から、その状況を改变するために休むことなく活動してきました。プログレッシブ音楽の自由、人間の感情、中毒性のあるフック、巧妙なアレンジを組み合わせるという独自のビジョンに基づいた、キャッチーなリフとメロディと、概念的で思慮深い要素を融合させる多様で深い音楽。それはきっと Kevin Moore 時代の DREAM THEATER にも通じる音。そうやって彼らは偉大な先人と同様に、北欧の新たな道を切り開いていくのです。
今回弊誌では、Viljami Jupiter Wenttola にインタビューを行うことができました。「最も転機となったのは中学校の頃、初めて CHILDREN OF BODOM を聴いた時だったね。当時ドラマーだった僕は、CoB のアルバム “Hatebreeder” の素晴らしいメロディに魅了され、エレキギターを弾くことを決意したんだ。そしてその時に、音楽に人生を捧げることも決心したんだ。Alexi、安らかに」 あの DISPERSE にも通じるものがありますよね。どうぞ!!

JOVIAC “AUTOFICTION PT.1 -SHARDS : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SPIRITBOX : TSUNAMI SEA】


COVER STORY : SPIRITBOX “TSUNAMI SEA”

“I Think Anything That Women Like Is Always Mocked, But I Think Teenage Girls Are The Purveyors Of Culture.”

TSUNAMI SEA

津波が本当の姿を現すのは、その波が水辺に到達してからだと言います。最初はほとんど見えない深海を脈打ちますが、最終的にはこの壊滅的な自然災害は無慈悲な水の壁を築き上げ、その進路にあるすべてのものを押しつぶすのです。
「津波が陸に到達した後、それが私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか飲み込めていないうちに、その災害は無慈悲に通過していく」
SPIRITBOX の生活は既に計り知れないほど変化しました。2015年にカルト的なマスコア・クルー iwrestledabearonce の灰から生まれ変わった Courtney LaPlante と Mike Stringer は、以前よりも暗く洗練された音楽を作ることを目指していきました。そうして、デビュー作 “Eternal Blue” からの “Holy Roller” や “Blessed Be” といった曲は、新たな表現を求めていたファンたちの心に響き、彼らをメタルの頂点へと押し上げたのです。以来、彼らは勢いを増し続け、2022年のDownloadフェスティバルでのテントを揺るがすデビューから、Reading & Leedsのメインステージ、Megan Thee Stallionとのレコーディング、先月のAlly Pallyでのソールドアウト公演まで、着実に歩みを進めてきました。その勢いは、メタルコア世界の狭い枠組みを飛び出した津波ともいえました。
しかし、SPIRITBOX はタイトルの “津波” そのものではありません。むしろ、縦波、横波、波浪、風浪、うねり、磯波…数多くの波が積み重なって壮大なコンセプトを形作る広大な海。メンタルヘルスにおける比喩的な津波…うつ病や暗い思考が心を押し流す状態。そして、Courtney と Mike の故郷バンクーバー島での生活経験…船以外では離れることができない孤独な環境。そうした痛みや恐怖、孤独の影響は、2022年の “Rotoscope EP” と2023年の “The Fear Of Fear” の即効的なスリル追求と比べ、より威圧的で包み込むような “Tsunami Sea” への到達に現れています。

大きな成功が Courtney の率直な歌詞の核心にある危機感を侵食するのではなく、”Tsunami Sea” はそれがさらに激化と同化したようにも思えます。”Eternal Blue” のタイトル・トラックで彼女は “苦痛が離岸流のように引きずり始める” と歌いました。4年後、ボーカリストの感情は今や海洋規模となり、”私のすべての涙を津波の海に変える” と表現されています。それでも、Courtney と SPIRITBOX はただ痛みの海に押し流されることはありませんでした。つまり、この音楽は、メンバー個人の内面的葛藤はもちろん、元メンバーの死去やベース奏者がロサンゼルスの山火事で自宅を失うなど、逆境を乗り越えてきたバンドにふさわしいものとなっているのです。
「Bill Crook の死は恐ろしいことだった。突然のことで、私たちはツアー中だったのよ。彼の母親が、彼の友人全員が追悼式に出席できるようにしてくれたことに、私たちは本当に感謝しているの。彼女は追悼式を延期してくれたのよ。
このアルバムは本当に彼のためのもの。なぜなら、彼は私たちと同じ場所で育ち、同じ経験をしてきたから。アルバムで話していることの多く – 私が精神的に向き合い、克服しようとしていること – 彼と私はその点で非常に似ていたんだよ。アルバムを彼に見せられたらよかったと思う。毎日彼をとても恋しく思っているわ。この数ヶ月は皆にとって大変だったけど、私たちは大丈夫。今年は本当に良い年になると思うよ」

“Soft Spine” という力強いリードシングルから、変幻自在なメロディが光る “Perfect Soul”、そしてインダストリアルな要素を交えた176秒の “No Loss, No Love” まで、リスナーはすでにこの11曲が SPIRITBOX の最高峰であることを直感しているでしょう。大きなステージで演奏する機会を得たことで、彼らは “A Haven With Two Faces” のような壮大な瞬間を捉える直感を磨いてきました。一方で、彼らは “Crystal Roses” のような予測不能なサウンド、例えば変幻自在なドラムンベースに挑戦する勇気をも得たのです。
「音楽を書く時はそれを意識しないが、後に1万人や2万人の観客の前で自分の好きな曲を演奏すると観客はただスマホをいじっているだけだ。一方、特に気にかけていない曲では、みんな跳ね回って大騒ぎしている。なぜそうなるのかと疑問に思うようになる。それは曲作りに直接影響するわけではなく、単に “この曲でみんなが狂喜する姿が見える” と気づくだけだ。でも、私はいつも間違っている。私の好きな曲は、いつも最も再生回数が少ない曲だ。それは呪いのようだ…このアルバムだと “Black Rainbow” に夢中なんだがね。あらゆるタイプの音楽からあらゆるインスピレーションを得ることは、とてもとても重要だ。 どのジャンルの中にも良いトーン、ソングライティング、メロディがあるんだ。だからブレイクダウンだけを聴くことに自分を限定すべきではない」
一方で、Courtney は観客の反応をあまり気にはしていません。
「それが私の音楽の楽しみ方じゃない。人々がモッシュしているかどうかで、私たちが良い仕事をしているかどうかを判断しないよ。もし彼らがモッシュするなら、それは素晴らしい。それがその人の音楽の楽しみ方だ。でも、ただ頷いているだけの人もいる。それがその人の音楽の楽しみ方かもしれない。そして、ただ立っているだけで音楽を吸収している人に対しては、エゴを持ってはいけない。もしかしたら、彼らはそこで SPIRITBOX を初めて発見しているのかもしれない。もしかしたら、ただ全てを吸収しているだけかもしれない。だから私は大好きな曲を歌いながら、人生で最も楽しい時間を過ごしているだけなの。結婚式で踊る人みたいに、自分の小さな世界に入り込んでいる!馬鹿に見えても構わないさ!」

美しさ、陶酔、そして命がけの混沌が、”Tsunami Sea” を駆け抜ける中で尽きることなく展開されます。このバンドは、”Keep Sweet” のようなのモッシュ・コンフェクションを混ぜ合わせ、次に “Ride The Wave” の滑らかなオルタナティブ・ポップを軽やかに滑り、クリーンな歌声のクロージング・トラック “Deep End” では目眩く多様性を備えています。
「Michael も私も、本当に何でも聴くのが好きなの。 たとえそれが、プロダクションや歌詞のつながり、インストゥルメンタルや全体の雰囲気など、研究的に聴いているものであっても、聴かずにはいられないの。真空の中で曲を書くことはできない。 常に外部の音楽から影響を受けているんだ」
しかし、そのすべては心からの、しばしば胸を締め付けるような、感情に支えられています。”悲しみが私を追いかける” と、Courtney はオープニング・トラック “Fata Morgana” が迫力満点に始まると呟きます。 “呼吸するたびに、その悲しみを胸に感じる…” その悲しみの糸は彼女の中で途切れることはありません。周囲の騒音や勝利の味わいにもかかわらず、内側の暗闇は枯渇することがないのです。
「私の人生で素晴らしいことが起こっても、メンタルヘルスに気を配らなければ、私たちは常に極端な感情の波に翻弄されるだろう。特に私のような人間なら。それが私の感じ方よ。それが私の一部。悲しみや怒りの歌詞は、おそらく私にとって常に共感できるものだろう。
面白いことに…キャリアでの幸せや成功、人間関係での充実感が増すほど、まだあのネガティブな感情を抱えていることに恥ずかしさを感じるの。人生が順調なのに、メンタルヘルスが低下することに恥を感じている人は多い。そして、私は歌詞を通じて、見知らぬ人々にその感情をさらけ出したい衝動があるの。おそらく、それは自分自身をより深く理解するためのメカニズムかもしれない。そうやって、良い人間であるためにできる限りのことをしながら、その抑うつ症のブラックホールに引きずり込まれないようにしているの」

6年前、彼女は時給$8でウェイターとして働いていました。”Eternal Blue” がリリースされた当時でさえ、彼女と Michael はバンドの資金調達のために、データ入力の仕事をしていたのです。そうしてダウンロードで数万の観客を前に Courtney は、”Perfect Soul” の感動的なパフォーマンスを披露し、”私の夢はただの幻想だ” と歌いました。
「数万人の前でそんな個人的な感情を表現するのは、とても難しいこと。でも私を知っている人なら、私たちの旅路を見てきた人なら、私が言っていることに、私の生活について現実を投影できるだろう。でも、ほとんどの人が本当の私を知らない。あの言葉は、私たちのバンドとしての経験を超えた多くのことを指している。残念ながら、あの感情は私にとって常にレリバントなものだ。それは私の人生の一部だった。精神疾患、ペテン師症候群 (自分の能力や成功を過小評価し、自身を詐欺師のように感じてしまう) の経験があることを、私はずっと知らなかった。私は問題にしないのが上手だから、ただ隙間をすり抜けてきただけ。それは潮の満ち引きのような循環的なものだった」
Courtney はメタルにおける女性の存在についても、常に思考を巡らせています。
「人生のある時点で、女性や少女たちが誰も招待されていないパーティーには参加する気にならなくなるものよ。そこに、ドアマンが私を入場させるかどうか待って並ぶつもりはない。自分の、他のクラブを探しに行くでしょう。望まれないなら、私を歓迎してくれる場所を探すだけよ。
これは、若い少女の頃、メタルの世界から歓迎されていないと感じた経験からも来ているの。例えば、小さなメタルのライブに行って、なぜここにいるのかと疑問に思われるような状況。その状況は改善されているけど、私たちはより高い基準を求め、私たちに投げられたパン屑にはこだわらない必要がある。私たちはステーキを食べようとしているのだから」

Courtney にとって、女性リスナーの存在はとても大きなものです。
「SPIRITBOX, BAD OMENS, SLEEP TOKEN, そしておそらく KNOCKED LOOSE が共通しているのは、他の同世代のバンドと比べて女性リスナーがかなり多いことだと思う。Rise-core 時代や emo 時代のバンドも同じだ。METALLICA のドキュメンタリーを見ても、その点で笑われていた。女性が好きなものは常に嘲笑されるものだけど、私はティーンエイジャーの女の子が文化の伝道者だと考えているのよ」
“Crystal Roses” や “Ride the Wave” では、ボトルの中、エコーチェンバーの中に閉じ込められる怖さを、島で育った自身と重ねています。
「私たちがこれまで作ったすべての作品—歌詞的にもサウンド的にも—は、コンセプトアルバムとして考えていて、このアルバムのすべての曲は互いに関連しているの。最後の曲は、私が話したすべてのものの集大成。奇妙なサウンドは実際、海の音だよ。それは説明するものではないけれど。聴く人にさりげなく伝われば幸いだよ。
歌詞的には、このアルバムは私自身が何者であるかを、私の頭の中で描いた自伝のようなもの。育った環境は、世界を見る方法に深く刻み込まれていると思いの。15歳の時、バンクーバー島に移住したんだ。そこで、私のバンドのメンバーである夫の Michael と出会ったんだ。孤立した島で暮らし、キャリアの夢を叶えるために難しい環境は、私を非常に孤立させたの。それは私の人格を大きく形作ったけど、同時に懐かしさも感じている。故郷の場所を美化してしまうというかね。そこにいた時は私を縛っていたのに、離れてからは懐かしむの。家族を恋しく思うからかな」

SPIRITBOX はずっと冷静で、”自分たちが何になりたいのかを模索中だ” と語り、創造性に過度のストレスをかけることで創作物を歪めてしまうことを避けてきました。
「それが私たちの本質だと思う。過去数年間、たくさんのクールでクレイジーな経験を積んできた。グラミー賞でレッドカーペットを歩き、インタビューを受けた。しかし、そのようなことを繰り返すほど、私たちはまだ最低賃金の昼間の仕事をしていて、バンドを立ち上げるのが不可能に思えた時代と、今もつながっていることに気づくんだ。あの経験は、”レッドカーペットに立つ” というイメージよりもずっと身近なの。ああしたイベントは日常の一部ではないし、慣れるまでには長い時間がかかるでしょう。そして、私たちにはそれが起こり続けるかどうかは本当にどうでもいいんだよ…」
シーンの連帯感がプレッシャーを和らげる一方で、その裏側には、新しい世代の象徴としてそのコミュニティを背負う重圧がかかってきます。Courtney は、SPIRITBOX が “目隠しをして、それについて考えないようにし、音楽が誰かの消費対象となるための流行戦略討論に陥らないようにする” と主張します。
「考えれば考えるほどストレスが増す。みんなが歌詞を全部知っているのは、私たちにとってまだ非常に奇妙なことだ。インターネット・バンドとして実家の地下室で生まれた私たちが、”未来のフェスティバルのヘッドライナー” と呼ばれるようになったのは奇妙な感覚だ。プレッシャーは確かに存在する。しかし、自分たちらしさを保ち、楽しむ音楽をリリースし続ける限り、非難されることはない。それが現実だ… 自分の音楽は、無限の可能性を持っていたいんだ」

Courtney はメタルを非常に “二元的な” ジャンルだと理解しています。
「バンドがスローな曲をリリースしたら、”彼らは今やスローな曲しか作らない” とか、本当にヘヴィな曲をリリースしたら、”バンドが戻ってきた。彼らは最もヘヴィな曲を作ったし、それが彼らの現在だ” とか。
私たちの世界では、極めて二元的なのよね。実際に、ミュージックビデオのプレミア上映中に人々を見ていると、”OK、彼女は30秒叫んで、今は45秒歌ってる。ああ、ダメだ! でも、ブレイクダウンがある、神様ありがとう。また好きになった” と。サイドバーで “これはひどい” と表示されていても、私が叫び始めると、彼らは “やった!” と反応する。
なぜそんな二元的になるのだろう。私は常に、地元のシーンや地域のシーンの一部ではないと感じていたの。常に少し外側にいるような感覚だった。そしてある日、誰かがクリックし、誰かが魔法の杖を振ったかのように、プロのメディアが “このバンドは素晴らしい。これが君たちが好きになるべきバンドだ” って言い出したんだ。でも、自分たちが “メタルコア・バンドだ!” なんて思ったことは一度もないんだよね」
SPIRITBOX はメタルのステレオタイプを破壊してここまできました。
「私たちは “1つのバンドの価格で2つのバンドを味わえる” と言っているの。人々がそれを好むかどうかは分からないわ。誰かに2つの異なる SPIRITBOX の曲を聴かせても、同じバンドだと気づかないかもしれないよね。
だから、すべてのバンドがそうではないことは知っているけど、流動性って大事だよね。私は “血統” や “こうしないとメタルではない“ という外部の圧力を感じていないんだ。なぜなら、私はメタルを聴いてきたのに “メタルではない” と言われ続けてきたから。誰が気にするの? DEFTONES のようなバンドがそれについてどう思っているのか、いつも疑問に思っているよ」

Courtney がメタルを聴き始めたのは遅く、だからこそこのジャンルはサブジャンルに囚われすぎだと感じています。
「18歳くらいまで、メインストリーム以外の音楽を聴いたことがなくてね。そして、私が初めて接したメタルは、Protest the Hero, Despised Icon といったカナダのバンドたちだった。Misery Signals はカナダ出身ではないけど、私たちは彼らをカナダのバンドとして数えているんだけどね。
つまり、自分で探した音楽ではなく、私の島にやってくる人たちの音楽だった。非常に露出が少なかったよね。そして少し年を取ってから…私は確かにエクストリームな音楽が好きだと気づいた。Job for a Cowboy の “Entombment of a Machine” をかけて、技術的な能力を聴き分けていたんだよね。他の同年代の人がメタル音楽を聴き始めるのとは異なる方法で聴いていたんだ。後からその音楽を学んだから、なぜこうしたバンドがこうした音をしているのかを理解する必要があった」
今や、インターネット空間には様々な批判や悪意が蔓延しています。差別や抑圧に抗い、多様性を認め合うことはどんどん難しくなっています。
「私たちは互いを守ろうとしているの。憎しみを増幅させたくないのよね。個人的には、自分自身のことに集中したいだけで、常に悪口を言いたくないんだよ。右派の振り子の揺れもどし、アルゴリズムによる人々の過激化…そして、メタルは私たちが思っていたよりずっと保守的だったのかもしれないね。もちろん、公の場で批判することはできるけど、それがまさにあの彼らが求めていることのように感じるんだ。だから私は成功を収め、持っている影響力を活用して影響を与えることを望んでいるのよね。
NINE INCH NAILS はいい例だよ。フェスで一緒になった時、彼らがステージを見て “私たちのステージに女性を配置し、多様な人種の人々を配置する必要がある。これは受け入れられない” と言ったことがある。私は “Wow、あのバンドの影響力だ。彼らはそうできるんだ” と思った。だから、いつか私もそうできるかもしれないし、私の同世代の多くもそうできるかもしれない。全員を知っているわけではないけど、彼らは私たちと同じように感じていると思う。だから、同志のバンドたちが成功すると、それが私たち全員を強化することになるんだよね」

SPIRITBOX にとっての同志とは、BAD OMENS であり、SLEEP TOKEN でしょう。
「私の周りにメタルを聴いたことのない人たちが、SLEEP TOKEN の音楽を聴いている。特別なケースだよね。彼らは断然最もポップ寄りのバンド。
彼らに会ったことはないけど、多分私たちや BAD OMENS に近い存在だと思う。彼らとこの話題について話したことはないけど、彼らも作った曲のジャンルについて考えたことはないと思う。それが良いか悪いかは分からない…でも少なくとも AI にこんな音楽は作れないよ」
SPIRITBOX の成功は、疑いながらも自分を信じて諦めなかったことから生まれました。
「私は本当に妄想的な人間で、人生がこうなることをずっと知っていた。その確信は、極度の自己疑念とペテン師症候群の霞の中で常にそこにあった。27歳の誕生日は “最悪の日” だった。決して忘れないよ。その日、私はコーヒーショップで一人で働いていた。他の従業員は全員病気で休んでいてね。コーヒーを作ったり、サンドイッチを作ったりしながら、誕生日なのに最低賃金の仕事をしていることに恥ずかしさでいっぱいだった。そして、誰かがミルクの瓶を倒してしまい、私は床に膝をついて掃除しながら、涙が溢れそうで、怒り始めた客たちに囲まれていたんだ。”27歳で、教育も金もなくて、前のバンドを辞めたばかりなのに、牛乳をこぼしただけで泣いてるなんて!”と。
それでも、SPIRITBOX の成功は私にとって起こるべきことだと分かっていた。私たちは次のことにばかり集中して、今この瞬間を生き、自分を褒めることを十分にできていないのかもしれない。私たちが既にどれほど遠くまで来たかを考えると、信じられないほどだよ…」
結局、Courtney は音楽 “オタク” だったかつての自分からその本質は変わっていないのです。
「そう、だから自意識過剰なんだと思う。高校のクールな連中はみんな私たちをボコボコにしただろうね。ただ不愉快だからいじめられるオタクっているでしょ? それが私たち。ただ不愉快なだけなんだ。 私たちは “私たちは違うから嫌われてるんでしょ? “でも、”違うよ、ただ君が嫌いなだけだよ “って言われるんだ (笑)。
でも、だからこそ私たちは奇妙な音楽を作ることができる。 みんなにバカにされるけどね (笑)」

参考文献: ELI ENIS :”Your whole family’s going down”: A blunt talk with Spiritbox singer Courtney LaPlante

KERRANG! :Spiritbox: “Every time I walk out onstage, I can’t believe this is my life”

GRAMMY AWARDS :On ‘Tsunami Sea,’ Spiritbox’s Courtney LaPlante Contemplates Adversity, Solidarity & Renewal

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SLEEP THEORY : AFTERGLOW】


COVER STORY : SLEEP THEORY “AFTERGLOW”

“Nowadays, Heavy Bands Have Flipped The Script, Making Music For Everyone’s Ears. You Might Be The Sort Of Listener Who Considers Themselves a Pop Fan, But You Could Turn On a Sleep Token Song And Enjoy It.”

AFTERGLOW

「僕たちはアートを作るためにここにいる。 みんなと同じでは何も始まらないからね」
SLEEP THEORY のフロントマン、Cullen Moore の最初の記憶は、リビングのソファーで父とボビー・ブラウンの反抗的なアンセム “My Prerogative” を一緒に歌ったことでした。”誰の許可も必要ない 自分で決断をする それが自分の特権だ”。
このマインドセットは、メタルの境界を破る SLEEP THEORY に結実しました。そのポップな滑らかさとR&B の野性味は前例のない共鳴、共感を呼んだのです。彼らはラジオを支配し続け、今後の大規模なフェスティバル出演が成功を確固たるものにしています。
「ガソリン・スタンドで止まった時、父が “SLEEP THEORY がこんなに大きくなるなんて考えたことある?” と聞いてきた。僕はただうん、と答えて父に “それは僕が決して小さくさせなかったからだよ” と伝えたんだ。僕は僕が関わるものに対しては、競争心が強く、決して自分の水準を下回ることを許さない。そのアティテュードがどこから来たのかは分からない。ただ、ずっとそうだっただけだ。それは他の人より “優れている” ことではない。誰かが何かを成し遂げるのを見て、自分がどれだけできるか試したいという意欲なんだ。SLEEP THEORY が既に到達したレベルに達していなくても、それが実現するまで努力を続けるだけだ」
Cullen のその自信には、作られた要素は一切ありません。 テネシー州とミシシッピ州の州境の南側で音楽に囲まれて育った彼は、その場所を親しみを込めて “メンフィシッピ” と呼びます。その背景が、彼の自信の大きな要因となっているのです。ブルースの発祥地であるビールストリート、メンフィス・ラップの誕生地である粗野な街、そしてエルヴィスのグレースランドの豪華絢爛な世界など、アメリカを象徴する多くのサウンドは、彼の家の玄関から車で 30 分圏内で生まれました。
「みんなは、僕がいつ歌えるようになったのか尋ねてくるけど、正直覚えていない。ただずっと歌っているだけなんだだ。それが唯一、僕ずっとできてきたことだから。父はいつも歌っていた。祖母も。叔父も。もう一人の叔父も。叔母も。大叔母も。僕たちは皆歌手だった。そして皆自然にやっている。人生で経験した多くのことにおいて、音楽が関与していた。そして、それは僕の人格の核心的な部分となった。歌が人生であることを疑ったことは一度もないんだ」

粒子の粗いVHSで父親の音楽ビデオを見たことが、Cullen が歌を職業として実現可能だと確信するきっかけになりました。両親は息子に良い育ちと彼が得るべき機会を与えるために努力しました。時には、勉学を優先して音楽を “プランB” にすべきだと奨励しましたが、それは決して彼の道ではなかったのです。
「12歳から音楽をやっている。そして14歳からスタジオにいる」
まずは、創造的な道を模索することが第一でした。Cullen にとってヒップ・ホップに手を出すことは魅力的ではなく、父親から受け継がれた純粋なR&Bのバトンを継ぐこともありませんでした。そうして彼は、人生のコントロールを握るという別の目標から父親の足跡をたどり、アメリカ軍に入隊しました。ミシシッピ州コリントを拠点とする警備隊での3年間、それは自己肯定感の向上と現実の厳しさを同時に感じた経験だったのです。
「あの瞬間を鮮明に覚えている。軍隊では、自分を正す必要があると感じるから入隊する人もいる。僕はバランスの取れた家庭で育った。悪い子供ではなかった。だけど、大学を中退し、自分がどこへ行きたいのか、何をしたかったのか分からない状態だったんだ。数歳年下の友人と将来の計画について話していた時、彼は軍隊に行くと言った。僕は人生で何をしたいのか分からなかったから、同じように入隊を決意したんだ。父には話さなかった。父が軍に行かせたがっていたことは知っていたけど、もしそれが気に入らないものになったら、彼のせいにするのではなく自分で決めたことだと言いたかったから」
軍での経験は強さを養い、Cullen は自信を磨きました。同時に、日本のアニメは “良い人間” になる手助けをしてくれたと語り、”Naruto” のタトゥーを腕に刻みました。
「僕は常に非常に意志の固い人間だった。非常に頑固で、自然に自分自身に自信を持っていた。しかし、軍隊を経験したことで、すでに制御不能な炎のように感じていたものがさらに強まったんだ。軍隊は僕に冷静な判断力を与え、本当に僕のパーソナリティを1000倍に強化してくれた。そして、忍耐とチームワークを教えてくれたんだ。もし時間を遡れるなら、再び入隊するだろうか?一瞬の迷いもなく、イエスだね!」

2023年初頭、SLEEP THEORY はまだ無名でした。 彼らのラインナップが固まったのはつい最近のことで、名前が決まったのはそのほんの数ヶ月前のことでした。新曲 “Another Way” の17秒のプレビューを気まぐれにTikTokに投稿したときは、ほとんど期待もしていませんでした。しかし、36時間以内に再生回数は50万回を記録し、新たなファンの軍団が続々と押し寄せてきたのです。
その瞬間が SLEEP THEORY の物語から切り離せないのはたしかですが、Cullen は彼らが “一夜の成功” と受け止められることには皮肉を感じています。なぜなら、2018年に軍を退役した彼は、それからずっと地元のプロデューサー、David Cowell と二人三脚で歩んできたからです。
「メタルのブルーノ・マーズになりたいと David に言ったんだ。僕は次に何をするのか全くわからないような、そういう明確なアイデンティティを持ったアーティストになりたかったんだ。 David はその時点でメンフィスで最高のプロデューサーだったと思うけど、まだ注目されていなかった。そして今、彼はプロデューサーとして、そして SLEEP THEORY はバンドとしてブレイクを果たした。彼の天才ぶりが注目されるのはいいことだ!」
最初の数年間はスタジオ・プロジェクトでしたが、2021年にベーシストの Paolo Vergara を迎え入れ、本格的に活動を開始しました。Paolo の紹介でドラマーの Ben Puritt が参加するようになり、素晴らしいシュレッダー/スクリーマーである Ben の弟 Daniel が加わったことで、すべてがかみ合いました。
「俳優、プロデューサー、撮影監督がいる映画を作るとしたら、僕は監督みたいなものかな。 ギターを弾くことはできないけど、物事を見て、物事を聞いて、すべてがどこに向かうべきかを理解することはできる。 また、他の人たちに仕事を任せるために、自分のやり方から離れるべきときも学んできた。 最初のころは、まだ物事を理解しようとしていたけれど、今は、よりよく動くマシーンになったよ」

Cullen にとって、自身の作品にラベルを付けるプロセスは難しいものでした。他のバンド名として “Monolith”(暗すぎる)と “Wavelength”(ポップすぎる)を却下し、オンラインで科学用語を閲覧していた際に、”Sleep Theory” に決めました。
「これが正しいと感じる。口に馴染む。重すぎず、軽すぎず」
2023年にEpitaphからリリースされた “Paper Hearts” はEPでしたが、その6曲に費やされた時間と努力は、それ以上のものを感じさせる作品でした。そうして、David のSupernova Soundスタジオ(メンフィス北東部)と往復しながら “Afterglow” のレコーディングを行った Cullen は、これがそのEP以上の決定的な声明である必要があると悟ったのです。
「”Afterglow” は “Paper Hearts” の続きから始まる。情熱的だが最終的に抽象的な感情の枠組みで、僕たちがこれまで語ってきたストーリーに終止符を打つものだ。愛する誰かと共に多くのことを経験したにもかかわらず、まだ “私とあなた” の間で迷っている感覚を捉えているんだよ。その余韻—アフターグロウ—は僕をまだ悩ませているんだよ。そこには個人的な経験が含まれているけど、それは僕だけに限定されたものではない。このバンドのどのメンバーからも、または僕たちのプロデューサーからも来得るもの。もちろん、スタジオに入って “さあ、愛について話そう!” と言ったわけではないけど、アルバムの曲は共感できるものにしたいと思っていた。誰もが失恋を経験するので、意識的か無意識かに関わらず、そのことを書いたんだよ」
ヒップホップのビートとエレクトロのアトモスフィア、メタルコアの咆哮とR&Bの官能性が融合し、刺激的な作品を構成。緊張感あふれるアドレナリンの爆発、脆い切なさ、魂を揺さぶるカタルシスの瞬間を織り交ぜるアルバムは実にユニークです。例えば “Hourglass” は、A Day To Remember の全盛期を思わせるポップ・パンクとメタルコアの融合。”Stuck In My Head” は、失恋の物語に巨大なフックを埋め込んで煮詰めた共感の一曲。EPからの継続曲 “Numb” はアンセムで、”壊れた夢の目を覗き込む / 縫い目が裂けた新たな計画” と挑発的に歌っていきます。

しかし、最も心に響くトラックは、新曲 “III”(「スリーズ」と発音)でしょう。バンドから奪われた何かが “想像し得る最悪の形で汚された” というストーリー。その耳に残るフックと楽曲の成功は、彼らにとって最も満足のいく復讐となるでしょう。
「人生に酸っぱいレモンを与えられたら、そこからレモネードを作ればいい。そんな悪い経験をしても、それをヒット曲に変えればいいんだ!」
正直さと純粋なビジョンが全て。たとえそれが、彼らの成功が SNS の “バズ” から始まったとしても。
「僕は “TikTokアプローチ” をただ受け入れるつもりはない。トレンドには興味がないんだ。一時的なバズのためにここにいるわけじゃない。みんながやっているなら、僕はやりたくない。TikTokダンスをしたり、他所でよく見かけるような目立つためのクリップを作ったりする人間にはならない。それではただ、大衆に迎合するだけだ。
「”Another Way” の最初のティーザーでも、それは “夏のTikTokソング” を目指すことではなく、僕たちが目指すよりプロフェッショナルなイメージを確立するためだった。僕はTikTokの基準に妥協しない。僕たちはコメディアンになるためにここにいるのではない。アートを作るためにここにいる。それは他の人と同じ場所から始まるものではない」

Cullen には説教臭さも不自然な派手さもありません。急速に成功を収めたアーティストとしては、驚くべきほど傲慢さがないのです。そうして論理、問題解決能力、そして抗いがたい自然な好奇心が存在します。彼は、SLEEP THEORY の急激な上昇だけでなく、より広範な盛り上がるオルタナティブ・シーン全体、そして SPIRITBOX から SLEEP TOKEN まで新たなリーダーたちにも焦点を当て、変化の潮流を見据えています。
「昔の Bring Me The Horizon は、好きか嫌いかの二者択一だった。しかし、最近の新しい Bring Me The Horizon には、多くの異なる要素が絡み合っていて、多くの人々がその中から気に入るものを見つけることができる。歴史は繰り返す。2009年ごろ、ヒップ・ホップとポップが真のブームを迎えていて、ロックはその波についていけなかった。ほとんどのアーティストは、この音楽を幅広い層に受け入れられるようにする努力をしていなかった。もしそうしていたなら、彼らは Thirty Seconds To Mars や Imagine Dragons のようなカテゴリー(ポップサウンドを直接取り入れた)か、Kings Of Leon のようなバンド(ポップな曲作りを重視した本格的なバンド)に分かれてったはずだ。適切なバンドがとてもポップな感覚を学んでね。でも、実際はヘヴィなメタルコアやスクリーモのジャンルに入ると、それははるかに “好みが分かれるもの” だった。
でも現在、ヘヴィなバンドは方針を転換し、誰もが楽しめる音楽を作っている。ポップ・ファンを自認する聴き手でも、SLEEP TOKEN の曲を聴いて楽しむことができる。感情の幅も広くなっている。悲しみや暗いテーマばかりではなく、より共感できる内容で、古いバンドが扱っていた感情の幅を捉えているんだ」

“Stuck in My Head “の野外アコースティック・パフォーマンスにも彼らのポップ・センスが現れています。
「アコースティックで曲を歌うのが大好きなんだ。 このプロジェクトの背景にあるアイデアは、ヘヴィなギターをすべて取り除けば、ポップな曲になるということなんだ。 どんなメタルやロックの曲でも、アコースティック・ヴァージョンを作れば歌えるんだ。
この曲のライティングやメロディが、ポップ・ソングとして問題なく成立させているんだと思う。 もしカントリー・アーティストが “Stuck in My Head” をカヴァーしたら、間違いなく完璧に歌いこなせるだろう」
あの BACKSTREET BOYS でさえ、彼らの栄養となっています。
「”Static”のビデオ撮影で “I Want It That Way” を4人で歌った。バンの中でみんなで歌ってるけど、まあリハーサルするようなことじゃないよ。 ただ歌い始めるだけ! ミュージックビデオの撮影で、僕が “You are my fire/The one desire” と歌い始めたら、他のみんなも歌い始めた。 だからインスタグラム用にちょっと作ったんだ」
あの伝説的なバンドも彼らの一部となっています。
「どのバンド・メンバーも、演奏や作曲に関して最も影響を受けたアーティストがいる。だけど SLEEP THEORY のサウンドに関して言えば、LINKIN PARK は僕らの音楽を形成する上で重要な役割を果たした。サウンドだけでなく、曲作りへのアプローチやオーディエンスとのつながり方にも影響を与えている。 多様性を受け入れること、純粋な感情を表現すること、サウンドで実験すること、そして自分独自の芸術的な声に忠実であること…それはロックとオルタナティヴ・ミュージックの世界に忘れがたい足跡を残したバンドの影響を反映しているんだ」

BEARTOOTH と共に大規模な会場でライブを敢行し、WAGE WAR から NOTHING MORE, HOLLYWOOD UNDEAD まで、あらゆるバンドとステージを共有してきた SLEEP THEORY は、現在のヘヴィ・メタル界のトップクラスと肩を並べる能力を証明してきました。それでも、Cullen は青春時代聴いていたバンドを参考に、自身の道を模索しています。3つのフェイバリットを挙げるよう促されると、彼はさらに多くのバンドを挙げていきました。
「LINKIN PARK, FALL OUT BOY, PARAMORE と言えるかもしれない。でも DISTURBED, THREE DAYS GRACE, SAOSINとも言える。または WOE IS ME, DANCE GAVIN DANCE とも言える。僕にとって、一つに絞るには変数が多すぎる。難しいよ」
まず第一に、Cullen は音楽のファンであり、バンドのファンなのです。だからこそ、自分のバンドに対して他人が感じるファン心を、彼は最も誇りに思っています。たしかにストリーミング指標やチケットの売上は SLEEP THEORY の成功の一端を示すかもしれませんが、人間同士のつながりの電気のような力は、名声や富よりも価値があると信じています。
「”大きなバンド” になることは、人々の心を動かすことだ。それはほんの少しかもしれないけど、人々の生活を変えることだ。SLEEP THEORY の変化に気づいたのは、あるコンサートでのことだった。僕よりずっと年上の男性が写真撮影を求めて近づいてきた。彼が震えているのに気づき、大丈夫ですかと尋ねた。彼は “ヒーローに会うから緊張している” って。音楽が人々に影響を与えていることは知っていたけど、その瞬間、本当に実感したんだ。理解するのが難しかったよ。僕は人生のほとんどを、僕より年上の人々を尊敬してきたけど今や、僕より長く生き、多くの経験を積んだ人々が、僕を尊敬していると言っているんだからね!」
結局、最も重要なのは自分自身を満足させることです。様々な影響の中でも、Cullen はアトランタのメタルコアの先駆者 ISSUES、特に2019年のランドマーク作 “Beautiful Oblivion” を、最も模倣したいテンプレートとして挙げています。彼にとってこれは完璧なアルバムであり、自身のキャリアの終着点として無駄な曲の影も残さないことを理想としています。
「僕はマイケル・ジャクソンのようなアーティストを聴きながら育った。だから、これで十分だと言うような人間にはならない。平均的な曲は欲しくない。ただやり過ごすための曲も欲しくない。人々が僕のカタログを見て “素晴らしいけど、あの曲はもっと良くなれたはず…” と言うような曲も欲しくない。そして、ファンが聴きたいものを作りたいとは思っているけど、自分が作りたくないものは絶対に作らない。
人々はアーティストが聴き手に合わせるという考えに慣れすぎている。僕は誰にも合わせないよ。自分のやりたいことをやる。自分自身に忠実なだけだ。それに共感するかどうかはリスナー次第。僕は決して他人の気まぐれに屈しない。合わせることができない。それが本当に僕の本質だから」


参考文献: KERRANG!:Sleep Theory: “We’re here to make art. That does not begin with being the same as everybody else”

REVOLVER:TORNADOS, TIKTOK AND THE TRUTH: SLEEP THEORY TALK HIGHLY ANTICIPATED DEBUT ALBUM ‘AFTERGLOW’

LOUDWIRE: SLEEP THEORY INTERVIEW

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUX TERMINUS : CINDER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VIKRAM SHANKAR OF LUX TERMINUS !!

“Trying To Make Heavy Music With No Guitars Is a Creative Challenge That Requires Creative Solutions, Which Is a Lot Of Fun.”

DISC REVIEW “CINDER”

「芸術的に言えば、ギターがないという制約があることはとても充実したことだと思う。実は僕はギターの音が絶対的に好きだし、好きなミュージシャンの多くはギタリストだ。それでも、ギターを排除することで、キーボードが “音の混沌” に埋もれてしまうことがなく、繊細さや美味しさを堪能する余地が生まれる」
LUX TERMINUS とは、ラテン語で “終わりの先の光” を意味します。そう、このバンドは過去のプログのトンネルの先にある光に違いありません。バンドの中心人物は Vikram Shankar。そう、2010年代後半、シーンに彗星のごとく現れた若き鍵盤の魔法使いこそプログ世界の希望。
あの歌聖 Tom Englund との美しすぎるデュオ SILENT SKIES でネットから現実へと飛び出した Vikram は、すぐにその優れたテクニック、音楽教育を存分に受けた知性、研ぎ澄まされたメロディの感覚、音楽を俯瞰して見る眼差しが認められ、REDEMPTION や PAIN OF SALVATION といったこの世界の鬼才にして重鎮にとってなくてはならない存在となりました。
彼がプログ世界の希望である理由。それは彼の音楽に対する優れた才能、真摯な態度だけではなく、鍵盤をその武器に選んでいるから。かつて、プログやメタル世界の華のひとつだったキーボード・ヒーローは今や絶滅寸前。しかし、その繊細さや多彩な色彩は決して滅びてはならない天然記念物。Vikram はこの LUX TERMINUS で、PLINI, INTERVALS, David Maxim Micic といった愛するギターヒーローの哲学をキーボードで再現して独自に進化させ、ギター全盛のシーンに選択肢を増やそうとしているのです。
「ギターがない状態でヘヴィな音楽を作ろうとするのは、創造的な解決策を必要とするクリエイティブな挑戦であり、それはとても楽しいことなんだ。LUX TERMINUS は、おそらく SILENT SKIES と最も共通点があると思う。主に、シネマティックな色合いという意味でね。僕たちは、サウンド・デザインを織り上げていくようなアプローチや、深く思慮深い雰囲気を作り出すための音の実験が大好きだからね」
ギターレスのDjent。LUX TERMINUS の原点はそこにあります。重量感マシマシ、ギターありきのDjentにキーボードで切り込むその心意気こそプログレッシブ。Vikram はアルバム “Cinder” の中で、そのミスマッチに様々な創造的ソリューションで挑んでいきます。
もちろん、ARCH ECHO のようなキラキラの Fu-Djent も一つの解決法でしょう。幾重にも重なった光のキーボードと複雑重厚なリズムが織りなすディズニー・ランドは完璧なエンターテイメントとなり得ます。SLEEP TOKEN のポップな電子メタルも、DIRTY LOOPS のファンキーなリズムも彼らは飲み込み咀嚼します。しかし Vikram の企みはそこだけにとどまりません。
「特に久石譲のジブリ映画の音楽には大きな影響を受けているよ!また、僕は尺八を持っていて、レベルの高い尺八の演奏に心から魅了されているんだ。そうした名人たちには遠く及ばないけど、それでも “Neon Rain” (三味線や箏の演奏もある)のバックで尺八を僕が吹いているんだ。他にも、驚くべきソースがあってね。ポケモン・アルセウスのサウンドトラックに収録されている、特にジュビレシティーのテーマとかね。僕は日本の “音楽言語” がとても好きなんだ!」
Vikram の生み出す音楽はよりコズミックで、映画的で、未来的。Espera という優れたボーカル集団と紡ぐ “Jupitor” 三部作で私たちはインターステラーやスターフィールドといった壮大な映画やゲームの世界へと旅立ち、かの Ross Jennings と Jorgen Munkby を起用した “Catalyst” では CHICAGO や THE POLILE が映画やドラマの主題歌に使われていたあのアーバンでポップな80年代を再訪します。
そして何より Vikram がこのアルバムで大切にしたのが日本とのつながりでした。PAIN OF SALVATION の来日公演で愛する日本を訪れ、様々な都市を訪問した彼はこの国の人や風景の優美に感銘を受けます。尺八や三味線、琴を使用した “Neon Rain” はまさにその感銘が投影された楽曲。そうしてアルバムを締めくくる “Natsukasii” で Vikram はジブリの世界観とメタルを見事に融合させていきます。ノスタルジーと情景、壮観。彼が LUX TERMINUS で目指したものは、素晴らしくここに投影され、確かに鍵盤でなければ実現できない未曾有の景色で、未来へのプログレッシブな窓でした。
今回弊誌では、Vikram Shankar にインタビューを行うことができました。「最近のプログレッシブ・ミュージックには、メタルだけでなくフュージョンやジャズの文脈で活躍する優れたキーボーディストがたくさんいると思うけどね。とはいえ、キーボードの “旗手” のような存在になって、キーボードでどれだけ多彩で奥深い表現が可能かをアピールするできるとしたら、それはとてもやりがいのあることだと思うよ」 どうぞ!!

LUX TERMINUS “CINDER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PHASE TRANSITION : THE OTHER SIDE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FERNANDO MEIA OF PHASE TRANSITION !!

“Fado Is More Than Music; It’s Emotion. It’s About Longing, Destiny, Melancholy… Feelings That Resonate Deeply. That Emotional Weight Definitely Finds Its Way Into Our Songs.”

DISC REVIEW “THE OTHER SIDE”

「深みに飢えている人がいるのだと思う。世の中にはたくさんのコンテンツがありすぎて、つながりがないままスクロールして通り過ぎてしまうのが簡単で当たり前となっている。しかし、複雑な音楽は集中力を要求し、その代わりに豊かでエモーショナルな体験を与えてくれるんだ。ツイートではなく小説を読むようなもので、時間はかかるけど見返りは大きい。それがプログを生かし続けているんだよ」
画面をスクロールして5秒立ち止まり、またスクロールして5秒立ち止まる。コンテンツは無限にあって、私たちはその宇宙の中で “消費” というあまりにも無味乾燥かつ一方通行な言葉によって、すべてを理解し堪能した気持ちになっています。しかし、まるでそのスーパーの試食コーナーだけを回るような無料の巡回で心が満たされることはあるのでしょうか?
ポルトガルのプログ・メタル新人類 PHASE TRANSITION は、感情の起伏を山のように織り込んだ長く複雑な楽曲によって、そうしたインスタントな世界を変えたいと望んでいます。GOJIRA や DREAM THEATER のグラミー受賞はその “フェイズ移行” のきっかけとなるでしょう。結局、どれだけもっともらしいことを150字で呟いたとしても、どれだけ印象的な演奏を15秒で残したとしても、それは “作品” ではなく “コンテンツ” にすぎません。私たちにはきっと、こちらも疲れ果ててしまうような、集中力と思考力要する “作品” が今、必要なのかもしれません。
「DREAM THEATER は大好きだけど、決してクローンにはなりたくなかった。このバンドのメンバーはそれぞれ違うものを持ちよっている。Sofia はクラシックの強力なバックグラウンドを持っているし、”Dark Side of the Moon” や “Kid A” を聴いて育った。僕はモダン・メタルからEDM、シティ・ポップからフュージョンまで、何でも好きだ。僕たちは自分たちを限定することはないと信じている。PHASE TRANSITION の音楽は、そうしたすべてのテイストを反映しているんだ」
大学在学中に心酔する DREAM THEATER のカバーを演奏したのが始まりで、ドラマー Fernando Meia、ギタリスト Luis Dias、ヴァイオリニスト/ヴォーカリストの Sofia Beco を擁する PHASE TRANSITION のラインナップが完成しました。しかし、”The Other Side” を聴いて DREAM THEATER のフォロワーなどと揶揄する人はいないでしょう。キーボーディストはもちろん、ベーシストもいない、伝統的な楽器編成を回避した事実からも、彼らのエクレクティックなプログレッシブ・メタルの美学が非常に意外でユニークなものであることを証明しています。
「ファドはまさに音楽というよりもエモーションなんだ。憧れ、運命、メランコリー…深く心に響く感情なんだよ。その感情的な重みは、間違いなく僕たちの曲にも表れている」
“Veil of Illusions” や “Becoming” のような楽曲にはゴシック・メタルの雰囲気が織り込まれ、もし EVANESCENCE やアンネケ時代の THE GATHERING が PERIPHERY や TesseracT と融合したら…という極上のIFサウンドを具現化していきます。この魅惑のハイブリッドの背景には、サウダージとメランコリーを根源とするポルトガルの伝統音楽ファドの血が存在し、Sofia の幽玄な歌声とヴァイオリンが Luis のウルトラ・テクニカルなギタリズムと混ざり合うことで、未曾有の温故知新、未曾有のエモーションが完成をみるのです。きっと誰もが、この壮大な音楽を5秒でスクロールすることはできません。
今回弊誌では、リーダーでドラマー Fernando Meia にインタビューを行うことができました。「音楽的には、日本のフュージョンやシティポップ、Casiopea や T-SQUARE が好きなんだ。 日本には、情緒と技術的な素晴らしさがミックスされた素晴らしいものがあり、僕は深く敬服している」 どうぞ!!

PHASE TRANSITION “THE OTHER SIDE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNOOZE : I KNOW HOW YOU WILL DIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LOGAN VOSS OF SNOOZE !!

“The More People Are Inundated With Instant Gratification, The More It Becomes Impactful When Something Comes Around That Was Worked On Really Hard. I Think The Pendulum Is Beginning To Swing The Other Direction.”

DISC REVIEW “I KNOW HOW YOU WILL DIE”

「アートが消費され、”コンテンツとなった芸術” の時代である今、より多くの人々が、よく練られ、愛のこもった作品で、時代に左右されずに存在する音楽、芸術、アイデアを求めているのだと思う。人々が即座に満足できるインスタントなものが溢れれば溢れるほど、情熱をかけて心から一生懸命取り組んだものが世に出たときの衝撃は大きくなる。より多くの人々が、自分の意思をあまり持たずスマホに釘付けになることに不満を感じ、振り子が反対方向に振れ始めているんだと思うよ」
アートが消費される “コンテンツ” となった現代。人々はさながら SNS を一瞬賑わせ、そしてすぐに忘れ去られていく日々のニュースのようにアートを消費し、放流していきます。しかし本来、芸術には “永続性” が備わっているはず。本来のアートは時代を超えて愛されるべきでしょう。そうした意味で、シカゴの “ハッピー・ヘヴィ・マスロック” SNOOZE の音楽はさながらスマホのアラーム、あの “スヌーズ” 機能のように、時が過ぎても何度も何度もリスナーの心を目覚めさせていくはずです。
「ヘヴィな歌詞の内容とヘヴィ・メタルに影響を受けた音楽的要素が、とても楽観的なコード進行の選択と組み合わさって、楽しい認知的不協和を生み出しているように感じるよ」
複雑怪奇な変拍子を操る SNOOZE の最新作 “I Know How You Will Die” が4/4日にリリースされた事実がすでに、彼らのニヒリズムと知性が生み出す二律背反を見事に表現しています。たしかに SNOOZE はハッピーなマスロック・バンドですが、同時にヘヴィなプログレッシブ・メタルでもあります。その怒りと幸福、ヘヴィとキャッチー、実験と正統をまたにかけるダイナミズムの妙こそ、彼らが情熱を注いだアート。
「若いメタルヘッズだった僕たちは、テクニカルさと名人芸に取り憑かれていたような気がする。それからマスロックに出会ったとき、それと同じ波動を感じたような気がしたんだ。だから、それを掘り下げていくと、より多くの非常識なバンドを見つけることができた。 でも最近の僕たちは、可能な限りテクニカルなこと(考えすぎること)を探すのをやめて、意味のある、感情的な音楽に傾倒していると思う。だからよりメロディックな音楽の中に濃密なリズムのアイディアを取り入れる人がいると、いつも嬉しくなるよ」
またにかけるのは光と闇だけではありません。エモ/ポップ・パンクのヴォーカル・センスをヒントに、マスロック、プログレッシヴ・メタル、ポスト・ハードコアをブレンドした、大胆かつ折衷的な旋風こそ彼らの真骨頂。 最も際立っているのは、それぞれのジャンルをシームレスに行き来しながら、独自の色と説得力をもって主張する彼らのアイデンティティでしょう。BETWEEN THE BURIED AND ME が見せるようなボーカル・ハーモニー、その実験的な使い方も、SNOOZE の複雑な楽曲に驚くほどの色彩と感情をもたらしています。彼らの創意工夫を前にして、スマホに齧り付くことはできません。振り子の針は逆側に触れ始めました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Logan Voss にインタビューを行うことができました。「当時は VEIL OF MAYA をよく聴いていて、ギターを初めて弾いた曲のひとつでなんと “It’s not Safe to Swim Today” を覚えようとしたんだ。YouTube の黎明期には、バイラルになる動画は限られていたので、初期の ANIMALS AS LEADERS のミュージックビデオを見たとき、みんなが度肝を抜かれたのは間違いないよね!」 どうぞ!!

SNOOZE “I KNOW HOW YOU WILL DIE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CKRAFT : UNCOMMON GROUNDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHARLES KIENY OF CKRAFT !!

“I Might Be Wrong, But I Don’t Think There’s Another Metal Band Fronted By This Accordion And Saxophone Section.”

DISC REVIEW “UNCOMMON GROUNDS”

「バンド名の CKRAFT は、”Craft” と “Kraft” という2つの単語を意図的に組み合わせたもので、僕たちの音楽哲学の核心を表している。英語の “Craft” は、僕たちが深く大切にしている “クラフトマン・シップ”、つまり作曲、レコーディング、演奏、そしてサウンドをゼロから構築していく実践的な作業を意味している。サンプルもプログラミングもなく、すべては楽器の演奏から生まれることをね。一方、ドイツ語で “Kraft” は “強さ” や “力” と訳され、ヘヴィでクラッシングなサウンドを意味するんだ!」
テクノロジーの進歩は、メタル世界にも様々な恩恵をもたらしています。アナログ時代には想像も出来なかったサウンド、正確性、利便性。その一方で、アナログ時代に確かに存在した “クラフトマン・シップ”、職人芸や鍛錬を重ねることでたどり着く創造性が失われたと感じるリスナーも少なくないでしょう。芸術の都パリを拠点とする CKRAFT は、伝統と革新の融合で失われつつある音楽の “クラフトマン・シップ” を再度提示します。
「僕の最大の情熱のひとつは、音楽(そして芸術全般)がいかに永続的で普遍的なものであるかを探求することで、このような古代のサウンドがいかに現代の文脈の中でも共鳴しうるかということが、それをよく表していると思う。それは、一見異質な世界の間に “共通点” を見出すことなのだ」
CKRAFT がすべて人の手から生まれる “クラフトマン・シップ” にこだわるのは、音楽の、芸術の永続性を探求するため。最新のテクノロジーどころか、電気もなかった時代。そんな時代の音楽でも、今の世に響く素晴らしさ。そこに CKRAFT は感動を覚えました。そうして、CKRAFT は、現代で感動を覚える MESHUGGAH や GOJIRA のヘヴィ・グルーヴと古代の音楽が共鳴することを発見します。彼らが特に感化されたのが、グレゴリオ聖歌。その壮大で神聖なクオリティは、まさに CKRAFT が愛するジャズとメタル、そして古代と現代のギャップを埋める重要な “糸” だったのです。
「アコーディオンやサックスはおそらく、僕たちを知ったときに最初に目にするもののひとつで、CKRAFT を際立たせている。間違っているかもしれないけど、このアコーディオンとサックス・セクションを前面に出したメタル・バンドは他にないと思う。僕にとっては、破砕的なリフに対する深い愛と、僕が大切にしているアコースティック楽器を融合させ、それを力強く機能させる方法を見出したかったということに尽きる」
CKRAFT のそんな野望、野心に応える楽器がアコーディオンでした。17世紀に誕生した美しき蛇腹の楽器は現在まで、時の試練に耐えその麗しき音色を奏で続けています。まさに時代をつなぐアーティファクト。だからこそ、聖歌、クラシック、ジャズ、メタルの架け橋として、彼らにとっては完璧な楽器でした。もちろん、そのままの音量ではメタルの喧騒に埋もれてしまいます。アコーディオン奏者で今回のインタビューイ Charles Kieny はそこに現代のテクノロジーを注ぎ込みました。シンセ・アコーディオン。ラウドに生まれ変わった古来の楽器は、そうしてモダン・メタルと多様な融合を果たすことになりました。
そうして “クラフトマン・シップ” の申し子たちは、メタルのヘヴィネス、ジャズの自由、グレゴリオの不滅の旋律を借りた、精巧でパワフルなサウンドの職人として完成しました。テナー・サックスとアコーディオンの熱狂的なブラストは決して声にも劣りません。真に才能のあるインストゥルメンタル・アーティストは、言葉を一切使わずに最も壮大なイメージを呼び起こすことができるのです。
今回弊誌では、Charles Kieny にインタビューを行うことができました。「MESHUGGAH はメタルにおける複雑さと精密さの頂点を表していると思う。彼らには独自のグルーヴがあり、そのリフはこの地球上の誰も生み出したことのないものだ」 どうぞ!!

CKRAFT “UNCOMMON GROUND” : 10/10

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