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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COSMIC JAGUAR : THE LEGACY OF THE AZTECS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SERGIO LUNATICO OF COSMIC JAGUAR !!

“We Didn’t Want To Be Another Primitive And Dull Thrash Band That Sings About Booze, Sex, Zombies, Partying, Social Problems And Other Hackneyed Topics.”

DISC REVIEW “THE LEGACY OF THE AZTECS”

「明日何が起こるかわからない、とても危険な状況だったからこそ、できる限りリハーサルを重ねた。結局、4ヶ月でフルアルバムをゼロから作曲し、レコーディングしたんだ!目的が見えていれば、障害は見えなくなるものだよ」
ウクライナへ向けたロシアの非道な侵略が始まって、すでに一年半の月日が経ちました。戦火はおさまることなく混迷と拡大を続け、ウクライナの人々にとって当たり前にあった平和や安全という当たり前の生活は遠のくばかり。しかし、逆境にあってこそ、ヘヴィ・メタルのレジリエンス、反発力や回復力は輝きます。明日全てが失われてしまうかもしれない。そんな限界の非日常において、ウクライナの COSMIC JAGUAR は自らの生きた証をここに残しました。
「音楽の制作は、たとえ平和な時代であっても難しいものだ。なぜなら、たいていは自分の作品が聴衆からの反応やフィードバックをほとんど得られず、また自分の目標を実現するための手段を見つけることも難しいからね」
逆境を跳ね返す力こそ、ヘヴィ・メタルの真骨頂。長年、BESTIAL INVASION で活動してきた Sergio Lunatico はカルト的な人気を得るものの、世界的な名声までは程遠い状況でした。しかし、戦争の勃発と同時に一念発起し結成した COSMIC JAGUAR は、第三世界のメタル、伝統音楽を抱きしめたメタル侵攻の波に乗り、見事に世界的な注目を集めつつあります。DEATH, ATHEIST, VOIVOD, CYNIC, SADIST, CORONER, PESTILENCE といった “あの時代” の特別なテクニカル・メタル、その神秘性が見事にアステカの神話と噛み合った祭壇のメタル・サウンドは、ウクライナから海も山も大陸も超えて、遥かテノチティトランにまで鳴り響くのです。
「僕たちは、酒やセックス、ゾンビ、パーティー、社会問題など、陳腐なテーマを歌う原始的で退屈なスラッシュ・バンドにはなりたくなかった。古代世界の歴史が好きな僕が選んだのは、アステカの文化と神話だった。僕の記憶では、メキシコの地元バンドを除いて、このテーマを使うスラッシュ・バンドはほとんどなかったからね。面白いのは、多くの人が僕らをメキシコのバンドだと思っていることで、彼らに言わせれば、僕らがアステカの精神と雰囲気を非常にうまく伝えているからなんだ。そして、僕らがウクライナ出身だと知ると、彼らはいい意味で認知的不協和を感じるんだ!」
そう、あのメタル・エジプト神 NILE の名を挙げるまでもなく、ヘヴィ・メタルに国境はありません。メタルの世界でアーティストは、好きな題材を好きなだけ深堀りすることが許されています。日本人にとってのオオカミのような存在である、ジャガーをバンド名に冠するのも彼らのメキシコ愛がゆえ。アヴァンギャルド/テクニカル・スラッシュと表現するのが最適なその多彩さは、ラテン、ファンク、ジャズ、デスメタル、ブラックメタル、ワールド・ミュージックとまさにコズミックな拡がりを見せながら、アステカの民族楽器と女性ボーカルでリスナーをアステカの神殿へと誘います。そうして、かの文明の独特な死生観や終末信仰は、未だなお争いを続ける人類への警告として語り継がれるべきなのかもしれませんね。
今回弊誌では、Sergio Lunatico にインタビューを行うことができました。「ウクライナにおける戦争において、今は安全な場所などなく、いつでもミサイルやドローンに捕捉される可能性があるため、毎日が自分や愛する人にとっての最後の日となりうる、そう思って生きているよ。だからこそ僕たちは生き残るためにあらゆる方法を試しているんだ」 どうぞ!!

COSMIC JAGUAR “THE LEGACY OF THE AZTECS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PIZZA DEATH : REIGN OF THE ANTICRUST】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KANE OF PIZZA DEATH !!

“The Best Music Comes From Artists Who Are Giving a True Genuine Reflection Of Themselves Through Their Music.”

DISC REVIEW “REIGN OF THE ANTICRUST”

「スラッシュというジャンルは、僕たち全員がプレイしていて本当に楽しいと感じる音楽なんだ。でも、タフなメタル・ヘッドのように振る舞っている自分たちを、客観的な自分は真剣に受け止めることができない。だからピザのような馬鹿げたテーマを持つことで、音楽を通して、タフガイじゃない自分たち、その個性をより素直に反映させることができるんだ」
メタルやハードコアのようなエクストリーム・ミュージックの世界において、”マッチョ” で “タフ” で “シリアス” であることは長年、リスペクトを得るための至上命題だったのかもしれません。弱さも優しさもユーモアも、激しい音楽にとっては足枷でしかない。しかし、そんな時代は過ぎ去ろうとしています。METALLICA が自分たちが無敵ではないことを告白して、ファンと痛みを分かち合おうとしているように、激音の伝道者たちは本来の自分を曝け出しつつあります。当然でしょう。いつでも完璧で鋼鉄な人間など、存在しないのですから。
「シーンには、自分の怒りや不満、意見や見解を表現する手段として音楽を使いたがる人たちがたくさんいる。それは素晴らしいことで、僕も彼らは大好きだよ。でもね、僕らがそれをやると “フェイク” なんだよな。だって僕らは、最高の音楽は、音楽を通して自分自身をありのままに表現しているアーティストから生まれるものだと思っているから」
メルボルンで焼かれた PIZZA DEATH も、メタルのステレオタイプと本来の自分の間で悩み、葛藤し、ピザの悪魔の力を借りたユーモアの影で遂にありのままの個性を解き放つことに成功したバンドです。”Pasta of Muppets”, “Naplam Cheese” といった思わず笑顔になるようなジョークの裏側で、彼らは当時の英雄たちに引けも劣らぬ猛攻を仕掛けていきます。スラッシュ、ハードコア、グルーヴ・メタルにグラインド・コア。ピザのトッピングは、MUNICIPAL WASTE や TOXIC HOLOCAUST のクロス・オーバーに輪をかけて色とりどり。そうして、その原動力はやはり、メタルのステレオタイプとは異なる、ハイオク満タンの POWER “Violence” TRIP。特筆すべきは、27分20曲が瞬く間に通り過ぎるそのキャッチーな “ピザの耳”。
もちろん、チーズィーな “ピザ・スラッシュ “とは、METALLICA, EXODUS, KREATOR といった80年代のアイドルに傾倒しすぎた新しいスピード・メタル・バンドに向けられた蔑称ですが、PIZZA DEATH は明らかにこの言葉を意識しながら、反発して、より自分たちの個性を曝け出すことに成功しています。結局、”ピザの耳” はアンチが多いものの、食べてみればなかなかの歯ごたえと美味を備えているのですから。
今回弊誌では、ベーシストの Kane がインタビューに答えてくれました。「かのお方こそ、最強のアンチクラスト (反ピザの外側の硬い生地) 様だ!なぜ、どうやってそうなってしまったのかはわからないが、アンチクライストがピザ生地にはまり込んでしまい、それがシン・スリジー・ピッツェリアのオーブンに入れられると、サタン自身がピザ生地に焼き付けられ、アンチクラスト様に大変身してしまったのだ!」 ピザの耳は許すがパイナップルの侵入は許さない。絶滅させよ!どうぞ!!

PIZZA DEATH “REIGN OF THE ANTICRUST” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VICIOUS RUMORS : THE ATLANTIC YEARS】 JAPAN TOUR 23′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GEOFF THORPE OF VICIOUS RUMORS !!

“Saint Albert Was a One Of a Kind. We Were All Like Brothers…Sharing The Stage And Creating Music With Him Was Something Artist Dream About.”

DISC REVIEW “ATLANTIC YEARS”

「我々はスピードとメロディーをミックスしている。とにかく自分たちに忠実でありたいと思ったんだ!VICIOUS RUMORS はパワー・メタルのパイオニアだと言う人もいるけど、ある意味、我々はヘヴィ・メタルにスラッシュ、ブルース、アトモスフィア、真のメタル的なシンガロング・アンセムをオリジナルな方法でミックスしていたんだよ。我々は決してフェイクな何かになろうとしたわけではない。そこには常にパワーがあったからパワー・メタルなんだ」
サンフランシスコのベイエリアは、1980年代初頭におけるメタルの揺籠でした。この街の雰囲気は実験的な試みを許容し、特にスラッシュ・メタルはこの地の自由な追い風に乗って成功を収めていきました。スラッシュは確かにこの地で飛躍し、世界を征服していったのです。
「スラッシュは常に私たちの周りにあったよ。スラッシュとの相性は今日でも強力だよ。私はそれが大好きだからね…ただ、私たちはより幅広いバリエーションを持っていて、LED ZEPPELIN のようなアプローチを自分たちのヘヴィ・メタルに適用したかったんだ!」
現在のエクストリーム・ミュージックの基準からすると、当時のバンドのほとんどは今よりずっとメロディックに聴こえます。つまり、エクストリームとメタルの基準がまだ曖昧だった逢魔時。そんなベイエリアで産声をあげた VICIOUS RUMORS は完全なスラッシュ集団になるつもりこそありませんでしたが、それでもスラッシュと同等のエッジがあり、同時にメロディがあり、新しい、よりハードな音楽の辛辣さだけでなく伝統的な要素もあり、音楽的な幅の広さでは彼の地でも群を抜いていたのです。
「”Digital Dictator” は、クラシックなラインナップの始まりであり、Carl Albert の最初のアルバムだったから、いつだって特別なアルバムと言えるだろう。あの頃は、とてもエキサイティングな時間だった!アトランティック・ブルー (90年のセルフタイトル “Vicious Rumors”) のアルバムは、ある意味、最初のメジャー・レーベルからのリリースということで特別だね…」
硬軟の傑出したギター・チーム Geoff Thorpe と Mark McGee、ドラマーの Larry Howe、ベースプレイヤーの Dave Starr、ボーカリストの Carl Albert からなる5人組はすぐに有名になり、絶えずツアーを行い、JUDAS PRIEST の “Screaming for Vengence” をスラッシーにドーピングしたような名作 “Digital Dictator” で巨大企業アトランティック・レコードの目に留まることになりました。そうしてバンドは緊密なユニットとなり、精密機械のように動作して、”アトランティック・ブルー” と呼ばれるセルフタイトルを90年にリリースします。
“90年代を定義するメタル・アルバム” と称された “Vicious Rumors” は、タイトなリフとリズムが火山のように噴火し、5オクターブの並外れたボーカルが雷鳴のように轟きます。オープニングの “Don’t Wait For Me” が激烈でスラッシーな一方、”Down To The Temple” では DIO 時代の RAINBOW、”The Thrill Of The Hunt” では IRON MAIDEN を彷彿とさせ、その輝かしい伝統と新風のミックスはメタル・コミュニティ全体に広く、素直にアピールする魅力的なものでした。
「私たちは VICIOUS RUMORS のヘヴィ・メタルでパワフルな日本の夜を過ごし、最初のショーの後、楽屋に向かったんだ。するとプロモーターがやってきて、”もう一度だけアンコールをお願いします” と言うんだ!誰も会場を出ていないからとね!私たちはとても驚いたよ!再び出ていくと客電はついているのに、まだ満員のままだった!!! 私たちは再びライブハウスを揺るがしたよ。この経験は決して忘れることはないだろうね!」
91年の “Welcome to the Ball” も好評のバンドはその勢いを駆って1992年に来日し、ライブ・アルバム “Plug In and Hang On – Live in Tokyo” をリリースします。オーバーダビングのない、生の興奮と情熱を反映した作品は間違いなく VICIOUS RUMORS の絶頂期を捉えたもので、ダイナミックな演奏の中でも特に、生前の Carl Albert の “凄み” を存分に見せつける絶対的な記念碑となったのです。
「聖アルバートは唯一無二の存在だった。彼の半分ほどの才能しか持たないようなボーカリストたちが、巨大なエゴを持ち、小切手を切っているんだ。その才能はお金に値しないのにね。彼は後世の多くの人に影響を与えた。私たちは皆、兄弟のようだったよ…彼とステージを共有し、音楽を創り出すことは、アーティストとして夢のようなことでさえあった」
1994年に5枚目のアルバム “Word Of Mouth” をリリースした翌年、Carl Albert が交通事故で亡くなり、バンドは兄弟を失い、メタル世界はずば抜けたボーカリストを奪われました。それでも VICIOUS RUMORS は絶望の淵で踏みとどまり、インタビューイ Geoff Thorpe を中心に今日までコンスタントに、諦める事なく、”意味のある” メタルを届け続けています。そんな彼らの不屈は “アトランティック・イヤーズ” における再評価の波と共に実を結び、遂に今回、16年ぶりの来日公演が決定したのです!VICIOUS RUMORS is Baaaaack!!
今回弊誌では、Geoff Thorpe にインタビューを行うことができました。「日本のファンのみんなも素晴らしかった。空港や駅で私たちを待ってくれて…彼らがどうやって私たちの居場所を知ったのかわからないよ!」 Geoff が歌っていたアルバムも悪くないし、隠れた異才 Mark McGee をはじめとして、Vinnie Moore, Steve Smyth, Brad Gillis など彼のギター・パートナーとの対比の妙もこのバンドの聴きどころ。どうぞ!!

VICIOUS RUMORS “THE ATLANTIC YEARS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENFORCED : WAR REMAINS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KNOX COLBY OF ENFORCED !!

“Humans Are Violent By Design. That’s How We’ve Survived.”

DISC REVIEW “WAR REMAINS”

「俺たちは古い伝統に思いを馳せながら、新しいリスナーには新鮮に映るように工夫してやってるんだ」
2010年代後半。スラッシュという容赦のない獣は、爆発的な人気を誇る新進気鋭の POWER TRIP の力によって、ハードコアの衝動を多分に受けた新たなスタイルで世界に再びその威光を轟かせました。2020年、POWER TRIP の象徴的なフロントマン Riley Gale の急逝は明らかにメタル世界の大きな損失でしたが、それでも彼らに続くアメリカのニュー・エクストリーム、その激しい波はとどまることを知りません。いや、むしろ、現代こそが “クロスオーバー・スラッシュ” の黄金時代なのかもしれませんね。
「Arthur は、自分のやっていること、作っていることを正確に理解していて、特定のスタイルやサウンドのバンドがどのように表現されるべきかをしっかりと理解しているんだ」
自らも SUMERLANDS, ETERNAL CHAMPION という温故知新のニュー・エクストリームを率いる Arthur Rizk こそが、この新たなアメリカの波の牽引者です。若い世代にとって、インターネットを通して知る80年代の音楽は、ある意味驚きで、新発見なのでしょう。そうして彼の地のメタル・ナードたちは、好奇心の赴くままに古きを温めすぎて、当時を過ごした実体験組のような知識と思い入れを持つようになりました。そこに現代の文脈を織り込めばどうなるのだろう?そんなタイムトリップのような実験こそが、Arthur の真骨頂。
POWER TRIP, CODE ORANGE, TURNSTILE といった Arthur が手がけたニュー・エクストリームの綺羅星たちは、そうやって様々な “If” の掛け算を具現化していったのです。今回インタビューを行った、東海岸から登場した ENFORCED は “暴力装置” という点で、”Arthur’s Children” の中でも群を抜いた存在でしょう。
「俺は暴力的な人間ではないけど、暴力行為の因果関係や思想や概念としての暴力を理解できるほどには成熟している。俺たちが暴力と完全に縁を切るということは、自分のDNAを無視するってことなんだ」
ENFORCED は、否定したくても否定できない人間の “暴力性” に一貫して焦点を当てています。戦争の時代に戻りつつある現代。ENFORCED の魂 Knox Colby は、机上の平和論者に現実を突きつけます。オマエは暴力の恩恵を受けていないのか?戦争は時代を進めて来たんじゃないのか?人類は本当に暴力と縁を切れるのか? “War Remains”…と。
「SLAYER が成してきたことを、俺たちも実現できると思いたいね」
前作 “Kill Grid” のスラッシュへのグルーヴィかつ多彩なアプローチが “South of Heaven” だとすれば、”War Remains” は彼らの “Reign in Blood” に違いありません。このアルバムが走り出したが最後、33分後には死体確定。跡形もなく踏みつけられたリスナーの骸以外、何も残りません。Knox が Tom Araya のひり付くシャウトとデスメタルの凶悪なうなりの完璧なキメラで血の雨を降らせ、殺伐としたギターの戦車が世界を焦土に変えるのに3分以上の時間は必要ないのです。今回、彼らが所望するのは電撃戦。
ただしバンドは、古いスラッシュのルールブックに基づいて演奏しながら、MORBID ANGEL や OBITUARY の伏魔殿から、”Nation of Fear” のような “ハードコアISH” のグルーヴまで暴力の規範を変幻自在に解釈して、人が背負った “業” を、現実を、リスナーに叩きつけていくのです。私たちはそれでも、”ウルトラ・ヴァイオレンス” な世界を塗り替えることができるのでしょうか?
今回弊誌では Knox Colby にインタビューを行うことができました。「人間はそもそも、暴力的にデザインされているんだ。そうやって俺たちはこれまで生き延びてきたんだよ」 どうぞ!!

ENFORCED “WAR REMAINS” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【METALLICA : 72 SEASONS】


COVER STORY : METALLICA “72 SEASONS”

“We’re All Really Average Players, But When You Put Us Together, Something Happens”

72 SEASONS

METALLICA の前作 “Hardwired… To Self-Destruct” から7年。数多の受賞歴があり、数百万枚の売り上げを誇るモンスター・バンドにとっても、11作目となる “72 Seasons” は、世界的なパンデミックの余波でまったく新しい状況の中の創造となりました。
パンデミックの坩堝の中で生まれた “72 Seasons” は、単なるニューアルバムではありません。コロナ以前に比べて、ポップカルチャーの中で、より大きな位置を占めるようになったバンドの再登場という意味合いが強いのです。その理由のひとつは、1986年の名曲 “Master of Puppets” が Netflix のレトロSFシリーズ “Stranger Things” で大きく取り上げられ、大きな後押しを受けたこと。もうひとつは、Lars Ulrich, Kirk Hammett, Robert Trujillo が昨年ブラジルのステージで、James Hetfield が観客に少し年をとって不安を感じていると認めた後に、3人でこのフロントマンを抱きしめたヴァイラル・ビデオの存在。METALLICA が Ozzy Osbourne とツアーを行い、テストステロンとビールを燃料とするスラッシュ・マシーンだった80年代には、こんなことは考えられませんでした。Lars Ulrich が振り返ります。
「バンド仲間をハグすることは、僕らの楽しみだよ。そして、お互いへの愛、40年以上経った今でもつまずきながらもやっていけることへの感謝をオープンにする。俺たちはそういう面をとても心地よく感じているんだ。俺たちは、お互いにオープンで透明な関係であろうとしている。30数年前、自分が20歳の時に “メタル・ロボット” であるため感情を持つことが許されなかった時代とは対照的だ。当時は、人間的な要素は、ある意味、置き去りにされていたんだ。ステージから降りたとき、俺たちはよく議論したものだ。 “あれは失敗した” “いや、俺のミスじゃない”。それは、ある種の完璧さを求める、狂気じみた、人間離れした努力だった…それが達成可能かどうかもわからない。でも今は、加齢に伴う自分たちの姿に満足し、”あの曲のあの失敗、面白かったよね?”と思えるようになった。今、俺たちは失敗を笑い、冗談にしているんだ。それでも俺たちは毎晩、ベストを尽くそうとする人間なんだよ」

つまり、結局のところ、2023年版の METALLICA はまったく別物なのでしょう。現在の彼らは、2004年に公開されたドキュメンタリー映画 “Some Kind of Monster” で見られるように、単に高額の精神科医を雇って創造性の違いを調整したり、バンド間の対立を仲裁したりすることはありません。彼らは実際に自分たちの感情について話しています。ステージ上でさえ。だからこそ、”72 Seasons” に収録された楽曲は、これまで以上にパーソナルなものになっているのです。以前のように必ずコンセプトや決まりごとから始まった作品ではなく、自らを曝け出し、初めて本音や伝えたいことをむき出しにしたアルバムなのかもしれませんね。
音楽的には、このアルバムはバンドの42年のキャリアを概観するような内容になっています。タイトル曲や “Shadows Follow”, “Too Far Gone?” は METALLICA 初期の熱狂的なスラッシュを蘇らせ、”You Must Burn!” は “Black Album” に収録されていたようなグルーヴを宿し、”Sleepwalk My Life Away” と “Chasing Light” では LORD/RELORD 時代のむき出しのロック・グルーヴを披露。一方、リードシングルの “Lux Æterna” は、METALLICA の初期のインスピレーション NWOBHM, 具体的には DIAMOND HEAD に向けたトリビュートのよう。11分のクローズ曲 “Inamorata” は、KYUSS と METALLICA 1986年のインストゥルメンタル曲 “Orion” の両方を呼び起こすことに成功しています。さて、このキャリアを包括するような新たな歴史の1ページは、いかにして生を受けたのでしょうか?
当初、バンドは毎週 Zoom ミーティングを行い、つながりを保ちながらアイデアを伝えていきました。遠隔地でのコラボレーション最初の試みは、2020年4月に各メンバーの自宅スタジオで録音された “Blackened” のアコースティック・バージョン(Blackened 2020)でした。そこからやがて、メンバー間の会話はより充実した音楽を作ることへと変わっていったのです。
Kirk Hammett が当時を振り返ります。
「ロックダウンが行われたとき、僕はかなりイライラしていた。両手を縛られたような気分だった。Rob(Trujillo) と “どうするんだ、このままじゃダメだ” っていう会話をしたのを覚えているよ!”こんなに時間を失うわけにはいかない!どうやってこの時間を取り戻すんだ!” とね。でも、Rob が言ったことがすごく心に響いたんだ。彼は “こんな時こそポジティブであれ。クリエイティブであれ” と言った。僕はそれを心に刻んだんだ。
今は、音楽的なアイデアがありすぎて、混乱してしまうくらいだ。そうして、ソロEP “Portals” の2曲を完成させることができたし、テクニックを鍛え、ずっとやりたかったギター・プレイに取り組むことができたんだ。時間が出来て、とても幸運だったと思えるよ。ロックダウンは、多くの人にさまざまな影響を与え、中には良くない影響を受ける人もいた。でも僕は Rob のおかげで、ポジティブに、要領よく、生産的でクリエイティブに過ごせたんだ」

そうして、4人の怪物たちは、何百ものアイデアを纏めるために選別し始めました。しかし、Zoom の喜びも束の間、何百、何千マイルも離れた場所にいる彼らは、これまで遭遇したことのない難題に直面しました。プロデューサーの Greg Fidelman がLAにいて、METALLICA のメンバーは西海岸に散らばっていたため、文字通りバラバラで、Lars はこの状況を “クラスター・ファック” と表現していました。
月日が流れ、世界が変わり始めた2020年11月、バンドは “All Within My Hands” のために集まり、実際に同じ空間で初めて新曲に取り組みます。それ以降、メンバーが家族の元に戻る前に会ったり、2021年にキャンセルされたライブを実現したりと、非常にストップ・アンド・ゴーなプロセスでしたが、ゆっくりと、しかし確実に、レコードが見えてきたのです。Lars がそのプロセスについて振り返ります。
「時には、より直接的で明白なビジョンが目の前に示されることもあれば、より本能的で言葉にならないこともある。2008年の “Death Magnetic” は、リック・ルービンと初めて組んだアルバムで、自分たちが何をしているのか、自分たちは何者なのか、これまでどこにいたのか、これからどこへ行くのか、アイデンティティや方向性について話し合うことがとても多かったんだ。こんな風に、各レコードは常に独自の旅であり、独自の存在なんだけど、このレコードはまるで偶然に突然出会ったようだった」
“音楽が現れた時、自分たちの方向に向かっているように感じた” と、Kirk は懐かしそうに振り返ります。
「これは僕らにとって初めてのことだよ。これまでは何度も、自分たちが考えるコンセプト通りに音楽を操作する必要があると感じていたんだけど、今回はそれがなかった。リフが現れて、一緒になって、僕たちはただ邪魔をしないようにするだけだった。音楽が飛び立つのを待つのが好きで、僕はその軌道を維持するためのガードレールに過ぎないんだ」
Lars の説明によると、具体的な目標や方向性に関する “ロッカールームでの会議” はなく、計画に関してはかなりルーズな感じだったと言います。パンデミックという外界の不確実性に囲まれていたため、より直感的に、考えすぎず、Kirk が言うように、音楽の流れに身を任せる必要があると感じていたようです。
「形にはなってきたけど、ゴールはなかった。というのも、創作活動でやっていることの大部分は、心臓や腸など、体の一部から生まれるものだと思うんだよな。もしそれが重くなりすぎたり、頭でっかちになったりすると、少し強引になってしまうし、過去に俺たちが頑張りすぎてしまったこともたしかにあった。だから “Hardwired” やこのアルバムは、曲作りのプロセスを可能な限り有機的なものにすることに重きを置いていると思う」

この自由で無秩序な作業方法と、作曲とレコーディングの過程でバンドに与えられた余分な時間は、音楽とそのクリエイターに余裕を与え、それまでとは全く異なるダイナミズムを植え付けました。Lars はそれは METALLICA にとって驚きだと言います。
「この2年間の制作期間中、誰かが声を荒げたり、議論や衝突があったとは思えない。40年も一緒にいれば、当然ぶつかることもあるし(笑)、それは過去によく語られてきたし、映画などでもよく記録されている。でもこれは、METALLICA がこれまでに作ったレコードの中で、断然、100パーセント、摩擦のないレコードだ。
結局のところ、俺らは自分たちがやっていることをとても愛しているし、自分たちが持っているものをとても大切にしているから、その道を旅するにつれてより大切にするようになるんだ。METALLICA を台無しにするようなことはしたくないから、もし何か問題が起きたら、すぐに手を引くんだ。今は互いにもっと共感できるようになったし、お互いを信頼して、すべての意見の相違が口論になる必要はないと思えるようになったのかもしれない。以前は、自分自身や全体像に対する信頼や信念が足りなかったから、あらゆることが喧嘩になったものだけど、今はそうではないんだよ。つまり、”過去” とは違う環境だ。このバンドにいて一番いいのは、安全な空間のように感じられることで、みんながそれに貢献している。みんながそれをとても大切にしているんだ」
James Hetfield は、METALLICA という “乗り物” があるからこそ4人が輝くと考えているようです。
「俺たち4人は個々でいると、マジで平均的なプレイヤーだよ。だが、4人が集まると何かが本当に起こるんだ。だから、基本的に他のミュージシャンとジャムるのは、俺にとって悪夢のようなものなんだ。俺はとてもシャイだから。1万人、2万人の前に立つよりも、誰かと1対1で座っている方がずっと不安なんだ」
Rob Trujillo も METALLICA の絆を感じています。
「METALLICA は家族なんだ。僕は家族に加わったんだよ。新しい兄弟を受け継いだ。ほとんどの人が知っているように、あるいは知っていてほしいのだが、特にこのようなバンドに参加するときは、責任が生じるんだ。もちろん、演奏できることは必要だし、信頼もパフォーマンスも必要だ。でも同時に、家族の一員として、その人の個性に合わせることも大切なんだ。METALLICA のメンバーはみんな違うし、同じではない。だから、物事を解決するためには、たくさんのコミュニケーションが必要なんだ。そして時には、自分の兄弟と同じように、完全に怒っている自分に気づくこともある。自分の家族と同じように、性格の違いを乗り越えていかなければならない。それと同時に、本当に大切なのはサポートだ。兄弟の誰かが落ち込んでいるとき、どうすれば彼を助けられるかを知っておかなければならないよ。METALLICA にいることは、そういうことなんだ」

METALLICA が闇を知らないわけではありません。”Master Of Puppets” での薬物中毒、 “One” での恐ろしいまでの孤独、”Fade To Black” での自殺願望など、彼らの作品は決して祝福と幸福に満ちたものではありませんでした。しかし、そんな中でも “72 Seasons” は、人間の大きな苦しみと不確実性を背景にした、彼らの最も暗い作品かもしれません。Kirk が説明します。
「ありきたりだけど、音楽は僕らの感情的、精神的、霊的な状態の反映なんだ。逆に言えば、”そうであってはならない” ということが理解できないんだ!僕たちはよく働くバンドだ。ロックダウンで閉じ込められたとき、僕らのエネルギーをどうやって取り除くんだ?僕たちはそれを音楽に注ぎ込む。だから、多くの音楽はとてもエネルギッシュなんだ。バラードがないのは、バラードが現れなかったからだ、兄弟。素敵で優しくて繊細な音楽はないんだ。この感情をカタルシスのある方法で吐き出したいんだ」
確かに、バラードはありません。77分という長い時間をかけて、”72 Seasons” は猛烈な勢いで駆け抜けていきます。このバンドは明らかに、自分たちの才能を誇示する気はなく、代わりに内なる猛り狂った地獄を共感させることを選んだのです。
しかし、この強烈なメタルの狂気は、”72 Seasons” の一つの側面に過ぎません。実際、James Hetfield はキャリアの中で最も露骨で脆弱な歌詞を残しています。人生の最初の18年間は、その後の人生に影響を与えるというコンセプトのもと、72 Seasonsはノスタルジア(”Lux Æterna”)、自傷行為(”Screaming Suicide”)、内省(”Room of Mirrors”, “Sleepwalk My Life Away”)など一見暗い内なるテーマを扱っています。Lars が説明します。
「このアルバムのテーマは、人生の最初の過程で経験したことが、いかに自分を形成し、自分が下す決断に影響を与え続けるか、そして自分が何者であるかを決めるということ。James は、人間のすべてが、最初の “72シーズン” で形作られるというコンセプトを持っていたんだ」

2019年10月、フロントマンは依存症をめぐる問題で2度目のリハビリ施設に入りました。”72 Seasons”のコンセプトは、人生の形成期である18年間と、それが最終的にどのように自分自身のあり方へと影響を与えるかだと説明した James 自身は、厳格なクリスチャンの家庭で育ち、13歳の時に両親が離婚。16歳のとき、母親はがんで亡くなっています。James は “大人は誰しも子供時代の “囚人” という言葉を使っています。
「James は、自分が経験してきた多くのことを、とてもオープンにし、透明にしているように感じるんだ。その多くが歌詞に現れていて、彼が歌詞を使ってコミュニケーションをとることをとても支持している。彼の口を塞ぎたくはないんだよ」
歌詞を読み解くと、憂鬱、逃れられない闇、誘惑、分裂、救済への願望など、明確なテーマがあり、その根源は魂の探求と隠れた悪魔との対峙に費やした結果だろうと読み取れます。しかし、 Lars は James の言葉にポジティブなものも見出しているのです。
「James は闇と光のコントラストを表現しているんだ。一歩引いて、歌詞や James が今回持ってきたテーマを見てみると、光と闇の両側面や両者の相互作用についてとてもよく感じられる。自分探しや、自分の弱さ、可能な限り透明であろうとすることなど、多くの要素に取り組んでいるんだ」
Kirk も Lars に同意します。
「歌詞が暗いとは思わない。彼は本当に暗いテーマに明るい光を当てているという事実において、非常にポジティブだと思う。それは必ずしも悪いことではなく、誰も触れようとしないようなパーソナルでタブーなテーマにアプローチすることで、みんなに大きな奉仕をしているんだ。そうやって、自分自身を世界に示しているんだ。もちろん、とても勇気のいることだよ。物事のネガティブな面を見ることは、世界で一番簡単なことなんだ。人は3秒でネガティブになれるが、ポジティブになるにはもう少し努力が必要だ。時間が経つにつれて、ポジティブでいること、みんなの幸福を拾い上げることだけでも努力する価値があると気づくだろう。James はこの歌詞をポジティブに捉えているんだ。KING DIAMOND のように究極の終末を語るわけでもなく、デスメタルのようなものでもなく、James は希望について歌っているんだ」
James も光を認めます。
「俺の人生、キャリアにはたくさんの暗闇があった。しかし、常に希望の感覚を持ち、暗闇の中に光を持ってきた。暗闇がなければ光はないのだから。人生には良いことがたくさんある。それに集中するんだよ。そうすることで、人生のバランスをとることができるんだ。誰もが自分の人生に何らかの希望や光を持っているんだ。明らかに、音楽は俺のもの。”Lux Æterna” では特に、コンサートに集まった人たちのことを歌っているんだ。ライブでは音楽から生まれる喜び、生命、愛、そして家族を見ることができ、ただただ高揚する感覚を味わうことができる」

Lars が James と出会ったのが、ちょうど17の時でした。ある意味、原点に戻るような意図もあったのでしょうか?
「バンドの原点を振り返るというより、俺ら自身のストーリーを振り返るということだと思う。長い間活動していると、その境界線は本当に曖昧になるからな。俺は17歳のときから METALLICA に参加しているから、人生のほとんどすべてを METALLICA の出来事と関連付けている。James と俺が出会ってバンドを始めたのが17歳の時だった。その2、3ヵ月後に18歳になったんだ。だから、人生のタイムラインは、基本的にバンドのタイムラインと連動しているんだよ。この2つを別々の軌跡として切り離すことはできないんだ。
もちろん、仲間と一緒に座って、昔話や喧嘩の話などをすることもあるだろう。旅先での話や、さまざまなおかしないたずらについて話すこともある。でも俺は過去にはあまり時間を割かないんだ。むしろ、未来に時間を割きすぎていて、現在には十分な時間を割いていないのかもしれないよな。でも、過去、現在、未来の間で、俺は間違いなくほとんど未来にいる」
ただし、リード・シングルの “Lux Æterna” に初期の METALLICA、もっと言えば NWOBHM の影響を見る人は多いでしょう。
「”Lux Æterna” を書いているとき、DIAMOND HEAD の話は出てこなかったと思う。でも、曲の中で James が “Lightning the Nations” (DIAMOND HEADのデビュー作) と言ったのは、明らかに意識していたよな。正直なところ、歌詞について彼に聞くことはあまりないんだ。でも、 “NWOBHMみたいだ” とか “DIAMOND HEAD みたいだ” とか言われると、なるほどと思うことがあるのは、俺らのことをよく知っているからだろう。専門的なことを言えば、あのリフのキーはAで、NWOBHM の曲の多くもAだった。俺らの曲の大半はEかF#のどちらかだからな。そこまで分解するのは嫌いだけどね」
セカンドシングルの “Screaming Suicide” をYoutubeで見ようとすると、”この曲は自傷行為について話しています” という警告があり、同意する必要があります。その下には自殺ホットラインの番号が書かれています。
「まあ、それは後からついてきたものだ。作っている最中は、どう解釈されるかなんて考えている暇はない。でも、このテーマ、この歌詞の土台であれば、免責事項や情報をパッケージにしたほうが役に立つと思い、選択したんだよ。そして、それは俺にとって本当に、本当に感情的なことだった。発売から1、2日後にコメントをチェックしたのだけど、ファンからのフィードバックには、自分の家族、親戚、友人など、どれだけの人がこのテーマに影響を受けているのかが書かれていて、ただただ驚かされるばかりだったよ。YouTubeのコメントを読んでいると、3つ目か4つ目のコメントには、身近な人の自殺や自殺願望に関するエピソードが書かれていたんだ。俺は涙を流しながら、この感想を読んでいたよ」

40年のキャリアに11枚のアルバム、そして4人のメンバー全員が60歳代を迎えた METALLICA。暖炉の周りに座って自分たちの遺産について反芻していても不思議ではありませんが、実際の彼らは正反対。METALLICA のタンクにはまだ燃料があり、成し遂げるべきことがはるかに残されているのです。ポール・マッカートニー、ブルース・スプリングスティーン、DEEP PURPLE などを例に挙げ、Lars は 「彼らが最高レベルでキャリアを続けていることは刺激になるだけでなく、何が可能かを示している」と言います。
「バンドの精神は長く続けることで、僕らはこれを本当に楽しんでいるんだ。この5年、10年の間に、自分たちの境界線と限界を理解し、どれだけ自分を追い込むべきかを理解できるようになった気がする。でも、膝や首、背中、肘、喉など、いろいろなガタがくるのは、これからだよ(笑)。ステージに上がると、やはり疲労が蓄積するから、健康を祈るばかりだよ」
Rob にとっては、”72 Seasons” こそがバンドの最高傑作です。
「僕らにとっての祝福と呪いのひとつは、新しい音楽的なアイデアがたくさんあって、レコードを作るのが楽しいということ。METALLICA のように長く活動しているバンドの多くは、ある時点で行き詰まりを感じたり、高いレベルで創作することが難しくなったりするものだけどね。でも、僕たちはたくさんのアイデア、たくさんのリフ、たくさんの音楽を持っているバンドなんだ。Kirk のリフのストックなんて、何百もあるみたいだしね。だから、僕らが持っているすべてのアイデアを実現するほど十分なアルバムをまだ作っていないんだよ。だから、想像するに、そう、僕らは新しい音楽を作り続けるんだろう。この作品は、僕がバンドをやってきてから一番いい作品だと思う。だから、これからも新しい音楽には事欠かない。ただ、それをやるための時間があるかどうかだ。それは全く別の話だ」
しかし、METALLICA にはまだ野望があるのだろうか?彼らは地球上のほとんどすべてのフェスティバルでヘッドライナーを務め(今秋にはカリフォルニアで開催される大規模フェスティバル Power Trip に出演予定)、7大陸すべてで演奏した唯一のバンドであり、1億2500万枚以上のアルバムを販売し、ビールやウィスキーの自社製品も持っています。さらに、レコードのプレス工場も購入したばかりです。Lars が答えます。
「よし、まだ月でライブをしたことがないから、その方法を考えてイーロン・マスクに電話しようみたいなチェックリストはないんだ。俺にとっては、自分たちを更新し続けることが重要だ。これからの数年間は、自動操縦に陥らず、自分に挑戦し続けるという適切なバランスを見つけることが大切なんだ」
Kirk は METALLICA の音楽の未来について、たとえ自分たちがこの世から去ったとしても遺せるものがあると信じています。
「ロックンロール・バンドの歴史を見れば、僕らはとっくに解散しているはずなのに、解散していないんだ! なぜそうしなかったかというと、僕たちが真の兄弟だからだ、お互いに離れられないと心から思っている。それに音楽が一番大事なんだ!僕たちはいつか死ぬし、賞味期限があるけど、音楽にはそれがない。音楽は生き続ける。楽曲は何年も何年も存在し続けて、聴かれ、発見されるのを待つ。100年後、誰かが “Seek & Destroy” を発見して、何だこれは?となっても、誰も僕たち4人のことまでは気にしないよ!”うわー、あいつら誰だ?長髪の男たち?でも、Enter Sandman” はクールだ”。レガシーとは、エゴの旅であり、ある意味無駄なものなんだよ」

アルバムのタイトルにもあるように、人生の最初の72シーズン (18年) は、その人のあり方を決定づけます。ある人は、子供の頃が本当に自由だった最後の時期だと振り返り、現実の生活に埋没する前に人生の最高のものを経験したと考えます。一方で、幼少期は過去として残し、明日は前よりも良い日であると考える人もいるでしょう。James は親となる事で、そのどちらをも肯定するようになりました。”過去は終わった” と認めることで希望が生まれる。混沌とした子供時代は避けられなかったかもしれませんが、それも過去であり、未来は自身が作るもの。
「人生最初の72シーズンがどんなもので、それが今どんな意味を持つかは、人それぞれだ。ただ、子供を持つことは、自分の子供時代や両親が経験したことを理解するのに役立つのは間違いない。どちらかというと俺は後者だね。親である俺は、”みんな、勘弁してくれよ。俺はただの人間なんだ” って感じだけど、子供のころは、親を神様のように尊敬していた。親は悪いことをしないし、親が言うことは何でも正しいと崇拝していた。でも親も人間だったんだ。世代を超えて、親として、本当に、俺がやりたいことは、自分の親がやったことより、もう少しうまくやることかもしれない。それが、自分に求めたいことだね。努力しなければならないこともあれば、完全に忘れなければならないこともあるし、見つけなければならないこともある。ただ、あれやこれやと親を責めるのはもうやめにしたいんだ。一つ言えるのは、誰にでも幼少期がある。それが良かったか悪かったかは、人生の後半で決めればいい。子供時代を変えることはできないが、子供時代の概念や今の自分にとっての意味は変えることができるから」
黄色のパッケージを選んだのにも理由がありました。
「俺にとっての黄色は、光。光なんだ。善の源なんだよ。だから、黒に対して、本当にポップな光の作品なんだ。俺のビジョンは、もともとこのアルバムを “Lux Æterna” (永遠の光) という名前にすることだったんだ。そして、俺は名前決めの投票に負けたんだけど、これは素晴らしいことだよ。”72 Seasons” は、より噛み砕きやすい曲であることは間違いない。それが何であるかを理解することができる。もう少し掘り下げて、噛み砕いてみてほしいね。でも、あの色は “Lux Æterna” から生まれたものなんだ」

METALLICA のメンバーにとって、72シーズンは複雑な旅路でしたが、最終的には、今日まで存在するメンバー共通の情熱、すなわちヘヴィ・Fuckin’・メタルを発見したことがすべてでした。Kirk が振り返ります。
「僕は機能不全な子供時代を過ごしていた。18歳になる頃には、頭が真っ白になっていたよ。都会で育ったから、あまりにも多くのものを、あまりにも早くから見すぎたんだ。だから、言いたくはないが、50回目のシーズンにはすでに傷物になっていたんだ(笑)。でも、72シーズンという短い期間の中で、いろいろな音楽を聴くことができたのは、僕にとって大きな財産になった。ベイエリアの音楽、ソウル、ファンク、R&B、ラップ、サルサ、ジャズ、クラシックなど、たくさんの音楽を聴いて育ったからね。ハードロックに目覚めたのは12歳か13歳のときで、KISSというバンドは好きだし、LED ZEPPELIN も好き、PINK FLOYD も好き…と思い、そこから始まったんだ。15歳のときに NWOBHM に出会い、JUDAS PRIEST や MOTORHEAD を知り、IRON MAIDEN のファースト・アルバムが発売され…そういったことはすべて72シーズンのうちに起こったことだ!その間に音楽的な情報を得て形成されたものが、今の僕の人生の音楽なんだ。どんな音楽も好きだけど、ヘヴィーでアグレッシブでエネルギッシュでダークな音楽を演奏するのは、心の底から好きなんだ。メタルが僕の72の季節を映し出す鏡であり、実際に過去に戻らなくても、あの頃のメタルを聴けばそこに行くことができる。それは健全なことだ」
Lars はどうでしょう?
「テニスをする家庭で育ったから、自分の中ではテニスで生きていくと思っていた。デンマークで育ち、テニス選手として国のトップ10にランクされたのに、ロサンゼルスでは、自分が住んでいる通りのベスト10に入ることもできないなんて、思いもよらぬ衝撃だった。だから、音楽の世界に飛び込んで、IRON MAIDEN, DIAMOND HEAD, TYGERS OF PAN TANG といった、バンドが、”音楽をやるのは楽しいかもしれない” と思わせてくれたんだ。それが目標だったんだ。James と俺が音楽を作り始めると、自分たちが求めていたものと同じようなもの、つまりメタルに没頭することを求めている人たちがもっといることに気づいたんだ。当時は世界の仕組み上、誰も知らなかったけど、俺らと同じようなはみ出し者や不適合者、権利を奪われた一匹狼が世界中に何百万人もいて、同じものを探していたんだよ!」

ヘヴィ・メタルは Lars にとって外の世界に初めてできた “家” でした。
「俺は一人っ子なんだ。バンドをやっているのは、他の人と一緒にいたいからなんだよ。幼いころは確かに一匹狼で、仲間はずれにされ、大きなクラブに所属したこともなく、注目の的だったこともない。いつも1人で外をウロウロしていたんだ。テニスをしていたけど、テニスは孤独なスポーツだ。俺は多くの時間を壁に向かってプレーしたり、ボールマシンでプレーしたりしていたからな。学校へは、他の子供たちと一緒にバスに乗るよりも、自転車で通うことにしていた。だから、バンド、グループ、集団、ギャング……どんな呼び方でもいいけど、俺は常に帰属意識を持ちたかったんだ。
昔は不器用で孤立した一匹狼の子供だったけど、バンドという環境に飛び込んだ。だから、ミート&グリートや、人と一緒にいること、昔はパーティーなど、社会的な要素はすべてその後に生まれたものだ。同じ志を持ち、抑圧されたメタル・ヘッズたちと一緒にいることで、”うわ、俺たちはこんなにたくさんいるんだ” と感じたんだよ。バンドを結成した当初は南カリフォルニアで、俺と James、そしてごく初期に一緒に演奏した数人のメンバーでスタートしたんだ。その後、サンフランシスコに移り、そこのスラッシュ・シーンの一員となった。そこから、メインストリーム以外のミュージシャンやメタル・ファンにどんどん出会っていった。人とのつながりを求めるのは、間違いなく俺の道だ。それは、一人っ子であることから始まった。でも、誰にでも自分なりの道があるものだよ。君にもきっと、自分なりの道があるはずだ」
Lars は、まだクラブで演奏していたころの PANTERA と知り合い、その仲を深めてきました、
共演も控えています。
「”Ride The Lightning” のツアーで兄弟に会って、友達になったんだ。ダラスでのことだよ。二人とも大好きで、テキサスには仲間もいて、テキサスを通るときはいつも会っていたよ。バンドがロック的な雰囲気から、クリエイティブでユニークな力へと進化していくのを、俺たちは何年もかけて見てきたんだ。だから、何十年も彼らとの関係を保ってきたんだ。”Walk” が好きでね。彼らが PANTERA の音楽と魔法を祝うという考えは……人々がそれを支持するかどうかについて、コミュニティで多くの話があるのは知っている。でも、俺はグレン・ヒューズが DEEP PURPLE のセットで演奏したいと言ったら、それを支持するタイプなんだ。だから、PANTERA の再結成はいいことだと思うんだ。Charlie が参加するのも素晴らしいことだ」
そして約40年後の今、ベイエリア出身のはみ出し者たちが、何百万人もの世界中のオーディエンスに接続され、真っ暗な闇の中から希望と光のメッセージを語っているのです。METALLICA の軌跡は、二度と繰り返すことのできない伝説であり、世代を超えたものでありながら、今だに1981年にバンドを始めた10代の若者たちの血と汗と涙が燃料となっているのです。
さて、Lars は72シーズンを終えた18歳の自分にどんなアドバイスをするのでしょうか?
「長髪を楽しめ。30代になったら前髪は消えてしまうし、あの大きなデニッシュのおでこは、一生目立つビジュアルになるんだから!」


参考文献: KERRANG! :Metallica: “In the past every single thing had to be fought over… now the band is a safe space and everyone is very protective of it”

REVOLVER:INSIDE ’72 SEASONS’: METALLICA’S JOURNEY FROM “METAL ROBOTS” TO OPEN-HEARTED FAMILY

CONSEQUENCE SOUND : Letter from the Editor: The Metallica Consequence Cover Story

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HAMMERS OF MISFORTUNE : OVERTAKER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHN COBBETT FROM HAMMERS OF MISFORTUNE !!

“Let’s Boil It Down To “Illusions” By Sadus And “Nursery Cryme” By Genesis; This Pair Of Albums Are Kind Of i Ideal In Thrash On One Hand, And Prog On The Other, To Me Anyway.”

DISC REVIEW “OVERTAKER”

「SADUS の “Illusions” と GENESIS の “Nursery Cryme” だね。僕にとってこの2枚はスラッシュとプログの理想形なんだよ。だからこの作品のキーワードは “理想” なんだ。この2枚のアルバムを、プログとスラッシュ、それぞれの分野の表現の象徴として捉えているんだ。この2枚のアルバムの、実際の音楽を組み合わせるということではなく、その精神、ゴーストのようなものを捉えたかった。音楽に対するアプローチが全く異なる2つの作品、どちらも大好きだ。だから、この相反するものをどうにかして結びつけたいと思ったんだ」
プログレッシブ・スラッシュといえば、VOIVOD, VEKTOR。CORONER や MEKONG DELTA、ひょっとすると MEGADETH もその範疇に入るのかもしれません。とにもかくにも、この分野のバンドはほとんどがメタル世界のカルト・ヒーローとして大きなリスペクトを集めています。ただし、彼らは本当に “プログレ” とスラッシュ・メタルを融合させてきたというよりは、独自の実験で “プログレッシブ” の称号を得たと言う方が正しいのかもしれませんね。
一方で、HAMMERS OF MISFORTUNE は彼らほどの認知も賞賛も得られてはいませんが、実験の精神と “プログレ” の解像度ではどのバンドにも負けてはいません。常に裏街道を歩んできた “範馬の不運” は近年、ついにその才能に見合う評価を勝ち取ろうとしています。
「僕はみんなと同じように様々な気分を持っているんだ。時には邪悪なスラッシュの気分、時には壮大なプログレの気分、時にはノイジーなDビート・パンクの気分だ! MR. BUNGLE や NAKED CITY のようなバンドも好きだけど、だけど僕らの音楽がコラージュのように聞こえるのは嫌なんだ。すべてが調和して、自然で有機的なサウンドになることが重要。音楽の “トランジション” はとても重要なんだ」
“トランジション” はひとつ、近年のモダン・メタルにおいてキーワードとなる言葉かもしれませんね。多様で境界を押し拡げるモダン・メタルの理念において、”クソコラ” のように様々なジャンルをツギハギするバンドは決して少なくありません。そんな安易なモザイク、不都合なジグソーパズルは結局、イロモノとしてリスナーに処理され、せいぜい SNS でひと時の “バズ” を得て消えていきます。
一方で、HAMMERS OF MISFORTUNE のやり方は、実にしたたかで巧妙。インテレクチュアルなスラッシュのリフ・ハンマーと、VEKTOR での不運を薙ぎ払うリズム隊の猛攻。そこに、濃密で荘厳なシンセ、メロトロン、そして複数のボーカリストが重なり合い、シームレスに連鎖して、轟音と畏怖と美麗の塊を創造していきます。
GENESIS と SADUS の共存共栄。そんな狂気の夢物語は、地獄のラボで音そのものをツギハギするのではなく、英傑たちのオーラを抽出して “Overtaker” というフラスコへと慎重に注ぎ込む抽象的な実験だったのです。世界観と世界観の蜜月。ロマンティックとおぞましさの婚姻。だからこそ、彼らの狂気はジェットコースターのように、リスナーの五感を圧倒します。
「住宅危機やソーシャル・メディアについて書くのは、最もメタルらしい題材ではない。たしかにそうだ。でも、このようなテーマに取り組んでいるメタルバンドは他に思いつかないけど、間違いなくメタルバンドだって皆これらの問題を扱い、日々深い影響を受けているんだよ。ホームレスと所得格差を暴力的なSFおとぎ話の形で扱った曲、”Overthrower” の歌詞を思いつくには、真剣に考える必要があった。メタルの曲で扱うには簡単なテーマではないけれど…」
つまり、要約すれば、このプロジェクトの首謀者、ベイエリアで長年カルト・ギターヒーローとして活躍を続けた John Cobbett はヘヴィネス、ムード、ドラマ、エキセントリックを変幻自在に超越し、VEKTOR や SABBATH ASSEMBLY といった異能のメンバーを操りながら、フォーキーで、リズミカルで、クラシカルで、プログレッシブなスラッシュ・オペラを完成させ、イラク戦争、住宅問題、SNSというテーマを経て、地球の険しいしがらみから逃れたサイケデリックな宇宙の旅へと到達しました。
ある意味、彼が一平方あたりの人口が6人という途方もない田舎、モンタナへと居を移したことが吉と出たのでしょう。フレキシブルで自由に選べるメンバー、余分なジャムを削ぎ落としたソリッドで凝縮されたコンパクトな楽曲、そして何より、残酷で生死をリアルに感じさせる厳しい自然環境が”Overtaker” のメタル、プログレッシブ、パンクを一層タイトに結びつけました。不運を名に宿したバンドの雪解けは、もうすぐそこです。
今回弊誌では、John Cobbett にインタビューを行うことができました。「現実世界の問題を壮大なヘヴィ・メタルの歌詞にするのは難しいことだけど、結果的にその方がメッセージが効果的になると思うんだよね。間違いなく、よりエンターテインメント性が高い。平凡なことが深遠であってはならないなんて、誰が言ったんだ?」 どうぞ!!

HAMMERS OF MISFORTUNE “OVERTAKER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XENTRIX : SEVEN WORDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KRISTIAN HAVARD OF XENTRIX !!

“Thrash Metal Could Be Down To Age And Experience. When You’re a Younger Band You Play Together In a Different Way Than When You’ve Been Around The Block a Few Times.”

DISC REVIEW “Seven Words”

「イギリスのスラッシュ・シーンは盛り上がるのが遅くて、アメリカやドイツのようなインパクトはなかったと思う。XENTRIX も同様に現れるのが遅かったから、シーンの興隆の助けにはならなかった。
つまり、レコード会社はイギリスのバンドに投資する前に、アメリカのバンドがどれだけ大きくなれるのか見たかったんだと思う。そして、彼らが僕らのようなバンドを欲しがった時には、もうシーンは次に向けて動き出していたんだ」
XENTRIX ほど “徒花” という言葉が似合うスラッシュの英雄はいないでしょう。生まれた場所や時間さえ違っていれば、今ごろは華々しいレジェンドと肩を並べる存在であったかもしれません。80年代半ばに英国で誕生した XENTRIX はまさに遅れてきたスラッシュ・エキセントリック。バンドの大作 “For Whose Advantage?” が、スラッシュの当たり年 1990年に発売されたのも不運だったのでしょうか。”Rust in Peace” ほどテクニカルではなく、”Twisted into Form” ほど熱くもなく、”Spectrum of Death” ほど凶暴でもなく、”By Inheritance” ほど知的でもなく、”Slaughter in the Vatican” ほど革命的ではありませんでしたが、それでも、”For Whose Advantage?” はメタルの伝統と野望を宿した凶暴なリフの刃でまっすぐ頸動脈に向かってきます。
「ベイエリアのバンドは古いバンドよりもモダンでエキサイティングな感じがしたけど、僕たちは自分たちのメタルのルーツも残したかった。だから、XENTRIX ではその二つの融合を聴くことができると思う。いつも言っていることだけど、僕らはメタルに重点を置いたスラッシュ・メタル・バンドなんだ」
一度は “徒花” として埋葬される運命にあった XENTRIX ですが、墓所の石棺は半ば強引に内側からこじ開けられることになります。”Bury The Pain”。痛みとともに葬られていた才能と野心は、2019年に再度世界へと解き放たれました。バンドの顔であったシンガー Chris Astley こそ欠いていますが、Jay Walsh はその穴を埋めてあまりある逸材。
今振り返ってみると、当時の英国スラッシュ勢、ACID REIGN にしろ、ONSLAUGHT にしろ、SABBAT にしろ、何かしら独特の “エグ味” “異端感” を伴っていたような気がします。その “エグ味” を世界が珍重する前に、ムーブメント自体が終焉してしまった。だからこそ、XENTRIX は再び地上に這い出でる必要があったのです。
「僕たちはベイエリアのバンド、TESTAMENT, VIO-LENCE, EXODUS, FORBIDDEN(これでも少し挙げただけだけど)が大好きだったんだ。
でも、彼らのようになろうとしたわけではなく、メタルという鍋に自分たちの味を持ち込みたかったんだよな」
復活第二弾となる “Seven Words” は、文字通りスラッシュ・メタルの “7つの系譜” を融合させたものと言えるのかもしれませんね。XENTRIX 初期の作品には、ベイエリアの躍動を受け継ぎながらも、ブリティッシュ・ハードの伝統と、CORONER のような暗知的な色合いを備えていました。そうした下地に、 初期の SEPULTURA を思わせるクランチーな圧迫感、さらにメロディアスなリフと高揚感のあるギターでメタル世界の各階層へとアピールしながら、確実に音の進化を刻んでいるのです。
“Seven Words” というリフの迷宮と”Anything but the Truth”” のシンプル・イズ・ベストが交互に現れるリフ・ダイナミズムもアルバムの魅力。そもそもメロディックな色合いは XENTRIX の本分ではないにもかかわらず、巨大なコーラスが破砕的なギタリズムと衝撃的にキャッチーな歌心をさながら溶かして融合させるスラッシュとメタルのハンダ付けはあまりに印象的でエネルギッシュ。そうして彼らは、テクニカルで好戦的でメロディックなヘヴィ・メタルの理想像を老獪に描き出すのです。
今回弊誌では、バンドの心臓 Kristian Havard にインタビューを行うことができました。「スラッシュ・メタルは年齢と経験を重ねる必要があるのかもしれないよな。若いバンドは、経験豊富で何度かバンドを組んだことがある人とは違った方法で一緒に演奏するからな」

XENTRIX “SEVEN WORDS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW【ANARCHŸ : SENTÏENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REESE TILLER OF ANARCHŸ !!

“Slayer Is Awesome, But We Really Don’t Need Any More Slayer Clones.”

DISC REVIEW “Sentïence”

「僕ら二人は Anarchÿ の他にも音楽活動をしているけど、HeXeN, VOIVOD, VEKTOR のようなメロディックかつプログレッシブなバンドのように、本当に痒いところに手が届くスラッシュ・アーティストをほとんど見たことがないんだよ。だからこそ、僕たちはできるだけ多くの音楽、特にクラシック音楽からインスピレーションを得ることにしたんだ」
スラッシュ・メタルはヘヴィ・メタルの改革にほとんど最初に取り組んだジャンルかもしれません。しかしながら、ここ20年ほど、質の高いスラッシュ・バンドはそれほど多く現れていないのが実情でしょう。80年代半ばから90年代初頭にかけての素晴らしい作品は今でもその輝きを失うことはありません。しかし、2020年代においても、絶賛されるスラッシュ作品のほとんどがあの時代のカルト・ヒーローという現状は決して健康的とは言えないはずです。
弊誌でも、今年取り上げたスラッシュ・バンドは VOIVOD, BLIND ILLUSION, TOXIK などあの時代の英雄ばかり。VEKTOR の偉業はむしろ青天の霹靂でした。では、スラッシュ・メタルを牽引する若い力はもう顕現することはないのでしょうか?
「音楽的に何も新しいものをもたらさない新たなスラッシュ・バンドは本当にたくさんいる。僕はどんな種類のスラッシュも好きだからそれはそれでいいんだけど、今後、もっとユニークなものを作る努力をしてほしいと願うばかりだよ。つまりね、SLAYER は素晴らしいけど、これ以上 SLAYER のクローンは全く必要ないんだ」
心配は無用。スラッシュ・メタルの無政府主義者 Anarchÿ がいます。セントルイスを拠点とするボーカルとマルチ奏者の2人組。彼らのデビューフル “Sentïence” はプログレッシブ・スラッシュの痒いところに手が届く意外性と独自性の塊。アートワークやてんこ盛りのウムラウトも、このジャンルが百花繚乱だった頃を思い起こさせる素晴らしい出来栄え。ジャンルの垣根を取り払い、様々な音楽的影響を融合させたこのアルバムは、スラッシュやメタルを基盤としながらその堅苦しい建物の外に出て、人間の経験や謎めいたテーマに触れながら、神秘的なリスニング体験を届けてくれます。
「スラッシュ・メタル史上最長の曲の後に続くのは、最短の曲以外に何があるだろうか? しかし残念ながら、WEHRMACHT は80年代に “E” で既に最短の試みを先行していたので、僕らは彼らのマイクロソングをカバーすることを選んだんだ。32分の曲の直後に2秒の曲を置くことのユーモアが、誰かに伝わることを祈るよ!」
バッハへの賛辞、スペインの夢、メタルらしからぬハンド・パーカッションなど様々な要素を取り入れたアルバムで、ハイライトとなるのは32分のオデッセイ “The Spectrum of Human Emotion”。シェイクスピアの戯曲 “ハムレット” をロック・オペラ風にアレンジしたこの曲は、スラッシュ・メタルのリフを中心に、ソフトなアコースティック・ギター、ジャズや VOIVOD の不協和音、アカペラ・ボーカル、優しいピアノの響き、そしてDavid Bowie を思わせるスペース・ロックと、ジャンルの枠を越えた冒険がスリルとサスペンスの汀で展開されていきます。スラッシュ・メタルの BETWEEN THE BURIED AND ME とでも評したくなるようなアイデアの湖。ただし、7部構成の壮大なシェイクスピアン・スラッシュが幕を閉じるや否や、たった2秒の “Ë” でリスナーの度肝を抜くのが彼らのやり方。
ただ、Anarchÿ の策士ぶりは、1時間近くあるアルバムの半分以上を “The Spectrum” という1曲の超越した叙事詩で展開しながら、残りのトラックでは、プログレッシブ・スラッシュの雛形を意識し、ジャンルの骨子である目眩く複雑なリフとコンポジションで好き者をも魅了していることからも十二分に伝わります。決して、ただのイロモノではなく、歴史と未来を抱きしめた明らかな “挑戦者” の登場です。
今回弊誌では、Reese Tiller にインタビューを行うことができました。「シェイクスピアの “ハムレット” は、とてつもなく長い戯曲だから、とてつもなく長いスラッシュ・メタルの曲にはぴったりだ!と。そして、歌詞にするためのメモがたくさんとって、曲の歌詞にチャネリングしていったんだ」どうぞ!!

ANARCHŸ “SENTÏENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOIVOD : ULTRAMAN EP / SYNCHRO ANARCHY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAN “CHEWY” MONGRAIN OF VOIVOD !!

“Let’s Help Each Other And Sing Together! Metal Is One Of The Most Open Community, People Gather And Have Fun, They Connect! We All Can Try To Be Ultraman In Our Own Ways And Help Each Other!”

DISC REVIEW “ULTRAMAN EP / SYNCHRO ANARCHY”

「今世界には、気候、戦争、政治など常に緊張感がある。日本はそれをよく理解しているはずなんだ。SF は時に僕たちが考えるよりも現実に近い。だからこそ、僕たちは皆、テレビの中のウルトラマンが勝利を収めることを望んでいたんだよね。そこに現実世界を重ねているから」
ピコン・ピコン・ピコン・ピコン…私たちは皆子供の頃、ウルトラマンの胸で輝くカラータイマーの点滅が加速するたび、スリルと心配で手に汗を握り、勝利を願いながらテレビにかじりついたものでしょう。もちろん、頭では “これは現実ではない” と理解していても、あの SF 怪奇大作戦に心がのめり込むのは “もしかすると現実でも起こり得る” そんな潜在的な不安と恐怖、そして共感をウルトラマンの巧みな設定やストーリー、そして音楽が掻きたてたから。そして、SF メタルの第一人者 VOIVOD は、今、この暗い時代にこそウルトラマンが必要だと誰よりも深く理解しているのです。
「僕たちは皆、ケベック州(カナダのフランス語圏)で翻訳されたフランス語版のウルトラマンを見て育ったんだ。オリジナル・シリーズ、音楽、怪獣、ベータ・カプセル…カラータイマーがどんどん早くなる時の緊張感…など、ウルトラマンはここケベックで知るものとは全く違っていて、新しい種類の冒険に心を開いてくれたんだよ」
なぜ今、VOIVOD がウルトラマンに着目し、テーマソングをカバーすることに決めたのか。理由は大きく二つ。一つは子供の頃からのヒーローだから。VOIVOD のメンバーはカナダ出身ですが、全員がフランス語圏のケベックで育ちました。日本の特撮やアニメの需要が高いフランス語圏において、彼らがウルトラマンやキャプテン・ハーロック、グレンダイザーをヒーローとして育ったことはある意味自然な成り行きでした。音楽産業がパンデミックや戦争で危機に瀕した時、ウルトラマンの登場を願うことも。
メンバーの中でも特に日本通、Dan “Chewy” Mongrain にとって、コロナ・ウィルスは怪獣に見えたのです。そして、ウルトラマンがその “怪獣コロナ” を一撃必殺のスペシューム光線で粉砕することを願いながら、ウルトラマンのテーマをアレンジしていったのです。そう、VOIVOD にとって光の戦士はまさに希望の象徴でした。
「このパンチの効いた不協和音はまさに VOIVOD のサウンドみたいだよね (笑) もしかするとオリジナル・ギタリストの Piggy は、ウルトラマンの音楽から影響を受けて初期の VOIVOD の音楽を作っていたのかもしれないね!ドラムの Away は僕のデモを聴いて、”うわっ!完全に VOIVOD だ!”と言っていたよ」
もう一つの理由は、純粋にウルトラマンのテーマがあまりに VOIVOD らしい楽曲だったから。それは Chewy が、前任のギタリストでバンドの支柱だった Piggy が、ウルトラマンのサウンドトラックから影響を受けたと推測するほどに。もちろん、半分は冗談でしょうが、SF マニアだった Piggy のことです。絶対にありえない話ではないでしょう。それほどに、ウルトラマンのテーマソング、そこに宿るブラスやオーケストレーション、そして不協和は解体してみれば実に VOIVO-DISH な姿をしています。
実際、VOIVOD は今が絶頂かと思えるほどに充実しています。40年にわたり SF プログレッシブ・スラッシュの王者として君臨してきた彼らは、1987年の3rd “Killing Technology” でこのスタイルを確立しましたが、メンバーの満ち引きを繰り返しながらその独自の方式に繰り返し改良を加えてきました。変幻自在にタイトでトリッキー、そしてフックの詰まった最新フル “Synchro Anarchy” は、まさにバンドが最高の状態にあることを示しています。
冒頭から、威風堂々圧倒的に異世界なギターリフ、近未来の激しいパーカッション、クセの強いディストピアンなボーカルが炸裂し、VOIVOD らしい歓迎すべきねじれた雰囲気を確立。 VOIVOD の愛する黙示録的な高揚感を完璧に体現しています。一方で、反復する心地よいハーモニーの催眠効果、不規則なサイクルと唐突な場面転換で、さながらフランク・ザッパのように VOIVOD は自由自在にメロディック・プログレッシブの地平も制覇していきます。
VOIVOD がただ、直接的な “苛酷” のみに止まらないのは、リスナーにポジティブなオーラ、夢や希望、ひと時でも現実を忘れる娯楽を提供するため。そうして彼らは、”Synchro Anarchy” と “Ultraman EP” の連作において見事にその目的を達成しました。ウルトラの父がいる。ウルトラの母がいる。そして “忠威” がここにいる。
今回弊誌では、Dan “Chewy” Mongrain にインタビューを行うことができました。「僕たちがしようとしたことは、皆を喜びやポジティブな気持ちをもたらすものに集中させること。悪い時は過ぎ去り、きっと良い日はやってくる。だからお互いに助け合い、一緒にメタルを歌おうよ! メタルは最もオープンなコミュニティーの一つだ。人はここに集まり、楽しみ、そしてつながっていく! 僕たちは皆、自分なりの方法で誰かのウルトラマンになろうと努力できるし、お互いに助け合うことができるんだよ!」 3度目の登場。感謝。どうぞ!!

VOIVOD “SYNCHRO ANARCHY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLIND ILLUSION : WRATH OF THE GODS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BLIND ILLUSION !!

“It’s Really All About The Love Of Playing Music And Most Of All This Latest Incarnate Was Designed To Be Able To Bring The Progressive Thrash Metal To The World.”

DISC REVIEW “WRATH OF THE GODS”

「そう、俺らはあの作品を “ヒッピー・スラッシュ” とか “プログレッシブ・スラッシュ・メタル” と呼んでいたんだ。俺たちは常にあらゆる音楽から影響を受けたリフを取り入れていたし、今でもそうしている。ヘヴィに変換できる素材なら何でもいいのさ! 」
ベイエリアのスラッシュ・シーンで名を馳せた BLIND ILLUSION は、バンドが始まって10年を超えるの活動期間中に、デモなどを除けば、たった1枚のスタジオ・アルバムを制作しただけでした。しかしあの Combat Records からリリースされたアルバム “The Sane Asylum” は、発売から四半世紀以上が経過した現在でもその異端な激音のブレンドでカルトな名盤として語り継がれています。プログ、クラシック・ロック、NWOBHM, サイケをふんだんにまぶした、あの酩酊を誘う重量感を一度耳にすれば決して忘れることはないでしょう。BLIND ILLUSION は、スピードとアグレッションが主流だった当時シーンに、別種のテクニックと多様性、そしてヒッピーの哲学的な味わいを加味し、”美味しすぎる” 闇鍋を作り上げていたのです。
「俺たちは学校で顔を合わせることの多い友人で、3人とも音楽にとても夢中になっていた。Les がギターを習いたいと言ったから、Kirk は俺からレッスンを受けるようにお膳立てしたんだよ。でも俺はベーシストが必要だったから、Les に “ギタリストはどこにでもいる。でもベースを弾けるようになればいつでもバンドを見つけられるぞ!”と言ったんだ。それで彼は BLIND ILLUSION に参加し、当時演奏していた曲から基本的なことを学んでいったんだ」
BLIND ILLUSION の功績はその音楽だけにとどまりません。バンドの首謀者 Mark Biedermann の周りには不思議と異能のアーティストが集まり、その才能を羽ばたかせていきます。類は友を呼ぶということでしょうか。
BLIND ILLUSION が POSSESSED も経由しているギタリスト Larry LaLonde とベースの魔術師 Les Claypool からなる史上最強のオルタナ・ファンク・メタル PRIMUS を生み出したことはつとに有名ですが、まさか Mark が Les にベースへの転向を勧めていたとは…そこにあの Kirk Hammett も絡んでいるのですから言葉を失いますね…あの3人が同じ学校で机を並べて勉強していたのですから。ゆえに当然、EXODUS のデビューにも BLIND ILLUSION のサポートがあったわけです。
「音楽を演奏することへの愛がすべてだよ。何よりもこの最新の俺の化身は、プログレッシブ・スラッシュ・メタルを世界に広めることができるように設計されているんだからね」
デビュー作のリリース後にバンドは解散し、ボーカル/ギターの Mark Biedermann は2010年に酩酊を深めた異なるサウンド、異なるラインナップで復帰しますが、長続きはしませんでした。しかし、Mark のプログレッシブ・スラッシュに対する情熱が消え去ることはありません。2017年に元 HEATHEN のギタリスト Doug Piercy とベーシスト Tom Gears が加入し、4曲入り EP が続き、遂にプログ・スラッシュの伝道作 “Wrath of the Gods” の完成を見ます。ただでさえ、百戦錬磨のスラッシュ戦隊に、元 DEATH ANGEL のドラマー Andy Galeon を加えながら。
「特にベイエリアやアメリカのスラッシュ・シーンで一番心配なのは、真に画期的な新しいバンドがいないことだよ。新しい世代の若いミュージシャンたちは、YouTube のビデオを見たり、既存のバンドと同じようなサウンドを出すのではなく、全く新しいことを実際にやってみる必要がある。GOJIRA, BLIND ILLUSION, SATAN, TOXIK, ANNIHILATOR のようなバンドは皆、他とは違う、未知の世界に踏み出すために懸命に働いているんだからね」
Doug Piercy がそう語る通り、この音は今でも真に画期的で、他とは異なる BLIND ILLUSION のお家芸。30年という時間は、忍耐強く待つには非常に長い時間ですが、それでも “Wrath of the Gods” は間違いなくその価値があります。本作は、場面転換やギアチェンジ、ズバ抜けた個々のパフォーマンス、現代的な洗練を適度に施したビンテージなプロダクションによって、確かに “The Sane Asylam” の真の後継作、そのプライドを宿しています。
このアルバムの素晴らしさは、金切り音を上げるギターソロや突然のリズムチェンジ、独特のしわがれ声というベイエリアの三原則、勝利の方程式を保持しながらがら、スローダウンしてファンクのグルーヴ、サイケのムードで耳を惹く場面が何度もあるところでしょう。やはり、この時代の人たちは YouTube のような “規範” など一切存在しなかっただけあって、自分の色が鮮明。
“Protomolecule’ や “Wrath of the Gods” といった神々しきリフの数々は、破砕的でテクニカルでありながら、非常にキャッチーでエネルギーに満ち、次の展開の予想でリスナーをスピーカーの前に釘付けにするのです。逆に、これで葉っぱキメてないと言われても容易には信じられませんね。
今回弊誌では、Mark Biedermann と Doug Piercy にインタビューを行うことができました。「機会があれば PRIMUS をよく見に行ったものだよ。特に Todd Huth がギタリストだった初期の PRIMUS が大好きでね。それでも、Larry が加入してからも本当に驚かされてばかりさ。透明で流れるようなギターのフレーズをよりヘヴィに仕上げていてね。彼らが新曲を発表するたびに、すぐにチェックしているんだよ」 どうぞ!!

BLIND ILLUSION “WRATH OF THE GODS” : 10/10

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