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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【IMPERIAL TRIUMPHANT : SPIRIT OF ECSTASY】


COVER STORY : IMPERIAL TRIUMPHANT “SPIRIT OF ECSTASY”

“I Got Into Learning About Rolls­-Royce As a Company And Learning About These Ultra Luxury Product Companies Like Rolex And Such. The Rolls-Royce Has This Hood Ornament That Is Known As The Spirit Of Ecstasy.”

SPIRIT OF ECSTASY

2012年のデビュー以来、IMPERIAL TRIUMPHANT の Zachary Ilya Ezrin (vocals, guitars), Steve Blanco (bass, vocals, keys, theremin), Kenny Grohowski (drums) にはニューヨークの中心部に深く入り込むというミッションがあり、彼らの Bandcamp には “NY の最上階の豪華さから地下の腐ったような場所まで” と優雅に表記されています。
「ニューヨークの音の風景と、そのさまざまなダイナミクスを具現化しようとしているんだ。ニューヨークの風景には視覚的に大きな影響を受けているし、この街ならではのものだよね。この街はとても密度の高い場所だから、いろいろな意味でインスパイアされるものがたくさんあるんだ。音楽的な血統からインフラまで、あらゆる分野で歴史がある。
それに、ニューヨークには何か国家的なナショナリズムのようなものがある。移住してきた人たちも、ニューヨーカーであることを誇りにしているんだ。何が自慢なんだ?棺桶の中に住んでるんだぞ!?とか言われるけどね。ニューヨークという街に対して、みんなすごく興奮しているだよね。その中で、曲のコンセプトが生まれる。大都会のプライドと自己達成のヴェールは、探求するにはとても興味深いコンセプトだよ」

そして、メジャーからの最初の作品 “Alphaville” をリリースした後、最上階の豪華さについての考え方は、さらに深まりました。Trey Spruance (Mr. Bungle) がプロデュースし、Colin Marston が Menegroth Studios で録音した “Alphaville” は、壮大なスケールで、これまでで最大のサウンド・プロダクションとなっていたのです。メタル・コミュニティーの中でのこのレコードの評判は非常に大きく、アールデコの影響を受けた不可思議なトリオは、地元の人気者からメタルのアーカイブスにその地位を刻むまでになったのです。Century Media から2枚目のリリースとなる “Spirit of Ecstasy” でIMPERIAL TRIUMPHANT は、その場所から音楽におけるより細かい部分に焦点を当てるために、音を十分に減らすことを決めました。
「ライブでは、僕の彼女と弟の彼女にマントを着てもらって、観客にマスクを配っていた。当時、僕らの音楽でモッシュする人はいなかったから、ブルックリンの人たちがじっと見ているクラシックな雰囲気よりも、もっと良い雰囲気になる方法はないかと考えていたんだ。全員がマスクをしていれば、グループの儀式になるし、僕らもその一員になれると思ったんだよね。今はモッシュピットも増えてきたけど、それでもマスクをかぶって来る人はいて、ライヴのために華やかなコスチュームに身を包んでくれる人もいる。ライブが単なるパフォーマンスではなく、みんなで参加する儀式のようなものだと感じてもらえたらうれしいね」
弊誌2020年のインタビュー で彼らはあのマスクについてこう説明してくれました。
「あのマスクは20世紀前半のニューヨークで育まれたアールデコ運動と密接に関係しているんだ。そのムーブメントは数千年前にさかのぼり、過去と深遠で神秘的な多くのつながりを持っている。そしてそれは、かつて僕たちの一部であったものがここにあると悠久に想いを馳せる、時を超えた夢の形でもあるんだよ。つまり歴史的意義のある魅力的な美学なんだ」

栄光と黄金のマスクを手にする前に、IMPERIAL TRIUMPHANT は2005年にフロントマン Zachary Ilya Ezrin のハイスクール・プロジェクトとしてスタートしました。そして2012年、このプロジェクトは、テクニカルとメトロポリタンをベースにしたテーマを掲げ、後にその特徴的な不協和音のデスメタル・スタイルとなる何かを形成し始めたのです。トレモロピックとディミニッシュ・セブンスを支えるブラスト・ビートから、金メッキを施したアールデコ調の豪華なイメージまで、IMPERIAL TRIUMPHANT のすべては極端。 不協和音のハイゲイン、悪夢のようなサウンドスケープ、強烈なポリリズムからなるアールデコの仮初めは、今にも全世界が崩壊しそうな感覚を与えます。
2006年に “ごく普通のブラックメタルバンドとして” 結成された彼らは、さまざまな不協和やジャズの要素を取り入れて進化してきました。近年流行りの “ディソナンス系” の一歩も二歩も先を行く凄みは、3人のメンバーの音楽的背景と、より協力的なユニットになったことによる自然な結果。このサウンドの開発以来、 Ezrin は、プロジェクトの寿命と鮮度を保つものは、コラボレーションであると感じています。
「自分の中で一貫しているのは、オープンマインドを保つことだ。コラボレーションをすればするほど、より良い音楽が生まれるんだ」

そうしてニューヨークの美学をさらに追求した Ezrin は、ニューヨークの建築物とフリッツ・ラング1927年の名作映画 “メトロポリス” からインスピレーションを得ることになります。この新たな着想は、トリオのターニングポイントとなり、今や象徴的な存在となったあのコスチュームを作るきっかけとなりました。
「全てはアールデコから始まったんだ。59丁目、セントラルパーク・サウスを歩いていたら、アールデコの古い建物がたくさんあるんだよ。アールデコはニューヨークに限ったものではないけど、もともとニューヨーク的な感じがするし、ヘヴィ・メタルでは使われない。そういうものに飛び込んで、IMMORTAL やブラックメタルが冬にやったことをアールデコでやってみたらどうだろう?って考えたのさ。Steve Blanco がマスクを思いつき、そのコンセプトを発展させ、さらに追加していったんだ」
Ezrin のペダルボードには必要なものしかストックされておらず、Victory amps の V4 Kraken で身軽に移動可能。
「それは IMPERIAL TRIUMPHANT とニューヨークの音楽が一般的に持つ、身軽で包括的な性質の一部だと思う。でも、このアルバムは特に、深夜のダウンタウンのジャズ・バー、そんな場所のジャムに入り込んだような、みんながリラックスして座っているような感じにしたかったんだ」
ニューヨークは夢と現実が共生している場所。
「この街には極端な二面性があり、超高音と超低音がある。最も裕福な人々が住む場所であり、最も貧しい人々が住む場所でもある…そして、それらは互いにほんの数ブロックしか離れていないんだ。音楽的には、IMPERIAL TRIUMPHANT はニューヨークの音にインスパイアされていると言える。通りを歩いていて、サイレンが鳴り響いたり、地下鉄に乗ったり、列車が文字通りトンネルをすり抜ける音を聞いたことがあるだろう。そういうものからインスピレーションを受けて、 “ああ、これをギターで弾いてみよう” と思うんだ。なんでわざわざサンプリングするんだ?自分のギターで弾けばいいんだから」

アールデコを基調とした大都市の風景というテーマは、自然とより大きなスケールで、いわば摩天楼の高みに到達することを切望していきました。そこで、メジャーなメタル・レーベル、Century Media と手を組むことになったです。
「僕たちはかなり野心的なバンドで、その野心をサポートしてくれるレーベルが必要だったんだ。彼らは俺たちに大きなリスクを負ってくれた。ただ、僕たちがアリーナで売れまくって、金儲けしたいっていうのとは違うんだ。彼らはまず芸術的なことを考えてくれるから、結果的に彼らのリスクが報われたと言えるね」
そうして生み出された “Alphaville”はメタル世界で賞賛を浴びましたが、それは決して偶然ではありませんでした。IMPERIAL TRIUMPHANT は何年もかけて自分たちのスタイルを確立し続け、”Alphaville” はまさにその積み重ねの結果。「少しの運と多くの努力があれば、すべてのチャンスは次のチャンスにつながるんだ」
“Alphaville” が IMPERIAL TRIUMPHANT の能力のマクロに焦点を当てたことで、トリオは次の作品を書く時には何か違うことをしようと決めていました。
「”Spirit of Ecstasy” は、まずその名前にとてもインスパイアされている。ロールス・ロイスという会社について学ぶうちに、ロレックスのような超高級品会社について学ぶようになったんだ。ロールス・ロイスには、”スピリット・オブ・エクスタシー” と呼ばれるフードオーナメントがある (ボンネットに装着するエンブレム) 。ロールス・ロイスの製品には、そうしたユーザーの体験や製品のメカニズムに役立つような小さなディテールがたくさんあるんだよね。面白いコンセプトだと思ったから、そのメンタリティーを音楽に応用してみたらどうだろうと考えたのさ」

“Spirit of Ecstasy” は “Alphaville” よりもシンプルなサウンドですが、しかし、よりミクロで、彼らの細部へのこだわりは繰り返し聴くことでより一層、聴き応えを与えてくれます。
「構造的には、”Alphaville” よりもさらにシンプル。僕らは次のステップに進むために、自分たちのミクロなニッチをさらに開拓し、狭い穴にさらに入り込んで、そう、ソングライティングもさらに向上させようとしたんだ。混沌の中にある明晰さの瞬間を人々に与えようとしたんだ。僕たちは曲をすべて書き上げてから、それらをいじくりまわして、非常に細かい部分まで綿密に調べていった。すべてがあるべき姿であることを確認するために、1秒1秒レコードを見直したんだ」
こうしてニューヨーカーの努力は、異様に録音されたボーカル、サックスとギターのデュエル、風の吹くサンプルなど様々な要素を加えるという形で実を結び、すべてが特定の場所に配置され、独自の “フードオーナメント” を掲げて、”Spirit of Ecstasy” がラグジュアリーな “高級ブランド” の産物であることを示すことになりました。
「Max G (Kenny G の息子) は親しい友人で、以前は IMPERIAL TRIUMPHANT のメンバーだった。一緒にニューヨークで小さな会社を経営しているんだ。ある日の午後、ランチを食べているときに、彼にこう聞いたんだ。”僕たちの新譜にこんなパートがあるんだけど、ギターがサックスと戦うというか踊るようなデュアルソロの状況を想像している。君と君のお父さんはこのパートに興味がある?”ってね。彼はイエスと答え、父親に尋ね、父親も同意し、そして彼らは絶対的な傑作を作り上げて帰ってきてくれた。僕たちのやっていることを理解してくれる人たちと一緒に仕事をすると、より強い作品ができるんだ。彼らのような演奏は、僕には決してできないからね。ゲストを招くのは結局、音楽のためであり、他の人の才能に信頼を置くことでもある。Kenny G はモンスター・プレイヤーで、Max G はモンスター・シュレッダーだということを知らない人がいるかもしれないけどね。
僕たちのドラマーの Kenny は Alex Skolnick とフリー・インプロヴァイズのカルテットで演奏している。だから、彼にはかなり簡単に依頼できたよ。VOIVOD の Snake は、彼らも Century Media に所属しているから、”Alphaville” のためにやった VOIVOD の “Experiment” のカヴァーを彼らが気に入っていることが分かったんだ。だから、Century Media は、もし僕らがゲストを望むなら、コネクションを作ることができると言ってくれたんだ。IMPERIAL TRIUMPHANT が決してやらないことは、名前だけのゲストをアルバムに迎えること。どんなに有名な人が来ても、その人がもたらすものは、何よりもまず音楽のためになるものでなければならない。それ以降のことは、すべて飾りに過ぎない」

一方で、Ezrin のギターに対するアプローチは、それ自体が興味深いもの。クラシックからジャズ、スラッシュからブルースまで、様々なスタイルを研究してきた Ezrin は、伝統的な手法と非伝統的な手法を融合させ、既成概念にとらわれないものを作り上げています。
「例えば、チャールズ・ミンガスのような演奏スタイルからインスピレーションを得て、そこから盗むことが多いんだ。彼は指板の上で弦を曲げたり外したりして、エフェクトをかけるんだ。完璧に音を出すことにこだわらなくなれば、いくらでもクールなことができる。アンプを通さない状態でヘヴィーでファッキンなサウンドなら、ゲインたっぷりのアンプで弾くと超ヘヴィーに聞こえるはずだよね。
プレイヤーとして、ある種のパラメーターを持つことはとても楽しいことなんだ。例えば、僕のギターはEスタンダードなんだけど、それよりずっと低い音で演奏するんだ。ワミーバーを使って、ローEのずっと下の音でメロディーを作るんだ。そうすることで、より深く考え、よりクリエイティブになることができる」
IMPERIAL TRIUMPHANT は、リスナーが “Spirit of Ecstasy” を掲げたロールス・ロイスでディストピアの荒野を走り抜けるようなイメージを追求しました。スラッシュ・ヒーローの VOIVOD TESTAMENT のメンバー、そして伝説のサックス奏者 Kenny G を加えたトリオは、不協和音のデスメタルに新たなラグジュアリーと高級感を付与し、55分の長さの中でリスナーにさらなる探究心を抱かせるきっかけとなりました。
「このアルバムは、聴けば聴くほど好きになるようなレコードの一つだと思うんだ。それは非常に挑戦的なことだけど、非常にやりがいのあることだ」

参考文献: BROOKLYN VEGAN : IMPERIAL TRIUMPHANT TALK ART-DECO INSPIERD DEATH METAL

Imperial Triumphant’s Zachary Ezrin on his wild approach to guitar: “There’s tons of cool stuff you can do when you stop caring about hitting the note perfectly”

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【POWER PALADIN : WITH THE MAGIC OF WINDFYRE STEEL 】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KRILLI & INGI OF POWER PALADIN !!

“Iceland Is Our Home, To Us , Our Landscape Is Mundane. Weirdly, We find Landscapes And Environments That Others Would Consider Mundane – Big Cities, Flat Plains, And So On – Quite Exotic And Inspiring!”

DISC REVIEW “WITH THE MAGIC OF WINDFYRE STEEL”

「パワー・メタルはすべてがファンタジーの世界だから、アイスランドの火山や氷がインスピレーションと思われがちだけど、実はそうじゃないんだよね。アイスランドは僕らの故郷で、僕らにとっては平凡な場所なんだよね。だから不思議なことに、他の人が平凡だと思うような風景や環境 – 大都市や平坦な平野など – が、とてもエキゾチックで刺激的だと感じているんだよ」
光と陰の広々としたポストロック、感情的でアトモスフェリックなブラックメタル、伝統にひねりを加えたフォーク・ロックといった音景色はすべて、スカンジナビア最西端に位置する火山と氷の荒涼としたアイスランド、その地形と違和感なくつながります。では、魔法にドラゴン、賢者でありながら剣を振るうパラディンが登場するパワー・メタルはどうでしょう?
極限の自然環境もファンタジーには不可欠、そう思われがちですが、この国で唯一のパワー・メタラー POWER PALADIN はむしろ、自国にはない大都市や平坦な平野からインスピレーションを受けています。彼らにとっては平凡こそが非日常だから。結局、創造の源は人それぞれ。出自はすべてではありません。そうして私たちにとっては当たり前の光景から啓示を受けた新鋭の描き出す音楽は、完膚なきまでに非日常のファンタジーとなりました。
「ライブを始める前にファンタジックな格好をするようなバンドになったらどうかという話もあったんだけど、最終的にそれはやめて、もっとリラックスしたメタルのアプローチでステージ衣装を選ぶことにしたよ。ステージに小道具を持ち込むことはあるけど、おそらく僕たちがあの “ドレスアップ・ゲーム” に参加するようなことはないだろうな」
パラディンとは、勇気と決意を魔法に託し、不屈の魂で業物まで振るう文武両道の勇士。メガギルド Nuclear Blast の OB が立ち上げた新ギルド Atomic Fire の先頭に立ち剣を高々と振り上げたのは、他ならぬレイキャビクの POWER PALADIN でした。弦張斧と鍵盤弓で武装した6人の高貴な戦士たちは、メタル背教者をなぎ倒しつつ、まもなく何十万ものメタル・ソルジャーをその背後に従えていくはずです。なぜなら彼らは見た目や出自よりもっと重要なものを心得ているから。真の文武両道はその精神こそ清らかです。
「僕は MEGADETH や METALLICA みたいなスラッシュ・メタルや PINK FLOYD のようなプログ・ロックで育ったから、今までもこれからも僕の曲作りにはそういった音楽が大きな影響を与えるだろうね。僕と Atli と Bjarni Egill はグラム・ロックのカバー・バンドで一緒に演奏していたから、その時代からの影響もあるだろうね」
メタルのバトル・フィールドはやはり音楽です。当然、POWER PALADIN の根幹をなすのは勇壮無比なパワー・メタル。DRAGONFORCE を想起させるシュレッドの宇宙で絶世のボーカリスト Atli Guðlaugsson が内なる Kiske と交信する “Righteous Fury” や、炎以前の RHAPSODY の如くタンデム・ギターが駆け巡る “Ride The Distant Storm”、ミッドペースの重圧 (ハンマー・フォール) に拳を突き上げざるを得ない “Evermore” など、”With The Magic Of Windfyre Steel” にはパワー・メタルに求められる要素すべてが詰まっています。GAMMA RAY や BLIND GUARDIAN が醸し出した、90年代初頭のエッセンスが各所に散りばめられているのも嬉しい限り。
ただし、POWER PALADIN は、パワー・メタルの先人たちが育んだ優れた音片を無機質なモニュメントへと単純に貼り付けたコピー・キャットではありません。DOKKEN と見紛うばかりの絢爛なコーラスと美麗なメロディーが疾走する “Kraven The Hunte” こそ彼らが特別な勇者である証。”Dark Crystal” のメロパワとは一味違った北欧的クリスタルなセンス、”Into The Forbidden Forest” のプログレッシブな展開、”There Can Be Only One” のオリエンタルなハイトーン・マジック、そのすべてが彼らの強烈な個性として爆発的な扇情力と共にリスナーを多彩な異世界へと連れ去るのです。最後の飾りつけは RPG の音細工。
今回弊誌では、ベーシスト Krilli とギタリスト Ingi にインタビューを行うことができました。「日本のものも含めて RPG にはかなり影響されているね。実際、”Righteous Fury” のソロの直前には “ゼルダの伝説” へのオマージュが込められている」どうぞ!!

POWER PALADIN “WITH THE MAGIC OF WINDFYRE STEEL” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PARADOX : HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHARLY STEINHAUER OF PARADOX !!

“Unfortunately, There Is Far Too Much Suffering In Our Beautiful World. Everyone Thinks That Humans Are Intelligent, But With All This Self Destruction Crimes Against Humanity, I Have My Doubts About It.”

DISC REVIEW “HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND”

「PARADOX の音楽には数え切れないほど多くのメロディラインが含まれているけど、それは大衆に受けるものでは必ずしもない。だけど、何千回もコピーされて成功したクリシェのようなメロディーを、それがより成功した音楽だからといって俺は奏でたり聞くことはもうできないんだよ。だからこそ、PARADOX で自分のスタイルを発明できたことに満足しているんだ」
時は20世紀後半のドイツ。80年代中盤から後半にかけて、例えば HELLOWEEN、例えば RAGE、例えば BLIND GUARDIAN は、スピード・メタルを独自のファンタジーとシンガロングの旋律美で染め上げ、ジャーマン・メタルの美学を確立していきました。一方で、KREATOR, DESTRUCTION, TANKARD といったよりアンダー・グラウンドなバンドは、米国から流れ着いたスラッシュ・メタルの鼓動をより深く、より速く、より激烈に追求することとなりました。
1981年に OVERKILL の名で結成された PARADOX は、まさにその両者の中間、ベイエリアのスラッシュ・メタルとヨーロッパのパワー・メタルをつなぐ架け橋のような存在だと言えるでしょう。中でも、洗練されたメタリックなリフワークとドラマティックなメロディーの背理な婚姻が TESTAMENT, HEATHEN, METAL CHURCH や TOXIK への欧州からの回答にも思えた90年の “Heresy” は、メタル史に今日にまで語り継がれる傑作の一つ。
「これまで俺は “Heresy” の第二幕を作るつもりはまったくなかったんだ。なぜなら、物語やアルバムの第二部は、第一部より良いものにはならないと信じているからね。これは映画でも同じことが言えるんだけど」
以来、PARADOX とバンドの心臓 Charly Steinhauer には様々な人生の荒波が襲いかかります。
ラインナップの流動化、二度のバンドの活動停止、愛する妻の他界、自身の体調不良。それでも Charly は、”Electrify” で2008年にバンドを再建してからは体の許す限りその才能を唯一無二なるスラッシュ・パワーメタルへと捧げてきたのです。そして “Heresy” から30年。PARADOX は傑作の続編という難題を完璧にこなしながら、自身の存在意義を高らかに宣言します。
「人間は何も学んでいない。それが真実さ。世界のさまざまな場所で、いまだに戦争や抑圧、飢餓が続いている。本当はすべてが平和で美しい地球になるはずなのに、残念ながら戦争や抑圧は常に存在しているんだ。そして何より、信念が違うという理由だけで迫害され、殺された犠牲者は数知れない。誰にでも、自分の人生を最大限に楽しむための力、それをを信じる権利があるというのにだよ」
“異端”、”邪教” という意味を認めた “Heresy” シリーズは、中世ヨーロッパで腐敗した教会、聖職者の堕落、汚職に対して本来の信仰や禁欲を取り戻そうとしたカタリ派という民衆運動と、それを異端とし鎮めるために遣わされたアルビジョア十字軍、そして異端審問のストーリーを描いています。もちろんこれは歴史の話ですが、オリジナルの作詞家 Peter Vogt が持ち寄った新たな異端のストーリーが、現代社会の暗い部分とリンクし、ゆえにこのタイミングで PARADOX が “Heresy” を蘇らせたのは間違いありませんね。
「何年も同じメンバーでバンドをやってみたかったよ。Axel Blaha と俺は1981年にこのバンドを設立した。でも、ラインナップが変わっても、俺がシンガーでありメインソングライターであることは変わらなかったんだ。だからこそ、PARADOX は今日でも PARADOX のサウンドを保っていられるんだ」
Peter はもちろん、オリジナル・メンバーで共に “Heresy” を制作したドラマー Axel Blaha の帰還。さらに Gus Drax に代わり再加入を果たしたギター・マエストロ Christian Muenzner。そして長年の戦友 Olly Keller。Charly のソロ・プロジェクトにも思えたメンバー・チェンジの巣窟 PARADOX ですが、考え得る最高の、そして安心感のある馴染みのメンバーを揃えた今回のアルバムで彼らは真のバンドへと到達したのかもしれませんね。実際、あらゆる場面で熟練し、すべてが自然で有機的なこの作品は、スラッシュ・メタルとパワー・メタル、そしてプログの知性があまりにもシームレスに混じり合っています。
「俺たちは、自分たちのルーツをおろそかにすることなく、あらゆるスタイルを統合し、あらゆるテイストのメタルを提供することに成功したんだ。そうして、俺たちの古い時代のサウンドを完璧に今のサウンドに伝えることができたんだよ」
70分のエピック・スラッシュは、”Escape From The Burning” で幕を開けます。高速でテクニカルなリフ、轟音のドラムとベース、そして壮大でキャッチーな歌声。実際、Charly の歌唱と旋律は BLIND GUARDIAN 初期の Hansi Kürsch を彷彿とさせ、Christian の鮮烈にして美麗を極めたシュレッドの現代建築と絶妙なコントラストを描き出します。言いかえれば、いかに彼らがスラッシュ・スタイルの容赦ない攻撃性と、劇場的なメロディやエピカルな感覚とのバランスを巧みに操作しているかの証明でもあるでしょう。
事実、”Burying A Treasure” のように、燃え盛るリフとマシンガン・ドラミングを全面に押し出してもアンセム的な輝きは増すばかりで、”A Meeting Of Minds” のように、ゆっくりとしたニュアンスのある曲に振り子が変わったとしても、ヘヴィネスの要素はしっかりと維持されているのですから。心に残るメロディーとスラッシュの暴動がせめぎ合うクローザー “The Great Denial” はそんな PARADOX の美しきパラドックスを完璧に投影した楽曲だと言えるでしょう。
つまり、”Heresy Ⅱ: End of a Legend” は、スラッシュ・メタル栄光の時代と、それと並行して進行し、最終的には1990年代に同様の重要なムーブメントに発展することになるヨーロッパのパワー&スピード・メタル・ムーブメントの間のミッシング・リンクのような輝きに違いありません。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Charly Steinhauer にインタビューを行うことができました。「残念ながら、この美しい世界にはあまりにも多くの苦しみが存在する。誰もが人間は知的だと思っているけど、こういった同じ人類に対する自滅的な犯罪を見ると、俺はそんな考え方に疑問を感じるよ」 どうぞ!!

PARADOX “HERESY Ⅱ: END OF A LEGEND” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RAGE : RESURRECTION DAY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PEAVY WAGNER OF RAGE !!

“I Was Very Productive With Rage Over The Last Nearly 40 Years. Its 28 Albums Incl Refuge & LMO. Why? Because I Can!”

DISC REVIEW “RESURRECTION DAY”

「そう、俺はこのほぼ40年の間、RAGE で非常に生産的だった。REFUGE と LMO を含めれば、残したアルバムは28枚。なぜそんなに作れるのかって?それはな、俺様ならやれるからだよ!はっはっはっ!(笑) 」
Peavy Wagner は “骨のある” 男です。ジャーマン・メタルの世界では、1980年代の全盛期から多くの才能が生まれては消えていきましたが、RAGE は独特のイヤー・キャンディーと捻くれたセンスの二律背反を共存させながら、粉骨砕身ただ実直にメタルを紡ぎつづけてきた気骨者に違いありません。
刻々と変化を遂げるトレンドの急流、ミュージック・インダストリーの大波にも屈しないストイックなメタルの骨巨人。Peavy が語るように、”Trapped”, “Missing Link”, “Black in Mind”, そして “XIII” と、1990年代メタルの荒野においてさえ彼らの作品はむしろその輝きを増し、さながら骨上げの喉仏のように貴重な存在となったのです。
「いやいや、ありえねーよ!Manni は忙しくて時間もねーし、プロフェッショナルなバンドでやる気ももうないだろうしな。Victor はいろいろあって俺が6年前にクビにしたんだぜ?ありえねーよ!」
Peavy は RAGE は決してメンバー・チェンジの多いバンドではないと強調しますが、それが決して少ないわけでもありません。ほぼ40年に渡る長い歴史の中には、何度もドラスティックな変化の刻が訪れました。そうやって、新陳代謝を繰り返しながら、RAGE は生き続ける意味を見出してきたと言えるのかもしれません。
逆にいえば、あくまで Peavy という屋台骨の支えられる範囲でですが、RAGE は加わるメンバーによってその音楽性をさながら脱皮のように変遷させていったのかもしれませんね。そして、ギター・プレイヤーはその脱皮を終えた肉体の色を司る、重要なファクターとなったのです。
Manni Schmidt は今でも “Ragers” に最も人気の高いギタリストかもしれませんね。フレーズやリフの源流が推測できないような突拍子もないギターの百鬼夜行、奇妙なグルーヴのうねりは、”Missing Link” の異常な耳障りの良さと結合し、ある意味初期 RAGE の終着駅となりました。
一方で、Victor Smolski の超絶技巧も近年の RAGE にとって絶対的な看板でした。特に凄腕 Mike Terrana を伴って完成を遂げた “Soundchaser” のプログレッシブで、クラシカルで、シンフォニックで、キャッチーで、途方もないスケール感を創出したテクニカルなメタルの叙事詩は、ラヴクラフトに負けず劣らずの濃密な奇々怪界をその身に宿していたのです。
では、それ以外の時期は RAGE にとって “狭間” の報われない時だったのでしょうか?ずっと RAGE を追い続けたファンならその問いに突きつけるのは間違いなく否。何より RAGE の歴史に燦然と輝く “Black in Mind” にその両者は絡んでいないのですから。
「実を言うと俺たちは、数年前から RAGE の歴史の中でこの4ピースの段階を目指していたんだよな。だから、ツインギターというソリューションに戻るのは自然なことだったんだよ」
人生を変えたアルバムに POLICE や RUSH を挙げていることからも、Peavy がスリー・ピースにこだわりを持ち、この形態でしか生み出せない何かを常に念頭に置いていたのはたしかでしょう。ただし、一つの場所にとどまらないのもまた RAGE のサウンド・チェイス。
現代的で多様な世界観を切り開くため、メタルをアップデートし選択肢を広げるためにツインギターを導入した 大作 “Black in Mind”。(ちなみにその次の “End of All Days” は逆に肩の力を抜いて聴けるこちらも名作) AXXIS から Stefan Weber を、ANGELINC から Jean Bormann を、”家が近い” という理由でリクルートした “Resurrection Day” には、たしかにあの傑作と同じ血、同じ哲学が流れています。
明らかに Peavy は Smolski を解雇して “The Devil Strikes Again” に取り組んで以来、ある意味定型的なネオクラシカル・ギター、シアトリカル過ぎる表現、そして10年以上使ってきたアトモスフェリックでオーケストレーションなタッチそのすべてを剥ぎ取り、より “簡潔” で “あるべき姿” の RAGE を取り戻そうとしているようにも思えます。さて、その試みは吉と出たのでしょうか?それとも…
「新石器時代になると、人間は自然と共に生きる遊牧民から、定住して農業を営み、自然に干渉して自然を操作するようになった。このことが、気候変動、戦争、人口過剰など、世界が抱える大きな問題につながっているんだよ。俺たちは今、この危機を良い形で乗り越えるか、悪い形で乗り越えるかを決めなければならない時期に来ているんだ。つまり瀬戸際なんだよ。そしてその決断の日こそ、俺たちの “復活の日” なんだ…」
常に人類の歴史、古の秘法、異世界などをテーマとしてその場所から現代に鋭くメスを入れてきた Peavy。人と自然の付き合い方、そして脱皮を続けるバンドの哲学、その両者をリザレクトさせるダブル・ミーニングのタイトルはまさに彼の真骨頂。実際、”Resurrection Day” で RAGE は “Black in Mind” と同様に、彼らのメタルをアップデートしここに来てさらなる新境地を開いています。
その象徴こそ、”Traveling Through Time” でしょう。近年の IRON MAIDEN に通じるようなメタルの時間旅行には、ツインギターでしかなし得ない古のハーモニーが響き渡ります。その趣向を凝らした勇壮は GRAVE DIGGER にも似て、しかしオーケストラの荘厳や Peavy のダミ・キャッチーな歌声で完全に RAGE の独壇場としてリスナーに歓喜を届けるのです。
一方で、Peavy がグロウルをお見舞いする “Arrogance and Ignorance” を筆頭に、メロディック・デスメタル的な作曲術も今作では際立ちます。さながら ARCH ENEMY のように疾走し蹂躙し慟哭を誘う劇的なリフワークとハーモニーの数々は、これもまたツインギターでしかなし得ないバンドの新境地に違いありません。
もちろん、かつてのスピード・スラッシャーを彷彿とさせる “Extinction Overkill”、アコースティックを巧みに施した “Man In Chains”、80年代を現代風に塗り替えた “Mind Control” などこれまでのファンを満足させる要素も満載されていて、何より “Resurrection Day” の旋律はそのすべてが RAGE でありながら一段魅力的な珠玉となっているのです。その証明こそ、タイトル・トラックから、”Virginity”, “A New Land” と畳み掛ける、血湧き肉躍るフック満載のメタル・ドラマの三連撃。よりキャッチーに、よりドラマティックに、よりエピカルに。RAGE が遂げた完全復活。
今回弊誌では、Peavy Wagner にインタビューを行うことができました。「骨のコレクションは膨大な量になっているぜ。今では本物の骨の博物館を所有しているくらいでね!」 どうぞ!!

RAGE “RESURRECTION DAY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ELECTROQUTE : TANPASIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ELECTROQUTE !!

“A Lot Of Things Are Banned In Our Country But When You Are Here You Will See That Isn’t Banned Much. We Do Our Own Activities. But The Hardest Part Is Not Having Permission To Perform a Concert.”

DISC REVIEW “TANPASIN”

「たしかに、私たちの国では多くのことが禁止されている。だけど、ここに来てみると、実際はそれらがあまり禁止されていないことがわかるだろうね。私たちは自分たちの活動を続けることができている。ただ、一番大変なのは、コンサートの許可が下りないことだろうな」
以前、弊誌でインタビューを行ったイランのメタル・バンド CONFESS。彼らは不敬罪に問われ、懲役12年、鞭打ち74回の刑の宣告を受け、現在はノルウェーに亡命しています。これだけを取り上げれば、イランの政権は少なくともヘヴィー・メタルにとっては、血も涙もない無慈悲な体制に思えます。
ただし、CONFESS のフロントマン Nikan Khosravi の罪状は”最高指導者と大統領を侮辱した”、”反体制的な歌詞と侮辱的な内容を含む音楽を制作し世論を混乱させた” であり、彼自身も 「僕は逮捕されたことを誇りに思っていたんだよ! なぜならそれは、僕の音楽と歌詞が非常に強力で真実味があることを意味していたからね。政権全体を脅かすことができたんだから」 と語っています。
つまり、政権に牙を剥いたことこそが真の逮捕理由であり、すべてのメタル・バンドが厳しい弾圧を受けているわけではない、そんな事情がイランの偉大なプログメタル・アクト ELECTROQUTE の言葉からは読み取れるのです。
かつてメタルが誕生した頃のイランは、ちょうど1979年に歴史的な革命が起こり、イスラム原理主義の神権的な支配が大きくなっていました。政治的な変化の中で、音楽に対する検閲により政府の承認を得られないことも日常茶飯事。それは、ロック、パンク、メタルといったジャンルは、イラン政府にとっては世俗的な国家の音楽であり、イスラムの敵であるとみなされていたからです。
しかし、イランのメタル・シーンはこの15年間で急速に成長を遂げています。驚くべきことに、現在イランのメタル・バンドは予想以上に多くその数は数百。それは、音楽に対する規制緩和を提唱した近年の政治改革運動によるところが大きいのかもしれませんね。それでも、バンドがアルバムを制作しコンサートを行うには、いまだに政府の承認を得る必要がありますが。
「たしかに、数年に一度、メタル・バンドを逮捕しなければならないというニュースは流れるんだけど、特に何も起こらないよ。私たちの国は常に経済的・政治的危機にあって、このような瑣末なことに対処する時間はあまりないんだと思うよ」
ELECTROQUTE が CONFESS を知らないという言葉が真実かどうかはわかりません。政権を刺激したくないという意識が働いているようにも思えます。ただし、名目では禁止されているメタルも、実はイランというある意味閉ざされた国のなかでさえ逞しく根付いているのは間違いありません。
「私たちにとって重要で目標となっているのは、言葉を伝えることなんだ。私たちの詩歌は、様々なテーマを扱っている。メンタルに関すること、日常の問題、内なる感情、さらには神話の物語までね」
彼らの最新作 “Tanpasin” のアルバム・ジャケットに描かれている、人間と木の切り株が一体化した “Connected” という表現は、人間は自然と切り離せないという GOJIRA が発するメッセージともシンクロしています。それだけではなく、ELECTROQUTE の奏でる音楽にも GOJIRA に通じる完成度の高い “プログレッシブ・グルーヴ” メタルの多様で素晴らしき息吹が感じられるでしょう。
ある時は METALLICA, ある時は PANTERA、ある時は DEATH, ある時は DREAM THEATER、そしてまたある時は SYSTEM OF A DOWN。ただし、ペルシア語で歌われる雄々しくも切ない旋律の調べは、そんな激動のカオスの中、片時も離さずリスナーを中東の凛々しく荒涼とした世界へと誘っていくのです。辺境メタルと侮ってはいけません。高度なプロダクションに印象的なリフワーク、そして自らの独自性を理解した構築術。人の好奇心は何物にも妨げられることはありません。世界への扉を開いてくれたメタルで世界を狙う。メタルで “感電” させるために。約束の時はもうすぐです。
今回、弊誌では ELECTROQUTE にインタビューを行うことができました。「ギタリストの Amir が言うには、彼の父は日本で何年か働いた経験があって、それで彼は子供の頃から日本の文化に大きな興味を持ってきたんだ。だからもちろん、彼は X Japan や Dir en Grey といったバンドを好んでいるんだよ」 どうぞ!!

ELECTROQUTE “TANPASIN” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MORDRED : THE DARK PARADE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANNY WHITE OF MORDRED !!

“I Leave It To The Public To Decide If We Influenced This Or That Nu-metal Bands.”

DISC REVIEW “THE DARK PARADE”

「MORDRED が Nu-metal に影響を与えたかどうかは、リスナーの人たちが決めることだからね。でももし、僕たちがまだ一緒にいて、3枚目のアルバムの嵐を乗り切っていたとしたら、僕たちには階段を上るチャンスがあったと思うけどね」
真の先駆者が大衆やジャーナリズムによって忘却の彼方に捨て去られる現象は、時代の変わり目においてしばしば起こりうる悲劇です。1990年代後半、Nu-metal がメタルに DJ を持ち込む斬新さをメディアが賛美する影で、ベイエリア・スラッシュにファンクやヒップホップを大胆に取り込み、レコード・スクラッチを初めてメタルに導入した MORDRED はすでに忘れ去られた存在でした。
「僕たちは他とは違っていたので、スラッシュ・コミュニティに必ずしも受け入れられたわけじゃないけど、それは僕にとっては問題じゃない。良い音楽が好きで心の広い人たちは、僕たちがやることを理解してくれる」
90年代初頭の多くの先駆者たちと同様に、MORDRED は、移り変わるラインナップと気まぐれな市場に悩まされ、3枚のフルアルバムとEPで2000年代の終わりに来るべき “恐怖の大王” を予言した後姿を消しました。
もはやスクラッチが楽器の一つと化した “In This Life” のひりつくような知性とテンション、インタビューで Danny も認めるようにシアトルと SOUNDGARDEN, もしくは FAITH NO MORE にインスパイアされたオルタナティブな “The Next Room”、双方ともが MORDRED が秘めていたポテンシャルの大きさを物語る名作です。一方で、その実験的な傾向と斬新さによって、最も受け入れられるべきスラッシュシーンへの浸透が妨げられた事実は実に皮肉な話ですが。
「実際にはかなり自然なことだったんだよ。僕たちは MCM and The Monster の Aaron Vaughn (DJ Pause) と知り合いだったんだけど、彼らは当時のサンフランシスコのヘヴィー・ファンクシーンの一部だったんだよね。僕たちのドラマー Jeff のバンド Fungo Mungo をはじめとして、Limbomaniacs, The Mofessionsal など、見に行くべき素晴らしいバンドがたくさんあった。同時に、TESTAMENT, EXODUS, DEATH ANGEL といったベイエリアのスラッシュ・シーンも当時爆発的にヒットしていたからね」
ゆえに、爪で肌を掻き毟るようなリフワークを主体とし、ファンクやヒップホップの影響を限定的に採用したデビュー作 “Fool’s Game” こそ、当時のメタル・ヘッズには最も親しみやすい作品であったとも言えます。その代表作に参加したオリジナルのラインナップが再結成されたことで(厳密には “DJ Pause” は当時ゲスト参加)、四半世紀ぶりの新作 “The Dark Parade” がよりメタリックな輪郭を持つのはある種の必然なのかもしれませんね。
冒頭の二曲、TESTAMENT のリフモンスターをラップのアプローチで装飾した “Demonic #7″、ANTHRAX のグルーヴをスクラッチで彩る “Malignancy” で、リスナーはベイエリアと NYC の対比を味わいつつ古き良きスラッシュメタルの攻撃力を洗礼のようにその身へと浴びていきます。
「”The Dark Parade” はトレシージョのリズムパターン (ラテンアメリカの音楽でよく使用される) で始まり、ブラジルのカーニバルの雰囲気を持っているね。それをさらに強調するためにホーンを加えたんだよ」
とはいえ、あの MORDRED がノスタルジアだけで再び集うはずもありません。タイトルトラックではラテンのリズムを抱きしめながらアメリカの分断をリオのカーニバルへと投影し、”I Am Charlie” ではサンプリングを楽曲の一部へと昇華しシアトリカル・インダストリアルなイメージを増幅。何より、”In This Life” の実験を Mike Patton で煮詰めたような “Dragging For Bodies” を聴けば、MORDRED の物語が再び始まったことを確信できるはずです。
そうして彼らは、アヴァン・メタルの原始時代を的確に描きながら、想像以上の説得力と意志とをその身に宿しメタル世界へと帰還を果たします。モードレッドがアーサー王に振りかざした刃を、今度こそ振り下ろすために。
今回弊誌では、ギタリスト Danny White にインタビューを行うことができました。「かつて僕たちが持っていたバンドメンバーの兄弟愛、絆のようなものにとても憧れていたんだよ。それで、僕が好きなバンドの中でも、まだそういった繋がりを持っているように見えるシアトルのバンドに惹かれていったんだ。SOUNDGARDEN をよく聴いていたから、あの時の曲作りにも影響があったと思う」 どうぞ!!

MORDRED “THE DARK PARADE” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【FEAR FACTORY : AGGRESSION CONTINUUM】


COVER STORY : FEAR FACTORY “AGGRESSION CONTINUUM”

“Syncopated Guitars And Drums… A Lot Of People Were Saying, ‘Well, Meshuggah Made That Popular, Yeah, Meshuggah Didn’t Make It Popular Till Much Later. Fear Factory At That Time Was a Much Bigger Band. We Were The Only Band, Really, At The Time That Was Really Popularizing That Style With The Syncopated Guitars And Drums.”

FEAR FACTORY DEMANUFACTURES   AGGRESSION CONTINUUM

FEAR FACTORY の偉業。未来はいつも今、作られ続けています。1995年にリリースされたセカンド・アルバム “Demanufacture” のリリースから25年以上が経過し、読者の中にはもしかすると発売当時生まれていなかった人もいるかもしれません。しかし、そんなリスナーでもこのアルバムを耳にして、時代遅れだとか古臭いといった感想を待つ事はきっとあり得ません。”Demanufacture” は時代を遥か先取りした革新的な作品であり、そして現在でも当時と同じように新鮮に聞こえます。メタルとハードコアの近未来的衝突。
実際、”Demanufacture” はメタルの未来と、インタラクティブ・テクノロジーや人工知能の暴走を、鋭く、力強く予言していました。エクストリーム・ミュージックのサウンドを永遠に変えながら。
実のところ、FEAR FACTORY は広く成功する可能性を持ったバンドではありませんでした。1991年のデビュー作 “Soul Of A New Machine” は、デスメタル、グラインドコア、インダストリアル・ミュージックからヒントを得た、非常に新鮮で独創的なエクストリーム・メタルのレコードでバンドのユニークさを存分に認識させましたが、彼らの音楽的ビジョンが真に生かされたのは、1993年に発表された同様に画期的な “Fear Is The Mindkiller remix EP” でした。FRONTLINE ASSEMBLY の Rhys Fulber が解体・再構築したリミックスの輝きは、喜びに満ちた異種交配によって FEAR FACTORY を正しい方向へと誘い、やがて彼らのキャリアを決定づけるアルバムへと導いたのです。ギタリスト Dino Cazares は当時を振り返ります。
「”Fear Is The Mindkiller” は、俺たちがやりたかったこと。ただ、最初はそのための技術がなかったんだ。キーボードのサンプルもなければ、Rhys が使用するようなコンピュータもなかった。だから、ギター、ベース、ドラム、ボーカルでマシンをエミュレートしようとしたんだ。KMFDM や Ministry のような古いインダストリアル・バンドを聴くと、メタルのリフをサンプリングし、それをループさせて同じリフを何度も繰り返しているよね。僕らはそれを楽器で真似しようとしたんだ」
“Soul Of A New Machine” で礎を築き、その後、リミックスアルバム “Fear Is The Mindkiller” で理想に近づいた FEAR FACTORY。しかし、やはり “Demanufacture” は別格でした。その遺産、今日まで続いている影響、そしてメタルのスタンダードになった手法は多岐に及びます。
まず、クリーン・ボーカルと極端なデス・グラントをミックスした Burton C. Bell のスタイルに注目が集まりました。
「特に、クリーン・ボーカルと極端なデス・グラントをミックスした俺のスタイルは、メタル界のスタンダードとなった。 もしわかっていたら、自分のスタイルを商標登録していただろうね。そんなことはできないだろうけど (笑)。”Fear Is The Mindkiller” の後、俺たちは “Soul Of A New Machine” と “FITM” とのコンビネーションを求めたんだ。完全なエレクトロニックではなく、新しい展開があり、また、多くのハードコア・バンドとツアーをしていたから、ハードコアやメタルの雰囲気も残したかったんだ。そこにさらにもう少し新鮮さを加味したいと思って、ボーカルの幅を広げ始めたんだよね」
そのボーカル・スタイルにはどうやってたどり着いたのでしょう?
「そうだな、正直俺はあまりメタル系の人間ではなかったんだ。好きなメタルバンドはいくつかあったけど、どちらかというと HEAD OF DAVID や SONIC YOUTH, BIG BLACK といったバンドの方が好きだったね。他のバンドの中にもすごく好きな部分があって、例えば GODFLESH では Justin が歌うというより、うめき声のような感じで感情を露わにしている。俺は Justin の真似をしようとしたんだけど、うめき声ではなくメロディーのようなものが出てきたんだ。クールなサウンドだったからそのまま続けてみたら、そのボーカル・スタイルをより多く曲に取り入れることができたんだよね。すべての曲ではないけど、”Pisschrist”, “Self Bias Resistor”, “Zero Signal”, “Replica” みたいな曲では、とても効果的だった。ただ、それはまだはじまりに過ぎず、今でもさらに発展し続けているんだよ」

時代を先取りしていたのは、Burton のボーカルだけではありません。Raymond Herrera のドラムパターンの驚速と激しさは、バンドが本物のドラマーではなく、ドラムマシンを使っていると思われるほどでした。
「彼はスタミナと体力をつけるために、コンバット・ブーツやレッグ・ウェイトを使って演奏していたんだ。人々は、彼が本物のドラマーであることを信じていなかったし、シンガーが一人であることも信じていなかったんだよ。つまり、俺たちには多くの誤解を解いて回らなきゃならなかった。特に初期のツアーでは SICK OF IT ALL や BIOHAZARD のようなハードコア・バンドと一緒に回っていたから、受け入れてもらうのに時間がかかったね」
自身も右手に重りをつけ、左手指の関節を固定してマシンガンピックを養った Dino は、自分たちの音楽にターボチャージャーをかけてパワーアップさせる方法を見つけようとしていました。Rhys Fulber が回顧します。「”Fear Is The Mindkiller” では、それまで演奏されていなかったようなインダストリアルなクラブで演奏するようになったからね」
FEAR FACTORY とロードランナーとの契約に尽力した著名なメタルA&Rのモンテ・コナーは、このバンドの特異なアプローチにいち早く可能性を見出し、革命的だと主張した人物です。
「FEAR FACTORY は最初から先駆的だった。残忍なデスメタル・バンドが、ポップなコーラスを入れていたんだから。しかし、 “Demanufacture” を制作していたときの目標は、デスメタルから完全に新しいものへと進化させることになったんだけどね」
関係者全員の多様な嗜好。FEAR FACTORY はそもそも決して一般的なメタル・バンドになる運命にはありませんでした。デスメタル、インダストリアル、エレクトロニカ、サウンドトラックなど、バンドが愛してやまないものすべてが、スリリングで見慣れない新たなアイデンティティへと集約されていきました。90年代初頭は、商業的にはメタルにとって最も恵まれた時代ではありませんでしたが、SEPULTURA, PANTERA, MACHINE HEAD, KORN などと並んで FEAR FACTORY は新しいやり方とサウンドを考案することで、このジャンルに新鮮な命を吹き込んでいたのです。Burton が説明します。
「俺たちは、FEAR FACTORY をこんなサウンドにしたいというビジョンを持っていたけど、自分たちの技術を理解し、そのポイントに到達する方法を把握するのに時間がかかったんだよね。”Demanufacture” の時点で、すべてがまとまったんだ。歌詞、コンセプト、サウンド、アレンジ、プロダクション…すべてがね。チャンスを逃すことを恐れてはいなかった。だから自分たちの好きなことだけをやっていたよ。コーラスをビッグにしたり、テクノの要素を取り入れたり。自分たちが好きなら、やってみようという感じだった。失うものは何もなかったんだから」

1994年10月から12月にかけてレコーディングされた “Demanufacture” に問題がなかったわけではありません。バンドは、シカゴの Trax スタジオでレコーディングを開始しましたが、すぐに自分たちが期待していたものとは違うことに気づきました。
「次から次へと問題が出てきて、まさに最悪の状態だったな。ドラムを聴き直すと、マイクが機能していなかったせいで多くの音が欠落していた。俺たちは、”この場所はクソだ ” と思い、FAITH NO MORE が “King For A Day” をレコーディングしていたウッドストックに飛んだんだ。空きスペースはあったんだけど、1ヶ月分もはなかったから、結局、シカゴのデイズ・インで1ヶ月間、床に寝ることになったよ。その後、ベアーズビルのスタジオが使えるようになるまで、マネージャーの家に住んでいたね。ここの未完成の地下室を使って、文字通り地面の上でリハーサルをしていたんだ。6月から10月の間、俺たちは宙ぶらりんだった」
ベアーズヴィルは彼らのニーズに合ったスタジオでしたが、バンドには時間がなく、ロンドンのウィットフィールド・ストリート・スタジオでボーカルを完成させました。アルバムの音がちょうどよくなるまで、何度もミックスとリミックスを繰り返しました。また、アルバムにクレジットされてはいますが、ベーシストの Christian Olde Wolbers はバンドに入ったばかりで、Burton によると「十分にタイトな演奏ができなかった」ため、彼のパートはギタリストの Dino Cazares が担当したといいます。その Dino がレコーディングを振り返ります。
「俺たちは、山の中の都会人だった。スタジオでは、FAITH NO MORE と BON JOVI に挟まれていたんだ。FAITH NO MORE とはよく一緒に遊んだと言っておこう。ドラムを始めてからは順調だったんだけど、ギターを始めたところで壁にぶつかってしまった。最初のプロデューサー Colin は俺のギター・トーンが気に入らなかったんだ。2週間も喧嘩して、1音も録れなかったんだよ!」
プロデューサーとの対立の中で、Dino と Burton は、時間がどんどん過ぎていき、予算がどんどんなくなっていくのを感じていました。Colin は、Dino が機材を変えるべきだと断固として主張した。Dino は Colin に「失せろ」と言いました。
「これが俺の音なんだ!ってね。ある日、あまりにもイライラしていたから、スタジオから坂を下ったところにあるフルーツ・スタンドまで歩いて行ったんだ。そこで働いていた男の人に見覚えがあって、それが DC のハードコア・レジェンド BAD BRAINS のギタリスト、Dr. Know だったんだよね。そこで彼と話をして、今の状況を伝えると、彼は『君が使えるものを持っているよ』と言ってくれた。それで、俺のアンプを彼のキャビネットに接続してみたところ、突然、ドーンと音が出てきたんだ。みんな額の汗を拭いていたよ。ハハハ!」
膠着状態が解けたことで、”Demanufacture” の制作が本格的に始まりました。キーボード、サンプル、サウンドエフェクトに重点を置きながらも、リフとキックドラムの同期した機械的ブレンドによって前進するこのアルバムは、11曲で構成され、メタルの新しいマニフェストとなることが約束されていました。しかし、アルバムに対する Dino のビジョンは、その集中力と激しさゆえに、Colin Richadson がミックスを担当するにはもはや適任ではないという結論へと急速に達していました。Rhys Fulber が証言します。
「Colin を悪く言うつもりはないよ。彼は素晴らしい人だけど、俺たちは違う方向に進んでいると感じていた。もし彼がミックスしていたら、典型的なメタルのレコードになっていただろうな。俺たちには既成概念にとらわれないことが必要だった。最初のミックスは最悪でね。キーボードが前面に出ていなくて、俺たちはあの音を大きくしたかったからレコードのコントロールを取り戻したんだ」

誤った情報の宝庫であるウィキペディアによると、”Demanufacture” は、映画『ターミネーター』の第1作目からインスピレーションを得たコンセプト・アルバムであるとされていますが実際はどうなのでしょう? Dino が振り返ります。
「俺たちは最初からSF映画のファンだった。『マッドマックス』は、1979年に撮影されたものでずいぶん昔の話だけど、俺らは子供の頃にそれを見ていたんだ。その後、突然『ターミネーター』が登場して、”Soul of a New Machine” の時に、『ターミネーター2』に出てきた液化したT-1000という新型ターミネーターの記事を読んで、新たな機械の魂ってアルバムのタイトルとしては最高だなと思ったんだ。だから、俺たちは明らかにテクノロジーを受け入れ、それを FEAR FACTORY の大きなコンセプトにしたんだ」
Burton は、SF がインスピレーションのひとつであることに同意するものの、それは多くの源のひとつに過ぎないと語ります。
「俺は『ロボコップ』、『ブレードランナー』、『フォーリング・ダウン』、『アポカリプス・ナウ』のファンだった。あと、”The Closet “という映画があって、そこでは冷戦時代の東側の尋問が描かれていて、それがいくつかの曲のインスピレーションになっているんだ。当時のビデオゲームからもいくつかヒントを得たね。でも、一番のインスピレーションは、92年のLAでの暴動だったと思う。俺たちはアレを経験しているから。殴られたり、裁判を傍聴したりね」
Dino が付け加えます。
「1990年から1995年にかけて、火事、洪水、暴動が起こった。1994年には大きな地震があり、ロサンゼルスが破壊されるのを目の当たりにしたよ。略奪者、銃撃戦、国家警備隊の夜のパトロールなどを目の当たりにね。Burton はそのすべてを “Demanufacture” に注ぎ込むことができたんだよ。このアルバムの最初の行は、”Desensitised by the values of life… ” だからね」
皮肉なことに、暴動が始まった日、バンドはLA南部で “Soul Of A New Machine” の写真撮影を行っていました。その場所は、暴動がはじまったフローレンスとノルマンディーから文字通り3ブロック離れた場所でした。Burton が回顧します。
「人々が集まって抗議活動を始めたとき、ちょうど車でそこを通っていたんだ。これはひどいことになるぞ、早くここから出ようと思っていたね。そして、実際に醜くなった。ピリピリしていたよ。誰もが敵対し、標的になっていた。誰も警察を信用していなかった。シュールだったね。ビルの屋上で自動小銃を持って商品を守っている人もいたんだから。俺たちは “Demanufacture” の時代に生きていて、人間と戦い、生き延びるために必死だった。精神的にも肉体的にも影響を受けたよ。つまり、住んでいた場所を失い、正式にホームレスになって、94年の “Demanufacture” のレコーディングが終わるまで、ソファで暮らしていたんだから」

人間対機械という考えは、FEAR FACTORY にとって永遠のテーマとなりました。自動精算機、ドローン、自動運転車が普及している今日、それは彼らが想像していたよりも予言的であったかもしれません。コンセプトアルバムのアイデアは “Demanufacture” が完成した後に生まれたと Burton は説明します。
「アルバムを録音し、アートワークも完成していたけど、プレス用に各曲の解説をするように頼まれたんだ。そしてそれを書き始めたところ、各曲にストーリーを持たせることが自然に思えてね。つまり、この混乱と人々の暴動の中に主人公がいるということだよ」
歌詞を振り返ってみると、未来的というよりは非常に個人的な内容のものもあります。
「そうだね、すべて個人的なものだよ。”Therapy For Pain” は、元ガールフレンドの夢を描いたもので、愛と痛みをテーマにしているよ。”Zero Signal” は、ロンドンでアシッドトリップから目覚めたときに書いたんだ。Marquee クラブのレイブで大量のアシッドを摂取して、ある女の子と付き合い始めたんだ。彼女の部屋で一晩中トリップしていたんだけど、目が覚めるとカーテンの隙間から日の光が入ってきて、その光が青い目をしたイエスの巨大な絵に当たっていたんだよね。アレはとてもパーソナルな出来事だったな。あとは、あのころ俺は法律番組をよく見ていて、台詞をカセットに録音していたんだけど、その多くがアルバムに使われている」
一方、Dino は別の場所からインスピレーションを得ていました。
「Dino と俺は当時、一緒に暮らしていたんだ。彼はあのころ Dimebag のようになりたいと思って、”Cowboys From Hell” を全部暗記していたくらいでね。それに、面白い事実があるんだ… “New Breed” のリフは、STONE TEMPLE PILOTS のリフを逆に演奏したものなんだよ。確か “Vaseline” だったかな」
1995年6月13日に発売された “Demanufacture” は、オーストラリアではゴールド、イギリスではシルバーに認定され、アルバムチャートで27位を記録しました。さらに、このアルバムは無数のメタルバンドに影響を与え、インダストリアル・メタルやメタルコア、さらにはかなり先の未来、 djent の文字通り青写真となりました。Burton は胸を張ります。
「”Demanufacture” は、俺のキャリア全体を変えたし、多くの扉を開いてくれたんだ。あのアルバムは時の試練に耐えてきたと思うよ。サウンド面やプロダクション面だけでなく、歌詞の面でも真実味がある。俺たちは、暴動やいろいろなことで、文字通り常に緊張感の中にあった。つまり、現在のような状態だよ。結局歴史は繰り返すんだ」
Dino も同様にあのレコードを誇りに思っています。
「本物の演奏だと気づかない人もいた。エレクトロニック・ドラム、つまりプログラムされたドラムだと思った人もいたし、俺のギターがサンプリングされたものだと思った人もいた。非常にタイトなレコードだったから、そしてある意味では機械的な音だったから、リアルではないと思われたんだ。俺は、今でも人々が賞賛するサウンドを作ることができたことをとても嬉しく思っている。今でもあのレコードに影響を受けている人がいるからね。あれはバンドのキャリアの中でも画期的なもので、インダストリアル・メタルというジャンルを定義するような作品を作ったんだ。確かに、 MINISTRY や GODFLESH みたいなバンドはいたけど、FEAR FACTORY はそれを別のレベルに引き上げたんだよね。他の人がやっていないような多くの要素を組み合わせたんだ。
レコードのプロダクションも大きな要因のひとつだね。このレコードのミキシングは、間違いなく新しいレベルに到達している。Rhys と Greg がミックスを担当したのは、この種の音楽の標準となるような、素晴らしいものだったから。ボーカルだけでも、後に続く世代のミュージシャンやボーカリストにインスピレーションを与えたよね。シンコペーションの効いたギターやドラム…多くの人が MESHUGGAHが流行らせたと言っているけど、MESHUGGAH が流行らせたのはもっと後だよ。当時の FEAR FACTORY はもっとビッグなバンドだったから。シンコペーション・ギターやドラムを使ったあのスタイルを広めたのは、当時の俺らだけだったんだ。だから、時の試練に耐えられるような名盤を作れたことは、とても幸運だったと思うよ」
Dino は今でも “Demanfucature” よく聴き返すと語っています。
「サウンドとかではなく、構造を聴くために時々戻ってくるんだ。多くの場合、その構造を新しい曲に応用しているよ。例えば、どうやって “Zero Signal” を書いたんだっけ?どうやって始まるのか?バースはどこへ行くのか?中盤はどうなっているのか?とかね。新しい曲に行き詰ったら、”Demanufacture” に戻って、『よし、これが俺たちのやり方だから、戻ってこの曲に適用してみよう』という感じになる。曲がまったく違っていても、リフが違っていても、今でも曲作りの助けになっているんだよ」

あれから26年。Dino が語る通り、FEAR FACTORY は FEAR FACTORY の哲学を微塵も失わない強力な “Aggression Continuum” で戻ってきました。そう、彼らのアグレッションは今でも続いています。
長い間の悲劇的な活動休止の後、棚上げされていた原題 “Monolith” がついに私たちの目の前に現れました。しかし、ここに一つ大きな問題が。30年のキャリアの中で11枚目のフルアルバムである “Aggression Continuum” は、ギタリスト Dino Cazares とボーカリスト Burton C. Bell のデュオにとって最後の作品になります。このアルバムでこそ Burton はその唯一無二の個性を響かせていますが、すでにバンドを脱退。しかし多くの人にとって、Dino と Burton こそが FEAR FACTORY なのではないでしょうか?
残念なことに、ここ数年、Burton や Dino をはじめとするメンバーの人生には様々な浮き沈みがあり、破産や商標権の問題など、バンドの主眼である音楽の行く手を阻む困難が多くありました。そして、二人が一緒にステージに立ち、熱狂的なオーディエンスの前で “Replica” や “Edgecrusher” を口ずさむ姿を見ることはもうかないません。つまり、私たちは “Aggression Continuum” を最大限に活用し、この章をふさわしい形で終わらせることを期待しなければならないのです。
過去と現在のバンドメンバーからの一貫した不誠実な表現と根拠のない告発。Burton が発表した脱退の理由はいたってシンプルでした。
「脱退をしばらく考えていたんだ。訴訟で消耗したんだよね。エゴの塊。貪欲さ。バンドのメンバーだけでなく、弁護士も含めてね。俺はただ、バンドに対する愛情を失っただけ。FEAR FACTORY では、常に何が起きているんだ!と思うことばかりだった。30年というのは、とても良い期間だよ。俺が FEAR FACTORY で制作したアルバムは、これからもずっと世に出続ける。俺は常にその一部であり続けるんだ。だけどただ、前に進むべき時だと感じたんだよ。もちろん、自分の遺産を誇りに思っている。俺たちは偉大なことを成し遂げたからね。信じられないような音楽を作り、音楽業界や世界中のファンに忘れがたい足跡を残してきた。最高の時には山の頂上に登り、最低の時には深い溝を掘ってきた。ただ、別のバンドでもっと素晴らしいことをするために、前に進まなければならない時が来るんだ…」

Dino にももちろん言い分はあります。
「辞めるとすら彼は言わなかった。SNS で知ったくらいでね。彼はいつものように、ちょっと姿を消してしたんだよ。俺が知っている Burton は、困難な状況になると逃げるのが好きな男なんだよね。彼は2002年に辞め、2007年には他のメンバーを辞めさせ、そして今また辞めている。彼はすべてのレコードで歌声を残しているにもかかわらず、辞めてしまう人でもあるんだよ。
俺は問題に正面から取り組むのが好きだ。もし問題があるなら、部屋に入って議論し、解決しようとする。人によっては、自分が追い込まれているように感じ、それに耐えられないこともあるだろうね。彼はそういうタイプなんだ。
去ったのは3年前だが、正直なところ、本当に去ったのは何年も前のことだと思う。おそらく20年は経っているだろう。彼は FEAR FACTORY のために歌詞を書いていたのは、心の底からではないと言っていた。歌詞を崇拝しているファンへの冒涜だよ。お金のために戻ってきたとも 言っていたしね。すでに知っていたよ。対処しなければならなかった」
たしかに Burton は現在、別バンド ASCESION OF THE WATCHER にすべてを捧げています。Dino が FEAR FACTORY に情熱を注ぐように。
「レコードを作ることに関しては、俺は非常に意欲的な人間だ。Burton はいつもプッシュしなければならなかった。さあ、やろうぜ !ってね。 あるいは、彼に連絡を取ろうとしても、彼がいないこともあった。何ヶ月も何ヶ月も姿を消していて、どこにいるのかわからない。彼が戻ってくるのを待つしかないんだよ。
“The Industrialist” のときは、俺がすべての曲を書いて準備ができていたんだけど、Burton が8カ月間も姿を消して、誰にも居場所を教えなかったんだ。その後、彼はカナダで “City Of Fire” というプロジェクトに参加していることがわかった。もちろん、今では自分のプロジェクトで自分のことをする必要があることも理解している。わかったよ。だけど、俺たちに教えてくれよ!
そういう面もあったよね。つまり Burton は長い間、出口を探しているように見えたんだ。彼は自分の他のプロジェクトが軌道に乗ることを望んでいて、そうすれば「おい、CITY OF FIRE は次の SOUNDGARDEN になるぞ、じゃあな!」と言うんじゃないかってね」

バンドを巡る訴訟や個人的な問題が、Burton の脱退に影響を及ぼしたのは明らかです。アルバムの赤々と燃える怒りの炎の代償とも言えるでしょうか。
「理解してもらいたいんだが、俺たちはとても多くの法的な問題や破産、離婚を経験した。俺は個人的に100万ドルの損失を被ったからな。ストレスは大きかったね。何度か病院に行かなければならなかった。心臓発作かと思ったけど、すべてはストレスによるものだった。でも、勘違いしないでほしい。俺はそのことで、戦うべきことを戦い、必要な犠牲を払うことを躊躇したわけではないんだよ。音楽は俺の情熱だから。常に愛しているんだ」
現在は、FEAR FACTORY の商標は、Dino が単独で所有しています。
「必要な措置だった。バンドを存続させたかったら、戦わなければならないという緊急性があった。Burton と戦うという意味ではなく、裁判所と戦うという意味で、Raymond や Christian と戦うという意味でね。
連邦破産法第7章を申請するときには、すべての資産をリストアップしなければならない。コンピュータ、車、家、ビジネス、そして商標などもリストアップしなければならない。そこに何も記載していないと、奪われてしまうんだ。それが Burton に起こったことだよ。Raymond と Christian の弁護士が、彼が FEAR FACTORY の商標を資産として登録していないことを発見したため、商標を取り上げられたんだ。それで裁判所がオークションに出した。みんな俺が Burton から商標を奪った、あるいは訴えたと思っている。だけど、裁判所が商標をオークションにかけたんだ。つまり、誰でも入札できる eBayのようなもの。俺は商標を手放すつもりがなかった。最高額で落札しようとしたんだけど、その入札者には Raymond や Christian もいたんだよね。とても激しい競り合いで、汗びっしょりだったよ」
クラウドファンディングで制作費を募って完成させたアルバムです。
「確かに高額なアルバムだった。レコード会社からもらった前金を使い果たしてしまったから、結局、GoFundMe キャンペーンを行うことになった。キャンペーンはとても成功したんだけど、Burton は賛成しなかったんだ。なぜかはわからないけどね。レコードが出れば彼の利益になるだけだからね。でも、本当に助けてくれたファンの皆に感謝しているんだよ。2万5,000ドルも集まったからね。これは、アンディ・スニープにミックスを依頼したり、生ドラムを叩いてもらったり、エンジニアを雇うための費用となった。金額は言えないけど、かなりの額自腹も切ったよ。だから、俺は今ほとんど無一文なんだ。でも、俺は悪いレコードを抱えて生きることはできないから。もし、ここまで戦ってきて、レコードが最悪だったら意味がないんだ」
一連の騒動がアルバムになんらかの影を落としたのでしょうか?
「いや、音楽に影を落としているとは思わないね、全く。むしろ摩擦が素晴らしいものを生み出すことだってあるだろ?この新譜でもそうだと思うよ。Burton が奏でる美しいメロディックなボーカルには、怒りや不安の感情が同時に込められている。彼が書いた歌詞と彼が歌った歌詞を聴けば、素晴らしいの感想以外はでないだろう」

間違いありません。ここには Burton C Bellの声があります。この声は、SLIPKNOT や KILLSWITCH ENGAGE が台頭してきたときに流行した、ダイナミックな唸りと歌声の元祖。そして、SF的なシンセサイザーやドラムトリガーと、ギターやベースの本格的なピッキングを組み合わせた、相反融合するインダストリアルでオーガニックなサウンドはいささかも衰えることはありません。
つまり、Dino と Burton の FEAR FACTORY は最も相応しい形でその幕を閉じます。インダストリアル・サウンドとマシンライクなリフアタック、多弦の重み、免許皆伝二刀流のボーカル、研ぎ澄まされたリズム隊に加え、一際メロディックでキャッチーなコーラス。さらに、アルバムには映画のようなオーケストレーションが施されており、深みがあって、近未来的なディストピアやドラマのような感覚がしっかりと刻まれています。何より、闘争の恩恵か、彼らは怒りやエッジをほとんど失っていません。”Demanufacture” で聴かれた怒りに匹敵する高温がまだここには火照っています。ただし、何十年もかけて曲作りが洗練されてきたせいか、どことなく柔らかさや滑らかさが出てきたような気もしますね。
モンスター・コーラスといえば、”Purify” が “Agggression Continuum” の “Replica” であるという考えはあながち間違ってはいないはずです。このレコードに収録されている曲の中で最も即効性のある曲ですが、スタイルとエレガンスを持って “浄化” が行われているため、あからさまなキャッチーさやポップメタル的なニュアンスとは無縁。最近、Burton が LINKIN PARK の “Hybrid Theory” は子供向けの “Demanufacture” だと語っていたのを思い出しました。Dino は一笑に付していましたが。
ファースト・シングルの “Disruptor” は、”Genexus”の “Soul Hacker” と多くの共通点があり、 「自分の道を貫け」という希望に満ちた歌詞を持つ、抵抗のための力強いアンセムです。”Fuel Injected Suicide Machine” では、バンドが愛する複雑すぎる曲名と、冷酷なまでの攻撃性が見事に融合しています。「運命を恐れず」「決して抵抗をやめない」という歌詞は、”Demanufacture” のメジャーな曲と同レベルの、真のインダストリアル・バンガー。
FEAR FACTORY には、アルバムを壮大でゆっくりとした曲で閉じるという強い伝統がありますが今回はそうではなく、”End of Line” は、Burton の広大なボーカルレンジと豊富なリフを使ったメタルトラックで、アルバムを大々的に締めくくっています。”Monolith”のソロのように、一歩踏み出した挑戦もあり、”Aggression Continuum” 以前のリリースとは異なるエッジがたしかに生まれてきているのです。そうしてシンセと話し言葉だけが残り、深い声で「恐怖がなくなったとき、私だけが残る」と述べてアルバムは幕を閉じます。危険は去っていない、抵抗は続いていく。結局、FEAR FACTORY は “Demanufacture” のころからずっと、メタルのレジスタンスであり続けているのでしょう。
女性ボーカルを入れるという噂もありますが、Burton との復縁はもう起こらないのでしょうか?
「俺は前に進まなければならない。だから起こるならすぐに実現しなければならないと思う。ファンの皆が待たされるのは不公平だと思うからね。もしそうなるのであれば、なぜ今ではないんだい?なぜファンは、彼がここが自分の居場所だと気づくのを待たなければならないのだろう?
わからないけど、彼は新しい人生の選択をして、前に進んでいるのかもしれない。彼がここにいたくないと思っていた時期が何度もあったという事実を無視することはできないよ。彼が出口を探していた時期もあったしね。だけど、同時に、俺たちが作り上げたものを否定することもできないよね。だから…将来的に Burton と復縁するか?可能性はあるよ。俺はそれを受け入れている」

参考文献: EON MUSIC: FEAR FACTORY Interview

KERRANG!:“I’m Proud Of My Legacy… But You Have To Move Forward”: Burton C. Bell On Leaving Fear Factory And What’s To Come

LOUDER:Dino Cazares: “I think Burton C Bell left Fear Factory many, many years ago”

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALARUM : CIRCLE’S END】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK PALFREYMAN OF ALARUM !!

“Bands Like Atheist And Cynic Were Big Influences On Our Band And Helped Inspire Us To Explore What We Could Do With Music. They Both Covered a Lot Of Ground And Continue To Do So.”

DISC REVIEW “CIRCLE’S END”

「僕たちが楽しんで聴いている音楽には、これまであまりヘヴィな音楽には混ざっていなかったスタイルがたくさんあるんだよね。だから様々な音を混ぜ合わせた音楽を書くのは、今でも楽しくてやりがいがあるよ。これからさらにドラスティックになるんじゃないかな…」
タイトで正確で、ブラストビートからメロディックな遊覧飛行、さらにフュージョンの小宇宙まで、すべてを備えたメルボルンのベテランプログデス ALARUM の帰還はあまりに鮮烈でした。
「ATHEIST や CYNIC のようなバンドは、僕らに大きな影響を与えてくれたし、音楽で何ができるかを探求するためのインスピレーションを与えてくれたんだ。彼らは共に多くの分野をカバーしてきたし、今もそうしている。」
近年、モダンプログ/メタルの聖地として活況を呈するオーストラリア。ただし、90年代から活動を続けるメタルアクトは決して多くはありません。ALARUM はそんな稀有な存在の一つです。
さらに驚くべきは、彼らが当時からモダンメタルの多様な精神を宿していたことでしょう。CYNIC, ATHEIST, PESTILENCE, DEATH といった勇敢な登山家たちを崇拝し、オンタイムでその挑戦心を抱きしめていたわけですから不思議ではありませんね。そうして特筆すべきは、ALARUM がオーストラリアの燦々とした陽光を全身で浴びている点でしょう。
「”Crystals” は何か違うものだよね。僕たちの歌詞の多くはより高揚感のあるものだから、それを反映した音楽を取り入れるのは自然なことなんだ。」
自己実現や宇宙、科学をテーマとした “Circle’s End” において、やはり際立つのはそのアップリフティングな音の葉でした。アルバムの中盤に現れる “Crystal” は、女性ボーカルを配し、軽快で知的、80年代のジャパニーズフュージョンのようなパステルカラーを纏うインタルード。そこから異能の冒険 “Sand” を導きます。
Devin Townsend が放つ壮大なサウンドスケープを彷彿とさせながら、メタルの壁とフュージョン壁をいとも容易く溶解し時に対比させ、13thコードを STRAPPING YOUNG LAD へも突きつけます。ヘヴィーなセクションから舞い上がるコーラスパートはキーボードの陽光が降り注ぎ、CACOPHONY の重なるギターラインまで追体験させる多様な砂嵐。
フュージョンといえば、Pat Metheny を見るまでもなく、ワールドミュージックへの憧憬が重要なインスピレーションとなっていますが、ALARUM のメタルも世界を巡る旅行記の様相を呈します。
“War of Nerves” では大胆なサンバのリズムとパーカッションでリオのカーニバルを訪れ、”In Spiral” ではカリブ海でラテンのダンスに興じ、さらには “Thoughts to Measure” で東欧チェコの山々まで訪れポルカのワルツで邪悪を踊るのです。ただし、冒険の中においても、デスメタルの獰猛や暗闇、ハイテクニックを一握りも失わず、斬新な世界観やエセリアルな情景とコントラストを描くのが彼らのやり方です。
そうしてアルバムは、CYNIC の宇宙的アトモスフィアを再創造する “Sojourn” でその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、ボーカル/ベースのフロントマン Mark Palfreyman にインタビューすることができました。「MESHUGGAH が自分たちのスタイルを形成してきた方法が本当に好きだし、他の多くの人に影響を与えて、よりテクニカルなリズム/パルスやフォームを音楽に取り入れてきたのは素晴らしいことだよ。彼らはそのメソッドやテクニックの王様だよ。」 どうぞ!!

ALARUM “CIRCLE’S END” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【QUASARBORN : A PILL HARD TO SWALLOW】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH QUASARBORN !!

“I’d Like To Get As Far Away As Possible From Any Bands, And Develop a Style Of Music Which Will Make You Go: “Yup, That’s Quasarborn!” Like, When You Hear The Intro To “Reign in Blood”, or “South of Heaven”, You Just Know It’s Slayer.”

DISC REVIEW “A PILL HARD TO SWALLOW”

「自分も含めて、セルビアの人々は東洋と西洋の価値観やライフスタイルの間で、本当に引き裂かれていると思う。この地域全体が20世紀の戦争に引き裂かれたままで、政治はばかげていて、本当にひどいリアリティ番組を思い起こさせるね。」
SPACE EATER の灰から生まれたブラックホール、QUASARBORN は東欧のメロディーと西欧のテクニックを交差させるスラッシュメタルの新宇宙。同様に、コロラドで叙情と技巧をスラッシュの衝動に落とし込み喝采を得た、HAVOK の最新作 “V” に対する欧州からの強烈な回答です。
「できるだけどのスラッシュバンドからも離れた音楽のスタイルを展開していきたいと思っているよ。”そうだ、これが QUASARBORN だ!” と思わせるような音楽をね。例えば “Reign in Blood” や “South of Heaven” のイントロを聴いた時に、曲を知らなくても SLAYER だと分かるようにね」
METALLICA の王道、SLAYER の邪悪、MEGADETH の知性、ANTHRAX の奔放、EXODUS の暴力、TESTAMENT の美麗。
かつてのスラッシュメタルは、ジャンルの特性を超越してありあまるほど、戦士に宿る個性が魅力となり群雄割拠のメタル地図を形成していました。QUASARBORN の最新作 “A Pill Hard to Swallow” には、そんな定型を突破し自由を謳歌するあの時代の野心が投影されているのです。
メタルのエッジが鋭く研ぎ澄まされる開幕の “Mamula” では、熱狂的スピードとスラッシュのキックドラムでアドレナリンを沸騰させながら、東欧の影を深く織り込んだメランコリーでバンドのヘヴィーなペルソナを強調します。
PAIN OF SALVATION を思わせる捻くれた静寂で対比の美学を成立させ、アンセム感を際立たせたタイトルトラックでも、PANTERA 化した SKID ROW と形容したくなるメタリックパンキッシュな “Bastion” でも、ベイエリアの空気を胸いっぱいに吸い込んだ “Identity Crisis” でも、リスナーを導く灯火とはるのはシンガロングを誘う強力な哀愁ライン。
「僕の最大の夢は、世界最高のバンド VOIVOD のオープニングを務めることなんだ。」
一方で、VOIVOD を敬愛するバンドのプログレッシブな側面を象徴するのが、9分を超える陰鬱 “Stalemate With Suicide” でしょう。METALLICA の “One” のようにリアルに、THE BEATLES のようにサイケデリックに幕を開けるエピックは、トランペットの慕情や不協和のカオスを見事に制御しながら無慈悲にも、生への執着を徐々に奪っていくのです。
そうしてアルバムは、スラッシュメタルの特性の中で最大限の複雑性とドラマ性を実現させた “The Humbling” でその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、QUASARBORN にインタビューを行うことができました。「僕は幼い頃、よく父と David Maxim Micic と釣りに行っていたよ。それから大人になって、彼のバンド DESTINY POTATO を発見したんだ。とても気に入ったよ。」 どうぞ!!

QUASARBORN “A PILL HARD TO SWALLOW” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【CEMICAN : IN OHTLI TEOYOHTICA IN MIQUIZTLI】AZTEC METAL SHAMAN FROM MEXICO


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH OF XAMAN-EK & TLIPOCA OF CEMICAN !!

“We Believe That Ritual Sacrifices Represent a Mystical Part Of Pre-Hispanic Mexico, Which Could Not Be Left Out Of The Show.”

AZTEC ROOTS, PRIDE AND RITUAL

「ここ数年、ラテンアメリカでメタルは本当に強力なんだ。まあ世界中でそうなんだが。メキシコ人はアグレッシブなサウンドを愛しているから、メタルは我々の文化を拡散するのに最適な方法なんだよ。」
ヘヴィーメタルとフォークミュージック、伝統音楽の絆はあまりに深く強靭です。スカンジナヴィア、欧州、アジア、北米。もちろん、1996年、SEPULTURA がマトグロッソの先住民族シャヴァンチと共存した “Roots” を見れば、古のラテンアメリカとヘヴィーメタルにも時を超えた親和性があることに気づくでしょう。
「CEMICAN とは同じ意味の中で生と死全体を表す言葉であり、それはこれまですべての時の間に学んだすべての知識と知恵を統合しているんだよ。」
2006年、メキシコに示現した生と死の二元性を司るアステカのメタル司祭にとって、Xaman-Ek の加入は大きな出来事でした。アステカの文化や言語ナワトルに精通するステージのシャーマンによって、CEMICAN はプレヒスパニック文化やアステカの神話をメタルのアグレッションや知性へと昇華させる唯一無二へと変貌したのです。
伝統的な管楽器や打楽器を、装飾としてでなく、勇気を持って楽曲の中心に据える戦士の魂こそ CEMICAN の原点。そうして彼らはアステカの伝統に敬意を表しながら、ボディーペイント、羽毛や骨の頭飾り、甲冑を身につけてステージに立つのです。
「ナワトル語は我々の祖先が使用していた言葉だからな。彼らは自然の力とコミュニケーションを取るためにも使用していたんだ。ナワトル語は、今でもいくつかの地域では話されているんだよ。」
ステージ名やアルバムのタイトル、時には楽曲やその歌詞にもアステカやインディオの先住民の言語を使用する CEMICAN。ただし、唸りをあげる歌詞の大半はスペイン語で書かれています。今でもメキシコ公用語の一つで、170万人の話者を持つと推定されるナワトル語ですが、それでも理解が出来るのはごく一部の人たちだけ。CEMICAN はアステカの文化を世界に運ぶため、より柔軟でグローバルな視点も有したバンドなのです。
「我々は全員が伝統音楽からメタルまで、様々に異なる影響を受けてきた。しかし常に我々の文化とフォルクローレは必ず心に留めているのだよ。」
Xaman-Ek はスラッシュとパンク、Tecuhtli はデスメタルやシンフォ、ブラックメタル、Tlipoca はクラッシックなメタルとスラッシュ、Ocelotl は Nu-metal。多様な影響を咀嚼したメタルの万華鏡も CEMICAN の魅力です。何より、シンセサイザーとプレヒスパニックの楽器を融合させたエレクトロニカの先鋭 Jorge Reyes が、メキシコに点在する様々な遺跡で行ったコンサートは CEMICAN の心臓部に深く刻まれる刻印となりました。
ナワトル語で “死者の神秘的な道” を意味する最新作 “In Ohtli Teoyohtica In Miquiztli” はバンドのディスコグラフィーにおいて最も洗練を極める、世界を見据えたモジョの道。古代のドラム、笛、フルート、クレイオカリナ、貝殻、女性ボーカルの巧みな配列は、異様な高揚感を伴いながらアステカに育まれる第五の太陽を導きます。一方で、時に DEATH や CYNIC, ATHEIST, MEGADETH にも通じる神秘的な攻撃性は、その太陽へ捧げられる生贄の残酷でしょうか。もちろん、生と死の二元性という CEMICAN の名が物語るように、彼らのステージにも不可欠な、太陽の力を得るため心臓を捧げ人肉を啜る神聖な生贄の儀式は残酷の一言で片付けられるほど単純なものではありませんでしたが。難問は現代の音階とズレが生じる不安定な伝統楽器の揺らぎでした。
「最初は正しい調性、音階を見つけるのに苦労したものさ。だけど遠く離れた古の職人の楽器でも、馴染みのある現代の音階に近い音色を持たせることに成功したのさ。」
CEMICAN はドイツの Wacken Open Air やフランスの Hellfest といった大規模なイベントにも出演し、メキシコ国外でのオーディエンスを増やすために努力を重ねています。メキシコ第三の都市モンテレイより、フランスでの演奏回数の方が多いという実績は、まさに彼らがケッアルコアトルのドラゴンである証明でしょう。
「ヨーロッパはバイキングやケルトといった古代文化に根ざし、もちろんバイキングメタルも有名だけど、メキシコの古代文化には馴染みがないんだよ。 すべてがボディペイントで、頭には火と羽がついているから目と口を大きく開けて怖がったり、驚いたりする。だけど3~4曲目には、ステージ上で起こっていることを理解し、愛してくれるようになるんだ。」
今回弊誌ではアズテックメタルで儀式を担当するパフォーマー Xaman-EK と、創始者でドラマー Tlipoca にインタビューを行うことが出来ました。日本の祭囃子にも通じる不思議。今や世界のどこにでもメタルは存在します。それこそがメタルに備わる包容力の証明。第三世界の逆襲。どうぞ!!

参考文献: Daily Bandcamp

CEMICAN “IN OHTIL TEOYOHTICA IN MIQUIZTLI” : 9.9/10

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