“I Distinctly Remember Staring At My Boombox In Disbelief While Hearing Blackwater Park For The First Time, Learning That It Was Possible To Combine Such Beauty With Such Brutality So Seamlessly, And I Have Been Drawn To Attempting To Achieve That Myself Ever Since.”
DISC REVIEW “TEMPORA MUTANTUR”
「”Eidolon” は、僕の心の中で特別な位置を占めているのは確かだよ。Ryan が亡くなったとき、僕はバンドを続けるかどうかでずいぶん悩んだんだ。当時はまだスタジオ・プロジェクトで、僕たち2人が中心となって必死に取り組んでいたからね。だから、彼なしで続けるべきかどうか、あるいは続けることができるのかどうかさえも疑問に思った。言うまでもなく、僕は子供の頃からの親友の一人の死と向き合っていた。 そのとき、僕のその悲嘆の過程についてアルバムを書くというアイデアが閃いた。それは強く、力強く、感情的で、そう、彼の思い出を称えるものになると思った」
ヘヴィ・メタルは聴くものの痛み、悲しみ、孤独を優しく抱きしめる音楽です。そのメタルに宿る並外れた包容力と湧き出でる回復力の源泉は、きっと音楽を生み出す者もまた喪失や痛みを抱えた経験があるからに他なりません。
カリフォルニア州サクラメントを拠点とする LUNAR は、長年の友人である Alex Bosson(ドラムス/パーカッション)と Ryan Erwin(ギター/ヴォーカル)が2013年に結成したプログレッシブ・メタル・バンドでした。しかし、2018年の春に Ryan が突然他界。Alex は悲しみに暮れ、一時は LUNAR を終わらせることも考えましたが、Ryan の遺志を継ぎ、Ryan の偉業と思い出を称えるためにバンドの存続を決意しました。
「このリストは、僕の意見では、この世に存在する偉大なバンドやミュージシャンばかりだ。 また、僕が個人的に尊敬し、ファンであるバンドばかりだ。 だから、彼らの組み合わせと言われるのはとても名誉なことなんだ。 それに、僕にとってプログはすでに音楽全般の “るつぼ” なんだ。 だから、メルティング・ポットのメルティング・ポットになることは、僕にとって本当にクールなことなんだよ」
CALIGULA’S HORSE や WILDRUN のオペラ的な部分、HAKEN のトラディショナルでメロディアスな部分、TOOL や THANK YOU SCIENTIST の数学的な部分、BETWEEN THE BURIED AND ME の超絶テクニカルな部分、そのすべてを飲み込んだプログというメルティング・ポットの “メルティング・ポット”。そんな LUNAR の音楽を Ryan なしで再現するために Alex はまさにそうした敬愛するヒーローたちの力を借ります。
HAKEN, CALIGULA’S HORSE, LEPROUS, THANK YOU SCIENTIST, FALLUJAH…Ryan の思い出と共に人間の生と死を描いた “Eidolon” はそうして、メタルの包容力と回復力に魅せられた18人のゲストミュージシャンからなる一時間超の壮大なプログ・シアターとして多くの人の心を震わせたのです。
「OPETH の “Blackwater Park” を初めて聴いたとき、信じられない思いでラジカセを見つめたのをはっきりと覚えている。あのような美しさと残忍さをシームレスに融合させることが可能なのだと知り、それ以来、自分もそれを達成しようとすることに惹かれるようになった」
親友の死をも乗り越え、Alex がメタルを諦めなかったことで LUNAR は始祖 OPETH の血を受け継ぎながらも、よりシアトリカルでより多様なプログ・メタルの構築に成功します。もちろん、OPETH が生み出した美と残忍のコントラストはもはやプログ・メタル全体の基盤となっていますが、LUNAR はその場所にマス、オペラ、Djent といった新たな血脈、WILDRUN, CALIGULA’S HORSE, THANK YOU SCIENTIST の人脈を加え、そこにかの Peter Gabriel を想起させるプログレッシブ・ドラマを投影していきます。人生を四季に例えた “Tempora Mutantur” は、そうしてまさにプログすべての季節をも内包することとなったのです。
今回弊誌では、Alex Bosson にインタビューを行うことができました。「DREAM THEATER や GOJIRA のようなバンドがグラミー賞を受賞したことは、この音楽に対する世間の認識の変化をすでに示している。 今後もそうなることを願っているよ。
ただ、僕の考えでは、プログは常にミュージシャンのための音楽だ。 万人受けする音楽ではないよ。 ほとんどの人はシンプルな音楽を楽しんでいて、それはそれでいいんだけど、僕らがやっていることは一般的にもっと複雑なんだ」どうぞ!!
COVER STORY : DEATH “SYMBOLIC” 30TH ANNIVERSARY !!
“I Feel, As a Fan, Not Even As a Musician, But As a Metal Fan, That I -Do- Have a Responsibility To Keep Metal Going And Alive And Do Whatever I Can Do.”
SYMBOLIC
Chuck Schuldiner は、脳腫瘍との闘病の末、2001年に他界しました。しかし、デスメタルのゴッド・ファーザーとして知られる彼の音楽的才能と革新的なビジョンは、メタルヘッズの心に永遠に残るでしょう。
物静かで物腰が柔らかく、動物も人間もこよなく愛する Chuck は、その死から四半世紀を経た今でもデスメタルの革新者として称賛され続けています。実際彼が残したもの、特に DEATH の後半においては、通常このジャンルによくある攻撃的で暴力的なテーマとは対照的でした。チャーミングで茶目っ気たっぷりのフロントマンは、しばしば同業者の悪魔的なイメージを否定し、インタビューでは子猫の飾りがついたシャツを着るほどでした。彼は最終的に、象徴的な DEATH のロゴのデザインを変更し、オリジナルの逆十字架を排除して、宗教的(または神聖な)慣習から自身を切り離しまでしたのですから。
加えて今日、私たちはエクストリーム・メタルの話題にプログレッシブな音楽性やアティテュードを取り入れることを当然と感じていますが、20数年前のアンダーグラウンドはそうではありませんでした。CANNIVAL CORPSE のようなバンドが “Orgasm Through Torture” のようなトラックで名を馳せていた一方で、Chuck のような穏やかな人物が、リリックを通して無毒な男性性を模範的に示すことは、純粋に先進的だったのです。
同時代のアーティストと比べると、Chuck には必ずしも典型的なデスメタルのネタではない歌詞で社会問題に取り組む意識がありました。”Spiritual Healing” の “Altering The Future” では、中絶といういまだに議論されているトピックを取り上げました。
「もし僕が女性だったら、子供を産むか産まないかの選択をしたいと思うに違いない。アメリカでは、多くの新生児が望まれなかったために殺されている。女性が妊娠に気づき、子供を望まない場合は、すぐに中絶を選んだほうが救われるんだ」
“Scream Bloody Gore” のホラーへの偏執から、後の作品で見せた超越的なスタイルへの進化。しかし初期においてさえ、”Zombi Ritual” のような曲で彼は哲学的な傾向を示していました。苛烈な慟哭の中の自虐の悪夢、そして暗い誘惑。ゾンビの呪われたゴブレットから酒を飲むことに投影された淫らな憧れ。Chuck は最初から教えてくれていました。人間の意識は渦巻き、暗く、複雑で、それを響かせる音を求める者もいるのだと。
「僕たちは皆、死に魅了され、怖れを抱き、自分が死んだ後に一体何が起こるのか誰もわからない。できることなら永遠に生きていたいよね」
音楽的にも、哲学的にも、典型的なデスメタルから完全に脱皮を果たし、Chuck が望んだ “不老不死” をメタル世界で実現したアルバムこそ、今から30年前にリリースされた “Symbolic” でした。本作は間違いなくChuck と彼のアンサンブルの、いや数あるヘヴィ・メタル作品の中でも最高傑作だと言えるでしょう。そして、30年の月日を経てもいささかも色褪せることのないその魅力。
90年代初頭から中盤にかけては、グランジの台頭によりメタルの多様化が始まり、モダン・メタルの基礎を作り上げた競争の時期でした。特に1995年は、革命的なアルバムの当たり年で、CARCASS の “Heartwork” が50万枚、PAPADISE LOST の “Draconian Times” が30万枚、AT THE GATES の “Slaughter of the Soul” が20万枚を売り上げる中、ロードランナーに移籍を果たした DEATH の “Symbolic” は25万枚を売り上げ名実ともに新時代のメタルを牽引する存在となりました。
明らかに “Symbolic” は、初期の作品 “Leprosy” や “Scream Bloody Gore” の狂気と、プログレッシブな “Human” や “Individual Thought Patterns” の技巧に、研ぎ澄まされた旋律の美しさを組み合わせた新たなステップでした。”Spiritual Healing” から始まった進化の息吹は、”Symbolic” において絶対的な完成度に達したのです。
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RON “BUMBLEFOOT” THAL !!
“I Always Loved To Learn, Explore, Experiment…I Love Astronomy, Science, Physics… The Things I Love, The Way I Feel, The Way I Live, This Is What Comes Out In My Music.”
DISC REVIEW “…RETURNS!”
「あの作品はシュラプネル・レコードにとっては異質なものだったけど、僕にとってはごく普通のものだった。 フィルターを通さず、不完全で、若く、無邪気で、とても正直で、自分が何者であるかをありのままに表現したものだったんだ。レコーディングとミックスのためのツールは生々しく、洗練されていなくて、でもそれがアルバムの個性に拍車をかけている! もちろん、アートワークも!だから、何も変えたくないんだ。人生のある時期の一人の人間の写真集のようなものだよ。全ての瞬間は僕たちにとって一度しかないからね」
“The Adventures of Bumblefoot”。今からちょうど30年前、1995年のこのレコードと、”Bumblefoot” “趾瘤症” という猛禽類の足の病気を名乗るギタリストの登場はあまりにも衝撃的でした。楽曲名はすべて動物の病気の名前。足やチーズを模した異様なギター。そして、ギター世界の常識である24フレット以上のハイフレットを操り、時にはフレットレスまで駆使した超常的サウンド。指抜きなどのトリッキーな技も冴え渡り、複雑怪奇に入り組んでファストなフレーズが絡み合うその楽曲群は、ギター虎の穴シュラプネルにおいてもあまりに異質だったのです。
革命児のそんな評判は瞬く間に業界の目に止まり、ソロ・キャリアを重ねる中で GN’R、ASIA といった巨大なバンドの一員にも抜擢され、一方では Mike Portnoy のような大物と共に SONS OF APOLLO というスーパー・バンドを立ち上げるに至りました。
「完全なインストゥルメンタルなので、ギターが “声” になるスペースが増え、さまざまなムード、さまざまなサウンド、さまざまなエネルギー……など、より多くのことができるようになったんだ。僕は自分の直感に従っただけで、それぞれの曲は独自の方法で発展していった。ある曲はより過激で対照的で、ある曲はより予想された方法で発展していった…ゴールはその瞬間の正直なフィーリングを捉えることだったんだ..」
その歌声も高く評価される鬼才ですが、ただやはり彼の本質はギタリズムにあります。デビュー作から30年、”復活の Bumblefoot” を冠したアルバムで彼は再び始まりの地、”Bumblefoot の冒険” へと回帰しました。30年ぶりにオール・インストゥルメンタルで制作されたアルバムには、ギターに対する愛情、情熱があふれています。ただし、30年前とは異なる点も。それは、彼がギターをより自身の “声” として自由自在に操っているところでしょう。
オープナー “Simon in Space” を聴けば、90年代にはなかった瑞々しいメロディの息吹が感じられるはずです。とはいえもちろん、以前の混沌や荒唐無稽、ヘヴィな暗がりも失われるはずもなく、結果として両者のコントラストが耳を惹く前代未聞のギター作品が完成をみました。
「進化、革新、進歩するテクノロジーやコミュニケーション、そしてそれを使って自分たちの活動を共有する方法については、私は別にかまわないと思っているよ。15秒の動画からフルアルバムまで、今の世の中には誰もが楽しめるものがある!そうやって私たちは皆、自分が選んだ様々な方法で自分の才能をシェアするべきだし、そうできる世界になったことを嬉しく思うよ」
何よりも、Bumblefoot はギター世界において最も “オープンな” メンターのひとり。新しいもの、異質なものを取り入れることになんの躊躇もありません。当時のヒーローの多くがヴィンテージに回帰する中で嬉々として Helix を愛用。表現力豊かでメロディアスなリック、お馴染みのショパンやリストへの傾倒、ウイスキーを注ぎたくなるようなカントリー、微睡のスローなブルース、異国の香り、Djent も真っ青なチャグチャグ・リフと、場所も時間も飛び越えて、自らの直感とテクニックだけで広大なギター世界を築き上げていきます。
Brian May, Steve Vai, Guthrie Govan という、時代の異なる情熱のギターヒーローがここに集ったことも付け加えておきましょう。Vai 参加の “Monstruoso” など、”Fire Garden” 時代の彼を思い出して歓喜すること必至。そう、彼らのアイデアは今でも、アートワークのギター船のように宇宙高く飛び立ちます。ギター世界にはまだまだ情熱と探求の余地が残されているのです。
今回弊誌では、Ron “Bumblefoot” Thal にインタビューを行うことができました。「世界には素晴らしいミュージシャンがたくさんいるし、その中でも日本はとても注目に値するよ! 才能に溢れている!日本の音楽にはずっと注目してきたんだ。Akria (Takasaki) のアルバム “Tusk of Jaguar” までさかのぼると、リリースされた当時、子供のころは本当に聴き入っていたよ。14歳の時には、僕のバンドが LOUDNESS の曲をたくさんカバーしていたんだ。”Girl”, “Crazy Doctor”, “Esper”…もう少し経ってからは “Run For Your Life” もね!」 二度目の登場。どうぞ!!
全8曲、71分のこのアルバムは、ロングアイランドにあるDREAM THEATER のDTHQスタジオでレコーディングされ、バンドにとって通算16作目。ビルボードのトップ・ハード・ロック・アルバム、トップ・ロック・アルバム、インディペンデント・アルバム・チャートでトップ10入りを果たした2021年の “A View From the Top of the World”に続く作品となりました。複雑なアレンジ、超常的ダイナミクス、ウルトラ・テクニカルな演奏、長大な構成(6曲が7分を超え、エンディングを飾る大曲 “The Shadow Man Incident” は19分32秒にも及ぶ)により “Parasomnia” は過去の DREAM THEATER すべてを包み込みながら、リフのタイム感やサウンドの立体感は明らかに現代的に仕上がっています。
「モダンでありながらクラシックなサウンドにしたかったんだ」と Petrucci は語ります。 「1999年から2009年の間に作られたアルバムのいくつか、そしてその時期は、ファンにとても愛されている。だから、 Mike が再加入することで、そのノスタルジーが戻ってくることを期待しているんだ。確かにあの雰囲気はある。ああ、これは “Scenes from a Memory” や “Train of Thought” からの曲っぽいなと思っても、それを捨てたりはしなかった。クールだ、これで行こうって感じなんだ。僕らは僕らなんだ。
プロデューサーとしては、今までのどのアルバムよりもいいサウンドを作りたいと思っている。 だから、レコーディングの方法で限界に挑戦するんだ。 モダンなテクニックを使いながら、ヴィンテージの機材を使って、それらを完璧な形でマッシュアップするという組み合わせなんだ。まだ新しいレコーディング・テクニックを試しているところだ。1991年や1995年に使っていたような機材を使うことで、レトロなサウンドではなく、モダンだけどヴィンテージで暖かく、居心地の良いフィーリングを含んだレコードを作ることが目標だった。この組み合わせはとても意図的だったよ。8弦と7弦のギターを使ったリズム・サウンドで、よりモダンなアプローチを作る。ヘヴィでアグレッシブだ。今のメタル事情に合うようなサウンドだ。でもリード・サウンドを聴くと、オールドスクールな Santana の雰囲気がある。ドラムのミックスの仕方も含めて、アルバムではそういう並置をたくさんやった。アンディ・スニープと話し合ったんだけど、Mike のドラム・サウンドはとても独特なんだ。オーバー・プロセスやオーバー・プロデュースはしてほしくない。彼がドラムを叩いているようなサウンドにしたいんだ。それが、僕らが最初から目指していたことだった。そうして、ジミー・T、アンディ・スニープ、マーク・ギッツといった素晴らしい人材を起用することで、レコーディングを未来へと導き、モダンなサウンドに仕上げている。 新旧のバランスが完璧なんだ」
伝説的なアーティスト、ヒュー・サイム(2005年の “Octavarium” 以来、DREAM THEATER のほぼ全アルバムのアートワークを担当)がデザインした “Parasomnia” のメイン・イメージは、LPの包括的なテーマであるパラソムニアを見事に体現しています。 サイムはかつて、DREAM THEATER の音楽は「”ありえない現実と夢の状態” の世界を楽しむ僕のアートにぴったりだ!」と述べています (ただし最近、ORION というプログ・メタル・バンドのアートワークへの使い回しが問題視されている)
興味深いのは、サイムのアプローチが、バンドの金字塔1992年の “Images and Words” を意識したものに思えるところ。 どちらの写真もナイトガウンを着た少女がベットからほんの数フィート離れて立っています。もちろん、DREAM THEATER のエンブレムも両方に写っており、このつながりはあの記念碑的な作品への独創的な回帰と見ることも、とてもクールな偶然の一致と見ることもできるのです。さらにブックレットの中には、かつての作品のアートワークが壁にかけられていたりもします。
そう、過去の作品への回帰もこの作品の愛すべき側面のひとつ。彼らのコンセプチュアルな大作 “Metropolis Pt. 2: Scenes From A Memory” への言及が複数あるのもダイハードなファンへの贈り物。 例えば、 “Parasomnia” の3枚目のシングル “Midnight Messiah” で LaBrie はこう歌っています。”In my dreams, there’s a song I oncе knew / Like an uncanny strange déjà vu”、”For all eternity / It’s calling me back to my home” 。当然、私たちは “Strange Déjà Vu” と “Home” の両方を思い出すでしょう。
同様に、”Dead Asleep “の8分あたりには “Beyond This Life” を彷彿とさせるインストゥルメンタル・ブレイクもあり、最後の大曲のイントロで “Metropolis Pt.1” を思い出すファンは少なくないでしょう。 “Midnight Messiah” に戻ると、LaBrie はこうも歌っています。”In my life / I’ve lost all self-control / Like a sword piercing this dying soul”。そう、彼らはまさにこの作品で自らの伝説と抱擁を果たしたのです。
このアルバムが特別なのは、パラソムニアの不穏な性質がシークエンス全体に浸透していることでしょう。 全曲のタイトルや歌詞が睡眠、悪夢などに何らかの形で関連して、まるでつながったビジョンのように展開させる聴覚的な戦術がとられています。
具体的には、オープニングのインスト・オーヴァーチュア “In the Arms of Morpheus” は、不気味なギター・ライン、時を刻む時計、誰かがベッドに入る音で始まり、それに呼応するように、壮大なクローザー “The Shadow Man Incident” では、不吉な声が “目を覚ませ” と囁きながら、冒頭のサウンドを再現して終わります。”Dead Asleep” も “In the Arms of Morpheus “と同様の始まり方。そして、”Are We Dreaming? ” はその名の通り、心地よい声とキーボードのコードで構成された夢のような楽曲です。そして何より、白昼夢のように美しき “Bend the Clock”。もちろん、メインテーマとなるメロディがアルバムを通して何度も顔を出すのは彼らが慣れ親しんだやり方。
「このアルバムはテーマ性のあるコンセプト・アルバムなんだ。 僕たちはそういうことが大好きなんだ。 コンセプトを加えることで、アルバムが別の次元に引き上げられると思うんだ。より壮大で、よりクラシックで、より特別なものになる。とても楽しいよ。
このアルバムに取りかかったとき、Mike が “もう一歩踏み込んで、もっとコンセプチュアルな作品にしたらどうだろう” と言ってくれたんだ。だから、さまざまな曲で繰り返されるテーマを持つようになったし、耳触りのいい曲を追加して、すべての音楽をつなげ、序曲を持つようになった。だからこそ、DREAM THEATER のアルバム体験が期待できるんだ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKAEL SALO OF DRAGONKNIGHT !!
“I Think In Tough Times Power Metal Can Be Something You Hang On To, And When Times Are Good It Is Something To Celebrate Life With! I Think I Might’ve Heard That Quote Actually From André Matos In a Japanese Interview !”
DISC REVIEW “LEGIONS”
「学生時代、ちょっとはみ出し者だった僕にとって、BLIND GUARDIAN の “Nightfall in Middle-Earth” や ANGRA の “Temple of Shadows” のようなアルバムは、人間の領域を超えた壮大な物語を体験させてくれ、心に音楽的な冒険を与えてくれたからね。パワー・メタルは、辛いときには心のよりどころとなり、幸せなときには人生を祝福してくれるものだと思う!この言葉は、日本のインタビューで読んだ Andre Matos の言葉の受け売りなんだけどね!」
早いもので、Andre Matos が亡くなってもう6年の月日が経ちました。メタル・ファンの多くは、未だにこの喪失の大きな穴を完全には埋められていないでしょう。しかし、彼の遺志と音楽は今も生き続けて、リスナーの心に寄り添い、もしくは後続のインスピレーションとして燦然と輝いています。フィニッシュ・パワー・メタルの新鋭 DRAGONKNIGHT も Andre Matos に薫陶を受けたバンドのひとつ。
「このアルバムは重層的な作品と言える。アルバムのいくつかの曲は “時を越えた地” からの短い物語に過ぎないが、アルバムの全てにわたる広いコンセプトもある。ドラゴンロードとして知られる5人の兄弟が、打ちのめされた子供時代を経て、力を取り戻し、子供時代の故郷であるアトランティスを奪還する。アルバムの最後を締めくくるのに、神秘的なアトランティスの再征服以上の勝利があるだろうか?」
日本語を学び、日本の音楽を愛するフィンランドの Ronnie James Dio こと Mikael Salo が語るように、パワー・メタルのファンタジーはこの暗い世界において素晴らしき逃避場所だと言えます。私たちは大人になっても、DRAGONKNIGHT というバンド名に心奪われても、闇の皇帝を頂く仮面で匿名の5人の亡霊を名乗っても、ドラゴンが飛翔する異世界に憧れても良いのです。痛みを忘れて、想像力を羽ばたかせることはいくつになっても素敵なこと。厳しい現実、無慈悲な社会から少々はみだしても大丈夫。きっとヘヴィ・メタルがそんなあなたを丸ごと抱きしめてくれるから。
「特に日本のフォーク・ミュージックに多く見られるペンタトニック・ハーモニーを多用するのが好きなんだ!必要なときに、全体的な音楽体験に神秘的でダークな雰囲気を与えてくれると思う。また、シンガーとしても、Yama-B、坂本英三、森川之雄、小野正利など、日本の巨匠たちの激しさや情感にいつもインスパイアされているよ!」
そうして、Mika の歌うメロディは、ファンタジーのメッカ日本の音楽に触発されています。時代は変わり、今や日本のメタルは世界中から注目を浴びています。不滅のドラゴンロードたちが奏でる壮大なアンセミック・シンフォニー。ドラムの疾走感が、見事なシュレッドと複雑なギター・ワークに向かって、彼らの航海を前進させます。そう、その主役は、日本のメロディで育ったサー・ミカ・サロ卿。
実際このアルバムは、海賊からドラゴンに至るまで、素晴らしいファンタジー、冒険映画のサウンドトラックになり得るでしょう。剣に生き、剣に死ぬ。その彼らの華麗な剣技は、間違いなくいつも人生に寄り添ってくれた BLIND GUARDIAN や ANGRA、彼らから受け継いだパワー・メタルの血、祝福そのものなのです。
今回弊誌では Mikael Salo にインタビューを行うことができました。「メタル以外での僕の “ギルティプレジャー” は、最近80年代の日本の “シティポップ “だ。普段はYouTube Musicで様々なアルバムの曲を個別に聴いているんだ。杏里のこのアルバムはバンガーをたくさん収録しているので、間違いなく最近のお気に入りアルバムのひとつに挙げられる!”I Can’t Stop The Loneliness” と “Windy Summer” は、暗くて寒いフィンランドにいても、沖縄のビーチでくつろいでいるような気分にさせてくれるね(笑)」 二度目の登場!。どうぞ!!