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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PORCUPINE TREE : CLOSURE/CONTINUATION】


COVER STORY : PORCUPINE TREE “CLOSURE/CONTINUATION”

This Is Not a Reunion, Porcupine Tree Has Never Broken Up, Just Like Tool Is Coming Back 15 Years Later With a New Album. We Were Even Earlier, Right?

CLOSURE/CONTINUATION

「これは再結成じゃない。PORCUPINE TREE は一度も解散していないんだ。TOOL が15年後に新しいアルバムで戻ってくるのと同じことだ。私たちの方がもっと早かったくらいだろ?」
12年前、ロイヤル・アルバート・ホールのステージから降りたとき、現在の PORCUPINE TREE 3人のメンバーのうち2人は、バンドがまだ存続していると考えていました。しかし、フロントマンでギタリストの Steven Wilson だけは、少なくとも当分の間は、このバンドはもう終わりだと判断していたのです。ただ、彼はバンド・メンバーにそのことを告げませんでした。マネージメントにも。レーベルにも。一切誰にも。
Steven Wilson。この英国人音楽家のバックカタログは、多彩なソロアルバム、No-Man、Blackfield、I.E.M、Storm Corrosion、Bass Communion、そして復活を遂げた PORCUPINE TREE と、多様なプロジェクトやコラボレーションを量産しています。もちろん、他のアーティストの作品をドルビー・アトモス音響にリミックスすることもあり、スタジオにいないときはワールドツアーを行っています。
ファンの間では長年の議論があります。Wilson は休暇を取ったことがあるのだろうか?
「PORCUPINE TREE のアルバムが終わったら、次のソロアルバムもほとんど書き終えているんだ。あと今、10枚くらいのアルバムをリミックスしているんだ。それから、家庭生活も素晴らしいよ」
Wilson は1987年、XTC の “Dukes of Stratosphere” のような、英国の伝統的サイケデリック・ロックのオマージュとして、PORCUPINE TREE を始めました。しかし、彼はそこに閉塞感を感じていました。そもそもサイドプロジェクトとして始めたものが、人々が彼を知るきっかけとなり、さらに多くのものを提供することを期待されるようになったのですから。
「これは私がやるべきことではないと思い始めたんだ。たしかに、PORCUPINE TREE は私の音楽人生のすべてを支配するものではないはずだった。他のミュージシャンとも仕事をしたかったし、他のスタイルの音楽もやりたかったんだ」
Wilson は当時、ドラムの Gavin Harrison やキーボードの Richard Barbieri から、自分が注目を浴びていることに憤りを感じ、自分の音楽性が批判されているように感じたといいます。
「バンド内で特に好かれているとか、尊敬されているとかいう感じはなかった。正直なところ、メンバー間の関係はいつも少し…”冷え切っている” という言葉は適切ではないかもしれないけど…私たちは人間として全く違う存在なんだ。実際のところ、例えば私のソロ・バンドにはいつも喜びがあったのに、PORCUPINE TREE が素晴らしかったという記憶はないんだ。ソロ・バンドではとても楽しかったけど、PORCUPINE TREE では、いつも少し憤りを感じていた。私はフロントマンになるつもりもなかったし、フロントに立つのは少し嫌だと感じていたんだ。フロントに立っていると、いつもちょっと詐欺にあったような気分になるんだ。
リード・ギター・プレイヤーであることに、いつも若干の詐術的なものを感じていたんだ。それに、技術的な能力という点では、自分がこのバンドで一番弱いミュージシャンだということを強く感じていたんだと思う。でも、ほとんどの曲を書き、ほとんどのインタビューに応じ、バンドの中心的存在だった。それを感じたのは、おそらく私が初めてではないだろうがね。Roger Waters なんかは、私の大好きな PINK FLOYD の中で、明らかに一番弱いミュージシャンだからね。
ただ、バンドが活動を停止し、お互いに距離を置いたことで、人間関係はより良くなったと思う。このアルバムを作るのは、過去のどの PORCUPINE TREE のアルバムよりも楽しかったと思う。それは、自分がただバンドの一員、チームの一員であることを許したからだと思う。私はもともと、チームプレイが苦手で、支配的な性格なんだ。だから、ソロのキャリアが確立され、時間が経って、自分も少し穏やかになった今、今度は自分自身を共同作業の一部にすることが、ようやく楽しくなったんだと思う」

他のメンバーから、今回はインプットを増やしたいという申し出はあったのでしょうか?
「いや、その反対だ。PORCUPINE TREE のレコードを作るなら、君たちにも書いてもらいたいと言ったんだ。というのも、その時点(2012年、2013年)で、私はすでにソロで2枚ほどアルバムを出していたからね。だから、私が一人で PORCUPINE TREE の新譜を書いて、それを持ちこんで、歴史的にそうであったように、”みんな、PORCUPINE TREE の新譜ができたよ” と発表することに何の意味があるんだろう、というのが私の視点だった。それなら、ソロのレコードとして作ることもできるんだ。だから、私にとっては、これをやるなら、物事を変えようということだったんだ。実際に集団で書いてみようと。とはいえ、ほとんどの曲は私と Gavin、または私と Richard のデュオ形式で書かれているけど。要は、新しい曲や新しいアイデアを思いついた瞬間から、常に誰かとの共同作業が行われていたんだよ。だから、私が法律を作ったとは言わないけれど、新しいレコードを作るなら、共作でなければならないということを原則の1つにしたんだ。もちろん、彼らはそれを気に入ってくれた。ある意味、これまでそうでなかったことに不満を持っていたようだけど、今回はもうすべてをコントロールする必要性を感じなくなったんだよね。それは、私にとっても、彼らにとっても安心できることだった」
ソロでの成功は、Wilson に何をもたらしたのでしょうか?
「フロントマンとして、シンガーとして、より自信を持てるようになったと思う。皆が口を揃えて言うのは、このアルバムのボーカルはより自信に満ちていて、よりソウルフルで、より多様に聞こえるんだそうだ。これは、シンガーとして、またフロントマンとしての役割を快適にこなせるようになった結果なのだろうね。もうひとつ、私のソロ活動で特筆すべきことは、ギタリストではなかったということ。ギターは弾くけど、キーボードも弾くし、歌も歌うし、いろいろなことをやった。でも、Guthrie Govan, Dave Kilminster など、私のライブバンドにはいつも “スーパースター” 的なギタリストがいたんだ。だから、自分をギタリストと考えるよりも、フロントマン、フォーカルポイント、リードシンガーであることを許せたんだと思うんだ」

故に当時 Wilson はわざわざ彼らに何かを伝えることはありませんでした。彼はただ去り、PORCUPINE TREE は永久に未解決の案件となったのです。数年間、他の2人は Wilson が戻ってくるのを待っていました。しかし、彼がソロ・キャリアについて語り、自分たちのバンドへの関心を否定するようなインタビュー記事を読んで現状を知ります。
1982年末に David Sylvian が JAPAN から去ったときと同じ状況に陥った Barbieri は、苦い思いと傷みを感じずにはいられなかったと言います。
「批評的にも商業的にも成功したところまで来て、まさにその時点で、置いてけぼりにされた。メンバーがただ続けるのは簡単ではないよ。そこからキャリアに踏み出すまでには、かなりの時間が必要だ。でも、フロントにいる人 (Wilson) は、同じマネージャー、同じレコード会社、同じファンベース、同じ出版社、同じプロモーター、同じエージェントと一緒にやっていける。だから、彼らにとっては、とても楽なことだった。でも、同じように時間をかけて仕事をしてきた人たちを残していくわけだからね…」
Harrison は Wilson の近くに住んでいて、2012年からもしょっちゅうジャムっていたので、インタビューにはあまり動じなかったと語っています。
「まあ、先週彼とお茶を飲んだんだけど、彼は僕にそんなことは言わなかったよって思うんだ。でも、Steven からすれば、自分が始めたバンドと自分自身、彼の頭の中で起こっている2つの異なることの間で、どこか内輪もめをしていたのだと思うし、少なくともファンには、PORCUPINE TREE がいつ復活するかよりも、自分のソロ活動に目を向けてほしかったのだろうね」
Wilson が PORCUPINE TREE の将来について言及することを拒否し続けたことは、幸か不幸か彼らが不在の間にバンドの伝説が大きくなることを意味していました。彼らは “逃亡したプログ・バンド” となったのです。この言葉を嫌う Wilson にとっては、必ずしも喜ばしいことではなかったかも知れませんが。
「このプロジェクトは、2012年に私と Gavin がジャムるところから始まった。だから、もしこのアルバムを作るなら、オンラインでストリーミング配信だけにして、大々的に発表しないほうがいいんじゃないか?ライヴもやらずに、ただ音源を出すだけでいい。そして、まあ大きなショーを1回だけやるか、ヨーロッパとアメリカで大きなショーを1回ずつやるかという感じになったんだ。
でも、マネージメントやレコード会社との交渉が始まると、このした控えめなレコードを作るという計画はすべて水の泡になった。素晴らしいことだけどね。人々が興奮しているんだから。ただ、私たちが不在の間に伝説が大きくなったのには驚いたよ。2010年当時、私たちが活動を休止したころには、2022年に私たちが演奏するような会場で演奏することは決してできなかっただろうからね。アルバート・ホールで一晩やったのが、僕らのイギリスでの軌跡の頂点だったんだ。その後、ソロ・アーティストとしてアルバート・ホールで何度も公演を行ったけど、今回、PORCUPINE TREE はそのすべてを飛び越えて、ウェンブリー・アリーナをソールドアウトさせるんだ。それも1万2000人規模の。すごいことだよ。だから、”不在は心を豊かにする” ってことわざを地で行くようなものだよ」

不在といえば、昔からのファンはベーシスト Colin Edwin の不在を驚いたはずです。
「大きなストーリーがあるわけではないんだ。小さなことがたくさん重なって、このような形になった。まず、このプロジェクトの発端は、ある日 Gavin の家にふらっとお茶を飲みに行ったときに、彼がジャムをしようと言ってきたこと。彼のスタジオを見回すと、ギターはなかったけど、ベースがあった。それで私はベースを手に取ったんだ。そして、初めて一緒になった時、このアルバムの冒頭を飾る “Harridan” のグルーヴをジャムり始めたんだと思う。そんな感じで、わざわざギターを持っていかなくても、ベースを弾くのが楽しいというセッションが何度かあってね。多くのギタリストがそうであるように、私もベースを手にすると、ギタリストのように弾く傾向がある。だから、メロディーを弾いたり、コードを弾いたり、”ちゃんとしたベーシスト” がやりそうもないようなことを、かなり高いレベルでやってしまうんだ。だから、このアルバムの根幹、つまりDNAは、私と Gavin がジャムって、Colin のスタイルとは全く異なる私のスタイルでベースを弾くことによって構築されたんだ。だから、そういう意味では、3、4曲できた時点で、”ああ、じゃあ、このアルバムのベースは私だな” と、ちょっとした既成事実ができたんだ。
でも、他にもいろいろあったんだ。Colin とは何年も音沙汰がなかったしね。2010年に全員が別々の道を歩むことになったんだけど、Richard と Gavin からは定期的に、”いつ新しいことをやるんだ?” “一緒にやろうか?” “食事でもしようか?” “お茶でもしようか?” という連絡があったんだ。Colin からは、いまだに連絡がないんだよ。だから、彼は新しいことに積極的に関わろうとはしなかった。でも、私が思うに、バンドのクリエイティブな中心は常に私たちら3人だったんだ。Gavin は複雑なドラムや拍子記号、ポリリズムに興味を持ち、Richard はサウンド・デザインや質感のあるキーボードプレイに重点を置いている。この2つの要素が、私のシンガー・ソングライターとしての感性にフィルターをかけているんだ。また、最初のころの話になるけど、PORCUPINE TREE はソロ・プロジェクトとしてスタートしたから、当然私はベースを弾いていたんだよ。最初の3枚のアルバムでは、私がベースを弾いていた。その間にリリースされた曲でも、より自分のスタイルに合ったベース、よりアグレッシブでよりギターに近いスタイルでベースを弾いていた。2002年の “In Absentia” や2005年の “Deadwing” でもベースを弾いているから、まったく前例がないわけではないんだ」
ちなみに、Colin Edwin のステイトメントはたしかに Wilson の言葉を裏付けます。
「PORCUPINE TREE の新しいバンド活動や作曲セッション、再活性化の可能性については、長い間、何の兆候も示唆もなかった。私のバンド O.R.k は2019年に (Gavin の) PINEAPPLE THIEF とツアーを行い、私たちは皆仲良くなったけど、Gavin からは PORCUPINE TREE の新しい作品の可能性について全く言及がなく、他の誰からも何も言われていなかった。だから、2021年3月、Steven からメールが来て、新しいアルバムが作られていて、彼はすでにすべてのベース・パートを演奏しているので、”君の役割はない” と言われたのは驚きだったんだ。その後すぐに彼の弁護士から連絡があった。それ以来、誰からもまともな連絡はない」

これだけ長い間離れていると、ケミストリーの心配を感じるかもしれませんが、それは完全なる杞憂。ニューアルバム “Closure/Continuation” のオープナー “Harridan” を駆け抜けるトリオは完璧にシンクロしているように見えます。ベースとドラムが夏草のつるのように複雑に絡み合い、その上をキーボードが波のように押し寄せ砕け散る。それは、複雑でとげとげしく、しかしメロディアスなまごう事なき PORCUPINE TREE の音の葉です。
実は “Closure/Continuation” は、PORCUPINE TREE が終わったと思われた頃から制作されていました。つまり、Wilson と Harrison が過去10年に渡って行ってきたジャムが、ロックダウン中に再訪されたのです。Barbieri が後年 Wilson に送ったテープも、曲として仕上げられていました。3人はすべてのレコーディングを自宅で行い、それゆえに2010年以降一緒に演奏することはありませんでしたが、結局誰にも知られることなくニュー・アルバムを制作することが可能となったのです。つまり、バンドは解散ではなくあくまでゆっくりと動き続けていたのです。Wilson が説明します。
「ああ、明らかに私たちはこの作品に取り組んでいることを隠していたから、多くの人が PORCUPINE TREE は終わったんだろうと結論づけたんだ。というのも、このバンドが1枚のアルバムを作る間に、私は5枚のソロ・アルバムを作っているからね。1年、あるいは2年という長い時間をかけて心血を注いだ自分の作品のプロモーションをしているときに、誰かが PORCUPINE TREE について聞いてくれば、”もういい、バンドは終わったんだ” と答えることもあるよ。何よりもフラストレーションから。まあそのことが、私たちがチームとして一緒に音楽を作るのをやめたという、人々が抱く誤解の信憑性につながったのはたしかだけど。でも、実際には、私たちはこの作品に10年以上も取り組んできたんだよ。それが長引けば長引くほど、もし戻ってくるなら、本当に強くて、これまでやってきたことと同じくらい良いものでなければならないと感じるようになったんだけどね」
PORCUPINE TREE に戻ることは “後退” だと語っていた時期もありました。
「私のキャリアで初めて、”ファンが望むものを提供する” と見られる可能性があったから。私はその原則に嫌悪感を抱いているからね(笑)。私は常々、偉大な芸術とは…私自身が偉大な芸術家であるとは思っていないけど、少なくとも誠実な芸術家とは、期待に応えるのではなく、常に期待に立ち向かうべきであると考えている。今回の作品は、最近の記憶では初めて後者を実践していると言えるかもしれないね。私は、このレコードが “同じことの繰り返し” ではないという信念を持っている。PORCUPINE TREE のレコードの真髄を感じながらも、同時に何か新鮮なサウンドでもあるんだ。
もし、このアルバムが単にこれまでと同じようなものだと感じていたら、リリースに踏み切らなかったと思うんだ。私がベースを弾いていること、皆で一緒に作曲したこと、ヘヴィなギターが強調されていないこと…このアルバムには、これまでのアルバムとは違う点がたくさんある。もしかすると、私のキャリアを広く見れば後退しているように見えるかもしれないけれどね。でも、私のソロ・キャリアはまだ続いているし、次のレコードもすでに書き終えている。だから、その点では、今は2つのことが共存しているんだ」

伝説を築き上げたのは、SNS の発展でしょうか?それともソロ活動での成功でしょうか?
「両方だね。そのすべてが関係していると思うよ。私のソロ活動を通じて PORCUPINE TREE の知名度を上げ続けたこと、Gavin が KING CRIMSON とツアーを行い、彼を通じて人々が PORCUPINE TREE について調べるようになったこと。それに、私たちが PORCUPINE TREE でやったことは…当時は認めなかったとしても、今になって振り返ってみるとよくわかるんだけど…今でも完全にユニークに聞こえる。複雑でコンセプチュアルなロックという要素、Richard のサウンド・デザインやキーボードのテクスチャーへのアプローチ、Gavin のポリリズムへの憧れ、私のシンガー・ソングライターとしての感覚、さらには電子音楽や産業音楽、メタル音楽の要素などと融合させて、完全に直感的で無意識な方法ですべてをまとめ上げていたからね。つまり、私たちは “プログレッシブ・ロック” と呼ばれているけど、当時作られていた他のどのプログレッシブ・ロックとも違うんだ。そして、それはその後も真似され続けている。でも、私たちは今でも他の誰よりも上手くやっているよ(笑)。新譜を作った今、本当にそう思っているんだ」
PORCUPINE TREE の新作と Steven Wilson のソロ作の違いはどこにあるのでしょう?
「例えば “Closure/Continuation” を聴いて、”The Future Bites” と比較すればとてもとても違うのはすぐわかる。もちろん、共通点はあるんだけど、それは私の音楽的な個性だから。それは隠そうとしても隠せないよ。自分ではすごく変わっていると思っていることをやって、親しい友人や家族に聴かせても、私の声しか聞こえないんだから!結局、何をやっても私の音にしか聞こえないんだ。だから、自分の個性を埋もれさせたくても埋められないんだ。でも、このレコードのタイミングは面白いと思う。私にとっては、PORCUPINE TREE が戻ってくる完璧なタイミングだと感じているよ。”Cannot. Erase.” などのアルバムでは、ファンか”あれは簡単に PORCUPINE TREE のレコードになり得た” と言われるような瞬間があったんだ。でも、”The Future Bites” のようなアルバムを聴くと、そうではないと思う。あれは、私が PORCUPINE TREE と一緒に作ったようなレコードではないからね。もっとエレクトロニックで、ギターを強調せず、ロック的な要素を排除している。PORCUPINE TREE はどのような存在であれ、またどのような存在になったとしても、明らかにロックバンドのようなサウンドを奏でているから」

近年、音楽業界はアルバム文化よりも SNS、特に TikTok に力を入れています。
「私は年寄りなので、TikTok の印象は、キッチンでめったやたらと踊る主婦やスライムで遊ぶ子供たちの15秒のクリップで、それは私の義理の娘たちが見せてくれるものがほとんど (笑)。
まあ、私がこの状況を理解し、自分自身をある意味納得させようとしたのは、音楽は常に進化し、変化し、発展することに長けているから。そして、その一部は、もちろん、物事が取り残されることであり、それはあるべき姿なんだよね。レコードやCDといったフィジカル・メディアの偉大な時代、そしてアルバムという形で音楽と関わり、レコードやシングルの両面にわたって45分間音楽が連続する時代は、音楽の歴史、ポピュラー音楽の歴史の中ではほんの一瞬に過ぎず、消えつつある。20世紀半ばから存在し始めたものは、すでに廃れつつあるんだ。
人々の音楽への関わり方も、また変わってきているね。それ以前、つまり20世紀前半から遡って、人々が音楽と関わる方法は、コンサートに行くことだった。あるいは、家庭用ピアノの周りに集まって、楽譜に書かれた歌を歌ったりしていた。今、私たちは、暗い部屋で長時間音楽を聴き、レコードのスリーブや歌詞カードをじっくりと見るという概念に、信じられないほどのノスタルジアを持っている。20世紀後半以前の人々にとって無意味だったように、これからの人々にとってそれは無意味なんだ。
20世紀後半にロックがジャズにしたことを、今、アーバン・ミュージックがロックにしている。そうでなければならない。将来、同じようなことをするものが出てきて、アーバン・ミュージックもカルト的な存在になる。カルトミュージック、アンダーグラウンド・ミュージックになるだろう。今、アーバン・ミュージックは、ロックが50年間そうであったように、メインストリームの最前線と中心を担っている。50年間ロックがそうであったように。
私はそれをできるだけポジティブに捉えようと思っているんだ。音楽が進化し、変化し続け、私たちの音楽への関わり方もまた進化し、変化し続けるというのは素晴らしいこと。いずれにせよ、私はそれを認めるよ」
Wilson は近年、明らかに “プログレ” のタグから距離を置きたがっていました。
「意識的に分析しようとするのではなく、自然にそうなるようにやっていたのはたしかだよ。例えば、”The Future Bites” のようなアルバムに取り組むとき、最初から “何か違うことをしたい” という明確な意志があったことを、私は認めざるを得ない。プログレッシブ・ロックの世界とは全く関係のないレコードを作りたかった。それは意図的な再発明ではなかったけれど、それでも無意識的な再発明の試みであり、それは成功したと思う。一方、PORCUPINE TREE には、そのような考え方はまったくない。単純に、これが私たちが集まってやることなんだ。どう位置づけるか、どう宣伝するか、どう売り込むか、などということは考えていない。つまり、自分のキャリアのある時点になれば(私はプロとしてもう30年やっている)、自分自身の音楽の世界を作り上げた人間として見られる権利を得たと強く信じているんだよ。そして、そんなアーティストにこの “ジャンル” という考え方は必ずしも適用されるべきではないと思っているよ。
だってそうでしょ? ボウイやザッパ、ケイト・ブッシュのようなアーティストについて考えるとき、ジャンルについて考えるかい?そうではないでしょう?私はそうではなく、彼らが “デヴィッド・ボウイの音楽” ”ケイト・ブッシュの音楽” を作っていると考えるだけだよ。30年やってきて、いろんな音楽を作ってきて、自分がひとつのジャンルに簡単にカテゴライズされるという考え方は、もう当てはまらないはずだと信じたい。”ジャンル” から解き放たれたとね」

“Closure/Continuation”。このタイトルには、バンドの将来に対する彼らの不安が反映されています。
「無理にこのアルバムを作る必要はなかったんだ」と Wilson は言います。「アメリカ・ツアーのために1,000万ドルのオファーを受けたから戻ってきたというわけでもない。ソロ・キャリアが失敗したから戻ってきたわけでもない。私たちは PORCUPINE TREE を再起動することが楽しいと思ったし、良いマテリアルを持っていた。それがアルバム・タイトルにも反映されていると思う。これが終幕なのか、それともバンドのキャリアを継続させるための新たな一歩なのか、僕には純粋に分からないんだ。”終幕 “であれば、本当にいい方法だと思うよ。あるいは、1年後に電話をして、楽しかったね。もう一回やるか? となるか。私の推測では、おそらく前者だと思う。たぶん、これが僕らが作る最後のレコードで、たぶん最後のツアーになると思うんだ。
長い間、レコードを作るなら、”これはカタログに何を加えるのか” という質問を自分に投げかけなければならないと信じてきた。このレコードを作る目的は何なのか? 同じようなことを繰り返すのは嫌だとね。というのも、多くのバンドが、単に同じものの繰り返し、同じものの繰り返し、同じものの繰り返し…AC/DC 症候群と呼ばれるような、音楽の遺産に何も加えない、ほとんど無意味なレコードをカタログに追加するようなサイクルに陥っているように思うから。私は AC/DC が大好きなので、AC/DC のことを取り上げるのは申し訳ないのだけど(笑)、彼らは私が思いつく限りその最高の例だと思っている。それは素晴らしいこと。でも、この新譜はカタログの中でその存在を正当化するものだと思うし、バンドのサウンドを新しくしたように感じる。そして、次はそれを再び見つけることができると感じなければならないだろう。だから、私たちはドアを閉めないよ。でも、これが最後のレコードだとしたら、最も重要なのは、本当に力強い方法で本を閉じることだと思うんだ。Gavin と Richard と話したんだけど、みんな同じように、最後に作った[2009年の] “The Incident” は最高傑作ではなかったし、特に良い終わり方だとは感じていなかったんだ。悪い作品ではないけれど、ベストな作品ではなかった。だから、もし “Closure/Continuation” が私たちの最後のレコードになるのなら、それについては良い気分でいられると思う」
Barbieri がつけ加えます。
「これが終わったら Steven はソロ・モードに入るだろうね。そして、それが彼をどこに連れて行くかによる。PORCUPINE TREE は Steven がその一員でありたいと思うからこそできることなんだ。僕は、このまま解散してしまっても構わないと思っているよ。それならとても快適だ。だって、いいアルバムができたんだから。そして、僕ら3人の間で良い雰囲気のまま終わることができると思うんだ。ネガティブな感情なんてないだろうしね」

とはいえ、このグループの中にいるのは簡単なことではありません。Wilson には、どんなバンドでも、実際に演奏する音楽はメンバーの好みの交点に限定されるという考えがあり、実際はそれがいかに野心を制限しているかについて話しています。
「PORCUPINE TREE の最初のピリオドが終わるころには、PORCUPINE TREE の曲の典型的な形が出来上がっていたんだ。だから最後のアルバム、最後のツアーに至るまでには、私にはもう面白くなくなっていた」
それは、他のメンバーにとっても同様でした。Harrison はソウル、ファンク、ジャズを愛するドラマーですが、かつての PORCUPINE TREE にそれが入り込む余地はありませんでした。Barbieri も、自身の好む “非常にミニマルでゆっくりと進化するアトモスフェリックなアプローチ” が、他の2人にとって大きな関心事でないことに気づいています。だからこそ、少なくとも、”Closure/Continuation” は、Wilson が主導し他の2人の貢献が少ないこれまでの PORCUPINE TREE ではなく、真の共作で大部分が構成されている、全員が楽しめたアルバムなのです。
実際、ラインナップの変更を強調するかのように、アルバムの幕開けは “Harridan” での Wilson のベースラインが新鮮な攻勢をかけてきます。このエピックはアルバムに収録されている複雑なロックの一面を象徴し、キットの裏側にいる Harrison の驚くべき名人芸をも感じ取れます。同様に、”Rats Return” や “Chimera’s Wreck” はアインシュタインの方程式のように複雑な数学ロックで、”Herd Culling” のコーラスでは、ギターのリフを核兵器の中に封じ込めたような激しさを生み出します。そしてこの大半は、Wilson がベースから始めた音楽なのです。
一方で、PORCUPINE TREE の音楽が安易なジャンル分けに抵抗する理由を示す曲も存在。”Dignity” のアコースティック・ギターは、Barbieri の鍵盤が発するナノ粒子の渦に包まれていますし、”Walk the Plank” では、痛々しいボーカルと壮大なコーラスをフィーチャーし、Wilson のソロシングル “King Ghost” や Barbieri の魅力的なソロ作品に接近。また、デラックス・エディションのボーナス・トラックとして収録されている “Love in the Past Tense” は、シンバル、キーボード、ギターが奏でるキメ細やかな音色にのって、幽玄の世界へと誘われるような壮大さが溢れています。
ただし、この豊富な音楽のためには必要とされる努力もあります。64歳の Barbieri は、自分の集中力に悩んでいます。58歳の Harrison にとっては、ドラムの肉体的な負担がより切実な問題となってきています。

「このレベルの音楽をいつまで続けられるか。今までやっていた他のバンドでは、こんなにヘヴィーでフィジカルな演奏は必要なかったんだ。PORCUPINE TREE は、常に最もハードな仕事をこなしてきた。2014年からメンバーとして参加している KING CRIMSON では、メンバーの多くが70歳をはるかに超えていたけど、70代でこうしてドラムを叩いている姿は想像できないよ…」
それでも、彼らの努力は報われています。Harrison のドラムは物理的に不可能と思われる正確さと雷鳴が混在し、Brian Eno 以来最高のサウンドスケーパーである Barbieri は水彩画家のように音に色を落とし、Wilson はギターとベースで2人のアイデアを推進し、ボーカルを自分で物語を描きます。
PORCUPINE TREE が再びファンの前でライブをするときは、これまで以上に大きな観衆を前にすることになるでしょう。そして、ツアーが終わり、3人がステージを去るとき、それが最後となるかどうかは誰にもわかりません。Harrison は、「もしかしたら、これで一区切りかもしれない」と言います。「2022年に解散するとは言っていないよ。でも、2010年は奇妙な終わり方、あるいは終わり方ではない終わり方だった。だから、もし、そうなるならね」
ただし、UK オフィシャル・チャートのデイリー・アルバムで No.1を獲得し、Wilson の考えも少し変化しつつあるようです。
「もう1枚アルバムを作る可能性は十分にあると思う。実際、Richard とそのことについて話していたんだ。2週間前にドイツでベルリンでプロモをやっていたんだけど、誰かにその質問をされたんだ。私はこう思ったんだ。まだやるべきことがあると。”Walk the Plank” みたいな曲は、我々が最後に作った曲の一つなんだけど、ギターが全く入っていなくて、私がどんどん電子音楽に移行していることを反映しているような曲なんだ。PORCUPINE TREE のアルバムで、ギターではなくキーボードだけにフォーカスしたものを作れないかと考えたんだ。何か違うものでなければ、次のアルバムを正当化することはできないだろう」

参考文献: THE GUARDIAN:Reunited prog-rockers Porcupine Tree on surviving their rift: ‘You can’t help but feel bitter

UNDER THE RADAR :Porcupine Tree’s Steven Wilson on “Closure/Continuation” “Don’t call it a reunion…”

SUPER DELUX EDITION :Steven Wilson on the return of Porcupine Tree 

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OU : ONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE OF OU !!

“I Am The Only Non-Chinese In The Band, But We Are a Chinese Band Through And Through. So For There To Be Chinese Lyrics And Some Chinese Sensibilities In The Music Is Just Natural.”

DISC REVIEW “ONE”

「中国、特に北京の音楽シーンは豊かで多様性に富み、活気に満ちているよ。だけど OU は政治には関与しないんだ」
北京のジャズ・シーンで育まれた OU(オー)は、定型化した現代のプログ世界、その停滞したエネルギーに真っ向から歯向かうデビュー作 “One” でメタル異世界のルール無用を叩きつけました。
「中国に来て10年になる。私に言えることは、(このバンドの3人のメンバーも含めて)私にはここに心から愛する友人がたくさんいて、彼らは私にとってまさに家族のような存在だということなんだ」
作曲家で偉大なジャズ・ドラマーでもあるニューヨーク出身の Anthony Vanacore は、大規模な中国ツアーをきっかけに、彼の地の文化や言語に惚れ込み移住を決断します。杭州に移り、”客” ではなくその場所の人間として暮らすうち、彼は外国からみれば統制や不自由の中で暮らす人々の本来備わった人間味や優しさに触れていきました。文化が違えど、人は、個人個人はそんなには違わない。それは音楽も同じです。
「O はバンドの4人の血液型がO型だからで、その後 OU に変えたんだ。ピンイン(中国語のローマ字表記)では O と同じ発音で、”謳” という漢字が対応していて、それには “唱える” という意味があるから、このバンドにはとても合っているんだよ」
中国の “人” と触れ合いはじめた Anthony は北京音楽シーンの素晴らしさにも気づきます。そうして、クラブや本職の音楽教師から仲間を募り、数年の歳月を経て、それぞれのメンバーが特別な調味料を加える複雑な音の中華料理 OU が完成します。
目まぐるしくも自由自在のリズムから幽玄なアルペジオの残響、そして催眠術のように正直で率直なヴォーカル・パフォーマンスまで、この驚くべき料理 “One” にはプログとアンビエント、そしてメタルの旨味が詰まっています。もしかしたら、三国志を終焉に導いたのは彼らなのでしょうか。陽気さ、静謐さ、獰猛さを見事 “一つ” に調和させた OU は、さながら蒸してもよし、焼いてもよし、揚げてもよしの餃子を3000年の歴史から進化させる抜きん出た料音人だと言えるでしょう。
「私はバンド内で唯一の非中国人だけど、それでも私たちは根っからの中国のバンドなんだよね。だから、中国語の歌詞や中国的な感性が音楽に入っているのは、ごく自然なことなんだよ」
OU は、現代的なプログレッシブ・アクトへの強い愛情を示しながらも、彼ら独自のサウンドを切り開いてきました。ハイパー・ポップな HAKEN のように、OU は “Farewell 夔” や “Prejudice 豸” の重く複雑怪奇なグルーヴに、常に嫋やかで優雅なシンセの絹地を織り込んでいきます。まさに張飛、針に糸を通す。この泰山と長江のような美しくも悠久の対比は Devin Townsend や THE GATHERING のキネティックな作品にも匹敵し、さらに貂蝉のように美しく舞うしなやかな Lynn Wu の呪文はこの静謐でしかし刺激的なアートにえもいわれぬ独自性を加えています。
「アジアの伝統音楽には、欧米ではあまり知られていない、未開発の感情や質感がたくさん備わっていると思うんだ。アジアの伝統音楽が、アジア以外の国の音楽にもどんどん浸透していくのは時間の問題だと思っているよ」
実際、中国らしい Lynn の抑揚とゆらぎのある音は、OU を Inside Out のようなメジャーに引っ張る原動力となったはずです。聳え立つ “Mountain 山” では、Lynn の声をマルチトラックで聴かせながら、トラックごとに感情をエスカレートさせる絶妙なマルチバース空間を創造。一方で、”Ghost 灵” “Light 光” の幽玄なセクションで彼女のノイズは言葉ですらなく、最小限の伴奏として存在し、ビョークのような実験的アーティストの手法に似た推進力として扱われています。
他にも例えば、OU を聴いて、Enya, LEPROUS, LTE, RADIOHEAD, PORTISHHEAD, MASSIVE ATTACK といったバンドの姿が目に浮かぶのは自然な感性でしょうが、それだけでは十分ではありません。ここには東洋的な無調や不協和が西洋のモダンなポリリズムと織りなす、シルクロードのタイムマシンが洋々と乗り入れています。
もちろん、熟練したジャズ・ミュージシャンである、Anthony とベーシスト Chris Cui によるリズムのバックボーンは、タイトで整然としながらも混沌としたロックの側面を自在に謳歌。ギタリスト Jin Chan の神秘的な舞踏は二人のタクトで華麗に舞い上がります。まさに指揮者を失った兵ほどみじめなものはない。
老齢化したプログの巨人たちがいつまでも黄忠でいられる保証はありません。OU は国際的な聴衆から切り離されがちな中国にありながら、いやむしろあったからこそ、復権を願うプログ世界の、そしてアジアの希望となりました。中国では食事を少し残すのが礼儀とされていますが、”One” の音楽を一欠片でも残すことは大食漢のプログマニアには実に難しいミッションとなるでしょう。
今回弊誌では、Anthony Vanacore にインタビューを行うことができました。「私はニューヨークのフラッシングに住んでいたんだけど、この街にはかなり大きな中国人コミュニティがあってね。ツアーから戻るとその場所と交わりながら、自分の生活環境に新たな視点が生まれ、中国の文化や言語にますます魅了されるようになっていったんだ」 どうぞ!!

OU “ONE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【YAWN : MATERIALISM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TORFINN LYSNE OF YAWN !!

“We Are Also Obviously Very Into Metal, And We Often See a Lot Of «Standardized» Ways Of Producing And Composing This Kind Of Music Today. We Try To Challenge These Ways By Including More Inspiration From Jazz And Contemporary music.”

DISC REVIEW “MATERIALISM”

「YAWN (あくび) というバンド名は、ある意味、音楽業界の “モダン・スタンダード” に対する反動なんだよ。長年音楽教育を受けてきた僕たちは、音楽的に “こっち” や “あっち” の方向に進みたい場合、ジャンルの慣習に基づいたすべてのルールに従ってきていて、かなり疲れていたんだよね。それで、一般的なレシピに従うことなく、何か新しいものを提供したいと心から思っていたんだ」
あらゆる音楽ジャンルには、すべて “規範” “標準” “ルール” が存在します。当然でしょう。ある種の雛形がなければ、ジャンルという概念それ自体が崩壊してしまうのですから。もちろん、現代のインストゥルメンタル、エクストリーム・ミュージック、プログレッシブというジャンルにもその雛形は存在します。MESHUGGAH はそのすべてに多大な影響を与えた巨人にちがいありません。
「ハイゲインの8弦ギター、ローチューンのドラム、そしてプロダクションの考え方など、MESHUGGAH は僕らのバンドにとって圧倒的に重要な音楽的影響を与えた存在だよ。彼らは間違いなく僕たちのヒーローで、もし彼らと一緒にツアーをする機会があれば、おそらく僕たちは心臓発作を起こすだろうね」
YAWN はしかし、その場所からさらに進んで新しいダイナミックな振動をもたらしてくれます。同じような、すこし奇妙な美的関心を持つ人々ならば、このバンドが現代のプログ・メタル世界にモダンなジャズの即興やノイズを導入し、地獄より重いリフ、複雑怪奇なリズムのパズルに新鮮な息吹を吹き込む開拓者であることを即座に認めるはずです。このポリリズムの両輪は次にいつ出会うのだろう、この不思議な響きはどこの伝統音楽だろう、少しづつ、ほんの少しづつ速度を変える肉感的なリズム、そして半音階さえ超えていく四分音の衝撃。
「Djent における共通のモラルは、とても刺激的で高揚感を与えてくれるものだと思うな。”ロックスターなんて論外、みんなでとにかく残虐で奇妙なリフを作ってインターネットにアップしよう” という考えを共有しているように思えるね。このような考え方が、クールな新しいバンドを生み出しただけでなく、現代の “ジェント・ベッドルーム・ミュージシャン” という文脈が、毎日出てくる素晴らしいソフトウェア、ギター・ギア、ドラム・サンプルなどのきっかけになったのだと思っている」
興味深いことに、多くの “MESHUGGAH 崇拝者” とは異なり、YAWN は Djent というムーブメントを抱擁し、すんなりと肯定しています。もちろん、彼らの目指す即興性、音の肉感と Djent の “定型”、機械化は同じ MESHUGGAH の申し子でありながら180度異なる考え方。それでも、”ロックスター” から遠く離れた場所にいるというある種の疎外感、反逆性、DIY の精神は共通していて、エレクトロニカや新機材という文脈からも多大な恩恵を受けていることに違いはないのです。
「どの曲もエンディングがあり、でもそれが次の曲の始まりになっていて、最初から最後まで通して聴くことができるように構成されているよ。このアルバムを制作しながら、僕たちの音楽世界のすべてがこのアルバムに込められているような気がしたんだよね。自分たちの音楽を表現するときに、物質の4つの状態 “固体、液体、気体、プラズマ” と多くの類似点があることに気づいたんだ」
37分のデビューアルバム “Materialism” は、アンビエントなサウンドスケープ、即興のギターソロとブルータルなブレイクダウン、感染性のグルーヴと心を溶かすリズム、実験的なエレクトロニクスを並列繋ぎで並び立て、これらすべての要素を論理的かつ音楽的な快適さを併せ持つ驚きのルービック・キューブとして組み合わせているのです。凍りついた永久凍土の即興音楽は、北欧で噴火するメタルの火山によって見事に溶解をみました。”唯物論” とはすなわち、スタイルやサブジャンルに巣食う特定のルールを破ることを意味していて、彼らは MESHUGGAH を “マトリックス” の世界へと引き込むのに十分な “仮想現実” とハッキングの技術を備えているのです。
今回弊誌では、ギタリスト Torfinn Lysne にインタビューを行うことができました。「僕たちは明らかにメタルが大好きなんだけど、今日、この種の音楽の制作や作曲はある意味 “標準化” された方法だと感じていたんだよね。僕たちは、ジャズや現代音楽からより多くのインスピレーションを得ることで、こうした方法に挑戦しようとしているんだよ。だから、一般的な “モダン・メタル” サウンドを再現しようとするのではなく、自分たちの方向性に沿って音楽を制作しているんだ」 どうぞ!!

YAWN “MATERIALISM” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MENTAL FRACTURE : DISACCORD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ORI MAZUZ OF MENTAL FRACTURE !!

“For Us, “Prog” Is Mind-Bending Music That Moves You Emotionally And Breaks Your Brain Logically. It Can Incorporate Any Genre.”

DISC REVIEW “DISACCORD”

「僕たちにとって “プログ” とは、感情を動かし、論理的に脳を破壊するような、心を揺さぶる音楽だよ。そして、どんなジャンルでも取り入れることができる音楽だ」
“プログレ” の沼にハマった現代のファンは、PINK FLOYD, YES, GENESIS, ELP, KING CRIMSON といった60年代後半から70年代半ばにかけての全盛期を懐かしむか、もしくは DREAM THEATER や PORCUPINE TREE, OPETH といった90年代に起こったジャンルの混交を “新しい” ものとして “寛容に” 受け入れるかのどちらかがほとんどでしょう。では、本当に新しい “ブログ” の形やアーティストが登場したとしたら、受け入れられる余地はもうこの場所に残されてはいないのでしょうか?
プログレッシブ・ミュージックは常に、あらゆる形のロック、フォーク、ジャズ、クラシック、メタルまで、幅広い音楽の領域を平等に愛おしく抱きしめる世界でした。そして実は、年月の経過と音楽地図の拡大は、そのパレットをさらに奥深く多様化しようとしています。イスラエルからオリエンタルな空気と感情の起伏を運ぶ、喜怒哀楽の交差点 MENTAL FRACTURE はまちがいなく、プログの次世代化を推し進める起爆剤です。
「僕たちは、インスピレーションを与えてくれるあらゆる音楽アーティストから、好きな要素を取り入れているんだよ。そうすることで、僕たちの感情を揺さぶる音楽言語が生まれるんだよね。ショパンのメロディーやラフマニノフのクライマックス、CAMEL や PORCUPINE TREE のメランコリー、OPETH の複雑さと激しさ、そして SNARKY PUPPY や Esperanza Spalding にインスパイアされたジャジーなハーモニーも聴くことができると思うよ」
YES や KING CRIMSON といった “プログレ” を定義したバンドの特徴。その核心に、メロディーとテンポ、そして構造の複雑さ、名人芸が据えられていたのは否定できない事実でしょう。多くの場合、それは “More is Better”、”多ければ多いほど良い” という足し算の原則に基づいていたのかもしれませんね。もちろん、それは極論で、そこだけにスポットが置かれていたわけではありませんが。
後に PORCUPINE TREE のようなアーティストが人気を得たのは、その複雑さがやり過ぎにならないよう、線引きをするタイミングを心得て、マイナスの美学を尊んだおかげであったとも言えるのではないでしょうか。そして、MENTAL FRACTURE は時代や場所を超越しながら、その音楽的な算数の巧みさで明らかに群を抜いています。
「オリエンタルな音楽は、それだけでは万人受けはしないかもしれない。だけど、メタルの中に取り入れると、聴衆の心を激しく揺さぶることができるんだよね。僕たちは、微妙な形ではあるけれど、確実にこのテイストを作曲に使っているんだよ」
“Inception of Fear” や “Clockwork” といった名曲群には、プログの先人に贈るリスペクト、90年代と中近東が混ざり合った濃密なメランコリー、現代ジャズの知的なハーモニーと共に、エスニックなパーカッションやアコースティックな響きが添えられています。それはさながら、地中海、紅海、死海という3つの海に面するイスラエルの多様な音景色。Ori Mazuz のファルセットを活用した情熱的な歌唱と、美しくも不気味でピーキーな鍵盤の響きはさながらモーゼのように、広大な “Disaccord” の海を自由自在に闊歩していくのです。
それにしても、KING CRIMSON が “Red” で達成した憂鬱な夢を前半で印象づけながら、大団円 “Hearts Of Stone” で DREAM THEATER のあの傑作 “Metropolis Pt.2” をリクリエーションするその度量はあまりに広大。決して明からさまなオリエンタル・フレーズを使用しているわけではないにもかかわらず、絶対的に感じる中東の風も白眉。
今回、弊誌では Ori Mazuz にインタビューを行うことができました。「僕たちはほぼ毎年紛争を経験していて、そのたびに、僕たちの現実がいかに愚かなものであるかを思い知らされるんだ。僕たちにできることは、ただひとつ、平和を願うことだけだ。だって僕たちは皆、結局のところ人間であり、他人の政治的野心や神の名のもとに死ぬべきでは決してないのだから。だから…僕たちの心はウクライナの人々とともにあるよ」 ネクタイにベスト、スラックスのプロモ写真、そして倒されたキングのチェス盤と沈みゆく太陽。思索に思索を重ねるような素晴らしいバンドの登場ですね。どうぞ!!

MENTAL FRACTURE “DISACCORD” : 10/10

INTERVIEW WITH ORI MAZUZ

Q1: First of all, you were born in Israel. From jazz, classical music, to metal, recently Israeli artists are leading the music scene. How does your being born and raised in Israel affect your music?

【ORI】: The Israeli music scene is extremely diverse, having a lot of great artists in many genres and styles. This means you are very likely to encounter a show by a great band that does something a bit different than what you usually listen to. Such a scene really complements our style of composition, as we love taking even the tiniest bits of inspiration from music that is sometimes completely unrelated to us stylistically.

Q1: 近年、イスラエルはジャズからメタルまで音楽シーンを牽引する国の一つとなっていますね?そういった環境はあなたたちにどんな影響を与えてきましたか?

【ORI】: イスラエルの音楽シーンは非常に多様で、様々なジャンルやスタイルの素晴らしいアーティストがたくさんいるんだよ。つまり、自分が普段聴いている音楽とはちょっと違う、素晴らしいバンドのライヴに出会える可能性が非常に高いんだよね。
こういったシーンは、僕たちの作曲スタイルにとても合っているんだ。僕たちは、時にはスタイル的に全く関係のない音楽から、ほんのわずかでもインスピレーションを得ることが大好きなんだからね。

Q2: How did Mental Fracture come to be? Where did your band name come from?

【ORI】: In 2010 Ori, Yogev and Hai were performing in a school band in Rishon LeZion. We felt that we have great chemistry. Ori was experimenting at the time with writing original music and arrangements. Inspired by bands like Dream Theater, Opeth and Porcupine Tree, we thought it would be cool to form our on progressive rock band! Philip, who studied at the same high school as Yogev and Hai, joined the band and we started composing “Genesis” and “The Mind’s Desire” together (Which were released on the 2019 EP). Although we have collected material for many years up to this day, life got in the way and we couldn’t be an active band until now, 12 years later, when we have finally released “Disaccord”.

Q2: MENTAL FRACTURE 結成の経緯を教えていただけますか?

【ORI】: 2010年、Ori, Yogev, Hai の3人は、リション・レジオンのスクールバンドで演奏していたんだ。僕たちは、素晴らしいケミストリーを感じていたよ。Ori は当時、オリジナル曲の作曲やアレンジを試行錯誤していたんだ。DREAM THEATER, OPETH, PORCUPINE TREE といったバンドに触発されて、自分たちでプログロック・バンドを結成したらクールだろうと思ったんだ!
そうして、Yogev, Hai と同じ高校で学んだ Philip がバンドに加わり、一緒に “Genesis” と “The Mind’s Desire” の作曲を始めた(これは2019年のEPでリリースされた)。今日まで長年に渡ってマテリアルを集めてきたものの、生活との両立はなかなか難しくてね。なかなかバンドとして活動することができず、12年後の今、ようやく “Disaccord” をリリースすることができたんだよ。

Q3: What is the metal/rock scene like in Israel? What’s the hardest part of being in a metal/rock band in Israel and the Middle East?

【ORI】: Israel has an amazing metal community with a variety of sub-genres. Prog is one of them, with bands like Orphaned Land, Subterranean Masquerade, Scardust and many more. The audience here loves sophisticated music and loves to get wild on live shows! The hardest part, for every musician, is to be noticed and reach this audience.

Q3: 中近東でメタルやロックをやることの難しさは何でしょうか?

【ORI】: イスラエルには、様々なサブジャンルを持つ素晴らしいメタル・コミュニティがある。プログもその一つで、ORPHANED LAND, SUBTERRANEAN MASQUERADE, SCARDUST といった素晴らしいバンドがいるんだ。
イスラエルの観客は洗練された音楽が好きで、ライブで盛り上がるのが大好きなんだよ!
ミュージシャンにとって最も難しいのは、そういった観客の目に留まり、その目に届くようになることなんだよ。

Q4: Your melodies are really attractive and engaging. Regarding the Middle East, I’ve had interviews with bands like Orphaned Land. Riverwood and Myrath. They were very oriental in their music, sometimes incorporating Middle eastern folk instruments. There is a definite oriental flavor to your music as well, would you agree? Why are Middle Eastern melodies so appealing to the world?

【ORI】: The bands mentioned really opened our minds about oriental music, as it may not appeal to everyone on its own, when incorporated in metal music it can really touch the metal audience. We are definitely using this flavor in our composition, although in a subtle way.

Q4: ORPHANED LAND, RIVERWOOD, MYRATH といった中近東のバンドは、オリエンタルなメロディーや楽器を巧みに楽曲に取り入れて人気を博しています。
あなたたちはそこまであからさまではないにしろ、中近東の憂いのようなムードが楽曲を一層素晴らしいものに引き立てていますね?

【ORI】: 君の挙げたバンドは、僕たちがオリエンタル・ミュージックに目覚めるきっかけとなった人たちだよ。
オリエンタルな音楽は、それだけでは万人受けはしないかもしれない。だけど、メタルの中に取り入れると、聴衆の心を激しく揺さぶることができるんだよね。僕たちは、彼らよりは微妙な形ではあるけれど、確実にこのテイストを作曲に使っているんだよ。

Q5: I have interviewed various Israeli artists, Orphaned Land, Scardust, Subterranean Masquerade, Nili Brosh, etc., and most of them mentioned their prayers for peace. Israel is a country where war is right around the corner…could you tell us your stance on the Israeli-Palestinian issue and the recent Russian aggression?

【ORI】: The Israeli-Palestinian issue is really complicated. Too complicated to the point that trying to explain any side of it in such a short format would not do it justice. We are experiencing a conflict nearly every year and each time it happens it enlightens how stupid our reality can be. The only thing we can do is to hope for peace. We are all human beings after all and we do not deserve to die for one’s political ambitions or in the name of god. Our hearts are with the people of Ukraine.

Q5: ORPHANED LAND, SUBTERRANEAN MASQUERADE, SCARDUST といったイスラエルのバンドにインタビューして感じたのは、彼らの平和に対する願いでした。まさに戦争がすぐそばにある国だからこそなんでしょうかね…

【ORI】: イスラエルとパレスチナの問題は本当に複雑なんだよ。あまりに複雑すぎて、こうした短いフォーマットで説明しようとしても、正当な評価は得られないだろうな…。
僕たちはほぼ毎年紛争を経験していて、そのたびに、僕たちの現実がいかに愚かなものであるかを思い知らされるんだ。僕たちにできることは、ただひとつ、平和を願うことだけだ。だって僕たちは皆、結局のところ人間であり、他人の政治的野心や神の名のもとに死ぬべきでは決してないのだから。だから…僕たちの心はウクライナの人々とともにあるよ。

Q6: I asked about the war because “Disaccord” seemed to me to be an album about the division of the world and its horrors. Can you tell us about the artwork Chess and the concept of the piece?

【ORI】: “Disaccord” is an album about the division between a person and themselves. Every song is telling a story about a person dealing with their cognitive dissonances. The artwork shows a chess board with only white pieces, and with the king fallen down, which symbolizes a person check-mating themselves.

Q6: 戦争について尋ねたのは、”Disaccord” “不一致、不調和” というアルバム自体、そしてチェスのアートワークが、世界の分断とその恐怖について描いていると感じたからです。

【ORI】: “Disaccord” は、他人と自分との分裂、分断をテーマにしたアルバムなんだ。すべての曲は、認知的不協和に対処する人についての物語を語っているんだよ。アートワークは白い駒だけのチェス盤で、キングが倒れていて、これはつまり人が自分自身をチェックメイトしているってことを象徴しているんだね。

Q7: Still, “Disaccord” is a really great album! I’ve rarely heard progressive music as emotional as this one! Musically, we can hear influences like Opeth, Camel, Porcupine Tree, Rush, etc. Could you please talk about your musical roots?

【ORI】: Thank you! We take what we like from every musical artist that inspires us. It creates a musical language that really moves us emotionally. Ori was classically trained on the piano, so you can hear influences in the melodies from Chopin and the drama buildup and climax of Rachmaninoff. You can hear the melancholy from Camel and Porcupine Tree and the complexity and fierceness of Opeth, and also jazzy harmonies inspired by Snarky Puppy and Esperanza Spalding. The album was self produced, mixed and mastered by Ori and Yogev, so the sound of the album is the sound of the band.

Q7: それにしても、これほどエモーショナルなプログ・ミュージックはめったにお目にかかれないですよ!
OPETH, CAMEL, PORCUPINE TREE, RUSH といったバンドからの影響に、あなたたち独自の感情的な爆発が加えられて傑出した作品となりましたね?

【ORI】: ありがとう!僕たちは、インスピレーションを与えてくれるあらゆる音楽アーティストから、好きな要素を取り入れているんだよ。そうすることで、僕たちの感情を揺さぶる音楽言語が生まれるんだよね。
Ori はクラシック音楽のピアノ教育を受けてきたから、ショパンのメロディーやラフマニノフのドラマの盛り上がり、クライマックスに影響を受けているのがわかると思う。CAMEL や PORCUPINE TREE のメランコリー、OPETH の複雑さと激しさ、そして SNARKY PUPPY やEsperanza Spalding にインスパイアされたジャジーなハーモニーも聴くことができると思う。
アルバムは Ori と Yogev によるセルフプロデュース、ミキシング、マスタリングだから、このアルバムの音がそのままバンドの音だと捉えてもらっていいと思うな。

Q8: I recently interviewed a British prog band called Azure, and they said “We See ‘Prog’ As a Genre Where Anything Can Happen, Whether It Be The Dramatic Fantasy Storytelling And Guitar Harmonies Of Iron Maiden, Or The Slithering Shred Melodies Of Steve Vai, Or Even The Sugary And Bouncy Energy Of The 1975”. So, What does “prog” mean to you?

【ORI】: For us, “Prog” is mind-bending music that moves you emotionally and breaks your brain logically. It can incorporate any genre.

Q8: 最近、英国の AZURE というバンドにインタビューを行ったのですが、彼らは “プログを何でも起こり得る音楽” と捉えていると話していましたよ。

【ORI】: 僕たちにとって “プログ” とは、感情を動かし、論理的に脳を破壊するような、心を揺さぶる音楽だよ。そして、どんなジャンルでも取り入れることができる音楽だ。

EIGHT ALBUMS THAT CHANGED MENTAL FRACTURE’S LIFE

ORPHANED LAND “MABOOL”

A mediterranean metal masterpiece, where each song has a musical narrative and climax, and shows that metal can make you feel very happy too. This album really opened my mind to oriental and jewish music.

地中海メタルの傑作。音楽的な物語とクライマックスがあり、メタルがとても幸せな気分にさせてくれることを教えてくれる。このアルバムは、僕の心をオリエンタルとジューイッシュ・ミュージックへと導いてくれた。

MAJOR PARKINSON “SONGS FROM A SOLITARY HOME”

I never thought music can be this chaotic and coherent at the same time. They craft melodies and rhythms like no other band I know of and they are my favorite band to this day.

音楽がこれほど混沌とし、同時に首尾一貫したものになるとは思ってもみなかった。他のバンドにはないメロディーとリズムを作り上げていて、今日までで一番好きなバンド。(ORI)

CELTIC FROST “TO MEGA THERION”

I made my very reluctant parents buy this early extreme metal classic when I was just 5 years old. A quarter century of
listening to extreme metal followed, as I really enjoyed it against all odds.

5歳の時、嫌がる親に無理やり買わせた、初期のエクストリーム・メタルの名作。その後、エクストリーム・メタルを聴くきっかけになったね。

DREAM THEATER “SYSTEMATIC CHAOS”

While it isn’t even my favorite album from the band today, it was my first real introduction to prog metal, and it
melted my tiny teenage mind at the time.

僕のお気に入りというわけでもないけど、プログメタルに初めて触れた作品。10代の小さな心を溶かしてくれたね。(PHILIP)

MAGIC PIE “THE SUFFERING JOY”

Similarly to our album Disaccord, this album discusses psychological and emotional issues of humans. Musically, it has an enormous amount of content, heavy riffs, among soft parts. I believe Magic Pie is one of the most underrated bands out there.

僕らのアルバム “Disaccord” と同様に、このアルバムも人間の心理的、感情的な問題を論じている。音楽的には、ソフトな部分の中にヘヴィなリフがあり、膨大な内容になっている。Magic Pieは最も過小評価されているバンドの一つだと思う。

HAKEN “THE MOUNTAIN”

Brilliant compositions that never get boring through the 70 minutes of the album. The sound and production are just wonderful. This album really opened up my ears to what modern prog can sound like.

70分のアルバムを通して、決して飽きさせない見事な構成。サウンドとプロダクションがとにかく素晴らしい。このアルバムでモダンなプログレとはどんなものなのか、理解したよ。(YOGEY)

PORCUPINE TREE “THE INCIDENT”

An incredible album with unique production and sound design, Gavin Harrison plays very dynamically and has a signature
sound.

ユニークなプロダクションを持つ素晴らしいアルバム。Gavin Harrison の非常にダイナミックな演奏と特徴的なサウンドデザインが秀逸。

HADORBANIM “FIRST AFTER THE SECOND”

I was really inspired by the groove of this album. Its compositions and arrangements are top notch.

本当にインスピレーションを受けたよ。このアルバムのグルーブ感、作曲と編曲は一流さ。(HAI)

MESSAGE FOR JAPAN

We love Japan and its culture and we hope to perform live for you one day! Apart from enjoying the most commonly cited cultural exports (such as games/anime/culinary styles etc.) some of us have recently discovered and fallen in love with Japanese Math Rock.

日本とその文化が大好きさ!いつかライブがやれたらいいね。ゲームやアニメ、料理はもちろん、最近は日本のマスロックにハマっているメンバーもいるんだよ。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AZURE : OF BRINE AND ANGEL’S BEAKS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRISTOPHER SAMPSON OF AZURE !!

“We See ‘Prog’ As a Genre Where Anything Can Happen, Whether It Be The Dramatic Fantasy Storytelling And Guitar Harmonies Of Iron Maiden, Or The Slithering Shred Melodies Of Steve Vai, Or Even The Sugary And Bouncy Energy Of The 1975.”

DISC REVIEW “OF BRINE AND ANGEL’S BEAKS”

「IRON MAIDEN と GENESIS を聴いて育ったから、プログレッシブ・ミュージックがすぐに好きになり、ギタリストの Galen Stapley と出会う頃には、キャッチーなコーラスがたくさん入ったクレイジーでハイエナジーなプログを作る準備がお互いに整っていたんだよね」
プログレッシブ・メタルは、興味深い二面性を持っています。その血統からサウンドもテーマもダークであることが要求され、荒々しく、千変万化の野獣を召喚していく一方で、かつてプログの巨人たちが纏っていた光、希望、平和、喜びのファンタジーをも当然しなやかに受け継いでいます。この二面性を今、最も巧みに表現するのが、昨年の英 Prog Magazine 読者投票で最優秀 “未契約” バンドの座を勝ち取った英国の蒼、AZURE です。
「自分たちを “アドベンチャー・ロック”、”アート・ロック”、”ファンタジー・プログ” と呼ぶこともあるし、友人たちからは “フェアリー・プログ” と呼ばれることもある。これらのレッテルは全て良い感じだよ! 僕たちは冒険に行くための音楽を作っていて、そこにはたくさんの魔法が関わっているし、それでも現代的で個人的なものもあるんだよね」
Steve Vai や John Petrucci も真っ青の驚嘆のギター・ワーク、Bruce Dickinson と Claudio Sanchez の中道を行く表情豊かなボーカル、そして大量のポップなメロディーと豊かなシンセが組み合わされ、彼らの冒険的で幻想的なプログ・メタルは完成します。冒険に付き物の闘い、呪い、毒殺など、時に暗い物語、ダークなトーンを扱っているにもかかわらず、彼らの音楽には、ドラマと芝居が重なるブライトで煌めくような個性が宿っています。そして、その二面性は彼らにとって “プログ” の定義である多様性、音の正十二面体によって構成されているのです。
「僕たちは “プログ” を、IRON MAIDEN のドラマチックなファンタジーの物語とギター・ハーモニーであろうと、Steve Vai のそそり立つシュレッドのメロディであろうと、The 1975 の甘く弾けるエネルギーでさえ、何でも起こりうるジャンルとして捉えているんだよね」
“Self-Crucifixion” はその象徴でしょう。CHON を想起させるアップビートな数学的愉悦を前面に押し出しながら、重い十字架を背負う曲名と歌詞は著しくダークなテーマを表現。同時に、モダンな中に80年代の光彩や美技を織り込むのも彼らのやり方。Vai から Yngwie に豹変するような Galen の妙技は、楽曲に歓びを伴うタイム・パラドックスをもたらしています。加えて、時に Kate Bush や Andre Matos さえ思わせる表情豊かな Chris の歌声は、リスナーに中毒性を植え付けながらリピートを加速させるのです。
一方で、鍵盤奏者 Shaz Dudhia は、 “A Sailor Will Learn” や “Outrun God” で 8bit の異世界を創造し、AZURE のプログを大海原へと解き放っていきます。そしてとどまることを知らない 彼らの青い海は “The Jellyfish” で The 1975のようなインディーポップを、”Ameotoko I – The Curse” で敬愛する J-Rock や JRPG までをも飲み込みプログの新たな波を発生させていくのです。押し寄せるは、DREAM THEATER や PAIN OF SALVATION に初めて出会った時を思い出させる圧倒的な陶酔感。
ミキシングとマスタリングは、SLICE THE CAKE の Gareth Mason と Jonas Johansson が担当。何層もの楽器と様々なダイナミクスを一つもかき消すことなく、インパクトのあるプロダクションを実現しています。
今回、弊誌では、シンガー Christopher Sampson にインタビューを行うことができました。「J-Rock バンドや、そのシーンの多くのプロジェクトに大きな愛着を持っているんだよね。
Ichikoro は素晴らしいし、ゲスの極み乙女や Indigo La End など、僕たちが好きな他のバンドともリンクしている。あと、僕たちは日本のメタルやパワーメタル・シーンも大好きで、GALNERYUS、Doll$Boxx、UNLUCKY MORPHEUS といったバンドを定期的に聴いているんだよ」 どうぞ!!

AZURE “OF BRINE AND ANGEL’S BEAKS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PERSEFONE : METANOIA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CARLOS LOZANO OF PERSEFONE !!

“I Remember I Read “Hagakure”, “Dokkodo”, “The Book Of Five Rings” And Works From Mishima Yukio. There Was Something On Those Books That Resonated With Me Since a Very Young Age And Made Me Look To Japan In a Very Personal And Respectful Way.”

DISC REVIEW “METANOIA”

「僕にとって日本は、幼少の頃から大きな存在だった。もちろん、アニメやゲームも入り口だったけど、やがて武道を嗜み、”葉隠”, “独行道”, “五輪書”、そして三島由紀夫の作品を読んだと記憶している。これらの本には、幼い頃から心に響くものがあって、とても個人的かつ尊敬の念を持って日本を見つめさせてくれたんだよね」
欧州のメタル侍。そう称したくなるほどに、PERSEFONE の生き様は彼らが深く薫陶を受けた日本の武士道を喚起させます。世界でも最小の国の一つアンドラから始まって、ビッグレーベルとの契約、Metal Hammer の表紙を飾るといったサクセスストーリーも、すべてはただ、 音楽的な”より善く” の探究を “潔く”、脇目も振らず続けた結果でしょう。
「どこの国でも2022年はストリーミングが主流だから、コンセプト・アルバムを作ることはマーケティング的に最も賢いやり方ではないかもしれないよね。でも、僕たちはただ音楽が好きなんだよ。最初から最後までリスナーに本物の音楽体験を提供したい。それが、僕たちにとっての PERSEFONE の音楽だから」
ストリーミング全盛の世の中において、壮大なコンセプト・アルバムにこだわり続ける。実際、主流に贖い自らの “正義” を通すそんな彼らの武士道こそ、PERSEFONE が世界に認められた理由の一つ。さらに彼らは、現代のプログ・メタル界において、おそらく他のどのバンドよりも破壊的で残忍なテック・デスメタルと、荘厳さ、スピリチュアルな詩歌を巧みに組み合わせることによって、その存在を際立たせているのです。心が洗われるような荘厳美麗の刹那、襲い来る津波のようなテクニカルの牙。その対比の魔法は中毒になるほど鮮烈で、PERSEFONE だけに備わった一撃必殺の抜刀術に違いありません。
「”Metanoia” は、人間の中の深い変化、痛みと意思よる変化についての作品で、個人の闇の奥深くに潜り、もはや役に立たないもの全てを手放し(”Katabasis”)、新しい存在として再び立ち上がる(”Anabasis”)ためのアルバムなんだ」
“悔い改める” というギリシャ語のタイトルが示すように、”Metanoia” は、主人公が精神的なメルトダウンに陥り、そこから抜け出すまでの道のりを辿る壮大な物語。地獄から抜け出すための第一歩は、そこに問題があることを認めること。つまりそれは、心からの内省なのかもしれませんね。前作 “Aathma” では、CYNIC の Paul Masvidal が物語の案内人を担当しましたが、今回は LEPROUS の Einar Solberg が担当。”Pitsfall” という “落とし穴” から蜘蛛の糸をたどって抜け出した Einar ほど、その大役に相応しい人はいないでしょう。
新たなプログレッシブの声による精神世界の対話が終わると、現実という地獄が突然解き放たれます。”Katabasis” の根幹を成すのまさには灼熱のリフワーク、地獄の業火。この曲の優美で繊細な瞬間は、強引に、しかし巧みに、残忍さや複雑さと対になっています。こうした繊細と破壊の戦いは、レコードに類い稀なるダイナミズムと流動性をもたらし、気が遠くなるような主人公の精神的苦痛を伝えるのみならず、リスナー自身の体に直感的な苦痛を植え付けていきます。
燠火に彩られた牧歌的なピアノの旋律がリスナーを迎え入れる “Leap of Faith” は、驚くべきサウンド体験だと言えます。彼らはもはや、心をゆさぶる音楽を演奏するだけではなく、芸術を通してカタルシスや超感覚までをも生み出せることを示した異能のインスト作品。それでも、PERSEFONE は PERSEFONE にしか飼いならすことのできない内なる神獣を宿していて、その発火を待ち焦がれる召喚獣の嗎が、複雑さと凶暴性をすぐさま呼び寄せていくのです。
「僕にとっては “Spiritual Migration” の時代は個人的に難しい時代だった。だからライブで楽しく演奏していても、多くの人が好きなアルバムだとわかっていても、あのアルバムを聴くのは結構キツいものがあるんだよ。だから、”Consciousness pt3 “を作るために “Spiritual Migration” のリフを再利用することは、ある種のセラピーだったんだ」
作品の後半で、 Spiritual Migration” を歌詞や楽曲の引用という形で数多く取り上げたのは、Carlos にとっても地獄から舞い戻るためのセラピーでした。トラウマを乗り越え、生まれ変わるために再訪した過去こそが “Consciousness Part 3″。もしかするとこの楽曲は、DREAM THEATER が20年以上も前に “The Dance of Eternity” で成し遂げたプログとインストの魔法を現代に蘇らせるタイム・マシンなのかもしれませんね。”Spiritual Migration” のオープニングを飾る独特のリズムパターンと、PINK FLOYD のセグメント、そしてあの “Flying Sea Dragons” で登場した海龍の如きタッピングで締めくくられる楽曲はあまりにも秀逸な復活の音の葉。
そうしてこの長い精神の旅路は、前作を彷彿とさせる組曲で終焉を迎えます。”Anabasis” 三部作において彼らは、ジャンルの壁や先入観をいとも簡単になぎ倒し、技術的な複雑さと感情的なサウンドスケープの奇跡的な婚姻によって映画のような没入感を生み出すことに成功しました。いつかの ANATHEMA のように、長く暗い内なる夜は永遠にも思えるが、太陽は確かに昇るのだと語りかけながら。優しく、静謐に。
今回弊誌では、Carlos Lozano にインタビューを行うことができました。「音楽は、僕たちの周りで起こるすべての狂気から、僕たちを逃れさせてくれるよね。僕たちは、世の中で起こっているすべてのことから、できる限り音楽を遠ざけておこうとしているんだ」どうぞ!!

PERSEFONE “METANOIA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SYREK : STORY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TERRY SYREK !!

“You Just Developed Something Unique Because We Lived In an Analog World. So, That’s One Thing I Really Miss About a Lot Of Guitar I Hear, Now. The Voice. The Uniqueness. Now, That’s Not To Say There Aren’t Some Really Amazing And Talented People Out There. There Are!”

DISC REVIEW “STORY”

「私たちの世代が何かを学ぶには、先生に教わるか、アルバムから耳で聞いて理解するしかなかったんだ。私が実際に覚えたリックや曲のほとんどは、レコードやリスニングから得たものだったよ。ロック・ギタリストはみんなこうやって学んできたんだ。
そうすると、多くの場合、90%くらいの精度で覚えることになる。いつも小さなミスがあるんだよ。でも、その隙間を自分なりに埋めていくことで、すべてが組み合わさっていく。自分自身の声を開発することができるんだ」
完璧さ、清潔さ、均一さ。機材や教材、リスナーの進歩によってギターの習得はより “オートメーション化” され、”正しさ” が追求されるようになりました。そうして敷居が下がり、多くの人にギターの習得が解放される裏側で、私たちは最も重要な何かを置き去りにしてはいないでしょうか?それは個性であり、ギターから発せられる自身の “声”。バークリーで学び、20年以上教鞭をとってきた Terry Syrek の10年をかけた壮大な旅路は、かつてギターに備わっていたそんな浪漫を再び呼び起こします。
「DREAM THEATER のオーディションにクッキーモンスターのTシャツを着て来るような人こそ、一緒にプレイしたい人というかね。ある意味、”Story” を象徴しているようなものだよね。プログとクッキー・モンスター(笑)」
Marco Minnemann, Bryan Beller, Mohini Dey, Lalle Larsson。Terry 呼ぶところの “最高の中の最高” がこの “Story” という物語に集ったのには理由があります。運命。もちろんそれも一つの理由。しかしそれ以上に、Marco 語るところの “本当に複雑で、とても長く、とても速く、速くなくても残酷で、ジムに通いながら計算をするような” 複雑怪奇な楽曲たちをこともなげに制圧し、なおかつ二人のモンスターの大冒険を楽器で表情豊かに楽しく表現する。そんな芸当をこなせる怪物級のアーティストは決して多くはありませんでした。ここにあるのは文字通り、”プログとモンスターの融合”。
「私はビデオゲームが大好きで、それ以前は本をたくさん読んでいた。主にファンタジーやSFのようなものをね。”スター・ウォーズ” や “ロード・オブ・ザ・リング” の大のオタクでね。だから、 “Story” では、自分の人生のさまざまな愛をつなぐ方法をやっと見つけたという感じでもあるのさ。音楽もあるし、ファンタジーもある。大事な二つをやっとつなげることができたんだ」
“ダークナイト” や “トランスフォーマー” で知られる多才なハリウッド俳優 Keith Szarabajka のナレーションは、言葉のない音楽世界の冒険において重要な地図であり灯台です。「ちょっと待てよ、これは何だ?」「わからないが、モンスターだと思う」しかし、そんな逃避行の始まりからすでに楽器は歌っています。実際、Terry のギター・テクニックとスピード、そして正確性は驚異的です。それはあの今は亡き伝説のギタリスト Shawn Lane の後継者には彼こそが相応しいと思えるほどに。しかしそれ以上に重要なのは、一聴して Terry だと伝わるようなトーン、サウンド、音の並び、メロディーといった際立つ個性。結局、彼には自らを語る “声” が存在するのです。
とはいえ、焦点はあくまでも楽曲であり、テクニックのために楽曲が犠牲になることはありません。聴き応えもあり、飽きさせず、終始楽しくワクワクが継続。変拍子の高速ギターとキーボードのユニゾンテーマ、燃え上がるようなギターソロ、そんなインテンスの裏側で、鳥肌が立つような情熱的、叙情的メロディーが心を掴む。
ただ速いギタリスト以上の存在…Terry を際立たせているのはそのカラフルなコンポジション。優れたギタリストである以上に優れた作曲家である。そこに大きなアドバンテージがあるはずです。
「今回弊誌では、Terry Syrek にインタビューを行うことができました。「ギターは君の翻訳装置なんだ。君の考え、君の性格、君の存在そのもの。君のすべてを音に変換することができるんだよ。これはすごいことだよ! だから、それを愛するんだ。本当に本当に愛して、育てていくんだ。毎日、喜びを見い出すんだ。YouTubeでみんながあれこれやっているのを気にする必要はない。自分の声を見つけ出すんだ」 どうぞ!!

SYREK “STORY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WILDERUN : EPIGONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH EVAN BERRY OF WILDERUN !!

“Ideas Flow Through Us, We Can Only Try Our Best To Make Something New Out Of It, But Whatever It Is We Create Will Inevitably Be Shaped By a Myriad Of Things That Came Before Us.”

DISC REVIEW “EPIGONE”

「”Veil of Imagination” はこれまでの僕らのキャリアの中で最も大きな意味を持つレコードだった。 カラフルでエキセントリックな感じがより多くの人の心を掴んだというか、”もっと変わったことがしたい!” という気持ちが実を結んだのかもしれないね」
2012年の結成以来、ボストンを拠点とするプログレッシブ/フォーク・メタルの新鋭 WILDERUN は、創意工夫とたゆまぬ努力を続けてこのジャンルの “特別” を勝ち取りました。
特に、ファンやメディアから絶賛を受け、Century Media との契約にもつながった2019年の “Veil of Imagination” では文字通りその創造性のベールをすべて取り去り、素晴らしくカラフルでメロディック、ブルータル、グローリアスかつ全方位的なサブジャンルを探検し、彼らが HAKEN や LEPROUS と同じ土俵に登りつめたことを圧倒的に証明しました。まさに、モダン・プログレッシブ・メタルの旗手、プログレッシブの希望。そんな評価を確実のものとしたのです。
「パンデミックでキャリアを中断された苛立ちが、心の挫折感に光を当てたんだと思う。特にロックダウンで孤立しているときは、そういう思いが渦巻いてしまう。だから、自分の自信のなさや至らなさについて考える時間がたくさんあったんだと思うんだよ。つまり、自分が “Epigone” じゃないかって疑念を抱いたわけさ」
そんな WILDERUN の快進撃を阻んだものこそパンデミックでした。Evan が陰陽の関係と語るレコーディングとライブ。どちらかが欠けても立ち行かないバンド運営の根源、その一つが失われた結果、彼らはアルバムの成果をファンと祝い分かち合うこともできず、暗闇に立ち止まることとなります。闇は孤独と挫折感を生みます。一人になった Evan Berry は自信を失い、自らと芸術の関係性を省みて、自分には創造性が欠けているのではないか、自己が生み出す音楽は “Epigone” なのではないか、そんな疑念を抱いたのです。
「芸術や創造性に関して言えば、自由意志はどこにあるのかわかりにくいものだ。だけど自分のものか他人のものかわからないアイデアはどんどん出てくるし、そこから新しいものを生み出そうと頑張るしかないんだよね。だから結局、僕たちが作るものは、必然的に先人の無数のアイデアによって形作られている。そんなことを、僕は自分の至らなさや独創性のなさを感じたときに、思い出すようにしているんだよ」
“Epigone” とは、優れた先人のアートを安易にパクる人たちのこと。たしかに、独創と模倣の境界は曖昧です。芸術にしても学問にしても、ゼロから何かを生み出す超人などは存在するはずもなく、私たちは先人たちの積み木の上に少しづつ積み木を継ぎ足して新たな何かを創造します。目や耳、五感が知らないうちに何かを吸収して、そこから自らの創作物が解き放たれることもあるでしょう。とはいえ、正直に思い悩み、告白した Evan Berry の音楽はあまりに “Epigone” とは程遠い、10年に一度の傑作です。
「僕は多くの点で WILDERUN をメタル・バンドと呼ぶことに抵抗を感じているんだ。確かにメタルは大好きだし、僕ら全員にとって重要な要素だよ。だけど、音楽を創るという意味では、メタルは土台というより道具だといつも思っているんだ」
多くのファンが WILDERUN をプログに残されたほんの僅かな希望だと信じる一方で、Evan は彼らの期待を気にかけないようにしています。気にかけてしまうと、自分らしい音楽が書けなくなってしまうから。そんな繊細さと優しさを併せ持つ人物が “Epigone” であるはずもなく、そうしてこのアルバムはプログやメタルを超越した完璧なる音のドラマ、”メタ” の領域へと到達しました。オーケストレーション/キーボード担当の Wayne Ingram があの Hans Zimmer の弟子であることがインタビューで語られていますが、まさにこのアルバムは音楽が雄弁にストーリーを語る大作映画の趣を誇っているのです。
“Epigone” は優しく、内省的で、哲学的な “Exhaler” で幕を開けます。たしかに、このレコードは、作品のテーマに寄り添うようにバンドのメロウで繊細な一面が強調されています。ドリーミーなシンセとアルペジオの連動、そして祝祭的なリズムが印象的な “Identifier”、精神的な思索が渦巻く瞑想的なフィルムスコア “Distraction III”。
「このアルバムには繊細で美しい部分がたくさんあるにもかかわらず、不穏な雰囲気が漂っているように感じるんだよね」
ただしそれもあくまでこの巨編の一面にしかすぎません。道具として配置されたメタリックな獰猛やアヴァンギャルドな冒険、そしてテクニカルな流麗はアルバムを二次元から三次元に、傍観から体験へと押し上げていきます。14分の “Woolgatherer” は軽快に始まり、すぐにコーラス、パーカッション、不吉な叫び、ねじれたギターワーク、オーケストレーションの泉、そして雷のようなディストーションで狂気のマラソンに突入する奇跡の一曲で、ある意味、プログ・メタルが今できることのすべて以上を詰め込んだ限界突破のアート。 何より圧倒的なのは、テーマやモチーフの膨らませ方。千変万化、壮大苛烈な “Passenger”、不気味なサウンドコラージュとノイズまで抱きしめた “Distraction Null” も含めて WILDERUN の野心はまさに “不穏” でとどまることを知りません。
アルバムにはボーナストラックとして、RADIOHEAD のカバー “Everything In Its Right Place” が収録されています。オーセンティックでありながら、時に彼らのオリジナルのように聴こえる息を呑むような優れたオマージュは、”Epigone” の本質を指しているようにも思えます。アルバム本編にも RADIOHEAD 的なイメージは見え隠れしていますが、当たり前のように両者はまったく異なるアートを創出しています。僕たちが作るものは、必然的に先人の無数のアイデアによって形作られている。だけどそこに留まってはいないんだ。そんな Evan の新たな決意が伝わってくるように感じられました。
今回弊誌では、Evan Berry にインタビューを行うことができました。「僕にとってベストなやり方は、個人的に好きな音楽を作り続け、他の人たちがそれを好きになってくれることを願うという方法。 それが、これまで僕にとって唯一うまくいってきた方法で、創造性が壊されない状態に僕を導くことができ、その瞬間 “ゾーン” に留まることができる唯一のやり方なんだ」 3度目の登場。 どうぞ!!

WILDERUN “EPIGONE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SOUND STRUGGLE : THE BRIDGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CAMERON RASMUSSEN OF SOUND STRUGGLE !!

“I Think We Are Actually Still Seeing The Djent Scene Decline. It Has Become This Heavily Meme’d Culture That Seems To Realize Its Own Stupidity And Simplemindedness Where Guitar Riffs And Song Structure Are Concerned.”

DISC REVIEW “THE BRIDGE”

「SOUND STRUGGLE で注目すべき元メンバーは、Joey Izzo、Adam Rafowitz、Joe Calderone で、現在彼らは ARCH ECHO でフルタイムで演奏しているよ。彼らは、バンドを今のような形にする上で非常に重要な存在だったんだよね」
音楽は大きな海のようなもの。そこには無数の色があり、無数の命が宿り、無数の音が蠢いています。ただし、陽の当たる海面は大洋のほんの一部で、大部分はとても複雑で、暗く、冷たい深海。しかし、実はこの深海にこそ宝物が隠されているのです。
SOUND STRUGGLE もそんな音海の底で輝く財宝の一つ。3人の元メンバーが立ち上げた ARCH ECHO が水面で脚光をあびる一方で、取り残された Cameron Rasmussen はバンド名が示すように海底で苦闘を続けてきました。それでも、たった一人で長い時間をかけ、脚本、演出、構成のすべてを書き上げた二枚組1時間55分の超大作 “The Bridge” は、沈没船で朽ちさせるにはあまりに惜しいモダン・プログ・メタルの至宝に違いありません。
「ファンクや Prince からの影響は、SOUND STRUGGLE の初期の頃に多く見られたよね。だけどこのバンドが発展していくにつれて、ジャズやファンクのテイストをソロ・セクションやハーモニック・チョイスに加えた、よりモダンなプログレッシブ・メタル・バンドになっていったんだ」
MESHUGGAH meets Prince。10年代初頭、そんな奇抜な触れ込みで djent 世界に登場した SOUND STRUGGLE は、明らかにシーンの他のバンドたちとは一線を画していました。djent の創始者 PERIPHERY の血を引きながらも、その数学的で重々しい雛形にファンクのグルーヴ、ジャズの色彩、プログらしい旋律を配合し、サックスの嗎をも取り込みながら、特別な何かを生み出そうという意欲と野心に満ち溢れていたのですから。
「僕は、今もちょうど djent ・シーンの衰退を目の当たりにしていると思うよ。ギターのリフや曲の構成に関して、自分たちの愚かさや単純さに気づいていないような、ある意味ミーム化した文化になってしまっているよね」
10年代初頭から半ばにかけて、あれだけ雨後の筍のように乱立した djent の模倣者たちはそのほとんどが姿を消してしまいました。それはきっと、あの多弦ギター、近未来的音作り、0000の魔法にポリリズムといった djent のスタイル自体に魅せられすぎたから。一方で、SOUND STRUGGLE の半身ともいえる ARCH ECHO や、あの Steve Vai に見染められた Plini は早々にそのスタイルを武器の一つと割り切ってインストに特化し、より音楽的に、よりカラフルに、よりキャッチーに、”Fu-djent” の世界観を構築してギター世界のスターダムに登り詰めたのです。
「今の djent シーンがどうであろうと、djent はメタル音楽におけるギター・サウンドの基準としては、最もヘヴィーなものだと思っているんだ。だから djent のギターのテクニックとサウンドが、より高度で洗練されたハーモニーのアイデア、そして優れたソング・ライティングと共に適切に使用されるとしたら、きっとそこにメタルの未来があると僕は思う」
SOUND STRUGGLE、いや Cameron Rasmussen は彼らとは異なりあくまでも “メタル” であることにこだわりました。だからこそ、深海での潜伏を余儀なくされたとも言えるのかも知れませんが。もちろん、ブロードウェイ版 “ミセス・ダウト” や、ディズニーの音楽を任されるほどの才能ですから、ARCH ECHO や Plini になるのもそう難しい話ではなかったでしょう。しかし彼は、ギターを教えてくれたメタルを真のプログレッシブへと誘うことに情熱を傾けました。そうして完成した “The Bridge” は、まさにモダン・プログ・メタルの金字塔、深海に眠る宝石として眩いばかりの輝きを放ち始めたのです。
例えば Miles Davis の “Bitches Brew” とメタルがサックスを媒介に自然と溶け合う “Decisions”、例えば ストリングスを交え古のプログとメタルを絶妙に交差させた20分 “The Bridge”、例えば djent Crimson な “The Pursuit of Happiness”、例えばファンクやスウィングが MESHUGGAH と渾然一体で襲い来る “Where is She?”、例えば KORN とジャズが摩訶不思議にダンスを踊る “No Way Out”。あまりに多様で、あまりに混沌で、しかしあまりに審美な2時間は、まさに Cameron が理想とする “djent の適切な使用” を貫きながら壮絶なインテンスで息つく間もなく駆け抜けていきます。
それにしても、流暢を極めながら、突拍子もないアイデアと途方もない表現力でメタルらしく圧倒する Cameron のギタリズム、さらには Tre Watson (彼も長く djent シーンをフォローしている人にとっては懐かし名前) の紡ぐメタルらしい歌心満載の旋律に悪魔の囁きは、SOUND STRUGGLE が文字通り苦闘を重ねながらも “プログ・メタル” をマジマジと追求してきたその理由としてはあまりに出来すぎではないでしょうか。
今回弊誌では、Cameron Rasmussen にインタビューを行うことができました。「Dimebag Darrell はギターの腕前に加えて純粋な思いやりのある人で、人のために尽くしていた。だから僕にとっては、ギタリストとして尊敬できる人の条件をすべて満たしているんだよ」 ARCH ECHO の旧友たちもゲスト参加。どうぞ!!

SOUND STRUGGLE “THE BRIDGE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MOONSHINE OVERSIGHT : THE FRAME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MOONSHINE OVERSIGHT !!

“Drummers Are The New “Guitar Heroes”! The World Deserves More Bands Like Mastodon. With Strong Drums, The Songs Lead To a More Groovy Sound.”

DISC REVIEW “THE FRAME”

「たしかに80年代や90年代、フランスのバンドの扱いは良いものじゃなかった。John Lennon がこんな皮肉を言ってたのを思い出すよ。”フランスのロックはイギリスのワインみたいなもの” ってね。だけど、それから時間が経って、新たなフランス音楽革命が勃発している。世界からもリスペクトされながらね。おそらく、イギリスのワインもちょっとはマシになったんだろう (笑)」
背に音雷を纏ったメタルの怪獣 GOJIRA が強烈な導火線だったのでしょう。フランスのメタル世界に今、プログレッシブ革命が勃発しています。IGORRR, 6:33, ALTESIA, HACRIDE, HYPNO5E, SYMBIOSIS…エレクトロニカからdjentまで華麗に乱れ咲いた複雑怪奇の自由意志は、英米主導のロック封建制を破壊して音に国境がなくなったことを晴れやかに訴えているのです。重要なのは、彼らの一つとして典型的なプログ・メタルの方法論を踏襲していないこと。DREAM THEATER を祖父とすれば、HAKEN や LEPROUS といったその息子の世代から影響を受けた “DREAM THEATER の孫” が鮮烈な才能を現し初めているのです。
「僕たちの目指すところは、ハード・ロックやメタルのエナジーをプログの多様性や自由さに混ぜ合わせることだから」
LEPROUS, HAKEN, CALIGULA’S HORSE, TesseracT といった “息子” の世代に共通するのが、胸の奥を素手で直接握られるような、感情の堰が決壊するような、研ぎ澄まされた叙情の旋律。そして彼らの発する魅惑のメロディーには、”ポスト”・ロックや OPETH, POPCUPINE TREE に端を発する空間的なアトモスフィアが付随していました。逆に言えば、”メカニカル” や “テクニカル” から距離を置きながら、いかにプログレッシブを表現するのか。そんな命題が “息子” の世代には課せられていたのかもしれませんね。先日インタビューを行った “孫” 世代、ALTESIA がそんな新叙情世界を無数の “ジャンルの劇中劇” でさらに深化させていたのは記憶に新しいはず。では、今回の主役、同じく “孫” 世代の MOONSHINE OVERSIGHT はいかにしてプログレッシブを推し進めているのでしょうか。キーワードは有機的で衝動的なロックのエナジー。
「ドラムの領域は、新たな “ギター・ヒーロー” の分野だよ!世界は MASTODON のようなバンドをもっと必要としている。強力なドラムで、楽曲をグルーヴィーに引っ張るようなバンドがね」
例えば、MASTODON をプログレッシブ・メタルと称する人は多くはないでしょう。TOOL にしても、プログレというよりはオルタナと呼ばれる方が確実に多いはず。とはいえ、彼らの千変万化や複雑怪奇を初めて耳にした際、私たちは心のどこかで “プログレッシブ” という言葉を思い浮かべているはずなのです。ただ、クラシックな “プログレ” と距離が離れすぎているためプログレッシブも呼べないだけで。つまり、真のプログレッシブがプログレではないという本末転倒がずっと幅を利かせてきた不思議な現象。狂気の監視者たる MOONSHINE OVERSIGHT はまさにそこに目をつけました。
オープナー “Eyes of Sorrow” を聴けば、MOONSHINE OVERSIGHT の叙情が “息子” 世代のそれと比べても何ら引けを取らない感情の大渦であることが伝わるはずです。ただし、彼らはその場所に手数とオカズを存分にしたためたドラムの激動、有機的な数学教室を封じることを決意します。まさに嵐のようなダイナミズム。つまり彼らは、プログの伝統を受け継ぐ LEPROUS や HAKEN のアトモスフィアと、プログの異端者である MASTODON や TOOL, そして同郷の偉大な先達 GOJIRA の荒れ狂う数の暴力を、大胆に引き合わせることに成功したのです。つまり、ロックのエナジー、メタルのアグレッション、さらにはフォークの繊細さまでを咀嚼して、パワフルで内省的という二律背反のプログレッシブ・ワールドを実現したと言えば伝わりやすいでしょうか。OPETH と ALICE IN CHAINS が奇跡の共演を果たしたような “Remembrance” は、陰陽道を駆け抜ける彼らの “陰” を突き詰めた絶佳の名演ではないでしょうか。もちろん、”Ghosts” のギターソロを聴けばロックらしいギターヒーロの遺伝子も存分に感じるはず。
今回弊誌では、MOONSHINE OVERSIGHT にインタビューを行うことができました。「僕はドラゴンボールで育ったし、今は進撃の巨人にハマっている。ゲームだと、Final Fantasy シリーズが大好きで、特にⅦ が好きだったな。つまり僕は少年ジャンプの、正義、友情、勝利を信じているんだよ」 どうぞ!!

MOONSHINE OVERSIGHT “THE FRAME” : 9.9/10

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