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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITURGY : 93696】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RAVENNA HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!

“Life Has Been Unbelievably Better Since My Transition. Unfortunately The Politics Of Gender Are Becoming Increasingly Scary In the United States, But It’s Still Much Better To Be Living Out In The Open.”

DISC REVIEW “93696”

「男性から女性に移行してからの生活は信じられないほど良くなっているわ。 残念ながら、アメリカではジェンダーに対する政治的な圧力はますます恐ろしいものになってきているけど、それでも、オープンに生きている方が私はずっといいんだよ」
ブラック・メタルを哲学する革新者、LITURGYのハンター・ハント・ヘンドリクスは現在、ラヴェンナ・ハント・ヘンドリクスへとその名を変えています。
「私は女性よ。ずっとそうだった。様々な拒絶を恐れて明かせなかったの。私は女性として音楽家、神学者、詩人で、生まれるものは全て女性の心から。同時に男性として生まれたことを否定したくもないのよね」
長い間、女性の心を持つ男性として生きてきたラヴェンナにとって、トランスジェンダーの告白は非常に勇気のいるものでした。周りの目や差別、弾圧といった現実のプレッシャーをはねのけて、それでも彼女がカミング・アウトした理由は、自分の人生を、そして世界をより良くしたいから。彼女の理想とする天国であり想像の未来都市”Haelegen”実現のため、ラヴェンナの音楽は、魂は、いつしか抑圧を受ける少数派の祈りとなったブラック・メタルと共に、もう立ち止まることも、変化を恐れることもありません。
「ブラック・メタルはロックという枠組みとその楽器を使ってクラシックを作るものだと考えていたんだ。 みんながそう思っているわけではないけど、私にとってはそこが大きな魅力だから」
21世紀に入ってから、ブラック・メタルはメタルの多様性と寛容さを象徴するようなジャンルへと成長を遂げてきました。DEAFHEAVENの光、ALCESTの自然、SVALBARDの闘志、VIOLET COLDの願い、KRALLICEの異形、ZEAL&ARDORのルーツなど、ブラック・メタルが探求する世界は、新世紀の20年で膨大な広がりと深みを備えることになったのです。
そうしたブラック・メタルの領域においてラヴェンナは、作曲、芸術、哲学を共有する組織LITURGYを設立します。”トランセンデンタル・ブラック・メタル”、”超越的ブラック・メタル”と呼ばれるようになったLITURGYのアートはまさに超越的で、バンドに備わる審美と多様性を純粋に統合。神学、宗教、宇宙的な愛、終末論、性について探求しながら、息を呑むような壮大さで恍惚感を表現していきます。
ラヴェンナはこの場所でブラック・メタルの暗黒から歩みを進め、管楽器、アンサンブル、グリッチ、オペラ、時には日本の雅楽まで統合した唯一無二の音楽性を追求し、変化を恐れない彼女のポジティブな哲学を体現しています。その知性の煌めきと実験性は、”ヘヴィネスの再定義”につながっていきました。つまりラヴェンナは、”重さ”を神聖なもの、物語や哲学への触媒として使用することにしたのです。その方法論として彼女は、メタルと前衛的なクラシック音楽の間のスペース、危険な境界線を常に探っています。
「”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいい」
神の実在について瞑想し、LITURGYのメタル・サイドにフォーカスした”H.A.Q.Q.”と、世界の創造と人類の堕落をクラシック/オペラの音楽言語で表現した”Origin of the Alimonies”。そして、謎の数字を冠した本作”93696″は、その2枚のアルバムのまさにハイブリッドにも思える現行LITURGYの表裏一体。驚くべきことに、ハードコア・パンクの衝動まで帯電した2枚組の巨編は、LITURGYの集大成でありながら、未来をも見つめています。
「バンドの一体感が欲しかったのよ。だから、今回はよりライブに近い音で録りたいと思ったの。もともとこのバンドのバック・グラウンドがパンクだったということもあるんだけど、アルバム自体がこうしたライブ感で作られることが最近非常に少なくなってきているからね」
そうしてラヴェンナによる”ヘヴィネスの再定義”はここに一つの完成を見ます。”93696″には、おそらくこれまでのLITURGYに欠けていた最後のピース、”人間味”、バンドらしさが溢れています。ただ実験を繰り返すだけでは、ただメタルとクラシックをかけあわせるだけではたどり着けない境地がここにはあります。逆に言えば、だからこそラヴェンナは今回、ハードコア・パンクの衝動を必要とし、デジタルからあのスティーヴ・アルビニの手によるアナログの録音に戻したのかもしれません。
例えば、タイトル・トラック”93696″は、LITURGYのトレードマークである複雑かつプログレッシブなリズムとは対極にあって、ダイナミクスの揺らぎや反復の美学で神聖と恍惚を表現。レオ・ディドコフスキーの叩き出す千変万化で獰猛なグルーヴは、ティア・ヴィンセント・クラークの轟音ベースへと感染し、ラヴェンナのメロディズムと雄弁なハーモニーを奏でます。”ポスト・アポカリプス”を紡ぐLITURGYのサウンドは、あるいはもう、ブラック・メタルというよりもISISやCULT OF LUNAの指標する”ポスト・メタル”に近い音像と言えるのかもしれませんね。そしてその一体感は、さながら人の”和”こそが人類の未来であることを示しているようにも思えます。
とはいえ、もちろんこれはLITURGYの作品です。緻密で細部まで作り込まれたニュアンス豊かな楽曲と、想像力豊かなリリックには驚きが満ち溢れています。弦楽器、聖歌隊、フルート、ホルン、ベルを用いて崇高さの高みへと舞い上がる前衛的グリッチ・メタリック・クラシック”Djennaration”を筆頭に、あらゆる楽器、あらゆるジャンルから心に響く美しさを抽出するラヴェンナの才能は健在。そうして彼女は、探求の先にある未知なるものへの寛容さと未来への希望を、自らの作品で祝福してみせたのです。表裏一体から三位一体への大きな進歩。さて、人類はラヴェンナとLITURGYが想望する”天国”へとたどり着くことはできるのでしょうか?
「これは終末的なアルバムよ。そのほとんどは2020年に構築されたものだから、あの年に起こったことすべてがこの作品に影響を与えている。でもね、最終的には希望があるの。最近の世界を見ているとありえないことかもしれないけど…人類の歴史に対するポジティブな未来への憧れがね」

LITURGY H.A.Q.Q. 弊誌インタビュー

LITURGY ORIGIN OF THE ALIMONIES 弊誌インタビュー

“93696”の解説、4000字完全版は DAYMARE RECORDINGS から発売された日本盤のライナー・ノーツをぜひ!

LITURGY “93696” : 10/10

INTERVIEW WITH RAVENNA HENDRIX

Q1: First, in just the past few years we have seen major world-changing events in the form of pandemics and wars. Of course, this new, epic, huge album may have been influenced by the lockdown, but mentally, did those events affect your work?

【RAVENNA】: Yes, the times feel apocalyptic and it is an apocalyptic album. And most of it was constructed during 2020, so everything going on during that year was influencing the project.

Q1まず、ここ数年だけでもパンデミックや戦争など、世界を変えるような大きな出来事がありました。もちろん、今回の壮大で巨大なアルバムも、精神的に、そうした一連の暗い出来事に影響を受けているのでしょうか?

【RAVENNA】: そうだね、今の時代は終末的な感じがするから、これはやっぱり終末的なアルバムになっている。 そして、この作品のほとんどは2020年に構築されたものだから、あの年に起こったことすべてがこのプロジェクトに影響を与えているの。

Q2: You mentioned that you were aware that your previous work, “Origin of the Alimonies,” was an opera in your mind and that you were working on a video production of it. Did you switch that production to “93696” during the lockdown?

【RAVENNA】: I created a video for Origin of the Alimonies during 2020, which we use for live performances but haven’t released widely yet.

Q2: 前回のインタビューであなたは、前作 “Origin of the Alimonies” は、自分の中ではオペラだと認識していて、それを映像作品として制作しているとおっしゃっていましたね。パンデミックの最中に、その制作を “93696” へと切り替えたのでしょうか?

【RAVENNA】: 2020年の間に “Origin of the Alimonies” の映像を制作し、ライブでは使っているんだけど、まだ広く公開はしていないんだ。

Q3: 93696 is a number derived from the religions of Christianity and Thelema, right? Since many Japanese are non-religious, can you tell us why this number is so special?

【RAVENNA】: I’m not completely sure what the meaning of the number is. It just came to me. But it has something to do with the union of creative self-realization with universal compassion.

Q3: “93696” は、キリスト教やテレマといった宗教に由来する数字ですよね?日本人は無宗教の人が多いので、この数字がなぜ特別なのか、教えていただきたいのですが。

【RAVENNA】: “93696”という数字の意味するところは、自分でもまったくわからない。ただ、降りてきただけなのよ。でも、創造的な自己実現と普遍的な慈悲の心に関係しているのはたしかね。

Q4: I understand “Halegen” to be your interpretation of heaven in your ideal future city. Is this “93696” the story of a new world sprouting from the end of the world?

【RAVENNA】: Yes, it’s a yearning for a positive outcome for human history, as unlikely as they may be.

Q4: “Haelegen” とは、あなたの理想の未来都市で、天国だと理解しています。この “93696” は、世界の終焉から理想的な新しい世界が芽生えるという話なのでしょうか?

【RAVENNA】: そうね、最終的には希望があるの。最近の世界を見ているとありえないことかもしれないけど…人類の歴史に対するポジティブな未来への憧れがね。

Q5: What is particularly striking about this album is the increased band-like quality. Of course, you composed all the music, but I can feel a live impulse and a sense of unity as a band more than ever before. I hear that the hardcore-punk influence is stronger than ever. Is that the reason?

【RAVENNA】: Yes, I wanted to make a recording that sounded more like our live performances do. In part because the band’s background has always been punk, but also because it’s becoming so much less common for albums to be made in such a live way.

Q5: 今回のアルバムで特に印象的なのは、バンドらしさが増したことです。もちろん全曲あなたが作曲されているのですが、今まで以上にライブ感やバンドとしての一体感を感じることができます。ハードコア・パンクの影響がこれまで以上に強いのも、それが理由でしょうか?

【RAVENNA】: バンドの一体感が欲しかったのよ。だから、今回はよりライブに近い音で録りたいと思ったの。もともとこのバンドのバック・グラウンドがパンクだったということもあるんだけど、アルバム自体がこうしたライブ感で作られることが最近非常に少なくなってきているからね。

Q6: Black metal continues to expand philosophically, spiritually and musically, and this album seems to embody such a situation, doesn’t it? Did you see this much potential in the black metal you listened to as a child?

【RAVENNA】: Kind of, yes. I’ve always seen black metal as a way to make classical music using rock instrument. Not everyone sees it that way, but that’s a big part of the attraction to me.

Q6: ブラック・メタルは哲学的、精神的、音楽的に広がり続けていますが、このアルバムはそうした状況を体現しているように思えます。あなたは、子供の頃に聴いていたブラック・メタルにこれだけの可能性を感じていたのでしょうか?

【RAVENNA】: ちょっとだけ、そうだね。 ブラック・メタルはロックという枠組みとその楽器を使ってクラシックを作るものだと考えていたんだ。 みんながそう思っているわけではないけど、私にとってはそこが大きな魅力だから。

Q7: “Origin” approaches Liturgy from the classical side, while “H.A.Q.Q.” approaches it from the metal side. In a way, is “93696” on the border between the two, a dangerous but ideal heavy music for you?

【RAVENNA】: Yes, exactly. 93696 is as meticulous a composition as Origin of the Alimonies but it has more of a steady groove like rock music, so the hope is for it to provide everything both genres have to offer.

Q7: “Origin “はクラシック側から、”H.A.Q.Q. “はメタル側から LITURGY のアートにアプローチした作品でした。ある意味、両者の境界線上にある “93696” は、あなたにとって危険でありながら理想的なヘヴィ・ミュージックの形なのでしょうか?

【RAVENNA】: うん、まさにその通りね。”93696″は”Origin of the Alimonies”のようにオペラやクラシックを想起させる緻密な構成だけど、どちらかというとロックのような安定したグルーヴがある。だから、両方のジャンルが持つすべてを提供できるような作品になればいいな。

Q8: Finally, have the past two years as Ravenna been more pleasant and happy than ever for you?

【RAVENNA】: Yes, life has been unbelievably better since my transition. Unfortunately the politics of gender are becoming increasingly scary in the United States, but it’s still much better to be living out in the open

Q8: 最後に、ラヴェンナとしてのこの2年間は、あなたにとってこれまで以上に幸せで、満たされたものでしたか?

【RAVENNA】: そうね。ハンターからラヴェンナへ、男性から女性に移行してからの生活は信じられないほど良くなっているわ。 残念ながら、アメリカではジェンダーに対する政治的な圧力はますます恐ろしいものになってきているけど、それでも、オープンに生きている方が私はずっといいんだよ。

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【PERIPHERY : PERIPHERY Ⅴ: DJENT IS NOT A GENRE】


COVER STORY : PERIPHERY “PERIPHERY V: DJENT IS NOT A GENRE”

“They’re All Mad That We Named It That, Because We’re Clearly a Djent Band”

DJENT IS NOT A GENRE

ワシントンDCの “Djent” のパイオニアが7枚目のアルバムの名前を決めようとしたとき、出てきた案はすべて次点でした。結局、タイトルは “Periphery V : Djent Is Not a Genre” に落ち着きます。それは、彼らが自らが作る音楽以外では、まったく何も真剣に考えないバンドである証拠でした。
PERIPHERY の創設者である Misha Mansoor は、Mark Holcomb と Jake Bowen という2人のギタリストと一緒に何も気にしていないことを強調します。
「Djent はジャンルではなく、ライフスタイルなんだ!」Misha は苦笑いと共にタイトルがただのジョークであることを匂わせます。「俺はただ、どこかのデータベースにこう書かれているかもしれないと考えると笑ってしまうんだ。”Periphery V: Djent Is Not a Genre” ジャンル Djent ってね」。そうして幸せそうに笑うのです。「名前なんて人生においては小さなことさ」
「だってそうだろ? KARNIVOOL は昔から大好きなバンドだけど、あれはひどい名前だ!」と、Misha は食人を文字った恐ろしい名前の素晴らしいバンドについて話し続けます。Mark もまけずに笑いを誘うようなパンチラインを交換します。「その最たるものを教えてやろうか?KORN だよ!」
「”Djentはジャンルじゃねぇ!” というタイトルを思いつくのに、アルバム制作期間、つまり3年近くかかったと付け加えておくよ」と Jake も負けずに冗談を飛ばします。「あれは、俺たちが唯一 “うげっ!”てならなかったアイデアなんだ」

それも驚くようなことではありません。PERIPHERY の信奉者であれば、バンドにとってユーモアのセンスは必須条件であることはすでにご存じでしょうから。彼らの前作は “Periphery IV: Hail Stan” というタイトルでしたが、これはタイプミスではありません。それ以前にも、”Ow My Feelings”、”Jetpacks Was Yes”、”Froggin’ Bullfish” という笑いを誘う楽曲を書いているのですから。そして、PERIPHERY がいかに真剣にタイトルを考えていないかというのは、彼らが実際には Djent が今ではジャンルだと考えていることで伝わるのです。
「アルバムを “Djent はジャンルじゃねえ!” と呼ぶ理由は、俺たちが愛情を込めてファンを小馬鹿にするのが好きだからなんだ。愛情を込めて!だよ!」と Mark は主張します。Jake は笑って付け加えます。「俺たちは明らかに Djent バンドだから、みんなそう名付けたことに怒ってるんだ (笑) まあ、Djent については、いろいろな意見があるよね。俺たちの頭の中ではプログレッシブ・メタル・バンドとしてスタートしたのに、そうしたタグに入れられたんだ。俺には、それが奇妙に聞こえたんだよな。そこには、俺が期待していたような美的感覚がなかったというか。でも、何年もかけて、俺はそれを気にしないようになった。グランジを見ればわかるよ。グランジというのは、ジャンル名としては明らかに信じられないほど愚かな名前だと思うけど、それでも、グランジと聞くと、NIRVANA や ALICE IN CHAINS, PEARL JAM, SOUNDGARDEN など、世界的で歴史を変えるようなバンドが思い浮かぶからね」
そもそも、Djent という言葉の誕生に Misha は深く関わっています。
「MESHUGGAH のフォーラムで彼らのサウンドが “Djenty” って形容されてた。だから俺の曲を “Djentyな曲” って紹介してたら、それがジャンルだと思われてしまった。ジョークだったのにね!」

では…実際に “Djent” とは何でしょうか? Wikipedia には “オフビートと複雑なリズムパターンの使用を特徴とするプログレッシブ・メタルのサブジャンル” と書かれていますが、実際にはそれ以上の何かがあります。Djent は2000年代半ばに始まったムーブメントで、MESHUGGAH が使用するポリリズムの多弦低音弦のピッキングに魅了されたギタリストたちが、それを利用したのが始まりです。パーム・ミュートした低音弦が発する音から、このジャンルは “Djent” という擬音で呼ばれるようになり、Misha Mansoor, TesseracTの Acle Kahney, SKYHARBOR の Keshav Dhar などがそのパイオニアとなりました。しかし、それまでのメタルのムーブメントとは異なり、Djent は地理的にも文化的にも固定されておらず、ギター・オタクが世界中の寝室からフォーラムや MySpace, 長じて Bandcamp にリフや楽曲を投稿する良い意味でのカオスが生まれたのです。
Misha は、「ちょうど物事の転換期で、面白い時代だった」と振り返ります。「俺は、”スタジオはもう必要ない” という最初の波に乗った一人なんだ。レコード会社から出る予算は減り、レコードの売り上げはもはや大きな要素ではなく、レコード契約の性質や予算がすべて変わりつつあった。レーベルの若い人たちはみんな “PERIPHERY と契約しろ” って感じだったけど、もう少し年配の、インターネットや MP3 をただの流行と捉えているような上層部の人たちは、俺たちのことをよく理解していなかったんだ。彼らの言葉も、俺たちに出したオファーも、そのことをはっきりと示していたよ。実際、たくさんのオファーがあったけど、どれもひどいものだった。3年くらいは、レコード契約を断ってばかりいたよ」
実際、Misha は大きく変わった今の音楽産業にも前向きです。
「俺は他のメタル・バンドとは考え方が違う。彼らはバンドがお金を産まなくなった事実に対し前向きな変化が勝手に起こる事を期待する。でも俺はメンバーにこのバンドでは稼げないと断言している。そして機材の知識やプロデュース業で収入を確保したんだ。今もしバンドをやっているなら様々な方法で収入を確保しないと生き残れない。でも、正しいアプローチさえすれば、音楽産業には間違いなくまだチャンスはあるよ!」

自らのレーベルも立ち上げました。3DOT Recordings です。
「自分たちのレーベルを作りたいとずっと思っていたんだ。それはいつも冗談みたいなものだった。アルバムを作るたびに、”自分たちのレーベルから出せばいいじゃないか” みたいな感じで。これは俺たち全員の夢がようやく実現したようなもので、実現するとは思ってもみなかったけれど、実現したのだから、これ以上の喜びはない。素晴らしいことさ」
しかし Jake は、決して 3DOT と PERIPHERY で億万長者になりたいわけではないと話します。
「もちろん、何らかの金銭的な補償があることを望んでいるからこそ、これだけの労力を費やしている。でも、現実的に考えて、この仕事で億万長者になることはないだろうとも理解しているよ。俺も音楽試聴には主に Spotify を使っている。これは、今のところ、アーティストにとってタブーな答えだと思うけど。でも、2015年に Spotify を本格的に利用するようになってから、俺の音楽に対する視野が完全に広がったんだ。朝起きると、聴いたことのない曲がたくさん入った新しいプレイリストがあり、それを全部保存している。膨大なプレイリストができあがるからね。そのおかげで、音楽、特にエレクトロニック・ミュージックへの愛情を探求することができたんだ。
同時に俺は、Spotify に登録したアーティストであり、そこから得られる報酬を見なければならないけど、残念で不合理な額だ。問題は、彼らのビジネスモデルがよくわからないことなんだ。もちろん、地球上すべてのアーティストにライセンスを与える権利を支払うには、それなりの費用がかかる。だから、彼らのジレンマはわかるけど、コンテンツにはお金を払うべきだろ? 俺たちはコンテンツ・クリエイターで、彼らは俺たちのコンテンツをライセンスし、サブスクリプションを通じてお金を稼いでいるわけだけど、そのパワーバランスは少しずれているような気がするね。
でも、YouTube がある。Spotify で見つからない曲や、ゲームのサウンドトラックなど、Spotify にはない曲を聴きたいとき、YouTube はとても便利だ。俺は、YouTube にお金を払って、プレミアム…サービスを利用するのが好きなんだ」

PERIPHERY は、2010年にデビュー・アルバムをリリースした Sumerian から、Misha によれと “攻撃的な” レコード契約を結んでもらったおかげで、DIY と寝室を離れることになりました。しかし、皮肉なことに、”Djent Is Not a Genre” は依然として、完全無欠に “Djenty” なアルバムです。オープニングの “Wildfire” は、ドラムロールを合図に、ダウンチューンのチャグにハーモニクスの嘶きが不規則に割り込む、決して穏やかではない、Djent な幕開け。”Atropos”, “Dying Star”, “Zagreus”, Everything Is Fine” も同様に、指板の最も窮屈な場所に夢中になっているようにも思えます。
しかし、PERIPHERY が常に目指している、真のプログレッシブ・ミュージックを示すタッチもここには豊富に存在しています。フロントマンの Spencer Sotelo は、咆哮と歌唱の切り替えで対比の美学を生み出し、両手を広げて “ファック・イット!” と宣言して、シンセウェーブと脈打つ EDM ビートを取り入れます。そうして、”Djent Is Not a Genre” の最後を飾る “Dracul Gras” と “Thanks Nobuo” のデュオロジーでは、プログ、Djent、ポップ、ポストロックのカラフルな饗宴が24分にわたって繰り広げられるのです。
同時に PERIPHERY は自らの栄光の軌跡をもここに織り交ぜています。例えば “Wildfire” は、以前 “The Event” で採用されたメロディを再現したもので、2部構成のロック・オペラ、2015年の “Juggernaut” のインストゥルメンタル・セグエの再来です。
「もともと “Periphery V” は “Juggernaut” の後継作品にしたかったんだけど、それはすぐに廃案になったんだ」 と Mark は明かします。「その後、”関連する部分のいくつかを残すか” という話し合いが行われたんだ”。俺が尊敬するバンド、例えば Devin Townsend のようなミュージシャンは、何の根拠もなく突然18年前に発表した曲に関連させたりする。それって結局、彼の膨大なバック・カタログから感じられる自由さだよね。ミュージシャンとしていつかたどり着きたい、実現不可能な場所のように思えたんだ」

なぜ、”Juggernaut Part 2″ のアイデアは破棄されたのでしょう?
「コンセプト・レコードを作るのは難しいから。レコードの中で有機的に流れるように曲を書くだけでなく、それらを物語に適合させなければならないんだよ。歌詞がすべて一致し、ストーリーを語り、その下に音楽が存在し、そこでも同じようなことをしなければならない。それは長く、拷問のようなプロセスだ」
このコンセプトアルバムを巡る混乱は、”Djent Is Not a Genre” のライティング・プロセスにおける、創造的に息苦しい状況を象徴していたようです。バンド自身によれば、それが彼らをほとんど “壊しかけた” とまで言います。パンデミックが起きたとき、メンバーはリモートで作曲をしようとしましたが、その場でのフィードバックがなく、何も進展しませんでした。Misha が説明します。
「多くのアイデアはあったのだけど、Spencer がそれを気に入ったかどうか、実際に曲としてアレンジできるかどうかを確認する必要があったんだ。それ自体には何の意味もない、曲のセクションばかりがたくさんあったんだよ。パンデミックが核心的な問題であったことは間違いないだろうな。で、結局、重要なのは、批評家やファンの承認ではなく、自分たちの気持ちだとわかった。”Hail Stan” はとても簡単にできたし、あのレコードは俺が本当に誇りに思うものだった。だから、ファンや批評家が “彼らはタッチを失った” と言っても、俺は気にしなかった。自分が誇りに思っていれば無敵になれるんだよ。もし君が何かを信じているなら、もし君が自分の生み出したものを信じているなら、それはきっと君を無敵にしてくれる」
Zoom によるコラボレーションもうまくいかず、その結果、PERIPHERY は孤立した状態で、個々に自分のアルバムを作曲するようになりました。Jake は “The Daily Sun” でエレクトロニカに手を出し、Mark はエクストリーム・メタル・バンド HAUNTED SHORES を復活させ、Misha は伝説的なソロ・プロジェクト Bulb を復活させ、Spencer とドラマーの Matt Halpern はエモプログのチームアップ KING MOTHERSHIP を立ち上げました。しかし、こうした動きも彼らにとっては不利に働きました。曲作りのために、2020年10月にバンドが直接再集結するまでに、PERIPHERY はすでに “燃え尽き症候群” に陥っていたのです。その結果、”Djent Is Not a Genre” は制作に3年近くを要することになります。
Mark は “諸刃の剣だった” と当時を振り返ります。
「このアルバムに長い時間をかけていることは分かっていたし、ファンも不安に思っていた。でも、レコードを作り始めた時を考えると、これが唯一の方法だったと思うんだ。もし、何かの期限に間に合わせるために、急いでレコードを出さなければならなかったら、それは不可能だっただろうね」

そうした停滞を解決したのが、実はビデオ・ゲームでした。ご承知の通り、PERIPHERY はゲーマーのバンドです。ツアー中も、スタジオでも、家でも、ノンストップのガチゲーマー。Mark が解説します。
「2000年代半ばに出会ったとき、PERIPHERY は音楽とファイナル・ファンタジーの2つで結ばれていたんだ。俺は声優(Disco Elysium、Hello Puppets: Midnight Show)に、Misha は作曲(Deus Ex: Mankind Divided、Halo 2 Anniversary)に携わり、ゲームへの親しみはますます強くなっている。そして、ゲームが “Djent Is Not A Genre” の音楽に直接インスピレーションを与えたんだ。いくつかそのタイトルをあげてみよう。
まずは “Hades”。今回のセッションの間、Spencer, Misha, そして俺は、完全にこのゲームに夢中になっていた。仕事の休憩時間には、みんなで Switch に向かって、会話もなくただ黙々とランを繰り返していたくらいでね。この10年で一番好きなゲームのひとつだよ。ゲームプレイのループに酔いしれ、死んだらすぐに、次のランを始めたくなる。”Zagreus” という曲は、このゲームの主人公の名前から取ったもので、最後まで聴いた人なら、この曲の最後の4つのコードが、死んだときに流れるモチーフのなごりであることがわかると思う。死にゲーだから、すぐに脳に焼き付いてしまうんだよな。このゲームはダレン・コルブが全曲を作曲しており、サウンドトラックも素晴らしいんだよ。
次は “Returnal”。Misha が Jake と俺を引き込んだんだけど、どっぷりハマったよ。このゲームもまた、ゲームプレイのループが非常に楽しいローグライク・ゲームで、近年登場したゲームの中で最もフィーリングが良いものの1つだろう。サウンドデザインも素晴らしく、Blue Öyster Cultの “Don’t Fear the Reaper” が繰り返しテーマとしてゲームに使われているのが実に巧い。”Atropos” は、ゲームの舞台となる惑星にちなんで命名されたんだ。
次は、ファイナル・ファンタジー・シリーズ。あまり説明の必要はないだろう。植松伸夫は、このシリーズの主要な作曲家で、俺たちが最も影響を受けた音楽家の一人だからね。初期の PERIPHERY, HAUNTED SHORES, 古い Bulb のデモなど、俺たちの傘下にあるすべての作品に彼の足跡が残っている。最後のトラックは “Thanks Nobuo” というタイトルで、要するに彼への感謝状なんだ。この曲には、FF7のテーマが使われているよ。わかるかな?
そしてもちろん、昨年、俺の人生は Elden Ring に飲み込まれた。あのアート・スタイルがあったからこそ、自分たちの音楽をもっとダークなところに持っていきたいと思ったし、バンドとしてやることすべてが、1/10000でもあのゲームの壮大さを再現できればいいと思っていたんだよな。ラスボス戦になると、メインメニューのテーマがオーケストラで再現されるのも、特にやり込んでいる人なら満足感があったよな。PERIPHERY が過去の作品から様々なテーマやメロディーを引用するのも、その気持ちのほんの一部をリスナーと共有したいからなんだ。
最後は、ブラッドボーン、ダークソウル1~3、デモンズソウル。フロムゲーは俺がこれまでで最も好きな作品群のひとつで、俺が関わるすべての音楽に影響を与えている。HAUNTED SHORES の前作 “Void” では、アルバムアートを “Bloodborne” から切り取ったようなものにしたかったし、音楽もそのゲームと同じくらい敵意を感じるものにすることを目指した。Spencer もこのゲームには深くハマっていて、セッション中、特に作曲の初期は間違いなく2人ともインスパイアされたよ」

実際、”Periphery Ⅱ”の “Muramasa” と “Masamunue” はファイナル・ファンタジーに関連する楽曲でしたし、Misha は “FF7″ のリメイクに真剣に関わりたがっていました。
「植松伸夫は驚異的な才能だよ。彼のメロディーのセンスやテクスチャーの使い方は、俺にとって間違いなく大きな参考になっている。だから一曲でも関わりたいよな…」
苦労したセッションの最終結果は、結局、自分たちの好きなアルバムに落ち着きました。ベタな名前はともかく、”Djent Is Not a Genre” は、バンドが今でも最も折衷的で先鋭的であることを捉えています。そうして、今となってはジャンルのひとつに違いない Djent は、シンセやフック、サックス・ソロにたっぷりのユーモアもあるパイオニアの作品によってやはり牽引されているのです。Spencer はかつてこんな言葉を残しています。
「最高の芸術作品を作りながらユーモアも忘れずいたいね。音楽に個性を反映させないでシリアス一辺倒な奴らは信用できないから。一人の人間でいればいい。どうせ今、メタルで金は稼げないんだから、好きという気持ちだけで音楽を作ろうじゃないか」
ただし、PERIPHERY にとってここは決して全てでもなく、終わりでもありません。
「最終的に、自分たちが満足できなければ、アルバムはリリースしないよ。でも、そうすることで、自分たちが心から誇れるアルバムが完成するんだ。それが、唯一受け入れられる最終目標だった。誇れるアルバムなら、商業的にはどんなものでも手に入れることができるんだ。他の人たちのことは言いたくないけど……俺たちのアルバムを売り尽くしたいんだ。良いと思うなら金をくれ!(笑)」


参考文献:GUITAR.com:“We like to lovingly take the piss out of our fans!” Periphery on why Djent is, actually, a genre

METAL INJECTION:PERIPHERY Names The Video Games They Played While Recording Their New Album

LIVE METAL:INTERVIEW: Jake Bowen of PERIPHERY

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ICE AGE : WAVES OF LOSS AND POWER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ICE AGE !!

“I Vividly Remember Kevin Moore Playing Some Of The Songs And Parts That Would End Up On “Images And Words” For Me On The Piano In His Living Room.”

DISC REVIEW “WAVES OF LOSS AND POWER”

「僕たちの音楽が、若い人たちが流行に逆らい、長い曲、挑戦的な歌詞など、こうした体験に没頭するきっかけになればと願っているんだよ。だって、プログレッシブの “巨人” の中には、避けられない時間の経過のために消えてしまった人もいるかもしれないけど、まだ健在なバンドもたくさんあって、プログレッシブ・ミュージックは今こそ、主流で定型的なポップスに代わる選択肢を提供していると思うからね」
インスタントでファストな文化が支配する現代において、プログレッシブ・ミュージックの手間暇や長さ、複雑さは明らかに異端であり逆風です。しかし、だからこそプログレッシブ・ミュージックは今必要なのだと、ロングアイランドのカルト・ヒーローは力説します。Z世代だって全員が全員、時代の潮流やトレンドに馴染めるわけじゃない。僕たちが “選択肢” を提供するのだと。
「DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。 僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ」
ICE AGE は1999年に “The Great Divide” で鮮烈なデビューを飾ります。攻撃的なプログ・メタルの複雑性だけでなく、Josh Pincus のゴージャスなボーカルとカラフルな鍵盤による極上のメロディを兼ね備えた彼らは、DREAM THEATER の後継者に最も近い存在だったのかもしれません。
DREAM THEATER については、Kevin Moore 以前と以後がよく語られるトピックですが、ICE AGE は明らかに Kevin Moore 以前の音楽性を受け継いでいました。実際、Kevin と旧知の仲である Josh は、Kevin のようにメロディはもちろん、奇数拍子のダンスに、テクニカルやメカニカルまでもすべて楽曲の “イメージと言葉” へと奉じて、プログレッシブ・メタルの新たな礎を築き上げました。
「僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ」
うれしいことに、22年という月日が流れたとは思えないような不変の哲学で彼らは帰ってきました。DREAM THEATER, RUSH, GENESIS, QUEENSRYCHE, KANSAS, STYX といったバンドが煮込まれたプログ・メタルのシチューは、シェフの巧みな味付けによって紛れもなく ICE AGE 以外の何ものでもない美味なる味わいを響かせています。
そして実際、このアルバムにはバンドが残した2枚のアルバム、その続編の意味も込められています。”Perpetual Child”, “To Say Goodbye” はプログ・メタルのファンにとって忘れられないエピックで、その続きを2023年に聴くことができることにまず驚きと感謝を捧げずにはいられません。そしてその “伝承” こそがアルバムのクライマックス。
プログ・メタルの同業者とは異なり、ここに派手さのためのシュレッドはなく、常に楽曲のイメージとアトモスフィアのためにテクニカル・パズルのピースは存在しています。異様なまでに一体化した楽器隊はその証明。彼らは、ムード、テンポ、楽器編成を変化させながら、本物の叙事詩を構築する方法を知っているのです。刻々と変化を続け、好奇心を誘う旋律と戦慄の饗宴は、長尺でありながら一切の切り取りを許さないがゆえに現代への完璧なアンチテーゼであり、もっと言えば、マグナ・カルタに “潰された” SHADOW GALLERY や MAGELLAN, DALI’S DILEMMA の墓標まで背負った魂のルフランなのでしょう。
今回弊誌では、ボーカル/キーボードのJosh、ベースの Doug Odell, ドラムの Hal Aponte にインタビューを行うことができました。「このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。 君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ」どうぞ!!

ICE AGE “WAVES OF LOSS AND POWER” : 10/10

INTERVIEW WITH ICE AGE

Q1: Can you start by telling us why you have decided to revive the band now after 22 years?

【HAL】: Thanks! We’re psyched to be back!! The short story is that we had spoken about playing together again for years. We never lost touch as we are brothers, in and out of the band, so there was always some sort of communication or contact between all of us. I had a barbecue at my house a few years back and decided it would be a great idea to have everyone there, maybe even jam a little bit if everyone felt up to it, with no pressure of any kind put on any of us. The jam session went so extremely well that we had no choice but to see this whole opportunity through; we started writing new material that ended up on “Waves of Loss and Power” right on the spot that first time we jammed. After that we did some studio rehearsals and it just escalated from there. Again, it took a few years – it did not come together overnight. We didn’t allow ourselves to put time restraints or pressures of any kind on the process, so it was really done at our own, attainable pace. As far as the right timing goes, it was just a matter of everyone’s schedules being aligned. In 20+ years you would expect everyone’s lives to have changed at least a little bit lol, especially with new challenges and responsibilities, right? From living in different states, marriages, family lives, the pandemic, etc … So it was just a matter of getting the most out of our own individual windows of available time. We did the best that we could while still maintaining our day to day normality. We also capitalized on all of the technological resources that were readily available to us. We learned a lot and definitely grew as a band. We were also able to make the proper adjustments along the way and we got closer as brothers.

【JOSH】: Also, during those many years we weren’t playing together, the urge and need to be creative never went away. Any artist will tell you that no matter how much time you may spend away from you craft, it’s never far from your mind and your heart. I think we all knew in the back of our minds that we’d eventually get back together and write/record. Part of the beauty of being able to do this now is the fact that life experiences have seasoned us all so much, and our individual musical tastes have changed somewhat; that maturation process finds its way into the music and lyrics, and it’s very clear that the finished pieces are products of that time apart, but also of the incredible chemistry we have as musicians and people; in that sense, it’s like we never stopped playing together.

Q1: まず、今、22年ぶりにバンドを復活させようと思ったのはなぜだったんですか?

【HAL】: ありがとう!戻ってこられて感無量だよ! 簡単に説明すると、僕たちはもう何年も前からまた一緒に演奏しようと話していたんだ。僕たちはバンド内外において兄弟のようなものだから、常に何かしらのコミュニケーションやコンタクトがあって、音信不通になることはなかったからね。
数年前に僕の家でバーベキューをしたとき、みんなを集めて、プレッシャーをかけずにその気になれば少しジャムるのもいいんじゃないかと思ったんだ。そのジャムセッションは非常にうまくいったから、この機会を逃すわけにはいかず、最初にジャムったその場で “Waves of Loss and Power” につながる新曲を書き始めたのさ。その後、スタジオでリハーサルを行い、そこからどんどん活動はエスカレートしていった。もちろん、一夜にして完成したわけではなく、数年の歳月を要したけどね。
時間的な制約やプレッシャーは一切かけなかったから、自分たちのペースで進めていくことができたんだ。まあタイミングとしては、全員のスケジュールが一致したことかな。20年以上経てば、皆の生活も多少なりとも変化しているはずでね。特に、新たな挑戦や責任などで。だから、僕たち一人ひとりが使える時間を最大限に活用することが重要だった。僕たちは、日々の生活を正常に保ちながら、このバンドでできる限りのことをしていきたかったんだ。
すぐに利用できる技術的なリソースはすべて活用したよ。僕たちは多くを学び、バンドとして間違いなく成長を遂げた。また、その過程で適切な話し合いを行うことができ、兄弟としてより親密になったんだ。

【JOSH】: それに、一緒に演奏していなかった長い年月の間も、創造的でありたいという衝動と欲求は決して消えなかったからね。アーティストなら誰でも言うだろう…どんなに長く創作活動から遠ざかっても、創造性が頭や心から離れることはない…と。僕たちは皆、心の奥底で、いずれは再び集まって作曲やレコーディングをすることになるだろうと思っていたんだよ。
今また、こうして活動する中でより美しいことは、人生経験が僕たちをさらに大きく味付けし、それぞれの音楽的嗜好が多少変化しているという事実だろうな。その成熟の過程が楽曲や歌詞に反映され、完成した作品は、離れていた時間の産物であると同時に、ミュージシャンとして、人間として、素晴らしい化学反応を起こしていることがよくわかるからね。

Q2: I mean, The prog world has changed in your absence. Many of the prog giants are old and have passed away. Meanwhile, the world is dominated by the instant culture of social networking and clippings, and few young people will bother to take the time and trouble to pursue a grand and complex prog. What was it that drove you guys to the prog in such a situation?

【JOSH】: The short answer is that that’s generally the style of music we love. We’re not interested in musical trends or fads; we do this to feed our need to be creative and to offer original, memorable, thoughtful music and lyrics, and the “progressive” genre gives us the best opportunity to express ourselves in that way. We hope that our music will encourage some younger people to buck the trends and immerse themselves in this kind of experience – longer songs, challenging lyrics, etc…While some of the progressive “giants” may have gone away because of the inevitable passage of time, there are still plenty that are alive and well, and progressive music still offers a much-needed alternative to mainstream, formulaic pop.

【DOUG】: From my perspective I think there were two main intentions that were in the ether without us actually thinking or talking about it. First of all there was unfinished business after LIBERATION in that the band had – and still has more to say creatively, in the authentic way that only Ice Age can. The second piece of that is that we enjoy playing together and we started down this path with the sole purpose of making ourselves happy by writing new music together. We didn’t have any business, cultural or technological pressures to contend with because this was a selfish pursuit, coming from the purest artistic place possible. Only as we became serious about this being a new era for the band did we start to reestablish our presence seriously online. Hal (drummer) has been running a Facebook page for years and that’s been one thread of connection that was very important, where fans would share their love of the band and wishes for something new. Now, we are anywhere and everywhere on social media platforms, sharing new content.

Q2: プログの巨人たちの多くは高齢となり、すでにこの世を去った人も少なくありません。一方で、現代ではSNSや切り抜きなどのインスタント文化に支配され、わざわざ時間と手間をかけて壮大で複雑なプログを追求する若者は少なくなっています。つまり、そんな中で、あなたたちが今またプログに駆り立てられ、復活した理由が知りたいんですよ。

【JOSH】: 簡単に言うと、僕たちがこのスタイルの音楽を愛しているから。 僕たちは音楽のトレンドや流行に興味があるわけではないからね。創造的でありたいという欲求を満たすために、オリジナルで、記憶に残る、思慮深い音楽と歌詞を提供するためにこの仕事をしているんだよ。
でもね、同時に、僕たちの音楽が、若い人たちが流行に逆らい、長い曲、挑戦的な歌詞など、こうした体験に没頭するきっかけになればと願っているんだよ。だって、プログレッシブの “巨人” の中には、避けられない時間の経過のために消えてしまった人もいるかもしれないけど、まだ健在なバンドもたくさんあって、プログレッシブ・ミュージックは今こそ、主流で定型的なポップスに代わる選択肢を提供していると思うからね。

【DOUG】: 僕の観点では、実際に考えたり話したりしたわけじゃないけど、そこには2つの主要な意図があったと思うんだ。
まず第一に、 “Liberation” の後にやり残したことがあったから。そこには、ICE AGE だけができる本物の方法で、クリエイティブにもっと言いたいことがあったし、今もある。もうひとつは、僕らが一緒に演奏することを楽しんでいて、一緒に新しい音楽を作ることで自分たちを幸せにすることだけを目的にこの道を歩み始めることができたから。 ビジネスや文化、技術的なプレッシャーは一切なく、純粋に芸術的なものを追求するためにね。
バンドにとって新しい時代であると真剣に考えるようになってから、僕たちはオンラインで真剣に存在感を示し始めたんだ。ドラマーの Hal は何年も前から ICE AGE のフェイスブック・ページを運営していて、ファンがバンドへの愛や新作への願いを共有する、とても重要なつながりの糸となっていたんだよ。 今は、ソーシャルメディアのプラットフォームで、どこでも、新しいコンテンツを共有しているよ。

Q3: On the other hand, the last 20 years have seen the djent movement, originated by Meshuggah, gain momentum. What did you think of that polyrhythmic and bass approach?

【JOSH】: Ahh, yes, “math metal” lol. I think there’s always been an element of that in progressive rock and metal; that’s just the nature of the beast. This kind of music always explores odd time signatures and challenging, technical playing. That’s how a lot of musicians in this genre play, and that’s what turns the audience on. That said, as a singer, I was never drawn to that style of vocals; singing to me is a craft and the vocal chords are an instrument like any other, that require care and practice to excel. We’re all fans of melody, and we’re much more attracted to the musical side of things as opposed to the pounding rhythms and growling vocal genre.

【HAL】: I think Meshuggah are great ! They are absolute masters at what they do and they have truly raised the bar. Musically and stylistically things can become monotonous and boring quite quickly for any artist. For the composer’s as well as the listener’s sake it’s great to be able to think outside of the box. When you are capable of achieving something like this (the djent movement) then you have just uncovered so many new avenues of exploration and sound. As for a polyrhythmic approach I love the idea of maximizing a sections potential rhythmically. Isn’t that where it all stems from – the root of it all? You have your essential pulse that you can branch out from. It pretty much just depends on how many different directions you would like for it to flow in. The sense of freedom is also present and it grants you complete control of an uncharted journey.

Q3: 一方で、あなたたちがシーンにいなかったこの20年で、プログ世界には MESHUGGAH を始祖とする、低音とポリリズムの饗宴 Djent ムーブメントが起こっていましたね?

【JOSH】: ああ、そうだね! “数学メタル” だ(笑)。 プログレッシブ・ロックやメタルには常に数学の要素があり、それはまさにこうした音楽につきものなのだと思う。この種の音楽は常に奇妙な拍子記号と挑戦的でテクニカルな演奏を探求するからね。このジャンルの多くのミュージシャンがそうやって演奏し、それが観客を興奮させてきたんだ。
まあだけど、シンガーとして僕はああしたスタイルにハマったことはない。僕にとって歌は技術で、声帯は他の楽器と同じで、優れたパフォーマンスを発揮するためにはケアと練習が必要なんだ。 僕たちは皆、メロディーのファンで、叩きつけるようなリズムやうなり声のボーカルというジャンルとは対照的に、もっと音楽的な側面に魅力を感じているからね。

【HAL】: でも MESHUGGAH は最高だと思う。彼らは自分たちがやっていることの絶対的なマスターであり、本当にレベルを上げ続けている。どんなアーティストでも、音楽やスタイルはすぐに単調で退屈なものになってしまいがちなのにね。作曲家にとっても、リスナーにとっても、既成概念にとらわれない発想ができることは素晴らしいことだよ。Djent ムーブメントが起こったことで、新しい探求やサウンドの道をたくさん発見することができた人も多いだろう。
ポリリズムのアプローチについては、セクションのポテンシャルをリズム的に最大化するというアイデアが気に入っている。すべての根源はそこにあるのではないだろうか?本質的なパルスがあって、そこから枝分かれしていくことができるというかね。それをどれだけいろいろな方向に流せるかが重要なんだ。そこには自由な感覚もあり、未知なる旅路を完全にコントロールすることができるだろう。

Q4: So let’s talk a little about the past. I first discovered you in 1999 with the release of “The Great Divide,” and I have been listening to your music for the past 25 years. It’s a really great album! At the time, you were often described as the successor to Dream Theater. How do you feel about the current DREAM THEATER?

【JOSH】: Thanks for your kind words and your support through the decades – yes, The great Divide album was (and still is) very well regarded. I have a personal connection to Dream Theater because I both took lessons from and taught lessons at the same music store in Long Island as Kevin Moore (original member and keyboardist of Dream Theater); I vividly remember him playing some of the songs and parts that would end up on “Images and Words” for me on the piano in his living room. It’s no secret that many progressive bands, including us, were strongly influenced by “When Dream and Day Unite” – I remember attending the album release party for that album and hearing on the PA – I can literally say my musical tastes and aspirations changed that night. It was a revelation. Partly because of the personal connection and the fact that I’m a huge fan of Kevin’s melodic style and lyrics, I will always be partial to the early DT material; I also loved Derek Sherinian’s contribution. Jordan Rudess is an amazing player technically; no one can match him in that regard; they really are the absolute best from a pure technique standpoint.

【DOUG】: Dream Theater as one of only two progressive metal bands (the other being Porcupine Tree) to reach the level of being on/staying on a major record label (with that level of support and exposure behind them) truly paved the way for many other bands like Ice Age to come after them. It’s very admirable that Dream Theater are still out there, being true to what they do. They have been nominated three times for a Grammy award and actually won in 2022. Speaking very subjectively to answer your question, I personally did not stay on board as a fan after the exits of Kevin Moore (keyboards) and Mike Portnoy (drums) because the material that I connect with the most passionately is on those first three albums.

Q4: では少し昔の話をしましょうか。私が ICE AGE を知ったのは1999年の傑作デビュー “The Great Divide” でした。あれから25年、ずっと聴き続けていますよ。あの頃、あなたたちは DREAM THEATER の後継者などとも言われていましたが…

【JOSH】: そうだね、”The Great Divide” は当時も、そして今もとても高く評価されているよね。僕は Kevin Moore(DREAM THEATER のオリジナル・メンバーでキーボーディスト)と同じロングアイランドの楽器店でレッスンを受け、同時に教えていたから、DREAM THEATER とは個人的につながりがあってね。Kevin が彼のリビングルームのピアノで、”Images and Words” に入る曲やパートのいくつかを弾いてくれたのを鮮明に覚えているよ。
僕たちを含む多くのプログレッシブ・バンドが “When Dream and Day Unite” に強い影響を受けたことは周知の事実だ。実は、僕はあのアルバムのリリース・パーティに参加したんだけど、PAから聞こえてきた曲を聞いて、文字通りその夜から僕の音楽の趣味や志向が変わったと言えるくらいでね。あれは天啓だったよ。
個人的なつながりや、Kevin のメロディックなスタイルと歌詞の大ファンであることもあって、僕はずっと初期の DREAM THEATER の楽曲を好んで聴き続けている。とはいえ、Jordan Rudess は技術的に素晴らしいプレイヤーだ。この点で彼に匹敵する人はいないね。だから純粋なテクニックの観点からみれば、今の彼らは本当に絶対的なベストだよ。

【DOUG】: DREAM THEATER は、メジャー・レコード・レーベルに所属し、そのレーベルに留まるというレベルに達したたった2つのプログレッシブ・メタル・バンド(もう1つは PORCUPINE TREE)の1つとして、そのレベルのサポートと露出を背景に、僕らのような後に来る他の多くのバンドへの道を本当に切り拓いたんだ。
DREAM THEATER がまだここにいて、自分たちのやることに忠実であることは、とても立派なこと。 彼らはグラミー賞に3回ノミネートされ、2022年には実際に受賞しているからね。
ただ、非常に主観的な話をすると、僕自身は Kevin Moore(キーボード)と Mike Portony(ドラムス)の脱退後、ファンとして残ることはなかったんだ。なぜなら、僕が最も情熱的につながっていたマテリアルは、最初の3枚のアルバムにあるからだ。

Q5: Back then, you guys belonged to Magna Carta. There were many great bands on that label, such as Cairo, Megellan, Shadow Gallery, and Dali’s Dilemma, but in the end none of them were commercially successful. What do you think was the reason?

【JOSH】: I agree – there were so many great bands on Magna Carta; I just think it was a function of them not having the budget/desire to really develop them in a proper way. Back in the day, record labels would nurture (and fund) a band creatively; sadly, I think part of the issue there was the fact that they were capitalizing on the popularity of a few flagship prog bands at the time, and were really focused more on total profit than promoting their artists. I think this is the main reason we (and some of the other bands) became disillusioned when we realized our aspirations were not in line with the label’s.

【DOUG】: I know that I reached out to them (the record company) and tried to get some support for us to get on bills for local shows with bands like Fates Warning and Symphony X – and there was absolutely zero assistance from the label.

Q5: あの頃、あなたたちは Magna Carta に所属していました。あのレーベルには、他にも CAIRO, MAGELLAN, SHADOW GALLERY, DALI’S DILEMMA など素晴らしいバンドが多く所属していましたが、結局、商業的な成功を収めたバンドはいませんでした…

【JOSH】: Magna Carta には素晴らしいバンドがたくさんいたのに、彼らをきちんと育てる予算や意欲がなかったということだと思う。 昔はレコード会社がバンドをクリエイティブに育てる(資金を提供する)ものだったけど、悲しいことに Magna Carta は、当時の代表的なプログ・バンドの人気に便乗し、アーティストのプロモーションよりも総利益を重視していた。それが問題の一因だったと思っているんだ。そこが、僕たち(と他のバンド)の願望がレーベルの願望と一致していなくて、幻滅した主な理由だと思う。

【DOUG】: 僕はレーベルに連絡を取り、FATES WARNING や SYMPHONY X のようなバンドと一緒に地元のライブに参加できるようなサポートを得ようとしたんだけど、レーベルからの援助はまったくなかったんだ。

Q6: Still, “Waves of Loss and Power” is a great comeback! You seem to be focusing more on melody than before. Would you agree?

【DOUG】: I personally think that melody has always been a big part of the Ice Age sound, especially with a big focus that evolved in that respect with LIBERATION. There are so many musical and vocal hooks at every turn and that’s one of the things that I think sets Ice Age apart from prog bands that cram impressive playing into song structures for the sake of fitting into an expected way of approaching the style of music. This new album is the next logical progression for us, especially when considering the extent of vocal harmonies Josh (singer/keyboards) added, which goes beyond the first two albums from a production standpoint.

【JOSH】: Thanks so much!! We’re very proud of it. I agree with Doug – the melodic core was always there – we always thought what differentiated us was the ability to write songs with catchy melodies and parts within the progressive format. In general, vocal melodies can get lost in the shuffle in this genre; the music often gets written first, and then the vocals are sort of “slapped” on top and become an afterthought; I made a conscious effort on “Waves of Loss and Power” to avoid this trap – vocal melodies and lyrics were always top-of-mind, and that may be part of the reason why you feel it is more melody-focused..

Q6: それにしても、”Waves of Loss and Power” は素晴らしいカムバック・アルバムですね!以前よりもさらに、メロディにフォーカスしているように感じましたよ。

【DOUG】: 個人的には、メロディーは常に ICE AGE のサウンドの大きな部分を占めていると考えているよ。特に “Liberation” では、そこにフォーカスして大きな進化を遂げたんだ。音楽的、ヴォーカル的なフックが随所にあり、それが、音楽スタイルへ合わせるために印象的な演奏を曲構成に詰め込むプログ・バンドとは一線を画す点だと思う。
特に Josh(シンガー/キーボード)が加えたボーカル・ハーモニーを考慮すると、この新しいアルバムは、最初の2枚のアルバムを超えた、僕たちにとって次の論理的進歩だと言えるね。

【JOSH】: 本当にありがとう!!(笑)僕らはそれをとても誇りに思っているよ。Doug の意見に賛成だね。メロディックな核はいつもそこにあった。
僕らはいつも、プログレッシブなフォーマットの中でキャッチーなメロディとパートを持つ曲を書く能力こそが、僕らを差別化するものだと思っていた。 一般的に、このジャンルではボーカルのメロディが迷子になることがよくあるんだ。音楽が先に書かれ、その上にボーカルが “叩きつけられ”、後回しになることがよくあるからね。”Waves of Loss and Power” ではこの罠を避けるように意識したんだ。ボーカル・メロディと歌詞は常に最優先だったよ。それが、よりメロディ重視のアルバムだと感じる理由の一つかもしれないね。

Q7: The band’s second album, “Liberation,” is an album about freedom and liberation, and it is an album that should be listened to in these times of war and fascism/right wings. So, what is the theme of this album?

【JOSH】: Thank you so much for that; yes, part of that album is indeed a statement about the inhumanity of war in general, and more specifically about the invasion and attempted cultural destruction of Tibet by China in the mid 20th Century. That is a heartbreaking example not only of territorial conquest but of the subjugation of basic human rights and decency. You are correct; this struggle is ongoing; it’s just part of being human. It is always dangerous, and often violent, when one faction or another tries to force their worldview or religion on another. It is the worst impulse humanity has to offer. “Waves of Loss and Power” addresses some of these ideas in Perpetual Child Part II; if we can’t find a way to coexist with each other, sadly I believe we will all cease to exist. Generally speaking, the new album is about the great heights of creativity and hopefulness and personal power we all feel at times in life, and the contrast with the sadness and grief of loss we all inevitably have to face in many different ways; personal loss, cultural loss, loss of innocence, etc…there are moments of optimism and moments of cynicism; these coexist within us constantly, and that inner battle expresses itself in the actions we take outwardly every day.

Q7: お話にあった “Liberation” では、文字通り自由と開放をテーマとしていましたが、戦争やファシズム、極右の台頭する今だからこそ聴かれるべきアルバムだと感じます。そこから、今回はどういったテーマに進化したのでしょう?

【JOSH】: このアルバムは、戦争の非人道性、特に20世紀半ばの中国によるチベットへの侵略と文化破壊について扱っている。これは、領土の征服だけでなく、基本的な人権や良識の抑圧という点でも、心を痛める例なんだよ。
君の言う通り、こうした戦争は各地で現在も続いている。ある派閥が自分たちの世界観や宗教を他の派閥に押し付けようとするのは、常に危険で、しばしば暴力的となる。それは人類が持つ最悪の衝動なのだよ。
“Waves of Loss and Power” では、特に “Perpetual Child Part II” でこうしたアイデアのいくつかを取り上げている。もし僕たちが互いに共存する方法を見つけることができなければ、悲しいことに、人類は消滅してしまうだろうと思う。
一般的に言えば、この新しいアルバムは、僕たちが人生の中で感じる創造性、希望、個人的な力の高さと、個人的な損失、文化的な損失、無邪気さの損失など、さまざまな形で僕たちが必然的に直面しなければならない損失の悲しみや嘆きとの対比をテーマにしているんだ。楽観主義の瞬間と皮肉主義の瞬間があってね。その両者は常に僕らの中で共存している。その内面の戦いは毎日外に向かって取る行動で表現されているんだ。

Q8: “Perpetual Child” and “To Say Goodbye” are sequels to your earlier albums, why do you choose to create continuity in your Ice Age work?

【JOSH】: Well, that’s a prog tradition, right? Rush had the “Fear” saga, etc…as we were writing for WAVES, I always had in mind the idea of continuing the stories/songs we started on the first two albums. Musically, some of the parts Jimmy came up with for what would become Perpetual Child Part II were reminiscent of the first part, and we kept that in mind as we fleshed out the song. When I started writing on the piano, it became clear my subconscious was steering me back in the direction of “To Say Goodbye,” so I went with it. On the new album, we knew we had a real opportunity to go “big” in continuing some of the musical motifs and lyrical ideas of the first two albums. I wanted to connect with fans of the first two albums, and remind them that we remember what came before, and that we feel like these concepts we touched on back in the day still apply to the continuing experience of music and life. The idea of the Perpetual Child is about reconciling yourself to the experiences and “duties” of adulthood, while being self-aware enough to realize that we never really leave those formative years behind, and that we carry everything with us through our lives, whether we admit it or not. It’s also used as a metaphor for other things in Part II, but I’ll leave that for the listener to figure out! “To Say Goodbye” is really about loss, regret, and grief. We all experience these things in many different ways – Part V is pretty specific regarding the issue it addresses.

Q8: その “Perpetual Child” や “To Say Goodbye” は以前の作品からシリーズ化している楽曲ですよね?

【JOSH】: まあ、それはプログの伝統だからね。RUSH には “Fear” サーガがあったしね。だから ”WAVES” のために作曲するとき、最初の2枚のアルバムで始めた物語や歌を続けるというアイデアを常に念頭に置いていたよ。
音楽的には、”Perpetual Child Part II” のために Jimmy が思いついたパートのいくつかは、 “Part Ⅰ” を彷彿とさせるもので、それを意識しながら曲を練り上げていった。それに、ピアノで書き始めたら、潜在意識が “To Say Goodbye” の方向へ舵を切っていることがわかったので、それに従った。
新しいアルバムでは、最初の2枚のアルバムの音楽的モチーフや歌詞のアイデアを継承し、より “ビッグ” にできるチャンスがあるとわかっていたんだ。 最初の2枚のアルバムのファンとつながり、僕たちが前の作品を覚えていること、そして当時触れたこうしたコンセプトが、音楽と人生の継続的な体験にまだ適用できると感じていることを思い出してもらいたかった。
永遠の子供というアイデアは、大人になってからの経験や “義務” に自分を納得させつつも、一方で、僕たちは自身の形成期を決して忘れることができず、認めるかどうかにかかわらず、人生を通じてすべてを持ち続けているということを自覚しているという話。 第二部では他のことの比喩としても使われているけど、それはリスナーが考えてくれることだろう。
“To Say Goodbye “は、まさに喪失、後悔、悲しみについて歌っている。 僕たちは皆、さまざまな方法でこれを経験する。パートVは、扱う問題に関してかなり具体的だ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ICE AGE’S LIFE!!

JOSH: RUSH “Signals”, BLACK SABBATH “Volume 4”, DREAM THEATER “When Dream and Day Unite”, IRON MAIDEN “Powerslave”, SPOCK’S BEARD “The Kindness of Strangers”

HAL: RUSH “Exit Stage Left”, OZZY OSBOURNE “The Ultimate Sin”, BILLY JOEL “The Stranger”, RUSH “Moving Pictures”, METALLICA “Ride The Lightning”

DOUG: LED ZEPPELIN “Led Zeppelin I”, RUSH “Permanent Waves”, KING’S X “Dogman”, BLACK SABBATH “Heaven and Hell”, Chris Cornell “Euphoria Morning”

MESSAGE FOR JAPAN

HAL: As always thank you all so very much for all of your support and encouraging, kind words throughout our time away. We would love to say thank you by performing live for you some time. Maybe that will become a reality in the very near future. Until then … Thank you !!!

JOSH: We know that Japanese music fans in general have a long history and tradition of love for metal and progressive music; we’re so grateful for our audience there, and we hope you enjoy “Waves of Loss and Power!”

DOUG: We are so honored and excited to be connecting with fans of Ice Age from Japan.

HAL:僕たちが離れている間もいつも、応援してくれたり、励ましや優しい言葉をかけてくれたり、本当にありがとう。いつかみんなのためにライブをすることで、感謝の気持ちを伝えたいと思っているよ。近い将来、それが現実になるかもしれないね。それまでは… ありがとう!!

JOSH: 日本の音楽ファンには、メタルやプログレッシブ・ミュージックを愛する長い歴史と伝統があることを、僕たちは知っているよ。”Waves of Loss and Power” を楽しんでもらえたらと思う。

DOUG:日本の ICE AGE ファンの方々とつながることができ、とても光栄に思うし、興奮しているよ。

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【ZULU : A NEW TOMORROW】


COVER STORY : ZULU “A NEW TOMORROW”

“We Can’t Be Who We Want To Be”

A NEW TOMORROW

世界は分断されています。左対右、金持ち対貧乏人、私たち対彼ら。ソーシャルメディアやニュースをざっと見ただけでも、私たちの “違い” に関する言説が耳をつんざきます。そして、ヘヴィ・ミュージックのアーティストたちは、何十年もの間、この本質的な怒りと激情を音楽へと注ぎ込み、怒りをぶつけ、反乱を呼びかけてきました。しかし、人生の喜びや、世の中の良いことに焦点を当てたバンドはそれほど多くはありません。
そこでロサンゼルスのパワーヴァイオレンス・クルー、ZULU の登場です。デビューLP “A New Tomorrow” を発表した際、ボーカルの Anaiah Lei は「愛に焦点を当てたポジティブなレコードを作りたい」と語っていました。なぜそれが重要な決断だったのでしょうか。
「愛と希望は人生の主要な部分だから、それについて常に話したいと思っていたんだ。このジャンルでは、もちろん怒りを吐き出すのはクールだし、悩みを打ち明けるのは素晴らしいこと。ヘヴィ・ミュージックは、他の世界から排除され、慰めを求めている人たちが行く場所で、自分が経験したすべての問題を話し、ただそれを吐き出すための場所。歌っていても、ステージに上がっていても、ピットの中にいてもね」
物心ついたときから音楽とバンド活動に携わってきた Anaiah は、自分の発言をよく理解しています。特に ZULU は、2枚の EP とカオティックなライブでハードコア・シーンに衝撃を与え、デビュー・アルバムのプレッシャーと認知度は相当なものでしたから。彼は今度のアルバムについて、時の試練に耐えられるような “大きなステートメント” でありたいと述べています。
「怒りや攻撃性についてだけ語るのであれば、そうすることもできないわけではない。でも人生において、怒りや苦難だけでなく、人々に影響を与えたいとすれば、それは愛から来るものなんだ」

Anaiah は、私生活の変化が自分の考え方に直接影響を与えたといいます。レコード制作の途中で、自分がどうありたいかを自覚するような転換期があり、希望と幸福を見つけることに全力を注ぐことが容易になったというのです。
そして実際、”A New Tomorrow” にはアイデンティティ、連帯感、コミュニティといった概念と同様に、希望という概念が縫い込まれています。コミュニティとは、文字通り家の周辺から、Discordチャンネル、あるいは自分が働く業界など、人にとって様々で大きな意味を持つ存在。そして、そこでは必ずしもあなたが歓迎されるわけではありません。
「コミュニティで最も重要なのは、実際に一緒に何かを行い、お互いを巻き込むこと。ライヴやイベント、コミュニティ内の他のバンドをサポートすること。というのも、この社会では、俺たちはしばしば踏み絵に逆らって歩むことが多いからね。踏めないものを踏んでまで生きたくはない。だからこそ、俺たちのコミュニティは一緒にいて、調和し、団結して生きていくべきなんだ。
そうやって、同じことを考える人たちで、自分たちのシーンを形成したい。基本的には……変化し、良くなってきてはいるけれど、まだまだ先は長いし、それが現実だ。でも、人々がより団結するようになったことは、とてもうれしいことだよ。インターネットでは、簡単に人とつながることができるけど、それは自分のシーンから始まるんだ」

ハードコアへの熱狂的な情熱と、力強さと正義のメッセージにもかかわらず、Anaiah はコミュニティのある一角に受け入れられていると感じたことはなく、必要とされているとさえ思っていません。Soul Glo の Pierce Jordan をフィーチャーした “A New Tomorrow” の代表曲 “Where I’m From” で、彼はZULUのようなバンドに居場所を与えてくれない人々に対して “We can’t be who we want to be” “自分らしくいられねぇ” という言葉を突きつけました。
「あの歌詞が全てを物語っているような気がする。自分たちのシーンでさえ、自分らしくいられないんだ。ジャンルの門番たちにとって、ハードコアやメタルといった彼らが期待する音楽以外のジャンルのファンであろうとすることは奇妙なことで、他の音楽、”自分たちのものでない” 音楽を聴くこと自体が奇妙に感じられる。俺たちは見た目で人から期待されているからな。彼らは、私たちがただ一つの音楽に夢中になっていることを期待している。とんでもない諸刃の剣だよ。だって、外の世界では排除され、抑圧された人々が、逃げ込む場所のように思われているメタルやハードコアのシーンが、その空間の中ではまったく同じことをしているんだから。文字通り、邪魔されることなく、なりたい自分になることができないんだ」
この気の滅入るような皮肉は、Anaiahにとって耐えられないものです。彼は、ヘヴィ・ミュージックやハードコア・パンクに多くの人が惹かれる理由の本質として、多数派や社会に “馴染めない” “馴染みたくない” という考えを共有しています。しかし今、このシーンは “クラブのようになってしまった” と彼は言い、本来の趣旨に事実上反していると主張しているのです。
「だからこそ、ある閉鎖された集団の一部になりたいということではなく、自分のスペースを作り、自分たちのやりたいことをやり、自分たちと同じ波長の人たちと関わりたいと思うようになったんだ。もう、そういう空間には関わろうとしない。”自分たちで作るんだ”」

Anaiah は、貧富の差が激しく、悪名高いギャングの暴力や歴史的な人種間の緊張があるロサンゼルスで生まれ育ちました。幼少期には、ロサンゼルス市内のさまざまな場所に移り住む母親や父親のもとを転々とし、ゆえに “富める者” 以外の残りの半分がどのように暮らしているのかを知ることができたのです。
「郊外に住んでいて、隣人が誰かについて、誰もが異なる “議題 “を持っていた…俺は早い段階で人種差別を理解し始めたんだ。そして、ハードコア・シーンに黒人を歓迎しない雰囲気は今でもある。だから、黒人だけのバンドを作るのは大変だったよ。こういう音楽をやりたがる黒人ミュージシャンはそれほど多くないからね。シーンは主に白人が支配している。そのような場所で演奏するのは、ちょっと気が引けるんだ。だから、シーンに僕みたいなことをやっているミュージシャンが少ないというのはよくわかるよ」
しかし、どこに住んでいても音楽はありました。若い頃、Anaiah はレゲエ、ダブ、ソウルをよく聴いていましたが、やがてイギリスのポストパンクからLAのハードコアまで、よりヘヴィなサウンドに触れるようになります。何がきっかけでハードな音楽に目覚めたのかと聞かれると、「あまりに早い時期だったので思い出せないが、演奏の速さが魅力的に感じた」と笑います。
9歳のとき、Anaiah は兄の Mikaiahと THE BOTS というバンドを結成しました。2人組のガレージ・パンクは早くから注目され、12歳の時には Warped Tour でアメリカ全土を駆け巡るまでになります。10代の頃、友人たちが高校というホルモンに支配された地獄のような場所で過ごしている間、Anaiah はコーチェラやグラストンベリーに出演していたのです。
「あの若さで長い間ツアーをしたことで、音楽業界やツアーについて多くのことを学んだ…今知っていることはすべて、あのバンドで学んだことだ。まあだけど、子供の頃は、ただ成長するための試練や苦難を経験するものだけど、あのような環境で成長することは、期待と成長のバランスをどう取るかわからなかったからまさに異質だったね。どんな子供でも、そんな経験をする必要はないと思う」
Anaiah は、自分の経験をハリウッドの子役と同じように、望むよりも早く成長してしまったと認めています。しかし、そのおかげで、音楽が実際にどのように機能するのかを学び、ZULU に反映させることができたので、後悔はありません。

バンドが解散した後、Anaiah のソロ・プロジェクトとしてスタートした ZULU は、THE BOTS よりもはるかにヘヴィな存在だと言えます。低音のリフ、マシンガンのようなボーカル、パーカッションが飛び交う彼らの楽曲は、短く鋭い衝撃を与えるパワー・ヴァイオレンスで、ほとんどの曲が2分を超えることはありません。
前のバンドと明らかに違うのは、Anaiah がドラムキットの後ろではなく、前に出てマイクを持っていること。
「リズムを刻みながらバックグラウンドに存在し、バンドの他のメンバーをサポートする方がずっと簡単だった。でもね、”フロントにいるとき、自分は何を表現したいのか?” という疑問が浮かんできたんだ。前から見る世界は、自分にはどう見えるのだろう?ワクワクするんだよな。バンドのボーカルになるのは、とてもエキサイティングなことだと思う。それに、文字通り、ただドラムを叩くだけでないバンドをやりたかった。ギターを弾くのは好きなんだけどね。曲作りは今でもドラムからだけど、ますますギターの比率が高まっている。俺はいつもリアルで、自分自身に忠実でありたいと思っている。だから、ステージ上でもそれを伝えたいと思ったんだよ。手放しで音楽を感じなければならないと思った」
ZULU は GULCH や JESUS PIECE と似たような凶暴性を持っていますが、彼らのヘヴィネスというブランドは “全面戦争” というよりも、R&Bやソウル、ジャズの要素を取り入れ、Curtis Mayfield、Nina Simone、John Coltrane といった魂をその闘争に封じています。 たとえば、”Lyfe a Shorty Shun B So Ruff” では、Nina Simone  の”To Be Young, Gifted and Black” をサンプリングしています。この歌は、公民権運動の時代にアフリカ系アメリカ人を勇気づける重要な国歌。さながら今、内面の混乱の時代に自分たちが誰であるかを思い出すように促しているようです。
「彼らは俺たちが現在行っていることをしていた。彼らがいなかったら、俺たちはここにいなかっただろう」
“Music to Driveby” では、Curtis Mayfield  の “We People Who Are Darker Than Blue” が、コミュニティ内暴力についての Anaiah のリリックと皮肉に見事に呼応しています。Curtis の柔らかな軽快さは影の隠喩として機能し、救いは “彼ら” ではなく “私たち” によってのみ決定されるため、コミュニティは対立するのではなく協力しなければならないことを警告していること。” A New Tomorrow” でこうしたのサンプルに注がれた慎重な検討は、Anaiah が過去の世代の自由の闘士を認め、彼らの希望の賛歌を利用していることを示唆しています。
「このバンドはパワー・ヴァイオレンスとしてスタートしたけど、時を経て物事は変わるもの。将来的にはもっと変わるだろう。俺たちができること、俺たちが持っているスキルでできること、知っていることを制限したくはない。ジャンルを変え始めたりするのを見ると、人はいつも少し批判の目で見るけど、実際は誰がどう思うかなんてどうでもいいんだ」

実際、ハードコアやメタルのファン以外にも、ZULU は受け入れられています。
「ZULU のような活動をするのはとてもクールだよ。ハードコアにまったく興味のない人たちが  ZULU に夢中になっているのを見たことがあるからね。認めてくれて、気に入ってくれている。ジャンルが何であれ、クールなものはクールなんだ。俺はそれを疑問にも思わない。異なるタイプのショーや異なるタイプのラインナップで演奏でき、人々がそれをロックしてくれるのはクールなことだよ。24、25 トラックのアルバムを簡単に出すことはできるが、曲の長さが 1 分未満であっても、誰も 24、25 トラックのアルバムなんて聴きたがらない。 それに加えて、いくつかの曲を長くして息を吹き込む余地を与えたいと思っていた。だから最初に始めたとき、重要なのはテンポを少し遅くしたいということだった。 テンポを少し下げて、それほど複雑にならないよう。同時に、レコードを書いているときは、それに合うビジュアルについて考えている。 アルバムジャケットは俺にとってとても重要だから」
TURNSTILE に影響された部分もあります。
「俺たちは普通のハードコア・バンドとは違うことをやろうと思っているんだ。だから、ソウルもあり得るし、R&Bもあり得る。そして限界もある。TURNSTILE はコンテンポラリーなネオソウルや R&B でも少し遊び始めているように感じるけど、これはかなりポジティブな展開だと思うんだ。大好きなバンドのひとつだよ。彼らはドープなものを使って実験している。あのレコードは狂気の沙汰だった。アンタッチャブルだ。たくさんの障壁を打ち破ってくれる」
ブルックリンのアンダーグラウンドなヒップホップからの影響も。
「”Straight from Da Tribe of Tha Moon” だね。90年代にブルックリンで活動していたグループ、BLACK MOON。彼らの曲には “Slave” という曲がある。歌詞の中で、月の部族から来た人のことが出てくるんだ。でも、僕はこの歌詞を、黒人の人たちを指すのに使うことにしたんだ。そんな感じ。ただ、この歌詞を、ちょっとジャジーにアレンジしてみただけだよ。月が出てると暗いから、黒い人のためにあるってね」
“Abolish White Hardcore” 「白人のハードコアを廃止せよ」 と書かれたTシャツで物議を醸したことも。
「ハードコアのショーで白人を追い出すなんてことは言ってない。ただ、そういうショーは、とにかく白人が中心だよね。説明するのは好きではないんだけど、理解できない人たちのために……あまりに明白なことを説明しろというのは、ちょっと嫌な感じだね。とにかく、ハードコアは白人が支配する空間だ。そういうことなんだよ。それを指摘しただけなんだ。俺たちは誰かを排除しようとしているわけではない。ただ、みんなのために道を作りたいんだ。本当にそういうことなんだよ。この空間はみんなのものであるべきだ。白人が中心で、いつもそれを軸にしているという考え方は……もうやめなければならないね。それに文句を言う人がいるとしたら、その人はバカだ。俺は文字通り、そんな文句は気にしない」

ZULU は、Anaiah が彼のソウルフルで野蛮なサウンドを共有する手段であるだけでなく、考えを世界と共有する手段でもあります。この実に扇情的なデビュー・アルバムを通して、彼は自分のプラットフォームの上で、団結、銃の暴力、ブラックカルチャーの流用について語っています。しかし、アルバムのタイトルから、力強い詩の朗読 “Créme de Cassis” の歌詞に至るまで、物語の基盤は楽観主義であり、より良い未来、より良い世界への努力を歌っているのです。
インストゥルメンタルを中心とした2曲の後幕を開ける “Our Day Is Now” は、Anaiah が初日から音楽に込めたかった “一体感” と “力強さ” のアイデアを胸いっぱいに吸い込んでいます。
「この曲は、人々が人間に望んでいることの2つの側面について話している。人々は俺たちが分断することを望み、俺たちが怒ることを望んでいるんだ。つまり、時に人々は、俺たちが調和して生きることを望んでいないように感じることがあるんだよ。変な話だけど。でも、ちょっと待って。俺たちには、人々が見逃している別の側面がある。俺たちが発するたくさんの愛、たくさんの創造性、そしてたくさんの喜びがある。曲の中で言っているように、そうした人々は自分が見たいものしか見ていない。でも、俺たちにはそれ以上のものがある」
“A New Tomorrow” の核となるのは愛と希望ですが、これを弱さと混同してはいけません。なぜなら、Anaiah ほど決意に満ち、知的で、自分が何者であるか、何を目指しているかに自信を持った人はいないでしょうから。そしてこのアルバムは、彼のコミュニティのためだけでなく、外部の人々が彼らの経験を聞き、理解するために作られたのです。
“Music To Driveby” は、人々を分断させようとする銃やギャングの暴力だけでなく、分断を拡大させる社会のシステム的問題についてもコメントしています。
「ギャングの世界に生まれた人たちにとって、それが彼らの当たり前であり、それが彼らのすべてであり、それが彼らが日々直面しなければならない現実なんだ。だから、俺はそのことにほんの少し光を当て、誰にでも起こり得るいかに現実的なことかを伝えているんだよ。そして、それは銃による暴力や殺人だけでなく、精神的な分断も同様。洗脳や、白人至上主義が俺たちを分断させるという影響もある。それも、ドライブバイ (シューティング。車から射撃をする凶悪な犯罪) がそうであるように、どこからともなくやってくる」

そうして、Anaiah の人生に最も強く浸透しているのは、彼のスピリチュアルな部分かもしれません。彼はラスタファリアンとして育ちました。ZULU のグッズやアルバムの付録を見ると、アフロカリビアンやラスタファリアン文化の影響を強く受けており、歌詞の中にはジャマイカのパトワが散りばめられているのがわかります。彼は現在イスラム教徒ですが、彼らの音楽にはラスタの精神性が “根付いている” と言い、特にエンディングの “Who Jah Bless No One Curse”(タイトルは Bob Marley の曲から)はその典型的な例だと言います。
「ラスタで育ち、イスラム教徒であることは、俺の中において文化的にはさほど遠いものではなく、すべてがこのバンドが持つスピリチュアルな側面と結びついている。バンドの始まり、最初のレコードで、君はそれを聞くことができたし、すべての歴史を通して、そこには神の存在があるんだよ」
ただし、Anaiah は ZULU が宗教的なバンドでないことを熱心に指摘します。
「それは全く重要なことではなく、俺の人生の側面をそこに散りばめているだけなんだ。俺は、特にイスラム教徒として、他人が信じるか信じないかで誰かを非難するのは間違っていると考えている。誰もが自分の意思を持つ人間であり、自分自身の人生を歩む権利があるのだから。俺にできることは、イスラム教について話すことだけ。自分の現実について話すことだけで、それがこのアルバムでやっていることだ。音楽と俺の人生に影響を与えるものすべてを含めてね」
彼らはシーンをオープンにし、特定の人たちだけでなく、音楽を愛するすべての人のための空間にすることを目指しています。そして、世界は変わりつつあります。
「変化がある、変化があった、もっと変化がある。俺たちはずっとこうしてきたし、人々はずっと立ち上がり続けてきたし、これからもそうしていくだろう。俺は変化が起こること、起こり続けることを人々に知ってほしい。そして、準備をしてほしいんだ」

参考文献:KERRANG!ZULU: “People expect us to be angry, but there’s a lot of joy that we emit”

NPR:Zulu’s soul-sampling powerviolence shifts the pit toward love

NEW NOISE MAG:INTERVIEW: L.A. POWERVIOLENCE BAND ZULU

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ATROCITY : OKKULT Ⅲ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXANDER KRULL OF ATROCITY !!

“Atrocity And Myself Were There When It All Started!”

DISC REVIEW “OKKULT Ⅲ”

「80年代に、私の家でも何度かパーティーを開いたんたけど、メタルヘッズとゴスキッズたちはお互いに少し離れたところにいようとしたんだ。別の部屋にいることさえあって、私が走って行き来しなきゃならなかったこともあったくらいでね (笑)。だからこそ、90年代半ばに ATROCITY でメタル、ニュー・ウェーブ、ゴシックのクロスオーバーを行い、彼らを引き合わせるというアイデアが当時生まれたのかもしれないよね」
INSTIGATOR の名でドイツにおけるハードコアの煽動者となった最初期から、ATROCITY と Alexander Krull はその音楽性をカメレオンのように変化させつづけています。テクニカル・デスメタルの一大叙事詩 “Todessehnsucht” を作り上げた時代、ゴシックやインダストリアルを咀嚼し PARADISE LOST や SENTENCED の先を歩んだ時代、 妹の Yasmin と共闘してアトモスフェリックなメタルにおける女性の存在をクローズ・アップした時代、80年代のニュー・ウェーブやポスト・パンクのカバーでポップを追求した時代。ATROCITY は常に時代の先を行き、実験と挑戦の残虐をその身に刻み込んできたバンドです。
「ATROCITY のアーティスト、ミュージシャンとして、私たちは音楽的な自由を持ち、異なるアプローチでアルバムをレコーディングすることが好きなんだ。ファンとしては、常に自分の好きなものを選ぶことができるし、リスナーは気分によって、ブルータルなデスメタルが似合うか、ダークなメロディーを持つアトモスフェリックな音楽が似合うかを決められるんだから、それでいいんじゃないか?」
ATROCITY を語る時、頻繁に登場するのが “Todessehnsucht” が好きすぎてそれ以降のアルバムを認められない問題でしょう。たしかにあの作品は、イカれたテクニカル・デスメタルでありながらどこか気品があり、耽美と荘厳を兼ね備え、暗闇にフックを携えた欧州デスメタル史に残る不朽の名品です。
インタビューで Alex が言及しているように、ドイツ語のタイトルもミステリアスかつ斬新で、ここでも RAMMSTEIN の先を歩んだ早すぎた挑戦でした。音楽の世界では、往々にして真の先駆者が成功を得られないことがありますが、ATROCITY はまさにそうした存在で、ゆえにメタルの地図がある程度定まってきた今こそ、私たちは彼らの旅路を再度歩み直す必要があるのではないでしょうか。当時は突拍子もないで片付けられたアイデアも、今となればすべてが “先駆” であったことに気づくはずです。つまり、ATROCITY は結局、”道” を外れたことなど一度もなかったのです。
「2004年に行った “Atlantis” のコンセプトに関する大規模な作業では、オカルトに関するさまざまな情報や接点が驚くほど豊富にあったんだ。科学的、考古学的な研究、秘教的な理論に対する神話的な視点、第三帝国のオカルティストの不明瞭な解釈、UFO学のような突飛な世界まで、さまざまなものが存在した。そして、次に私たちが思いつくコンセプトは、世界の謎や人間のダークサイドについてかもしれないと、ほとんど明白になったんだよな。そして、1枚のアルバムでは不十分で、ここに “Okkult” 3部作が誕生したわけだ。ダークで壮大で残忍な音楽で、まさにATROCITY のこの10年間を表現しているよ」
祖父がヴァンパイア伝説の震源地、トランシルヴァニア出身であることからオカルトに興味を惹かれた Alex は、そうして世界各地の怪しい場所や伝承、ダークで壮大で残忍なデスメタルを使ってホラー映画のようにダークサイドを描くライフワークに没頭するようになります。”オカルト・シリーズ” と題された深淵もこれが3作目。
この一連の流れでバンドは、遂にデスメタルの最前線に復帰しながらも、やはり実験の精神は微塵も失うことはありませんでした。Elina Siirala (LEAVES’ EYES) と Zoë Marie Federoff (CRADLE OF FILTH) をゲスト・ボーカルに迎えた “Malicious Sukkubus” では暗黒のストンプにシンフォニックな光が差し、”Teufelsmarsch” では90年代のゴス/インダストリアルを逆輸入しつつその邪悪に磨きをかけます。重要なのは、常にオカルティックなエニグマと、地獄の腐臭が共存していること。ATROCITY の闇への最敬礼はやはり、本物の毒と気品を兼ね備えています。
今回弊誌では、レジェンド Alexander Krull にインタビューを行うことができました。「私たちはヨーロッパで最初に結成されたエクストリーム・メタル・バンドの1つとしてスタートし、メタル音楽の新しい地平を開拓するパイオニアとなり、多くの変わったプロジェクトに携わり、メタルで初めて他の音楽スタイルを組み合わせていったんだ」 どうぞ!!

ATROCITY “OKKULT Ⅲ” : 10/10

INTERVIEW WITH ALEXANDER KRULL

Q1: Not many bands were experimenting with death metal or thrash metal when you started. Even though Morgoth, also in Germany, was there. “Hallucinations” is artwork by Hans Ruedi Giger, so, were you influenced by bands like Celtic Frost, for example, or Death from the US?

【ALEXANDER】: With Atrocity we were always looking for new challenges, new musical horizons and ideas. Celtic Frost and Death are fantastic, iconic bands and fave bands of mine, too. Both bands had a great impact on the whole scene. We formed Atrocity in 1985 as teenagers and became forerunners of German Death Metal. Back in the day actually nobody really wanted this kind of extreme metal bands. No club, no agency, no labels. Even some of the metal magazines. It was an underground movement and we were a big part of it. Atrocity and myself were there when it all started! We started out as one of the first extreme metal bands from Europe, and became also pioneers in exploring new horizons for metal music, doing many unusual projects and combining other musical styles for the first time in metal, too. “Hallucinations” is mentioned to be the first techno death album as well, and yes the cover artwork was done by HR GIGER, who else would fit better?

Q1: ATROCITY がシーンに登場した時、まだデスメタルやスラッシュで実験を重ねるバンドは多くはありませんでした。”Hallucinations” のギーガーのアートワークが示すように CELTIC FROST、また当時新進気鋭だったアメリカの DEATH といったバンドはインスピレーションの一つとなっていたんでしょうか?

【ALEXANDER】: ATROCITY では、常に新しい挑戦、新しい音楽の地平線、アイデアを探していたんだ。CELTIC FROST と DEATH は素晴らしく、象徴的なバンドで、私も大好きなバンドだ。両バンドはシーン全体に大きな影響を与えていた。
私たちは1985年に10代で ATROCITY を結成し、ジャーマン・デスメタルの先駆者となった。しかし、当時は誰も私たちのようなエクストリーム・メタル・バンドを望んでいなかったんだ。クラブも、エージェンシーも、レーベルも…メタル雑誌の一部でさえも望んでいなかった。ただ、デスメタルはアンダーグラウンドのムーブメントで、我々はその大きな部分を担っていたんだ。一つ言えるのは、ATROCITY と私は、すべてが始まったときにそこにいたということ!
私たちはヨーロッパで最初に結成されたエクストリーム・メタル・バンドの1つとしてスタートし、メタル音楽の新しい地平を開拓するパイオニアとなり、多くの変わったプロジェクトに携わり、メタルで初めて他の音楽スタイルを組み合わせていったんだ。
“Hallucinations” は最初のテクノ・デス・アルバムとも言われているけど、君が言うようにそのジャケットのアートワークは HR. ギーガーが担当してくれた。他の誰があれ以上フィットする物を作れる?

Q2: “Todessehnsucht” is the album that made me fall in love with Atrocity, and it is still loved by many metal fans. Looking back, why do you think that work is so highly regarded?

【ALEXANDER】: I guess „Todessehnsucht” became a classic in German death metal as it sounds very dark, complex and unique. This was our way to play extreme music, even more technical and bombastic than other typical death metal bands at that time. The album has this very special and dark atmosphere going like a red line through the music. We also wanted to integrate more classical elements into our music, so we had invited four opera singers into the studio. The German title and using German phrases in our music worked really well, too. For some people it was even kind of shocking we had a German title. In America the album was renamed into ‘Longing for death’ against our will. Nowadays the whole thing would have had a different outcome when you think of Rammstein meanwhile being very succesful with German lyrics world wide.

Q2: “Todessehnsucht” で私は ATROCITY を愛するようになりました。私だけではなく、今でも多くのメタル・ファンから愛されているアルバムですね?振り返ってみて、あなたはなぜあの作品がこれほど愛されていると思いますか?

【ALEXANDER】: “Todessehnsucht” は、とてもダークで複雑でユニークなサウンドだから、ドイツのデスメタルにおけるクラシックになったのだと思うよ。この作品は、当時の他の典型的なデスメタル・バンドよりもさらにテクニカルで大げさな、極端な音楽を演奏する私たちの挑戦だったんだ。このアルバムには、特別でダークな雰囲気がアルバムの音楽を貫いている。また、自分たちの音楽にもっとクラシックな要素を取り入れたいと思い、スタジオに4人のオペラ歌手を招いたのも思い出深いね。ドイツ語のタイトルと、ドイツ語のフレーズを使った音楽も、とても効果的だった。もっとも、ドイツ語のタイトルが衝撃的だった人もいたようだけどね。
アメリカでは、私たちの意思に反して、アルバムが “Longing for Death” に改名されてしまった。今となっては、RAMMSTEIN がドイツ語の歌詞で世界的に大成功していることを考えれば、ドイツ語でアメリカに挑戦していればすべてが違う結果になっていたかもしれないよね。

Q3: After that, Atrocity explored deeply into the gothic and industrial aspects. At that time, bands like Paradise Lost and Sentenced were also moving from death metal to gothic, did you share some of the same feelings with them?

【ALEXANDER】: Like mentioned before we were exploring new horizons for the band and looking for new challenges. We actually never left our death metal roots but we spread out the range of our muscial variety. Writing albums like „Blut“ was very important for the creativity of the band. Starting projects with Das Ich, Lacrimosa or Yasmin were breaking through musical barriers and this was an impact for the Gothic and metal crossover in the 90’s.

Q3: その後、ATROCITY はゴシックやインダストリアルな要素を追求し始めます。あの頃、PARADISE LOST や SENTENCED も似たような道を歩んでいましたよね?

【ALEXANDER】: 前述したように、私たちはバンドの新しい地平を探り、常に新しい挑戦を探していたんだ。実際は、デスメタルのルーツを離れることはなかったんたけど、音楽的なバラエティの幅を広げたと言えるかな。
だから、”Blut” のようなアルバムを作ることは、バンドの創造性にとって非常に重要だった。そうして Das Ich、Lacrimosa、Yasmin とのプロジェクトは、音楽の壁を打ち破っていったんだ。90年代のゴシックとメタルのクロスオーバーに大きな影響を与えたはずだよ。

Q4: There was also the album featuring your sister, whose style was in sync with that of Anathema and The Gathering, but what makes Atrocity keep trying new challenges?

【ALEXANDER】: Back then we wanted to do a cooperation with my sister for many years. With our cooperation on the „Blut“ album and on the „Calling The Rain“ Mini album the time was right to finally work with my sister Yasmin. We had written the music fitting perfectly with her fantastic voice and it turned out very special. „Land of the forest“ is a song connected to our family roots in Transilvania.

Q4: あなたと妹の Yasmin とのコラボレーションは、ANATHEMA や THE GATHERING とも親和性がありましたね?

【ALEXANDER】: 当時、私たちは何年も前から妹との協力を望んでいたんだ。そうして、アルバム “Blut” とミニアルバム “Calling The Rain” で、ついに妹の Yasmin と仕事をする時が来た。私たちは、彼女の素晴らしい歌声にぴったり合う音楽を書き、とても特別なものに仕上げていった。”Land of the Forest” は、私たちの家族のルーツであるトランシルヴァニア地方にちなんだ曲なんだ。

Q5: On the other hand, you also have albums that cover 80s new wave and post-punk, right? In a way, is it important for you to go back to your another roots from time to time?

【ALEXANDER】: I remember very well back in the 80’s when I was a young metal kid and hanging out mostly with my metal friends but also had friends from the Wave and Punk scene. We had some parties together at my place but the metalheads and Goths tried to stay a bit seperated from each other – even staying in different rooms, I remember running back and forth, haha. Maybe back then the idea was born to bring them together with this metal, wave and gothic crossover we did in the mid 90’s with Atrocity. However, musically „Werk 80“ was another great and exciting challange for the band and it became a huge success for Atrocity. In the metal and gothic clubscene the „Werk 80“ songs were played all over and hitting the German DJ charts with 5 songs. The „Werk 80“ tour was sold out and we were playing and headlining as first metal band on the biggest Gothic festival there is, the Wave Gotik Treffen in Leipzig, Germany and other festivals.

Q5: 一方で、あなたはしばさば、80年代のニュー・ウェーヴやポスト・パンクのカバー・アルバムも制作してきましたね。そうやって、時にメタルとは別のルーツに戻ることも大切なのでしょうか?

【ALEXANDER】: 80年代、私は若いメタルキッズで、主にメタル仲間とつるんでいたんだけど、ニュー・ウェーブやパンクシーンの友人もいたことをとてもよく覚えているよ。私の家でも何度かパーティーを開いたんたけど、メタルヘッズとゴスキッズたちはお互いに少し離れたところにいようとしたんだ。別の部屋にいることさえあって、私が走って行き来しなきゃならなかったこともあったくらいでね (笑)。だからこそ、90年代半ばに ATROCITY でメタル、ニュー・ウェーブ、ゴシックのクロスオーバーを行い、彼らを引き合わせるというアイデアが当時生まれたのかもしれないよね。
とはいえ、音楽的には “Werk 80” はバンドにとってもう一つの偉大でエキサイティングな挑戦であり、ATROCITY 自体にとっても大成功となったんだ。メタルとゴシックのクラブシーンでは、 “Werk 80″ の曲は至る所でプレイされ、5曲でドイツのDJチャートを飾った。”Werk 80” ツアーは完売し、ドイツのライプチヒで開催された最大のゴシック・フェスティバル “Wave Gotik Treffen” やその他のフェスティバルで、最初のメタルバンドとして演奏し、ヘッドライナーを務めることができたからね。

Q6: However, while some fans have praised Atrocity’s musical journey, I think there has been a lot of criticism from fans of the technical, progressive death metal of the past?

【ALEXANDER】: Well, there will be always fans who like certain albums better than others. It’s a matter of taste. We have a lot fans who like all sides of our music, if it’s dark, brutal or symphonic. As artists and musicians of Atrocity we like to have our musical freedom and recording albums with different approaches. As fan you can always pick what you like best and sometimes it just depends on the mood of the listener if brutal death metal suits better or atmospheric music with dark melodies..

Q6: そういった音楽的な旅路を賞賛するファンも多い一方で、初期のテクニカルでプログレッシブなデスメタルにこだわるファンからは批判もありましたよね?

【ALEXANDER】: まあ、あるアルバムが他のアルバムより好きなファンというのは常に存在するよ。それは好みの問題だ。ダーク、ブルータル、シンフォニックなど、私たちの音楽のあらゆる側面を好きなファンがたくさんいるんだから。
ATROCITY のアーティスト、ミュージシャンとして、私たちは音楽的な自由を持ち、異なるアプローチでアルバムをレコーディングすることが好きなんだ。ファンとしては、常に自分の好きなものを選ぶことができるし、リスナーは気分によって、ブルータルなデスメタルが似合うか、ダークなメロディーを持つアトモスフェリックな音楽が似合うかを決められるんだから、それでいいんじゃないか?

Q7: Recently, you have released an amazing series of “Okkult.” What is your intention behind this?

【ALEXANDER】: Thank you! I was always interested in dark topics and writing these kind of lyrics for Atrocity. Already with the “Blut” album in 1994 and its dark vampire concept it was fascinating to do research in Transylvania, home of my grandfather, and to dive deep into a topic and film a videoclip on a spooky Transylvanian castle. Then in the very extensive work on the “Atlantis” concept in 2004, there was an incredible range of different sources and points of contact on the subject. This went from scientific, archaeological work, mythological perspectives on esoteric theories, obscure interpretations of occultists in the Third Reich to the far-out world of ufology. Then it was almost obvious to me that the next concept we would come up with could be about the mysteries of world history and the dark side of humanity. And one album would not be enough, so here we are with the “Okkult” trilogy – one decade of Atrocity with dark, epic and brutal music!

Q7: 近年は、素晴らしき “Okkult” シリーズに熱中していますね?

【ALEXANDER】: ありがとう!(笑) 私はいつも暗い話題に興味があって、ATROCITY のためにオカルティックな歌詞を書いているんだ。1994年のアルバム “Blut” とそのダークなヴァンパイアのコンセプトでは、祖父の故郷であるトランシルヴァニアでリサーチを行い、テーマを深く掘り下げ、不気味なトランシルヴァニアの城でビデオクリップを撮影することは、とても魅力的なことだった。
2004年に行った “Atlantis” のコンセプトに関する大規模な作業では、オカルトに関するさまざまな情報や接点が驚くほど豊富にあったんだ。科学的、考古学的な研究、秘教的な理論に対する神話的な視点、第三帝国のオカルティストの不明瞭な解釈、UFO学のような突飛な世界まで、さまざまなものが存在した。そして、次に私たちが思いつくコンセプトは、世界の謎や人間のダークサイドについてかもしれないと、ほとんど明白になったんだよな。そして、1枚のアルバムでは不十分で、ここに “Okkult” 3部作が誕生したわけだ。ダークで壮大で残忍な音楽で、まさにATROCITY のこの10年間を表現しているよ。

Q8: In the Okkult series, you basically reverted to death metal, but this time there are symphonic elements and gothic melancholy, and in a way it’s the culmination of Atrocity’s greatness, would you agree?

【ALEXANDER】: In a way you can see it this way. For me it was a really clear vision what the OKKULT albums should become – like a evil Horror movie about the malice of humanity, obscure places and events with evil, brutal and epic metal songs!

Q8: 仰る通り、”Okkult” シリーズであなたは、基本的にデスメタルへと回帰しつつ、シンフォニックな荘厳やゴシックのメランコリーを巧みに使用して、ATROCITY の集大成を作り上げていますね?

【ALEXANDER】: ある意味、そのように見ることもできる。私にとっては、”Okkult” のアルバムがどのようなものになるべきか、実に明確なビジョンがあったんだ。人間の悪意を描いた邪悪なホラー映画のように、怪しい場所や出来事を、邪悪で残忍で壮大なメタルソングで表現するというビジョンがね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ALEXANDER’S LIFE!!

Deep Purple “Made in Japan”

Pink Floyd “The Wall”

Iron Maiden “Killers”

Motörhead “No sleep ‘til Hammersmith”

Slayer “Hell Awaits”

MESSAGE FOR JAPAN

First of all, thank you for your interview! A BIG thank you to all Atrocity fans in Japan! Thanks for your great support, we really hope to play in Japan to give you a great death metal feast! Enjoy the new OKKULT III album!

まずは、インタビューをありがとう! 日本の ATROCITY ファンの皆さん、本当にありがとう。素晴らしいサポートに感謝しているよ!日本でプレイして、素晴らしいデスメタルの饗宴を提供したいと心から願っているんだ。”OKKULT III” の新しいアルバムを楽しんでほしいね!

ALEXANDER KRULL

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COVER STORY 【MR. BIG : THE BIG FINISH】INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO OF MR. BIG !!

“I Could Never Replace Pat. He Had a Unique Sound And Feel And The Band Really Gelled Together In a Great Way. He Was a Huge Part Of The Mr Big Sound. All I Can Try To Do Is Play To The Best Of My Ability And Pay Tribute To Pat.”

THE BIG FINISH

パット・トーピーが私たちの前からいなくなって、どれくらいの月日が過ぎたでしょう。アイスクリームとハンバーガーを愛し、アメリカの学園モノに出て来そうな爽やかな笑顔でブロンドをなびかせ、年齢をちょっぴり詐称した歌って叩ける MR.BIG のドラマーはあのころ、文字通りみんなのアイドルでした。
ただし、ポール・ギルバート、ビリー・シーンという当代きっての弦楽隊のおかげで霞んでしまってはいましたが、パット・トーピーは顔が良いだけでなく、相当の実力者でバンドの要。”Take Cover” や “Temperamental”, “Undertow” のユニークなリズム・パターンに巧みなゴーストノート、ボンゾを思わせる骨太でタメ気味のドラミングはやっぱりスペシャルで、”Yesterday” を歌いながらソロをとるパットの姿がみんな大好きだったのです。
そして、どこか飄々として浮世離れしたポール、やんちゃなエリック、職人肌で真面目なビリーをつないでいたのもやはりパットだったのでしょう。特に、ビリーとエリックが一時、相当険悪な仲であったことはもう誰もが知る事実ですから。
結局、私たちはパットを失って再度、MR.BIG は “あの4人” でなければならないと痛感させられました。1度目はポールがバンドを去った時。FREE の名曲をその名に冠するバンドです。リッチー・コッツェンでも、むしろポールよりリッチーの方が上手くいってもおかしくはなかったのです。しかし、実際はポールの不思議なメロディ・センスやメカニカルなギターを失ったバンドは一度瓦解しました。
今、THE WINERY DOGS が生き生きとしているのは、THE WHO や FREE の21世紀バージョンを全力で追求しているから。MR.BIG の建前はたしかにほぼ同じでしたが、実のところ彼らはもっと甘いメロディやスター性、派手なテクニックを売りにしていました。その “アンバランス” が実は MR.BIG のキモで魅力だったのです。リッチーと作った ”Get Over It” は玄人好みの素晴らしいアルバムでしたが、MR.BIG はそもそも玄人好みのバンドであるべきではなかったのです。
だってそうでしょう?90年代、私を含めてどれだけ多くのキッズが彼らに憧れて楽器を始めたことでしょう?バンドを始めたことでしょう?アイバニーズのFホールやヤマハのライトグリーンがそこかしこに溢れていたのですから。今、あれだけ長いソロタイムを設けられるバンドがどれだけいるでしょう? “Raw Like Sushi” シリーズのソロタイムをみんなが食い入るように分析していたのですから。MR.BIG はあのころ日本で、楽器をより純粋で真剣な何かへと変えていきました。それは彼らがとことんキャッチーで、ある種のアイドルで、全員がスーパーなテクニカル・スターだったからできたこと。
そんな日本におけるハードロックの父、MR.BIG にも遂に終焉の時が訪れます。エリックは最近、こんな話をしていました。
「BON JOVI がこの年まで続けるとわかってたら “Livin’ On A Prayer” をあんな高くは歌わなかったと言ってた。僕もそう。南米のバンドとやるときに “Lucky This Time” をやりたいと言われたけど無理だった。”Green-Tinted” の高音でさえキツイんだ」
あのベビーフェイスで鳴らしたエリックももう62歳。ポールは56歳。ビリーにいたっては69歳。もちろん情熱は年齢を凌駕しますが、それでも人間に永遠はありません。
それでも、パットが亡くなってから数年後、エリックはこう話していました。
「MR.BIG をまたやりたいよ。あの音楽が大好きだし、バンドを愛してるから。ビリー、ポール、そしてパットの魂とまたステージに上がりたいね」
パットの座右の銘は、”Never Give Up” でした。病に倒れたあとも、パットは常にバンドと帯同し、諦めず、不屈の精神で MR.BIG の音楽と絆を守り続けてきました。だからこそ、やはり幕を下すべき時なのです。お恥ずかしい話ですが、少なくとも私はあのころ、4人の絆と友情を純粋に信じていました。でも、それもあながち間違いではなかったのかもしれませんね。エリック、ポール、ビリー、そしてパットの魂は今回の “The Big Finish” ワールドツアーを最後にやはり、バンドを終わらせるつもりのようです。とても、とても残念で寂しいですが、それはきっと正しい決断なのでしょう。
最後のツアーは、MR.BIG のアンバランスが最高のバランスを発揮した “Lean Into It” が中心となります。マキタのドリルも、”Alive and Kickin” の楽しいハーモニクスも、”Green-Tinted” のメロディックなタッピングも、”Road to Ruin” のビッグ・スイープも、もしかしたらこれが聴き納めとなるかもしれません。しかし何より、多くのファンに別れを告げるため、物語をしっかりと終わらせるため、そしてパットに対する美しきトリビュートとしても、非常に重要なツアーとなるはずです。
ドラム・ストゥールには、ニック・ディヴァージリオが座ります。現在の英国を代表するプログレッシブ・ロック・バンド BIG BIG TRAIN のメンバーで、SPOCK’S BEARD, GENESIS, FROST, FATES WARNING など様々な大御所バンドで腕を振るって来たプログレッシブの巨人。ドラムの腕はもはや疑うまでもありませんが、ニックはとにかく歌が上手い。MR.BIG がボーカル・ハーモニーを何より大事にしてきたこと、ボーカル・ハーモニーで成功を収めたことはご承知のとおり。インタビューにもあるように、実は VAN HALEN や MR.BIG を愛し、その “歌” で選ばれたニックなら、きっと素晴らしい花道を作ってくれるはずです。
「僕は決してパットの代わりにはなれないよ。彼はユニークなサウンドとフィーリングを持っていて、バンドは本当に素晴らしい形で融合していたんだから。彼は MR.BIG サウンドの大きな部分を担っていたんだ。僕ができることは、自分の能力を最大限に発揮して、パットに敬意を表することだ。でも、僕はプロフェッショナルであることを誇りに思っているし、MR.BIG の曲を本物のロック・サウンドにするために必要なことは何でもするつもりだよ」NDV ことニック・ディヴァージリオの弊誌独占インタビュー。どうぞ!!

INTERVIEW WITH NICK D’VIRGILIO

Q1: First of all, how was your participation in Mr. BIG decided? And how do you feel now?

【NICK】: Here in the US I work at Sweetwater. The biggest online music gear retailer in the country. We have very nice recording studios and hold all kinds of workshops and masterclasses, along with normal recording sessions for all kinds of artists. It is a pretty unique place. Paul has been to Sweetwater a number of times and I have played with him in the workshops. Paul also played on my solo record “INVISIBLE” that I released in the summer of 2020. Through all of those things Paul sent me an email on day last year, I think in September – I’ll have to go find the original email, asking if I would be interested in the tour. I of course said yes immediately!
From there Paul sent me some demo tracks to play along to. With the aim of see how my voice would fit. I think we both knew that we made a nice connection as far as the drumming was concerned but Pat Torpey was such a great singer as well and Mr Big’s vocals in their live shows are a big deal. Paul and the boys needed to know that I could sing those parts. So I set out and recorded myself on the songs that Paul sent. They were a few tunes from the “Lean Into It” record. In the end, they liked what I did and I got the gig! I am so very happy!!!

Q1: まず、今回の MR.BIG への参加はどのようにして決まったのでしょう? 今はどんな気持ちでいますか?

【NICK】: ここアメリカでは、僕は Sweetwater で仕事をしているんだ。国内最大のオンライン音楽機器販売会社だよ。僕たちはとても素晴らしいレコーディング・スタジオを持っていて、あらゆるアーティストのための通常のレコーディング・セッションに加えて、ワークショップやマスタークラスも開催しているんだ。かなりユニークな場所なんだよ。
ポールは Sweetwater に何度も来ていて、ワークショップで一緒に演奏したこともあるんだよね。それに、2020年の夏にリリースした僕のソロ・レコード “INVISIBLE” でもポールは演奏してくれたんだ。そういったことを経て、ポールは昨年のある日、確か9月だったと思うのだけど、元のメールを探しに行かないといけないね、とにかく、MR.BIG のツアーに興味があるかどうかというメールを送ってきたんだよ。もちろん、すぐにイエスと答えたよ!
それから、ポールは僕に、練習用のデモ・トラックをいくつか送ってきてくれた。僕の声がどのようにフィットするかを確認するためにね。そもそもドラムに関しては、僕たちはいい関係を築けると思っていたんだけど、パット・トーピーは素晴らしいシンガーだったし、MR.BIG のライブでのボーカルはとても重要なんだ。だから、ポールたちは、僕がパットのパートを歌えるということを知る必要があったんだ。
そこで、ポールから送られてきた曲を自分でレコーディングしてみたんだよ。”Lean Into It” のアルバムに収録されている数曲だった。最終的に、彼らは僕の歌や演奏を気に入ってくれて、ライブに加わることができた。とてもうれしいよ!!

Q2: Considering your “Progressive” background, it doesn’t seem like your connection with Mr. Big is very deep. Did you actually listen to Mr. Big’s music before you decided to join?

【NICK】: Sure! I listened to Mr Big when their records were brand new. I was a fan of the band, Pat’s drumming, and got to meet him once back in the 1990’s. I think it was at a clinic or the NAMM show. I forget exactly but I definitely learned as much as I could from his playing. I’ve had a long career in progressive music but I am a rocker at heart. It all goes together in my opinion.

Q2: あなたの “プログレッシブな” バックグラウンドを考えると、MR.BIG への加入は驚きだったのですが、実際、この話が来る前に MR.BIG の音楽は聴いていましたか?

【NICK】: もちろん!クラシックな MR.BIG のレコードがリリースされていたころは聴いていたよ。バンドとパットのドラムのファンで、1990年代に一度だけ彼に会うことができたんだ。クリニックか NAMM ショーだったと思うけど。
正確には忘れたけど、彼の演奏からできる限り多くのことを学んだのは間違いないね。たしかに僕はプログレッシブ・ミュージックで長いキャリアを積んできたけど、根っからのロッカーでもあるんだよ。というか、僕の中では、すべてが一緒なんだ。

Q3: Of course, Mr. Big had Pat Torpey sitting on the drum set all the time, and the members and fans really loved him. How do you feel about taking Pat’s place musically and as a human being?

【NICK】: I could never replace Pat. He had a unique sound and feel and the band really gelled together in a great way. He was a huge part of the Mr Big sound. All I can try to do is play to the best of my ability and pay tribute to Pat. I pride myself on being a pro and will do what I have to make the songs sound authentic and rock! I want the fans to have a great time at the shows.

Q3: MR.BIG のドラムセットをずっと守って来たパットの後任をつとめることは、簡単ではないですよね?

【NICK】: 僕は決してパットの代わりにはなれないよ。彼はユニークなサウンドとフィーリングを持っていて、バンドは本当に素晴らしい形で融合していたんだから。彼は MR.BIG サウンドの大きな部分を担っていたんだ。
僕ができることは、自分の能力を最大限に発揮して、パットに敬意を表することだ。でも、僕はプロフェッショナルであることを誇りに思っているし、MR.BIG の曲を本物のロック・サウンドにするために必要なことは何でもするつもりだよ。ファンの皆さんには、ライブで素晴らしい時間を過ごしてもらいたいと思っているからね。

Q4: Many fans thought that Mike Portnoy would be chosen because of his relationship with Billy and Paul. I have a feeling you were chosen not only because of your drumming technique, but also because of your singing ability, as we listen to Spock’s Beard and it’s immediately obvious that you are a great vocalist! How about that?

【NICK】: I love to sing as much as I love to drum. Having the ability to do both has proven a good thing for my music career. It has helped me get many gigs including this one.

Q4: ポールやビリーとのつながりから、マイク・ポートノイが選ばれると思っていたファンも多いでしょう。ただ、SPOCK’S BEARD でのあなたの歌唱を聴けば、適任はあなただと皆が認めるはずです。

【NICK】: 僕はドラムと同じくらい歌うことが大好きだからね。その両方ができることは、僕の音楽キャリアにとって良いことだと証明されている。今回のライブも含め、多くのライブや仕事を得るのに役立っているよ。

Q5: You have played with many different virtuosos and you yourself play many different instruments. How do you feel about Paul and Billy’s technique?

【NICK】: Oh my gosh, Paul and Billy are two of the best ever and I a honored that I will share the stage with them. I will be honest that it makes me feel good inside knowing that I have what it takes to play with them. I’ve worked hard to be the best musician I can possibly be.

Q5: BIG BIG TRAIN をはじめ、様々なヴァーチュオーゾと共演し、ご自身もマルチプレイヤーであるあなたの目から見て、ポールとビリーのテクニックはどういったものですか?

【NICK】: オーマイゴッド!ポールとビリーは史上最高の2人で、彼らとステージを共有できることを本当に光栄に思っている。正直に言うと、彼らと一緒に演奏するために必要なものが僕の中にあると思うと、すごく心が晴れやかになるんだ。僕は最高のミュージシャンになるために努力してきたからね。報われた気分だよ!

Q6: Mr. Big has a huge discography, but what albums do you particularly like and what songs would you like to play live?

【NICK】: All of the record have great songs and It will be cool to the play the songs from “Lean Into It”. That is what I know so far about what we will be playing. What I’ve done while I am waiting to hear what the rest of the set will consist of is to go back and listen to their live records and watch a bunch of YouTube videos. Songs like “Colorado Bulldog”, “Addicted To That Rush”, “Wild World”, “Take Cover”, and others seem to be very popular with the fans and songs the boys have played a lot over the years so I have been learning those as well just in case. “Colorado Bulldog’ is a beast of a song! Even if we don’t play all of those songs it is still good for me to immerse myself into their music.

Q6: MR.BIG にはかなりの数のアルバムや楽曲がありますが、特に気に入っているものや、ライブでプレイしたいものを教えていただけますか?

【NICK】: どのレコードも素晴らしい曲ばかりだけど、”Lean Into It” の曲を演奏するのはクールだろうね。これが、今のところ分かっている演奏予定でもある。残りのセット内容を聞いている間に、彼らのライブ盤を聴き直したり、YouTube のビデオをたくさん見たりしているところさ。
“Colorado Bulldog”, “Addicted To That Rush”, “Wild World”, “Take Cover” といった曲はファンにとても人気があるようだし、彼らが長年にわたってたくさん演奏してきた曲なので、いつでもできるようにそれらも覚えているんだ。”Colorado Bulldog” は野獣のような曲だよね!これらの曲は実際にすべてを演奏しないかもしれないけど、彼らの音楽に浸ることができるのはライブに向けていいことだと思うんだ。

Q7: To a prog-maniac like me, you are literally GOD, but there are still some Japanese hard rock fans who don’t know you. To introduce yourself to these people, please tell us some of your works that you would like them to hear.

【NICK】: Ha! Well…thank you! I have been blessed to do many things over my career. I would point people who have never heard of me to my current band BIG BIG TRAIN. I have proudly been in BBT since 2007 and we’ve made a lot of records in that time. What is crazy for me this year is that I will go from the last show for Mr Big in Indonesia directly to the UK for a 3 week tour of Europe with Big Big Train. Our biggest tour of Europe to date. I am very proud of my band and I hope some Mr Big fans will check out BBT. It is a prog rock band in the style of Genesis, Yes, and others. Incredible musicians in my band as well. www.bigbigtrain.com
I would also like folks to check out my solo record “INVISIBLE”. Paul played on the song “Overcome”. I also had many other great guest artists play on the record. I am proud of that record. It was one I wanted to make for a long time and finally got the chance. www.nickdvirgilio.com

Q7: 私のようなプログ・マニアにとってあなたは文字通り神ですが、MR.BIG のファンの中にはまだ知らない人もいるかもしれません。いくつか、あなたのお気に入りの作品を紹介していただけますか?

【NICK】: ハッ! そうか…まあ、ありがとう(笑)。僕は自分のキャリアが、いろいろなことに恵まれてきたと思っていてね。僕のことを知らない人には、現在のバンド BIG BIG TRAIN をまず紹介したいね。
僕は2007年から BBT に所属していて、その間にたくさんのレコードを作ってきたことを誇りに思っているからね。今年、僕にとってクレイジーなのは、インドネシアでの MR.BIG の最後のショーから直接イギリスに行き、BIG BIG TRAIN と一緒に3週間のヨーロッパ・ツアーを行うこと(笑)。これまでで最大のヨーロッパ・ツアーなんだ。僕は自分のバンドをとても誇りに思っているし、MR. BIG のファンの人にも BBT をチェックしてもらえたらうれしいね。GENESIS や YES スタイルのプログ・バンドだ。 僕のバンドにも信じられないようなミュージシャンがいるんだよ。http://www.bigbigtrain.com
あとは、僕のソロ・アルバム “INVISIBLE” もぜひチェックしてほしい。ポールは “Overcome” という曲で演奏しているよ。他にも多くの素晴らしいゲスト・アーティストに参加してもらったんだ。僕はこのレコードを誇りに思っているよ。長い間作りたかったもので、ようやくそのチャンスが巡ってきたからね。http://www.nickdvirgilio.com

Q8: Finally, Japan has a special connection with Mr. Big. They’ve been ridiculed abroad for things like Big in Japan, but we really love them! Do you think this is really Mr. Big’s “Finish”?

【NICK】: All I know is where I am going at the moment. Not the best answer I know,haha.

Q8: 最後に、これは本当に MR.BIG の “Finish” なんでしょうか?

【NICK】: うーん…僕が知っているのは、今、このバンドがどこに行こうとしているかということだけなんだ。ベストな答えではないことは知っているけど……(笑)。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED S LIFE!!

Genesis “Selling England By The Pound”

Led Zeppelin “IV”

Tony Williams Lifetime “Emergency!”

Bill Bruford “One Of A Kind”

Van Halen “1984”

Just about anything from Motown. I love Funk, Soul, and old school R&B music. It’s made a huge difference in the way I play drums. Especially when I rock.

MESSAGE FOR JAPAN

I cannot wait to get back to Japan! I’ve only has the pleasure of going one time with a power pop group called “The Rubinoos”. We played 4 shows in September of 2002. 21 years ago! It was such an incredible experience. Such amazing history and culture. It will be awesome to experience it again!

日本に戻るのが待ち遠しいよ!僕は THE RUBINOOS というパワー・ポップ・グループと一緒に一度だけ日本に行ったことがあるんだ。2002年の9月に4回公演したよ。21年前だって?!信じられないような経験だった。素晴らしい歴史と文化。それをまた体験できるなんて、最高でしょう!

NICK D’VIRGILIO

NICK D’VIRGILIO

MR.BIG

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OUT OF NOWHERE : DEJA VU】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AMIN YAHYAZADEH OF OUT OF NOWHERE !!

“Iran Is Very Suppressive And Many Things That Are Normal Anywhere Else In The World Is Forbidden Here. This Includes Most Of Music Genres And The “Most Illegal” Of Them All Is Metal.”

DISC REVIEW “DEJA VU”

「残念ながらイランの政府は非常に抑圧的で、他の国では普通のことでも、ここでは禁じられていることがたくさんあるんだ。音楽もほとんどそうで、その中でも “最も違法” なのがメタルなんだ。刑務所に入れられた友人もいたし、その他にもいろいろなことがあってね…。音楽は僕たちを生かしてくれた唯一のもので、決してやめられない。だから、国を出たんだ」
イランからトルコへ。OUT OF NOWHERE という名前を体現する根無草のメタル集団は、母国の厳しい道徳的ルールと対峙しながら10年以上かけて自分たちのサウンドを磨き上げ、常に脅かされながら演奏し、危険と隣り合わせの夢を追い求めてきました。2021年、バンドは自分たちの創造的な可能性をさらに追求し、音楽を作ることで逮捕される心配のない活動をするためにトルコに移住します。そこで起こったあの大地震。彼らの情熱は今、革命の始まりのように純粋なイランの人々、そして大災害にも負けないトルコの人と共にあります。メタルの回復力、反発力と共に…
「僕たちはこのビデオをイランの女性たちに捧げた。基本的な自由のために戦い、政府によって殺されようとしている人たちに。彼女たちは僕たちの姉妹だから。イランの若い世代は、僕たちに大きく勇敢である方法を教えてくれた。彼らは、自分たちの若さと未来が台無しになることを望んでいない。僕たちイラン人は暴力的な人間ではないよ。どこの国の人でも自由を持つ権利があるけど、僕たちは基本的な自由さえ持っていなかった。言論の自由もない。政権の弾圧のために、僕たちの夢のほとんどは6フィートの深さに埋もれてしまった。でも、イランで兄弟姉妹が毎日殺されているのに、黙っているわけにはいかないじゃないか」
“Wrong Generation” は、抗議活動を悩ませた当局の暴力や、イラン人女性から基本的な自由を奪い続ける抑圧的な支配を非難するプロテスト・ソングで、協調のアンセム。彼らの情熱的な抗議の形であり、もううんざりだと判断した女性や若者の怒りを代弁しています。
昨年、22歳のイラン系クルド人ジナ・マフサ・アミニは、イランのガイダンス・パトロール(この地域の迫害警察をより洗練した言葉で表現したもの)に拘束されました。彼女の罪は、政府の基準に従って伝統的なヒジャブを着用していなかったことです。アミニは逮捕後まもなく、テヘランの病院で不審な死を遂げます。この事件をきっかけに、テヘランの女性や若者たちは伝統的な圧制に終止符を打つために街頭に繰り出しました。
デモに参加したことで約18,055人が拘束され、その結果、437人が死亡したと伝えられています。イランのサッカー代表チームも自国の女性たちとの連帯を示し、ワールドカップ初戦のイングランド戦に向けて、世界中の観客が見守る中で自国の国歌を歌うことを拒否しました。そうして、自由への連帯は “最も違法“ で悪魔の音楽とみなされていたヘヴィ・メタルにも広がっていきました。OUT OF NOWHERE はそうして、自由への障害となる壁を、地理的にも、社会的にも、音楽的にも壊していくことを望んでいるのです。
「サントゥールはイランでとても人気のある楽器で、さまざまなジャンルで広く使われているんだけど、エレキギターやメタル・ミュージックのサウンドと組み合わせることは、これまでになかったこと。僕たちは、それを最高の形で実現し、イランの伝統的な楽器のひとつを世界に紹介することに挑戦したんだ」
抑圧的な社会や法律から逃れるためにイランからトルコに移住した OUT OF NOWHERE は、国を超えた境界線だけでなく、音楽における固定観念も打ち破りました。”Deja Vu” の最初の1分間で、彼らの創造的な遺伝子に ARCHITECTS のダイナミズムと POLYPHIA の野心が眠ることをリスナーはすぐに察知するでしょう。同時に彼らは、飽和し、変身の時を迎えたモダン・メタルコアというサブジャンルに対して、その解決策の一つを提示して見せました。自らのアイデンティティであるサントゥールの使用です。あまりにもドラマティックで劇的なルーツの提示は、自分たちが何者で、どこから来たのか、どこへ進むべきなのかを瞬時に知らしめる音の魔法。そうして彼らは、音楽においても、社会においても、適切な変化と自由の重要性を世界へと訴えかけます。
今回弊誌では、フロントマン Amin Yahyazadeh にインタビューを行うことができました。「これまで僕たちは、常に逆風の中生きて来た。でもね、すべてが自分にとって不利でどうしようもないときでも、僕たちはヘッドホンをつければ別世界に行くことができたから。悲しいときやストレスがあるときだけでなく、楽しいときでも、音楽はいつも君のそばにいて、元気にしてくれる。だからこそ、僕たちは音楽を作ることができることに本当に感謝しているんだよ」どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUSK : SPECTRUMS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MESHARI SANGORA OF DUSK !!

“Saudi Arabia Is Not Known As Being a Place Where Metal Music Is a Thing, But Music Knows No Boundaries.”

DISC REVIEW “SPECTRUMS”

「たしかにサウジアラビアはメタル・ミュージックが盛んな国としては知られていないけど、音楽には国境がないんだよ。音楽が大好きな僕は、大学進学を機にUAEに移り住み、リスナーとしてだけでなく、音楽に携わりたいと思うようになった。それでまず、DJ としてスタートして、それ以来音楽に対する情熱を燃やし続けている」
プログレッシブ・メタルコアのパンデミックは、北米、南米、ヨーロッパ、そしてもちろんここ日本やアジアの国々にも感染し拡大を続けていますが、さすがにサウジアラビアにまで到達し、これほどの逸材が登場するとは想像もつきませんでした。サウジアラビアの一人プログコア DUSK の首謀者 Meshari Sangora の音楽に対する情熱の焔は、実にユニークかつカラフルなデビュー作 “Spectrums” で国境や困難を燃やし尽くすのです。
「僕の生活は、ヘヴィ・ミュージックとメタルが100%なんだ。そうした音楽は、僕にとってのライフスタイルであり、メタル・ミュージックは、ジャンルとして、あるいは生き方として、僕にとって完璧なものであるといつも感じているんだよ。たしかにサウジアラビアでも本当に長い間、メタルやヘヴィ・ミュージックはタブー視されてきたし、過激なバンドや悪魔的なメタルに傾倒する人もいて、イメージは全く良くなかったんだ。でも人々はゆっくりと、しかし確実にヘヴィ・ミュージックに心を開き、メタルの物語の両面を学んでいるところだよ」
これまでインタビューを行ってきたイスラム教国家のバンドたちは、多かれ少なかれ、何かに不自由を感じていて、時には激しく弾圧を受け国外へと脱出した人たちさえ存在しました。もちろん、文化や伝統を重んじることは重要ですが、それによって生じた歪みで自由や権利が制限され、精神的、肉体的な抑圧や不利益を産むとしたら、きっと変化も必要です。”悪魔の音楽” は少なくともサウジアラビアでは、Meshari のような100%メタル人間の情熱によって、徐々に受け入れられて来ているのかも知れませんね。
実際、CREATIVE WASTED によるサウジ初のメタルライブが行われたところです。バンドのベーシストはこう語っていました。
「当時(2000年)のサウジには、どんな種類の音楽シーンもなかった。本当に何もなかった。アンダーグラウンドの民族音楽ならまだしも、それも家の中で友達に聞かせる程度。基本的に、そういうものだけ。ここには、どんな音楽シーンもなかったんだ。何もない。サウジアラビアのアーティストのほとんどは、レバノンなど、王国の外でレコーディングをしていたよ」
Meshari 息子とも言える “Spectrums” の誕生は、まさに変化の象徴でしょう。
「このアルバムは、メタルヘッズとそうでない人の両方にとっての、入り口になるような作品にしたかった。”Spectrums” は音楽が好きな人なら誰でも興味を持つことができると思うんだ。様々に異なるジャンルをミックスしているからね。このアルバムで僕がやろうとしていることは、すべての人に自分の感情や旅を体験してもらうこと。裏切りや処刑、愛、憎しみ、希望といった現実問題を扱ったテーマもある」
Meshari は、この新作をSide AとSide Bとに分けて制作しました。アルバムの前半、Side A は攻撃的なサウンドで、よりギターに重点を置き、前に進むにつれてさらなる敵意が蓄積されていくような作風。一方、後半 Side B では EDM 的なサウンドを多く取り入れ、DJ として養った現代的なデジタル•サウンドとイヤー・キャンディでメタル以外のリスナーにも広く訴えかけていきます。
「母国語を加えるというアイデアは、ユニークなタッチを加えることができると思ったし、アラビア語は僕のルーツとのつながりを保つ方法でもあるね。だから “Agnes Of Rome” という曲にはアラビア語が使われている」
“Spectrums” というタイトルは伊達ではありません。あの元 SWALLOW THE SUN の偉大な Jaani Peuhu、SOLEMON VISION の Aron Harris をはじめ、英語、ドイツ語、フィンランド語、アラビア語という異なる言語、異なるスタイルを持つボーカリストを集めたアルバムは実に多様で色鮮やか。さらに、EDM、ジャズ、ポップ、インダストリアル、アンビエントの音像が、モダン・プログコアという情熱の炉で溶かされ、再結晶した音楽は独創的でキラキラと耳に残ります。もちろん、オリエンタルな音の葉も存在しますが、それを押し売りのように無理強いしないところも見事。DUSK が蒔いた情熱の種は、この地で芽吹くのでしょうか。
今回弊誌では、Meshasi Sangora にインタビューを行うことができました。「POLYPHIA を聴いてメタルを再発見し、その場で再度メタルに転向したんだ。だから、ギターを弾く人たちに追いつくために、基本的なことをたくさん学ぶ必要があると思ったし、少なくともそうやって自分にハッパをかけて、毎日毎日練習していったんだ」どうぞ!!

DUSK “SPECTRUMS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TRITOP : RISE OF KASSANDRA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TRITOP !!

“This Is The Dream Of My Life And Sincerely I Don’t Care About Money Or Fame. I Am Aware Of Today’s Prog Situation But My Passion For Music And Prog Helps Me a Lot To Overcome The Difficulties.”

DISC REVIEW “RISE OF KASSANDRA”

「眠る時には、FLOWER KINGS と一緒に演奏する夢をよく見たものだよ。これは僕の人生の夢なんだ。お金や名声はどうでもいいと思っている。もちろん、今のプログ世界が置かれた状況はわかっているけど、音楽とプログへの情熱が、この困難を乗り越えるために大いに役立っているんだ」
今や音楽は、ボタン一つでAIでも作れる時代。インスタントなコンテンツや文化に支配された世界は、長時間の鍛錬や思索を必要とするプログレッシブ・ワールドにとって明らかな逆風です。そんな逆境をくつがえすのは、いつだって情熱です。イタリアというプログレッシブの聖地で育まれた TRITOP にとって、音楽はただ追求し、夢を叶えるための場所。
「僕らにはプログの “黄金時代” が残した文化遺産を守りたいという思いもあってね。プログの歴史を作ってきたバンドの足跡をたどりながら、現代化に向けて創意工夫と先見性を加え、さらに自然に生まれ、発展してきた自分のアイデアを共有しようと思っているんだよ」
音楽でヴィンテージとモダンのバランスを取ることは決して容易い仕事ではありません。しかし TRITOP はデビュー・アルバムからその難題をいとも容易く解決してみせました。HAKEN があの21世紀を代表するプログの傑作 “Mountain” で踏破したメタルとプログの稜線。その景観をしっかりと辿りながら、TRITOP は自らの個性である場面転換の妙と豊かな構成力、そして圧倒的な歌唱とメロディの”ハーモニー”を初手から刻んでみせたのです。ハモンドやメロトロン、シンセの力を借りながら。
「プログレッシブ・アイドルの真似をしたいという燃えるような思いは、成長期に発見した新しいプログレッシブ・バンドによって強められたんだ。DREAM THEATER, THE FLOWER KINGS, KAIPA, ANGLAGARD, HAKEN のようなバンドたちだ」
重要なのは、彼らがただ GENESIS や KING CRIMSON、そしてイタリアの英傑たちの車輪の再発明を志してはいないこと。23分の巨大なフィナーレ “The Sacred Law Of Retribution” を聴けば、古の美学はそのままに、ANGLAGARD のダークマターや、DREAM THEATER の名人芸、THE FLOWER KINGS のシンフォニーに HAKEN の現代性、SYMPHONY X のメタル・イズムまで、TRITOP の音楽には限界も境界もないことが伝わります。ただし、見事に完成へと導いたプログレッシブなジクソーパズルで、最も際立つのはそのメロディ。
「僕たちの目標は、複雑なハーモニーやリズムをベースにしながら、素敵でキャッチーなメロディを作ることだった。君が言う通り、STYX はもちろん、GENESIS や DREAM THEATER といったバンドは、曲を聴きやすくするために常に素晴らしいメロディーを作り出しているんだ。そうしたキャッチーと複雑さのコントラストがこの種の音楽を面白くするのだと思う」
逆に言えば今は、例えば DREAM THEATER がグラミーを獲得したように、メロディに輝きさえあればどんなジャンルにもチャンスがある時代だとも言えます。プログにしても、本当にひょんな事から TikTok でヴァイラルを得ることも夢ではありません。少なくとも、TRITOP はその可能性を秘めたバンドでしょう。さらに言えば、MORON POLICE, MOON SAFARI, BAROCK PROJECT のように、メロディの母国日本で認められることは必然のようにも思えます。それほどまでに、ラブリエやトミー・ショウの血脈を受け継ぐ Mattia の紡ぎ出すメロディは雄弁にして至高。燃える朝焼けのような情熱が押し寄せます。
今回弊誌では、TRITOP にインタビューを行うことができました。「日本は70年代以降、あらゆるジャンルの偉大な “音楽の目的地”だ。日本のファンがプログレッシブ・ロックに対して示してきた、そして今も示している大きな尊敬の念は筆舌に尽くしがたいもので、僕たちはその伝統に敬意を表することを本当に望んでいるんだ」どうぞ!!

TRITOP “RISE OF KASSANDRA” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DAWN RAY’D : TO KNOW THE LIGHT】


COVER STORY : DAWN RAY’D “TO KNOW THE LIGHT”

“We Are a Black Metal Band, But Worry Not, We Are Anarchists And Antifascists. We Still Want To Be Part Of This Community.”

TO KNOW THE LIGHT

リーズのステーションハウスは、かつて警察署でした。そのため、今でも警察官と話すためにドアをノックする人が後を絶たないほどです。レコーディング・スタジオとして再利用された多くの古い建物と同様に、この場所の特徴は、新しい機能とうまくクロスオーバーしています。The Stationhouse の場合、いくつかの小部屋が、バンドがギターアンプを置いたり、ボーカルを録音したりするためのアイソレーション・ブースになっています。
Fabian Devlin は、「あの部屋は昔の留置場だったんだろうね」と言います。「僕らからするとかつての卑劣な場所でレコーディングして、今はクリエイティブになれる場所、警察を解体するアイデアを探求できる場所になっているというのは、ちょっと不思議な感じだったね」
Fabien と彼のバンド DAWN RAY’D がかつての警察署で録音した曲は、バンドのサードアルバム “To Know The Light” のオープニング・トラック “The Battle Of Sudden Flame” でした。この曲は、 “豚野郎が何もないのに子供を虐待した” 後に子供の父親が炎で反撃する物語。歌詞によると “分断の間違った側に生まれた” 警官の話。この曲は、レコーディングされた場所で行われていた “ビジネス” に対する考えが明確であり、特に「給料をもらっていた警官たちははみんなくたばれ” という宣言に、彼らの思いが込められています。
バンドのシンガー兼バイオリニストの Simon Barr がこの楽曲を微笑みながら紐解きます。
「そこには素敵なメタファーがあると思うんだ」
すでに DAWN RAY’D に目をつけている人たちにとって、こうした過激さは驚きではないでしょう。2015年に “A Thorn, A Blight EP” で登場して以来、リバプールを拠点とするブラックメタル・トリオ Simon、ギターの Fabian、ドラマーの Matthew は今や、政治的な事柄を扱うバンドの代名詞となり、イギリスのメタル・アンダーグラウンドの新星となっているのですから。”To Know The Light” のリリースを控えた彼らは、その音楽の質と発言力の両方において、英国エクストリーム・ミュージック界で最も話題のバンドのひとつとなっています。

DAWN RAY’D は警察が嫌いで、反ファシスト。資本主義はあらゆる戦争と同じくらい破壊的だと考えています。選挙は結局のところ良い方向にはあまり向かわないという思想から、投票参加しません。王室について彼らがどう考えているかは想像がつくでしょう。つまり、DAWN RAY’D は、最も基本的なレベルでの人権、コミュニティ、平等、自分自身と隣人のために周りの世界をより良くすることとそのための努力のみを信じているのです。彼らは、一度や二度ではなく、何度でも、誇りを持ってアナーキズムを実践していきます。
「アナーキズムとはギリシャ語で “指導者のいない人々” を意味する “anarcho” から来ている」と Simon は説明します。「世界で起こっていることを外から見てみると、とにかくすべてが混沌としているよな。資本主義のもとでは、世界は滅びつつある。これほどカオスな世界はないだろう。僕にとってアナーキーとは、矛盾しているようだけど、秩序、協力、組織、そしてもっと全体的な生き方を意味しているんだ」
Fabian が付け加えます。
「他の誰にも悪い影響を与えない限り、誰もが自分にとって正しい生き方をする権利を持っている。そして、それを少し拡大すると、自分が生きたいように生きられるだけでなく、他の人たちが生きたいように生きられるようにベストを尽くすべきなんだよな。人は皆喜びと幸福に満ちた人生を送るべきで、できるだけ多くの苦労を取り除くべきなんだよ」
煽情的なオープニングと、より激しい音楽的な衝動が示すように、”To Know The Light” は政治的な怒りと同じくらい個人的なテーマを扱ったレコードです。Simon は、人はスローガンに惑わされることなく、最終的なゴールを自身が生きるに値する人生であると認識することだと定めています。それが結局は、すべての人のためになると信じて。
「COVIDでは、アナーコ・ニヒリズムに傾倒したんだ」と Simon は言います。「環境は破壊され、すべてが最悪で、革命も起きないかもしれない。しかし、ただ諦めて人間嫌いや絶望に屈するべきじゃない。酷い現実に対処する方法は、とにかく抵抗すること。抵抗のために抵抗し、尊厳と喜びを見出すことなんだ。それは、この世界が何であるかを見つけ、受け入れ、続けることにつながるからね」

実際、”To Know The Light” は、様々な意味で彼らのこれまでの作品とは一線を画しています。政治的な側面は変わりませんが、以前よりも個人的な傾向を帯びていて、怒りから絶望、そして周囲の闇を根本的に受け入れ、解放と喜びという新たな理解に至るまで、アナーコ・ニヒリズムの旅を辿るような歌詞になっているのです。テーマとなる内容の多くは、怒りと抵抗に根ざしていますが、ポジティブな要素も随所に見受けられます。
DAWN RAY’D はフォーク・ミュージックを、労働者階級の人々の傷や虐待、実生活の物語を記録する方法として定義し、他の方法ではアクセスできないような情報を広める方法と目しています。だからこそ、サウンド面でも彼らは伝統的なフォーク・ミュージックの要素を自分たちの音楽に取り入れていて、特に “Requital” や “Freedom in Retrograde” などの曲ではハーモニーやレイヤーにその傾向が見られます。
アルバムのジャケットは、デモの火の前でシルエットになった人物。”To Know The Light” は、単なる叫びではなく、新しい世界の見方を提示する誠実な作品だと彼らは考えてほしいのです。
「労働者が自分たちの人生を語ることができる方法のひとつがフォーク・ミュージックだ。労働争議、革命家の人生、そして権力者が我々に対して行うあらゆる虐待を記録している。過去と現在の間に隔たりはなく、これは最善の方法で語られる真実の物語なのだ。フォーク・ミュージックは “アコースティック” の代名詞ではなく、僕たちの実際の生活の音楽であり、苦労の結晶なんだ。
女性を残酷に扱い、貧しい人々を苦しめ、有色人種を平気で殺し、虐待する金持ちをかばい、反対意見を押しつぶすような組織を憎むことは議論の余地がなく正しい。警察への反対を正当化する必要はない。それは警察を支持する人たちの責任だ」
最近、英国ではもっぱら、最高権力者の金銭スキャンダル、警察での性的暴行、行方不明の移民の子供たち、不法滞在を許さないと下院で叫ぶ現職議員(Fabian は政治の中心にある “残酷さ” を強調するだけだと言う)、給与と条件についてストライキに入った疲れ切った病院スタッフを非難する政治家など、下水のようなニュースが垂れ流されています。
「絶望の中に身を置くのは簡単だ」と Fabian は言います。「このアルバムのテーマのひとつは、絶望を受け入れ、そこに寄り添い、絶望を通過し、でも絶望感を麻痺してしまわないようにすること。絶望に打ちのめされず、そこから喜びを見いだすべきなんだ。それがアナーキズムなんだよ」

当初、DAWN RAY’D はここまで政治的なことをやるつもりはありませんでした。3人はスクリーモのバンド We Came Out Like Tigers で一緒に演奏し始めましたが、このバンドには政治的な傾向があり、政治活動家が運営するスクワットで、同じような考えのバンドとよく演奏していました。このバンドが終わると、彼らは DAWN RAY’D(19世紀のアナーキスト作家 Voltairine de Cleyre の詩から取った名前)を結成し、Simon の不思議なほど効果的なヴァイオリンをトップに、新しい、ブラックメタルの道を歩み始めたのです。政治的な内容は、ブラックメタルとの関係性により、より顕著になりました。
「ヨーロッパ本土では、ブラックメタルは危険な領域だった。ヨーロッパのスクワットでは、国家社会主義とのつながりのせいで、人々はブラックメタルをチラシに載せないんだ。どのシーンでも同じだよ。極右はとっくの昔に文化利用の重要性に気づいていたんだ。ブラックメタルでも全く同じことが起こった。ノルウェーの数人のティーンエイジャーが、物議をかもすために卍を使い、実際のナチスに食い物にされた。だけど、パンク、スカ、テクノ、民族音楽でそうした連中が処分されたように、このシーンのチンカス連中も追放されるはずさ」と Simon は言います。「だから、俺たちは最初から、”俺たちはブラックメタル・バンドだけど、心配するな、俺たちはアナーキストで反ファシストだ、俺たちはまだこのコミュニティの一員でありたいんだ” とはっきり言わなければならなかったんだ」
続けて、ブラックメタルとアナーキズムの親和性について語ります。
「たしかに、ブラックメタルは伝統的にアナーキストと考えられているシーンではないと思うけど、革命、野性、自由、権威への憎悪といった考え方は、ブラックメタルの文脈の中ですべて納得がいくものなんだ。かつて、ブラックメタルがアナーキズムと相容れないものであったとしても、今は相容れるということだよ(笑)。
ネオナチはソーシャルメディアのコメント欄で僕たちに文句を言うけど、僕たちは右翼的なものを削除するのがとても上手で、彼らはライブで僕らに何か言う勇気はないんだ。それに、僕たちの発言には信じられないようなサポートがある。演奏するすべてのショーでこうしたアイデアについて話し、大きな募金活動を何度も行い、出来うる限り声を上げる僕らを人々評価してくれているようだから。僕たちが受ける憎しみは、僕たちが得るサポートによって圧倒的に覆い隠されるのだよ」
つまり、ブラックメタルは音楽的にも、哲学的にも、革命の最中にあります。
「PANOPTICON や ISKARA のようなバンドが道を切り開き、アナーキズムがこのジャンルにさらに踏み込んでいけるような新しい波が来ているように感じるね。
それに、時代の流れでもある。僕たちは絶望的な時代に生きていて、恐ろしい未来に直面している。どんな政治家も決して何かを解決することはできず、僕たちが信頼できるのは自分自身と自分たちのコミュニティだけだということが、これほどはっきりしたことはないだろうから。僕は、今、音楽を含む人生のあらゆる部分に革命への飢えがあると思っていてね。
ブラックメタルはアナーキズムにとても適している。僕は教会が嫌いだ。白人のキリスト教の礼節が嫌いだ。カトリック帝国の犯罪が嫌いだ。それらの建物が燃えても涙を流さない。メタルの右翼は、実は白人のキリスト教的価値観を支持している。それは、我々アナーキストよりもブラックメタルから分離しているように感じるね」

彼らの精神的ルーツは、MAYHEM や EMPEROR よりも、CRASS や CHUMBAWAMBA のアナーコパンクに近いと言えるのかもしれません。しかし、かえってその折衷性が、このリバプールのバンドのメッセージと影響力を高めています。
「パンクのショーでは僕らはメタル・バンドで一部の人には重すぎるし、ブラックメタルのショーでは政治的すぎて少し面食らう人もいるけど、それを楽しんでくれる人は必ずいる」と Simon は説明します。「そういうやり方が好きなんだ。僕たちは、本当に様々なフェスに出演してきた。マンチェスターで行われた反ファシストのフェスティバルに出演したんだけど、ヘヴィなバンドは僕らだけで、ラッパーやDJが出演していたよ」
逆に言えば、”真の” ブラックメタルでないことが、DAWN RAY’D のアイデンティティだと Simon は言います。MY DYING BRIDE を手がけた Mark Mynett の起用もその恩恵の一つ。
「僕たちに対する批判は、”真の” ブラックメタル・バンドではないというものが多かった。なぜなら、僕たちは反ファシストでありアナーキストだから。でも、”真の” ブラックメタル・バンドでなければならないというプレッシャーも感じていた。ブラックメタルはこうあるべきという他の人たちの考えに訴えかけようとしていたのかもしれない。このアルバムでは、それに逆らうような形で、自分たちの言葉で本当に演奏したいレコードを作ったんだ。ブラックメタルがどうあるべきかではなく、DAWN RAY’D がどうあるべきかでね。より親しみやすくメロディック。狂気のシンセサイザー、クリーン・ボーカル、ハーモニーを強調したアカペラ・ソング、そして大聖堂のパイプ・オルガン…”グロッシー” とでも言うべきだろうか。今回のアルバムは全く違うんだ。このレコードはとても違っていて、より多くの努力と時間とお金をつぎ込んでいるんだ」

政治性はすでに長い間、個人として彼らの中にあったもの。Simon はまず学生の反戦デモに参加し、次にリバプールのDIYパンクやハードコアのライブに行き、そこで音楽と政治の意味をしっかりと結びつけていたのです。そんなライブで手にしたアナーコ集団 CrimethInc のZINEは、彼がすでに信じていたものと多くの共通点がありました。
「そこにはアナーキズムとは何かということが書かれていて、”もしあなたがこれらのことをすでに信じているなら、あなたはすでにアナーキストです” と書いてあったんだ。それが僕にとっての啓示の瞬間だった。物事が間違っていることを知り、世界をより良い場所にしたいと思ったんだよな。すでに学生の抗議活動などにも参加していて、皆が世界をより良い場所にしたいというエネルギーを持っているのだとわかっていた。CrimethInc のZINEは、それに名前をつけただけなんだ」
Fabianにとっても、より若い頃の反抗心が種になっているとはいえ、同じようなことが起こりました。
「若いころはよくスケートボードをやっていたんだ。それは、よく不法侵入して、よく追いかけられたということ。それが、権威が必ずしも正しいとは限らないという考え方につながっているんだ。その後、CrimethInc にハマり、学生のデモに参加するようになったね。アナーキストのブロックを見て、すごいと思ったのを覚えているよ。彼らは僕に新聞を売ろうとしたり、自分たちの奇妙なグループに参加するよう説得したりせず、ただ本当に親切で、協力的で、励ましてくれて、決して見返りを求めない人たちだったからね。思いやりがあって、思慮深くて、みんなよりちょっとだけ張り切っていたんだよ。これからは彼らと一緒にやっていこうと思ったんだ」
そして、BLACK SABBATH のおかげで、メタルは “政治的であることから始まった” と断言する Matt。
「ドイツやスイスなど、かなり裕福な国でも、人々は反発し、自分たちの生活を完全に自分たちのやり方で送り、さらに周りのものをより良くしようと努力している」

環境破壊に使われる機械にダメージを与えたり、フードバンクを運営したり、単に隣人が無事かどうか確認したりと、アナーキストの “反撃” とは実際には様々なことを意味します。
「パンデミックのとき、リバプールでは素晴らしい活動が行われたんだ」とFabianは例を挙げて説明します。「政府は、繁栄するコミュニティの一員であり、私達の住むコミュニティに多大な貢献をしながらも、パンデミックで働くことを許されなかったため国の支援に頼っていた難民を、馬鹿げた、執念深い理由で、街から数マイル離れた場所に移して、本当に隔離するというひどい政策をとっていた。アナーキズムの最も良い例のひとつは、つながりを維持することが直ちに必要であると認識し、対応できること。誰かが車で来て、人々が無事かどうか、法的手続きを行っている人々が必要なサポートにアクセスできるかどうか確かめ、店からどれだけ離れているかを知って、すぐに自転車を用意した。こうやって、実践的で即効性のある組織作りを行っているのは、ただ、優れた人々なんだ。委員会や多額の資金は必要ない。必要なのは、僕たちにできるポジティブな活動なんだよ」
一方で、アナーキストを、一部の人たちはただの愉快犯や破壊者だと考えているようです。
「その通りだ」 と Fabian も認めます。「長い間、無力で底辺にいるように感じられてきた人たちが、破壊を通して自分の持っている力を認識すれば、それは人生においても自分の持っている力を認識する良い方法となる。正直なところ、企業の窓ガラスが割れたところで、誰が気にするの?どうでもよいことだよ。でも、それがきっかけで、職場で上司から搾取されないように組織を作ったり、地域社会に貢献したりと、ポジティブな形で物事を実践できるようになれば、それは素晴らしいことだろ?」
「僕が会った中で、破壊で反撃をやっている人たちは、フードバンクを運営している人たちと同じだよ」と Simon は付け加えました。「彼らは同じなんだ。良いアナーキストと悪いアナーキストは存在しないんだ。僕が知っている限り、違法とされるようなことに携わってきた人たちは、思いやりのあることをやっている人たちでもあるんだ」

バンドの反警察的なスタンスについても、多くの人がいろいろと言うでしょう。
「僕たちが主張しているのは、警察の改革とか、資金の削減とか、規則の変更とかではなく、警察を廃止することなんだ」と Fabian は言います。「今日、警察を廃止すれば、世界はより良くなるのだよ」
それはとても強い主張です。それは、誰かに頭を蹴られていても警察官が止めてくれないという事態を意味します。
「でも、警察が実際にそうしているのを見たことある?たいていは、後から現れるだけだ」Fabian は真剣です。「でも、地域の人たちがお互いに気を配っている例ならある。今、僕たちが座っているこのパブでも、誰かが襲われているのを見たら、みんなその人を助けるためにベストを尽くすだろう。何もしないのは、人間として、コミュニティの一員としての義務を放棄していることになるのだから。多くの場合、人々は互いに助け合うもので、警察がいることは事態を単純化するのではなく、むしろ複雑にしてしまうのではないだろうか?
君の家に泥棒が入ったとき、警察はその犯罪を解決してくれるかい?自分のものは戻ってくる?刑務所で凶悪犯罪はなくなるの?薬物使用はなくなるか?警察は真に凶悪な犯罪を犯した人たちを罰することができるのだろうか?警察は財産と金持ちを守るために存在する。家庭内暴力や性的虐待の被害者、貧しいコミュニティ、有色人種のコミュニティに対する扱いを見れば、警察が正義を実現したり、人々を助けたりするために存在しているのではないことは明らかだろ?」
DAWN RAY’D の面々は、こうした疑問について議論し、自分たちの言動に責任を持つことを喜んでいます。同様に、自分たちの意見に反対する人たちを招き、まず話を聞き、対話をすることも厭いません。
数年前、彼らはあるフェスティバルで、政治的にいかがわしいと思われているバンドと共に出演しました。ファンの中には、なぜ彼らが降板しないのかと疑問を持つ人も。その質問に対して、Fabian は、「文化的空間は争われるものであり、もし我々がその中立の領域から一歩下がっていたら、負けを認めたことになる」と言っています。

彼らは、自分たちの意見に反対する人がいることも当然知っています。何人かの人たちから殺害予告を受けたからです。
「彼らは、すべてのひどいことを言ってきた」 と Matt は疲れ果てて話します。「他の誰かが僕たちを好きにならないように、積極的にコメント爆撃をしたり。トランス、クィア、有色人種など、あらゆる人々が僕らのファンになるのは危険だと思わせようとしたんだ。でも、彼らはずっと残ってくれている」
アメリカでのツアー中、彼らは何度も “撃たれるぞ” と脅され、ある公演では武装した警備員がいたほどでした。
「もちろん、嫌なことだ」と Matt は言いますが、脅しに屈するつもりはありません。「でも、右翼を怒らせるということは、何か正しいことをしているということなんだ。彼らは恐ろしい人たちだ!彼らは人々がより良く生きることを望んでいない。彼らの本性に訴えようとしても無駄だ。アナーキストや反人種差別主義を明確に表明するバンドの数は、本当にあっという間に爆発的に増えたんだ。今、メタル・シーンには素晴らしいバンドが沢山いるんだよ。僕たちの負担も少しは軽減されたよ!(笑)」
最終的に、DAWN RAY’D は世界がより良く、より素敵で、より公平な場所になることを望んでいます。もっとぶっきらぼうかもしれませんが、ENTER SHIKARI とそれほど違いはありません。音楽には多くのメッセージが込められていて、その最大のものは連帯とコミュニティなのですから。私たちは皆、誰かに顔をブーツで踏まれることなく、ただ生きていたいのです。アナーキーとは、彼らがそれを実現するために選んだ名前に過ぎません。
「僕らをアナーキズムと呼ぶ必要はない」と Simon は話します。「これは単なるイデオロギーではないんだ。教義を広めることでも、カルトや政党になることでも、BURZUM のシャツを着た人をライブから追い出す現場警察になることでもない。ちなみに、僕らはそんなことはしたことがない、そんなことをするために、やっているんじゃないからね。ただ、近所の人に声をかけ、地域に密着し、直すべきところを見て、自分で直す。実際にやってみれば、それがとても簡単なことだと驚くはずさ」
Fabian も同意します。
「君の持っている力は、すべてどこかで役に立つ。アナーキストである必要はないけど、今こそ世界をより良い場所にするために戦い始めるべき時なんだ。権力に助けを求めるのをやめて、自分たちでやり始める時なんだ。革命に参加する人は誰でも歓迎される。ねえ、みんな。世界を良くするために、誰かの許可を得る必要はないんだよ」

参考文献: KERRANG! Dawn Ray’d: “You don’t have to ask for permission to make things better”

REDPEPPER:Playing on the dark side: An interview with Dawn Ray’d

RUSH ON ROCK:EXCLUSIVE INTERVIEW: DAWN RAY’D