EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JIEN TAKAHASHI OF VIOLET ETERNAL !!
“I Studied From Timo Tolkki About Most Important Things. He Taught Me The We Need The Respect For Cherish Individuality By My Own.”
DISC REVIEW “RELOAD THE VIOLET”
「自分も満足出来て尚且つファンの人が喜んでくれるであろう夢のような音楽を作り続ける為に人脈を広げていく努力は惜しみなくしていますが、なによりも人間関係に恵まれたという部分が大きいと思います」
かつて、日本のメタル・アーティストが、海外のプレイヤーと共闘することはほとんどありませんでした。それは、言葉の壁、文化の壁、そして文字通り “海” という壁が大きく立ちはだかっていたから。もちろん、だからこそ日本のメタルは独特の “味” を持つようになったといわれる一方で、世界で認知されるには少しばかりドメスティックになりすぎたのかもしれませんね。
やはり、歴史を変えるのは若い力です。聳り立つ壁の数々を、ギタリスト Jien Takahashi はいとも簡単に薙ぎ倒していきます。Timo Tolkki に見出され、MAJUSTICE で颯爽とシーンに登場した Jien は、Kaz Nakamura, Kotaro Tanaka, Kelly SIMONZ という日本の百戦錬磨と共に、海外の烈士たち、Iuri Sanson, Ralf Scheepers, Vitalij Kuprij を従えていました。その姿はさながらメタル世界の坂本龍馬。インターネットという新たな海を自在に泳ぎ、Jien は信頼できる仲間を世界中で見つけました。
まさにメタルの生命力、感染力、そして包容力。彼にとって、国籍、人種、文化、性別は一切壁にはなり得ません。重要なのは、自らの才能を具現化できるパーティ。そして、その力を余すことなく使い切って、リスナーに極上の個性的なパワー・メタルを届けること。
「トルキとはかなりコンスタントに連絡を取るようになり、STRATOVARIUS 時代の楽曲をどのように作り上げたかなど色んなことを教えて頂けました。そして彼から独自の作曲方法を伝授されてからは一貫して彼の方法論を踏襲しています。しかし、それはあくまで方法論に過ぎず彼から学んだ最も大切な事は”個性的であれ”という事です。このジャンルに於いて”独創的”でいる事は難儀ですが、個性的であることを大切にしてこれからも精進していきます」
パワー・メタルはたしかにステレオタイプになりがちなジャンルで、飽和と定型化が衰退を招いたこともありました。しかし近年、TWILIGHT FORCE や GLORYHAMMER, FELLOWSHIP, IMMORTAL GUARDIAN といった若い力は、振り切った個性とテクニックで再びこのジャンルに活力を取り戻しています。Jien の新たな冒険となる VIOLET ETERNAL もそうしたバンドのひとつでしょう。
「村下孝蔵さんや弘田三枝子さんのような歌謡界のレジェンドから、私立恵比寿中学やアンジェルムのようなアイドル音楽など幅広く日本のポピュラーミュージックを愛しています。
太鼓の達人でお馴染みのナムコオリジナルやロマンシング・サガシリーズの楽曲を手がける伊藤賢治さんの作る音楽も大好きです。ヨーロッパっぽいメロディも大好きなのですが、ぼくは日本的なメロディで曲を作っていくのが楽しいしその点に生き甲斐を覚えています」
思い返してみれば、かつてパワー・メタルの銀河帝国を築き上げた綺羅星たちには、それぞれのユニーク・スキルが備わっていました。VIOLET ETERNAL のそのスキルはおそらく、欧州と日本の融合。実に耽美的でヨーロピアンでありながら、戦隊もの、アニメの主題歌、J-Rock で慣れ親しんだ日本的なコード進行や勇壮な旋律が五感を刺激するカタルシス。バンドのアンセムである “Under the Violet Sun” は、後半の転調を含めてまさしくその象徴でしょう。平坦になりがちな海外のパワー・メタルに比べて、VIOLET ETERNAL の楽曲はコード進行や転調の魔法が実に鮮やか。
DERDIAN の盟友 Ivan Giannini をはじめとした海外のパワーと、GALNERYUS の YUHKI をはじめとする繊細な日本のメタルが交わる様もまさに Jien が理想とするパワー&メタルの有り様。リスナーはただ、タクトを振るいながら美技を連発する Jien の紫に踊らされればよいのです。
今回弊誌では、Jien Takahashi にインタビューを行うことができました。「BanGDreamに関しては声優の工藤晴香さんのファンクラブにも入ったくらいどハマりしましたね!一時期は髪色まで工藤晴香さんの真似をしていたくらいです(笑)。実際に今でもInstagramでは工藤晴香さんとティモ・トルキの名前を捩った名称をIDにしていますね」
あの RING OF FIRE の “Circle of Time” を彷彿とさせる “The Echoes of Time” からさらに飛翔する “Now And Forever” の流れは絶品。開幕からメロパワ!メロパワ!でねじ伏せるアルバムは、HELLOWEEN の “Master of the Rings” 以来では? どうぞ!!
<収録曲>
01.The Titans
02. The Echoes of Time
03.Now and Forever
04.Ember Flame
05. Under the Violet Sun
06.Land of Golden Sun
07.Never Surrender…In My Dreams
08.Heartless
09. Over the Sorrow
10.Sonata Black
Additional Musicians:
・Track 02~10. Andrea Cappellari (NEKOMATA, ex-SKELETOON) as Guitarist
・Track 02~10. Ollie Bernstein (ILLUSION FORCE) as Bassist Track 09. Takao (MinstreliX) as Guitarist
・Track 09. Gabriel Guardian (IMMORTAL GUARADIAN) as Guitarist and Keyboardist
・Track 10. YUHKI (GALNERYUS, ULTIMA GRACE) as Keyboardist
・Track 09 10. Ryuya Inoue as Drummer
・Track 10. Timo Tolkki (ex-STRATOVARIUS) as Songwriter
“Our Music Has Dark Parts And Light Parts. “Two Become One” Is The Concept Of The Band. Music Made Together By One Person Living In France And One Person Living In Japan. A World That Mixes European And Japanese Culture. An Atmosphere That Mixes The Past And The Present…”
“In Japan,There’s This Thing About Karoshi, Salarymen Who Work Themselves To Death. I Don’t Talk About This Much, But My Uncle Kiichi Killed Himself. His Name Is My Middle Name.”
どのようなレコードが、Heafey のサブジャンルへの愛を形成したのでしょう?
「これらのアルバムは、最後の2枚を除いて、僕がブラックメタルにハマり始めた頃のもの。まず最初に、ストックホルムの MORK GRYNING の2001年の “Maelstrom Chaos”。このレコードはプロダクションとスタイルの面で僕にとても影響を与えている。このアルバムに収録されている “My Friends” という曲はとても奇妙で、”ブラック・メタルではない” と感じると同時に、とてもブラックメタルだと感じるんだ。
ウメオの NAGLFAR による2003年の “Sheol”。ストックホルムの DARK FUNERAL による2001年の “Diabolis Interium”。彼らは半伝統的なオールドスクール・サウンドにこだわっている。プロダクションに重点を置いていることが、僕にとって意味があったんだ。1995年、DISSECTION による “Storm Of The Light’s Bane”。1997年のオスロの OLD MAN’S CHILD による “The Pagan Prosperity”、DIMMU BORGIR の別バンドのGALDER。信じられないほどメロディアスで、バロックとネオクラシカルを同時に表現している。1997年の DIMMU BORGIR の “Enthroned Darkness Triumphant”。もちろん、1997年の EMPEROR の “Anthems To The Welkin At Dusk” と1996年の SATERICON の “Nemesis Divina” も名盤だ。これらは僕の “ブラックメタル少年時代” のアルバムなんだよ。
それから、ENSLAVED による2012年の “RIITIIR”、BEHEMOTH による2014年の “The Satanist” だ。”The Satanist” は新しいし、人々は基本的にノルウェーとスウェーデンのバンドをこのジャンルの “リーダー” として見る傾向があるけれど、この作品はブラックメタル史上最高のレコードのトップ10に入るよ」
Heafey は、ブラック・メタルの物語が、魂を震わせるサウンドを高めていると指摘します。
「ブラックメタルにのめり込んでいくうちに、なぜ彼らがああいった見た目をしているのか、なぜ曲やアートワークがこうなっているのかが分かってきて、本当にいろいろなもので構成されていることで好きになったんだ。彼らはもともとはスラッシュに傾倒していたんだけど、その後、クラシック音楽の要素やスカンジナビア民謡など、さまざまな影響を持ち込むようになった。そういう民俗的なストーリーは本当に魅力的だと思うんだ。
TRIVIUM の初期の曲で、”Oskoreia” という北欧の伝説にまつわる曲がある。白い顔をした幽霊の騎兵が超高音で叫び、人々の魂を奪っていくというものなんだけど、これは僕がどれだけブラックメタルの伝説にハマっていたかを示しているね。あらゆる本を読み、あらゆるバンドについて調べ、あらゆるシャツやCDを手に入れていたからね。このアルバムのターニングポイントは、Ihsahn と話していて、”もし僕がスカンジナビア人だったら、ThorとRagnarok について書けたのに…” と言った時だったんだ。
彼は2つのことを教えてくれた。1つは、僕にもルーツが存在すること、もう1つは、自分の日本的な面をもっと見るべきだということ。背中にタトゥーしている神道の八岐大蛇(やまたのおろち)のようなものを参考にできるとわかったとき、状況が一変したんだよね」
IBARAKI の既成概念にとらわれないアプローチに道を開いた先駆者は誰にあたるのでしょう?
「ブラックメタルのパイオニアたちは、メタルは商業的になりすぎて、同じようなことばかりやって言っていると言っていた。この音楽はその対抗策だったんだ。でも、その後、自分が作ったものに固執すると、結局、それをまた別のものに変えるための反抗が必要になるんだ。EMPEROR は、僕がこのジャンルを発見したときの最大のバンドのひとつだった。TRIVIUM のどこにブラックメタルがあるのかと聞かれたとき、僕はいつも、サウンド面では必ずしもそうではないけれど、EMPEROR は僕にすべてのレコードを前とは異なるものにする自信を与えてくれたと説明してきたんだ。
“In The Nightside Eclipse” にはじまり, “Anthems To The Welkin At Dusk”, “IX Equilibrium”, Prometheus”, “The Discipline Of Fire & Demise” まで、彼らはそれが可能であることを証明してくれた。ULVER の “Perdition City” はブラックメタルではないけれど、正反対であるからゆえに、ブラックメタルとして非常に重要なレコードなんだ。WARDRUNA もそうだ。あのバンドはブラックメタルとは似ても似つかないけど、同じ素材を使っているから、同じように重要だと感じる。一方で、BEHEMOTH の “The Satanist” は、このジャンルに回帰しているにもかかわらず、とても異なっているように感じられた作品だね。僕にとっては、”O Father O Satan O Sun!” が BEHEMOTH の曲の中で一番メロディが良いんだよ!
そして、Ihsahn の2010年のソロ・アルバム “Eremita” を聴くと、まるで初めて “Anthems” を聴いた時のような感覚になる。あのレコードがきっかけで、IBARAKI が別名義から自分名義のプロジェクトにシフトしたんだ」
教会の焼き討ち、ファシスト思想、殺人など、ブラックメタルの残忍な裏の顔はたしかに問題視されています。
「正直なところ、若い頃は、ブラックメタルの暗さに惹かれたんだ。別に肯定も宣伝もしているわけではないんだけど、音楽的な対立でバンドメンバーが殺し合うようなジャンルがあったというのは、若い人には絶対に響いてしまうと思うんだよ。だけど大人になってみると、このジャンルには人種差別や偏見に固執する、本当に問題のある側面があることがわかってくるし、それは僕が強く反対していることでもある。最初に若さゆえの “目隠し” が取れたとき、”信じられない!” と思う反面、”なんてこった、これが見えてなかったなんて!”とも思ったものだよ。でも、それは僕がブラックメタルを書き直す手伝いをしたいということでもあるんだ。
“Rashomon” の制作を終えた頃、(COVIDの無知が原因で)世界中で反アジアの感情が高まっていたんだ。だから、このアルバムは、日本の文化にスポットを当てて、その物語についてもっと知ろうと思ってもらえるようにするためのミッションだと考えるようになった。そして、中国や韓国の物語、ヨーロッパの物語、アフリカの物語など、地球上に学びのボキャブラリーを広げていきたいんだよ。僕にとって “Rashomon” は、ブラックメタルについて僕が好きなものを維持し、そうでないものを超越するための作品なんだ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAICHI NAGURA OF ENDON & KAPO OF SWARRRM !!
“To Me, Extreme Music In Japan Seems To Have a Spirit Kind Of “Fuck While Being Fucked” And Yeah…I Can Hear It. The Situation Is Often Forgotton Unconsciously.” By Taichi Nagura
“I’m Not Sure What The Punk / Hardcore Spirit Specifically Refers To. The Spirit Should Be Different For Each Individual.” By Kapo
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAKAAKIRA ‘TAKA’ GOTO OF MONO !!
PHOTO BY CHIGI KANBE
“I think that the problem of Japanese music scene is low artist level. They want to get popularity, want to be loved, want to make their living…such a mood is overflowing from their song. Everything seems to be a song of animation and drama, I feel it’s childish.”
DIRECTED BY JULIEN LEVY
DISC REVIEW “NOWHERE NOW HERE”
驚くほど色鮮やかな今日のポストロックシーンにおいて、MONO は源流であり孤高です。
理知的なキャンパスに描かれる彼らの重厚な音壁と繊細なテクスチャーの両極は、もはやジャンルのトレードマークとして定着し多数の後続を生みましたが、一方で、インストゥルメンタルバンドにとって最もスケッチの困難な感情の起伏を切り取り投影するアートなビジョンこそバンドの本質のように思えます。
つまり MONO のレコードは、二元性のダイナミズムに豊かな情操が織り込まれることで、光と影が相対する夢幻のダンスを踊るのです。それは、リスナーの想像力を掻き立てる架空のサウンドトラックにもなり得ます。
結成20年を迎えたバンドにとって、最新作 “Nowhere Now Here” は最もその “感情” にフォーカスした作品となったのかも知れません。その理由は制作段階の異変にありました。
「2017年は日本のマネジメント、レーベルとのトラブルや契約解除、そのタイミングでドラマーの脱退があってバンドは消耗し切っていて、一歩も動けないような状態だった。スケジュールもまったく決まってなくて、普通のバンドだったらここで解散するんだろうなってムードに包まれてた。本当に暗闇に入ってしまって先が見えなくなってしまったんだ。」
MONO が経験した試練、再生、夜明けのプロセスは、それぞれの感情を伴ってレコードへと深く刻まれています。もしかしたら、ダンテの神曲とリンクした前作 “Requiem For Hell” が、組曲というある種計画と洗練のレコードであったのとは対照的なのかも知れませんね。
幕開けを飾る “After You Comes the Flood” “Breath” のコントラストは、アルバムに宿るエモーションを象徴しています。
“Rays of Darkness” や “Requiem For Hell” の張り詰めたエナジーを受け継ぐ “After You Comes the Flood” でバンドはテーマとなる一つのメロディーを極限まで追求し、轟音と静寂、憤怒と絶望のメイルストロームを形成します。まるで13階段を登るかのごとく不吉に鳴り響く不協和の葬送曲は、しかし “Breath” でみせる光明へと収束していくのです。
「”僕たちは過去を断ち切って新しい地平に行くんだ”、という決意を言葉と歌で表現したいと思ったんだ。」これまで全てを楽器の音色だけで語って見せた MONO が初めて Tamaki のボーカル、”言葉” を必要としたのは、新たなチャプターへと移行する決意のステートメントが理由でした。
実際、溢れ出るノイズの猛攻から、Nico にも通じる切なさ、ノスタルジア、仄かな希望へのトランジションは、対比の魔法を超えて、自然の摂理、音と感情の息を飲む調和の域へ達したようにも思えます。
さらに、ホーンやストリングス、そしてピアノを的確に使用したオーケストレーションの妙も冴え渡ります。事実、タイトルトラック “Nowhere Now Here” に漲る人間の可能性、筆舌に尽くし難い “Sorrow” に込められた荘厳なる哀しみは、オーケストラに匹敵するほど繊細にして大胆です。
そうしてアルバム、そして MONO は、澄み切った青空を想起させる “Vanishing, Vanishing Maybe” で、過去への決別を果たしました。
「アメリカやヨーロッパでは、母国に既に存在しているものや、模写したようなバンドは全く必要としない。だから、彼らがこれまで聴いた事、感じた事のない気持ちになれるオリジナリティに溢れた素晴らしい何かを持った唯一無二の音楽でないと、世界に出る事はまず無理だと思う。」
世界中で絶賛された “Hymn To The Immortal Wind” をポストロックの殿堂へと納めながら、MONO の挑戦は終わりません。「もっと奥まで追求したい、もっと前に向かて進んでいきたい。」好奇心や追求心こそアートの根源。
「日本では “郷に入れば郷に従え” という言葉の通り、郷に従えれる人が成功出来るルールがあるようにさえ見える。」個性、多様性の意味、世界を知る男の違和感にぜひ耳を傾け、思考してみて下さい。Takaakira ‘Taka’ Goto です。どうぞ!!
MONO “NOWHERE NOW HERE” : 10/10
MONO “Nowhere Now Here” (2019)
レーベル: Temporary Residence Ltd. & Pelagic Records
トラックリスト:
01 God Bless
02 After You Comes the Flood
03 Breathe
04 Nowhere, Now Here
05 Far and Further
06 Sorrow
07 Parting
08 Meet Us Where the Night Ends
09 Funeral Song
10 Vanishing, Vanishing Maybe
購入 (CD/LP/Digital): http://www.smarturl.it/mono-nnh
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIJIRO NAKAGAWA OF JYOCHO !!
“We Are Influenced By Cycle Or Rule What We Can Not Perceive In Our Daily Life. Off Course, Individuals, As Well As Society, The Country, And The Earth, The Universe Are Both Influenced By One Law And Cycle.”
Japan’s Up And Coming Guitar Artist ichika Has Been Making Waves With His Trilogy EPs “forn”, “she waits patiently” and “he never fades”. Definitely, We Should Keep An Eye On This Young Virtuoso!!
DISC REVIEW “she waits patiently”, “he never fades”
光耀を増した夢幻のクリスタル。琴線の造形師 ichika がギターとベースで奏でるダブルファンタジー “she waits patiently” “he never fades” は、音聖のプロローグを透徹した美意識で彩ります。
マエストロの周辺はデビュー EP “forn” のリリース以降俄に騒がしくなりました。コンテンポラリーでメロディアスなテクニックのイヤーキャンディー AMONG THE SLEEP で gen との麗しき邂逅を果たした後、ichika がスポットライトを浴びたのは東京コレクションのランウェイでした。モデルとしても需要はありそうですがもちろんモデルとしてではなく、スーパーグループ ichikoro のメンバーとしてサプライズで演奏を行ったのです。
Think (川谷絵音), Holy (休日課長), M (ちゃんMari), Vista (奏), Sugar (佐藤栄太郎) から成る異能の音楽集団を率いるリーダーは ichika。そして ichikoro のサウンドはその奔放なラインナップとシンクロするかのように自由を謳歌しています。
「正直音楽の作られていくスピードが異常です。」実際、ゲスの極み乙女や indigo La End の頭領、百戦錬磨の川谷絵音を筆頭とするトリプルギター軍団のクリエイティビティーは斬新かつ鮮烈です。ファンクにポルカ、サンバ、ジャズ、そしてオルタナティブなロックの衝動まで内包する “Wager” はまさにグループの象徴。倍速で演じる紙芝居の如く、コロコロと表情を移す猫の目のイマジネーションはリスナーの大脳皮質を休むことなく刺激し続けます。
課長の派手なスラップを出囃子に、各メンバーの個性も際立つエキサイティングなインストゥルメンタルチューンにおいても、ichika の清澄なるクリーントーンは際立ちます。一聴してそれとわかる眩耀のトーンと水晶のフレットワークは、キラキラと瞬きながら若きヴァーチュオーゾの確かな才気を主張していますね。
無論、ichika のそのトレードマークを最も堪能出来るのがソロ作品であることは言うまでもないでしょう。「”forn” を作るときに話の全体の大きな流れを作り、それを “forn” と “she waits patiently”、”he never fades” の3つに分けました。」と語るように、冒険の序章はトリロジーとして制作されています。”forn” と “she waits patiently” は女性視点で、”he never fades” は男性視点で描かれたストーリー。そして ichika はギターを女声に、ベースを男声に見立てその物語を紡いでいるのです。
「僕は普段曲を作る前にまず物語を作り、それを音楽で書き換えようとしています。聴き手に音楽をストーリーとして追体験させることで、より複雑な感情に誘導することが出来るのではないかなと思っているからです。」という ichika の言葉は彼の作品やセンスを理解する上で重要なヒントとなっています。
彼の楽曲に同じパートが繰り返して現れることはほとんどありません。もちろん、テーマを拡げる手法は時折みられるものの、単純に同じパッセージを再現する場面は皆無です。つまり、映画や小説が基本的には同じ場面を描かず展開を積み重ねてイマジネーションを掻き立てるのと同様に、ichika の楽曲も次々と新たな展開を繰り広げるストーリーテリングの要素を多分に備えているのです。小説のページを捲るのにも似て、リスナーは当然その目眩く世界へと惹き込まれて行くはずです。
加えて、”forn” から ichika がさらに一歩踏み出した場所こそが “感情” であったのは明らかです。「この音を聴けばこういう感情が生まれる」エモーションの引出しを増やすに連れて、彼が直面したのは “ソロギター” という手法そのものだったのかも知れませんね。
ソロギター作品と言えばそのほとんどがアコースティックで奏でられていますが、ichika はエレクトリックギター/ベースを使用しプラグインエフェクトで極限まで拘り抜いた天上のトーンを創出しています。ピアノやアコースティックギターで表現するインストゥルメンタルの楽曲は、確かに美しい反面、平面的な情景描写に終わってしまうことも少なくないでしょう。
しかし、儚さや美しさと同等の激しさや苦しさを宿す “he never fades” や “illusory sense” は明らかにその殻を破った楽曲です。プレイリストを見れば分かるように、そこには、ジャズやアンビエント、ミニマルや電子音楽の領域と並行してデスコアや djent、フュージョンといったロックの衝動を通過した ichika の独創性、強みが存在するのです。
エレクトリックギター/ベースを選択することで、彼は唯一無二の自身のトーンと共に、ハイノートの自由を手に入れています。時に煌き躍動する、アコースティックギターでは再現不可能なハイフレットでのフレキシブルでファストなプレイ、右手を使用したタッピングの絵巻物はモダンなイメージを伴ってロックのエモーションをガラス細工のように繊細な音流へと吹き込みます。
そしてより “ギター” “ベース” という弦楽器の特徴を活かしたスライドやヴィブラート、トレモロ、ガットストローク、さらには休符、弦の擦れる音やミュートノイズまでをも突き詰めて、ichika は感情という総花を物語へと落とし込んでいるのです。揺らぐ感情の波間に注がれる荘厳なる崇高美。
“彼女” は辛抱強く待ちました。”彼” も辛抱強く待ちました。きっと世界には、絶望の後には救いが、別れの後にはユーフォリアが等しく用意されているのです。ichika の素晴らしき序章、未曾有のトリロジーは静かにその幕を閉じました。ISSUES の Tyler Carter と作曲を行っているという情報もあります。次の冒険もきっと目が離せないものになるでしょう。Have a nice dream, ichika です。どうぞ!!
Welcome Home, Master & Princess. Band-Maid Are Back With Their Second Full Length Record “World Domination”. Literally, They Are Ready For World Domination!
DISC REVIEW “WORLD DOMINATION”
「お帰りなさいませ、ご主人様お嬢さま!」国内、海外で数多の “お給仕” を行い格段の進化を遂げた日本が誇る戦うメイド集団 BAND-MAID が、世界征服を目論む挑戦状 “WORLD DOMINATION” をリリースしました!!ヴァレンタインに届いた57分の峻烈なる宣告は、ワールドクラスの自信と決意に満ちています。
まさに有言実行。前回のインタビューで 「次の作品も、その次の作品も自分たちの作詞作曲を増やしていきたいと思っています!」 と語ったように、最新作 “WORLD DOMINATION” は3つの共作曲を含め全てがオリジナルの楽曲で占められています。そしてその事実はまさしく本物の証。5人を包むメイド服は貫禄さえ纏い、徹頭徹尾 BAND-MAID 色に染め上げられた純粋なハードロックチューンの数々は、瑞々しさと共に偉大な先人たちのスピリットや美学を濃密に継承しているのです。
アルバムオープナー “I can’t live without you.” の圧倒的な躍動感はもはや事件です。KANAMI の創造する不穏で重厚なリフワークはまさに世界征服の狼煙。斬れ味鋭いリズム隊が牽引するファスト&ソリッドな楽曲は、扇情力を増しながら SAIKI の激情を込めたコーラスで制御不能のカタルシスを浴びせます。
「終わらぬ夢を見たいんだ 終わらぬ夢を見たいんだ 音もなく 堕ちていく それでも まだ… I can’t live without you. 」 同時に MIKU の投げかける熱情の詩は、男女間の恋愛以上にバンドとファンの間に存在する熱い想いを代弁し、渦巻くロックのロマンの中で互いに不可欠な関係であることを宣言しているのでしょう。これ以上ないほどに素晴らしき闘いの幕開けです。
“DOMINATION” や “CLANG” を聴けば、バンドの一体感やテクニックの飛躍的な向上が伝わるはずです。楽曲の複雑なデザインを掻い潜り、小節ごとにパターンを変えながら豊かなバリエーションを生み出す AKANE と MISA のアレンジメントは卓越していて、勿論、ファストなフレーズからアウトラインのスケールまで自由自在の KANAMI を加えバンドの創造性はかつて無いほどに沸騰しています。
“One and only” や “Carry on living” は象徴的ですが、散りばめられたブレイクダウン、四つ打ち、エレクトロニカといった現代的なフックの数々もバンドの広がる可能性を示唆していますね。
何より、根幹にブルーズが存在する BAND-MAID のハードロック道は、WHITESNAKE や MR. BIG の持っていたマジックを濃厚に共有しています。同時に、和の精神、J-POP の豊かなメロディーをも引き継いだ5人の戦士は、先述のコンテンポラリーなメタルやラウドの方法論まで総括しながら唯一無二の “メイド・イン・ジャパン” を築き上げているのです。
アルバム後半、連続して収録されたバラードタイプの心揺さぶる2曲、”Daydreaming”, “anemone” はその証明なのではないでしょうか。相川七瀬、B’z、JUDY AND MARY から延々と連なるジャパニーズロックの血脈はフックに満ちたバラードなしでは語れません。モダンなアレンジとセンス、過去と未来のバランス感覚、そして空間の魔法を駆使した多幸感まで誘って聴かせる “BAND-MAID のハードロック” はここに極まっているのかも知れませんね。
今回弊誌では、KANAMI さんにインタビューを行うことが出来ました。”BAND-MAID が世界征服に向け、先に進む1枚”、ハードロックの Up to Date。どうぞ!!
Japanese Math/Post-Rock Icon, Daijiro Of Jyocho Has Just Released The Most Imaginative, Delicate, and Emotional Record To Date “A Parallel Universe” !!