EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEN SHANBROM OF EARTHSIDE !!
“We Didn’t Want Anyone To Be Able To Question The “Cinematic” Description This Time. Seeing Hans Zimmer Live The Summer Before We Started Recording This Album Was a Huge Influence.”
DISC REVIEW “LET THE TRUTH SPEAK”
「このアルバムには、全く異なるプロダクションが必要とされた10曲が収録されているんだ。ほとんどすべての曲で異なる楽器編成と異なる制作アプローチが必要で、それはほとんどのバンドが1枚のレコードで対処する必要のないことだよ。また、このアルバムでは、僕たちが想像していたよりもはるかに野心的で、創造的なリスクを冒す必要もあった。”噛み切れないほど噛み切った”ということわざを地でいったんだ」
アメリカのシネマティック・メタル EARTHSIDE がデビューLP “A Dream in Static” でこのジャンルのファンを驚かせてから約10年。ラジョン・ウィザースプーン(SEVENDUST)やダニエル・トンプキンス(TesseracT)といった一流ゲストの協力のもと、知的なインストゥルメンテーションと荘厳な歌唱、息を呑むようなシンフォニックな要素を多彩かつ特異にブレンドしたこの作品は、2015年ベスト・アルバムのひとつとなりました。
「今回は、”シネマティック” という表現に誰も疑問を抱かないようにしたかったんだ。”Let The Truth Speak” においては、クラシック/スコアの要素をより統一感のあるものにしたかったんだよ。このアルバムのレコーディングに入る前の夏、ハンス・ジマーのライヴを観たことは大きな影響となったね」
幸運なことに、待望の続編 “Let the Truth Speak” はついに登場し、前作以上の評価を受けはじめています。待てば海路の日和あり。この作品はグループの成長と革新への貪欲さを示す類まれなる “2枚目” となり、前作で注目された点の多くを維持しながらも、よりシネマティック “映画的” となったアルバムで、リスナーはメタル版ハンス・ジマーの圧倒的な壮大と没入感を手に入れることとなりました。
「僕たちは人間として、民族として、そしてバブルの中で、たくさんの言葉を発している。そうして、必ずしも有意義に関与する資格も勉強もしていない事柄について、全員が発言することを自らに課してきたんだ。真実はそこらじゅうにあるのに、僕たちはそれを自分たちでノイズの中に埋没させてきたわけだよ。真実はそれ自体で語られるべき神聖なもの。だからこそ、常に報われるとは限らないけど、僕たちは様々な問題に関して最も耳を傾けるべき声を知り、その声が自分たちのものでないときには一歩下がる謙虚さを持つことが責任だと信じている。このアルバム・タイトルは、この作品を通して表現されている重要なテーマなんだ」
“狂気だが、美しい” と評されるアルバムにおいて、EARTHSIDE は現代の狂気を追求します。作品で上映される美しき天国、荘厳な聖歌、悲痛な咆哮、不吉な音の葉、そして激情と後悔と残忍。そのすべては、ノイズの中から真実を掘り出すための大いなるヒント。”真実を語らせろ”。
そう、テレビやSNS、インターネットには神聖なる “真実” を知りもしないのに、すべてを知っているかのようにまことしやかに偽や想像の真実を語る民衆があふれています。そうした憶測、嘘、欺瞞は、憶測、嘘、欺瞞を呼び、いつしかゴミの山のようにふくれあがり、そこにある真実を覆い隠してしまう。
我が国で起こった2024年初頭の悲劇。北陸の大地震や飛行機事故を見ればわかるはずです。専門家でも、当事者でもない人間の発する言葉はほとんどがノイズで、むしろ状況をひどく悪化させます。
ここ10年で世界に定着したノイズの海。EARTHSIDE はそうした分断と欺瞞の世界に危機感を感じ、だからこそ、世界の様々な文化、人生、背景を持つ語り部たるシンガーたちに、”真実” を語らせることにしたのです。そう、これは “私” だけの作品ではありません。”私たち” すべてにむけた世界を良くするための “音画” なのです。
今回弊誌では、Ben Shanbrom にインタビューを行うことができました。「10代の頃から日本の芸術性は、Dir en grey や宇多田への深い愛であれ、碇シンジとその仲間の実存的な葛藤であれ、僕に大きなインスピレーションを与えてくれたんだ」 二度目の登場。 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SARAH PENDLETON OF THE OTOLITH !!
“It Is Worrisome And Frightening How Easily We Seem To Slip Back Into The Grave Mistakes Of The Past And Allow Ugliness And Hatred And Aggression To Poison Us. Vigilance And Memory Are Vital. Love Is Vital”
DISC REVIEW “FOLIUM LIMINA”
「”Bone Dust” はウクライナ侵攻の前に書かれたものだけど、自分の家を守るための歌。私たちは簡単に過去の重大な過ちに戻り、醜さと憎しみと侵略に毒されることを許してしまうようね。心配だし恐ろしいわ。警戒心と記憶力は不可欠だと思う。何よりも、愛は不可欠よ」
世界は多くの場所、様々な理由で燃えているように思えます。だからこそ、”過去” という灰の中から生まれた THE OTOLITH の “Bone Dust” は2022年に必要なアンセムにも感じられるのです。見事にサンプリングされた “独裁者” におけるチャップリンの演説と同様に、この楽曲は徐々に強度と熱を増し、燃え盛る世界の醜さ、憎しみ、不条理に対して教訓という愛を注いでいきます。
THE OTOLITH 63分のデビュー作 “Folium Limina” は、”Sing no Coda “に聞こえる遠い教会の鐘から、TOOL のような陶酔感の “Andromeda’s Wing”, ISIS を思わせるドラマティックなクローザー “Dispirit” の最後の音までリスナーは絶句し、静寂と轟音、美麗と醜悪の狭間で人間の業を知り、それでも希望という名の光を胸に秘めて生を見つめます。
「SUBROSA の終焉は、私たちにとって胸が張り裂けるような出来事だったわ。予期せぬ出来事で、私たちは何ヶ月も悲しみと混乱と嘆きに包まれていたの。でもね、グループのメンバーの一人がその一員であることを望まなくなったとき、最終的にはそれを受け入れて前に進まなければならないの」
THE OTOLITH は、ソルトレイク・シティで愛された SUBROSA の灰の中から生まれたバンド。元 SUBROSA のメンバー Sarah Pendleton、Kim Cordray、Andy Patterson、Levi Hanna と、VISIGOTH のベーシスト Matt Brotherton で新たな生を受けました。THE OTOLITH は不死鳥のように蘇るのか。それとも、イカロスのように燃え尽きるのか。求めよ、さらば与えられん。5人のデビュー作 “Folium Limina” は明らかに SUBROSA の遺品をさえ凌ぐフェニックスに違いありません。
「”Otolith” とは、ギリシャ語で “耳の石” を意味する言葉。内耳にある小さな水晶の構造物なのよ。バランス、動きの検出、音の検出を助けるの。アルバム・タイトルのフォリアとは、脳の中にある葉っぱのような構造物で、電気や電磁波のエネルギーを伝導させる働きをする。木の枝のように見えるわ。そして、リミナという言葉は、覚醒と夢想の間、シラフと陶酔の間、生と死の間などの心の辺境状態に由来している」
耳の石の名を冠した THE OTOLITH は、SUBROSA の残したものをある程度は受け継いでいると言って良いでしょう。巨大でアヴァンギャルドなドゥームを得意とし、情景を映し出すモノリシックなメランコリーが彼らの命題。氷河のようなリフがドゥーミーな海に突き刺さり、幽霊のようなヴァイオリンがその表面を悲しみの色に染め上げます。
美と破滅の間に境界線を引かず、幽玄なストリングスとダイナミックなベース、ギター、パーカッションを織り込んだ闇のタペストリー。現実と夢想、生と死の狭間で輝くのは Sarah と仲間の千変万化な歌唱。深く掠れた咆哮、礼拝的な詠唱、合唱のような澄んだ歌声は、SUBROSA の影をなぎ払い、キャッチーで、ダイレクトで、ドラマティックな THE OTOLITH の現在地を内耳の水晶へと刻みます。
「誠実さ、純粋な感情こそが、音楽を作る上で最も重要なピースだと信じているわ。だから、私たちにとって、それは今も変わっていない。その感情がネガティブなものであろうとポジティブなものであろうと、誠実である限り、すべての楽曲に含まれるべき唯一の要素なのよ」
誠実、純粋、愛。THE OTOLITH のスロウ・バーンはそうした感情の大切さと共に、過去の過ちから学ぶべき知恵の輝きを再確認させてくれます。残虐で冷酷な悲壮から切ない美しさまで、音のスペクトラムを横断する6曲は、近年稀に見る “アルバム” 志向の作品。つまり、これはタペストリーであり、美しく説得力のあるしかし欠点に満ちた人生の教科書なのでしょう。メタルを通して生命を吹き込まれた人間の経験は、暗く、美しく、思慮深く、超越的なものとなるはずですから。
今回弊誌では、Sarah Pendleton にインタビューを行うことができました。「ヘヴィ・メタルはバラエティに富んだ多元的な世界なの。木星サイズの抽象画のように、より多様になり、渦を巻き続けているのよ。私たちは、どんなサブジャンルに分類されようが、そこからこぼれ落ちようが、その世界の一部であることに恍惚としているの」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL DROSTE OF AHAB !!
“Listening To The Repetitive And Gloomy Atmosphere Of Funeral Doom Immediately Created Pictures In My Mind.”
DISC REVIEW “THE CORAL TOMBS”
「ジュール・ヴェルヌの “ノーチラス号” の小説は、”白鯨” に次いで、航海小説の中で最も人気のある物語。僕は60年代のディズニー映画で初めてこの物語に触れ、子供の頃本当に大好きだったんだ」
ドイツが生んだフューネラル・ドゥームの巨神 AHAB は常に深海に魅せられてきました。ハーマン・メルヴィルの “白鯨” に登場する狂気の船長を名乗る彼らの作品は、未知の世界への航海と、未知に隠された恐怖という名のカタルシスをいつも表現しているのです。
さながら IRON MAIDEN の大作 “Rime Of The Ancient Mariner” を深く暗い海底へと沈めるかのように、深海のフューネラル・ドゥーム集団は2006年の “The Call Of The Wretched Sea” で白鯨を語り、そこから2009年の “The Divinity of Oceans” でマッコウクジラによるエセックス捕鯨船沈没を舞台とした海の脚本を演じ続けました。
さらに、エドガー・アラン・ポーの “ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語”(2012年 “The Giant”)や、ウィリアム・H・ホジソンの “The Boats Of The Glen Carrig”(2015年の同名アルバム)においても、深海の神秘性とアトモスフィア、そして “自由” を、その深みを持った重くて広がりのある葬送曲で見事に表現してきたのです。
「強硬派に言わせれば、ドゥーム・メタルがドゥーム・メタルであるためには特定の様式美が必要だと主張するだろうが、ここには自由がある。これまで AHAB のために作曲している間、限界を感じたことは一度もないからね。ドゥーム・メタルというと、まずそのスロー・テンポや独特のハーモニーを思い浮かべるだろうけど、それ以外にも、ほとんどすべてのジャンルの要素を取り入れることができる自由があるんだ」
なぜ AHAB がこれほどまでに深海へと魅了されるのか。それはきっと、ドゥームと同様に海の底にも “不自由の中の自由” が存在するから。たしかに、光の届かない高圧の海底と同様に、ドゥームには重くて遅い反復の美学という確固とした不文律が存在します。しかし AHAB は、その不自由という音の檻を神秘性やエニグマという魅力へと変えながら、ドゥーム・メタルの長所を引き立てていきます。
つまり、”フューネラル・ドゥームのダークなムードとモノトーンな雰囲気においては、メロディやリズムのシンプルな変化で大きなインパクトを与えることができる” という Daniel の言葉通り、AHAB は屍が降り積もる真っ暗な海底でなお、音楽的な実験と冒険を繰り広げているのです。
「小説という雛形にとって、その物語の解釈に間違いや正解はない。目的ははアートであり、制限やルールは存在しないはずだからね。そして、それこそが僕が作曲をする上で好きな部分なんだ」
深海の語り部が “The Coral Tombs” で挑んだのは、ジュール・ヴェルヌの名著 “海底二万里”。オープニングから、物語のため彼らがはるか海面下に降りていくのが伝わります。”Prof. Arronax’ Descent Into The Vast Oceans” は、不協和音の予期せぬ爆発で始まり、ブラストビートと悲鳴で真っ暗な海道へと突入。スロウでドゥーミーなものを想像していた人には衝撃的な導入部。
一方、”The Sea as a Desert” は、海の砂漠が漂う即興的でサイケデリアを帯びた楽曲。そして、このアルバムの美しくミニマルな瞬間は、主にポストロックに由来していることが明らかとなっていきます。そう、AHAB の新たな冒険は、明らかに以前よりも多様化し、語り口が増幅されているのです。
特筆すべきは Daniel の歌声で、スクリームは魂の奥底まで浸透し、彼のクリーンな歌声は今までのどのアルバムよりも力強くエモーショナル。新たな武器を得た船長は、テンポ、テンション、メロディ、楽器編成をダイナミックに変化させ、レイヤーを緩やかに行いながら、重厚なメランコリーで彼らが熟練の船乗りであることを証明していきます。穏やかなアンビエンスから死のドゥームまで巧みに変容する音楽は、未曾有の音楽体験だと言えます。
それでも、”The Coral Tombs” の大半がドゥームであることに間違いはありません。外部からの影響はこれまで以上に大きいかもしれませんが、AHAB サウンド骨子となる、噛み応えのあるリード、引きずるようなリフワーク、そして沈むようなリズムの波は、未だに海の神秘を尊さまで備えながらリスナーの鼓膜をさながら海底地震のごとく揺らすのです。
今回弊誌では、Daniel Droste にインタビューを行うことができました。「AMORPHIS の “Tales From The Thousand Lakes” と HYPOCRISY の “The Fourth Dimension” を見つけたとき、10代の僕は本当に感動したんだ。アグレッシブな音楽は聴いていたけど、アグレッシブな音楽とダークなアトモスフィア、そして AMORPHIS の曲で使われているオリエンタルなメロディーの組み合わせは、僕を強く惹きつけるものがあったんだ」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALASDAIR DUNN OF ASHENSPIRE !!
“What We Wanted To Do Though Was Expand That Observation On Western Class Dynamics, Look Underneath It, And Then Show How Those Underlying Motives And Mechanisms Of Late-stage Neoliberal Capitalism Saturate Every Level Of Society.”
DISC REVIEW “HOSTILE ARCHITECTURE”
「僕たちがやりたかったのは、西洋の階級力学に関する観察を拡大し、その背後を注意深く探り、後期新自由主義資本主義の根本的な動機とメカニズムが、社会のあらゆるレベルに飽和してしまっていることを示すことだった。結果として、労働者階級の劣悪な居住環境は、より広い問題の徴候に過ぎず、僕たちはそのことに注意を促したかったんだ」
大都市に住んでいれば、ホームレスや劣悪な居住環境で暮らす労働者の存在を切り離すことはできません。公園のベンチの真ん中に作られた鉄のレール、日よけの下にあるスパイク、絶え間なく点滅するライトなど、持たざる者に対する “敵対的な建築” は現代の都市デザインの主流となっていて、公共の建築物は一時的なシェルターとなるどころか、多くの人を抑圧しています。
スコットランドの建築メタル ASHENSPIRE は、そうしたモダンで冷徹な建築物を現代社会を観察するレンズとして、富の不平等、階級闘争を取り巻く様々な問題を映し出していきます。2017年の “Speak Not of the Laudanum Quandary” で、これまであまり議論されてこなかった歴史の残虐行為に焦点を当てた ASHENSPIRE。しかし、私たちはそれでもまだ学べず、また同じ過ちを犯しているのでしょうか?敵対的な建築物は、今、この瞬間も、リアルタイムで抑圧の甍を叫んでいます。
「資本主義リアリズムとは、労働者階級や疎外されたコミュニティといった社会から恩恵を受けるべき人々の想像力を制限することで、そうやってアメリカはこの不平等な秩序を維持している。
そうやって労働階級や抑圧された者たちが皆、この世界(後期新自由主義資本主義世界)が可能な限り最高の世界だと信じさせられているから、それを変えるために戦うのではなく、単に抑圧に耐えようとし、それを “世の中の流れ” あるいは “あるべき物事のあり方” として受け流し、最終的に彼らを搾取する側に利益をもたらす態度をとってしまうんだ。このような状況から抜け出すのは大変なことだと思う」
ドラマーで、歌い手でもある Alasdair Dunn の言葉には、無慈悲に断罪された者たちの悲愴や無念が漂っています。”Hostile Architecture” の中心には、抉り取られた魂がボロボロに蠢いていて、それぞれが幻滅のマントラを唱えているような感覚に陥ります。”3ヶ月で貧民街に逆戻り”、”偉大なヤツなどいない。多くのモブが偉大なのだ”、”俺たちは仕事のカルト、カルト労働者だ”…ASHENSPIRE はそうした言葉をハンマーのように扱って、アヴァンギャルドなメタルと共にそのメッセージをリスナーの耳へと叩き込みます。
血のコーラスに研ぎ澄まされた詩を織り交ぜ、感情のクレッシェンドを司り、多種多様な楽器の怒りでフラストレーションを切り裂いていきます。つまり、A FOREST OF STARS との比較はある程度的を得ていて、独自のスパイラル、苛烈でありながら振動するアイデンティティを計算された自信で表現しているのです。
「機能的な建築物であると同時に前衛的な表現であるという点で、僕たちの音を象徴するような物質的な建物はそうそうないと思うけど、ニコライ・ラドフスキー(合理主義運動の魅力的な前衛建築家)が1921年に “コレクティブハウス” “集合住宅” のスケッチを描いているんだ。もし僕たちの音楽が建物になるとしたら、あのような感じになるだろうな」
解散した ALTAR OF PLAGUES のスワンソングと同様に、ASHENSPIRE はポスト・メタルを思わせる設計図でカオスの層を積み重ね、催眠術のような効果をもたらします。ただし、ASHENSPIRE の集合住宅では、無骨で冷淡な”工業的な” 雰囲気よりも、ハンマー・ダルシマーやヴァイオリンの有機的振動で反抗世界が彩られ、最も暗い瞬間を美しくも儚く鳴らしています。つまり、”Hostile Architecture” は、後期新自由主義資本主義下において、都市の文脈で制約された様々な構造の階層と抑圧が再び動き出す方法を探る音響作品なのでしょう。
つまり、この作品は、ブルータリズム、ポストモダン、実用主義的な建築構造からインスピレーションを得ていて、産業革命後の都市の至る所で見受けられる本質的に呪術的で、手頃な価格のコスト削減住宅や、ホームレス対策用の手すりやスパイクを通して、コンクリートで固められた矛盾の不協和音に本来の住むとは、生きるとはの問いを投げかけているのです。
今回弊誌では、ASHENSPIRE の首謀者 Alasdair Dunnにインタビューを行うことができました。「僕が書いていた音楽は、他の多くのバンドが喚起するロマンチックなスコットランド観に反するものだとわかっていたからこそ、まず、スコットランドとの関連を明示したかったんだよ。過ぎ去った時代にグラスゴーのスカイラインを支配した煤と煙を吐き出す煙突、次に、それらの煙突の多くを映し出す、またはそこから発展したように見える高層アパート群を参考にしてね」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN BRODSKY & JOHN-ROBERT CONNERS OF CAVE IN !!
“I Guess Heavy Pendulum Could Mean How One Decides To Use Their Time Navigating These Hardships. The More Weight That We Allow Things To Have In Our Lives, The Heavier The Pendulum Swings.”
DISC REVIEW “HEAVY PENDULUM”
「Caleb が命を吹き込んだ曲を演奏することで、この2つのバンド (CAVE IN と OMG) 全員が彼の思い出を一緒に祝うことができて、とても感慨深いものがあったんだ。そして、あのイベントを企画し、参加してくれたすべての人々から受けたサポートは、とても心地よく、僕たちが創造性を前進させ続けるべき理由を思い出させてくれたんだよね」
マサチューセッツのヘヴィ・ロック・カルテット CAVE IN は、度重なる活動休止、ラインナップの変更、そして長年ボーカル/ベースを務めた Caleb Scofield の急逝など、重く苦しい経験と戦い続けてきました。Caleb の死をきっかけにリリースされ、彼がバンドのため最後に尽力した2019年の “Final Transmission” がそれでもバンドのほろ苦いスワンソングとならなかったのは、CAVE IN が養ってきた強さと共に、世界が彼らを求め、喪失の苦しみを共有し、サポートしたからに他なりません。
「”Heavy Pendulum” の制作では、20年代の暗い世界を尋常ないほど意識していたんだ。このアルバムのタイトルには、そうした苦難を乗り越えるために時間をどう使うかを決める、そんな意味もあるんだろうね。人生における物事の重みが増せば増すほど、振り子の揺れは重くなるのだから」
“重い振り子” と名付けられたアルバムには、苦闘と革新を続けてきた CAVE IN の折れない心、粘り強い才能が見事に投影されています。人生は振り子のようだ。良い時もあれば、悪い時もある。多くのトラウマに耐えた後、これほどの傑作で “幸福” に振り戻すことは決して容易ではないでしょう。巨大なリフとアンプを最大限活用した純粋なヘヴィ・ロックは、優雅と複雑のサブリミナル効果を活用しながら、悲しみと喪失があふれる世界に一筋の光を投げかけます。
「このレコードでは、2017年、 “Final Transmission” となった作品のスタート時に、Caleb が僕たちに勧めたビジョンを完全に具体化したかったんだ。だからある意味、借りを返すというか、約束を果たす意思こそがバンドが今回、より高いレベルに昇りたいと思う原動力となったんだ」
2000年代初頭、CAVE IN は90年代のハードコアを取り入れた作品群に続いて、新しいサウンドを模索。2000年にリリースされた “Jupiter” では、Brian McTernan 指揮のもと、スペースロックとアバンギャルドの影響を大きく取り入れるように変化。2003年、RCAレコードというメジャーに移籍すると、ポップとも捉えられる音楽性で大舞台での可能性を追求。
カオスもエモも、メタリック・ハードコアもドゥームもオルタナも捕食し、カラフルな繭で巣作りを続けてきた肉音獣。そのターゲットの変遷には常に確固とした理由がありましたが、Relapse に移籍を果たした “Heavy Pendulum” の原動力は故人との固い約束でした。
「悦生さんと彼のバンドやプロジェクトに直接触発された、僕の最近のノイズへの旅の始まりのいくつかは、実際に CAVE IN の新曲で聴くことができるよ。”Blinded by a Blaze” の終わりと “Nightmare Eyes” の終わり近くは、彼と彼の仲間を念頭に置いて演奏したんだよね」
CAVE IN が失ったのは、Caleb だけではありません。彼の追悼イベントともなった “Leave Them All Behind 2020” で共演し感銘を受けた ENDON の那倉悦生氏、そして POWER TRIP の Riley Gale。きっと亡き二人の実験魂もこの作品には生きています。
“CAVE IN は、実験とリスクを冒すときに最高の状態になる” そんな格言が生まれそうなほどに、この大作は挑戦的。もちろん、スラッジやポストメタルの “重力”、”Floating Skulls” や “Careless Offering” のような銀河系プログレッシブ・メタルはこのアルバムの基軸でしょうが、それだけではありません。
例えば、”Reckoning” は、ダーク・アメリカーナと FLEETWOOD MAC の蜜月を堪能できる CAVE IN の枠を超えた逸品ですし、タイトル曲の “Heavy Pendulum” はブルースのリズムをグランジの色合いで染め抜き、彼ららしい特徴的なギター・サウンドを使用した感情の洞穴。”Blinded by a Blaze” は SOUNDGARDEN や ALICE IN CHAINS と “Jupiter” における冒険が、ENDON を触媒に融合しているようにも思えます。
一方で、メタルマシーン “New Reality” や “Blood Spoiler” で新加入 Nate Newton が吠える喉をかき切る印象深いハウリングも見事。12分のフィナーレ “Wavering Angel” はまさに現在の CAVE IN を物語る真骨頂でしょう。もしかするとこの完全無欠に構築されたアートは、21世紀における LED ZEPPELIN、そんな異次元の領域を引き寄せたのかもしれません。時間もジャンルも、生と死さえも超越した音楽という深い好奇心の湖。
今回弊誌では、Stephen Brodsky と John-Robert Conners にインタビューを行うことができました。「悦生さんをはじめ、ENDON のメンバーの皆は、僕にとても親切にしてくれたんだ。悦生さんは “マッドマックス” に出てくるようなメッセンジャー・バッグのような楽器を演奏していたんだけど、僕はアレが今でもどんなものなのかわかっていないんだ。彼は、それだけでも非常にユニークなバンドのルックスとサウンドに、さらに特別なものを加えていたね」
苦難を乗り越えて前進することを決意し、轟くような激情と高鳴るフックの狭間で素晴らしいバランスを確保。サイクルの終わりにして始まりの作品は、CAVE IN の過去に敬意を表しながら、豊かな未来を予感させてくれますね。どうぞ!!
CAVE IN “HEAVY PENDULUM” : 10/10
CAVE IN are (associate acts)
STEPHEN BRODSKY: Guitar / Vocals
スティーヴン・ブロッズキー (NEW IDEA SOCIETY, CONVERGE, MUTOID MAN, OLD MAN GLOOM)
JOHN-ROBERT CONNERS: Drums
ジョン-ロバート・コナーズ (NOMAD STONES, DOOMRIDERS)
ADAM McGRATH: Guitar / Vocals
アダム・マッグラス (CLOUDS)
NATE NEWTON: Bass / Vocals
ネイト・ニュートン (CONVERGE, OLD MAN GLOOM, DOOMRIDERS)
CALEB SCOFIELD
ケイラブ・スコフィールド (ZOZOBRA, OLD MAN GLOOM)
“Off Course In Messa All These Elements Are Somewhat Used As Contrast, Or As a Way To Expand The Sonoric Palette We Have At Our Disposal. Contrast Is a Very Important Thing In Our Music.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH COLIN H. VAN EECKHOUT OF AMENRA !!
“It’s Sad To See That Empathy And Solidarity Are Vanishing Concepts. It’s Easy To Be Unkind And Coldhearted Towards Eachother From Behind a Computerscreen. The World Seems To Become Harsher And Harsher To Live In. Even Having Eye Contact Will One Day Become Something Hard To Do. Heart To Heart, That Is What We Need.”
DISC REVIEW “DE DOORN”
「すべてのパートを完成させて録音したとき、これは “Mass VII” ではないかと自問したよ。だけど、皆がそうではないと分かっていた。それは新しいものだった。ダイナミクスが変化し、以前は単に目撃者、私たちの個人的な物語の目撃者として招かれていたリスナーが、コミュニケーションの積極的なメンバーとなっていたんだよ」
AMENRA は結成以来20年間、痛みと苦しみを紡ぎ続けています。ポスト・メタルの壁のようなサウンドと、Colin Van Eeckhout のひりつくような叫び。彼らのミサは犠牲と傷跡の荘厳な儀式です。
ミサの書は AMENRA のメンバーの1人または複数が、人生を変えるような経験をした後に書かれてきました。時には酷いトラウマになるような経験。ただし、今この時、彼らはその闇の儀式から離れる運命を感じていました。
「このパンデミックは、自分自身だけでなく、周りすべての人間と内省し、つながるためのプラットフォームだよ。人類はかつてないほど分裂し、個人に焦点を当てている。今ある共感と連帯感は、私たちが種として存続していくためには十分ではないだろう。物事はシフトし、変化する必要があるんだよ」
AMENRA は、他の多くのバンドのように、プロモーションやライブが困難なパンデミックの独房を避け、内省の時から逃げることなどは当然よしとしませんでした。この暗く孤独な時間をむしろ、分断された世界を再びつなげるための有効なプラットフォームとして活用しようと決めたのです。仮初めのつながりではなく、真のつながりを求めて。
「共感や連帯感という概念が消えつつあるのは、とても悲しいことだよ。コンピュータの画面の向こうでは、お互いに思いやりのない冷淡な態度をとることが簡単にできるからね。世の中はどんどん生きづらくなっているようだ。目を合わせることさえ、いつかは難しいことになるだろうな。心と心を通わせること。それが私たちに必要なことなんだ」
身の回りの苦難や危機に対応して有機的に構築された個人的な苦悩の記録ではなく、リスナーと痛み、苦しみ、そしてほんの一握りの希望を共有するための作品。それが “De Doorn” の正体です。
英語で “The Thron” 棘と題された作品のアートワークには荊が描かれています。アートワークは作品のストーリーを映し出す鏡と公言する Colin。そしてこの無骨で非対称な植物の武器は、そのまま人間が他者に感じる不信感や警戒感をあらわしているのです。私たちは、その尖って攻撃的な鋭い棘を、ゆっくりと、一つ一つ丁寧に取り除いていかなければなりません。
「”誰かに話しかける” というのは、最も純粋なストーリーテリングの形。別の人に直接語りかけるという行為がね。私たちはアルバムにおける語りを、必要以上に大きな音でミックスしたんだよ。誰かが君の隣に立っているように感じられるように。誰かがそこにいて、必要であれば導いてくれるということを感じられるようにね」
OATHBREAKER のシンガーとして活躍する Caro Tanghe と Colin は、2人の故郷フランドル地方の言葉フレミッシュで歌われたアルバムで、これまでのどの作品よりも優しく、悲しく、痛々しく、労わるようにリスナーに向けて文字通り語りかけました。
オープナー “Ogentroost” は、ギター、ノイズ、メロディーの波によって感情が剥き出しにされる10分間の大作で、母親の穏やかなまなざしに見つめられながら、Colin は永遠にも思える戦争の恐怖についてやるせなく憤慨し、思いの丈をリスナーと共有します。”De Dood in Bloei”(直訳すると “花咲ける死”)のリリックはより直接的。”灼熱の太陽が沈み/すべての光が失われ/埋葬された遺体が/塵と化す…愛が否定され/すべての美しさが/枯れて死んでいく”。争いの悲劇を語る、美しくも呪われた言葉の重みはそのまま私たちの心へとつながり、反戦への創造的な輪を生んで行きます。
闇を抜けた AMENRA が見出した敬虔なる希望。それは “De Evenmens” の中にありました。「人生とはほんの一瞬、美しさと幸せを伴う悲しみの旅。人と人の相互的な関わりの中で、あるがままを受け入れること。歴史にとって私たちはほんの一瞬の存在、だからこそ “居場所” を大切にしなければならない」個人主義や分断とは真逆の価値観が、世界を溶かしていきます。
アルバムは LINGUA IGNOTA との火の儀式に捧げられた “Voor Immer” でその幕を閉じます。スポークンワードのスローバーンは、いつしかドゥーミーな壮大さを起爆し、まさにファイア・リチュアルとして燃え上がります。カリヨンの鐘を伴奏に大地と空を結びつける奇跡は、第一次世界大戦終結100周年の記念式典のために書かれたものでした。息子を失った母親。破壊された都市、放置された死体。そんなフランドル地方の悲しみは、100年の時を経て AMENRA の手によってすべてが燃やされました。高らかな炎は希望の象徴。その希望を見出すための歌には、平和を続けていくための強さも込められて、現代社会へと念入りに届けられたのです。
今回弊誌では、Colin H. van Eeckhout にインタビューを行うことができました。「人類が混乱している中、私たちは他のバンドのようにパンデミックの終わりを “待つ” ことはしたくなかった。私たちの音楽は、このような瞬間のために書かれたものだと思っているからね」二度目の登場。日本盤は Daymare Recordings から。どうぞ!!
AMENRA “DE DOORN” : 10/10
INTERVIEW WITH COLIN H. VAN EECKHOUT
Q1: In our last interview, you said, “We need to have a real reason to write a new mass album.” This time it’s not a mass album, but could you tell us the reason first?
【COLIN】: Thats because we didn’t have the right reasons to write a “Mass album”. A Mass has always been written following a period, where one or more of AMENRA’s members endured a life altering experience. Traumatic sometimes. That’s where we came together to actively work on a new Mass.
This time around the album formed itself, without us realizing it. In 2018 we started writing music for a special ceremony we had to create for the commemoration of the end of the first world war. Then several live and fire rituals followed throughout our country, which we also wanted to accompany with specific music and sounds. And when we had done with that our guitar player made us realize that we actually had written an album. When we finalized and recorded all the parts, we asked ourselves if this was Mass VII and we all knew it wasn’t. It was something new. Dynamics had shifted, the listener was now an active member in the communication, whereas in the past they were merely invited in as witnesses. Witnesses to our personal story.
Q2: Since the release of the last record, the world has witnessed and experienced various distortions such as pandemics, powers getting out of control, and BLM. Did those events give you a reason to make a new album?
【COLIN】: I believe BLM is actually advocating for a less divided society.
No, they haven’t, the album was written in the years before all these shifts started to happen. We merely mixed and mastered the album in the first months of the pandemic.
These endtimes did make us realize that this was the right time to release it. In the middle of humanity’s turmoil, we also did not want to “wait out” the pandemic as most bands do. We know that our music is written for these moments. Collective trauma. Solitary confinement if you will. It is a platform for introspection and connection, not only with the self but also all humans around you. Humanity has never been so divided and focused on the individual. Empathy and solidarity are not present enough for us as a species to continue and survive. Things need to shift and change.
Q3: For Amenra, this interval was marked by the 100th anniversary of the end of World War I, the 20th anniversary of the band, and the departure of longtime member Levy Seynaeve… could it be said that the event at the SMAK Museum Of Contemporary Art tied it all together?
【COLIN】: No, I can’t say it did. What it did do is make us realize that we are slowly getting where we wanted to be as a “band”. More than a band. Connecting different media and kindred spirits, artists. Mixing music and all the arts, healthcare even. To use music to its full extent or potential.
All these special events in our 20th year of existence celebrated our profound friendship above anything. And “ De doorn” became the document of that time period. The possibilities given to us by the musea, arts centers here proved us that we are touching a universal emotion and demand.
The fire rituals made it possible for us to connect with our audience in a way more profound than we ever did. Everybody there felt aligned in the moment, connected in ways that our modern society has forgotten.
Q3: このインターバルで、AMENRA 自体はバンドの20周年、WWI終戦100周年、そして長年のメンバーだった Levy Seynaeve の離脱を経験しましたね?
先程お話しにも出ましたが、SMAK Museum of Contemporary Art でのイベントがその点と点を繋げたとも言えるのでしょうか?
Q4: In the last interview, you said about the artwork of the swan, “Like with everything we want to tell a story, we want to lay out a blueprint to a ‘world'”. The artwork for this album is briar. What did you mean by that?
【COLIN】: I grew fascinated by thorns, in all different sizes and forms. Thorn branches I loved its rugged beauty, its perfect non symmetric imperfection. Nature had formed a weapon for its creations, to protect themselves from outside harm. Flowers can protect their beauty, plants, bushes can protect their seeds, their fruits. I transposed that idea on humans. Throughout life we all grow our own specific thorns. We arm ourselves against potential harm, put up our guard and grow to mistrust.
And at the same time we all walk around with wounds and scars that were created by other peoples thorns.
With the help of friends, I casted 6 different thorn branches in bronze. Each branch symbolizing a musician that cooperated on the album. Bronze, gold colored to emphasize its value to the whole.
Q4: 前作のインタビューであなたは白鳥のアートワークについて、「アートワーク以外にもストーリーを伝えるための全てに言えることだけど、私たちは作品 “世界” への青写真を描きたいと思っている」 と仰っていましたね。
“De Doorn” (The Thron) と題された今回のアルバムには、荊が描かれています。
Q5: In the album, there were many scenes where you narrated the story, and sounds like a live performance which was impressive. It seems to me that you are showing the importance of interactive dialogue to the world, a world that is connected only by smartphone to smartphone, machine to machine. Would you agree?
【COLIN】: I agree completely, that is why there is a focus on basic human interaction. “Talking into someone” the purest form of storytelling. A direct line into another person. We even mixed it a little louder than it should be. So it would really feel like someone is standing next to you. Its about feeling that someone is there, offering guidance if wanted.
It’s sad to see that empathy and solidarity are vanishing concepts. Its easy to be unkind and coldhearted towards eachother from behind a computerscreen. The world seems to become harsher and harsher to live in. Even having eye contact will one day become something hard to do.
Heart to heart, that is what we need.
Q5: 今回のアルバムには、あなたと Caro がストーリーを朗読する場面が多いですよね。ライブ・パフォーマンスを間近に感じるようなサウンドも素晴らしいですね。
このやり方は、機械と機械、スマホとスマホだけで繋がる現代の人間関係に対して、直接的で相互的な会話の重要性を示しているようにも感じました。
Q6: This time in particular, I feel that it reflects the sadness and pain of Flanders. Still, I felt that the combination of you and Oathbreaker’s Caro Tanghe gave me a sense of divine hope. Could you talk about her role in this record?
【COLIN】: Hope. I am always pleased to hear people hear the hope in our music. It means they have dived in there deep enough. To see through all the darkness. It has always been and always will be about finding light in that darkness.
It was only after it was finished that we thought of Caro. It have been a few years since we had cooperated on anything. And as Lennart had written most of this album, and played with her in Oathbreaker, all arrows pointed direction Caro to join us on this one. We met up with her in Providence US in January 2020 and recorded her vocal parts there. It was nice to see eachother again and hangout. as it was all flemish and she is an amazing artists, we are very happy all of this came together so perfectly.
Q6: 同時に、”De Doorn” では特に、フランドル地方の悲哀を反映しているようにも感じられました。
それでも、同郷 OATHBREAKER の Caro Tanghe とのデュエットでは、僅かな希望も滲ませていますよね?
【COLIN】: 希望。私たちの音楽の中にある希望を聞いてもらえると、いつも嬉しくなるよ。それは、君が十分に深く私たちの音楽に潜ったという証だから。すべての暗闇を見通すためにね。これまでも、そしてこれからも、その闇の中に光を見出すことが私たちの目的なのさ。
Caro のことを考えたのは、楽曲が完成してからだった。私たちが協力して何かを作るのは、数年ぶりのことだったね。そして、Lennart がこのアルバムのほとんどを書き、OATHBREAKER で彼女と一緒に演奏していたから、すべての矢印はこのアルバムへの Caro の参加を指し示してていたと言えるだろうな。
2020年1月にアメリカのプロビデンスで彼女と会い、そこで彼女のヴォーカルを録音したよ。お互いに、再会して一緒に過ごすことができて良かった。すべてがフラマン語で、彼女は素晴らしいアーティストだから、このように完璧にまとまったことをとても嬉しく思っているんだ。
Q7: I interviewed a band called Neptunian Maximalism, who said about the concept of their work “It turns out that we are mistaken to think of the human being so unique in his process of evolution.” They are also from Belgium like you, what do you think about their way of thinking?
【COLIN】: Every creation is as unique as the other. That is nature.
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JACKIE PEREZ GRATZ OF GRAYCEON !!
“I Made a Pact To Myself That If There Are No Women On The Bill I Won’t Go To The Show, Or If I Am The Only Woman On the Stage, I Won’t Accept The Gig. In Doing This, It Makes The Booking Agents Aware That If They Want Grayceon They Better Get At Least One Other Band That Has a Female In It.”
DISC REVIEW “MOTHERS WEAVERS VULTURES”
「GRAYCEON は決してチェロのことを一番に考えたことがないのよ。チェロという楽器のために特別に何かを書いたり、仕立てたりしているわけではないし、バンドにチェロがいるという事実に基づいて作曲を決定しているわけでもないの。」
卓越したチェロ奏者であること。女性であること。親であること。メタル世界にとってこれまで決して当たり前でなかった物事は、GRAYCEON の中ではすでに当たり前として捉えられています。常識を超えて大きな感情を呼び起こすバンドのアプローチは、そうして本来あるべき姿をシーンへと自然体で伝えていくのです。
「ヘヴィーな音楽を弾きたいと思うようになって、少しの間ベースを弾いてみたんだけど、頭の中で聞こえていたものが弾けなくてイライラするようになったのね。ベースを置いてチェロを手に取ることもよくあったわ。そうしてある時点で、自分の弾き方をよく知っている楽器で、もっと重い音楽を弾くことを阻むものは何もないだろうと思ったわけなの。」
NEUROSIS や TODAY IS THE DAY との共演、AMBER ASYLUM, GIANT SQUID と百戦錬磨、クラッシックの教育を受けた Jackie Perez Gratz にしても、当初常識という固定観念は強固な壁でした。愛器のチェロを一度は捨ててベースへと持ちかえた過去、親となることでツアーを諦めた過去、ボーイズクラブに阻害された過去。GRAYCEON はそんな不自然と不条理を自然へと回帰させるプロジェクトです。
「自然こそが世界の魔法であり、私たちは目に見えない神ではなく、地球を崇拝すべきだということについて書かれているのよ。」
かつて Ronnie James Dio が唱えた魔法の呪文は、半世紀の時を経て “Mothers Weavers Vultures” へと形を変えて受け継がれました。「天国も地獄もない」Jackie は “The Lucky Ones” でそう何度も歌い上げます。すべてはまやかしの人工物。痛みや過ちを消し去る、神も死後の世界も存在しない。存在するのは、ただ地球のみ。自然の中で有限の存在として生きる本質的な真実、摂理の魔法。
“Diablo Wind” でカリフォルニアの山火事を憂い自然破壊に怒るのも、”Rock Steady” でパートナーへの愛情を募らせるのも、すべては有限の尊さを伝えるため。ドゥームの暗闇やスラッジの獰猛はプログフォークの神秘と時に反目し、時に融解していきます。それはさながら正義の怒りと愛の気高さを投影しているようでもあり、誰にでも訪れる確実な死が愛の価値を高めるという本質に言葉という歌詞と、チェロという音波の両面から迫っているようにも思えるのです。
生々しくも有機的な Jack Shirley のプロダクション、Zack の印象的なフィルインも不可欠。そうして、NEUROSIS の実験と MASTODON の野心、SUBROSA の陰鬱に Yo-Yo Ma の旋律を宿したメビウスのコンビネーションはその加速度を増していくのです。
今回弊誌では、Jackie Perez Gratz にインタビューを行うことができました。「私は、もし女性が出演していなければショウには行かないし、もし私がショウの唯一の女性であれば(少なくとも3つのバンドが出演している内の)ギグを受けないと心に誓っているの。そうすることで、ブッキングエージェントにもし GRAYCEON が欲しいなら、少なくとも女性が出演している他のバンドを1組は確保した方がいいと認識させることができるでしょ。それに、彼らが女性が出演していればより多くの女性がライヴに足を運ぶとことを知ることで、他のライヴのことも考えることになる。だから、ボーイズクラブの解体はブッキング、そして会場やエージェントがどのようなアプローチで観客を呼び込むかということから始まると思っているの。」 どうぞ!!
“We All Grew Up Loving BTBAM And While We Never Sit Down And Attempt To Write Anything That Sounds Like Them, Their Philosophy Of Letting a Song Take Any Twist Or Turn That It Wants Is Certainly Present In Our Music. If Anything, Our Bands Are Most Similar In Our Liberated Attitude Toward Writing Music.”
DISC REVIEW “THE ANGEL OF HISTORY”
「ポストメタルは間違いなく僕たちのサウンドの大きな部分を占めているね。たしかに完全にポストメタルとは呼べないかもしれないけど、でも同時に、完全にプログレッシブメタルとも呼べないかもしれないよね。」
音の革新は、概しておぼろげであやふやな秘境に端を発します。プログレッシブメタルコアをアステカの魔法とカオスで異次元へと導いたトリックスター、VEIL OF MAYA に見出された NYC の海獣 CRYPTODIRA は、その名の通り深海で数万年もの異種族交配を繰り返したモダンメタルモンスターです。
「僕らはみんな BETWEEN THE BURIED AND ME を愛して育ったからね。楽曲を自由自在に捻くれさせる彼らの哲学は、僕らの音楽にも確かに存在しているんだ。どちらかと言えば、僕たちのバンドは彼らと、音楽を書くことに対する自由な姿勢が最も似ているんじゃないかな。」
BTBAM の名作群を手がけた Jamie King をプロデューサーとして迎えたように、たしかに CRYPTODIRA は難解と容易、混沌と明快、暴虐と安寧、激音と静謐の狭間に巣喰いながらメタルの荒唐無稽を自由自在に謳歌しています。
「彼はとてもオープンマインドなプロデューサーで、僕たちのアイデアをより商業的にに手なずけようとするのではなく、可能な限りクレイジーなことをしてサウンドに自分たちの息を吹き込ませるよう促してくれたんだからね。」
実際、マルクス主義、精神分析、フェミニストやポストコロニアル理論など人類史におけるテーマを哲学的な視点から俯瞰し、理想と現実の狭間を示唆する “The Angel of History” は、常軌を逸したメタルの歴史書だと言えます。プログ、ポストメタル、ハードコア、デスメタル、スラッジ、マスコア、ジャズの豊潤なるアマルガムは、深海で熟成されためくるめくテクニックや多彩な歌唱スタイルで人と音の歴史を投影するのです。それは万年海獣のみに許された秘法。
もちろん、”Dante’s Inspiration” を聴けば、瞬きと同時にテンポや拍子が移り行く THE DILLINGER ESCAPE PLAN の数学が、千変万化な歴史の授業に欠かせない教科書の一つであることは揺るぎません。ただしその一方で、ポストメタルの申し子は嫋やかで美麗な対比の魔法を忘れることはないのです。それは歴史に宿る儚さでしょうか。
“Self-(Affect/Efface)” で “Alaska” のような精神病的グロウルが高らかなクリーンボイスに磨き上げられる瞬間、”The Blame For Being Alive” で Pat Metheny がオルタナティブやデスメタルに蹂躙される瞬間、天使とのデュエット、”The White Mask Speaks” に宿る荘厳なポストメタルのシネマトグラフィー。あまりにドラマティックな場面転換はさながら猫の目のごとく。リスナーは予想不可能なメタルと人類の未来に幾度も思いを馳せるはずです。
今回弊誌では、CRYPTODIRA にインタビューを行うことが出来ました。「日本のアーティストは、様々なジャンルを日々聴いているよ。ちょっと頭に浮かんだだけで、toe, Tricot, Mouse on the Keys, Passepied, ゲスの極み乙女, Indigo la End, 水曜日のカンパネラ, Snail’s House なんかをよく聴くよ。」 どうぞ!!