NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GALAHAD : THE LAST GREAT ADVENTURE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STU NICHOLSON OF GALAHAD !!

“I Think We Moved On From What You Would Call ‘Neo-Prog’ In Terms Of The ‘Sound’ Many Years Ago. I Think That These Days We Have Found Our Own ‘Sound’ Which Is Far More Diverse And Varied Than In The Early Days.”

DISC REVIEW “THE LAST GREAT ADVENTURE”

「最近は以前にも増して新しいプログ・バンドが増えているように思える。確かに、1980年代半ばに結成した当初は、それほど多くのプログ・バンドがいるようには感じなかったし、そうは思えなかった。でも、その頃はインターネットも Facebook もなかったから、コミュニケーションや意識という点では世界はもっと “大きく” て、もっと断片的な場所だったんだよ」
70年代を駆け抜けた偉大なる巨人が去りつつあるプログ世界。この場所はきっと、新たなヒーローを必要としています。しかし、SNS, キリトリ動画、倍速視聴…そんなインスタントな文化が支配する現代において、長時間の鍛錬や複雑な思考を必要とするプログレッシブ絵巻を描き出すニューカマーは存在するのでしょうか?同時に、プログはすでに “プログレッシブ” ではない、ステレオタイプだという指摘さえあります。
巨人の薫陶を受け、”ネオ・プログ” の風を感じ、38年この道を歩んできた英国の至宝 GALAHAD は、自らの経験を通してプログの息災と拡大を主張し、自らの音楽を通してプログ世界の進化を証明しているのです。
「僕たちは “ネオ・プログ” と呼ばれるような “音” からは、何年も前に離れてしまったと思う。最近は、初期の頃よりもはるかに多様で変化に富んだ自分たちの “音” を見つけ出していると思うんだ」
MARILLION, IQ, PENDRAGON。華麗と模倣の裏側にシアトリカルな糸を織り込んだネオ・プログの勃興から少し遅れて登場した GALAHAD は、長年にわたり様々なスタイルを経由しながらその存在感を高めてきました。 現在の彼らの形態は、エレクトロニカとメタリックを咀嚼したモダン・プログにまで到達。
ただし重要なのは、Stu Nicholson が語るように、彼らの現在地ではなく、常に挑戦を続けるクリエイティブな精神とメロディの質、そして感情の満ち引き。同郷同世代の FROST が、彼らと非常に似たアプローチでプログの救世主となったことは偶然でしょうか?きっと、旋律煌くノスタルジアと近未来、そして多様性がモダン・プログの浸透には欠かせないものなのでしょう。
「父はアウトドアやクライミングも好きで、ロンドン登山クラブに入会し、20世紀半ばに活躍したイギリスの著名な登山家エリック・シプトンと知り合いだったそうだよ。だから、アルバムに収録されているジャケットの写真は父のものにしたんだ。僕とはちがうけど、人はそれぞれが様々な方法でクリエイティブになれるんだ」
“登山家のプログ・ロック”。コンセプトや物語も重要となるプログ世界において、GALAHAD はこれまで以上に斬新なテーマを選択しました。高齢となった Stu の父親、その軌跡を讃えるアルバムにおいてバンドは、人はそれぞれがそれぞれの方法で創造的になれると訴えかけたのです。それもまた、”偉大なアドベンチャー” の一つ。
10分のタイトル曲は、グロベアグロックナーやヴィルトシュピッツェの伝説的な登山家たちを讃えるような、激しさと優雅さ、ノスタルジックで挑戦的な雰囲気がまさに “登山家のプログ”。ただ技術と難解をひけらかすのではなく、非常に人間的で感情的な挑戦を俯瞰的に見下ろします。
“Blood, Skin, and Bone” と “Enclosure 1764” の組曲は、プログ世界が必要とするキラー・チューンでしょう。GALAHAD が得意とするエッジと哀愁が効いていて、輝かしいコーラスはアルプスのように何層も重なり高くそびえ立ちます。女性ボーカルのハーモニーはオリエンタルで斬新。何か少し硬質で不気味な感じ、特に後半のスポークン・ワードが独特の世界観を纏います。そこから童謡的で映画的で思慮深い “Enclosure 1764″ の、不吉で社会批判に満ちたイメージへの広がりが群を抜いています。さて、プログは本当に死んだのでしょうか?否。むしろプログに侵食されている。あの CRADLE OF FILTH でさえも。
かつて Stu が門を叩いた MARILLION の現在地と比較するのもまた一興。今回弊誌では、円卓の歌い手 Stu Nicholson にインタビューを行うことができました。「”プログ世界をリードする” というのは、”プログ” というジャンルが非常に多様なために、かなり負荷のかかる文言だよね。もちろん、そうであれば最高なんだけど、正直なところ、我々は自分たちがやることをやり、自分たちの音を掘り下げ、その旅の途中で数人のファンを得て一緒に進んでくれることを願っているだけなんだ」 どうぞ!!

GALAHAD “THE LAST GREAT ADVENTURE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HAMMERS OF MISFORTUNE : OVERTAKER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN COBBETT FROM HAMMERS OF MISFORTUNE !!

“Let’s Boil It Down To “Illusions” By Sadus And “Nursery Cryme” By Genesis; This Pair Of Albums Are Kind Of i Ideal In Thrash On One Hand, And Prog On The Other, To Me Anyway.”

DISC REVIEW “OVERTAKER”

「SADUS の “Illusions” と GENESIS の “Nursery Cryme” だね。僕にとってこの2枚はスラッシュとプログの理想形なんだよ。だからこの作品のキーワードは “理想” なんだ。この2枚のアルバムを、プログとスラッシュ、それぞれの分野の表現の象徴として捉えているんだ。この2枚のアルバムの、実際の音楽を組み合わせるということではなく、その精神、ゴーストのようなものを捉えたかった。音楽に対するアプローチが全く異なる2つの作品、どちらも大好きだ。だから、この相反するものをどうにかして結びつけたいと思ったんだ」
プログレッシブ・スラッシュといえば、VOIVOD, VEKTOR。CORONER や MEKONG DELTA、ひょっとすると MEGADETH もその範疇に入るのかもしれません。とにもかくにも、この分野のバンドはほとんどがメタル世界のカルト・ヒーローとして大きなリスペクトを集めています。ただし、彼らは本当に “プログレ” とスラッシュ・メタルを融合させてきたというよりは、独自の実験で “プログレッシブ” の称号を得たと言う方が正しいのかもしれませんね。
一方で、HAMMERS OF MISFORTUNE は彼らほどの認知も賞賛も得られてはいませんが、実験の精神と “プログレ” の解像度ではどのバンドにも負けてはいません。常に裏街道を歩んできた “範馬の不運” は近年、ついにその才能に見合う評価を勝ち取ろうとしています。
「僕はみんなと同じように様々な気分を持っているんだ。時には邪悪なスラッシュの気分、時には壮大なプログレの気分、時にはノイジーなDビート・パンクの気分だ! MR. BUNGLE や NAKED CITY のようなバンドも好きだけど、だけど僕らの音楽がコラージュのように聞こえるのは嫌なんだ。すべてが調和して、自然で有機的なサウンドになることが重要。音楽の “トランジション” はとても重要なんだ」
“トランジション” はひとつ、近年のモダン・メタルにおいてキーワードとなる言葉かもしれませんね。多様で境界を押し拡げるモダン・メタルの理念において、”クソコラ” のように様々なジャンルをツギハギするバンドは決して少なくありません。そんな安易なモザイク、不都合なジグソーパズルは結局、イロモノとしてリスナーに処理され、せいぜい SNS でひと時の “バズ” を得て消えていきます。
一方で、HAMMERS OF MISFORTUNE のやり方は、実にしたたかで巧妙。インテレクチュアルなスラッシュのリフ・ハンマーと、VEKTOR での不運を薙ぎ払うリズム隊の猛攻。そこに、濃密で荘厳なシンセ、メロトロン、そして複数のボーカリストが重なり合い、シームレスに連鎖して、轟音と畏怖と美麗の塊を創造していきます。
GENESIS と SADUS の共存共栄。そんな狂気の夢物語は、地獄のラボで音そのものをツギハギするのではなく、英傑たちのオーラを抽出して “Overtaker” というフラスコへと慎重に注ぎ込む抽象的な実験だったのです。世界観と世界観の蜜月。ロマンティックとおぞましさの婚姻。だからこそ、彼らの狂気はジェットコースターのように、リスナーの五感を圧倒します。
「住宅危機やソーシャル・メディアについて書くのは、最もメタルらしい題材ではない。たしかにそうだ。でも、このようなテーマに取り組んでいるメタルバンドは他に思いつかないけど、間違いなくメタルバンドだって皆これらの問題を扱い、日々深い影響を受けているんだよ。ホームレスと所得格差を暴力的なSFおとぎ話の形で扱った曲、”Overthrower” の歌詞を思いつくには、真剣に考える必要があった。メタルの曲で扱うには簡単なテーマではないけれど…」
つまり、要約すれば、このプロジェクトの首謀者、ベイエリアで長年カルト・ギターヒーローとして活躍を続けた John Cobbett はヘヴィネス、ムード、ドラマ、エキセントリックを変幻自在に超越し、VEKTOR や SABBATH ASSEMBLY といった異能のメンバーを操りながら、フォーキーで、リズミカルで、クラシカルで、プログレッシブなスラッシュ・オペラを完成させ、イラク戦争、住宅問題、SNSというテーマを経て、地球の険しいしがらみから逃れたサイケデリックな宇宙の旅へと到達しました。
ある意味、彼が一平方あたりの人口が6人という途方もない田舎、モンタナへと居を移したことが吉と出たのでしょう。フレキシブルで自由に選べるメンバー、余分なジャムを削ぎ落としたソリッドで凝縮されたコンパクトな楽曲、そして何より、残酷で生死をリアルに感じさせる厳しい自然環境が”Overtaker” のメタル、プログレッシブ、パンクを一層タイトに結びつけました。不運を名に宿したバンドの雪解けは、もうすぐそこです。
今回弊誌では、John Cobbett にインタビューを行うことができました。「現実世界の問題を壮大なヘヴィ・メタルの歌詞にするのは難しいことだけど、結果的にその方がメッセージが効果的になると思うんだよね。間違いなく、よりエンターテインメント性が高い。平凡なことが深遠であってはならないなんて、誰が言ったんだ?」 どうぞ!!

HAMMERS OF MISFORTUNE “OVERTAKER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XENTRIX : SEVEN WORDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KRISTIAN HAVARD OF XENTRIX !!

“Thrash Metal Could Be Down To Age And Experience. When You’re a Younger Band You Play Together In a Different Way Than When You’ve Been Around The Block a Few Times.”

DISC REVIEW “Seven Words”

「イギリスのスラッシュ・シーンは盛り上がるのが遅くて、アメリカやドイツのようなインパクトはなかったと思う。XENTRIX も同様に現れるのが遅かったから、シーンの興隆の助けにはならなかった。
つまり、レコード会社はイギリスのバンドに投資する前に、アメリカのバンドがどれだけ大きくなれるのか見たかったんだと思う。そして、彼らが僕らのようなバンドを欲しがった時には、もうシーンは次に向けて動き出していたんだ」
XENTRIX ほど “徒花” という言葉が似合うスラッシュの英雄はいないでしょう。生まれた場所や時間さえ違っていれば、今ごろは華々しいレジェンドと肩を並べる存在であったかもしれません。80年代半ばに英国で誕生した XENTRIX はまさに遅れてきたスラッシュ・エキセントリック。バンドの大作 “For Whose Advantage?” が、スラッシュの当たり年 1990年に発売されたのも不運だったのでしょうか。”Rust in Peace” ほどテクニカルではなく、”Twisted into Form” ほど熱くもなく、”Spectrum of Death” ほど凶暴でもなく、”By Inheritance” ほど知的でもなく、”Slaughter in the Vatican” ほど革命的ではありませんでしたが、それでも、”For Whose Advantage?” はメタルの伝統と野望を宿した凶暴なリフの刃でまっすぐ頸動脈に向かってきます。
「ベイエリアのバンドは古いバンドよりもモダンでエキサイティングな感じがしたけど、僕たちは自分たちのメタルのルーツも残したかった。だから、XENTRIX ではその二つの融合を聴くことができると思う。いつも言っていることだけど、僕らはメタルに重点を置いたスラッシュ・メタル・バンドなんだ」
一度は “徒花” として埋葬される運命にあった XENTRIX ですが、墓所の石棺は半ば強引に内側からこじ開けられることになります。”Bury The Pain”。痛みとともに葬られていた才能と野心は、2019年に再度世界へと解き放たれました。バンドの顔であったシンガー Chris Astley こそ欠いていますが、Jay Walsh はその穴を埋めてあまりある逸材。
今振り返ってみると、当時の英国スラッシュ勢、ACID REIGN にしろ、ONSLAUGHT にしろ、SABBAT にしろ、何かしら独特の “エグ味” “異端感” を伴っていたような気がします。その “エグ味” を世界が珍重する前に、ムーブメント自体が終焉してしまった。だからこそ、XENTRIX は再び地上に這い出でる必要があったのです。
「僕たちはベイエリアのバンド、TESTAMENT, VIO-LENCE, EXODUS, FORBIDDEN(これでも少し挙げただけだけど)が大好きだったんだ。
でも、彼らのようになろうとしたわけではなく、メタルという鍋に自分たちの味を持ち込みたかったんだよな」
復活第二弾となる “Seven Words” は、文字通りスラッシュ・メタルの “7つの系譜” を融合させたものと言えるのかもしれませんね。XENTRIX 初期の作品には、ベイエリアの躍動を受け継ぎながらも、ブリティッシュ・ハードの伝統と、CORONER のような暗知的な色合いを備えていました。そうした下地に、 初期の SEPULTURA を思わせるクランチーな圧迫感、さらにメロディアスなリフと高揚感のあるギターでメタル世界の各階層へとアピールしながら、確実に音の進化を刻んでいるのです。
“Seven Words” というリフの迷宮と”Anything but the Truth”” のシンプル・イズ・ベストが交互に現れるリフ・ダイナミズムもアルバムの魅力。そもそもメロディックな色合いは XENTRIX の本分ではないにもかかわらず、巨大なコーラスが破砕的なギタリズムと衝撃的にキャッチーな歌心をさながら溶かして融合させるスラッシュとメタルのハンダ付けはあまりに印象的でエネルギッシュ。そうして彼らは、テクニカルで好戦的でメロディックなヘヴィ・メタルの理想像を老獪に描き出すのです。
今回弊誌では、バンドの心臓 Kristian Havard にインタビューを行うことができました。「スラッシュ・メタルは年齢と経験を重ねる必要があるのかもしれないよな。若いバンドは、経験豊富で何度かバンドを組んだことがある人とは違った方法で一緒に演奏するからな」

XENTRIX “SEVEN WORDS” : 9.9/10

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THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2022: MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2022: MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

1. MEGADETH “The Sick, The Dying…And The Dead!”

「人生は厳しい。勝ち組になるか、そうでないか。人は敗者と呼ばれるべきではないと思う。でもな、2位になろうとすることは、敗者ではないんだよ。常に自分を高めようと努力する限り、完走した者は勝者なんだ。それはとても簡単なこと。人生を1%改善するだけで、3ヶ月ちょっとの短い努力で、仕事ぶりでも、大切な人に対してでも、子供に対してでも、まったく違う人間になることができる」
MEGADETH は復讐と共にある。苦難の度に強くなる。長年 MEGADETH と Dave Mustaine を追い続けたリスナーなら、そうした迷信があながち世迷いごとではないことを肌で感じているはずです。METALLICA からの非情なる追放、薬物やアルコール中毒、Marty Friedman の脱退、バンドの解散、Drover 兄弟を迎えた新体制での不振…実際、厄災が降りかかるたびに、MEGADETH と Dave Mustaine は研ぎ澄ました反骨の牙で苦難の数々をはね退け、倍返しの衝撃をメタル世界にもたらし続けています。
逆に言えば、MEGADETH という船が順風満帆であることは稀なのですが、2016年の “Dystopia” 以降の期間は、彼らの波乱万丈の基準からしても、非常に荒れた展開であったと言えるでしょう。まず、”Dystopia” でドラムを担当し、当初はアルバムをサポートするためにバンドとツアーを行っていた Chris Adler が、2016年半ばに当時は本職であった LAMB OF GOD とのスケジュールの兼ね合いで脱退せざるを得なくなります。後任には元 SOILWORK の Dirk Verbeuren がヘッドハントされました。
そうして2019年、次のアルバムの制作が始まった矢先、Dave Mustaine は咽頭癌と診断され、50回以上の放射線治療と化学療法を余儀なくされます。無事、寛解にはいたったものの、その後 Covid-19 の大流行が起こり、アルバムの進行はさらに遅れます。決定打は2021年春。長年のベーシストで Mustaine の右腕であった David “Junior” Ellefson が、”性的不祥事” を起こしてしまうのです。バンドで最も品行方正、神父にして良い父親と思われていた Ellefson の性的なスキャンダル。その影響は大きく、バンドはすぐに解雇という判断を下します。そうして、TESTAMENT などで活躍を続けるフレットレス・モンスター Steve Di Giorgio が彼のパートの再レコーディングを行うこととなりました。
このアルバムの制作にまつわるトラブルや苦悩の山を考えれば、MEGADETH のリベンジが倍返し以上のものであることは、ファンにとって容易に想像できるでしょう。そうして実際、Dave Mustaine は逆境をものともせず、12曲のスリリングで知的で瑞々しい破壊と衝動の傑作を携え戻ってきました。MEGADETH のリーダーのレジリエンス、驚異的な回復力、反発力を再度証明しながら。
「私はゲイのメンバーだ。性的アイデンティティが何であろうと、見た目がどうであろうと、何を信じていようと信じていまいが、すべてを受け入れるヘヴィ・メタル・コミュニティと呼ばれる場所で。ここでは誰もが歓迎されるんだ!」
メタル・ゴッド、Rob Halford のロックの殿堂入りスピーチです。Rob の言葉通り、ヘヴィ・メタルは抑圧された人たちの、孤独を感じる人たちの、社会から疎外された人たちの美しき、優しき逃避場所に違いありません。ただし、そうしてコンフォート・ゾーンにとどまるだけがメタルではないでしょう?ヘヴィ・メタルは進化し続ける音楽でもあります。冒険する音楽でもあります。
失敗を恐れて、快適さに呑まれて、MESHUGGAH がスラッシュ・メタルにとどまっていたら? ARCH ENEMY が女性ボーカルを起用しなかったとしたら?DEAFHEAVEN がピンクのアルバムを作らなかったとしたら? ZEAL & ARDOR が自分の出自に興味がなかったとしたら? きっと、メタルは今ほど色とりどりな世界ではなかったでしょう。
MEGADETH と David Mustaine が昨年証明した “ヘヴィ・メタルの回復力” は、もっと言えばメタルに宿った失敗をも抱擁してくれる寛容さです。そうやって失敗を重ねて、回復力を養って、前へと進んでいくこと。それはきっと、この暗くて、狭くて、息苦しい2020年代において、心の “ユースアネイジア” を防ぐ仄かな光なのです。

http://sin23ou.heavy.jp/?p=18203

2. FELLOWSHIP “The Saberlight Chronicles”

「僕たちにとってパワーメタルは、人々の気分を高揚させ、やる気を起こさせるのにとても有効な音楽なんだ。スピード感があって、エネルギーがあり、勇気や野心といったテーマも語れるから、世界に僕たちが望む変化を起こすには最適なジャンルだったんだよ」
皆さんはメタルに何を求めるでしょうか?驚速のカタルシス、重さの極限、麻薬のようなメロディー、華麗なテクニック、ファンタジックなストーリー…きっとそれは百人百様、十人十色、リスナーの数だけ理想のメタルが存在するに違いありません。
ただし、パンデミック、戦争、分断といった暗い20年代の始まりに、これまで以上にヘヴィ・メタルの “偉大な逃避場所” としての役割が注目され、必要とされているのはたしかです。MUSE を筆頭に、メタルへのリスペクトを口にする他ジャンルのアーティストも増えてきました。暗い現実から目をそらし、束の間のメタル・ファンタジーに没頭する。そうしてほんの一握りの勇気やモチベーションを得る。これだけ寛容で優しい “異世界” の音楽は、他に存在しないのですから。
「正直なところ、僕たちは自分たちが楽しめて、他の人たちが一番喜んでくれるような音楽を演奏しているだけなんだ。たしかに、パワーメタルには新しいサウンドを求める動きがあるんだけど、僕らの場合、曲作りは何よりもメロディが重要なんだ。結局、技術的なことって、ただミュージシャンとしての自分たちをプッシュしているだけの自己満足だからね」
特に、”逃避場所” として最適にも思えるファンタジックなパワーメタル。UK から彗星のごとく登場した FELLOWSHIP は1枚の EP と1枚のフルアルバムだけで、そのメタル世界の “モチベーター” としての地位を確固たるものとしました。2022年における、パワー・メタルとスラッシュ・メタルの華麗なる “回復劇”。それは、きっと時代に対するモチベーター、反発力としての役割を帯びているのでしょう。
そうして FELLOWSHIP は、このジャンルをただ無鉄砲に覆すのではなく、過去のパワー・メタルと現代のパワー・メタル最良の面を融合させ、未曾有の寛容で親しみのあるポジティブな波動を生み出しているのです。

http://sin23ou.heavy.jp/?p=18148

3. BLOODYWOOD “Rakshak”

「BLOODYWOOD の初日から俺たちは言っているんだが、メタルは楽しいものなんだ。いつも怒っている必要はないんだよ。よく、メタルは人生だと言われている。だから、喜んだり、悲しんだり、冷静になったりしてもいいんだよ。
俺らの曲が好きだという人からメッセージをもらったんだけど、そこには “でも、同性愛嫌悪や女性嫌悪に対するあなたの立場は?”って書いてあったんだ。俺はただ、”好きな人を好きになればいい” と言ったんだ。俺たちは、基本的にとてもオープンなんだよね。そういうメッセージを発信したいんだ」
BLOODYWOOD の広大な多様性の感覚は、”Rakshak” で完璧に捉えられています。ヒンディー語と英語の混じった歌詞、そして常に変化し続けるサウンドで、このバンドを特定することは非常に困難。彼らは亜大陸の民族音楽(といっても北部パンジャブ地方が中心)を使うだけでなく、メタルの様々な要素を取り込んでいるのですから。彼らの曲の多くには明確に Nu-metal のグルーヴが存在しますが、時にはスラッシュやウルトラ・ヘヴィなデスコアの攻撃をも持ち込みます。
「俺らを特定のジャンルに当てはめるのは難しいよ。曲ごとにサウンドが大きく変わるから、インドのフォーク・メタルというタグに固執するのは難しいんだ。ジャンルが多すぎて特定できないけど、インドのグルーヴと伝統的なインドの楽器、そしてもちろんヒップホップを取り入れたモダン・メタルというのが一番わかりやすいかな。ワイルドなアマルガムだよ。俺らは東洋と西洋の影響、その間のスイートスポットを探しているんだ。これは様々な香辛料を配合したマサラ・メタルなんだよ(笑)」
90年代、絶滅が近いとも思われたヘヴィ・メタル。しかし21世紀に入り、そのメタルの生命力、感染力、包容力が世界を圧倒し、拡大し、包み込んでいます。より良い世界へ近づくために。
様々なジャンルを飲み込み、あらゆる場所に進出し、どんな制約をも設けない。一見攻撃的でダークなヘヴィ・メタルに宿る優しさや寛容さが世界中、あらゆる場所のあらゆる人にとっての希望の光となっている。メタルには崇めるべき神も、虐げられる主人も、壁となる国境も存在しない。年齢や人種、宗教や信条を問わずすべての人々と分かち合える。そんな現代の理想郷をメタルは育んでいると、きっと多くの人が感じているはずです。
「より良い世界への希望を象徴する人々、そして信念を守ることを歌っているんだよ。対立する政治をなくすことでも、性的暴行をなくすことでも、腐敗したジャーナリストの責任を追及することでも。何でもいい。大事なのはその希望の感覚を守ることなんだ。俺たちは、プライベートでも仕事でも、より良い世界への希望を与えてくれる多くの人々に出会ってた。俺たちが音楽を作る理由のひとつは、音楽が変化の触媒になり得ると信じているからなんだ」

http://sin23ou.heavy.jp/?p=17302

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRE-TOOLZ : I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Fire-Toolz !!

“I Do Love Dark Music, But To Me My Music Just Sounds Like Rainbows. Jagged Piercing Ones At Times, But Still Rainbows.”

DISC REVIEW “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY”

「私は自分の音楽を、天使と悪魔の融合とは思っていない。私にとってはすべて天使的なものなんだ。悪魔的なものは、私自身の悪魔について論じるときに題材として登場するだけでね。意図的にダークな音楽を作ろうとはしていないんだ。ダークな音楽は好きだけど、私にとって自分の音楽は虹のように聞こえるだけ。時にはギザギザに突き刺さるような虹もあるんだけど、それでも虹なんだよ」
ご存知の通り、ヘヴィ・ミュージックが無味乾燥で一義的な場所であるというのは、完全なる誤解です。とはいえ、殺風景で無彩色なスタイルの持ち主がたしかに多いのも事実。しかし、そういったアーティストと同じくらい、ヘヴィ・ミュージックを色鮮やかなアートの爆発として扱う人たちも同様に多いのです。シカゴの Fire-Toolz は、ヘヴィネスに宿る無限の色彩を提案するインターネットの虹。Fire-Toolz A.KA. Angel Marcloid は、プログレッシブ、ブラックメタル、ジャズ・フュージョン、インダストリアル、AOR, グラインドコア、さらには日本のシティー・ポップの要素までスリリングなプロキシを通して屈折させ、スタイルの境界を創造のピクセルで消してしまうのです。
「どんなジャンルの音楽にも、男っぽいとか、女っぽいとか、固有のジェンダー・アイデンティティや表現があるとは思えないよ。ここアメリカの私たちにしても、他の文化にしても、そうした関連付けや決めつけをしてしまうのは残念なことだよ。ただ、私はそうしたレッテル貼りが一般的であることも理解しているんだ。私がそんな風に物事を見たことがないたけでね。境界が曖昧になることは、ほとんどの場合、良いことだと思うんだ。制限を取り払い、規範を解体し、自由を活用することは、とても重要なことだから」
ここ数十年にわたるポスト・モダニズム思想の定着は、ステレオタイプを曖昧で不安定なものとし、ジャンルや形式といった制約を過去の遺物と見なす新しい文化を精製しました。Fire-Toolz の最新作、”I will not use the body’s eyes today” は、この新世界の芸術的アプローチをある意味で体現しているのです。その主眼は、音楽の “脱構築” にあります。
「他の人が私のカオスをどう捉えているかは、よくわかるんだよ。私にとってこの混沌は、とてもコントロールされ、組織化されているように感じられるんだけど、外から見ると、混乱しているように見えるかもしれないね」
私たちが毎秒何千ものピクセルを自然とスクロールするように、この7曲はリスナーを容赦なく説得し、時に幻惑します。一つのテクスチャーやモチーフに落ち着くことはほとんどなく、さながらグリッチを含んだデジタル・コラージュのように機能していきます。最もオーソドックスな “Soda Lake With Game Genie” にしても、6分半という長尺の中にサックスやブラスト・ビート、80年代のポップなど、予期せぬ展開が濁流のように押し寄せる非常に流動的な仕上がり。
“A Moon In The Morning” では、Angel Marcloid のパレットは全体を覆い尽くす焼けるようなディストーションへと変化し、悪魔の遠吠えとオーケストラのMIDIストリングスの厳しいせめぎ合いが対消滅の危機感を抱かせます。イタロ・ディスコ、テクノ、EBM のテイストを取り入れたビートも、アコースティック・ギターのサスティーンを強調したブレイクダウンも、この構築を逃れたしかし意図的なカオスの中にあります。
重要なのは “仕切り” がないこと。ここはブラックメタル、ここは AOR、ここはプログレッシブなどという構築された混沌は、結局のところステレオタイプで、興ざめです。
こうして、従来の構成や動きといった概念を完全に捨て去ろうとする姿勢が “I will not use the body’s eyes today” をユニークで挑戦的作品にしているのです。それはまさに、体の目を使わず、心の目で作品を作ること。心を開き、未来を見据えることのできるリスナーにとって、この計算された混沌はすべての芸術と文化が境界線を失ってもまだ機能する世界の予兆とまで言えるでしょう。そう、私たちは Fire-Toolz によってまんまとハッキングされているのです。
「”I will not use the body’s eyes today” というフレーズは、多かれ少なかれ、私がエゴ (肉体的な目) からではなく、高次の自己の目 (心の目) から見ることを肯定しているんだよね。つまりこれは、超越のための嘆願なんだよ」
ヴェーダ哲学、キリスト教神秘主義、見捨てられることへの恐れ、感情の断絶、愛着の不安、自己破壊、意識の霊的傾向、トラウマの治癒、恥。Angel は永遠に拡張される音のツールボックスと同様に、世界とその神秘に対する多様な哲学と神学のインデックスをもその作品に注ぎ込んでいます。そうして、Fire-Toolz というプログラムは自己実現によって既存の器がさらに拡大可能であることを証明しているのです。
今回弊誌では、Angel Marcloid にインタビューを行うことができました。「カシオペア、角松敏生、木村恵子、杏里、Hiroshima、堀井勝美、鈴木良雄、菊池桃子を生んでくれてありがとう!」 どうぞ!!

Fire-Toolz “I WILL NOT USE THE BODY’S EYES TODAY” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【POLYPHIA : REMEMBER THAT YOU WILL DIE】


COVER STORY : POLYPHIA “REMEMBER THAT YOU WILL DIE

“I’m Gonna Grow Up And Be a Rock Star, And Just Truly Believing That.”

REMEMBER THAT YOU WILL DIE


「中学2年生の時にマリファナを吸い始めた。それが僕の人生の中で大きな意味を持つようになったんだ。テキサスに住んでいたから麻薬所持で逮捕されたけど、それが僕のキャリアに火をつけたようなもの。僕は保護観察中で、1年間、学校に行って、家に帰るだけだったんだ。人を呼ぶことも、友達の家に行くことも許されなかった。それで、ギターを本当に、本当に、本当に上手になろうと思ったんだ」
16歳になった POLYPHIA の Tim Henson は薬物所持で2度、法に触れてしまいました。テキサス州のように薬物犯罪が特に重く処罰される州では、尚更居場所を失います。今、28歳の Tim は、「毎日マリファナを吸える仕事に就いたんだ」と皮肉を込めて話します。「でも、”言霊” ってあるんだよね。小学校6年生のとき、”僕は Tim Hendrix。大きくなってロックスターになるんだ” って、みんなに宣言して、本当にそう思っていたんだ。だからね、意識の顕在化、決意表明。その力が本当に重要だと思うんだよ」

麻薬所持の罪で、Tim は保護観察や外出禁止処分となり、一人でいることが多くなりました。しかし、その時間をすべて使ってギターの練習を続け、貪欲に最高のミュージシャンを目指したのです。中国からの移民である母親は、息子がアメリカで得られるチャンスを最大限に生かすことを決意します。3歳のときから Tim はヴァイオリンのレッスンを受け始め、幼少期に長時間の練習に対する耐性を養いました。間違うと先生に弓で手を叩かれることもあり、決して楽しいものではありませんでしたが、彼はこの経験に感謝しています。
「多くの移民が、アメリカはチャンスの国だと考えている。だから、若いうちから何かを始めさせる親が多いんだ。乱暴な先生で、当時はかなり嫌だったけど、今思えばおかげで規律を学べたし、集中し、鍛錬し、練習することで、何事も上手になることを理解できたんだ」
10歳のある日、Tim は父親がギターを取り出すのを見ます。それまで父親がギターを弾くということを全く知らなかった彼は、その楽曲に興味をそそられました。「父親の BLACK SABBATH のコレクションから曲を選んで、耳コピを始めたんだよね。サバスは耳コピが簡単なんだ。全部Eマイナーのペンタトニックだから。そして、15歳になるころには、ヴァイオリンの気晴らしでギターを始めたのに、完全にヴァイオリンを捨てていたよ」

Tim が中学生の頃は、CHIODOS, TAKING BACK SUNDAY, FROM FIRST TO LASTなどが流行っていて、長い前髪に血行が悪くなるほどきついジーンズをはいた仲間に囲まれていました。
「年上の子たちが夢中になっていたクールなバンドだった。メロディーのいくつかは信じられないし、楽器編成も本当にユニークだと思ったんだ。ビートルズ、ジミヘン、サバスなど、古いロックしか知らなかった僕は、現代のバンドがやっていることを聴いて、特にロック的なソロとより現代的でテクニカルなリフを融合させることに、革命的な感覚を覚えたんだよね」
高校に入ると、ほとんどの同級生がシーンを卒業し、より “普通” の趣味を追求していました。しかし、Tim はまだ WHITECHAPEL を聴くことで満足していました。それでも彼は、”メインストリーム” の音楽と、それがなぜそんなに人気があるのかについて、好奇心を抑えることができなくなったのです。
「僕はメインストリームの曲を聴きに行き、なぜ多くの人々が好きなのかを理解しようとしたんだ。メタルは非常にニッチだから、僕はより多くの人に届く音楽を評価するようになっていった。何が親しみやすいのか、なぜ多くの人が共感するのか、音楽にあまり興味のない人たちでさえも。以来、その理由を分析するようになったんだ。僕自身はメインストリームの音楽に個人的に共感していたわけではなく、ただ馴染もうとしていただけなんだけどね。だけど、好きなもののために仲間はずれにされるのは、いい気分ではないからね。とはいえ、メインストリームの音楽の多くに純粋に感謝するようになったんだ」

こうした影響はやがて、Tim が2010年から活動しているバンド、POLYPHIA で作る音楽にも滲み出るようになりました。新譜 “Remember That You Will Die” は、ポップ、ファンク、EDM、Djent といった多様な絵の具をキャンバスに投影した、カルテットにとって最もカラフルでエクレクティックな作品と言えるでしょう。”オマエはいつか死ぬ。忘れるな” というタイトルは、ラテン語の格言 “Memento Mori” をロックンロールの流儀で翻訳した、羊のメタル皮を着た狼の残虐。
「人間は死が避けられないことを自認しているから、生の限られた時間を使って、永遠に存在し続けることができるものを発明しようとする。芸術家は想像力を駆使して、歴史に残るようなものを創り出すんだ。人工知能が発明され、それがアートやテクノロジーに応用されるようになると、人間の思考とコンピューターの思考のギャップを埋める方法が見つかる。 この2つをつなぐことは、最終的に人間の経験の永続性につながり、それは人間が不老不死になることに最も近いと言えるんだ。アルバムのタイトルは、このアートと結びついているんだ」
つまり、POLYPHIA の発明とはジャンルのステレオタイプを気にかけないこと。それが彼らの成功の礎です。彼らは MySpace でデスコアをイメージさせる10代の若者としてテキサスから現れたましたが、彼らをスターにしたのはそのブレイクダウンではなく、21世紀で最もジャンルを打ち破るリックをいくつも生み出したから。ファンク、マスロック、ヒップホップをミックスしたインストゥルメンタル・ジャムは、YouTube で何百万もの再生と Instagram のフォロワーを獲得しました。
「僕たちは何からでもインスピレーションを受ける。過去数枚のアルバムからギターを取り除き、ドラムとベースだけを聴くとしたら、トラップ・ビートやフューチャー・ベース・ビートが残る。もしギターを外して、演奏しているものにボーカルを加えても、やっぱりそう聴こえるだろう。つまり POLYPHIA でギターっぽいのはギターだけで、あとは人間がプログラムされたパートを演奏しているだけなんだ」

POLYPHIA にとって2013年にリリースしたシングル “Inspire” のプレイスルービデオは、最初のバイラルへの扉を開いた楽曲です。3ヶ月で25万の再生数を獲得。Tim は当時の自分たちが “天狗” になっていたと認めています。ただし、そうした “思い上がり” の顕在化が彼らを上へと押し上げて来たのは明らかな事実です。
「僕たちは間違いなくクソガキだった。子供は子供だ。高校生の頃、生活のためにツアーをするのが夢だったんだ。それから数年後、僕たちは実際にそうしていたんだから。それから、”もっと大きくなれたら、かっこいいな!” と思っていたんだ。だから “自分たちは素晴らしい。僕がキッズだったら、僕らが一番好きなバンドになるだろうね。それくらい僕たちの音楽はクールなんだ” なんてインタビューで普通に答えていたんだよ。今は歳をとって、作品に語らせたいんだ。今はもう言うことがない感じかな。僕たちはまだ自分たちがイケてると思っているけど、そのことについて愚かな雁字搦めになる必要はないってことを学んだんだ。前頭葉が発達しているときは、成長するのに時間がかかるんだよ」
ただし、過去の思い上がりに反省もあるようです。
「今はすごく練習してるよ。以前は “最もプロ意識のないプロフェッショナルなバンド” なんて言っていたけど、今は年齢も上がったし、これは自分たちの生活の一部だから、とても真剣にやっている。僕らの作品は演奏するのがとても難しいし、ファンを失望させたくはないんだ。自分たちのケツくらい自分たちで拭けないと。練習していないなんていうのは、ずいぶん前のクソみたいな発言の一つだよ」

POLYPHIA は、半分プログレッシブ・インストゥルメンタル・バンドで、半分オンライン・インフルエンサーだと言えるのかも知れませんね。バンドが2016年に “Euphoria” のビデオを公開した際、半裸のスーパー・モデルをサムネイル画像として起用したところ、400万人を数える人々にクリックバウトされました。YouTube のトップコメントにはこう書かれています。”彼らはとても賢い。美しい女性の画像を使って、騙して素晴らしいギター・バンドを発見させるなんて。ありがとう”
「POLYPHIA は意識的に2つの非常に異なるオーディエンスを一緒にしようとしたんだ。一つはギター・マニアとオタク。もうひとつは、ジャスティン・ビーバーや ONE DIRECTION のキッズだった僕らと同世代の女の子たちだ。それが目標だったんだけど、何年もかけて、自分たちではない何かになろうとすることを減らして、自分たちでいるようになったんだ。今でも男性中心だけど、ライブでは女の子がたくさんいるんだよ」
Ichika Nito、Mateus Asato、Yvette Youngといった才能あるアーティストを起用した 2018年の3rdアルバム “New Levels New Devils”。彼らのプロモ写真には、メルセデスに腰掛け、まるでクールなキッズのような格好をした4人組の姿が写っていました。テック・メタルを愛する若者たちにとって、それはある意味冒涜的な行動でしたが、Tim は当時、重要なことはクールであることと女の子にモテることだったと胸を張ります。
「2004年の “St Anger” で、METALLICA のプロモを見たんだ。彼らは全員メルセデスでリハーサルスペースに乗り付けたんだ。すげーカッコいいと思ったんだ。その時、自分たちを世界最大かつ最高のメタル・バンドと呼ぶというミームを思いついたんだよ。それに、僕らがもっとビッグになりたいと思っていた頃、ONE DIRECTION はまだ存在感を示していた。僕たちは、”よし、彼らがやっていることをやろう。明らかに女の子が好きなことだ” と思ったんだよな」

“The Most Hated” という明らかにノンギターな EP は、ファンたちの頭を悩ませ、中には逃げ出してしまった人もいました。
「あのリリースで、”俺たちが先にいたから POLYPHIA は俺たちのものだ” みたいな気取った老害的ファンを排除したんだ。彼らは僕たちの以前の作品を気に入っているから、それはそれでよかったんだ。結果として、新しいファンを獲得することができたからね。アマチュアから現在のようなバンドへと成長できたのさ。このアルバムも、半分は既存のファンのため、残りの半分は新しいファンのために作ったよ」
ボーカリストがいないことで、当初は多くのリスナーにとって眉唾ものでしたが、Tim はむしろインストであることがバンドに大きな創造性と可能性をもたらしたと考えています。
「より多才になれるし、より多くのコラボレーションが可能になるんだ。僕が本当に理想としているビジネスモデルは、EDMがすごく流行っていた2015年から16年ごろ、Zedd と Alessia Cara みたいな DJ とポップスターとのコラボも盛んで、同じ DJ があらゆるポップスターとコラボしてスターのキャリアを飛躍させるようなシステム。POLYPHIA のアイデアは DJ なんだよね。どんなシンガー、ラッパー、メタル・ボーカリスト、楽器奏者、DJ、プロデューサーともコラボできるんだ」
Chino Moreno や Steve Vai、ラッパーの Killstation や $not、ポップスターの Sophia Black など、”Remember That You Will Die” の豪華なゲスト陣を見れば、POLYPHIA の生み出したモデル・ケース、その影響力が浮き彫りとなります。

特にあの7弦楽器のパイオニアは、グランド・フィナーレ “Ego Death” の最後に登場し、歪んだソロで POLYPHIA の地平を切り裂きます。POLYPHIA にとってこれは記念碑的な出来事であり、Tim はあっけからんと “興奮している” と主張しますが、ここにも POLYPHIA 座右の銘である “気にかけない” が浸透しています。
「2020年に、Steve が NAMM ショーでオープニングをやってくれと頼んできたんだ。その後、僕らは DiMarzio のパーティに行って酔っ払って、彼に “ねぇ、僕らの曲で弾いてくれない?” って頼んだんだよ。そしたら、彼は “もちろん!” って感じだった。数年後、曲ができて、彼にメールを送ったんだ。そして “Ego Death” が完成したんだ」
例え Steve Vaiのような有名人であっても、POLYPHIA はアンチソロ、メロディ優先のビジョンを維持するためにその演奏に手を加えています。最近のインタビューで Vai は切り刻まれたギターソロに驚いたと語っています。
「通常、俺が誰かのために何かを弾くとき、依頼者はそのままの形で受け取るんだ。でも POLYPHIA はとてもクリエイティブで、何かを操作するのが好きなヤツらだ。ただ、最初に聴いたときはあまりに違っていたから、もしかしたら、俺のやったことが気に入らないのかもしれない!と思ったんだ (笑)」
このアルバムでの限界を超えたギター・プレイに対して、Tim は指板のコミュニティで使われているある言葉に異議を唱えています。
「僕たちがやっていることを “シュレッド” とは呼ばないよ。だって、それぞれの曲で1つか2つのモチーフがって、それがたくさんの音符に広がってから、メインのモチーフに戻ることに気づくでしょ?みんな、シュレッド “という言葉の周りで踊っているんだよ。80年代にスーパー・クールだったものを、今の時代にそのまま再現したってクールな訳ないよ。だって時代が違うから。大半のギターインストには緩やかな死を与えるべきかもね。僕たちはたくさんの音を弾くためのシュレッドではなく、音楽を補完するための正しい音を弾いているんだ。しかも、より速くね。メタル・バンドは儲からないからクールじゃない。ギターが中心になっているものは、文字通りソロにソロを重ねただけのものばかりだ。僕たちは確かにソロにソロを重ねたレコードを作ったけど、その間にフックもあったんだ」

“Playing God” では初めてナイロン弦のギターを使い、トラップ・ビートと溶け合わせました。
「フラメンコやボサノバをよく聴くわけじゃない。この曲をアル・ディ・メオラやパコ・デ・ルシアと比較する人もいるけど、僕は聴いたことがないからね。ただ、最近、ハーモニック・マイナーを再発見してね。このギターで弾くとそんな感じになるんだよ。それに、作曲する時は、最も”裸”の状態で完璧な音を出すべきだ。ナイロン弦で良いサウンドなら、どんな楽器に移行しても良いものになる。ただし、エレキより正確に弾かなければならないし、指の肉は安定してあるべき場所に正確に置かなければならないんだ」
Chino Moreno が参加した “Bloodbath” では、オールドスクールなギターソロを Scott が披露しています。
「Scott のソロの中では一番好きなんだ。彼は Dimebag や Wes Hauch、そして FACELESS “Planetary Duality” を少しチャネリングしたと思う。ALLUVIAL のアルバム “Sarcoma” での彼のギター・ワークはすごいよ。めちゃくちゃ聴いたよ」
TikTok やボカロが元となった “ABC” も POLYPHIA のアンテナの敏感さを証明しています。
「今、TikTok にアクセスすると、AC/DCの”Thunderstruck”をプレイする子供がいたりする。それにみんなが狂喜乱舞しているんだ。長い間、ラジオには存在しなかったギターソロを子供たちが発見したんだよ!それは素晴らしいことだ」
つまり、POLYPHIA のアンテナが倒れることはありません。
「先日、BRING ME THE HORIZON のライブを観に行ったんだけど、すごく衝撃的だったよ。僕たちはずっとメモを取りながら見ていたんだ。その前の週は MESHUGGAH を観たんだ。僕はあらゆる種類の音楽を純粋に評価しているからね。僕はポジティブなエネルギーしか持っていないんだ。自分がポジティブに感じた音楽を聴いた時と同じように、子供たちが僕たちの音楽を聴いてくれることを願っているよ。そして、その子供たちが成長して、ドープなことをするようになればいいな」


参考文献: KERRANG!: “The power of manifestation is really important”: How Polyphia’s Tim Henson became the guitar hero metal needs

GUITAR.com: “We were little pieces of shit”: Polyphia on teenage fame and making music with Steve Vai

GUITAR WORLD: Tim Henson and Scott LePage on how Polyphia made the wildest guitar album of 2022: “We were like, ‘F**k. Did we just blow out Steve Vai’s speakers?’”

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JUDICATOR : THE MAJESTY OF DECAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUDICATOR !!

“I Personally Love The Fact That Power Metal And Folk Metal Are Becoming More And More Popular Within The United States!”

DISC REVIEW “THE MAJESTY OF DECAY”

「個人的には、パワー・メタルとフォーク・メタルが遂に米国内で人気を博しているという事実に興奮しているよ! そして嬉しいことに、僕がこの素晴らしいジャンルのファンになったきっかけは、アメリカのパワーメタル・バンド NOVAREIGN だったことを君に伝えられる」
SAVATAGE, MANOWAR, ARMORED SAINT。パワー・メタルの黎明を彩ったエピックの巨人を擁しながら、90年代以降、北米大陸にパワー・メタルやフォーク・メタルのファンタジーと追憶が本格的に根付くことはありませんでした。それは、伝統の欠如が理由でしょうか? それとも、革新的で現実的で合理的な国民性? もしくは、多民族ゆえの多様性によるもの? しかし、そんな疑念を払拭するかのように、近年の北米はパワー・メタルの一大拠点へと変貌を遂げました。先日、日本ツアーを盛況のうちに終えた LORDS OF THE TRIDENT, カナダの一撃 UNLEASH THE ARCHERS, 激烈な SEVEN KINGDOMS など血湧き肉躍る無敵のメタル・ファンタジーは今、北米にあります。そして、その魔方陣の重要な一角を成すのが JUDICATOR。
「もし僕が彼らの作品から1枚だけ選ぶとしたら、2003年のアルバム “Live” だね。あのアルバムを聴きながら、いつも自分がステージに立つこと、あるいは BLIND GUARDIAN のコンサートに参加することを空想していたからね。ミキシングがとても良く、演奏も素晴らしく、アルバムの曲も多彩なんだよね」
BLIND GUARDIAN のコンサートで運命的に結成された JUDICATOR は、彼らの描く物語や音景への憧れを曝け出しながらも、決してトリビュート・バンドの役割を買って出ることはありません。これは LORDS OF THE TRIDENT にも言えますが、JUDICATOR はアメリカン・サウンドとヨーロッパ・サウンド、そのどちらかに寄ることなく巧みに融合させ、さらにプログレッシブやエクストリームな要素を加えた新たなパワーメタルの挑戦者となってきました。そして今回の “The Majesty Of Decay” で彼らが操るパワー・メタルの純粋な船は、プログレッシブな風を一層その帆に受けながら、未知の世界へ嬉々として疾走していきます。
「”The Majesty of Decay” は、”At the Expense of Humanity” の緩やかな続編のようなもの。僕は死に魅了され、同時に恐れているので、このアルバムは僕の中の死がどのようなものであるかについての思考実験なんだ。このアルバムは、死に対する恐怖を克服するためのエクササイズだと言える」
ナポレオン・ボナパルト、フリードリヒ大王、ユスティニアヌス帝に将軍ベリサリウス。敬愛する BLIND GUARDIAN のファンタジーとは異なり、JUDICATOR は様々な時代、様々な立場の実在した人間を描く歴史の語り部となってきました。ここにはホビットもドワーフもエルフもいませんが、かえってその生身の人間にフォーカスした語り口が彼らのユニーク・スキルとなりました。そうして今回、JUDICATOR は歴史からも距離を置き、人間の命題である死について考えます。そうそれは、兄を癌で失ったボーカリスト John Yelland の物語。
「DREAM THEATER は非常に正確で、GREATFUL DEAD は非常にスポンティニュアスだ。JUDICATOR は、どちらかというと正確なほうに位置すると思うんだけど、僕はスポンティニュアスな感覚を受け入れているバンドをとても尊敬しているんだ」
人生は何事もほどほどが良い。そんな John の言葉通り、死を恐怖、喪失感、後悔、信仰、贖罪、救済といった多角的なレンズで見定めたアルバムは、その音楽も同様に多種多様。
オルガンやブラスを大胆に導入したトム・ジョーンズのメタル “The High Priestess” の異様は際立ちますが、”Ursa Minor” のようなメロディックなブラックメタル・リフ、”From the Belly of the Whale” や “The Black Elk” のプログレッシブでシンフォニックな威厳は、このバンドが1つや2つのタグには容易に収まらないことを証明しています。
一方で、”Daughter of Swords” や “Ursa Major” は、シンプルなパワー・メタルの生地を複雑でなギターワークでコーティングしたファン垂涎のエピックな逸品。まさに革新と伝統の稀有なるアマルガム。そうしてアルバムは、悲劇的な “Judgement” をフォローするコンガとサックスの高揚感 “Metamorphosis” で死の両極を露わにして幕を閉じます。
今回弊誌では、John Yelland と Big Boss にインタビューを行うことができました。「実は、僕は東宝のゴジラ映画が大好きで、あれを見て育ったんだ!ラドン、ギドラ、モスラなど、何十種類ものおもちゃを持っていて、子どものころは何時間も遊んでいたよ..今でも時々遊ぶんだけどね。日本のゲームは僕の人生に大きな影響を与えてくれた。特に、伝説的な小島秀夫氏が作った “メタルギア・ソリッド” ね。このゲームは数え切れないほどプレイしてきたし、20年以上このシリーズに夢中になっているんだ」 どうぞ!!

JUDICATOR “THE MAJESTY OF DECAY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ASCENSION : SAYONARA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ASCENSION !!

“Everything Fast Doesn’t Have To ‘Sound Like Dragonforce!”

DISC REVIEW “UNDER THE VEIL OF MADNESS”

「最近、”パワー・メタル” という言葉が、より幅広いバンドやスタイルに適用されているようだけど、そろそろこのジャンルを細分化するべき時に来ているんじゃないかな? 君が挙げたバンドで言えば、ALESTORM は僕がパワー・メタルと定義するバンドじゃないから、その点では僕たちと比較することはできないと思う。SABATON と DRAGONFORCE のような全く異なるバンドが同じジャンルに含まれている場合、ネーミング・システムをシーンに合わせて進化させなければならないかもしれないよね」
誇りと気高さ。HELLOWEEN や ANGRA, それに日本の GALNERYUS といった巨人が築きあげた正統なるパワー・メタルの血脈を受け継ぐスコットランドの怪物 ASCENSION が、10年という長い月日を経て遂にシーンへと戻ってきました。ASCENSION がパワー・メタルを世界に叩きつける時、そこには必ず確固たる理由があるのです。
「”Far Beyond the Stars” を書いたときは、特に強い理由があった。あれは当時パワー・メタルで起こっていたことに対する個人的な反発だったんだ。当時、僕らのお気に入りのバンドの多くがキーボードやオーケストレーションを好むスタイルに進化してしまい、ギターがサウンド全体の中で後塵を拝するようになっていたんだ。だから、当時はもう一度ギターが主役になるようなアルバムを作りたかったんだよ」
ちょうど彼らが彗星のごとく登場した2010年前後は、Rate Your Music のパワー・メタル年間ベストを見ても “シンフォニック・パワーメタル”、”エピック・プログレッシブ・パワーメタル” と記されたバンドがトップ10を制圧していたことに気づくでしょう。NIGHTWISH, WITHIN TEMPTATION, EPICA といったシンフォニック・メタル成功の波と、RHAPSODY の映画的な方法論、さらに KAMELOT のプログレッシブな情景が渾然一体となって、パワー・メタルの世界観を変えてしまっていたのです。
もちろん、オーケストラやキーボードが舞い踊る、変幻自在で華麗でオペラティックなパワー・メタルは非常に魅力的です。ただし、ギターとハイトーン・ボーカルが主役の時速180キロで疾走するパワー・メタルの伝統が駆逐されてしまう。それは厄災以外の何物でもないでしょう。ASCENSION は “Far Beyond the Stars” で、突き詰めたテクニックとメロディーの魔法、そして高揚感のジェットコースターで見事に厄災を沈めたのです。
「ASCENSION は単独でシーンにユニークなものを提供し、常に境界線を押し広げる存在でありたいと思っているからね。このアルバムでは、今までのパワーメタルにはないものがあると感じている。それこそが、ASCENSION らしいサウンドなんだと思う。速いものがすべて DRAGONFORCE のサウンドでなければならないという訳ではないんだよ」
時は流れ、パワー・メタルの本流は見事に復活を果たしました。ファンタジーを突き詰めた GLORYHAMMER や TWILIGHT FORCE、ダンサブルな BATTLE BEAST や BEAST IN BLACK、北米の雄 LORDS OF THE TRIDENT や UNLEASH THE ARCHERS, そして戦車と共に突き進む SABATON。FELLOWSHIP や POWER PALADIN といった才気溢れる新鋭も続々と登場しています。ASCENSION はそんな百花繚乱なパワー・メタルの現状に再び疑問を呈するため、戻って来たのです。「本当に挑戦を続けているか?」と。
「日本の文化と伝統には、多くの作曲家(僕たちも含めて!)がとても新鮮で面白いと感じるんだ。古典的なヨーロッパのスタイルとは非常に異なるアプローチで音楽を作っているよね。日本人が使う、多くの素敵なジャズのコードやその進行にはとても感化されるよ!それに、日本の作曲家はメロディがとても重要だと感じているはずなんだよ。僕たちと同じようにね!」
GALNERYUS を筆頭に、日本のアーティストが掲げるメロディ至上主義やメタルらしからぬ “ゴージャスな” コード進行に薫陶を受けながら (最近マーティーさんも広瀬香美さんについて同様の話をしていましたね)、日本に対する恩返しとして製作された光速の別れ歌 “Sayonara”。まるであの CACOPHONY を現代に甦らせたかのようなポリフォニックな中間セクションは革命的。そして、パワー・メタルのドラマ性にラグタイムを大胆に導入した “Megalomaniac”。両者ともに、パワー・メタルの常識を覆すに十分の “驚き” を宿しています。ギターの両翼を左右に広げた復活の一撃、”Under the Veil of Madness” はすぐそこです。
今回弊誌では、ASCENSION にインタビューを行うことができました。「日本からは素晴らしいパワー・メタルやメロディック・メタルのバンドやソングライターがたくさん出てきている。実は、僕たちのオールタイム・フェイバリットが GALNERYUS なんだよ!」 “Sayonara” から始めよう。どうぞ!!

INTERVIEW WITH ASCENSION

Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?

【ASCENSION】: We definitely have a big mixed bag of music that we love in the band but of course many classic power metal bands appear in there! This ranges from things like Helloween, Yngwie Malmsteen, Stratovarius, Gamma Ray, Blind Guardian, X-Japan, Sonata Arctica and many others! Outside of power metal we have a wider variety from Blink-182, The Offspring, David Bowie, Cyndi Lauper, System of a Down, Rage Against the Machine, Cradle of Filth, 2Pac, NWA, Eminem, Dire Straits, Elton John, Fleetwood Mac and of course classics such as Metallica, Iron Maiden and Pantera! We also have always listened to a lot of Classical music and Musical theatre too! I could write a list as long as this page if I continued!

Q1: 本誌初登場です!まずは、バンドの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【ASCENSION】: 好きな音楽がバンド内で混在しているのは確かだけど、もちろんそこにはクラシックなパワーメタル・バンドがたくさん登場するよ!HELLOWEEN, Yngwie Malmsteen, STRATOVARIUS, GAMMA RAY. BLIND GUARDIAN, X-JAPAN, SONATA ARCTICA などなどたくさんね.。
パワー・メタル以外では、BLINK-182, THE OFFSPRING, David Bowie, Cyndi Lauper, SYSTEM OF A DOWN, RAGE AGAINST THE MACHINE, CRADLE OF THE FILTH, 2Pac, NWA, Eminem, Dire Straits, Elton John, FLEETWOOD MAC。それにもちろん、METALLICA, IRON MAIDEN, PANTERA といったクラシックまで幅広いジャンルを聴いてきたよ!クラシックやミュージカルもよく聴いていたね。そうやっていくらでも、長いリストを書くことができるよ。

Q2: Speaking of Scottish power metal, Gloryhammer now dominates the scene, but when you guys started out it was barren, wasn’t it? When you started Ascension, why did you choose power metal? Do you think Gloryhammer and Alestosm are competitors for you?

【ASCENSION】: Back when we started Ascension there wasn’t a single other power metal band from Scotland – and only just a few that were from the UK as a whole. By the time we started the band we loved the whole musical combination that power metal offers – melody, speed, technicality and soaring, uplifting vocals. It’s a whole package – and on top of that is so energetic and a lot of fun to play. It’s a genre where you can constantly challenge yourself with what you write as well as technically pushing limits with what you play. To us, that is what power metal is all about.
It seems recently that that blanket term ‘Power Metal’ gets applied to a wider range of bands and styles – to the point where it might be worth subdividing the genre. Alestorm, from your example, is not what I would define as power metal and so they are not comparable to us in that way. I think when you have a term where hugely different bands like Sabaton and Dragonforce get lumped into the same genre then the naming system might have to evolve to match the scene!

Q2: スコットランドのパワー・メタルといえば、現在は GLORYHAMMER と ALESTORM がシーン全体を牽引していますが、あなたたちがこの音楽を始めた頃は他に誰も存在していませんでしたよね?なぜパワー・メタルに惹かれたのですか?

【ASCENSION】: ASCENSION を始めた当時、スコットランド出身のパワーメタル・バンドは他に一つもなく、イギリス全体でも数バンドしかなかったね。でも僕たちは、メロディ、スピード、テクニック、そして高揚感のあるボーカルなど、パワー・メタルが提供する音楽的な組み合わせが気に入っていたんだ。すべてが揃っていて、その上、とてもエネルギッシュで演奏するのが楽しい。パワー・メタルは、演奏の限界を超える技術的な挑戦だけでなく、作曲でも常に自分自身に挑戦できるジャンルなんだ。僕らにとっては、それこそがパワー・メタルの醍醐味さ。
最近、”パワー・メタル” という言葉が、より幅広いバンドやスタイルに適用されているようだけど、そろそろこのジャンルを細分化するべき時に来ているんじゃないかな? 君が挙げたバンドで言えば、ALESTORM は僕がパワー・メタルと定義するバンドじゃないから、その点では僕たちと比較することはできないと思う。SABATON と DRAGONFORCE のような全く異なるバンドが同じジャンルに含まれている場合、ネーミング・システムをシーンに合わせて進化させなければならないかもしれないよね。

Q3: “Far Beyond the Stars” was a great album with a very strong impact, but it took you 10 long years to release new music from it. Why such a long period of silence?

【ASCENSION】: When we wrote ‘Far Beyond the Stars’ it was for a particularly strong reason – it was a personal reaction to what was happening in power metal at the time. We wanted to make an old-school style power metal album where guitar riffs and solos were back in a big way – it seemed at the time that a lot of our favourite bands had evolved their style to favour keyboards, orchestrations and the guitar started to take a back-seat to the whole sound. So, really it was just that at that time we wanted to make an album where guitars were once again the star.
Now, as you mentioned the first album was greatly received – something we are still very grateful to the fans for! Our problem after that was that we didn’t want to just make a second album in the same style – again we wanted to push boundaries and come up with something new and fresh. We’ve been song writing ideas for a long time for the new album but other projects took our interest in the meantime and we never felt like we found a new sound and new idea that would be interesting as a second album. What we have now with the new album ‘Under the Veil of Madness’ we feel is something that could offer something new and exciting to the power metal genre – some flair and unexpected twists and turns!

Q3: デビュー作 “Far Beyond The Stars” は素晴らしいアルバムでシーンに大きなインパクトを残しましたが、あなたたちはその後、10年という長い沈黙の期間に入りました。

【ASCENSION】: “Far Beyond the Stars” を書いたときは、特に強い理由があった。あれは当時パワー・メタルで起こっていたことに対する個人的な反発だったんだ。当時、僕らのお気に入りのバンドの多くがキーボードやオーケストレーションを好むスタイルに進化してしまい、ギターがサウンド全体の中で後塵を拝するようになっていたんだ。だから、当時はもう一度ギターが主役になるようなアルバムを作りたかったんだよ。
君が言うようにに1stアルバムはとても好評で、今でもファンに感謝しているよ。その後、僕たちが直面した壁は、だからこそ同じようなスタイルのセカンド・アルバムを作るだけではいけないということだったんだ。新しいアルバムのために長い間曲作りのアイデアを練っていたんだけど、その間は他のプロジェクトに興味が行ってしまい、ASCENSION の次の一歩として面白いような新しいサウンドや新しいアイデアを見つけたとは思えなかったんだ。
だからこそ、ニューアルバム “Under the Veil of Madness” は、パワー・メタルというジャンルに何か新しい刺激的なものを提供できるものだと感じているんだよ。

Q4: By the way, the new song “Sayonara” is fantastic! It has more tension than when Dragonforce was at its most intense, and the melody is outstanding! Did you have Dragonforce in mind when you were writing the song?

【ASCENSION】: We honestly never have Dragonforce in mind when song writing – in fact we never have any other band in mind other than what we want Ascension to sound like. We want Ascension to stand alone offering something unique to the scene and constantly pushing boundaries. With this album we feel there are things that have not been done in power metal before and so it’s a sound that we think of as uniquely Ascension – everything fast doesn’t have to ‘Sound Like Dragonforce.

Q4: それにしても、新曲の “Sayonara” は素晴らしいですね!大好きですよ!メロディーは際立ち、DRAGONFORCE を凌ぐようなテンションで畳み掛けますね?

【ASCENSION】: まあ正直なところ、曲作りの際に DRAGONFORCE を意識することはないよ。実際、僕たちは ASCENSION をどのようなサウンドにしたいかということに集中しているから、他のバンドを意識することはないんだ。
ASCENSION は単独でシーンにユニークなものを提供し、常に境界線を押し広げる存在でありたいと思っているからね。このアルバムでは、今までのパワーメタルにはないものがあると感じている。それこそが、ASCENSION らしいサウンドなんだと思う。速いものがすべて DRAGONFORCE のサウンドでなければならないという訳ではないんだよ。

Q5: “Sayonara” means goodbye in Japanese. Why did you choose this Japanese word for the title and theme?

【ASCENSION】: We had such a great experience with our Japanese label (Spiritual Beast) from the first album – and A LOT of great feedback and love from fans in Japan that we knew we wanted to show our appreciation by giving a little recognition to fans of fast and melodic metal in Japan! The theme of the song is about saying one final goodbye – so it felt perfect to use ‘Sayonara’ for this song!

Q5: 日本語の “さよなら” というタイトルも、私たちにとってはうれしいですね。

【ASCENSION】: ファースト・アルバムから日本のレーベル Spiritual Beast と素晴らしい経験を積んできて、日本のファンからたくさんの素晴らしいフィードバックと愛をもらったからね。だからどうにかして、日本のファスト&メロディックメタルファンに少しでも感謝の気持ちを伝えたいと思ったんだ。
この曲のテーマは最後の別れを告げることだから、この曲に “Sayonara” という言葉を使うのは完璧だと思ったんだ!

Q6: When I interview power metal bands, many of them tell me that they were influenced by Japanese anime and video games, probably because of the strong fantasy elements, but what about you guys?

【ASCENSION】: Japan has a great history of producing some absolutely fantastic composers – and a unique style and approach to music that many find very appealing. There are a lot of great power and melodic metal bands and song writers in coming out of Japan – one of our all-time favourites being Galneryus! I think Japanese culture and traditions lend to a very different take on writing music, different from classic European styles which a lot of composers (us included!) find very fresh and interesting – lots of very nice jazzy chords and progressions to get inspired from! I also think Japanese composers feel that melody is very important – just like we do!.

Q6: パワーメタルと、日本のアニメやゲーム、音楽のファンタジーは非常に親和性が高いと思うのですが?

【ASCENSION】: 日本には素晴らしい作曲家を輩出してきた歴史があり、多くの人が非常に魅力的だと感じる音楽への独特なスタイルやアプローチを持っているんだ。日本からは素晴らしいパワー・メタルやメロディック・メタルのバンドやソングライターがたくさん出てきている。実は、僕たちのオールタイム・フェイバリットが GALNERYUS なんだよ!
日本の文化と伝統には、多くの作曲家(僕たちも含めて!)がとても新鮮で面白いと感じるんだ。古典的なヨーロッパのスタイルとは非常に異なるアプローチで音楽を作っているよね。日本人が使う、多くの素敵なジャズのコードやその進行にはとても感化されるよ!それに、日本の作曲家はメロディがとても重要だと感じているはずなんだよ。僕たちと同じようにね!

Q7: Also, I love your another new song “Megalomaniac”. You know, A very current title, isn’t it? With Covid, war, and division, the world has been getting darker and darker since the beginning of the 20s. For the marginalized and oppressed people, power metal seems to be a great escape. Especially since your metal is very pure and elation metal. Would you agree?

【ASCENSION】: This song for us is definitely about just having fun and bringing loads of energy – we wrote something to show that we don’t take ourselves too seriously and aren’t afraid to try crazy new ideas. Having a full-on Ragtime section in the middle of a power metal song I think is not too common to hear I think.

Q7: “Megalomaniac” は世相を反映した楽曲ですね? パンデミックや戦争、そして分断で、20年代の始まりは非常に暗いものとなりました。だからこそ、抑圧され孤立した人にとって、パワー・メタルは重要な逃避場所にも思えます。
特に、あなたたちのようなピュアで高揚感のあるなパワー・メタルならばなおさらです。

【ASCENSION】: この曲は、僕らにとっては、とにかく楽しくて、エネルギーに満ち溢れた曲なんだ。そうやって僕たちは、あまり深刻に考えず、クレイジーな新しいアイデアに挑戦することを恐れていないことを示したいんだ。
パワー・メタルの曲の真ん中にラグタイム・セクションがあるというのは、あまり一般的ではないと思うからね。

Q8: For example, the old power metal bands such as Helloween and Gamma Ray did not have a very “technical” image, but recent bands such as Twilight Force, Glory Hammer, and you guys are revolutionizing power metal with your quite technical performances, I feel. How about that?

【ASCENSION】: For us there is technicality in playing but also technicality in composition too and we like to push the boundaries in both. I think on our new album every musician is pushing higher onto new levels of personal achievement and our aim is to keep that going for every album we make. I don’t listen to Gloryhammer and TwilightForce so can’t really speak to their playing or composing.

Q8: 例えば、HELLOWEEN や GAMMA RAY といったパワーメタル第1世代に特別テクニカルという印象はありませんでしたが、最近の TWILIGHT FORCE, GLORY HAMMER, それにもちろん、あなたたちも、非常にテクニカルでパワーメタルを進化に導いていると感じますよ。

【ASCENSION】: もちろん、僕らの演奏にはテクニカルな部分があるけど、実は作曲にもテクニカルな部分っていうのが存在して、その両方で境界線を押し広げることが好きなんだよね。新しいアルバムでは、すべてのミュージシャンが個人的な目標達成のために新しいレベルに挑戦していると思うし、僕らの目標はアルバムを作るたびに挑戦を維持し続けることだ。
僕は GLORYHAMMER や TWILIGHT FORCE を聴かないから、彼らの演奏や作曲について話すことはできないな。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ASCENSION’S LIFE!!

Galneryus “Resurrection” (Ricki)

Yngwie Malmsteen “Odyssey” (Fraser)

Angra “Temple of Shadows” (Dick)

Helloween “Keeper of the Seventh Keys Pt I” (Nick)

Kauan “Sorni Nai” (Doc)

MESSAGE FOR JAPAN

From all of us at Ascension, thank you so much for your continued support all these years – we hope the new album with be worth the very long wait and we will love to one day come and play the songs for you all!

ASCENSION 全員から、これまでずっと応援してくれて本当にありがとう!新しいアルバムが長い間待たせた甲斐があればいいな。いつか君たち全員のために演奏しに行きたいと思っているよ!

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SPIRITUAL BEAST

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SUMERLANDS : DREAMKILLER】


COVER STORY : SUMERLANDS “DREAMKILLER”

“Don’t Take The Easy Dollar. Find What You Want To Do — What Makes You Happy — And Go With It. Live Virtuously, And You’ll Be Rewarded Tenfold. I’m Not Rich, But I’m Happy Where I’m At”

DREAMKILLER

Arthur Rizk はモダン・メタルの秘密兵器でしょう。もし彼の名前を知らなくても、メタルヘッズなら彼の仕事は必ず知っているはずです。2006年以来、プロデューサー、ソングライター、エンジニア、マルチ奏者として300を超える実績を誇る Arthur のキャリアは、ダラス生まれのニューカマー POWER TRIP のデビューフル “Manifest Decimation” を2013年に手がけたことで飛躍的な成長を遂げました。SOULFLY, KREATOR, CAVALERA CONSPIRACY, CRO-MAGS, SACRED REICH, CODE ORANGE, PRIMITIVE MAN, TURNSTILE, SHOW ME THE BODY といったバンドは、Arthur 独特の専門知識から恩恵を受けていますが、これは表面上の話に過ぎません。最近では、ジャンルを超えたラッパー、ソングライター Ghostemane のメジャー・デビュー作を手がけ、90年代のヒップホップへの愛を全開にしたのですから。
「ETERNAL CHAMPION と SUMMERLANDS では、ほとんどメタル以外のものからしか影響を受けていない。僕が本当に好きなのはメロディックなものばかりなんだ。THE EAGLES, Lionel Richie, TANGERINE DREAM といったムードのね。もっとメロディックなものが僕の曲作りのスイッチになるし、そこから何かアイデアを得て、それをメタルとして書くだけなんだ、基本的にね。僕の作品はすべて、メタル以外のものから影響を受けている」

スタジオにいないとき、あるいは海外でライブ・サウンドを担当していないとき、Arthur は自身の2つのバンド、ETERNAL CHAMPION と SUMERLANDS のどちらかで作曲とレコーディングを行っています。剣と魔法に彩られた ETERNAL CHAMPION の “Ravening Iron” でメタル世界に衝撃を与えた後、Arthur は SUMERLANDS でさらに創造の翼を羽ばたかせました。Brad Raub(ベース)、Justin DeTore(ドラム)、John Powers(ギター)、Brendan Radigan(ボーカル)と共に、Arthur はバンドの2作目 “Dreamkiller” に熱中していました。アンセミックなリード、シンセサイザーの音風景、疾走感のあるリフ、そして衝撃のボーカルによる容赦ない音のオデッセイこそ、SUMERLANDS の特徴。しかし、その地層の奥深くには、多様な顧客、独創的なエンジニアリング、バンドであることの本質的な懸念など、彼の目まぐるしいキャリアに由来する複雑な影響力が隠されているのです。すべての経験、技術、教訓は、次のの音楽活動へと注ぎ込まれていきます。Arthur にとって、多様なキャリア、出世の性質、そして自分自身に忠実であろうとする揺るぎない献身は、夢のパワー・メタルを作り上げることにつながったのです。
6年というリリース間隔は非常に長く、故に彼の個人的な、そしてプロフェッショナルな成長によって生み出された勢いは驚異的です。正真正銘のスタジオ研究家である Arthur は、2つの異なる、しかし重なり合う音楽の状態をやり繰りすることを要求されます。”直接”(自身のバンドやプロジェクト)と “間接” (他のアーティストとの仕事)を。時にこの両者は、Arthur の創造的なインプットを、同時に、異なるバージョンで要求します。
「毎日スタジオに入るたびに、新しいことを学んでいるんだ。共に仕事をするすべての人が100万ものことを頭の中で考えている。吸収できることはたくさんあるんだ」

Cavalera 兄弟との出会いこそ僥倖でした。
「Max の前に Igor と友達だったんだ。Igor は Mixhell というテクノ系のプロジェクトに関わっていて、彼と彼の奥さんは Soulwax というドラムが3人、シンセが2人というクレイジーなバンドで演奏している。彼はメタルとは別のアンダーグラウンドの一員なんだ。Igor は僕の Vatican Shadow での仕事を知っていた。Max とはその後、CAVALERA CONSPIRACY のライブで1週間ほど Igor のためにドラムテクをしたときに知り合うことになったんだ。
Max と僕は最初、NWOBHM バンドの SATAN を聴くことでつながったんだけど、彼は “君がSatanを知っているとは!” って感じだった。これは僕の大好きなレコードのひとつなんだ。それから、僕が手がけた CODE ORANGE のアルバムや POWER TRIP の新作などを Max に聴かせたんだ。で、彼らは僕がプロデューサーとして参加することを話し合ったんだと思う。
プロデュースを学んでいた頃は、”Chaos A.D.” や “Beneath the Remains” を勉強した。”Arise” もね。イントロから始まるリバース・ヴォーカル、シンセの音。それを全部自分のものにしたんだ。レコーディング中に Max に言ったんだ。”長年にわたって君から得たアイデアの代価を払うべきだ” ってね。彼は、こういったことを再び探求することに、とても興奮していたよ。僕たちは座って、昔の SEPULTURA や JUDAS PRIEST、80年代の作品やデスメタルを大量に聴いたよ。自分たちが何が好きなのかを話し合うことで、一緒に仕事をする幅が広がったんだ。
それに、彼らはアンダーグラウンドで起こっていることをすべて知っているんだ。ほとんどの場合、彼らは自分たちが好きな若いバンドを一緒にツアーに参加させようとする。Max は文字通り、常に新しいものを探してジャムっているんだ」

そうした相互影響と情報の共生が続く中で、Arthur は作曲とプロデュースという両輪を拡大させることになりました。より多くのミュージシャンが Arthur のソングライティング能力を信頼するようになり、その過程で技術やレコーディング能力を磨いた彼にとって、”直接” と “間接” の関わりを断ち切ることはますます困難になっているのです。
SUMERLANDS の “Dreamkiller” は、BLACK SABBATH の “Mob Rules” のように、”ビッグなドラムとクリーンでありながらギザギザのギター” という80年代のメタルの遺産を受け継いでいます。重要なのは、ストラトキャスター(シェフ曰く、代用不可)のクリーンでクリスタルのようなサウンド。次に、URIAH HEEP, YES, CAMEL といったプログの巨人にレザージャケットを着せ、FLEETWOOD MAC などの “ママロック”、ライオネル・リッチーなどの “ヨットロック”、さらに FOREIGNER, JOURNEY, SURVIVOR のような AOR といったたっぷりで幅広いレトロ・サウンド。最後に、THE CURE の快作 “Faith” のような奇妙な隠し味。
メタリックであることにこれほど無関心なメタルのレコードは他になく、それゆえに “Dreamkiller” は素晴らしいのです。このアルバムは、音楽の持つ力に対する外連味のない喜びの表現であり、また、ディストーションに頼るのではなく、ギタリストの指からギター・ミュージックが生まれることについての頌歌でもあります。対照的に、2016年のデビュー作は “超カルト” で、”クレイジー過ぎるギター、ドラム、ヴォーカルのサウンド “と Arthur は語っていました。
「ファースト・アルバムは、地下室の住人が気に入るようなシックなレコードを作りたかっただけなんだ。失うものは何もなかったからな。ただ、シンセサイザーが全面に押し出された最初のレコードでは、それがギミック的でシンセメタル的なものになるのを恐れていたんだ。パワー・メタルにはしたくなかったんだ。僕は MERCYFUL FATE のようなタイプの、ちょっとした装飾がとても好きだから。このアルバムでは、WARLORD からの影響を少し聴くことができる。彼らはユーロ調のシンセサイザーが多く、地中海やギリシャのような雰囲気があるんだ。僕はレバノンにルーツがあるからね。
レバノン人である僕の琴線に触れるものが好きだね。ギリシャのメタルやキプロスのメタル、地中海のシーンが好きなんだ。イタリアのメタル・シーンでさえ、その土地の歴史に影響された異なるサウンドを聴かせてくれる。WARLORD はギリシャ系のバンドで、ギリシャ出身ではないけど、ギリシャ的なコードやスケールを大量にサウンドに追加していて、それがすごく気持ちいいんだ。あと、キプロスの MIRROR もよく聴いているよ」

この6年間の Arthur の進化が、”Dreamkiller” に、誠実さ、謙虚さ、内省の正確なブレンドによってのみ可能となる重厚さを与えているのです。別の言い方をすれば、このアルバムには失うものがあるのでしょう。
Arthur は自分の部屋にレバノンの国旗を誇らしげに、そして当然のように掲げています。彼のクリエイティブな性格には、実際、そのレバノンの遺産が大きく影響しています。レバノンからの移民である彼の両親は危険を冒してペンシルバニアで新しい生活を始め、イートンでレバノン風デリカテッセンを開業したことは彼の誇りでした。ヘヴィ・メタルの洗礼を受ける前、彼が影響を受けた音楽は東洋と西洋のハイブリッドでした。一方では、レバノンの伝説的な音楽家であるフェアーズ、ファリド、アスマハン・アルアトラッシュのような人たち。もう一方は、”カトリックの賛美歌と中世とドリアンモード”。彼のメタルのルーツは後者にあり、前者はむしろ音楽の極めて個人的な性質、彼の考え方に影響を与えたのです。
「僕はレバノン系のカトリック教徒として育った。結局、音楽だけが心に残っているんだよな。面白いことに、ヨーロッパとこちら側では、好きなメタルが全く違うんだ。ヨーロッパの人たちは、エキセントリックとまでは言わないけど、結構バンドの後期の作品に興味を持つ傾向にある。80年代の大御所バンドなら、そのバンドの後期のレコードも好きなんだよ。例えば80年代のスラッシュ・バンドがあったとして、ヨーロッパの人たちは90年代や2000年代に彼らが作ったゴシック・ロックのようなものも好きだ。例えば PARADISE LOST や SENTENCED のような、ある方向から始まって別の方向に向かったバンドのレコードをずっと追いかけている可能性がある。その理由はよくわからないけどね。アメリカの人たちは、音楽の流行の移り変わりが早い気がするね。
とにかく、レバノンの従兄弟たちが、僕をメタルに引き込んでくれたんだ。IRON MAIDEN の “Virtual XI” とか、そんな感じの適当なカセットテープをくれたんだ。従兄弟たちは僕のヒーローだったから、”彼らがハマっているものは何でもハマらなきゃ!” って感じだったからね。ユーロ・メタルからの影響は、前作よりもこのアルバムの方がより強く出ているんだ」

この Arthur の形成期における幅広い芸術性は、彼の作品に不可欠であり、異例の解決策を発見する欲求を刺激し続けています。ジャンルを超えたラッパー Ghostemane のアルバム “N/O/I/S/E” と “ANTI-ICON” を手がけることは、彼の創造力の試金石となりました。”90年代のラップの大ファン” と称する Arthur は、Bun B や Three 6 Mafia、ヒューストンやメンフィスのアンダーグラウンド・テープなどを参考にしながら作品に臨みました。Ghostemane の挑戦は、”6つのジャンルの音楽をどう融合させ、親しみやすいものにするか”。その挑戦は、確かに大変なものでしたが、Arthur にとって非常に貴重な学習体験となりました。
「Ghostemane は90年代のメンフィス・ラップとインダストリアルとメタルを融合させている。同じような領域だと思うんだけど、僕はエレクトロニックなものが好きで、そういうものをたくさん手がけてきたよ。COCTEAW TWINS や DEAD CAN DANCE の大ファンだからね。そういうものに影響を受けている人たちと一緒に仕事をすることが多いよ」
Arthur は、このレコードを “6、7日で作った” と明かしています。眠れない夜と、信じられないほど楽しい時間を過ごしたと言いながら、彼は、青写真として初期のビート以外は何も持たずに、トラッキング、ボーカル、ミキシング、その他に取り組んだと断言しました。彼の DNA と切っても切れない関係にある、このマルチジャンルなラッパーとの経験で、Arthur の献身と決意が輝きを増したのは明らかでした。
「Ghostemane を失望させたくなかったんだ。このプロジェクトは、彼がメタルやハードコアの世界に飛び込む最初のレコードであり、彼の大事な瞬間だった。そんな瞬間に彼は僕を選んだんだ。を連れてきた。彼は巨大化する瀬戸際にいる。失望させるわけにはいかないんだよ」

Ghostemane との仕事を、”ノスタルジア” という旗印の下に平板化するのは間違いです。むしろ、ノスタルジーとモダンの間の興味深い一線を探っているのです。Ghostemane のメタルとヒップホップの衝撃的なブレンドは、かつての Nu-metal と共通点もありながら、明らかに一線を画すと Arthur は考えています。
では、SUMERLANDS はどうでしょう?”Dreamkiller” に目を通すと、たしかにノスタルジアは誇らしげに袖に纏っています。メタルが無限に進化すると仮定しても、”影響” と “模倣” を区別することは、Arthur がバンドのアイデンティティを構築する際の重要な柱となります。QUEENSRYCHE, JUDAS PRIEST, Jake E. Lee 時代の Ozzy Osbourne のレコードは、”Dreamkiller” に重大かつ明白な影響を与えています。ただし、SUMERLANDS には、プラトニックな理想に対する Arthur の懸念が深く刻み込まれています。彼は、JUDAS PRIEST のようなバンドを表層的に直接パロってロックンロールのグッドタイムを求めるバンドが影響力の不完全な理解であると主張しているのです。
「僕はプリーストの本質は壮大な曲にあると思う。”Sad Wings of Destiny” を聴くと、まるで QUEEN のレコードのように聴こえる。それに、Rob Halford は様々な女性フォーク・ロックに影響を受けていたんだ」

Arthur と SUMERLANDS の80’sメタルへの傾倒は、AOR, Lionel Richie、Earth, Wind & Fire、Bee Gees、そして Arthur のお気に入りである ABBA のような、ノンメタルな影響を隠し味にしています。
「このアルバムでは、誰がどう思おうが構わないと思っている(笑)。新しいシンガーが加わり、バンドが生まれ変わったような感じだ。僕は FOREIGNER の作品の大ファンなんだよ。彼らのおかげで、プロデュースにのめり込んでいったと言えるかもしれない。FOREIGNER の作品では、シンセサイザーの使い方がとても気に入っているんだ。シンセサイザーが前面に出ているわけではなく、質感を高めているような感じ。彼らのように、どの曲もどこかダークで地中海的な雰囲気にしたかったんだ」
Arthur が “ソーセージグラインダー” と呼ぶ、多種多様なアーティストの品揃えの中でも、ABBA は彼の音楽的アプローチの2つの本質を表しています。ひとつは、他のバンドの美学を一面的に捉えて音楽をトレースすることは、失敗する運命にある。2つ目の論考は、影響、認識、そして杓子定規な思い込みの投影がどのように “真正性 “というプリズムに集約されるかに関わるもの。定型の破壊。
「どのタイプの音楽にどのタイプの歌詞が合うか、というようなことは決してあってはならない。だからつまらない音楽が多いんだ。ABBA に “The Visitors” というアルバムがある。彼らが解散して、最後のレコードを作ったときのもの。どの曲も文字通り肌寒くなるような、本当に悲しい気分にさせてくれるものばかりだ。ABBA らしくないが最高なんだよ。ダンス・ギターやシンセサイザーを駆使して、キャッチーなヴォーカルも入れつつ、もっと歌謡曲っぽい曲を作りたかったんだ。誰がこのレコードを気に入ってくれるかなんて、どうでもいいんだ。僕たちはこの作品が大好きで、この作品に夢中になっているんだから」

メタル・アルバムに期待される歌詞の題材として、Arthur が “Sex、ビール、サタン崇拝” と皮肉るのとは対照的に、SUMERLANDS は、無益、黄昏、夜と昼の間の仄かな時間に見られるはかない希望といった、捉えどころのない、暗い願望のようなアイデアを選択しています。これを成功させたのは、バンドの新ボーカリスト、Brendan のおかげだと彼は言います。彼の加入は Paul Di’Anno に対する Bruce Dickinson だと Arthur は語っています。そうなると、 “Dreamkiller” はバンドの “The Number of the Beast” となり、SUMERLANDS はそれに応じて野心を高めてきたことになるのです。彼の声は前任の Swanson よりもしなやかで、上昇気流に乗りながらタイトなコーナーでもしっかりとメロディーを追いかけることができます。ただし、脈打つようなシンセサイザーと焼け付くようなソロイズム、BOSTON のようなポジティブな輝きとは対照的に、”Dreamkiller” は重苦しいユーモアと虚無的な正直さで構成されています。その好対照こそ、SUMERLANDS の真骨頂。
「楽曲の多くは絶望を歌っている。2歩進んだと思ったら、2歩下がっていたことに気づくんだ (笑)。憂鬱な曲ばかりだけど、僕らにはそれが面白いんだよ。それが人生だ!ダークユーモアだよ。まるで僕たちが罰当たりでマゾヒストであるかのようにね、わかる?
それに曲はメタリックだけど、完全なヘヴィ・メタルではない。ヘヴィ・メタルでありながら、ある意味オルタナティブ・ロックのように親しみやすいものにしたかったんだ。メタルはそういうものだよ。その瞬間や雰囲気は、ただひたすらメタル的に “オーバーキル” するよりもずっと重要だと思うんだ。僕が音楽に目覚めた頃、コールドウェーブをたくさん聴いたし、ASYLAM PARTY とか、フランスのバンドもたくさん聴いた。でも、THE CURE はミニマル・ゴスのレコードを作った最初のバンドなんだ。”Faith”。あれは僕にとっては、ちょっと手を加えれば史上最高のメタル・レコードになり得るもので、そこにも大きな影響を受けているんだ」

当然、Arthur はメタル界屈指のスタジオの魔術師であり、”Dreamkiller” でもその神聖な芸術を爆発させています。例えば、タイトル曲の疾走感あふれるメインリフ、それをなぞる羽のように軽いシンセサイザーや、”Death to Mercy” で80年代らしい深いフェードアウトの靄の中に消えていくデュエル・ソロのように、彼は小さなディテールに喜びを感じているのです。もしタイミングとレコード契約に恵まれていれば、JOURNEY や TOTO がアルバムチャートを席巻していた頃、SUMERLANDS は彼らと同等のレコーディング費用を得ていたかもしれません。しかし、Arthur の才能より、彼らはそのような大掛かりなサウンドを、相応の費用をかけずに実現したのです。
もうひとつ、Arthur がこだわったのは、プロジェクトとバンドの区別と、前者の限界です。バンドは、Arthur が言うように、”興奮するためのもの” であり、個別のアイデンティティを持っています。80年代の US メタルは、”1枚のレコードを作るだけで、それが素晴らしいものであったとしてもやがて消えていく” バンドであったと、彼は言います。彼らは成功には無関心でしたが、自分にとって重要なのは ‘彼らがいつもバンドを組んでいたこと” だと Arthur 言い切ります。
「SUMMERLANDS をできるだけ “プロジェクト” から遠ざけようと思ったんだ。2、3人の男が何かをやっているとわかると、人々はそれを小さなプロジェクトか何かのカテゴリーに入れてしまうからね。プロデューサーの産物ではなく、バンドのように思わせたかった」

ギターの話になると、噂の “ストラト・オンリー” ポリシーが登場します。このジョークの由来は、”史上最高のヘビーメタルバンドの1つ” に対する素直な憧れからだと、Arthur は嬉しそうに語ります。「イングランド出身のサタンだ」。彼らのギタリストがストラトしか弾かないという事実が、彼にとってはとてもクールだったのです。IRON MAIDEN のデイヴ・マーレイのストラトに対する長年の執着は本当に面白いと Arthur は言います。彼は、”Twilight Points the Way” のストラト・サウンドが “Dreamkiller” の音色美を最もよく表しているトラックだと主張します。しかし、この曲は単なるストラトの曲ではなく、バンドの結束にとって欠かせない楽曲でもあります。「この曲は僕にとって厳粛な誓いなんだ」
宗教、イデオロギー、スタジオ、ステージ、そして数十年にわたるジャンルを超えた音楽的影響の網の目の中で、Arthur は自分自身に忠実であり続けるという揺るぎない信念を持ち、様々な経験を積みながらその意味を内省的に再確認してきました。彼は、音楽と文化のはかなさを痛感しています。「それが絆だと思うたびに、目を離すと消えているんだ」
特に音楽においては、一般的に2つのうちの1つが起こると Arthur は主張します。一方は、自分の興味に忠実でないまま、若者の好みを追いかけることに終始してしまう。逆に、自分自身に忠実すぎる人は、若い人たちとのつながりを持てないかもしれない。アーサーは、”安全な “ルートを避けながら、自分の興味のある音楽を追求することで、”少なくとも誰かが聴きたくなるようなものを作ることができる” と言います。つまり、彼の芸術的なアイデンティティにとって不可欠なのは、自分の意思に従って音楽の旅をするという決意であり、それは最も大きなリスクであると同時に、最も大きな見返りをもたらすものなのです。
「大物のプロジェクトを引き受けたり、自分の経歴を利用して大きな仕事を得たり、常に自分を売り込むのとは対照的に、そうすることで僕はずっと幸せになれたんだ。安易にお金を取らないこと。自分がやりたいこと、自分を幸せにすることを見つけ、それを貫くこと。高潔に生きれば、10倍の報酬が得られる。僕はお金持ちではないけれど、今いる場所で幸せなんだ。今夜午前2時にコンピュータに向かい、3時間の睡眠をとって朝の8時まで仕事をしても、幸せな気分でいられるよ。自分が取り組んでいることに満足しているからね。これこそが、人が考えるべき人生の大きなポイントだと思う。それが君が取るべきリスクなのさ」

参考文献: Arthur Rizk: Visionary Producer Behind Ghostemane, Sumerlands, and Power Trip

NEW NOISE MAG:INTERVIEW: SUMERLANDS ON MAKING A NON-METAL METAL ALBUM

INVISIBLE ORANGE:Sumerlands Nourish a Love for Heavy Metal on “Dreamkiller” (Arthur Rizk Interview)

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW【ANARCHŸ : SENTÏENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REESE TILLER OF ANARCHŸ !!

“Slayer Is Awesome, But We Really Don’t Need Any More Slayer Clones.”

DISC REVIEW “Sentïence”

「僕ら二人は Anarchÿ の他にも音楽活動をしているけど、HeXeN, VOIVOD, VEKTOR のようなメロディックかつプログレッシブなバンドのように、本当に痒いところに手が届くスラッシュ・アーティストをほとんど見たことがないんだよ。だからこそ、僕たちはできるだけ多くの音楽、特にクラシック音楽からインスピレーションを得ることにしたんだ」
スラッシュ・メタルはヘヴィ・メタルの改革にほとんど最初に取り組んだジャンルかもしれません。しかしながら、ここ20年ほど、質の高いスラッシュ・バンドはそれほど多く現れていないのが実情でしょう。80年代半ばから90年代初頭にかけての素晴らしい作品は今でもその輝きを失うことはありません。しかし、2020年代においても、絶賛されるスラッシュ作品のほとんどがあの時代のカルト・ヒーローという現状は決して健康的とは言えないはずです。
弊誌でも、今年取り上げたスラッシュ・バンドは VOIVOD, BLIND ILLUSION, TOXIK などあの時代の英雄ばかり。VEKTOR の偉業はむしろ青天の霹靂でした。では、スラッシュ・メタルを牽引する若い力はもう顕現することはないのでしょうか?
「音楽的に何も新しいものをもたらさない新たなスラッシュ・バンドは本当にたくさんいる。僕はどんな種類のスラッシュも好きだからそれはそれでいいんだけど、今後、もっとユニークなものを作る努力をしてほしいと願うばかりだよ。つまりね、SLAYER は素晴らしいけど、これ以上 SLAYER のクローンは全く必要ないんだ」
心配は無用。スラッシュ・メタルの無政府主義者 Anarchÿ がいます。セントルイスを拠点とするボーカルとマルチ奏者の2人組。彼らのデビューフル “Sentïence” はプログレッシブ・スラッシュの痒いところに手が届く意外性と独自性の塊。アートワークやてんこ盛りのウムラウトも、このジャンルが百花繚乱だった頃を思い起こさせる素晴らしい出来栄え。ジャンルの垣根を取り払い、様々な音楽的影響を融合させたこのアルバムは、スラッシュやメタルを基盤としながらその堅苦しい建物の外に出て、人間の経験や謎めいたテーマに触れながら、神秘的なリスニング体験を届けてくれます。
「スラッシュ・メタル史上最長の曲の後に続くのは、最短の曲以外に何があるだろうか? しかし残念ながら、WEHRMACHT は80年代に “E” で既に最短の試みを先行していたので、僕らは彼らのマイクロソングをカバーすることを選んだんだ。32分の曲の直後に2秒の曲を置くことのユーモアが、誰かに伝わることを祈るよ!」
バッハへの賛辞、スペインの夢、メタルらしからぬハンド・パーカッションなど様々な要素を取り入れたアルバムで、ハイライトとなるのは32分のオデッセイ “The Spectrum of Human Emotion”。シェイクスピアの戯曲 “ハムレット” をロック・オペラ風にアレンジしたこの曲は、スラッシュ・メタルのリフを中心に、ソフトなアコースティック・ギター、ジャズや VOIVOD の不協和音、アカペラ・ボーカル、優しいピアノの響き、そしてDavid Bowie を思わせるスペース・ロックと、ジャンルの枠を越えた冒険がスリルとサスペンスの汀で展開されていきます。スラッシュ・メタルの BETWEEN THE BURIED AND ME とでも評したくなるようなアイデアの湖。ただし、7部構成の壮大なシェイクスピアン・スラッシュが幕を閉じるや否や、たった2秒の “Ë” でリスナーの度肝を抜くのが彼らのやり方。
ただ、Anarchÿ の策士ぶりは、1時間近くあるアルバムの半分以上を “The Spectrum” という1曲の超越した叙事詩で展開しながら、残りのトラックでは、プログレッシブ・スラッシュの雛形を意識し、ジャンルの骨子である目眩く複雑なリフとコンポジションで好き者をも魅了していることからも十二分に伝わります。決して、ただのイロモノではなく、歴史と未来を抱きしめた明らかな “挑戦者” の登場です。
今回弊誌では、Reese Tiller にインタビューを行うことができました。「シェイクスピアの “ハムレット” は、とてつもなく長い戯曲だから、とてつもなく長いスラッシュ・メタルの曲にはぴったりだ!と。そして、歌詞にするためのメモがたくさんとって、曲の歌詞にチャネリングしていったんだ」どうぞ!!

ANARCHŸ “SENTÏENCE” : 10/10

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