COVER STORY : BLOOD INCANTATION “ABSOLUTE ELSEWHERE”
“A Lot Of People Would Say, ‘I Don’t Even Listen To Any Metal At All, But This Record Somehow Does It For Me,’ Which I Found Amazing”
ABSOLUTE ELSEWHERE
「PINK FLOYD をどう説明する?彼らはサウンドトラックを作った。他のこともやっていた。”彼らはメタルやロック、プログのバンドだ” と言われるのではなく、ただ “バンドの名前だ” と言われるような立場にいることは、とてもクールなことだと思う。そして、僕らもその段階に差し掛かりつつある。BLOOD INCANTATION はただ BLOOD INCANTATION なんだ」
一見、BLOOD INCANTATION の作品はとっつきにくいように思えるかもしれません。デンバーの実験的デス・メタル・バンドは、過去10年間、音楽的挑戦だけでなく、一見不可解で幻覚的なイメージも包括する世界に肉薄してきました。その哲学は、彼らの歌詞だけでなく、アルバムのアートワークにも浸透しています。
つまり、BLOOD INCANTATION を完全に理解するには、エイリアンやピラミッド、オベリスクの意味を理解しようとする必要があるのです。CANNIBAL CORPSE が “スター・ウォーズ” なら、BLOOD INCANTATION は “2001年宇宙の旅”。
難解な音楽を披露するバンドにもかかわらず、彼らは幅広く多様な聴衆を惹きつけることに成功しています。2016年に発表された初のフルアルバム “Starspawn” は、バンドの土台を築き、より壮大でプログレッシブな野心を示す、最初の突破口となりました。しかし、扉を大きく開けたのは2019年の “Hidden History Of The Human Race” でしょう。その代表曲は18分ものサイケ・エピック “Awakening From The Dream Of Existence To The Multidimensional Nature Of Our Reality (Mirror Of The Soul)” であるにもかかわらず、”Hidden History” は2010年代で最も幅広く評価されたメタル・アルバムの1枚となりました。そうして、ブルース・ペニントンの象徴的なアルバム・ジャケット(グレーのエイリアン、淡いブルーの空、謎の浮遊物)をあしらったTシャツは、インディ・ロックのライヴで見かけるくらいに有名になったのです。
ギタリストの Morris Kolontyrsky は、「多くの人が、”私はメタルをまったく聴かないのに、このレコードはなぜか聴いてしまう” と言うんだ」 と目を細めます。
めまいがするほど広大な3枚目のLP “Absolute Elsewhere” を発表する準備中、彼らは増え続けるファンベースに対して過激なまでにオープンな姿勢をとりました。アルバムの発表と同時にDiscordチャンネルが開設され、そこでバンドはリスナーとたわむれたり、たわごとを言い合ったりしています。
彼らは、アルバムを構成する2曲のロング・トラックのうちの1曲目、”The Stargate” のMVを兼ねたショート・フィルムのプレミアに出席し、ベルリンの伝説的なハンザ・スタジオでのセッションを詳細に描いたドキュメンタリーの制作を監督しました。メイキング・ドキュメントのタイトルは、ハンザでミックスされた CAN の名曲から引用した “All Gates Open” “全ての扉は開いている”。ドラマー Isaac Faulk はその意味を説明します。
「このドキュメンタリー、そしてアルバムのエトス全体がオープンであることなんだ。自発性に対する開放性、コラボレーションに対する開放性。積極的に指示したり、箱の中に押し込めようとするのではなく、僕たち全員が波に乗っていたこの相互の創造的衝動。だから、すべての門が開かれているんだ」
BLOOD INCANTATION には最初から、濃密でクレイジーなアイディアが詰まっているけれど、そこにリスナーを招き入れたいんだ。隠された神秘的なものになろうとしているのではない。純粋なレベルで人々に関わってもらいたいんだ」
ハンザ・スタジオを訪れ、POWER TRIP や自身のバンド、SUMERLANDS のプロデュースで知られる Arthur Rizk とレコーディングを行った BLOOD INCANTATION。彼らがデビュー以来テーマとしてきたのは、人類の進歩に対する地球外からの影響と、すべての生命の相互関連性でした。ハンザの異質な環境に身を置くことは、新しいレコーディングの雰囲気を形成するのに役立ちました。
「壁には香のようなものが染み込んでいて、何十年も何十年もそこでレコーディングしてきた人たちの何かがそこにあるんだ」
ハンザのスタジオはまさに “Hidden History” でした。彼らは、ブライアン・イーノがデヴィッド・ボウイのエンジニアリングをしていたときに、ミキシング・デスクの脇の壁に自分の名前を書き込んだ場所を見ます。ボウイのレコーディングで使われたピアノがスタジオに残っていて、その音はアルバムに収録されました。TANGERINE DREAM が使用したマイク(おそらく現在では35,000ユーロの価値がある)は、”クローゼットの中” だったと、彼らはまだ信じられない様子で言います。そして BLOOD INCANTATION はそのすべてを “Absolute Elsewhere” に注ぎ込み、さらに9,000ユーロ相当のシンセサイザーを追加購入したのです。
バンドは、市内にある練習場で、9日間かけてアルバムの曲を40〜50回通しでリハーサルしました。ハンザ入りする前の週末、彼らはオリンピアシュタディオンで行われた DEPESCHE MODE のギグに8万人の観客とともに参加しましたが、このイギリスのシンセ・ポップ・グループも3枚のアルバムををハンザで制作していたのです。
“Absolute Elsewhere” の核心には、BLOOD INCANTATION の核心と同じように二律背反が存在します。一見、このアルバムは近寄りがたく、謎めいた作品でしょう。曲は2曲だけで、両者とも3つの楽章に分かれており、そのそれぞれが20分を超えています。そして BLOOD INCANTATION の過去のどのリリースよりも、デスメタルの攻撃性にクラウト・ロック、ダーク・アンビエント、70年代プログからの大胆なアイデアを加えており、作品の最も密度の高い部分では、アイデアからアイデアへと奔放に自由気ままに飛躍していきます。
その一方で、ギター・パートは、エクストリームであっても豊かなメロディーを奏で、かつてはミックスの奥深くに埋もれていた Paul Riedl のボーカルは鮮明。そのフレージングとアーティキュレーションを重視した彼の歌は、間違いなく BLOOD INCANTATRON 史上初めて、キャッチーを極めています。そして Riedl はクリーン・ボーカルを多く披露もしています。つまり、”Hidden History” が、ほとんど偶然に広く一般的なファン層を見出したとすれば、”Absolute Elsewhere” は、さらに多くの人々に届く態勢をしっかりと整えているのです。
「”Absolute Elsewhere” のサウンドは断固としてブルータルで、これまでのどの作品よりも飛躍的にテクニカルでプログレッシブだ。ただ、その過激さとは裏腹に、よりメロディアスでキャッチーで親しみやすい。この巨大で残酷なものの泥沼の中で、キャッチーな部分があればそれでいい。BLOOD INCANTATION の影響範囲は常に外に向かっているのだから。だから、僕たちが最初の範囲から外れたのものから学び始めることは避けられないし、常にそれらを大きな血の呪文のピラミッドに組み込んでいくんだよ」
BLOOD INCANTATION の誰もが、2022年にリリースされたアンビエント作品 “Timewave Zero” なくして “Absolute Elsewhere” はあり得なかったと信じています。4人のメンバー全員が典型的なギターとドラムの代わりにヴィンテージのシンセサイザーを演奏していたアルバムを、気に入った人も批判した人もいました。しかし、バンドにとって “Timewave Zero” は、自分たちのサウンドのパラメーターを広げる手段であり、同時に創造性の奥行きを広げる方法でもあったのです。”Timewave Zero” の経験は、バンドが “こうあるべき” という既成概念を打ち砕きました。
「メンバーと、異なる方法で、異なる言語で、一緒に音楽を演奏する方法を学んだ。僕たちはそして、”Timewave Zero” を通してより親密な友人にもなれたんだ」Kolontyrsky は言います。「”Absolute Elsewhere” では、その感性が発揮されたのだと思う。僕たちの絆はとても強いから、誰かの最悪のアイデアでも、誰も敬遠したり馬鹿にしたりすることはないんだ。
僕らはメタル・バンドが非メタルのレコードを作るのが好きなんだ。10代の頃、エクストリームでアンダーグラウンドなブラックメタルやデスメタルに夢中になっていて、CORRUPTED のようなバンドが大好きだった。あるいは ULVER のようなバンドは、すぐにアコースティックになり、その後、これまで以上にハードになって戻ってくる。そうしたバンドはすべて、サウンドスケープやアトモスフィアを取り入れている。彼らはそれをまったく恐れていない。彼らは逆張りをするためにやっているのではない。自分たちの音楽がいかに高尚かどうかを証明しようとしたわけでもない。彼らはただ、自分たちの旅路をたどるアーティストであり、僕たちのような若く多感な人々に、メタルにノンメタルを取り入れることが完全に可能であることを示しただけなんだよ。物理的に可能なことなんだ」
そう、彼らはモダン=多様性という、モダン・メタルの方程式を完全に理解しています。そして、もうひとつの重要なステップは、バンドが昨年秋にリリースした両A面シングル “Luminescent Bridge” でした。デスメタルのルネッサンスについて、まだ知らない人は多いかもしれませんが、しかしそれはアンダーグラウンドの洞窟でますます大きく鳴り響いています。CANNIBAL CORPSE や OBITUARY が活動を続け、会場の規模をアップグレードしているのと同様に、このサブジャンルの新しい形態もまた台頭してきているのです。そのひとつがコズミック・デス・メタルで、人体の切断を歌った曲を避け、人間存在に関するより広い形而上学的な問いを探求することを好んでいます。
昨年9月15日、コズミック・デス・メタルの先駆者2組が新曲を発表しました。トロントの TOMB MOLD が発表した “The Enduring Spirit” は、90年代のスピリチュアルな先達、CYNIC のサイケデリックな洗練に大きく傾倒した驚異的な作品で、最終曲の “The Enduring Spirit Of Calamity” は、クリスタルのようなギター・ソロと長く繰り返されるリフレインを含み、デスメタルに対する既成概念を大きく変えました。
同日、デンバーの BLOOD INCANTATION が12インチ・マキシ・シングル “Luminescent Bridge” をリリースしました。タイトル・トラックは、シンセとクリーン・ギターによるマントラのような作品で、2022年のアルバム “Timewave Zero” のアンビエントな実験性を引き継いでいましたが、A面の “Obliquity Of The Ecliptic” では、地球を震撼させるアルバムのメタリックな炎を宿しながらメロディックに飛び立ちました。
つまり、”Absolute Elsewhere” の鼓動するメロディックなハートは、”架け橋” のおかげでここまで完全に露わになったのです。「”Luminescent Bridge” の両面は、”Hidden History” よりもメロディーを取り入れやすくなっている」と Riedlyは言います。「”Obliquity Of The Ecliptic” の最後に巨大でヘヴィーなメタル・ギター・ソロがある。高揚感があって、メロディアスで、勝利的なんだ。それから “Luminescent Bridge” はほとんどメロディックなパートばかりだ。不協和音は最初と最後のスペース・サウンドだけ。それ以外はすべて、繰り返しのギター・リフ、繰り返しのギター・メロディ、そして大きく舞い上がるカラフルなメロディがある。でも、とてもシンプルなんだ」
BLOOD INCANTATION のサウンドスフィアでは、時間は平坦な円となり、まるで、彼らが長年にわたって発表してきたすべての音楽が、独自の次元に同時に存在しているかのよう。既知の音楽宇宙のはるか彼方への彼らの旅は、私たちの現実を構成する最も小さな粒子、存在の大きな理論、そして私たちの意識そのものを探求するもの。Issac Foulk は言います。
「僕はよく、多くのバンドは自分たちのサウンドにこだわりすぎると、その輪を自ら小さくしてしまうと言ってきた。でも僕らは、自分たちのサウンドを追求していくうちに、輪が大きくなり、さらにいろいろなものが加わっていくような気がするんだ」
BLOOD INCANTATION は、彼らの愛するビデオ・ゲームで例えれば、RPGでキャラクターがレベルアップするように、スキルツリーを通してレベルアップしているように思えます。レコードを出すたびに、バンドはXPを獲得し、新しいスキルをアンロックしていくようです。
「リリースのたびに、僕たちはハードウェアの能力を最大限に引き出している」とフレットレス・ベースの使い手 Jeff Barrett は言います。「そしてうまくいけば、僕たちは学び、次のリリースでハードウェアを拡張して、さらにその学びをプッシュすることができる」
BLOOD INCANTATION が “Absolute Elsewhere” に望んでいたのは、Faulk に言わせれば、「大きくて、壮大で、自由で、境界のない、超越した存在」になることでした。
“The Stargate” では、激しいリフが残響の多いダブのようなセクションへと進み、PINK FLOYD の “Echoes” のジャム・セクションを想起させるパッセージへと展開します。そして彼らは、あからさまに David Gilmoure 風のギター・ソロを聴かせます。そして嵐の前の静けさ、シンセサイザーとアコースティックの波の音。
「BLOOD INCANTATION は当初から、デスメタル以外のエクストリーム・メタル(特に90年代と2000年代)が、いかに様々な方向に突き進む音楽であるかに興味を持っていた」と Faulk は証言します。
“The Stargate” は、無限の宇宙に奉仕する儀式的な肉体の破壊を描いています。「すべての生命は一時的なものであり、永続するものは意識である」
一方で、Riedl と Kolontyrsky の音楽的応答が、アルバムのB面 “The Message” です。”The Stargate” が BLOOD INCANTATION のこれまでのビジョンの集大成だとすれば、”The Message” は彼らが向かっている “絶対的な別の場所”。
この曲は、エクストリーム・メタル内部の戦争をシミュレートしているかのよう。恍惚としたブラックメタルのセクションが近年最高のスラッシュ・メタル・リフと競い合う至高。彼らはその高尚な音楽性ゆえに、狙った場所にハンマーを振り下ろすことができるのです。
Faulk がこの曲の中でサイケ・ロック・セクションと表現している部分は、彼にとって特別な挑戦でした。小節のタイミングがとても奇妙だったので、彼はリハーサルの間中、コンピューターで曲を追いかけ、躍起になってタイミングを捕まえようとしていました。
“The Message” の歌詞は、バンドの哲学的な水域に深く潜り込み、瞬間の陶酔状態を認めていきます。それは Faulk が「強烈な明晰さ、一体感、ありのままを受け入れること」と表現するもの。
「僕たちの音楽がやろうとしていることのひとつは、ジャンルだけでなく、バンドがなりうるもの、バンドができることの境界線を押し広げること。僕らは10年以上前にもこのようなことを話していた。これは、BLOOD INCANTATION の大きなテーマだった。自分たちがどこから来たのか、何者なのか、自分たちの深い信念を再考すること……。世界史や人類の起源に地球外生命体が影響を及ぼしている可能性。
それは、哲学とアイデアのイースト・ミーツ・ウエスト(東洋と西洋の融合)だ。意識とは、西洋科学がそうみなしたもの、つまりニューロンがたまたま発火しているだけで、もっと深いものがあるわけではない。でも、もっと深く掘り下げていくと、もっと多くのことがあるように思えてきて、すべての意識とすべての生命との間には、もっと深いつながりがあるように思えてくるんだ」
“Absolute Elsewhere” は、キーボーディスト兼フルート奏者の Paul Fishman が結成した70年代のプログレッシブ・ロック・バンドにちなんで名づけられました。彼はエーリッヒ・フォン・デニケンの1973年の著書 “In Search Of Ancient Gods” にインスパイアされたコンセプト・アルバムをレコーディングするためにそのグループを結成。最も注目すべきは、KING CRIMSON の Bill Bruford がセッション・ミュージシャンとしてそこでドラムを叩いていたことでしょう。
奇妙な偶然ですが、ABSOLUTE ELSEWHERE の長らく行方不明だったセカンド・アルバム “Playground” が今年リリースされたばかり。BLOOD INCANTATION がアルバム・タイトルにこのバンドを引用し、Robert Fripp がボウイやイーノとハンザでレコーディングしたときと同じ空間を巡ったことで、宇宙の閉塞が解け、ABSOLUTE ELSEWHERE の作品が再び物質的に存在するようになったかのようにも思えます。
そして実際、”All Gates Open” のドキュメンタリーは、ハンザがこの作品のための適切な実験場であったことを明らかにしています。ハンザは、デヴィッド・ボウイとイギー・ポップがベルリンで重なり合った時代の中心にあったスタジオで、”Timewave Zero” に唯一最大の影響を与えた TANGERINE DREAM はこの場所でアルバム “Force Majeure” をレコーディングしていました。彼らはハンザでの大規模なセッションでそのすべてを活用することができたのです。Riedl がその喜びを語ります。
「同じ芸術的な道に身を置くだけでなく、僕たちが聴いてきたレコードで彼らが使ったのと全く同じ機材や回路を使うことで、僕たちがインスパイアされた伝説的な人々を解明することができた。ほとんどの場合、誰かがこの機材を持っていたとしても、貴重すぎて触ることはできないだろう。でも、スタジオ全体がそうだからね。スタジオには、展示されているのに使えない機材はなかった。すべて、使ってレコーディングするためにあったんだ」
機材だけでなく、バンドはゲスト・ミュージシャンも自由に起用し、アルバムの限界をさらに押し広げました。2005年から TANGERINE DREAM を率いている Thorsten Quaeschning は、”The Stargate” の第2楽章に瑞々しいシンセ・サウンドスケープを提供し、SIJJIN と NECROS CHRISTOS の Malte Gericke は絶叫するような死のうなり声と話し言葉のボーカルを母国語のドイツ語で加えました。しかしおそらく最も重要なのは、HALLAS のキーボーディスト Nicklas Malmqvist が名誉メンバーとしてバンドに加わり、ピアノ、シンセサイザー、メロトロンのパートを重ねることで、このアルバムの70’sプログへの傾倒を顕在化させたことでしょう。BLOOD INCANTATION のメンバー4人だけで構想・実行された “Timewave Zero” とは異なり、”Absolute Elsewhere” のシンセ・パートはメタル圏外から提供されたのです。そして、それが重要でした。
「メタル系の人がアンビエントを作ると、ある種特定のサウンドになる」と Riedl は認めます。「でも Nicklas の耳は “メタルっぽさ” から完全に切り離されていて、だからメロトロン・フルートのようなクレイジーなアイデアをたくさん持ってくるんだ。ドキュメンタリーの中で、彼が “あまりヒッピーっぽいサウンドにはしたくない” と言っているのがわかる。でも、それが僕たちの望みなんだ!僕たちは20年以上メタル・バンドをやってきたから、ヒッピー・サウンドにはできない。彼の頭脳はもっと自由だから、そういうインスピレーションを取り入れることができるんだ」
バンドがデスメタルの繭の外に出てハンザでレコーディングしたり、メタル外の人たちと共演したりするのは、メタルヘッズに一見異質な分野が織り成す成果を示し、明確なつながりを作るためでもあります。Riedl は、BLOOD INCANTATION が人々に示したいことの例として、クラウトロックのパイオニア Conrad Schnitzler が MAYHEM の “Deathcrush” に提供したイントロ、”Silvester Anfang” を挙げました。
「この巨大なタペストリーは、影響と創造性の連続体における僕らの位置を示している。僕たちは、リスナーに対して、自分たちがこの異世界に参加していることだけでなく、そうやって広がる “輪” が、彼らが想定しているよりもずっと近くて大きいものであることを説明しようとしているのさ」
「つまり、最もカルト的でアンダーグラウンドでブルータルなブラック/デスでありながら、同時に高尚なエレクトロニック・ミュージックや70年代のプログ・スタイルのレトロ・バンドの世界にも入り込めるということを示している」と Kolontyrsky は付け加えます。「このバンドが成長するにつれて、そうしたすべてのコーナーに同時に進出していく。このバンドが成長するにつれて、ニッチで小さなもののひとつひとつに突き進んでいくんだ」
Steve. R. Dodd のアートワークもこのアルバムに欠かせないピースのひとつ。
「アートワークは僕らの包括的な美学の一部であり、それぞれが全体的なコンセプトの段階的な拡大に貢献している。僕たちのリリースを見れば、”ああ、これは明らかに BLOOD INCANTATION だ” とすぐに見分けることができる。さまざまなアートワークに描かれたそれぞれの風景が、理論的には同じ宇宙内の新しい場所となりうるという意味で、僕らの視覚的宇宙の発展にとって重要なんだよね」
Riedl の “Absolute Elsewhere” の歌詞には、BLOOD INCANTATION のディスコグラフィ全体にも言えることでしょうが、そうした考え方が反映されています。神秘主義やオカルト、古代のエイリアンやシュメール神話へのベールに包まれた言及の下で、Riedl は根本的に人間のつながりについて、つまり、理解しているかどうかにかかわらず、私たちは皆、集合意識の中に組み込まれていると語っているのです。MAYHEM と CAN、TIMEGHOUL と TANGERINE DREAM を結びつけるのと同じ絆が、私たち一人ひとりを互いに結びつけるのです。
「ダンスの中で自分の居場所を認識すること/己のビートを時間内に知り、どこからステップを踏むべきか知ること” と、Riedl は “The Message” の中で歌っています。そのダンスを学べば、BLOOD INCANTATION の見かけの不可解さは消え去るはずです。
「リスナーに直接語りかけたかったんだ。僕が話そうとしていることを理解するため、その人が戦わなければならないようなことはしたくなかった。BLOOD INCANTATION を聴いているとき、彼らもまた僕たちの一部なのだということを、暗黙のうちに理解してほしかった。それは巨大な、つながった相乗効果で、彼らがどこにいようと、僕たちがどこにいようと、両者をつなぐ心の橋なんだ。いわば、リスナーは僕らに侵入するようなものさ」
参考文献: STEREOGUM:Opening The Gates With Blood Incantation
THE QUIETUS:Expanding the Circle: Blood Incantation Interviewed
WESTWORD:Blood Incantation Is Taking Death Metal to New Frontiers
ANTICHRISTMAG:Interview with Paul Riedl of BLOOD INCANTATION
弊誌インタビュー2019
BLOOD INCANTATION最新作『Absolute Elsewhere』は本日配信開始。フィジカル日本盤は契約手続きで1か月ほど待機したので11/6発売。日本のみ『Luminescent Bridge』初CD化のボーナス・ディスク付2枚組、装丁も海外盤とは大きく異なる紙ジャケ仕様。しばしお待ちください…https://t.co/F8PNvWsDvr
— Daymare Recordings (@daymarerec) October 4, 2024