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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MESSA : THE SPIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MESSA !!

“Scarlet Doom…This Specific Shade Of Red Was Chromaticall Helping Us Define Our Aim – And We Think It Still Fits Us, Even If The Years Passed By.”

DISC REVIEW “THE SPIN”

「ドゥームとは逃れられない虚無。私たちは、バンドの始まりからずっと “Scarlet Doom” という名前で自分たちの音楽を呼んできたんだ。この特別なの赤の色調は、私たちの目標を定義する上で、音の色彩を感じさせるために役立ってきたんだ。そして、年月が経っても、この名前が私たちにまだフィットしていると考えているよ」
音楽に “色” があると感じる人は多いのではないでしょうか。それは例えば、アートワークの色彩と関連づけられたり、楽曲のタイトル、もしくは楽曲や演奏そのものから滲み出る色合いだったりするでしょう。イタリアの MESSA は自らの音楽を “スカーレット・ドゥーム” と称しています。スカーレットとは、黄味がかった赤色のこと。ドゥームを逃れられない虚無と定義しながらも、彼らはその “ミサ” に様々な色彩を加えていきます。
「私たちは特に初期のゴシック・ロック/ダーク・ウェーブの大ファンでね。ただ、1980年代をテーマにした “The Spin” を制作する際、各メンバーがその時代に対する異なるアイデアを持っていたことが興味深い点だったね。例えば、Sara が直感的に参照としたのは KILLING JOKE と Siouxsie and the Banshees、Alberto にとっては JOURNEY だった。1980年代の音楽には、ムード、言葉、美学の広範なスペクトラムがある。ドゥームに何を落とし込むのか…私たち一人一人にとって、それは異なる選択だったね」
興味深いことに MESSA のアーティスト写真やアートワークはモノクロームやダークな雰囲気のものが多く、バンドの外観はあくまでドゥーミーでありながらその音楽は実にカラフル。いや、虚無の中に巣食う千変万化の色彩。その多様な色合いは、この4人組が2014年にバンドが結成されるまで、誰ひとりとしてドゥーム・バンドで演奏したことがなかったことに端を発しています。
彼らは、プログからブラックメタル、ゴスやポスト・パンクにアリーナ・ロックまで、様々な “重さ” を個別に経験していたのです。だからこそ、デビュー作のアンビエントなインターミッションやジャジーなクラリネット・パートから始まり、それ以来 MESSA は常に “ドゥーム” の色彩、サウンドの拡張を意識してきました。
7曲42分の “The Spin” は MESSA にとって最も短いアルバムですが、MESSA の持つドゥームの色彩が最も花開いた作品だと言えます。そのカラフルな色合いは、彼らが愛するイタリアのモータリゼーションが最も眩しかった80年代に帰依しています。”The Spin” とは、タイヤであり、道であり、永遠に繰り返す人の業とポスト・アポカリプスの虚無。
まるで80年代の映画、ブレイドランナーから飛び出してきたようなシンセ・ラインで幕を開けるアルバムは、ムーディーでありながらレトロ・フューチャーで、存分に不気味。ドゥームやゴスにとってはスピード違反な展開も、感情と技巧のギターソロも、結果としてドゥームの壮大とドラマを引き立てる武器のひとつにすぎません。
アンセミックなハードロック、アリーナ仕様のギタリズム、ジャズ・プログの間奏、ストーナー・リフとブラストビートにダークなシンセサイザー…ドゥームの暗がりや虚無を重さだけでなく、80年代の野心的な実験と曲作りの妙で表現する MESSA の哲学は実に魅力的かつ唯一無二。もちろん、その裏には Sara の奇跡的な歌唱や卓越したギターヒーロー Alberto の存在があることは言うまでもないでしょう。豊かな色彩を憂鬱へと導くそのハンドル捌きは、まさにプログレッシブ・ドゥームの寵児。
今回弊誌では、MESSA にインタビューを行うことができました。「楽器を演奏することは、アーティストであることよりも、職人であることと共通点が多いと思うんだ。それは技術を学び、信頼できるものを築くことに関わっているからね。私の見方では、この “技巧” は常に目的を持っているべきでね。私たちにとって重要なのは感情とメッセージであり、それらを伝えることが必要なんだ」 二度目の登場。どうぞ!!

MESSA “THE SPIN” : 10/10

INTERVIEW WITH MESSA

Q1: Lately you have been calling your music “Scarlet Doom”. What does this name mean to you?

【MESSA】: We have called our music ‘Scarlet Doom’ since our very start. This specific shade of red was chromaticall helping us define our aim – and we think it still fits us, even if the years passed by.

Q1: 最近、あなたたちは自らの音楽を “Scarlet Doom” と呼んでいるようですね。この呼び名はあなたにとってどのような意味を持つのでしょうか?

【MESSA】: 私たちは、バンドの始まりからずっと “Scarlet Doom” という名前で自分たちの音楽を呼んできたんだ。この特別なの赤の色調は、私たちの目標を定義する上で、音の色彩を感じさせるために役立ってきたんだ。そして、年月が経っても、この名前が私たちにまだフィットしていると考えているよ。

Q2: Doom is a word, but there are many different bands in that world. And you, especially with this album “The Spin”, I feel that you are clearly trying to expand that Doom world. How would you define the word Doom?

【MESSA】: The void you can’t escape from.

Q2: “Doom” と一言で言っても、その世界には多くの異なるバンドが存在します。特にこのアルバム “The Spin” であなたたちは、ドゥームの世界を明確に拡大しようとしているように感じます。そんな今、あなたはどう “ドゥーム” という言葉定義しますか?

【MESSA】: 逃れられない虚無だね。

Q3: What surprised me is that some of the songs have influences from the 80s, specifically goth and post-punk sensibilities like Sister of Mercy and Killing Joke. What was the 80s like for you?

【MESSA】: When it comes to creating music, we always want to surprise ourselves, find a new musical language, push ourselves out of our comfort zone. We are really involved and we question all we do. When we started writing and thinking about what could come next, we decided to delve into a territory we had never explored before – which is the decade of the 1980s. We’ve always been fans of the Early Goth Rock/Dark Wave especially. One of the interesting things that emerged, when we decided ‘The Spin’ to be our take on the 80’s, was the different ideas that every band member had about that era. For example, Sara’s immediate references were Killing Joke and Siouxsie and the Banshees, for Alberto it was Journey. There’s a huge spectrum of moods, language and aesthetic in the 1980s music: for every one of us it was a different choice.

Q3: 驚いたのは、一部の曲に80年代の影響、特に SISTER OF MERCY や KILLING JOKE のようなゴシックやポスト・パンクの感性が感じられる点です。あなたにとって80年代はどのような時代でしたか?

【MESSA】: 音楽を作る際、私たちは常に自分自身を驚かせ、新しい音楽言語を探求し、 コンフォート・ゾーンから抜け出すことを目指しているんだ。私たちはこの作品に本当に深く関与し、常に自問自答しているんだ。そうして、曲のライティングや次なる方向性を考える際、これまで探求したことのない領域―つまり1980年代―に深く潜り込むことを決めたんだよ。
私たちは特に初期のゴシック・ロック/ダーク・ウェーブの大ファンでね。ただ、1980年代をテーマにした “The Spin” を制作する際、各メンバーがその時代に対する異なるアイデアを持っていたことが興味深い点だったね。例えば、Sara が直感的に参照としたのは KILLING JOKE と Siouxsie and the Banshees、Alberto にとっては JOURNEY だった。1980年代の音楽には、ムード、言葉、美学の広範なスペクトラムがある。ドゥームに何を落とし込むのか…私たち一人一人にとって、それは異なる選択だったね。

Q4: More to the point, there are even anthemic songs with plenty of keyboards, such as “Immolation.” Really great song, but is it also a Doom for you?

【MESSA】: The musical side of Immolation might not be called a Doom one, but in our opinion the lyrics definitely are.

Q4: より具体的に言うと、キーボードを多用したアンセム的な曲も存在します。例えば “Immolation” は本当に素晴らしい曲ですが、あなたにとってはあの曲も “ドゥーム” なのでしょうか?

【MESSA】: “Immolation” の音楽的な側面だけを見ればドゥームとは呼ばれないかもしれないけど、私たちの意見では歌詞は確実にドゥームだよ。

Q5: At the same time, the album also creates a “new guitar hero”, Alberto’s shredding talent shines through even more than in Messa’s past work! In fact, his guitars are as great as an Italian shoemaker’s! This “virtuosity” is part of Messa’s charm, would you agree?

【MESSA】: First of all, thanks a lot! I’m flattered. I do think that playing an instrument has a lot in common with being an artisan, more than being an “artist”. It does involve learning a craft and building something reliable with it. From my point of view this “virtuosity” always serves a purpose. It’s the emotion and the message that are important and need to be conveyed.
For this record I had more time to delve into guitar parts and especially guitar solos. It’s the part I enjoy the most, together with composing. Thanks to this I think the solos are more part of the arrangement of the song rather than some mere technical exercise and I’m glad this comes through.

Q5: 同時に、このアルバムは “新しいギターヒーロー” を生み出しましたね!Alberto のシュレッドやテクニックは、MESSA の過去の作品よりもさらに輝いていますよ!実際、彼のギターはイタリアの靴職人の技術のように素晴らしいですよ!こうした “技巧” も、MESSA の魅力のひとつですよね?

【MESSA】: まず、ありがとう!光栄だよ。楽器を演奏することは、アーティストであることよりも、職人であることと共通点が多いと思うんだ。それは技術を学び、信頼できるものを築くことに関わっているからね。私の見方では、この “技巧” は常に目的を持っているべきでね。私たちにとって重要なのは感情とメッセージであり、それらを伝えることが必要なんだ。
このアルバムでは、ギター・パート、特にギター・ソロに時間をかけたんだ。作曲と並んで最も楽しむ部分だよ。丁寧に時間をかけたことにより、ソロが曲のアレンジの一部として機能し、単なる技術的な練習ではなくなっていると思うんだ。それが伝わっていることを嬉しく思うよ。

Q6: Sara’s vocals are also more emotional and wonderful! Italy has a tradition of canzone. Are there many people who are good singers?

【MESSA】: Thank you! Yes, there’s plenty of good singers in our country. There are some, in our opinion, that were particularly talented. Mina, for instance, can cover more than 3 octaves with her voice. To experience her full range, we suggest watching her performance of ‘Brava’ on live television, back in the 60s. When it comes to Italian Pop, another incredibly skilled singer was Giuni Russo. She collaborated with Franco Battiato, a brilliant composer of both pop and experimental music, and created great tunes. When it comes to male voices, Mango and Demetrio Stratos are some top notch names that might come to mind.

Q6: Sara のボーカルもより感情豊かで素晴らしく進化していますね!イタリアには “カンツォーネ” がありますが、伝統的に良い歌手は多いのでしょうか?

【MESSA】: ありがとう!私たちの国には多くの良い歌手がいて、中には特別な才能のある人もいる。例えば Mina は、3オクターブ以上をカバーできるんだ。彼女のフルレンジを体験するには、60年代のテレビ放送での “Brava” のパフォーマンスを観ることをおすすめするよ。
イタリアのポップ音楽では、Giuni Russo も非常に才能のある歌手だったね。彼女はポップと実験音楽の両方で優れた作曲家である Franco Battiato とコラボし、素晴らしい曲を生み出していった。男性歌手では、Mango と Demetrio Stratos がトップクラスの名前として挙げられるだろうね。

Q7: The artwork uses art that looks like an ouroboros, a snake biting its own tail. How does this art reflect the theme of “The Spin”?

【MESSA】: The Ouroboro depicted on the cover of The Spin is an attempt to merge exoteric symbolism, post-apocalyptic imagery, the concept of the road, the world of motorcycles, and the universality of nature as a supreme element―all blended together in a dark and somber atmosphere.
While this isn’t directly reflected in the music, it offers a key to interpreting and experiencing it.

Q7: アートワークには、自分の尾を貪る蛇のウロボロスを模したアートが使用されています。このアートは “The Spin” のテーマをどのように反映しているのでしょうか?

【MESSA】: “The Spin” のカバーに描かれたウロボロスは、外的な象徴、ポスト・アポカリプス的なイメージ、道の概念、モーターサイクルの世界、そして自然の普遍性という至高の要素を、暗く重厚な雰囲気の中で融合させる試みだった。
これは音楽に直接反映されていませんが、それを解釈し体験するための鍵を提供しているんだ。

Q8: The world today is in a “doomed” state of war, oppression, discrimination, and division. In these dark times, what can Doom music do?

【MESSA】: Music is a form of resistance. It’s a powerful way of expression, rebellion. If not, it’s just entertainment.

Q8: 現代の世界は、戦争、抑圧、差別、分断の “破滅的な” “ドゥーミーな” 状態にあります。このような暗黒の時代において、ドゥーム・ミュージックには何ができるでしょうか?

【MESSA】: 音楽は抵抗の形。音楽表現と反乱の強力な手段なんだ。もしそうでなければ、音楽単なるエンターテイメントに過ぎなくなってしまう。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BENTHOS : FROM NOTHING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BENTHOS !!

“I always loved the japanese math scene: downy, toe, tricot, paranoid void, LITE… Outside the math world, I enjoy MILLENIUM PARADE, MASS OF THE FERMENTING DREGS, ermhoi, Black Boboi, BAUKHA (ex HOPI), Sheena Ringo, Friday Night Plans, Ichiko Aoba, Kaho Nakamura, betcover!!, Sarah Bonito (from Kero Kero Bonito).”

DISC REVIEW “FROM NOTHING”

「2000年代以降、メインストリームは非常にドライで予測可能なものになり始めた。今起きていること、プログレッシブ・ミュージックの再評価は、消費主義やコンテンツ不足の問題とリンクしているのではなく、メインストリームの外側にある何かを探したいという欲求だと思う。もしかしたら、いつものように、狂った “飽き” からくるものなのかもしれないけど!また、”脳内腐敗” や短いコンテンツに対する自意識のようなものもZ世代から見受けられるので、僕たちの一部が “治療法” のようなものを求めている可能性もある」
DREAM THEATER や GOJIRA のグラミー受賞は、プログレッシブ世界にとってとても大きな出来事でした。いや、プログレッシブ世界のみならず、インスタントな文化に支配された音楽世界全般にとっても、かなりの衝撃だったに違いありません。なぜなら、複雑で、長く、相当な鍛錬を要するプログレッシブ・ミュージックはコンテンツを “消費” するという時流の真逆にあると目されていたからです。
イタリアのエクスペリメンタル・メタル BENTHOS は、プログの復興と再評価について、”メインストリーム” の外側にある音楽への探求が始まったと表現しました。その言葉は、現行のポップやロックに、短いコンテンツの消費に “飽きた” リスナーにとって、プログが新たなエルドラドとなり得る可能性を自ら証明するという自信の現れでもあるはずです。
「基本的に何でも聴くようになり、あらゆるジャンルへと興味の幅を広げていった。今好きなアーティストは、Radiohead, Bjork, downy, Kendrick Lamar, JPEGMAFIA, Kero Kero Bonito, Magdalena Bay, 青葉市子だね」
なぜ BENTHOS が今、プログレッシブ・ミュージックの希望と呼ばれているのでしょうか?それは、彼らがあの SLEEP TOKEN と同様、メインストリームに住むメインストリームに飽きたリスナーを、メタルやプログレッシブ世界へと惹き込む魅力を備えているから。BENTHOS は例えば、THE CONTORTIONIST や THE DILLINGER ESCAPE PLAN, DREAM THEATER に HAKEN, OPETH, THE SAFETY FIRE (!) といったメタリックで複雑なプログやマスの “基本” を当然抑えながらも、決してそれだけでは終わりません。
Kendrick Lamar, Magdalena Bay, JPEGAMFIA, Kero Kero Bonito といったカラフルなヒップホップやポップ、エレクトロはもちろん、特に日本の音楽に薫陶を受け、toe, tricot, LITE といったマス・ロック、downy や 椎名林檎のようなレジェンド、そして青葉市子や中村佳穂のような新鋭まで、BENTHOS の好奇心は尽きることがありません。さらに、THE MARS VOLTA や A LOT LIKE BIRDS のようなポスト・ハードコア、そしてロックの酩酊までもがここには詰め込まれています。だからこそ、メインストリームのリスナーを惹き込め、プログの “充足感” を伝えていくことができるのでしょう。
型破りなアレンジ、破壊と野蛮、残忍と美麗、混沌と叙情、静寂と喧騒、そして悲痛な感情。複雑なリズム、パワフルでダイナミックなギターワークが、静謐でメロディアスな間奏とシームレスにブレンドされた、プログの再構築 “From Nothing”。その音楽的想像力のスケールの大きさ比肩できる作品はそうありません。決してつぎはぎのパッチワークではなく、洗練された創造性が幾重にも織り込まれたタペストリーはきっと “プログレッシブ” の楽しさを売り込む絶好のアンバサダーとなるはずです。
今回弊誌では、BENTHOS にインタビューを行うことができました。「BENTHOS という名前は、海底に密着して生活する生物のコミュニティを意味する。比喩的には、僕たちの内なるエッセンス、地下深くに埋もれている僕たちの感情を表し、それを表面化させようと努力しているんだ。僕たちの初期の楽曲のひとつ、”Debris // Essence” の原題は “Awake the Benthos” だった。やがて、その “Benthos” が僕たちにとって完璧な名前だと感じるようになったんだ」 どうぞ!!

BENTHOS “FROM NOTHING” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DROWN IN SULPHUR : VEANGENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DROWN IN SULPHUR!!

“We Would Like To Make Concerns What Happened After Lorna Shore’s Explosion. They Have Created a Trend That Is Followed In a Schematic Way By Many Deathcore Bands And We Find It Quite Monotonous.”

DISC REVIEW “VENGEANCE”

「LORNA SHORE の初期の作品は、少しクラシックなデスコアで、もちろんそれからのシンフォニックな進化も両方高く評価しているんだよ。ただ、彼らの爆発的な人気の後に起こったことに対して唯一コメントしておきたいのは、彼らは、多くのデスコア・バンドが図式的に、システマティックに追随するトレンドを作り出してしまったよね。僕たちはそれが非常に単調だと感じている。それが気がかりなんだ」
シーンに巨大なバンドが出現すると、それに追従する数多のフォロワーが出現する。それは黎明期から続く “ロックの法則” であり、飽和と定型化、そして衰退がひとつのライフ・サイクルとしていくつものジャンルを隆盛させ、また没落させてきました。そして現在、デスコアの巨人といえば LORNA SHORE でしょう。
「僕たちは常にオリジナリティのあるものをファンに提供し、僕らに気づいてくれた人たち、そしてデスコア/メタルコア・シーン全体に対して DROWN IN SULPHUR を認識させ、差別化したいと考えているんだ。そのために、作曲や作曲方法において、より多くのジャンルから影響を受けることを恐れないんだよ」
イタリアの DROWN IN SULPHUR は素直に LORNA SHORE をリスペクトしつつも、決して彼らの足跡を追おうとはしていません。なぜなら、そうした “セルアウトの方程式” がいつしかシーンを衰退に導く諸刃の剣だと知っているから。だからこそ、彼らはオリジナリティあふれる自らのデスコア道を歩んでいきます。
「僕たちは皆、ブラックメタルからクラシック・デスコア、ハードコア、ニュースクール・メタルコア、オールドスクール・デスメタル、そしてプログレまで、全く異なる嗜好を持っているんだ!もちろん、ロックやメタルの偉大な古典を愛する共通項もあるしね」
DROWN IN SULPHUR のデスコアはむしろ WHITECHAPEL の哲学に近い。そんな感想を抱くほど彼らの音楽は多様で、実験的で、それでいて非常に “聴きやすい” キャッチーさを多分に備えています。LORNA SHORE のように荘厳なる痛みをアルバム全体で醸し出すよりも、リッチで目まぐるしい展開を選んだともいえます。
クラシックなデスコアやデスメタルの重量感とテンポ・チェンジ、PANTERA のグルーヴやソロイズム、ハードコアのエナジーや衝動、ブラックメタルの暗がりやスピード、そして時に補充されるシンフォニーや民族音楽の響き、プログレッシブな構成美。特筆すべきは、”Scalet Rain” で見せるような悲痛なクリーン・ボーカルでさえ、”Vengeance” というアルバムにはわずかな違和感さえなく完璧にハマっている点でしょう。
まさにアートとしてのデスコア。憤怒と毒を含んだミケランジェロ。ヘヴィネス、スピード、ブレイクダウン、アトモスフィア、そしてメロディが黄金比で織り込まれたデスコアのダビデ像は、”Vengeance” でジャンルと音楽業界の不条理に中指を立てながら、一方では深い知性と実験性を備えたその美しき構成と展開の妙でジャンルの未来を切り開いていくのです。
今回弊誌では、DROWN IN SULPHUR にインタビューを行うことができました。「シンプルに僕たちは、パワー・メタルのようなジャンルに特に興味を持ったことはないんだ。メタルの真髄は、検閲や圧力なしに多くの創造性を発揮する余地を残したエクストリームなサブジャンルにあると信じているからね」 常軌を逸した演奏の巧さ、ギターソロののドラマ性、そして複雑な構築美。DREAM THEATER を影響元に挙げているのも頷けますね。どうぞ!!

DROWN IN SULPHUR “VEANGENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BEDSORE : DREAMING THE STRIFE OF LOVE】 CHRISTMAS SPECIAL 24′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEDSORE !!

“There’s So Much Metal In Emerson Lake, & Palmer―What Could Be More Metal Than Karn Evil 9? “

DISC REVIEW “DREAMING THE STRIFE OF LOVE”

「”Karn Evil 9″ 以上にメタルなものがあるだろうか?そして H.R. ギーガーによるジャケット・アートも!組曲タルカスはなぜ、実際にはメタルでないのに、どうしてあんなにヘヴィで重厚に聴こえるのだろう?通常のメタルの定型に従った要素でなくても、何かが迫ってくるような雰囲気感を出すことができるんだ!」
YES, PINK FLOYD, KING CRIMSON, それに RUSH といったプログレッシブ・ロックから影響を受けたメタル・バンドは少なくありません。プログ・メタルという “プログレ” の系譜を受け継ぐジャンル以外でも、メタルはプログの恩恵を常に受けてきました。ただし、メタル世界で EMERSON LAKE & PALMER の名前が挙がることは、他の偉人と比べれば明らかに少なく思えます。それは当然、メタルの花形であるギターがそこにほとんどなかったから。
しかし、音楽そのものを考えれば、ELPこそメタルに最も親和性があるのではないでしょうか? “Karn Evil 9” や “Tarkus” の暗がり、重厚さ、そして圧倒的な迫力はまさにヘヴィ・メタルが目指す場所。一方で、”The Endless Enigma” や “Pirates” で見せた壮大なキャッチーさもまた、メタルが育んできたジャンルの魂。BEDSORE は、ELP と70年代のプログ、ダーク・メタル、そして母国イタリアへ “心からの愛を込めたファンファーレ” を贈るメタルの新鋭です。
「1970年代にはジャズ、フォーク・ロック、クラシック音楽が融合していたプログレッシブという考え方が、20世紀後半におけるこのジャンルの進化を通じて、半世紀後にエクストリーム・メタルと自然に融合するようになるとは誰が想像できただろうか。しかも、それは可能な限り有機的な方法で起こった。それこそが、僕らがプログが死なないと言った素晴らしい証明なんだよ」
OPETH が、BLOOD INCANTATION が、そして BEDSORE がメタルとプログを自然に融合させた事実こそ、”プログレ” が死なない理由。プログレが今も “プログレッシブ” である証明。そう彼らは信じています。彼らが願うのは、伝統と未来の有機的な融合。実際、その機運は BLOOD INCANTATION の大成功により、完璧に満ちました。
ただし、BEDSORE が OPETH や BLOOD INCANTATION と異なるのは彼らがイタリアの血を継いているところ。”プログレ大国” で彼らが養ったのは、LE ORME や PFM, BANCO に宿った音楽的な複雑さと感情表現を融合させる能力。創造的な自由、意志と思考の深さ。DEATH SS や DEVIL DOLL, GOBLIN のホラー。そして、イタリア語を駆使したルネサンスの精神とテーマ。
「僕たちは、テクニックのためのテクニカルな名人芸はあまり好きではない。僕たちはテクニックを “使って” 音楽を考え、構成し、アレンジする人を好むんだ。なぜなら、それが唯一才能を磨く手段だから。そもそも、テクニックは筋肉で鍛えるものだと考えられていたけど、Keith Emerson と Rick Wakeman は、この考えを完全に覆した。彼らはヴィルトゥオーゾ的な楽器奏者であったけど、何よりも思慮深い作曲家であり、そのヴィルトゥオーゾ性を適度に使うことに長けていた」
BEDSORE が過去から持ち帰ったのは70年代の音楽や精神だけではありません。廃れてしまった、メタルにおけるキーボード、鍵盤の美学を彼らは今に蘇らせます。Emerson や Wakeman があの楽器に託したもの。それは決して、筋トレやオリンピック的な哲学ではなく、思慮深さと色彩、クオリティ。そのスキルは、音楽の流れ、構造、感情を導く光。そうして、メロトロンのハミングとムーグの煙はプログの “イメージ” を完璧にかき立てます。イメージの詩。プログの色彩は、想像力に無限の広がりを与え、名状しがたい情感をもたらします。それはきっと、ファシズムに屈した世界にもたらす、一筋の光。
今回弊誌では、BEDSORE にインタビューを行うことができました。「僕たちは日本文化の大ファンだ。新世紀エヴァンゲリオンや AKIRA のようなアニメ、伊藤潤二や宮崎駿の作品、北野武や三池崇史の映画は、何度も僕たちに視覚的なインスピレーションを与えてくれた。Boris、Church of Misery、Flower Travellin’ Band、Mono、Boredoms、そして最近の Funeral Moth、Minami Deutsch、”2021 Split” でコラボレーションした Mortal Incarnation などのバンドは言うまでもないよ」 YSE の “Relayer” みたいな雰囲気もありますね。かっこいい!どうぞ!!

BEDSORE “DREAMING THE STRIFE OF LOVE” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【PRIMAL FEAR : THALIA BELLAZECCA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH THALIA BELLAZECCA OF PRIMAL FEAR !!

“Power Metal Is Like You Go Back To Childhood And Imagine Yourself Riding Eagles And Killing Enemies, Being a Hero Or Becoming The Dark Evil Guy That Wants To Conquer The World.”

PRIMAL FEAR

「PRIMAL FEAR だと、”Rulebreaker” は特に気に入っているアルバムだし、その中の “Bullets & Tears” という曲が特に好きな曲ね。バンドの中で私は本当に若いけれど、子供の頃にメタルが好きになった80年代、90年代のシュレッディなソロをもっと出したい。彼らの全アルバムに収録されているパワフルでヘヴィなパワー・リフはそのままにね」
Kiko Loureiro, Joe Satriani, Steve Vai, Guthrie Govan, Paul Gilbert, Andy Timmons, Marty Friedman, Jason Becker, Yngwie Malmsteen など、数え切れないほどのギター・ヒーローたちから多大な影響を受けた左利きのニュー・ヒロインは、イタリアの FROZEN CROWN で名を上げ、Angus McSix との共闘で刃を研ぎ澄まし、そうして遂に独パワー・メタルのベテラン PRIMAL FEAR へとたどり着きました。
Tom Naumann と Alex Beyrodt。Matt Sinner の心臓 SINNER を原点とするふたりのギタリストは、PRIMAL FEAR でもその実力を余すところなく発揮して、バンドの強靭なリフワークと華々しいシュレッドを鋭利な刃物のように研ぎ澄ませてきました。彼らの脱退は PRIMAL FEAR にとって当然大きな損失でしたが、バンドはロックとサルサで育った異色のメタル・ウーマン Thalìa Bellazecca と、達人として名高い Magnus Karlsson を引き入れることでさらなる高みを目指すことになりました。
「Angus McSix でこの役を “コスプレ” できて、とても嬉しいし光栄よ。リーグ・オブ・レジェンド(大好きで今でもプレイしているゲーム)やアニメのおかげで、いつもコスプレをもっと掘り下げてみたいと思っていたんだけど、残念ながら時間がなかったんだ。コスプレって自分を象徴する分身を持つようなもので、より自分に自信を持ち、自分の行動やあり方に誇りを持つことにも役立っていると思うの」
ファンタジーをテーマとするパワー・メタルの世界において、役を演じる “ロール・プレイ”、そして役になりきる “コスプレ” は、暗く煩わしい日常から離れ異世界へと旅立つためにとても重要な “ツール” なのかもしれませんね。Thalìa はそのコスプレというツールを、パワー・メタルの世界で誰よりも巧みに使いこなします。GLORYHAMMER を追われた Angus McSix との共闘では、カレドニアのレイザー・アマゾンの女王を演じて喝采を浴びました。
しかし、実際のコスプレだけではなく、彼女はさまざまな “ペルソナ” を現実世界でも演じています。自身の人気 YouTube チャンネルを運営し、ヘヴィ・ミュージックとロック全般に対する彼女のスキルと情熱を紹介したと思えば、なんとモデルの領域にも進出。彼女のゴージャスな写真は、ミラノのPERSONAの公式インスタグラムで確認できますが、とにかく自身の “分身”、自身の才能をいくつも揃えることで、彼女は自信を携え、パワー・メタルの栄光に向かって邁進することができるようになったのです。
「パワー・メタルは、誰にでもある現実や嫌なことから逃避するのに役立っているの。それに、パワー・メタルは本当に楽しいジャンルだし、すべてのバンドが何かのキャラクターのコスプレをすることで、さらにエンターテイメント性が増す。まるで子供の頃に戻って、自分がワシに乗って敵を殺したり、ヒーローになったり、世界を征服しようとする暗い悪者になったりするのを再び想像することができるのよ」
大人になって、子供のころのように異世界への想像を膨らませたり、空想のキャラクターになりきることはそうそう許されることではないでしょう。しかし、Thalìa のような自信と才能に満ちたアーティストが先陣を切って、パワー・メタルの楽しさ、エンターテイメント、そして逃避場所としての優秀さを広めてくれたとしたら…私たちはためらいなく、エルフやドワーフ、もしくは侍になりきって、子供のころのように煩わしい日常を忘れられる “エンパワーメント・メタル” に浸ることができるのかもしれませんね。
今回弊誌では、Thalìa Bellazecca にインタビューを行うことができました。「デスノート、エヴァンゲリオン、デス・パレード、デッドマン・ワンダーランド、それにスタジオジブリの全作品が大好きよ。音楽なら、BAND-MAID, ALDIOUS, NEMOPHILA, LOVEBITES, MAXIMUM THE HORMONE, NIGHTMARE, それに TK from 凛として時雨。ゲームなら、ベヨネッタ、どうぶつの森、スーパーマリオ(特にギャラクシー)全部、Bloodborne、Ghost of Tsushima、大神。もともとファンタジーやSFのゲーム、映画が好きだったので、日本に行って、それがストリートでも受け入れられているのを見て、日本がもっと好きになったのよね」 どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KINGCROW : HOPIUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DIEGO CAFOLLA OF KINGCROW !!

“I Think Kintsugi Is Really a Great Metaphor About Dealing With Traumas And Overcoming Them And Even Celebrate Them Since They Are Part Of Our Growth Process.”

DISC REVIEW “HOPIUM”

「金継ぎは素晴らしいアイデアだと思ったんだ。自身のトラウマ、傷と向き合い、それを克服し、さらには成長過程の一部でもあるその傷を祝福できるようになる。金継ぎは、その歌詞の実に素晴らしい比喩だと思ったね。また、金継ぎのコンセプトはアートワークにも使用し、アルバムのビジュアル表現にも全面的に取り入れているよ。なぜなら、その魅力的な哲学をおいても、素晴らしく美しい芸術形態だから」
欠けたり割れたりした器を、漆を使って修復する日本の伝統的な技法、金継ぎ。もう二度と戻らない致命的な “傷” を優しくつなぎ合わせ、美しい金でコーティングすることでその傷を唯一無二の前向きな個性とする金継ぎはもはや、修理を超えてアートの域に達しています。
イタリアの伊達プログ KINGCROW は、その技法と哲学、アイデアに魅せられ、”Kintsugi” を自らの血肉へと昇華させました。ネットの普及により致命的な心の “傷”を負いやすい時代に、彼らは金継ぎを人間そのものに例えます。 つなげない傷なんてない。トラウマを克服し、いつかはその傷を個性とし、その傷ごと優しく抱きしめられる日がやってくる。彼らの “Kintsugi” はそんな美しい希望の歌になったのです。
「答えを提示するのではなく、自分の考えや視点を説くのでもなく、さまざまなトピックについてリスナーに考えさせ、自分なりの答えを見つけさせようとしている。だから、君が指摘したように、”Hopium” のアイデアのひとつも、盲目的に従うのではなく、疑問を持つことなんだ。そう、フェイクニュースや誤った情報が氾濫する時代には、物事に対して疑問を持つことがこれまで以上に重要なんだよ」
“Kintsugi” を収録した KINGCROW の最新作、そのタイトルは “Hopium”。”Hope” “希望” と “Opium” “麻薬” を掛け合わせたアメリカの新たなスラングには、幻想的な甘い希望の意味が込められています。ネットのエコーチェンバー、バブルの中に閉ざされて自身を絶対的な正義だと思い込み、異なる意見、異なる存在を悪と断じる狂気の世界で、彼らはただ、”疑問” を持って欲しいと願います。差別や分断を煽るフェイクニュースやプロパガンダをまずは、少しでも疑うこと。KINGCROW は、そう投げかけることで、一度傷つき “割れて” しまった人類の絆を取り戻し、より美しく、再びつなぎあわせたいのです。
「PAIN OF SALVATION の “マジック” の中核には、とても感情的な創造性があると思うし、それは僕たちも同じだと思いたい。クールなものを作るために、曲のエモーショナルなメッセージを犠牲にすることは絶対にないからね。僕たちはただ、感情を揺さぶる音楽を、興味深い美学とさまざまなレイヤーで表現しようとするだけだ」
KINGCROW がつなぎ合わせるのは、人だけではありません。プログ以外にも、メタル、オルタナティヴ、エレクトロニカといった珠玉のジャンルを黄金の光沢でつなぎあわせ、唯一無二の美しき個性とする彼らの音楽こそ、まさに金継ぎ。感情を決して置き忘れず、極限まで洗練された楽曲には必ず、ハッと息を呑むような、魂を揺さぶられる瞬間が用意されていて、リスナーは大鴉のマジックにただ酔しれます。アルバムには、奇しくも現在 PAIN OF SALVATION で鍵盤をつとめる Vikram Shankar がゲスト参加していますが、もしかすると彼らこそが “魂の救済” を謳った最も “エモーショナル” なプログ・メタルバンドの後継者なのかもしれませんね。
今回弊誌ではギタリスト、キーボーディストでメイン・コンポーザーの Diego Cafolla にインタビューを行うことができました。「バンド名を探していたとき、実はちょうどエドガー・アラン・ポーの詩集を読んでいて、”大鴉” にはいつも心を奪われるものがあったんだ。会話のすべてが主人公の心の中で起こっているという事実は、本当に魅力的なアイデアだ。
僕にとっては、外界といかにかかわるかで、自分の現実だけがそこにあると思い込んでしまうことを象徴していた。だから結局、KINGCROW という名前になったんだ」 もはや、LEPROUS, HAKEN, CALIGULA’S HORSE と並んでモダン・プログ・メタル四天王の風格。どうぞ!!

KINGCROW “HOPIUM” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALENTINO FRANCAVILLA : MIDNIGHT DREAMS】 RIOT 祭り 24!!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VALENTINO FRANCAVILLA!!

“I Learned The Constancy From Riot, Do What You Love With The Heart And If You Persevere With Such Thing Someone Will Be Happy Listening Your Music Or Recognize You As Something Like Fresh Air In His Life Thanks To The Art.”

DISC REVIEW “MIDNIGHT DREAMS”

「RIOT から “不変であること” を学んだんだ。自分の好きなことを心をこめてやれば、誰かが自分の音楽を聴いて幸せな気持ちになったり、自分のアートで人生に新鮮な風が吹いたと認めてくれるだろう。そう、自分の好きなことを変わらずやり続ければね」
かつて、パワー・メタルはヘヴィ・メタルが揶揄されるマンネリの象徴でした。”すべてが予定調和で、同じに聴こえる”。そんな中でも、RIOT は己が愛するパワー・メタルをやり続けました。好きをやり続けることで RIOT のパワー・メタルは豊かに熟成されて、フォーキーだったり、メタリックだったり、エモーショナルだったり、テクニカルだったり、Valentino Francavilla が語るように時季折々の個性を醸し出すようになりました。多くの人の人生に救いや癒しをもたらしました。そして、パワー・メタルの復権と拡散、新たな才能の礎になったのです。
「RIOT は僕のヒーローであり、インスピレーションなんだ!16歳の頃、クラシックなオールドスクール・ヘヴィメタルのコンピレーションを聴いていて、”Thundersteel” が流れてきたんだ。最初のコーラスの後、”これが真のヘヴィ・メタルというものなんだ” と雷に打たれ、この素晴らしいバンドに恋をしたのさ!」
イタリアでメタルに目覚めた Valentino Francavilla は、RIOT の “Thundersteel” を聴いて文字通り雷に打たれたような衝撃を受けました。これこそが個性的で真なるヘヴィ・メタル。いや、真なるヘヴィ・メタルは個性的だと確信した Valentino は、そうしてギター、さらには歌の研鑽に励みました。WHITE SKULL で名を上げ、胸筋と SNS で火がつき、ついにはソロ・デビュー。そして7月にはここ日本で、RIOT V との共演が決定。彼もまた、好きをやり続けた結果、まさに “Midnight Dreams” が実現するのです。
「僕は何か新しいものを発明しているわけじゃない。僕が作曲したものは、人生の季節季節で耳にしたものから影響を受けた音楽だから。でも、僕は人の個性を本当に信じているんだ。人はひとりひとりがそれぞれ個性的だ。だから僕は、良いインスピレーションと影響、愛と独自性を持って、最高の音楽を作ろうとしたんだ!」
Valentino の言葉どおり、彼の音楽は決して真新しい革命的な何かではありません。とはいえ、彼の人生の四季折々を反映した、実に個性的で芳醇なパワー・メタル。たしかに、パワー・メタルには一定のフォーミュラ、型が存在しますが、そこに注がれるのはアーティスト個性であり、”好き” の源。つまり、個性を知り、音楽の色を積み重ねたアーティストにとって、そうしたフォーミュラは創造性の妨げにはならないのです。
「僕がステージで演奏するときに最初に考えるのは、目の前にいる人たちは新鮮な空気を吸って、人生を楽しむためにここにいるんだということ。こんな困難な時代だからこそね。ヘヴィ・メタルや音楽全般は、心理的な問題に対しても、本当に多くの方法で人々を助けることができると思う」
そうして Valentino のパワー・メタルは暗い世界の灯火となります。モダンで高度なテクニックと、クラシックなメタルのメロディ、そして積み重ねてきた音楽の色は雄弁に交合わさり、憂鬱や痛みをかかえる人々にひとときの癒しを提供し、新鮮な一陣の風を心に吹き込むのです。
今回弊誌では、Valentino Francavilla にインタビューを行うことができました。「LOUDNESS や X Japan のような日本のヘヴィ・メタル・バンドも大好きで、彼らからたくさん影響を受けたよ!Xの “Sadistic Desire” や LOUDNESS の “Crazy Doctor”, “Like Hell”, “In The Mirror”, “Heavy Chains” のようなリフが本当に大好きでね。彼らはいつも僕に夢を与えてくれたし、高崎晃の演奏も大好きだよ」 祭りには胸筋。どうぞ!!

VALENTINO FRANCAVILLA “MIDNIGHT DREAMS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MATTEO MANCUSO : THE JOURNEY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTEO MANCUSO !!

“A Good Advice Would Be To Shut Down The Phone, Laptop And Everything Around You, And Just Explore The Guitar.”

DISC REVIEW “THE JOURNEY”

「僕は指弾きを選んだというわけじゃなくてね。というのも、エレキギターを始めたばかりの頃は、ピックを使うということを知らなかったんだ!その後、ピックを “発見” したんだけど、フィンガー奏法に慣れすぎていたし、僕は(今もそうだけど)信じられないほど怠け者だったから、ピックの使い方を学ばなかったんだ。メリットとデメリットはあると思うけど、どちらが良いということはないとも思う。何をプレイしたいかによるんじゃないかな」
John Petrucci, Joe Satriani, Steve Vai, Tom Morello, Frank Gambale など、ギター・シュレッドの世界は実は、イタリア系のプレイヤーを中心に回ってきました。そしてここにまた、イタリアの赤、光速の、フェラーリ・レッドの血を引くシュレッダーが登場しました。驚くべきことに、Steve Vai, Al Di Meora, Tosin Abasi といったモンスター級のギタリストがこぞって “ギターの未来” と称するこの26歳のシチリア人 Matteo Mancuso は、かの Allan Holdsworth にも例えられる難解かつ超常的フレーズの数々を、指弾きでこなしています。
「僕は自分のことをジャズやロック、どちらかのプレイヤーだとは思っていないんだ。僕はただ、ギターを自分を表現する道具として使っているミュージシャンなんだ!だから、聴いたものすべてをミックスするのが好きなんだよ。その方が自然でのびのびと感じられるからね」
もちろん、Matteo のテクニックは誰もが驚くような、スペクタクルと知性、そして野生が溶け合うギターのイノベーションです。しかし、彼の本当の真価は “良い曲が書ける” ところにあります。ジャズ、フュージョン、ロックにメタルを咀嚼した Matteo の音世界を巡る旅路 “The Journey” は、ウェス・モンゴメリーから WEATHER REPORT、ジミヘン、さらに TOOL や Plini に至るまで、実に色彩豊かで奔放な、万華鏡の景色を届けてくれます。そこに Matteo のマジック・タッチがあれば、誰が言葉を必要とするでしょうか?
実際 Matteo は、インストは歌物よりも絶対的に数が少ないからこそ、ジャンルを超えて音源を探索し、そして様々な素養を身につけることができたと胸を張ります。そうしていつかは、Eric Johnson の “Cliffs of Dover” や Santana の “Europa” と肩を並べるほどに、雄弁なインスト音楽を創造したいと願うのです。
「パシフィカは、気軽に買えるストラトタイプの中でおそらく最高の入門機なんだ。それに、僕は良いギター・トラックをレコーディングするのにハイエンド・ギターは必要ないと思う!最も重要なことは、良いサウンドを求めるときの演奏の出来栄えだからね!」
加えて、うれしいことにこの新進気鋭のイタリア人は、YAMAHAのパシフィカを愛機として使用しています。もちろん、パシフィカはプロ御用達の “ハイエンド・ギター” ではありません。しかし、だからこそ Matteo はパシフィカを使用しているふしがあります。誰にでも手にすることのできるストラトタイプの王様であるパシフィカで魔法を生み出すことによって、Matteo はギターの敷居を下げ、裾野を広げていきます。
今回弊誌では、Matteo Mancuso にインタビューを行うことができました。「Allan Holdsworth はギターの数少ないイノベーターの一人で、僕はいつも彼をヘンドリックスやヴァン・ヘイレンと同列に並べていたんだ。彼は、ギターが多くの素晴らしい方法で演奏できることを教えてくれたし、彼のハーモニーのアプローチとボキャブラリーは、まさにこの世のものとは思えないものだったよ」 YouTubeで158kのフォロワーを獲得し、ギター・モンスターたちから称賛されたデビュー・アルバム “The Journey”。まさに新しい世界秩序の幕開けでしょう。どうぞ!!

MATTEO MANCUSO “THE JOURNEY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PERFECT VIEW : BUSHIDO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRANCESCO “JOE” CATALDO OF PERFECT VIEW !!

“We Think Bushido Is Very Important Values That Are Somewhat Lacking Today, Especially In Some Western Cultures.”

DISC REVIEW “BUSHIDO”

「僕たちは、武士道の原則が、今日、特に一部の西洋文化において、やや欠けている非常に重要な価値観だと考えているんだ。おそらく、武士道のこうした原則は部分的に回復されていき、今日の世界に適応されるべきだと思うんだ」
武士道で最も尊ばれる義と誉。侍は、例え主君が滅びる運命にあろうとも、義を捨て、誉を捨てて他家に支えることはありません。もちろん時代は変わりましたが、エゴよりも、財産よりも大事なものがあった男たちの生き様は、物質的な現代社会においてある種の教訓とすべきなのかもしれません。”Bushido” の名を冠した作品を完成させた PERFECT VIEW は、決してメロハーを裏切りません。名声や金銭、時の流れに左右されることもありません。ただ愛する音楽を作り続ける。その姿勢はまさにイタリアの侍です。
「僕たちの目標は、映画のような音楽体験ができるアルバムを作ることだった。だから、小さなことでも細部に至るまで細心の注意を払って作ったんだ。この作品は、障害を持って生まれながら、祖父のような偉大な侍になることを夢見る少年の物語だ」
PERFECT VIEW の “Bushido” は、侍の世界に捧げられたロック・オペラです。彼らは、武士という義と誉の戦士をテーマにしたコンセプト・アルバムで、メロハーに義と誉を尽くしてきた日本のリスナーに敬意を表したかったのです。もちろん、メロハーによるコンセプト・アルバムは想像以上に簡単ではないでしょう。メタルやプログレッシブ・ロックのように曲の長さを自由自在に操るわけにもいきません。様々な楽器によるゴージャスなスコアでストーリーを彩ることにも限度があります。しかし、異国の侍たちはこの難題をやってのけました。
「祖父は、お守りを通じて夢の中で彼に語りかけ、彼が自分の道を歩き、運命に出会うよう駆り立てていく。このプロットの中で武士道は、常に自分の夢を信じ、目標を達成するために自分の限界を克服するために戦うということを教えてくれると思うよ」
PERFECT VIEW にとっての武士道とは、夢を貫き、自身の限界を突破すること。武士道とは生きることとみつけたり。アルバムの冒頭を飾る “Bushido Theme” の和の響きで、リスナーは音楽と歴史が神秘の魔法を感じさせてくれる古の日本へと足を踏み入れます。ただし、そこから始まるのは、倭の国の住人たちが心酔した “メロハー” の桃源郷。例えば JOURNEY。例えば WHITESNAKE。例えば DOKKEN。例えば WINGER。あの時代のメロディの花鳥風月が、グレードアップしたプロダクションとテクニックで怒涛の如く繰り広げられていきます。
実に千変万化、変幻自在な5分間のドラマが続く中で、しかし我々は、いつしか “Bushido” の世界観に映画のように没頭していきます。それはきっと、PERFECT VIEW の中に TOTO の遺伝子が組み込まれているから。”ヒドラに立いを挑む騎士” というコンセプトが盛り込まれた “Hydra” はカラフルな楽曲の中にも不思議な統一性のあるアルバムでした。PERFECT VIEW は彼らの曲順や音色を操るテクニックを、インタルードとメインテーマの二本柱でつなげながら、メロハーのメロハーによる、メロハーのための完璧なコンセプト作品を作り上げたのです。
今回弊誌では、イタリアのルークこと、Francesco “Joe” Cataldo にインタビューを行うことができました。「若い世代にもこうした音楽を知る機会があれば、きっと評価されると確信しているからね。だけど問題はいつも同じ。知らないものを評価することはできないし、今日、最大のネットワークやプロモーション・チャンネルは、僕たちに選ぶ機会を与えず、いつも同じようなコンテンツを押し付けることが多いからね」 武士道を語る者ほど武士道から程遠い侍の母国は、異国の侍をどう受け止めるでしょうか。達人どもが夢の跡。どうそ!!

PERFECT VIEW “BUSHIDO” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TRITOP : RISE OF KASSANDRA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TRITOP !!

“This Is The Dream Of My Life And Sincerely I Don’t Care About Money Or Fame. I Am Aware Of Today’s Prog Situation But My Passion For Music And Prog Helps Me a Lot To Overcome The Difficulties.”

DISC REVIEW “RISE OF KASSANDRA”

「眠る時には、FLOWER KINGS と一緒に演奏する夢をよく見たものだよ。これは僕の人生の夢なんだ。お金や名声はどうでもいいと思っている。もちろん、今のプログ世界が置かれた状況はわかっているけど、音楽とプログへの情熱が、この困難を乗り越えるために大いに役立っているんだ」
今や音楽は、ボタン一つでAIでも作れる時代。インスタントなコンテンツや文化に支配された世界は、長時間の鍛錬や思索を必要とするプログレッシブ・ワールドにとって明らかな逆風です。そんな逆境をくつがえすのは、いつだって情熱です。イタリアというプログレッシブの聖地で育まれた TRITOP にとって、音楽はただ追求し、夢を叶えるための場所。
「僕らにはプログの “黄金時代” が残した文化遺産を守りたいという思いもあってね。プログの歴史を作ってきたバンドの足跡をたどりながら、現代化に向けて創意工夫と先見性を加え、さらに自然に生まれ、発展してきた自分のアイデアを共有しようと思っているんだよ」
音楽でヴィンテージとモダンのバランスを取ることは決して容易い仕事ではありません。しかし TRITOP はデビュー・アルバムからその難題をいとも容易く解決してみせました。HAKEN があの21世紀を代表するプログの傑作 “Mountain” で踏破したメタルとプログの稜線。その景観をしっかりと辿りながら、TRITOP は自らの個性である場面転換の妙と豊かな構成力、そして圧倒的な歌唱とメロディの”ハーモニー”を初手から刻んでみせたのです。ハモンドやメロトロン、シンセの力を借りながら。
「プログレッシブ・アイドルの真似をしたいという燃えるような思いは、成長期に発見した新しいプログレッシブ・バンドによって強められたんだ。DREAM THEATER, THE FLOWER KINGS, KAIPA, ANGLAGARD, HAKEN のようなバンドたちだ」
重要なのは、彼らがただ GENESIS や KING CRIMSON、そしてイタリアの英傑たちの車輪の再発明を志してはいないこと。23分の巨大なフィナーレ “The Sacred Law Of Retribution” を聴けば、古の美学はそのままに、ANGLAGARD のダークマターや、DREAM THEATER の名人芸、THE FLOWER KINGS のシンフォニーに HAKEN の現代性、SYMPHONY X のメタル・イズムまで、TRITOP の音楽には限界も境界もないことが伝わります。ただし、見事に完成へと導いたプログレッシブなジクソーパズルで、最も際立つのはそのメロディ。
「僕たちの目標は、複雑なハーモニーやリズムをベースにしながら、素敵でキャッチーなメロディを作ることだった。君が言う通り、STYX はもちろん、GENESIS や DREAM THEATER といったバンドは、曲を聴きやすくするために常に素晴らしいメロディーを作り出しているんだ。そうしたキャッチーと複雑さのコントラストがこの種の音楽を面白くするのだと思う」
逆に言えば今は、例えば DREAM THEATER がグラミーを獲得したように、メロディに輝きさえあればどんなジャンルにもチャンスがある時代だとも言えます。プログにしても、本当にひょんな事から TikTok でヴァイラルを得ることも夢ではありません。少なくとも、TRITOP はその可能性を秘めたバンドでしょう。さらに言えば、MORON POLICE, MOON SAFARI, BAROCK PROJECT のように、メロディの母国日本で認められることは必然のようにも思えます。それほどまでに、ラブリエやトミー・ショウの血脈を受け継ぐ Mattia の紡ぎ出すメロディは雄弁にして至高。燃える朝焼けのような情熱が押し寄せます。
今回弊誌では、TRITOP にインタビューを行うことができました。「日本は70年代以降、あらゆるジャンルの偉大な “音楽の目的地”だ。日本のファンがプログレッシブ・ロックに対して示してきた、そして今も示している大きな尊敬の念は筆舌に尽くしがたいもので、僕たちはその伝統に敬意を表することを本当に望んでいるんだ」どうぞ!!

TRITOP “RISE OF KASSANDRA” : 9.9/10

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