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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEFECTO : ECHOES OF ISOLATION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICKLAS SONNE OF DEFECTO !!

“Melody is what makes it human. You can feel aggression and emotion through growls and screams, but clean vocals bring vulnerability – and that’s powerful.”

DISC REVIEW “ECHOES OF ISOLATION”

「メタルは常に現実を映し出す鏡であり、同時に現実を超える手段でもある。ヘヴィ・ミュージックは人々にフラストレーションや痛み、そして希望のはけ口を与えてくれるんだ。孤独を感じている人々を結びつけ、自分は一人ではないことを思い出させてくれる。メタルは世界を修復したり、変えることはできないけど、何かリアルなものを感じさせることはできる。そして、きっとそれが力強いスタートとなるんだよ」
痛みを力に。孤独をアートに。複雑を情熱に。DEFECTO は、地元デンマークの名物スモーブローのように、現代に巣食う病巣や難解さを様々な味付けで美味しく料理し、暗い世界におけるメタルのあり方を示してくれます。メタルはありのままの現実を映し出し、その現実を超える力を持つ。世界を変えることはできないけど、希望へ歩み始める最初の一歩への後押しならできる。DEFECTO のメタルは背中を押すメタルなのです。
「バランスが大切なんだよ。メロディと感情が好きだけど、メタルのカオスやテクニカルな面も大好きなんだ。だから、ベースには複雑な部分があっても、表面的には感情的に繋がるような曲を作ろうとしているんだ。メロディアスなボーカル・パートのほとんどは、簡単に追えて、のめり込める。見せびらかすための複雑さではなく、聴くたびにもっと多くのことがわかるようなレイヤーを作り出すことが大切なんだ。僕にとって本当の魔法はそこにあるんだ」
DEFECTO の魔法はまさにスモーブロー的オープン・サンド。その下地であるビートは実に難解で複雑。奇数の海で強烈なグルーヴが繰り広げられますが、重なる具材は実に華やかで、何層にも連なる色彩豊かなメロディとハーモニーを堪能することが可能。そして、その卓越したメロディの訴求力によって、リスナーは現代というメカニカルな暴力の時代に、優しさや寛容さといった人間味を感じ取ることができるのです。
「メロディーは時代を超越するものだとずっと信じてきたからね。曲がどれだけヘヴィで複雑であっても、メロディーこそがその曲を “人間” らしくするものだ。グロウルやスクリームからは攻撃性や感情が感じられるけど、クリーン・ボーカルは脆さや弱さをもたらしてくれる。そして、その両方が揃うことこそパワフルなんだ。メタル・シーンが再び両方の側面を受け入れているのは素晴らしいことだと思うよ。なぜなら、真の感情は美しさと混沌の間のどこかに宿るからね」
“歌”、歌の力が戻ってきたメタル世界において、アグレッションと難解さ、そして弱さと人間味を併せ持つ DEFECTO の音楽はある意味理想的です。そして、その理想を具現化するのが、マルチ・プレイヤーで唯一無二のシンガー、英雄 Nicklas Sonne。彼の怒りと弱さを同様に抱きしめた自由自在な歌声は、”Echoes of Isolation” の闇と光を巡る感情の旅、その葛藤の中に強さと平和を見出します。そう、これは構造と感情が互いを増幅し合い、卓越した技巧をより人間味あふれるものに昇華させ、共感によって研ぎ澄まされた新時代のプログレッシブ・メタル。身を委ねれば美しい傷跡を残す、心に深く刻まれる映画のような旅路。
今回弊誌では、Nicklas Sonne にインタビューを行うことができました。「KING DIAMOND や DIZZY MIZZ LIZZY のようなバンドは、小さな国でも真にユニークなものを生み出せることを証明してくれたね。彼らは誰かを真似しようとはせず、独自のアイデンティティを築き上げた。それは僕にとって非常に刺激的なことだったんだ。DEFECTO も常に同じことを成し遂げたい思っているんだ。つまり、独自のサウンドとメッセージを維持しながら、デンマークのメタルを国際的に代表することだよ」Michael Romeo と Russell Allen を一人二役でこなせる奇跡。今年リリースされた Nicklas のソロ作品も素晴らしいですよ。どうぞ!!

DEFECTO “ECHOES OF ISOLATION” : 10/10

INTERVIEW WITH NICKLAS SONNE

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【NICKLAS】: I grew up surrounded by all kinds of music – everything from classical to pop and heavy metal. But the moment I discovered bands like Metallica, Judas Priest, Alice Cooper, and later Symphony X and Dream Theater, something clicked. I was drawn to powerful melodies, big emotions, and the kind of musicianship that told a story without words. That combination of raw energy and deep feeling is what shaped me the most.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【NICKLAS】: クラシックからポップス、メタルまで、あらゆる種類の音楽に囲まれて育ったんだ。でも、METALLICA, JUDAS PRIEST, Alice Cooper、そして後に SYMPHONY X や DREAM THEATER といったバンドを発見した瞬間、何かがカチッとはまったんだよね。力強いメロディー、大きな感情、そして言葉を使わずに物語を語るような音楽性に惹かれたんだ。そのむき出しのエネルギーと深い感情の組み合わせこそが、僕を形成した最大の要因となったね。

Q2: Your technique and singing skills are among the best in the metal world, how did you acquire them? Who were your heroes back then?

【NICKLAS】: Thank you so much! That really means a lot. I’ve always been obsessed with learning and improving – not just as a singer or guitarist, but as a musician overall. I started playing guitar when I was around 11, and I spent countless hours every day practicing, recording, and studying my favorite artists. I started singing when I was 18, not until then did I dare venture towards that. For me, singing has always been very personal and “naked”, and it took me a great deal of courage to start trying to sing and record my own voice.
Some of my biggest heroes were and are Russell Allen, James Hetfield and Dio. Each of them had something unique – power, emotion, or theatricality – and I tried to learn a little from all of them while finding my own sound. I have always been inspired by musical singers and opera singers too – amazing the ability they have to tell a story with their voice.

Q2: DEFECTO のテクニックとあなたの歌唱力はメタル世界でもトップクラスだと思いますが、そうしたスキルをどのようにして身につけたのですか?当時のヒーローは誰でしたか?

【NICKLAS】: 本当にありがとう!とても嬉しいよ。僕は常に学び、向上することに夢中だったんだ。シンガーやギタリストとしてだけでなく、ミュージシャンとしてね。僕は11歳くらいからギターを始め、毎日何時間もかけて練習し、レコーディングし、好きなアーティストを研究していたんだ。18歳で歌い始めたけど、その時になって初めて、歌に挑戦する勇気が出たんだよ。僕にとって、歌うことは常にとても個人的で “裸” なものであり、自分の声で歌い、レコーディングを始めるのには、かなりの勇気が必要だったからね。
僕のヒーローの中には、Russell Allen, James Hetfield, Dio がいる。彼らは皆、力強さ、感情、演劇性など、何か独特なものを持っていたからね。僕は自分自身のサウンドを見つけながら、彼ら全員から少しずつ学ぼうとしていったんだ。ミュージカル歌手やオペラ歌手からも常にインスピレーションを受けてきたよ。彼らが声で物語を伝える能力には驚かされるばかりだ。

Q3: Speaking of Denmark, there are many great bands, though not many, such as King Diamond, Mnemic, Dizzy Mizz Lizzy, Volbeat, and Vola. How do you draw inspiration from these predecessors and the scene?

【NICKLAS】: Denmark has a small but very passionate scene, and I think that’s part of what makes it special. Bands like King Diamond and Dizzy Mizz Lizzy showed that you can create something truly unique even from a small country. They weren’t trying to copy anyone – they built their own identity, and that’s very inspiring to me.
Defecto has always wanted to do the same – to represent Danish metal internationally while keeping our own sound and message.

Q3: デンマークといえば、KING DIAMOND, MNEMIC, DIZZY MIZZ LIZZY, VOLA など、数は多くありませんが素晴らしいバンドがたくさんいます。こうした先駆者やシーンからはどのようなインスピレーションを得ていますか?

【NICKLAS】: デンマークには小規模ながらも非常に情熱的なシーンがあり、それがデンマークを特別なものにしている理由の一つだと思う。KING DIAMOND や DIZZY MIZZ LIZZY のようなバンドは、小さな国でも真にユニークなものを生み出せることを証明してくれたね。彼らは誰かを真似しようとはせず、独自のアイデンティティを築き上げた。それは僕にとって非常に刺激的なことだったんだ。DEFECTO も常に同じことを成し遂げたい思っているんだ。つまり、独自のサウンドとメッセージを維持しながら、デンマークのメタルを国際的に代表することだよ 。

Q4: What’s great about you is that what appears to be symphonic, ultra-melodic, metal-like metal is actually a labyrinth of riffs and beats, and the music is full of intelligence! There are very few bands in the world that do that! Why did you choose to do it that way?

【NICKLAS】: That’s such a kind compliment – thank you! For us, it’s about balance. We love melody and emotion, but we also love the chaos and technical side of metal. So we try to build songs that are complex underneath but still connect emotionally on the surface and in most melodic vocal parts are easy to follow and get into.
It’s not complexity for the sake of showing off – it’s about creating layers that reveal more every time you listen. That’s where the real magic is for me.

Q4: DEFECTO の素晴らしいところは、一見シンフォニックでメロディアスなメタルっぽいメタルのように見えますが、実はリフとビートの迷宮で、音楽がインテリジェンスに満ちている点でしょうね!世界でもそんなことを成し遂げているバンドはほんの一握りですよ。

【NICKLAS】: とても嬉しい言葉をありがとう!僕たちにとっては、バランスが大切なんだよ。メロディと感情が好きだけど、メタルのカオスやテクニカルな面も大好きなんだ。だから、ベースには複雑な部分があっても、表面的には感情的に繋がるような曲を作ろうとしているんだ。
メロディアスなボーカル・パートのほとんどは、簡単に追えて、のめり込める。見せびらかすための複雑さではなく、聴くたびにもっと多くのことがわかるようなレイヤーを作り出すことが大切なんだ。僕にとって本当の魔法はそこにあるんだ。

Q5: Complexity meets passion. Your methodology is different from the typical prog metal of Dream Theater, Symphony X, Gojira, BTBAM, etc. How do you feel about being called prog metal?

【NICKLAS】: I think it’s fair, but I also think Defecto is a bit of a hybrid. We have the progressive elements, yes – but our heart is very melodic and groovy. We don’t write long songs just to be “prog”; we write them because that’s where that particular story takes us.
If people call us progressive because we explore new sounds and structures, that’s a compliment. But at the core, we just write what feels honest.

Q5: まさに複雑さと情熱が出会う DEFECTO の手法は、DREAM THEATER, SYMPHONY X, GOJIRA, BTBAM といった典型的なプログ・メタルとは異なりますが、そう呼ばれることについてどう思っていますか?

【NICKLAS】: それは妥当だと思うけど、DEFECTO はちょっとハイブリッドなところもあると思っていてね。確かにプログレッシブな要素もあるけど、僕たちの心は非常にメロディアスでグルーヴィーだ。ただ “プログレ” であるために長い曲を書いているわけではないんだよ。それぞれのストーリーが僕たちを導く場所がそこだから書いているんだ。
新しいサウンドや構成を探求しているからプログレッシブだと言われるなら、それはたしかに褒め言葉だよ。でも本質的には、僕たちはただ正直に感じられるものを書いているだけなんだ。

Q6: As evidenced by Dream Theater’s Grammy and Ozzy Osbourne’s “Mama I’m Coming Home,” it seems that “singing,” sing-alongs, and melodies have returned to the world of heavy metal in recent years. Of course, Nicklas can sing everything from high tones to growls, but how do you feel about the power of clean vocals returning to metal?

【NICKLAS】: I love it. I’ve always believed that melody is timeless. No matter how heavy or complex a song is, melody is what makes it human. You can feel aggression and emotion through growls and screams, but clean vocals bring vulnerability – and that’s powerful.
I think it’s amazing that the metal scene is embracing both sides again – because real emotion lives somewhere between the beauty and the chaos.

Q6: DREAM THEATER のグラミー賞受賞やオジー・オズボーンの “Mama, I’m Coming Home” からもわかるように、近年メタルの世界に “歌”、一緒に歌うこと、そしてメロディーが戻ってきたように思えます。
Nicklas はハイトーンからグロウルまで何でも自在に歌えますが、メタルにクリーン・ボーカルが戻ってきたことの力についてどう思っていますか?

【NICKLAS】: 僕はとても気に入っているよ。メロディーは時代を超越するものだとずっと信じてきたからね。曲がどれだけヘヴィで複雑であっても、メロディーこそがその曲を “人間” らしくするものだ。グロウルやスクリームからは攻撃性や感情が感じられるけど、クリーン・ボーカルは脆さや弱さをもたらしてくれる。そして、その両方が揃うことこそパワフルなんだ。
メタル・シーンが再び両方の側面を受け入れているのは素晴らしいことだと思うよ。なぜなら、真の感情は美しさと混沌の間のどこかに宿るからね。

Q7: “Echoes of Isolation” is a great album that turns various emotional pains and struggles into strength, and the music allows the listener to experience this concept, would you agree?

【NICKLAS】: Absolutely. That’s exactly what we wanted to achieve. Echoes of Isolation explores mental illness – depression, OCD, PTSD, paranoia, schizophrenia, and more – and how those struggles shape your view of the world.
It’s an emotional journey through darkness and light, but it’s also about finding strength and peace within it. If listeners feel understood or less alone because of this album, then we’ve succeeded.

Q7: “Echoes of Isolation” は、本当に素晴らしいアルバムですね!様々な感情的な痛みや葛藤を強さに変えていくストーリー、そして音楽がリスナーにそのコンセプトを追体験させてくれますね?

【NICKLAS】: その通りだよ!まさにそれが僕たちがやりたかったことなんだ。”Echoes of Isolation” は、うつ病、強迫性障害、PTSD、パラノイア、統合失調症などの精神疾患と、それらの葛藤が人の世界観をどのように形作るかを探求しているんだ。
これは闇と光を巡る感情の旅だけど、同時にその中で強さと平和を見つけることでもある。もしリスナーがこのアルバムを通して理解されたと感じたり、孤独感が和らいだと感じたりするなら、僕たちの挑戦は成功したと言えるだろうね。

Q8: In the 2020s, the world is in a dark time of war, pandemics, division, oppression, violence and falsehoods. What can heavy metal do in such a dark world?

【NICKLAS】: Metal has always been a mirror of reality – but it’s also a way to rise above it. I think heavy music gives people an outlet for frustration, pain, and hope. It unites people who feel disconnected and reminds them that they’re not alone.
We can’t fix the world, but we can make people feel something real – and that’s a powerful start.

Q8: 2020年代、世界は戦争、パンデミック、分断、抑圧、暴力、デマの拡散といった暗い時代にあります。このような暗い世界で、ヘヴィ・メタルには何ができるでしょうか?

【NICKLAS】: メタルは常に現実を映し出す鏡であり、同時に現実を超える手段でもある。ヘヴィ・ミュージックは人々にフラストレーションや痛み、そして希望のはけ口を与えてくれるんだ。孤独を感じている人々を結びつけ、自分は一人ではないことを思い出させてくれる。
メタルは世界を修復したり、変えることはできないけど、何かリアルなものを感じさせることはできる。そして、きっとそれが力強いスタートとなるんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED NICKLAS’S LIFE!!

Metallica “Black Album”

Dream Theater “Train of Thought”

Symphony X “Iconoclast”

Judas Priest “Painkiller”

Alice Cooper “The Last Temptation”

MESSAGE FOR JAPAN

Japan has an incredible culture – the mix of tradition, art, and modern creativity is fascinating. I grew up with Japanese games and anime, and I’ve always admired the passion and precision in Japanese music.
To our fans in Japan: thank you for your support and for always showing such love for music. We hope to come play for you again very soon – and when we do, we’ll bring the full energy of Echoes of Isolation with us.
Arigatou gozaimasu!

日本には素晴らしい文化があり、伝統、芸術、そして現代的な創造性が融合しているところが魅力的だね。僕は日本のゲームやアニメで育ち、日本の音楽の情熱と精密さにいつも感心しているんだ。
いつもサポートしてくれて、音楽への愛情を示してくれてありがとう。またすぐにみんなの前で演奏できることを願っているよ。その時は、”Echoes of Isolation” のエネルギーを全開で届けるね。ありがとうございます!

NICKLAS SONNE

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NYTT LAND : SONGS OF THE SHAMAN】 JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANATOLY PAKHALENKO OF NYTT LAND !!

“Throat singing is a real treasure, the heritage of our indigenous peoples. We use throat singing in our music quite actively, as it is an incredible magic and it is our connection with our ancestors.”

DISC REVIEW “SONGS OF SHAMAN”

「私たちにとってシベリアで暮らすのは、世界のどの地域よりもずっと簡単なんだ。 ここは私たちの祖国であり、祖先の土地であり、自分たちのルーツを大切にして、伝統を守ることが重要なんだよ。 私たちはアジア人で、ライフスタイルの面では非常に保守的だ。 フランス、ノルウェー、セルビアなど、他の国や大都市への移住を何度も勧められよ。でも、私たちはそんなことはしたくない。 どこまでも続く美しい草原、山々、森といった生まれ育った土地を離れることは、私たちにとって大きなストレスになる。 ここが私たちの人生のすべてであり、私たちが生まれた場所であり、先祖が生まれた場所であり、私たちの一部であり、だからこそ私たちはここに住んでいるのだよ」
シベリアの大地に深く根を張る NYTT LAND の作品は、2021年の “Ritual” を皮切りに、北欧のフォーク・ミュージックからシベリアの伝統をより深く表現するダークな音楽へと徐々に移行し、最新アルバム “Songs Of The Shaman” で頂点を極めました。
満州・ツングース民族のシャーマニズム的な歌や呪文を、彼ら自身の言語と伝統楽器を用いて解釈することで NYTT LAND は自らの古代文化を守り、より幅広いオーディエンスに届けることを目指しています。NYTT LAND の音楽を聴けば、かつてシベリアに広がっていた風景や営みが心に深く刻まれるような感覚を覚えます。それは、まさに太古の昔からもたらされた音のささやき。 これはもはや、地球上で最も古い文化を巡る魅力的な旅。そして、”Songs Of The Shaman” でその旅路の鮮やかさは一段と際立っています。
「ホーミーはシベリアとモンゴルの先住民の伝統的な歌唱法なんだ。こうした伝統的な歌い方は、世界中のどこを探しても見つからない。もし誰かが、バイキングの間でのどを使った歌い方があったという話をしたら、その人の顔にツバを吐いてもいいだろう。現在では、喉歌をヨーロッパ民族のものとすることが非常にポピュラーになっているけど、これはまったくのナンセンスだよ。喉歌は、先住民族の遺産であり、真の宝なんだ。私たちが非常によく喉歌を使うのは、喉歌が信じられないような魔法であり、祖先とのつながりでもあるからなんだ」
伝統的なシャーマニズムの歌と呪文を解釈した NYTT LAND の音楽。すべての曲は原語で録音され、喉歌や太鼓などの非常に古い音楽技法が用いられています。そうして彼らは、イントネーションとリズムからも生まれる魔法の力を逃さないようにしています。降霊術、呪文、祝福…古代の魔法は、慎重に選択され、有害な呪いは意図的に排除されていきました。NYTT LANDは聴く者すべてを、精霊たちが今も支配し、神々でさえも恐れる時空の秘境、音楽の旅へと誘います。
そうしてこの音の旅は、原始的な人間性に対する理解を何よりも深めてくれるはずです。真っ暗な草原の夜空の下、焚き火のそばに座り、シャーマンが祖先、星々、そこに宿る神々、そしてこの極寒の地を形作る岩や川についての物語を紡ぐのをただ聞いている。そしてシャーマンが炎の中で喉歌を歌い踊る姿に目を奪われる…そこに広がるのは民俗神話の荘厳なる世界。
そう、NYTT LAND こそ古の草原を旅する真の音楽遊牧民。そしてもちろん、この原始と神話、古代の再来は、NYTT LAND が祖先、土地、ルーツと伝統を心から大切にしてきたからこそ成り立っているのです。
今回弊誌では、Anatoly Pakhalenko にインタビューを行うことができました。妻 Natalia とのユニット。「私たちはメタルを演奏するのではなく、伝統的な儀式のフォークロアとその音楽における解釈を研究しているんだ。 そう、私たちの聴衆の一部は間違いなくメタル・ヘッズで、それはクールなことだ。 これは、私たちの音楽がすべての人の魂に触れ、ある種の感情を呼び起こすことを意味している」 ARKONA との来日も決定。どうぞ!!

NYTT LAND “SONGS OF THE SHAMAN” : 10/10

INTERVIEW WITH ANATOLY PAKHALENKO

Q1: In 2021, when we interviewed you at KIBERSPASSK, you said you were a big fan of Babymetal. And Finally, you have decided to come to Japan, their hometown! How do you feel now? Is there somewhere you want to go?

【ANATOLY】: Look, we’re fans of their music, but not the girls themselves. Moreover, we are no longer actively following their work, and in general, the world modern music scene. We have switched more to traditional music and it would probably be interesting to watch the performance of musicians performing traditional Japanese music on folk instruments.
Japan is interesting to us primarily because of its history and culture, both traditional and, of course, popular modern. And we are looking forward to this tour to get to know all this personally, and not just via the Internet.

Q1: 2021年、KIBERSPASSK でインタビューしたとき、あなたは Babymetal の大ファンだと言っていましたね。 そしてついに、彼女たちの故郷である日本に来ることになりました!

【ANATOLY】: 私たちは彼女たちの音楽のファンだけど、彼女たち自身のファンではないんだよ。しかも、彼女たちの作品や、一般的に世界の現代音楽シーンを積極的に追いかけることはもうしていないんだ。 私たちはどちらかというと伝統的な音楽に切り替えていて、むしろ日本の伝統的な音楽を民族楽器で演奏するミュージシャンのパフォーマンスを見るほうがおそらく面白いだろうね。
日本が私たちにとって興味深いのは、主にその歴史と文化、伝統的なものと、そしてもちろんポピュラーな現代音楽の両方があるからだ。そして、インターネットを通じてだけでなく、実際にこれらすべてを知ることができるこのツアーを楽しみにしているんだよ。

Q2: You are also playing with Arkona from Russia. Are you acquainted with them? And how do you feel about their music?

【ANATOLY】: Yes, we know the guys, and we’ve even played shows together a few times. The guys themselves are good, it’s always a pleasure to meet them. As for their music, they now have a big emphasis on black metal, and I am absolutely far from this genre, so I can hardly evaluate Arkona’s work in any way. Let the fans and journalists do it.

Q2: 同じロシアの ARKONA と共演します。彼らと面識はありますか? また、彼らの音楽についてどう感じていますか?

【ANATOLY】: そうだね、私たちは彼らのことを知っているし、何度か一緒にショーをやったこともある。彼ら自身は良い人たちで、彼らに会うのはいつも楽しい。 ARKONA の音楽については、現在彼らはブラック・メタルに大きな重点を置いているけど、我々はこのジャンルからは全くかけ離れているのから、その作品を評価することはほとんどできないよ。それはファンやジャーナリストに任せておけばいい。

Q3: What was the meaning behind the name “Nytt Land” when you chose it?

【ANATOLY】: We urgently needed to come up with a name for the project for which we recorded the album. And since the first albums focused on Scandinavian music and mythology, we sat down at the translator and chose a title in Norwegian. That’s how the “New Land” Nytt Land appeared.
It was in the middle of 2013, when we wrote our first album and were preparing it for release. Then there was an urgent need for the name of our project.

Q3: NYTT LAND という名前にはどんな意味が込められているのですか?

【ANATOLY】: あの時私たちは、アルバムをレコーディングするプロジェクトの名前を緊急に考える必要があった。 最初のアルバムはスカンジナビアの音楽と神話に焦点を当てたものだったので、私たちは翻訳機の前に座り、ノルウェー語のタイトルを選んでいったんだ。こうして “新天地” Nytt Land が登場した。
2013年の半ば、ファースト・アルバムを書き上げ、リリースの準備をしていた時だった。 そのとき、私たちのプロジェクトの名前が緊急に必要になったんだよ 。

Q4: Your music is heavily inspired by the nature and history of your native Siberia, and you even include the cawing of crows and the rustling of forests on your records. At first glance, it seems like it would be very difficult to live in Siberia, but what is it about Siberia that attracts you?

【ANATOLY】: Well, it’s much easier for us to live in Siberia than in any other part of the world. This is our homeland, the land of our ancestors, and it is important to hold on to our roots and preserve the tradition. We are Asians and we are very conservative in terms of lifestyle. We were repeatedly offered to move to a big city, to other countries – to France, to Norway, to Serbia. But we don’t want to do that. It would be a huge stress for us to leave our native habitat – our beautiful endless steppes, mountains, forests. This is all our life, the place where we were born, where our ancestors were born, is a part of us, and that’s why we live here.

Q4: あなたの音楽は、生まれ故郷であるシベリアの自然や歴史に大きくインスパイアされており、レコードにはカラスの鳴き声や森のざわめきまで入っていますね。 一見、シベリアで暮らすのは大変そうですが、シベリアのどういったところに惹かれるのですか?

【ANATOLY】: まあ、私たちにとってシベリアで暮らすのは、世界のどの地域よりもずっと簡単なんだ。 ここは私たちの祖国であり、祖先の土地であり、自分たちのルーツを大切にして、伝統を守ることが重要なんだよ。
私たちはアジア人で、ライフスタイルの面では非常に保守的だ。 フランス、ノルウェー、セルビアなど、他の国や大都市への移住を何度も勧められよ。でも、私たちはそんなことはしたくない。 どこまでも続く美しい草原、山々、森といった生まれ育った土地を離れることは、私たちにとって大きなストレスになる。 ここが私たちの人生のすべてであり、私たちが生まれた場所であり、先祖が生まれた場所であり、私たちの一部であり、だからこそ私たちはここに住んでいるのだよ。

Q5: Your throat singing is one of the hallmarks of Nytt Land, would you say this is part of the traditional Siberian culture?

【ANATOLY】: Throat singing is the traditional type of singing of the indigenous peoples of Siberia and Mongolia. You will not find this type of singing anywhere else in the world in the tradition, and if someone tells you about throat singing among the Vikings, well, you can safely spit in that person’s face. It has now become very popular to attribute throat singing to European peoples, but this is complete nonsense, since in this case a real regional tradition should have been preserved, but this is not the case.
Throat singing is a real treasure, the heritage of our indigenous peoples. We use throat singing in our music quite actively, as it is an incredible magic and it is our connection with our ancestors.

Q5: 喉歌、ホーミーは NYTT LAND の特徴のひとつですが、これはシベリアの伝統文化の一部だと言えますか?

【ANATOLY】: ホーミーはシベリアとモンゴルの先住民の伝統的な歌唱法なんだ。こうした伝統的な歌い方は、世界中のどこを探しても見つからない。もし誰かが、バイキングの間でのどを使った歌い方があったという話をしたら、その人の顔にツバを吐いてもいいだろう。現在では、喉歌をヨーロッパ民族のものとすることが非常にポピュラーになっているけど、これはまったくのナンセンスだよ。
喉歌は、先住民族の遺産であり、真の宝なんだ。私たちが非常によく喉歌を使うのは、喉歌が信じられないような魔法であり、祖先とのつながりでもあるからなんだ。

Q6: On the other hand, why did you incorporate traditional European instruments like Norse mythology and the Kantele into your music?

【ANATOLY】: Well, as I mentioned earlier, we started with Scandinavian mythology as the main key to creativity. Now, almost 13 years after we started working on Nytt Land, I can say that it was a cool base that taught us a lot. And now, having completely switched to the development of the traditional ritual folklore of the indigenous peoples of Siberia, we still return from time to time to the “Scandinavian” base that we passed through in the initial stages of our creative journey. Natalia and I are historians by education, and during our university years we studied Scandinavian mythology and the Old Norse language a lot. And it was from there that the Nytt Land band was born.

Q6: その一方で、北欧神話やカンテレといったヨーロッパの伝統楽器も音楽に取り入れたのはなぜですか?

【ANATOLY】: さて、先に述べたように、私たちはスカンジナビアの神話を創造性の主な鍵としてスタートしたんだ。NYTT LAND の制作を始めてから約13年経った今、それは私たちに多くのことを教えてくれたクールな下地だったと言える。
そして今、私たちはシベリアの先住民の伝統的な儀式のフォークロアの開発に完全に切り替えたのだけど、創作の旅の初期段階で通過した “スカンジナビア” ベースに今でも時折戻ってくる。Natalia と私は歴史学者で、大学時代にはスカンジナビアの神話と古ノルド語をよく勉強した。 そして、そこから NYTT LAND が生まれたからね。

Q7: As the breakthrough of Bloodywood shows, bands that incorporate the traditional music and culture of the place where they grew up into metal have been gaining popularity in recent years. In a sense, has metal truly been liberated through the world?

【ANATOLY】: It’s hard for me to judge that. We don’t play metal, we study traditional ritual folklore and its interpretation in our music. Yes, a part of our audience is undoubtedly metalheads, and that’s cool. This means that our music touches the souls of all people and evokes certain emotions.
Well, folklore is a powerful base and not only if we are talking about some extreme musical styles. Please note that elements of traditional music can be heard everywhere – in electronic music, metal, and hip-hop.
Nowadays, it’s possible that it’s gaining more and more momentum, and it’s cool, too, which means the music industry is moving in the right direction.

Q7: BLOODYWOOD の躍進が示すように、育った土地の伝統音楽や文化をメタルに取り入れるバンドが近年人気を集めています。
NYTT LAND のダーク・フォークを広義のメタルと解釈する時、ある意味、メタルは本当に世界中へと解放されたのでしょうか?

【ANATOLY】: それを判断するのは私には難しい。 私たちはメタルを演奏するのではなく、伝統的な儀式のフォークロアとその音楽における解釈を研究しているんだ。 そう、私たちの聴衆の一部は間違いなくメタル・ヘッズで、それはクールなことだ。 これは、私たちの音楽がすべての人の魂に触れ、ある種の感情を呼び起こすことを意味している。
まあ、フォークロアは強力なベースであり、エクストリームな音楽スタイルについて話す場合だけではない。 伝統音楽の要素は、エレクトロニック・ミュージック、メタル、ヒップホップなど、あらゆるところで聴くことができることに留意してほしいな。
今では、それがますます勢いを増している可能性があるし、クールでもある、 つまり、音楽業界が正しい方向に向かっているということだよ。

Q8: The world has changed dramatically since we interviewed you in 2021, divisions are growing, and your country is at war. What can metal do in such a dark world?

【ANATOLY】: First of all, it’s about staying out of politics. That’s the most important thing.
Music, like any kind of art, is a very big force, and say, «big power, it’s a big responsibility”. It is important to understand this.
From time to time, we encounter politicization in our industry. This applies to some festivals, but it just speaks to the chauvinism of the organizers and their low level of intelligence when they let politics into their organization. Real art has always, at all times, been fundamentally kept out of politics and various moods, and this is precisely its value. Music should unite, especially in the darkest times.

Q8: 2021年のインタビュー以来、世界は劇的に変化し、分断は拡大し、あなたの国は戦争状態にあります。そんな暗い世界で音楽やメタルには何ができるのでしょうか?

【ANATOLY】: まず第一に、政治に関わらないことだ。 それが最も重要なことだと思う。
音楽は、他の種類の芸術と同様に、非常に大きな力であり、”大きな力、それは大きな責任だ” と…このことを理解することが重要だ。
時折、私たちの音楽業界では政治化が起こる。 これはいくつかのフェスにも当てはまるけど、それは主催者の排外主義と、政治を組織に取り込む彼らの知性の低さを物語っているに過ぎない。 本物の芸術は、いつの時代も、基本的に政治やさまざまなムードから遠ざけられてきた。だからこそ、その価値が保てるんだ。そしてもちろん、音楽は団結するべきだ…特に暗い時代には。

ANATOLY’S RECENT FIVE FAVORITE ALBUMS !!

Queen “The Works”

Nytt Land “Ritual”

Johnny Cash “American III”

Eagles “Hotel California”

From The Land “Stolen Season pt.I”

MESSAGE FOR JAPAN

Our family cars have large Intelligence Corps symbol stickers on the rear windows from the TV series Attack onTitans. And on Natalia’s and my phones, the ringtone is the soundtrack of the opening of Attack on Titans season 2. So yes, we are big fans of this series. I like Hideo Kojima’s games. Well, our son is a fan of Jojo’s Incredible Adventure. So modern Japanese pop culture is also a small part of our lives.

我が家の車のリアガラスには、TVシリーズ “進撃の巨人” の調査兵団シンボルのステッカーが大きく貼られている。そしてナタリアと私の携帯電話の着信音は、”進撃の巨人” シーズン2のオープニングのサウンドトラックだ。 そう、私たちはこのシリーズの大ファンなのだ。 小島秀夫監督のゲームが好きなんだ。 息子は “ジョジョの奇妙な冒険” のファンでもある。 だから、現代の日本のポップ・カルチャーも私たちの生活の一部なんだ。

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COVER STORY 【STRAPPING YOUNG LAD : 30TH ANNIVERSARY】


COVER STORY : STRAPPING YOUNG LAD “30TH ANNIVERSARY”

“Obnoxious music with super fast double kick, lots of random explosions and a bald guy screaming his balls off over top. Stress music made for catharsis.”

STRAPPING YOUNG LAD

Devin Townsend は、VAI の1993年のアルバム “Sex & Religion” で世に出ました。二人はその後、それぞれ別々に大成功を収めていますが、Steve Vai は Devin との仕事の思い出を今でも大切にしています。
「Devin は全身全霊で音楽に打ち込んでいたね。彼と一緒にいて、初めて彼の才能が自分の音楽にどう役立つかに気づいたんだ。彼は素晴らしいシンガーだった。彼はどんな歌でも歌えるんだ。そして本当に面白くて、奇抜で、ワイルドで、そういうところが大好きだった。でも、当時は彼が真にクリエイティブな人間だとは気づいていなかった。VAI は私が仕切っていたからね。でも、彼は私のバンドで活動して、何かを学んだんだろう。一度ツールを手に入れると、爆発的に成長した。とにかく表現したかったんだ」
Vai は Devin が作り上げた STRAPPING YOUNG LAD の2005年のアルバム “Alien” がお気に入りだと明かし、そのメロディアスで圧倒的な内容は “研究” に値するとまで称賛しています。そして誰がその言葉に異論を唱えられるでしょう?”Alien” は不健康な状況下で制作された(Devin が双極性障害の薬を断薬していた)にもかかわらず、メタル史に残る傑作となりました。
「Devin についてもう一つ言わせてくれ。彼の音楽は、どんなに激しいものでも、邪悪なものではない。その奥には、光、変革を求める、輝かしい欲求がある。彼の創作活動をずっと見てきた。彼の音楽が、彼にとってカタルシス的なプロセスとなり、自分自身の心に安らぎと心地よさを見出していく過程を目の当たりにしてきたんだ。STRAPPING YOUNG LAD の “Alien” は研究する価値がある。あの作品は、これまで聴いた中でも、これほどまでに強烈な作品はなかったよ」

STRAPPING YOUNG LAD は、Devin Townsend の作品群の中でも特別な位置を占めています。このバンドのヘヴィ・メタル的文脈を構成するインダストリアル、グルーヴ・メタル、デスメタル、ノイズの要素は、同時期の Devin の他のソロ作品にも存在し、同様に、ザッパ以降のシアトリカルでパノラマ的なシネマティック・プログは、STRAPPING YOUNG LAD のすべてのレコードに深く織り込まれています。そのため、サウンド面では意外にもそれほど深い差別化はないようにも思えますが、STRAPPING YOUNG LAD を信奉するファンは未だに絶えません。
もちろん、このオールスターバンドのメンバーが Jed Simon(ギター、当時はインダストリアル・グループFRONTLINE ASSEMBLY に在籍)、Byron Stroud(ベース、2004年から2012年までは FEAR FACTORY にフルタイムで参加)、Gene Hoglan(史上最高のエクストリーム・メタル・ドラマー)だったことはプラスに働きました。しかし、それ以上にこのバンドは Devin Townsend の血と汗と涙と才能と怒りと双極性障害、そのすべてを凝縮していたからこそ特別だったのです。
「OCEAN MACHINE の “The Death of Music” はまるでファンタジーの世界みたいだ。行くべき場所があるような気分になれる。うまくいけば、他の人も、あの音の逃避行を作ろうとしていた頃の僕と同じ精神状態を、少なくとも訪れることができる。”The Death of Music” は、Steve Vai のレコードを制作した直後に生まれた曲で、音楽業界に完全に幻滅していたんだ。何もかもが自分の思い通りにはならなかった。それから僕はRelativity recordsと契約していたけど、不運にも “Noisescapes” というプロジェクトに携わることになった。結局、このレコードは未完成に終わり、完成した作品もレーベルから “統合失調症的” すぎるという理由で却下されたんだ。このレコードは STRAPPING YOUNG LAD と OCEAN MACHINE の起源でその二つが一つにまとまっていて、レーベルはそれが混乱を生むと感じていた)。僕は他のレーベルにもデモ音源を依頼しようとしたけど、最終的には、アプローチしたすべての関係者が同じ意見だった。
それで僕は THE WILDHEARTS の友人たちのギタリストとしてイギリスのバーミンガムに移り、そこでよりアグレッシブな楽曲に注力し始めたんだ。だから、このファースト・アルバムの曲はイギリス滞在中に書かれたもの。”The Rainy Season”, “SYL” をはじめ、このアルバムの核となる曲は、SUICIDAL TENDENCIES とのヨーロッパ・ツアー中に書かれていった。
当時は非常に不安定な時期で、当時の僕の心境を最も端的に反映したのが、この奇妙で怒りに満ちた、非常に “レッド” なアルバムだった。CDのジャケットに写っているのは僕のお尻だよ。悪くないでしょ?肘を二つくっつけたみたいに見えるって言われたことがある。まあいいか。プロダクションは不安定で、ソングライティングにもかなりの浮き沈みがあったけど、僕の活動をまず紹介する作品としては、当時の僕をよく表していると思う」

SYL 名義での最初のアルバム “Heavy as a Really Heavy Thing” は、Devin が Vai のバンドに在籍していた直後にリリースされました。楽曲制作からツアーに至るまで、メジャー・レーベルの不手際への不満がこの作品を、初期のインダストリアル・メタル、デスメタル、スラッシュといった、よりエクストリームな領域へと導いたと言われています。Devin はその後、このアルバムを痛烈に批判するようになりましたが、実際には彼が言う以上に力強い作品でしょう。それは後期の作品にある映画的なスケール感がまだ未熟で、よりダーティーでザラザラとしたアルバムとなっているからかも知れません。そのインダストリアルな音色は、Devin の作品に大きな影響を与えたことで知られる GODFLESH の “Streetcleaner” にも違和感なく調和し、そのプロダクションは、初期 MESHUGGAH のような、当時のエクストリームなデス/スラッシュ・バンドに見られるようなメタリックなサウンドに近いものです。
「混乱と敵意に満ちた心境でイギリスから帰国した。Vai との活動は音楽業界全般への嫌悪感を生み、WILDHEARTS での活動は多くの疑問と怒りを生んだ。Jason Newsted(他にも数名)とのサイド・プロジェクトも期待外れだった。SYLの最初のアルバムは大ヒットしなかった。そこで、バンクーバーを離れ、音楽の新たな可能性を探る時が来たと感じた。
都会の醜悪な自然と、比較的目立たない場所に魅了され、ロサンゼルスの準工業地帯のような荒廃地はインスピレーションを得るのに良い場所だと考え、マリナ・デル・レイの友人数人と暮らしながら作曲を始めたんだ。
当時は、いくつかのアルバム(MORBID ANGEL の “Domination”、FOETUS の “Gash”、OLD LADY DRIVERS の “Formula” や “Cop Shoot Cop” など)に心を奪われていた。センチュリー・メディア・レコードの郵便室で注文を処理する仕事も時々していたけど、ほとんどの時間はSYLのダークな曲をひたすら書き続けていたんだ。”Oh My Fuckin’ God” を聴いてくれよ。偽善的なバカどもについて話しているんだけど、俺はこのシーン全体からなんとか逃れてきたんだ。だって、ファッションショーみたいでね。新作はいいけど KORN が好きなキッズには受けないって言われるのにうんざりだから。アディダス履いてウォレットチェーン持ち歩くようなクソみたいなの、もうやめてくれ。メタル・シーン全体で一番問題なのは、女性蔑視的な部分なんだ。
それから、”Spirituality”。曲の最後の部分に、かなりヘヴィな詩節がある。歌詞と、自分の考えを伝えることが、僕にとって一番大切なこと。僕が書くのは、どんなに些細で下品なことでも、僕の人生で起こっていることだ。たとえそれがセブンイレブンで働いている人とのトラブル、職場でのトラブル、家族とのトラブル、妹との喧嘩など、人によっては些細なことに思えるかもしれないけれど…本当に腹が立つようなことを歌っていて、ただ “ジェネレーションX” 的な “もううんざり、みんな最低、世界は私に生計を立てる義務がある、政府はクソだ” みたいな、ありきたりな怒りをただ吐き出しているだけじゃないなら…何を歌っているかなんて関係ない。ただそこに誠実さがあれば、音楽は10倍になるから…自分が歌っていることを感じられればね。この新しいアルバムで誇りに思っていることがあるとすれば、それは全部、僕の体の一部から生まれたものなんだ。それが睾丸でも、胃でも、心臓でも、わかるでしょ?
とにかく、デモも完成した頃、ハリウッドのライブで Gene Hoglan と出会ったんだ。彼がファースト・アルバムを気に入ったと言ってくれたので、彼を誘って “City” を制作することになった。彼は何ヶ月も演奏しておらず、ブラストにも慣れていなかったので、最初は少し難航したけど、リハーサルを始めて3日ほどで彼の素晴らしい才能に気づき、最終的にハリウッドにある Steve Vai のスタジオでレコーディングすることになったんだ。旧友の Byron と Jed をロサンゼルスに招き、より “バンドらしい” レコーディング体験をしようとした。意気投合したね。この初めての本格的なレコーディング体験が、後の僕たちの原点となったんだ」

“City” は STRAPPING YOUNG LAD の最高傑作と広く考えられています。Devin 自身も、このアルバムをバンドのディスコグラフィーの中で最高傑作だと考えているようです。その理由は明白。”Heavy as a Really Heavy Thing” をテンプレートとすれば、本作はほぼあらゆる面で確実に進歩を遂げているから。前作のヘヴィなデス/スラッシュ・プロダクションや、ザラザラとしたローファイなデモ感は消え去り、Devin が最初からこのプロジェクトに込めていたであろう、シネマティックなビジョンが全編に渡り採用されています。”City” は “Ocean Machine: Biomech” と並行して作曲・レコーディングされており、ヘヴィさを除けば、両者にはたしかに類似点が存在。”Ocean Machine: Biomech” は広大なサウンドスケープを用いて、ヘヴィとドリーミーの中間の空間を創り出し、人体に関する長編プログの寓話を表現しているのに対し、”City” は荒々しくノイジーな工業都市の風景を表現しているのです。工業都市なのに歌舞伎町から超鋼鉄重低爆撃。
“City” を語る上で、このレコードの音楽の激しさは欠かせません。もし “Heavy as a Really Heavy Thing” が、方向性を見失い、整理されていない創造的エネルギーの爆発だとしたら、”City” はそうした本能が軽躁病的な混乱と恐怖へと絞り込まれた作品だったと言えるでしょう。焼けつくような激しさにもかかわらず、このレコードのテーマは怒り以上にむしろ、双極性障害の片端からドラッグとアルコールで満たされた躁のエネルギーが爆発したように感じられます。それは “Ocean Machine: Biomech” の物悲しくメランコリックな壮大さとは対照的。アルバムは悪意に満ちているというより、むしろ慌ただしく、狂乱し、混乱しているように感じられ、危険がないわけではないものの、害悪の意志は感じられません。つまり、インスピレーションとなった大都市の混乱を、躁病に陥った身体の混乱、行き詰まり、そして途方もなく複雑な内なるエネルギー、自身の生々しい部分を象徴するメタファーとして用いているのです。

「”Physicist” のツアーを経てライブ・シーンに再び触れた後、僕は “City” に影響を与えた自らの中にある恐怖感を克服し始めた。再び SYL のような作詞作曲に挑戦し始め、”典型的なメタル・バンド” のアプローチを取れば、SYL に再び関わっても問題ないだろうと自分に言い聞かせたんだ。
なぜなら、正直に言うと “City” がもたらした注目は嬉しかったし、称賛やライブショーは実に魅力的だったから。セルフ・タイトルの楽曲と歌詞の8割は僕が持ち込んだものの、Gene と Jed には彼らが蓄えていたアイデアを出し合うように促すようになった。
このアルバムの歌詞は、僕がこれまで手がけてきた作品の中で最も自分と繋がりが薄いかもしれない。どちらかというと “クールに聞こえるか”、そして僕自身の “タフガイ” 的な姿勢を重視した作品だからね。満足できる要素もいくつかあったけど…”Bring On The Young” の一部は、当時の戦争への恐怖を直接反映していたよ。だけま、”Rape Song” のような曲は、激しいテーマと遠い感情的な繋がりが絡み合った結果、僕が意図していたものとは正反対の形で生まれてしまったんだ。
フランスのテレビ番組でレイプシーンのある番組を見て、女性にあんなことをする人への憎しみが募り、レイプ犯をぶちのめす曲を書かざるを得なくなったんだ。ところが、その意図は裏目に出て、一部の人たちはこれを “レイプ賛美” だと捉えてしまった…
SYL はこうした特異な性質のために、常に僕を不安にさせてきた。僕は無意識のうちに演じる “役割” に多大な労力を費やしていた。当時は気づいていなかったけど、僕のエネルギーの多くは、自分が抱いていたイメージを守ることに費やされていたんだ。そのイメージがどう進化していくのかをひどく恐れていたし、そのことを人々に悟られないようにするためにね」

セルフタイトルのアルバム “Strapping Young Lad” は、”City” のツアー後、グループが一時活動休止した後にリリースされました。当時、Devin は満足のいくヘヴィな音楽が書けなくなったと述べ、代わりに後の “Physicist” と “Terria” となる作品に注力したのです。しかし、あの9.11をきっかけに、Devin は新たな創作意欲を見出したようでした。地震や津波といった自然災害から、大国による帝国主義的な戦争、そしてそれが引き起こす小国や非力な国々の権力の空白まで、あの規模の悲劇は世界各地を悩ませ、今もなお続いていますが、9月11日の出来事は、アーティストであろうとそうでなかろうと、西洋の多くの人々の心の奥底を揺さぶったのです。突然、世界の苦しみの現実が明らかになる。一部の人々はこれを愛国主義や人種差別に利用しようとしましたが、Devin はいつものように自分のエネルギーを自分自身に注ぎ、最終的には、セルフタイトルのレコード “Strapping Young Lad” と、同時に結成された THE DEVIN TOWNSEND BAND 初のレコード “Accelerated Evolution” の両方を作り上げたのです。
「このアルバムは全てを変えた。”Alien” の後、SYLはもう終わりだと悟ったんだ。ライフスタイルを変える必要があるとね。このアルバムに至るまでの出来事、そしてレコーディングを取り巻く状況は、自分自身と精神を破壊してしまったと心から思うほど、混乱を招いた。僕の創作サイクルはタイムラインを見ればわかるように明らかに循環的だけど、そのことに気づいたことが、今の僕をありがたいことに導いてくれたんだ。
本質的には、”Alien” は、僕が自ら、そして当時の周りの人々によって、精神的に崩壊するほどにまで煽られた躁病の結果だった。SYLのセルフタイトル・アルバムで(善意にかかわらず)”有名” になってしまったことで、またしても中途半端なアルバムに対する批判に耐えられなかったのだろう。”Alien” に全力を注ぎ、”Infinity” の時と同じように、自分のプロセスに徹底的に取り組もうと決意したんだ。
“Infinity” でかつて自分を駆り立てた “殉教者芸術家” というロマン主義が頭から離れず、再びその境地に達してメタルというジャンルに “傑作” を残せると信じていた。”誰も成し遂げていない” 境地まで自分を追い込むことで、”City” 時代には自然にできていたことが、今や “無理やり” 生み出されるようになり、SYLを取り巻く状況はますます暴力的になり、今にして思えば自分がほとんど何も知らなかった事柄と複雑に絡み合っていた。そのため、僕の歌詞の傾向は歪んでいった。
怒ったり、落ち込んだり、あるいは何らかの負の感情を抱かなければ幸せになれない人がいるという考えがある。そして、僕がその限界まで自分を追い込む能力(そしてその意志)を持っていた時、僕は自らを暗く悪意に満ちた結末へと導くシナリオに陥っていた。注目を浴びることを喜び、”Terria” 時代にはそれを抑制していた薬の服用をやめてしまった。マリファナとアルコールへの依存が悪影響を及ぼしていたことを認めようとしていなかった。むしろ、それが歪んだ視界を悪化させていたんだよ。
このアルバムは Gene Hoglan と密に協力して制作し、毎日彼の家でリハーサルを行っていた。エクストリーム・ミュージックにおけるテクノロジーの可能性を最大限に活かそうとしたよ。実際、”Alien” で本当に良かったと思えることがあるとするなら、それは彼と音楽仲間として歩んできた道のりだ。僕たちは議論し、妥協し、そして最終的には、一人で作るよりも良いものを作り上げた。でも、二人で作り上げたものは、最終的に僕にとって非常に居心地の悪いものとなり、その後のツアー期間中ずっと落ち込んでいたんだ。
最後の曲 “Info Dump” は、朝4時に地下室でモールス信号と数学的なアイデアを駆使して書いたもの。巧妙で “限界に挑戦した” と思ったものの、結果として僕を恐怖の抜け殻のような人間にしてしまった。自分自身と自分の置かれた状況に対する妄想と恐怖は、つい最近まで僕を悩ませていた。しかし、少し距離を置いて、そして数年経ってから…このアルバムは、アーティストとして非常に誇らしい瞬間だと言えるようになったよ。だけどその誇りの大部分は、苦い経験を​​通して学んだ教訓を、二度と繰り返すつもりはないという自覚から生まれている」

終わりの始まり。”City” が真実だとすれば、”Alien” は現実だと言えます。”City” は間違いなく、このグループの壮大なコンセプトが初めて実現された瞬間でした。しかし “Alien” は、より歳を重ね、より賢明になったグループが、より感情的な精緻さを伴って、同じ考え方に立ち返った作品です。”City” は、身体と精神との関係における都市の比喩的なイメージに焦点を当てていました。大都市のすべてを理解することは困難です。一方 “Alien” は、酩酊状態、精神疾患、神経発達障害などによって、私たちが自分自身を理解できず、自分が思考プロセスの外側にいるように感じてしまうことに焦点を当てています。その結果、私たちは周囲の世界と繋がり、意味のある形で進んでいくことができなくなるのです。
つまり、”City” が外に向けられた躁状態だとすれば、”Alien” は内へと注ぎ込む、内破する精神のブラックホールだったのです。狂気じみた疑似哲学的 “Skeksis” は、それ自体が Devin の映画的なアート・メタルのキャリアの過去と現在を縮図のように捉えています。この時期 Devin は SYL の存在意義についてこう語っていました。
「STRAPPING YOUNG LAD が効果的なのは、僕らがそれほど人気が​​ないからだと思う。人気がないからこそ、自分をどう見せるかに多少の自由がある。僕は大成功なんて求めていない。次のアクセル・ローズになりたいとも思っていない。成功という点では、せいぜい SLIPKNOT (当時) と同程度だろう。彼らもまた、自分たちのやり方で成功を収めてきたヘヴィ・バンドだからね。でも、例えば METALLICA や GN’R だったら…
“Some Kind of Monster” っていうドキュメンタリーを見たんだけど、あいつらはもうメタルのためにやってるって感じじゃない。”マジかよ、俺らは億万長者なのに人生最悪だ” みたいな顔してる」
Devin が SYL を継続することが不可能な精神状態になり、必要なものさえも消し去ってしまったプロジェクトだと語る時、彼が言及しているのは主に “Alien” でした。このアルバムには、Devin が芸術的な高みに到達するために意図的に抗精神病薬を断薬したという神話が流れています。しかし、彼は自らの躁状態と鬱状態は過剰な薬物使用と若くして音楽業界に身を置く環境に起因する可能性が高いと判断し、抗精神病薬の服用を中止し、自らを見直すことを決意しただけでした。当時は禁酒状態だったため、精神状態はますます悪化し、それが心理的に不安を掻き立てるほど化け物じみたアルバムへと発展したのです。Devin は SYL と DTB の関係性をいつしかこう表現するようになっていました。
「STRAPPING YOUNG LAD って、ある意味、誰かに無理やり引っ張られて、やらされているって感じだからね。分かる? 全てを燃やし尽くすような、そういう宣言なんじゃないかな。政治も宗教も、全部クソくらえ! 物事は大丈夫かもしれない、なんて言う段階は完全に過ぎ去ってる。だって、大丈夫じゃないんだから。そういう感情への反応なんだ。Devin Townsend の次のレコードは、それと正反対だ。あのレコードは “大丈夫” って言ってる。この2つはそういう関係性なんだ。SYL は “なんてこった!” って言ってるし、DTB は “大丈夫” って言ってる。SYLはゾクゾクするけど、DTBは頭が柔らかくなる。どちらも自分とは正反対のものを体現していると思うから…だから、できるだけ正反対の要素を取り入れているのが良いと思っている。”Alien” にはアコースティックとか、ソロの雰囲気に合う部分もあるけれど。SYLの雰囲気は独特で、曲作りをしている時にすぐに違いが分かるんだ。DTBは温かい家族のような雰囲気。SYLとはセックスするし、DTBとは結婚しているんだ」

そうして、漆黒のスワンソング “The New Black” でその歴史に幕を下ろした STRAPPING YOUNG LAD。Devin のライブにおいても、SYL の楽曲は取り上げられていますが、おそらく復活することはないでしょう。ただし、Devin はSYL再結成の要望を賛辞と受け止めています。
「いつ再結成するのかって?この質問で一番気に入っているのは “いつ” という言葉だよ。まるで再結成の兆しがあるかのように聞こえるよね。でも、もうバンドの誰とも話していない。25年前の自分とはまるで別人だ。そうしたくない。それが僕の答えだと思う。 他の人たちがそれを望んでいるのを知っているから、それは罪悪感を伴う難しい選択だ。でも、この2、3年で学んだことがあるとすれば、自分自身の欲求に注意を払わなければならないということ。だから SYL を再結成するつもりはないけれど、みんながこのバンドに夢中になって、再結成を待ち望んでいるという事実は、僕にとって大きな名誉なんだ。これほどまでに光栄なことはないよ。これからも、みんなが待ち望んでくれるようなプロジェクトを作り続けたいと思っているよ。で関心を持ってくれて本当にありがとう!」
最後に、SYL を初めて聴く若者に Devin はこの音楽をどう説明するのでしょう?
「7弦ギター。チューニングはGCGCGCE。超高速ダブルキック、ランダムな爆発音、そしてその上にハゲ男が大声で叫ぶ耳障りな爆音。カタルシスのために作られたストレス発散音楽だ」

参考文献: https://hevydevy.com/discography/

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CORONER : DISSONANCE THEORY】


COVER STORY : CORONER “DISSONANCE THEORY”

“Even people like Mikael Åkerfeldt from Opeth, he came to me and was like, ‘Back in the day, when I didn’t know how to go on with a song, I asked my band, ‘What would Tommy do?’ I almost fell, you know? I mean, Åkerfeldt is a genius. I love Opeth to death. It was like, ‘Okay!’ We never made a lot of money, but this feels very good.”

DISSONANCE THEORY

怪物 CORONER が最後にアルバムをリリースしてから30年以上が経ちましたが、待望の復活作 “Dissonance Theory” を聴けば、そこに長いブランクを感じる人はいないでしょう。というより、ほんの数週間しか休んでいなかったかのようです。スイス出身のこのバンドが体現していた革新的なスラッシュメタルへのアプローチは、今も全て健在。Tommy Vetterli の難解にして激烈なギターリフは今も楽曲の中心を駆け抜け、驚異的なテクニックと巧妙な数式、そして記憶に残るサウンドを巧みに融合させています。Ron Broder のベースラインは、トリオらしい脈打つような対位法的グルーヴを生み出し、彼の唸り声のようなボーカルは相変わらず不気味に響きます。そしてオリジナルメンバーの Marky Edelmann に代わり Diego Rapacchietti が担当するドラムは、力強くも軽快で、世紀の不可思議リズムを自然な楽曲へと昇華させていきます。”Dissonance Theory” は、バンドにとって復活であり、また更なる前進を意味する作品でもあります。過去の作品においても、アルバムごとにテーマがあり、独特のサウンドを新たな領域へと押し進めていた CORONER。その探究心こそがまさに、”Dissonance Theory” の原動力となっているのです。CORONERだからこそ、そして今だからこそ生み出せた奇跡のアルバムと言えるでしょう。
「曲作りを始める前、今のバンドのサウンドはどうあるべきか、ずっと考えていたんだ」と Vetterli は語ります。「でも、すぐに、そんな考えは全く意味をなさないって気づいた。1987年のデビュー作 “R.I.P.” をもう一度書くことはできない。なぜなら、今の僕はあの頃とは全くの別人だから。もうすぐ60歳になるけど、当時は20代だった。もうあれを再現するのは不可能だよ。だから、ただ落ち着いて、どんなものが出てくるか見てみようって決めたんだ」

“Dissonance Theory” は “R.I.P.” ではないかもしれませんが、少なくとも “R.I.P.” との連続性は保持しています。CORONER の始まりは伝説的なものでした。よく語られる物語は多少脚色されてはいるそうですが。1986年、バンドは CELTIC FROST のフロントマンで、同じくチューリッヒ出身の Tom G. Warrior に、 “Death Cult” のデモでボーカルを依頼しました。数ヶ月後、Tom G. は Vetterli と Edelmann に、CELTIC FROST の次の全米ツアーのローディーとして来ないかと声をかけたのです。これは若い彼らにとって非常に重要な経験でしたが、一部の人が言うように、CORONER 結成のきっかけになったわけではありませんでした。
「みんなは僕たちがただのローディーだったと思っていて、それで “バンドも組める!” って思ったみたいに勘違いしている。でも、実際はそうじゃなかったんだ」と Vetterli は説明する。「ツアーの進め方を体験するチャンスだった。それに、Tom がインタビューを受けるたびに、インタビュアーに僕らのテープを渡してくれていた。デモテープは既にリリースされていたし、それは僕たちにとってとても良かったよね。良いスタートだった。でも、このツアーの後、ドイツかベルギーのどこかでローディーとしてあと1公演やっただけで、それで終わりだったと思う」
原始的なブラックメタル、デスメタル、ドゥーム、スラッシュ・メタルを独自に自由に融合させた CELTIC FROST のように、CORONER も特定のサブジャンルに固執することはありませんでした。Edelmann は DISCHARGE のようなハードコア・パンクや、VENOM のような初期エクストリーム・メタルに傾倒していました。そして、Vetterli と Broder はそもそもチューリッヒで DOKKEN 風のハードロックバンドで活動していましたが、IRON MAIDEN ような、よりヘヴィでテクニカルな音楽を演奏したいと切望していたのです。そうして3人は、デンマークに共通の基盤を見つけました。コープスペイントをまとったフロントマンが、ギター・ハーモニーの洪水と複雑な構成の中を闊歩する偉大なバンドに。
「MERCYFUL FATE については、皆の意見が一致したね。彼らは僕たちにとって、初期に最も重要なバンドだった。メロディアスでありながらテクニカルで、少しプログレッシブなサウンドだったからね。僕らは基本的にはスラッシュメタルのプログレッシブ形式なんだ。つまり、ファストフードではなく、じっくりと聴き込むことで、20回聴いても新しい発見があるようなもの。僕たちは他人が何をしているかにとらわれることなく、常に自分たちだけの、唯一無二の、本物のサウンドを作り上げてきたんだよ」

CORONER は “R.I.P.” の時点ではまだ完成形に達していませんでした。(”たくさん練習したってことを見せたかったんだと思う” と Vetterli)しかし、道は既に開かれていました。続く4枚のアルバム――1988年の “Punishment for Decadence”、1989年の “No More Color”、1991年の “Mental Vortex”、そして1993年の “Grin” を通して、バンドはスラッシュ・メタルの輪郭を膨張させて、再定義していきました。自明の技術力の高さを、キャッチーなメロディー、型破りなリズム、異様なサウンドのテクスチャー、そして奇抜なソングライティングと見事に融合させていったのです。そうして彼らの特異性は “Grin” で頂点に達しました。このアルバムは、テクニカルなスラッシュ・メタルと、きらびやかで現代的なインダストリアル調のグルーヴ・メタルの狭間で揺れ動いていました。だからこそ、この時初めて CORONER は、限界にぶつかったような気がしたのです。
「奇妙な時期だった。メタルは衰退しつつあった。チューリッヒではテクノ・ミュージックが流行っていてね。実は、音楽的にオープンマインドだった僕らにとっては、それは興味深いことだった。常に少し新しいこと、自分たちの好きなことをやろうとしてきたからね。テクノ・パーティーにもよく出入りしていたんだ。精神状態を変えるようなドラッグを摂取することもあったけど、それはとても楽しかった。ヒップホップまで取り入れた。そして、もしかしたら、何か別のことをする時期が来たのかもしれない…と思ったんだよね」

バンドは “Grin” のセッションを始めた時点では活動休止するつもりはありませんでしたが、ツアー・サイクルの終了に伴い、互いに合意の上で解散することになりました。Edelmann は Tom G Warrior のインダストリアルメタルプロジェクト APOLLYON SUN に参加し、Vetterli はジャーマン・スラッシュの巨匠 KREATOR のアルバム “Outcast” と “Endorama” に参加した後、チューリッヒ郊外にニュー・サウンド・スタジオを設立しました。そして Broder は音楽活動から完全に距離を置きました。CORONER が再び演奏活動を始めたのは、アルバム “Grin” のリリースから20年近く経った2011年のこと。Vetterli は、再結成が実現した理由のひとつが、フェスティバルのオファーが高額になり断れなくなったからだと皮肉っぽく語っています。しかし、CORONER が後進のバンドに与えた影響が時を経て、無視できないものになっていたというのもまた、事実でした。
「YouTubeで若いミュージシャンたちが僕らの曲を演奏しているのを見て、”20年前の僕らの曲をまだ聴いてくれる人がいるなんて、不思議だ” と思ったよ。OPETH の Mikael みたいな人でさえ、僕のところにやってきて、”昔、曲作りの進め方が分からなかった時に、バンドのメンバーに “Tommy Vetteri ならどうしただろう?” って聞いたものだった” って言うんだよね。Hellfest でたまたま同じ時間に演奏した時には、観客に向かって “君らのために演奏するのはうれしいけど、本当は CORONER が見たい” って言ってくれたしね。もう、びっくりしたよ。Mikael は天才だよ。僕は OPETH が死ぬほど好きなんだ。 “やった!” って感じだった。大金を稼いだわけじゃないけど、すごくいい気分だよ。そう、音楽で大金を稼いだことはないけど、僕らが残してきたものを他の人に今見せられるのは、本当に素晴らしいことだと思う。僕らが時代を先取りしていたという話はよく聞いたり読んだりする。だから僕らはこう言ったんだ。”今新しいアルバムを作るなら、自分たちが一番楽しめる、最高に素晴らしいものを作ろう” ってね」

CORONER の再結成から数年が経ち、Vetterli は再び曲作りへの衝動に駆られ始めました。同じ頃、ドゥームバンド、TAR POND に専念するため CORONER を脱退した Edelmann の後任として、Rapacchietti がドラムを担当するようになりました。その頃には、ニュー・サウンドでのバンドのレコーディングが Vetterli の時間のほとんどを占めるようになり、プロデュース作業と同じ空間で作曲するのは不可能だと感じていました。しかし、時にひどく時間がかかることもありましたがその後10年かけて、後に “Dissonance Theory” となるアルバムをゆっくりと作り上げていったのです。
「一人で山へ行き、気分を盛り上げる必要があった。そうしたらうまくいくようになった。でも、時間を見つけるのは少し大変だった。他にも色々あった。人が亡くなったり、離婚したり、そしてクソみたいなコロナが起こったり。それに、少し先延ばし癖もあったかもしれない。自分たちへの期待があまりにも高かったから、少し怖かったのかもしれないね」
Vetterli のプロデューサーとしての経験は、アルバムの成熟に役立ちました。
「プロデューサーとしての経験はテクニックを成長させたわけではないかもしれないけど、それ以上の成長には繋がっている。つまり、頭の中では自分の実力以上に上手く演奏できていると思っているんだ。問題は、自分の期待に応えられないこと。でもこれは、ただの音楽であって、生死に関わることではないということを常に自分に認めなければならないよね(笑)。
最近のYouTubeでは、16歳かそれ以下の若者がものすごく速くて正確な音楽を演奏している動画をたくさん見ることができる。だけどね、いくつかの例外を除いて、どれも僕の心には響かないんだ。僕にとって、感情と意味はこれまで以上に大切になった。
だから、速くてオールドスクールなスラッシュパートを演奏することに決めたのは、できるからではなく、それが合っているからなんだ。その結果、新しいアルバムは以前よりも聴きやすくなった。それが僕たちの成長だと思う」

“Dissonance Theory” は、その自らに課したハードルを、徹底的な緻密さでクリアしています。Verterli は「50個のリフのうち、アルバムに収録されたのは1個くらい」だと語ります。アルバムからの先行シングル第1弾であり、32年ぶりの新曲となった “Renewal” のオープニング・リフは、Vetterli が2015年にタイで書き下ろし、10年近くかけて調整と再アレンジを重ねてきました。Rapacchietti のドラムパートは、全体で2回録音されました。1回は Broder がベースラインを録音する前、もう1回はベースが曲の雰囲気を変えていることが明らかになった後。Vetterli はアメリカ人の友人 Dennis Russ を共同プロデューサーに迎え、作詞も共同で行い、宗教、人工知能、そして原爆といったテーマを皮肉たっぷりの緻密さで切り取ることになりました。
Vetterli はギタリストとしてもキャリア最高の状態にあります。”The Law” や “Trinity” といった曲は、不気味で思索的な始まりから、大胆なメロディーの華麗な旋律に彩られたクライマックスへと突き進み、 “Consequence” や “Renewal” では、そのテクニックも未だワールドクラスであることを証明しています。ほぼ全ての曲に華々しいシュレッドとソロがあり、シュレッダー志望者は耳を休める暇もありません。 “Dissonance Theory” のテクニカルな過激さは、初期の CORONER ように即効性のあるものではないかもしれませんが、だからといって彼がギタリストとして衰退したわけではありません。ただ、もう何も証明する必要がないというだけで十二分に創造的。
「一番の違いは、昔はテクニカルな演奏をただテクニカルに演奏していたのが、今はムードやヴァイブ、そして表現の方がずっと重要になっているということだと思う。速いパートがあっても、見せびらかすためではなく、そこに必要だと思うから演奏するんだ」

“Dissonance Theory” というタイトルは音楽の話ではありません。
「変なコードを弾くから、不協和音というタイトルが僕たちの音楽と何か関係があるのではないかと考える人もいる。確かにそうかもしれないね(笑)。でも、僕たちがここで言っているのは認知的不協和、いわゆる不協和理論です。例えば、君が肉を食べるのが好きだとしよう。一方で、動物に危害を加えたくはない。すると、選択肢はベジタリアンになるか、そうでなければビタミンB12欠乏症になるかだ。もしくは、自分自身の真実を作り出すか。人類が様々な分野でこの問題にどう対処するか、これは非常に興味深い概念だと思うよ。
“Consequence” は、AI、あるいは現代の技術革新全般について。人類にとって非常に良いことは、一方で非常に危険なことでもある。特にAIの登場によって、人々は職を失うだろうし、何かが真実なのか、現実なのか、どうすればわかるのだろう?
“Sacrificial Lamb” では状況が異なるね。これは、自らを犠牲の子羊と見なす大量殺人犯の物語。彼は、島に行ってティーンエイジャーを撃つことで人類のために貢献していると考えている。なんてひどい話だろう?
つまり、これは様々な真実についての物語。あなたにはあなたの真実があり、他人には別の真実がある。そしてそれは単なる事実だ。歌詞のテーマをまとめるには、刺激的なコンセプトだと思ったね」
アートワークはまるで DNA のよう。
「カバーにあるDNA構造は、下に向かって崩壊していくのだけど、これは人類の没落を象徴している。アルバムタイトルは、本当は “Oxymoron(矛盾)” にするべきだったかもね。もっと広い意味では、これは知性と愚かさを同時に意味する。つまり、人類の象徴だよ。あらゆる功績を残したにもかかわらず、それと共に自ら墓穴を掘るほど愚かなのが人間。それが最初のアイデアだった。ただ、この言葉は主に文章を書く際に使われるため、多くの英語話者はこのタイトルを嫌がった。そこで別のタイトルを探して、すぐに “Dissonance Theory(不協和理論)” を思いついたんだ。僕にとっては、今となっては全てがしっくりくるよ」

“Dissonance Theory” というアルバムを3つの言葉で表すとすれば?
「厳しく、妥協がなく、正直。僕は常に自分自身を成長させ、異なる意見を受け入れ、誰かを批判しないように努めている。暴力ではなく、会話と議論で問題を解決しようとしているんだ。これが、朝起きた時の僕の目標。嫌な奴にならないこと」
“Dissonance Theory” のデラックス版には、Tom G Warrior がボーカルを務め、40年前に CORONER をこの道へと導いた “Death Cult デモ”のリマスター版が同梱されます。CORONER の最古の曲と最新の曲を立て続けに聴くのは、ちょっとした混乱を招くかもしれませんね。”Death Cult” の大胆で先祖返り的な曲と、”Dissonance Theory” の洗練された技巧の間には、大きな隔たりがあるのは当然です。しかし、それらを並べて聴くことで、このバンドが初期から溢れ出ていた共通の目的意識、挑発的な探究心、そして限界を押し広げようとする野心が、同時に浮かび上がってくるのです。
「当時僕は自動車整備士をしていて、”Death Cult” を作るために1週間の休暇を取ってスタジオに入ったんだ。これが僕の人生を変えてくれた。この1週間の後、両親に “ミュージシャンになりたい。車の修理はもうやめたい。そういう仕事には興味がない” と伝えることになった。その後のことは、歴史が語る通りだよ」

日本盤のご購入はこちら。DIW on Metal / Daymare Recordings

参考文献: Bandcamp Daily:Great Thrash Never Dies: The Return of Coroner

Metal Insider : Coroner Interview

KNOT FEST: CORONER

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ROYAL SORROW : INNERDEEPS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARKUS HENTUNEN OF ROYAL SORROW !!

“The non-conformity of prog metal is an important part to us, who have always found inspiration in many different places and satisfaction in combining those elements.”

DISC REVIEW “INNERDEEPS”

「20代に近づくにつれ、メタルとは大きく異なるタイプの音楽を聴くことを “自分に許可する” という感覚に目覚め、自分のパレットが大きく広がっていくのを感じた。特にK-POPやJ-POPなど、ハーモニーが面白いポップ・ミュージックが大好きになったのはその頃だ。メタルへの興味がなくなったことはないけれど、今ではこんなに幅広いジャンルの素晴らしい音楽を楽しめるようになって幸せだよ」
誰にとっても、10代で夢中になり、体内へと吸収した音楽は特別です。なぜなら、そうした音楽、もしくはアートは “自分のもの” となって、どんな気分や体調の時でも違和感なく楽しむことができるから。だからこそ、その “コンフォート・ゾーン” から抜け出すことは決して容易ではありません。しかし、モダン・プログ・メタルの急先鋒にして期待の星、フィンランドの ROYAL SORROW は、自らが愛するメタル以外の音楽を聴くことを “自分に許可する” ことで音の色彩、音の世界が広がったと語ってくれました。
そこには驚くことに、J-POP の瑞々しいハーモニーまでもが含まれます。つまり、ROYAL SORROW には日本の音楽から得た圧倒的なコーラスとメロディが備わっています。そう、メタルやプログはその包容力で多様な音楽を吸収するミャクミャク様的怪物なのです。
「音楽的には、当時、プログには何の境界線もないことを突然知った感覚は、本当に目を見張るものだった。 素晴らしいリスニング体験ができただけでなく、幼い頃に初めて曲を書き始めたときに、探求し続ける道を示してくれた。プログ・メタルのルールに “従わない” ところは、常に様々な場所にインスピレーションを見いだし、それらの要素を組み合わせることに満足感を得てきた僕たちにとって重要な部分なんだよ」
“ルールに従わない” ことこそが、プログやメタルの強み。そして、リード・シングルとなった “Metrograve” はまさに、ROYAL SORROW が従来のルールに従わないという意思を表明したミッション・ステイトメント。メタルの世界にラップのビートを持ち込み、それを駆使してひとつの曲を作り上げる。そんな斬新なアイデアから生まれた楽曲は、プログレッシブという使い古された言葉を再構築するほどに新鮮で、Devin Townsend の神性を借りながらリスナーのとめどない没入を誘います。
「プログレッシブな音楽で、想像力を膨らませておく必要があるからだよ。僕はポップ・ミュージックをそれなりに楽しんでいるけど、そうした音楽はエンターテインメントを “あらかじめ咀嚼” しているような感覚がますます強まっている。 どんな形であれ、それが良いとは思わないよ。 時には我を忘れて、より複雑な芸術的世界に集中することは貴重なことだ。スマホのスクロール代わりに映画を見続けることが重要なのと同じように。 また、音楽が現実から逃避するための、逃避場所を与えてくれるように、時には心の風景を変えることも必要なんだと思う」
“Metrograve” のテーマは、エンパワーメント。自分に意味を与えてくれるもののために闘うこと、そして他者が押し付けるルールを無視すること。そうして、ROYAL SORROW はまだまだアンダーグラウンドな “プログ” という世界自体もエンパワーメントしていきます。SNS が支配する世界は、どんどんインスタントで軽薄なものとなっていきます。
しかし、そんな世界だからこそ、じっくりと腰を据えて鑑賞するプログレッシブ・ミュージックのようなアートが必要だと彼らは主張します。スマホの画面をスクロールするだけでは決して没入できない、別世界、そして逃避場所。アンダーグラウンドだからこそ見せられる真逆のカタルシス。心の平穏を得るには時に、心の風景を変えなければならないのかもしれませんね。
今回弊誌では、フロントマン Markus Hentunen にインタビューを行うことができました。「フロム・ソフトウェアはバンドにとって特別な存在で、クリアするまでエルデンリングの話をしない日はなかったね。全体的に、日本とフィンランドには文化的な共通点がある。 一般的に、僕たちはかなり内向的で、社会的な境界線を尊重するからね。でも僕たちを知れば、クレイジーな一面もあるよ。 特にカラオケボックスで狂っているときはね」 EDGE OF HAZE という名前で活動していたことをご存知の方も多いでしょう。大手 Inside Out と契約して再デビュー。どうぞ!!

ROYAL SORROW “INNERDEEPS” : 10/10

INTERVIEW WITH MARKUS HENTUNEN

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【MARKUS】: Looking back, getting my first iPod at age 12 was a monumental thing in my life, because at that point, I truly started listening to music. Before that, it was mostly all sorts of CDs played at home that our family had (and I enjoyed), with a lot of soul-influenced pop and some rock.
Owning an iPod meant that I was able to start playing specific albums on repeat. Over a period of a couple of years, I went from The Beatles to AC/DC to Metallica to Dream Theater, the latter of which was my ultimate obsession at around 15 years old. Janne and Eero had gotten into metal some years before me, with a big interest in the cinematic and doom flavors. Katatonia, Swallow the Sun and Nightwish were really big for them.
During upper secondary school (since age 15–16), we all started getting into more modern metal with even heavier influences. That coincided with the emergence of Djent as a genre, which we found a lot of inspiration in. Nearing my twenties, I felt my palette broaden a lot, with a certain sense of “allowing myself” to listen to very different types of music. That’s when I fell in love with harmonically interesting pop music, notably including K and J-Pop.
While metal has never lost its interest to me, it is very fun to be able to enjoy such a broad spectrum of great music nowadays.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【MARKUS】: 思えば、12歳のときに初めてiPodを手に入れたことは、僕の人生にとってまさに記念碑的な出来事だったね。それまでは、ソウルの影響を受けたポップスやロックなど、家族が持っていた(そして僕が楽しんでいた)CDを家でかけていたのがほとんどだったからね。
iPodを持ったことで、特定のアルバムを繰り返し聴くことができるようになった。そして数年の間に、僕はビートルズからAC/DC、そして15歳くらいの僕が究極に夢中になった METALLICA, DREAM THEATER に行き着いたんだ。Janne と Eero は僕より何年か前にメタルにのめり込んでいて、シネマティックとドゥームのテイストに大きな関心を寄せていた。KATATONIA, SWALLOW THE SUN, NIGHTWISH は彼らにとって本当に大きな存在だったんだ。
そして高校時代(15~16歳)、僕たちは皆、よりヘヴィな影響を受けたモダン・メタルに傾倒し始めた。ちょうどDjentというジャンルの出現と重なり、僕たちはそこから多くのインスピレーションを得たね。
それから20代に近づくにつれ、メタルとは大きく異なるタイプの音楽を聴くことを “自分に許可する “という感覚に目覚め、自分のパレットが大きく広がっていくのを感じた。特にK-POPやJ-POPなど、ハーモニーが面白いポップ・ミュージックが大好きになったのはその頃だ。
メタルへの興味がなくなったことはないけれど、今ではこんなに幅広いジャンルの素晴らしい音楽を楽しめるようになって幸せだよ。

Q2: What made you start singing or playing an instrument? Who were your heroes at the time?

【MARKUS】: For the longest time, my dad casually tried to get me interested in guitar, but I never had that spark of inspiration for it. If I was to look for a single moment when that changed, it might have been when one of my friends showed me a video titled, simply, “guitar” on YouTube, back in like 2007. It was a rock guitar rendition of Canon in C (that many people must recognize, because the whole thing is so iconic) and it completely blew my mind – it must have been the first time where I actually saw somebody playing something that fascinated me.
I had taken classical piano lessons for some years as a kid but never had the motivation for it, because I didn’t like spending my time learning songs that were “forced upon” me. However, when my dad taught me the basic concept of chords on the piano, and how to use them to accompany any song of my liking, my whole attitude changed. Having found a new, deeper interest towards music, I decided to apply to a music emphasis class, when I went to secondary school. Being constantly surrounded by interesting musical ventures and likeminded people, that might have been the most influential time of my life. That’s also where I met Eero, who started at the same time on the same class as me, and Janne who had entered the school a year before.If I was to name one guitar hero of mine, it must be John Petrucci, even though his stuff was always too technical for me, when I was beginning my guitar journey. These days it is so much fun to get back to those highly influential songs. Also, a special shoutout to Alexi Laiho, the ultimate hero of most of my guitarist friends here in Finland. He was so appreciated that even people who did not like metal, or music at all, knew who he was. I also admired him, even though Children Of Bodom was a bit too scary for me for a long time before I got into metal – hehe.

Q2: 歌やギターを始めたきっかけは何でしたか? 当時のヒーローは?

【MARKUS】: 子供の頃は父が長い間、さりげなくギターに興味を持たせようとしてくれたのだけど、当時の僕には全くピンとこなかったんだ。もしそれが変わった瞬間を挙げるとすれば、2007年頃、友人の一人がYouTubeで “ギター” とだけ題された動画を見せてくれた時かもしれないね。それはカノン(C調)のロックギター演奏だった(全体がとても象徴的なので、多くの人が知っているはずだ)。そして、僕は大きな衝撃を受けたんだ。誰かが演奏しているのを実際に見て、心を奪われたのは、それが初めてだったに違いないよ。
子供の頃、クラシックピアノを何年か習っていたんだけど、”押し付けられて” 曲を覚えるのに時間を費やすのが好きではなかったから、やる気がなくてね。だけど、父がピアノのコードの基本概念と、好きな曲に合わせてコードを使う方法を教えてくれたとき、僕の考え方は完全に変わったよ。音楽への新たな、より深い興味が芽生え、中学校に進学した際に音楽専攻のクラスに入学することに決めたんだ。常に興味深い音楽活動や志を同じくする仲間に囲まれていたこの時期は、僕の人生で最も影響を受けた時期だったかもしれないね。そこで、同じクラスで同期の Eero と、1年前に入学した Janne にも出会えたからね。
もし僕のギター・ヒーローを一人挙げるとしたら、John Petrucci だね。ギターを始めた頃は、彼の演奏はどうしても技術的に難しすぎたのだけど、今では、あの影響力の強い曲を聴くのが本当に楽しいよ。そして、フィンランドのギタリスト仲間のほとんどにとって、最高のヒーローである Alexi Laiho にも特別な感謝を捧げたいと思う。彼はここでとても尊敬されていたので、メタルや音楽を全く好きではない人でも、彼の存在を知っていたね。メタルにハマる前は、長い間 CHILDREN OF BODOM には少し怖さを感じていたけど、それでも僕も彼を崇拝していたよ (笑)。

Q3: Finland is famous for melodeath like Amorphis and Children of Bodom, and power metal like Sonata Arctica, but what attracted you to prog metal? Were you influenced by your predecessors?

【MARKUS】: I think all of us found prog metal (and prog music in general) at just the right time, in our early teens. Musically, at that time, the feeling of suddenly finding out that there are no boundaries whatsoever, was really eye-opening. Not only did it allow for amazing listening experiences, but it also showed the way to keep exploring when starting to write our first songs at an early age. The non-conformity of prog metal is an important part to us, who have always found inspiration in many different places and satisfaction in combining those elements.

Q3: 仰るように、フィンランドといえば、CHILDREN OF BODOM や AMORPHIS のようなメロデスや、SONATA ARCTICA のようなパワー・メタルが有名ですが、プログ・メタルに惹かれた理由は何だったんですか?

【MARKUS】: 僕たちは皆、10代前半のちょうどいい時期にプログ・メタル(そしてプログ・ミュージック全般)に出会ったと思う。 音楽的には、当時、プログには何の境界線もないことを突然知った感覚は、本当に目を見張るものだった。 素晴らしいリスニング体験ができただけでなく、幼い頃に初めて曲を書き始めたときに、探求し続ける道を示してくれた。
プログ・メタルのルールに “従わない” ところは、常に様々な場所にインスピレーションを見いだし、それらの要素を組み合わせることに満足感を得てきた僕たちにとって重要な部分なんだよ。

Q4: It’s no secret that you used to operate under the name Edge of Haze, but what did you try to change when you made this new start as Royal Sorrow?

【MARKUS】: Playing and making music together since our teens is an integral part of who we are, not just as musicians and artists, but as friends and, well, humans too. Simultaneously, though, our art has evolved a lot over the years. After all that time, some of the songs that we wrote when we were 15 did not necessarily feel like us anymore, even though they were a key part of what the previous version of the band was.
When we signed a record deal with InsideOutMusic, that felt like the perfect opportunity for a fresh start – to rethink and polish our art, crystallizing what we wanted our music to truly be and what we, as artists and songwriters, stood for. Over a period of two years, we had an amazing time writing new songs, exploring new directions and building towards the launch of Royal Sorrow. We uncovered so much new and interesting stuff about ourselves and our art, while managing to refine the essence of our passion and our own unique sound.

Q4: 以前は EDGE OF HAZE という名前で活動していたことは周知の事実ですが、ROYAL SORROW として新たなスタートを切るにあたって、何を変えようとしたのですか?

【MARKUS】: 10代の頃から一緒に音楽を演奏し、作ってきたことは、ミュージシャンやアーティストとしてだけでなく、友人として、そして人間としても、僕たちの重要な一部だ。 同時に、そんな僕たちの芸術も長い年月をかけて大きく進化してきた。 15歳のときに書いた曲のいくつかは、以前のバンドの重要な部分であったにもかかわらず、必ずしも今の自分たちらしくなくなっていた。
InsideOutMusic とレコード契約を結んだとき、それは再出発の絶好の機会だと感じた。自分たちのアートを見直し、磨き上げ、自分たちの音楽が本当にどうありたいのか、アーティストとして、ソングライターとして、自分たちが何を目指しているのかを結晶化させるためにね。 2年間、僕たちは新曲を書き、新しい方向性を模索し、ROYAL SORROW の発表に向けて素晴らしい時間を過ごした。 自分たち自身や自分たちの芸術について、新しく興味深いことをたくさん発見し、同時に自分たちの情熱の本質と自分たち独自のサウンドを磨き上げることができたんだ。

Q5: “Innerdeeps” is a diverse, melodic, yet very progressive and truly wonderful album! Can you talk about the theme, concept and message of the album?

【MARKUS】: Thank you! When starting to write new music for Royal Sorrow, we discovered that a lot of the topics that we were interested in exploring were about mental health, inner struggles and some deep and weighty topics. Since all three of us write the songs, it was interesting sharing these thoughts and the long discussions that followed. At some point, it became clear that while we were not aiming for a concept album, we were building a coherent whole that might be the start of something even larger – the Royal Sorrow sound. ‘Innerdeeps’ is an introspective journey to the mind, a meditation that takes you from the quietest whispers to the loudest roars left unheard. We hope that it offers feelings of solace and liberation for the listener.

Q5: “Innerdeeps” は、多様でメロディアスでありながら、とてもプログレッシブで本当に素晴らしいアルバムですね! アルバムのテーマ、コンセプト、メッセージについて話していただけますか?

【MARKUS】: ありがとう! ROYAL SORROW のために新しい曲を書き始めたとき、僕たちが探求したいと思うトピックの多くが、メンタル・ヘルスや内面の葛藤など、深くて重みのあるテーマであることがわかった。僕たち3人全員が曲を書くので、こうした考えを共有するのは興味深く、その後の長い議論も面白かった。 そうしてある時点で、コンセプト・アルバムを目指しているわけではないけれど、何かもっと大きなもの、つまり僕らのサウンドの始まりになるかもしれない、首尾一貫したテーマを構築していることが明らかになったんだ。
“Innerdeeps” は、心への内省的な旅であり、最も静かなささやき声から、聞こえないまま残された最も大きな轟音まで、あなたを瞑想へと連れて行く。 僕たちは、この作品が聴く人に安らぎと解放感を与えてくれることを願っているんだよ。

Q6: It’s great to see the influence of hip-hop and rap music! When I think of rap-infused prog metal, Pain of Salvation comes to mind, but how did you incorporate those influences into your music?

【MARKUS】: All in all, it comes down to allowing ourselves to take inspiration from anywhere that we find interesting. Sometimes it is more apparent, sometimes it is more buried in the layers. To give you some examples, in our song Metrograve, you can hear it in the intense synth and percussion production, in Evergreen, you can hear it in the booming synth bass, and in Release Your Shadow, you can hear it in the rhythmically complex vocal lines.

Q6: ヒップ・ホップやラップ・ミュージックの影響が見られるのも素晴らしいですね! ラップを取り入れたプログ・メタルといえば、PAIN OF SALVATION が思い浮かびますが、なぜそうした影響をプログに取り入れたのですか?

【MARKUS】: メタルの世界にラップのビートを持ち込み、それを駆使して、ひとつの曲を作り上げようというアイデアにインスピレーションを受けたんだ。結局のところ、僕らは面白いと思ったらそれが何であれ、そこからインスピレーションを得ることを自分に許しているんだよ。 それがより明白な場合もあれば、レイヤーの中に埋もれている場合もある。
いくつか例を挙げると、”Metrograve” という曲では、激しいシンセとパーカッションのプロダクション、”Evergreen”では、沸き立つようなシンセ・ベース、”Release Your Shadow” では、リズミカルで複雑なボーカル・ラインから、それを感じることができるだろうね。

Q7: Musically, you are often compared to so-called “modern prog metal” bands such as Leprous, TesseracT and Vola? What do they and Meshuggah, the originators of Djent, mean to you?

【MARKUS】: These are all huge influences to us. In a sense, since we have grown up listening to these bands, I don’t think that the Royal Sorrow sound would exist without them. They have showed us how to be intense and musical at the same time, how to combine beauty with darkness, and complexity with catchiness. At the same time, they are big inspirations in leading the way, showing that prog metal has its place in the world. Besides, having been fortunate enough to get to know the Leprous and VOLA folks, they have shown that you can be a nice person and a rockstar at the same time!

Q7: 音楽的には、LEPROUS, TesseracT, VOLA といったいわゆる “モダン・プログ・メタル” のバンドとよく比較されますよね?彼らやDjent、そしてその始祖である MESHUGGAH は、あなたにとってどのような存在ですか?

【MARKUS】: そうした音楽はすべて、僕たちに大きな影響を与えている。 ある意味、そうしたバンドを聴いて育ってきたわけだから、彼らなしには ROYAL SORROW のサウンドは存在しなかったとさえ思う。
彼らは、激しさと音楽性を両立させる方法、美しさと暗さ、複雑さとキャッチーさを両立させる方法を教えてくれた。 同時に彼らは、プログ・メタルが世界にその居場所があることを示し、道を切り開いてきた大きなインスピレーションでもある。 それに、幸運にも LEPROUS とVOLAのメンバーと知り合うことができたけど、彼らは、いい人であると同時にロックスターであることが両立できることを示してくれた!

Q8: Dream Theater and Gojira began to win Grammy awards. In an age when listeners’ attention spans are so short and instant content is so easily consumed, why is music that is complex, long, and requires practice beginning to be reevaluated?

【MARKUS】: Shortly, we need to keep our imaginations running wild. While I enjoy my fair share of pop music, there’s an ever-growing sense of having your entertainment “pre-chewed” for you. I don’t believe that’s good in any form. It’s valuable to lose yourself and concentrate on more complex artistic worlds sometimes – same way as it is important to keep watching movies instead of scrolling on your phone every now and then. Also, the way music is able to offer a sense of refuge and escape from the reality, sometimes we need that change of mental scenery.

Q8: DREAM THEATER や GOJIRA がグラミー賞を受賞しました。リスナーのアテンション・スパンがこれほど短く、インスタントなコンテンツが次々と簡単に消費される時代に、複雑で長く、練習を必要とするプログレッシブ・ミュージックが再評価され始めているのはなぜだと思いますか?

【MARKUS】: 手短に言えば、想像力を膨らませておく必要があるからだよ。僕はポップ・ミュージックをそれなりに楽しんでいるけど、そうした音楽はエンターテインメントを “あらかじめ咀嚼” しているような感覚がますます強まっている。 どんな形であれ、それが良いとは思わないよ。
時には我を忘れて、より複雑な芸術的世界に集中することは貴重なことだ。スマホのスクロール代わりに映画を見続けることが重要なのと同じように。 また、音楽が現実から逃避するための、逃避場所を与えてくれるように、時には心の風景を変えることも必要なんだと思う。

ALBUMS THAT CHANGED ROYAL SORROW’S LIFE!!

I automatically notice myself thinking back to my teenage years. (Isn’t it proven that that’s where your music taste grows the strongest?) Here are some of the albums that I was listening on repeat, and that have now attained incomparable amounts of nostalgia for me:

Dream Theater “Metropolis, Pt.2: Scenes from a Memory”

Taught me what a concept album is, which was super eye-opening to me. Along with Images and Words, some of the most inspiring and imaginative prog songwriting there is.

Devin Townsend Project “Deconstruction”

I had such a journey listening to this. At first it was so chaotic and heavy that I nearly wasn’t able to finish it. Luckily, I had bought the CD, so I felt compelled to keep listening to it again, and on each listen, I got sucked deeper into the insane, hypnotic atmosphere. It didn’t take too long for me to start enjoying the record on a level I hadn’t previously experienced, and some of the moments on the album I still cherish very dearly today.

Periphery “Periphery II : This Time It’s Personal”

This was my gateway to the next era of metal music – the new wave of progressive metal and djent. The mixing and production on this album blew me and my friends away and set a new standard on what you should aim for.

TesseracT “Altered State”

continued the same effect. I had discovered the band during the One era, but it felt like this one opened up a whole new world of beauty, precision, and harmonic wizardry.

When I talked about this with Eero and Janne, they clearly felt similarly, even down to those exact records themselves. Well – we spent our teens listening to these at the same time, often together, after all… The guys would name these two additional albums as well:
Katatonia – Night is the New Day, and Swallow the Sun – New Moon. Big, early influences. I also want to throw one wild card out there: Tiktak – Jotain muuta. This is the first CD I ever received – burnt as a bootleg by my dad (and my friend’s dad) as a Christmas gift in, like, 2002. It was a Finnish pop girl group, and probably the first band I ever got excited about!
Looking back to it after a couple of decades (now that you’re able to just stream it whenever you want), I realize how much these early 2000’s pop bands have shaped my understandingof songwriting and harmony – with their almost naïve catchiness, super imaginative production and a weirdly inspiring rebel attitude.

ついつい10代の頃を思い出してしまうね。音楽の好みは10代で一番強くなるって、証明されていると思わない?僕が繰り返し聴いていて、今では比類なきノスタルジーを抱くようになったアルバムをいくつか紹介するね。
Dream Theater – Metropolis, Pt.2: Scenes from a Memory。コンセプトアルバムとは何かを教えてくれた、まさに目から鱗が落ちるようなアルバムだったね。”Images and Words” と並んで、プログ・メタル世界で最も刺激的で想像力豊かなソングライティングの数々が詰まっているよ。
Devin Townsend Project – Deconstruction。このアルバムを聴く体験は、まさに旅のようだった。最初はあまりにも混沌としていて重苦しく、最後まで聴き通すのがやっとでね。幸いCDを買っていたので、何度も聴きたくなり、聴くたびに、その狂気と催眠術のような雰囲気に引き込まれていったよ。それまで経験したことのないレベルでこのレコードを楽しめるようになるまで、それほど時間はかからなかった。アルバムに収録されているいくつかの瞬間は、今でもとても大切にしているんだ。
Periphery – Periphery II。これは僕にとって、メタル・ミュージックの次の時代、プログレッシブ・メタルと Djent のニューウェーブへの入り口だった。このアルバムのミキシングとプロダクションは、僕と友人たちをとても驚かせ、目指すべきものの新たな基準を確立してくれた。
Tesseract – Altered State も同じだね。僕は “One” 時代にこのバンドを知ったけど、このアルバムは美しさ、精密さ、そしてハーモニーの魔法の全く新しい世界を切り開いたように感じたよ。
EeroとJanneにこのことを話したとき、彼らも明らかに同じ感想を抱いていて、まさにこの4枚のアルバムに至ったんだ。ええと、10代の頃はこうした音楽をしょっちゅう一緒に聴いていたからね。みんなは他にも2枚のアルバムを挙げてくれたよ。
Katatoniaの “Night is the New Day” と Swallow the Sunの “New Moon” 。初期の大きな影響を受けたアルバムだよ。あと、ワイルドカードとして1枚。Tiktakの “Jotain muuta” 。これは僕が初めてもらったCDだよ。2002年頃、父(と友達の父)がクリスマスプレゼントとして海賊版を焼いてくれたんだ。フィンランドのポップガールグループで、おそらく僕が初めて夢中になったバンドだね!
数十年経って振り返ってみると(今ではいつでもストリーミングで聴けるようになったけど)、2000年代初頭のポップバンドが、僕の作詞作曲とハーモニーに対する理解にどれほど影響を与えたかを実感するよ。彼らのナイーブとも言えるキャッチーさ、非常に想像力豊かなプロダクション、そして奇妙に刺激的な反骨精神がね。

MESSAGE FOR JAPAN

Most definitely! We grew up with the likes of Pokémon, and Miyazaki movies, always interested in Japan as a country and culture. All of us have been lucky enough to visit Japan, and most recently, Eero celebrated his birthday this spring with his family on a long trip around the country. When it comes to video games, FromSohware holds a special place in the band, with me somefmes never hearing the end of the guys’ Elden Ring stories.
Overall, there are nice cultural similarifes between Japan and Finland. Generally, we are quite introverted, respecfng social boundaries, but get to know us and we have our crazy sides. Especially when we’re let loose in the karaoke booth.
To our brothers and sisters in Japan, thank you so much for your interest in us. We welcome you to be a part of our journey with open arms! To end on a manifestafon: a Royal Sorrow show in Japan would be a dream come true!

僕たちはポケモンや宮崎映画を見て育ち、常に日本という国や文化に興味を持ってきたよ。 最近では、Eero が今年の春に誕生日を迎え、家族で日本を旅行したしね。 ビデオゲームに関しては、フロム・ソフトウェアはバンドにとって特別な存在で、クリアするまでエルデンリングの話をしない日はなかったね。
全体的に、日本とフィンランドには文化的な共通点がある。 一般的に、僕たちはかなり内向的で、社会的な境界線を尊重するからね。でも僕たちを知れば、クレイジーな一面もあるよ。 特にカラオケボックスで狂っているときはね。
日本にいる僕らのファンのみんな!僕たちに興味を持ってくれて本当にありがとう。僕たちの旅の一部となることを、両手を広げて歓迎するよ! ROYAL SORROW の日本ツアーが実現したらまさに夢が叶うよ!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARKONA : KOB’】 JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARIA “MASHA SCREAM” ARKHIPOVA OF ARKONA !!

“As a result, Slavic paganism became a part of my life, and subsequently I began to convey my worldview through my music.”

DISC REVIEW “KOB'”

「古代スラブのペイガニズムは私たちの歴史であり、過去であり、取り返しのつかない、しかしどうしようもなく説得力のあるテーマだ。私たちのルーツに戻り、多神教的な宇宙とそのさまざまな顔、解釈、そして数多くの神々や要素という形での現れと相互作用しながら、自然の法則のみに従って動くその世界そのものに真に没頭するよう教えてくれる。 私の意識はこのテーマに完全に没頭し、その結果、スラブ多神教は私の生活の一部となり、その後、私は音楽を通して自分の世界観を伝えるようになった」
ロシアの ARKONA (Аркона) は、ペイガン・メタルとフォーク・メタルの定義と革新を今もなお追求し続けています。ダークなプロダクション、ブラック・メタルとプログレッシブ・メタルの融合、強烈で内臓をえぐるようなパフォーマンス、そして物憂げで重々しいギターワークと民族色豊かな管楽器の響き。そうした言語をも超越した ARKONA のパフォーマンスは、自らが生まれ育った母なるロシアの厳しくも美しい大地と、ルーツである古代スラブのペイガニズムに捧げられています。
「ARKONA は非常に多様で、バンド結成20年の間に、私たちの音楽は大きな変化を遂げた。昔の、のんきで陽気で、荒々しく正直で、エネルギッシュでありながら儀式的な神秘に満ちたフォーク時代の ARKONA と、新しい、暗くて絶望的で、骨抜きで死の息吹が漂い、混沌の果てしない抱擁の中で勝利する ARKONA の両方のファンがいることは素晴らしいことだ。 誰もが自分自身のアルコナを選ぶことを勧めるよ。そして、1枚のアルバムに焦点を当てるには、あまりにも私たちは多面的で広大だ」
ARKONA の音楽は、彼らが崇拝するスラブ多神教のごとく多様で千変万化。初期の “Yarilo” や “Stenka Na Stenku” のようにある種牧歌的で楽しくしかしどこか憂いを帯び、直情的でパワフルなスラブ音楽の祭典はもちろん ARKONA の原点。一方で、近年の大作路線、難解で神秘的、死と混沌のプログレッシブ・ブラックにも彼らのペイガニズムは儀式として根付いています。
そして何より、今回のインタビューイでありボーカリスト Maria “Masha Scream” Arkhipova の哲学と人類の現代、そして未来観という深く暗い領域はどの時代の ARKONA においても紡がれていて、ペイガンの伝統、その光の中で音楽を描き出していくのです。
「ARKONA が結成されたとき、私はすでに熱狂的なメタル・ファンだったので、あるリハーサルで生々しく過激なヴォーカル・スタイルで歌ってみたところ、すぐに夢中になったの。 その結果、私はすぐにこの新しい、自発的な能力を自分の仕事に取り入れることにした。当時は、同じような声のテクニックを持つ女性ヴォーカリストのことをほとんど知らなかったから、だれかの真似をしたわけじゃない。 すべてが自然に起こったんだよ」
古代スラブの神話を語る時、Masha のスクリームやグロウルはストーリーに大きな抑揚を生み出します。その個性、存在感、そして圧倒的な音域は人智を超えた未知の恐怖と神性を ARKONA の音楽へともたらします。比較的自由で穏やかだったソ連崩壊後に声楽を学び、まだ女性スクリーマーがほとんど存在しなかった90年代後半からスクリームを追求し続ける彼女の声は、今や当たり前となったメタル世界の女性たちを力強く後押しし、今ではメタル世界最高の女性スクリーマーのひとりと言われるまでになりました。そうして、Masha の声は、人類が長らく忘れてしまった過去の知恵、太古の生活を蘇らせます。戦争、疫病、宗教的信念、環境問題によって社会が自らの墓穴を掘る中で、ARKONA は本物の疫病が現代を生きる強欲な人類自身であると太古の森から警告を発していくのです。
今回弊誌では、Maria “Masha Scream” Arkhipova にインタビューを行うことができました。「どんな状況でも、メタルは私たちを団結させてくれる。あなたが前の質問で、ヘヴィ・メタルは国際的な現象となり、政治や支配者層が私たちを陥れようとしているあらゆる汚物を超越する、と指摘したのは正しんだよ」 来日決定!どうぞ!!

ARKONA “KOB'” : 9.9/10

INTERVIEW WITH MASHA

Q1: First, what kind of music did you listen to growing up?

【MASHA】: As a child, I wasn’t really listening to any music, because I was focused on my own creativity. However, the first impression on me of a great artist was made by Jean-Michel Jarre’s concert show when they came to Moscow. The show was absolutely grand, and it made me think about and truly fall in love with electronic music. However, I discovered metal music much later..

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【MASHA】: 子供の頃は、自分の創作に集中していたから、音楽はあまり聴いていなかったんだ。
偉大なアーティストを初めて感じたのは、ジャン=ミシェル・ジャールがモスクワに来たときのコンサートだった。 そのショーは本当に壮大で、エレクトロニック・ミュージックについて考えさせられ、本当に大好きになったよ。 メタル・ミュージックに出会ったのはもっと後のことなの。

Q2: I understand that you started your music career shortly after the collapse of the Soviet Union, Did you encounter any difficulties in this situation?

【MASHA】: I’ve been writing music since my early childhood and have been driven by my creativity, regardless of any external factors, problems, the national situation, and so on. The collapse of the USSR remains imprinted in my memory as a relatively calm time, even though everything around me seemed like a turmoil and a whirlwind of events.
My more conscious musical career was started in a vocal and instrumental ensemble, and from the age of 13 to 15, I performed various well-known hits of the time and my own creations with live musicians accompanying me. This was in 1995-1997, when both the time and my age were conducive to a calm and measured approach to my work. I simply went with the flow and lived exclusively for music..

Q2: ソ連が崩壊して間もなく音楽活動を始めたと聞いていますが、そうした状況で苦労したことはありましたか?

【MASHA】: 私は幼い頃から作曲を続けていて、外的要因や問題、国情などに関係なく、ただ自分の創造性に突き動かされてきた。ソビエト連邦の崩壊は、私の周りではすべてが混乱し、出来事が渦巻いているように見えたけれど、一方で比較的穏やかな時代としても記憶に残っているの。
より意識的に音楽活動を始めたのは声楽と器楽のアンサンブルで、13歳から15歳まで、生演奏の伴奏で当時の有名なヒット曲や自作の曲をいろいろと演奏した。1995年から1997年にかけてのことで、時代も私の年齢も、仕事に対する冷静で慎重なアプローチを助長するものだった。 私はただ流れに身を任せ、音楽のためだけに生きていたわ。

Q3: Why did you decide to make metal about Russian folklore and myths of the Slavic peoples?

【MASHA】: In 2000, when I decided to create my own metal band, I was joined by some guys from my neighborhood, including Alexander “Warlock,” who later became our drummer. He was deeply fascinated with ancient Slavic paganism and soon drew me in as well. This is our history, our past, an irrevocable yet inexorably compelling theme, that tells us toreturn to our roots and discover the true immersion in that very world that operates solely according to the laws of nature, interacting with the polytheistic universe and its various faces, interpretations, and manifestations in the form of numerous deities and elements. My consciousness got completely immersed in this, and as a result, Slavic paganism became a part of my life, and subsequently I began to convey my worldview through my music.

Q3: なぜロシアの民話やスラブ民族の神話を題材にしたメタルを作ろうと思ったのですか?

【MASHA】: 2000年、自分のメタル・バンドを作ろうと決心したとき、後にドラマーとなる Alexander “Warlock “を含む、近所に住む何人かの男たちと一緒に始めたの。彼は古代スラブのペイガニズムに深く魅了されていて、すぐに私も引き込まれた。
古代スラブのペイガニズムは私たちの歴史であり、過去であり、取り返しのつかない、しかしどうしようもなく説得力のあるテーマだ。私たちのルーツに戻り、多神教的な宇宙とそのさまざまな顔、解釈、そして数多くの神々や要素という形での現れと相互作用しながら、自然の法則のみに従って動くその世界そのものに真に没頭するよう教えてくれる。 私の意識はこのテーマに完全に没頭し、その結果、スラブ多神教は私の生活の一部となり、その後、私は音楽を通して自分の世界観を伝えるようになった。

Q4: Arkona also incorporates a variety of traditional instruments, doesn’t it? Why do you think that Slavic traditional music and traditional instruments and metal music have such a wonderful chemistry?

【MASHA】: I don’t think anything about it, I just do and I have always done what my own intuition me to do.
On our early albums, we replaced live instruments with keyboard samples, but on the album “Vo Slavu Velikim” we suddenly felt the urge to replace all the artificial sounds with the real ones, thereby adding an even more authentic atmosphere to our music. At a Moscow folk concert, we met Vladimir Cherepovsky, who impressed us with his masterful playing of numerous wooden ethnic instruments, and we invited him to bring his skills to life in this album and subsequent ones by Arkona. Later, his student, also named Vladimir, but now Reshetnikov (Volk), continued his work with us on a permanent basis.

Q4: ARKONA も様々な伝統楽器を取り入れていますよね。スラヴの伝統音楽、伝統楽器とメタル・ミュージックが素晴らしい化学反応を起こすのはなぜだと思いますか?

【MASHA】: 私は何も考えず、ただそうしてきたし、いつも自分の直感でそうしてきた。
初期のアルバムでは、生楽器をキーボードのサンプルに置き換えていたけど、アルバム “Vo Slavu Velikim” では、突然、人工的な音をすべて本物の音に置き換えたいという衝動に駆られ、それによって私たちの音楽にさらに本物の雰囲気を加えることができた。 モスクワのフォーク・コンサートで、私たちは Vladimir Cherepovsky に出会った。彼は数々の木製の民族楽器を巧みに演奏し、私たちに感銘を与えてくれた。 その後、同じく Vladimir という名の彼の弟子(現在は Reshetnikov Volk) が、私たちとの仕事を永続的に続けてくれることになった。

Q5: You are considered one of the finest female screamers in the metal world, and you use a variety of voices wonderfully. When you started out as a vocalist, there were very few female screamers in the metal world, so what made you decide to try your hand at screams and growls?

【MASHA】: Since I was already a die-hard metal fan when Arkona was created, I tried singing in a raw, extreme vocal style during one of the rehearsals, and I nailed it right away. As a result, I immediately incorporated this new, spontaneous ability into my work.
Back then, I knew very little about female vocalists with similar voices techniques, so I didn’t focus on it. It all just happened naturally.

Q5: あなたはメタル界で最も優れた女性スクリーマーの一人と言われていて、様々な声を見事に使い分けています。
あなたがヴォーカリストとして活動を始めた頃、メタル世界には女性スクリーマーはほとんどいませんでしたが、なぜスクリームやグロウルに挑戦しようと思ったのですか?

【MASHA】: ARKONA が結成されたとき、私はすでに熱狂的なメタル・ファンだったので、あるリハーサルで生々しく過激なヴォーカル・スタイルで歌ってみたところ、すぐに夢中になったの。 その結果、私はすぐにこの新しい、自発的な能力を自分の仕事に取り入れることにした。
当時は、同じような声のテクニックを持つ女性ヴォーカリストのことをほとんど知らなかったから、だれかの真似をしたわけじゃない。 すべてが自然に起こったんだよ。

Q6: You have an extensive discography. If a new fan coming to a live show were to dive into the world of Arkona, which album would you recommend first?

【MASHA】: Arkona is very diverse; over the 20 years of the band’s existence, our music has undergone enormous changes. Arkona then and Arkona now are two completely different bands. However, if you’re interested in learning about the band’s history, then of course you should start listening to the first albums. But I know some people who have only recently became fans of our music, and for them, the old Arkona was completely alien and uninteresting. However, they value and love the path we have chosen for ourselves today. It’s wonderful when there are fans of both the old, carefree, cheerful, and wildly honest, energetic yet ritually mystical folk era of Arkona, and the new, dark and hopeless, with bare bones and the breath of death, triumphant in the endless embrace of chaos. Everyone is encouraged to choose their own Arkona. And it’s too multifaceted and vast to focus on any one album.
Arkona is a long and meticulous exploration. And this exploration comes only from album to album, song to song, and nothing else. So the choice is yours; once you start studying, you’ll understand everything.

Q6: ARKONA は多くのディスコグラフィを誇りますが、もしライブに来る新しいファンが ARKONA の世界に飛び込むとしたら、どのアルバムを最初に勧めますか?

【MASHA】: ARKONA は非常に多様で、バンド結成20年の間に、私たちの音楽は大きな変化を遂げた。当時の ARKONA と現在の ARKONA は全く異なるバンドだ。ただ、バンドの歴史を知りたいのであれば、もちろん最初のアルバムから聴くべきだよ。 でも、最近になって私たちの音楽のファンになった人たちを何人か知っていて、彼らにとって昔の ARKONA はまったく異質で面白くないものなんだ。それでも、彼らは今の自分たちが選んだ道を評価し、愛してくれている。
昔の、のんきで陽気で、荒々しく正直で、エネルギッシュでありながら儀式的な神秘に満ちたフォーク時代の ARKONA と、新しい、暗くて絶望的で、骨抜きで死の息吹が漂い、混沌の果てしない抱擁の中で勝利する ARKONA の両方のファンがいることは素晴らしいことだ。 誰もが自分自身の ARKONA を選ぶことを勧めるよ。そして、1枚のアルバムに焦点を当てるには、あまりにも私たちは多面的で広大だ。
ARKONA は、長く綿密な探求である。 そしてこの探求は、アルバムからアルバムへ、曲から曲へと続く…それ以外の何物でもない。 だから、選択はあなた次第だ。ARKONA の勉強を始めれば、すべてを理解できるだろう。

Q7: As the breakthrough of Bloodywood shows, bands that incorporate the traditional music and culture of the place where they grew up into metal have been gaining popularity in recent years. In a sense, has metal truly been liberated through the world?

【MASHA】: The thing is, that it is quite difficult for a band from India, for example, to win the hearts of their listeners by playing Viking metal and incorporating elements of their own national culture into their music. Despite the fact that all the riffs have been played a thousand times before, the band becomes slightly more original.

Q7: BLOODYWOOD の躍進が示すように、育った土地の伝統音楽や文化をメタルに取り入れるバンドが近年人気を集めています。 ある意味、あなたのようなバンドがやってきたことがついに実り、やっとメタルは本当に世界中へと解放されたのでしょうか?

【MASHA】: それは、例えばインド出身のバンドが、ヴァイキング・メタルを演奏し、リスナーの心をつかむのはかなり難しいということだ。 自分たちの国の文化の要素を音楽に取り入れることで、すべてのリフが過去に何千回も演奏されているにもかかわらず、バンドはわずかに独創的になれる。

Q8: Since 2020, divisions are growing, and your country is at war. What can metal do in such a dark world?

【MASHA】: In any situation, metal unites us, and you were right when you noted in the previous question that this music is an international phenomenon that is above politics and all the filth that the ruling class is trying to plunge us into.

Q8: 2020年代に入って、世界は劇的に変化し、分断は拡大し、あなたの国は戦争状態にあります。 そんな暗い世界でメタルに出来ることはあるでしょうか?

【MASHA】: どんな状況でも、メタルは私たちを団結させてくれる。あなたが前の質問で、ヘヴィ・メタルは国際的な現象となり、政治や支配者層が私たちを陥れようとしているあらゆる汚物を超越する、と指摘したのは正しんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED MASHA’S LIFE!!

Thanatomass “Hades”

Hawkwind “In Search Of Space”

Abysmal Lord “Disciples of the Inferno”

Led Zeppelin “Led Zeppelin”

Black Sabbath “Paranoid”

MESSAGE FOR JAPAN

No, I’m not interested in any modern or trendy movements at all. I don’t know if that’s fortunate or unfortunate. I’m on a different path. But I’ve certainly heard of Japanese culture in general and am a little familiar with Japanese underground metal music. I plan to delve deeper into your country’s highly specialized musical art in the future. I love Japan very much; it’s a beautiful country, rich in remarkable history, mythology, philosophy, and wonderful cultural values. I’m so glad to finally return there after 10 long years. See you at our live shows!

私は現代的なムーブメントや流行のムーブメントにはまったく興味がないの。それが幸運なのか不幸なのかは分からない。 私は別の道を歩んでいる。 でも、日本の文化全般について聞いたことがあるのは確かだし、日本のアンダーグラウンド・メタル・ミュージックについては少し知っている。
今後、あなたたちの国の高度に専門化された音楽芸術をより深く掘り下げていくつもり。 日本は美しい国で、素晴らしい歴史、神話、哲学、素晴らしい文化的価値観に溢れている。 10年という長い年月を経て、ようやく日本に戻ることができて本当にうれしいよ。 ライブで会いましょう!

MASHA SCREAM

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KORYPHEUS : GILGAMESH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY GUSHIN OF KORYPHEUS !!

“Since August I am serving in the army. So we stopped writing new music. However, before that we managed to record 2 new songs and were about to record the third one in September but…”

DISC REVIEW “GILGAMESH”

「僕たちはロシアの SLAUGHTER TO PREVAIL とのツアー、その経験から距離を置こうとしているんだ。ああした協力は、今では不可能だよ。8月から僕は兵役に就いているんだ。だから、僕らは新曲を作ることをやめざるを得なかった。なんとか、その前に2曲の新曲をレコーディングすることができて、9月には3曲目をレコーディングしようとしていたんだけどね…」
戦争に巻き込まれること…それは私たちが享受し、人生の糧としている “文化” の破壊にもつながります。ウクライナの素晴らしきプログレッシブ・メタルコア KORYPHEUS は、ロシアの侵略によって多くを失いました。SLAUGHTER TO PREVAIL は決して侵略を肯定しているバンドではありませんが (というより、Alex Terrible は当局による逮捕の可能性もあって、アメリカに居を移している)、それでも彼らはロシアのバンドと協力することは今や不可能だといいます。メタルの寛容さや壁を壊す力も、非道の戦争には抗えません。
そして何より、ボーカリスト Andy Gushin が祖国を守るため兵役についたことで、バンドの未来さえ暗礁に乗り上げようとしているのです。それでも、KORYPHEUS はドローンとミサイルが飛び交うキーウの防空壕から見事なアルバムを届けてみせました。それはきっと、音楽家としての誇りと使命がもたらしたもの。
「子供の頃から神話が好きだった。 ギルガメシュは最古の叙事詩だ。 後の多くの登場人物、神話、英雄のルーツはメソポタミアにある。でも、このアルバムは古代の神話をテーマにしているわけではないんだ。 実際、僕たちの脳の奥深くに根付いていて、自分たちの行動や潜在意識に影響を与えている原型というものがある。それは過去と現在が出会う場所だ。僕たちはアマテラスのことも知っているよ。とても興味深いよね」
そんな KORYPHEUS が自らの “叫び” を音に乗せるため、選んだテーマは様々な神話をベースにしていました。”Gilgamesh”, “Odysseus” そして “Icarus”。神話上の人物を想起させるタイトルの数々は、古代の英雄譚に巣食う人の傲慢さ、そして悲劇へとつながり、そのアルバムを通じた人間の業はそのまま彼らが今直面している現代の悪夢へと通じているのです。
「メソポタミアは文明発祥の地。 古代のルーツを知ることは重要だ。僕たちは今でも、メソポタミアの文化と音楽は広い意味で自分たちのものだと感じているんだ。Yossi のことは、ORPHANED LAND とツアーをする予定だったから知っているんだよ。 戦争のせいで実現しなかったんだ」
JINJER, IGNEA など活気あふれるウクライナのプログ/メタルコア世界においても、KORYPHEUS が放つ異世界感は明らかに際立っています。それは、彼らがメソポタミアという人類の素晴らしさ、そして愚かさすべての始まりの地を大きな柱としているから。もちろん、彼らの音楽は PERIPHERY や GOJIRA のように実に新鮮でモダンで知的で重くダイナミックですが、同時にそこにはメソポタミアが育んだ太古の響きとドラマが潜んでいます。そうして彼らは、遥か昔の神話を現代に重ねるように、その音楽でも過去と現在を見事に出会わせていくのです。愚かな歴史は繰り返すのかもしれませんが、歴史から学べるのもまた、人間の良さなのですから。
今回弊誌では、Andy Gushin にインタビューを行うことができました。「キーウの状況はあまりよくないよ。 毎日、この都市はドローンやミサイルで攻撃されているんだ。だから、多くの人が安全を求めて防空壕に逃げ込んでいる。一方で、このような事態に嫌気がさし、危険を無視して家に留まり閉じこもっている人もいるんだ」ヘヴィ・メタルの轟音でも戦争の足音はかき消せないかもしれませんが、それでも私たちはこの優しい音楽と共に “浅はか” な思考回路を捨て去り、様々な世界に共感して文化を、そして平和を守っていくべきでしょう…どうぞ!!

KORYPHEUS “GILGAMESH” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【JELUSICK : APOLITICAL ECSTASY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DINO JELUSICK OF JELUSICK !!

“David has been my biggest hero since I was a kid. I just learned to be even more humble after hanging out with him, he’s such a sweet person.”

DISC REVIEW “APOLITICAL ECSTASY”

「僕はみんなが欲しがるものを、何でも持っていると思う (笑)。 僕はいつも、ボーカル、作曲、音楽的なトリックの箱をたくさん持っていたいと思っていたからね。自分らしくありながら、何でもこなせるように。それが実現し始めたんだ」
David Coverdale, Jeff Scott Soto, George Lynch, Michael Romeo, John Macaluso, Ron Thall, Paul O’Neill, Steve Vai, Eric Martin, Gary Cherone…クロアチア人シンガー、Dino Jelusick ほど今、メタル世界で引っ張りだこな人物はいないでしょう。しかも、彼をもとめるのは多くが “伝説級” のアーティストたち。なぜこの、33歳の若者はこれほど人気なのでしょうか?それは、Dino の “引き出し” が果てしなく多いから。
ザグレブ大学音楽アカデミーで修士号を獲得している Dino は、ボーカルのみならず、ピアノ、ギターも達人級の完成されたミュージシャンです。だからこそ、Dino は鍵盤奏者兼バックボーカルとして David Coverdale の目に止まり、WHITESNAKE に招かれることにもつながりました。様々な楽器をこなせる。それはミュージシャンとして、間違いなくプラスの要素。しかし、Dino にはそれ以上の素晴らしき “アイデア” の数々、音楽的な多様性があり、それこそがおそらく数多の伝説を惹きつけているのでしょう。
「僕たちはオールド・スクールと、とてもモダンなものの中間にあって、両方のエッジで踊っているんだ。 だから、いつも違う観客を惹きつけることができているんだと思う」
そんな Dino の多彩さ、音楽的な多様性が収束したのが、自身のバンド JELUSICK です。古き良き “歌” が戻って来つつあるメタル世界において、時には Dio に、時には Coverdale に振れる Dino の圧倒的な歌声は明らかに一際輝きを放っています。しかし、JELUSICK が素晴らしいのは、そうした彼の獰猛でありながら “オールドスクール” な歌唱がモダンなメタルの波に乗っていることでしょう。
自身の巧みな鍵盤を配したダークな楽曲には、Ivan Keller のウルトラ・テクニカルなギターが寄り添い、メロディックでありながらメタリック、テクニックと好奇心を満載したプログレッシブな新時代のハードロック/メタルが紡がれていきます。おそらく、 Ivan は Earthquaker Devices のピッチシフターを使いこなしているのでしょうが、こういうエクストリーム世界で流行りの音をハードロックに取り込む若さこそ至高。あの Vito Bratta を想起させる、実に素晴らしいギタリストですね。
歌心を追求した NEVERMORE、メタルへ振り切った KING’S X、プログレッシブな ALTER BRIDGE、ドーピングを施した WHITESNAKE…そんなワクワクするような例えが次から次へと浮かぶエキサイティングかつダイナミックな “Apolitical Ecstasy“ は、そうして無限のイマジネーションの中にロックやメタルがかつて蔑ろにしていた “奔放さ” や “衝動”、”不規則性” を歌声と共に取り戻していきます。
「David は子供の頃から僕の最大のヒーローだった。彼と付き合ってから、僕はもっと謙虚になることを学んだよ。だって彼はあんなに有名なのに、とても優しくて思いやりがある人だからね」
ミリメートルの正確さよりも大切なことがある。きっとそんな寛容さも、Dino は David Coverdale から学んでいるはずです。例えば、Ozzy Osbourne が YUNGBLUD を、FIREHOUSE の C.J. Snare が Nate Peck を育てたように、あの白蛇の伝説は Dino の素晴らしき師匠となって彼の行先を明るく照らしています。そしてまた、次々と巨人が旅立っていくメタル世界で、そうした “継承” のあり方はきっと、このジャンルの灯火となって未来を明るく照らしていくはずです。
今回弊誌では、Dino Jelusick にインタビューを行うことができました。「僕はまず第一にシンガーであり、そこでこそ100%の自分を感じる。でも、ピアノの後ろに座ると、まったく新しい経験と喜びが得られるのも確かなんだよね」 どうぞ!!Ronnie Romeo、Andrew Freeman、そして Dino の3人がいる限り、メタルの “歌”、その未来は明るい。どうぞ!!

JELUSICK “APOLITICAL ECSTASY” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【LORNA SHORE : I FEEL THE EVERBLACK FESTERING WITHIN ME】


COVER STORY : LORNA SHORE “I FEEL THE EVERBLACK FESTERING WITHIN ME”

“I think it’s one of the saddest things you can watch happen to someone, It’s a very, very slow death that you’re forced to watch happen over time, and no matter what you do, you can’t stop it from happening.”

WILL RAMOS

Will Ramos のスタジオと保管庫を兼ねた部屋。背後の紫色の壁と、それと一体になった棚には、日本から持ち帰った木刀やサーフボード、レゴセット、ワンピースのフィギュア、ハワイアン・フラワーのガーランドが飾られています。その品々は、Will が LORNA SHORE のツアーで集めたものもあれば、ファンからもらったものも。
「ゴミの山のように見えるかもしれないけど、それは照明がちゃんと当たっていないからだよ。どれも宝物なんだ」
これらの品々の中で最も重要なのが、表紙に “The Rat Club” と書かれた黒い本。ラット・クラブは Will のアパレル・レーベルの名前ですが、もともとはPatreonのコミュニティで、そこで彼は普段の仕事とは全く異なる音楽を共有していました。このレーベルは絶大な人気を博し、Will は何度か交流会を開催しましたが、事態があまりにも混乱したため縮小せざるを得なかったのです。しかし、その前に、ある人物がこの本を贈ってくれました。初めてそれを受け取った時、彼は涙を流したといいます。
「これは本当に最高に美しい…誰かがまず、僕宛にメッセージを書いてくれ、僕たちが出会った頃の写真も添えてくれた。そして、それを次の人に送り、その人も同じように送り、また次の人へと、というように続いていった。少なくとも数ヶ月はかかったはずだよ。なぜなら、アメリカだけでなく、ヨーロッパや南米など世界中から人が集まっているからね。この本は本当にたくさんの人の手に渡ったんだ」
そうして、寄せ書きを書いた人たち、さらには世界中のファンが LORNA SHORE 5枚目のアルバム “I Feel The Everblack Festering Within Me” に満足していることは間違いないでしょう。バンド特有の荒々しさが息を呑むようなスケールと創造力の奔放さと融合し、デスコアのルール・ブックを再度塗り替えています。そして、Will の黒い本と同様に、このアルバム壮大でありながら、親密でパーソナルな作品でもあるのです。
後者の性質について語る時、ニュージャージー州のほぼど真ん中、ミドルセックス郡にある Will の家は重要な鍵になります。ただし、ここは彼が育った場所ではありません。幼少期、Will は住民が “リバー・ラッツ” というニックネームで呼ぶハドソン川沿いのエッジウォーターと、そこから40マイル以上離れたレオニアを行き来していました。家族が州中に散らばっていたのです。つまりこの場所は、身近で深刻な問題を扱ったこの作品の感情的な震源地となっているのです。

アルバムの不吉なタイトルは、”Prison Of Flesh” という曲の歌詞に由来していて、そこで Will は自らの家族が多く苦しむ認知症が、いかに残酷にも愛する人たちの主体性とアイデンティティを奪っていくかを歌っています。
「認知症は誰にでも起こりうるし、誰かに起こるのを見るのが耐えられないほど悲しい出来事の一つだと思う…それはゆっくりとした死であり、時間をかけて見守らざるを得ない。何をしても、進行を止めることはできないんだ」
ウィルの父方の祖母は長い間認知症を患っていて、今では “かなり進行して” おり、自分の家族でさえも見分けがつきません。
「以前は通りで彼女を見かけても、何も言わずに通り過ぎた時もあった。通り過ぎる時に彼女が僕だと気付くかどうか確かめるためだったんだ。もう何度も会っているのに、彼女は僕が誰なのか全く分かっていないんだよな…」
Will の叔母も認知機能の低下が見られますが、症状はそれほど深刻ではありません。ただ彼女は今でも、Will に北ジャージーの地元で道路が閉鎖されていると定期的に電話やメッセージを送ってきます。数年前に引っ越したにもかかわらず、Will がまだそこに住んでいると勘違いしているのです。
「話は聞くけど、もうそこには住んでおらず、実際はかなり遠くに住んでいることを伝えるんだ。すると叔母は “ああ、そうか…” と言って、後でまた同じことを聞いてくる」
Will はその悲しみを、認知症を悪霊が犠牲者に取り憑く様子 “何かが私の心を襲い、ゆっくりと私の内側を蝕んでいく” に例え、彼らを抜け殻同然にしてしまう “恐怖以外の何ものでもない、空っぽの体” という叫びで表現します。そうして彼自身も同じ運命を辿るのではないかと恐れているようにも思えます。”私は心の闇から逃れられない/悪魔は私の中に棲みついている”。
おそらくそれは、Will が家族の中でずっと若く、だからこそ介護の責任があり、その苦しみを痛感しているからでしょう。彼自身も認めているように、31年前に生まれた彼は “サプライズ・チャイルド” でした。彼が生まれた時、両親にはすでに3人の娘がおり、最も下の娘でさえ Will より15歳年上で、彼女には Will よりわずか3歳年下の息子がいます。
「僕の家族は高齢化している。皆が年老いていくのを見て、もし誰かが亡くなったらと思うと…だからすべてをやってあげたい。後悔したくないんだよ」

両親は人口の85%がローマ・カトリック教徒とされるプエルトリコ出身。アメリカに移住したにもかかわらず、両親は揺るぎない信心深さを保ち、子供たちには毎週日曜日、放課後もミサに行くよう強く求めました。特に熱心なのは母親です。彼女は Will が “クリスチャン・サルサ・サン” と呼ばれるような、信仰と家族の伝統を重んじる、端正な青年になることを夢見ていました。そして母親にとっては残念なことでしたが、デスコアのファンにとっては幸運なことに、その夢叶いませんでした。
「母と特にひどい喧嘩をしたのを覚えている。僕は顔中にピアスをしていたんだ。母は僕にこう言っていたよ。”あんな友達とは付き合ってほしくない。あんなにピアスしててヘヴィ・メタル聴いてるし” って。当時彼女は、僕もそうだったって分かってなかった。てそれが僕だった。母はそれを一時的なものだと思っていたかもしれないけど、僕にとってはそれが自分だったんだ。ピアスをするのが好きで、なりたい自分になるのが好きなんだ」
義理の弟が亡くなるという悲劇にも見舞われました。
「”Forevermore” は、義理の弟が亡くなった時のことを歌っているんだ。この曲は、ヴァイキングの葬式を象徴している。昔は、人が亡くなると…皆が悲しみながらも、ヴァルハラでまた会おうって気持ちになったんだよな。それから彼らは外に出て矢を放つ。矢は船に命中し、船は炎に包まれ、海へと旅立つんだ。皆が悲しみながらも、同時に少しだけ喜びも感じる。その人と知り合えただけで幸せなんだよ。
“Forevermore” では、まさにその瞬間を表現しようとしている。この曲には、人生は庭のようなもので、僕たちは皆、庭に咲く花のようなもの、という歌詞がある。そして遠くからカラスの鳴き声が聞こえてくる。カラスは死を象徴する鳥だと言われていてね。時が経つにつれて、庭の花が摘み取られて、彼はまるで突然、どこからともなく姿を消したかのようだった。最後は、これは別れではなく、向こう側でまた会おう、という思いで締めくくられる。まるで弟への最後の頌歌のようで、まるで彼がどこにいようと、彼に語りかけているような。だから、これは僕が長年書いてきた歌詞の中で最も重要なものの一つかもしれない」

AIが台頭し、物事がアルゴリズムで創造されるようになった今でも、Will のような人物を再現するのは難しいでしょう。LORNA SHORE が彼ららしくなったのは、Will の自分自身と自分の仕事に対する信念のおかげだといえます。彼が2020年に加入するまでに、グループには3枚のアルバムと4人の元ヴォーカリストがいました。
それから5年、彼らはバンドを刷新し、大きく飛躍を果たします。2021年6月11日、Will の正式メンバー加入が発表された日に、新曲 “Hellfire” をリリース。バンド自身でさえ未だに理解できない展開ですが、この6分間の曲は、TikTok で Will の異様な歌声を真似しようと試みる #LornaShoreChallenge のおかげで、瞬く間に人気を博しました。現在までに、この曲はSpotifyで7,300万回以上再生されており、この記録は2022年のアルバム “Pain Remains” にも活かされました。意外に思う人もいるかもしれませんが、Will はスクリーム・テクニックを身につけるにあたって、適切なヴォーカル・コーチやテクニックのトレーニングを受けたことはありません。
「昔から、デスコアのヴォーカリストになりたかったんだ。悪魔のような、小さな怪物のような声を出すのが好きだったから。僕はただそれを試し続けた。 他のデスコア・ヴォーカリストを聴き続け、彼らからインスピレーションを受け、彼らのやっていることを真似していったんだ。
その頃は自分でも気づかなかったんだけど、他のことに挑戦すればするほど、自分の中にあるさまざまな感覚、たとえば知らなかった筋肉や声の動かし方が目覚めてくる。僕はヴォーカルをやっていない時よりも、ヴォーカルをやっている時期の方が長いんだ。 だから、試行錯誤を繰り返しながら、自分の声について学んできた。最近は、クリーンな歌い方をもっとたくさんやって、その方法を学ぼうとしているよ。クリーンな歌い方を学ぶことは、僕が想像する以上にグロウルを学ぶのに役立っている。 僕はいつも、ひとつの音を出すことができれば、それをどうにかして進化させることができると思っている人間だからね」

そういう意味で、今 Will が最もコラボレートしたいのが SLEEP TOKEN です。
「言うまでもないね。僕を知っている人ならもうみんな知っていると思うけど、SLEEP TOKEN と一緒に仕事がしたいんだ。 彼らのヴォーカル、音楽全般が大好きなんだ。 本当に素晴らしいよ!」
稀有な才能と共に、彼は若い頃から自分のやりたいことをはっきりと理解していて、迷うことなくそれを追求しました。そうして、2022年9月には彼らのヒーローである PARKWAY DRIVE のゲストとして出演することができました。
「僕たちがあんなバンドに太刀打ちできるとは思えない。僕たちはあのバンドの抜け殻みたいなものだ。今、彼らがヘッドライナーを務めた場所でヘッドライナーを務めるなんて、インポスター (詐欺師) 症候群のせいで “こんなの全然意味わかんない!” って思うんだ。でも、やるんだから、とにかく楽しみにして、この経験を最大限に楽しもう」
PARKWAY DRIVE の “アリーナ的” 影響は、新作の楽曲 “Unbreakable” への野望にも深く浸透していました。Will 曰く、この曲は彼らの “アリーナ・ソング” であり、オーケストラの要素、猛烈なダブル・キック、そして大勢の人々を間違いなく嫌悪させるであろうブレイクダウンを網羅した、シンフォニックなスケールの攻撃的な楽曲で、新たなファンを開拓しています。その中には Will の両親も含まれており、70代にもかかわらず息子の音楽を遂に愛するようになったといいます。
「バンドがうまくいっているからだよ!そうでなければ、”最悪だ!やめてしまえ!って言われるだろうね (笑)」

約1年前、父親は初めて息子のライブに訪れました。いや、ヘヴィ・メタルのライブ自体、彼にとって初めての経験でした。それまで、父ラモス氏は Will がバンドをやっていること以外、その内容をほとんど知らなかったのです。しかし、LORNA SHORE のライブを体験した瞬間、状況は一変しました。会場は広く、観客は満員で、花火も盛大。
「”ちっぽけなバンドなんかじゃない!ステージには文字通り火が燃えているんだ!” って父は言ったんだ (笑)。認めてもらうには長い時間がかかったけど、今は満足しているよ」
Will は、バンド活動を通して父親との関係を修復できたことに大喜びしています。両親は彼が12歳の時に離婚したため、Will は両親の家を行き来しながら生活していました。しかし、その綱渡は親権の問題ではありませんでした。父親と暮らしていれば、いらだちを募らせ、母親の家に預けられ、母親と暮らしていれば、”メタル人間”(彼女の言葉)であることを受け入れてもらえず、父親の元に戻る、といった具合。幸いにも、両親は Will の高校の近くに住んでいたため、ある程度の継続性は保たれていました。
しかしある時期から、Will と父親は “すっかり疎遠に” なり、連絡を絶ってしまいます。数年間、Will は会いたくないという気持ちが彼の心を蝕んでいたといいます。しかし、時の流れが後戻りできないことを実感した Will は、父親に会いに行く旅に出て、父親の変わり果てた姿に衝撃を受けます。父親はまさに老人になり、記憶にあるような白髪ではなく、雪のように白い髪になっていたのです。
「父親と息子の関係、愛する気持ちを取り戻したかったんだ。それが何であれ。父がひどく老け込んでいるのを知っているから、償いをしなければならなかったんだ」
激しい波に乗せて芝居がかったギターラインが流れる傑作 “Glenwood” は、その再会について歌われ、”昔のように戻れるかな?” というリフレインを軸に、コーラスで和解の美しさを伝えています。

バンドはどのように曲作りをするのでしょうか?常識的に考えれば、まずリフを思いつき、それをより完成度の高いアレンジに仕上げ、それから音楽を反映し、深みを増す歌詞を添えることになります。しかし、LORNA SHORE はそうではありません。彼らの創作ワークフローは少々変わっています。
「みんなで座って、”どんなバイブスが欲しいんだ?” と自問するんだ。たとえそれを物理的な物で表現しなければならないとしても、動詞で表現しなければならないとしても、関係ないんだ」
実際、それがどのようにして、とめどなく攻撃的な “War Machine” のような曲へと繋がったのでしょうか?
「このバイブスは “怒り” だって言う人もいるだろうね。誰かが “銃” って言うと、次は “ドカーン” って言う。それから “爆発” って言う。そうやって作ったアイデアを、壁に貼った大きなムードボードに、それぞれの曲のアイデアを言葉と絵で表現して書き留めて、みんな自分の部屋に集まって、とことん話し合うんだ。音楽的にはどこかから始めなきゃいけないから、Adam がギターを持って、一日の終わりに発表して、お互いの作品について意見交換するんだ」
つまり、LORNA SHORE のメンバー5人が、自分たちの音楽で伝えたいことを5人で明確に表現することで、より繊細なニュアンスが生まれるのです。
「例えば GOJIRA が、ある時はめちゃくちゃヘヴィな曲を歌って、次の瞬間にはアンビエントな曲を歌うみたいに、変化をつけられる。僕はそうありたいんだ。いつも超ダークである必要はないと思う。僕たちはそういう人間じゃない。これは今まで僕たちが発表してきたものの中で、最も人間味あふれる作品だと思う。僕たち全員が、個人として、あるいは一緒に、実際に体験した物語や感情に基づいている。これは今までやったことのないことだ」
この新たな章をどう乗り越えていくかは、全く別の問題です。Will は前述のインポスター症候群を抱えており、バンドの急成長のスピードにまだ慣れていません。
「世代のせいなのか、それとも何か他の理由なのかは分からない。最近、誰かと話したんだけど、本当に良いことをした時、自分がそれを良いと感じたというよりは、それをじっくり考える時間も与えずに次のことに移ってしまうんだ。LORNA は急速に成長していて、たくさんのことが起こっているから、ハンドルから手を離すのが難しい。だから、時にはハンドルに引きずられるしかないんだよ。ほんと、あっという間にいろんなことが起こった。 バンドにいたすべての時間を振り返ってみると、”ワオ、僕は本当にしばらくここにいたんだ” というような、ほとんどシュールな感じなんだ。 信じられないよ」
すべてがうまくいっているという感覚、充足感と充実感が入り混じった感覚は、Will が滅多に味わうことのできないもの。だからこそ、それが訪れた時は特別な感覚になるのです。普段はなかなか抱かない自己省察を強いられるから。
「会場に戻る前に、どこかで食事をする。その時考えるべきことは、食事をすることと会場に戻ることだけだよね。でも、ふと “今この瞬間、すべてが完璧に感じられる” と思うんだよな」

参考文献: NEW NOISE MAG :INTERVIEW: LORNA SHORE VOCALIST WILL RAMOS TALKS ‘I FEEL THE EVERBLACK FESTERING WITHIN ME’

KERRANG!:Lorna Shore: “The band’s growing so fast that it’s hard to keep your hands on the wheel. Sometimes you’ve got to let it drag you around”

LOUDWIRE : WILL RAMOS

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRSTBORNE : LUCKY】CHRIS ADLER’S TRIUMPHANT RETURN !


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS ADLER OF FIRSTBORNE !!

“I had lost the joy of playing as I found it disappointing. This changed when I realized I had only been focusing on the things that dystonia had taken away – trying to find ways around it or force it to work. Once I turned my focus away from those very few things, I began to enjoy playing again and have found a new appreciation and love of the instrument and how creative I can be with it.”

DISC REVIEW “LUCKY”

「ミュージシャンズ・ジストニアやジストニア全般は、治ったり良くなったりするものではないんだ。僕はまだ、この病気に適応する方法を学んでいるところなんだよ。もう二度と自信を持ってできない動きもあるし、長い間とても憂鬱だった。またプレーしたいと思うようになるまでには時間がかかった。プレーする喜びを失い、失望していたからだ。
それが変わったのは、ジストニアによって奪われたものにばかり目を向けていたことに気づいたときだね。それを回避する方法を探したり、無理やり何とかすることばかり考えていたことにきづいたんだ。でも、そんなごくわずかな、ネガティブなことから目をそらすと、僕は再び演奏を楽しめるようになり、楽器への新たな感謝と愛情、そして楽器を使っていかに創造的になれるかを発見したんだよ」
病は誰にでも降りかかります…才能にあふれるミュージシャンにも分け隔てなく。あの Jason Becker が全身の筋肉が徐々に萎縮してしまう難病 ALS に冒された時、多くのファンは若きギターヒーローの過酷な運命を嘆き、彼の音楽人生は早晩、終わってしまうだろうと考えました。しかし、Jason は病と向き合いながら、多くの人の助けを借りながら、今もその美しい旋律を私たちに届け続けています。音楽に対する情熱、きっとそれが今も Jason を突き動かしているのです。
LAMB OF GOD で伝説となったドラム・ヒーロー、Chris Adler もまた、病に冒され、立ち向かい、共存しながら創造の翼を広げています。そう、音楽に対する情熱の炎は、過酷な病にも屈することはありません。何より、ヘヴィ・メタルには素晴らしきレジリエンス、回復力、反発力が宿っているのですから。Chris は楽器への愛情と感謝で憂鬱から立ち直り、FIRSTBORNE という新たなスタートを切ったのです。
「これまで僕がやってきたことと競争したくなかったんだ。好きな人たち、一緒にいたい人たちと一緒に新しいスタートを切りたかったし、単純に友人関係の調子やその場の雰囲気に音楽の方向性を委ねたかった。メンバーには、僕が以前やったことのコピーだけは禁止だと伝えた。この方向性がとても気に入っているよ。聴いていてとても楽しいし、子供の頃に聴いていて、音楽に関わりたいと思うようになった音楽をいろいろな意味で思い出させてくれるよね」
FIRSTBORNE の音楽は、LAMB OF GOD, TESTAMENT, PROTEST THE HERO, MEGADETH といった過去に彼が携わってきたエクストリームな音楽とは少し異なっています。”First-born” 、初めての子供というバンド名が表す通り、Chris は健康だった過去の自分と競うのではなく、病気と共に生まれ変わることを選びました。そうして、子供の頃に夢中になっていたハードロックを基盤に、スラッシュ、パンク、プログ、ブルースといった自らのルーツを配合し、新たな道を切り開くことに決めたのです。
相棒は、Ronnie Romeo と並んで今最もハードロックの真髄を体現できるシンガー Girish Pradhan、”ソフト・シュレッド” という新たなジャンルを確立したギタリスト Myrone、そして歴戦の強者 James Lomenzo。このメンバーから生み出される音楽に、情熱の炎が宿らないはずはありません。エナジーも、パワーも、フックも、テクニックも、メロディも、メタルを愛するものなら琴線に触れるものばかり。何より、Chris のタイトで正確無比なあの轟音が再び帰ってきた…その事実に私たちはただ、敬意と感謝を持ってこの “幸運” を噛み締めるだけなのです。
今回弊誌では、Chris Adler にインタビューを行うことができました。「LAMB OF GOD は僕のライフワークだったからね。僕はあのバンドにすべてを注ぎ込み、自分も含めてバンドのみんなのために懸命に働いた。 バンドの歴史を知っている人なら誰でも、僕がどれだけあのバンドに関わり、どれだけ献身的だったかを知っている。
あんなことが起こって、一緒に育った仲間と始めたバンドにもういないなんて、今でもショックを受けているよ。正直、奇妙なことだ。僕はバンドの誰とも連絡を取っていない…というか、このようなことが起きてからずっと連絡を取っていないんだ。こんなことになったから、連絡を取る必要性を特に感じているわけでもないしね」 Chris Adler…その情熱の炎、不死鳥の翼は決して燃え尽きない。どうぞ!!

FIRSTBOURNE “LUCKY” : 10/10

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