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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SOEN : RELIANCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN LOPEZ OF SOEN !!

“Progressive music should evolve, not just technically, but emotionally otherwise it stops being progressive and very often complexity can be “in the way” of emotion.”

DISC REVIEW “RELIANCE”

「誰かとの比較は避けられないし、僕たちはそれをネガティブなものとして捉えてはいないよ。”Reliance“ はより直接的で拡大した音楽なので、アリーナ・ロックやメタルとの関連性が自然と強く出てくるよね。だけど、僕たちの意図は特定のバンドに似せようとしたのではなく、明確かつ誠実に音楽を伝えたいというものだった。もし楽曲が人々の心に深く響くなら、それは僕たちにとって大きな喜びだ。だけど、それが目的で曲作りをしているわけではないんだよ」
2010年、かつて OPETH と AMON AMARTH というビッグ・バンドに所属していた名ドラマー Martin Lopez は、自身の新しいバンドを立ち上げました。SOEN と名付けられたこのバンドは、非常に優れたミュージシャン集団 (あの Steve DiGiorgio も在籍) で、Lopez はそのサウンドを “メロディアスでヘヴィ、複雑で、他のどのサウンドとも全く異なる” と表現していました。しかし、そんな彼の意図とは裏腹に、SOEN のサウンドは常に誰かと比較される運命にありました。
初期のアルバム “Cognitive” や “Tellurian” では TOOL と比較されることが多かったものの、SOEN は明らかにクローン以上の存在であり、Lopez の出自である OPETH や KATATONIA のプログ・メタル的な血肉にナイーブで心に迫るメロディを加えて見事な化学反応を起こしていました。近年は初期のアルバムのようなオルタナティブな複雑さ、プログレッシブな紆余曲折は減退しましたが、一方でメタリック & グルーヴィーでありながらアトモスフェリックという SOEN 独自の世界観は伸張。重要なのは、そこにいつも、心を震わせるメロディの泉が存在すること。
そうして、歌の力が戻りつつあるメタル世界で、SOEN は堂々たるプログレッシブ・アリーナ・メタルの実現へと舵を切りました。DISTURBED や NICKELBACK のグルーヴィーでシンガロングを誘うコーラスと、プログレッシブでナイーブな感情の共存。Joel Ekelof の歌声は、脂が乗り切ってまさに今が旬。
「依存は心地よいものだけど、同時に危険なものでもある。このアルバムは、答えを与えることではなく、僕たちが何に、そしてなぜ依存するのかを振り返ることを促しているよ。幸せを探し求めるとき、僕らは依存を恐れながらも受け入れなければならないだろう。ただ、何に頼るのかについては、非常に慎重にならなければならないと思う」
そんな両極を抱きしめたアルバムで SOEN がテーマとしたのは “Reliance” “依存”。SNS の発達により、私たちは見知らぬ誰かと共感しながら、何かの “推し” にかつてより深く依存するようになりました。もちろん、辛い現実を生きていく中で、幸福感や満たされた感覚を得るため好きなものに依存することは、ある意味でライフハックなのかもしれません。しかし、盲目的に “推し” に依存し、”推し” を全肯定することで、自己という最も重要な存在が消えてしまってはいないだろうか? SOEN は盲信的な依存が当たり前となった世界で、依存を恐れ、自分の頭で慎重に考慮することを促しています。
“Primal” では “無意識にスマホをスクロールしている” とか “SNSは暴力的なポルノ” といった表現が使われ、”Drifter” では “アルゴリズムを操る奴らに振り回されるな” といった辛辣な言葉が飛び出します。そもそも、あなたが依存しているのは “推し” なのでしょうか?ひょっとすると、あなたが依存しているのは “推し” ではなく、SNS そのものなのかもしれません。もしそうだとしたら、あなたが孤独を感じ、誰かと少しでも共感したいだけなのだとしたら、SOEN のアリーナ・メタルで共に歌えばいい。もちろん、進化した感情でプログレッシブに思考を巡らせながら。
今回弊誌では、Martin Lopez にインタビューを行うことができました。「音楽のトレンドは移り変わるけど、感情は残り続ける。僕たちが始めた頃は、たしかにテクニックと複雑さが非常に際立っていて、それは刺激的なことだったよね。でも今は、アトモスフィア、ダイナミクス、そして傷つきやすさにもっと居場所があって、僕たちはそれを歓迎しているんだよ。プログレッシブ・ミュージックは、テクニックだけでなく、感情面でも進化するべきなんだ。そうでなければ、複雑さが感情の “邪魔” になってしまう。よくあることだけど、それはもうプログレッシブな音楽とは呼べないからね」 3度目の登場。どうぞ!!

SOEN “RELIANCE” : 10/10

INTERVIEW WITH MARTIN LOPEZ

Q1: Soen was formed in 2010, so we have just passed our 15th anniversary.In the meantime, the band has gained more and more fans and is now one of the standard bearers of prog metal. Do you feel that the band is getting stronger and bigger?

【MARTIN】: Yes, we definitely feel that. What’s most rewarding isn’t just that the audience has grown, but that the connection has deepened. The band feels stronger because we’ve learned to trust our instincts and each other. Growth for us isn’t about numbers, it’s about clarity, confidence, and purpose, and in that sense, Soen feels more solid than ever.

Q1: SOEN の結成は2010年ですから、ちょうど15周年を迎えたところですね。その間、バンドは多くのファンを獲得し、今やプログ・メタルの旗手のひとつとなっています。 バンドはますます強く、大きくなっていると感じていますか?

【MARTIN】: そうだね、確かにそう感じているよ。一番嬉しいのは、観客が増えたことだけでなく、絆が深まったことだ。自分たちの直感とお互いを信じられるようになったおかげで、バンドはより強くなったと感じているんだ。
僕たちにとって成長とは、数字ではなく、明確な信念、自信、そして目的意識を持つことで、その意味で、SOEN はこれまで以上に強固なものになったと感じているんだよ。

Q2: When Soen started, Djent and technique were at their peak, but now I have the impression that more atmospheric bands are being sought after. How do you feel about such changes in the prog world?

【MARTIN】: Trends come and go, but emotion stays. When we started, technique and complexity were very prominent, and that was exciting.
Now there’s more space for atmosphere, dynamics, and vulnerability and we welcome that. Progressive music should evolve, not just technically, but emotionally otherwise it stops being progressive and very often complexity can be “in the way” of emotion.

Q2: SOEN がスタートした頃は、Djentやテクニックが全盛でしたが、今はよりアトモスフェリックなバンドが求められている印象があります。 そうしたプログ世界の変化をどう感じていますか?

【MARTIN】: 音楽のトレンドは移り変わるけど、感情は残り続ける。僕たちが始めた頃は、たしかにテクニックと複雑さが非常に際立っていて、それは刺激的なことだったよね。
でも今は、アトモスフィア、ダイナミクス、そして傷つきやすさにもっと居場所があって、僕たちはそれを歓迎しているんだよ。プログレッシブ・ミュージックは、テクニックだけでなく、感情面でも進化するべきなんだ。そうでなければ、複雑さが感情の “邪魔” になってしまう。よくあることだけど、それはもうプログレッシブな音楽とは呼べないからね。

Q3: The great thing about Soen is that you are always challenging and changing! Your new album “Reliance” feels more like an arena type of metal or rock. How do you feel about comparisons to Disturbed and Nickelback, for example?

【MARTIN】: Comparisons are inevitable, and we don’t see them as negative.
Reliance is more direct and expansive, and that naturally invites references to arena rock and metal. But our intention was never to sound like any particular band, we want to communicate clearly and honestly. If the songs connect with people in a bigger way, that’s something we embrace but it isn’t something that dictates how we write songs.

Q3: SOEN の素晴らしいところは、常に挑戦し、変化し続けていることでしょう! 新しいアルバム “Reliance” は、アリーナ・タイプのメタルやロックに接近した感じがします。 例えば DISTURBED や NICKELBACK と比較されることについてはどう感じますか?

【MARTIN】: 誰かとの比較は避けられないし、僕たちはそれをネガティブなものとして捉えてはいないよ。
“Reliance“ はより直接的で拡大した音楽なので、アリーナ・ロックやメタルとの関連性が自然と強く出てくるよね。だけど、僕たちの意図は特定のバンドに似せようとしたのではなく、明確かつ誠実に音楽を伝えたいというものだった。もし楽曲が人々の心に深く響くなら、それは僕たちにとって大きな喜びだ。だけど、それが目的で曲作りをしているわけではないんだよ 。

Q4: Just before Ozzy passed away, the world was united by the wonderful “Mama, I’m Coming Home”. I feel that the “power of sing,” which had been lost for a long time, has returned to metal. In that sense, I feel that “Reliance,” in which Joel’s song ability is at its best to date, also corresponds to the revival of such “power of sing”, would you agree?

【MARTIN】: Strong melodies and expressive vocals have always been our strongest tool, the hard part is to make aggressive music that is interesting to hear but doesn’t overshadow the vocals and the message behind it. On Reliance Joel’s voice plays a central role in conveying emotion and humanity and with that comes a need for clarity, strength and vulnerability that are very important for our sound.

Q4: オジーが亡くなる直前、あの素晴らしい “Mama, I’m Coming Home” で世界はひとつになりました。 長い間失われていた “歌の力” がメタルに帰ってきたような気がしますね。
そうした意味で、Joel の歌唱力がこれまでで最も発揮されている “Reliance” も、その “歌の力” の復活と呼応しているような気がしますが?

【MARTIN】: 力強いメロディーと表現力豊かなボーカルは、常に僕たち最大の武器なんだ。難しいのは、聴いていて興味深いアグレッシブな音楽を作りつつ、ボーカルとその背後にあるメッセージを覆い隠さないことなんだよね。
“Reliance” では、Joel の声が感情と人間味を伝える上で中心的な役割を果たしている。それに伴い、僕たちのサウンドにとって非常に重要な、明瞭さ、力強さ、そして傷つきやすさが求められているのさ。

Q5: Your drumming is again excellent and you have a personality that is always recognizable as Martin Lopez. Are you still trying new things and striving to get better?

【MARTIN】: Absolutely. Growth never stops. Even if my style is somehow recognizable, I’m always searching for new textures, new approaches, and better ways to serve the song.

Q5: あなたのドラミングは今回も素晴らしく、いつも Martin Lopez とわかる個性がありますね。 今でも新しいことに挑戦し、上達しようと努力していますか?

【MARTIN】: 絶対にね。 成長は決して止められないよ。 自分のスタイルがなんとなくわかっていても、常に新しいテクスチャーや新しいアプローチ、曲に役立つより良い方法を探しているからね。

Q6: “Reliance” is a very striking title. We are now strongly dependent on something through social networking sites and the Internet, or on social networking sites themselves, aren’t we? What message are you sending to this world?

【MARTIN】: Reliance reflects our relationship with the world around us.
Dependence can be comforting, but also dangerous.
The album isn’t about giving answers, but about encouraging reflection on what we rely on, and why.
You have to fear dependence but also embrace it when searching for happiness, you just have to be very careful on what to depend on.
We don’t believe that individuality is a strength in itself, we need to be able to rely on each other to feel whole.

Q6: “Reliance” “依存” というタイトルもとても印象的ですね。 私たちは今、SNSやインターネットを通じて、あるいはSNSそのものでも、何かに強く依存していますよね。 あなたはこの世界にどんなメッセージを送っていますか?

【MARTIN】: 依存は、僕たちを取り巻く世界との関係性を反映しているんだ。
依存は心地よいものだけど、同時に危険なものでもある。
このアルバムは、答えを与えることではなく、僕たちが何に、そしてなぜ依存するのかを振り返ることを促しているよ。
幸せを探し求めるとき、僕らは依存を恐れながらも受け入れなければならないだろう。ただ、何に頼るのかについては、非常に慎重にならなければならないと思う。
僕たちは、ひとりひとりの個性がそれ自体で強みになるとは考えていなくてね。僕たちは、互いに頼ることで初めて、完全な存在だと感じられるんだよ。

Q7: Speaking of social networking sites, instant music clippings and 30-second performance videos are now the norm. The world has become the opposite of progressive music, which requires long, disciplined work and thought, but why do you still continue to do this kind of music?

【MARTIN】: Because depth still matters. Our music asks something of the listener, time, patience, openess and we believe there are still people who want that experience. We need to do anything we can to resist superficiality and remind ourselves that meaning is built slowly, not instantly.

Q7: SNSといえば、インスタントな音楽の切り抜きや30秒の演奏動画が当たり前の時代となり、長い時間をかけて鍛錬し、集中力と思考が不可欠なプログレッシブな音楽とは真逆の世界になってしまいました。それでもなお、こうした音楽を続けているのはなぜですか?

【MARTIN】: 深みは依然として重要だよ。僕たちの音楽はリスナーに時間、忍耐、そして開放性を求めていて、そうした体験を求める人はまだまだいると信じているからね。表面的で薄っぺらな表現に抵抗し、アートの意味は瞬時にではなくゆっくりと築かれるということを改めて認識するために、僕たちはあらゆる努力をする必要があるんだよ。

Q8: The lyrics of the last song, “Vellichoir”, “In the dark we are all the same; in the light we can only be us” are so beautiful and I can relate. In the 20’s the world became a darker place, with wars, divisions, discrimination, and oppression getting worse. What can music and heavy metal do in such a dark world?

【MARTIN】: Music reminds us of our shared humanity. Metal, in particular, has always been a place where darkness is confronted rather than ignored. It offers understanding, and connection and sometimes that’s enough to help people feel less alone in difficult times.

Q8: 最後の曲 “Vellichoir” の歌詞、”In the dark we are all the same; in the light we can only be us” はとても美しく、共感できました。 20年代、世界は暗くなり、戦争、分断、差別、抑圧がひどくなっています。 そんな暗い世界で、音楽やヘヴィ・メタルには何ができるのでしょう?

【MARTIN】: 音楽は僕たちに共通する人間性を思い出させてくれる。特にメタルは、闇を無視するのではなく、それと対峙する場であり続けてきたからね。メタルは理解と繋がりをもたらし、時にはそれが困難な時期、孤独感を和らげるのに十分な力となるんだ。

MESSAGE FOR JAPAN

To our fans in Japan, thank you for your passion, your respect, and your deep connection to music. We hope that soon we get the chance to play for all you in your beautiful country, until then, Thanks for all the support.

日本のファンのみんな、音楽への情熱、敬意、そして深い繋がりに感謝を。日本という美しい国で、みんなのために演奏できる日が早く来ることを願っているよ。応援してくれてありがとう!

MARTIN LOPEZ

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SOEN MUSIC

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VIANOVA : HIT IT!】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEX KERSKI OF VIANOVA !!

“I mean our goal is to make something that is not fully Metal, so if that’s an issue with someone i guess they can just listen to something else. It’s totally fine to have different preferences.”

DISC REVIEW “HIT IT!”

「僕らはこのアルバムを宣伝するためにソーシャルメディアをたくさん使ってきた。 個人的には、これからのバンドがTiktokやinstagramを使って自分たちを売り込むのをたくさん見てきたし、そんなに新しいことではないんだ。BRING ME THE HORIZON や SUICIDE SILENCE のようなメタルコア・バンドの多くが、昔myspaceでビッグになったことを考えればね。 正直なところ、それらはツールでしかなくて、親和性があるかどうかは、それをどう使いたいかによるような気がする。僕らはある程度力になっていると感じるけどね。自分たちでプロモをやることで、バンド外部の人に頼らなくてすむから。昔、それで嫌な思いをしたからね。僕らは自分たちの音楽が良くて、それをライブで演奏できれば、それでいいんだ」
ソーシャルメディア時代において、簡潔さと大げさな表現は注目を集める上で最も重要な手段です。例えば TikTokで人気を博したいなら、気まぐれなユーザーの集中力の持続時間を捉えるために、アルゴリズムを巧みに操れるかどうかが成功の鍵となります。ヘヴィ・メタルは確実に、リスナーのアテンション・タイムを捉えるだけの表現力がありながら、やっと近年、SNS を自在に操れるようになったようです。
デビューアルバムのリリース時点でSpotifyの月間リスナー数18万6000人を誇る VIANOVA は、アルゴリズムの攻略法を熟知しているバンドと言えるでしょう。ドイツ出身の4人組は、ペレストロイカ時代のソ連のディスコにいるかのような恰好で注目を集め、SNS には彼らのミーム動画が溢れかえっています。しかしもちろん、バイラルを得られるのはその確かな才能があってこそ。
「”Hit It!” の場合、可能なかぎり自然な感じで融合できるように努めたんだ。 もし僕たちの多様性が本物だと思うなら、君や他の人たちは、僕たちが取り入れているジャンルに対する純粋な評価と興奮を感じ取ることができるのかもしれないね。 よく比較されるTWELVE FOOT NINJA のようなバンドも、自分たちが取り入れている非メタル音楽を深く理解し、愛していると思うけど、彼らの曲では時にそうした要素が水と油のように構成全体でより分離しているため、もう少し切り離されているように感じるのかもしれないね」
VIANOVA のデビュー・アルバムとなる “Hit It!” は、ファンク、ヒップホップ、ソウル、ハードコア、ハイパーポップといったあまりにも多様なジャンルを融合させ、Djent なグルーヴがそのサウンドを支えています。熱狂的なエネルギー、ブルーノ・マーズ的ポップなセンス、ポスト・ハードコアのエッジ、そしてジャンルのメルティング・ポットが到達したのは、PERIPHERY や CLOSURE IN MOSCOW が統合失調症に冒されたかのような混沌。しかしその混沌は常に変化し続け、驚くほど精巧に自然に作られていて、それぞれのジャンルがあまりにも真に迫っています。
「僕らは伝統を守ろうとしているわけではないので、ジャンルの門番は気にしていないよ。 僕らのゴールはメタルっぽくないものを作ることなんだから、それが気になる人は他の曲を聴けばいいと思う。 曲の方向性に腹を立てる人がいるのは、僕にとっては奇妙なことなんだ。 今は素晴らしいバンドがたくさんいるから、非建設的なコメントを打つよりも、もっとクラシックなメタルバンドを探した方がきっと時間を有効に使えるような気がするけど、人それぞれなんだろうね」
メタルと非メタル。彼らの核融合が真に迫っているのは、楽曲の中でアイデアから次のアイデアへと飛び移るのではなく、ジャンルの実験を一曲ずつ丁寧に行っていく傾向があるからかもしれませんね。だからこそ、アルゴリズムで捉えたミーム的な奇抜さよりも、熟考された対比が際立っていくのです。こうした瞬間こそが VIANOVA の真骨頂であり、大胆にメタルを壊し、大胆にメタルを再構築していくのでしょう。メタルには TikTok で羽ばたく瞬間的な表現力がありますが、もちろん、インスタントなアテンション・スパンには収まりきらない魅力もあるのですから。
今回弊誌では、ボーカル Alexander Kerski にインタビューを行うことができました。「僕らのベーシスト、Raoul はクラシック・プログの大ファンなんだ。 OPETH, PAIN OF SALVATION, BETWEEN THE BURIED AND ME, PROTEST THE HERO をよく聴いていたよ」 どうぞ!!

VIANOVA “HIT IT!” : 10/10

INTERVIEW WITH ALEX KERSKI

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【ALEX】: My first musical love was the Beatles. I stumbled across them when i was 8 or 9 because the movie Yellow Submarine was playing on TV. My mother used to work at a Radio Station so she was able to burn all of their albums for me. Felix and Pauls Dad is also a huge Beatles Fan, so I’m pretty sure they we’re also in touch with their music from an early age on. He always points out how The Beatles originated a lot of musical trends to come. I also vividly remember listening to a bunch of Jamiroquai records in the car, since my dad is a huge fan. Later i moved on to Rockbands, like Green Day. Felix and Paul also had their Rock phases from what i can recount and we’re also big on classic Metalcore. When i joined the Band Parkway Drive and August Burns Red were Bands that came up a lot with them. Raoul our bassist is a big classic prog guy. Used to blast Opeth, Pain of Salvation, Between the Buried and Me and Protest the Hero a lot back in the day.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【ALEX】: 僕が最初に好きになった音楽はビートルズだった。 8歳か9歳のとき、テレビで映画 “イエロー・サブマリン” をやっていて、偶然ビートルズに出会ったんだ。 母がラジオ局で働いていたので、彼らのアルバムを全部焼いてくれた。 Felix と Paul の父親もビートルズの大ファンだから、幼い頃から彼らの音楽に触れていたのは間違いない。 彼らはいつも、ビートルズがいかに多くの音楽的流行を生み出したかを指摘しているよ。
また、父が大ファンだから、車の中で Jamiroquai のレコードを聴きまくったことも鮮明に覚えているね。 その後、僕は GREEN DAY などのロック・バンドに興味が移ったんだ。
Felix と Paul にもロック・フェイズがあったし、クラシックなメタルコアも大好きだった。 僕がバンドに加入したとき、PARKWAY DRIVE と AUGUST BURNS RED は一緒によく話していたバンドだった。 それから僕らのベーシスト、Raoul はクラシック・プログの大ファンなんだ。 OPETH, PAIN OF SALVATION, BETWEEN THE BURIED AND ME, PROTEST THE HERO をよく聴いていたよ。

Q2: Germany is famous for power metal and technical death metal, but what made you decide to pursue metalcore-based music?

【ALEX】: Probably a generational thing. All of us (except for Raoul really) got into Metalcore in our Teens and early Twenties so we wanted to play Metalcore music. We we’re never big on tech-death or the more classic German metal stuff to be quite honest. I personally only got into Tech-Death a little bit after joining vianova (as a listener) because of my Friend Tom Fountainhead Geldschläger who is a important figure in the german tech-death scene. I also performed backing vocals across his recent album Changeling, so technically i do have a tiny bit of tech-death history i suppose.

Q2: ドイツはパワー・メタルやテクニカル・デスメタルで有名ですが、メタル・コアをベースにした音楽を追求しようと思ったのはなぜだったんですか?

【ALEX】: おそらく世代的なものだろうね。 僕ら全員(本当に Raoul を除いて)、10代から20代前半にかけてメタルコアにハマったから、この音楽をやりたかったんだ。 正直なところ、僕らはテクデスやもっとクラシックなジャーマン・メタルにはあまり興味がなかったんだ。
個人的にリスナーとしてテクデスにハマったのは、VIANOVA に加入してからで、そのきっかけはドイツのテクデス・シーンの重要人物である友人の Tom Fountainhead Geldschläger だった。 彼の最近のアルバム “Changeling” でもバッキング・ヴォーカルを務めたから、テクデスの歴史にほんの少しはかかわっているんだけどね。

Q3: However, as the name Vianova suggests, your music is not just metalcore. Of course, there are metal bands that have introduced funk, jazz, and synthwave, but none of them have such “real” and large outside influences as you do, would you agree?

【ALEX】: I guess i wouldn’t agree to comparing ourself with other bands on this aspect because i wouldn’t want to make this a competition of who’s doing it best, because that just comes down to taste really. With Hit It! We tried to make the fusion feel a bit more natural and seemless if possible, even though there are some parts where the transitions do feel very drastic. If you think our influences seem real maybe you or other people can just sense that there is a genuine appreciation and excitement for the genres we are incorporating. I’d argue that bands like Twelve Foot Ninja (which we get compared to often) also deeply understand and love the non metal music they are incorporating but maybe it felt a bit more disconnected because with their songs the different elements we’re more seperate across the composition, like oil and water, in my memory.
You could also argue that our genre fusion is inherently inauthentic because funk, soul and jazz are rooted in african american culture and quite honestly we are german metalcore kids that also happen to love all kinds of music. So as much as we love the music, there is an obvious cultural disconnect there. I think it’s a sign of the times and globalization since Europe is very Americanized in terms of music and media. Ultimately i hope we are doing our influences justice and paying our respects. Maybe i’m overthinking this haha i don’t know.

Q3: ただ、VIANOVA (新たな道) という名前が示すように、バンドの音楽は単なるメタル・コアではありません。
もちろん、ファンクやジャズ、シンセ・ウェーブを取り入れたメタル・バンドはいますが、あなたたちほど “リアル” に外部からの影響を受けているバンドはいないでしょうね?

【ALEX】: まあ多様性で他のバンドと自分たちを比較することはしたくない。なぜなら、誰が一番うまくやっているかという競争にしたくないからね。 “Hit It!” の場合、可能なかぎり自然な感じで融合できるように努めたんだ。
もし僕たちの多様性が本物だと思うなら、君や他の人たちは、僕たちが取り入れているジャンルに対する純粋な評価と興奮を感じ取ることができるのかもしれないね。 よく比較されるTWELVE FOOT NINJA のようなバンドも、自分たちが取り入れている非メタル音楽を深く理解し、愛していると思うけど、彼らの曲では時にそうした要素が水と油のように構成全体でより分離しているため、もう少し切り離されているように感じるのかもしれないね。
ファンク、ソウル、ジャズはアフリカ系アメリカ文化に根ざしていて、正直に言うと、僕たちはドイツのメタルコア・キッズで、たまたまあらゆる音楽が好きなだけだ。だから、僕たちのジャンル融合は本質的に不自然だと言う人もいるかもしれないね。
音楽を愛する一方で、そこには明らかな文化的な断絶があるんだよ。ヨーロッパは音楽とメディアの面で非常にアメリカナイズされているので、これは時代の変化とグローバル化の兆候だと思う。最終的には、僕たちが影響を受けてきたものに正当な評価を与え、敬意を表せていることを願っているよ。もしかしたら考えすぎかもしれないけどね (笑)。よく分からないよ。

Q4: For example, if you play music as chill as “Uh Yaya,” you are likely to face gatekeepers who will say, “This is not metal”. How do you respond to such criticism?

【ALEX】: Honestly this wasn’t our concern really. Before our album we we’re quite the small band, which means our main problem was not peopes opinions, but rather that no one had an opinion on us, because they didn’t know we existed. Now i still don’t care because it’s not like we’re trying to uphold any traditions really. I mean our goal is to make something that is not fully Metal, so if that’s an issue with someone i guess they can just listen to something else. It’s totally fine to have different preferences.To me it’s kind of weird that someone would get angry at the direction of a song. There are so many great bands nowadays, so i feel like if the person would just look for a more classic metal band rather than typing an unconstructive comment they would probably spent their time better, but to each their own i guess.

Q4: 例えば、”Uh Yaya” のようなチルな音楽を演奏すれば、”これはメタルではない” というゲートキーパーに直面する可能性が高いですよね。 そのような批判にはどう対処していますか?

【ALEX】: 正直なところ、これは僕たちの心配事ではないんだ。 アルバムを出す前、僕たちはとても小さなバンドで、つまり僕たちの主な問題は、人々の意見ではなく、むしろ僕たちの存在を知らない、誰も僕たちに意見を持っていなかったということだったんだ。
でも、僕らは伝統を守ろうとしているわけではないので、今でも気にしていないよ。 僕らのゴールはメタルっぽくないものを作ることなんだから、それが気になる人は他の曲を聴けばいいと思う。 曲の方向性に腹を立てる人がいるのは、僕にとっては奇妙なことなんだ。
今は素晴らしいバンドがたくさんいるから、非建設的なコメントを打つよりも、もっとクラシックなメタルバンドを探した方がきっと時間を有効に使えるような気がするけど、人それぞれなんだろうね。

Q5: “Hit it!” is really great in that it breaks a lot of metal rules with the artwork, music and lyrics to make great metal! In your mind, is Vianova still a metal band?

【ALEX】: Yeah i do think that we are still playing some kind of Metal, since most of our songs are still structured around around the band format with riffs and breakdowns and stuff like that. Honestly i feel like genre-classifications don’t need to be so strict nowadays. In my mind they are used best for organizing for like playlists, or festivals/concerts or maybe referring someone a song or band based on their taste. Like „oh you like metal, here listen to this band my friend“.

Q5: 実際、”Hit It!” は、アートワーク、音楽、歌詞で多くのメタルのルールを破りながら素晴らしいメタルを作り上げているという点で、本当に素晴らしいですね! あなたの中では、VIANOVA はまだメタル・バンドなんでしょうか?

【ALEX】: そうだね、僕らはまだある種のメタルをやっていると思うよ。だって僕らの曲のほとんどは、リフやブレイクダウンなど、メタルのフォーマットを中心に構成されているからね。 でも正直なところ、今の時代、ジャンル分けはそれほど厳密である必要はないと感じている。
僕の中では、ジャンル分けはプレイリストやフェス、コンサートなどの企画に使うのがベストだと思うし、誰かの好みに合わせて曲やバンドを紹介するのにも使えるからね。 “君はメタルが好きだから、このバンドを聴いてみて” みたいにね。

Q6: Speaking of breaking metal’s rules, you’ve become a star on social networking sites such as TikTok, which used to be a metal weakness. Sleep Token and Ghost have also been using TikTok in recent years. Do you think that social networking and streaming are actually compatible with metal music?

【ALEX】: It’s true, we have used social media to promote this record a lot. I personally have seen a lot of upcoming bands use tiktok and instagram to market themselves and this isn’t really that new, if you consider that a lot of metalcore bands like bring me the horizon or suicide silence got big on myspace back in the day. Honestly i feel like they are tools and if they are compatible or not depends on how you want to use them. For me it felt empowering to a degree, because handling our promo ourselves ment i was not dependant on other people from outside the band doing a good job, since i had some bad experiences in the past with that. As long as your music is good and you can play it live you should be good.

Q6: メタルの掟破りといえば、VIANOVA は以前はメタルが苦手としていたTikTokなどのSNSでスターになりましたね。
SLEEP TOKEN や GHOST も近年TikTokを利用してビッグになりましたが、SNSやストリーミングは、実はメタル音楽と相性がいいと思いますか?

【ALEX】: 確かに、僕らはこのアルバムを宣伝するためにソーシャルメディアをたくさん使ってきた。 個人的には、これからのバンドがTiktokやinstagramを使って自分たちを売り込むのをたくさん見てきたし、そんなに新しいことではないんだ。BRING ME THE HORIZON や SUICIDE SILENCE のようなメタルコア・バンドの多くが、昔myspaceでビッグになったことを考えればね。
正直なところ、それらはツールでしかなくて、親和性があるかどうかは、それをどう使いたいかによるような気がする。僕らはある程度力になっていると感じるけどね。自分たちでプロモをやることで、バンド外部の人に頼らなくてすむから。昔、それで嫌な思いをしたからね。僕らは自分たちの音楽が良くて、それをライブで演奏できれば、それでいいんだ。

Q7: I feel that there now exists an important role for your uplifting energy and chilling feel as an escape from the dark world. I believe that Japanese anime and video games also play such a role, but is there any influence from Japanese culture?

【ALEX】: I personally do enjoy some j-rock and have watched a bunch of anime and red manga as a teen, however i wouldn’t say we have a general Japenese influence. We do however would love to play in Japan one day!

Q7: 今、暗い世界からの逃避先として、あなたの高揚するエネルギーとチルな感触が重要な役割を担っていると感じています。 日本のアニメやゲームもそのような役割を果たしていると思いますが、日本文化からの影響はありますか?

【ALEX】: 個人的にはJ-ロックも好きだし、10代の頃はアニメやマンガもたくさん見たものだよ。でも日本の影響を大きく受けているとは言えないかもね。 でも、いつか日本でプレーしたいと思っているよ!

Q8: With Covid, war, and division, the world has been getting darker and darker since the beginning of the 20s. In such a world, what can heavy metal do?

【ALEX】: I think any kind of art has great potential to do lots of things. Sometimes it’s to offer solace and escapism, sometimes it’s to engage with current problems and call out things that are happening. Metal is a very diverse genre so i’m sure everyone can find what they are looking for.

Q8: パンデミック、戦争、分断と、20年代に入ってから世界はどんどん暗い場所になっています。 そんな世界で、ヘヴィ・メタルに何ができるのでしょうか。

【ALEX】: どんな種類のアートでも、いろいろなことができる大きな可能性を秘めていると思う。 ある時は慰めや逃避を提供し、ある時は現在の問題に関与し、起こっていることを訴える。 メタルはとても多様なジャンルだから、きっと誰もが自分の探しているものを見つけることができると思うよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ALEX’S LIFE!!

The Beatles “Yellow Submarine Soundtrack”

Bring Me The Horizon ” There is a Hell Beliece Me I’ve Seen It. There is a Heaven Let’s Keep it a Secret”

Northlane “Singularity”

Tyler, the Creator “Igor”

Periphery “Alpha/Omega”

MESSAGE FOR JAPAN

Japan! We would love to play shows anywhere near you as soon as possible. Listen to the music and spread the word so we can share a few wild concerts with you. Hit it!

日本のみんな! できるだけ早く、日本でライブをしたいと思っているよ。 音楽を聴いて、僕たちがワイルドなコンサートをいくつかみんなと分かち合えるよう、広めてほしいな。 Hit It!

ALEX KERSKI

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【百合花 (LILIUM) : 萬事美妙】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH 百合花 (LILIUM) !!

“If composing music is like cooking, I’m probably a chef who loves using local ingredients. Taiwan has such a rich musical heritage to explore”

DISC REVIEW “萬事美妙”

「作曲が料理のようなものだとしたら、僕は地元の食材を使うのが大好きなシェフなのかもしれない。 台湾には探求すべき豊かな音楽遺産が多くあり、僕は大学でも民俗学を学んできた。 学べば学ぶほどその魅力に取りつかれ、だから僕は常にそうした要素を自分の作品に織り込んでいるんだ」
台湾へ旅したことのある人なら、彼の地の料理、その本場の躍動感に圧倒された経験があるはずです。その地で育ち、その地の歴史や空気を吸って生み出された文化の蓄積は、あまりにも尊く、そして魅力的です。
近年、そうした唯一無二の審美や精神性を自らのアートに取り入れるメタルやプログレッシブの綺羅星が登場し、シーンを牽引していますが、台湾の百合花もそうしたバンドのひとつ。そして彼らが料理した音楽は、西欧というポップスやロックの出発点を置き去りにするほど、理想的な東洋の神秘だといえるでしょう。
「僕は音楽を聴くたびに、その要素を分解し、ジャンルの起源をたどることに惹かれる。 音楽は人間が作り出したものだから、文章と同じように分析することができるんだよ。その土地の語彙や借用語、さらには発音を間違えて生まれた新しい用語みたいなものを、音楽の中に発見できる。だから将来、百合花の音楽を聴いた人々が、その中に埋め込まれた北管や南管の要素を発見してくれることを願っているよ」
音楽を文章に例えるとしたら、百合花が記す言葉は豊かなクレオールなのかもしれませんね。プログレッシブやメタル、オルタナティブ・ロックはもちろん、ボサノバ、レゲトン、ディスコ・ファンク、そして演歌にいたるまで、西洋も東洋もなく、あまりにも多様な音の葉を飲み込んだ彼らの音楽は、しかしいかなる時も “台湾的” なバイブスに貫かれています。
台湾に根付いた伝統音楽、北管・南管に加えて、銅鑼、リコーダー、葬儀の音楽。そして、多くの台湾人がマンダリン、北京語の台湾方言を使用する中で、台湾伝統の Hokkien (福建語) で紡がれる百合花の音楽には確実に台湾固有のスピリットが宿っています。だからこそ、百合花の音楽は、色彩豊かでに驚きに満ちた万華鏡の中に、確固とした独自のビジョンを投影できるのです。
「音楽は、人々に過去に起こったことを思い出させ、同じ過ちを繰り返さないようにすることができる。 例えば、僕たちの曲のひとつである “もし私が女だったら”(假使我是一個女人)は、政治的犠牲者である蔡奇遠さんの獄中告白をもとに生み出した。 脱獄中、彼は女装して美容院に行き、髪をセットしてもらっていたんだ」
戦争の足音がゆっくりと、しかし確実に忍び寄る東アジアにおいて、最新作 “萬事美妙” で彼らは各曲で複数の主人公の物語が探求することに決めました。祝福を授ける神様から、無力感に苛まれる外国人の叫び、道端の占い師の問いかけ、大道芸人の送別パフォーマンス、そして政治犯の嘆きまで、バンドの楽曲は台湾音楽に台湾音楽ならではの想像力豊かで、思考を要する視点をもたらしました。
そう、音楽は世界を変えることはできなくとも、その身に宿った旋律やリズム、そしてリリックで心を動かすストーリーを伝えることならできるのです。過去や寓話、物語から学ぶのもまた、おそらくアートを嗜む私たちの義務なのですから。そうすればきっと、”すべてが素晴らしくなる” はずです。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの林奕碩 (リン・ イースォ) とベーシスト林威佐 (リン・ウェーズォ) にインタビューを行うことができました。「台湾の文化は日本文化の影響を強く受けている。 僕たちが若い頃は、年長者が日本の演歌を歌っているのをよく耳にしたものだよ。 そして、台湾の歌の多くも演歌の影響を受けているんだ。 僕たちの歌 “藝術家” も演歌の影響を使っているんだ。台湾の年長者の様子を表現するためにね。 あと、”猿捕り唄”(掠猴之歌)のアレンジは、任天堂の “マリオブラザーズ” のサウンドトラックの影響を受けているよ」 どうぞ!!

百合花 “萬事美妙” : 10/10

INTERVIEW WITH 百合花

Q1: Our magazine focuses on heavy metal and progressive music, but in recent years, more and more such bands are valuing their own culture, language, and roots. I assume you are one of them. Why do you make music that values Taiwanese culture, music, and language?

【SHUO】: If composing music is like cooking, I’m probably a chef who loves using local ingredients. Taiwan has such a rich musical heritage to explore; I’ve studied both in university and through folk traditions. The more I learn, the more fascinated I become, and I constantly weave these elements into my own work.
Before I discovered traditional music, Progressive Rock was my go-to―I love the structures used by bands like Yes, Kansas, and Queen’s ‘Bohemian Rhapsody.’ So, when I try to fuse tradition with rock, my ideas naturally lean toward that Prog Rock vibe. I’m also a big fan of the ‘manic’ and unpredictable arrangements you hear in bands like System of a Down.

Q1: 本誌はヘヴィ・メタルやプログレッシブ・ミュージックを中心に扱っていますが、近年、そうしたバンドが自国の文化や言語、ルーツを大切にするようになってきているように感じます。
百合花もまた、そんなバンドのひとつだと思いますが、あなたはなぜ台湾の文化、音楽、言語を大切にした音楽を作るのですか?

【SHUO】: 作曲が料理のようなものだとしたら、僕は地元の食材を使うのが大好きなシェフなのかもしれない。 台湾には探求すべき豊かな音楽遺産が多くあり、僕は大学でも民俗学を学んできた。 学べば学ぶほどその魅力に取りつかれ、だから僕は常にそうした要素を自分の作品に織り込んでいるんだ。
伝統音楽に出会う前は、プログレッシブ・ロックが僕のお気に入りだった。YES
や KANSAS、それから QUEEN の “ボヘミアン・ラプソディ” のような構造が大好きなんだ。 だから、伝統とロックを融合させようとすると、僕のアイデアは自然とプログレッシブな雰囲気に傾くんだ。 また、SYSTEM OF A DOWN のようなバンドで聴くことができる、”マニアック” で予測不可能なアレンジメントの大ファンでもあるよ。

Q2: Your use of the Taiwanese language is another important factor for 百合花! What is the significance of sticking to Taiwanese when most people use Mandarin?

【SHUO】: While Mandarin has developed its own unique local flavors and accents in Taiwan over the last 70 years, my heart belongs to the older traditions. Growing up in a family where Taiwanese Hokkien (Taigi) was the primary language, I was surrounded by a way of speaking that felt incredibly alive―full of raw emotion, humor, and everyday energy.
As a singer, you have to truly believe in the words coming out of your mouth to be convincing. For me, everything just clicks when I sing in Taiwanese. It feels authentic and ‘right’ in a way that other languages just can’t match.

Q2: 台湾語を使うことも百合花にとって重要な要素ですね! 台湾でも多くの人が北京語ベースの言葉を使う中、台湾語にこだわる意義はなんですか?

【SHUO】: この70年の間に、台湾では標準語が独自の風味とアクセントを持つようになった。だけど、僕の心は古い伝統に根ざしている。 台湾の福建語(タイギ)を母国語とする家庭で育った僕は、生の感情、ユーモア、日常のエネルギーに満ちた、信じられないほど生き生きとした話し方に囲まれていたんだ。
歌手として説得力を持たせるには、自分の口から出る言葉を心から信じなければならない。僕の場合、台湾語で歌うとすべてがピタリとはまる。 他の言語にはない、本物の “正しい” 感じがするからね。

Q3: In the East, pop and rock music is more or less influenced by Western music, theory, and culture, as is the case in Japan, but you have to find a way to deal with it, would you agree?

【WEI】: I agree. But I think the crucial part is finding your own way to express yourself. After all, everyone is influenced by different cultures, so it is difficult to sort them by using labels like East or West. I think Japanese music does a great job. You can hear the influence of Western Music, but also did some iconic breakthroughs in timbre and style.

Q3: 東洋では、ポップスやロックが多かれ少なかれ西洋の音楽、理論、文化の影響を受けていて、それは日本も同じです。あなたたちは、その葛藤に対処する方法を見つけたようですね?

【WEI】: そうだね。 でも肝心なのは、自分なりの表現方法を見つけることだと思う。 結局のところ、誰もが異なる文化の影響を受けているわけだから、東洋とか西洋とかいうレッテルで分類するのは難しい。 日本の音楽は素晴らしい仕事をしていると思う。 西洋音楽の影響も感じられるけど、音色やスタイルにおいて象徴的なブレークスルーもあるからね。

Q4: I feel that 北管・南管 are in a way one of the major roots of Taiwan and 百合花. By incorporating this into your rock, do you also intend to introduce it to the younger generation and the world without letting it fade away?

【SHUO】: Whenever I listen to music, I’m drawn to deconstructing its elements and tracing the origins of its genres. Since music is a human creation, it can be analyzed much like a sentence: you find local vocabulary, loanwords, and even new terms born from mispronunciations.
My hope is that when people in the future hear Lilium’s music, they’ll discover the Beiguan and Nanguan elements embedded within―almost like clicking a link on a website that leads you to a whole new world of discovery.

Q4: 北管・南管もある意味、台湾や百合花の大きなルーツのひとつだと感じています。 そうした伝統音楽をロックに取り入れることで、若い世代や世界にも風化させることなく紹介していきたいのですか?

【SHUO】: 僕は音楽を聴くたびに、その要素を分解し、ジャンルの起源をたどることに惹かれる。 音楽は人間が作り出したものだから、文章と同じように分析することができるんだよ。その土地の語彙や借用語、さらには発音を間違えて生まれた新しい用語みたいなものを、音楽の中に発見できる。
だから将来、百合花の音楽を聴いた人々が、その中に埋め込まれた北管や南管の要素を発見してくれることを願っているよ。ウェブサイト上のリンクをクリックすると、まったく新しい発見があるようにね。

Q5: Taiwanese culture is not only influenced by the West, but also by Japanese culture, right?What is the connection between your music and Japanese music and other cultures, such as anime and video games?

【WEI】: Taiwanese culture is very influenced by Japanese culture. When we were young,we often heard the elders sing Japanese enka. Many Taiwanese songs are also influenced by enka. Our song ‘Artist’(藝術家) uses this type of music to describe the state of elders. The arrangement of ‘The Monkey Catching Song’(掠猴之歌) is also influenced by the soundtrack of Nintendo’s “Mario Brothers”.

Q5: 台湾の文化は西洋だけでなく、日本の文化からも影響を受けていますよね。あなたの音楽と日本の音楽、そしてアニメやビデオゲームなど他の日本文化との関係はどういったものですか?

【WEI】: 台湾の文化は日本文化の影響を強く受けている。 僕たちが若い頃は、年長者が日本の演歌を歌っているのをよく耳にしたものだよ。 そして、台湾の歌の多くも演歌の影響を受けているんだ。
僕たちの歌 “藝術家” も演歌の影響を使っているんだ。台湾の年長者の様子を表現するためにね。 あと、”猿捕り唄”(掠猴之歌)のアレンジは、任天堂の “マリオブラザーズ” のサウンドトラックの影響を受けているよ。

Q6: I was very impressed by the song about a Taiwanese funeral. Does 萬事美妙 also have songs that deal with Taiwanese culture and traditions?

【SHUO】: The second recorder interlude in the song ‘Strange Smell’ (怪味)is an adaptation of the melody from ‘Sui Di Yu’ (Fish Beneath the Water), a traditional Beiguan piece.
https://www.youtube.com/watch?v=Utg5mbjlznQ.

Q6: 台湾のお葬式を歌った曲はとても印象的でした。”萬事美妙” にも、そうした台湾の文化や伝統を扱った曲があるのですか?

【SHUO】: 2つ目のリコーダー間奏曲 “Strange Smell” (怪味)は、北管の伝統曲 “Sui Di Yu”(水底の魚)のメロディーをアレンジしたものだよ。
https://www.youtube.com/watch?v=Utg5mbjlznQ

Q7: East Asia has been hearing the footsteps of war in recent years… Taiwan in particular has some difficult political, diplomatic issues, how are you dealing with those political and social issues?

【SHUO】: While staying informed about global politics is a civic duty, my heart lies in my craft. To me, creating art is the act of accumulating culture; there is nothing more vital than laboring for one’s own roots. In this interconnected world, it’s a pity to see global tastes converging so heavily toward the style of major cultural exporters.

Q7: 東アジアでは近年、戦争の足音が近づいているように思えます。 特に台湾は政治的、外交的に難しい問題を抱えていますが、そうした問題にあなたは個人的にどう対処していますか?

【SHUO】: 世界の政治について情報を得ることは市民の義務だけど、僕の心は芸術、創造にある。 僕にとって、芸術を創造することは文化を蓄積する行為なんだよ。自らのルーツのために、自らの文化を蓄積するために労働することほど重要なことはない。
この相互接続された世界において、世界の嗜好が主要な文化輸出国のスタイルに大きく収束していくのを見るのは残念なことだけどね。

Q8: With Covid, war, and division, the world has been getting darker and darker since the beginning of the 20s. In such a world, what can music do?

【WEI】: Music can remind people of what happened in the past through singing, and prevent them from repeating the same mistakes. For example, one of our songs, “If I Were a Woman,”(假使我是一個女人) is based on the prison confession of Mr. Tsai Chi-Yuan, a political victim. During his escape, he dressed up as a woman and went to a beauty salon to get his hair done. The song describes how Tsai Chi-Yuan suffered after escaping dressed as a woman and began to doubt his desire to dress up.

Q8: パンデミック、戦争、分断と、20年代に入ってから世界はどんどん暗い場所となっています。 そんな世界で、音楽には何ができるのでしょう?

【WEI】: 音楽は、人々に過去に起こったことを思い出させ、同じ過ちを繰り返さないようにすることができる。
例えば、僕たちの曲のひとつである “もし私が女だったら”(假使我是一個女人)は、政治的犠牲者である蔡奇遠さんの獄中告白をもとに生み出した。 脱獄中、彼は女装して美容院に行き、髪をセットしてもらっていた。 この歌は、女装して脱獄した後、蔡氏がどのように苦しみ、自分の女装願望を疑うようになったかを描いているんだ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED LILIUM’S LIFE!!

Red Hot Chili Peppers “By the Way”

伍佰&China Blue “樹枝孤鳥”

Yes “Fragile”

Michael Jackson “Off the Wall”

Tenacious D “Tribute”

MESSAGE FOR JAPAN

SHUO: I truly admire the Japanese music scene―there’s an audience for every kind of unique sound. I really hope Japanese listeners will enjoy our music too! Can’t wait to see you all soon!

僕は心底、日本の音楽シーンを崇拝している。日本の音楽シーンには、どんなユニークなサウンドにも耳を傾けてくれるオーディエンスがいるからね。 だから、日本のリスナーにも僕らの音楽を楽しんでもらいたいね! 早くみんなに会いたいよ!

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KARNIVOOL : IN VERSES】


COVER STORY : KARNIVOOL “IN VERSES”

“I do hope this album can help people in the way it has helped me, and also that it may inspire and encourage some people reading this, especially those entering their mid to later years to finish that project that they’ve wanted to finish for a while.”

IN VERSES

「目的を遂げる人もいる。遂げられない人もいる。何とかやっていける人もいる…やろうとしない人もいる」
これは、伝説的なオーストラリアのプログレッシブ・メタル・バンド、KARNIVOOL 4枚目のアルバム “In Verses” のコーラスの一部です。数々の賞を受賞したアルバム “Asymmetry” 以来、バンドは長き停滞状態に陥っていました。残ったファンは、滅多にないツアーと、時折の謎めいたソーシャルメディアの投稿でなんとか生き延びてきました。しかし、ついにその待ち時間は終わりました。
13年の時を超えたアルバム “In Verses” は、最高のプログレッシブ・メタル・バンドの一つである KARNIVOOL が時とともに強くなることをリスナーに粘り強く、そして辛抱強く思い出させてくれる作品です。リフはよりラウドに、リズムはより奔放に。しかし、このアルバムを最高傑作としているのは、メロディーとフックです。長年に渡って最高のモダン・プログ作品の一つとして記憶されるに違いないこのアルバムは、長い間オーブンの中で温められてきました。キッチンに常に料理人がいたわけではないにしても。
「まあ、すべての始まりと終わりをここで説明していたら永遠になってしまうけど、本当に長かった。実際、長すぎたよ。どのアーティストにも、ここまで長い時間をかけるのはお勧めしないね!過去10年ほど、新作に取り組んでいると何度か公言してきたはずにしても。以前のアルバムはどれも、いわゆる “オリンピック周期” の4年に沿っていたので、アルバム “Asymmetry” のリリース後、2014年初頭に4枚目のアルバムの制作に着手し、最初はほぼ同じ期間でのリリースを目指していたんだ。最初の試みは2016年半ば、プロデューサーの Forrester が西海岸に来て、アルバムの半分、あるいはEPの拡張版くらいの感じでレコーディングを始めた時だったね。最終的に “In Verses” に収録された曲のほとんどは、その時点ですでに制作中だった。今にして思えば、かなり生産的で、あのセッションのおかげで曲が完成に近づいたんだ。でも、まだ準備が整っていなかったのは明らかだった。
その後の数年間は、本当に軌道に乗ろうと努力する中で、厳しい日々だった。仕事は散発的で、たとえ進歩があったとしても、それは断片的で、試練の時期、個人的な葛藤、経済的な問題、そしてバンド内の勢いと結束力の深刻な欠如に満ちていたね。何かが芽生えたとしても、すぐに消えてしまうような感じ。この時期は僕にとって個人的にも大変な時期で、砂漠へ移住することにしたんだ。これは、健康と幸福を最優先にし、自分自身を癒し、再び自分の足で立つ機会を得るという点で、僕にとって大きな決断だった。この間には実に多くのことがあり、一段落にまとめるのは不可能だけど、これまでの道のり、あらゆる試練と苦難、失敗した試み、成功、そして僕たちの人生の年月はすべて価値があったと言えるだろう。それらすべての時間と経験が、アルバムに収録された曲という最終的な形へと凝縮されていった。今振り返ってみると、曲が息を吹き込み、熟成していくには、時間と空間が必要だったのだと思うんだ」

バンドの中心人物、ギタリスト Drew Goddard は紆余曲折を経たため、勢いという要素が逆に厄介な存在となったと感じていました。皮肉なことに、勢いを排除した “In Verses” はだからこそ素晴らしく、そして完璧に練られた構成となっています。無理強いするよりも、自分たちのプロセスを信頼していたからこそ、まとまりが生まれたのです。
「方向性を事前に決めることは決してないんだ。アルバムのテーマは直感的な創作上の決断からゆっくりと、しかも長い時間をかけて浮かび上がってくるイメージのようなものさ。だから、常にプロセスを信頼するという要素があり、音の冒険心とエネルギーが僕たちの創作プロセスを突き動かし、アルバムごとに共通のテーマを提供している。でも、僕たちは同じことを繰り返すのは好きじゃない。僕自身、自分が作る音楽の中に新しいサウンドや感覚を見つけ、それがこうして生まれたことに驚きたいという欲求に突き動かされている。振り返ってみると、”In Verses” はある意味、新境地を開拓したように聞こえる一方で、過去3枚のアルバムの要素も含まれており、バンドが共に歩んできた時間をより強固なものにしている。まるで一つの章の終わりと新たな章の始まりのようにね」
アルバムが形を成していくうち、ひとつのテーマが浮かび上がりました。それはまさに、13年という長い月日を経ても彼らが貫き通したもの。諦めないこと。挑戦を続けること。
「諦めないことが鍵だと思う!僕らはどのアルバムでもすごく挑戦的だけど、今回のアルバムはこれまでで最も挑戦的だった。人生は挑戦に満ちている。僕にとって KARNIVOOL の音楽は、逆境や困難を乗り越えて勝利を収めるためのサウンドトラックのようなもの。暗いけれど、一筋の光が僕たちを前に導いてくれる。だから、アルバム制作のプロセス、そこに込められた感情を作品に反映するのは、本当に自然な流れだった。僕にとっての報われた瞬間は、2023年初頭のヨーロッパツアーの頃。心身ともに健康で、ツアー前よりもずっと良くなり、バンドの雰囲気もポジティブになった。みんなで演奏し、ツアーを楽しみ、観客からのサポートと反応を喜べるようになった。8年間ヨーロッパツアーをしていなかった後、観客からこれほどの興奮と喜びを受け取ったことは、前進し続ける大きな原動力となったんだ。その気持ちが雪だるま式に大きくなり、そこから勢いがついたと感じているよ」

オーストラリアのパースから現れたことも、彼らの個性を強くしています。パースは地球上で最も孤立した大都市の一つであり、それが KARNIVOOL を世界的な音楽業界のトレンド追及のプレッシャーから守ってきたと言えるのかもしれません。
「初期の頃は、それが間違いなく役に立った。本当に未熟な中でも、自分たちの技術を磨くことができた。下手くそだったけど、世に出なくても手探りで自分たちの “もの” を見つけることができた。戸棚の下に眠って埃をかぶっている素材がたくさんあるんだ」
Goddard は活動休止期間中、この孤立をさらに一歩進め、自己反省のために砂漠へと移住しました。
「しばらくの間、人が少ない田舎で違う意味で自分がダメなことを許したんだ。でも、孤独と孤立の間には微妙な境界線があるんだよな。僕にとって最も孤独な瞬間は、人混みの中にいた時だったような気がするよ」
その “砂漠での時間” は、広大で同時に深く個人的な感覚を持つアルバム “In Verses” のDNAに深く影響を及ぼしました。現在彼らの影響は、依然として多岐にわたります。そもそもは MESHUGGAH, TOOL, SOUNDGARDEN のホーリー・トリニティを基盤としていましたが、新作はより意外な分野から影響を受けています。モロッコ音楽の微分音的変化、J Dillaの “酔ってよろめく” ヒップホップのリズム、そしてボイジャー探査機のゴールデン・レコードまで驚くべきカラフルなインスピレーションたち。
「ボイジャーのレコードでネイティブ・アメリカンの歌を聴いて、ゾクゾクしたんだ。強烈なダイナミクスの変化、何もない状態から巨大なものへと変化し、また元に戻る。僕たちは常に、これまで聴いたことのない音程やリズムを探しているんだ」

彼らのアルバムの中で最も精緻なアレンジメントを誇る “In Verses” ですが、最も長く聴き続けられる3曲は、作品の中間部にあります。もちろん、”Ghost” と “Drone” はプログではほとんど見られないような即時性を示し、”Opal” はアルバムで最も心を揺さぶるメロディーを収録しています。しかし、”In Verses” が輝かしい作品から特別な作品へと変貌を遂げるのは、 “Animation” から始まる部分であり、KARNIVOOL があらゆるツールを巧みに使いこなしその技巧を際立たせる、スリルとサスペンスに満ちたサウンドはまさに唯一無二でしょう。
「”In Verses” の中間部は、まさに今のバンドの特徴を体現している。”Animation”, “Conversations”, “ReAnimation” は、どれも同じ音楽モチーフ、いわば同じ音楽文化から生まれたと言えるだろう。それぞれ全く異なる独立した曲でありながら、共通のテーマを共有しているんだ。同様に、”Remote Self Control” は “Aozora” の制作から生まれた曲で、他の曲から曲が生まれた例も数多くある。こうした例は、長い時間をかけて書き上げられたアルバムに、統一感を与え、ひとつに繋がっていく。そうしたディテールの追求こそがこのアルバムの鍵だ。完成してもまだ突き詰めたい、放棄したくない気持ちがあるほどにね」
“Themata” が荒削りなオルタナ・メタルの導入部で、”Sound Awake” が広がりのあるメロディアスな傑作だとすれば、”Asymmetry” は難解で不協和音に満ちた作品でした。そして、このアルバムは音色の限界を押し広げ、しかしリスナーを “Asymmetry” の “煉獄” へ置き去りにはしません。
「 “The Refusal” が大好きなんだ。”Asymmetry” で最も耳障りな曲の一つ。解決しないキーで歌われている。最後の歌詞は “これは不可能だ” で、ただ奇妙な後味を残すだけだ。”In Verses” は、色々な意味でそれに対する反応なんだ。有機的な進行ではあるけど、僕らはもう少し何かを探求している…ストレートとは言いたくないけど、もっとハーモニーがあって、もっと安定したメロディーがある」

リード・シングル “Drone” はその言葉を裏付けています。推進力のある分厚いベースラインと、高らかに響くボーカルパフォーマンスが曲を牽引しますが、興味深いことに、この曲の起源は完全に機械的なものでした。
「タイトルは “Drone Commander” という機器に由来しているんだ。信号発生器なんだよ。それが生み出したドローン・サウンドが、この曲全体のベースになった。僕らはその機械にあわせて曲を書いたんだ。このトラックは、広大な西オーストラリアの砂漠の重みを響かせ、故郷ならではの壮大なロックリフに支えられている。それは、反映であり、再生でもある。”Opal” の”死がそばにあるかのように、私はじっと静かになるだろう” という歌詞も、ずっと心に留めていた。何かがひらめいて、最終的な歌詞にも反映されたんだ」
“Opal” の一部は、Goddard が KARNIVOOL と曲作りを始めた最初期に遡ります。
「中間とエンディングのリフは、実は “Themata” 時代に実家のパソコンで初めて録音した曲なんだ。そして20年後、収まる場所を見つけたんだ。より現代的にアレンジしてね。”You’ve been holding up…” で始まるヴァースは、”Asymmetry” 収録の “Aeons” からカットされた部分。曲全体が、今まで経験したことのない形でひとつにまとまった。昔からバラバラだったアイデアが、突然、ひとつの場所に収まったんだよね」
そして、ハープまで使用した深く心に響くこの曲は、バグパイプも含め、息を呑むようなクロージング “Salva” へと繋がっていきます。
「僕たちは今でもアルバムという音楽形態の価値を信じている。アルバムを最初から最後まで一つの旅として聴いてもらえれば、この曲の真髄はもっと伝わってくると思うんだ。KARNIVOOL の旅路を共に歩んでくれて、それを僕たちと共有してくれた人たちにとって、最後の2曲、”Opal” と “Salva” が何かを与えてくれるといいな… 僕自身、解放感、ある種のカタルシスを得られたからね」

“Drone” のアートワークは、灰色と白の海に浮かぶ荒涼とし傾いた船を描いていて、あるファンが “KARNIVOOL が最後にアルバムをリリースしたときは、あの船の下に水があった” とコメントしたジョークを彼らは気に入っています。つまり、”In Verses” の音楽やリリックは、そのアートワークから想像されるほど陰鬱なものではないと彼らは示唆しています。
「常に音楽主導なんだ。歌詞は音符への反応となる。だから何よりもまず、言葉の響きが重要だ。Ian は非常に即興的で、”Conversations” のような曲でそれは顕著だ。数テイクを録ると、突然彼の表情が変わる。”意味不明な言葉” を声に出して、それがやがて意味へと結晶化していく。僕らにとって、声はまず楽器であり、物語を語るのは次のステップなんだ。音楽にどう合うかが重要で、歌詞の意味は、言葉の響きによって決まることもある。発明というより発見だ。僕らは岩の中から歌を掘り出しているんだ」
THE BEATLES と MESHUGGAH は彼らのお気に入り二大バンドですが、制作のスピードは大きく違います。
「僕らの時代の4年は、ビートルズの世界では1週間くらいだろう (笑)。彼らがどうやってやったのか、わからないよ。ビートルズは MESHUGGAH と並んで僕のお気に入りのバンドだし、僕らの中でそのバランスは取れている。でも、彼らはあらゆるルールの例外なんだ」
彼らは困難を乗り越え、その努力に意味を持たせようとする勇気をリスナーに感じてほしいと願っています。そして、人生のピークを迎えた人、あるいはピークを越えた人に向けて、自らの音楽と姿勢を通して特別なメッセージを送っているのです。
「このアルバムが、誰かの力になればと願っている。僕自身を支えてくれたようにね。そして、特に中高年の人たちが、人生でずっとやりたかった作品なり、プロジェクトなりを成し遂げるきっかけになればと願っているんだ。僕はいつもこのことを考えていてね。時には辛い努力を経て、日の目を見るべき素晴らしい芸術。そんな芸術的な宝物が、世界中にたくさん眠っているはずなんだ。中高年になり、時間やお金、仕事や家族のことでアートを完成させることを諦めかけている人も多いだろう。だけどそれらは世界に残され、共有され、聞かれるに値するものであり、ハードディスクの中に永遠に埋もれてしまうべきではないんだよ。だから諦めずに、必要な助けを求め、ただ進み続けてほしい」

参考文献: NEW NOISE MAG :INTERVIEW: KARNIVOOL GUITARIST DREW GODDARD TALKS ‘IN VERSES’

MGM :KARNIVOOL: THE WAIT IS OVER – INSIDE THE 12-YEAR JOURNEY TO ‘IN VERSES’

THE MUSIC AU:Karnivool Detail The Epic Grind Behind ‘In Verses’: ‘Everyone’s Still Finding Really Beautiful Stuff On This Record’

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TIBERIUS : SINGING FOR COMPANY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAHAN TABRIZI OF TIBERIUS !!

“I think as a band, we very much try to be as authentic as we possibly can be, in a world of bands trying to be scary, masculine and tough, we’re just not like that as people, we like to think we’re cutting through the noise by being different and being honest about who we are.”

DISC REVIEW “SINGING FOR COMPANY”

「バンドとして、僕たちは可能な限り本物で、信頼できる存在であろうと努めているんだ。怖くて男らしく、タフであろうとするバンドの世界の中で、僕たちはどう考えてもそういう人間じゃない。僕たちはメタルのステレオタイプとは違っていて、自分たちがどんな人間かについて正直であることで、雑音を跳ね除けられると思いたいんだ」
ヘヴィ・メタルは男のもの。タフで強いもの。悪魔と死体の音楽。そんなステレオタイプは、21世紀に入って変わろうとしています。今では、女性のアーティストは少なくありませんし、死体や悪魔、剣と鎧のファンタジーだけではなく、内省的でパーソナルなテーマを扱うバンドも増えてきました。
そんなメタル世界で、スコットランドの新鋭 TIBERIUS はありのままの自分を見せることこそ、今のヘヴィ・メタルのあるべき姿だと信じています。なぜなら、ヘヴィ・メタルは正直な音楽だから。弱さを抱きしめる音楽だから。許しの音楽だから。そして、強い人間など、実はこの世界には存在しない、それこそ非現実的なファンタジーだから。
「僕たちは明るい色が大好きでね! 2018年に “Dissipate” のビデオ撮影でこの色にバイブスして、それ以来、ライブの演出やアートワーク、あるいは僕のピンクとブルーのギターを通して、この色をバンドの一貫したテーマにしてきたんだ!」
そんな TIBERIUS の、いやヘヴィ・メタルの現在地が如実にあらわれたミュージック・ビデオこそ、”Mosaic” だといえるでしょう。これほど、メンバー全員が幸せそうに、自然な笑顔でメタルを奏でるMVがこれまであったでしょうか?これほど、ピンクやブルーのビビッドカラーが映えるバンドがこれまで存在したでしょうか?これほど、ポジティブで、優しく、高揚感あふれる楽曲がこれまで聴けたでしょうか?
そう、TIBERIUS はメタルのステレオタイプを、そして閉塞感あふれる現代の暗がりを、”ありのままの自分” を見せることで打ち破り、正直で寛容な “より良い世界” を目指そうとしているのです。だからこそ、彼らは “Singing for Company”、仲間のために声を上げて歌います。
「複雑なリズムや曲の構成、テクニックを、リスナーにとって親しみやすいものにしているというだけで、”プログレとしては物足りない” と考える批評家もいる。一方で、”パワー・メタルとしては重すぎる” “激しすぎる” と考える人もいる。僕はそれを誇りに思っているんだ。もし君が心を開いてくれさえすれば、僕たちは誰にとっても何かを与えることができるし、もし君が心を開かないのなら、それは君の損失となる!」
ゆえに、彼らの音楽自体もメタルのステレオタイプで推し量ることは不可能。欧州版 AVENGED SEVENFOLD、あるいは IRON MAIDEN と LEPROUS の婚姻などと評される彼らの音楽は、パワー・メタルというには複雑すぎる、激しすぎる。プログ・メタルと呼ぶには高揚感がありすぎる…そんな批評家の声を浴びることもありました。しかし、それは逆に言えば前代未聞、唯一無二なる彼らの個性。メタルに加わる新たな魅力。そうした “異端” をも、心を開けば好奇心の新たな翼となる…TIBERIUS は自身の特異な音楽を通して、音楽の力で、世界に寛容さと許しの本質、そして何より笑顔を届けるのです。
今回弊誌では、ギタリスト Jahan Tabrizi にインタビューを行うことができました。「日本文化は間違いなく僕に影響を与えている。僕は子供の頃から X Japan の大ファンで、最近では The Gazette、The Back Horn、MIYAVI、LOUDNESS といった J-ROCK もよく聴いているので、おそらくそれらのいくつかが長年にわたって僕のソングライティングに浸透しているのだろうね」笑顔のメタル。 どうぞ!!

TIBERIUS “SINGING FOR COMPANY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VALHALORE : BEYOND THE STARS】 JAPAN TOUR 26′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LACHLAN NEATE OF VALHALORE !!

“Our goal has always been to deliver what we refer to as “The Three E’s” – Escapism, Empowerment and Entertainment. We want our music, and our live shows, to give listeners the opportunity to escape their troubles for an hour or two. We want to leave the world a more positive place than when we found it.”

DISC REVIEW “BEYOND THE STARS”

「オーストラリアには “ヨーロッパ的” なサウンドのバンドが少なかったからね。オーストラリアにいても、僕が聴きたい、観たい音楽を作って演奏したかったんだ!」
VALHALORE。ヴァルハラの伝承という、まるで北欧神話から抜け出てきたような名前の彼らは、実はオーストラリアのバンドです。太陽の日差しが降りそそぐグレート・バリアリーフと、極寒の北欧神話はあまりにも正反対ですが、だからこそ VALHALORE は欧州的なサウンドを探求しました。そこにないなら、自分たちが作ればいい。ヘヴィ・メタルの寛容さは、ルール違反を罰することなどありません。
「僕たちは常に、自分たちの音楽を通してファンに高揚感や力を与えるエネルギーをもたらすことを目指してきた。 僕たちは皆、映画やゲームのサウンドトラックから大きな影響を受けているから、日本文化からの影響も間違いなくたくさんあるよね。WINTERSUN のような和楽器を積極的に取り入れているバンドが大好きだし、僕たちもそうなんだ。”Aether” という曲では琴だって弾いたんだよ! 」
ただし、その欧州的なサウンドは実にカラフルで、魅力的。なぜなら、彼らの根底には、白夜の太陽 WINTERSUN から流れる “混血の美学” を受け継いでいるから。WINTERSUN のセルフ・タイトルと “Time” が、21世紀を代表する北欧メタルの逸品であることに疑いの余地はありませんが、その傑作の誕生に寄与したのがまさにその “混血の美学” であり、モダン・メタルらしい多様性でした。
メロデス、パワー・メタル、フォーク・メタル、シンフォニック・メタル、プログ・メタル…どのジャンルにも収まりきらない面妖でしかし起伏と驚きに満ちたオーロラの楽曲は、凄まじいシュレッドと様々な民族楽器に彩られた理知的なごった煮。VALHALORE の探求する北欧神話の宇宙には、明らかにあの “Time” と同様の美しき “混血の美学” が宿っています。
「僕たちが進歩するにつれて、Sophie のホイッスルと木管楽器は僕たちのサウンドの象徴的な側面になったんだ。ただ、大変なのは主にライブのサウンド・エンジニアかな。メタル・バンドの獰猛さに対して、穏やかなアコースティック楽器をミックスしなければならないからね!」
マンドリン、チェロ、パイプ、ホイッスルに縦笛、横笛。さらに和楽器の琴まで使用する伝統民族楽器のるつぼもまた、VALHALORE の魅力のひとつ。Sophie の操る艶やかな管楽器は、硬質な彼らの音楽を徐々に溶かして、テンポの速いメタルの嘶きに濃密なアクセントを加えていきます。
ここにのチェロとマンドリンの欧州的で荘厳な響きが加わることで、力強いメタルとオーガニックで本格的なフォークの生命が見事に重なり合います。さらに、佳曲 “Heart on the Sea” には、あの Anna Murphy が参加。ELUVEITIE で培った先駆者の威厳を見せつけながら、このジャンルの弛まぬ進化に目を細めます。そう、歴史に彩られたフォーク・メタルもまた、歴史を重ね、その文化を広げているのです。
今回弊誌では、ボーカル、チェロ、マンドリンとひとり三役の Lachlan Neate にインタビューを行うことができました。「僕たちの目標は常に、僕たちが “3つのE” と呼ぶもの、すなわちエスケープ、エンパワーメント、エンターテインメントを提供することなんだ。 僕たちの音楽、そしてライブを通して、リスナーに1時間でも2時間でも悩みから逃避する機会を与えたい。僕たちは、自分たちが今いる世界よりもポジティブな世界を後世に残したいんだ」 来日も決定。どうぞ!!

VALHALORE “BEYOND THE STARS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WINGS OF STEEL : WINDS OF TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PARKER & LEO OF WINGS OF STEEL !!

“Power needs emotion, and technicality needs soul, and that balance is something we’ve always aimed to carry forward into Wings of Steel rather than focusing on technique for its own sake.”

DISC REVIEW “WINDS OF TIME”

「ヘヴィ・メタルは、常に単なる音楽以上の存在だった。人々が集い、仲間に理解され、自分よりも大きな一体感の中に強さを見出せる場所なんだよ。困難な時期には、解放、内省、そして繋がりのための空間となる。恐怖、怒り、希望、そして回復力といった感情を受け止め、人々を孤立させるのではなく、強い力へと変える方法を与えてくれる。ヘヴィ・メタルはコミュニティを創り出し、自分が孤独ではないことを思い出させてくれるんだ。国境、言語、そしてバックグラウンドを超えた一体感を与えてくれる」
SNS という人間のほんの一面だけを切り取って強調し、分断を加速させる悪魔のツールに汚染された現代社会において、ヘヴィ・メタルほど一体感や前向きな力を得られる場所は他に多くはないでしょう。ヘヴィ・メタルを聴いている間は、体感している間は、ライブを浴びている間は孤独から解放される。異なる意見、異なる国籍、異なる文化、異なる人種であっても、ヘヴィ・メタルにおいてはひとつになれる。ヘヴィ・メタルの回復力で困難を克服できる。
そんな素晴らしきヘヴィ・メタルの世界は、その寛容さ故に伝統や壁を破壊し、様々なジャンルや文化を養分として、細分化という枝葉を瑞々しく伸ばしています。だからこそ一方で、”バンディエラ”、旗頭の欠如という問題に直面しているのかもしれませんね。自由極まりないメタル世界だからこそ、メタルらしいメタルをやりづらい、焼き直しになりかねない。WINGS OF STEEL はそんなメタル世界で “時の風” を駆け抜け、”現代的な” 伝統的ヘヴィ・メタルを復活させ、メタルのバンディエラへ堂々たる名乗りをあげたのです。
「80年代について僕たちが最も共感するのは、特定のバンドやグループではなく、あの時代の全体的な精神…つまり強烈なソング・ライティング、真のミュージシャン・シップ、力強いメロディー、そして誠実で妥協のない個性なんだ」
メタルのメタルらしいバンディエラとなるためには、ソング・ライティング、ミュージシャン・シップ、メロディ、そして揺るぎない個性…そのすべてが必要とされますが、WINGS OF STEEL はまさにその “すべて” を兼ね備えています。彼らには、あの “Painkiller” で JUDAS PRIEST が提示した強烈なテクニックを超越した現代技巧の最高峰が備わっていますし、IRON MAIDEN が “Somewhere In Time” で刻み込んだ作曲術の極みも宿っています。そして憂を帯びた雄々しきメロディと11分の長尺曲で勝負する強い個性。つまりWINGS OF STEEL には、80年代にメタルを牽引した二大巨頭に備わる奇跡的な才能と似た可能性を確実に秘めているのです。
「80年代に生まれた素晴らしいヘヴィ・メタルには、本当に大きな敬意を抱いているんだ。 VICIOUS RUMORS や初期の QUEENSRYCHE, METAL CHURCH, CRIMSON GLORY, RIOT といったバンドは、このジャンルの歴史において重要な位置を占めている。あの時代はヘヴィ・メタル全体の形成に大きな役割を果たし、当然のことながら、当時のレコードの多くは、僕たちの音楽的ルーツの一部となっていったんだ」
加えて重要なのは、彼らがまだ20代という若さにして、私たちの愛する古き良きアメリカン・ヘヴィ・メタルの真髄を極めていることでしょう。当時パワー・メタルと呼ばれていたアメリカのメタル・ソルジャーたちは、メタルという狭い枠の中でいかに個性を、フックを、起伏を出せるかに心血を注いでいました。そうした伝統や格式の中に光るアイデンティティ、不自由の中の自由を、WINGS OF STEEL は誰よりも今、謳歌しているのです。
そう、21世紀最初のメタル四半世紀が過ぎ、メタルは原点への回帰を志向します。何よりも、耳馴染みがよく歌えて聴きやすい。流行りの NWOTHM、ETERNAL CHAMPION や HAUNT のいなたさも悪くはないですが、WINGS OF STEEL のトラディショナル・ヘヴィ・メタルはもっと明快でわかりやすく、より多くのリスナーにアピールし、鋼鉄の翼を広げてアリーナへと上り詰めるはずです。
今回弊誌では、ギタリストの Parker Halub と ボーカリスト Leo Unnermark にインタビューを行うことができました。「パワーには感情が必要であり、テクニックには魂が必要だ。僕たちは、このバランスを WINGS OF STEEL で継承することを目指してきたんだ」 ギターソロに見事なストーリーがあり、ボーカルの声質も相まって STRATOVARIUS を想起させる場面も。とにかく、DIO の “Lock Up the Wolves” が人生を変えたアルバムなのですから、間違いありませんね。どうぞ!!

WINGS OF STEEL “WINDS OF TIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRISTIANO FILIPPINI’S FLAMES OF HEAVEN : SYMPHONY OF THE UNIVERSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CRISTIANO FILIPPINI OF FLAMES OF HEAVEN !!

“Power Metal and AOR must be about love, positivity, inner strength, battles that take place inside and outside of us, and a sense of justice. So I think Knights of the Zodiac represent not only my favorites, but also perfect examples of how to convey this message.”

DISC REVIEW “SYMPHONY OF THE UNIVERSE”

「パワー・メタルやAORは、愛、ポジティブさ、内なる強さ、自分の内外で起こる戦い、そして正義感について語らなければならないと思う。同時に、”聖闘士星矢”、”北斗の拳”、”ドラゴンボール”、”ベルセルク” といった日本のアニメも、僕のお気に入りであるだけでなく、そうしたメッセージを伝える完璧な作品でもあると思う。だからこそ、このアルバムが日本の漫画やアニメのファンに届くことを心から願っているんだよ」
仲間を信じ合う “友情”、目標達成のため苦難に耐え励む “努力”、そして最後まで諦めず勝利を目指す “勝利”。80年代から90年代にかけて、日本のアニメや漫画はそうしたポジティブでストイックなムードにあふれていました。まだまだ暴力や抑圧、不条理が蔓延していた当時の学校や子供の社会で、私たちはそうした “エンターテイメント” から、前向きな生き方や優しさ、倫理観を学んでいたのかもしれませんね。
それからおよそ30年。当時のアニメや漫画で育った子供たちは成熟し、さまざまな分野でその影響を発揮するようになりました。その波は日本国内に止まりません。イタリアの Cristiano Filippini 率いる FLAMES OF HEAVEN もそうしたアーティストのひとつ。彼らはアートも生き方も複雑を極める現代で、愛や友情、正義といったいつの世も変わらぬ不変の真理にコスモを燃やしています。そのための乗り物として、パワー・メタルや AOR は完璧な “ペガサス”。なぜなら、パワー・メタルのファンタジーはいつの時代もそうしたポジティブな心に寄り添ってきたのですから。
「”聖闘士星矢” にインスパイアされたアルバムの全曲は、最初のシリーズ “サンクチュアリ編” のいくつかのシチュエーションを描写していると言える。曲のタイトルにも登場するフェニックスの一輝やジェミニは間違いなく、漫画の中で最も魅力的で重要で複雑なキャラクターの2人だからね。 しかし、僕のお気に入りのキャラクターは、星矢、紫龍、シャカ、そして童虎だ。 強さ、前向きさ、そして星矢は別としてバランスと知恵の良い例だからね」
“ペガサス幻想 そうさ夢だけは 誰も奪えない心の翼だから”。この数小節、数文字に私たちは何度助けられたことでしょう。イタリアに生まれた Cristiano もこの聖闘士星矢の美しき理想、夢、ストーリーに魅了され、大人になった今、その世界をパワー・メタルで描くことを決意します。
「もちろん “ペガサス幻想” は知っているし、素晴らしい曲で、まさにアンセムだよね。”聖闘士星矢” の公式サウンドトラックには美しい曲がたくさん収録されている。 それに、オーケストラのインストゥルメンタルにも信じられないほどインスパイアされている。傑作だよ」
普段はクラシック・アンサンブルのための作曲に注力している Cristiano。だからこそ、”Symphony of the Universe” は、サンクチュアリのサーガを描くに十分な壮大さと情熱を兼ね備えています。もちろん、イタリアの偉大な先人 RHAPSODY の血をひくクラシカルなパワー・メタルの一撃は強烈ですが、同時にイタリアが誇る Frontiers Music の流れを汲むメロディック・ハードな旋律美も内包し、ワグナーのオペラをメタルに仕立てたような長尺曲も見事。Cristiano はクラシックの作曲プロセスをそのままメタルに持ち込むのではなく、クラシックの世界からメタルを俯瞰し手を加えることで、他のアーティストとは一線を画す存在となり得ています。
同郷 TEMPERANCE の Marco Pastorino が張り上げる歌声はペガサスに乗って駆け上がり、達人 Michele Vioni のギターは廬山昇龍覇の滝の流れの如く流麗。そして Cristiano が指揮を取る鍵盤とオーケストレーションのネビラチェーンはあまりにも純美。ここには、ファンタジックでポジティブなメタルに求められる要素すべてが詰まっているのです。
今回弊誌では、Cristiano Filippini にインタビューを行うことができました。「音楽、特にこのジャンルは、人々の生活を向上させるために大いに役立つと思う。僕の音楽がどれだけ人々が困難な時期を乗り越えるのを助け、今日まったく狂っているように見えるこの世界の灰色を取り除くことができたかについて、多くのメッセージをもらうからね。僕たちは善の戦士なのだから戦わなければならないし、あきらめてはならない。人生は時に厳しいものだけど、戦うための武器はある。そのひとつが、こうしたアートなんだよ」 どうぞ!!

CRISTIANO FILIPPINI’S FLAMES OF HEAVEN “SYMPHONY OF THE UNIVERSE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AEPHANEMER : UTOPIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARTIN HAMICHE OF AEPHANEMER !!

“I have always admired Joe Hisaishi, who composed the music for many Studio Ghibli films. One of my favorite pieces is Innocent from Castle in the Sky – it is pure, sincere, and beautiful. I truly admire his work.”

DISC REVIEW “UTOPIE”

「僕らにとって、フランス語で歌うことはとても自然な選択なんだ。メタルの世界では母国語で歌うバンドがますます多くなり、一般的に広く受け入れられるようになったと感じているよ。 それは今日、誠実さや信憑性の証とみなされ、高く評価されることさえあるからね」
音楽、特にメタルの優れているのは、たとえ言葉の壁やボーカル・スタイルによって歌詞が不明瞭で理解不能な場合でも、ムード、メロディ、テーマ、バイブスなどその音楽自体に伝える力が込められているところでしょう。裏を返せば、モダン・メタルの寛容さは、あらゆる異端を排除せず、壁を壊して包容し、自らの血肉としていくことができるのです。フランスの AEPHANEMER は、そうして文化の壁も、さらにはメロデスというジャンルの限界まで打ち壊し、突破していきます。
「客観的に見て、僕たちは DARK TRANQUILLITY, AMON AMARTH, ARCH ENEMY のようなサウンドではまったくない。 CHILDREN OF BODOM と比較されることがあるけれど、それでも僕らとはまったく違う雰囲気を持っているよ。 というのも、今の僕は中世、クラシック、民族音楽にインスパイアされることが多いからね。それはもはや前世代のバンドには当てはまらない特徴だよね。結局、単に音楽はそうやって進化していくということだよ」
メタルの進化に終わりはありません。そう、AEPHANEMER はメロデスの遺産をしっかりと抱きしめながら、そのサウンドを別の次元へと高めるために音楽を奏でています。”メディーヴァル・フォーク的シンフォニック・メロデス” という大げさな表現が、もしかしたら今の彼らには最もしっくりくるのかもしれませんね。それだけ、この最先端のメロデスは、映画的で、オーケストラで、壮大な音の祭典です。
2023年にベーシストの Lucie Hune が脱退し3人編成となったにもかかわらず、これだけの緻密な壮観を完成させた AEPHANEMER の才能は比類なきもの。バンド創設者でインタビューイ、 Martin Hamiche が全ての弦楽器とオーケストレーションを担当して、あの鬼才 Dan Swanö 再度の協力により、力強いメロディにフック、心を震わす激情、幻想的なムード、フランスらしい気品と格調の高さ、そして豪華絢爛な “La Rivière Souterraine” が象徴する複雑で多面的な色彩を帯びた、ダーク・フォークとネオクラシカルの煌びやかな祭典 “Utopie” が降臨することとなりました。
「僕たちのアプローチは、あきらめずに日々の小さな行動を通じて現実世界を改善する努力を続ければ、現実世界で何が起こり得るかについて、自分自身、そしておそらく他の人たちを鼓舞するためにアートを創作するというものなんだ。僕たちは、人々が僕たちの音楽からエナジーやインスピレーションを感じ、そのエネルギーを活かして生活や家庭、地域社会に前向きな変化を起こしてくれることをとても嬉しく思っているんだ。僕たちにとって、すべての生きとし生けるもののためにより良い未来を創造することは必要不可欠なこと。だからこそ僕たちの考えるユートピアとは、人類が自然や他の生命体と調和して生きる世界なんだよ」
お馴染みとなった Niklas Sundin (DARK TRANQUILLITY) の手による鮮やかなアートワーク。そこには、彼らにとっての “Utopie” “理想郷”、自然と人間が手を携え、調和して生きていく世界が描かれています。もちろん、前作 “A Dream of Wildness” のイノシシに、私たちは “もののけ姫“ の影をみましたし、久石譲の風も受け取りました。
そう、AEPHANEMER の理想郷にとって、進化し多様に共生するべきは音楽だけにとどまりません。彼らは、人も小さな行動の積み重ねでより良い世界を目指すことができる、異文化と共生し調和することができると信じてアートを生み出していますし、もちろんアシタカとサンのように文明と自然も調和して生きていく未来を見据えているのです。
今回弊誌では、ギタリスト Martin Hamiche にインタビューを行うことができました。「Marion は、僕たちが大好きな宮崎駿監督の “もののけ姫” に登場するイノシシをすぐに思い浮かべたね。 彼女は若い頃からアニメのファンで、アニメは常に彼女に創造的なインスピレーションの源となってきた。 個人的には、多くのスタジオジブリ作品の音楽を作曲した久石譲さんをずっと尊敬してきたんだ。彼の作品で好きな曲のひとつは “天空の城ラピュタ” の “Innocent”。まさに純粋で誠実で美しい音だよね。彼の作品を心から尊敬しているんだ」ギターの煌めきとドラムの技巧、そして声の獰猛は群を抜いていますね。どうぞ!!

AEPHANEMER “UTOPIE” : 10/10

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