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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITURGY : 93696】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RAVENNA HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!

“Life Has Been Unbelievably Better Since My Transition. Unfortunately The Politics Of Gender Are Becoming Increasingly Scary In the United States, But It’s Still Much Better To Be Living Out In The Open.”

DISC REVIEW “93696”

「男性から女性に移行してからの生活は信じられないほど良くなっているわ。 残念ながら、アメリカではジェンダーに対する政治的な圧力はますます恐ろしいものになってきているけど、それでも、オープンに生きている方が私はずっといいんだよ」
ブラック・メタルを哲学する革新者、LITURGYのハンター・ハント・ヘンドリクスは現在、ラヴェンナ・ハント・ヘンドリクスへとその名を変えています。
「私は女性よ。ずっとそうだった。様々な拒絶を恐れて明かせなかったの。私は女性として音楽家、神学者、詩人で、生まれるものは全て女性の心から。同時に男性として生まれたことを否定したくもないのよね」
長い間、女性の心を持つ男性として生きてきたラヴェンナにとって、トランスジェンダーの告白は非常に勇気のいるものでした。周りの目や差別、弾圧といった現実のプレッシャーをはねのけて、それでも彼女がカミング・アウトした理由は、自分の人生を、そして世界をより良くしたいから。彼女の理想とする天国であり想像の未来都市”Haelegen”実現のため、ラヴェンナの音楽は、魂は、いつしか抑圧を受ける少数派の祈りとなったブラック・メタルと共に、もう立ち止まることも、変化を恐れることもありません。
「ブラック・メタルはロックという枠組みとその楽器を使ってクラシックを作るものだと考えていたんだ。 みんながそう思っているわけではないけど、私にとってはそこが大きな魅力だから」
21世紀に入ってから、ブラック・メタルはメタルの多様性と寛容さを象徴するようなジャンルへと成長を遂げてきました。DEAFHEAVENの光、ALCESTの自然、SVALBARDの闘志、VIOLET COLDの願い、KRALLICEの異形、ZEAL&ARDORのルーツなど、ブラック・メタルが探求する世界は、新世紀の20年で膨大な広がりと深みを備えることになったのです。
そうしたブラック・メタルの領域においてラヴェンナは、作曲、芸術、哲学を共有する組織LITURGYを設立します。”トランセンデンタル・ブラック・メタル”、”超越的ブラック・メタル”と呼ばれるようになったLITURGYのアートはまさに超越的で、バンドに備わる審美と多様性を純粋に統合。神学、宗教、宇宙的な愛、終末論、性について探求しながら、息を呑むような壮大さで恍惚感を表現していきます。
ラヴェンナはこの場所でブラック・メタルの暗黒から歩みを進め、管楽器、アンサンブル、グリッチ、オペラ、時には日本の雅楽まで統合した唯一無二の音楽性を追求し、変化を恐れない彼女のポジティブな哲学を体現しています。その知性の煌めきと実験性は、”ヘヴィネスの再定義”につながっていきました。つまりラヴェンナは、”重さ”を神聖なもの、物語や哲学への触媒として使用することにしたのです。その方法論として彼女は、メタルと前衛的なクラシック音楽の間のスペース、危険な境界線を常に探っています。
「”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいい」
神の実在について瞑想し、LITURGYのメタル・サイドにフォーカスした”H.A.Q.Q.”と、世界の創造と人類の堕落をクラシック/オペラの音楽言語で表現した”Origin of the Alimonies”。そして、謎の数字を冠した本作”93696″は、その2枚のアルバムのまさにハイブリッドにも思える現行LITURGYの表裏一体。驚くべきことに、ハードコア・パンクの衝動まで帯電した2枚組の巨編は、LITURGYの集大成でありながら、未来をも見つめています。
「バンドの一体感が欲しかったのよ。だから、今回はよりライブに近い音で録りたいと思ったの。もともとこのバンドのバック・グラウンドがパンクだったということもあるんだけど、アルバム自体がこうしたライブ感で作られることが最近非常に少なくなってきているからね」
そうしてラヴェンナによる”ヘヴィネスの再定義”はここに一つの完成を見ます。”93696″には、おそらくこれまでのLITURGYに欠けていた最後のピース、”人間味”、バンドらしさが溢れています。ただ実験を繰り返すだけでは、ただメタルとクラシックをかけあわせるだけではたどり着けない境地がここにはあります。逆に言えば、だからこそラヴェンナは今回、ハードコア・パンクの衝動を必要とし、デジタルからあのスティーヴ・アルビニの手によるアナログの録音に戻したのかもしれません。
例えば、タイトル・トラック”93696″は、LITURGYのトレードマークである複雑かつプログレッシブなリズムとは対極にあって、ダイナミクスの揺らぎや反復の美学で神聖と恍惚を表現。レオ・ディドコフスキーの叩き出す千変万化で獰猛なグルーヴは、ティア・ヴィンセント・クラークの轟音ベースへと感染し、ラヴェンナのメロディズムと雄弁なハーモニーを奏でます。”ポスト・アポカリプス”を紡ぐLITURGYのサウンドは、あるいはもう、ブラック・メタルというよりもISISやCULT OF LUNAの指標する”ポスト・メタル”に近い音像と言えるのかもしれませんね。そしてその一体感は、さながら人の”和”こそが人類の未来であることを示しているようにも思えます。
とはいえ、もちろんこれはLITURGYの作品です。緻密で細部まで作り込まれたニュアンス豊かな楽曲と、想像力豊かなリリックには驚きが満ち溢れています。弦楽器、聖歌隊、フルート、ホルン、ベルを用いて崇高さの高みへと舞い上がる前衛的グリッチ・メタリック・クラシック”Djennaration”を筆頭に、あらゆる楽器、あらゆるジャンルから心に響く美しさを抽出するラヴェンナの才能は健在。そうして彼女は、探求の先にある未知なるものへの寛容さと未来への希望を、自らの作品で祝福してみせたのです。表裏一体から三位一体への大きな進歩。さて、人類はラヴェンナとLITURGYが想望する”天国”へとたどり着くことはできるのでしょうか?
「これは終末的なアルバムよ。そのほとんどは2020年に構築されたものだから、あの年に起こったことすべてがこの作品に影響を与えている。でもね、最終的には希望があるの。最近の世界を見ているとありえないことかもしれないけど…人類の歴史に対するポジティブな未来への憧れがね」

LITURGY H.A.Q.Q. 弊誌インタビュー

LITURGY ORIGIN OF THE ALIMONIES 弊誌インタビュー

“93696”の解説、4000字完全版は DAYMARE RECORDINGS から発売された日本盤のライナー・ノーツをぜひ!

LITURGY “93696” : 10/10

INTERVIEW WITH RAVENNA HENDRIX

Q1: First, in just the past few years we have seen major world-changing events in the form of pandemics and wars. Of course, this new, epic, huge album may have been influenced by the lockdown, but mentally, did those events affect your work?

【RAVENNA】: Yes, the times feel apocalyptic and it is an apocalyptic album. And most of it was constructed during 2020, so everything going on during that year was influencing the project.

Q1まず、ここ数年だけでもパンデミックや戦争など、世界を変えるような大きな出来事がありました。もちろん、今回の壮大で巨大なアルバムも、精神的に、そうした一連の暗い出来事に影響を受けているのでしょうか?

【RAVENNA】: そうだね、今の時代は終末的な感じがするから、これはやっぱり終末的なアルバムになっている。 そして、この作品のほとんどは2020年に構築されたものだから、あの年に起こったことすべてがこのプロジェクトに影響を与えているの。

Q2: You mentioned that you were aware that your previous work, “Origin of the Alimonies,” was an opera in your mind and that you were working on a video production of it. Did you switch that production to “93696” during the lockdown?

【RAVENNA】: I created a video for Origin of the Alimonies during 2020, which we use for live performances but haven’t released widely yet.

Q2: 前回のインタビューであなたは、前作 “Origin of the Alimonies” は、自分の中ではオペラだと認識していて、それを映像作品として制作しているとおっしゃっていましたね。パンデミックの最中に、その制作を “93696” へと切り替えたのでしょうか?

【RAVENNA】: 2020年の間に “Origin of the Alimonies” の映像を制作し、ライブでは使っているんだけど、まだ広く公開はしていないんだ。

Q3: 93696 is a number derived from the religions of Christianity and Thelema, right? Since many Japanese are non-religious, can you tell us why this number is so special?

【RAVENNA】: I’m not completely sure what the meaning of the number is. It just came to me. But it has something to do with the union of creative self-realization with universal compassion.

Q3: “93696” は、キリスト教やテレマといった宗教に由来する数字ですよね?日本人は無宗教の人が多いので、この数字がなぜ特別なのか、教えていただきたいのですが。

【RAVENNA】: “93696”という数字の意味するところは、自分でもまったくわからない。ただ、降りてきただけなのよ。でも、創造的な自己実現と普遍的な慈悲の心に関係しているのはたしかね。

Q4: I understand “Halegen” to be your interpretation of heaven in your ideal future city. Is this “93696” the story of a new world sprouting from the end of the world?

【RAVENNA】: Yes, it’s a yearning for a positive outcome for human history, as unlikely as they may be.

Q4: “Haelegen” とは、あなたの理想の未来都市で、天国だと理解しています。この “93696” は、世界の終焉から理想的な新しい世界が芽生えるという話なのでしょうか?

【RAVENNA】: そうね、最終的には希望があるの。最近の世界を見ているとありえないことかもしれないけど…人類の歴史に対するポジティブな未来への憧れがね。

Q5: What is particularly striking about this album is the increased band-like quality. Of course, you composed all the music, but I can feel a live impulse and a sense of unity as a band more than ever before. I hear that the hardcore-punk influence is stronger than ever. Is that the reason?

【RAVENNA】: Yes, I wanted to make a recording that sounded more like our live performances do. In part because the band’s background has always been punk, but also because it’s becoming so much less common for albums to be made in such a live way.

Q5: 今回のアルバムで特に印象的なのは、バンドらしさが増したことです。もちろん全曲あなたが作曲されているのですが、今まで以上にライブ感やバンドとしての一体感を感じることができます。ハードコア・パンクの影響がこれまで以上に強いのも、それが理由でしょうか?

【RAVENNA】: バンドの一体感が欲しかったのよ。だから、今回はよりライブに近い音で録りたいと思ったの。もともとこのバンドのバック・グラウンドがパンクだったということもあるんだけど、アルバム自体がこうしたライブ感で作られることが最近非常に少なくなってきているからね。

Q6: Black metal continues to expand philosophically, spiritually and musically, and this album seems to embody such a situation, doesn’t it? Did you see this much potential in the black metal you listened to as a child?

【RAVENNA】: Kind of, yes. I’ve always seen black metal as a way to make classical music using rock instrument. Not everyone sees it that way, but that’s a big part of the attraction to me.

Q6: ブラック・メタルは哲学的、精神的、音楽的に広がり続けていますが、このアルバムはそうした状況を体現しているように思えます。あなたは、子供の頃に聴いていたブラック・メタルにこれだけの可能性を感じていたのでしょうか?

【RAVENNA】: ちょっとだけ、そうだね。 ブラック・メタルはロックという枠組みとその楽器を使ってクラシックを作るものだと考えていたんだ。 みんながそう思っているわけではないけど、私にとってはそこが大きな魅力だから。

Q7: “Origin” approaches Liturgy from the classical side, while “H.A.Q.Q.” approaches it from the metal side. In a way, is “93696” on the border between the two, a dangerous but ideal heavy music for you?

【RAVENNA】: Yes, exactly. 93696 is as meticulous a composition as Origin of the Alimonies but it has more of a steady groove like rock music, so the hope is for it to provide everything both genres have to offer.

Q7: “Origin “はクラシック側から、”H.A.Q.Q. “はメタル側から LITURGY のアートにアプローチした作品でした。ある意味、両者の境界線上にある “93696” は、あなたにとって危険でありながら理想的なヘヴィ・ミュージックの形なのでしょうか?

【RAVENNA】: うん、まさにその通りね。”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいいな。

Q8: Finally, have the past two years as Ravenna been more pleasant and happy than ever for you?

【RAVENNA】: Yes, life has been unbelievably better since my transition. Unfortunately the politics of gender are becoming increasingly scary in the United States, but it’s still much better to be living out in the open

Q8: 最後に、ラヴェンナとしてのこの2年間は、あなたにとってこれまで以上に幸せで、満たされたものでしたか?

【RAVENNA】: そうね。ハンターからラヴェンナへ、男性から女性に移行してからの生活は信じられないほど良くなっているわ。 残念ながら、アメリカではジェンダーに対する政治的な圧力はますます恐ろしいものになってきているけど、それでも、オープンに生きている方が私はずっといいんだよ。

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PERIPHERY : PERIPHERY Ⅴ: DJENT IS NOT A GENRE】


COVER STORY : PERIPHERY “PERIPHERY V: DJENT IS NOT A GENRE”

“They’re All Mad That We Named It That, Because We’re Clearly a Djent Band”

DJENT IS NOT A GENRE

ワシントンDCの “Djent” のパイオニアが7枚目のアルバムの名前を決めようとしたとき、出てきた案はすべて次点でした。結局、タイトルは “Periphery V : Djent Is Not a Genre” に落ち着きます。それは、彼らが自らが作る音楽以外では、まったく何も真剣に考えないバンドである証拠でした。
PERIPHERY の創設者である Misha Mansoor は、Mark Holcomb と Jake Bowen という2人のギタリストと一緒に何も気にしていないことを強調します。
「Djent はジャンルではなく、ライフスタイルなんだ!」Misha は苦笑いと共にタイトルがただのジョークであることを匂わせます。「俺はただ、どこかのデータベースにこう書かれているかもしれないと考えると笑ってしまうんだ。”Periphery V: Djent Is Not a Genre” ジャンル Djent ってね」。そうして幸せそうに笑うのです。「名前なんて人生においては小さなことさ」
「だってそうだろ? KARNIVOOL は昔から大好きなバンドだけど、あれはひどい名前だ!」と、Misha は食人を文字った恐ろしい名前の素晴らしいバンドについて話し続けます。Mark もまけずに笑いを誘うようなパンチラインを交換します。「その最たるものを教えてやろうか?KORN だよ!」
「”Djentはジャンルじゃねぇ!” というタイトルを思いつくのに、アルバム制作期間、つまり3年近くかかったと付け加えておくよ」と Jake も負けずに冗談を飛ばします。「あれは、俺たちが唯一 “うげっ!”てならなかったアイデアなんだ」

それも驚くようなことではありません。PERIPHERY の信奉者であれば、バンドにとってユーモアのセンスは必須条件であることはすでにご存じでしょうから。彼らの前作は “Periphery IV: Hail Stan” というタイトルでしたが、これはタイプミスではありません。それ以前にも、”Ow My Feelings”、”Jetpacks Was Yes”、”Froggin’ Bullfish” という笑いを誘う楽曲を書いているのですから。そして、PERIPHERY がいかに真剣にタイトルを考えていないかというのは、彼らが実際には Djent が今ではジャンルだと考えていることで伝わるのです。
「アルバムを “Djent はジャンルじゃねえ!” と呼ぶ理由は、俺たちが愛情を込めてファンを小馬鹿にするのが好きだからなんだ。愛情を込めて!だよ!」と Mark は主張します。Jake は笑って付け加えます。「俺たちは明らかに Djent バンドだから、みんなそう名付けたことに怒ってるんだ (笑) まあ、Djent については、いろいろな意見があるよね。俺たちの頭の中ではプログレッシブ・メタル・バンドとしてスタートしたのに、そうしたタグに入れられたんだ。俺には、それが奇妙に聞こえたんだよな。そこには、俺が期待していたような美的感覚がなかったというか。でも、何年もかけて、俺はそれを気にしないようになった。グランジを見ればわかるよ。グランジというのは、ジャンル名としては明らかに信じられないほど愚かな名前だと思うけど、それでも、グランジと聞くと、NIRVANA や ALICE IN CHAINS, PEARL JAM, SOUNDGARDEN など、世界的で歴史を変えるようなバンドが思い浮かぶからね」
そもそも、Djent という言葉の誕生に Misha は深く関わっています。
「MESHUGGAH のフォーラムで彼らのサウンドが “Djenty” って形容されてた。だから俺の曲を “Djentyな曲” って紹介してたら、それがジャンルだと思われてしまった。ジョークだったのにね!」

では…実際に “Djent” とは何でしょうか? Wikipedia には “オフビートと複雑なリズムパターンの使用を特徴とするプログレッシブ・メタルのサブジャンル” と書かれていますが、実際にはそれ以上の何かがあります。Djent は2000年代半ばに始まったムーブメントで、MESHUGGAH が使用するポリリズムの多弦低音弦のピッキングに魅了されたギタリストたちが、それを利用したのが始まりです。パーム・ミュートした低音弦が発する音から、このジャンルは “Djent” という擬音で呼ばれるようになり、Misha Mansoor, TesseracTの Acle Kahney, SKYHARBOR の Keshav Dhar などがそのパイオニアとなりました。しかし、それまでのメタルのムーブメントとは異なり、Djent は地理的にも文化的にも固定されておらず、ギター・オタクが世界中の寝室からフォーラムや MySpace, 長じて Bandcamp にリフや楽曲を投稿する良い意味でのカオスが生まれたのです。
Misha は、「ちょうど物事の転換期で、面白い時代だった」と振り返ります。「俺は、”スタジオはもう必要ない” という最初の波に乗った一人なんだ。レコード会社から出る予算は減り、レコードの売り上げはもはや大きな要素ではなく、レコード契約の性質や予算がすべて変わりつつあった。レーベルの若い人たちはみんな “PERIPHERY と契約しろ” って感じだったけど、もう少し年配の、インターネットや MP3 をただの流行と捉えているような上層部の人たちは、俺たちのことをよく理解していなかったんだ。彼らの言葉も、俺たちに出したオファーも、そのことをはっきりと示していたよ。実際、たくさんのオファーがあったけど、どれもひどいものだった。3年くらいは、レコード契約を断ってばかりいたよ」
実際、Misha は大きく変わった今の音楽産業にも前向きです。
「俺は他のメタル・バンドとは考え方が違う。彼らはバンドがお金を産まなくなった事実に対し前向きな変化が勝手に起こる事を期待する。でも俺はメンバーにこのバンドでは稼げないと断言している。そして機材の知識やプロデュース業で収入を確保したんだ。今もしバンドをやっているなら様々な方法で収入を確保しないと生き残れない。でも、正しいアプローチさえすれば、音楽産業には間違いなくまだチャンスはあるよ!」

自らのレーベルも立ち上げました。3DOT Recordings です。
「自分たちのレーベルを作りたいとずっと思っていたんだ。それはいつも冗談みたいなものだった。アルバムを作るたびに、”自分たちのレーベルから出せばいいじゃないか” みたいな感じで。これは俺たち全員の夢がようやく実現したようなもので、実現するとは思ってもみなかったけれど、実現したのだから、これ以上の喜びはない。素晴らしいことさ」
しかし Jake は、決して 3DOT と PERIPHERY で億万長者になりたいわけではないと話します。
「もちろん、何らかの金銭的な補償があることを望んでいるからこそ、これだけの労力を費やしている。でも、現実的に考えて、この仕事で億万長者になることはないだろうとも理解しているよ。俺も音楽試聴には主に Spotify を使っている。これは、今のところ、アーティストにとってタブーな答えだと思うけど。でも、2015年に Spotify を本格的に利用するようになってから、俺の音楽に対する視野が完全に広がったんだ。朝起きると、聴いたことのない曲がたくさん入った新しいプレイリストがあり、それを全部保存している。膨大なプレイリストができあがるからね。そのおかげで、音楽、特にエレクトロニック・ミュージックへの愛情を探求することができたんだ。
同時に俺は、Spotify に登録したアーティストであり、そこから得られる報酬を見なければならないけど、残念で不合理な額だ。問題は、彼らのビジネスモデルがよくわからないことなんだ。もちろん、地球上すべてのアーティストにライセンスを与える権利を支払うには、それなりの費用がかかる。だから、彼らのジレンマはわかるけど、コンテンツにはお金を払うべきだろ? 俺たちはコンテンツ・クリエイターで、彼らは俺たちのコンテンツをライセンスし、サブスクリプションを通じてお金を稼いでいるわけだけど、そのパワーバランスは少しずれているような気がするね。
でも、YouTube がある。Spotify で見つからない曲や、ゲームのサウンドトラックなど、Spotify にはない曲を聴きたいとき、YouTube はとても便利だ。俺は、YouTube にお金を払って、プレミアム…サービスを利用するのが好きなんだ」

PERIPHERY は、2010年にデビュー・アルバムをリリースした Sumerian から、Misha によれと “攻撃的な” レコード契約を結んでもらったおかげで、DIY と寝室を離れることになりました。しかし、皮肉なことに、”Djent Is Not a Genre” は依然として、完全無欠に “Djenty” なアルバムです。オープニングの “Wildfire” は、ドラムロールを合図に、ダウンチューンのチャグにハーモニクスの嘶きが不規則に割り込む、決して穏やかではない、Djent な幕開け。”Atropos”, “Dying Star”, “Zagreus”, Everything Is Fine” も同様に、指板の最も窮屈な場所に夢中になっているようにも思えます。
しかし、PERIPHERY が常に目指している、真のプログレッシブ・ミュージックを示すタッチもここには豊富に存在しています。フロントマンの Spencer Sotelo は、咆哮と歌唱の切り替えで対比の美学を生み出し、両手を広げて “ファック・イット!” と宣言して、シンセウェーブと脈打つ EDM ビートを取り入れます。そうして、”Djent Is Not a Genre” の最後を飾る “Dracul Gras” と “Thanks Nobuo” のデュオロジーでは、プログ、Djent、ポップ、ポストロックのカラフルな饗宴が24分にわたって繰り広げられるのです。
同時に PERIPHERY は自らの栄光の軌跡をもここに織り交ぜています。例えば “Wildfire” は、以前 “The Event” で採用されたメロディを再現したもので、2部構成のロック・オペラ、2015年の “Juggernaut” のインストゥルメンタル・セグエの再来です。
「もともと “Periphery V” は “Juggernaut” の後継作品にしたかったんだけど、それはすぐに廃案になったんだ」 と Mark は明かします。「その後、”関連する部分のいくつかを残すか” という話し合いが行われたんだ”。俺が尊敬するバンド、例えば Devin Townsend のようなミュージシャンは、何の根拠もなく突然18年前に発表した曲に関連させたりする。それって結局、彼の膨大なバック・カタログから感じられる自由さだよね。ミュージシャンとしていつかたどり着きたい、実現不可能な場所のように思えたんだ」

なぜ、”Juggernaut Part 2″ のアイデアは破棄されたのでしょう?
「コンセプト・レコードを作るのは難しいから。レコードの中で有機的に流れるように曲を書くだけでなく、それらを物語に適合させなければならないんだよ。歌詞がすべて一致し、ストーリーを語り、その下に音楽が存在し、そこでも同じようなことをしなければならない。それは長く、拷問のようなプロセスだ」
このコンセプトアルバムを巡る混乱は、”Djent Is Not a Genre” のライティング・プロセスにおける、創造的に息苦しい状況を象徴していたようです。バンド自身によれば、それが彼らをほとんど “壊しかけた” とまで言います。パンデミックが起きたとき、メンバーはリモートで作曲をしようとしましたが、その場でのフィードバックがなく、何も進展しませんでした。Misha が説明します。
「多くのアイデアはあったのだけど、Spencer がそれを気に入ったかどうか、実際に曲としてアレンジできるかどうかを確認する必要があったんだ。それ自体には何の意味もない、曲のセクションばかりがたくさんあったんだよ。パンデミックが核心的な問題であったことは間違いないだろうな。で、結局、重要なのは、批評家やファンの承認ではなく、自分たちの気持ちだとわかった。”Hail Stan” はとても簡単にできたし、あのレコードは俺が本当に誇りに思うものだった。だから、ファンや批評家が “彼らはタッチを失った” と言っても、俺は気にしなかった。自分が誇りに思っていれば無敵になれるんだよ。もし君が何かを信じているなら、もし君が自分の生み出したものを信じているなら、それはきっと君を無敵にしてくれる」
Zoom によるコラボレーションもうまくいかず、その結果、PERIPHERY は孤立した状態で、個々に自分のアルバムを作曲するようになりました。Jake は “The Daily Sun” でエレクトロニカに手を出し、Mark はエクストリーム・メタル・バンド HAUNTED SHORES を復活させ、Misha は伝説的なソロ・プロジェクト Bulb を復活させ、Spencer とドラマーの Matt Halpern はエモプログのチームアップ KING MOTHERSHIP を立ち上げました。しかし、こうした動きも彼らにとっては不利に働きました。曲作りのために、2020年10月にバンドが直接再集結するまでに、PERIPHERY はすでに “燃え尽き症候群” に陥っていたのです。その結果、”Djent Is Not a Genre” は制作に3年近くを要することになります。
Mark は “諸刃の剣だった” と当時を振り返ります。
「このアルバムに長い時間をかけていることは分かっていたし、ファンも不安に思っていた。でも、レコードを作り始めた時を考えると、これが唯一の方法だったと思うんだ。もし、何かの期限に間に合わせるために、急いでレコードを出さなければならなかったら、それは不可能だっただろうね」

そうした停滞を解決したのが、実はビデオ・ゲームでした。ご承知の通り、PERIPHERY はゲーマーのバンドです。ツアー中も、スタジオでも、家でも、ノンストップのガチゲーマー。Mark が解説します。
「2000年代半ばに出会ったとき、PERIPHERY は音楽とファイナル・ファンタジーの2つで結ばれていたんだ。俺は声優(Disco Elysium、Hello Puppets: Midnight Show)に、Misha は作曲(Deus Ex: Mankind Divided、Halo 2 Anniversary)に携わり、ゲームへの親しみはますます強くなっている。そして、ゲームが “Djent Is Not A Genre” の音楽に直接インスピレーションを与えたんだ。いくつかそのタイトルをあげてみよう。
まずは “Hades”。今回のセッションの間、Spencer, Misha, そして俺は、完全にこのゲームに夢中になっていた。仕事の休憩時間には、みんなで Switch に向かって、会話もなくただ黙々とランを繰り返していたくらいでね。この10年で一番好きなゲームのひとつだよ。ゲームプレイのループに酔いしれ、死んだらすぐに、次のランを始めたくなる。”Zagreus” という曲は、このゲームの主人公の名前から取ったもので、最後まで聴いた人なら、この曲の最後の4つのコードが、死んだときに流れるモチーフのなごりであることがわかると思う。死にゲーだから、すぐに脳に焼き付いてしまうんだよな。このゲームはダレン・コルブが全曲を作曲しており、サウンドトラックも素晴らしいんだよ。
次は “Returnal”。Misha が Jake と俺を引き込んだんだけど、どっぷりハマったよ。このゲームもまた、ゲームプレイのループが非常に楽しいローグライク・ゲームで、近年登場したゲームの中で最もフィーリングが良いものの1つだろう。サウンドデザインも素晴らしく、Blue Öyster Cultの “Don’t Fear the Reaper” が繰り返しテーマとしてゲームに使われているのが実に巧い。”Atropos” は、ゲームの舞台となる惑星にちなんで命名されたんだ。
次は、ファイナル・ファンタジー・シリーズ。あまり説明の必要はないだろう。植松伸夫は、このシリーズの主要な作曲家で、俺たちが最も影響を受けた音楽家の一人だからね。初期の PERIPHERY, HAUNTED SHORES, 古い Bulb のデモなど、俺たちの傘下にあるすべての作品に彼の足跡が残っている。最後のトラックは “Thanks Nobuo” というタイトルで、要するに彼への感謝状なんだ。この曲には、FF7のテーマが使われているよ。わかるかな?
そしてもちろん、昨年、俺の人生は Elden Ring に飲み込まれた。あのアート・スタイルがあったからこそ、自分たちの音楽をもっとダークなところに持っていきたいと思ったし、バンドとしてやることすべてが、1/10000でもあのゲームの壮大さを再現できればいいと思っていたんだよな。ラスボス戦になると、メインメニューのテーマがオーケストラで再現されるのも、特にやり込んでいる人なら満足感があったよな。PERIPHERY が過去の作品から様々なテーマやメロディーを引用するのも、その気持ちのほんの一部をリスナーと共有したいからなんだ。
最後は、ブラッドボーン、ダークソウル1~3、デモンズソウル。フロムゲーは俺がこれまでで最も好きな作品群のひとつで、俺が関わるすべての音楽に影響を与えている。HAUNTED SHORES の前作 “Void” では、アルバムアートを “Bloodborne” から切り取ったようなものにしたかったし、音楽もそのゲームと同じくらい敵意を感じるものにすることを目指した。Spencer もこのゲームには深くハマっていて、セッション中、特に作曲の初期は間違いなく2人ともインスパイアされたよ」

実際、”Periphery Ⅱ”の “Muramasa” と “Masamunue” はファイナル・ファンタジーに関連する楽曲でしたし、Misha は “FF7″ のリメイクに真剣に関わりたがっていました。
「植松伸夫は驚異的な才能だよ。彼のメロディーのセンスやテクスチャーの使い方は、俺にとって間違いなく大きな参考になっている。だから一曲でも関わりたいよな…」
苦労したセッションの最終結果は、結局、自分たちの好きなアルバムに落ち着きました。ベタな名前はともかく、”Djent Is Not a Genre” は、バンドが今でも最も折衷的で先鋭的であることを捉えています。そうして、今となってはジャンルのひとつに違いない Djent は、シンセやフック、サックス・ソロにたっぷりのユーモアもあるパイオニアの作品によってやはり牽引されているのです。Spencer はかつてこんな言葉を残しています。
「最高の芸術作品を作りながらユーモアも忘れずいたいね。音楽に個性を反映させないでシリアス一辺倒な奴らは信用できないから。一人の人間でいればいい。どうせ今、メタルで金は稼げないんだから、好きという気持ちだけで音楽を作ろうじゃないか」
ただし、PERIPHERY にとってここは決して全てでもなく、終わりでもありません。
「最終的に、自分たちが満足できなければ、アルバムはリリースしないよ。でも、そうすることで、自分たちが心から誇れるアルバムが完成するんだ。それが、唯一受け入れられる最終目標だった。誇れるアルバムなら、商業的にはどんなものでも手に入れることができるんだ。他の人たちのことは言いたくないけど……俺たちのアルバムを売り尽くしたいんだ。良いと思うなら金をくれ!(笑)」


参考文献:GUITAR.com:“We like to lovingly take the piss out of our fans!” Periphery on why Djent is, actually, a genre

METAL INJECTION:PERIPHERY Names The Video Games They Played While Recording Their New Album

LIVE METAL:INTERVIEW: Jake Bowen of PERIPHERY

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ICE AGE : WAVES OF LOSS AND POWER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ICE AGE !!

“I Vividly Remember Kevin Moore Playing Some Of The Songs And Parts That Would End Up On “Images And Words” For Me On The Piano In His Living Room.”

DISC REVIEW “WAVES OF LOSS AND POWER”

「僕たちの音楽が、若い人たちが流行に逆らい、長い曲、挑戦的な歌詞など、こうした体験に没頭するきっかけになればと願っているんだよ。だって、プログレッシブの “巨人” の中には、避けられない時間の経過のために消えてしまった人もいるかもしれないけど、まだ健在なバンドもたくさんあって、プログレッシブ・ミュージックは今こそ、主流で定型的なポップスに代わる選択肢を提供していると思うからね」
インスタントでファストな文化が支配する現代において、プログレッシブ・ミュージックの手間暇や長さ、複雑さは明らかに異端であり逆風です。しかし、だからこそプログレッシブ・ミュージックは今必要なのだと、ロングアイランドのカルト・ヒーローは力説します。Z世代だって全員が全員、時代の潮流やトレンドに馴染めるわけじゃない。僕たちが “選択肢” を提供するのだと。
「DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。 僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ」
ICE AGE は1999年に “The Great Divide” で鮮烈なデビューを飾ります。攻撃的なプログ・メタルの複雑性だけでなく、Josh Pincus のゴージャスなボーカルとカラフルな鍵盤による極上のメロディを兼ね備えた彼らは、DREAM THEATER の後継者に最も近い存在だったのかもしれません。
DREAM THEATER については、Kevin Moore 以前と以後がよく語られるトピックですが、ICE AGE は明らかに Kevin Moore 以前の音楽性を受け継いでいました。実際、Kevin と旧知の仲である Josh は、Kevin のようにメロディはもちろん、奇数拍子のダンスに、テクニカルやメカニカルまでもすべて楽曲の “イメージと言葉” へと奉じて、プログレッシブ・メタルの新たな礎を築き上げました。
「僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ」
うれしいことに、22年という月日が流れたとは思えないような不変の哲学で彼らは帰ってきました。DREAM THEATER, RUSH, GENESIS, QUEENSRYCHE, KANSAS, STYX といったバンドが煮込まれたプログ・メタルのシチューは、シェフの巧みな味付けによって紛れもなく ICE AGE 以外の何ものでもない美味なる味わいを響かせています。
そして実際、このアルバムにはバンドが残した2枚のアルバム、その続編の意味も込められています。”Perpetual Child”, “To Say Goodbye” はプログ・メタルのファンにとって忘れられないエピックで、その続きを2023年に聴くことができることにまず驚きと感謝を捧げずにはいられません。そしてその “伝承” こそがアルバムのクライマックス。
プログ・メタルの同業者とは異なり、ここに派手さのためのシュレッドはなく、常に楽曲のイメージとアトモスフィアのためにテクニカル・パズルのピースは存在しています。異様なまでに一体化した楽器隊はその証明。彼らは、ムード、テンポ、楽器編成を変化させながら、本物の叙事詩を構築する方法を知っているのです。刻々と変化を続け、好奇心を誘う旋律と戦慄の饗宴は、長尺でありながら一切の切り取りを許さないがゆえに現代への完璧なアンチテーゼであり、もっと言えば、マグナ・カルタに “潰された” SHADOW GALLERY や MAGELLAN, DALI’S DILEMMA の墓標まで背負った魂のルフランなのでしょう。
今回弊誌では、ボーカル/キーボードのJosh、ベースの Doug Odell, ドラムの Hal Aponte にインタビューを行うことができました。「このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。 君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ」どうぞ!!

ICE AGE “WAVES OF LOSS AND POWER” : 10/10

INTERVIEW WITH ICE AGE

Q1: Can you start by telling us why you have decided to revive the band now after 22 years?

【HAL】: Thanks! We’re psyched to be back!! The short story is that we had spoken about playing together again for years. We never lost touch as we are brothers, in and out of the band, so there was always some sort of communication or contact between all of us. I had a barbecue at my house a few years back and decided it would be a great idea to have everyone there, maybe even jam a little bit if everyone felt up to it, with no pressure of any kind put on any of us. The jam session went so extremely well that we had no choice but to see this whole opportunity through; we started writing new material that ended up on “Waves of Loss and Power” right on the spot that first time we jammed. After that we did some studio rehearsals and it just escalated from there. Again, it took a few years – it did not come together overnight. We didn’t allow ourselves to put time restraints or pressures of any kind on the process, so it was really done at our own, attainable pace. As far as the right timing goes, it was just a matter of everyone’s schedules being aligned. In 20+ years you would expect everyone’s lives to have changed at least a little bit lol, especially with new challenges and responsibilities, right? From living in different states, marriages, family lives, the pandemic, etc … So it was just a matter of getting the most out of our own individual windows of available time. We did the best that we could while still maintaining our day to day normality. We also capitalized on all of the technological resources that were readily available to us. We learned a lot and definitely grew as a band. We were also able to make the proper adjustments along the way and we got closer as brothers.

【JOSH】: Also, during those many years we weren’t playing together, the urge and need to be creative never went away. Any artist will tell you that no matter how much time you may spend away from you craft, it’s never far from your mind and your heart. I think we all knew in the back of our minds that we’d eventually get back together and write/record. Part of the beauty of being able to do this now is the fact that life experiences have seasoned us all so much, and our individual musical tastes have changed somewhat; that maturation process finds its way into the music and lyrics, and it’s very clear that the finished pieces are products of that time apart, but also of the incredible chemistry we have as musicians and people; in that sense, it’s like we never stopped playing together.

Q1: まず、今、22年ぶりにバンドを復活させようと思ったのはなぜだったんですか?

【HAL】: ありがとう!戻ってこられて感無量だよ! 簡単に説明すると、僕たちはもう何年も前からまた一緒に演奏しようと話していたんだ。僕たちはバンド内外において兄弟のようなものだから、常に何かしらのコミュニケーションやコンタクトがあって、音信不通になることはなかったからね。
数年前に僕の家でバーベキューをしたとき、みんなを集めて、プレッシャーをかけずにその気になれば少しジャムるのもいいんじゃないかと思ったんだ。そのジャムセッションは非常にうまくいったから、この機会を逃すわけにはいかず、最初にジャムったその場で “Waves of Loss and Power” につながる新曲を書き始めたのさ。その後、スタジオでリハーサルを行い、そこからどんどん活動はエスカレートしていった。もちろん、一夜にして完成したわけではなく、数年の歳月を要したけどね。
時間的な制約やプレッシャーは一切かけなかったから、自分たちのペースで進めていくことができたんだ。まあタイミングとしては、全員のスケジュールが一致したことかな。20年以上経てば、皆の生活も多少なりとも変化しているはずでね。特に、新たな挑戦や責任などで。だから、僕たち一人ひとりが使える時間を最大限に活用することが重要だった。僕たちは、日々の生活を正常に保ちながら、このバンドでできる限りのことをしていきたかったんだ。
すぐに利用できる技術的なリソースはすべて活用したよ。僕たちは多くを学び、バンドとして間違いなく成長を遂げた。また、その過程で適切な話し合いを行うことができ、兄弟としてより親密になったんだ。

【JOSH】: それに、一緒に演奏していなかった長い年月の間も、創造的でありたいという衝動と欲求は決して消えなかったからね。アーティストなら誰でも言うだろう…どんなに長く創作活動から遠ざかっても、創造性が頭や心から離れることはない…と。僕たちは皆、心の奥底で、いずれは再び集まって作曲やレコーディングをすることになるだろうと思っていたんだよ。
今また、こうして活動する中でより美しいことは、人生経験が僕たちをさらに大きく味付けし、それぞれの音楽的嗜好が多少変化しているという事実だろうな。その成熟の過程が楽曲や歌詞に反映され、完成した作品は、離れていた時間の産物であると同時に、ミュージシャンとして、人間として、素晴らしい化学反応を起こしていることがよくわかるからね。

Q2: I mean, The prog world has changed in your absence. Many of the prog giants are old and have passed away. Meanwhile, the world is dominated by the instant culture of social networking and clippings, and few young people will bother to take the time and trouble to pursue a grand and complex prog. What was it that drove you guys to the prog in such a situation?

【JOSH】: The short answer is that that’s generally the style of music we love. We’re not interested in musical trends or fads; we do this to feed our need to be creative and to offer original, memorable, thoughtful music and lyrics, and the “progressive” genre gives us the best opportunity to express ourselves in that way. We hope that our music will encourage some younger people to buck the trends and immerse themselves in this kind of experience – longer songs, challenging lyrics, etc…While some of the progressive “giants” may have gone away because of the inevitable passage of time, there are still plenty that are alive and well, and progressive music still offers a much-needed alternative to mainstream, formulaic pop.

【DOUG】: From my perspective I think there were two main intentions that were in the ether without us actually thinking or talking about it. First of all there was unfinished business after LIBERATION in that the band had – and still has more to say creatively, in the authentic way that only Ice Age can. The second piece of that is that we enjoy playing together and we started down this path with the sole purpose of making ourselves happy by writing new music together. We didn’t have any business, cultural or technological pressures to contend with because this was a selfish pursuit, coming from the purest artistic place possible. Only as we became serious about this being a new era for the band did we start to reestablish our presence seriously online. Hal (drummer) has been running a Facebook page for years and that’s been one thread of connection that was very important, where fans would share their love of the band and wishes for something new. Now, we are anywhere and everywhere on social media platforms, sharing new content.

Q2: プログの巨人たちの多くは高齢となり、すでにこの世を去った人も少なくありません。一方で、現代ではSNSや切り抜きなどのインスタント文化に支配され、わざわざ時間と手間をかけて壮大で複雑なプログを追求する若者は少なくなっています。つまり、そんな中で、あなたたちが今またプログに駆り立てられ、復活した理由が知りたいんですよ。

【JOSH】: 簡単に言うと、僕たちがこのスタイルの音楽を愛しているから。 僕たちは音楽のトレンドや流行に興味があるわけではないからね。創造的でありたいという欲求を満たすために、オリジナルで、記憶に残る、思慮深い音楽と歌詞を提供するためにこの仕事をしているんだよ。
でもね、同時に、僕たちの音楽が、若い人たちが流行に逆らい、長い曲、挑戦的な歌詞など、こうした体験に没頭するきっかけになればと願っているんだよ。だって、プログレッシブの “巨人” の中には、避けられない時間の経過のために消えてしまった人もいるかもしれないけど、まだ健在なバンドもたくさんあって、プログレッシブ・ミュージックは今こそ、主流で定型的なポップスに代わる選択肢を提供していると思うからね。

【DOUG】: 僕の観点では、実際に考えたり話したりしたわけじゃないけど、そこには2つの主要な意図があったと思うんだ。
まず第一に、 “Liberation” の後にやり残したことがあったから。そこには、ICE AGE だけができる本物の方法で、クリエイティブにもっと言いたいことがあったし、今もある。もうひとつは、僕らが一緒に演奏することを楽しんでいて、一緒に新しい音楽を作ることで自分たちを幸せにすることだけを目的にこの道を歩み始めることができたから。 ビジネスや文化、技術的なプレッシャーは一切なく、純粋に芸術的なものを追求するためにね。
バンドにとって新しい時代であると真剣に考えるようになってから、僕たちはオンラインで真剣に存在感を示し始めたんだ。ドラマーの Hal は何年も前から ICE AGE のフェイスブック・ページを運営していて、ファンがバンドへの愛や新作への願いを共有する、とても重要なつながりの糸となっていたんだよ。 今は、ソーシャルメディアのプラットフォームで、どこでも、新しいコンテンツを共有しているよ。

Q3: On the other hand, the last 20 years have seen the djent movement, originated by Meshuggah, gain momentum. What did you think of that polyrhythmic and bass approach?

【JOSH】: Ahh, yes, “math metal” lol. I think there’s always been an element of that in progressive rock and metal; that’s just the nature of the beast. This kind of music always explores odd time signatures and challenging, technical playing. That’s how a lot of musicians in this genre play, and that’s what turns the audience on. That said, as a singer, I was never drawn to that style of vocals; singing to me is a craft and the vocal chords are an instrument like any other, that require care and practice to excel. We’re all fans of melody, and we’re much more attracted to the musical side of things as opposed to the pounding rhythms and growling vocal genre.

【HAL】: I think Meshuggah are great ! They are absolute masters at what they do and they have truly raised the bar. Musically and stylistically things can become monotonous and boring quite quickly for any artist. For the composer’s as well as the listener’s sake it’s great to be able to think outside of the box. When you are capable of achieving something like this (the djent movement) then you have just uncovered so many new avenues of exploration and sound. As for a polyrhythmic approach I love the idea of maximizing a sections potential rhythmically. Isn’t that where it all stems from – the root of it all? You have your essential pulse that you can branch out from. It pretty much just depends on how many different directions you would like for it to flow in. The sense of freedom is also present and it grants you complete control of an uncharted journey.

Q3: 一方で、あなたたちがシーンにいなかったこの20年で、プログ世界には MESHUGGAH を始祖とする、低音とポリリズムの饗宴 Djent ムーブメントが起こっていましたね?

【JOSH】: ああ、そうだね! “数学メタル” だ(笑)。 プログレッシブ・ロックやメタルには常に数学の要素があり、それはまさにこうした音楽につきものなのだと思う。この種の音楽は常に奇妙な拍子記号と挑戦的でテクニカルな演奏を探求するからね。このジャンルの多くのミュージシャンがそうやって演奏し、それが観客を興奮させてきたんだ。
まあだけど、シンガーとして僕はああしたスタイルにハマったことはない。僕にとって歌は技術で、声帯は他の楽器と同じで、優れたパフォーマンスを発揮するためにはケアと練習が必要なんだ。 僕たちは皆、メロディーのファンで、叩きつけるようなリズムやうなり声のボーカルというジャンルとは対照的に、もっと音楽的な側面に魅力を感じているからね。

【HAL】: でも MESHUGGAH は最高だと思う。彼らは自分たちがやっていることの絶対的なマスターであり、本当にレベルを上げ続けている。どんなアーティストでも、音楽やスタイルはすぐに単調で退屈なものになってしまいがちなのにね。作曲家にとっても、リスナーにとっても、既成概念にとらわれない発想ができることは素晴らしいことだよ。Djent ムーブメントが起こったことで、新しい探求やサウンドの道をたくさん発見することができた人も多いだろう。
ポリリズムのアプローチについては、セクションのポテンシャルをリズム的に最大化するというアイデアが気に入っている。すべての根源はそこにあるのではないだろうか?本質的なパルスがあって、そこから枝分かれしていくことができるというかね。それをどれだけいろいろな方向に流せるかが重要なんだ。そこには自由な感覚もあり、未知なる旅路を完全にコントロールすることができるだろう。

Q4: So let’s talk a little about the past. I first discovered you in 1999 with the release of “The Great Divide,” and I have been listening to your music for the past 25 years. It’s a really great album! At the time, you were often described as the successor to Dream Theater. How do you feel about the current DREAM THEATER?

【JOSH】: Thanks for your kind words and your support through the decades – yes, The great Divide album was (and still is) very well regarded. I have a personal connection to Dream Theater because I both took lessons from and taught lessons at the same music store in Long Island as Kevin Moore (original member and keyboardist of Dream Theater); I vividly remember him playing some of the songs and parts that would end up on “Images and Words” for me on the piano in his living room. It’s no secret that many progressive bands, including us, were strongly influenced by “When Dream and Day Unite” – I remember attending the album release party for that album and hearing on the PA – I can literally say my musical tastes and aspirations changed that night. It was a revelation. Partly because of the personal connection and the fact that I’m a huge fan of Kevin’s melodic style and lyrics, I will always be partial to the early DT material; I also loved Derek Sherinian’s contribution. Jordan Rudess is an amazing player technically; no one can match him in that regard; they really are the absolute best from a pure technique standpoint.

【DOUG】: Dream Theater as one of only two progressive metal bands (the other being Porcupine Tree) to reach the level of being on/staying on a major record label (with that level of support and exposure behind them) truly paved the way for many other bands like Ice Age to come after them. It’s very admirable that Dream Theater are still out there, being true to what they do. They have been nominated three times for a Grammy award and actually won in 2022. Speaking very subjectively to answer your question, I personally did not stay on board as a fan after the exits of Kevin Moore (keyboards) and Mike Portnoy (drums) because the material that I connect with the most passionately is on those first three albums.

Q4: では少し昔の話をしましょうか。私が ICE AGE を知ったのは1999年の傑作デビュー “The Great Divide” でした。あれから25年、ずっと聴き続けていますよ。あの頃、あなたたちは DREAM THEATER の後継者などとも言われていましたが…

【JOSH】: そうだね、”The Great Divide” は当時も、そして今もとても高く評価されているよね。僕は Kevin Moore(DREAM THEATER のオリジナル・メンバーでキーボーディスト)と同じロングアイランドの楽器店でレッスンを受け、同時に教えていたから、DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。
僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ。
個人的なつながりや、Kevin のメロディックなスタイルと歌詞の大ファンであることもあって、僕はずっと初期の DREAM THEATER の楽曲を好んで聴き続けている。とはいえ、Jordan Rudess は技術的に素晴らしいプレイヤーだ。この点で彼に匹敵する人はいないね。だから純粋なテクニックの観点からみれば、今の彼らは本当に絶対的なベストだよ。

【DOUG】: DREAM THEATER は、メジャー・レコード・レーベルに所属し、そのレーベルに留まるというレベルに達したたった2つのプログレッシブ・メタル・バンド(もう1つは PORCUPINE TREE)の1つとして、そのレベルのサポートと露出を背景に、僕らのような後に来る他の多くのバンドへの道を本当に切り拓いたんだ。
DREAM THEATER がまだここにいて、自分たちのやることに忠実であることは、とても立派なこと。 彼らはグラミー賞に3回ノミネートされ、2022年には実際に受賞しているからね。
ただ、非常に主観的な話をすると、僕自身は Kevin Moore(キーボード)と Mike Portony(ドラムス)の脱退後、ファンとして残ることはなかったんだ。なぜなら、僕が最も情熱的につながっていたマテリアルは、最初の3枚のアルバムにあるからだ。

Q5: Back then, you guys belonged to Magna Carta. There were many great bands on that label, such as Cairo, Megellan, Shadow Gallery, and Dali’s Dilemma, but in the end none of them were commercially successful. What do you think was the reason?

【JOSH】: I agree – there were so many great bands on Magna Carta; I just think it was a function of them not having the budget/desire to really develop them in a proper way. Back in the day, record labels would nurture (and fund) a band creatively; sadly, I think part of the issue there was the fact that they were capitalizing on the popularity of a few flagship prog bands at the time, and were really focused more on total profit than promoting their artists. I think this is the main reason we (and some of the other bands) became disillusioned when we realized our aspirations were not in line with the label’s.

【DOUG】: I know that I reached out to them (the record company) and tried to get some support for us to get on bills for local shows with bands like Fates Warning and Symphony X – and there was absolutely zero assistance from the label.

Q5: あの頃、あなたたちは Magna Carta に所属していました。あのレーベルには、他にも CAIRO, MAGELLAN, SHADOW GALLERY, DALI’S DILEMMA など素晴らしいバンドが多く所属していましたが、結局、商業的な成功を収めたバンドはいませんでした…

【JOSH】: Magna Carta には素晴らしいバンドがたくさんいたのに、彼らをきちんと育てる予算や意欲がなかったということだと思う。 昔はレコード会社がバンドをクリエイティブに育てる(資金を提供する)ものだったけど、悲しいことに Magna Carta は、当時の代表的なプログ・バンドの人気に便乗し、アーティストのプロモーションよりも総利益を重視していた。それが問題の一因だったと思っているんだ。そこが、僕たち(と他のバンド)の願望がレーベルの願望と一致していなくて、幻滅した主な理由だと思う。

【DOUG】: 僕はレーベルに連絡を取り、FATES WARNING や SYMPHONY X のようなバンドと一緒に地元のライブに参加できるようなサポートを得ようとしたんだけど、レーベルからの援助はまったくなかったんだ。

Q6: Still, “Waves of Loss and Power” is a great comeback! You seem to be focusing more on melody than before. Would you agree?

【DOUG】: I personally think that melody has always been a big part of the Ice Age sound, especially with a big focus that evolved in that respect with LIBERATION. There are so many musical and vocal hooks at every turn and that’s one of the things that I think sets Ice Age apart from prog bands that cram impressive playing into song structures for the sake of fitting into an expected way of approaching the style of music. This new album is the next logical progression for us, especially when considering the extent of vocal harmonies Josh (singer/keyboards) added, which goes beyond the first two albums from a production standpoint.

【JOSH】: Thanks so much!! We’re very proud of it. I agree with Doug – the melodic core was always there – we always thought what differentiated us was the ability to write songs with catchy melodies and parts within the progressive format. In general, vocal melodies can get lost in the shuffle in this genre; the music often gets written first, and then the vocals are sort of “slapped” on top and become an afterthought; I made a conscious effort on “Waves of Loss and Power” to avoid this trap – vocal melodies and lyrics were always top-of-mind, and that may be part of the reason why you feel it is more melody-focused..

Q6: それにしても、”Waves of Loss and Power” は素晴らしいカムバック・アルバムですね!以前よりもさらに、メロディにフォーカスしているように感じましたよ。

【DOUG】: 個人的には、メロディーは常に ICE AGE のサウンドの大きな部分を占めていると考えているよ。特に “Liberation” では、そこにフォーカスして大きな進化を遂げたんだ。音楽的、ヴォーカル的なフックが随所にあり、それが、音楽スタイルへ合わせるために印象的な演奏を曲構成に詰め込むプログ・バンドとは一線を画す点だと思う。
特に Josh(シンガー/キーボード)が加えたボーカル・ハーモニーを考慮すると、この新しいアルバムは、最初の2枚のアルバムを超えた、僕たちにとって次の論理的進歩だと言えるね。

【JOSH】: 本当にありがとう!!(笑)僕らはそれをとても誇りに思っているよ。Doug の意見に賛成だね。メロディックな核はいつもそこにあった。
僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ。それが、よりメロディ重視のアルバムだと感じる理由の一つかもしれないね。

Q7: The band’s second album, “Liberation,” is an album about freedom and liberation, and it is an album that should be listened to in these times of war and fascism/right wings. So, what is the theme of this album?

【JOSH】: Thank you so much for that; yes, part of that album is indeed a statement about the inhumanity of war in general, and more specifically about the invasion and attempted cultural destruction of Tibet by China in the mid 20th Century. That is a heartbreaking example not only of territorial conquest but of the subjugation of basic human rights and decency. You are correct; this struggle is ongoing; it’s just part of being human. It is always dangerous, and often violent, when one faction or another tries to force their worldview or religion on another. It is the worst impulse humanity has to offer. “Waves of Loss and Power” addresses some of these ideas in Perpetual Child Part II; if we can’t find a way to coexist with each other, sadly I believe we will all cease to exist. Generally speaking, the new album is about the great heights of creativity and hopefulness and personal power we all feel at times in life, and the contrast with the sadness and grief of loss we all inevitably have to face in many different ways; personal loss, cultural loss, loss of innocence, etc…there are moments of optimism and moments of cynicism; these coexist within us constantly, and that inner battle expresses itself in the actions we take outwardly every day.

Q7: お話にあった “Liberation” では、文字通り自由と開放をテーマとしていましたが、戦争やファシズム、極右の台頭する今だからこそ聴かれるべきアルバムだと感じます。そこから、今回はどういったテーマに進化したのでしょう?

【JOSH】: このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。
君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ。
“Waves of Loss and Power” では、特に “Perpetual Child Part II” でこうしたアイデアのいくつかを取り上げている。もし僕たちが互いに共存する方法を見つけることができなければ、悲しいことに、人類は消滅してしまうだろうと思う。
一般的に言えば、この新しいアルバムは、僕たちが人生の中で感じる創造性、希望、個人的な力の高さと、個人的な損失、文化的な損失、無邪気さの損失など、さまざまな形で僕たちが必然的に直面しなければならない損失の悲しみや嘆きとの対比をテーマにしているんだ。楽観主義の瞬間と皮肉主義の瞬間があってね。その両者は常に僕らの中で共存している。その内面の戦いは毎日外に向かって取る行動で表現されているんだ。

Q8: “Perpetual Child” and “To Say Goodbye” are sequels to your earlier albums, why do you choose to create continuity in your Ice Age work?

【JOSH】: Well, that’s a prog tradition, right? Rush had the “Fear” saga, etc…as we were writing for WAVES, I always had in mind the idea of continuing the stories/songs we started on the first two albums. Musically, some of the parts Jimmy came up with for what would become Perpetual Child Part II were reminiscent of the first part, and we kept that in mind as we fleshed out the song. When I started writing on the piano, it became clear my subconscious was steering me back in the direction of “To Say Goodbye,” so I went with it. On the new album, we knew we had a real opportunity to go “big” in continuing some of the musical motifs and lyrical ideas of the first two albums. I wanted to connect with fans of the first two albums, and remind them that we remember what came before, and that we feel like these concepts we touched on back in the day still apply to the continuing experience of music and life. The idea of the Perpetual Child is about reconciling yourself to the experiences and “duties” of adulthood, while being self-aware enough to realize that we never really leave those formative years behind, and that we carry everything with us through our lives, whether we admit it or not. It’s also used as a metaphor for other things in Part II, but I’ll leave that for the listener to figure out! “To Say Goodbye” is really about loss, regret, and grief. We all experience these things in many different ways – Part V is pretty specific regarding the issue it addresses.

Q8: その “Perpetual Child” や “To Say Goodbye” は以前の作品からシリーズ化している楽曲ですよね?

【JOSH】: まあ、それはプログの伝統だからね。RUSH には “Fear” サーガがあったしね。だから ”WAVES” のために作曲するとき、最初の2枚のアルバムで始めた物語や歌を続けるというアイデアを常に念頭に置いていたよ。
音楽的には、”Perpetual Child Part II” のために Jimmy が思いついたパートのいくつかは、 “Part Ⅰ” を彷彿とさせるもので、それを意識しながら曲を練り上げていった。それに、ピアノで書き始めたら、潜在意識が “To Say Goodbye” の方向へ舵を切っていることがわかったので、それに従った。
新しいアルバムでは、最初の2枚のアルバムの音楽的モチーフや歌詞のアイデアを継承し、より “ビッグ” にできるチャンスがあるとわかっていたんだ。 最初の2枚のアルバムのファンとつながり、僕たちが前の作品を覚えていること、そして当時触れたこうしたコンセプトが、音楽と人生の継続的な体験にまだ適用できると感じていることを思い出してもらいたかった。
永遠の子供というアイデアは、大人になってからの経験や “義務” に自分を納得させつつも、一方で、僕たちは自身の形成期を決して忘れることができず、認めるかどうかにかかわらず、人生を通じてすべてを持ち続けているということを自覚しているという話。 第二部では他のことの比喩としても使われているけど、それはリスナーが考えてくれることだろう。
“To Say Goodbye “は、まさに喪失、後悔、悲しみについて歌っている。 僕たちは皆、さまざまな方法でこれを経験する。パートVは、扱う問題に関してかなり具体的だ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ICE AGE’S LIFE!!

JOSH: RUSH “Signals”, BLACK SABBATH “Volume 4”, DREAM THEATER “When Dream and Day Unite”, IRON MAIDEN “Powerslave”, SPOCK’S BEARD “The Kindness of Strangers”

HAL: RUSH “Exit Stage Left”, OZZY OSBOURNE “The Ultimate Sin”, BILLY JOEL “The Stranger”, RUSH “Moving Pictures”, METALLICA “Ride The Lightning”

DOUG: LED ZEPPELIN “Led Zeppelin I”, RUSH “Permanent Waves”, KING’S X “Dogman”, BLACK SABBATH “Heaven and Hell”, Chris Cornell “Euphoria Morning”

MESSAGE FOR JAPAN

HAL: As always thank you all so very much for all of your support and encouraging, kind words throughout our time away. We would love to say thank you by performing live for you some time. Maybe that will become a reality in the very near future. Until then … Thank you !!!

JOSH: We know that Japanese music fans in general have a long history and tradition of love for metal and progressive music; we’re so grateful for our audience there, and we hope you enjoy “Waves of Loss and Power!”

DOUG: We are so honored and excited to be connecting with fans of Ice Age from Japan.

HAL:僕たちが離れている間もいつも、応援してくれたり、励ましや優しい言葉をかけてくれたり、本当にありがとう。いつかみんなのためにライブをすることで、感謝の気持ちを伝えたいと思っているよ。近い将来、それが現実になるかもしれないね。それまでは… ありがとう!!

JOSH: 日本の音楽ファンには、メタルやプログレッシブ・ミュージックを愛する長い歴史と伝統があることを、僕たちは知っているよ。”Waves of Loss and Power” を楽しんでもらえたらと思う。

DOUG:日本の ICE AGE ファンの方々とつながることができ、とても光栄に思うし、興奮しているよ。

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ATROCITY : OKKULT Ⅲ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXANDER KRULL OF ATROCITY !!

“Atrocity And Myself Were There When It All Started!”

DISC REVIEW “OKKULT Ⅲ”

「80年代に、私の家でも何度かパーティーを開いたんたけど、メタルヘッズとゴスキッズたちはお互いに少し離れたところにいようとしたんだ。別の部屋にいることさえあって、私が走って行き来しなきゃならなかったこともあったくらいでね (笑)。だからこそ、90年代半ばに ATROCITY でメタル、ニュー・ウェーブ、ゴシックのクロスオーバーを行い、彼らを引き合わせるというアイデアが当時生まれたのかもしれないよね」
INSTIGATOR の名でドイツにおけるハードコアの煽動者となった最初期から、ATROCITY と Alexander Krull はその音楽性をカメレオンのように変化させつづけています。テクニカル・デスメタルの一大叙事詩 “Todessehnsucht” を作り上げた時代、ゴシックやインダストリアルを咀嚼し PARADISE LOST や SENTENCED の先を歩んだ時代、 妹の Yasmin と共闘してアトモスフェリックなメタルにおける女性の存在をクローズ・アップした時代、80年代のニュー・ウェーブやポスト・パンクのカバーでポップを追求した時代。ATROCITY は常に時代の先を行き、実験と挑戦の残虐をその身に刻み込んできたバンドです。
「ATROCITY のアーティスト、ミュージシャンとして、私たちは音楽的な自由を持ち、異なるアプローチでアルバムをレコーディングすることが好きなんだ。ファンとしては、常に自分の好きなものを選ぶことができるし、リスナーは気分によって、ブルータルなデスメタルが似合うか、ダークなメロディーを持つアトモスフェリックな音楽が似合うかを決められるんだから、それでいいんじゃないか?」
ATROCITY を語る時、頻繁に登場するのが “Todessehnsucht” が好きすぎてそれ以降のアルバムを認められない問題でしょう。たしかにあの作品は、イカれたテクニカル・デスメタルでありながらどこか気品があり、耽美と荘厳を兼ね備え、暗闇にフックを携えた欧州デスメタル史に残る不朽の名品です。
インタビューで Alex が言及しているように、ドイツ語のタイトルもミステリアスかつ斬新で、ここでも RAMMSTEIN の先を歩んだ早すぎた挑戦でした。音楽の世界では、往々にして真の先駆者が成功を得られないことがありますが、ATROCITY はまさにそうした存在で、ゆえにメタルの地図がある程度定まってきた今こそ、私たちは彼らの旅路を再度歩み直す必要があるのではないでしょうか。当時は突拍子もないで片付けられたアイデアも、今となればすべてが “先駆” であったことに気づくはずです。つまり、ATROCITY は結局、”道” を外れたことなど一度もなかったのです。
「2004年に行った “Atlantis” のコンセプトに関する大規模な作業では、オカルトに関するさまざまな情報や接点が驚くほど豊富にあったんだ。科学的、考古学的な研究、秘教的な理論に対する神話的な視点、第三帝国のオカルティストの不明瞭な解釈、UFO学のような突飛な世界まで、さまざまなものが存在した。そして、次に私たちが思いつくコンセプトは、世界の謎や人間のダークサイドについてかもしれないと、ほとんど明白になったんだよな。そして、1枚のアルバムでは不十分で、ここに “Okkult” 3部作が誕生したわけだ。ダークで壮大で残忍な音楽で、まさにATROCITY のこの10年間を表現しているよ」
祖父がヴァンパイア伝説の震源地、トランシルヴァニア出身であることからオカルトに興味を惹かれた Alex は、そうして世界各地の怪しい場所や伝承、ダークで壮大で残忍なデスメタルを使ってホラー映画のようにダークサイドを描くライフワークに没頭するようになります。”オカルト・シリーズ” と題された深淵もこれが3作目。
この一連の流れでバンドは、遂にデスメタルの最前線に復帰しながらも、やはり実験の精神は微塵も失うことはありませんでした。Elina Siirala (LEAVES’ EYES) と Zoë Marie Federoff (CRADLE OF FILTH) をゲスト・ボーカルに迎えた “Malicious Sukkubus” では暗黒のストンプにシンフォニックな光が差し、”Teufelsmarsch” では90年代のゴス/インダストリアルを逆輸入しつつその邪悪に磨きをかけます。重要なのは、常にオカルティックなエニグマと、地獄の腐臭が共存していること。ATROCITY の闇への最敬礼はやはり、本物の毒と気品を兼ね備えています。
今回弊誌では、レジェンド Alexander Krull にインタビューを行うことができました。「私たちはヨーロッパで最初に結成されたエクストリーム・メタル・バンドの1つとしてスタートし、メタル音楽の新しい地平を開拓するパイオニアとなり、多くの変わったプロジェクトに携わり、メタルで初めて他の音楽スタイルを組み合わせていったんだ」 どうぞ!!

ATROCITY “OKKULT Ⅲ” : 10/10

INTERVIEW WITH ALEXANDER KRULL

Q1: Not many bands were experimenting with death metal or thrash metal when you started. Even though Morgoth, also in Germany, was there. “Hallucinations” is artwork by Hans Ruedi Giger, so, were you influenced by bands like Celtic Frost, for example, or Death from the US?

【ALEXANDER】: With Atrocity we were always looking for new challenges, new musical horizons and ideas. Celtic Frost and Death are fantastic, iconic bands and fave bands of mine, too. Both bands had a great impact on the whole scene. We formed Atrocity in 1985 as teenagers and became forerunners of German Death Metal. Back in the day actually nobody really wanted this kind of extreme metal bands. No club, no agency, no labels. Even some of the metal magazines. It was an underground movement and we were a big part of it. Atrocity and myself were there when it all started! We started out as one of the first extreme metal bands from Europe, and became also pioneers in exploring new horizons for metal music, doing many unusual projects and combining other musical styles for the first time in metal, too. “Hallucinations” is mentioned to be the first techno death album as well, and yes the cover artwork was done by HR GIGER, who else would fit better?

Q1: ATROCITY がシーンに登場した時、まだデスメタルやスラッシュで実験を重ねるバンドは多くはありませんでした。”Hallucinations” のギーガーのアートワークが示すように CELTIC FROST、また当時新進気鋭だったアメリカの DEATH といったバンドはインスピレーションの一つとなっていたんでしょうか?

【ALEXANDER】: ATROCITY では、常に新しい挑戦、新しい音楽の地平線、アイデアを探していたんだ。CELTIC FROST と DEATH は素晴らしく、象徴的なバンドで、私も大好きなバンドだ。両バンドはシーン全体に大きな影響を与えていた。
私たちは1985年に10代で ATROCITY を結成し、ジャーマン・デスメタルの先駆者となった。しかし、当時は誰も私たちのようなエクストリーム・メタル・バンドを望んでいなかったんだ。クラブも、エージェンシーも、レーベルも…メタル雑誌の一部でさえも望んでいなかった。ただ、デスメタルはアンダーグラウンドのムーブメントで、我々はその大きな部分を担っていたんだ。一つ言えるのは、ATROCITY と私は、すべてが始まったときにそこにいたということ!
私たちはヨーロッパで最初に結成されたエクストリーム・メタル・バンドの1つとしてスタートし、メタル音楽の新しい地平を開拓するパイオニアとなり、多くの変わったプロジェクトに携わり、メタルで初めて他の音楽スタイルを組み合わせていったんだ。
“Hallucinations” は最初のテクノ・デス・アルバムとも言われているけど、君が言うようにそのジャケットのアートワークは HR. ギーガーが担当してくれた。他の誰があれ以上フィットする物を作れる?

Q2: “Todessehnsucht” is the album that made me fall in love with Atrocity, and it is still loved by many metal fans. Looking back, why do you think that work is so highly regarded?

【ALEXANDER】: I guess „Todessehnsucht” became a classic in German death metal as it sounds very dark, complex and unique. This was our way to play extreme music, even more technical and bombastic than other typical death metal bands at that time. The album has this very special and dark atmosphere going like a red line through the music. We also wanted to integrate more classical elements into our music, so we had invited four opera singers into the studio. The German title and using German phrases in our music worked really well, too. For some people it was even kind of shocking we had a German title. In America the album was renamed into ‘Longing for death’ against our will. Nowadays the whole thing would have had a different outcome when you think of Rammstein meanwhile being very succesful with German lyrics world wide.

Q2: “Todessehnsucht” で私は ATROCITY を愛するようになりました。私だけではなく、今でも多くのメタル・ファンから愛されているアルバムですね?振り返ってみて、あなたはなぜあの作品がこれほど愛されていると思いますか?

【ALEXANDER】: “Todessehnsucht” は、とてもダークで複雑でユニークなサウンドだから、ドイツのデスメタルにおけるクラシックになったのだと思うよ。この作品は、当時の他の典型的なデスメタル・バンドよりもさらにテクニカルで大げさな、極端な音楽を演奏する私たちの挑戦だったんだ。このアルバムには、特別でダークな雰囲気がアルバムの音楽を貫いている。また、自分たちの音楽にもっとクラシックな要素を取り入れたいと思い、スタジオに4人のオペラ歌手を招いたのも思い出深いね。ドイツ語のタイトルと、ドイツ語のフレーズを使った音楽も、とても効果的だった。もっとも、ドイツ語のタイトルが衝撃的だった人もいたようだけどね。
アメリカでは、私たちの意思に反して、アルバムが “Longing for Death” に改名されてしまった。今となっては、RAMMSTEIN がドイツ語の歌詞で世界的に大成功していることを考えれば、ドイツ語でアメリカに挑戦していればすべてが違う結果になっていたかもしれないよね。

Q3: After that, Atrocity explored deeply into the gothic and industrial aspects. At that time, bands like Paradise Lost and Sentenced were also moving from death metal to gothic, did you share some of the same feelings with them?

【ALEXANDER】: Like mentioned before we were exploring new horizons for the band and looking for new challenges. We actually never left our death metal roots but we spread out the range of our muscial variety. Writing albums like „Blut“ was very important for the creativity of the band. Starting projects with Das Ich, Lacrimosa or Yasmin were breaking through musical barriers and this was an impact for the Gothic and metal crossover in the 90’s.

Q3: その後、ATROCITY はゴシックやインダストリアルな要素を追求し始めます。あの頃、PARADISE LOST や SENTENCED も似たような道を歩んでいましたよね?

【ALEXANDER】: 前述したように、私たちはバンドの新しい地平を探り、常に新しい挑戦を探していたんだ。実際は、デスメタルのルーツを離れることはなかったんたけど、音楽的なバラエティの幅を広げたと言えるかな。
だから、”Blut” のようなアルバムを作ることは、バンドの創造性にとって非常に重要だった。そうして Das Ich、Lacrimosa、Yasmin とのプロジェクトは、音楽の壁を打ち破っていったんだ。90年代のゴシックとメタルのクロスオーバーに大きな影響を与えたはずだよ。

Q4: There was also the album featuring your sister, whose style was in sync with that of Anathema and The Gathering, but what makes Atrocity keep trying new challenges?

【ALEXANDER】: Back then we wanted to do a cooperation with my sister for many years. With our cooperation on the „Blut“ album and on the „Calling The Rain“ Mini album the time was right to finally work with my sister Yasmin. We had written the music fitting perfectly with her fantastic voice and it turned out very special. „Land of the forest“ is a song connected to our family roots in Transilvania.

Q4: あなたと妹の Yasmin とのコラボレーションは、ANATHEMA や THE GATHERING とも親和性がありましたね?

【ALEXANDER】: 当時、私たちは何年も前から妹との協力を望んでいたんだ。そうして、アルバム “Blut” とミニアルバム “Calling The Rain” で、ついに妹の Yasmin と仕事をする時が来た。私たちは、彼女の素晴らしい歌声にぴったり合う音楽を書き、とても特別なものに仕上げていった。”Land of the Forest” は、私たちの家族のルーツであるトランシルヴァニア地方にちなんだ曲なんだ。

Q5: On the other hand, you also have albums that cover 80s new wave and post-punk, right? In a way, is it important for you to go back to your another roots from time to time?

【ALEXANDER】: I remember very well back in the 80’s when I was a young metal kid and hanging out mostly with my metal friends but also had friends from the Wave and Punk scene. We had some parties together at my place but the metalheads and Goths tried to stay a bit seperated from each other – even staying in different rooms, I remember running back and forth, haha. Maybe back then the idea was born to bring them together with this metal, wave and gothic crossover we did in the mid 90’s with Atrocity. However, musically „Werk 80“ was another great and exciting challange for the band and it became a huge success for Atrocity. In the metal and gothic clubscene the „Werk 80“ songs were played all over and hitting the German DJ charts with 5 songs. The „Werk 80“ tour was sold out and we were playing and headlining as first metal band on the biggest Gothic festival there is, the Wave Gotik Treffen in Leipzig, Germany and other festivals.

Q5: 一方で、あなたはしばさば、80年代のニュー・ウェーヴやポスト・パンクのカバー・アルバムも制作してきましたね。そうやって、時にメタルとは別のルーツに戻ることも大切なのでしょうか?

【ALEXANDER】: 80年代、私は若いメタルキッズで、主にメタル仲間とつるんでいたんだけど、ニュー・ウェーブやパンクシーンの友人もいたことをとてもよく覚えているよ。私の家でも何度かパーティーを開いたんたけど、メタルヘッズとゴスキッズたちはお互いに少し離れたところにいようとしたんだ。別の部屋にいることさえあって、私が走って行き来しなきゃならなかったこともあったくらいでね (笑)。だからこそ、90年代半ばに ATROCITY でメタル、ニュー・ウェーブ、ゴシックのクロスオーバーを行い、彼らを引き合わせるというアイデアが当時生まれたのかもしれないよね。
とはいえ、音楽的には “Werk 80” はバンドにとってもう一つの偉大でエキサイティングな挑戦であり、ATROCITY 自体にとっても大成功となったんだ。メタルとゴシックのクラブシーンでは、 “Werk 80″ の曲は至る所でプレイされ、5曲でドイツのDJチャートを飾った。”Werk 80” ツアーは完売し、ドイツのライプチヒで開催された最大のゴシック・フェスティバル “Wave Gotik Treffen” やその他のフェスティバルで、最初のメタルバンドとして演奏し、ヘッドライナーを務めることができたからね。

Q6: However, while some fans have praised Atrocity’s musical journey, I think there has been a lot of criticism from fans of the technical, progressive death metal of the past?

【ALEXANDER】: Well, there will be always fans who like certain albums better than others. It’s a matter of taste. We have a lot fans who like all sides of our music, if it’s dark, brutal or symphonic. As artists and musicians of Atrocity we like to have our musical freedom and recording albums with different approaches. As fan you can always pick what you like best and sometimes it just depends on the mood of the listener if brutal death metal suits better or atmospheric music with dark melodies..

Q6: そういった音楽的な旅路を賞賛するファンも多い一方で、初期のテクニカルでプログレッシブなデスメタルにこだわるファンからは批判もありましたよね?

【ALEXANDER】: まあ、あるアルバムが他のアルバムより好きなファンというのは常に存在するよ。それは好みの問題だ。ダーク、ブルータル、シンフォニックなど、私たちの音楽のあらゆる側面を好きなファンがたくさんいるんだから。
ATROCITY のアーティスト、ミュージシャンとして、私たちは音楽的な自由を持ち、異なるアプローチでアルバムをレコーディングすることが好きなんだ。ファンとしては、常に自分の好きなものを選ぶことができるし、リスナーは気分によって、ブルータルなデスメタルが似合うか、ダークなメロディーを持つアトモスフェリックな音楽が似合うかを決められるんだから、それでいいんじゃないか?

Q7: Recently, you have released an amazing series of “Okkult.” What is your intention behind this?

【ALEXANDER】: Thank you! I was always interested in dark topics and writing these kind of lyrics for Atrocity. Already with the “Blut” album in 1994 and its dark vampire concept it was fascinating to do research in Transylvania, home of my grandfather, and to dive deep into a topic and film a videoclip on a spooky Transylvanian castle. Then in the very extensive work on the “Atlantis” concept in 2004, there was an incredible range of different sources and points of contact on the subject. This went from scientific, archaeological work, mythological perspectives on esoteric theories, obscure interpretations of occultists in the Third Reich to the far-out world of ufology. Then it was almost obvious to me that the next concept we would come up with could be about the mysteries of world history and the dark side of humanity. And one album would not be enough, so here we are with the “Okkult” trilogy – one decade of Atrocity with dark, epic and brutal music!

Q7: 近年は、素晴らしき “Okkult” シリーズに熱中していますね?

【ALEXANDER】: ありがとう!(笑) 私はいつも暗い話題に興味があって、ATROCITY のためにオカルティックな歌詞を書いているんだ。1994年のアルバム “Blut” とそのダークなヴァンパイアのコンセプトでは、祖父の故郷であるトランシルヴァニアでリサーチを行い、テーマを深く掘り下げ、不気味なトランシルヴァニアの城でビデオクリップを撮影することは、とても魅力的なことだった。
2004年に行った “Atlantis” のコンセプトに関する大規模な作業では、オカルトに関するさまざまな情報や接点が驚くほど豊富にあったんだ。科学的、考古学的な研究、秘教的な理論に対する神話的な視点、第三帝国のオカルティストの不明瞭な解釈、UFO学のような突飛な世界まで、さまざまなものが存在した。そして、次に私たちが思いつくコンセプトは、世界の謎や人間のダークサイドについてかもしれないと、ほとんど明白になったんだよな。そして、1枚のアルバムでは不十分で、ここに “Okkult” 3部作が誕生したわけだ。ダークで壮大で残忍な音楽で、まさにATROCITY のこの10年間を表現しているよ。

Q8: In the Okkult series, you basically reverted to death metal, but this time there are symphonic elements and gothic melancholy, and in a way it’s the culmination of Atrocity’s greatness, would you agree?

【ALEXANDER】: In a way you can see it this way. For me it was a really clear vision what the OKKULT albums should become – like a evil Horror movie about the malice of humanity, obscure places and events with evil, brutal and epic metal songs!

Q8: 仰る通り、”Okkult” シリーズであなたは、基本的にデスメタルへと回帰しつつ、シンフォニックな荘厳やゴシックのメランコリーを巧みに使用して、ATROCITY の集大成を作り上げていますね?

【ALEXANDER】: ある意味、そのように見ることもできる。私にとっては、”Okkult” のアルバムがどのようなものになるべきか、実に明確なビジョンがあったんだ。人間の悪意を描いた邪悪なホラー映画のように、怪しい場所や出来事を、邪悪で残忍で壮大なメタルソングで表現するというビジョンがね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ALEXANDER’S LIFE!!

Deep Purple “Made in Japan”

Pink Floyd “The Wall”

Iron Maiden “Killers”

Motörhead “No sleep ‘til Hammersmith”

Slayer “Hell Awaits”

MESSAGE FOR JAPAN

First of all, thank you for your interview! A BIG thank you to all Atrocity fans in Japan! Thanks for your great support, we really hope to play in Japan to give you a great death metal feast! Enjoy the new OKKULT III album!

まずは、インタビューをありがとう! 日本の ATROCITY ファンの皆さん、本当にありがとう。素晴らしいサポートに感謝しているよ!日本でプレイして、素晴らしいデスメタルの饗宴を提供したいと心から願っているんだ。”OKKULT III” の新しいアルバムを楽しんでほしいね!

ALEXANDER KRULL

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OUT OF NOWHERE : DEJA VU】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AMIN YAHYAZADEH OF OUT OF NOWHERE !!

“Iran Is Very Suppressive And Many Things That Are Normal Anywhere Else In The World Is Forbidden Here. This Includes Most Of Music Genres And The “Most Illegal” Of Them All Is Metal.”

DISC REVIEW “DEJA VU”

「残念ながらイランの政府は非常に抑圧的で、他の国では普通のことでも、ここでは禁じられていることがたくさんあるんだ。音楽もほとんどそうで、その中でも “最も違法” なのがメタルなんだ。刑務所に入れられた友人もいたし、その他にもいろいろなことがあってね…。音楽は僕たちを生かしてくれた唯一のもので、決してやめられない。だから、国を出たんだ」
イランからトルコへ。OUT OF NOWHERE という名前を体現する根無草のメタル集団は、母国の厳しい道徳的ルールと対峙しながら10年以上かけて自分たちのサウンドを磨き上げ、常に脅かされながら演奏し、危険と隣り合わせの夢を追い求めてきました。2021年、バンドは自分たちの創造的な可能性をさらに追求し、音楽を作ることで逮捕される心配のない活動をするためにトルコに移住します。そこで起こったあの大地震。彼らの情熱は今、革命の始まりのように純粋なイランの人々、そして大災害にも負けないトルコの人と共にあります。メタルの回復力、反発力と共に…
「僕たちはこのビデオをイランの女性たちに捧げた。基本的な自由のために戦い、政府によって殺されようとしている人たちに。彼女たちは僕たちの姉妹だから。イランの若い世代は、僕たちに大きく勇敢である方法を教えてくれた。彼らは、自分たちの若さと未来が台無しになることを望んでいない。僕たちイラン人は暴力的な人間ではないよ。どこの国の人でも自由を持つ権利があるけど、僕たちは基本的な自由さえ持っていなかった。言論の自由もない。政権の弾圧のために、僕たちの夢のほとんどは6フィートの深さに埋もれてしまった。でも、イランで兄弟姉妹が毎日殺されているのに、黙っているわけにはいかないじゃないか」
“Wrong Generation” は、抗議活動を悩ませた当局の暴力や、イラン人女性から基本的な自由を奪い続ける抑圧的な支配を非難するプロテスト・ソングで、協調のアンセム。彼らの情熱的な抗議の形であり、もううんざりだと判断した女性や若者の怒りを代弁しています。
昨年、22歳のイラン系クルド人ジナ・マフサ・アミニは、イランのガイダンス・パトロール(この地域の迫害警察をより洗練した言葉で表現したもの)に拘束されました。彼女の罪は、政府の基準に従って伝統的なヒジャブを着用していなかったことです。アミニは逮捕後まもなく、テヘランの病院で不審な死を遂げます。この事件をきっかけに、テヘランの女性や若者たちは伝統的な圧制に終止符を打つために街頭に繰り出しました。
デモに参加したことで約18,055人が拘束され、その結果、437人が死亡したと伝えられています。イランのサッカー代表チームも自国の女性たちとの連帯を示し、ワールドカップ初戦のイングランド戦に向けて、世界中の観客が見守る中で自国の国歌を歌うことを拒否しました。そうして、自由への連帯は “最も違法“ で悪魔の音楽とみなされていたヘヴィ・メタルにも広がっていきました。OUT OF NOWHERE はそうして、自由への障害となる壁を、地理的にも、社会的にも、音楽的にも壊していくことを望んでいるのです。
「サントゥールはイランでとても人気のある楽器で、さまざまなジャンルで広く使われているんだけど、エレキギターやメタル・ミュージックのサウンドと組み合わせることは、これまでになかったこと。僕たちは、それを最高の形で実現し、イランの伝統的な楽器のひとつを世界に紹介することに挑戦したんだ」
抑圧的な社会や法律から逃れるためにイランからトルコに移住した OUT OF NOWHERE は、国を超えた境界線だけでなく、音楽における固定観念も打ち破りました。”Deja Vu” の最初の1分間で、彼らの創造的な遺伝子に ARCHITECTS のダイナミズムと POLYPHIA の野心が眠ることをリスナーはすぐに察知するでしょう。同時に彼らは、飽和し、変身の時を迎えたモダン・メタルコアというサブジャンルに対して、その解決策の一つを提示して見せました。自らのアイデンティティであるサントゥールの使用です。あまりにもドラマティックで劇的なルーツの提示は、自分たちが何者で、どこから来たのか、どこへ進むべきなのかを瞬時に知らしめる音の魔法。そうして彼らは、音楽においても、社会においても、適切な変化と自由の重要性を世界へと訴えかけます。
今回弊誌では、フロントマン Amin Yahyazadeh にインタビューを行うことができました。「これまで僕たちは、常に逆風の中生きて来た。でもね、すべてが自分にとって不利でどうしようもないときでも、僕たちはヘッドホンをつければ別世界に行くことができたから。悲しいときやストレスがあるときだけでなく、楽しいときでも、音楽はいつも君のそばにいて、元気にしてくれる。だからこそ、僕たちは音楽を作ることができることに本当に感謝しているんだよ」どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUSK : SPECTRUMS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MESHARI SANGORA OF DUSK !!

“Saudi Arabia Is Not Known As Being a Place Where Metal Music Is a Thing, But Music Knows No Boundaries.”

DISC REVIEW “SPECTRUMS”

「たしかにサウジアラビアはメタル・ミュージックが盛んな国としては知られていないけど、音楽には国境がないんだよ。音楽が大好きな僕は、大学進学を機にUAEに移り住み、リスナーとしてだけでなく、音楽に携わりたいと思うようになった。それでまず、DJ としてスタートして、それ以来音楽に対する情熱を燃やし続けている」
プログレッシブ・メタルコアのパンデミックは、北米、南米、ヨーロッパ、そしてもちろんここ日本やアジアの国々にも感染し拡大を続けていますが、さすがにサウジアラビアにまで到達し、これほどの逸材が登場するとは想像もつきませんでした。サウジアラビアの一人プログコア DUSK の首謀者 Meshari Sangora の音楽に対する情熱の焔は、実にユニークかつカラフルなデビュー作 “Spectrums” で国境や困難を燃やし尽くすのです。
「僕の生活は、ヘヴィ・ミュージックとメタルが100%なんだ。そうした音楽は、僕にとってのライフスタイルであり、メタル・ミュージックは、ジャンルとして、あるいは生き方として、僕にとって完璧なものであるといつも感じているんだよ。たしかにサウジアラビアでも本当に長い間、メタルやヘヴィ・ミュージックはタブー視されてきたし、過激なバンドや悪魔的なメタルに傾倒する人もいて、イメージは全く良くなかったんだ。でも人々はゆっくりと、しかし確実にヘヴィ・ミュージックに心を開き、メタルの物語の両面を学んでいるところだよ」
これまでインタビューを行ってきたイスラム教国家のバンドたちは、多かれ少なかれ、何かに不自由を感じていて、時には激しく弾圧を受け国外へと脱出した人たちさえ存在しました。もちろん、文化や伝統を重んじることは重要ですが、それによって生じた歪みで自由や権利が制限され、精神的、肉体的な抑圧や不利益を産むとしたら、きっと変化も必要です。”悪魔の音楽” は少なくともサウジアラビアでは、Meshari のような100%メタル人間の情熱によって、徐々に受け入れられて来ているのかも知れませんね。
実際、CREATIVE WASTED によるサウジ初のメタルライブが行われたところです。バンドのベーシストはこう語っていました。
「当時(2000年)のサウジには、どんな種類の音楽シーンもなかった。本当に何もなかった。アンダーグラウンドの民族音楽ならまだしも、それも家の中で友達に聞かせる程度。基本的に、そういうものだけ。ここには、どんな音楽シーンもなかったんだ。何もない。サウジアラビアのアーティストのほとんどは、レバノンなど、王国の外でレコーディングをしていたよ」
Meshari 息子とも言える “Spectrums” の誕生は、まさに変化の象徴でしょう。
「このアルバムは、メタルヘッズとそうでない人の両方にとっての、入り口になるような作品にしたかった。”Spectrums” は音楽が好きな人なら誰でも興味を持つことができると思うんだ。様々に異なるジャンルをミックスしているからね。このアルバムで僕がやろうとしていることは、すべての人に自分の感情や旅を体験してもらうこと。裏切りや処刑、愛、憎しみ、希望といった現実問題を扱ったテーマもある」
Meshari は、この新作をSide AとSide Bとに分けて制作しました。アルバムの前半、Side A は攻撃的なサウンドで、よりギターに重点を置き、前に進むにつれてさらなる敵意が蓄積されていくような作風。一方、後半 Side B では EDM 的なサウンドを多く取り入れ、DJ として養った現代的なデジタル•サウンドとイヤー・キャンディでメタル以外のリスナーにも広く訴えかけていきます。
「母国語を加えるというアイデアは、ユニークなタッチを加えることができると思ったし、アラビア語は僕のルーツとのつながりを保つ方法でもあるね。だから “Agnes Of Rome” という曲にはアラビア語が使われている」
“Spectrums” というタイトルは伊達ではありません。あの元 SWALLOW THE SUN の偉大な Jaani Peuhu、SOLEMON VISION の Aron Harris をはじめ、英語、ドイツ語、フィンランド語、アラビア語という異なる言語、異なるスタイルを持つボーカリストを集めたアルバムは実に多様で色鮮やか。さらに、EDM、ジャズ、ポップ、インダストリアル、アンビエントの音像が、モダン・プログコアという情熱の炉で溶かされ、再結晶した音楽は独創的でキラキラと耳に残ります。もちろん、オリエンタルな音の葉も存在しますが、それを押し売りのように無理強いしないところも見事。DUSK が蒔いた情熱の種は、この地で芽吹くのでしょうか。
今回弊誌では、Meshasi Sangora にインタビューを行うことができました。「POLYPHIA を聴いてメタルを再発見し、その場で再度メタルに転向したんだ。だから、ギターを弾く人たちに追いつくために、基本的なことをたくさん学ぶ必要があると思ったし、少なくともそうやって自分にハッパをかけて、毎日毎日練習していったんだ」どうぞ!!

DUSK “SPECTRUMS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TRITOP : RISE OF KASSANDRA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TRITOP !!

“This Is The Dream Of My Life And Sincerely I Don’t Care About Money Or Fame. I Am Aware Of Today’s Prog Situation But My Passion For Music And Prog Helps Me a Lot To Overcome The Difficulties.”

DISC REVIEW “RISE OF KASSANDRA”

「眠る時には、FLOWER KINGS と一緒に演奏する夢をよく見たものだよ。これは僕の人生の夢なんだ。お金や名声はどうでもいいと思っている。もちろん、今のプログ世界が置かれた状況はわかっているけど、音楽とプログへの情熱が、この困難を乗り越えるために大いに役立っているんだ」
今や音楽は、ボタン一つでAIでも作れる時代。インスタントなコンテンツや文化に支配された世界は、長時間の鍛錬や思索を必要とするプログレッシブ・ワールドにとって明らかな逆風です。そんな逆境をくつがえすのは、いつだって情熱です。イタリアというプログレッシブの聖地で育まれた TRITOP にとって、音楽はただ追求し、夢を叶えるための場所。
「僕らにはプログの “黄金時代” が残した文化遺産を守りたいという思いもあってね。プログの歴史を作ってきたバンドの足跡をたどりながら、現代化に向けて創意工夫と先見性を加え、さらに自然に生まれ、発展してきた自分のアイデアを共有しようと思っているんだよ」
音楽でヴィンテージとモダンのバランスを取ることは決して容易い仕事ではありません。しかし TRITOP はデビュー・アルバムからその難題をいとも容易く解決してみせました。HAKEN があの21世紀を代表するプログの傑作 “Mountain” で踏破したメタルとプログの稜線。その景観をしっかりと辿りながら、TRITOP は自らの個性である場面転換の妙と豊かな構成力、そして圧倒的な歌唱とメロディの”ハーモニー”を初手から刻んでみせたのです。ハモンドやメロトロン、シンセの力を借りながら。
「プログレッシブ・アイドルの真似をしたいという燃えるような思いは、成長期に発見した新しいプログレッシブ・バンドによって強められたんだ。DREAM THEATER, THE FLOWER KINGS, KAIPA, ANGLAGARD, HAKEN のようなバンドたちだ」
重要なのは、彼らがただ GENESIS や KING CRIMSON、そしてイタリアの英傑たちの車輪の再発明を志してはいないこと。23分の巨大なフィナーレ “The Sacred Law Of Retribution” を聴けば、古の美学はそのままに、ANGLAGARD のダークマターや、DREAM THEATER の名人芸、THE FLOWER KINGS のシンフォニーに HAKEN の現代性、SYMPHONY X のメタル・イズムまで、TRITOP の音楽には限界も境界もないことが伝わります。ただし、見事に完成へと導いたプログレッシブなジクソーパズルで、最も際立つのはそのメロディ。
「僕たちの目標は、複雑なハーモニーやリズムをベースにしながら、素敵でキャッチーなメロディを作ることだった。君が言う通り、STYX はもちろん、GENESIS や DREAM THEATER といったバンドは、曲を聴きやすくするために常に素晴らしいメロディーを作り出しているんだ。そうしたキャッチーと複雑さのコントラストがこの種の音楽を面白くするのだと思う」
逆に言えば今は、例えば DREAM THEATER がグラミーを獲得したように、メロディに輝きさえあればどんなジャンルにもチャンスがある時代だとも言えます。プログにしても、本当にひょんな事から TikTok でヴァイラルを得ることも夢ではありません。少なくとも、TRITOP はその可能性を秘めたバンドでしょう。さらに言えば、MORON POLICE, MOON SAFARI, BAROCK PROJECT のように、メロディの母国日本で認められることは必然のようにも思えます。それほどまでに、ラブリエやトミー・ショウの血脈を受け継ぐ Mattia の紡ぎ出すメロディは雄弁にして至高。燃える朝焼けのような情熱が押し寄せます。
今回弊誌では、TRITOP にインタビューを行うことができました。「日本は70年代以降、あらゆるジャンルの偉大な “音楽の目的地”だ。日本のファンがプログレッシブ・ロックに対して示してきた、そして今も示している大きな尊敬の念は筆舌に尽くしがたいもので、僕たちはその伝統に敬意を表することを本当に望んでいるんだ」どうぞ!!

TRITOP “RISE OF KASSANDRA” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DAWN RAY’D : TO KNOW THE LIGHT】


COVER STORY : DAWN RAY’D “TO KNOW THE LIGHT”

“We Are a Black Metal Band, But Worry Not, We Are Anarchists And Antifascists. We Still Want To Be Part Of This Community.”

TO KNOW THE LIGHT

リーズのステーションハウスは、かつて警察署でした。そのため、今でも警察官と話すためにドアをノックする人が後を絶たないほどです。レコーディング・スタジオとして再利用された多くの古い建物と同様に、この場所の特徴は、新しい機能とうまくクロスオーバーしています。The Stationhouse の場合、いくつかの小部屋が、バンドがギターアンプを置いたり、ボーカルを録音したりするためのアイソレーション・ブースになっています。
Fabian Devlin は、「あの部屋は昔の留置場だったんだろうね」と言います。「僕らからするとかつての卑劣な場所でレコーディングして、今はクリエイティブになれる場所、警察を解体するアイデアを探求できる場所になっているというのは、ちょっと不思議な感じだったね」
Fabien と彼のバンド DAWN RAY’D がかつての警察署で録音した曲は、バンドのサードアルバム “To Know The Light” のオープニング・トラック “The Battle Of Sudden Flame” でした。この曲は、 “豚野郎が何もないのに子供を虐待した” 後に子供の父親が炎で反撃する物語。歌詞によると “分断の間違った側に生まれた” 警官の話。この曲は、レコーディングされた場所で行われていた “ビジネス” に対する考えが明確であり、特に「給料をもらっていた警官たちははみんなくたばれ” という宣言に、彼らの思いが込められています。
バンドのシンガー兼バイオリニストの Simon Barr がこの楽曲を微笑みながら紐解きます。
「そこには素敵なメタファーがあると思うんだ」
すでに DAWN RAY’D に目をつけている人たちにとって、こうした過激さは驚きではないでしょう。2015年に “A Thorn, A Blight EP” で登場して以来、リバプールを拠点とするブラックメタル・トリオ Simon、ギターの Fabian、ドラマーの Matthew は今や、政治的な事柄を扱うバンドの代名詞となり、イギリスのメタル・アンダーグラウンドの新星となっているのですから。”To Know The Light” のリリースを控えた彼らは、その音楽の質と発言力の両方において、英国エクストリーム・ミュージック界で最も話題のバンドのひとつとなっています。

DAWN RAY’D は警察が嫌いで、反ファシスト。資本主義はあらゆる戦争と同じくらい破壊的だと考えています。選挙は結局のところ良い方向にはあまり向かわないという思想から、投票参加しません。王室について彼らがどう考えているかは想像がつくでしょう。つまり、DAWN RAY’D は、最も基本的なレベルでの人権、コミュニティ、平等、自分自身と隣人のために周りの世界をより良くすることとそのための努力のみを信じているのです。彼らは、一度や二度ではなく、何度でも、誇りを持ってアナーキズムを実践していきます。
「アナーキズムとはギリシャ語で “指導者のいない人々” を意味する “anarcho” から来ている」と Simon は説明します。「世界で起こっていることを外から見てみると、とにかくすべてが混沌としているよな。資本主義のもとでは、世界は滅びつつある。これほどカオスな世界はないだろう。僕にとってアナーキーとは、矛盾しているようだけど、秩序、協力、組織、そしてもっと全体的な生き方を意味しているんだ」
Fabian が付け加えます。
「他の誰にも悪い影響を与えない限り、誰もが自分にとって正しい生き方をする権利を持っている。そして、それを少し拡大すると、自分が生きたいように生きられるだけでなく、他の人たちが生きたいように生きられるようにベストを尽くすべきなんだよな。人は皆喜びと幸福に満ちた人生を送るべきで、できるだけ多くの苦労を取り除くべきなんだよ」
煽情的なオープニングと、より激しい音楽的な衝動が示すように、”To Know The Light” は政治的な怒りと同じくらい個人的なテーマを扱ったレコードです。Simon は、人はスローガンに惑わされることなく、最終的なゴールを自身が生きるに値する人生であると認識することだと定めています。それが結局は、すべての人のためになると信じて。
「COVIDでは、アナーコ・ニヒリズムに傾倒したんだ」と Simon は言います。「環境は破壊され、すべてが最悪で、革命も起きないかもしれない。しかし、ただ諦めて人間嫌いや絶望に屈するべきじゃない。酷い現実に対処する方法は、とにかく抵抗すること。抵抗のために抵抗し、尊厳と喜びを見出すことなんだ。それは、この世界が何であるかを見つけ、受け入れ、続けることにつながるからね」

実際、”To Know The Light” は、様々な意味で彼らのこれまでの作品とは一線を画しています。政治的な側面は変わりませんが、以前よりも個人的な傾向を帯びていて、怒りから絶望、そして周囲の闇を根本的に受け入れ、解放と喜びという新たな理解に至るまで、アナーコ・ニヒリズムの旅を辿るような歌詞になっているのです。テーマとなる内容の多くは、怒りと抵抗に根ざしていますが、ポジティブな要素も随所に見受けられます。
DAWN RAY’D はフォーク・ミュージックを、労働者階級の人々の傷や虐待、実生活の物語を記録する方法として定義し、他の方法ではアクセスできないような情報を広める方法と目しています。だからこそ、サウンド面でも彼らは伝統的なフォーク・ミュージックの要素を自分たちの音楽に取り入れていて、特に “Requital” や “Freedom in Retrograde” などの曲ではハーモニーやレイヤーにその傾向が見られます。
アルバムのジャケットは、デモの火の前でシルエットになった人物。”To Know The Light” は、単なる叫びではなく、新しい世界の見方を提示する誠実な作品だと彼らは考えてほしいのです。
「労働者が自分たちの人生を語ることができる方法のひとつがフォーク・ミュージックだ。労働争議、革命家の人生、そして権力者が我々に対して行うあらゆる虐待を記録している。過去と現在の間に隔たりはなく、これは最善の方法で語られる真実の物語なのだ。フォーク・ミュージックは “アコースティック” の代名詞ではなく、僕たちの実際の生活の音楽であり、苦労の結晶なんだ。
女性を残酷に扱い、貧しい人々を苦しめ、有色人種を平気で殺し、虐待する金持ちをかばい、反対意見を押しつぶすような組織を憎むことは議論の余地がなく正しい。警察への反対を正当化する必要はない。それは警察を支持する人たちの責任だ」
最近、英国ではもっぱら、最高権力者の金銭スキャンダル、警察での性的暴行、行方不明の移民の子供たち、不法滞在を許さないと下院で叫ぶ現職議員(Fabian は政治の中心にある “残酷さ” を強調するだけだと言う)、給与と条件についてストライキに入った疲れ切った病院スタッフを非難する政治家など、下水のようなニュースが垂れ流されています。
「絶望の中に身を置くのは簡単だ」と Fabian は言います。「このアルバムのテーマのひとつは、絶望を受け入れ、そこに寄り添い、絶望を通過し、でも絶望感を麻痺してしまわないようにすること。絶望に打ちのめされず、そこから喜びを見いだすべきなんだ。それがアナーキズムなんだよ」

当初、DAWN RAY’D はここまで政治的なことをやるつもりはありませんでした。3人はスクリーモのバンド We Came Out Like Tigers で一緒に演奏し始めましたが、このバンドには政治的な傾向があり、政治活動家が運営するスクワットで、同じような考えのバンドとよく演奏していました。このバンドが終わると、彼らは DAWN RAY’D(19世紀のアナーキスト作家 Voltairine de Cleyre の詩から取った名前)を結成し、Simon の不思議なほど効果的なヴァイオリンをトップに、新しい、ブラックメタルの道を歩み始めたのです。政治的な内容は、ブラックメタルとの関係性により、より顕著になりました。
「ヨーロッパ本土では、ブラックメタルは危険な領域だった。ヨーロッパのスクワットでは、国家社会主義とのつながりのせいで、人々はブラックメタルをチラシに載せないんだ。どのシーンでも同じだよ。極右はとっくの昔に文化利用の重要性に気づいていたんだ。ブラックメタルでも全く同じことが起こった。ノルウェーの数人のティーンエイジャーが、物議をかもすために卍を使い、実際のナチスに食い物にされた。だけど、パンク、スカ、テクノ、民族音楽でそうした連中が処分されたように、このシーンのチンカス連中も追放されるはずさ」と Simon は言います。「だから、俺たちは最初から、”俺たちはブラックメタル・バンドだけど、心配するな、俺たちはアナーキストで反ファシストだ、俺たちはまだこのコミュニティの一員でありたいんだ” とはっきり言わなければならなかったんだ」
続けて、ブラックメタルとアナーキズムの親和性について語ります。
「たしかに、ブラックメタルは伝統的にアナーキストと考えられているシーンではないと思うけど、革命、野性、自由、権威への憎悪といった考え方は、ブラックメタルの文脈の中ですべて納得がいくものなんだ。かつて、ブラックメタルがアナーキズムと相容れないものであったとしても、今は相容れるということだよ(笑)。
ネオナチはソーシャルメディアのコメント欄で僕たちに文句を言うけど、僕たちは右翼的なものを削除するのがとても上手で、彼らはライブで僕らに何か言う勇気はないんだ。それに、僕たちの発言には信じられないようなサポートがある。演奏するすべてのショーでこうしたアイデアについて話し、大きな募金活動を何度も行い、出来うる限り声を上げる僕らを人々評価してくれているようだから。僕たちが受ける憎しみは、僕たちが得るサポートによって圧倒的に覆い隠されるのだよ」
つまり、ブラックメタルは音楽的にも、哲学的にも、革命の最中にあります。
「PANOPTICON や ISKARA のようなバンドが道を切り開き、アナーキズムがこのジャンルにさらに踏み込んでいけるような新しい波が来ているように感じるね。
それに、時代の流れでもある。僕たちは絶望的な時代に生きていて、恐ろしい未来に直面している。どんな政治家も決して何かを解決することはできず、僕たちが信頼できるのは自分自身と自分たちのコミュニティだけだということが、これほどはっきりしたことはないだろうから。僕は、今、音楽を含む人生のあらゆる部分に革命への飢えがあると思っていてね。
ブラックメタルはアナーキズムにとても適している。僕は教会が嫌いだ。白人のキリスト教の礼節が嫌いだ。カトリック帝国の犯罪が嫌いだ。それらの建物が燃えても涙を流さない。メタルの右翼は、実は白人のキリスト教的価値観を支持している。それは、我々アナーキストよりもブラックメタルから分離しているように感じるね」

彼らの精神的ルーツは、MAYHEM や EMPEROR よりも、CRASS や CHUMBAWAMBA のアナーコパンクに近いと言えるのかもしれません。しかし、かえってその折衷性が、このリバプールのバンドのメッセージと影響力を高めています。
「パンクのショーでは僕らはメタル・バンドで一部の人には重すぎるし、ブラックメタルのショーでは政治的すぎて少し面食らう人もいるけど、それを楽しんでくれる人は必ずいる」と Simon は説明します。「そういうやり方が好きなんだ。僕たちは、本当に様々なフェスに出演してきた。マンチェスターで行われた反ファシストのフェスティバルに出演したんだけど、ヘヴィなバンドは僕らだけで、ラッパーやDJが出演していたよ」
逆に言えば、”真の” ブラックメタルでないことが、DAWN RAY’D のアイデンティティだと Simon は言います。MY DYING BRIDE を手がけた Mark Mynett の起用もその恩恵の一つ。
「僕たちに対する批判は、”真の” ブラックメタル・バンドではないというものが多かった。なぜなら、僕たちは反ファシストでありアナーキストだから。でも、”真の” ブラックメタル・バンドでなければならないというプレッシャーも感じていた。ブラックメタルはこうあるべきという他の人たちの考えに訴えかけようとしていたのかもしれない。このアルバムでは、それに逆らうような形で、自分たちの言葉で本当に演奏したいレコードを作ったんだ。ブラックメタルがどうあるべきかではなく、DAWN RAY’D がどうあるべきかでね。より親しみやすくメロディック。狂気のシンセサイザー、クリーン・ボーカル、ハーモニーを強調したアカペラ・ソング、そして大聖堂のパイプ・オルガン…”グロッシー” とでも言うべきだろうか。今回のアルバムは全く違うんだ。このレコードはとても違っていて、より多くの努力と時間とお金をつぎ込んでいるんだ」

政治性はすでに長い間、個人として彼らの中にあったもの。Simon はまず学生の反戦デモに参加し、次にリバプールのDIYパンクやハードコアのライブに行き、そこで音楽と政治の意味をしっかりと結びつけていたのです。そんなライブで手にしたアナーコ集団 CrimethInc のZINEは、彼がすでに信じていたものと多くの共通点がありました。
「そこにはアナーキズムとは何かということが書かれていて、”もしあなたがこれらのことをすでに信じているなら、あなたはすでにアナーキストです” と書いてあったんだ。それが僕にとっての啓示の瞬間だった。物事が間違っていることを知り、世界をより良い場所にしたいと思ったんだよな。すでに学生の抗議活動などにも参加していて、皆が世界をより良い場所にしたいというエネルギーを持っているのだとわかっていた。CrimethInc のZINEは、それに名前をつけただけなんだ」
Fabianにとっても、より若い頃の反抗心が種になっているとはいえ、同じようなことが起こりました。
「若いころはよくスケートボードをやっていたんだ。それは、よく不法侵入して、よく追いかけられたということ。それが、権威が必ずしも正しいとは限らないという考え方につながっているんだ。その後、CrimethInc にハマり、学生のデモに参加するようになったね。アナーキストのブロックを見て、すごいと思ったのを覚えているよ。彼らは僕に新聞を売ろうとしたり、自分たちの奇妙なグループに参加するよう説得したりせず、ただ本当に親切で、協力的で、励ましてくれて、決して見返りを求めない人たちだったからね。思いやりがあって、思慮深くて、みんなよりちょっとだけ張り切っていたんだよ。これからは彼らと一緒にやっていこうと思ったんだ」
そして、BLACK SABBATH のおかげで、メタルは “政治的であることから始まった” と断言する Matt。
「ドイツやスイスなど、かなり裕福な国でも、人々は反発し、自分たちの生活を完全に自分たちのやり方で送り、さらに周りのものをより良くしようと努力している」

環境破壊に使われる機械にダメージを与えたり、フードバンクを運営したり、単に隣人が無事かどうか確認したりと、アナーキストの “反撃” とは実際には様々なことを意味します。
「パンデミックのとき、リバプールでは素晴らしい活動が行われたんだ」とFabianは例を挙げて説明します。「政府は、繁栄するコミュニティの一員であり、私達の住むコミュニティに多大な貢献をしながらも、パンデミックで働くことを許されなかったため国の支援に頼っていた難民を、馬鹿げた、執念深い理由で、街から数マイル離れた場所に移して、本当に隔離するというひどい政策をとっていた。アナーキズムの最も良い例のひとつは、つながりを維持することが直ちに必要であると認識し、対応できること。誰かが車で来て、人々が無事かどうか、法的手続きを行っている人々が必要なサポートにアクセスできるかどうか確かめ、店からどれだけ離れているかを知って、すぐに自転車を用意した。こうやって、実践的で即効性のある組織作りを行っているのは、ただ、優れた人々なんだ。委員会や多額の資金は必要ない。必要なのは、僕たちにできるポジティブな活動なんだよ」
一方で、アナーキストを、一部の人たちはただの愉快犯や破壊者だと考えているようです。
「その通りだ」 と Fabian も認めます。「長い間、無力で底辺にいるように感じられてきた人たちが、破壊を通して自分の持っている力を認識すれば、それは人生においても自分の持っている力を認識する良い方法となる。正直なところ、企業の窓ガラスが割れたところで、誰が気にするの?どうでもよいことだよ。でも、それがきっかけで、職場で上司から搾取されないように組織を作ったり、地域社会に貢献したりと、ポジティブな形で物事を実践できるようになれば、それは素晴らしいことだろ?」
「僕が会った中で、破壊で反撃をやっている人たちは、フードバンクを運営している人たちと同じだよ」と Simon は付け加えました。「彼らは同じなんだ。良いアナーキストと悪いアナーキストは存在しないんだ。僕が知っている限り、違法とされるようなことに携わってきた人たちは、思いやりのあることをやっている人たちでもあるんだ」

バンドの反警察的なスタンスについても、多くの人がいろいろと言うでしょう。
「僕たちが主張しているのは、警察の改革とか、資金の削減とか、規則の変更とかではなく、警察を廃止することなんだ」と Fabian は言います。「今日、警察を廃止すれば、世界はより良くなるのだよ」
それはとても強い主張です。それは、誰かに頭を蹴られていても警察官が止めてくれないという事態を意味します。
「でも、警察が実際にそうしているのを見たことある?たいていは、後から現れるだけだ」Fabian は真剣です。「でも、地域の人たちがお互いに気を配っている例ならある。今、僕たちが座っているこのパブでも、誰かが襲われているのを見たら、みんなその人を助けるためにベストを尽くすだろう。何もしないのは、人間として、コミュニティの一員としての義務を放棄していることになるのだから。多くの場合、人々は互いに助け合うもので、警察がいることは事態を単純化するのではなく、むしろ複雑にしてしまうのではないだろうか?
君の家に泥棒が入ったとき、警察はその犯罪を解決してくれるかい?自分のものは戻ってくる?刑務所で凶悪犯罪はなくなるの?薬物使用はなくなるか?警察は真に凶悪な犯罪を犯した人たちを罰することができるのだろうか?警察は財産と金持ちを守るために存在する。家庭内暴力や性的虐待の被害者、貧しいコミュニティ、有色人種のコミュニティに対する扱いを見れば、警察が正義を実現したり、人々を助けたりするために存在しているのではないことは明らかだろ?」
DAWN RAY’D の面々は、こうした疑問について議論し、自分たちの言動に責任を持つことを喜んでいます。同様に、自分たちの意見に反対する人たちを招き、まず話を聞き、対話をすることも厭いません。
数年前、彼らはあるフェスティバルで、政治的にいかがわしいと思われているバンドと共に出演しました。ファンの中には、なぜ彼らが降板しないのかと疑問を持つ人も。その質問に対して、Fabian は、「文化的空間は争われるものであり、もし我々がその中立の領域から一歩下がっていたら、負けを認めたことになる」と言っています。

彼らは、自分たちの意見に反対する人がいることも当然知っています。何人かの人たちから殺害予告を受けたからです。
「彼らは、すべてのひどいことを言ってきた」 と Matt は疲れ果てて話します。「他の誰かが僕たちを好きにならないように、積極的にコメント爆撃をしたり。トランス、クィア、有色人種など、あらゆる人々が僕らのファンになるのは危険だと思わせようとしたんだ。でも、彼らはずっと残ってくれている」
アメリカでのツアー中、彼らは何度も “撃たれるぞ” と脅され、ある公演では武装した警備員がいたほどでした。
「もちろん、嫌なことだ」と Matt は言いますが、脅しに屈するつもりはありません。「でも、右翼を怒らせるということは、何か正しいことをしているということなんだ。彼らは恐ろしい人たちだ!彼らは人々がより良く生きることを望んでいない。彼らの本性に訴えようとしても無駄だ。アナーキストや反人種差別主義を明確に表明するバンドの数は、本当にあっという間に爆発的に増えたんだ。今、メタル・シーンには素晴らしいバンドが沢山いるんだよ。僕たちの負担も少しは軽減されたよ!(笑)」
最終的に、DAWN RAY’D は世界がより良く、より素敵で、より公平な場所になることを望んでいます。もっとぶっきらぼうかもしれませんが、ENTER SHIKARI とそれほど違いはありません。音楽には多くのメッセージが込められていて、その最大のものは連帯とコミュニティなのですから。私たちは皆、誰かに顔をブーツで踏まれることなく、ただ生きていたいのです。アナーキーとは、彼らがそれを実現するために選んだ名前に過ぎません。
「僕らをアナーキズムと呼ぶ必要はない」と Simon は話します。「これは単なるイデオロギーではないんだ。教義を広めることでも、カルトや政党になることでも、BURZUM のシャツを着た人をライブから追い出す現場警察になることでもない。ちなみに、僕らはそんなことはしたことがない、そんなことをするために、やっているんじゃないからね。ただ、近所の人に声をかけ、地域に密着し、直すべきところを見て、自分で直す。実際にやってみれば、それがとても簡単なことだと驚くはずさ」
Fabian も同意します。
「君の持っている力は、すべてどこかで役に立つ。アナーキストである必要はないけど、今こそ世界をより良い場所にするために戦い始めるべき時なんだ。権力に助けを求めるのをやめて、自分たちでやり始める時なんだ。革命に参加する人は誰でも歓迎される。ねえ、みんな。世界を良くするために、誰かの許可を得る必要はないんだよ」

参考文献: KERRANG! Dawn Ray’d: “You don’t have to ask for permission to make things better”

REDPEPPER:Playing on the dark side: An interview with Dawn Ray’d

RUSH ON ROCK:EXCLUSIVE INTERVIEW: DAWN RAY’D

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FROSTBITT : MACHINE DESTROY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IVAN HANSEN OF FROSTBITT !!

“We Have For As Long As We Have Listened To Metal Been Listening To Japanese Rock Bands Like Dir En Grey, Maximum the Hormone, Moi Dix Mois, Babymetal And a Lot Of Anime Openings!”

DISC REVIEW “MACHINE DESTROY”

「Mana 様の作品はどれも好きだけど、特に Moi Dix Mois で作られた音楽は最高だよね!Dir En Grey は、僕たちの大のお気に入り。”Yokan / 予感” や “Cage” のようなファンキーでアーバンなものから、”Obscure” のような Nu-metal、そして後のデスコアやジャンル・ブレンドのヘヴィなものまで、彼らの全てのスタイルが大好きだよ!特に特定の曲のライブ・バージョンが大好きで、より生々しくエモーショナルに聴こえるんだ。”濤声” のライブ・バージョンのようにね。あれは僕にとって完璧だ!NARUTO は特に130話までが僕にとって特別な場所。Asian Kang-Fu Generation の “カナタハルカ” は、生々しい叫びのようなボーカルで、僕に大きなインスピレーションを与えてくれた!」
日本の音楽は世界では通用しない。そんなしたり顔の文言が通用したのも遥か昔。アニメやゲームのヴァイラル化とともに、日本の音楽は今や海外のナードたちにとって探求すべき黄金の迷宮です。とはいえ、ノルウェーのノイズテロリスト FROSTBITT ほど地下深くまで潜り込み、山ほどの財宝を掘り当てたバンドはいないでしょう。
「特にボーカルとベース・サウンドは、KORN から大きなインスピレーションを受けているよ。”Solbrent” “Frostbitt” では、Johnathan Davis とChino Moreno のヴァイブに深く入り込んでいるんだ。ただ、そのせいで少し非難されたし、一時期ちょっとやりすぎたという事実にも同意しているよ。でも、この新しいレコードでは、彼らのインスピレーションはそのままに、他の多くのものも取り入れて、より味わい深いものになったという気がするね。自分たちを取り戻したような感じさ」
未だ Djent が新しく、勢いのあった10年代初頭に頭角を現した FROSTBITT は、近隣の MESHUGGAH や MNEMIC (素晴らしい!) に薫陶を受け、ローチューンのリズミック・マッドネスに心酔しながらも、同時に Nu-metal, 特に KORN や DEFTONES の陰鬱や酩酊をその身に宿す稀有な存在としてシーンに爪痕を残します。ただし、インタビューに答えてくれた Ivan Hansen の歌唱があまりにも Jonathan Davis に似すぎていたため、あらぬ批判を受けることもあったのです。まさに “Life is Djenty”。
しかし、FROSTBITT の時間旅行は “Machine Destroy” で空も海も飛び越える3Dの冒険へと進化しました。”Machine Destroy” というアルバム・タイトルが示すように、FROSTBITT の目的は常識や次元、時間、既存のメカニズムの破壊。CAR BOMB とのツアーは、FROSTBITT にとってノイズと獰猛さを探求するきっかけとなり、あの英国の破壊王 FRONTIERER をも想起させるアクロバティックなエフェクト・ノイズの数々は、”Frost-Riff” というユニーク・スキルとしてリスナーの脳裏に深く刻まれます。これはもう、ギミックの域を超越したテクニックの領域。
さらに、ここには日本からの影響も伝播しました。”Masked Ghost Host” のシアトリカルで狂気じみた呪文のような言霊の連打からの絶叫は、明らかに Dir en Grey の京をイメージさせますし、作品のテーマは攻殻機動隊。何より、”曲をリフ・サラダではなく、構造や繰り返しのある実際の歌らしい歌にしたい” という彼らの理想は非常に日本的な作曲法ではないでしょうか。タイトル・トラック “Machine Destroy” の致死的な電気の渦の中でも埋もれない、メロディの輝きは日本イズムの何よりの証拠。今作ではさらに、時に RADIOHEAD の知性までも感じさせてくれます。
デスメタルの単調とブラックメタルの飽和が囁かれるこの世界では、新しいアイデアを持ったバンドが必要とされているようです。1996年に片足を突っ込み、もう片足をThallの迷宮に突っ込んで、両腕を遠い東の島国に向けて突き上げる FROSTBITT の3Dな音楽センスは、明らかに前代未聞唯一無二で尊ばれるべき才能でしょう。
今回弊誌では、Ivan Hansen にインタビューを行うことができました。「ノルウェーは、暖かい夏と厳しい寒さの冬と雪の両方がある美しい場所。国土が広く、人々は国土全体に散らばっているから、ノルウェーを旅行するときはかなり遠くまで行くことが多いよね。それに、多くの家庭が森の中に山小屋を持っているから、歩く文化や山越えの文化も盛んなんだ。少なくとも、ブラックメタル・バンドからはそんな雰囲気が伝わってくるし、僕自身も同じようなことを実感しているんだよ」 どうぞ!!

FROSTBITT “MACHINE DESTROY” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【THE WORLD IS QUIET HERE : ZON】 VIDEO GAME IS PROG METAL…


COVER STORY : THE WORLD IS QUIET HERE “ZON”

“The Legend of Zelda: Majora’s Mask Is My Favourite Game. I Loved Ocarina of Time, but Majora’s Mask Is On a Different Level”

ZON

プログレッシブ・メタルとは、実験的でしかし感情的で、技術的にも音楽的にも他の人がやらないようなことをやってのけたうえに、そのすべてをうまくまとめるという難攻不落の使命を帯びたジャンルです。ウィスコンシンの新鋭 THE WORLD IS QUIET HERE のニューアルバム “Zon” はその難題をクリアした稀有なレコードでしょう。彼らのプログレッシブ・メタルは実に冒険的で、エモーショナルで、しかしその創造的な自由の中で、エクストリーム・ミュージックのファンなら誰もが魅了されるであろうメタリックな旅へと誘います。
ドラマーの David Lamb はそもそもジャズ畑のプレイヤーですが、驚くべきことにこのバンドは他にも “学位” を持つプレイヤーが二人もいます。
「ギタリストの Isaac Stolzer と僕 (Tyler Dworak) は音楽専攻で、二人ともレコーディング・プログラムを修了している。David も少しだけど、彼はソフトウェアのプログラミングか、コンピュータの何かを勉強したと思うんだ。彼はドラムが得意で、Izaac はジャズ・アンサンブルでギターを弾いていたね。それがきっかけで、ふたりは本当につながったんだ。僕らの何人かはクラシックのトレーニングを経て、音楽の学位を持っているんだよ」
新ボーカル Lou の歌唱は、この分野では非常に独特で、際立っていて、例えるなら SikTh の Mikee のような異彩を放っています。
「Lou が素晴らしいのは、自分が何をやっているのか理解していること。彼の音域はとても広いから、シンガーではない僕らがハーモニーを担当する必要もなかったね。歌の分野でもっと経験豊富な人がいることは、僕たちにとって本当に必要なことだったし、Lou がそれに応えてくれることに本当に感謝しているよ。それに、面白いことに Lou は車の中で全部録音したんだ。彼は基本的に車の中だけで自分を孤立させることができる。だから、僕の知る限り、Lou の音はすべて彼の車の中で録られたものだ」

同時に、”Zon” には元 PAINTED IN EXILE のギタリスト Ivan Chopik、元 NATIVE CONSTRUCT のギタリスト Kee Poh Hock、そしてOTHERS BY NO ONE のシンガー Max Mobarry といったそうそうたるメンバーがゲスト参加していて、界隈における彼らの高まりつつある名声を証明してます。ただ、特別興味深いことに、TWIQH の面々は、プログレッシブ・メタルが要求する高いハードルを越えるため、ストーリーや音楽においてビデオゲームをジャンプの原動力としています。
もちろん、メタル、特にプログレッシブ・メタルの世界では、そのマニアックな音楽性や世界観と共鳴するかのようにゲームやアニメの “オタク” が多いのですが、彼らの “ナー度” はその中でも群を抜いています。ベーシストで中心メンバーの Tyler Dworak が “この世界” にのめり込んだのは、あるゲームがきっかけでした。
「漠然とした記憶だけど、セガの “アラジン” が最初に買ったゲームかな。実際に覚えている最初のゲームは “ドンキーコング64” だね。クリスマスに買ってもらったんだけど、僕の小さな脳みそが吹き飛ぶくらいの衝撃。あのゲームの巨大さは現実離れしていて、ビーバー (ノーティ) を蹴って探検するのが楽しい世界だった。今でも持っていて、ときどき引っ張り出して遊んでいるよ」
最近はどんなゲームにハマっているのでしょうか?
「最近はアクション・アドベンチャーや RPG が好きだね。時間がかかるゲームや、ストーリーのあるゲーム。音楽と一緒だよ。僕は “ゼルダの伝説” シリーズで育ち、今でもほぼ全作品が大好きで、ずっと夢中になっている。ちょうど今は、ゼルダ・スタイルのゲームのルネッサンスのようなもので、とても素晴らしい。新しい “God of War” も最高だよね。”エルデン・リング” は、プレイヤーにとっては時には悲惨な結果になることもあったけど、オープンワールドのゲームの勝利だよ。
最近は JRPG にハマっているんだけど、ちょっと変わったゲームも好きだよ。”マザー” のゲーム、特に “マザー3” が大好きでね。17年前のゲームとは思えないほど、ストーリーの構成が斬新なんだ。影響されるよね。ここ数年は “ペルソナ5″ に夢中で、あのゲームは僕らのバンド以上にスタイルがあるよ。あと、僕と妻が冗談のように話しているのが、”ゼノブレイド・クロニクル” シリーズ。あのゲームはバカバカしくて、脚本も声優もかなりひどいものだけど、それも魅力のひとつだし、大好きなんだ (笑)」

当然、TWIQH のアルバムにも際立ったストーリーが存在します。
「僕らの音楽はすべて1つの連続した物語だから、このアルバムはファースト・アルバムの直後が舞台なんだ。前作 “Prologue” のリリースからもう5年も経っているんだ。歌詞を読んで内容を推測することなく、インパクトのある形で物語を伝える方法を模索しているよ。もっと決定的な表現方法を見つけたいんだ。
ファースト・アルバムの主人公は、1曲目から推測できるように、”Some Call Me Cynical” という曲だけど、自分をとても卑下していて、人生観が良くないんだ。彼は内向きのスパイラルに陥り、アパートの屋上から飛び降りることになり、”Prologue” の最後で死んでしまうん。僕たちは、人が死ぬとどうなるのかを知りたかった。
何年か前に Eithan のアイデアで、死後の世界は天空の宇宙いうことを思いついてね。死後の世界は “Zon” と呼ばれる惑星から始まり、そこで自分の嫌なところや人生で後悔したことを自分なりに受け止めて、折り合いをつけていく。
だからこのアルバムの物語は、人生の終わりにひどい人間だった主人公が、そのことに気づき、どうすれば変われたか、どうすればもっと良くなれたかをゆっくりと受け入れていくというものなんだ。自分を償うことができれば、その先にあるものを手に入れることができる。彼は今は煉獄から抜け出せないでいるようなものだね。
SF的な要素は少なく、どちらかといえば少しファンタジーに傾いているね。宇宙船やディストピアなどは出てこないよ。手遅れかもしれないのに、より良い人間になろうとする自己反省についてのとても個人的な物語なんだ」
ゲームのようにアルバムのストーリーに浸って欲しいとバンドは望んでいます。
「このアルバムは濃密で、たくさんのことが起こっているんだけど、みんなに歌詞に参加してほしいんだ。このアルバムを聴いて、絶対的なヘヴィネスを追求するのではなく、今まで聴いたことのないような、内省的で奇妙な旅を楽しんでもらいたいんだ。アルバムで語られていることはたくさんあって、ちょっと行間を読むと大きなテーマがあるんだ。そういうことを考えてもらいたいね。
さっきも言ったけど、このアルバムは自分を見つめ直すための大きな作品だし、個人的にもそれはより良い人間になるためにとても大切なことだと思う。だから、その旅を始めるのは大変なことだけど、これをその第一歩にしてほしい。だから、このアルバムの内容を楽しんで、歌詞を読んで、僕らが何を言おうとしているのか、よりよく理解してほしいな」

ゲームからは、ストーリーのみならず、音楽的なインスピレーションも受けているようです。
「”Zon” のベースラインは “ペルソナ3” の勝利のテーマにインスパイアされたものなんだ。偶然、初代スーパーマリオブラザーズの “バウアーズキャッスル” を超彷彿とさせるベースラインを書いたんだけど、これは結局使わなかったね。
アルバム中盤にある “Heliacal Vessels II” のパートがお気に入りなんだ。この曲には、他のどのパートとも違う、Lou が伝道師に変わる部分があるんだ。主人公が出会うキャラクターはほとんど預言者のようなもので、彼は信徒に向かって演説している。ジャズの要素がたくさん入っていて、その部分はとても楽しくて、13分もある超ヘビーな曲の真ん中にあるのだから、おそらく最も奇妙である意味ダサいパートだと思う。このユーモアは多くの人に気に入ってもらえたと思うよ。
最近、僕はシンセサイザーを使った音楽をたくさん作っているんだけど、このゲームがミームになっているのと同じくらい、”Undertale” のサウンドトラックにはインスパイアされたな」
最も長時間プレイしたゲームは何でしょう?
「いくつか思い浮かぶな。生涯では、間違いなくポケモンシリーズがナンバーワンだね。フランチャイズ全体で、何千時間もプレイしているだろう。赤・青・黄以降のゲームは、駄作も含めてすべて何度もプレイしている。見たことのないポケモンを見ると、6歳の頃、レベル100のカメックスだけが大事だったことを思い出すんだ。
“シングルゲーム” ということであれば、パンデミックが始まった頃に夢中になった “ペルソナ5″ は、妻とふたりで合わせて300時間以上やり込んでいる。また、”大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL” と “The Binding of Isaac (アイザックの伝説)” はそれぞれ400時間以上やっているね。どちらもとても上手になるにはそれでも時間が足りないけど、電源を入れて物事を深く考えないようにするには最高のゲームなんだ」

“Zon” の美しいアートワークのように、今までプレイした中で最も美しいゲームは何ですか?
「”大神” だね。最近でこそ人気が出てきたけど、2006年に発売された当時、あのゲームは大失敗という認識だった。当時は新しいゲーム機が出始めたばかりで、PS2のゲームには誰も見向きもしなかったのだけど、このゲームは隅から隅まで本当に素晴らしい出来だった。筆で描いたような独特のグラフィックと、セル画のような陰影が、独特の世界観を作り出していたね。日本の民話に根ざしたストーリー、驚くほど面白く心に響く脚本、ゲーム界で最も素晴らしいサウンドトラック(”ワンダと巨像” に次ぐもの…かも)と相まって、ぼくがこれまで経験した中で最も充実したゲーム体験のひとつとなっているよ。いつもリプレイしているけど、その魅力は決して消えることはないね」
TWIQH の音楽のように、今までで一番難解なゲームは何ですか?
「おそらく “エルデン・リング” だろうね。まあ、他のフロムゲーを全くプレイしていない僕が言うのだから、もう信用は失墜しているけど。バンドのメンバーと一緒にプレイするために、”エルデン・リング” を発売と同時に手に入れたんだけど、荒削りだったね。あのゲームをプレイするのは好きだったし、驚異だと思うんだけど、フロムゲーをプレイしていない人間としてのトラウマは強烈なんだ。このゲームはわざと難しくしているのだ!そして時には自分の実力不足もあるのだ!と悟る必要があったね…でも、このゲームは好きなように遊べるから、その仕組みを学ぶにはもってこいだったよ。とはいえ、本当に難しいボスからは全部逃げていて、マレニアは倒せなかった。もう限界なんだ…」
一番良かったゲームは何でしょう?
「最近よく言われることだけど、”ゼルダの伝説 ムジュラの仮面” が一番好きなゲームだね。”時のオカリナ” も好きだけど、”ムジュラの仮面” はレベルが違うね。Nintendo 64の他のゲームのほとんどは、プレイヤーがある場所から別の場所に移動することが重要で、環境は背景に溶け込むようなものだった。しかし “ムジュラの仮面” は、じっくりと世界を探索し、そこに登場するキャラクターたちと交流することで、初めて成立するものなんだよ。
月が落ちてくる3日間で、時計塔の街が変化していく様子には、いつも驚かされる。市民たちのスケジュールが変わり、彼らとの関わり方によってすべてが違ってくる。ゲームって決してゲーム性だけじゃないんだなあと、子供のころに目から鱗だったんだ。それに加えて、超弩級のサウンドトラックとタルミナという舞台が、これ以上ないくらいにマッチしているんだよ」

そうした “良い” ゲームから学んだこともあります。
「可能な限り包括的で寛容で多様でありたいと思っている。僕は FLUMMOX というバンドの大ファンなんだ。そのバンドの僕らの親友 Max Moberry は、OTHERS BY NO ONE という別のバンドにも参加しているんだけど、彼らは…間違ったラベルを付けたくはないんだけど、そのコミュニティの一員なんだ。そして Max は僕らのアルバムにもフィーチャーされているんだ。”Moonlighter” の一番最後にね。
だから、僕たちはどんな生き方も歓迎するし、誰も排除したくはないんだ。むしろ、少数派の人たちにスポットライトを当てたい。OTHERS BY NO ONE は昨年 “Book II: Where Stories Come From” という素晴らしいアルバムを出していて、FLUMMOX は最近たくさんのライブをやっているよ。この2つのバンドとは Max のおかげでつながることができた」
トレカの収集にも余念がありません。
「”ハースストーン” は大学までずっとプレイしていたよ。物を集めるのは好きなんだけど、実際に物を買って集めるお金がなかったから、無料でゲームができるのは痒いところに手が届くというかそんな感じでね。2021年にBlizzard(Entertainment)が何かと物議を醸し、今のままでは応援できないと思い、その年の夏からプレイをやめたんだ。ちょうどその頃、同僚の多くが仕事帰りや昼休みに定期的に “マジック:ザ・ギャザリング” をプレイしていることを知り、僕も飛びついたんだ。
トレカにハマったのは、同年代のみんなと同じで、ポケモンカードが最初だよ。幼少期は絶対的なアイテムだったな。買いものに行くたびに親にカードをせがんだよ。これもみんなと同じように、実際のゲームの遊び方を知らなかったから、友達に見せびらかしたり、弟に自慢したりするためだけに、カードのお金をせびっていたんだ。それがきっかけで収集癖がついたというかね。その後、”遊戯王”、”マジック・ザ・ギャザリング” へと進んだんだ」

トレカの醍醐味とは何でしょう?
「一緒にプレイする仲間さ。コマンダー形式をプレイするので、だいたい4人組になる。確かに勝つために、できるだけ攻撃的になるゲームもあるけど、たいていの場合は、できる限り非常識なやりとりをしようと思っているんだ。テーブルで誰も見たことのないようなクレイジーなことが起こるのであれば、喜んでゲームに負けるよ。職場の Discord では、デッキのアイデアやルール、トレードなどについてみんなで話している。一緒にいて楽しいコミュニティだよ」
これから、ネットゲームやトレカ、テーブルトークRPG を始める人たちにアドバイスは?
「僕はストーリーを語るのが好きで、即興で人を笑わせるのが好きなんだ。僕がプレイを始めたのは、みんなで貢献できる方法で、お金もかからず、友達と面白い話をしたかったから。初めてプレイする人は、恥をかきたくないとか、オタクになるのが心配とか、いろいろな不安を抱えているし、それは理解できる。キャラクターを演じる “ということは、演じたことがない人” にとっては怖いことなんだよね。地元のゲームショップのイベントに行くのは、安全で歓迎される空間である限りオススメだよ。そこにいるほとんどの人は、たいてい新しい人にやり方を教えることにとても熱心で、理解を示してくれるはずさ」
音楽世界も同様に、初心者やバンドに寛容であるべきでしょう。
「人々はレコードを注文するべきだと思うし、好きなバンドから何かを受け取り続けるべきだと思う。音楽業界は今、バンドがツアーに出られなかったり、ツアーに出ても大赤字だったりと、良い状況ではないので、できる限りバンドをサポートし、クールな音楽を聴くべきだと思うよ」

参考文献: Level Up: The World Is Quiet Here’s Tyler Dworak on Video Games, Card Games, and RPGs

Interview with Tyler Dworak of The World Is Quiet Here