タグ別アーカイブ: best new music

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SPIRITBOX : TSUNAMI SEA】


COVER STORY : SPIRITBOX “TSUNAMI SEA”

“I Think Anything That Women Like Is Always Mocked, But I Think Teenage Girls Are The Purveyors Of Culture.”

TSUNAMI SEA

津波が本当の姿を現すのは、その波が水辺に到達してからだと言います。最初はほとんど見えない深海を脈打ちますが、最終的にはこの壊滅的な自然災害は無慈悲な水の壁を築き上げ、その進路にあるすべてのものを押しつぶすのです。
「津波が陸に到達した後、それが私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか飲み込めていないうちに、その災害は無慈悲に通過していく」
SPIRITBOX の生活は既に計り知れないほど変化しました。2015年にカルト的なマスコア・クルー iwrestledabearonce の灰から生まれ変わった Courtney LaPlante と Mike Stringer は、以前よりも暗く洗練された音楽を作ることを目指していきました。そうして、デビュー作 “Eternal Blue” からの “Holy Roller” や “Blessed Be” といった曲は、新たな表現を求めていたファンたちの心に響き、彼らをメタルの頂点へと押し上げたのです。以来、彼らは勢いを増し続け、2022年のDownloadフェスティバルでのテントを揺るがすデビューから、Reading & Leedsのメインステージ、Megan Thee Stallionとのレコーディング、先月のAlly Pallyでのソールドアウト公演まで、着実に歩みを進めてきました。その勢いは、メタルコア世界の狭い枠組みを飛び出した津波ともいえました。
しかし、SPIRITBOX はタイトルの “津波” そのものではありません。むしろ、縦波、横波、波浪、風浪、うねり、磯波…数多くの波が積み重なって壮大なコンセプトを形作る広大な海。メンタルヘルスにおける比喩的な津波…うつ病や暗い思考が心を押し流す状態。そして、Courtney と Mike の故郷バンクーバー島での生活経験…船以外では離れることができない孤独な環境。そうした痛みや恐怖、孤独の影響は、2022年の “Rotoscope EP” と2023年の “The Fear Of Fear” の即効的なスリル追求と比べ、より威圧的で包み込むような “Tsunami Sea” への到達に現れています。

大きな成功が Courtney の率直な歌詞の核心にある危機感を侵食するのではなく、”Tsunami Sea” はそれがさらに激化と同化したようにも思えます。”Eternal Blue” のタイトル・トラックで彼女は “苦痛が離岸流のように引きずり始める” と歌いました。4年後、ボーカリストの感情は今や海洋規模となり、”私のすべての涙を津波の海に変える” と表現されています。それでも、Courtney と SPIRITBOX はただ痛みの海に押し流されることはありませんでした。つまり、この音楽は、メンバー個人の内面的葛藤はもちろん、元メンバーの死去やベース奏者がロサンゼルスの山火事で自宅を失うなど、逆境を乗り越えてきたバンドにふさわしいものとなっているのです。
「Bill Crook の死は恐ろしいことだった。突然のことで、私たちはツアー中だったのよ。彼の母親が、彼の友人全員が追悼式に出席できるようにしてくれたことに、私たちは本当に感謝しているの。彼女は追悼式を延期してくれたのよ。
このアルバムは本当に彼のためのもの。なぜなら、彼は私たちと同じ場所で育ち、同じ経験をしてきたから。アルバムで話していることの多く – 私が精神的に向き合い、克服しようとしていること – 彼と私はその点で非常に似ていたんだよ。アルバムを彼に見せられたらよかったと思う。毎日彼をとても恋しく思っているわ。この数ヶ月は皆にとって大変だったけど、私たちは大丈夫。今年は本当に良い年になると思うよ」

“Soft Spine” という力強いリードシングルから、変幻自在なメロディが光る “Perfect Soul”、そしてインダストリアルな要素を交えた176秒の “No Loss, No Love” まで、リスナーはすでにこの11曲が SPIRITBOX の最高峰であることを直感しているでしょう。大きなステージで演奏する機会を得たことで、彼らは “A Haven With Two Faces” のような壮大な瞬間を捉える直感を磨いてきました。一方で、彼らは “Crystal Roses” のような予測不能なサウンド、例えば変幻自在なドラムンベースに挑戦する勇気をも得たのです。
「音楽を書く時はそれを意識しないが、後に1万人や2万人の観客の前で自分の好きな曲を演奏すると観客はただスマホをいじっているだけだ。一方、特に気にかけていない曲では、みんな跳ね回って大騒ぎしている。なぜそうなるのかと疑問に思うようになる。それは曲作りに直接影響するわけではなく、単に “この曲でみんなが狂喜する姿が見える” と気づくだけだ。でも、私はいつも間違っている。私の好きな曲は、いつも最も再生回数が少ない曲だ。それは呪いのようだ…このアルバムだと “Black Rainbow” に夢中なんだがね。あらゆるタイプの音楽からあらゆるインスピレーションを得ることは、とてもとても重要だ。 どのジャンルの中にも良いトーン、ソングライティング、メロディがあるんだ。だからブレイクダウンだけを聴くことに自分を限定すべきではない」
一方で、Courtney は観客の反応をあまり気にはしていません。
「それが私の音楽の楽しみ方じゃない。人々がモッシュしているかどうかで、私たちが良い仕事をしているかどうかを判断しないよ。もし彼らがモッシュするなら、それは素晴らしい。それがその人の音楽の楽しみ方だ。でも、ただ頷いているだけの人もいる。それがその人の音楽の楽しみ方かもしれない。そして、ただ立っているだけで音楽を吸収している人に対しては、エゴを持ってはいけない。もしかしたら、彼らはそこで SPIRITBOX を初めて発見しているのかもしれない。もしかしたら、ただ全てを吸収しているだけかもしれない。だから私は大好きな曲を歌いながら、人生で最も楽しい時間を過ごしているだけなの。結婚式で踊る人みたいに、自分の小さな世界に入り込んでいる!馬鹿に見えても構わないさ!」

美しさ、陶酔、そして命がけの混沌が、”Tsunami Sea” を駆け抜ける中で尽きることなく展開されます。このバンドは、”Keep Sweet” のようなのモッシュ・コンフェクションを混ぜ合わせ、次に “Ride The Wave” の滑らかなオルタナティブ・ポップを軽やかに滑り、クリーンな歌声のクロージング・トラック “Deep End” では目眩く多様性を備えています。
「Michael も私も、本当に何でも聴くのが好きなの。 たとえそれが、プロダクションや歌詞のつながり、インストゥルメンタルや全体の雰囲気など、研究的に聴いているものであっても、聴かずにはいられないの。真空の中で曲を書くことはできない。 常に外部の音楽から影響を受けているんだ」
しかし、そのすべては心からの、しばしば胸を締め付けるような、感情に支えられています。”悲しみが私を追いかける” と、Courtney はオープニング・トラック “Fata Morgana” が迫力満点に始まると呟きます。 “呼吸するたびに、その悲しみを胸に感じる…” その悲しみの糸は彼女の中で途切れることはありません。周囲の騒音や勝利の味わいにもかかわらず、内側の暗闇は枯渇することがないのです。
「私の人生で素晴らしいことが起こっても、メンタルヘルスに気を配らなければ、私たちは常に極端な感情の波に翻弄されるだろう。特に私のような人間なら。それが私の感じ方よ。それが私の一部。悲しみや怒りの歌詞は、おそらく私にとって常に共感できるものだろう。
面白いことに…キャリアでの幸せや成功、人間関係での充実感が増すほど、まだあのネガティブな感情を抱えていることに恥ずかしさを感じるの。人生が順調なのに、メンタルヘルスが低下することに恥を感じている人は多い。そして、私は歌詞を通じて、見知らぬ人々にその感情をさらけ出したい衝動があるの。おそらく、それは自分自身をより深く理解するためのメカニズムかもしれない。そうやって、良い人間であるためにできる限りのことをしながら、その抑うつ症のブラックホールに引きずり込まれないようにしているの」

6年前、彼女は時給$8でウェイターとして働いていました。”Eternal Blue” がリリースされた当時でさえ、彼女と Michael はバンドの資金調達のために、データ入力の仕事をしていたのです。そうしてダウンロードで数万の観客を前に Courtney は、”Perfect Soul” の感動的なパフォーマンスを披露し、”私の夢はただの幻想だ” と歌いました。
「数万人の前でそんな個人的な感情を表現するのは、とても難しいこと。でも私を知っている人なら、私たちの旅路を見てきた人なら、私が言っていることに、私の生活について現実を投影できるだろう。でも、ほとんどの人が本当の私を知らない。あの言葉は、私たちのバンドとしての経験を超えた多くのことを指している。残念ながら、あの感情は私にとって常にレリバントなものだ。それは私の人生の一部だった。精神疾患、ペテン師症候群 (自分の能力や成功を過小評価し、自身を詐欺師のように感じてしまう) の経験があることを、私はずっと知らなかった。私は問題にしないのが上手だから、ただ隙間をすり抜けてきただけ。それは潮の満ち引きのような循環的なものだった」
Courtney はメタルにおける女性の存在についても、常に思考を巡らせています。
「人生のある時点で、女性や少女たちが誰も招待されていないパーティーには参加する気にならなくなるものよ。そこに、ドアマンが私を入場させるかどうか待って並ぶつもりはない。自分の、他のクラブを探しに行くでしょう。望まれないなら、私を歓迎してくれる場所を探すだけよ。
これは、若い少女の頃、メタルの世界から歓迎されていないと感じた経験からも来ているの。例えば、小さなメタルのライブに行って、なぜここにいるのかと疑問に思われるような状況。その状況は改善されているけど、私たちはより高い基準を求め、私たちに投げられたパン屑にはこだわらない必要がある。私たちはステーキを食べようとしているのだから」

Courtney にとって、女性リスナーの存在はとても大きなものです。
「SPIRITBOX, BAD OMENS, SLEEP TOKEN, そしておそらく KNOCKED LOOSE が共通しているのは、他の同世代のバンドと比べて女性リスナーがかなり多いことだと思う。Rise-core 時代や emo 時代のバンドも同じだ。METALLICA のドキュメンタリーを見ても、その点で笑われていた。女性が好きなものは常に嘲笑されるものだけど、私はティーンエイジャーの女の子が文化の伝道者だと考えているのよ」
“Crystal Roses” や “Ride the Wave” では、ボトルの中、エコーチェンバーの中に閉じ込められる怖さを、島で育った自身と重ねています。
「私たちがこれまで作ったすべての作品—歌詞的にもサウンド的にも—は、コンセプトアルバムとして考えていて、このアルバムのすべての曲は互いに関連しているの。最後の曲は、私が話したすべてのものの集大成。奇妙なサウンドは実際、海の音だよ。それは説明するものではないけれど。聴く人にさりげなく伝われば幸いだよ。
歌詞的には、このアルバムは私自身が何者であるかを、私の頭の中で描いた自伝のようなもの。育った環境は、世界を見る方法に深く刻み込まれていると思いの。15歳の時、バンクーバー島に移住したんだ。そこで、私のバンドのメンバーである夫の Michael と出会ったんだ。孤立した島で暮らし、キャリアの夢を叶えるために難しい環境は、私を非常に孤立させたの。それは私の人格を大きく形作ったけど、同時に懐かしさも感じている。故郷の場所を美化してしまうというかね。そこにいた時は私を縛っていたのに、離れてからは懐かしむの。家族を恋しく思うからかな」

SPIRITBOX はずっと冷静で、”自分たちが何になりたいのかを模索中だ” と語り、創造性に過度のストレスをかけることで創作物を歪めてしまうことを避けてきました。
「それが私たちの本質だと思う。過去数年間、たくさんのクールでクレイジーな経験を積んできた。グラミー賞でレッドカーペットを歩き、インタビューを受けた。しかし、そのようなことを繰り返すほど、私たちはまだ最低賃金の昼間の仕事をしていて、バンドを立ち上げるのが不可能に思えた時代と、今もつながっていることに気づくんだ。あの経験は、”レッドカーペットに立つ” というイメージよりもずっと身近なの。ああしたイベントは日常の一部ではないし、慣れるまでには長い時間がかかるでしょう。そして、私たちにはそれが起こり続けるかどうかは本当にどうでもいいんだよ…」
シーンの連帯感がプレッシャーを和らげる一方で、その裏側には、新しい世代の象徴としてそのコミュニティを背負う重圧がかかってきます。Courtney は、SPIRITBOX が “目隠しをして、それについて考えないようにし、音楽が誰かの消費対象となるための流行戦略討論に陥らないようにする” と主張します。
「考えれば考えるほどストレスが増す。みんなが歌詞を全部知っているのは、私たちにとってまだ非常に奇妙なことだ。インターネット・バンドとして実家の地下室で生まれた私たちが、”未来のフェスティバルのヘッドライナー” と呼ばれるようになったのは奇妙な感覚だ。プレッシャーは確かに存在する。しかし、自分たちらしさを保ち、楽しむ音楽をリリースし続ける限り、非難されることはない。それが現実だ… 自分の音楽は、無限の可能性を持っていたいんだ」

Courtney はメタルを非常に “二元的な” ジャンルだと理解しています。
「バンドがスローな曲をリリースしたら、”彼らは今やスローな曲しか作らない” とか、本当にヘヴィな曲をリリースしたら、”バンドが戻ってきた。彼らは最もヘヴィな曲を作ったし、それが彼らの現在だ” とか。
私たちの世界では、極めて二元的なのよね。実際に、ミュージックビデオのプレミア上映中に人々を見ていると、”OK、彼女は30秒叫んで、今は45秒歌ってる。ああ、ダメだ! でも、ブレイクダウンがある、神様ありがとう。また好きになった” と。サイドバーで “これはひどい” と表示されていても、私が叫び始めると、彼らは “やった!” と反応する。
なぜそんな二元的になるのだろう。私は常に、地元のシーンや地域のシーンの一部ではないと感じていたの。常に少し外側にいるような感覚だった。そしてある日、誰かがクリックし、誰かが魔法の杖を振ったかのように、プロのメディアが “このバンドは素晴らしい。これが君たちが好きになるべきバンドだ” って言い出したんだ。でも、自分たちが “メタルコア・バンドだ!” なんて思ったことは一度もないんだよね」
SPIRITBOX はメタルのステレオタイプを破壊してここまできました。
「私たちは “1つのバンドの価格で2つのバンドを味わえる” と言っているの。人々がそれを好むかどうかは分からないわ。誰かに2つの異なる SPIRITBOX の曲を聴かせても、同じバンドだと気づかないかもしれないよね。
だから、すべてのバンドがそうではないことは知っているけど、流動性って大事だよね。私は “血統” や “こうしないとメタルではない“ という外部の圧力を感じていないんだ。なぜなら、私はメタルを聴いてきたのに “メタルではない” と言われ続けてきたから。誰が気にするの? DEFTONES のようなバンドがそれについてどう思っているのか、いつも疑問に思っているよ」

Courtney がメタルを聴き始めたのは遅く、だからこそこのジャンルはサブジャンルに囚われすぎだと感じています。
「18歳くらいまで、メインストリーム以外の音楽を聴いたことがなくてね。そして、私が初めて接したメタルは、Protest the Hero, Despised Icon といったカナダのバンドたちだった。Misery Signals はカナダ出身ではないけど、私たちは彼らをカナダのバンドとして数えているんだけどね。
つまり、自分で探した音楽ではなく、私の島にやってくる人たちの音楽だった。非常に露出が少なかったよね。そして少し年を取ってから…私は確かにエクストリームな音楽が好きだと気づいた。Job for a Cowboy の “Entombment of a Machine” をかけて、技術的な能力を聴き分けていたんだよね。他の同年代の人がメタル音楽を聴き始めるのとは異なる方法で聴いていたんだ。後からその音楽を学んだから、なぜこうしたバンドがこうした音をしているのかを理解する必要があった」
今や、インターネット空間には様々な批判や悪意が蔓延しています。差別や抑圧に抗い、多様性を認め合うことはどんどん難しくなっています。
「私たちは互いを守ろうとしているの。憎しみを増幅させたくないのよね。個人的には、自分自身のことに集中したいだけで、常に悪口を言いたくないんだよ。右派の振り子の揺れもどし、アルゴリズムによる人々の過激化…そして、メタルは私たちが思っていたよりずっと保守的だったのかもしれないね。もちろん、公の場で批判することはできるけど、それがまさにあの彼らが求めていることのように感じるんだ。だから私は成功を収め、持っている影響力を活用して影響を与えることを望んでいるのよね。
NINE INCH NAILS はいい例だよ。フェスで一緒になった時、彼らがステージを見て “私たちのステージに女性を配置し、多様な人種の人々を配置する必要がある。これは受け入れられない” と言ったことがある。私は “Wow、あのバンドの影響力だ。彼らはそうできるんだ” と思った。だから、いつか私もそうできるかもしれないし、私の同世代の多くもそうできるかもしれない。全員を知っているわけではないけど、彼らは私たちと同じように感じていると思う。だから、同志のバンドたちが成功すると、それが私たち全員を強化することになるんだよね」

SPIRITBOX にとっての同志とは、BAD OMENS であり、SLEEP TOKEN でしょう。
「私の周りにメタルを聴いたことのない人たちが、SLEEP TOKEN の音楽を聴いている。特別なケースだよね。彼らは断然最もポップ寄りのバンド。
彼らに会ったことはないけど、多分私たちや BAD OMENS に近い存在だと思う。彼らとこの話題について話したことはないけど、彼らも作った曲のジャンルについて考えたことはないと思う。それが良いか悪いかは分からない…でも少なくとも AI にこんな音楽は作れないよ」
SPIRITBOX の成功は、疑いながらも自分を信じて諦めなかったことから生まれました。
「私は本当に妄想的な人間で、人生がこうなることをずっと知っていた。その確信は、極度の自己疑念とペテン師症候群の霞の中で常にそこにあった。27歳の誕生日は “最悪の日” だった。決して忘れないよ。その日、私はコーヒーショップで一人で働いていた。他の従業員は全員病気で休んでいてね。コーヒーを作ったり、サンドイッチを作ったりしながら、誕生日なのに最低賃金の仕事をしていることに恥ずかしさでいっぱいだった。そして、誰かがミルクの瓶を倒してしまい、私は床に膝をついて掃除しながら、涙が溢れそうで、怒り始めた客たちに囲まれていたんだ。”27歳で、教育も金もなくて、前のバンドを辞めたばかりなのに、牛乳をこぼしただけで泣いてるなんて!”と。
それでも、SPIRITBOX の成功は私にとって起こるべきことだと分かっていた。私たちは次のことにばかり集中して、今この瞬間を生き、自分を褒めることを十分にできていないのかもしれない。私たちが既にどれほど遠くまで来たかを考えると、信じられないほどだよ…」
結局、Courtney は音楽 “オタク” だったかつての自分からその本質は変わっていないのです。
「そう、だから自意識過剰なんだと思う。高校のクールな連中はみんな私たちをボコボコにしただろうね。ただ不愉快だからいじめられるオタクっているでしょ? それが私たち。ただ不愉快なだけなんだ。 私たちは “私たちは違うから嫌われてるんでしょ? “でも、”違うよ、ただ君が嫌いなだけだよ “って言われるんだ (笑)。
でも、だからこそ私たちは奇妙な音楽を作ることができる。 みんなにバカにされるけどね (笑)」

参考文献: ELI ENIS :”Your whole family’s going down”: A blunt talk with Spiritbox singer Courtney LaPlante

KERRANG! :Spiritbox: “Every time I walk out onstage, I can’t believe this is my life”

GRAMMY AWARDS :On ‘Tsunami Sea,’ Spiritbox’s Courtney LaPlante Contemplates Adversity, Solidarity & Renewal

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SLEEP THEORY : AFTERGLOW】


COVER STORY : SLEEP THEORY “AFTERGLOW”

“Nowadays, Heavy Bands Have Flipped The Script, Making Music For Everyone’s Ears. You Might Be The Sort Of Listener Who Considers Themselves a Pop Fan, But You Could Turn On a Sleep Token Song And Enjoy It.”

AFTERGLOW

「僕たちはアートを作るためにここにいる。 みんなと同じでは何も始まらないからね」
SLEEP THEORY のフロントマン、Cullen Moore の最初の記憶は、リビングのソファーで父とボビー・ブラウンの反抗的なアンセム “My Prerogative” を一緒に歌ったことでした。”誰の許可も必要ない 自分で決断をする それが自分の特権だ”。
このマインドセットは、メタルの境界を破る SLEEP THEORY に結実しました。そのポップな滑らかさとR&B の野性味は前例のない共鳴、共感を呼んだのです。彼らはラジオを支配し続け、今後の大規模なフェスティバル出演が成功を確固たるものにしています。
「ガソリン・スタンドで止まった時、父が “SLEEP THEORY がこんなに大きくなるなんて考えたことある?” と聞いてきた。僕はただうん、と答えて父に “それは僕が決して小さくさせなかったからだよ” と伝えたんだ。僕は僕が関わるものに対しては、競争心が強く、決して自分の水準を下回ることを許さない。そのアティテュードがどこから来たのかは分からない。ただ、ずっとそうだっただけだ。それは他の人より “優れている” ことではない。誰かが何かを成し遂げるのを見て、自分がどれだけできるか試したいという意欲なんだ。SLEEP THEORY が既に到達したレベルに達していなくても、それが実現するまで努力を続けるだけだ」
Cullen のその自信には、作られた要素は一切ありません。 テネシー州とミシシッピ州の州境の南側で音楽に囲まれて育った彼は、その場所を親しみを込めて “メンフィシッピ” と呼びます。その背景が、彼の自信の大きな要因となっているのです。ブルースの発祥地であるビールストリート、メンフィス・ラップの誕生地である粗野な街、そしてエルヴィスのグレースランドの豪華絢爛な世界など、アメリカを象徴する多くのサウンドは、彼の家の玄関から車で 30 分圏内で生まれました。
「みんなは、僕がいつ歌えるようになったのか尋ねてくるけど、正直覚えていない。ただずっと歌っているだけなんだだ。それが唯一、僕ずっとできてきたことだから。父はいつも歌っていた。祖母も。叔父も。もう一人の叔父も。叔母も。大叔母も。僕たちは皆歌手だった。そして皆自然にやっている。人生で経験した多くのことにおいて、音楽が関与していた。そして、それは僕の人格の核心的な部分となった。歌が人生であることを疑ったことは一度もないんだ」

粒子の粗いVHSで父親の音楽ビデオを見たことが、Cullen が歌を職業として実現可能だと確信するきっかけになりました。両親は息子に良い育ちと彼が得るべき機会を与えるために努力しました。時には、勉学を優先して音楽を “プランB” にすべきだと奨励しましたが、それは決して彼の道ではなかったのです。
「12歳から音楽をやっている。そして14歳からスタジオにいる」
まずは、創造的な道を模索することが第一でした。Cullen にとってヒップ・ホップに手を出すことは魅力的ではなく、父親から受け継がれた純粋なR&Bのバトンを継ぐこともありませんでした。そうして彼は、人生のコントロールを握るという別の目標から父親の足跡をたどり、アメリカ軍に入隊しました。ミシシッピ州コリントを拠点とする警備隊での3年間、それは自己肯定感の向上と現実の厳しさを同時に感じた経験だったのです。
「あの瞬間を鮮明に覚えている。軍隊では、自分を正す必要があると感じるから入隊する人もいる。僕はバランスの取れた家庭で育った。悪い子供ではなかった。だけど、大学を中退し、自分がどこへ行きたいのか、何をしたかったのか分からない状態だったんだ。数歳年下の友人と将来の計画について話していた時、彼は軍隊に行くと言った。僕は人生で何をしたいのか分からなかったから、同じように入隊を決意したんだ。父には話さなかった。父が軍に行かせたがっていたことは知っていたけど、もしそれが気に入らないものになったら、彼のせいにするのではなく自分で決めたことだと言いたかったから」
軍での経験は強さを養い、Cullen は自信を磨きました。同時に、日本のアニメは “良い人間” になる手助けをしてくれたと語り、”Naruto” のタトゥーを腕に刻みました。
「僕は常に非常に意志の固い人間だった。非常に頑固で、自然に自分自身に自信を持っていた。しかし、軍隊を経験したことで、すでに制御不能な炎のように感じていたものがさらに強まったんだ。軍隊は僕に冷静な判断力を与え、本当に僕のパーソナリティを1000倍に強化してくれた。そして、忍耐とチームワークを教えてくれたんだ。もし時間を遡れるなら、再び入隊するだろうか?一瞬の迷いもなく、イエスだね!」

2023年初頭、SLEEP THEORY はまだ無名でした。 彼らのラインナップが固まったのはつい最近のことで、名前が決まったのはそのほんの数ヶ月前のことでした。新曲 “Another Way” の17秒のプレビューを気まぐれにTikTokに投稿したときは、ほとんど期待もしていませんでした。しかし、36時間以内に再生回数は50万回を記録し、新たなファンの軍団が続々と押し寄せてきたのです。
その瞬間が SLEEP THEORY の物語から切り離せないのはたしかですが、Cullen は彼らが “一夜の成功” と受け止められることには皮肉を感じています。なぜなら、2018年に軍を退役した彼は、それからずっと地元のプロデューサー、David Cowell と二人三脚で歩んできたからです。
「メタルのブルーノ・マーズになりたいと David に言ったんだ。僕は次に何をするのか全くわからないような、そういう明確なアイデンティティを持ったアーティストになりたかったんだ。 David はその時点でメンフィスで最高のプロデューサーだったと思うけど、まだ注目されていなかった。そして今、彼はプロデューサーとして、そして SLEEP THEORY はバンドとしてブレイクを果たした。彼の天才ぶりが注目されるのはいいことだ!」
最初の数年間はスタジオ・プロジェクトでしたが、2021年にベーシストの Paolo Vergara を迎え入れ、本格的に活動を開始しました。Paolo の紹介でドラマーの Ben Puritt が参加するようになり、素晴らしいシュレッダー/スクリーマーである Ben の弟 Daniel が加わったことで、すべてがかみ合いました。
「俳優、プロデューサー、撮影監督がいる映画を作るとしたら、僕は監督みたいなものかな。 ギターを弾くことはできないけど、物事を見て、物事を聞いて、すべてがどこに向かうべきかを理解することはできる。 また、他の人たちに仕事を任せるために、自分のやり方から離れるべきときも学んできた。 最初のころは、まだ物事を理解しようとしていたけれど、今は、よりよく動くマシーンになったよ」

Cullen にとって、自身の作品にラベルを付けるプロセスは難しいものでした。他のバンド名として “Monolith”(暗すぎる)と “Wavelength”(ポップすぎる)を却下し、オンラインで科学用語を閲覧していた際に、”Sleep Theory” に決めました。
「これが正しいと感じる。口に馴染む。重すぎず、軽すぎず」
2023年にEpitaphからリリースされた “Paper Hearts” はEPでしたが、その6曲に費やされた時間と努力は、それ以上のものを感じさせる作品でした。そうして、David のSupernova Soundスタジオ(メンフィス北東部)と往復しながら “Afterglow” のレコーディングを行った Cullen は、これがそのEP以上の決定的な声明である必要があると悟ったのです。
「”Afterglow” は “Paper Hearts” の続きから始まる。情熱的だが最終的に抽象的な感情の枠組みで、僕たちがこれまで語ってきたストーリーに終止符を打つものだ。愛する誰かと共に多くのことを経験したにもかかわらず、まだ “私とあなた” の間で迷っている感覚を捉えているんだよ。その余韻—アフターグロウ—は僕をまだ悩ませているんだよ。そこには個人的な経験が含まれているけど、それは僕だけに限定されたものではない。このバンドのどのメンバーからも、または僕たちのプロデューサーからも来得るもの。もちろん、スタジオに入って “さあ、愛について話そう!” と言ったわけではないけど、アルバムの曲は共感できるものにしたいと思っていた。誰もが失恋を経験するので、意識的か無意識かに関わらず、そのことを書いたんだよ」
ヒップホップのビートとエレクトロのアトモスフィア、メタルコアの咆哮とR&Bの官能性が融合し、刺激的な作品を構成。緊張感あふれるアドレナリンの爆発、脆い切なさ、魂を揺さぶるカタルシスの瞬間を織り交ぜるアルバムは実にユニークです。例えば “Hourglass” は、A Day To Remember の全盛期を思わせるポップ・パンクとメタルコアの融合。”Stuck In My Head” は、失恋の物語に巨大なフックを埋め込んで煮詰めた共感の一曲。EPからの継続曲 “Numb” はアンセムで、”壊れた夢の目を覗き込む / 縫い目が裂けた新たな計画” と挑発的に歌っていきます。

しかし、最も心に響くトラックは、新曲 “III”(「スリーズ」と発音)でしょう。バンドから奪われた何かが “想像し得る最悪の形で汚された” というストーリー。その耳に残るフックと楽曲の成功は、彼らにとって最も満足のいく復讐となるでしょう。
「人生に酸っぱいレモンを与えられたら、そこからレモネードを作ればいい。そんな悪い経験をしても、それをヒット曲に変えればいいんだ!」
正直さと純粋なビジョンが全て。たとえそれが、彼らの成功が SNS の “バズ” から始まったとしても。
「僕は “TikTokアプローチ” をただ受け入れるつもりはない。トレンドには興味がないんだ。一時的なバズのためにここにいるわけじゃない。みんながやっているなら、僕はやりたくない。TikTokダンスをしたり、他所でよく見かけるような目立つためのクリップを作ったりする人間にはならない。それではただ、大衆に迎合するだけだ。
「”Another Way” の最初のティーザーでも、それは “夏のTikTokソング” を目指すことではなく、僕たちが目指すよりプロフェッショナルなイメージを確立するためだった。僕はTikTokの基準に妥協しない。僕たちはコメディアンになるためにここにいるのではない。アートを作るためにここにいる。それは他の人と同じ場所から始まるものではない」

Cullen には説教臭さも不自然な派手さもありません。急速に成功を収めたアーティストとしては、驚くべきほど傲慢さがないのです。そうして論理、問題解決能力、そして抗いがたい自然な好奇心が存在します。彼は、SLEEP THEORY の急激な上昇だけでなく、より広範な盛り上がるオルタナティブ・シーン全体、そして SPIRITBOX から SLEEP TOKEN まで新たなリーダーたちにも焦点を当て、変化の潮流を見据えています。
「昔の Bring Me The Horizon は、好きか嫌いかの二者択一だった。しかし、最近の新しい Bring Me The Horizon には、多くの異なる要素が絡み合っていて、多くの人々がその中から気に入るものを見つけることができる。歴史は繰り返す。2009年ごろ、ヒップ・ホップとポップが真のブームを迎えていて、ロックはその波についていけなかった。ほとんどのアーティストは、この音楽を幅広い層に受け入れられるようにする努力をしていなかった。もしそうしていたなら、彼らは Thirty Seconds To Mars や Imagine Dragons のようなカテゴリー(ポップサウンドを直接取り入れた)か、Kings Of Leon のようなバンド(ポップな曲作りを重視した本格的なバンド)に分かれてったはずだ。適切なバンドがとてもポップな感覚を学んでね。でも、実際はヘヴィなメタルコアやスクリーモのジャンルに入ると、それははるかに “好みが分かれるもの” だった。
でも現在、ヘヴィなバンドは方針を転換し、誰もが楽しめる音楽を作っている。ポップ・ファンを自認する聴き手でも、SLEEP TOKEN の曲を聴いて楽しむことができる。感情の幅も広くなっている。悲しみや暗いテーマばかりではなく、より共感できる内容で、古いバンドが扱っていた感情の幅を捉えているんだ」

“Stuck in My Head “の野外アコースティック・パフォーマンスにも彼らのポップ・センスが現れています。
「アコースティックで曲を歌うのが大好きなんだ。 このプロジェクトの背景にあるアイデアは、ヘヴィなギターをすべて取り除けば、ポップな曲になるということなんだ。 どんなメタルやロックの曲でも、アコースティック・ヴァージョンを作れば歌えるんだ。
この曲のライティングやメロディが、ポップ・ソングとして問題なく成立させているんだと思う。 もしカントリー・アーティストが “Stuck in My Head” をカヴァーしたら、間違いなく完璧に歌いこなせるだろう」
あの BACKSTREET BOYS でさえ、彼らの栄養となっています。
「”Static”のビデオ撮影で “I Want It That Way” を4人で歌った。バンの中でみんなで歌ってるけど、まあリハーサルするようなことじゃないよ。 ただ歌い始めるだけ! ミュージックビデオの撮影で、僕が “You are my fire/The one desire” と歌い始めたら、他のみんなも歌い始めた。 だからインスタグラム用にちょっと作ったんだ」
あの伝説的なバンドも彼らの一部となっています。
「どのバンド・メンバーも、演奏や作曲に関して最も影響を受けたアーティストがいる。だけど SLEEP THEORY のサウンドに関して言えば、LINKIN PARK は僕らの音楽を形成する上で重要な役割を果たした。サウンドだけでなく、曲作りへのアプローチやオーディエンスとのつながり方にも影響を与えている。 多様性を受け入れること、純粋な感情を表現すること、サウンドで実験すること、そして自分独自の芸術的な声に忠実であること…それはロックとオルタナティヴ・ミュージックの世界に忘れがたい足跡を残したバンドの影響を反映しているんだ」

BEARTOOTH と共に大規模な会場でライブを敢行し、WAGE WAR から NOTHING MORE, HOLLYWOOD UNDEAD まで、あらゆるバンドとステージを共有してきた SLEEP THEORY は、現在のヘヴィ・メタル界のトップクラスと肩を並べる能力を証明してきました。それでも、Cullen は青春時代聴いていたバンドを参考に、自身の道を模索しています。3つのフェイバリットを挙げるよう促されると、彼はさらに多くのバンドを挙げていきました。
「LINKIN PARK, FALL OUT BOY, PARAMORE と言えるかもしれない。でも DISTURBED, THREE DAYS GRACE, SAOSINとも言える。または WOE IS ME, DANCE GAVIN DANCE とも言える。僕にとって、一つに絞るには変数が多すぎる。難しいよ」
まず第一に、Cullen は音楽のファンであり、バンドのファンなのです。だからこそ、自分のバンドに対して他人が感じるファン心を、彼は最も誇りに思っています。たしかにストリーミング指標やチケットの売上は SLEEP THEORY の成功の一端を示すかもしれませんが、人間同士のつながりの電気のような力は、名声や富よりも価値があると信じています。
「”大きなバンド” になることは、人々の心を動かすことだ。それはほんの少しかもしれないけど、人々の生活を変えることだ。SLEEP THEORY の変化に気づいたのは、あるコンサートでのことだった。僕よりずっと年上の男性が写真撮影を求めて近づいてきた。彼が震えているのに気づき、大丈夫ですかと尋ねた。彼は “ヒーローに会うから緊張している” って。音楽が人々に影響を与えていることは知っていたけど、その瞬間、本当に実感したんだ。理解するのが難しかったよ。僕は人生のほとんどを、僕より年上の人々を尊敬してきたけど今や、僕より長く生き、多くの経験を積んだ人々が、僕を尊敬していると言っているんだからね!」
結局、最も重要なのは自分自身を満足させることです。様々な影響の中でも、Cullen はアトランタのメタルコアの先駆者 ISSUES、特に2019年のランドマーク作 “Beautiful Oblivion” を、最も模倣したいテンプレートとして挙げています。彼にとってこれは完璧なアルバムであり、自身のキャリアの終着点として無駄な曲の影も残さないことを理想としています。
「僕はマイケル・ジャクソンのようなアーティストを聴きながら育った。だから、これで十分だと言うような人間にはならない。平均的な曲は欲しくない。ただやり過ごすための曲も欲しくない。人々が僕のカタログを見て “素晴らしいけど、あの曲はもっと良くなれたはず…” と言うような曲も欲しくない。そして、ファンが聴きたいものを作りたいとは思っているけど、自分が作りたくないものは絶対に作らない。
人々はアーティストが聴き手に合わせるという考えに慣れすぎている。僕は誰にも合わせないよ。自分のやりたいことをやる。自分自身に忠実なだけだ。それに共感するかどうかはリスナー次第。僕は決して他人の気まぐれに屈しない。合わせることができない。それが本当に僕の本質だから」


参考文献: KERRANG!:Sleep Theory: “We’re here to make art. That does not begin with being the same as everybody else”

REVOLVER:TORNADOS, TIKTOK AND THE TRUTH: SLEEP THEORY TALK HIGHLY ANTICIPATED DEBUT ALBUM ‘AFTERGLOW’

LOUDWIRE: SLEEP THEORY INTERVIEW

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MAWIZA : ÜL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AWKA OF MAWIZA !!

“Our Song Wingkawnoamestá Is Based On The Dance Of The Wemul (Deer). It Has a Syncopated Rhythm Because This Animal Has The Wisdom To Confuse Its Predators, It Even Makes a False Step.”

DISC REVIEW “ÜL”

「僕たちはヘヴィ・メタルやロックの自由の叫びから、大きな力とエネルギーを見出したんだ。これは偶然ではないと感じているよ。自然とその精霊はメタルの力に気づいている。マプチェの知識では、マプ(土地)は最も身近なエネルギーを使うと言われている。MAWIZA は土地に仕える者だからね」
チリ・アルゼンチンに暮らす先住民、マプチェ族。マプは土地、チェは人を意味し、文字通り自らの生まれ育った土地を守りながら生きる人々。インカ帝国にも、スペインにも屈することなく独立を貫き続けた誇り高きマプチェの民は、その土地の自然とスピリチュアリティを何よりも大切にしています。そしてその自然や精霊から得られる大きな力、エンパワーメントがメタルとシンクロすることに MAWIZA は気づいたのです。自由の叫びと共に。
「僕たちの言語、マプズグン(土地の言語)は、19世紀末に抑圧されたため、現在復活の過程にあるんだ。マプズグンでフルアルバムをリリースすることは、それ自体がマプチェ復興のための活動であり、僕たちから奪われた場所を取り戻す行為でもある。
僕たちは、先住民の視点から現代の楽器を使用し、メタルを通じてこの活動を実践することで、エンパワーメント、力を得ている。それが、このアルバムで表現しようとしたものなんだ。
僕たちはマプチェの論理に基づいて音楽を構成しているから、自然、鳥、動物のリズム、海洋のパターンを模倣した音が聴こえるだろうね」
19世紀末、”アラウカニア制圧作戦” でスペインから独立したチリ政府に併合されたマプチェ族。以降彼らは、ピノチェトや国軍、大企業、もしくはヨーロッパから移住したチリのエリートから差別や迫害を受け、抑圧され、共に生き育てた自然を奪われていきました。マプズグンという彼らの言葉さえも奪われてしまいました。
いつの世も、植民者、征服者にとって先住民とは “なかったこと” にしたい存在です。それでも、マプチェとメタルには並外れた回復力、反発力、レジリエンスが宿っていました。MAWIZA はマプチェの言葉で歌い、マプチェのメタルを奏でることで、民族の復興を願っているのです。
「マプチェのリズムは先祖から受け継がれたもの。僕たちは、こうしたダンスを動物、風、海から学んだんだ。それはマプチェの民のコミュニティによって異なるんだよ。例えば、僕たちの曲 “Wingkawnoamestá” は、ウェムル(鹿)のダンスを基にしている。鹿は捕食者を混乱させる知恵を持ち、偽のステップを踏むため、シンコペーションのリズムが特徴となっているよ。実際、自然はメタルだよ」
そう自然はメタル。マプチェ復興の強い意志が込められた MAWIZA の最新作 “ÜL” には、雷のような轟音、風や海と地を揺るがすグルーヴ、情熱の炎と先祖から受け継いだ知恵とスピリチュアリティが織り込まれています。”ÜL” の詠唱はまさに土地の声。”Wingkawnoam” はインダストリアルで現代的なビートで進行しますが、その音はマプチェの儀式用ドラム “Kultxung” で叩き出されています。 Kultxung は神聖な楽器。シャーマンがこのドラムを叩くとき、彼らは空のエネルギーを受け取り、それを大地に伝えると言われています。
そうして彼らはシャーマンの言葉、先祖の夢託により、鹿のステップをプログレッシブなリズムに落とし込みました。自然の力である鹿を自らに見立て、植民者たちの目を撹乱するために。そう、マプチェの土地は今でも自然との共存とは程遠い開発業者の侵食に脅かされています。それでも、MAWIZA は先祖や長老から受け継いだ知恵、そして自然とメタルのエンパワーメントで力強い抵抗を続けていきます。彼らが紡ぐのは、血に飢えた征服者の目ではなく、土地と生きる先住民の目から見た歴史。
今回弊誌では、ボーカリスト Awka にインタビューを行うことができました。「MAWIZA とは “山” を意味する。現在僕たちが住むピクン・マプ(北部の土地)では、アンデス山脈が圧倒的な規模で広がっていてね。毎日、太陽がアンデスの背後から昇る光景は息をのむほど美しいものだ。冬には雪に覆われ、時にはピューマが山から下りてくる。森と山は多くの命が交わる場所。そこでは水、滝、多様な樹種、薬草、動物が共存しているんだよ」GOJIRA の Joe Duplantier もゲスト参加。どうぞ!!

MAWIZA “ÜL” : 10/10

INTERVIEW WITH AWKA

Q1: First, can you tell us what kind of music you grew up listening to?

【AWKA】: Mari mari! rume mañum tüfachi ngütxam mew. (Hello! thank you for this interview)
I grew up listening to very diverse music. At home, with my grandparents, there was always Latin American music.
From my uncles I discovered rock and metal. They even played drums and guitar.
Getting to know this bold and powerful musical language was a turning point for me.
It matched perfectly with the message and sense of identity that would later shape Mawiza.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【AWKA】: マリマリ!ルメ・マヌム・トゥファチ・ングツハム・メウ。(こんにちは!インタビューの機会をありがとう!)
僕は非常に多様な音楽を聴いて育ったんだ。祖父母と過ごす家では、常にラテン・アメリカの音楽が流れていたね。
それから、叔父たちからはロックとメタルを学んだよ。彼らはドラムやギターを演奏していたんだ。この大胆で力強い音楽言語を知ることは、僕にとって転機となったんだよ。
その音楽は、後に MAWIZA を形作るメッセージとアイデンティティの感覚と完璧に一致していたんだ。

Q2: Is metal music active in Chile? What kind of scene is forming?

【AWKA】: Metal in Chile is very active. Even though it’s a marginal style and not what usually gets promoted, there are tons of bands from all kinds of subgenres.
There’s a strong scene connected to 80s metal, and in the last 10 years a wave of modern bands has appeared, with elements of death prog, metalcore or djent.
In the context of the Mapuche Nation, the scene is divided between rap and metal.
In the eastern side of Mapuche territory, which is now Argentina, rock is more common, there are many heavy and black metal bands.
But in our side of the land, west of the Andes, what’s now Chile, rap is more present.
We actually made a song called Txükür, featuring our lamngen (Mapuche sister) MC Millaray Collio, a rapper. That’s how we unite forces between contemporary Mapuche musicians.

Q2: チリでメタルはどんな状況なんでしょう?どのようなシーンが形成されていますか?

【AWKA】: チリのメタルは非常に活発だよ。たしかにマイナーなジャンルで、通常はプロモーションされないものの、あらゆるサブジャンルから数多くのバンドが存在しているんだ。
基本は80年代のメタルに根ざした強力なシーンがあり、過去10年間でデス・プログ、メタルコア、Djent などの要素を取り入れた現代的なバンドの波が台頭しているんだ。
マプチェ民族の文脈においては、そのシーンはラップとメタルに分かれているよ。マプチェの土地の東部、現在のアルゼンチン側ではロックがより一般的で、ヘヴィ・メタルやブラックメタルのバンドが数多く存在する。
しかし、アンデス山脈以西の僕たちの土地、現在のチリ側ではラップがより浸透しているんだ。
だから僕たちは、マプチェの姉妹である MC Millaray Collio をフィーチャーした “Txükür” という曲を作ったんだ。これが現代のマプチェ音楽家たちの連携の象徴なんだ。

Q3: I heard that your metal is a song for the Mapuche people, is the band actually Mapuche people too? What is the meaning behind the band name Mawiza?

【AWKA】: Our music is extreme Mapuche music. All of us are Mapuche descendants. We have our lof (Mapuche community) where we practice our spirituality, constantly learn, and hold our ceremonies.
Mawiza means the mountain. Where we live now, in Pikun Mapu (northern territory), the Andes are incredibly huge. Every day the sun rises behind them, it’s a breathtaking image.
In winter they’re covered in snow, and sometimes pumas come down from there.
The forest and the mountain are places where many lives meet, there’s water, waterfalls, different tree species, medicine and animals.
As an Indigenous people, we learned to communicate within the mountain, inside the forest. That’s what our ancestors say.
As a Mapuche band, we want to bring a piece of our nature, of our being, to different parts of the world, to connect with the essential, with the powerful energy of nature.

Q3: MAWIZA のメタルはマプチェの人々ためのメタルだと聞きましたが、バンドのメンバーもマプチェに由来があるんですよね?また、バンド名 MAWIZA にはどんな意味が込められていますか?

【AWKA】: 僕たちの音楽はエクストリームなマプチェ音楽。全員マプチェの末裔だからね。僕たちは今でもロフ(マプチェのコミュニティ)でスピリチュアリティを鍛錬し、学び続け、儀式を執り行っているんだ。
MAWIZA とは “山” を意味する。現在僕たちが住むピクン・マプ(北部の土地)では、アンデス山脈が圧倒的な規模で広がっていてね。毎日、太陽がアンデスの背後から昇る光景は息をのむほど美しいものだ。冬には雪に覆われ、時にはピューマが山から下りてくる。
森と山は多くの命が交わる場所。そこでは水、滝、多様な樹種、薬草、動物が共存しているんだよ。
先住民として、僕たちは山の中、森の中でコミュニケーションを学んだんだ。それが先祖たちの言葉だから。
マプチェの民として、僕たちは自然の一部である僕たちの存在を世界の様々な地域に持ち込み、自然の不可欠で強力なエネルギーとつながりたいと考えているんだ。

Q4: What makes Mapuche great is that it has always defended its independence without succumbing to the rebellion of the Inca Empire or Spain, right? I feel that such resilience is in perfect harmony with the resilience that resides in metal, would you agree?

【AWKA】: Absolutely. We’ve heard that around the world, we are known for our resilience, for being one of the few peoples who never gave in to the Spanish empire.
That resistance kept our independence as a free Indigenous nation until the late 1800s.
After that came what’s called the “Pacification of Araucanía” in Chile and the “Conquest of the Desert” in Argentina, and the Mapuche Nation was stripped of its territory and autonomy.
As descendants of Mapuche who migrated to big cities, we were surrounded by foreign cultural elements. But we found great strength and energy in heavy music, the cry of freedom in rock.
We feel it’s not a coincidence. Nature and its spirits are aware of this. In Mapuche knowledge, it’s said that the mapu (land) uses the energy that’s most available to her. Mawiza serves the land.

Q4: マプチェが偉大なのは、インカ帝国やスペインの反乱に屈することなく、常に独立を守り通してきたところですよね?そうしたレジリエンス (反発力、回復力) は、メタルに宿るレジリエンスと完璧に調和していると感じますよ。

【AWKA】: 間違いなくその通りだね!世界中で、僕たちマプチェは世界中にそのレジリエンスで知られていて、スペイン帝国に屈しなかった数少ない民族の一つだと誇りを持っているんだ。その抵抗があったから、19世紀後半まで自由な先住民国家としての独立を維持できたんだからね。
その後、チリでは “アラウカニアの平定”、アルゼンチンでは “砂漠の征服” と呼ばれる動きが起き、マプチェ民族は領土と自治権を奪われてしまった。
都市部に移住した僕たちマプチェの末裔にとって、周囲は外国の文化要素に囲まれている。しかし、僕たちはヘヴィ・メタルやロックの自由の叫びから、大きな力とエネルギーを見出したんだ。
これは偶然ではないと感じているよ。自然とその精霊はメタルの力に気づいている。マプチェの知識では、マプ(土地)は最も身近なエネルギーを使うと言われている。MAWIZA は土地に仕える者だからね。

Q5: I was told that the title of the album “Üi” means “chanting. “In fact, the Mapuche must have made great sacrifices to fight the Incas and the Spanish. Are you channeling those heroic spirits in this album?

【AWKA】: You’re right. ÜL means chant. According to rakizuam (Mapuche thought), chanting is the first moment of communication between our feelings and the world around us.
Our music is full of empowerment and the will to resist. But we never forget that we’re not fighting for ourselves, we are deeply connected to the land.
We are part of nature, children of the earth and the sky, we are the forest defending itself.
Our chant is just another extension of the anger of the oceans and volcanoes.
As Mapuche, we’re sure of this, and believing it every day means being ready to resist whatever comes, whether it’s the Inca Empire, the Spanish Crown or the Chilean state. We will die fighting on our land.
The songs in ÜL try to carry all this feeling, and also invite people to connect deeply with their own territory, whether they are Indigenous or not.
Nature is above our heads and beneath our feet.

Q5: アルバムのタイトル “ÜL” とは “チャント” “聖歌、詠唱” という意味だと聞きました。
実際、マプチェはインカとスペイン、チリ政府との戦いで大きな犠牲を払ったに違いありません。このアルバムの “チャント” で、その英雄的な霊を呼び起こしているのでしょうか?

【AWKA】: その通りだよ。”ÜL” は “チャント” を意味する。
ラキズアム(マプチェの思想)によると、歌は僕たちの感情と周囲の世界との最初のコミュニケーションの瞬間なんだ。
僕たちの音楽は力強さと抵抗の意志に満ちている。だけど僕たちは決して自分たちのために戦っているわけではないことを忘れないよ。僕たちは土地と深くつながっている。僕たちは自然の一部であり、大地と空の子であり、森が己を守るために遣わされた存在だ。 だから僕たちの歌は、海の怒りと火山の大地への怒りの延長に過ぎないんだよ。
マプチェとして、僕たちはこの理を確信していて、毎日それを信じることは、インカ帝国、スペイン王国、チリ政府のいずれが来ようとも抵抗する準備を整えることにつながるんだ。僕たちは自分たちの土地で戦いながら死んでいくだろう。
“ÜL” の曲は、こうした感情を伝え、また、先住民であろうとなかろうと、人々が自身の土地と深くつながるよう促しているんだ。
自然は僕たちの頭上にあり、足元にある。

Q6: In fact, does oppression and discrimination against the Mapuche people still exist today? Does the album also contain a force against it?

【AWKA】: Yes, it still exists. Our language, Mapuzugun (the language of the land), is being revitalized because it was silenced in the late 1800s.
Releasing a full album in Mapuzugun is, in itself, an act of Mapuche activism, of reclaiming the spaces that were taken from us.
We feel empowered doing this through metal, using modern instruments from an Indigenous perspective.
That’s what we tried to express in these 9 new songs.
We conceived the music based on Mapuche logic, that’s why you’ll hear sounds that imitate nature, birds, animal rhythms, ocean patterns.

Q6: 実際、マプチェ民族に対する抑圧と差別は現在も存在しているのでしょうか?

【AWKA】: そうだね、今も存在しているよ。僕たちの言語、マプズグン(土地の言語)は、19世紀末に抑圧されたため、現在復活の過程にあるんだ。
マプズグンでフルアルバムをリリースすることは、それ自体がマプチェ復興のための活動であり、僕たちから奪われた場所を取り戻す行為でもある。
僕たちは、先住民の視点から現代の楽器を使用し、メタルを通じてこの活動を実践することで、エンパワーメント、力を得ている。それが、この9曲の新曲で表現しようとしたものなんだ。
僕たちはマプチェの論理に基づいて音楽を構成しているから、自然、鳥、動物のリズム、海洋のパターンを模倣した音が聴こえるだろうね。

Q7: “ÜL” is great in its philosophy and, of course, in its music!In fact, it felt like a modern update of the great metal era of the 90’s with black metal, groove metal, nu-metal, and industrial, would you agree?

【AWKA】: Our influences in rock and metal are super varied. We love 90s metal like Sepultura. But also black metal and its origins in those dense European forests.
It wasn’t really planned to make this kind of metal in Mawiza, it just came naturally.
We don’t try to stick to any subgenre. We stay true to what each song needs.
And of course, when writing songs with a traditional Mapuche logic, ancestral rhythms appear, and they bring a lot of groove.
To mix ÜL, we used the latest Periphery album as a big reference, we loved the sound they got.
We wanted that crystal-clear sound, mixed with an incredible burst of power.

Q7: “ÜL” は哲学的にも、もちろん音楽的にも素晴らしい作品ですね!
実際、これは90年代のメタルを現代的に再解釈したような、ブラックメタル、グルーヴ・メタル、Nu-metal、インダストリアルにマプチェの響きを融合させた作品だと感じます。

【AWKA】: 僕たちのロックとメタルの影響は多岐にわたる。90年代のメタル、例えば SEPULTURA のようなバンドが大好きだよ。でも同時に、ヨーロッパの深い森に起源を持つブラックメタルも愛している。
MAWIZA でこうしたメタルを作ることは計画ではなかったんだ。自然に生まれたものだった。僕たちは特定のサブジャンルに固執していない。各曲が必要とする要素に忠実なだけなんだ。そしてもちろん、伝統的なマプチェの論理で曲を書く際、先祖代々のリズムが現れ、多くのグルーヴをもたらしてくれる。
実は “ÜL” をミックスする際、僕たちは PERIPHERY の最新アルバムを大きな参考にしたんだ。彼らのサウンドが大好きだからね。僕たちは、あのクリスタル・クリアなサウンドと、信じられないほどのパワーの爆発を組み合わせたかったんだ。

Q8: Above all, the album beautifully combines Mapuche folk music with metal! What are the characteristics of Mapuche music and how did you combine them with metal?

【AWKA】: Mapuche rhythms are inherited from our ancestors. They say we learned these dances from animals, the wind, and the sea.
It depends on each community across the Mapuche Nation.
For example, our song Wingkawnoamestá is based on the dance of the wemul (deer).
It has a syncopated rhythm because this animal has the wisdom to confuse its predators, it even makes a false step.
Nature is metal. The energy of volcanoes, of lightning, it’s overwhelming.
The sound of thunder is something we try to recreate in many ceremonies.
We know that newen (force) is needed to live in küme mongen (good balance).
The spirits of our ancestors, and nature itself, often demand that kind of strength.
We are people who understand how necessary great forces are, that’s why metal fits so well with our way of thinking.

Q8: 実際、このアルバムはマプチェの民族音楽を世界に知らしめるものにもなりました。マプチェ音楽の特徴と、どのようにメタルと融合させたのかを教えていただけますか?

【AWKA】: マプチェのリズムは先祖から受け継がれたもの。僕たちは、こうしたダンスを動物、風、海から学んだんだ。それはマプチェの民のコミュニティによって異なるんだよ。例えば、僕たちの曲 “Wingkawnoamestá” は、ウェムル(鹿)のダンスを基にしている。鹿は捕食者を混乱させる知恵を持ち、偽のステップを踏むため、シンコペーションのリズムが特徴となっているよ。
実際、自然はメタルだよ。火山や雷のエネルギーは圧倒的。雷の音は、僕らが多くの儀式で再現しようとしているものなんだ
僕たちは、クメ・モンゲン(良いバランス)で生きるためにはニューエン(力)が必要だと知っている。先祖の霊や自然そのものが、そのような力を求めることがある。
僕たちは、大きな力がどれだけ必要かを理解する民だ。だからこそ、メタルは僕たちの思考方式にぴったり合うのだろうな。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED AWKA’S LIFE!!

Beatriz Pichi Malen

Sepultura “Roots”

Metallica “Ride the Lightning”

Cardiacs “Sing to God”

Gojira “The Way of All Flesh”

And lots of Mapuche music from our ceremonies.

MESSAGE FOR JAPAN

We are die-hard fans of Studio Ghibli. We are deeply moved by the way they use art to express the need to care for nature and the power of its spirits.
We believe that Japanese and Mapuche cultures are very similar, both are rich in respect, diplomacy, family lineages, and a deep bond with the forest.
It would be an honor for us to one day travel to Japan or create music for an anime.
To the people of Japan, we want to say thank you for this space and for reading our zuam (intention). Despite the distance, newen (spiritual energy) exists, and it is very similar. Txürngey tayu newen! (May our energies be united!)

僕たちはスタジオ・ジブリの熱狂的なファンなんだ。彼らがアートを通じて自然への配慮の必要性と、その精霊の力を表現する手法に深く感動しているよ。
僕たちは、日本とマプチェの文化は非常に似ていると信じていてね。どちらも 尊重、関係、家族系譜、そして森との深い絆に富んでいるからね。
いつか日本を訪れるか、アニメのための音楽を制作する機会を得られるとしたら、僕たちにとって大きな栄誉だよ!
日本のみんな、僕たちのズアム(意図)を読んでくれてありがとう!距離はあっても、ニューエン(霊的なエネルギー)は存在し、つながっている。 ツゥルンゲイ・タユ・ニューエン! (僕たちのエネルギーが一つになりますように!)

AWKA

MAWIZA Facebook

MAWIZA Bandcamp

SEASON OF MIST

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MESSA : THE SPIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MESSA !!

“Scarlet Doom…This Specific Shade Of Red Was Chromaticall Helping Us Define Our Aim – And We Think It Still Fits Us, Even If The Years Passed By.”

DISC REVIEW “THE SPIN”

「ドゥームとは逃れられない虚無。私たちは、バンドの始まりからずっと “Scarlet Doom” という名前で自分たちの音楽を呼んできたんだ。この特別なの赤の色調は、私たちの目標を定義する上で、音の色彩を感じさせるために役立ってきたんだ。そして、年月が経っても、この名前が私たちにまだフィットしていると考えているよ」
音楽に “色” があると感じる人は多いのではないでしょうか。それは例えば、アートワークの色彩と関連づけられたり、楽曲のタイトル、もしくは楽曲や演奏そのものから滲み出る色合いだったりするでしょう。イタリアの MESSA は自らの音楽を “スカーレット・ドゥーム” と称しています。スカーレットとは、黄味がかった赤色のこと。ドゥームを逃れられない虚無と定義しながらも、彼らはその “ミサ” に様々な色彩を加えていきます。
「私たちは特に初期のゴシック・ロック/ダーク・ウェーブの大ファンでね。ただ、1980年代をテーマにした “The Spin” を制作する際、各メンバーがその時代に対する異なるアイデアを持っていたことが興味深い点だったね。例えば、Sara が直感的に参照としたのは KILLING JOKE と Siouxsie and the Banshees、Alberto にとっては JOURNEY だった。1980年代の音楽には、ムード、言葉、美学の広範なスペクトラムがある。ドゥームに何を落とし込むのか…私たち一人一人にとって、それは異なる選択だったね」
興味深いことに MESSA のアーティスト写真やアートワークはモノクロームやダークな雰囲気のものが多く、バンドの外観はあくまでドゥーミーでありながらその音楽は実にカラフル。いや、虚無の中に巣食う千変万化の色彩。その多様な色合いは、この4人組が2014年にバンドが結成されるまで、誰ひとりとしてドゥーム・バンドで演奏したことがなかったことに端を発しています。
彼らは、プログからブラックメタル、ゴスやポスト・パンクにアリーナ・ロックまで、様々な “重さ” を個別に経験していたのです。だからこそ、デビュー作のアンビエントなインターミッションやジャジーなクラリネット・パートから始まり、それ以来 MESSA は常に “ドゥーム” の色彩、サウンドの拡張を意識してきました。
7曲42分の “The Spin” は MESSA にとって最も短いアルバムですが、MESSA の持つドゥームの色彩が最も花開いた作品だと言えます。そのカラフルな色合いは、彼らが愛するイタリアのモータリゼーションが最も眩しかった80年代に帰依しています。”The Spin” とは、タイヤであり、道であり、永遠に繰り返す人の業とポスト・アポカリプスの虚無。
まるで80年代の映画、ブレイドランナーから飛び出してきたようなシンセ・ラインで幕を開けるアルバムは、ムーディーでありながらレトロ・フューチャーで、存分に不気味。ドゥームやゴスにとってはスピード違反な展開も、感情と技巧のギターソロも、結果としてドゥームの壮大とドラマを引き立てる武器のひとつにすぎません。
アンセミックなハードロック、アリーナ仕様のギタリズム、ジャズ・プログの間奏、ストーナー・リフとブラストビートにダークなシンセサイザー…ドゥームの暗がりや虚無を重さだけでなく、80年代の野心的な実験と曲作りの妙で表現する MESSA の哲学は実に魅力的かつ唯一無二。もちろん、その裏には Sara の奇跡的な歌唱や卓越したギターヒーロー Alberto の存在があることは言うまでもないでしょう。豊かな色彩を憂鬱へと導くそのハンドル捌きは、まさにプログレッシブ・ドゥームの寵児。
今回弊誌では、MESSA にインタビューを行うことができました。「楽器を演奏することは、アーティストであることよりも、職人であることと共通点が多いと思うんだ。それは技術を学び、信頼できるものを築くことに関わっているからね。私の見方では、この “技巧” は常に目的を持っているべきでね。私たちにとって重要なのは感情とメッセージであり、それらを伝えることが必要なんだ」 二度目の登場。どうぞ!!

MESSA “THE SPIN” : 10/10

INTERVIEW WITH MESSA

Q1: Lately you have been calling your music “Scarlet Doom”. What does this name mean to you?

【MESSA】: We have called our music ‘Scarlet Doom’ since our very start. This specific shade of red was chromaticall helping us define our aim – and we think it still fits us, even if the years passed by.

Q1: 最近、あなたたちは自らの音楽を “Scarlet Doom” と呼んでいるようですね。この呼び名はあなたにとってどのような意味を持つのでしょうか?

【MESSA】: 私たちは、バンドの始まりからずっと “Scarlet Doom” という名前で自分たちの音楽を呼んできたんだ。この特別なの赤の色調は、私たちの目標を定義する上で、音の色彩を感じさせるために役立ってきたんだ。そして、年月が経っても、この名前が私たちにまだフィットしていると考えているよ。

Q2: Doom is a word, but there are many different bands in that world. And you, especially with this album “The Spin”, I feel that you are clearly trying to expand that Doom world. How would you define the word Doom?

【MESSA】: The void you can’t escape from.

Q2: “Doom” と一言で言っても、その世界には多くの異なるバンドが存在します。特にこのアルバム “The Spin” であなたたちは、ドゥームの世界を明確に拡大しようとしているように感じます。そんな今、あなたはどう “ドゥーム” という言葉定義しますか?

【MESSA】: 逃れられない虚無だね。

Q3: What surprised me is that some of the songs have influences from the 80s, specifically goth and post-punk sensibilities like Sister of Mercy and Killing Joke. What was the 80s like for you?

【MESSA】: When it comes to creating music, we always want to surprise ourselves, find a new musical language, push ourselves out of our comfort zone. We are really involved and we question all we do. When we started writing and thinking about what could come next, we decided to delve into a territory we had never explored before – which is the decade of the 1980s. We’ve always been fans of the Early Goth Rock/Dark Wave especially. One of the interesting things that emerged, when we decided ‘The Spin’ to be our take on the 80’s, was the different ideas that every band member had about that era. For example, Sara’s immediate references were Killing Joke and Siouxsie and the Banshees, for Alberto it was Journey. There’s a huge spectrum of moods, language and aesthetic in the 1980s music: for every one of us it was a different choice.

Q3: 驚いたのは、一部の曲に80年代の影響、特に SISTER OF MERCY や KILLING JOKE のようなゴシックやポスト・パンクの感性が感じられる点です。あなたにとって80年代はどのような時代でしたか?

【MESSA】: 音楽を作る際、私たちは常に自分自身を驚かせ、新しい音楽言語を探求し、 コンフォート・ゾーンから抜け出すことを目指しているんだ。私たちはこの作品に本当に深く関与し、常に自問自答しているんだ。そうして、曲のライティングや次なる方向性を考える際、これまで探求したことのない領域―つまり1980年代―に深く潜り込むことを決めたんだよ。
私たちは特に初期のゴシック・ロック/ダーク・ウェーブの大ファンでね。ただ、1980年代をテーマにした “The Spin” を制作する際、各メンバーがその時代に対する異なるアイデアを持っていたことが興味深い点だったね。例えば、Sara が直感的に参照としたのは KILLING JOKE と Siouxsie and the Banshees、Alberto にとっては JOURNEY だった。1980年代の音楽には、ムード、言葉、美学の広範なスペクトラムがある。ドゥームに何を落とし込むのか…私たち一人一人にとって、それは異なる選択だったね。

Q4: More to the point, there are even anthemic songs with plenty of keyboards, such as “Immolation.” Really great song, but is it also a Doom for you?

【MESSA】: The musical side of Immolation might not be called a Doom one, but in our opinion the lyrics definitely are.

Q4: より具体的に言うと、キーボードを多用したアンセム的な曲も存在します。例えば “Immolation” は本当に素晴らしい曲ですが、あなたにとってはあの曲も “ドゥーム” なのでしょうか?

【MESSA】: “Immolation” の音楽的な側面だけを見ればドゥームとは呼ばれないかもしれないけど、私たちの意見では歌詞は確実にドゥームだよ。

Q5: At the same time, the album also creates a “new guitar hero”, Alberto’s shredding talent shines through even more than in Messa’s past work! In fact, his guitars are as great as an Italian shoemaker’s! This “virtuosity” is part of Messa’s charm, would you agree?

【MESSA】: First of all, thanks a lot! I’m flattered. I do think that playing an instrument has a lot in common with being an artisan, more than being an “artist”. It does involve learning a craft and building something reliable with it. From my point of view this “virtuosity” always serves a purpose. It’s the emotion and the message that are important and need to be conveyed.
For this record I had more time to delve into guitar parts and especially guitar solos. It’s the part I enjoy the most, together with composing. Thanks to this I think the solos are more part of the arrangement of the song rather than some mere technical exercise and I’m glad this comes through.

Q5: 同時に、このアルバムは “新しいギターヒーロー” を生み出しましたね!Alberto のシュレッドやテクニックは、MESSA の過去の作品よりもさらに輝いていますよ!実際、彼のギターはイタリアの靴職人の技術のように素晴らしいですよ!こうした “技巧” も、MESSA の魅力のひとつですよね?

【MESSA】: まず、ありがとう!光栄だよ。楽器を演奏することは、アーティストであることよりも、職人であることと共通点が多いと思うんだ。それは技術を学び、信頼できるものを築くことに関わっているからね。私の見方では、この “技巧” は常に目的を持っているべきでね。私たちにとって重要なのは感情とメッセージであり、それらを伝えることが必要なんだ。
このアルバムでは、ギター・パート、特にギター・ソロに時間をかけたんだ。作曲と並んで最も楽しむ部分だよ。丁寧に時間をかけたことにより、ソロが曲のアレンジの一部として機能し、単なる技術的な練習ではなくなっていると思うんだ。それが伝わっていることを嬉しく思うよ。

Q6: Sara’s vocals are also more emotional and wonderful! Italy has a tradition of canzone. Are there many people who are good singers?

【MESSA】: Thank you! Yes, there’s plenty of good singers in our country. There are some, in our opinion, that were particularly talented. Mina, for instance, can cover more than 3 octaves with her voice. To experience her full range, we suggest watching her performance of ‘Brava’ on live television, back in the 60s. When it comes to Italian Pop, another incredibly skilled singer was Giuni Russo. She collaborated with Franco Battiato, a brilliant composer of both pop and experimental music, and created great tunes. When it comes to male voices, Mango and Demetrio Stratos are some top notch names that might come to mind.

Q6: Sara のボーカルもより感情豊かで素晴らしく進化していますね!イタリアには “カンツォーネ” がありますが、伝統的に良い歌手は多いのでしょうか?

【MESSA】: ありがとう!私たちの国には多くの良い歌手がいて、中には特別な才能のある人もいる。例えば Mina は、3オクターブ以上をカバーできるんだ。彼女のフルレンジを体験するには、60年代のテレビ放送での “Brava” のパフォーマンスを観ることをおすすめするよ。
イタリアのポップ音楽では、Giuni Russo も非常に才能のある歌手だったね。彼女はポップと実験音楽の両方で優れた作曲家である Franco Battiato とコラボし、素晴らしい曲を生み出していった。男性歌手では、Mango と Demetrio Stratos がトップクラスの名前として挙げられるだろうね。

Q7: The artwork uses art that looks like an ouroboros, a snake biting its own tail. How does this art reflect the theme of “The Spin”?

【MESSA】: The Ouroboro depicted on the cover of The Spin is an attempt to merge exoteric symbolism, post-apocalyptic imagery, the concept of the road, the world of motorcycles, and the universality of nature as a supreme element―all blended together in a dark and somber atmosphere.
While this isn’t directly reflected in the music, it offers a key to interpreting and experiencing it.

Q7: アートワークには、自分の尾を貪る蛇のウロボロスを模したアートが使用されています。このアートは “The Spin” のテーマをどのように反映しているのでしょうか?

【MESSA】: “The Spin” のカバーに描かれたウロボロスは、外的な象徴、ポスト・アポカリプス的なイメージ、道の概念、モーターサイクルの世界、そして自然の普遍性という至高の要素を、暗く重厚な雰囲気の中で融合させる試みだった。
これは音楽に直接反映されていませんが、それを解釈し体験するための鍵を提供しているんだ。

Q8: The world today is in a “doomed” state of war, oppression, discrimination, and division. In these dark times, what can Doom music do?

【MESSA】: Music is a form of resistance. It’s a powerful way of expression, rebellion. If not, it’s just entertainment.

Q8: 現代の世界は、戦争、抑圧、差別、分断の “破滅的な” “ドゥーミーな” 状態にあります。このような暗黒の時代において、ドゥーム・ミュージックには何ができるでしょうか?

【MESSA】: 音楽は抵抗の形。音楽表現と反乱の強力な手段なんだ。もしそうでなければ、音楽単なるエンターテイメントに過ぎなくなってしまう。

MESSA Facebook

MESSA Link Tree

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IMPUREZA : ALCÁZARES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LIONEL CANO MUNOZ OF IMPUREZA !!

“Metal And Flamenco…Two Worlds That Seem To Be Opposites, But Which Share The Same Intensity, The Same Pain, The Same Rebellion. It’s This Mixture That Forged The Guitarist I Became.”

DISC REVIEW “ALCÁZARES”

「非常に美しい進化だと思うよ。メタルはついに、これまで以上にユニバーサルなものになりつつあるんだからね。各言語には歴史、色、文化があり、それを使用する者にリズムを与える。スペイン語は、僕たちの歌詞に特有の音楽性をもたらし、ドラマチックで激しく暴力的な側面を与え、メタルの力とフラメンコの強度を自然に融合させてくれるんだ」
BLOODYWOOD や THE HU の台頭により、メタルに宿る生命力、包容力、感染力がついに可視化されました。今やメタルに第三世界はありません。その大いなる寛容さで様々な地域、様々な人々の文化を暖かく包み込み、メタルの咆哮と旋律に共感を誘います。
“ヒスパニック・メタル” を標榜する IMPUREZA も、そんなユニバーサルなモダン・メタル世界を象徴するバンドのひとつ。フランスとスペインの伝統の炎…その熱き血潮で鍛えられた IMPUREZA は、エクストリーム・メタルとフラメンコの情熱的で激しい融合を20年もの長きに渡って、追求してきました。そして今、イベリア半島のアイデンティティを刃物のように操り、自らのルーツをメタルの中に浸透させた彼らの勇気に遂に時代が追いついたのです。
「僕はフラメンコとメタルという、非常に強力な2つの世界の間で育ったんだ。家ではパコ・デ・ルシア、カマロン・デ・ラ・イスラといったスペインのギター音楽を聴いていたんだよ。一方で、METALLICA, PANTERA, SLAYER, MORBID ANGEL, TESTAMENT, NILE などにも完全に浸っていた。一見対立する二つの世界だけど、同じ情熱、同じ苦悩、同じ反逆の精神を共有しているんだよ。このふたつのミックスが、ギタリストとしての僕を形作ったんだ」
そう、一見交わらないように思える様々な道を交わらせるのがメタルの力。しかし、そもそもフラメンコとメタルには、情熱、苦悩、そして逆境を跳ね返す回復力といった多くの共通項が存在しました。だからこそ、今回のインタビューイでありイベリアのギター・ヒーローLionel Cano Muñoz は PANTERA とパコ・デ・ルシアを同時に愛することができたのです。
「フラメンコには深い、悲劇的で、感情的、本能的な精神がある。メタルには、この解放的な音楽の力を通じて、僕たちの中に埋もれたエネルギーをアウトプットする能力がある。ただしふたつとも複雑な音楽で、多くの厳格さを必要とする。勇気は、この絶対的な誠実さから生まれてくるんだ」
とはいえ、これほど精巧で、荘厳で、ドラマティックなヒスパニック・メタルはまさに前人未到の領域。誰も踏み入れたことのない場所を開拓するためには勇気が必要です。そして、NILE や BEHEMOTH のように凶悪でありながら、OPETH のように挑戦的で、パコ・デ・ルシアのように革命的で苦悩と歓喜に満ちた “La Orden del Yelmo Negro” は、絶対的な勇気の歌。あの Jacob Hansen 指揮の下、見事に練られたクラシカルなストリングスとリズミックなパーカッションが、メタルの “レコンキスタ”、再征服を誇り高く宣言します。そしてもちろん、フレットレス・ベースの嗎はプログレッシブなデスメタルの矜持。
「スペインの歴史には、その偉大さと衰退の両方が刻まれている。政治的、宗教的、さらには神秘的な対立が多くの不幸の根源だけど、そうしたテーマは僕たちの創作に無限のインスピレーションを与えてくれる。僕たちは戦争を美化しようとしているわけではなく、その精神的、文化的、人間的な共鳴を探求しているんだ。戦争は確かに暴力的なものだけど、同時に深くて象徴的なものだと思う」
常にイベリアの歴史を物語ながら、ある種の教訓をもたらしてきた現代の吟遊詩人 IMPUREZA。今回のアルバム “Alcázares” で彼らは、血と死が今よりもはるかに近くにあった中世、レコンキスタをテーマに選びました。キリストとイスラム…血塗られた歴史と神秘が交錯する宗教と戦いのストーリー。争いから始まった文化と人の流動性はいつしか成熟され、洗練され、多様な背景を持つ人々を生み出し、ルネサンスの下地にもなりました。血と死に導かれたレコンキスタはまさに、メタルとフラメンコの “不純な” 婚姻にも似て、多文化共生、異文化共鳴の始まりでもあったのです。
今回弊誌では、Lionel Cano Muñoz にインタビューを行うことができました。「メタルは世界を変えることができない。それはたしかだ。だけど、ニュース、本、映画とは全く異なるチャンネルを通じて物語を伝えることならできる。そうやって、いつも僕たちに “逃避” する場所を与えてくれるんだ。メタルはおそらくこの世界におけるユニバーサルな言語であり、表現における最高の武器なんだ!」どうぞ!!

IMPUREZA “ALCÁZARES” : 10/10

INTERVIEW WITH LIONEL CANO MUNOZ

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【LIONEL】: I grew up between two very powerful worlds: flamenco and metal. At home, we listened to Paco de Lucía, Camarón de la Isla, Spanish guitar… And alongside that, I was completely immersed in Metallica, Pantera, Slayer, Morbid Angel, Testament, Nile… Two worlds that seem to be opposites, but which share the same intensity, the same pain, the same rebellion. It’s this mixture that forged the guitarist I became.

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【LIONEL】: 僕はフラメンコとメタルという、非常に強力な2つの世界の間で育ったんだ。家ではパコ・デ・ルシア、カマロン・デ・ラ・イスラといったスペインのギター音楽を聴いていたんだよ。一方で、METALLICA, PANTERA, SLAYER, MORBID ANGEL, TESTAMENT, NILE などにも完全に浸っていた。一見対立する二つの世界だけど、同じ情熱、同じ苦悩、同じ反逆の精神を共有しているんだよ。このふたつのミックスが、ギタリストとしての僕を形作ったんだ。

Q2: What made you start playing an instrument? Who were your heroes at the time?

【LIONEL】: I started around 14 years old with the acoustic guitar, which I found a little difficult and less fun than the electric one. So I first persevered with metal and hard rock. Then I decided to return to the acoustic guitar; with more maturity, I began to find pleasure in it, and I also continued to work on the Spanish guitar.
I’ve always had an artistic spirit and a desire to surpass myself, so I tried several hobbies, and when I found a guitar at my grandparents’ house, I gave it a try. As a fan of Metallica and Slayer at the time, I wanted to be like James Hetfield. I started playing along to the albums until I perfected my skills, and then I developed a taste for it, and I never stopped!
But very quickly, my origins took over. Flamenco was already there, in my blood, in my family roots. My heroes were Paco de Lucía, Dimebag Darrell, and Camarón de la Isla. They all had a spiritual strength, an authenticity that I was looking for.

Q2: ギターを弾き始めたきっかけもフラメンコだったんですか?当時のヒーローは誰でしたか?

【LIONEL】: そうだね、14歳ごろ、アコースティック・ギターから始めたんだけど、エレキギターに比べて少し難しく、楽しさも劣るように感じていてね。だから、最初はエレキでメタルとハードロックに粘り強く取り組みくむことにした。その後、アコースティックギターに戻ったんだ。すると、成熟した視点で楽しめるようになって、スパニッシュ・ギターにも取り組むようになったんだ。
芸術的な精神と自己超越の意欲があったから、昔から趣味は豊富でね。だから、祖父母の家でギターを見つけた時、挑戦してみようと思った。当時は METALLICA と SLAYER のファンだったので、ジェイムズ・ヘットフィールドのようになりたいと思っていたんだよな。アルバムに合わせて演奏し、技術を磨くうちに、その魅力にハマり、以来、ギターをやめられなくなってしまった!
だけど、すぐに僕のルーツが表れてきた。フラメンコは既に僕の血の中に、家族のルーツの中にあったからね。僕のヒーローはパコ・デ・ルシア、ダイムバック・ダレル、カマロン・デ・ラ・イスラだった。彼らは皆、精神的な強さと、僕が求めていた本物らしさを持っていたんだ。

Q3: You are known as “Hispanic Metal”. Although you are French, are you still proud of your Spanish roots? Is the band’s name “Impureza” “Impurity” a reference to your own mixture of Spanish and French blood?

【LIONEL】: Yes, completely for the first part of the question. I was born in France, but I am of Spanish origin, both my parents are Spanish and that is part of me. But for the second part, above all Impureza embodies the duality of two musical genres, the impurity certainly comes from the fact of textured flamenco with metal and smoothed metal with flamenco. So yes our music is perhaps impure!!! Haha!

Q3: IMPUREZA は “ヒスパニック・メタル” として知られています。あなたたち自体はフランス人であるにもかかわらず、スペインのルーツに重きを置き誇りを持っているようですね?バンド名 “Impureza”(不純物)とは、そうしたスペインとフランスの血の混合を意味しているんですか?

【LIONEL】: 最初の質問の答えは完全にイエス。僕はフランスで生まれたけど、スペインの血を引いている。両親はどちらもスペイン人で、そのルーツは僕の一部なんだ。
だけど、2つ目の質問ついては、IMPUREZA は主に2つの音楽ジャンルの二面性を体現していることが理由だよ。不純さとは、フラメンコとメタルのテクスチャーの融合、そしてメタルとフラメンコの滑らかな融合から来ているんだ。だから、僕たちの音楽は確かに “不純” かもしれないよね!!!(笑) 。

Q4: I don’t know of any other band that combines flamenco and traditional Spanish music with metal as well as you do! Your orchestration is also very skillful. Did you find any similarities between Spanish traditional music and metal music in terms of bravery and tragedy?

【LIONEL】: Thank you very much. Yes, these two worlds share a raw intensity. Flamenco has this deep, tragic, visceral spirit. Metal has a capacity for release, a way of externalizing the energy buried within us through the power of this liberating music. They are two complex musics that require a lot of rigor and rigor. Bravery comes from this absolute sincerity. We try to translate this into each composition.

Q4: 実際、あなたたちほど巧みにフラメンコ、伝統的なスペインの音楽をメタルと組み合わせるバンドは他に知りませんよ。オーケストレーションも実に見事ですね。スペインの伝統音楽とメタルの間には、勇気と悲壮感という類似点があるようにも思えます。

【LIONEL】: ありがとう。そうだね、この二つの世界は生の情熱を共有しているんだ。フラメンコには深い、悲劇的で、感情的、本能的な精神がある。メタルには、この解放的な音楽の力を通じて、僕たちの中に埋もれたエネルギーをアウトプットする能力がある。
ただしふたつとも複雑な音楽で、多くの厳格さを必要とする。勇気は、この絶対的な誠実さから生まれてくるんだ。僕たちは、そうしたものを各楽曲に反映させようと努めているよ。

Q5: Your Spanish also fits really well with metal! The metal world used to be almost exclusively English-speaking, but in recent years we have seen an increase in the number of bands using their native languages and traditional music. How do you feel about the increase in the number of bands with such regional characteristics?

【LIONEL】: It’s a very beautiful evolution in my opinion. Metal is finally becoming more universal than it has ever been. Each language has its history, its color, its culture and even gives a rhythm to whoever uses it. Spanish, for its part, brings a particular musicality to our lyrics, it gives them a dramatic, intense and violent side that naturally marries the power of metal and the intensity of flamenco.

Q5: アルバムのスペイン語もメタルにフィットしていますね!メタルの世界はかつてはほぼ英語が主流でしたが、近年、母国語や伝統音楽を使用するバンドが増えています。
IMPUREZA も含めて、ローカルな特色を持つバンドの増加について、どう感じていますか?

【LIONEL】: 非常に美しい進化だと思うよ。メタルはついに、これまで以上にユニバーサルなものになりつつあるんだからね。各言語には歴史、色、文化があり、それを使用する者にリズムを与える。スペイン語は、僕たちの歌詞に特有の音楽性をもたらし、ドラマチックで激しく暴力的な側面を与え、メタルの力とフラメンコの強度を自然に融合させてくれるんだ。

Q6: Your album “Alcazares” is set in medieval Spain, and the Reconquista is one theme. Why did you choose this bloody period of war, plague, and death?

【LIONEL】: Well, first of all, to conclude the trilogy on the history of old Spain, which we began with the Inquisition for “La Iglesia del Odio,” the Conquest for “La Caida de Tonatiuh,” and now the Reconquest for “Alcázares.” The history of Spain is marked as much by its grandeur as by its decadence. Political, religious, and even mystical conflicts are at the heart of many misfortunes, but they provide limitless inspiration for our writing. We don’t seek to glorify war, but to explore its spiritual, cultural, and human resonances. It’s violent, certainly, but also deeply symbolic.

Q6: 最新作 “Alcazares” は中世のスペインを舞台にしていて、レコンキスタがテーマのひとつとなっていますね。なぜ、戦争、疫病、死の血塗られた時代を選んだのでしょうか?

【LIONEL】: まず第一に、古いスペインの歴史を扱った僕らのトリロジーを完結させるためだった。僕たちは “La Iglesia del Odio” で異端審問会を、”La Caida de Tonatiuh” で征服を扱い、”Alcázares” でレコンキスタを扱うことでトリロジーを作り上げたんだ。スペインの歴史には、その偉大さと衰退の両方が刻まれている。
政治的、宗教的、さらには神秘的な対立が多くの不幸の根源だけど、そうしたテーマは僕たちの創作に無限のインスピレーションを与えてくれる。僕たちは戦争を美化しようとしているわけではなく、その精神的、文化的、人間的な共鳴を探求しているんだ。戦争は確かに暴力的なものだけど、同時に深くて象徴的なものだと思う。

Q7: Hundreds of years have passed since Reconquista, but the world is still a dark place of religion, pandemics, war, and division, and the essence of humanity seems unchanged. In such times, what can heavy metal do?

【LIONEL】: Metal won’t change the world, that’s for sure, but it will always allow us to escape, to tell the story through a channel very different from news, books, and films. Perhaps the universal language and the best weapon of expression in this world!

Q7: レコンキスタから数百年の時が経ちましたが、世界は依然として宗教、パンデミック、戦争、分断の暗雲が覆い、人間の本質は変わっていないようにも思えます。こんな時代に、ヘヴィ・メタルには何ができるでしょうか?

【LIONEL】: メタルは世界を変えることができない。それはたしかだ。だけど、ニュース、本、映画とは全く異なるチャンネルを通じて物語を伝えることならできる。そうやって、いつも僕たちに “逃避” する場所を与えてくれるんだ。メタルはおそらくこの世界におけるユニバーサルな言語であり、表現における最高の武器なんだ!

Q8: Your music is a perfect combination of ferocity and beauty, what do you think beauty means for death metal?

【LIONEL】: It’s like Romantic Gothic, which is defined by death, rebellion, night, and the morbid, but also by dreams, the sublime, nature, and the beauty of the fantastic and the mysterious. This duality is strongly present in Impureza’s music.
A guttural cry can be more moving than a melodic song expressed in plain language if the emotion is genuine. Beauty finds its essence in sincerity, even in the strange, even in horror and violence!

Q8: あなたの音楽は凶暴さと美しさの完璧な融合です。そんな IMPUREZA にとって、デスメタルにおける “美しさ” とは何だと思いますか?

【LIONEL】: デスメタルにおける美。それはロマンティック・ゴシックのようなもので、死、反逆、夜、そして病的なものによって定義されながら、同時に夢、崇高、自然、そして幻想的かつ神秘的な美しさによっても定義される。この二面性は、IMPUREZA の音楽に強く表れているよ。
例えば本物の感情が込められていれば、メロディックな曲よりも、のどから絞り出すような叫びの方が感動的になることがあるだろう。結局、美の本質は誠実さにあり、奇妙なものにも、恐怖や暴力にも存在するんだよ!

FIVE ALBUMS THAT CHANGED LIONEL’S LIFE!!

Slayer “Reign in Blood”

Testament “The Gathering”

Pantera “Vulgar Display of Power”

Morbid Angel “Entangled in Chaos”

Nile “Annihilation of the Wicked”

MESSAGE FOR JAPAN

Yes, of course! For us, Japan is a land of respect, values, culture, and passion. We adore Japanese artistic sensibility. It would be a tremendous honor for us to come and perform in Japan. Thank you very much for your support.
We hope to bring our Hispanic fury to your beautiful country soon.

僕たちにとって日本は、尊敬、価値観、文化、情熱の土地。日本の芸術的感性を愛しているんだ。もし、日本でパフォーマンスできるとしたら、僕たちにとってそれは大きな栄誉だよ。サポートをありがとう。
近い将来、僕たちのヒスパニックな情熱を美しい日本に届けられることを願って。

LIONEL

IMPUREZA Facebook

IMPUREZA Official

IMPUREZA SEASON OF MIST

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DARKASIDE : DECADE OF CRISIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOSHUA MAYUM OF DARKASIDE !!

“Kakarot Is My Favorite Hero, He Is a Force That Knows No Fear, He Always Challenges Himself And Fights For Others That Need Help, As a Kid I Always Wanted To Be Like Goku And Stand Up For Others”

DISC REVIEW “DECADE OF CRISIS”

「カカロットが僕の一番好きなヒーローなんだ。彼は恐れを知らない存在で、常に自分自身に挑戦し、助けを必要とする他者のために戦う。子供の頃、僕は常に悟空のように他者のために立ち上がることを望んでいたんだよ」
誰にでも、幼いころに勇気や優しさをもらったヒーローはいるはずです。もしかしたら、そうしたヒーローから “生き方” のお手本を示してもらった人もいるかもしれませんね。パプア・ニューギニアで抑圧をうけるブーゲンビルの DARKASIDE は、恐れ知らずで、自分に挑戦し、弱いもののために立ち上がる生き方をドラゴンボールの悟空から受け継ぎました。そう、もちろんメタルも誰かのヒーローになれるのです。
「この曲はブーゲンビルの人々に対して、危機を乗り越えて戦った人々や命を落とした人々の犠牲を忘れないよう、また現在も独立のために戦っている人々へのメッセージとリマインダーなんだ。抑圧と弾圧の下でも、ブーゲンビルの人々は互いを支え合い、教育、仕事、ビジネスに努力し、自己を向上させることで、この不条理を克服しなければならないことをね。現在のパプア・ニューギニア政府は、ブーゲンビルが資源(金、銅、カカオなど)に富むため、僕たちの島を富と収入の源と見なし、独立を渋っているんだ」
世界でも最も文化的・人種的・言語的に多様な国の一つといわれる異色の地、パプア・ニューギニアの中でもブーゲンビルはさらに異色の地です。首都ポートモレスビーのあるニューギニア島から離れた場所にあるブーゲンビル島は、鉱物や海洋資源が豊富。その資源は国の主な収入源のひとつとなっています。特に巨大なパングナ鉱山は国の生命線。しかし、政府によるその利益の分配が不公平だとブーゲンビル人は怒り、独立を求めています。内戦まで発展したそのブーゲンビル危機の裏側には、肌の色、言葉、文化の違いで抑圧を受け続けたブーゲンビルの人々の怒り、反骨精神、逆境を乗り越える回復力が存在しました。そしてその回復力は、まさにヘヴィ・メタルに宿る力。
“Decade of Crisis” はそのブーゲンビル危機をテーマとした楽曲です。ただし、DARKASIDE は争いや暴力による解決を求めているわけではありません。友と互いに支え合って高め合い、己を磨き、自己実現を果たしていく中で、権利を主張し譲歩を求める。それはまさにドラゴンボールの修行と武道会。そして、不条理を跳ね退けた先に待っているのは、きっと悟空とベジータのように互いを認め合う心なのかもしれませんね。
「僕たちはメタルを愛しているけど、僕たちはパプア・ニューギニア人であり、より具体的にはブーゲンビル人だ。僕たちは地元の伝統、文化、民話、言語(トク・ピジン/ナシオ)も大切にしているんだよ。こうした文化すべてが非常に重要で、可能な限り自然にメタル・ジャンル(カナカ・メタル)と融合させようと努めているよ。伝統とメタルは、それぞれの地域にとってリアルで忠実なものだから、よく調和するんだ。だから、人々は BLOODYWOOD や SEPULTURA の音楽スタイルに共感するんだよ」
重要なのは、DARKASIDE が理想だけを語る絵に描いた餅、机上の空論のような存在では決してないことです。彼らの音楽には明らかに、人を惹きつける何かがあります。Nu-metal と伝統音楽の類稀なる蜜月。BLOODYWOOD が蒔いたリズミックでフォーキッシュなメタルの種は今、世界中で芽吹こうとしています。そう、世界各地の文化、音楽、言語を吸収するセルのような力こそ、メタルの生命力にして真骨頂。今やメタルに第三世界はありません。ゆえに、そんなモダン・メタルの申し子ともいえる DARKASIDE が、5年後に BLOODYWOOD と肩を並べていたとしても決して不思議ではないのです。
今回弊誌では、フロントマン Joshua Mayum にインタビューを行うことができました。「メタルは、男女の関係について歌ったり、派手なライフスタイルや富を追求したり、この世界の快楽に浸るためのものではない。この音楽は、正義と平等を求める戦いの叫びであり、僕たちが日常の生活で直面する現実の状況と闘い続けるための武器なんだよ」 どうぞ!!

DARKASIDE “DECADE OF CRISIS” : 10/10

INTERVIEW WITH JOSHUA MAYUM

Q1: First of all, what got you into metal in Papua New Guinea, a country where metal is not exactly famous?

【JOSHUA】: Metal is not really a genre that a majority of people in Papua New Guinea (PNG) are exposed to or generally even like. Usually their first reactions would be “o that’s the devil’s music, too much noise or that’s demonic.’ We Darkaside are from the Autonomous Region of Bougainville (AROB). It is a region within Papua New Guinea that is commonly known for a having a few outstanding features, one most obvious is our dark skinned complexion, the decade long Bougainville Crisis from 1988 to 1998 and most definitely our general love for the metal genre. Over the recent years there has been a metal movement within PNG, specifically in the national city of Port Moresby, with likeminded metal heads meeting up and having metal nightsonce or twice in a year. Thanks to social media (Facebook, Whatsapp, Tiktok etc. we are able to find each other and build mutual friendships through our love for the metal genre. These metal nights have been single handedly arranged by Carmel Pilotti of Tritones Music and have been a focal point towardsbuilding the local metal scene and encouraging the minority of PNG metal heads regardless of their age, race or culture to attend and share our love for metal with the support of a few of our local PNG metal bands.

Q1: まず最初に、パプア・ニューギニアというメタルと無縁にも思える地で、メタルにハマったきっかけを教えていただけますか?

【JOSHUA】: メタルは、パプア・ニューギニア(PNG)の多くの人々にとって接する機会がなく、一般的に好まれるジャンルでもない。パプア・ニューギニア人の最初の反応は “ああ、メタルは悪魔の音楽だ。騒がしいし、悪魔的だ” といったものが多いだろうね。
僕たち DARKASIDE は、ブーゲンビル自治州(AROB)出身なんだ。この地域はパプア・ニューギニアの一部なんだけど、いくつかの特徴で知られている。最も目立つのは僕たちの黒い肌の色、1988年から1998年までの10年間続いたブーゲンビル危機、そして間違いなくメタル・ジャンルへの大きな愛なんだ。
近年、パプア・ニューギニア、特に首都ポートモレスビーでメタルムーブメントが生まれ、同じ趣味を持つメタルファンが年に1回か2回、メタル・ナイトが開催されているんだ。ソーシャルメディア(Facebook、WhatsApp、TikTokなど)を通じて、僕たちは互いを見つけ合い、メタルへの愛を通じて相互の友情を築くことができているよ。
こうしたメタル・ナイトは、トリトーンズ・ミュージックのカーメル・ピロッティが単独で企画・運営していて、地元のメタル・シーンの構築と、年齢、人種、文化に関わらずパプア・ニューギニアのメタル愛好家が参加し、メタルへの愛を共有する場として機能しているんだ。もちろん、いくつか地元のメタル・バンドの支援を受けて実現しているんだけどね。

Q2: I hear that Papua New Guinea is not a country with stable politics and security. What are the challenges of continuing to play heavy metal in such a place?

【JOSHUA】: Papua New Guinea is widely perceived as a corrupt country and arguably one of the most dangerous places in the world. But to be honest the media over exaggerates and lies about the security about this country. Most parts of Papua New Guinea are safe and the people here are the friendliest loving people you will ever meet. There are no challenges in playing heavy metal here, everybody in PNG respects each other and the type of Genre one plays and listens to. Maybe the only hiccup will be facing is getting our songs to be played on our local radio stations because currently Metal isn’t main stream here in PNG and now radio announcers asked to get paid under the table in order for them to play your songs on the radio stations so basically the radio stations here are corrupt and full of shit.

Q2: パプア・ニューギニアは、政治面・安全面で決して安定しているとは言えないそうですね。そうした国で、ヘヴィ・メタルを続けていくのは簡単ではないですよね?

【JOSHUA】: パプア・ニューギニアは、腐敗した国として広く認識されていて、おそらく世界で最も危険な場所の一つとされているよね。しかし正直なところ、メディアはこの国の安全面について過大に誇張し、嘘を流しているんだ。パプア・ニューギニアの大部分は安全で、ここに住む人々は、きっと君が会う中で最も親切で愛らしい人たちだよ。だから、ヘヴィ・メタルを演奏する上で問題があるわけじゃないんだ。
パプア・ニューギニアの誰もが互いを尊重し、演奏や聴くジャンルの違いを尊重しているよ。唯一の障害は、地元のラジオ局で僕たちの曲を流してもらうことかもしれないね。現在、この国ではメタルは主流ではなく、ラジオのアナウンサーはオンエアの対価として裏金を要求するからラジオ局は腐敗していて、まったくひどい状態だよ。

Q3: Papua New Guinea is one of the most culturally, racially and linguistically diverse countries in the world. What groups do you belong to in such a country?

【JOSHUA】: Papua New Guinea consists of four distinct regions. The highlands, Momase, Southern and Islands region. The Band members of Darkaside are from the Islands region which is composed by five provinces which is Bougainville also known as North Solomon’s Province (where all the band members of Darkaside are originated from), East New Britain, West New Britain, Manus, and New Ireland. Out of all the regions and provinces in Papua New Guinea, the people of Bougainville have a more darker skin complexation some may say we are the blackest people in the world. The island of Bougainville is rich with minerals and resources, abundant with marine life and has at least 19 different indigenous languages.

Q3: パプア・ニューギニアは、世界でも最も文化的・人種的・言語的に多様な国の一つです。あなたのグループについて、お話ししていただけますか?

【JOSHUA】: パプアニューギニアは4つの異なる地域から構成されているんだ。ハイランド、モマセ、南部、および島嶼地域だね。DARKASIDE のメンバーは島嶼地域出身で、この地域は5つの州から成り立っている。具体的には、ブーゲンビル(北ソロモン州とも呼ばれ、DARKASIDE のメンバーの出身地)、東ニューブリテン、西ニューブリテン、マヌス、およびニュー・アイルランド。
パプア・ニューギニアのすべての地域と州の中で、ブーゲンビルの住民は最も肌が黒いとされ、一部の人々は “世界で最も黒い人々” と呼ぶかもしれないね。ブーゲンビル島は鉱物と資源が豊富で、海洋生物も豊富。少なくとも19の異なる先住民言語が存在するんだ。

Q4: “Decade of Crisis” is a song about the Bougainvillea crisis. Many people have died in the conflict, but Bougainvillea has not yet achieved peace or independence. Was this song written to help the oppressed people of Bougainvillea?

【JOSHUA】: The people of Bougainville have waited a very long time for the Papua New Guinea Government to give them Independence.This song is a message and reminder to Bougainvillians to not forget and take for granted the sacrifices of those who fought through the crisis and died, and for those that are still here fighting for our Independence. Even under the circumstances of being oppressed and suppressed Bougainvillians must rise up and overcome this injustice by empowering one another, and work hard in their education, work, Business and then Better oneself. The current Government of PNG is reluctant to give us Independence because they see our island as a source of wealth and income since Bougainville is rich in resources (Gold, Copper, Cocoa ect).

Q4: “Decade of Crisis” はブーゲンビル危機をテーマにした楽曲ですね。この紛争で多くの命が失われましたが、ブーゲンビルは未だに平和や独立を確立できていません。この曲は、そうしたブーゲンビルの抑圧された人々を支援するために書かれたのでしょうか?

【JOSHUA】: ブーゲンビルの人々は、パプア・ニューギニア政府から独立を認められるのを非常に長い間待ってきた。この曲はブーゲンビルの人々に対して、危機を乗り越えて戦った人々や命を落とした人々の犠牲を忘れないよう、また現在も独立のために戦っている人々へのメッセージとリマインダーなんだ。
抑圧と弾圧の下でも、ブーゲンビルの人々は互いを支え合い、教育、仕事、ビジネスに努力し、自己を向上させることで、この不条理を克服しなければならないことをね。現在のパプア・ニューギニア政府は、ブーゲンビルが資源(金、銅、カカオなど)に富むため、僕たちの島を富と収入の源と見なし、独立を渋っているんだ。

Q5: This song uses bamboo flutes and other percussion instruments, which wonderfully match your metal! Are these instruments traditional instruments of your tribe?

【JOSHUA】: Yes, the traditional instruments such as the Bamboo drum and bamboo flute which is played in the Decade of Crisis music video are sacred instruments which can only be played by Man in my Tribe and in other tribes and specific regions in Papua New Guinea. These traditional instruments are normally played in Ceremonial gatherings and at Cultural dances.

Q5: この曲では竹の笛や打楽器が使用されており、DARKASIDE のメタルと素晴らしく調和しています。こうした楽器はあなたの民族の伝統的な楽器なのでしょうか?

【JOSHUA】: そうだね、ビデオに出てくる伝統的な楽器、竹の太鼓や竹の笛は、僕の部族やパプア・ニューギニアの他の部族や特定の地域で、男性のみが演奏できる神聖な楽器なんだ。こうした伝統的な楽器は、儀式的な集まりや文化的なダンスで演奏されるんだよ。

Q6: In recent years, music that combines metal with one’s own traditional music, such as Bloodywood, has become increasingly popular. You, like them, seem to be heavily influenced by Nu-metal, but why do you think metal and traditional music match so wonderfully?

【JOSHUA】: Yes, we love Bloodywood. Their music is so unique and inspiring. We are into Nu Metal as it suites our style of playing and it’s a genre that has evolved from main stream heavy metal in the 90’s. Our musical aspirations as a band has been to focus on originality and musical identity. Yes we love metal, but we are Papua New Guineans, more specifically we are Bougainvilleans. We also have our local, traditions, cultures, folklore, language (tok pidgin/nasio. These are all very important and we try as much as possible to fuse it naturally with the metal genre (kanaka metal). Traditional and metal sound well together because its real and authentic to each particular respective area. No wonder people relate well to the musical style of Bloodywood and of course Sepultura.

Q6: 近年、BLOODYWOOD のように、メタルと自国の伝統音楽を融合させた音楽がますます人気を集めています。
あなたも彼ら同様、Nu-metal に強く影響を受けているようですが、なぜメタルと伝統音楽はこれほど見事に調和するのでしょう?

【JOSHUA】: そうだね、僕たちは BLOODYWOOD を愛しているよ。彼らの音楽は独特で刺激的だから。そして実際、僕たちは Nu-metal に傾倒しているんだ。このジャンルは僕たちの演奏スタイルに合っていて、90年代主流のヘヴィ・メタルから進化したものだ。バンドとしての音楽的目標は、独自性と音楽的アイデンティティに焦点を当てること。
もちろん、僕たちはメタルを愛しているけど、僕たちはパプア・ニューギニア人であり、より具体的にはブーゲンビル人だ。僕たちは地元の伝統、文化、民話、言語(トク・ピジン/ナシオ)も大切にしているんだよ。こうした文化すべてが非常に重要で、可能な限り自然にメタル・ジャンル(カナカ・メタル)と融合させようと努めているよ。伝統とメタルは、それぞれの地域にとってリアルで忠実なものだから、よく調和するんだ。だから、人々は BLOODYWOOD や SEPULTURA の音楽スタイルに共感するんだよ。

Q7: I was very excited to see you wearing your Dragon Ball Z Frieza T-shirt! Are you actually a fan of Japanese anime, games and music?

【JOSHUA】: Yes, I Joshua Mayum the singer of Darkaside am a big fan of Dragon Ball Z and the late Akira Toriyama. I’ve been a fan of DBZ since I was a kid. When I was kid, I used to collect DBZ play cards, toys and watched DBZ episodes almost every afternoon after school and on the weekends. But now I only collect shirts and download wallpapers. Kakarot is my favorite Hero, he is a force that knows no fear, he always challenges himself and fights for others that need help, as a kid I always wanted to be like Goku and stand up for others.

Q7: ビデオのなかであなたがドラゴンボールZのフリーザTシャツを着ているのを見て、とても興奮しました!実際、あなたは日本のアニメ、ゲーム、音楽のファンなんですか?

【JOSHUA】: その通りだよ。僕はドラゴンボールZと故鳥山明の大ファンなんだ。僕は子供の頃からドラゴンボールZのファンでね。子供の頃、ドラゴンボールZのプレイカードやおもちゃを集め、放課後や週末のほぼ毎日、ドラゴンボールZのエピソードを見ていたんだよ。今はシャツを収集し、壁紙をダウンロードするくらいだけどね。
カカロットが僕の一番好きなヒーローなんだ。彼は恐れを知らない存在で、常に自分自身に挑戦し、助けを必要とする他者のために戦う。子供の頃、僕は常に悟空のように他者のために立ち上がることを望んでいたんだよ。

Q8: Pandemics, war, division, oppression, discrimination: in the 2020s, the world is heading toward an increasingly violent and dark place. What can heavy metal do in these times?

【JOSHUA】: Metal for us is about freedom of expression through means of creating awareness by campaigning musically on the social issues that are affecting our peers and our rural and urban communities. These are issues that we as a developing nation have been facing for some time now and we believe that this is a time for reflection and corrective actions need to be taken now as this year come September 16th will mark our 50 years of Independence as a sovereign nation. We are not an isolated issue as most of these issues are also being faced by many other developing nations in the world, particularly the Pacific. It’s not about singing about a girl/boy, bling bling or getting rich or even indulging in the pleasures of this world, but it’s battle cry for justice, equality and also about facing the real-life situations and struggles we encounter in our daily lives.

Q8: パンデミック、戦争、分断、抑圧、差別…2020年代、世界はますます暴力的で暗い方向へ進んでいます。このような時代において、ヘヴィ・メタルにはは何ができるのでしょうか?

【JOSHUA】: 僕たちにとってメタルは、音楽を通じて社会問題への意識を高め、表現の自由を追求する手段なんだ。そうした問題は、僕たちの同世代や農村・都市コミュニティに影響を及ぼしている。発展途上国として、僕たちは長年これらの問題に直面してきたよ。今年9月16日に独立50周年を迎える今、この国は反省と是正措置を講じる時期だと信じている。そしてそれはこの国に限った問題ではない。世界中の多くの発展途上国、特に太平洋地域でも直面している問題だよ。
メタルは、男女の関係について歌ったり、派手なライフスタイルや富を追求したり、この世界の快楽に浸るためのものではない。この音楽は、正義と平等を求める戦いの叫びであり、僕たちが日常の生活で直面する現実の状況と闘い続けるための武器なんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED JOSHUA’S LIFE!!

Metallica “Black Album”

Papa Roach “Infest”

P.O.D. “Satellite”

Disturbed “The Sickness”

Linkin Park “Hybrid Theory”

MESSAGE FOR JAPAN

Late Admiral Isoroku Yamamoto’s final resting place is in Bougainville, even our own grandfather (Kaka nasio language) would sing Japanese songs, as he was thought by the Japanese army during the 2nd World war in Bougainville. So we have always had this connection with Japan in some sense. If and when everything works out, we would love to come over and perform at the Supersonic Festival or the famous Budokanvenue one day. Our sincere love and greetings to you all.

故・山本五十六提督の最終的な安息の地はブーゲンビル島にあるんだ。僕たちの祖父(カカ・ナシオ語を話す)も、第二次世界大戦中にブーゲンビル島で日本軍に教育を受けていたから、日本の歌を歌っていたんだよ。だからいつも僕たちは、何らかの形で日本とのつながりを感じてきたんだ。もし全てがうまくいけば、いつか Supersonic Festival (おそらくサマソニのこと) や有名な武道館でパフォーマンスをしたいと考えているよ。みんなに心からの愛と喜びを。

JOSHUA MAYUM

DARKASIDE Facebook

DARKASIDE Bandcamp

mmmB5dvKwaCcAEznJZ

PLZ FOLLOW US ON FACEBOOK !!

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SKUNK ANANSIE : THE PAINFUL TRUTH】


COVER STORY : SKUNK ANANSIE “THE PAINFUL TRUTH”

“Having a Black, Female, Gay Lead Singer Was Completely Different Than All The Other Bands, Me Being The Face Of a Rock Band Made a Lot Of People Uncomfortable.”

THE PAINFUL TRUTH

「私がロックバンドのフロントを務めたことで、多くの人々が不快感を抱いていた」
SKUNK ANANSIE は、Oasis, Blur, Pulp といったバンドがラジオを席巻した 90 年代半ばのブリット・ポップの流れに関連して、一躍有名になりました。しかし、このムーブメントの軽快なインディーズ・ロックに流されることなく、ロンドンの 4 人組はよりヘヴィで政治的な要素の強い、反抗的なサウンドを選択していました。それは、オルタナティブで時にメタル。そうして、Skin の激しく詩的な表現を完璧に引き立てていったのです。
Skin のかつてないルックス、恐れ知らずの性格、そして抑圧された人々のために立ち上がる心意気が、当時の他のバンドと SKUNK ANANSIE を明確に区別し、彼女を世界的なアイコンへと押し上げました。Skin はアイコニックなDr.マーチンのブーツを履き、ステレオタイプを恐れずに打ち破りました。
「黒人で、女性で、クィアのリードシンガーがいることは、他のバンドとは完全に違っていた。私は人々の先入観に挑んだんだ。私がロック・バンドの顔となることは、多くの人を不快にさせたから」
1990年代半ばは、イギリス音楽にとって特筆すべき時代でした。現代とは異なり、ジャンルやスタイルの統一性がより強く支配していた時代において、アメリカン・オルタナティブ・ミュージックの氾濫に対する対抗馬として台頭したブリットポップは、ラジオや主流メディアを席巻しました。しかし、この注目を浴びたムーブメントの特筆すべき特徴は、その人種的・性別的な均一性でした。つまり、白人男性中心のトレンドだったのです。

一方、時々 “ブリット・ロック” と呼ばれた SKUNK ANANSIE, THE WILDHEARTS, FEEDER といったアーティストは、異なる人種的背景を持つメンバーを擁していました。
「そこに情熱と真実味があるから、ロックにハマるの。そして、そこには怒りと憤りもある。本当にアウトサイダーが集まる場所。90年代、ロックやメタルにハマることは、確実に主流に逆らう選択だった。それはアンダーグラウンドで、少しエッジの効いた音楽だった。だから、私はあの時代の人々ははるかに共感力があると思う。ロックのオーディエンスははるかに共感力がある」
2020年代に入っても、SKUNK ANANSIE が大きな会場を埋められる事実が、このバンドの音楽が “人々の音楽” であることを証明しています。
「それは私がブリストン出身だからよ。1970年代のブリストンは、私が育った頃、南ロンドンの資金不足で忘れ去られた地域だった。黒人たちが住む場所だった。そして、そのことは語られなかった。黒人たちの問題は語られなかった。私たちは本当に自分たちで何とかするしかなかった。さらに、スース(容疑者)法という問題もあった。多くの黒人居住地域は、非常に差別的な警察組織とも対峙しなければならなかった。彼らは黒人男性を疑いだけで逮捕し、捜索した。彼らは街中で裸にさせることもできた。私は3人の兄弟がいるので、その現実をよく知っていたの」
彼女の歌声は、しばしばロック界で最高の歌声と称されています。 純粋で、ハスキーという表現は決して適切ではありません。 高くて正確で、ビブラートがたっぷりかかっているのです。ウィンドラッシュ世代としてジャマイカからイギリスに移り住んだ Skin の家族にとって、そうした音楽とのつながりは天性のものだと感じています。
「私の家族はみんな歌えるの。ただ、練習してこなかったから、いい声が出なかっただけでね。 でも、私みたいに練習していたら、きっとうまくなっていたはず。私は音楽をやって成功したいという意欲と野心を持っていたから」

表舞台で活躍する中で、Skin が耐えてきた逆境は、 “居心地が悪い” という表現がぴったりでした。 他人の偏見や不安の受け皿となることを繰り返してきた彼女は、社会的、政治的な問題に関しては決して尻込みすることなく、長年にわたって差別の事例について率直に語ってきたのです。Skin は SKUNK ANANSIE のキャリアを通して、”Selling Jesus”, “Intellectualise My Blackness”, “On My Hotel TV”, “Little Baby Swastikkka” といった曲で、人種差別、虐待、組織宗教、資本主義の貪欲さに立ち向かってきました。 2020年9月に出版された自叙伝 “It Takes Blood and Guts” の中で彼女は、1996年に SEX PISTOLS のオーストラリア・ツアーに参加した際、人種差別を経験したと語っています。
「髪型だけでナチスだと誤解された。”ステージから降りろ、この黒人女!” とか叫ばれてね。そして、私たちを擁護する人たちが巻き込まれて、小さな乱闘になることもよくあったわ」
ベーシストの Cass も黒人であるバンドは、敵対する者たちを怒りに満ちたパフォーマンスで吹き飛ばし、無表情で束縛することなく反応したのです。
「私たちは、黒人らしく、獰猛に、ラウドになりきったの。その不条理な差別や偏見のおかげで、ステージでより良いパフォーマンスをするためのエネルギーが湧いてきたんだよ」
この活力は、フロントマンのジョニー・ロッテンを含む SEX PISTOLS からのサポートがなかったとされることで、さらに拍車がかかりました。
「彼は私たち四面楚歌になっているのを見て、何もしなかった。そういう沈黙の中に暴力があると思うの。詩的な文章だね、くそったれ! それを書き留めて」

このような抑圧に対する反骨精神が、Skin が多くの人々にとって伝説となった理由のひとつといえます。しかし、何十年にもわたって人々の偏見の的となり続けたことは、どんなに強い人間にとっても重い十字架となるはずです。
「でも、私はそれを背負わなかった。 人種差別、性差別、同性愛嫌悪など、他人の問題を引き受けてしまうと、その人たちが私に重荷を背負わせているようなものになってしまう。 だから前向きに成功について話す方が生産的だと思う。 実際に起こったいくつかの事件や、物事を難しくするようなことが、結果的にバンドの原動力となって成功した理由になっているのだから」
Skin が背負っている問題はたくさんあって、彼女がひとつひとつの十字架を背負う余裕がないのは当然のことです。30年間にわたる闘いの中で、彼女は社会と文化の活動家として、恐れずに声を上げ続けています。LGBTQ+の権利を擁護する活動——これは彼女が数十年にわたり続けてきたもので、当時、多くのアーティストがカミングアウトしていなかった時代から始まっています——以外の時間には、アフリカ女性主導の組織 “Forward” のアンバサダーとして、女性器切除反対運動を展開しています。
The Medical Foundation for the Care of Victims of Torture(現在はFreedom From Tortureとして知られる)や、黒人や少数民族コミュニティを支援するBaobab Foundationといった慈善団体と協力し、Skinは音楽療法を通じて若年の難民申請者を社会に統合する支援も行っています。また、ソーシャルメディアを通じて黒人コミュニティの物語を伝え、差別反対を訴えています。
「先日読んだ研究によると、Instagramのコメントの80%が否定的なものだったそう。人間は他人を批判するのが好きで、他人を励ますことには興味がないんだよ。だから、人々がその対処法を学ぶのは良いことだと思う。なぜなら、それは決して変わらないから。重要なのは、フィードバックを適切に評価すること。99%の人があなたのことを気に入っていても、1つの悪いコメントがあれば、その悪いコメントに焦点を当ててしまう。それは無意味よ。私はソーシャルメディアを最もポジティブな形で使い、善のために活用している。人生で何をするにしても、善のために活用してほしいわ。そうすれば、多くの善が返ってくるでしょう」

2020年、Skin はキャリアの新たな段階を開始し、Absolute Radioで毎週放送されるラジオ番組 “The Skin Show” の司会を務めるとともに、ポッドキャスト “Skin Tings” を立ち上げました。このポッドキャストでは、彼女の音楽のヒーロー、著名な友人、そして新進気鋭のアーティストをインタビューしています。しかし、彼女がインタビューしたアーティストたちと同じように、ロック音楽にとって重要な存在であるのは彼女自身です。彼女の明るい態度とダイナミックな精神は、Nova Twins, Rico Nasty, Little Simz など多くのアーティストに道を開き、自分らしくありながら成功を収めるよう鼓舞してきました。
「自分らしさを保つことは本当に重要だと思う」と Skin は、特に現在の過密な音楽シーンにおいて、多くのアーティストがトレンドを追う代わりに独自の個性を共有しない中で、個性の重要性について振り返ります。
「あなたが興味深いのは、あなたがあなた自身だから。他人を真似るな。本質的にあなたではない方法で物事を始めるな。あなたの素晴らしいところは、あなたが本質的にあなた自身であり、この地球上にあなたのような人は他にいないこと。それがあなたが録音すべき音であり、あなたが集中すべきもの。観客やロック批評家に媚びて成功を追い求めるために、自分ではない誰かになる必要があるなら価値はない。実際、成功とは何だろう?音楽を作り、世に送り出すこと—私にとっては、すでにそれが成功なの。そうすればあなたは実際に音楽業界の一部なのよ。ロック批評家の目を通して自分の成功を見ることは、自身の integrity(誠実さ)と authenticity(本物さ)を損なう可能性があるのだから」

イギリス王室さえも、Skin がジャンルを超えたアイコンとしての地位を認めています。彼女は音楽への貢献を称えられて、OBE勲章を授与されました。リーズ芸術大学の総長でもあります。つまり、英国ロック史で最も影響力のある人物の一人であるわけですが、よく与えられる “先駆者” という称号を受け入れているのでしょうか?
「後から振り返ると、バンドとして私たちの影響力とインパクトはわかる。でも、その中にいてやっている時は、人々が何について話しているのか全然わからない。黒人で女性で同性愛者の歌手が、セクシーで小さな服を着ていないこと、むしろアンドロジナスで政治的な音楽を歌っていたことが、どれだけ狂っていたか思い出す。それは本当に重かった。そして、90年代に多様性と意識の高さを追求した私たちの成果を振り返ると、今や実際に黒人、ゲイ、トランスジェンダーの文化に熱中することがクールになった。それは素晴らしいことだ。だから、私たちは先駆者だったと今なら理解できる」
先駆者といえば1998年7月16日、Skin と Cass は、南アフリカのクルーガー国立公園で、元大統領ネルソン・マンデラの80歳の誕生日を祝うための集まりに参加し、1,000人もの人々と共に夕食を摂っていました。その夜の司会者が、ステージに上がることを許可された人々の名前を短くリストアップし始めた時、2人は、自分たちも呼ばれるだろうと冗談を言いました。そして、本当に呼ばれたのです。
「私たちは “呼ばれるよ!” と笑い合っていた。そして “SKUNK ANANSIE!” って。やばい! それで私たちはステージに上がった。ネルソン・マンデラと少し会話し、その後マイケル・ジャクソン、ダニー・グローバー、スティーヴィー・ワンダー、ニナ・シモンと並んで立ち、全員でネルソンに “ハッピー・バースデー” を歌った。スティーヴィーがピアノを弾き、私がリードを歌い、マイケル・ジャクソンがハーモニーを担当した。そう、本当に魔法のような夜だった…」

まさに伝説に残る一夜でした。1994年にロンドン・キングスクロス地区の怪しげなリハーサルルームで活動を始めたバンドとしては、悪くない成果です。31人が焼死した地下鉄駅を出て、Skin は強盗の目を避けるため、目的地の街を走って移動していました。そこでは薬物依存、売春、ホームレスが蔓延していたのです。
「キングス・クロスは人間社会の汚物溜めだった。まさに汚物溜めだったが、輝かしいものだった。最高のバンドは汚物溜めから生まれると思う」
27年半後、現在 Skin はニューヨークとロンドン北東部を往復する生活を送っています。最初のラジオシングル “Little Baby Swastikkka” から 30 年近く経った今日、彼女は “成功” “今でも観客を前に、チケットが完売のライブを行っていること” と定義しています。
「人々は私に “成功とは600万枚のアルバムを売ることですか?” とか聞いてくるけど、私は “いいえ、成功の定義は、自分が方向付けた人生を送れていて、それでも十分な収入を得られるから、他のことをする必要がないこと” だと答えるわ。私にとって、成功とは、楽しみながらお金を稼ぎ、素晴らしいライブを続け、人々に称賛されることよ。おそらく今、私たちは “伝説的な地位” のカテゴリーに入っているようで、興味深いね。おそらく私たちは、今や人々が憧れるバンドの一つであり、若者たちが憧れる存在になっているでしょう」
間違いなくそうでしょう。2019年の夏、O2アカデミー・ブリクストンでの SKUNK ANANSIE のライブでは、他の同様の激しいライブでは時々見られない、特に同性カップルや有色人種の女性を含む、明らかに多様な層の観客がいました。もちろん、そのシーンが必ずしも排他的な場所というわけではありませんが、彼らのシンガーが説明する通り、このグループは “慰めを提供する “のです。「人々は SKUNK ANANSIE のライブに来て、自由になれる。私たちのライブのプライバシーの中で、彼らはその1時間や2時間を、ただ自分らしくいることができるの」

同じく2019年、Stormzy が “グラストンベリーでヘッドライナーを務めた最初の有色人種アーティスト” と誤って主張した件(SKUNK ANANSIE が彼より20年も前にその栄誉を獲得していた)に対し、ラッパーは正式な謝罪を表明しました。
「正直に言えば、ビヨンセが “グラストンベリーでヘッドライナーを務めた最初の黒人女性” だと発言したときのほうが、私はもっと苛立った。Stormzy は大好きで、彼は多くの良いことをしている。彼を批判したり、その瞬間を奪ったりすることは絶対にしない。でも、自分を守らなければならなかったから訂正を求めたの。彼は本当に品格がある。個人的にDMを送ってくれて、素敵なメッセージだった。少し会話した。私たちは皆、彼が黒人男性として、黒人男性らしいことをしていることに誇りを持っている」
実際、Skin の人気急上昇期の記憶は輝かしいものでした。彼女はダライ・ラマの前でパヴァロッティとデュエットし、ネルソン・マンデラに誕生日を歌い、1999年にグラストンベリーでヘッドライナーを務めた最初の黒人イギリス人となったのです。黒人女性として切り開いてきた道。それは確実に、報われようとしています。
「今や状況は変わった。人々は、変化をもたらすべきのは女性ではなく、他の人々であることに気づいた。女性が服装を変える必要はない。女性が自分を証明するために5倍努力する必要もない。それは私たちの責任ではない。他人が態度を変えるべきだし、それが女性以外の責任なの。90年代はそうではなかったけど、私はずっと前からその態度を持っていたの」
あの MOTORHEAD の Lemmy とは親友でした。
「彼はとても優しかった。 私が会った人の中で、一番本物の人だった。 彼はありのままの自分で、それを隠そうとしなかった。 それに、彼は想像以上に完璧な人だった。 彼はとても紳士的だった。私がLAにいるときはいつも一緒に曲を書いていて、彼からのメッセージもとても嬉しかった。 あるとき、彼と一緒に曲を書くことになっていたのに、私は恋人と別れてしまって書けなかった。 すると彼はLAに来て、”君のためにきたよ。一緒に遊ぼう” って。 本当に優しい人だった」

自伝、ツアー、ニューアルバム…多くのことが進行中ですが、Skin はいつか音楽から完全に離れることを考えるでしょうか?「どうやって止めるの?」と彼女は微笑みながら言う。「なぜ止める必要があるの?」
そう、SKUNK ANANSIE 9年ぶりの7thアルバム “The Painful Truth” (2009年の再結成以来最高の作品)は、再結成したグループの一部が形式的に活動するのと対照的に、このバンドがは2025年に活躍するためのバンドであることを見事に証明しました。
「最も良いのは、すべてが音楽から来ていること。新しい曲は人々に好まれ、古い曲はボーナスだ。私は常にこの強い信念を持っていた…素晴らしいアルバムを作れば、すべてが変わる…とね。私たちは “続けるか、続けないか” という自問自答をしたの。本当に質の高い曲をまだ作れるなら、未来があるとね。しかし、平均的な曲しか書けないなら、創造的に終わりかもしれないって。そうやって、ただ緩やかな衰退をたどれば人々は、90年代の私たちにしか興奮しなくなるだろう」
“The Painful Truth” には彼らの特徴的な歌詞と音楽の重厚さに、情熱的なオルタナティブの要素、電子音楽の要素、大衆向けの大きなコーラス、そしてスキンによる “巧妙な言葉遊び” が見事に融合されています。 “Shoulda Been You” のような堂々たるポップな曲から、率直で容赦ない “Shame”(「あの歌詞で一部の人から批判されるかもしれないけど、もうすでにその人たちからは十分批判されてるから!」と Skin が冗談を交えて語る)まで、これはまさに SKUNK ANANSIE が作りたかったアルバムであり、人々が予想していた過去の彼らから進化を遂げた作品でした。
「ファンが気に入ってくれるかどうか、という不安はある。なぜなら、”The Painful Truth” は私たちが普段やっていた音楽ではないから。でも、人々が本当に求めているのは、自分たちが欲しかったと気づかなかった本当に素晴らしいものを享受すること。私たちの仕事は他人を追いかけることではないからね」

そしてもちろん、それが常に SKUNK ANANSIE のやり方でした。90年代の白人男性中心のロックシーンを切り裂いてきた頃から常に。
「当時は気づかなかった…私たちはただバンドとして活動していただけだから。でも、私のような人たちがロック音楽への門を大きく広げたと信じたい。私たちは結局のところ、それを発明したんだから!今なら、小さな黒人少女や多様なバンドでも、それほど多くの反発を受けずに自分の道を歩めるだろう」
そうして時代がやっと追いついてきた今、SKUNK ANANSIE はメンバーの闘病という苦難にまたさらされています。しかし、30年もの間、世界のあらゆる試練を乗り越えてきた SKUNK ANANSIE は、今さら引き下がるつもりはありません。
“An Artist Is An Artist” や “Cheers” といった素晴らしい新曲が、”Weak” や “Little Baby Swastikkka” といった名曲と見事に調和しています。バンドは、ついに彼らが常に受けるべき尊敬を受ける時が来たのでしょう。
「いいメッセージを持ったバンドとして記憶されるのは悪くない。”彼らは本気で、いくつかの障壁を打ち破り、正しいことをした” ってね。私たちがやってきたことに比べれば、まだ花は咲いていないけど…私たちは毎晩、人々から花をもらっているよ」

参考文献: REDBULL:Skunk Anansie rocks out while Skin does the trailblazing

KERRANG!:Skin: “We offer solace. At a Skunk Anansie gig, people can be themselves, be free…”

KERRANG!:“I always had this strong belief: ‘If you do a great album, everything changes…’” How Skunk Anansie forged their dazzling future

VICE: Skin from Skunk Anansie Will Always Be a True Original

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PALEFACE SWISS : CURSED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PALEFACE SWISS OF YANNICK LEHMANN !!

ALL PHOTOS BY ADAM CHANDLER

“In Times Like These, Solidarity Is Everything. We Want To Give People a Space Where They Can Truly Be Themselves. Everyone Is e Equal, That’s Our Message.”

DISC REVIEW “CURSED”

「もちろん SLIPKNOT は大きな影響源だったよ。僕たちのボーカルと元ドラマーは、彼らのライブで出会ったんだからね。だけど、僕たちは決して SLIPKNOT になることを目指したわけではないんだよ。僕たちはビートダウン・バンドとして始まり、そのころの夢や目標はシンプルだった。世界で最も過激なバンドになることだよ」
かつて、SLIPKNOT は世界一過激で、クリエイティブで、それでいてメジャーなエクストリーム・バンドでした。過激であることと、クリエイティブであること、そしてメジャーであることが並び立つと彼らは証明してくれたのです。
SLIPKNOT のコンサートで結成されたスイスの PALEFACE SWISS は、そんな伝説の志を継ぐバンド。なぜなら、彼らはすでにスラム・ビートダウンとして狂気のSAN値を更新しながら、多様で創造的なアイデアで、スイスで最も人気のあるエクストリーム・メタルとなりつつあるのですから。
「僕たちはジャンルに縛られないんだ。狭い箱に閉じ込められるためにここにいるわけではないんだからね。ある日は Nu-metal のトラックを書き、次の日はデスメタルのアンセムを書くかもしれない。僕たちは感じるままに創造する。そこに限界はないんだよ」
初期 SLIPKNOT への崇拝という呪い “Hatred” から幕を開けるアルバム “Cursed” は、しかし徐々に自らにかけられたその呪いを振り払い、新たな世界を “Spit it Out” 吐き出していきます。KORN の奇妙な絶望や孤独をデスコアで解釈した “…and with hope you’ll be damned”、パーカッシブなコンセプトを活用した “My Blood On Your Hands”、そしてメロデスと Nu-metal のオフビートな狂宴 “Love Burns”。また、完全版に収録された “River Of Sorrows” のアンプラグド・バージョンではリスナーの涙を誘い、バンドの懐の広さを見せつけます。
「このような暗い時代には、団結が全て。僕たちは、メタルを通じて人々が本当に自分らしくいられる空間を提供したいんだ。ここでは誰もが平等である…それが僕たちのメッセージだよ」
SLIPKNOT が “People=Shit” と歌った “Iowa” からおおよそ四半世紀の年月が経ちました。90年代の暗さを背負っていた SLIPKNOT が “People=Shit” と叫ぶのは、ある意味時代の必然だったのかもしれませんね。
しかし、同じ暗い時代において、PALEFACE SWISS はメタルと人の可能性を信じます。メタル世界ではすべての仮面や肩書きを脱ぎ捨てて、本当の自分でいられる。どんな文化、人種、宗教、言語でもメタルの前では平等である。差別や抑圧を許さない。メタルを愛するという大きな “共感” が、コミュニティ全体を優しく包み込んでいきます。いろんなことが、この25年で大きく変化しましたが、少なくともメタル世界は少しづつでも前へと進んでいるのです。
今回弊誌では、ギタリストの Yannick Lehmann にインタビューを行うことができました。「ヘヴィ・ミュージックは世界を変えられないかもしれないけど、人々を変えることならできる。音楽で困難な瞬間を乗り越える手助けをしたり、長い一日の後に平穏をもたらしたり―それがヘヴィ・ミュージックが持つ真のインパクトなんだ。君なら僕の意味するところを理解してくれると思う」それにしても、Zelli のボーカル・パフォーマンス、スター性は群を抜いていますね。どうぞ!!

PALEFACE SWISS “CURSED” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PALEFACE SWISS : CURSED】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLACKRAIN : CRACK THE SKY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SWAN HELLION OF BLACKRAIN !!

“Van Halen Debut Album Became a Big Thing In My World, The Sound Of The Guitar On This Album Is So Unique, There’s a Very Special Feeling Coming Out Of It, It Is Wild.”

DISC REVIEW “CRACK THE SKY”

「Jerem はまだ若いけど EVH の大ファンで、彼にとって大きな影響の源だよ。実は、この動画で僕らの音楽がより広い層に届くと期待していたんだ。素晴らしいギターソロは、ロックやグラムのコミュニティだけでなく、多くの人々の心を動かすことができるからね」
Eddie Van Halen が旅立って5年。そのユニークな音楽、哲学、サウンド、テクニックは、大いなる遺産、ロックの “導火線” となって今も人々の心を動かし、リアルタイムを知らない若い世代をもギターやメタルの沼へと引きずり込んでいます。ギター・ヒーローの類稀なる情熱と魔法は、先日インタビューを行った DERAPS の例を挙げるまでもなく、確実に多くの後続へと “継承” されているのです。
「VAN HALEN のファースト・アルバムは、若い頃にオリジナルのLP版を贈られてから、僕の世界で大きな意味を持つようになったんだ。このアルバムのギターの音は本当に独特で、特別な感覚があるよね。実に野性的だよ」
20年前、ここ日本のツアーからキャリアのスタートをきったフランスの BLACKRAIN。80年代のサンセット・ストリップを現代へと蘇らせる彼らは、紆余曲折を経て昨年再スタートを切りました。Jerem G という若き才能を得た彼らは、一度 VAN HALEN のファースト・アルバムという原点に戻り、再起を図ります。”Resurrection”。Jerem G がこの楽曲、このMVで魅せた姿には明らかに “Eruption” の情熱、野生、衝撃が宿っていました。今、この動画は様々なプラットフォームで拡散され、”バズって” います。そう、ギターの衝動は時にメタルのコミュニティを超越して “噴火” します。かつての VAN HALEN のように。
「現代の社会では、人々は何かに対して30秒以上の注意を払わないため、”メディオクリティ” “奇をてらわない良さ” “普遍的な素晴らしさ” が “大きな問題” となる。これが、今日あらゆる問題が蔓延する理由かもしれないよね。だからこそ、努力を重ねて一定のレベルに達し、夢を叶えた人々を見聞きすることは、確かに大切なことなんだ…」
長年こうしたサイトを運営していると、いかに現代が、もしくは SNS が “普遍” と相性が悪いかを思い知らされます。結局、”バズる” 記事は今や30秒、いや5秒で伝わる奇抜な “出オチ” のアーティストが大多数。もちろん、そうした前代未聞のアイデア自体は素晴らしいのですが、果たして “バズ” に “加担した” リスナーは彼らを末長く愛しているのでしょうか?まるでスタバの新作のように、ただ一度 “消費” してそれで終わりのような気がしてなりません。
スクロールで膨大な情報が現れては消える時代に、私たちのアテンション・スパンはどんどん短くなっていきます。そうした流れで、”メディオクリティ”、普遍的に長く愛せる音楽を私たちは見失いがちなのかもしれませんね。だからこそ、もし “当たり前にカッコいい” Jerem G の勇姿に感銘を受けたとしたら、彼らのアルバムにも目を向けて欲しいのです。そこには、80年代の巨人たちとも対等に渡り合える、情熱的な目眩くメタルの “普遍” が存在しているのですから。
今回弊誌では、フロントマン Swan Hellion にインタビューを行うことができました。「多くのギター・ヒーローや素晴らしい達人が存在したと感じてきたけど、僕の注意を引くのはごくわずかだった。多くの人が超高速でスケールを上下に弾くことができる中、僕は別の何かが必要だと思ったんだ。曲のために演奏し、音楽に本物をもたらすギタリスト、タッチやサウンドを持つギタリストこそが必要だとね。Jerem はその資質を持っている」 どうぞ!!

BLACKRAIN “CRACK THE SKY” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLACKRAIN : CRACK THE SKY】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUX TERMINUS : CINDER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VIKRAM SHANKAR OF LUX TERMINUS !!

“Trying To Make Heavy Music With No Guitars Is a Creative Challenge That Requires Creative Solutions, Which Is a Lot Of Fun.”

DISC REVIEW “CINDER”

「芸術的に言えば、ギターがないという制約があることはとても充実したことだと思う。実は僕はギターの音が絶対的に好きだし、好きなミュージシャンの多くはギタリストだ。それでも、ギターを排除することで、キーボードが “音の混沌” に埋もれてしまうことがなく、繊細さや美味しさを堪能する余地が生まれる」
LUX TERMINUS とは、ラテン語で “終わりの先の光” を意味します。そう、このバンドは過去のプログのトンネルの先にある光に違いありません。バンドの中心人物は Vikram Shankar。そう、2010年代後半、シーンに彗星のごとく現れた若き鍵盤の魔法使いこそプログ世界の希望。
あの歌聖 Tom Englund との美しすぎるデュオ SILENT SKIES でネットから現実へと飛び出した Vikram は、すぐにその優れたテクニック、音楽教育を存分に受けた知性、研ぎ澄まされたメロディの感覚、音楽を俯瞰して見る眼差しが認められ、REDEMPTION や PAIN OF SALVATION といったこの世界の鬼才にして重鎮にとってなくてはならない存在となりました。
彼がプログ世界の希望である理由。それは彼の音楽に対する優れた才能、真摯な態度だけではなく、鍵盤をその武器に選んでいるから。かつて、プログやメタル世界の華のひとつだったキーボード・ヒーローは今や絶滅寸前。しかし、その繊細さや多彩な色彩は決して滅びてはならない天然記念物。Vikram はこの LUX TERMINUS で、PLINI, INTERVALS, David Maxim Micic といった愛するギターヒーローの哲学をキーボードで再現して独自に進化させ、ギター全盛のシーンに選択肢を増やそうとしているのです。
「ギターがない状態でヘヴィな音楽を作ろうとするのは、創造的な解決策を必要とするクリエイティブな挑戦であり、それはとても楽しいことなんだ。LUX TERMINUS は、おそらく SILENT SKIES と最も共通点があると思う。主に、シネマティックな色合いという意味でね。僕たちは、サウンド・デザインを織り上げていくようなアプローチや、深く思慮深い雰囲気を作り出すための音の実験が大好きだからね」
ギターレスのDjent。LUX TERMINUS の原点はそこにあります。重量感マシマシ、ギターありきのDjentにキーボードで切り込むその心意気こそプログレッシブ。Vikram はアルバム “Cinder” の中で、そのミスマッチに様々な創造的ソリューションで挑んでいきます。
もちろん、ARCH ECHO のようなキラキラの Fu-Djent も一つの解決法でしょう。幾重にも重なった光のキーボードと複雑重厚なリズムが織りなすディズニー・ランドは完璧なエンターテイメントとなり得ます。SLEEP TOKEN のポップな電子メタルも、DIRTY LOOPS のファンキーなリズムも彼らは飲み込み咀嚼します。しかし Vikram の企みはそこだけにとどまりません。
「特に久石譲のジブリ映画の音楽には大きな影響を受けているよ!また、僕は尺八を持っていて、レベルの高い尺八の演奏に心から魅了されているんだ。そうした名人たちには遠く及ばないけど、それでも “Neon Rain” (三味線や箏の演奏もある)のバックで尺八を僕が吹いているんだ。他にも、驚くべきソースがあってね。ポケモン・アルセウスのサウンドトラックに収録されている、特にジュビレシティーのテーマとかね。僕は日本の “音楽言語” がとても好きなんだ!」
Vikram の生み出す音楽はよりコズミックで、映画的で、未来的。Espera という優れたボーカル集団と紡ぐ “Jupitor” 三部作で私たちはインターステラーやスターフィールドといった壮大な映画やゲームの世界へと旅立ち、かの Ross Jennings と Jorgen Munkby を起用した “Catalyst” では CHICAGO や THE POLILE が映画やドラマの主題歌に使われていたあのアーバンでポップな80年代を再訪します。
そして何より Vikram がこのアルバムで大切にしたのが日本とのつながりでした。PAIN OF SALVATION の来日公演で愛する日本を訪れ、様々な都市を訪問した彼はこの国の人や風景の優美に感銘を受けます。尺八や三味線、琴を使用した “Neon Rain” はまさにその感銘が投影された楽曲。そうしてアルバムを締めくくる “Natsukasii” で Vikram はジブリの世界観とメタルを見事に融合させていきます。ノスタルジーと情景、壮観。彼が LUX TERMINUS で目指したものは、素晴らしくここに投影され、確かに鍵盤でなければ実現できない未曾有の景色で、未来へのプログレッシブな窓でした。
今回弊誌では、Vikram Shankar にインタビューを行うことができました。「最近のプログレッシブ・ミュージックには、メタルだけでなくフュージョンやジャズの文脈で活躍する優れたキーボーディストがたくさんいると思うけどね。とはいえ、キーボードの “旗手” のような存在になって、キーボードでどれだけ多彩で奥深い表現が可能かをアピールするできるとしたら、それはとてもやりがいのあることだと思うよ」 どうぞ!!

LUX TERMINUS “CINDER” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUX TERMINUS : CINDER】