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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRISTIANO FILIPPINI’S FLAMES OF HEAVEN : SYMPHONY OF THE UNIVERSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CRISTIANO FILIPPINI OF FLAMES OF HEAVEN !!

“Power Metal and AOR must be about love, positivity, inner strength, battles that take place inside and outside of us, and a sense of justice. So I think Knights of the Zodiac represent not only my favorites, but also perfect examples of how to convey this message.”

DISC REVIEW “SYMPHONY OF THE UNIVERSE”

「パワー・メタルやAORは、愛、ポジティブさ、内なる強さ、自分の内外で起こる戦い、そして正義感について語らなければならないと思う。同時に、”聖闘士星矢”、”北斗の拳”、”ドラゴンボール”、”ベルセルク” といった日本のアニメも、僕のお気に入りであるだけでなく、そうしたメッセージを伝える完璧な作品でもあると思う。だからこそ、このアルバムが日本の漫画やアニメのファンに届くことを心から願っているんだよ」
仲間を信じ合う “友情”、目標達成のため苦難に耐え励む “努力”、そして最後まで諦めず勝利を目指す “勝利”。80年代から90年代にかけて、日本のアニメや漫画はそうしたポジティブでストイックなムードにあふれていました。まだまだ暴力や抑圧、不条理が蔓延していた当時の学校や子供の社会で、私たちはそうした “エンターテイメント” から、前向きな生き方や優しさ、倫理観を学んでいたのかもしれませんね。
それからおよそ30年。当時のアニメや漫画で育った子供たちは成熟し、さまざまな分野でその影響を発揮するようになりました。その波は日本国内に止まりません。イタリアの Cristiano Filippini 率いる FLAMES OF HEAVEN もそうしたアーティストのひとつ。彼らはアートも生き方も複雑を極める現代で、愛や友情、正義といったいつの世も変わらぬ不変の真理にコスモを燃やしています。そのための乗り物として、パワー・メタルや AOR は完璧な “ペガサス”。なぜなら、パワー・メタルのファンタジーはいつの時代もそうしたポジティブな心に寄り添ってきたのですから。
「”聖闘士星矢” にインスパイアされたアルバムの全曲は、最初のシリーズ “サンクチュアリ編” のいくつかのシチュエーションを描写していると言える。曲のタイトルにも登場するフェニックスの一輝やジェミニは間違いなく、漫画の中で最も魅力的で重要で複雑なキャラクターの2人だからね。 しかし、僕のお気に入りのキャラクターは、星矢、紫龍、シャカ、そして童虎だ。 強さ、前向きさ、そして星矢は別としてバランスと知恵の良い例だからね」
“ペガサス幻想 そうさ夢だけは 誰も奪えない心の翼だから”。この数小節、数文字に私たちは何度助けられたことでしょう。イタリアに生まれた Cristiano もこの聖闘士星矢の美しき理想、夢、ストーリーに魅了され、大人になった今、その世界をパワー・メタルで描くことを決意します。
「もちろん “ペガサス幻想” は知っているし、素晴らしい曲で、まさにアンセムだよね。”聖闘士星矢” の公式サウンドトラックには美しい曲がたくさん収録されている。 それに、オーケストラのインストゥルメンタルにも信じられないほどインスパイアされている。傑作だよ」
普段はクラシック・アンサンブルのための作曲に注力している Cristiano。だからこそ、”Symphony of the Universe” は、サンクチュアリのサーガを描くに十分な壮大さと情熱を兼ね備えています。もちろん、イタリアの偉大な先人 RHAPSODY の血をひくクラシカルなパワー・メタルの一撃は強烈ですが、同時にイタリアが誇る Frontiers Music の流れを汲むメロディック・ハードな旋律美も内包し、ワグナーのオペラをメタルに仕立てたような長尺曲も見事。Cristiano はクラシックの作曲プロセスをそのままメタルに持ち込むのではなく、クラシックの世界からメタルを俯瞰し手を加えることで、他のアーティストとは一線を画す存在となり得ています。
同郷 TEMPERANCE の Marco Pastorino が張り上げる歌声はペガサスに乗って駆け上がり、達人 Michele Vioni のギターは廬山昇龍覇の滝の流れの如く流麗。そして Cristiano が指揮を取る鍵盤とオーケストレーションのネビラチェーンはあまりにも純美。ここには、ファンタジックでポジティブなメタルに求められる要素すべてが詰まっているのです。
今回弊誌では、Cristiano Filippini にインタビューを行うことができました。「音楽、特にこのジャンルは、人々の生活を向上させるために大いに役立つと思う。僕の音楽がどれだけ人々が困難な時期を乗り越えるのを助け、今日まったく狂っているように見えるこの世界の灰色を取り除くことができたかについて、多くのメッセージをもらうからね。僕たちは善の戦士なのだから戦わなければならないし、あきらめてはならない。人生は時に厳しいものだけど、戦うための武器はある。そのひとつが、こうしたアートなんだよ」 どうぞ!!

CRISTIANO FILIPPINI’S FLAMES OF HEAVEN “SYMPHONY OF THE UNIVERSE” : 10/10

INTERVIEW WITH CRISTIANO FILIPPINI

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listeningto?

【CRISTIANO】: First of all, I would like to say hello to all our Japanese fans and readers, I am very grateful to your Country. I generally listen to everything good from the late 70s to the 2000s, rock, pop, metal, soundtracks, electronic music. Then I think after that date the quality of the music dropped a lot. Few bands have caught my attention in recent years.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【CRISTIANO】: まずはじめに、日本のファンのみんな、読者の皆みんな、こんにちは! 僕は70年代後半から2000年代まで、ロック、ポップス、メタル、サウンドトラック、エレクトロニック・ミュージックなど、いいものは何でも聴いてきた。その時代に比べて、今は音楽の質がずいぶん落ちたと思う。 近年、僕の関心を引いたバンドはほとんどいないよ。

Q2: I was very impressed when I heard your guitar! The tone is so beautiful and the crystalline shimmer shines through in your fast and unique playing! In fact, what guitarist was your hero?

【CRISTIANO】: I have the opportunity here to clarify something. In Flames Of Heaven I take care of practically everything, I compose all the music, the lyrics, the vocal lines, I take care of the arrangements and orchestrations. I also compose the bass and drum guidelines. As for the guitar, I compose the rhythms and some slower, more melodic solo lines. For everything else, that is, the virtuoso solos and the beauty and perfection of the lead guitar, it is all thanks to Michele Vioni. He’s one of the best guitarists in the world, and he records the guitars for now, while I record the keyboards in the studio. Live instead I will be the rhythm guitar who will also take care of some solo. But the guitar hero is him.

Q2: あなたはギタリストでオーケストレーターだそうですが、この作品はギターのトーンがとても美しく、まるでクリスタルのような煌めきが、ファストでユニークなプレイに輝いています! あなたのヒーローはどんなギタリストだったんですか?

【CRISTIANO】: ここではっきりさせておきたいことがある。FLAMES OF HEAVEN では、実質的に僕がすべてを担当している。すべての楽曲、歌詞、ヴォーカル・ラインを作曲し、アレンジとオーケストレーションを担当しているんだ。 ベースとドラムのガイドラインも僕が作曲しているよ。
ギターに関しては、リズムと、よりスローでメロディアスなソロラインを作曲している。 それ以外のすべて、つまりシュレッド的なソロやリード・ギターの美しさと完璧さは、すべて Michele Vioni のおかげなんだ。彼は世界最高のギタリストの一人で、今のところ彼がギターを録音し、僕はスタジオでキーボードを録音している。 ライブでは僕がリズム・ギターを担当し、ソロも担当する。 でもギター・ヒーローは彼なんだ。

Q3: Still, “Symphony of the Universe” is a masterpiece ofpower metal, combining great melody, technique, andfantasy! Italy has an excellent power metal tradition,including Rhapsody and DGM. Do you have such blood inyour veins?

【CRISTIANO】: As for Rhapsody, in the classic lineup, I think they were unrivaled in their genre. DGM I think they are the best Italian prog band and beyond. By the way, they are my friend Simone Mularoni’s band, who, working with me for six months, mixed and mastered “Symphony Of The Universe.” And they’re also the last band I saw live, they played in my city a month ago. I think these two examples, added to us and 3/4 other bands, represent the best that Italian power and related metal can offer. The first Rhapsody influenced me a little, while I discovered DGM a few years ago and they also make a different genre than ours, progressive metal. They both do a different genre than us anyway.

Q3: それにしても、”Symphony of the Universe” は、素晴らしいメロディ、テクニック、ファンタジーを兼ね備えたパワー・メタルの傑作ですね! イタリアには、RHAPSODY や DGM など優れたパワー・メタルの伝統がありますが、あなたにもそうした血が流れているのでしょうか?

【CRISTIANO】: RHAPSODY に関しては、クラシックのラインナップでは、このジャンルで他の追随を許さなかったと思う。 DGM は最高のイタリアン・プログ・バンドであり、そのジャンル以上の存在だと思う。
ところで、DGM は僕の友人 Simone Mularoni のバンドで、6ヶ月間僕と一緒に働き、”Symphony Of The Universe” のミックスとマスタリングを担当してくれた。 そして、彼らは僕が最近ライブを見たバンドでもある。一月前に僕の街で演奏したからね。
この2つのバンド、それに僕らと他のバンドも加えて、イタリアのパワー・メタルとそれに関連するメタルが提供できる最高のものを表していると思う。RHAPSODY は僕に少し影響を与えたし、DGMは数年前に知ったんだけど、彼らもまた僕らとは違うジャンルのプログレッシヴ・メタルを作っている。 とはいえ、彼らは僕らとは違うジャンルをやっているけどね。

Q4: I am very glad to know that this album is inspired bySaint Seiya! The artwork also features Pegasus andconstellations, what part of that anime inspired you andwhat story did you draw from it?

【CRISTIANO】: I became very fond of “Saint Seiya”, on the cover I wanted to combine some elements, “Saint Seiya”, “Masters Of The Universe” and other religious elements dear to me, such as the cross that is in the Flames Of Heaven logo and the angels from the first album (small on the left). He could ideally represent the first knight of Pegasus, not Seiya but the warrior who first donned the armor and ideally rode the Pegasus. I would say that all the songs on the album that are inspired by this manga describe some situations from the first series “Sanctuary”.

Q4: このアルバムが “聖闘士星矢” にインスパイアされていると知って、とても嬉しく思っています! アートワークにもペガサスや星座が描かれていますが、あのアニメのどの部分からインスピレーションを受けて、どんなストーリーを描きましたか?

【CRISTIANO】: 僕は “聖闘士星矢” がとても好きだから、ジャケットには “聖闘士星矢”、”Masters Of The Universe” 、そして FLAMES OF HEAVEN のロゴにある十字架やファースト・アルバムの天使たち(左の小さい方)など、僕にとって大切な宗教的要素を組み合わせたいと思った。
主人公は理想的にはペガサスの最初の騎士といえる。星矢ではなく、最初に鎧を身にまとい、ペガサスに乗った戦士だ。”聖闘士星矢” にインスパイアされたアルバムの全曲は、最初のシリーズ “サンクチュアリ編” のいくつかのシチュエーションを描写していると言えるだろうね。

Q5: Speaking of Saint Seiya, the theme song Pegasus Fantasy(R.I.P. Nob) is like a chant for those of us who grew up onthat anime. Are you influenced by such anime theme songs and game music?

【CRISTIANO】: Of course I know “Pegasus Fantasy” and it’s a wonderful song, a real anthem. There are many beautiful songs on the official “Saint Seiya” soundtrack. Plus the orchestral instrumentals are incredibly inspired. Masterpieces. Besides that, my favorite song is “Dead Or Dead” from the “Hades” series. Stunning. Changing anime naturally here is very famous and appreciated “Tough Boy” by Tomcat from the second series of “Hokuto No Ken”. On average, Japanese symphonic and video game composers are very good. Of course, I’m also very attached to Konami’s Castlevania series.

Q5: “聖闘士星矢” といえば、主題歌の “ペガサス幻想”(R.I.P. Nob)は、あのアニメで育った私たちにとっては聖歌のようなものです。 そういったアニメの主題歌やゲーム音楽からも影響を受けているんですか?

【CRISTIANO】: もちろん “ペガサス幻想” は知っているし、素晴らしい曲で、まさにアンセムだよね。”聖闘士星矢” の公式サウンドトラックには美しい曲がたくさん収録されている。 それに、オーケストラのインストゥルメンタルにも信じられないほどインスパイアされている。傑作だよ。
それ以外に好きな曲は “黄泉がえり” シリーズの “Dead Or Dead”。素晴らしいよね。アニメなら、やはり “北斗の拳” 第2シリーズから TOM★CAT の “Tough Boy” だね。 日本のシンフォニックやゲームの作曲家はとても優れている。もちろん、コナミの “悪魔城ドラキュラ” シリーズにも愛着があるしね。

Q6: Phoenix and Gemini appear in the titles of yoursongs, but what characters and stories do you like inSaint Seiya?

【CRISTIANO】: I wrote those two songs, how much drafts, now over twenty years ago and it wasn’t a rational choice. It was natural to talk about them. They are definitely two of the most fascinating, important and complex characters in the manga. But my favorite characters are Seiya, Shiryu, Shaka and Dohko. Examples of strength, positivity and apart from Seiya aha, also balance and wisdom.

Q6: 曲のタイトルにもフェニックスとジェミニが出てきますが、”聖闘士星矢” ではどんなキャラクターやストーリーがお気に入りですか?

【CRISTIANO】: この2曲を書いたのはもう20年以上も前のことで、どれだけの原案を書いたかわからないけど合理的というよりも、彼らについて話すのはむしろ自然なことだったからね。
彼らは間違いなく、漫画の中で最も魅力的で重要で複雑なキャラクターの2人だからね。 しかし、僕のお気に入りのキャラクターは、星矢、紫龍、釈迦、そして童虎だ。 強さ、前向きさ、そして星矢は別としてバランスと知恵の良い例だからね。

Q7: You have a great love for other Japanese anime andmanga such as Hokuto No Ken, Dragon Ball, and Berserk,and I think the positive power, courage, and fantasy ofthose anime to be very much in line with power metal.How about you?

【CRISTIANO】: Exactly like that. Power Metal and AOR must be about love, positivity, inner strength, battles that take place inside and outside of us, and a sense of justice. So I think the anime you mentioned represent not only my favorites, but also perfect examples of how to convey this message. I really hope this album reaches fans of the manga and anime you mentioned.

Q7: あなたは “北斗の拳” や “ドラゴンボール”、”ベルセルク” といった日本のアニメや漫画が大好きなようですが、そうしたアニメのポジティブなパワーや勇気、ファンタジーはパワー・メタルに通じるものもありますよね?

【CRISTIANO】: まさにそうだね。パワー・メタルやAORは、愛、ポジティブさ、内なる強さ、自分の内外で起こる戦い、そして正義感について語らなければならないと思う。 だから、君が挙げたアニメは、僕のお気に入りであるだけでなく、そうしたメッセージを伝える完璧な作品でもあると思う。このアルバムが、日本の漫画やアニメのファンに届くことを心から願っているんだよ。

Q8: With Covid, war, and division, the world has beengetting darker and darker since the beginning of the 20s. For the marginalized and oppressed people, power metal fantasy seems to be a great escape. Would you agree?

【CRISTIANO】: Absolutely, I think that music, and especially this genre, can help a lot to improve the lives of others. I get numerous messages about how much my music has helped people get through difficult times and take away the grayness of this world, which today seems totally crazy. We must fight because we are the warriors of good and we must not give up. Life is sometimes hard but there are weapons to fight with, and one of them is art.

Q8: パンデミック、戦争、分断と、20年代初頭から世界はどんどん暗い場所となっています。そんな世界で疎外され、抑圧された人々にとって、あなたの生み出すパワー・メタル・ファンタジーは素晴らしい逃避場所のようにも思えます。

【CRISTIANO】: 音楽、特にこのジャンルは、人々の生活を向上させるために大いに役立つと思う。僕の音楽がどれだけ人々が困難な時期を乗り越えるのを助け、今日まったく狂っているように見えるこの世界の灰色を取り除くことができたかについて、多くのメッセージをもらうからね。
僕たちは善の戦士なのだから戦わなければならないし、あきらめてはならない。人生は時に厳しいものだけど、戦うための武器はある。そのひとつが、こうしたアートなんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED CRISTIANO’S LIFE!!

EUROPE “The Final Countdown”

IRON MAIDEN “Somewhere in Time”

SAVATAGE “From The Gutter To The Stage”

HELLOWEEN “Keepers Of The Seven Keys I”

VIRGIN STEELE “Noble Savage”

MESSAGE FOR JAPAN

I would like to thank you first of all Sin, for this opportunity, all the readers and all of Japan for making me the man I am now with stories like the anime that raised me. Give “Symphony Of The Universe” a chance, you won’t regret it!

このような機会を与えてくれた SIN、読者の皆さん、そして僕を育ててくれたアニメの物語…今の僕があるのは日本のおかげだから、日本中の皆さんに、まずお礼を言いたいよ。 “Symphony Of The Universe” をぜひ聴いてみて!後悔はさせないよ!

CRISTIANO FILIPPINI

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HIDEOUS DIVINITY : UNEXTINCT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ENRICO SCHETTINO OF HIDEOUS DIVINITY !!

“Metal Sex Workers Degrading Metal” Makes No Sense At All, Especially Because The Metal Community Always Claims To Be The Most Open-Minded And Inclusive Of All Music Communities.”

DISC REVIEW “UNEXTINCT”

「僕らのマネージャーはずいぶん前から、日本がいかに重要か、そしてSNSやTwitter/X を正しく使って日本のファンと接触する方法を理解していた。時間と労力がかかることだが、最終的には報われる。ファンと個人的な対話をすることができれば(Tito はその達人だ)、アーティストはファンにとってより大きい存在になるだろう。日本で僕たちにアプローチしてくるファンは、言葉の壁があるにもかかわらず、僕たちを “より身近な存在” だと感じていることに気づいた。とても誇らしく、謙虚な気持ちになったよ」
世界は今や、SNSがすべての中心にあります。それは音楽の世界も同じ。知名度を高め、人気を得るために SNS の効果的な運用は不可欠でしょう。HIDEOUS DIVINITY と彼らが所属するイタリアのレーベル Death To All は、そうした状況を深く理解しています。
彼らは特に、日本のマーケット、その重要性を認識していて、SNS を日本語でも運用。こまめにチェックとエゴサを重ねて、言及のあったアカウントにいいねやリプライを送ることも欠かしません。それはたしかに、時間と労力を消費する裏の仕事ですが、資金をかけることなくマーケティングが可能な金の卵でもあるでしょう。遠く離れたファンとつながれる、幸せな時間でもあるはずです。そうして実際、HIDEOUS DIVINITY 初の日本ツアーは大盛況のうちに幕を閉じたのです。
「正直、あの時は彼女の職業については知らなかったんだ!”メタルのセックス・ワーカーがメタルの品位を落とす” というのは、まったくもって筋が通っていない。特にメタルのコミュニティは、あらゆる音楽コミュニティの中で最もオープン・マインドで包容力があると僕は常に主張しているのだから。一部の例外を除いて、メタル世界に差別的なエピソードは見当たらない。 もちろん、世界は愚か者でいっぱいだ。だからメタルを聴くバカもたまにはいるだろうが、それについて我々ができることはほとんどないんだよな」
一方で、SNS には暗い側面も存在します。誹謗中傷や差別の助長。HIDEOUS DIVINITY の日本公演にゲストとして招待されていたあるセックス・ワーカーのポストについて、”セックス・ワーカーがメタルに言及すると、メタルの品位が落ちる” と発言するアカウントが現れました。
さて、モダン・メタルの “品位” “品格” とは何でしょうか?個人的に、それは Enrico のいうように、包容力、寛容さ、そして教養だと感じています。人種や文化、性別や職業に貴賤がないことは、現代を生きる人々にとってまさに不文律といえます。その不文律こそ、人類が、そしてメタル世界が長い年月をかけて培ってきた知性であり、教養であるはずです。そこに、”区別” と称して差別や抑圧を持ち込むことこそ、前時代的であり、”メタルを聴くバカ” に違いありません。
せっかく、我々はどんなジャンルよりも多様で幅広いテーマを扱う、”教養” を養えるヘヴィ・メタルの世界にいるのです。その “教養” を粗末にするような SNS の使い方は避けるべきでしょう。
「僕たちの音楽が歓迎され、高く評価されたのを見ると、日本のファンを増やすことはできると思う。熱狂的で情熱的なデスメタルのファンに沢山会ったけど、彼らの多くは、UNBIRTH や PUTRIDITY といったイタリアの他のバンドのファンだった。僕たちはただブルータルなデスメタル・バンドではなく、他の方向に向かっていると思うから不思議なんだけど、それでもフィードバックはとても良かったんだ」
実際、多くの日本のファンは寛容だったようです。HIDEOUS DIVINITY の音楽は、決して一筋縄ではいきません。実に哲学的でテクニカルでありながら、暴力的で混沌したノスフェラトゥ。相反する要素を併せ持つ、彼らのテクニカルでプログレッシブなデスメタルを追求するリスナーは決して多くはないでしょう。それでも、日本のリスナーは、決して最推しではなくても、彼らの音楽に耳を傾け、理解しようと努力し、愛情を注ぐようになりました。もちろん、音楽の “品位” が高いことは当然ですが、そうして好奇心と寛容さでメタルの世界が広がることこそ、SNS 時代において最も美しい光景ではないでしょうか?
今回弊誌では、ギター・マイスター Enrico Schettino にインタビューを行うことができました。「日本のSNSにおける、トレンディング・トピックの達成は信じられなかったよ!日本に惹かれる理由はメンバーそれぞれだと思う。Enrico・H はアニメの世界に最も造詣が深いかもしれないし、メンバーみんなが80年代や90年代に人生を変えたビデオゲームを知っている。 個人的に、僕にとっての日本とは、黒澤、北野、葉隠、そして相撲だ。 一般的に、僕はいつも西洋の基準とは全く異なる世界に魅力を感じていたんだよ」 どうぞ!!

HIDEOUS DIVINITY “UNEXTINCT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MESSA : THE SPIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MESSA !!

“Scarlet Doom…This Specific Shade Of Red Was Chromaticall Helping Us Define Our Aim – And We Think It Still Fits Us, Even If The Years Passed By.”

DISC REVIEW “THE SPIN”

「ドゥームとは逃れられない虚無。私たちは、バンドの始まりからずっと “Scarlet Doom” という名前で自分たちの音楽を呼んできたんだ。この特別なの赤の色調は、私たちの目標を定義する上で、音の色彩を感じさせるために役立ってきたんだ。そして、年月が経っても、この名前が私たちにまだフィットしていると考えているよ」
音楽に “色” があると感じる人は多いのではないでしょうか。それは例えば、アートワークの色彩と関連づけられたり、楽曲のタイトル、もしくは楽曲や演奏そのものから滲み出る色合いだったりするでしょう。イタリアの MESSA は自らの音楽を “スカーレット・ドゥーム” と称しています。スカーレットとは、黄味がかった赤色のこと。ドゥームを逃れられない虚無と定義しながらも、彼らはその “ミサ” に様々な色彩を加えていきます。
「私たちは特に初期のゴシック・ロック/ダーク・ウェーブの大ファンでね。ただ、1980年代をテーマにした “The Spin” を制作する際、各メンバーがその時代に対する異なるアイデアを持っていたことが興味深い点だったね。例えば、Sara が直感的に参照としたのは KILLING JOKE と Siouxsie and the Banshees、Alberto にとっては JOURNEY だった。1980年代の音楽には、ムード、言葉、美学の広範なスペクトラムがある。ドゥームに何を落とし込むのか…私たち一人一人にとって、それは異なる選択だったね」
興味深いことに MESSA のアーティスト写真やアートワークはモノクロームやダークな雰囲気のものが多く、バンドの外観はあくまでドゥーミーでありながらその音楽は実にカラフル。いや、虚無の中に巣食う千変万化の色彩。その多様な色合いは、この4人組が2014年にバンドが結成されるまで、誰ひとりとしてドゥーム・バンドで演奏したことがなかったことに端を発しています。
彼らは、プログからブラックメタル、ゴスやポスト・パンクにアリーナ・ロックまで、様々な “重さ” を個別に経験していたのです。だからこそ、デビュー作のアンビエントなインターミッションやジャジーなクラリネット・パートから始まり、それ以来 MESSA は常に “ドゥーム” の色彩、サウンドの拡張を意識してきました。
7曲42分の “The Spin” は MESSA にとって最も短いアルバムですが、MESSA の持つドゥームの色彩が最も花開いた作品だと言えます。そのカラフルな色合いは、彼らが愛するイタリアのモータリゼーションが最も眩しかった80年代に帰依しています。”The Spin” とは、タイヤであり、道であり、永遠に繰り返す人の業とポスト・アポカリプスの虚無。
まるで80年代の映画、ブレイドランナーから飛び出してきたようなシンセ・ラインで幕を開けるアルバムは、ムーディーでありながらレトロ・フューチャーで、存分に不気味。ドゥームやゴスにとってはスピード違反な展開も、感情と技巧のギターソロも、結果としてドゥームの壮大とドラマを引き立てる武器のひとつにすぎません。
アンセミックなハードロック、アリーナ仕様のギタリズム、ジャズ・プログの間奏、ストーナー・リフとブラストビートにダークなシンセサイザー…ドゥームの暗がりや虚無を重さだけでなく、80年代の野心的な実験と曲作りの妙で表現する MESSA の哲学は実に魅力的かつ唯一無二。もちろん、その裏には Sara の奇跡的な歌唱や卓越したギターヒーロー Alberto の存在があることは言うまでもないでしょう。豊かな色彩を憂鬱へと導くそのハンドル捌きは、まさにプログレッシブ・ドゥームの寵児。
今回弊誌では、MESSA にインタビューを行うことができました。「楽器を演奏することは、アーティストであることよりも、職人であることと共通点が多いと思うんだ。それは技術を学び、信頼できるものを築くことに関わっているからね。私の見方では、この “技巧” は常に目的を持っているべきでね。私たちにとって重要なのは感情とメッセージであり、それらを伝えることが必要なんだ」 二度目の登場。どうぞ!!

MESSA “THE SPIN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BENTHOS : FROM NOTHING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BENTHOS !!

“I always loved the japanese math scene: downy, toe, tricot, paranoid void, LITE… Outside the math world, I enjoy MILLENIUM PARADE, MASS OF THE FERMENTING DREGS, ermhoi, Black Boboi, BAUKHA (ex HOPI), Sheena Ringo, Friday Night Plans, Ichiko Aoba, Kaho Nakamura, betcover!!, Sarah Bonito (from Kero Kero Bonito).”

DISC REVIEW “FROM NOTHING”

「2000年代以降、メインストリームは非常にドライで予測可能なものになり始めた。今起きていること、プログレッシブ・ミュージックの再評価は、消費主義やコンテンツ不足の問題とリンクしているのではなく、メインストリームの外側にある何かを探したいという欲求だと思う。もしかしたら、いつものように、狂った “飽き” からくるものなのかもしれないけど!また、”脳内腐敗” や短いコンテンツに対する自意識のようなものもZ世代から見受けられるので、僕たちの一部が “治療法” のようなものを求めている可能性もある」
DREAM THEATER や GOJIRA のグラミー受賞は、プログレッシブ世界にとってとても大きな出来事でした。いや、プログレッシブ世界のみならず、インスタントな文化に支配された音楽世界全般にとっても、かなりの衝撃だったに違いありません。なぜなら、複雑で、長く、相当な鍛錬を要するプログレッシブ・ミュージックはコンテンツを “消費” するという時流の真逆にあると目されていたからです。
イタリアのエクスペリメンタル・メタル BENTHOS は、プログの復興と再評価について、”メインストリーム” の外側にある音楽への探求が始まったと表現しました。その言葉は、現行のポップやロックに、短いコンテンツの消費に “飽きた” リスナーにとって、プログが新たなエルドラドとなり得る可能性を自ら証明するという自信の現れでもあるはずです。
「基本的に何でも聴くようになり、あらゆるジャンルへと興味の幅を広げていった。今好きなアーティストは、Radiohead, Bjork, downy, Kendrick Lamar, JPEGMAFIA, Kero Kero Bonito, Magdalena Bay, 青葉市子だね」
なぜ BENTHOS が今、プログレッシブ・ミュージックの希望と呼ばれているのでしょうか?それは、彼らがあの SLEEP TOKEN と同様、メインストリームに住むメインストリームに飽きたリスナーを、メタルやプログレッシブ世界へと惹き込む魅力を備えているから。BENTHOS は例えば、THE CONTORTIONIST や THE DILLINGER ESCAPE PLAN, DREAM THEATER に HAKEN, OPETH, THE SAFETY FIRE (!) といったメタリックで複雑なプログやマスの “基本” を当然抑えながらも、決してそれだけでは終わりません。
Kendrick Lamar, Magdalena Bay, JPEGAMFIA, Kero Kero Bonito といったカラフルなヒップホップやポップ、エレクトロはもちろん、特に日本の音楽に薫陶を受け、toe, tricot, LITE といったマス・ロック、downy や 椎名林檎のようなレジェンド、そして青葉市子や中村佳穂のような新鋭まで、BENTHOS の好奇心は尽きることがありません。さらに、THE MARS VOLTA や A LOT LIKE BIRDS のようなポスト・ハードコア、そしてロックの酩酊までもがここには詰め込まれています。だからこそ、メインストリームのリスナーを惹き込め、プログの “充足感” を伝えていくことができるのでしょう。
型破りなアレンジ、破壊と野蛮、残忍と美麗、混沌と叙情、静寂と喧騒、そして悲痛な感情。複雑なリズム、パワフルでダイナミックなギターワークが、静謐でメロディアスな間奏とシームレスにブレンドされた、プログの再構築 “From Nothing”。その音楽的想像力のスケールの大きさ比肩できる作品はそうありません。決してつぎはぎのパッチワークではなく、洗練された創造性が幾重にも織り込まれたタペストリーはきっと “プログレッシブ” の楽しさを売り込む絶好のアンバサダーとなるはずです。
今回弊誌では、BENTHOS にインタビューを行うことができました。「BENTHOS という名前は、海底に密着して生活する生物のコミュニティを意味する。比喩的には、僕たちの内なるエッセンス、地下深くに埋もれている僕たちの感情を表し、それを表面化させようと努力しているんだ。僕たちの初期の楽曲のひとつ、”Debris // Essence” の原題は “Awake the Benthos” だった。やがて、その “Benthos” が僕たちにとって完璧な名前だと感じるようになったんだ」 どうぞ!!

BENTHOS “FROM NOTHING” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DROWN IN SULPHUR : VEANGENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DROWN IN SULPHUR!!

“We Would Like To Make Concerns What Happened After Lorna Shore’s Explosion. They Have Created a Trend That Is Followed In a Schematic Way By Many Deathcore Bands And We Find It Quite Monotonous.”

DISC REVIEW “VENGEANCE”

「LORNA SHORE の初期の作品は、少しクラシックなデスコアで、もちろんそれからのシンフォニックな進化も両方高く評価しているんだよ。ただ、彼らの爆発的な人気の後に起こったことに対して唯一コメントしておきたいのは、彼らは、多くのデスコア・バンドが図式的に、システマティックに追随するトレンドを作り出してしまったよね。僕たちはそれが非常に単調だと感じている。それが気がかりなんだ」
シーンに巨大なバンドが出現すると、それに追従する数多のフォロワーが出現する。それは黎明期から続く “ロックの法則” であり、飽和と定型化、そして衰退がひとつのライフ・サイクルとしていくつものジャンルを隆盛させ、また没落させてきました。そして現在、デスコアの巨人といえば LORNA SHORE でしょう。
「僕たちは常にオリジナリティのあるものをファンに提供し、僕らに気づいてくれた人たち、そしてデスコア/メタルコア・シーン全体に対して DROWN IN SULPHUR を認識させ、差別化したいと考えているんだ。そのために、作曲や作曲方法において、より多くのジャンルから影響を受けることを恐れないんだよ」
イタリアの DROWN IN SULPHUR は素直に LORNA SHORE をリスペクトしつつも、決して彼らの足跡を追おうとはしていません。なぜなら、そうした “セルアウトの方程式” がいつしかシーンを衰退に導く諸刃の剣だと知っているから。だからこそ、彼らはオリジナリティあふれる自らのデスコア道を歩んでいきます。
「僕たちは皆、ブラックメタルからクラシック・デスコア、ハードコア、ニュースクール・メタルコア、オールドスクール・デスメタル、そしてプログレまで、全く異なる嗜好を持っているんだ!もちろん、ロックやメタルの偉大な古典を愛する共通項もあるしね」
DROWN IN SULPHUR のデスコアはむしろ WHITECHAPEL の哲学に近い。そんな感想を抱くほど彼らの音楽は多様で、実験的で、それでいて非常に “聴きやすい” キャッチーさを多分に備えています。LORNA SHORE のように荘厳なる痛みをアルバム全体で醸し出すよりも、リッチで目まぐるしい展開を選んだともいえます。
クラシックなデスコアやデスメタルの重量感とテンポ・チェンジ、PANTERA のグルーヴやソロイズム、ハードコアのエナジーや衝動、ブラックメタルの暗がりやスピード、そして時に補充されるシンフォニーや民族音楽の響き、プログレッシブな構成美。特筆すべきは、”Scalet Rain” で見せるような悲痛なクリーン・ボーカルでさえ、”Vengeance” というアルバムにはわずかな違和感さえなく完璧にハマっている点でしょう。
まさにアートとしてのデスコア。憤怒と毒を含んだミケランジェロ。ヘヴィネス、スピード、ブレイクダウン、アトモスフィア、そしてメロディが黄金比で織り込まれたデスコアのダビデ像は、”Vengeance” でジャンルと音楽業界の不条理に中指を立てながら、一方では深い知性と実験性を備えたその美しき構成と展開の妙でジャンルの未来を切り開いていくのです。
今回弊誌では、DROWN IN SULPHUR にインタビューを行うことができました。「シンプルに僕たちは、パワー・メタルのようなジャンルに特に興味を持ったことはないんだ。メタルの真髄は、検閲や圧力なしに多くの創造性を発揮する余地を残したエクストリームなサブジャンルにあると信じているからね」 常軌を逸した演奏の巧さ、ギターソロののドラマ性、そして複雑な構築美。DREAM THEATER を影響元に挙げているのも頷けますね。どうぞ!!

DROWN IN SULPHUR “VEANGENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BEDSORE : DREAMING THE STRIFE OF LOVE】 CHRISTMAS SPECIAL 24′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEDSORE !!

“There’s So Much Metal In Emerson Lake, & Palmer―What Could Be More Metal Than Karn Evil 9? “

DISC REVIEW “DREAMING THE STRIFE OF LOVE”

「”Karn Evil 9″ 以上にメタルなものがあるだろうか?そして H.R. ギーガーによるジャケット・アートも!組曲タルカスはなぜ、実際にはメタルでないのに、どうしてあんなにヘヴィで重厚に聴こえるのだろう?通常のメタルの定型に従った要素でなくても、何かが迫ってくるような雰囲気感を出すことができるんだ!」
YES, PINK FLOYD, KING CRIMSON, それに RUSH といったプログレッシブ・ロックから影響を受けたメタル・バンドは少なくありません。プログ・メタルという “プログレ” の系譜を受け継ぐジャンル以外でも、メタルはプログの恩恵を常に受けてきました。ただし、メタル世界で EMERSON LAKE & PALMER の名前が挙がることは、他の偉人と比べれば明らかに少なく思えます。それは当然、メタルの花形であるギターがそこにほとんどなかったから。
しかし、音楽そのものを考えれば、ELPこそメタルに最も親和性があるのではないでしょうか? “Karn Evil 9” や “Tarkus” の暗がり、重厚さ、そして圧倒的な迫力はまさにヘヴィ・メタルが目指す場所。一方で、”The Endless Enigma” や “Pirates” で見せた壮大なキャッチーさもまた、メタルが育んできたジャンルの魂。BEDSORE は、ELP と70年代のプログ、ダーク・メタル、そして母国イタリアへ “心からの愛を込めたファンファーレ” を贈るメタルの新鋭です。
「1970年代にはジャズ、フォーク・ロック、クラシック音楽が融合していたプログレッシブという考え方が、20世紀後半におけるこのジャンルの進化を通じて、半世紀後にエクストリーム・メタルと自然に融合するようになるとは誰が想像できただろうか。しかも、それは可能な限り有機的な方法で起こった。それこそが、僕らがプログが死なないと言った素晴らしい証明なんだよ」
OPETH が、BLOOD INCANTATION が、そして BEDSORE がメタルとプログを自然に融合させた事実こそ、”プログレ” が死なない理由。プログレが今も “プログレッシブ” である証明。そう彼らは信じています。彼らが願うのは、伝統と未来の有機的な融合。実際、その機運は BLOOD INCANTATION の大成功により、完璧に満ちました。
ただし、BEDSORE が OPETH や BLOOD INCANTATION と異なるのは彼らがイタリアの血を継いているところ。”プログレ大国” で彼らが養ったのは、LE ORME や PFM, BANCO に宿った音楽的な複雑さと感情表現を融合させる能力。創造的な自由、意志と思考の深さ。DEATH SS や DEVIL DOLL, GOBLIN のホラー。そして、イタリア語を駆使したルネサンスの精神とテーマ。
「僕たちは、テクニックのためのテクニカルな名人芸はあまり好きではない。僕たちはテクニックを “使って” 音楽を考え、構成し、アレンジする人を好むんだ。なぜなら、それが唯一才能を磨く手段だから。そもそも、テクニックは筋肉で鍛えるものだと考えられていたけど、Keith Emerson と Rick Wakeman は、この考えを完全に覆した。彼らはヴィルトゥオーゾ的な楽器奏者であったけど、何よりも思慮深い作曲家であり、そのヴィルトゥオーゾ性を適度に使うことに長けていた」
BEDSORE が過去から持ち帰ったのは70年代の音楽や精神だけではありません。廃れてしまった、メタルにおけるキーボード、鍵盤の美学を彼らは今に蘇らせます。Emerson や Wakeman があの楽器に託したもの。それは決して、筋トレやオリンピック的な哲学ではなく、思慮深さと色彩、クオリティ。そのスキルは、音楽の流れ、構造、感情を導く光。そうして、メロトロンのハミングとムーグの煙はプログの “イメージ” を完璧にかき立てます。イメージの詩。プログの色彩は、想像力に無限の広がりを与え、名状しがたい情感をもたらします。それはきっと、ファシズムに屈した世界にもたらす、一筋の光。
今回弊誌では、BEDSORE にインタビューを行うことができました。「僕たちは日本文化の大ファンだ。新世紀エヴァンゲリオンや AKIRA のようなアニメ、伊藤潤二や宮崎駿の作品、北野武や三池崇史の映画は、何度も僕たちに視覚的なインスピレーションを与えてくれた。Boris、Church of Misery、Flower Travellin’ Band、Mono、Boredoms、そして最近の Funeral Moth、Minami Deutsch、”2021 Split” でコラボレーションした Mortal Incarnation などのバンドは言うまでもないよ」 YSE の “Relayer” みたいな雰囲気もありますね。かっこいい!どうぞ!!

BEDSORE “DREAMING THE STRIFE OF LOVE” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【PRIMAL FEAR : THALIA BELLAZECCA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH THALIA BELLAZECCA OF PRIMAL FEAR !!

“Power Metal Is Like You Go Back To Childhood And Imagine Yourself Riding Eagles And Killing Enemies, Being a Hero Or Becoming The Dark Evil Guy That Wants To Conquer The World.”

PRIMAL FEAR

「PRIMAL FEAR だと、”Rulebreaker” は特に気に入っているアルバムだし、その中の “Bullets & Tears” という曲が特に好きな曲ね。バンドの中で私は本当に若いけれど、子供の頃にメタルが好きになった80年代、90年代のシュレッディなソロをもっと出したい。彼らの全アルバムに収録されているパワフルでヘヴィなパワー・リフはそのままにね」
Kiko Loureiro, Joe Satriani, Steve Vai, Guthrie Govan, Paul Gilbert, Andy Timmons, Marty Friedman, Jason Becker, Yngwie Malmsteen など、数え切れないほどのギター・ヒーローたちから多大な影響を受けた左利きのニュー・ヒロインは、イタリアの FROZEN CROWN で名を上げ、Angus McSix との共闘で刃を研ぎ澄まし、そうして遂に独パワー・メタルのベテラン PRIMAL FEAR へとたどり着きました。
Tom Naumann と Alex Beyrodt。Matt Sinner の心臓 SINNER を原点とするふたりのギタリストは、PRIMAL FEAR でもその実力を余すところなく発揮して、バンドの強靭なリフワークと華々しいシュレッドを鋭利な刃物のように研ぎ澄ませてきました。彼らの脱退は PRIMAL FEAR にとって当然大きな損失でしたが、バンドはロックとサルサで育った異色のメタル・ウーマン Thalìa Bellazecca と、達人として名高い Magnus Karlsson を引き入れることでさらなる高みを目指すことになりました。
「Angus McSix でこの役を “コスプレ” できて、とても嬉しいし光栄よ。リーグ・オブ・レジェンド(大好きで今でもプレイしているゲーム)やアニメのおかげで、いつもコスプレをもっと掘り下げてみたいと思っていたんだけど、残念ながら時間がなかったんだ。コスプレって自分を象徴する分身を持つようなもので、より自分に自信を持ち、自分の行動やあり方に誇りを持つことにも役立っていると思うの」
ファンタジーをテーマとするパワー・メタルの世界において、役を演じる “ロール・プレイ”、そして役になりきる “コスプレ” は、暗く煩わしい日常から離れ異世界へと旅立つためにとても重要な “ツール” なのかもしれませんね。Thalìa はそのコスプレというツールを、パワー・メタルの世界で誰よりも巧みに使いこなします。GLORYHAMMER を追われた Angus McSix との共闘では、カレドニアのレイザー・アマゾンの女王を演じて喝采を浴びました。
しかし、実際のコスプレだけではなく、彼女はさまざまな “ペルソナ” を現実世界でも演じています。自身の人気 YouTube チャンネルを運営し、ヘヴィ・ミュージックとロック全般に対する彼女のスキルと情熱を紹介したと思えば、なんとモデルの領域にも進出。彼女のゴージャスな写真は、ミラノのPERSONAの公式インスタグラムで確認できますが、とにかく自身の “分身”、自身の才能をいくつも揃えることで、彼女は自信を携え、パワー・メタルの栄光に向かって邁進することができるようになったのです。
「パワー・メタルは、誰にでもある現実や嫌なことから逃避するのに役立っているの。それに、パワー・メタルは本当に楽しいジャンルだし、すべてのバンドが何かのキャラクターのコスプレをすることで、さらにエンターテイメント性が増す。まるで子供の頃に戻って、自分がワシに乗って敵を殺したり、ヒーローになったり、世界を征服しようとする暗い悪者になったりするのを再び想像することができるのよ」
大人になって、子供のころのように異世界への想像を膨らませたり、空想のキャラクターになりきることはそうそう許されることではないでしょう。しかし、Thalìa のような自信と才能に満ちたアーティストが先陣を切って、パワー・メタルの楽しさ、エンターテイメント、そして逃避場所としての優秀さを広めてくれたとしたら…私たちはためらいなく、エルフやドワーフ、もしくは侍になりきって、子供のころのように煩わしい日常を忘れられる “エンパワーメント・メタル” に浸ることができるのかもしれませんね。
今回弊誌では、Thalìa Bellazecca にインタビューを行うことができました。「デスノート、エヴァンゲリオン、デス・パレード、デッドマン・ワンダーランド、それにスタジオジブリの全作品が大好きよ。音楽なら、BAND-MAID, ALDIOUS, NEMOPHILA, LOVEBITES, MAXIMUM THE HORMONE, NIGHTMARE, それに TK from 凛として時雨。ゲームなら、ベヨネッタ、どうぶつの森、スーパーマリオ(特にギャラクシー)全部、Bloodborne、Ghost of Tsushima、大神。もともとファンタジーやSFのゲーム、映画が好きだったので、日本に行って、それがストリートでも受け入れられているのを見て、日本がもっと好きになったのよね」 どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KINGCROW : HOPIUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DIEGO CAFOLLA OF KINGCROW !!

“I Think Kintsugi Is Really a Great Metaphor About Dealing With Traumas And Overcoming Them And Even Celebrate Them Since They Are Part Of Our Growth Process.”

DISC REVIEW “HOPIUM”

「金継ぎは素晴らしいアイデアだと思ったんだ。自身のトラウマ、傷と向き合い、それを克服し、さらには成長過程の一部でもあるその傷を祝福できるようになる。金継ぎは、その歌詞の実に素晴らしい比喩だと思ったね。また、金継ぎのコンセプトはアートワークにも使用し、アルバムのビジュアル表現にも全面的に取り入れているよ。なぜなら、その魅力的な哲学をおいても、素晴らしく美しい芸術形態だから」
欠けたり割れたりした器を、漆を使って修復する日本の伝統的な技法、金継ぎ。もう二度と戻らない致命的な “傷” を優しくつなぎ合わせ、美しい金でコーティングすることでその傷を唯一無二の前向きな個性とする金継ぎはもはや、修理を超えてアートの域に達しています。
イタリアの伊達プログ KINGCROW は、その技法と哲学、アイデアに魅せられ、”Kintsugi” を自らの血肉へと昇華させました。ネットの普及により致命的な心の “傷”を負いやすい時代に、彼らは金継ぎを人間そのものに例えます。 つなげない傷なんてない。トラウマを克服し、いつかはその傷を個性とし、その傷ごと優しく抱きしめられる日がやってくる。彼らの “Kintsugi” はそんな美しい希望の歌になったのです。
「答えを提示するのではなく、自分の考えや視点を説くのでもなく、さまざまなトピックについてリスナーに考えさせ、自分なりの答えを見つけさせようとしている。だから、君が指摘したように、”Hopium” のアイデアのひとつも、盲目的に従うのではなく、疑問を持つことなんだ。そう、フェイクニュースや誤った情報が氾濫する時代には、物事に対して疑問を持つことがこれまで以上に重要なんだよ」
“Kintsugi” を収録した KINGCROW の最新作、そのタイトルは “Hopium”。”Hope” “希望” と “Opium” “麻薬” を掛け合わせたアメリカの新たなスラングには、幻想的な甘い希望の意味が込められています。ネットのエコーチェンバー、バブルの中に閉ざされて自身を絶対的な正義だと思い込み、異なる意見、異なる存在を悪と断じる狂気の世界で、彼らはただ、”疑問” を持って欲しいと願います。差別や分断を煽るフェイクニュースやプロパガンダをまずは、少しでも疑うこと。KINGCROW は、そう投げかけることで、一度傷つき “割れて” しまった人類の絆を取り戻し、より美しく、再びつなぎあわせたいのです。
「PAIN OF SALVATION の “マジック” の中核には、とても感情的な創造性があると思うし、それは僕たちも同じだと思いたい。クールなものを作るために、曲のエモーショナルなメッセージを犠牲にすることは絶対にないからね。僕たちはただ、感情を揺さぶる音楽を、興味深い美学とさまざまなレイヤーで表現しようとするだけだ」
KINGCROW がつなぎ合わせるのは、人だけではありません。プログ以外にも、メタル、オルタナティヴ、エレクトロニカといった珠玉のジャンルを黄金の光沢でつなぎあわせ、唯一無二の美しき個性とする彼らの音楽こそ、まさに金継ぎ。感情を決して置き忘れず、極限まで洗練された楽曲には必ず、ハッと息を呑むような、魂を揺さぶられる瞬間が用意されていて、リスナーは大鴉のマジックにただ酔しれます。アルバムには、奇しくも現在 PAIN OF SALVATION で鍵盤をつとめる Vikram Shankar がゲスト参加していますが、もしかすると彼らこそが “魂の救済” を謳った最も “エモーショナル” なプログ・メタルバンドの後継者なのかもしれませんね。
今回弊誌ではギタリスト、キーボーディストでメイン・コンポーザーの Diego Cafolla にインタビューを行うことができました。「バンド名を探していたとき、実はちょうどエドガー・アラン・ポーの詩集を読んでいて、”大鴉” にはいつも心を奪われるものがあったんだ。会話のすべてが主人公の心の中で起こっているという事実は、本当に魅力的なアイデアだ。
僕にとっては、外界といかにかかわるかで、自分の現実だけがそこにあると思い込んでしまうことを象徴していた。だから結局、KINGCROW という名前になったんだ」 もはや、LEPROUS, HAKEN, CALIGULA’S HORSE と並んでモダン・プログ・メタル四天王の風格。どうぞ!!

KINGCROW “HOPIUM” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALENTINO FRANCAVILLA : MIDNIGHT DREAMS】 RIOT 祭り 24!!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VALENTINO FRANCAVILLA!!

“I Learned The Constancy From Riot, Do What You Love With The Heart And If You Persevere With Such Thing Someone Will Be Happy Listening Your Music Or Recognize You As Something Like Fresh Air In His Life Thanks To The Art.”

DISC REVIEW “MIDNIGHT DREAMS”

「RIOT から “不変であること” を学んだんだ。自分の好きなことを心をこめてやれば、誰かが自分の音楽を聴いて幸せな気持ちになったり、自分のアートで人生に新鮮な風が吹いたと認めてくれるだろう。そう、自分の好きなことを変わらずやり続ければね」
かつて、パワー・メタルはヘヴィ・メタルが揶揄されるマンネリの象徴でした。”すべてが予定調和で、同じに聴こえる”。そんな中でも、RIOT は己が愛するパワー・メタルをやり続けました。好きをやり続けることで RIOT のパワー・メタルは豊かに熟成されて、フォーキーだったり、メタリックだったり、エモーショナルだったり、テクニカルだったり、Valentino Francavilla が語るように時季折々の個性を醸し出すようになりました。多くの人の人生に救いや癒しをもたらしました。そして、パワー・メタルの復権と拡散、新たな才能の礎になったのです。
「RIOT は僕のヒーローであり、インスピレーションなんだ!16歳の頃、クラシックなオールドスクール・ヘヴィメタルのコンピレーションを聴いていて、”Thundersteel” が流れてきたんだ。最初のコーラスの後、”これが真のヘヴィ・メタルというものなんだ” と雷に打たれ、この素晴らしいバンドに恋をしたのさ!」
イタリアでメタルに目覚めた Valentino Francavilla は、RIOT の “Thundersteel” を聴いて文字通り雷に打たれたような衝撃を受けました。これこそが個性的で真なるヘヴィ・メタル。いや、真なるヘヴィ・メタルは個性的だと確信した Valentino は、そうしてギター、さらには歌の研鑽に励みました。WHITE SKULL で名を上げ、胸筋と SNS で火がつき、ついにはソロ・デビュー。そして7月にはここ日本で、RIOT V との共演が決定。彼もまた、好きをやり続けた結果、まさに “Midnight Dreams” が実現するのです。
「僕は何か新しいものを発明しているわけじゃない。僕が作曲したものは、人生の季節季節で耳にしたものから影響を受けた音楽だから。でも、僕は人の個性を本当に信じているんだ。人はひとりひとりがそれぞれ個性的だ。だから僕は、良いインスピレーションと影響、愛と独自性を持って、最高の音楽を作ろうとしたんだ!」
Valentino の言葉どおり、彼の音楽は決して真新しい革命的な何かではありません。とはいえ、彼の人生の四季折々を反映した、実に個性的で芳醇なパワー・メタル。たしかに、パワー・メタルには一定のフォーミュラ、型が存在しますが、そこに注がれるのはアーティスト個性であり、”好き” の源。つまり、個性を知り、音楽の色を積み重ねたアーティストにとって、そうしたフォーミュラは創造性の妨げにはならないのです。
「僕がステージで演奏するときに最初に考えるのは、目の前にいる人たちは新鮮な空気を吸って、人生を楽しむためにここにいるんだということ。こんな困難な時代だからこそね。ヘヴィ・メタルや音楽全般は、心理的な問題に対しても、本当に多くの方法で人々を助けることができると思う」
そうして Valentino のパワー・メタルは暗い世界の灯火となります。モダンで高度なテクニックと、クラシックなメタルのメロディ、そして積み重ねてきた音楽の色は雄弁に交合わさり、憂鬱や痛みをかかえる人々にひとときの癒しを提供し、新鮮な一陣の風を心に吹き込むのです。
今回弊誌では、Valentino Francavilla にインタビューを行うことができました。「LOUDNESS や X Japan のような日本のヘヴィ・メタル・バンドも大好きで、彼らからたくさん影響を受けたよ!Xの “Sadistic Desire” や LOUDNESS の “Crazy Doctor”, “Like Hell”, “In The Mirror”, “Heavy Chains” のようなリフが本当に大好きでね。彼らはいつも僕に夢を与えてくれたし、高崎晃の演奏も大好きだよ」 祭りには胸筋。どうぞ!!

VALENTINO FRANCAVILLA “MIDNIGHT DREAMS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MATTEO MANCUSO : THE JOURNEY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTEO MANCUSO !!

“A Good Advice Would Be To Shut Down The Phone, Laptop And Everything Around You, And Just Explore The Guitar.”

DISC REVIEW “THE JOURNEY”

「僕は指弾きを選んだというわけじゃなくてね。というのも、エレキギターを始めたばかりの頃は、ピックを使うということを知らなかったんだ!その後、ピックを “発見” したんだけど、フィンガー奏法に慣れすぎていたし、僕は(今もそうだけど)信じられないほど怠け者だったから、ピックの使い方を学ばなかったんだ。メリットとデメリットはあると思うけど、どちらが良いということはないとも思う。何をプレイしたいかによるんじゃないかな」
John Petrucci, Joe Satriani, Steve Vai, Tom Morello, Frank Gambale など、ギター・シュレッドの世界は実は、イタリア系のプレイヤーを中心に回ってきました。そしてここにまた、イタリアの赤、光速の、フェラーリ・レッドの血を引くシュレッダーが登場しました。驚くべきことに、Steve Vai, Al Di Meora, Tosin Abasi といったモンスター級のギタリストがこぞって “ギターの未来” と称するこの26歳のシチリア人 Matteo Mancuso は、かの Allan Holdsworth にも例えられる難解かつ超常的フレーズの数々を、指弾きでこなしています。
「僕は自分のことをジャズやロック、どちらかのプレイヤーだとは思っていないんだ。僕はただ、ギターを自分を表現する道具として使っているミュージシャンなんだ!だから、聴いたものすべてをミックスするのが好きなんだよ。その方が自然でのびのびと感じられるからね」
もちろん、Matteo のテクニックは誰もが驚くような、スペクタクルと知性、そして野生が溶け合うギターのイノベーションです。しかし、彼の本当の真価は “良い曲が書ける” ところにあります。ジャズ、フュージョン、ロックにメタルを咀嚼した Matteo の音世界を巡る旅路 “The Journey” は、ウェス・モンゴメリーから WEATHER REPORT、ジミヘン、さらに TOOL や Plini に至るまで、実に色彩豊かで奔放な、万華鏡の景色を届けてくれます。そこに Matteo のマジック・タッチがあれば、誰が言葉を必要とするでしょうか?
実際 Matteo は、インストは歌物よりも絶対的に数が少ないからこそ、ジャンルを超えて音源を探索し、そして様々な素養を身につけることができたと胸を張ります。そうしていつかは、Eric Johnson の “Cliffs of Dover” や Santana の “Europa” と肩を並べるほどに、雄弁なインスト音楽を創造したいと願うのです。
「パシフィカは、気軽に買えるストラトタイプの中でおそらく最高の入門機なんだ。それに、僕は良いギター・トラックをレコーディングするのにハイエンド・ギターは必要ないと思う!最も重要なことは、良いサウンドを求めるときの演奏の出来栄えだからね!」
加えて、うれしいことにこの新進気鋭のイタリア人は、YAMAHAのパシフィカを愛機として使用しています。もちろん、パシフィカはプロ御用達の “ハイエンド・ギター” ではありません。しかし、だからこそ Matteo はパシフィカを使用しているふしがあります。誰にでも手にすることのできるストラトタイプの王様であるパシフィカで魔法を生み出すことによって、Matteo はギターの敷居を下げ、裾野を広げていきます。
今回弊誌では、Matteo Mancuso にインタビューを行うことができました。「Allan Holdsworth はギターの数少ないイノベーターの一人で、僕はいつも彼をヘンドリックスやヴァン・ヘイレンと同列に並べていたんだ。彼は、ギターが多くの素晴らしい方法で演奏できることを教えてくれたし、彼のハーモニーのアプローチとボキャブラリーは、まさにこの世のものとは思えないものだったよ」 YouTubeで158kのフォロワーを獲得し、ギター・モンスターたちから称賛されたデビュー・アルバム “The Journey”。まさに新しい世界秩序の幕開けでしょう。どうぞ!!

MATTEO MANCUSO “THE JOURNEY” : 10/10

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