EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LIONEL CANO MUNOZ OF IMPUREZA !!
“Metal And Flamenco…Two Worlds That Seem To Be Opposites, But Which Share The Same Intensity, The Same Pain, The Same Rebellion. It’s This Mixture That Forged The Guitarist I Became.”
DISC REVIEW “ALCÁZARES”
「非常に美しい進化だと思うよ。メタルはついに、これまで以上にユニバーサルなものになりつつあるんだからね。各言語には歴史、色、文化があり、それを使用する者にリズムを与える。スペイン語は、僕たちの歌詞に特有の音楽性をもたらし、ドラマチックで激しく暴力的な側面を与え、メタルの力とフラメンコの強度を自然に融合させてくれるんだ」
BLOODYWOOD や THE HU の台頭により、メタルに宿る生命力、包容力、感染力がついに可視化されました。今やメタルに第三世界はありません。その大いなる寛容さで様々な地域、様々な人々の文化を暖かく包み込み、メタルの咆哮と旋律に共感を誘います。
“ヒスパニック・メタル” を標榜する IMPUREZA も、そんなユニバーサルなモダン・メタル世界を象徴するバンドのひとつ。フランスとスペインの伝統の炎…その熱き血潮で鍛えられた IMPUREZA は、エクストリーム・メタルとフラメンコの情熱的で激しい融合を20年もの長きに渡って、追求してきました。そして今、イベリア半島のアイデンティティを刃物のように操り、自らのルーツをメタルの中に浸透させた彼らの勇気に遂に時代が追いついたのです。
「僕はフラメンコとメタルという、非常に強力な2つの世界の間で育ったんだ。家ではパコ・デ・ルシア、カマロン・デ・ラ・イスラといったスペインのギター音楽を聴いていたんだよ。一方で、METALLICA, PANTERA, SLAYER, MORBID ANGEL, TESTAMENT, NILE などにも完全に浸っていた。一見対立する二つの世界だけど、同じ情熱、同じ苦悩、同じ反逆の精神を共有しているんだよ。このふたつのミックスが、ギタリストとしての僕を形作ったんだ」
そう、一見交わらないように思える様々な道を交わらせるのがメタルの力。しかし、そもそもフラメンコとメタルには、情熱、苦悩、そして逆境を跳ね返す回復力といった多くの共通項が存在しました。だからこそ、今回のインタビューイでありイベリアのギター・ヒーローLionel Cano Muñoz は PANTERA とパコ・デ・ルシアを同時に愛することができたのです。
「フラメンコには深い、悲劇的で、感情的、本能的な精神がある。メタルには、この解放的な音楽の力を通じて、僕たちの中に埋もれたエネルギーをアウトプットする能力がある。ただしふたつとも複雑な音楽で、多くの厳格さを必要とする。勇気は、この絶対的な誠実さから生まれてくるんだ」
とはいえ、これほど精巧で、荘厳で、ドラマティックなヒスパニック・メタルはまさに前人未到の領域。誰も踏み入れたことのない場所を開拓するためには勇気が必要です。そして、NILE や BEHEMOTH のように凶悪でありながら、OPETH のように挑戦的で、パコ・デ・ルシアのように革命的で苦悩と歓喜に満ちた “La Orden del Yelmo Negro” は、絶対的な勇気の歌。あの Jacob Hansen 指揮の下、見事に練られたクラシカルなストリングスとリズミックなパーカッションが、メタルの “レコンキスタ”、再征服を誇り高く宣言します。そしてもちろん、フレットレス・ベースの嗎はプログレッシブなデスメタルの矜持。
「スペインの歴史には、その偉大さと衰退の両方が刻まれている。政治的、宗教的、さらには神秘的な対立が多くの不幸の根源だけど、そうしたテーマは僕たちの創作に無限のインスピレーションを与えてくれる。僕たちは戦争を美化しようとしているわけではなく、その精神的、文化的、人間的な共鳴を探求しているんだ。戦争は確かに暴力的なものだけど、同時に深くて象徴的なものだと思う」
常にイベリアの歴史を物語ながら、ある種の教訓をもたらしてきた現代の吟遊詩人 IMPUREZA。今回のアルバム “Alcázares” で彼らは、血と死が今よりもはるかに近くにあった中世、レコンキスタをテーマに選びました。キリストとイスラム…血塗られた歴史と神秘が交錯する宗教と戦いのストーリー。争いから始まった文化と人の流動性はいつしか成熟され、洗練され、多様な背景を持つ人々を生み出し、ルネサンスの下地にもなりました。血と死に導かれたレコンキスタはまさに、メタルとフラメンコの “不純な” 婚姻にも似て、多文化共生、異文化共鳴の始まりでもあったのです。
今回弊誌では、Lionel Cano Muñoz にインタビューを行うことができました。「メタルは世界を変えることができない。それはたしかだ。だけど、ニュース、本、映画とは全く異なるチャンネルを通じて物語を伝えることならできる。そうやって、いつも僕たちに “逃避” する場所を与えてくれるんだ。メタルはおそらくこの世界におけるユニバーサルな言語であり、表現における最高の武器なんだ!」どうぞ!!
IMPUREZA “ALCÁZARES” : 10/10
INTERVIEW WITH LIONEL CANO MUNOZ
Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?
【LIONEL】: I grew up between two very powerful worlds: flamenco and metal. At home, we listened to Paco de Lucía, Camarón de la Isla, Spanish guitar… And alongside that, I was completely immersed in Metallica, Pantera, Slayer, Morbid Angel, Testament, Nile… Two worlds that seem to be opposites, but which share the same intensity, the same pain, the same rebellion. It’s this mixture that forged the guitarist I became.
Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【LIONEL】: 僕はフラメンコとメタルという、非常に強力な2つの世界の間で育ったんだ。家ではパコ・デ・ルシア、カマロン・デ・ラ・イスラといったスペインのギター音楽を聴いていたんだよ。一方で、METALLICA, PANTERA, SLAYER, MORBID ANGEL, TESTAMENT, NILE などにも完全に浸っていた。一見対立する二つの世界だけど、同じ情熱、同じ苦悩、同じ反逆の精神を共有しているんだよ。このふたつのミックスが、ギタリストとしての僕を形作ったんだ。
Q2: What made you start playing an instrument? Who were your heroes at the time?
【LIONEL】: I started around 14 years old with the acoustic guitar, which I found a little difficult and less fun than the electric one. So I first persevered with metal and hard rock. Then I decided to return to the acoustic guitar; with more maturity, I began to find pleasure in it, and I also continued to work on the Spanish guitar.
I’ve always had an artistic spirit and a desire to surpass myself, so I tried several hobbies, and when I found a guitar at my grandparents’ house, I gave it a try. As a fan of Metallica and Slayer at the time, I wanted to be like James Hetfield. I started playing along to the albums until I perfected my skills, and then I developed a taste for it, and I never stopped!
But very quickly, my origins took over. Flamenco was already there, in my blood, in my family roots. My heroes were Paco de Lucía, Dimebag Darrell, and Camarón de la Isla. They all had a spiritual strength, an authenticity that I was looking for.
Q2: ギターを弾き始めたきっかけもフラメンコだったんですか?当時のヒーローは誰でしたか?
【LIONEL】: そうだね、14歳ごろ、アコースティック・ギターから始めたんだけど、エレキギターに比べて少し難しく、楽しさも劣るように感じていてね。だから、最初はエレキでメタルとハードロックに粘り強く取り組みくむことにした。その後、アコースティックギターに戻ったんだ。すると、成熟した視点で楽しめるようになって、スパニッシュ・ギターにも取り組むようになったんだ。
芸術的な精神と自己超越の意欲があったから、昔から趣味は豊富でね。だから、祖父母の家でギターを見つけた時、挑戦してみようと思った。当時は METALLICA と SLAYER のファンだったので、ジェイムズ・ヘットフィールドのようになりたいと思っていたんだよな。アルバムに合わせて演奏し、技術を磨くうちに、その魅力にハマり、以来、ギターをやめられなくなってしまった!
だけど、すぐに僕のルーツが表れてきた。フラメンコは既に僕の血の中に、家族のルーツの中にあったからね。僕のヒーローはパコ・デ・ルシア、ダイムバック・ダレル、カマロン・デ・ラ・イスラだった。彼らは皆、精神的な強さと、僕が求めていた本物らしさを持っていたんだ。
Q3: You are known as “Hispanic Metal”. Although you are French, are you still proud of your Spanish roots? Is the band’s name “Impureza” “Impurity” a reference to your own mixture of Spanish and French blood?
【LIONEL】: Yes, completely for the first part of the question. I was born in France, but I am of Spanish origin, both my parents are Spanish and that is part of me. But for the second part, above all Impureza embodies the duality of two musical genres, the impurity certainly comes from the fact of textured flamenco with metal and smoothed metal with flamenco. So yes our music is perhaps impure!!! Haha!
Q3: IMPUREZA は “ヒスパニック・メタル” として知られています。あなたたち自体はフランス人であるにもかかわらず、スペインのルーツに重きを置き誇りを持っているようですね?バンド名 “Impureza”(不純物)とは、そうしたスペインとフランスの血の混合を意味しているんですか?
【LIONEL】: 最初の質問の答えは完全にイエス。僕はフランスで生まれたけど、スペインの血を引いている。両親はどちらもスペイン人で、そのルーツは僕の一部なんだ。
だけど、2つ目の質問ついては、IMPUREZA は主に2つの音楽ジャンルの二面性を体現していることが理由だよ。不純さとは、フラメンコとメタルのテクスチャーの融合、そしてメタルとフラメンコの滑らかな融合から来ているんだ。だから、僕たちの音楽は確かに “不純” かもしれないよね!!!(笑) 。
Q4: I don’t know of any other band that combines flamenco and traditional Spanish music with metal as well as you do! Your orchestration is also very skillful. Did you find any similarities between Spanish traditional music and metal music in terms of bravery and tragedy?
【LIONEL】: Thank you very much. Yes, these two worlds share a raw intensity. Flamenco has this deep, tragic, visceral spirit. Metal has a capacity for release, a way of externalizing the energy buried within us through the power of this liberating music. They are two complex musics that require a lot of rigor and rigor. Bravery comes from this absolute sincerity. We try to translate this into each composition.
Q4: 実際、あなたたちほど巧みにフラメンコ、伝統的なスペインの音楽をメタルと組み合わせるバンドは他に知りませんよ。オーケストレーションも実に見事ですね。スペインの伝統音楽とメタルの間には、勇気と悲壮感という類似点があるようにも思えます。
【LIONEL】: ありがとう。そうだね、この二つの世界は生の情熱を共有しているんだ。フラメンコには深い、悲劇的で、感情的、本能的な精神がある。メタルには、この解放的な音楽の力を通じて、僕たちの中に埋もれたエネルギーをアウトプットする能力がある。
ただしふたつとも複雑な音楽で、多くの厳格さを必要とする。勇気は、この絶対的な誠実さから生まれてくるんだ。僕たちは、そうしたものを各楽曲に反映させようと努めているよ。
Q5: Your Spanish also fits really well with metal! The metal world used to be almost exclusively English-speaking, but in recent years we have seen an increase in the number of bands using their native languages and traditional music. How do you feel about the increase in the number of bands with such regional characteristics?
【LIONEL】: It’s a very beautiful evolution in my opinion. Metal is finally becoming more universal than it has ever been. Each language has its history, its color, its culture and even gives a rhythm to whoever uses it. Spanish, for its part, brings a particular musicality to our lyrics, it gives them a dramatic, intense and violent side that naturally marries the power of metal and the intensity of flamenco.
Q5: アルバムのスペイン語もメタルにフィットしていますね!メタルの世界はかつてはほぼ英語が主流でしたが、近年、母国語や伝統音楽を使用するバンドが増えています。
IMPUREZA も含めて、ローカルな特色を持つバンドの増加について、どう感じていますか?
【LIONEL】: 非常に美しい進化だと思うよ。メタルはついに、これまで以上にユニバーサルなものになりつつあるんだからね。各言語には歴史、色、文化があり、それを使用する者にリズムを与える。スペイン語は、僕たちの歌詞に特有の音楽性をもたらし、ドラマチックで激しく暴力的な側面を与え、メタルの力とフラメンコの強度を自然に融合させてくれるんだ。
Q6: Your album “Alcazares” is set in medieval Spain, and the Reconquista is one theme. Why did you choose this bloody period of war, plague, and death?
【LIONEL】: Well, first of all, to conclude the trilogy on the history of old Spain, which we began with the Inquisition for “La Iglesia del Odio,” the Conquest for “La Caida de Tonatiuh,” and now the Reconquest for “Alcázares.” The history of Spain is marked as much by its grandeur as by its decadence. Political, religious, and even mystical conflicts are at the heart of many misfortunes, but they provide limitless inspiration for our writing. We don’t seek to glorify war, but to explore its spiritual, cultural, and human resonances. It’s violent, certainly, but also deeply symbolic.
Q6: 最新作 “Alcazares” は中世のスペインを舞台にしていて、レコンキスタがテーマのひとつとなっていますね。なぜ、戦争、疫病、死の血塗られた時代を選んだのでしょうか?
【LIONEL】: まず第一に、古いスペインの歴史を扱った僕らのトリロジーを完結させるためだった。僕たちは “La Iglesia del Odio” で異端審問会を、”La Caida de Tonatiuh” で征服を扱い、”Alcázares” でレコンキスタを扱うことでトリロジーを作り上げたんだ。スペインの歴史には、その偉大さと衰退の両方が刻まれている。
政治的、宗教的、さらには神秘的な対立が多くの不幸の根源だけど、そうしたテーマは僕たちの創作に無限のインスピレーションを与えてくれる。僕たちは戦争を美化しようとしているわけではなく、その精神的、文化的、人間的な共鳴を探求しているんだ。戦争は確かに暴力的なものだけど、同時に深くて象徴的なものだと思う。
Q7: Hundreds of years have passed since Reconquista, but the world is still a dark place of religion, pandemics, war, and division, and the essence of humanity seems unchanged. In such times, what can heavy metal do?
【LIONEL】: Metal won’t change the world, that’s for sure, but it will always allow us to escape, to tell the story through a channel very different from news, books, and films. Perhaps the universal language and the best weapon of expression in this world!
Q7: レコンキスタから数百年の時が経ちましたが、世界は依然として宗教、パンデミック、戦争、分断の暗雲が覆い、人間の本質は変わっていないようにも思えます。こんな時代に、ヘヴィ・メタルには何ができるでしょうか?
【LIONEL】: メタルは世界を変えることができない。それはたしかだ。だけど、ニュース、本、映画とは全く異なるチャンネルを通じて物語を伝えることならできる。そうやって、いつも僕たちに “逃避” する場所を与えてくれるんだ。メタルはおそらくこの世界におけるユニバーサルな言語であり、表現における最高の武器なんだ!
Q8: Your music is a perfect combination of ferocity and beauty, what do you think beauty means for death metal?
【LIONEL】: It’s like Romantic Gothic, which is defined by death, rebellion, night, and the morbid, but also by dreams, the sublime, nature, and the beauty of the fantastic and the mysterious. This duality is strongly present in Impureza’s music.
A guttural cry can be more moving than a melodic song expressed in plain language if the emotion is genuine. Beauty finds its essence in sincerity, even in the strange, even in horror and violence!
Q8: あなたの音楽は凶暴さと美しさの完璧な融合です。そんな IMPUREZA にとって、デスメタルにおける “美しさ” とは何だと思いますか?
【LIONEL】: デスメタルにおける美。それはロマンティック・ゴシックのようなもので、死、反逆、夜、そして病的なものによって定義されながら、同時に夢、崇高、自然、そして幻想的かつ神秘的な美しさによっても定義される。この二面性は、IMPUREZA の音楽に強く表れているよ。
例えば本物の感情が込められていれば、メロディックな曲よりも、のどから絞り出すような叫びの方が感動的になることがあるだろう。結局、美の本質は誠実さにあり、奇妙なものにも、恐怖や暴力にも存在するんだよ!