sin23ou のすべての投稿

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DRAGONCORPSE : THE DRAKKETH SAGA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARDY LEITH OF DRAGONCORPSE !!

“We Expressed That Clean Vocals Being Underutilised And Even Ridiculed In Heavier Music In General Was Missing Out On a Whole World Of Possibilities.”

DISC REVIEW “THE DRAKKETH SAGA”

「僕たちは、自分たちが影響を受けたものをしっかりとその名に刻んでいるんだよ。DRAGONFORCE をはじめとしたパワーメタルからの多大な影響。そして WHITECHAPEL や CANNIBAL CORPSE をはじめとするデスメタルやデスコアからの影響。だから、両方の名前を統合するべきだと思ったんだ」
DRAGONFORCE の名を挙げるまでもなく、天翔るドラゴンはファンタジックなパワー・メタルの代名詞であり象徴です。一方で、”Corpse” “死体” は、CANNIBAL CORPSE を引き合いに出すまでもなく、デスメタルの根幹であり原点。その2つの単語を安直なまでに大胆に繋ぎ合わせたオーストラリアの新鋭 DRAGONCORPSE の登場は、A7X が語るようにヘヴィ・メタルが “大胆な” 進化を厭わなくなる予兆なのかもしれません。
「パワー・メタルとデスコア。この一見相容れない2つのジャンルを融合させたきっかけは、僕と BEYOND DEVIATION の Kris Chayer との単純なやり取りから生まれたんだ。そこで僕らは、ヘヴィな音楽全般においてクリーン・ボーカルが十分に活用されていない、そして馬鹿にされていることは、あらゆる可能性を失っていることになると話したんだよ」
そもそも、ヘヴィ・メタルの世界はクリーン・ボーカルが花形で主流でした。しかし、スラッシュ、デスメタル、メタルコアと時を重ねるうちに、重さこそ正義、グロウルやスクリームであらずんばメタルにあらずといった空気が醸し出されてきたような気もします。そんな中で、DRAGONCORPSE はメタルにおけるクリーン・ボーカルの重要性に再度焦点を当て、デスコアの現代的な重力の中にパワー・メタルのファンタジーを組み込む事でメタルの新たな可能性を見出して見せました。
「どのようなスタイルの音楽にも、おそらく永遠に “純粋な人” たち、ピュアリストはいるものだろう。僕たちが取り込みたいのは、ヘヴィな音楽もファンタジックな音楽も両方楽しめる、オープンマインドな人たちだよ。僕たちのようなバンドが現れて、実際に活動するのを長い間待っていたと言ってくれる人がたくさんいることは、正しい道を歩んでいることを意味しているんだ」
と言うよりも、そもそもパワー・メタルとデスコアは、それほど遠い場所にいたのでしょうか? 例えば、BLIND GUARDIAN の “I’m Alive” や “Mirror Mirror”、もしくは HELLOWEEN の ”Escaltion 666″ や ”Push” を聴けば、その実、パワー・メタルにも重さを許容する素養が十分にあったことに気づくはずです。DRAGONCORPSE はただし、その陳腐になりがちなジャンルの手術を、スタイルの良いところを合成し、それぞれの脂肪をカットすることで、両者の総和を超越するカタルシスを作り出すことに成功したのです。
そして、彼らのサウンドの中心、パワーとデスコアが重なる部分は、SOILWORK や SCAR SYMMETRY を想起させるスウェーデンの基盤が実は支えています。このコアから音楽の要求に応じて、壮大なパワーメタルのコーラスや、デスコアのブレイクダウンへと、より柔軟に、大胆に、シームレスに楽曲はその枝葉を巡らせていきます。
もちろん、デスコアとパワー・メタルという、おそらくサウンド的にも審美的にも最も異なると思われてきた2つのサブジャンルを組み合わせることで、DRAGONCORPSE はデスコアのファンがパワー・メタルの世界を探求するための、パワー・メタルのファンがデスコアの世界を探求するための橋渡しを行い、この壮大な “The Drakketh Saga” の最大の功績としたことは記しておくべきでしょう。
今回弊誌では、多才なボーカリスト Mardy Leith にインタビューを行うことができました。「J-ロックやJ-メタルにとても影響を受けているし、日本の影響も浸透している。X-Japan, D’espairsRay, The GazettE, Maximum the Hormone のようなバンドからの影響だね。高校時代は D’espairsRay の大ファンだったよ!僕の記憶が正しければ、彼らは実際に Soundwave フェスティバルの1つでオーストラリアに来たことがあるんだ!それからもちろん、DEVILOOF のようなヘヴィなものも大好きさ!」オーストラリア、アメリカ、カナダの混成バンド。どうぞ!!

DRAGONCORPSE “THE DRAKKETH SAGA” : 10/10

INTERVIEW WITH MARDY LEITH

Q1: First of all, what kind of music were you listening to, when you were growing up?

【MARDY】: I personally grew up listening to a lot of classic rock/metal, bands such as Europe, Journey, Judas Priest, which then evolved into heavier music, like Nevermore, Symphony X, DIR EN GREY, all of which influenced my vocals fairly heavily. All members have at some point been interested in some form of Power/heavy Metal, then venturing into heavier styles such as Death Metal/Deathcore and standard Metalcore.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【MARDY】: 僕自身は、EUROPE, JOURNEY, JUDAS PRIEST といったクラシック・ロック/メタルバンドを聴いて育ち、その後、NEVERMORE, SYMPHONY X, Dir en Grey のようなヘヴィ・ミュージックへと進んでいったんだ。こうした音楽すべてが、僕のボーカルに大きな影響を与えているよ。
メンバー全員がどこかの時点でパワー・メタルやヘヴィ・メタルに興味を持ち、そこからデスメタルやデスコア、メタルコアなど、よりヘヴィなスタイルに踏み込んできたんだよ。

Q2: Dragon is synonymous with fantastic metal like Dragonforce, while Corpse is synonymous with death metal like Cannibal Corpse. Why did you choose to combine these two words in your name?

【MARDY】: What we wanted to achieve was for any new listeners to know what to expect as soon as they saw our name.
We wear our influences on our sleeve, with Dragonforce being a huge Power Metal influence, and then bands like Whitechapel, Cannibal Corpse being the Death Metal/Deathcore influence. So we figured we should just merge both names haha.

Q2: “Dragon” は DRAGONFORCE のようなファンタジックなメタルの代名詞であり、”Corpse” は CANNIBAL CORPSE のようなデスメタルの代名詞だと言えます。なぜ、この2つの単語を組み合わせてバンド名にしたのですか?

【MARDY】: 僕たちは、新しいリスナーが僕たちの名前を見た瞬間に、何を期待すればいいのかがわかるようにしたかったんだ。そうして、僕たちは、自分たちが影響を受けたものをしっかりとその名に刻んでいるんだよ。
DRAGONFORCE をはじめとしたパワーメタルからの多大な影響。そして WHITECHAPEL や CANNIBAL CORPSE をはじめとするデスメタルやデスコアからの影響。だから、両方の名前を統合するべきだと思ったんだ。

Q3: Still, what other band combines power metal and deathcore? Why did you decide to combine these two genres?

【MARDY】: As far as we know, there is no other band doing what we do.
Sold Soul had some Power Metal influences on their last album, but we still feel we stand apart from the crowd in how we seamlessly merge the genres.
Bands that are similar to us however would be Killwhitneydead, Into Eternity, Mercenary, and even Scar Symmetry to an extent.
The main reason for merging these 2 seemingly incompatible genres was from a simple interaction between myself and Kris Chayer of Beyond Deviation, where we expressed that clean vocals being underutilised (and even ridiculed) in heavier music in general was missing out on a whole world of possibilities.
So we sought out to make a band that would incorporate every style, no barriers required.

Q3: なぜ、パワー・メタルとデスコアという大きく異なるジャンルを融合させようと思ったのですか?

【MARDY】: 僕らが知る限り、僕らがやっているようなことをやっているバンドは他にいない。
SOLD SOUL は前作でパワー・メタルの影響を受けていたけど、ジャンルをシームレスに融合させている点で、僕たちは群を抜いていると感じているよ。まあでも、KILLWHITNEYDEAD, INTO ETERNITY, MERCENARY, そして SCAR SYMMETRY もある程度は似ているんじゃないかな。
この一見相容れない2つのジャンルを融合させたきっかけは、僕と BEYOND DEVIATION の Kris Chayer との単純なやり取りから生まれたんだ。そこで僕らは、ヘヴィな音楽全般においてクリーン・ボーカルが十分に活用されていない、そして馬鹿にされていることは、あらゆる可能性を失っていることになると話したんだよ。
そこで僕たちは、あらゆるスタイルを取り入れることができる、垣根のないバンドを作ろうと考えたんだ。

Q4: The important thing is that you are not making music by dividing it into power metal is here and deathcore is there but rather the two naturally mingle to form a new genre, would you agree?

【MARDY】: 100% Agree! We don’t want songs that whiplash our listeners between the genres.
Having our songs seamlessly merge the genres we incorporate is our top priority, that is the DRAGONCORPSE sound.

Q4: 重要なのは、あなたたちが自然にシームレスに、その2つのジャンルを融合させ新たなジャンルを生み出している点でしょう。ここはパワー・メタル、ここはデスコアといった感じではありませんね。

【MARDY】: 100%同意するよ。僕たちは、リスナーをジャンルの狭間で混乱させるような曲は望んでいないからね。
取り入れたジャンルをシームレスに融合させることが僕たちの最優先事項であり、それこそが DRAGONCORPSE サウンドだと言えるね。

Q5: However, fans of power metal may not like guttural vocals, and conversely, fans of deathcore may not like clean, operatic singing. What do you think about such “Gate-keeper” type fans?

【MARDY】: Every style of music will have purists, probably forever. The demographic that we want to capture are those that are open-minded while still appreciating both heavier and more fantastical music.
The amount of people that have told us that they have been waiting for so long for a band like us to actually do what we do just means we are on the right path.

Q5: ただ、ガテラルが嫌いなパワー・メタル・ファンや、クリーン・ボーカルが苦手なデスコア・ファンといった、ジャンルの “ゲート・キーパー” たちには理解されない部分もあるかもしれませんね?

【MARDY】: どのようなスタイルの音楽にも、おそらく永遠に “純粋な人” たち、ピュアリストはいるものだろう。僕たちが取り込みたいのは、ヘヴィな音楽もファンタジックな音楽も両方楽しめる、オープンマインドな人たちだよ。
僕たちのようなバンドが現れて、実際に活動するのを長い間待っていたと言ってくれる人がたくさんいることは、正しい道を歩んでいることを意味しているんだ。

Q6: So, for example, fantastic stories are the heart of power metal, as in Blind Guardian, What kind of stories and fantasies does The Drakketh Saga have?

【MARDY】: The Drakketh Saga is in and of itself a concept album, an overarching story.
I plan on writing a book (and even potentially a Dungeon and Dragons campaign haha) to properly explain everything that occurs in it, and also the subsequent EPs/Albums that occur.
In a nutshell, The Drakketh Saga tells the story of a celestial deity that takes the form of a dragon (Drakketh) who then wages war on both the Sun and the Moon due to their overbearing dominion over the earth.
However, they are slain by the various races of the earth, but not without the sheer willpower of Drakketh’s hate maintaining a tangible tie with the earth, allowing them to poison the minds of those that have been in contact with Drakketh’s blood.
This leads to multiple characters in the story starting efforts to resurrect Drakketh, the DRAGONCORPSE.

Q6: 例えば BLIND GUARDIAN のように、ファンタジックな物語はパワー・メタルの心臓だと言えますよね? “The Drakketh Saga” では、どういったストーリーが語られているのでしょう?

【MARDY】: “The Drakketh Saga” は、それ自体がコンセプト・アルバムであり、包括的な物語なんだ。
このアルバムで起こること、そしてその後のEP/アルバムで起こることのすべてをきちんと説明するために、僕は本(D&D のキャンペーンもあり得るような)を書くつもりだよ。
ドラクエスサーガは、一言で言えば、ドラゴンの姿をした天神(ドラクエス)が、地球を支配しすぎた太陽と月に戦争を仕掛けるという物語。
ドラクエスたちは地球の様々な種族によって殺されていく。だけど、ドラクエスの憎しみが地球との具体的な結びつきを維持することで、ドラクエスの血に触れた者の心を毒することができるため、彼らの意志の強さを無視することはできないんだ。
そのため、物語の中で複数の人物がドラゴンコープス (ドラゴンゾンビ) となったドラクエスを復活させるための活動を開始することになっていくよ。

Q7: Speaking of fantasy, there are many anime, manga, and video game fantasy worlds in Japan, including Final Fantasy. Are there any influences from Japan?

【MARDY】: Most definitely, pretty much every member of DRAGONCORPSE has an interest in Japanese culture.
I personally have multiple Neon Genesis Evangelion and Jojo’s Bizarre Adventure tattoos. Kris has a wall of Pokemon plushies, Noah is an avid anime fan.
Japanese influence is prevalent as well, such as the Chorus of Blood And Stones being VERY J-Rock/J-Metal influenced. Bands along the lines of X-Japan, D’espairsRay, the GazettE, Maximum the Hormone. I was a big fan of D’espairsRay in High School!They actually came out to Australia for one of the Soundwave festivals if I remember correctly! Then of course the heavier stuff like DEVILOOF!
Our next EP has even more Japanese Speed Metal influences, so look forward to that!

Q7: ファンタジーといえば、アニメ、ゲーム、マンガなど、日本は文字通りファンタジー大国ですよ。

【MARDY】: DRAGONCORPSE のメンバーのほとんどが、日本文化に興味を持っているのは間違いないだろうね。
僕自身、”新世紀エヴァンゲリオン” や “ジョジョの奇妙な冒険” のタトゥーを複数入れているくらいでね。Kris はポケモンのぬいぐるみを壁に飾っているし、Noah は熱心なアニメファンだ。
“Blood and Stone” のコーラスはJ-ロックやJ-メタルにとても影響を受けているし、日本の影響も浸透している。X-Japan, D’espairsRay, The GazettE, Maximum the Hormone のようなバンドからの影響だね。高校時代は D’espairsRay の大ファンだったよ!僕の記憶が正しければ、彼らは実際に Soundwave フェスティバルの1つでオーストラリアに来たことがあるんだ!それからもちろん、DEVILOOF のようなヘヴィなものも大好きさ!
次のEPでは、日本のスピードメタルにさらに影響を受けているから、楽しみにしていてね!

Q8: The world has been plagued by dark shadows of pandemics, wars, and natural disasters. It is in these dark times that I feel that many people use fantasies and exuberance as a place of escape, courage and strength… Do you feel that Deathcore power metal, which encompasses such light and shadow, is perfectly suited to the current era?

【MARDY】: I’m unsure if it is ‘perfectly’ suited, but if any of our listeners find comfort listening to us in these troubled times, then that is a victory regardless.
We want to be a force of positive energy in not only the music scene, but for those around us. We’re all in this together.

Q8: パンデミック、戦争、自然災害など、世界は暗い影に悩まされています。そんな暗い時代だからこそ、多くの人が空想や高揚感を逃避の場とし、パワー・メタルから勇気や力を貰っているような気がします。
そうした光と影を内包するあなたたちのデスコア・パワーメタルは、今の時代に完璧に寄り添っているとも感じますが?

【MARDY】: それが “完璧” なのかどうかはわからないけど、この困難な時代に僕たちを聴いて安らぎを感じてくれるリスナーがいるならば、それは何をおいても勝利だと言えるだろう。
僕たちは、音楽シーンだけでなく、周りの人たちにもポジティブなエネルギーを与える存在でありたいと思っているんだ。結局、僕たちは皆、一緒にいるのだからね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED DRAGONCORPSE’S LIFE!!

Mardy: Protest the Hero “Fortress”

Kris: Les Colocs “Dehors Novembre”

Noah: Job For A Cowboy “Sun Eater”

Justin: Native Construct “Quiet World”

Mark: The Faceless “Planetary Duality”

MESSAGE FOR JAPAN

Hello Japan! Mardy from DRAGONCORPSE here! Hoping to come see you soon so we can all party and mosh together! Share DRAGONCORPSE with your friends and family so we can make it happen sooner!

こんにちは、日本!DRAGONCORPSE の Mardy だよ!近いうちに君たちに会って、一緒にパーティーやモッシュができることを期待しているよ!
DRAGONCORPSE を友達や家族にシェアして、早く実現できるようにしてほしい!

MARDY LEITH

DRAGONCORPSE Facebook

DRAGONCORPSE Official

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【AVENGED SEVENFOLD : LIFE IS BUT A DREAM…】


COVER STORY : AVENGED SEVENFOLD “LIFE IS BUT A DREAM…”

“We Kind Of Know The Rules Of Music, And This Record, We Were Able To Just Go Break All The Rules”

LIFE IS BUT A DREAM…

AVENGED SEVENFOLD は、常に自分たち独自の方法で物事を進めることで、モダン・メタル最大のバンドのひとつとなりました。それでも、フロントマン M. Shadows にとって最新作 “Life Is But A Dream…” の変化は我ながら衝撃でした。
「ショックだった!プログレッシブなザッパのようなものから、突然ファンク、DAFT PUNK、そしてフランク・シナトラやオズの魔法使いのようなものへと変化していく。こんなの初めてだよ。よし、これはすごいぞ!という感じだった。最近では、100 gecs とかと同じ衝撃。彼らの曲を聴いたら、”脳みそが花火になったみたいだ” って思ったんだ。でも、とてもうまくできている。音楽を作る人間として、”これは表面上のものではない” と思ったんだ」
しかし、彼は常にそう確信していたわけではありません。ギタリストの Synyster Gates と一緒に車に乗っていたとき、Shadows はバンドメンバーに向かってこう尋ねたのです。
「このアルバムはそんなに突拍子もないのか?」 と。Shadows はあまりに長い間、このアルバムとともに生きてきたため、衝撃はいくらか薄れて “普通” に感じられていたのです。
しかし、Synyster は友人の心配とは違う解釈をしていました。
「このアルバムは、アレンジやプロダクションの観点から、奇妙でクレイジーでファックな作品だよ。そして多分、Shadows が言いたかったのは、ソングライティングの構造。今までは考えもしなかったんだけど、このアルバムは僕らの中で最も子守唄的で親しみやすいアルバムかもしれないということなんだ。ソングライティングは、私たちのベストだと思う。40歳が18歳の道具を使っているような音にならないように、どれだけめちゃくちゃにできるか試してみたかったんだ!」
Shadows と Synyster は、以前 “論争的” なレコーディング過程を経験しているため、今ではほとんどすべてにおいて意見が一致するようになりました。むしろ、お互いのことを “いい人” とさえ思っていると、Synyster は笑います。つまり、AVENGED SEVENFOLD は、”Life Is But A Dream…” で極限まで自分たちを追い込みましたが、全員が同じ方向を向いているのです。
最近の彼らは、可能な限り “小さなことは気にしない” というアプローチをとっており、新曲は絶対的な真剣さで扱われたものの、人生とキャリアに対しては常にポジティブな意思が貫かれています。

人工知能やビッグバンといったテーマに思慮深く取り組んだ2016年のプログ大作 “The Stage” のあと、パンデミックで深い実存的危機を経験したフロントマンは、”人間の完全な経験” について思いを巡らせはじめました。
「AIのオーバーロードの可能性について語るよりも、ずっとエモーショナルなレコードだよ。いつか必ず起こるであろう “自分が存在しない世界” について考え始めると、その衝撃が心に響いて、フリーズするんだよね」
今作はより心に響く内省的な作品だと、Synyster も同意します。
「実存主義。この言葉を知っている人も知らない人も、みんなそれを経験している。ある時点になると、”人はみんな死ぬんだな…待てよ…みんな死ぬのか!” って思うでしょ。そして、子供ができて、”子供もいつか死ぬんだ…” と思う。そして、それはあまりにショッキングな事実だ。人生で感じる “平凡” は、実は人生の報酬なんだよな。子供たちと映画鑑賞を楽しんだり、練習に連れて行ったり、感謝祭に両親を訪ねたり。めんどくさくてつまらないことが実は、人生をより楽しいものにするための鍵になる。だって、長生きすれば、愛する人を全員失うか、自分が死ぬか、どちらかになるからね。その覚悟が必要だし、その意味を知る必要がある」

Shadows は、このアルバムの実存的な歌詞のテーマを十分に生かすために、5-MeO-DMT(ガマの毒として知られる)というサイケデリックドラッグに手を出しました。その高揚感は、信じられないほど洞察力に富ませ、目を見開かせるものでしたが、自我を破壊するような体験は、彼を精神的な危機に陥れることにもなりました。
「あの体験は、俺が必要としていた “転機” だった。だけどおかげで、6~8ヶ月間、実存的な危機に陥ったんだ。家から出られず、スポーツもできず、ジムにも行けず、何もできない、今までで一番深い鬱状態になったよ」
フロントマンはそこから、重要な意味を持つ啓示を受けました。
「俺たちは短い間しか生きられないんだ。だから、大胆に音楽を作らなきゃ!俺たちは、人生においても、芸術においても、映画においても、本当に大胆な瞬間を探し求めていたんだよ。究極的には、人生に目的なんてない。そのことに気づけば、あとは好きなことをすればいい。すべての扉を開けたようなものだよ。道徳は崇高な存在から与えられるものじゃない。人は本来、善良な存在で、何が正しくて何が間違っているのか、誰かに教えてもらう必要はないんだよ」
Synyster は、良い曲ばかりを集めたアルバムは地球上に存在しないと考えています。彼のお気に入りのレコードでさえ、”完璧なものではない” と。その理由はインストゥルメンタル・トラックが含まれているから。
「インストは、気に入りのアルバムをAプラスからBにする。俺はいつも完璧なレコードを書きたいと思っていたんだ。4,000万枚売れるようなレコードではなく、2、3年後に振り返って、”無駄な脂肪がある” と言われないようなレコードをね。インストは脂肪だよ。だから、”The Stage” の15分のほとんどインストな “Exist” にもボーカルパートがあるんだ!」

ただ皮肉にも、A7Xのニューアルバムにはインストゥルメンタル・トラックが収録されています。4分半の見事なエンディング・タイトル・トラックで、Synyster は武器のギター・アックスではなく、ピアノでその音楽的才能を披露しています。彼はクラシック音楽の教育を受けていないため、1日2時間以上練習し、数年かけてこれを完成させました。それだけでも大変なことですが、そこにはさらに複雑な問題がありました。Synyster は自分のピアノでしか演奏ができなかったので、プロデューサーのジョー・バレッシが彼の家に来て、そのピアノを録音するためのスタジオを作らなければならなかったのです。Shadows は、なぜ A7X が7年間もアルバムの間隔を空けなければならなかったのか伝わるだろ?と笑います。
「あれは、Synyster が長男の出産の影響で MIDI(プログラム)で書いていた時だから、10年前、ほぼ11年前だ。そして、彼は俺と妻にそのデモを送ってくれたんだ。毎晩、ヘッドフォンで MIDI バージョンを聴いていたよ。このレコードはとても重く、感情的で、最後の方は、ジャック・ニコルソンの “シャイニング” を想像していたね。最後のシーンを思い浮かべながら、このシンプルなピアノ、つまり生のむき出しのピアノを聴いたんだ。そして、この曲をレコードの最後に入れる必要があると Synyster を説得したんだ」
Synyster は Shadows の気持ちを受け止めました。
「とても光栄に思うと同時に、とても心配になったよ!最近はあまり恥ずかしさを感じないだけど(笑)、これはさすがに “俺を見て” という感じだから、ちょっと恥ずかしかったな。自分が書いて弾いたクソみたいな蛇行したピアノ曲を AVENGED SEVENFOLD のレコードに入れるというサポートがあったことに、とても感謝しているんだ。つまり、これ以上の友人、これ以上のバンドメイトを求めることができるだろうか?そういうサポートがあることにどれだけ感謝しているか、言葉にできないよ。だから、このアルバムは完璧じゃない。でも、俺はそれを冷静に受け止めているし、心から誇りに思っている」

バンドが “Life Is But A Dream…” が “完璧” でないことを指摘する理由は他にもあります。例えば、Shadows がアルバムの中で最も感動的なリサイタルを披露する壮大な “Cosmic”。
「あれは俺の最高のボーカル・パフォーマンスではない。でも、リアルに感じられるだろ?こういう作品を作る上で、それは重要な側面だと思うんだ。完璧でなければならないとか、パワフルでなければならないとか、そういう昔の、昔の、昔の作品とは全く違う哲学があるんだ。完璧ではない真のパフォーマンスをすることの方が、長期的には愛着が湧くし、クールだと思うんだ。俺は今、完璧さがまったく気にならない場所にいて、それがとても気に入っている。技術的に優れているかもしれない完璧なテイクよりも、今あるものを映し出せたらなって」
Synyster にバンドメイトの “リアル” なボーカルについて尋ねると、彼は文字通り鳥肌が立つような表情を見せます。
「彼の歌唱は、とても信じられるものだ。そして、彼の歌詞はとてもフリーキーだ。このレコードで彼が言っていること全てに感動したんだ。彼が触れている様々な事柄は、すべて心と魂から伝わってくるものだ。ある意味、昔の彼のような音にはならないように意識的に努力した部分もある。あの時代に入り込んでしまい、自分たちがどこから来たのかを思い知らされるような気がするからね。俺たちは、この作品を自分たちのものにして、一から作り直したいと思っていたんだ」
しかし、このバンドのルーツが無視されているわけではありません。実際、”Life Is But A Dream…” は、パンク、メタル、フラメンコ、スラッシュ、ハードコアの融合である “Game Over” で幕を開けるのですから。しかし Shadows は、次の50分間も同じことが続くとは限らないと嘯きます。
「紆余曲折の末に完成した作品だ。俺らが影響を受けたのは、アビーロードみたいなもので、途中まではビートルズっぽいんだけど、そこからまたカオスに追い込まれる。そこが俺らのマインドセットだった。騙したわけじゃないよ (笑)!いかに人生が短く速いものなのかを示したかった。ある日、瞬きをしたら、80歳の死に際で、”どうしてこうなった?自分が望んでいたことができたのだろうか?” ってね。

アルベール・カミュの1942年の小説 “異邦人” やアウトサイダー・アーティストのウェス・ラングの作品にもインスパイアされています。
「”Mattel” のコンセプトは、マッシュルームを少しやって、犬を散歩させていたときに思いついたんだ。”他の国ではそれが普通なのかどうかわからないが、南カリフォルニアでは水を節約するためにみんなフェイクグラスを使う。家は完璧に見えるけど、外にいる人たちはまるでトゥルーマン・ショーみたいだ」
インダストリアルなリフから、オーケストラやオペラのような要素、そして曲の後半にあるプログレッシブなソロのブレイクまで、”Nobody” は生まれ変わった A7X を象徴するような楽曲。
「俺にとって、”Nobody” はアルバムのちょうど中心に位置していると思う。歌詞の中にとても深みがある。この曲は、俺たちがどんなコンセプトで、どんな精神状態から作ったかを完全に表現しているね。
俺たちはこの惑星に生まれ、成功とはお金であり、成功とは素敵なもの、金の鎖などであると教えられてきたということがよく描かれている。そして現実は、”もっと勉強を、もっと仕事を、もっと金を!” みたいな苦行の中に置かれる。家族や教師は、”あなたは素晴らしい!” と言い続ける。そしてある日、目が覚めると56歳で、”俺は人生をかけて働いてきた…それで?” と思うんだ。
つまり、人生は旅なんだ。目的地なんてないんだよ。”We Love You” は、俺たちが生きているこの世界の窮屈さ、何を成功と受け止め、何を勝者と受け止めるかを、とても皮肉に表現しているね。”Nobody” はリフがとてもキラーで、まるで虫のよう頭に穴を開けると思うんだ。プログレを意識することなく、とても面白いアレンジになっているし、シリアスな雰囲気が漂っている。意味のある、重みのあるものを提供しようとしているんだ。とても重みがあるんだよ」

アルバムのフィナーレを飾る “GOD” の3曲は、Shadows にとっても “攻め” た組曲です。
「”Life Is but a Dream…” は、”G”, “(O)rdinary”, “(D)eath” の3曲からなるめくるめく組曲で締めくくられる。これは A7X の全作品の中で最も野心的だと言えるかもしれない。このアルバムのジャンルを超えた折衷主義を象徴するというかね。この3曲は1つの曲として作ったんだけど、横になって続けてボリュームを下げて聴いていたら、突然心臓発作を起こしそうになったんだ。OK、これはあまりに変だと思った。STEELY DAN と Zappa から、Stevie Wonderと DAFT PUNK, そしてシナトラへあっという間に変わってしまう。自分の音楽で自分をビビらせたことは今までなかったんだ」
完璧ではないと言いながらも、”Life Is But A Dream…” のすべては100%意図的に作られています。信じられないほどの緻密さは、今も昔もA7X のやり方であり、特に Synyster はそれを気に入っています。
「俺は世界一偉大なソングライターではないけれど、自分には容赦がないんだ。心の底から好きで、アレンジして、作るのが待ちきれないようなものに出くわすまでは止めないよ。そしてそれは、膨大な時間と、エネルギーと、執念と、少しでもアレルギーのあるものに対するクソみたいな態度が必要なんだ!今日ここに座って、純粋に “自分たちが作ったアートが大好きだ” と言えるくらいにはね。ロックは少し型にはまった音楽になってしまったと思う。このアルバムが、その限界を超えるためのインスピレーションになればいいなと思っているんだ」
LINKIN PARK の Mike Shinoda もこの壮大でガッツ溢れる作品を気に入っていると Shadows は興奮します。
「”4歳児がキャンバスに絵の具を投げつけているのとは違うんだ。君らは何をやっているのか理解しているんだから。君らは今まで美しい絵を描いてきたけど、今、キャンバスに絵を描くと、それは芸術になっている” と言ってくれた。つまり、音楽のルールを知りながらすべてのルールを破ったから、より意味があるんだとね」

Mike の言葉はまったくもって的確です。8枚のアルバムをリリースした AVENGED SEVENFOLD。Synyster は同じメタル作品を何度も何度も焼き直すよりも、芸術を追求することを望み、この場所にたどり着いたことに喜びを感じています。
「俺たちはこんなにも奇抜でイカれたアイディアを持っているのに、”なぁ、Johnny、これを演奏してくれないか?” と言えるんだから、このバンドは本当にすごいよ。Zacky Vengeance のような男のところに行って “クレイジーなコードなら何がある?” あるいは Brooks のところに行って “モダンなグルーヴのザッパが必要なんだが、どうだ? DAFT PUNK が欲しいんだ。初期の METALLICA が欲しい” とかね。パートをこなすだけでなく、革新的で新鮮な空気を吹き込むことができる男たちがいるんだ」
しかし、ファンのすべてが Mike Shinoda の波長に合わせられるというわけではありません。実際、Twitter で定期的にファンと交流している Shadows は、SNS の陰鬱な面を見るのに慣れていて、時々投げかけられるくだらない言葉を受け流すことができます。
「コメント欄で、”こいつら、もう曲の作り方を知らないんだな” とかね。”Bat Country みたいな曲をもっと作ってほしい” とかもある。あるいは、”彼らは(故ドラマーの)The Rev と一緒に死んでしまった” と言う人さえいる。そして、俺が書いた曲の数々まで、The Rev が作ったことになる。それは誰かが死んだときに起こることで、 “彼がこれとこれとこれを書いたから…” と言われて、”いや、本当は俺が書いたんだけど、まあいいか” みたいなことになる。でも、Rev はこのアルバムに興奮すると思うよ。ヤツはいつも新しいことに挑戦する先導者だったから。”Mattel” には Rev が昔書いたパートも使われていれる。だから、この先、新しいことをやっていく中で、ネガティブなものばかりが目につくようになることはないだろう」

つまり、Synyster に言わせれば、A7X は自分たちや自分たちのヒーローを “再利用” することをもうやめたのです。
「新しい領域、新しいアプローチ、新しいテクニックを探求する時期だったんだ。バンドの誰もアンプに繋いで、音を大きくして、俺たちのリフ、PANTERA のリフ、METALLICA のリフの焼き直しを書きたくなかったんだ。でも、だからといって、ギター中心であってはいけないというわけではないよ。今回、オーケストラ以外のもの、シンセパートまで全部ギターなんだ」
Shadows はまた、バンドの特定の時代のファンが新曲にどう反応するか、様々なアルバムへの愛着が今のA7X の活動を受け入れるか拒むかをよく考えています。例えば、2003年の “Waking The Fallen” や2005年の “City Of Evil” にしか興味がない場合、それは場合によっては “妨げ” になるのではないかと彼は考えています。
「俺らのやることはすべてメイクアップとデュエル・ギターとスピード・ドラムだと思っている人たちがいるけれど、俺たちは12年間それをやめているよね? だけど、人々はまだ俺たちをその箱に入れたがる!
もちろん、純粋なメタルシーンは常に存在すると思う。常に脈を打っている。ただ、革新性はないと思うし、ファンが革新的なものに対してオープンマインドでいられる能力もないと思う。素晴らしいソングライティングも少し失われてしまったように思うね。同じようなアルバムを出すだけというのは、ファンに対して失礼だと思う。再利用というか。レコードを聴き、AIを装着して “こんなレコードが欲しい” と言えば、それはおそらく作ることができる。
だから、バンドが同じものを何度も提供しようとするのは罪だよ。彼らは創造的でないだけでなく、リスナーを馬鹿にしているのだから。レコードを作らなければならないからアルバムを作っているだけかもしれないね。俺はバンドが “言いたいことがあるとき” にアルバムをリリースすることを望んでいる。メタル以外にも世の中には素晴らしいアートがたくさんあって、素晴らしいポップス、素晴らしいヒップホップ、素晴らしいR&B、そして本当にエキセントリックなことをやっているアーティストもいるんだよ」

ただし、このアルバムの背景、人生の壮大な計画の中で、そんなことはどうでもいいということを、Shadows は理解しています。コメント欄、ソーシャルメディア、速いペースで進む世界…しかし M.Shadows はそれよりももっと大きなことを抱えています。
「今の世の中、俺は不安でいっぱいで、注目を浴びることができず、何らかの牽引力を得ることができないかもしれない。でも俺はそれを美しいと思うし、選択肢がたくさんあることを面白いと思う。だから、自分のメッセージを言って、アートを出すだけでいい。アーティストが自分のやりたいことをやり続け、より深く掘り下げることができるのは、自由なことだよ。なぜなら、今は80年代でも90年代でも2000年初頭でもないのだから、自分が思っていたようなフィードバックやトラクションを得ることはできないよ。大丈夫」
しかし、最終的には、”Life Is But A Dream…” は、意図した場所に届くはずです。
「”メイクアップとデュエルギター” の枠に入れられたら、その枠が好きでない人たちがこのアルバムを気に入るチャンスがなくなってしまう。昔の作品を求めている人も大勢いる。で、どうするんだ?(笑) また昔のような曲を書くのか?それとも、他の人たちに聴いてくれるように頼むのか?結局、何もすることはできないんだ。だけど、ただ存在していれば、きっとみんな見つけてくれる」

日本盤のご購入はこちら。WARNER MUSIC JAPAN
参考文献: KERRANG! Avenged Sevenfold: “Just say your message and put the art out there. Artists should do what they want and explore deeper rabbit-holes”

REVOLVER: 5 THINGS WE LEARNED FROM OUR AVENGED SEVENFOLD INTERVIEW

Avenged Sevenfold’s Synyster Gates Explains One Thing That’s Wrong With Rock Music Today

M. SHADOWS: AVENGED SEVENFOLD Was Able To ‘Break All The Rules’ Of Music On ‘Life Is But A Dream…’ Album

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【KING’S X : THREE SIDES OF ONE】


COVER STORY : KING’S X “THREE SIDES OF ONE”

“I wrote lyrics with my age in mind, so it has become sort of my mantra for what I’m doing for the rest of my life”

THREE SIDES OF ONE

これまで、KING’S X ほど見過ごされてきたバンドはいないかもしれません。ただし、dUg Pinnick, Ty Tabor, Jerry Gaskill の3人は、チャートのトップに立つことはなかったかもしれませんが、熱心なファンの心には深く刻まれ続けています。
80年代半ば、このトリオはテキサス州ヒューストンに渡り、メガフォース・レコードと契約。”Out of the Silent Planet”(1988)、”Gretchen Goes to Nebraska”(1989)、”Faith Hope Love”(1990)と、口紅とロングヘアのゴージャスな時代において、あらゆるジャンルの規範を無視した伝説のアルバムを3枚録音しました。
だからこそ、90年代初頭には、多くの仲間のロックバンドを虐殺したグランジの猛攻撃から免れることができたのかもしれません。音楽界の寵児として、また “次の大物” として、KING’S X はアトランティック・レコードに移籍し、セルフタイトルのアルバム(1992)を録音しましたが、残念ながらビルボードに並ぶほどの成功は得られませんでした。それでも彼らは、90年代から2000年代にかけて、感情を揺さぶる、音楽的に豊かなアルバムを次々と発表し続けました。
そうしてロックミュージックで最も露出の少ないバンドは、2008年に突然沈黙するまで、自らの道を歩み続けたのです。
休止中も、dUg は KXM や GRINDER BLUES で音楽を作り続け、自身の名義でレコードをリリースするなど、ゲリラ戦士として戦いを続けていました。クリエイティビティに溢れるベーシストは KING’S X の終焉を考えることはありませんでしたが、一方で、次のアルバムも必ずしも期待しているわけではありませんでした。こうして14年という長い間、KING’S X はただ沈黙を守り続けました。世界は変遷し、新しい現状が形成され、KING’S X はもはや時代の一員ではなくなったかに思われました。
しかし、14年という長い年月を経て、その門戸は開かれます。ついに彼らは再び一緒に作曲し、レコーディングすることを決断したのです。その経緯を dUg が語ります。
「72歳になるんだけど、歳を重ねた実感があるんだ。自分の年齢を意識して歌詞を書いたから、アルバムは残りの人生をどうするかという詩的なマントラのようなものになった。基本的に、私は人生が終わるまでなんとか乗り切るつもりだ。世の中が見えてきてね。友達のこと、Chris Cornell, Chester Benington, Layne Staley…死んだり自殺したりした人たちのことを考えると、ただただ痛くて、”自分は絶対にそんなことはしない” といつも思っている。人生を乗り切るためには、麻酔をかけられなければならないだろう。けど、あの世で何が起こっているのかわからないし、この世で惨めで痛い思いをしてまで、何も知らないあの世に移りたいなんて馬鹿げてる…それが私の論理なんだ。だから、アルバムはそういうところから生まれたものなんだ」

たしかに、”Three Sides of One” は、一見すると瞑想的な作品に見えます。
「まあ、メンバーはレコードを作りたくなかったんだ。なぜなら、作るなら今まで作ったどの作品よりも良いものでなければならなかったから。これまでは、自分たちがやったアルバムのレパートリーに加えるべきものがあるとは感じていなかったんだ。だから、14年かかってようやく “よし、これはいけるぞ” と思えたんだ。私自身は、初日から準備万端だった。14年の間に、いくつかのサイド・プロジェクトを立ち上げたり、いろいろなことをやっていたからね。私が持ち込んだ曲は27曲で、全部新曲だし、Jerry と Tyも何曲か持ち込んでいて、それも全部新曲だ。それで、リストに載っているものを全部、十分な量になるまで実際に覚えていったんだ」
アルバムのタイトル、”Three Sides of One” は3人が共有する生来のケミストリーを表現しています。
「いつもは、アルバムの名前は決まっているんだけど、今回は誰も思いつかなかったんだよね。それで、マネージャーが “Three Sides of Truth” と言ったんだけど、私は、なら “Three Sides of One” はどうだろうと思って、みんなが、ああ、それならいいと言って。そして、そこから出発したんだよ。しばらくすると、子供を持つのと同じで、名前はそれほど重要ではなくなるものだ (笑)」
アルバムには、歳を重ねた3人の自然な姿がさながら年輪のごとく刻まれています。
「Jerry は、基本的に臨死体験から多くの曲を書いている。そして Ty は、今の生活を観察して曲を書いた。私も同じで、72歳になるんだけど、世界が今までの人生とは違って見えてきたんだ。だって、今まで生きてきた距離に比べたら、もうそんなに長くは生きられないんだとやっとわかったからね。そして、そのことについて話したり歌ったりしたかったんだよね。70歳を迎えて、私にとって一番大きなことは、今の世界をどう見ているかを詩的に歌詞にすること、そして同時に自分の周りで起こっていることを書くことだった。政治や人々が憎しみ合う様子など、でたらめなことが起きていることは分かっていたんだ。それを歌うんだけど、ただ説教しているように聞こえたり、すでに聞いたことのあるようなことを言ったりしないように、工夫しているつもりなんだ。
今は、言葉に気をつけないと、アメリカでは自動的に批判される。私は問題を解決するのが好きなんだ。私の問題は、直せないものを直そうとすること。私はいつも、なぜ世界がうまくいかないのかを論理的に解明しようとしてきた。ある意味、人は全員とは分かり合えないというのが結論なのかもしれない。だから、年齢は私たち全員に影響を与えたと思うんだ。また、Jerry はバンドに曲を提出することはあまりない。でも実際は、彼の曲が全員の中で一番いい曲だと思うこともあるんだ。だから曲を持ってきてと言ったんだ。自分たちのアルバムにするために、本当に頭を使ったんだよ」

dUg は今回、”慣れ親しんだバンドでありながら、新しいバンドにいるような気がする” という言葉を残しています。
「新しいバンドに入ったという感じではなく、自分たちを再発見したという感じだと思う。なんというか、”自分は実はいいやつなんだ” と気づくような感覚なんだ。わかるかな?結局、スタジオからずっと離れていて、演奏し始めると、疑心暗鬼になるんだよね。つまり、私たちはいつも自分たちのやることなすこと全部が嫌で、本当のアーティストらしく、自分の芸術に対して否定的なんだ。でも今回は、最初に作った曲のとき、スタジオに行ってベーシックなトラックを聴いたら、生まれて初めて “おお、すごいな!” 思ったのを覚えているよ。やっとわかったよ…と。私たちの演奏には、欠点ばかりに気を取られていて気づかなかった何かがあるんだよな。だから、とてもエキサイティングで、もっともっと探求したくなったんだ」
その新たなマインドは、アルバムの歌詞の内容にも表れています。
「絶望的に見える世界の状況も、人類に何らかの救済や和解があることを願いつつ、それが歌詞に深く刻み込まれている。まあ、自分の周りで起こっていることを考えただけなんだけど。”Give It Up” は、私の気持ちを代弁してくれているような気がするね。私はライトが消えるまで、絶対に諦めない。Layne, Chris, Chester…友達が自殺していくのを見てきたんだ。クリスが死んだ頃にこの歌詞を書いていて、思ったんだよ。”ライトが消えるまで、絶対にあきらめないぞ” と。だって、死後の世界に何があるのかわからないし、そこを好きになれないかもしれないから。だから死ぬことは考えないよ。今できることを精一杯やりたい。最後に麻酔をかけられるまで、ずっとここにいたい。これが私の知っているすべてで、終わるまで乗り切るつもり。それが私にとっての知恵だから。それ以外のことは、他の人が決めることだけどね」

“Swipe Up” は時代を反映した楽曲。
「この曲は Jerry がジョン・ボーナムのスイッチを入れているね。インターネットや iPhone を利用しているときの体験がテーマになっているんだ。私たちはただスワイプし続けるだけで、アルゴリズムが自分だけの小さな世界の中で欲しいものを与えてくれる。だから、この曲は全部それについて歌っているんだ。iPhoneの小さな世界で生きていることについて」
テクノロジーの進歩は、音楽全般に対して悪影響を及ぼしているのでしょうか?
「進歩が起これば芸術も変わる。そういう観点では考えていないよ。例えば、最初のドラムマシンが登場した時、多くのドラマーが職を失った。しかし、突然、ドラムマシンのような安定性とタイミングを持った機械が登場したことで、私たちは皆変わり、クリックトラックで演奏するようになり、ドラマーはより良くなったんだ。オールドスクールはまだ存在して、まだレコードを買い、CDを買っている人もいるけど、新しい世界では音楽の見方や聴き方が違うよね? 彼らは iPhone で音楽を聴くし、彼らが好きな音楽も全然違う。それが “彼ら” の音楽なんだよ。
私が若い頃、THE ALLMAN BROTHERS を聴いていたら、親が “そんなのブルースじゃない” と言うようなものさ。よく、”BB KING を聴きなさい” と言われたものだよ。つまり、進歩とは、そこから何を学ぶか、そして自分の芸術をどのように変化させるかということなんだ。私は、すべてのことをポジティブにとらえるようにしている。難しいけどね。ナップスターが登場したとき、みんなが我々の音楽を配り始めて、それは最悪だった。それで、私たちはひどい目に遭ったよ。でもね、それでどうなったか?私たちは、人々が買ってくれるような素晴らしい商品を作る方法を学ばなければならなかったし、人々が私たちのライブを見に来るような良いコンサートをやらなければならなくなった。自分に起こることはすべて、自分なりの方法で適応していくしかないんだ。あの出来事で泣く人がいるなんて、そんなの戯言だ。泣いてばかりじゃダメだ。立ち上がって、やり遂げるんだ」

ネットがもたらしたものとその弊害にも言及します。
「人との関係において私が常に念頭に置いているのは、相手の行動を理解し、自分の気持ちを明確にして、争いのない方法でお互いに共存できるようにすることなんだ。私はいつも、平和を作るための新しい方法を探している。昔、このことを歌にしたことがあってね。私の人生は、どうやって人と良い友達になるかの積み重ねだった。彼らを知り、彼らを理解し、彼らを愛するようになることのね。
私は、人と一緒にいて、同意したり、反対したりして、みんながうまくやっていけることに心地よさを感じていたし、そのことに満足していた。だけど突然、アルゴリズムが入ってきて、みんながYouTube やスマホなどを見ていると、ビッグブラザーが私たちの行動をすべて見ていて、私たちの好みをフィード、与えてくるようになった。それが始まって10年ほど経ったよね。遂に私たちは、スマホの向こうに同じ現実を持っている人は一人もいないというところまで導かれてしまった。一人もね。一つの信念に溺れるまでとことん与えられる。そして、突然、誰も信用できなくなり、それぞれが快適で同じ意見を持つ人だけが集まる洞穴の”部族”に戻ってしまうんだ。
インターネットがもたらしたもの、それは私たちが原始人だった頃のような “部族”を生み出したということなんだ。
私には出口がわからない。今のところ、出口は見えないよ。たとえコンピュータを全部止められても、私たちにはすでに強固な”部族”がある。そのどれもが外部からの影響を受けないようになっているんだよ。変えることができる唯一のものは、洪水や宇宙人の侵路で、全員が警戒心を捨てて人類のために戦い、何か統一的な危機が訪れることしかないよね」
アルバムのクローサー “Everything Everywhere” はまさに完璧なエンディングです。
「ビートルズのようなサウンドの曲を書きたかったんだ (笑)。観客たちが叫びながら歌っているような感じで、私のアンセムという感じ。大勢の人が手を挙げて歌っているのを見れたらいいなと思うんだ。そうしたら気持ちいいからね。この曲には真実の要素が含まれていると思う。なぜなら、私たちは皆、愛を探しているから。愛には、たわごとをかき分け、すべてを癒し、すべてを乗り越える力がある。この曲は私の家路であり、私の癒しだから」

他の作品よりも優れていなければ、必ずしもアルバムを作る必要はないということは、14年経った今、この作品はこれまでやってきたことをすべて上回るということなのでしょうか?
「ああ、そうだね、このアルバムは今までのどの作品よりも優れているね。というのも、私たちは43年間バンドとして活動してきたわけだから、何をするにしても、すでにやったことよりも良くなければならない。あらゆる意味でそう思っているよ。例えば、子供にマーカーを持たせて、 “毎日、壁に直線を引きなさい” と言うと、50歳か60歳になる頃には、その直線があまりにもまっすぐで、びっくりするくらいになるはずだ。だから、私が考えるに、自分のやっていることを続けていれば、必ず良くなる。それは当たり前のことなんだよ。
ZZ TOP や MESHUGGAH など、私たちと同じくらい長く活動しているバンドを観に行って、20年、30年前に書かれたものを今聴くと、”ああ、同じ曲なのに、どうしてこんなに素晴らしく良く聞こえるんだろう” と思うことがある。だから、私たちも同様に良くなっていると思う。曲作りに関しては、とにかく曲を作り続けて、みんながそれを気に入ってくれることを祈るしかないけどね。でも、シンプルな曲の書き方や、複雑な曲の書き方を学び、それを成功させるために、あらゆる方法で限界に挑戦し続けているんだ。それでも、誰かがつまらないと文句を言うかもしれない。だから、結局は、自分の頭の中に何があるのか、そして、世界中が納得するような曲を書きたいと思ったときに何をやり遂げることができるのか、ということなんだ。たとえそれが、おそらく実現することのない盲目的なファンタジーであっても、それは私の目標であり、実行するだけでもやりがいがあるんだ。つまり、人に伝わろうが伝わらなかろうが、音楽をやり続けること、それが僕にとって最も意味のあることなんだ」
心の中で、KING’S Xはもう二度とレコードを作らないかもしれないと思ったことはあるのでしょうか?
「本当に考えなかったよ。唯一、もう二度とレコードを作らないかもと考えたのは、Jerry が初めて心臓発作を起こしたとき。彼の奥さんからメールが来て、”Jerry が心臓発作を起こした。生きられる確率は50/50″ と。それを見て、私はベッドから飛び起き、”ああ、大変だ…私たちはもう終わってしまうのか” と思ったよ。”全世界で最高の親友の一人がいなくなるのか?バンドができなくなるのか?私が持っているもの、私たちが持っているもの、すべてを失ってしまうのか?” とね。その時に書いたのが “Ain’t That The Truth” で、これはソロアルバムの “Naked” に収録された。1週間後くらいに書いたんだけど、1行目に50/50の可能性みたいなのがあって、すごく影響を受けたんだよね。それ以外は、KING’S X の終わりを意識することはないね。だから、考えたこともないんだと思う。すごい。そう考えると、ちょっとクレイジーだよね!」

2022年はバンドが1992年にリリースしたセルフタイトルのレコードから30周年にあたりました。
「まあ、Sam Taylor との最後のレコードだったわけで、それはそれで意味があった。それまでは、KING’S Xのサウンドを最大限に追求していたと思うんだ。最初の3枚は、インスピレーションを受けたものを何でも書いて、自分自身を見つけようとしていたし、自分自身のサウンドを見つけようとしていたから、いろんな意味で実験的だったと思うんだ。でも、4枚目のアルバムになると、ある程度定まってきたよね。曲作りに関して言えば、”The World Around Me” のような曲は、私が “バックス・バニーのリフ” と呼んでいるもので、ああいうカートゥーンのサウンドが好きなんだ。あのレコードが完成したとき、私たちは気に入っていたし、サウンド的にも良かったと思うんだけど、バンドにとってはひとつの終わりであり、ある種のサウンドの終わりでもあったんだ。Sam Taylor が抜けた後、次のアルバムは “Dogman” で、Brendan O’braien は “このアルバムに何を求めているんだ” と言ったんだ…”ライブで鳴っているような音を出したいんだ。ロックバンドのようなサウンドにしたいんだ” と答えたね。だから “Dogman” では、Brendan はすべてのレイヤーを取り払って、ただひたすらレコードを作らせてくれたんだ」
KING’S X はメジャーレーベルであるアトランティック・レコードから初めて作品をリリースしたバンドでもあります。
「我々はレコード会社からプレッシャーを感じたことはない。なぜなら、我々はレコード会社に “勝手にしろ” と言えるくらい反抗的だから (笑)。私たちはいつもそうだったんだ。アトランティックの子会社だったメガフォースに所属していたんだけど、”Over My Head” が出たときに、彼らが我々に電話してきて言ったんだ。”ラジオで流れてヒットしそうな曲を書くと、いつもその真ん中に何かを入れて、すべてを台無しにするのはなぜだ?”って。こう答えたよ。 “それが私たちの音楽の書き方だからな。ピクニックの真ん中に列車の事故を置いたり、その逆が好きなんだ” ってね。だから、私たちのことを説明したり、カテゴリーに入れたりするのは苦労したよ。ある時期、私たちは音楽業界の寵児で、誰もが私たちが大成することを応援していた。でも、要するに、世の中は茶色いコーラを飲み続けるということなんだ。透明なコーラの味がまったく同じであっても、未知の味に乗り換えることはないでしょう。茶色のコーラを飲み続けるんだ。私に言わせれば、何百万も売り上げているバンドのほとんどは、自分のやりたいことをやっていない。そのようなバンドは、もう一度、本当のことをやりたいと願っているんだ」

反抗的といえば、dUg はかつてキリスト教という “権威” にも牙を剥いています。”Let It Rain” の歌詞はまさにそんな dUg の心情を反映した楽曲。”世界の終わりか新しい始まりか?救世主は?神々は? 今こそ私たちを救ってはくれないのか? 誰もが権利を主張し誰もが戦いたがっている 誰もが自分を正当化して だから雨を降らせよう 恐れを洗い流すために”
「ゲイであることを公表したとき、ハードロック・コミュニティからの反発はなかったんだ。私は声明を出したり、プレス発表をしたことはなくてね。ただ、メジャーなクリスチャン雑誌のインタビューを受けたんだ。彼らが延々と話すから、私はただ思ったんだ。”クリスチャンの偽善にはうんざりだ。私はゲイだと言って、それで終わりにしよう” とね。
今日、それは問題ではない。誰からも反発されたこともないしね。ただし、あの記事が出たときは別だった。KING’S Xのレコードがキリスト教系の店で販売禁止になったんだ。その時、私たちは “素晴らしい!これでキリスト教の汚名から逃れられる”と思った。なぜか、KING’S Xはクリスチャン・バンドと思われていたからね。当時の私たちの信仰がそうだったからかもしれないけど、今はもう誰もそうではない。イエス・キリストは救世主ではないからね。70歳になったとき、世界を見渡してみたんだ。人々にはもっと思いやりと愛が必要だと思った。”雨を降らせて恐怖を洗い流せ” というのは、いい例えだよ。つまり、私たちが問題を抱えているのは、私たちが恐怖を恐れているから。立ち上がり、”怖がるのをやめよう!” と歌う、それが私の仕事なんだ」
しかし、dUg が3歳の時、連れ去られた宇宙人はキリストのようだったとも。
「3歳だって記憶しているのは、母がまだ一緒に住んでいたから。母は私が3歳のとき去ったからね。私が寝ていると、その人が部屋に入ってきたんだ。長いブロンドの髪の毛でローブを着て、それに銀色のベルトを巻いていた。すごく背が高かったのを覚えてる。足に巻き付けるサンダルを履いていたよ。裏口から外に出て、舞い上がったのを覚えてる。私は目が覚めたばかりだったが、外はとても明るかった。その時点で何かおかしいって思って、その人物から離れようとあばれたんだ。ようやく、彼は私の手を放した。次に覚えているのは、母の膝の上にいたこと。それって、ずっと、クレイジーで馬鹿げたことだと考えていた。でも40を過ぎたとき、”Ancient Aliens” を見ていて、わかったんだ。彼らは、人間がコミュニケーションを取ったり、拉致されたという4つのエイリアンのタイプについて話していた。その一つ、Nordic と呼ばれているエイリアンが、まさに彼だった。それまでは、夢を見てたんだって思ってた。でも、40年が経ち、理解したよ。私は拉致されたんだ」

宗教は dUg にとっていつしか虐待へと変わっていました。
「ゲイは忌み嫌われる存在で、神はそれを聖霊への冒涜以外の何ものでもないと嫌ってる。聖書によれば、男は他の男と寝てはならない。私はずっとそう言われてきたけど、でも同性愛者だ。
だから、誰にも言えなかったんだよ。ある時、”じゃあ、イエスがしたようにやってみよう” と決心したね。3日間断食して、自分を”ストレート”に変えてくれるよう神様にお願いしようと思ったんだ。田舎のトレーラーに座って、2日間断食して、食べずに水だけ飲んでたよ。祈って、祈って、泣いて、神が私を変えてくれるように懇願したけど、私は何も変化を感じなかった。そして、私は立ち止まって、”あきらめます” と言ったんだ。心の奥底にあったのは、人々が言う『神をあきらめるな』『神はまだ終わっていない』『神を待たねばならない』『神のタイミングで物事を得ることはできない』という聖句のことだった。だからその時は、何をやってもうまくいかないのは、すべて自分のせいだと思った。
ほら、私にとって宗教は抑圧的なものでしかなかったから。宗教は私に何もさせてくれなかった。4、5歳の頃、教会で曾祖母と一緒に最前列に座って、牧師が “踊ったり、酒を飲んだり、夕バコを吸ったりしたら、地獄に落ちるぞ。悪魔がお前を捕まえるぞ” と叫んでいるのを聞いたのを憶えている。悪魔がやってきて私を苦しめるんじゃないかと、子どもの私は毎晩死ぬほど怖くてベッドに入った。悪夢にうなされ、叫びながら目を覚ましたものだよ。
つまり私にとっては、宗教は虐待だった。他の人はそうではないし、私はそれでいいと思う。でも、私にとっては、そうなんだ。誰かが、”ああ、神はあなたを愛し、あなたの罪のために死んだ” と言ってきたら、心の中で “くたばれ” と言いたくなる。でもその代わりに、他のみんなにそうであってほしいと思うように、その人が誰で、何を信じているかを受け入れて、その人を愛するだけだよ。
私は、多くの、多くの、多くの、多くの、真の信者がいると信じているし、彼らを賞賛し、拍手を送るよ。だけどね、宗教でお金を要求する人たちはみんな、デタラメで、うそつきさ。彼らは、人からお金を搾り取る方法を見つけた、ナルシストの集団だ。私は彼らに嫌悪感を抱いている。そして、それを信じていた人たち、今も信じている人たちに対して、悲しみを覚えるんだ。嫌悪感ではなく、悲しみなんだよね。さらに悲しいことに、私は彼らが受け入れないようなタイプの人間だから、離れていなければならないんだよね。それが悲しいんだ。でも、それが人生なんだよね」

自身では、KING’S X のサウンドをどのように “カテゴライズ” しているのでしょうか?
「私たちはスリーピースのロック・バンド。ただそれだけだよ。パンクの曲も、ロックの曲も、ファンクの曲も、同じように演奏できるんだ。ドラム、ギター、ベースさえあれば、どんな曲でも演奏できる。私たちは本当に良いリズムセクションが根底にあって、それが KING’S Xのマジックだと思う。お互いのニュアンスの中で演奏する。音楽だけではなくてね。実際、KING’S Xは、私がこれまで演奏してきたバンドの中で唯一、みんながお互いの話をよく聞いているバンドなんだ。今まで一緒に演奏した他のバンドでは、周りを見渡すとみんな話を聞いていない。お互いの言うことを聞かないし、私の言うことも聞かない。でも私たちは皆、自分たちのやっていることに耳を傾けていて、その結果、違いを見分けることができるんだ」
最近では、”ロックは死んだ” というミームも使い古されてきたようです。
「ロックは死んでいない。ただ、怠け者が外に出て音楽を探さなくなっただけだ。GRETA VAN FLEETの曲は最低だけど、でも、ああした音楽を再現している子供たちがいる。20代の若者たちがサバスや BON JOVI を同時に吸収して、本物の何かを作り出しているんだ。問題は、それをやるための場所がないことだ。彼らを拾ってくれるレコード会社もない。MTVもない。新しいロックを聴かせるFMラジオもない。誰も彼らにチャンスを与えようとしないから、みんなツアーに出ている。そういうバンドを見に行くと、会場は満員になるんだけど、誰もそのことを知らない。”ロックは死んだ” 論者たちに言いたいのは、”おい、泣くなよ。彼らはそこにいるんだ。決して変わっていない。YouTube や Tik-Tok で見るような天才たちが素晴らしい音楽をやっているんだから、そこにいるんだよ” とね。私たちが子供だったころは、MTV はあったけど、Tik-Tok や YouTube がない時代だった。だから、まったく新しい世界、新しい世代の子供たちがいて、世界に対して違う見方をしていて、私が経験することのない違う経験をしている。才能はこれからも変わらず現れるだろう。ロックは決して止まらない」

dUg は世界的に名の知れたロックスターですが、決して裕福な暮らしを送っているわけではありません。
「金がなければサイドプロジェクトをやるだけだ。レコード契約を結んで、2、3ヶ月の間、支払いをするんだ。私たちは誰も9時から5時までの仕事には就いていない。でも、私たちにできることは何なのか。私たちは市場において価値があるから、クリニックとかそういうことができる。手書きの歌詞を作ることもできる。黒い紙に銀色のインクで書き出し、サインと日付を入れるんだ。何百枚も書いたよ…それでうまくいく。それに、この歳になると、ソーシャル・セキュリティーを受けることができる。3年ほど前に社会保障を受け始めたんだ。社会保険で家賃が払えるから、心配することはなくなった。それ以外のことは、自分でできる。街角でギターを弾けば、5ドルが手に入る。友だちに電話して、”お金がないんだ。今日、ご飯を食べさせてくれないか?” と言えば、OK! となる。それに、私にはシグネチャー・ペダルと、シグネチャー・ベースがあって、みんな買ってくれるんだ。だから、時々、6ヶ月分の小切手をもらって、助かっているよ」
ロックの精神は健在でも、同時代の多くのアーティストが降参したり撤退する中で、KING’S Xが長生きできたのはなぜでしょう?
「バカだからだよ (笑)。どんな困難にも負けず、自分たちのやるべきことをやり続けたし、今もそうだ。そして、ステージに上がると、世界に対して私たちが立ち向かうことになる。このバンドは誰も解散するつもりがない。私はこのバンドを辞めないし、Ty も Jerry も辞めない。誰も辞めないよ、だってバンドを解散させる責任を取るつもりはないんだから。私たちはそんなことするつもりはない。そんな愚かなことをするには私たちは優秀すぎるんだ。だから、誰かが死ぬしかないんだ、それでおしまい。この3人のいない KING’S Xは存在しない。それはあり得ないよ。もちろん、KING’S Xのトリビュート作品は常に存在しうるし、もし私が生きていれば、それに出演することもあるかもしれない。でも、私と Ty と Jerry のいない KING’S Xは存在しないだろうし、それは私の心の中で感じていることなんだ。他の人は違う意見を持っているかもしれないけど、これが私の気持ちなんだ」

参考文献: VW MUSIC:An Interview with dUg Pinnick of King’s X

DEFENDER OF THE FAITH:dUg Pinnick (King’s X) Interview

BLABBERMOUTH:DOUG PINNICK Says KING’S X Has ‘Never Been Profitable’: ‘We All Have To Do Outside Things To Make Ends Meet’

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WINGER : SEVEN】 JAPAN TOUR 23′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KIP WINGER OF WINGER !!

“I Do Feel Overall SEVEN Has All The Hallmarks Of Classic WINGER.”

DISC REVIEW “SEVEN”

「全体的に “SEVEN” はクラシックな WINGER の特徴を備えていると感じているんだ。それは、Paul Taylor の復帰とオリジナル・ロゴの復活でより強調されているね」
WINGER は巨大な才能を持ちながら、同時に “二刀流” というジレンマに悩まされてきたバンドです。華やかなロックやメタルには知性が強すぎ、プログレッシブの宮殿に入るには騒がしすぎる。この、実は非常にユニークな並列の魔法は、爆発的なヒットとなったデビュー2作のあと、局所的なリスペクトを得ることを生贄に、バンドの足枷として長く活躍の妨げともなってきたのです。
「僕たちは決して “解散” していないんだよ。グランジ・ミュージックに支配され、その間に “Beavis and Butthead” と METALLICA の騒動が起こって、当時僕たちは続けることが不可能になったから、長い間休んでいただけなんだ。アーティストとして、僕なら他のアーティストを公然と侮辱するようなことは絶対にしないよ。”Pull” に関しては、あのレコードは僕らのベスト盤のひとつだと今でも信じているんだ」
生贄といえば、WINGER はまさに90年代の “生贄” となったバンドなのかも知れませんね。ヘアメタルと呼ぶには、あまりに高度なオーケストレーションに演奏技術を纏いながら、売れてしまったがゆえに祭り上げられた不可解なシンボルの座。Reb Beach は最近、当時を振り返ってこう語っています。
「90年代に入って、グランジが台頭して、ギター20本と家を売った。アニメに WINGER のTシャツを着たキャラが登場してね。家に帰ると両親も WINGER、犬まで WINGER のTシャツを着てる(笑)。全員オタクなんだ。ダサくなったヘアメタルの象徴というかね。翌週からチケットが全く売れなくなったよ…」
METALLICA は “Black Album” のレコーディング・セッションで、Lars Ulrich が Kip Winger のポスターにダーツを投げつける映像を公開しました。今思えば、非常に愚かな行為ですが、当時ライブ会場で投影された時には、観客から大きな笑いが起こっていたそう。最近、James Hetfield が直接 Kip に謝罪の電話をかけたそうですが、時すでに遅し。やはり “時代” のスケープゴートとなった感は拭えません。非常にオーガニックかつ、ALICE IN CHAINS のような暗がりの知を宿した名品 “Pull” のリリースも焼け石に水。1994年にバンドは沈黙を余儀なくされたのです。(これまで、”解散” だと言われていましたが、Kip によると “活動休止” だったとのこと)
「僕は自分の人生や周りの人々の人生について、個人的な視点から歌詞を書いているんだ。だから、ある意味、世相を反映していると受け取ってもらっても構わないと思う。僕や周りの人はこの暗い状況で生きているんだから、このアルバムはよりシリアスなトーンになったんだろう」
00年代初頭の短期的な復帰を経て、2006年、WINGER は海外に駐留する米兵の現実を描いた “Ⅳ” でついに完全復活を遂げます。以前よりも社会性を全面に押し出し、よりプログレッシブに躍動するこのアルバムが、以降の WINGER の指針となりました。
バンドが経験してきた浮き沈みを “業” として書き綴った “Karma”、ポジティブなトーンでより良い世界の実現を願った “Better Days Comin” と、彼らは80年代のイメージを払拭するような等身大で現実的な高品質のアルバムを残していきます。ただ一つ、WINGER が WINGER である所以、”キャッチー” な一面をどう扱うのか…常にその命題と向き合いながら。
9年ぶりとなる最新作 “Seven” は、そんな WINGER の社会性、プログレッシブでシリアスな一面と、出自であるハードロックのロマンチシズムが完璧に噛み合ったアルバムと言えるでしょう。
“Resurrect Me” はそんな最高傑作の中でも、特に WINGER ここに極まれりという名曲。シリアスでダークなスタートから一転、コーラスではロマンチシズムが雷鳴のように響き渡り、フックの嵐の中を Kip のキャッチーな雄叫びがこだまします。Reb のギターが炎を吹き、Rod の尋常ならざるフィルインが轟けば、WINGER はその翼を大きく広げて自らの “復活” を宣言します。
QUEEN への憧憬を織り込んだ “Voodoo Fire” を経て到達する “Broken Glass” は、復活 WINGER のもう一つの翼。Paul Taylor の復帰をしみじみと実感させるエモーショナルな音絵巻。WINGER 屈指のメランコリー・オーケストラ “Rainbow in the Rose” を、Kip のソロキャリアで熟成したかのような内省的な審美感は、96年に初めての妻を突然の事故で失って以来、彼の命題となった痛みと優しさの色彩を完璧に投影しているのです。
ヘヴィで繊細。ラウドでソフト。知的で野蛮。痛みで優しさ。ダークでロマン。WINGER の二刀流はいつしか、何 “マイル” も先で多様に花開いています。今回弊誌では、Kip Winger にインタビューを行うことができました。「かつてより世界は悪くなっているよね。金持ちはより金持ちになり、貧乏人はより貧乏になったように感じる。権力闘争の政治家、過激なイデオロギーのインフルエンサー、宗教的狂信者たちは、わざわざ力を尽くして世界の人々を分断しようとしている。とても悲しいことだよね」 どうぞ!!

WINGER “SEVEN” : 10/10

INTERVIEW WITH KIP WINGER

Q1: This is Winger’s first new record in about 10 years! I’ve been really looking forward to it and it’s a wonderful incredible masterpiece! Why did you decide to make a new WINGER record now?

【KIP】: It was the first time Reb and I both had an opening in our schedules. I have been working on Classical for many years now plus a musical entitled Get Jack. Reb has been mostly working with Whitesnake for the last 10 years. When we finally had an opening we starting working, but then COVID stopped everything and we had to wait again to be able to travel. Finally it came together.

Q1: ほぼ10年ぶりとなる WINGER の新作は、長く待った甲斐のある、実に素晴らしい作品ですね!なぜ今、新しい WINGER のアルバムを作ろうと決めたのですか?

【KIP】: Reb と僕のスケジュールがやっと合ったんだよ。僕はもう何年もクラシックの仕事をしているし、”Get Jack” というタイトルのミュージカルもやっている。Reb はこの10年間、主に WHITESNAKE と仕事をしてきたよね。
で、遂にスケジュールが合って、制作に取り掛かったんだけど、パンデミックがすべてを止めてしまった。互いに行き来ができるようになるまでまた待たなければならなかったんだよ。やっとまとまったんだ。

Q2: “IV” was about the story of American soldiers serving overseas, but the world seems to be more contentious than it was back then. How do you perceive the darker world of recent years?

【KIP】: I agree, The world now is worse. It’s seems that the Rich got richer and the poor got poorer. Power struggles, extremist ideology and religious fanatics have gone out of their way to divide the people of the world. It’s very sad.

Q2: “IV “は海外に駐留するアメリカ兵の物語でしたが、当時と比べると世界はより物騒で争いが増えているように感じます。近年の暗い世の中をどのように受け止めていますか?

【KIP】: そうだね、かつてより世界は悪くなっているよね。金持ちはより金持ちになり、貧乏人はより貧乏になったように感じる。権力闘争の政治家、過激なイデオロギーのインフルエンサー、宗教的狂信者たちは、わざわざ力を尽くして世界の人々を分断しようとしている。とても悲しいことだよね。

Q3: Your last album “Better Days Comin” was an album of hope that the world would get better, literally, but this “Seven” album seems to have a more tragic tone, as if people keep making mistakes and fighting over and over again, would you agree?

【KIP】: Well, I write from a personal perspective of my life and the life of the people around me. So in some cases yes, the album is Of a more serious tone, but for example the song It’s Okay is literally Better Days Coming 2.0. I feel that SEVEN is very balanced record over all and it hits all the classic Winger markers song by song.

Q3: 前作 “Better Days Comin” は文字通り世界が良くなることを期待する希望のアルバムでしたが、今回の “Seven” はより悲劇的なトーンで、まるで人類が何度も同じ失敗を繰り返し、争い続けるような印象を受けます。そのあたりも、現代の状況を反映しているのでしょうか?

【KIP】: そうだな…僕は自分の人生や周りの人々の人生について、個人的な視点から歌詞を書いているんだ。だから、ある意味、そう受け取ってもらっても構わないと思う。僕や周りの人はこの暗い状況で生きているんだから、このアルバムはよりシリアスなトーンになったんだろう。
でも一方で、例えば、”It’s Okay” “大丈夫だよ” という曲は、文字通り “Better Days Comin’ 2.0″ だと言える。つまり、”SEVEN” は全体的に非常にバランスの取れたアルバムで、WINGER のクラシックな特徴を一曲一曲ごとにすべて打ち出していると感じているんだよ。

Q4: I feel that this album has the best balance between the catchy side of WINGER and the “Thinking Man” side of WINGER, a duality that WINGER has sometimes respected and sometimes suffered from, but do you feel that you have finally found the right balance?

【KIP】: Exactly, as I said in the last question, I do feel overall SEVEN has all the hallmarks of classic WINGER. Add to this the return of Paul Taylor and the return of the original Logo.

Q4: 仰る通りこのアルバムは、WINGER のキャッチーな部分と、”考える人” としての部分、WINGER が時に敬愛され、時に枷としてきた二面性を、最もバランスよく表現できていますよね?

【KIP】: その通りだよ!さっきの質問でも言ったけど、全体的に “SEVEN” はクラシックな WINGER の特徴を備えていると感じているんだ。それは、Paul Taylor の復帰とオリジナル・ロゴの復活でより強調されているね。

Q5: I think METALLICA’s biggest mistake was to make fun of a great band called WINGER and force you to break up. That said, I also love “Pull”, a product of its time, and believe it should be reevaluated. Have your feelings about METALLICA and “Pull” changed between then and now?

【KIP】: First of all, we never “broke up” we took a long break because grunge music took over and between that, Beavis and Butthead and the Metallica thing it was impossible for us to continue at that time. As an Artist I would never publicly insult another artist. As far as Pull goes, I’ve always stood by that record as being one of our best.

Q5: WINGER という素晴らしいバンドを “ネタ” にして、解散に追い込んだのが METALLICA 最大の過ちだと私は思いますよ。とはいえ、私はあの時代の産物である “Pull” も大好きですし、再評価されるべきだと考えています。METALLICA や “Pull” に対する思いは、当時と今とで変わりましたか?

【KIP】: まず第一に、僕たちは決して “解散” していないんだよ。グランジ・ミュージックに支配され、その間に “Beavis and Butthead” と METALLICA の騒動が起こって、当時僕たちは続けることが不可能になったから、長い間休んでいただけなんだ。
アーティストとして、僕なら他のアーティストを公然と侮辱するようなことは絶対にしないよ。”Pull” に関しては、あのレコードは僕らのベスト盤のひとつだと今でも信じているんだ。

Q6: This time, Paul Taylor returns to the album for the first time in a really long time. Personally, I feel that the songs are more “romantic” when he is here, but what do you really think of his contribution?

【KIP】: Paul is extremely talented and definitely adds to the power of the band. Having said that, I did the mahout of the writing so I’m not sure how you come to that conclusion. Perhaps your nostalgic feeling of early WINGER is influencing your perception.

Q6: 今回、本当に久しぶりに Paul Taylor がアルバムに帰ってきました。個人的には、彼がいると曲がより “ロマンティック” になるような気がするのですが、実際のところ、彼の貢献度はどうなのでしょうか?

【KIP】: Paul は非常に才能があり、間違いなくバンドのパワーを高めている。とはいえ、作曲の大半は僕がやっているので、なぜそのような結論になるのかよくわからないというのが本音だ。おそらく、君の初期 WINGER を懐かしむ気持ちが、認識に影響を与えているのだろうね。

Q7: WINGER, you, Reb, and Rod’s lineup has not changed since its inception, which I think is very rare for a band like this. Of course, you have a solo career and the other two are involved in various projects, but what is the special chemistry between the three of you?

【KIP】: We are very good friends. We never fought about anything. We love hanging out with each other and admire each others talents. Paul Taylor and John Roth included.

Q7: WINGERは、あなた、Reb、Rod の3人のラインナップが結成当初から変わっていません。ロックやメタルのバンドとしては非常に珍しいと思います。もちろん、あなたはソロ・キャリアを持ち、他の2人は様々なプロジェクトに参加していますが、3人で集まるとやはり特別なケミストリーが生まれるのでしょうか?

【KIP】: まず、なんと言っても僕たちはとても良い友達なんだよ。僕たちは何事においても、喧嘩したことがないんだよね。お互いにつるむのが大好きで、お互いの才能を賞賛しているからね。そこには、もちろん Paul Taylor と John Roth も含まれているよ。

Q8: In the world of metal, Japan’s Babymetal has recently gained popularity. You are also a good dancer, having taken ballet lessons, how do you feel about their fusion of metal and dance?

【KIP】: I’ve never heard one song. Apologies.

Q8: メタルの世界では、最近、日本の BABYMETAL が人気を博しています。あなたはかつてバレエを習っていたこともあり、歌って踊れるベーシストなどとも称されていましたが、彼女たちのメタルとダンスの融合についてどう感じていますか?

【KIP】: 実は一曲も聴いたことがないんだ。ゴメンね!

FIVE ALBUMS THAT CHANGED KIP’S LIFE!!

Joe Walsh “The Smoker You Drink The Player You Get”

The Beatles “Abby Road”

Peter Gabriel “Security”

Black Sabbath ” Sabbath Bloody Sabbath”

Mike Oldfield “Tubular Bells”

MESSAGE FOR JAPAN

こんにちは !! We are VERY excited to come back to Japan. We love the Japanese fans and Look forward to seeing all of you again!

KIP WINGER

WINGER 35周年 JAPAN TOUR / CREATIVEMAN
日本盤のご購入はこちら。AVALON online

WINGER Facebook

FRONTIERS MUSIC

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VVON DOGMA I : THE KVLT OF GLITCH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FREDERICK “ChaotH” FILIATRAULT OF VVON DOGMA I !!

“As For Unexpect We Helped Coin The Term ‘Avant-Garde Metal’ Whatever That Meant.”

DISC REVIEW “THE KVLT OF GLITCH”

「2000年代のメタルやハードコアのシーンは、スタイルがまだ探求され、発展していた時期だった。音楽のサブジャンルがまだ生まれていて、中でもケベックのバンドは本当に何かを持っていたんだよ。CRYPTOPSY の前にはテクデスがなかったように、DESPISED ICON の前にはデスコアがなかったように。さらに ION DISSONANCE のようなバンドはエクストリームなマスコアを前進させた…そして UNEXPECT は、その意味がどうあれ、”アヴァンギャルド・メタル” という言葉を生み出す手助けをしたんだよ」
VOIVOD の偉業を振り返るまでもなく、カナダ、特にケベック周辺はメタルの進化に欠かせない異形を生み続ける特異点です。そして振り返れば、まだモダン・メタル=多様の定義もおぼつかなかった90年代後半から00年代にかけて、UNEXPECT ほど混沌と新鮮をメタル世界にもたらしたバンドは多くはありませんでした。
「UNEXPECT が早すぎるということはなかったと思うよ。僕の考えでは、シーン全体を前進させるためには、新しいアイデアを持って、早すぎるくらいに登場する必要があるんだよ」
もはや伝説となった9弦ベースの使い手 Frédérick “ChaotH” Filiatrault はそう嘯きますが、プログレッシブ、デスメタル、ブラックメタル、ジャズ、クラシック、オペラ、フォーク、エレクトロニカが “予想外の” ダンスを踊る UNEXPECT の音楽は、現在の多弦楽器の流行を見るまでもなく、あまりにも “早すぎて” 理解を得られなかった鬼才で奇祭にちがいありません。そして、UNEXPECT や WALTARI がいなければ、アヴァン・メタルの現在地も、今ほど “攻め” やすい場所ではなかったのかもしれませんね。
「このバンドは、90年代のオルタナティブや Nu-metal、2000年代の実験的なハードコアやメタル、2010年代のエレクトロニックの爆発など、僕がこれまで聴いてきたすべてのジャンルの音楽を調和させようとしたものなんだ。James Blake、Bon Iver, DEFTONES, MESHUGGAH, MARS VOLTA, IGORRR…といったアーティストのありえないブレンドを目指していたからね」
一度は夢を諦めた ChaotH が再びメタル世界に降り立ったのは、自身を形成した偉人たちに感謝を捧げ、そこから新たな “ドグマ” “教義” を生み出すため。さながら蛹が蝶になるように、華麗に変身した ChaotH のドグマは、EDM が脈打つインダストリアル・メタルと、欲望に満ちたプログレッシブ・メタルを、七色に輝くオルタナティブな経歴を反映しつつ融合しようと試みているのです。
つまり、VVON DOGMA I は UNEXPECT ではありません。もちろん、彼らのX線写真を見ると、過去の同僚 Blaise Borboën の乱れ打つヴァイオリンや、ChaotH の異世界ベース・パルスなどおなじみの骨格はありますが、機械の心臓は突然変異的な異なる動力で脈打っています。右心室に CYNIC を、左心室に MESHUGGAH を宿した VVON のサイバーパンクな心臓部は、時にタップを、時にスラップを、時に早駆けをを駆使して変幻自在に躍動する ChaotH の9弦ベースによって切り開かれ、緻密で冒険的で、しかし歪んだ哀愁の風景をリスナーの脳へと出力します。Djenty ながら Djent より有機的で、ヒロイックで、しばしば TOOL とも邂逅するギタリズムも白眉。
何より、悪魔城ドラキュラのメタル世界を想起させる “The Great Maze” から、”Triangles and Crosses” のネオンに染まる KING CRIMSON、そして RADIOHEAD の鋼鉄異教徒によるカバーまで、ここにはヘヴィ・メタルの “If” が存分に詰まっています。ノイズを崇拝し、レザーストラップと砂漠のゴーグルを身につけ、奇抜な乗り物に鎮座した VVON DOGMA I のサイバーな “もしも” の世界観は、AI と現実の狭間でリスナーという信者を魅了していくのです。
今回弊誌では、Frédérick “ChaotH” Filiatrault にインタビューを行うことができました。「クリエイティブな面では、アートワークの制作にAIが参加するのはとても興味深いことだと思ったね。つまり、このレコードの自発的な音楽 “合成” の側面は、アートワークによって強調され、とてもふさわしいものとなった。メタルヘッズの間では、シンセティック (人造、合成) なものを受け入れるというのは、あまりポピュラーなコンセプトではないけど、僕はアナログでなければ “メタル” ではないというエリート意識は、まったくもってデタラメだと思うよ」 傑作。どうぞ!!

VVON DOGMA I “THE KVLT OF GLITCH” : 10/10

INTERVIEW WITH FREDERICK “ChaotH” FILIATRAULT

Q1: At First, I was a huge fan of Unexpect, why did that band end?

【ChaotH】: Well, for the same reasons any band breaks-up I guess. Some of the guys got older and wanted to have another lifestyle with the house and the kids and all. I mean, the band was active for 17 years so it really had its time and we all lived our rock ‘n roll dream through it. Of course there was also some tension and not all members wanted to quit but you need everybody on board to make it happen and some members were clearly pulling back. I do wonder what a 4th and 5th album would have sounded like but in retrospective after all these years I am very much at peace with the breakup.

Q1: まず、私は UNEXPECT の大ファンだったのですが、なぜ解散してしまったのですか?

【ChaotH】: まあ、他のバンドが解散するのと同じような理由だと思う。何人かは年を取って、家や子供と別のライフスタイルを持ちたくなったんだ。でも、バンドは17年間も活動したんだから、それなりの時間はあったし、みんなその間にロックンロールの夢を見て生きてきたんだよ。
もちろん、緊張感もあったし、一方でメンバー全員が辞めたいと思っていたわけではないけれど、続けるためには全員が参加しなければならないし、明らかに引いているメンバーもいたからね。4枚目、5枚目のアルバムはどんなサウンドになっていたのだろうと思うけれど、何年も経ってから振り返ってみると、解散はとても平和なことだったと思う。

Q2: Mixing progressive, death metal, black metal, jazz, classical, operatic, folk and electronica, metal’s diversity has clearly influenced the modern, more fragmented and eclectic world of metal. How did you come up with those transcendental ideas? Unexpect was a band that came too early, would you agree?

【ChaotH】: I wouldn’t say too early, no. The whole point is to bring something new to the table so in my perspective you HAVE to show up too early with some new ideas that bring the whole scene forward. There was something really special about the metal and hardcore scene in the 2000’s as the style was still being explored and developped and you had these sub-genres of music still being born left and right, and Quebec bands really had something going. Like there was no tech-death before Cryptopsy, there was no Deathcore before Despised Icon, bands like Ion Dissonance pushed the extreme math-core forward… and as for Unexpect we helped coin the term ‘Avant-Garde Metal’ whatever that meant. It’s always quite fascinating when a style of music is being explored and invented all around you and the 2000’s really had something going in extreme music and I am fortunate to have been part of that.

Q2: プログレッシブ、デスメタル、ブラックメタル、ジャズ、クラシック、オペラ、フォーク、エレクトロニカなどをミックスした UNEXPECT の多様性は、より細分化されエクレクティックな現代のメタル世界に明らかに影響を与えました。ああした超越的なアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?UNEXPECT は早すぎたバンドだったのでしょうか?

【ChaotH】: 早すぎるということはなかったと思うよ。僕の考えでは、シーン全体を前進させるためには、新しいアイデアを持って、早すぎるくらいに登場する必要があるんだよ。2000年代のメタルやハードコアのシーンは、スタイルがまだ探求され、発展していた時期だった。音楽のサブジャンルがまだ生まれていて、中でもケベックのバンドは本当に何かを持っていたんだよ。
CRYPTOPSY の前にはテクデスがなかったように、DESPISED ICON の前にはデスコアがなかったように。さらに ION DISSONANCE のようなバンドはエクストリームなマスコアを前進させた…そして UNEXPECT は、その意味がどうあれ、”アヴァンギャルド・メタル” という言葉を生み出す手助けをしたんだよ。ある音楽のスタイルが、自分の周りで探求され、発明されるのは、とても魅力的なことだ。2000年代はエクストリーム・ミュージックの分野で何かが起こっていて、僕はその一部になれたことを幸運に思っているんだ。

Q3: Why did you start Vvon Dogma I alone from there?

【ChaotH】: I always had some demos and ideas recorded on my computer for as long as I can remember. I could even say that some of the material that is on The Kvlt of Glitch could have been Unexpect material. I mean it’s a very different band format overall but it comes from the same mentality and some of that material is over a decade old. I did start the project alone yes and it took years to make it into something tangible… from 2017’s modest ‘Communion EP’ to today’s ‘The Kvlt of Glitch’. Fun fact is I found the name for the band as I was driving back from our last show ever with Unexpect… when you drive for hours and your mind wanders, that’s how I nailed the name VVON DOGMA I. So yes, it was me crafting these songs alone for a few years and I tried to make the band happen with different musicians and it just wasn’t working, you can’t force chemistry. And when I found Kevin Alexander on drums I knew I had a strong partner to write songs with that would bring the write mentality and attitude to the project.

Q3: UNEXPECT の解散後、VVON DOGMA I を一人で立ち上げることにしたのはなぜだったんですか?

【ChaotH】: 僕は物心ついたときから、長い間デモやアイデアをコンピューターに録音し続けているんだ。だから、”The Kvlt of Glitch” に収録されている音源のいくつかは、UNEXPECT の音源だった可能性もあるとさえ言えるかもしれない。
UNEXPECT と VVON DOGMA I は全体的なバンドの形態は全く違うけど、同じメンタリティから生まれたものだし、このアルバムには10年以上前の音源もあるからね。確かに一人でプロジェクトを始めて、それを具体的なものにするのに何年もかかったよ…2017年の控えめな “Communion EP” から今日の “The Kvlt of Glitch” までね。
面白いことに、バンド名は、UNEXPECT での最後のライブから車で帰るときに見つけたんだ。何時間も車を走らせていると、頭がぼんやりしてくる。そんな時に思いついてね。それから数年間は一人で曲を作っていたんだ。違うミュージシャンとバンドを作ろうとしたけど、うまくいかなかった。ケミストリーは無理やり生み出すことができないからね。そんな時、ドラムの Kevin Alexander に会って、一緒に曲を作る強力なパートナーができたと思ったんだ。

Q4: The band name Vvon Dogma I is also very mysterious. What does it mean?

【ChaotH】: Yeah hehe, possibly the least catchy name ever, right? It’s hard to answer. It’s an expression that I created that means ‘the second incarnation of an entity’… the larva to butterfly kind of idea. When an entity transcends its previous limited form to evolve into something greater, wiser, emancipated. On a personnal level, me creating this band and finding inspiration in this new free-form of expression is exactly that. Or society moving into the 21st century with wiser and more sustainable values than in the 20th century… Or when the physical body dies and liberates the soul and the entity becomes pure energy and connectedness… Those are all examples of what I mean by VVON DOGMA I.

Q4: その VVON DOGMA I という名前ですが、謎に満ちていますね?

【ChaotH】: うんうん (笑)。もしかしたら今までで一番キャッチーじゃない名前かもしれないね? 僕自身も答えに窮するね。
これは僕が作った表現で、”ある存在の第二の化身” という意味なんだ。幼虫から蝶になるようなイメージで、ある存在がそれまでの限定された形を超え、より偉大で、より賢く、より解放されたものに進化する現象。個人的には、僕がこのバンドを作り、この新しい自由な形の表現にインスピレーションを見出すことが、まさに VVON DOGMA I なんだ。
あるいは、社会が20世紀よりも賢く持続可能な価値観を持って21世紀を迎えていく…。あるいは、肉体が死んで魂が解放され、実体が純粋なエネルギーとつながりるとき…。これらはすべて、僕が意図する VVON DOGMA I の一例なんだ。

Q5: Anyway, The Kvlt of Glitch is a really great album! It’s an image of Cynic and Meshuggah fighting in a cyberpunk world! haha! Actually, what kind of influences or inspirations are sprinkled in this near-future progressive world?

【ChaotH】: You pretty much nailed it, haha. ”Cynic and Meshuggah fighting in a cyberpunk world” is a very apt description I’d say, hehe. That being said, I get the Cynic connection A LOT obviously because of the vocoder but, strangely enough, it wasn’t at all an influence for the making of this band. Meshuggah was though, yes. I mean it’s hard to understate how much they brought to modern metal sound. But this whole band is my attempt at reconciliate all of the genre of music that I ever listened to, from 90’s alternative and nu-metal to 2000’s experimental hardcore and metal to 2010’s electronic explosion. The unlikely blend of artists like James Blake, Bon Iver, Deftones, Meshuggah, Mars Volta, Igorrr…

Q5: それにしても、”The Kvlt of Glitch” は素晴らしいアルバムですね!CYNIC と MESHUGGAH がサイバーパンクの世界で戦っているような空想が膨らみましたよ (笑)。

【ChaotH】: それは最高の例えだね!(笑)。CYNIC と MESHUGGAH がサイバーパンクの世界で戦っているというのは、非常に適切な表現だと思うね、うん。
とはいえ、CYNIC とのつながりは、たしかにヴォコーダーがあるからとてもよくわかるんだけど、不思議なことに、このバンドを作る上では彼らからまったく影響を受けていないんだ。MESHUGGAH はまさにだね。彼らが現代のメタル・サウンドにどれだけのものをもたらしたのか、簡単に説明するのは難しいよ。でもこのバンドは、90年代のオルタナティブや Nu-metal、2000年代の実験的なハードコアやメタル、2010年代のエレクトロニックの爆発など、僕がこれまで聴いてきたすべてのジャンルの音楽を調和させようとしたものなんだ。James Blake、Bon Iver, DEFTONES, MESHUGGAH, MARS VOLTA, IGORRR…といったアーティストのありえないブレンドを目指していたからね。

Q6: The Kvlt of Glitch has really beautiful artwork! Is this person related to the concept of the work?

【ChaotH】: Related, I don’t know. I just loved the esthetic of it and found it very fitting. It’s no secret that it’s been done with the MidJourney AI as a tool. I gave a sense of the vibe to my old friend and photographer Patrick Filteau and he came back with this awesome image. I always liked his sensibility in photography, seemingly always capturing magical moments. He took some of the best pictures of Unexpect live. So it was a cool collab with an old friend. Also, creatively I thought it was very interesting to have an AI on board with the creation of the artwork because, in a way, that’s very much how the vocals were made… an analog input into a computer. So the voluntarily ‘synthetic’ aspect of the record is underlined by the artwork and I thought it was very fitting. It’s not a very popular concept with metalheads… to embrace the synthetic… and I think it’s complete bullshit, that elitist mentality that everything needs to be analog or else it’s not ‘metal’ hehe.

Q6: “The Kvlt of Glitch” のアートワークも非常に美しく、こうした音楽のファンに刺さりますよね。描かれている人物は、アルバムのストーリーに関連があるのでしょうか?

【ChaotH】: 関連があるかはわからない。ただ、僕はあの審美性が好きで、アルバムにとてもふさわしいと思ったんだ。MidJourney のAIをツールにしたのは周知の事実だ。旧友で写真家の Patrick Filteau にアルバムの雰囲気を伝えたら、この素晴らしいイメージで返してくれたんだ。僕はいつも彼の写真に対する感性が好きで、いつも魔法のような瞬間をとらえているように見えていた。彼は UNEXPECT のライブで最高の写真を撮ってくれていたんだ。だから、旧友とのコラボレーションはクールだったよ。
また、クリエイティブな面では、アートワークの制作にAIが参加するのはとても興味深いことだと思ったね。つまり、このレコードの自発的な音楽 “合成” の側面は、アートワークによって強調され、とてもふさわしいものとなった。メタルヘッズの間では、シンセティック (人造、合成) なものを受け入れるというのは、あまりポピュラーなコンセプトではないけど、僕はアナログでなければ “メタル” ではないというエリート意識は、まったくもってデタラメだと思うよ (笑)。

Q7: Your 9-string bass is also one of the stars of the album! One of the best bassists in the world! For example, Billy Sheehan does a great job with 4 strings, so why do you need 9 strings?

【ChaotH】: Hehe, thank you for the kind words. Well, I’m aware that nobody ‘needs’ 9 strings.. it’s a bit much. But it’s just the influences that I got at a very early stage in my developement as a musician. I was following that Californian band ‘Nuclear Rabbit’ that had Jean Baudin as a bass player and he was the very first guy to use a 9 string bass in a rock setup. In fact he was pretty much only the 2nd ever known player to use a 9 string bass (after Bill Dickens). I saw footage of him with his instrument and it left a big impression on my young self. Also, I was exposed to the Chapman stick when I started playing bass and I was fascinated by the mechanic of it and so, the 9 string bass became a way for me to kinda blend all these influences in one instrument. That being said, of course Billy Sheehan is a fantastic player. Jaco, Victor Wooten, Sheehan, Flea… they just need 4 strings, right… I just chose a different direction that seemed fitting to the music I made in my life.

Q7: あなたの9弦ベースも、アルバムの主役の一つです。まちがいなく、世界でも有数のベーシストの一人ですね!ただ、例えば Billy Sheehan のような名手は4本の弦で素晴らしい演奏を披露しますが、あなたはなぜ9本の弦が必要なんでしょう?

【ChaotH】: 嬉しい言葉をありがとう!まあ、9本の弦が “必要” な人なんていないことは重々承知しているよ (笑)。でも、これは僕がミュージシャンとして成長する非常に早い段階で受けた影響なんだよ。
かつて僕は、Jean Baudin をベーシストとするカリフォルニアのバンド “Nuclear Rabbit” を追っていたんだけど、彼はロックのセットアップで9弦ベースを使った最初期の人だったんだ。実際、彼は9弦ベースを使った史上2人目のプレイヤーだったんだよ( Bill Dickens に次いで)。彼の楽器の映像は、幼い僕に大きな印象を与えたんだ。
それに、ベースを始めた頃にチャップマン・スティックに出会い、そのメカニズムに魅了されていたからね。だから、9弦ベースは、こうした影響を1つの楽器に融合させる素晴らしい方法となったんだ。
とはいえ、もちろん Billy Sheehan は素晴らしいプレイヤーだ。Jaco, Victor Wooten, Sheehan, Flea…….彼らはただ、4本の弦しか必要としない。僕はただ、自分の人生の中で作る音楽にふさわしいと思える別の方向性を選んだだけなんだよ。

Q8: Radiohead’s cover of “2+2=5” is also really great! It’s rare for metal bands to cover their songs, so why did you choose this song?

【ChaotH】: Yeah, I always loved the bands that take a seemingly ‘unrelated’ song and bring their style to it and completely revamp the song. It would have made sense for me to cover a metal song, and it’s pretty clear that I am a huge Radiohead fan. That album Hail to the thief doesn’t get enough love and the few first tracks on this record are pure bliss. It really was a last minute idea though. I brought this to the table litteraly one week before hitting the studio and me and Kevin Alexander made it happen. He is a great drummer and musician and the collaboration that this band needed.

Q8: RADIOHEAD のカバー、”2+2=5″ は完璧にハマっていますね?彼らのカバーを披露するメタル・バンドは珍しいですが…。

【ChaotH】: そう、一見 “関係ない” 曲を、自分たちのスタイルを持ち込んで、曲を完全に刷新するようなカバーをやるバンドがいつも好きだったんだ。メタルの曲をカバーするのも意味があっただろうけど、僕が RADIOHEAD の大ファンであることは明らかだ。あの曲が入ったアルバム “Hail to the thief” は十分に愛されていないと思うんだけど、このレコードの最初の数曲は純粋に至福の時だよ。でも、これは本当に直前になって思いついたことなんだ。スタジオに入る1週間ほど前にこの話を持ち込んで、Kevin と一緒に実現させたんだ。彼は素晴らしいドラマーでありミュージシャンであり、このバンドが必要としていた最高のコラボレーションが実現したよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED ChaotH’S LIFE!!

The Dillinger Escape Plan “Calculating Infinity”

It was my last year of highschool.. something like Ferbruary 2000. I’m casually listening to Incubus Make Yourself on my discman (as you do in 2000) and the hardcore kid in my class is like ”psst.. check this out. Track 2”. So we swap discs and I press play. My face melted. My brain boiled. It’s like it was an answer to a question that I always had. It’s hard to describe. The feeling of being colorblind your whole life and then someone is like… ‘Hey man… PURPLE!!’ and you’re like HOLY SHIT! I HAD NO IDEA. Game changer and they went to be one of the greatest band of all time. I was fortunate to be super early on them and recognize the genious.

高校最後の年、2000年2月頃のこと。僕がディスクマンで INCUBAS の “Make Yourself” を何気なく聴いていたら、同じクラスのハードコアの子が “ちょっとこれ聴いてよ。トラック2″ だよ” って。それで僕たちはディスクを交換し、再生を開始した。すぐに僕の顔は溶けた。脳が沸騰したよ。まるで、僕がいつも抱いていた疑問に対する答えのようなものだったから。言葉にするのは難しい。ずっと色覚異常だったのが、誰かに “おい、おこれが紫だ!” と言われたような感覚。”なんだ!これが紫だったのか!全く知らなかった!” みたいなね。このアルバムは僕のゲームチェンジャーとなり、彼らは史上最も偉大なバンドのひとつになった。僕は幸運にも、彼らのことを早くから知っていて、その才能に気づくことができたんだ。

The Mars Volta “Deloused in the Comatorium”

I was already a fan of At the drive-in and was bummed that they split up. So when I found that band on the internet I was like.. hey that kinda sounds like At the drive-in. I fell in love with the album and the band instantly. One of the greatest prog record of the 00’s for sure.

当時僕はすでに AT THE DRIVE IN のファンで、彼らが解散したことにがっかりしてね。だから、インターネットでこのバンドを見つけたとき、”あれ、なんか ATDI に似てるな” と思ったんだ。このアルバムとバンドに一瞬で恋に落ちたよ。00年代の最も偉大なプログのレコードの1つであることは間違いない。

Marilyn Manson “Antichrist Superstar”

Yes. I was 14 years old and it was 1996. This one was a game changer and got me into more extreme music and esthetic. That was the ‘filthy’ Manson era pushing the limits of shock rock, that was all new. But yes, it’s a game changer album and it still holds really well today. It was before the glam Manson.. there was something punk as fuck about it. And no other album ever had as much of a complementary esthetic to the music. The videos, the album artwork, the bigger than life character… He created a whole world with this.

うん!僕は14歳で、1996年のことだった。このアルバムは、僕をより過激な音楽と美学に夢中にさせるゲームチェンジャーとなったんだ。当時はショック・ロックの限界に挑む ”不潔な” マンソンの時代で、すべてが新鮮だった。このアルバムは特異であり、現在でも十分に通用するもの。グラマラスなマンソンの前だったんだけど、何かパンクな感じがした。そして、これほどまでに音楽を補完する美学を持ったアルバムは他にない。ビデオ、アルバムのアートワーク、人生より大きなキャラクター…。彼はこのアルバムで一つの世界を作り上げたんだ。

Radiohead “OK Computer”

I mean. Obviously. What else can be said about this record that hasn’t already been discussed? I was 15 and on shrooms at my friends place and I was discovering this record. There was something different about these guys.. they just sounded mysterious and like they knew something about the future. It was dark, mysterious, depressing, magical. They went on to have the best body-of-work of any band ever.

明らかにね。このレコードについて、まだ語られていないことが他にあるだろうか?僕は15歳で、友達の家でマジック・マッシュルームをやっていて、このレコードを発見したんだ。彼らはミステリアスで、未来について何か知っているような感じがしたんだ。ダークで、ミステリアスで、憂鬱で、マジカルだった。彼らはその後、あらゆるバンドの中で最高の作品群を作り上げていった。

Ben Frost “By the throat”

Possibly the most disturbing and dark record ever made. This one totally got me into dark ambient music and yet has never been toped. If metal can be sensual and lush like Deftones, then ambient music can be violent and disturbing and this record is exactly that. It’s a nightmarish soundscape and it’s pretty much all analog and just.. beautiful. I dare you to take a midnight walk with headphones with this one. You’ll start seeing the dark corners differently.

おそらく、これまでに作られた中で最も不穏で暗いレコードだろう。この一枚で僕はダーク・アンビエント・ミュージックにどっぷりハマってしまった。
アンビエント・ミュージックを知るきっかけとなったけど、未だにこの上を行くものはない。メタルが DEFTONES のように官能的で瑞々しいものであるならば、アンビエント・ミュージックは暴力的で不穏なもので、このレコードはまさにそれだ。悪夢のようなサウンドスケープで、ほとんどすべてアナログで、ただただ美しい。このアルバムを聴きながら、ヘッドホンで真夜中の散歩をすることをお勧めするよ。暗い角が違って見えるようになるはずだから。

MESSAGE FOR JAPAN

Hey Japan! Book me! I wanna be in you!

ChaotH

VVON DOGMA I Facebook

VVON DOGMA I Bandcamp

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IGNEA : DREAMS OF LANDS UNSEEN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HELLE BOHDANOVA OF IGNEA !!

“I’d Say Music Can Definitely Change People’s Mood And Mind. But Changing The World… I’m Afraid, I Cannot Be So Naive Because Of Everything Happened To Me And My Country.”

DISC REVIEW “DREAMS OF LANDS UNSEEN”

「もちろん、音楽は非常に重要なもので、この1年間、ウクライナでもそのことが示された。塹壕の中や負傷したときに歌う兵士、防空壕の中で歌う人々、音楽は人々をより落ち着かせることができたわ。だから、音楽は人の気分や心を変えることはできると思う。でも、世界を変えるなんて……自分や自分の国に起こったことを考えると、そんなにナイーブにはなれないわ」
ロシアとプーチンの侵攻から1年経った今、ウクライナのモダン・メタル旅団 IGNEA はアルバムという自らの分身を世に放つことを決意します。当然、彼らのドッペルゲンガー “Dreams of Lands Unseen” が怒りに満ちた作品でも、暴虐に向けた鋭き矛先でも、リスナーが驚くことはないでしょう。もちろん、音楽は世界を変えられない。音楽で身を守ることはできない。それでも、IGNEA はより芸術家らしい方法で、不条理に抗することを決めたのです。
「Sofia はどこを旅しても、必ずウクライナ文化の一部を持ち込んでいて、自分がウクライナ人であることを強調していたのよ。また、彼女は言葉の使い方が巧みで、歌詞の中のフレーズもそのまま彼女の言葉をウクライナ語で残したかったんだ。最後に、私たちはウクライナ人で、自分たちの言葉を愛しているから、自分たちのルーツへのトリビュートとしてもウクライナ語を使ったのよ」
IGNEA は、暴力に暴力で立ち向かうよりも、見過ごされてきた歴史的な人物の粘り強さと功績に焦点を当て、ウクライナの誇りと強さを描き出しました。”Dreams of Lands Unseen” の主人公、旅行写真家/文筆家の Sofia Yablonska は、祖国ウクライナから世界を旅し、初の女性ドキュメンタリー映画監督となり、ヨーロッパの植民地主義がもたらした悪影響にしっかりと目を向けた偉大な人物。彼女をウクライナの象徴的な女性像として、そして帝国主義の批判者として光を当てるというコンセプトは、最近のロシアの不当な侵略や行き過ぎた暴力と闘うための、より文化的なアプローチであると言えるでしょう。
「戦争が始まって最初の数カ月は、私たちにとって生き残ることだけが重要だったわ。あらゆる音が怖くなって、音楽を聴くことすらできなかった。それでも私たちの地域が占領解除され、この戦時下の状況に慣れたとき(ひどい言い方だけど)、私たちはアルバムを作り続けようと強く思ったの」
ウクライナ人としての誇り。ウクライナが真に戦っている相手。そしてウクライナが今、必要としているものを浮き彫りとしたアルバムは、恐怖であった “音” をいつしか勇気へと変えていました。そしてその IGNEA が手にした勇気は、しっかりとその冒険的な音楽にも反映されています。
シンフォニックなオーケストレーションと伝統音楽が、メタルを介して結びつくその絶景はまさにトンネル・オブ・ラブ。Sofia がモロッコ、中国、スリランカなどを旅したように、東洋や中近東の光景が巡る実に多様で自由なモダン・メタルは、かつての帝国主義や権威主義とは正反対の場所にいます。
そうして、抑圧に抗う可能性と力は、Helle Bohdanova の声を通して世界へと伝播していきます。光と陰を宿した Helle の美女と野獣なボーカルは、大戦中に女性一人で世界を旅することの逞しさと恐怖、その両面を実に巧みに表現しています。そしてその逞しさや恐怖は、そのまま現在の Helle の中に横たわる光と陰でもあるのでしょう。メタル・バンドには珍しい異端楽器の数々はきっと彼らの軍備。ただ一つ、確かなことは、ウクライナの勝利が、IGNEA の冒険と Helle の勇気によって一足早くもたらされたという事実。未到の地の夢は、愛する地があればこそ映えるのです。
今回弊誌では、Helle Bohdanova にインタビューを行うことができました。「アルバムの発売日である4月28日の夜中に、大規模なミサイル攻撃があったわ。そして、その1週間後には、私が住んでいる家のすぐ隣の5つのアパートをドローンが直撃した。もちろん、最前線に近ければ近いほど、状況は悪化するわ。それでも、ウクライナに住む人は皆、翌日が来ることに確信が持てないのよ」 どうぞ!!

IGNEA “DREAMS OF LANDS UNSEEN” : 10/10

INTERVIEW WITH HELLE BOHDANOVA

Q1: First of all, we in Japan are also heartbroken by Russia’s outrageous aggression. What is your situation now? Are you safe now?

【HELLE】: Thanks a lot for inviting us and for your interest in our band! It’s been more than a year since the beginning of the full-scale war. While the situation is way better now in Kyiv, where all band members are still located, there’s still no safe place in Ukraine. For instance, in the middle of the night on April 28th, the release day of our album, there was a massive missile attack. And a week after, a drone hit 5 apartments in the house just next to the house where I live. Of course, the closer to the frontline, the worse. But still, we cannot be sure about the next day.

Q1: ロシアの非道な侵略に、私たち日本人も心を痛めています。今、あなたたちはどういった状況にありますか?

【HELLE】: 私たちのバンドに興味を持って、インタビューを行ってくれて、本当にありがとう!本格的な戦争が始まってから1年以上が経った。バンドメンバー全員がいるキエフの状況はだいぶ良くなったけど、ウクライナに安全な場所はまだないのよ。
例えば、アルバムの発売日である4月28日の夜中に、大規模なミサイル攻撃があったわ。そして、その1週間後には、私が住んでいる家のすぐ隣の5つのアパートをドローンが直撃した。もちろん、最前線に近ければ近いほど、状況は悪化するわ。それでも、ウクライナに住む人は皆、翌日が来ることに確信が持てないのよ。

Q2: It must have been really difficult to make music in the middle of a war. Still, why did you decide to share your metal with the world now?

【HELLE】: Our album was already composed and half of it ― recorded, before the war rolled out. In the first several months, it was more about survival for us. We couldn’t even listen to music because we were afraid of every sound. When our region was de-occupied and when we got used to the situation (I know, it sounds horrible), we felt very determined to continue with our album, for several reasons. First of all, we’re Ukrainians, and with our art we create Ukrainian legacy. Secondly, our album is dedicated to a famous Ukrainian, and we tell her story to the world, showing, among other things, what we’re fighting for. Finally, music is what we do for living, and we cannot support our country in full if we don’t earn money.

Q2: そんな戦争の最中に音楽を作ることは、本当に大変だったでしょうね?

【HELLE】: 私たちのアルバムは、戦争が始まる前にすでに作曲され、その半分は録音されていたの。戦争が始まって最初の数カ月は、私たちにとって生き残ることだけが重要だったわ。あらゆる音が怖くなって、音楽を聴くことすらできなかった。それでも私たちの地域が占領解除され、この戦時下の状況に慣れたとき(ひどい言い方だけど)、いくつかの理由から、私たちはアルバムを作り続けようと強く思ったの。
まず第一に、私たちはウクライナ人で、私たちの芸術によってウクライナのレガシーを創造することができる。次に、今回の私たちのアルバムは有名なウクライナ人に捧げられていたから、私たちは彼女の物語を世界に伝え、特に今、私たちが何のために戦っているのかを示すことができると考えたの。最後に、音楽は私たちが生活のためにやっていることで、お金を稼がなければ国を完全にサポートすることはできないのよ。

Q3: This concept album reflects the life of Ukrainian photographer and documentarian Sofia Yablonska. Why did you choose her as your theme?

【HELLE】: We were writing this album in 2021, in the middle of the pandemic. Our composer Yevhenii already had some demos, with middle-eastern and oriental sounds. It felt as if it was about other countries and traveling. Being a passionate traveler, I felt awful sitting at home. So I thought: and travel-related album would be great. I started digging information about famous travelers, and this is how I found out about Sofia Yablonska. She was an amazing woman, especially for her time, traveling to exotic places on her own, making a breakthrough in travel photography, and writing captivating travelogues. She had so many adventures that it would be enough even for several albums. And I was really sad that not many people know about her, even here, in Ukraine.

Q3: おっしゃる通り、”Dreams of Lands Unseen” はウクライナ出身の写真家で作家 Sofia Yablonska の人生を追ったものとなっています。

【HELLE】: 私たちは2021年、パンデミックの真っ只中にこのアルバムを書き始めたの。私たちの作曲家 Yevhenii はすでにいくつかのデモを持っていて、そこには中近東やオリエンタルな音が入っていたわ。まるで他の国や旅について書いているような感じだった。旅行好きな私は、それを聴いて家でじっとしているのが嫌になってしまったの。だから、旅にまつわるアルバムがあったらいいなと思ったのよ。
それで、有名な旅行者の情報を調べ始めたら、Sofia Yablonska のことを知ったのよ。彼女は、一人で異国の地を旅し、旅行写真でブレイクし、魅力的な旅行記を書いた、当時としては特に素晴らしい女性だったのよ。アルバムを何枚も書けるくらい、たくさんの冒険をした。にもかかわらず、ここウクライナでさえ、彼女のことを知る人があまりいないことが本当に残念だったの。

Q4: In this album, you have featured ethnic/traditional music and instruments from different countries, following her journey, right? Recently, more and more bands are fusing traditional music with metal, but is there a strong affinity between metal and folk music?

【HELLE】: Actually, we incorporated middle-eastern tunes in pretty much every record of ours. In the beginning, we even called our genre oriental metal. But we mix too many things in our music, so it’s not really true. For this particular record, it made even more sense, as with our music, we were reflecting the journey of Sofia. Replying to your second question, yes, more and more bands experiment with that but we don’t see us as a purely folk metal band. We want to have the freedom of creating music as we feel it.

Q4: このアルバムでは、様々な国の伝統音楽が、まるで Sofia の足跡を辿るかのように配されていますね? 最近では、多くのメタル・バンドが伝統音楽をミックスするようになりましたが、フォークにはメタルとの親和性があるようですね?

【HELLE】: 実は、私たちのレコードのほとんどに、中近東のサウンドは取り入れられているの。最初の頃は、自分たちのジャンルをオリエンタル・メタルと呼んでいたくらいにね。だけど、私たちの音楽はそれよりももっといろんなものを混ぜ合わせているから、オリエンタル・メタルという呼び名は正しくないのよ。ただ、今回のアルバムでは、私たちの音楽がソフィアの旅を映し出しているから、オリエンタルというのはより意味を成すとは思うけどね。
2つ目の質問に答えると、そうね、ますます多くのバンドがそういう試みをしているわね。でも、自分たちで純粋なフォーク・メタルという括りに入りたくはないの。私たちは、自分たちが感じるままに音楽を作る自由を持ちたいからね。

Q5: In such a situation, there are two songs that were sung in Ukrainian, right? Does this express your identity or pride?

【HELLE】: Yes, 2 songs are entirely in Ukrainian, and To No One I Owe is 50% Ukrainian. There are several reasons for that too. Wherever Sofia Yablonska traveled, she always brought a small part of Ukrainian culture with her, and she emphasized that she was Ukrainian. She also had a great way with words, and I wanted to leave some phrases in the lyrics just as they were ― in Ukrainian. Finally, yes, we’re Ukrainians, we love our language, so it’s a tribute to our roots as well.

Q5: こうした状況下で歌われる、ウクライナ語の歌にはあなたたちのプライドやアイデンティティが感じられます。

【HELLE】: そう、2曲は全編ウクライナ語、あと “To No One I Owe” は50%がウクライナ語なの。それにもいくつかの理由があってね。
Sofia はどこを旅しても、必ずウクライナ文化の一部を持ち込んでいて、自分がウクライナ人であることを強調していたのよ。また、彼女は言葉の使い方が巧みで、歌詞の中のフレーズもそのまま彼女の言葉をウクライナ語で残したかったんだ。最後に、私たちはウクライナ人で、自分たちの言葉を愛しているから、自分たちのルーツへのトリビュートとしてもウクライナ語を使ったのよ。

Q6: Still, “Dreams of Lands Unseen” is a wonderful piece of work! What a great feeling of watching a movie classic. What is your ideal album and who are your influences as a musician?

【HELLE】: Thank you so much! Our main influence is the diversity of music we’re listening to. It’s not only metal but also pop music, electronic music, movie soundtracks, classics. We’re open-minded to pretty music anything, and this is why we don’t feel the limits of the pure metal genre when we create our records. .

Q6: それにしても、”Dreams of Lands Unseen” は素晴らしい作品ですね!名作映画を見ているような気持ちにさせられます。

【HELLE】: 本当にありがとう!そうした感覚はきっと、私たちが聴いている音楽の多様性から生まれるのね。
メタルだけでなく、ポップス、エレクトロニック・ミュージック、映画のサウンドトラック、クラシックなどなど。私たちはどんな音楽にもオープン・マインドなのよ。だから、レコードを作るときに純粋なメタルというジャンルに限界を感じないのかもしれないわね。

Q7: Speaking of Ukrainian metal, you guys, as well as Jinjer and White Ward, are famous for modern and innovative metal that is now gaining worldwide attention, what do these Ukrainian bands have in common?

【HELLE】: I don’t really think we have something in common other than the country we’re from. But maybe there are some common problems we’re all facing: fighting such neighbor as Russia (not only on the battlefield, but aso culturally, as Russia has been erasing the Ukrainian culture for centuries), all Ukrainian bands had troubles touring because we needed visas to enter the European Union for a long time, several revolutions we saw with our eyes and participated in. IGNEA band members are around 30 years old each, and in our years, we already experienced so much, especially last year, as some people don’t experience in a lifetime. I’m not complaining here, I’m still proud of being Ukrainian, and maybe this determination to preserve our culture and heritage is also what keeps our band moving.

Q7: ウクライナのメタルは近年、あなたたちはもちろん、JINJER, WHITE WARD など、革新的でモダンなサウンドが世界的な注目を集めています。どこか、共通点のようなものがあると感じていますか?

【HELLE】: 出身国以外に共通点があるとは思わないけど、共通して直面している問題ならあるわ。ロシアという隣国との戦い(戦場だけでなく、文化的にもロシアは何世紀にもわたってウクライナの文化を抹殺してきた)、EUに入るためのビザが長い間必要皆がツアーに苦労したこと、自分たちの目で見て参加したいくつかの革命、などね。
IGNEA のバンドメンバーはそれぞれ30歳前後だけど、この数年ですでに多くのことを経験し、特に昨年は、一生かかっても経験できないようなことを経験した人もいる。ウクライナ人であることに誇りを持ち、自分たちの文化や遺産を守ろうという決意が、バンドを動かしているのかもしれないわね。

Q8: Finally, it seems to me that darkness now covers not only Ukraine but the whole world. Do you think music can change the world?

【HELLE】: I think you expect some kind of a romantic reply here. But as a person who faced war, I have to say that people need to have the way to defend themselves, in the first place. Because, as it appears, some countries are still in the medieval century. And, sadly, music cannot defend anyone when the missiles are hitting the buildings. Music is a very important thing, and this is what also was shown over the past year here. Because we see soldiers singing in trenches or when they’re wounded, people singing in bomb shelters, because it makes them more calm. So, I’d say music can definitely change people’s mood and mind. But changing the world… I’m afraid, I cannot be so naive because of everything happened to me and my country.

Q8: 最後に、現代はウクライナだけではなく、世界中を暗闇が覆っているように思えます。音楽は世界を変えられるでしょうか?

【HELLE】: あなたはここで、何かロマンチックな返事を期待しているようね。だけど、戦争に直面した人間として言わせてもらえば、そもそも人は自分の身を守る術を持つ必要があるのよ。というのも、いまだに世界には中世のままのような国もあるようだから。そして、悲しいかな、ミサイルがビルを直撃しているときに、音楽は誰も守ることができないの。
もちろん、音楽は非常に重要なもので、この1年間、ウクライナでもそのことが示された。塹壕の中や負傷したときに歌う兵士、防空壕の中で歌う人々、音楽は人々をより落ち着かせることができたわ。だから、音楽は人の気分や心を変えることはできると思う。でも、世界を変えるなんて……自分や自分の国に起こったことを考えると、そんなにナイーブにはなれないわ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED HELLE’S LIFE!!

Chelsea Wolfe “Pain is Beauty”

Lana del Rey “Lust for Life”

Cellar Darling “The Spell”

Onuka “Kolir”

Arkan “Sofia”

I cannot say the albums changed my life but I keep returning to them all the time. Something, really attracts me to them and brings certain emotions: Chelsea Wolfe ― Pain is Beauty; Lana del Rey ― Lust for Life; Cellar Darling ― The Spell; Onuka ― Kolir; The Hardkiss; Arkan ― Sofia. But my music taste changes all the time, and, depending on the day, some albums I’d name would be different.

これらのアルバムが私の人生を変えたとは言えないけど、私はいつもこのアルバムに立ち返っているの。何か、本当に惹きつけられるものがあって、ある種の感情をもたらしてくれる音楽。でも、私の音楽の好みは常に変化しているから、日によって、挙げるアルバムが違うこともあるのよね。

MESSAGE FOR JAPAN

I am very fascinated with your country and culture, even though I’ve never been there. With this album, people keep asking me, where I’d like to travel. And I always name Japan along with 2-3 other countries. I really wish and hope to come with a show to Japan and meet our listeners there. For now, I invite you to listen to our new album Dreams of Lands Unseen and experience the journey we created! Thank you!

私は行ったことがないにもかかわらず、日本という国や文化にとても魅力を感じているの。このアルバムで、みんなに “どこを旅してみたいか” と聞かれるようになったわ。私ははいつも、他の2~3カ国と一緒に日本を挙げているの。だから、本当に日本でライブをやって、そこでリスナーに会うことを望んでいるのよ。今のところは、ニューアルバム “Dreams of Lands Unseen” を聴いて、私たちが創り出した旅を体験して欲しいな!ありがとう!

HELLE BOHDANOVA

IGNEA Facebook

IGNEA Bandcamp

NAPALM RECORDS

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENFORCED : WAR REMAINS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KNOX COLBY OF ENFORCED !!

“Humans Are Violent By Design. That’s How We’ve Survived.”

DISC REVIEW “WAR REMAINS”

「俺たちは古い伝統に思いを馳せながら、新しいリスナーには新鮮に映るように工夫してやってるんだ」
2010年代後半。スラッシュという容赦のない獣は、爆発的な人気を誇る新進気鋭の POWER TRIP の力によって、ハードコアの衝動を多分に受けた新たなスタイルで世界に再びその威光を轟かせました。2020年、POWER TRIP の象徴的なフロントマン Riley Gale の急逝は明らかにメタル世界の大きな損失でしたが、それでも彼らに続くアメリカのニュー・エクストリーム、その激しい波はとどまることを知りません。いや、むしろ、現代こそが “クロスオーバー・スラッシュ” の黄金時代なのかもしれませんね。
「Arthur は、自分のやっていること、作っていることを正確に理解していて、特定のスタイルやサウンドのバンドがどのように表現されるべきかをしっかりと理解しているんだ」
自らも SUMERLANDS, ETERNAL CHAMPION という温故知新のニュー・エクストリームを率いる Arthur Rizk こそが、この新たなアメリカの波の牽引者です。若い世代にとって、インターネットを通して知る80年代の音楽は、ある意味驚きで、新発見なのでしょう。そうして彼の地のメタル・ナードたちは、好奇心の赴くままに古きを温めすぎて、当時を過ごした実体験組のような知識と思い入れを持つようになりました。そこに現代の文脈を織り込めばどうなるのだろう?そんなタイムトリップのような実験こそが、Arthur の真骨頂。
POWER TRIP, CODE ORANGE, TURNSTILE といった Arthur が手がけたニュー・エクストリームの綺羅星たちは、そうやって様々な “If” の掛け算を具現化していったのです。今回インタビューを行った、東海岸から登場した ENFORCED は “暴力装置” という点で、”Arthur’s Children” の中でも群を抜いた存在でしょう。
「俺は暴力的な人間ではないけど、暴力行為の因果関係や思想や概念としての暴力を理解できるほどには成熟している。俺たちが暴力と完全に縁を切るということは、自分のDNAを無視するってことなんだ」
ENFORCED は、否定したくても否定できない人間の “暴力性” に一貫して焦点を当てています。戦争の時代に戻りつつある現代。ENFORCED の魂 Knox Colby は、机上の平和論者に現実を突きつけます。オマエは暴力の恩恵を受けていないのか?戦争は時代を進めて来たんじゃないのか?人類は本当に暴力と縁を切れるのか? “War Remains”…と。
「SLAYER が成してきたことを、俺たちも実現できると思いたいね」
前作 “Kill Grid” のスラッシュへのグルーヴィかつ多彩なアプローチが “South of Heaven” だとすれば、”War Remains” は彼らの “Reign in Blood” に違いありません。このアルバムが走り出したが最後、33分後には死体確定。跡形もなく踏みつけられたリスナーの骸以外、何も残りません。Knox が Tom Araya のひり付くシャウトとデスメタルの凶悪なうなりの完璧なキメラで血の雨を降らせ、殺伐としたギターの戦車が世界を焦土に変えるのに3分以上の時間は必要ないのです。今回、彼らが所望するのは電撃戦。
ただしバンドは、古いスラッシュのルールブックに基づいて演奏しながら、MORBID ANGEL や OBITUARY の伏魔殿から、”Nation of Fear” のような “ハードコアISH” のグルーヴまで暴力の規範を変幻自在に解釈して、人が背負った “業” を、現実を、リスナーに叩きつけていくのです。私たちはそれでも、”ウルトラ・ヴァイオレンス” な世界を塗り替えることができるのでしょうか?
今回弊誌では Knox Colby にインタビューを行うことができました。「人間はそもそも、暴力的にデザインされているんだ。そうやって俺たちはこれまで生き延びてきたんだよ」 どうぞ!!

ENFORCED “WAR REMAINS” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENFORCED : WAR REMAINS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PERFECT VIEW : BUSHIDO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRANCESCO “JOE” CATALDO OF PERFECT VIEW !!

“We Think Bushido Is Very Important Values That Are Somewhat Lacking Today, Especially In Some Western Cultures.”

DISC REVIEW “BUSHIDO”

「僕たちは、武士道の原則が、今日、特に一部の西洋文化において、やや欠けている非常に重要な価値観だと考えているんだ。おそらく、武士道のこうした原則は部分的に回復されていき、今日の世界に適応されるべきだと思うんだ」
武士道で最も尊ばれる義と誉。侍は、例え主君が滅びる運命にあろうとも、義を捨て、誉を捨てて他家に支えることはありません。もちろん時代は変わりましたが、エゴよりも、財産よりも大事なものがあった男たちの生き様は、物質的な現代社会においてある種の教訓とすべきなのかもしれません。”Bushido” の名を冠した作品を完成させた PERFECT VIEW は、決してメロハーを裏切りません。名声や金銭、時の流れに左右されることもありません。ただ愛する音楽を作り続ける。その姿勢はまさにイタリアの侍です。
「僕たちの目標は、映画のような音楽体験ができるアルバムを作ることだった。だから、小さなことでも細部に至るまで細心の注意を払って作ったんだ。この作品は、障害を持って生まれながら、祖父のような偉大な侍になることを夢見る少年の物語だ」
PERFECT VIEW の “Bushido” は、侍の世界に捧げられたロック・オペラです。彼らは、武士という義と誉の戦士をテーマにしたコンセプト・アルバムで、メロハーに義と誉を尽くしてきた日本のリスナーに敬意を表したかったのです。もちろん、メロハーによるコンセプト・アルバムは想像以上に簡単ではないでしょう。メタルやプログレッシブ・ロックのように曲の長さを自由自在に操るわけにもいきません。様々な楽器によるゴージャスなスコアでストーリーを彩ることにも限度があります。しかし、異国の侍たちはこの難題をやってのけました。
「祖父は、お守りを通じて夢の中で彼に語りかけ、彼が自分の道を歩き、運命に出会うよう駆り立てていく。このプロットの中で武士道は、常に自分の夢を信じ、目標を達成するために自分の限界を克服するために戦うということを教えてくれると思うよ」
PERFECT VIEW にとっての武士道とは、夢を貫き、自身の限界を突破すること。武士道とは生きることとみつけたり。アルバムの冒頭を飾る “Bushido Theme” の和の響きで、リスナーは音楽と歴史が神秘の魔法を感じさせてくれる古の日本へと足を踏み入れます。ただし、そこから始まるのは、倭の国の住人たちが心酔した “メロハー” の桃源郷。例えば JOURNEY。例えば WHITESNAKE。例えば DOKKEN。例えば WINGER。あの時代のメロディの花鳥風月が、グレードアップしたプロダクションとテクニックで怒涛の如く繰り広げられていきます。
実に千変万化、変幻自在な5分間のドラマが続く中で、しかし我々は、いつしか “Bushido” の世界観に映画のように没頭していきます。それはきっと、PERFECT VIEW の中に TOTO の遺伝子が組み込まれているから。”ヒドラに立いを挑む騎士” というコンセプトが盛り込まれた “Hydra” はカラフルな楽曲の中にも不思議な統一性のあるアルバムでした。PERFECT VIEW は彼らの曲順や音色を操るテクニックを、インタルードとメインテーマの二本柱でつなげながら、メロハーのメロハーによる、メロハーのための完璧なコンセプト作品を作り上げたのです。
今回弊誌では、イタリアのルークこと、Francesco “Joe” Cataldo にインタビューを行うことができました。「若い世代にもこうした音楽を知る機会があれば、きっと評価されると確信しているからね。だけど問題はいつも同じ。知らないものを評価することはできないし、今日、最大のネットワークやプロモーション・チャンネルは、僕たちに選ぶ機会を与えず、いつも同じようなコンテンツを押し付けることが多いからね」 武士道を語る者ほど武士道から程遠い侍の母国は、異国の侍をどう受け止めるでしょうか。達人どもが夢の跡。どうそ!!

PERFECT VIEW “BUSHIDO” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PERFECT VIEW : BUSHIDO】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IER : 物の怪】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IER !!

“Impossible Not To Mention Ryuichi Sakamoto. He left Us This Year, But His Legacy Is Infinite.”

DISC REVIEW “物の怪”

「僕が初めて陰陽師を知ったのは “X/1999″。このアニメや漫画は僕の大好きな作品のひとつで、”御霊信仰” にも影響を与えているんだ。その後、君の指摘の通り、プレイステーション2時代に大好きだったゲーム “九怨” で再び陰陽師を知ったんだ。僕は小さい頃からサバイバル・ホラーゲームが大好きなんだけど、このゲームは平安時代というその種のゲームではあまりない設定なので、とても面白かったんだ。それに、本当に怖かった!!もうずっとプレイしていないんだけど、いつかまたプレイしなおしてみたいね。もうひとつのインスピレーションは、陰陽師を主軸に据えた “帝都物語”。残念ながら、英語版もスペイン語版もないので、まだ原作は読めていないんだ。ただ、1988年の映画を見て、これはすごいと思ったんだよ!」
近年、日本とその文化にインスピレーションを得たメタルは世界中で確実に増殖していますが、アルゼンチンの IER ほどこの国に精通したメタルヘッドは他にいないでしょう。むしろ、日本人よりも日本人なブラックメタルの改革者。平安の都から現代の大都市東京まで、時を駆け抜ける IER のブラックメタルには、呪いと雅と戦慄が渦巻いています。
「”犬神佐清” では、家族、争い、無邪気さの喪失を扱っているから、そうしたテーマを説明するために、1976年の映画 “犬神家の一族” は最適だったんだ。原作は大好きなんだけど、2006年のリメイク版はまだ見ていないんだよ…市川崑監督の作品ということで、さぞかし面白い作品なのだろうね。アーティストが過去の作品を再演する (監督、主演が同じ) のは好きなので、近いうちに見てみようと思う!」
西洋の刹那的でド派手なホラーではなく、日本の真綿で首を絞めるような持続性怪奇譚に取り憑かれた IER の首謀者 Ignacio Elias Rosner は、J-Horror をテーマとした連作の制作にとりかかります。”怪談” で怒り、”うずまき” で恐怖、”妖怪” で孤独について扱った彼が今回たどり着いたのが集団の狂気でした。
パンデミックやロシアによるウクライナへの侵略、極右の台頭。2020年代の初頭に私たちが見たくすんだ景色には、まさに集団狂気、マス・ヒステリアが色濃く反映されていました。正気を保つ人間がむしろ狂人となる。Ignacio はそうした群衆時代の “うずまき” に敏感に反応して、家族という “集団” の怨念と狂気を見事に描いた “犬神家の一族” をメインテーマに現代の “物の怪” を映し出してみせたのです。
「”By The Way” の引用を発見してくれて、本当にうれしいよ!君の言葉通り、僕は自分の心をオープンにして、できるだけ自由な音楽を作るように心がけているんだ。そういった要素が音楽全体の中でフィットしているのを、とても誇らしく思っているんだ。最近はファンクやヒップホップ、コンテンポラリー・R&Bを聴くことが多いから、”物の怪” ではぜひそうした影響を披露したいと思ったんだ。プログレッシブ・ロック/メタルに関しては何でも許される(のかな?)けど、ブラックメタル・シーンはずっと保守的な気がするんだよね。そうした影響は決して強引なものではなく、アルバムの表現方法として理にかなっていると思うのだけどメタルファンを遠ざけてしまう気持ちもまあわかるよ」
Ignacio が放つ狂気は、当然その音楽にも反映されています。レッチリを黒くコーティングした “日本の都市伝説 Vol.1″、KORN と Nu-metal の遺産を黒く受け継ぐ般若の面、そしてゲーム音楽の巨匠山岡晃への敬意で満たされた黒いサイレントヒル “最後の詩”。弊誌では、ブラックメタルこそが今最も寛容かつ先鋭であると主張し続けていますが、Ignacio にとってはそれでもまだ足りなかったのでしょう。ここにあるのは、まさにジリジリとひりつくように持続する和の戦慄と瀬踏みの共鳴。その逢魔時から忌み夜に続くゾゾゾな階段は、sukekiyo の怪談にも似て変幻自在の百鬼夜行をリスナーに突きつけるのです。”犬神佐清” で聴けるような、南米特有の “トリステーザ” がアルバムを通して絶妙のアクセントとなっていて実に素晴らしいですね。
今回弊誌では、IER にインタビューを行うことができました。「アートワークは、佐清の仮面と同じように、この映画を象徴するショットだからね。このショットは、日本の大衆文化の中でかなり参照されているよね? テレビ番組や映画で佐清の脚がたくさんオマージュされているという投稿を、どこかの掲示板で見た覚えがある。”新世紀エヴァンゲリオン” でも使われたくらいにね」  二度目の登場。どうぞ!!

IER “物の怪” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IER : 物の怪】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUNAR CHAMBER : SHAMBHALLIC VIBRATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRANDON IACOVELLA OF LUNAR CHAMBER !!

“日本はね…私にとって信じられないぐらい夢みたいなところなんですよ。人生と考え方に大影響を受けて、美しい思い出も出来ました…本当に本当に言葉で表現出来ません。今までで一番お気に入りの場所です!”

DISC REVIEW “SHAMBHALLIC VIBRATIONS”

「Tomarumは普通に Progressive Black Metal をしてて、したことないもっとヘヴィな Progressive Death Metal をしたかったんです。お気に入りの Death Metal バンドを尊敬しながら自分のサウンドを作りたかったんです!」
“Shambhallic Vibrations” はプログレッシブでテクニカルなデスメタルのファンにとって、まさに天啓です。ブルータルでありながら静謐、エピックでありながら親密、難解でしかしスピリチュアルなデスメタルが、煌めきとヘヴィネスを伴って届けられる涅槃。
新進気鋭、アトランタのプログ・ブラック集団 Tómarúm の中心メンバー Brandon Iacovella と Kyle Warburn が Timeworn Nexus と They, Who May Not Be Perceived というペンネームで始めたバンドには、フレットレス・モンスターThomas Campbell、BENIGHTED のドラム・マシン Kévin Paradis という異才が加入して LUNAR CHAMBER の名乗りをあげました。
彼らのスピリチュアルな広がりと深みのあるブルータリティーは、現代のシーンに真の類似品がなく、その豊かできめ細かな質感は、フレットレス・ベースとスペーシーなシュレッドの綺羅星によって殊更際立つものとなっています。そのアプローチ、テクニック、トーン、そして影響の数々はあまりにも無数で、むしろすべてが一体となっていることさえ不思議なくらいですが、そこには、日本や仏教、東洋哲学に由来する調和の精神が大きく作用していました。
「若いころからヒンズー教と仏教に興味があって、歌詞とテーマを作りたかった時にその興味を思い出して、日本に住んでいた時とどのぐらい人生が変われたのかも思い出して、そのテーマについて書きたくなったんです」
実はコロナ禍以前、Brandon は日本が好きすぎて来日し、翻訳家を目指し学生として台東区で2年ほど暮らしていました。そこで日本の人たちと触れ合い、価値観や生き方を理解し、日本文化を受け入れることで彼の人生は大きく変わっていきました。争いよりも調和を、欲望よりも悟りを求める生き方は、そうしていつしか Brandon の創造する音楽へと憑依していったのです。
「日本のメタルシーンはめっちゃ凄くて、大好きです。Lunar Chamber の元々のドラマーは Temma Takahata なんですよ! Strangulation, 死んだ細胞の塊、Fecundation、等々のドラマーです!本当に凄いドラマーなんで、彼のバンドと他の友達のバンドも何回も見に行って、本当に大光栄でした。日本のシーンにも大影響を受けました。Desecravity, Viscera Infest, Anatomia, 等々も見ることが出来て、あれもかなりインパクトがありましたね。日本の音楽と言えば確かに Desecravity, Viscera Infest, Strangulation, 死んだ細胞の塊, Crystal Lake, Disconformity, 明日の叙景とかを考えますよね」
アルバムのフィナーレを飾る12分の “Crystalline Blessed Light Flows… From Violet Mountains into Lunar Chambers” は、今年のメタル界で最も注目すべき成果の1つかもしれません。シンセを多用した神秘的なオープニングから、巨大なフューネラル・ドゥームの睥睨、荘厳でマントラのようなメロディ、地響きのブラストと鋭く研ぎ澄まされたギター、瞑想的な静けさと地を這う重量の邂逅、そして到達する涅槃まで、すべては “菩提樹” で見せた印象的なモチーフとハーモニーをさながら経のように貫徹して、絶妙な結束を保持しているのです。
さらに言えば、LUNAR CHAMBER の体には、日本のメタル・シーンの “細胞” が組み込まれています。死んだ細胞の塊、明日の叙景、CRYSTAL LAKE といった現代日本のメタル世界を象徴するような多様性をその身に宿した LUNAR CHAMBER の “調和” は、その東洋思想と相まって、すべてが祇園精舎の菩提樹へと収束していきます。
今回弊誌では、Brandon Iacovella にインタビューを行うことができました。ほとんどの回答を日本語で答えてくれました。「仏教のメタルは、ある人にとっては間違いなく逃避の手段になり得ると思う。自分の音楽で物語を作るのが好きだし、この作品には内省的なところもあるから、誰かが自分の現実や心を探求し、私たちの物語に共感し、慰めを得ることができたら、それは私にとって大きな意味があるんだよ」 どうぞ!!

LUNAR CHAMBER “SHAMBHALLIC VIBRATIONS” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUNAR CHAMBER : SHAMBHALLIC VIBRATIONS】